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げんしけんSSスレ8

1 :マロン名無しさん:2006/05/05(金) 01:55:41 ID:???
春───出会いの季節。

新しい出会いへ
踏み出す覚悟はありますか?

全てはげんしけんから始まり、また春が来る。
さあ、あなたも「げんしけんSS」の世界へ───。

げんしけんSSスレ第8弾。
未成年の方や本スレにてスレ違い?と不安の方も安心してご利用下さい。
荒らし・煽りは完全放置のマターリー進行でおながいします。
本編はもちろん、くじアンSSも受付中。

☆講談社月刊誌アフタヌーンにて好評連載中。7月号(5月25日発売)で、フィナーレ!
☆単行本第1〜7巻好評発売中。
☆作中作「くじびきアンバランス」ライトノベルも現在3巻まで絶賛発売中。

【注意】
ネタばれ含んだSSは公式発売日正午12:00以降。 公式発売日正午以前の最新話の話題は↓へ
げんしけん ネタバレスレ9
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1145498528/
前スレ
げんしけんSSスレ7
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1145464882/

げんしけん(現代視覚文化研究会)まとめサイト(過去ログや人物紹介はこちらへ)
http://www.zawax.info/~comic/
げんしけんSSスレまとめサイト(このスレのまとめはこちら)
ttp://www7.atwiki.jp/genshikenss/
げんしけんSSアンソロ製作委員会(SSで同人アンソロ本を出そうという企画・参加者募集中!)
ttp://saaaaaaax.web.fc2.com/gssansoro/top.htm

2 :マロン名無しさん:2006/05/05(金) 01:56:26 ID:???
エロ話801話などはこちらで
げんしけん@エロパロ板 その3(21禁)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1144944199/
げんしけん@801板 その4 (21禁)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/801/1127539512/

前スレ
げんしけんSSスレ6
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1143200874/
げんしけんSSスレ5
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1141591410/
げんしけんSSスレ4
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1139939998/
げんしけんSSスレその3
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1136864438/
げんしけんSSスレその2
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1133609152/
げんしけんSSスレ
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1128831969/

げんしけん本スレ
「げんしけん」 木尾士目 その129
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/comic/1145953585/


3 :マロン名無しさん:2006/05/05(金) 05:14:27 ID:???
>>1
乙です。
それにしても500レスにも行かぬ内にスレ立てにゃならんとは…
まあ長編の力作が多い証しですな。

4 :マロン名無しさん:2006/05/05(金) 09:20:36 ID:???
本スレでレス付いてたので手直しして投下

ベルセルクの夢のかがり火からパクリ

大「本当に写真いらないんですか?」
斑「もう持ってるからそれで十分だし、あれでいい塩梅というかですね」
大「でも・・・」
斑「・・・いや、気にしないで。
  ありゃ俺を思ってやってくれた事だし、別にその事で咲さんと
  気まずくなってももう卒業なんだし」
大「これで終わりにするおつもりですか?」
斑「・・・そうね、それにあの時は夢中でそれ所じゃなかったけど(汗;」
大「・・・・・・」
斑「それに正直いうと、あの時はこうも思った・・・
  みんながやってる事に比べたら俺がやっている事なんて
  どうでもいいことなんだって・・・
  みんな生きてる事をまるまる賭けられるモノを持ってる。
  すごいなって思った、そういうのって・・・
  それに比べれば写真がどうとか、そんなの大した事じゃないし。
  ・・・そう思った」
大「・・・」
斑「いい眺めだよなあ」
大「・・・?」
斑「田中はさ、服装の勉強をしてるけど、最初はそんな熱心だとは
  思ってなくて、まあ趣味くらいだろうって・・・
  久我山はあんなんだから外回りなんか出来ないだろうって、
  咲さんの初対面の印象は・・・最悪だったしw
  俺達なんかとは合わないよなって、でも振り返ればげんしけんに
  欠かせない人だったし、
  高坂君はまあ、笹原も立派になったよなあ」
大「ですねえ・・・」

5 :マロン名無しさん:2006/05/05(金) 09:24:27 ID:???
斑「大野さんも荻上さんもすごくよくやってるし、朽木君もね。
  げんしけんの一人一人のそんな夢とか思いとかが見えてきてさ。
  夢のかがり火・・・・・・・みたいな」
大「うまいこと言いますね」
斑「ははっ」
大「でも、そうですよ」
斑「そうやって小さな火を持ち寄ってみんな集まっているのかなって
  ・・・その小さな火が集まってげんしけんって
  大き・・くはないけど大きな火になってて・・・」
大「・・・」
斑「・・・でもですね、
  ここに俺の火はなかった」
大「・・・そんな」
斑「そうじゃなくて、俺はその火のそばでちょっと暖まっていこうって・・・
  そのためにフラッと立ち寄ってただけだって気付いたっていうか・・・
  最初は・・・萌へさえあれば生きていける自信があったし今だってある。
  げんしけんに入る前だってどんな時だってやってこれた。
  ・・・でもそんなことに大した意味はないんだなって・・・
  物心ついた頃には萌へがあったし俺には萌へしかなかったから・・・」
大「・・・」
斑「萌へが嫌になったんじゃない、だけど、ただ萌へているだけで、
  萌へしか知らないってだけで、俺は萌へをやってきたのかなって・・・
  ・・・そして何より、一番肝心な萌へる理由ってやつを俺はいつも
  他の何かから与えられてたのかも知れないって・・・」
大「斑目さん・・・」
斑「・・・はは、長々と変な話しちゃったな。
  こんな事を人に話すなんて、なっさっけねーw」
大「いえ、そんな事ありませんよ。
  それにお互い様です(笑」


6 :マロン名無しさん:2006/05/05(金) 09:27:33 ID:???
斑「あのさ、今の話は田中には内緒にしといてね(笑」
大「はい、内緒です」
斑「ははっ」
大「斑目さん、もしかして、げんしけんをやめるおつもりですか?」
斑「追いコンが終わるまでは這ってでも付き合いますよw」
大「その・・・後は?」
斑「その後って事でw」

7 :マロン名無しさん:2006/05/05(金) 11:36:18 ID:???
>夢のかがり火
読んでて切なくなった。非創作オタの苦悩…?
そーいう熱意に参加できない寂しさがあるのかな…斑目には…

8 :マロン名無しさん:2006/05/05(金) 21:47:46 ID:???
>>1
遅くなりましたがスレ立て乙です。
スレ消費、早くなりましたねー。

9 :マロン名無しさん:2006/05/06(土) 00:13:27 ID:???
さて、7レスほどで軽いのをひとつ投下します。

10 :まえがき:2006/05/06(土) 00:14:05 ID:???
「トライアングル」

アホな話なんで適当に読み流してください。


11 :トライアングル1:2006/05/06(土) 00:15:01 ID:???

笹原たちが卒業して数ヶ月がたった。
今日は久々に皆が集まる日だ。
前に追い出しコンパをやった居酒屋に、OBと現部員が集まった。
大「でもホント久しぶりですね〜〜〜!」
田「こうして集まれる機会がなかなかないからなぁ」
久「み、皆が予定合わせるとなると、難しいよね」
笹「あ、でも高坂君はどうしても来れないんですよね、残念だなぁ」
田「1ヶ月缶詰め中だったっけ?ゲーム会社も大変だな」

座敷で話に花を咲かせていると、急にパシャッ!とまぶしい光が射した。
皆驚いて、光の出所を見る。
笹「あ〜びっくりした、朽木君か」
荻「…朽木先輩、ちょっと落ち着いて座ってたらどうですか」
朽「にょ〜!せっかくなのでカメラ!カメラ!」
大「朽木君、はしゃぎたい気持ちはわかります。だからせめて一言かけてから写真撮ってください!」
朽「にょ〜、ノリが悪いですぅ!」
荻「場の空気読んでください」
朽「…わかりましたにょ〜」
笹「へえ、朽木君も丸くなったね」
朽「毎日大野先輩と荻上さんに怒られまくって、さすがに懲りたです……」


12 :トライアングル2:2006/05/06(土) 00:15:44 ID:???
笹「…ところで、斑目さんはまだ来てないんですね」
笹原はさっきからずっと気になっていたことを口にした。
田「ああ、さっきメールきて、『少し遅れる』ってさ」
笹「そうなんですか」
大「咲さんも遅いですねぇ…電話で、遅れるっていってましたけど」
荻「春日部先輩は卒業以来ですね、楽しみです。」

そのとき、「や〜遅れてゴメン!」と言いながら、2人が同時に到着した。
笹「あ、ども……………」
挨拶しかけて、固まる。その場にいた全員が固まってしまった。

春日部さんが、斑目と腕を組んで入ってきたのだ。
ありえない光景に、皆声も出せずに思考停止していた。

大「…さ、咲さん?あのぅ…………」
ようやく大野さんが口をひらく。
咲「よ、大野、久しぶり!!」
大「…えーと………斑目さん?」
斑「久しぶり、大野さん」
大「………………………………(汗)」
駄目です笹原さん!私には無理です!という顔で、大野さんは笹原にアイコンタクトで訴えた。


13 :トライアングル3:2006/05/06(土) 00:16:21 ID:???
笹「…ええーと…、何で腕組んでるんですか?」
笹原が単刀直入に聞く。
皆が冷や汗ダラダラで見守る中、春日部さんはこともなげに言う。
咲「ああ、付き合ってるから、コイツと」
笹「は?え?…えええええ〜〜〜?」
大「えっ、つつつ付き合ってるって…聞いてませんよ!!」
笹「え、こ、高坂君とは…?」
咲「コーサカとも付き合ってるよ」
笹「…えーそれってつまり…」
朽「うう、浮気デスカーーーーー!!??こんな堂々と!!」
とりあえず食いついてきたのは朽木君だった。
咲「浮気じゃないよ、本気半分」
大「は、半分って…」
笹「…斑目さん、どういうことなんですか?」
さっきから妙におとなしい斑目に振った。

斑「いやまぁ、ねえ…こういうことなんだよ」
笹「ああ、そういうことなんですか………って全然分かりませんよ!!」
斑「笹原、しばらく見ない間にノリ突っ込みまで覚えたんだな。成長しちゃって…」
笹「何をもって成長というんですか」
荻「笹原さん、話ずれてますよ(汗)」
笹「荻上さん、軌道修正ありがとう!で、何で春日部さんと付き合ってるんですか!?」
斑「………」
斑目は遠い目をする。


14 :トライアングル4:2006/05/06(土) 00:17:20 ID:???
斑「あれは俺が三年生のときだった…」
笹「…あの〜その話、長くなります?」
斑「うん。全部語るとざっと100レスくらい」
笹「はしょって下さい」
斑「ひでぇ!!」
笹「で?何でこんなことになってるんですか?3行くらいで説明してください」
斑「…高坂、仕事が忙しすぎるんだよ」
笹「え?」
斑「スケジュール見ると一年で半分くらい仕事。ほとんど缶詰め」
笹「…あの〜労働基準法いは(ry…」
斑「そこは流せ。長くなる」
笹「はぁ」
斑「…だから、高坂が仕事でいなくなる間、春日部さんは俺と付き合っている。高坂が長期休暇になると、春日部さんは高坂と付き合う。そういう風に3人で同意したわけよ」
笹「………え、高坂君も知ってるんですか?」
斑「うん」
笹「高坂君は何て?」
斑「『別にいいよーそれで皆が納得できるならー』…って」
笹「………えええええ〜〜〜?…ていうか、斑目さんはそれでいーんですか!?」
斑「笹原…俺最近考えたんだけどさ…。一夫一妻制、ってなんなんだろうな…?」
笹「はい?」
斑「色々考えすぎて吹っ切れたんよ。そんな常識、俺達のような若者が覆してやるのだ!!」
笹「…はあ??」
握りこぶしを作り力説する斑目。


15 :トライアングル5:2006/05/06(土) 00:17:56 ID:???
咲「まーそんなわけでさ」
笹「いやいや全然分かりませんよ」
咲「自分達が納得してるんだからいいんだよ。ねー斑目!」
斑「なー!」
笑顔で息ピッタリの2人。
笹「…はぁ………」

疲れて言葉が続かない笹原。固まったままの一同。
咲「まぁ、2またかけてるからにはあっちで受けたりこっちで攻めたり、大変だけど。でも楽しいからいいんだ!」
ヤケクソに見えるほど元気に言う春日部さん。

(斑目さん受けなんだ………)
別に知りたくないことを知ってしまいがっくりと肩を落とす一同。



…いや、人知れずエキサイトしている女子が2人。
大(そ、そうだったんですか……!)
荻(…やっぱりそうだったべさ………!(ニヤリ))

特に荻上さんの頭の中は、妄想が暴走してはちきれんばかりになっていた。

(高×斑!高×斑!!高×咲、咲×斑前提の   高×斑!!!)


16 :トライアングル6:2006/05/06(土) 00:18:41 ID:???
(うわコレヤベーーー総攻め×総受けの夢の競演だべ!
春日部先輩はカモフラージュで!放置プレイで!!(笑)

高「咲ちゃんに近づいたのは…僕に近づくためなんでしょ?」
斑「…そ、そんなこと…………」
高「ふふ、口ではそんなこと言ってても………」
首筋をつーっと撫でる。
斑「くっ…」
高「ほら相変わらず敏感ですよね、こんなだからどこにも行かせられないんですよ………」

おーーー  いーいーいー!さすが帝王…いやいや魔王!!

斑「お、俺は本当に春日部さんを………!」
高「いいんですよ、僕はどっちでも…。僕から逃げられると…いや僕を忘れられると思ってるんですか?」
斑「くっ…!」


そんであーなってこーなって………………………)


17 :トライアングル7:2006/05/06(土) 00:19:12 ID:???
荻「…はっ!!」

目が覚めると、自分の部屋の天井が見えた。
荻「………………」


(アレ?夢だったべか、さっきの………。)

ふと見ると、隣の部屋から笹原が顔を出した。
笹「荻上さん、大丈夫?ずいぶんうなされてたけど」
荻「ひへっ!?え、う〜〜〜、その…」

実はうなされてたのではなく、「高坂さんと斑目さんでホモネタを想像する夢を見て萌えてました」…なのだが、言えない。

笹「どうしたの?具合悪い?」
荻「いえっ、大丈夫です!すぐ起きます!!」

ベッドから出て服を着替えながら、
(…とりあえず、このネタでしばらくいってみるべか…今日の晩からネーム作って…!!)
…と考える荻上さんだった。


                   OWARI


18 :あとがき:2006/05/06(土) 00:19:49 ID:???
とうとう夢オチをつかってしまった…orz
801描写って難しい…自分にはこれが限界でアリマス!
前に他の方が書いた近い内容のSSを読んだ気がするのですが、似通ってたらすいません。


19 :マロン名無しさん:2006/05/06(土) 01:45:21 ID:???
>トライアングル
あはははw
荻上さんの801妄想落ちは結構ありますねwまとめの現視研の日常あたりにちらほら。
しかしまあ・・・。
こんなことをたくさん妄想してる荻上さんはきっと幸せなんだろうなあ・・・。

20 :マロン名無しさん:2006/05/06(土) 03:17:04 ID:???
ハイどーも、こんばんは。
どうやら昨日私が前スレに投下してすぐに、
新スレ立ててくださったみたいですね。
>>1さん、手間かけさしたみたいで申し訳ない。

では「GENSIKEN VS LABUyan」ラスト投下と参ります。

21 :GENSIKEN VS LABUyan (17):2006/05/06(土) 03:18:29 ID:???
――だが、俺も、別に少年まんがの悪役とゆーワケでは無い。お約束になどカマってられっか。
ならば行なう事は、ただ一つ。すなわち『変身中のヒーローへの直接打撃』である。

ゴシカァン。

平たく言うとカズフサがポージング決めてる最中に、手近なパイプ椅子ひっつかんで頭ぶん殴った。
ココが会議室でよかった。手ごろな武器が一杯あって。いやー、イイ音したなぁ、

…………って、いくら相手がギャグマンガキャラだからって、ちょっとやりすぎたか? 
ぶっ倒れたうえ、頭からドックドックすごい勢いで流血してるし……
いやー、ウチ(げんしけん)とかのシリアス漫画だったら絶対死んでるなぁ、コレ。

殺しちまっては寝覚めも悪い。警戒しながらも、とりあえずは倒れたカズフサに近づく。
「……あのー、カズフサさん? 大丈夫ですカナ? カナ?」まあ大丈夫な訳ねぇが……って、ヤベェ!!! 
カズフサの野郎、片手だけで上体を起こしたかと思うと、倒れたままの姿勢でパイプ椅子投げて来やがっ……ガガガッガッ!!
……クソ、被弾した。なんだよあの動き。テニスかなんかのギャグマンガか! 人間の動きじゃねえだろ!!
椅子は左肩をカスめただけだが、その肩がもー、しばらく使いモンにならんな……バカヂカラめ。
椅子の方は椅子の方で、壁に当たってバラバラになっちまった。あー、壊しちゃった。怒られるかなぁ。

22 :GENSIKEN VS LABUyan (18):2006/05/06(土) 03:20:30 ID:???
そして、攻撃が十分効果をあげた事を確認するとカズフサはゆったりと起き上がった。
「クックックックッ……コロスつもりでなげたんダガネ。意外と丈夫アンド素早いじゃないかコゾウ!!」

「いえいえ、それはお互い様ですにょ。あそこから蘇るほどのカズフサさんのタフネス振りには感服するしかございませんナ。
 ……それに、春日部女史の鉄建制裁を毎日のよーに喰らってるワタクシからすれば、貴方の先ほどの攻撃など
 赤子が撫でたほどにも感じませんにょ!!」

強がりでしかないし、実際痛いが……自分で言ったとおりでもある。コイツ、春日部女史よりは多分弱い!!
それに、俺には日頃アキバ巡りで鍛えた足腰がある! 
時には十数kgのリュックを背負い、雑居ビルを上り下りし、日に寄っては数十kmを踏破するのだ!!
加えて、コミフェスでの開幕ダッシュの為に短距離走の訓練は欠かしていない!!
こんなビルダー的なお座敷筋肉で膨れ上がったマッチョデブに、素早さで負けるわけが無かろう!!

「クフゥ……ただのキモオタと思って見くびっていたが、意外とやるじゃないか。
 オレ様の敵手として十分な実力があると認めてやろう、クッチーよ!!」

……ほう。ようやく俺の事を『クッチー』と呼ぶ気になったか。
ならばオレも男として逃げる訳にも行くまい。全力でこいつに立ち向かい……そして打ち倒さねば!!
「キモオタにキモオタといわれるのは心外ですな、カズフサさん。アナタほどにはキモク無いと思っているんですがにょ!!」
そして俺もそう言いつつ、さっき壊れた椅子の部品を掴むと(足のパイプ部分だ)一気に殴りこむ!!

「鏡を良く見るんだな、コゾウ! 貴様ほどにはキモオタ面などしておらんわ!!」
パイプは腕に当たりはしたモノの、カズフサの分厚い筋肉にとめられてほとんどダメージが入った感触が無い。
そして返す拳でカズフサの豪腕がうなり……俺も何とかかんとかパイプを使ってそれをさばき直撃を避ける。

「そのセリフ、ソックリそのままお返しいたしますにょ。貴方の内面のキモさがそのまま表れたようなキモオタ面ではありませんか!!」
奴の攻撃をかわした勢いで、そのまま一旦間合いを外すため一歩下がる。こっちにゃ得物がある分リーチを取った方が得策だからだ。

23 :GENSIKEN VS LABUyan (19):2006/05/06(土) 03:22:03 ID:???
「だまらっしゃい!! キモオタって言う方がキモオタなんじゃい!!」
そうはさせじと、追撃してくるカズフサ。突進する勢いで田丸先生が大好きな鉄山ナントカを決めてくる!
バカが、そんな大技いきなり出して当たるか……って、俺本体はギリギリかわしたもののパイプを弾かれた! 早ぇえ!!
「なら今アナタはキモオタって二回言いましたよね、このキモオタ!!」
言いつつ、鉄山ナントカの後の隙だらけの背中に肘をぶち込む……が、なんて硬い筋肉だ!! こりゃダメージねーぞ!
「ほ〜らキモオタって言ったネ! 最初に言った方がキモオタなんデスぅ〜〜〜!」
そしてうなるカズフサの豪腕。あわててガードは固めたもののガードの上からでも、重い。固い。痛い。
だからこそ、しかし、それで確信する。やっぱコイツの攻撃、春日部女史よりは弱い!!
なら……近距離の乱打戦で決着つけてやるわ!!
「じゃあ、やっぱりアンタがキモオタだ!! 最初に言ったのそっちじゃありませんかにょ!」
そう言いつつガッチリ構えると、こっちの意図を理解したのか、やはりカズフサも打ち合う姿勢に向き直る。
「いい加減黙れキモオタ!!」
殴り。殴られる。
「キモイんじゃキモオタ!!」
かわし、かわされる。
「往生せいやキモオタ!!」
蹴り、蹴られる。
「うっとしぃんじゃキモオタ!!」
パチキを二人同時に発動し、二人同時に頭を抱える。
「キモオタ!!」
もはや、どっちがどうなってんだか俺にはわからない。
「キモオタ!!」
カズフサだってそうだろう。
「キモオタ!!」
既に二人とも顔はボッコボコで、この後の撮影なんて絶対不可能だろう。
「キモオタ!!」
止めて欲しい、でももうドチラかが倒れるまで止まらない。
「キモオタ!!」
コレもカズフサも同じ思いだろう。

―――そして、幸か不幸か、一人の闖入者によってこの乱戦は止まる事となった。

24 :GENSIKEN VS LABUyan (20):2006/05/06(土) 03:24:03 ID:???
カチャリ。

会議室のドアの開く音が聞こえた。
ヤバイ! 誰か入ってきた!! こんな大暴れしてる所見られたら、何の言い訳も出来なさ過ぎる!!
だがドアは俺のちょうど真後ろ。死角になっていて誰が入ってきたんだかサッパリ分からない。
だからって、確認しようと後ろを向いた瞬間、カズフサの超必殺技が俺にヒットし、
リタイア& To Be Continuedになってしまうこと間違いなし!

そうこう俺が混乱してると、突如、侵入者が口を開き、更なる混乱を巻き起こした。

「ダイジョウブだよ オレ トーチャンの トモダチだから」
「ウソだ! トーチャンのトモダチは ジャンボだけだ!!」
「はいらせてください」
「ダメです」

……は? このセリフは確か……でもなんで今このタイミングで聞こえてくる。後ろから?
見れば、オレの眼前のカズフサはポカンと闖入者の方を見ている。なんだ、どうした?

「アメいる?」
「いる」「あ」
「おじゃましまーす」

うん、やっぱアレだ。ついこないだ5巻が出たアレ。(*注5)

そして「はいんな!!」と、いう声とともに―――

「ギャーーーーッ!!」
―――俺の背中にごっつい衝撃がはしってブッ倒れた。ちなみにギャーって言ったのも俺。
マズイ、起きなきゃカズフサの攻撃が来る……と、思ったが、
当のカズフサは放心したかのように俺の後ろを見つめ、そしてポツリとこう言った。

「スーたんだ」

25 :GENSIKEN VS LABUyan (21):2006/05/06(土) 03:31:09 ID:???
は? スー? スーってスージー? ジョセフの嫁さんじゃないほう?
俺もくるりと後ろを向き、確認する。
不機嫌そーな面、ひくいかるいうすいな体つき、そして特徴的なツインテール。
スーだ。うん。確かにスーだ。ウチの。
表情からは分かりにくいがどうやらご機嫌らしく、手にはアレの5巻を持って眺めている。
「はいんな! はいんなー!」
うん、そーゆーことね。スーが朗読してた、と。はいはい理解理解。カタコトさが抜けて日本語上手くなったなぁ。


………………じゃねーよ!! わかんねーよ!! 何でスーがここにいるんだよ!! 今アメリカじゃねーのかよ!!
一方カズフサを見ると、なんかもー、感極まったらしく、今にもスーに飛び掛りそうに

「うわーん、スーたーん!!」あ、飛び掛った。
止めようとも思うが間に合わない。と、言うかもうそんな体力無い。

メゴッ。

しかし、そんなカズフサとスーの間に割って入り、カズフサの顔面に鉄建制裁を食らわしたのは……春日部女史だった。
「あっちゃ〜、バレちゃったかぁ。どうするよ、ササヤン?」
バレるも何も、なに言ってんだかサッパリ分からない。そもそも春日部女史は仕事じゃなかったっけ?

「あー、ホントどうしましょうかねぇ」と、言いつつ笹原先輩までもが室内に入ってくる。
俺だってホントどうしたら良いんだかわかんねーよ。なんだよ、このシチュエーション。

……ふと、横を見ると、春日部女史にブチのされたカズフサが、女性に助け起こされていた。
「Are you all right? humm...Kazufusa?」
「アア、まったく、ヒドイ目にアッタヨ……って! グボァ!! 
 う、う、ウブ毛ザラザラの金雌(ブロンダー)が、セッシャの純潔を犯さんと欲して寄ってくるっ?!
 そ、その、胸のぶよぶよの二つの脂肪の塊を近づけるなぁーーー……バァァァァァッ!!」
カズフサを助けおこしていたのはアンジェラ。
そして失礼な事を口走ったカズフサは再び春日部女史の鉄拳で眠りに付く事になった。
あー、今の喰らったらしばらく起きねーなー。

26 :GENSIKEN VS LABUyan (22):2006/05/06(土) 03:33:08 ID:???
「最初に聞いた時は冗談かとも思いましたが、本当に朽木センパイ以上のサイテー男ですね、このひと」
笹原先輩の後ろから、なにげにひどい事言ってるコイツは……やっぱオギチンか。
おまえ男できてから態度でけーんだよ。

そして。
「……だよなぁ、荻上。コイツがカズフサか。話には聞いてたけど噂以上だわ、こりゃ。クッチー、お疲れさん」
そうお言葉をくださる春日部女史に「はぁ、実際疲れましたにゃ……」と、しか言えない俺。もうボロボロだし。

「ホントたいしたもんダワ。ウチのカズフサとやりあってコレだけ持つだなんて、ゴクロウサン」
そしてコレまた、いつの間にか俺の隣にいた女性が労いの声をかけてくる。結構美人だ。
……えーと、このヒトはウチの面子じゃ無いな……って「ラブやんさんですかにょ?!」
「アラ、わたしのことをご存知カシラ? フウ、アタイの美貌は作品間を超えて伝わってるってコトね!」
うん、天使と言うだけあって、美人は美人だ、喋らなきゃ千倍良い。口を利いたらむしろ女カズフサ。

続けて「ダメでしょスー! 勝手にうろちょろしちゃ!」とかナントカ言いつつ大野会長までもがこの部屋に来る。
なにやらスーと英語でぽそぽそ話してるが、大まかに内容はわかった。
『この部屋から大声&破壊音が聞こえてきたんで、ついつい興味を惹かれて入ってきた』と。
更には『知ってる人がいたからじゃれ付いてきた』とも。
……ああ俺、一応『知ってる人』に分類されてたんだ。それはちょっと嬉しいかもしれない。
そんで、消えたスーを求めてこのパーティメンバー全員でこのフロアを探し回っていた……と、まあそんなとこだろう。
でも日本にスーがいる理由には全然なってねぇ。

「いやもー、なにがどーなってんですかにょ? ワタクシサッパリわからないの事アルネ?」
しっかし、ナンボ考えてたって判らんもんはわからん。とりあえず、説明を求める事にする。

27 :GENSIKEN VS LABUyan (23):2006/05/06(土) 03:35:01 ID:???
……すると、この場の全員が(日本語わからない2名は除く)、
田丸的擬音で言うと『プイス』って感じで俺から目をそらし始めた。
……なんだ? そんな後ろ暗い話なのか?
しばらく『誰が言うんだ?』的な空気がその場に流れていたが、最初に動いたのは春日部女史だった。
しかし、自分で事実を伝えるつもりはないらしく、「ほら、ササヤン、責任者でしょ?」などと言いつつ
笹原先輩を前に押し出し、ぐいぐい俺のほーへ押し付けてくる。

そして押し付けられた笹原先輩は最初明らかにキョドっていたが、観念したのか重々しく口を開いた。
「えーと、その、朽木君。お疲れさま」
「はぁ、実際疲れましたにゃ……」このセリフ本日二回目だけど、いや実際。
しかし仕事を頼まれた上に、大失敗。オマケにこの部屋の惨状と来たら……まあ、謝るしかないか。
「ところで、笹原先輩。実に申し訳ないことでアリマスが、
 椅子は壊れるわ、壁は歪むは床は凹むわ、などなど、ご覧のアリサマでアリマして……」
「あー、良いんだよ朽木君。このくらいの被害ならむしろ想定内だからさ」

……へ? なんだそりゃ?
「あの、その、それはどういう……?」
「うん……実はね、大森さんがワガママ言って暴れだすのは考えられた事だったから……
 ……まあ、なんて言うか『暴れてもいい部屋』なんだよね、ココってさ」
だからなんでそーゆー部屋を選ぶか。まだ話が見えん。

「ところで話は変わるけど、朽木君『大合作』って知ってる? 実は今日の仕事ってそれだったんだけど」
知ってる。アフタヌーンがたまーにやる企画で(可能な限りの)全掲載作品のクロスオーバーを行なう無茶な企画だ。
最近のは表紙だけとか、PC用の壁紙だけとか、漫画一本作ってた昔に比べりゃしょっぱい仕事なんだが。
「はあ、存じております。まさか、ソレ用のフィルムを作るためにカズフサ氏とワタクシは隠し撮りされていた……と?」

「……あ、いやゴメン違うんだ。実は今回、朽木君の出番ってないんだよ」
「ハァァァ?! なんだとフザケンな!」
……イカン、今日は暴力ワールドに長く浸かり過ぎたせいか素が出た。いや、でも、マジふざけんな。

28 :GENSIKEN VS LABUyan (24):2006/05/06(土) 03:36:59 ID:???
「お、落ち着いて落ち着いて朽木君! 実は俺の出番も無いし大森さんの出番も今回はないんだよ!」
おかしな話だな。一時期空気キャラになってたとは言え、仮にも笹原先輩はアフタの看板『げんしけん』の主人公だろう。
一方カズフサもそこそこ以上に人気のある『ラブやん』の主人公だ、コイツがはずされるってのも、まあ、無い話だ。

「ソリャまた面妖な話でアリマスな。いったいどうしてまたそんな変な事に?」
「うーんとね、今、アフタヌーンがって言うか、講談社全体が萌え傾向なんだよね」
「そーですにゃ、おかげで見るもの読むものにも困らないんでありがたいことですがにょ」
一般読者はどう思ってるかしらんが、少なくとも俺の本音だ。萌え漫画やアニメが増えるのは素直に嬉しい。

「でね? 今年はアフタヌーンコミックスの販促ポスターに、大合作を使おうって話になってるんだ。
 ……ただし、萌え化のアオリで出演するのは女性キャラ限定って話で……ね」
ありそーな話だ。しっかし、ちょっとそこまで露骨に萌え路線だと、流石の俺でもちょっと引くなぁ。

「と、ゆー事は我等げんしけんの女性陣も出演されるということなのですカナ? カナ?」
「スケジュールの都合も各連載の皆さん方で色々違いがあるから一度に撮影できないんだけど、
 とりあえず、今日の撮りの予定はウチ……げんしけんと、ラブやんさん、ガンスミスキャッツさん、
 しおんの王さんって、ところかな?」

な、なんですとぉーー?! ヤッベ、紫苑たん大ファンだよ俺!
「し、し、しおんの王の女性キャラって事は紫苑たんがコチラにいらっしゃってると言う訳でアリマすかーーッ?!」

「ガンスミですと?! メイたん! 永遠のロリータにして、セッシャの右手の恋人メイたんドコー?!」
…………そして、自分に都合のいい情報を聞くと一発で蘇生するカズフサ。流石だ。

29 :GENSIKEN VS LABUyan (25):2006/05/06(土) 03:39:45 ID:???
「……あ、いや、今日の分の撮影は全部終って皆さんもう帰られま   」
「バカな!? 帰ったですと?! どーしてそーゆー大事なイベントデーがあることを
 事前にワタクシに教えていただけないのでアリマスかにょー!!」
あまりの出来事に笹原センパイが全て喋り終わる前に、怒鳴りつけてしまう。

「ソウダヨ! せっかくミニー・メイたんを眺めたり触ったり舐めたりするチャンスだというノニ!」
そして俺に続けて叫ぶカズフサ。
しかし、ソレを聞いたとたん、笹原先輩は再び黙り込んでしまう。

―――再び沈黙が訪れたが、その沈黙を破ったのは意外にもオギチンだった。
「……だって、教えたら来るじゃないですか。朽木センパイも。そこの大森さんも」


――――――あ、わかった。わかってしまった。
俺と同じ立場の筈のカズフサを見ると、キョトンとした顔をして指をくわえている。ダメだバカだコイツ。
ひっじょーに嫌な話だが、仮説が正しい事を確かめる為、俺もついには口を開く。

「つまり。我々は。ワタクシとカズフサさんは……本日のイベントを円滑に進めるため
 問題児同士で『隔離』されていたと言う訳でアリマスな?!!」

この場の誰もが否定しない。つまりそーゆー事だということだ。
「な、なんだってぇ〜〜?!」そして一人驚くカズフサ。いい加減テンポずれてんの戻してくれ。

黙っているのが我慢ならない。俺は思い浮かんだ仮説を次々喋り散らかしていく。 
「なるほどなるほど。ワタクシやカズフサさんのよーな人間はハブられてる空気に敏感でアリマスからナ……
 こういうイベントがあることを黙っていると、むしろ敏感に察知されてしまう……
 よって、イベント情報を嗅ぎ付けられてしまうくらいなら、いっそニセ情報を流して、
 一箇所にまとめて管理してしまった方が楽……と、まあこんな所ですカナ? カナ?」

またも沈黙。つまりは肯定だ。

30 :GENSIKEN VS LABUyan (26):2006/05/06(土) 03:41:51 ID:???
そして今回沈黙を破ったのは春日部女史だった。

「いやほらクッチー、元気だしなよ。私も撮影は断ったから出番ないし。おんなじおんなじ、ネ☆」
最高にカワイ子ぶったレア表情で言われても、全然フォローになってないです、春日部センパイ。
って言うかアンタ、オタまんが雑誌の広告になんかなりたくないだけだろ?! 興味半分で見に来ただけか!

更にフォローのつもりかラブやんさんが口を開く。
「ちなみに、ガンスミとかげんしけんアメリカチームをココまで連れてきたのはこのアタシ!
 ラブ穴通って一発デシテヨ? ドオカシラ、アタシのあまりの有能っぷりに濡れちゃったんじゃなくって?!」
濡れねーよ。ついでに言うと勃たねーよ。

「そのね、朽木君? 隔離って言うか、似たもの同士仲良くしてもらおうと思っただけで……」
そして今更の様にそんな事を言い出す笹原先輩。フォロー遅いなー。コレで編集とか言って大丈夫か?
あと失礼な事抜かすな、誰が誰と似たもの同士だ。

「かみもキンイロになって! アメリカじんになっちゃうの?!」
更には春日部女史に取りすがりつつアレのセリフを棒読みするスーに至っては、もー何がなんだか。

騙されていた事に当然怒りの感情はあるのだが、しかしソレをどうしたら良いのかわからない。
そんな俺の肩にポン、と、手が置かれた。その手は大きく、そして暖かい。カズフサの手だ。
見れば、カズフサの顔には『田丸チックな満面の笑み』が浮かべられている。

オレは今どんな顔をしてるんだろう?
わからない。わからないが……カズフサのおかげで救われた気がする。

31 :GENSIKEN VS LABUyan (26):2006/05/06(土) 03:44:57 ID:???
そしてカズフサと目と目が通じ合った。言葉など要らなかった。
拳を交えた漢同士のみに通じる、真の魂の交流がそこにあった。
カズフサは拳を握り締め、親指を立てると、その親指で喉を掻っ切る仕草をし、
そしてその親指を責任をなすりあって、わいわい騒ぎ続ける女性陣(+野郎一名)に向けた。

―――殺っちゃおうぜ、クッチー。こいつら二人で殺っちゃおうぜ。
―――ええ、カズフサさん。キルゼムオール or 鏖 or ジェーノサーイドでアリマスな。

俺が叫び。

「あっはははははは、皆さん! よくもワタクシをココまでコケにしてくれましたねぇ……絶対に許さんぞ虫けら共ーーーッ!」
 
カズフサも叫ぶ。

「コムスメども! 貴様らには二つの選ぶべき道があるっ!!
 レイプしてSATSUGAIか、SATSUGAIしてレイプか好きな方を選べぇい!!」(*注6)

そしてオレ達二人は、勝ち目のない戦いへと突っ込んだ。もはや体力などない。しかしやるだけやるのみだ。
特攻の瞬間、限りない喪失感とともに、俺の心は無となり、空となった。そして俺は全てを失うとともに全てを得た。
もはや、俺の心を縛る者は何も無い。俺は限りなく自由であり、そして―――大暴れを開始した。

    
                                                     <劇終>

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(*注5)アレ:アレと言ったらアレ。横隔膜と言いつつ、みぞおちドツく漫画と作者が同じアレ。
(*注6)SATSUGAI:「SATUGAI」ではない。クラウザーさんには『さん』を付けろ。ジャギ様には「様」付けろ。

この作品はフィクションです。実際の人物・団体とは一切関係ありません。
特に講談社が大合作ポスター作ってるなんてのは妄想以外の何者でも無いので
講談社に問い合わせたりしないよーにしてください。

32 :GENSIKEN VS LABUyan 後書き:2006/05/06(土) 03:54:28 ID:???
ってなわけで、終了です。
こんなアホ話に長々とお付き合いいただきありがとうございました……
……って言うかちょっとは削る努力をしようぜ俺。特にラストの総ネタバレ部。

コンセプトは「大合作を自分で書いてみよう」だったんですが、
プロット段階ですらとんでもなく長くなったんで、カズフサVSクッチーに焦点を絞りました。
完全決着を望んでいた皆さんには申し訳ないですが、
ラストは「クロスオーバーVSモノ」のお約束で引き分けドローです。
カズフサに染められちゃったクッチーの負けと言う気もしないではないですが。そこは流せ。

なお、需要があるなら、後日談「GENSIKEN VS LABUyan "Girl's Side"」を書くかもしれませんが
予定は未定で。ではおやすみなさい。

33 :マロン名無しさん:2006/05/06(土) 04:32:24 ID:???
ぎゃはははははwwww
笑わせていただきました!
特に最後のオチ・・・。クッチーカワイソスw
カズフサは・・・。まあ、歩く犯罪だし。
Girls Side、期待してますw

34 :マロン名無しさん:2006/05/06(土) 04:36:40 ID:???
おお、最後のクッチーとカズフサの友情(?)が良かったです。意気投合して大暴れ!
クッチー…カズフサには敵わないwでもある意味美味し(ry ていうか安心w
Girl's Sideも楽しみですよ。


35 :マロン名無しさん:2006/05/06(土) 04:41:32 ID:???
馬鹿だw最高の馬鹿作品だこれwwwwwwwwwwwwww

最後の最後にDMCネタされたら噴出すしかないよ、書いた人GJ!

36 :マロン名無しさん:2006/05/06(土) 04:44:01 ID:???
なんでこんな時間に起きてる住人が多いんだ?w
いや俺もだけどさw

殴り合いシーンでちょこっと燃えた俺は間違ってないと思いたい。
あと最後の最後で1秒間に11回レイプ噴いたw

37 :マロン名無しさん:2006/05/06(土) 10:53:49 ID:???
ガチでシングルで戦った後は友情タッグ結成、これぞプロレスの最強タッグ結成の基本!
あの2人相手だと咲ちゃんでも大変だ。
(あとのメンバーはあんまし戦力にならんし)

お疲れ様です。

38 :マロン名無しさん:2006/05/06(土) 17:33:58 ID:???
>トライアングル
荻上さん、夢オチは漫画の神様が禁じた最大のタブーだ。
今回はオチたからいいけど、上手くオチなかった時には原監督がやって来るぞ。
気をつけろ!

39 :マロン名無しさん:2006/05/07(日) 00:53:13 ID:???
>>19>>38
感想ありがとうです。タブーですね…斑目がどーにか救われないかな、と考えていたらいつのまにか、
もういっそ3人で!とか変な方向に考えてしまい、現実的じゃないので荻上さんの妄想オチにしてしまいました。
救われてないのでやっぱ駄目ですね。漫画の神様(手塚治虫)と原監督には気をつけますw

40 :マダラメ三世3(感謝):2006/05/07(日) 07:43:25 ID:???
GWの間に新スレですか!

前スレの>>445 >>446 >>447 >>448 >>497さん方
ご感想ありがとうございます!
ルパンと斑目の体型は似てますね。斑目スキーな人にも喜んでもらえて嬉しいデス。“情けないルパン”だけど、アンジェラというメガネフェチの同行者が現れて、マダラメ三世的にはハッピーエンドなのかもしれません。

今回話を作るにあたって「カリ城」は1回通しで見返しましたが、やっぱあの映画面白い。
で、重要なセリフはネットで検索しながら参考にしました。

>次は『くたばれノストラダムス』でw
いえいえ、さすがに1発ネタなんで「ノストラ〜」では書けません(w
でも、もし書くなら「ルパン対複製人間(マモー)」はいかが? いや書けませんけど。

そしてマモー役は、様々な時と場所に現れ、正体不明の「あ の 人」で……。

41 :マロン名無しさん:2006/05/07(日) 11:25:13 ID:???
マモー=初代か。
すると椎応大の地下には巨大な初代の脳○が……((((((( ;゚Д゚)))))))

42 :感想多謝。GENSIKEN VS LABUyan:2006/05/07(日) 14:40:27 ID:???
前スレ 493-494 >読みながら笑ってましたw続きが気になるので次スレを立ててきます!
どうも、わざわざスレまで立てさせちゃったみたいで申し訳ない。

前スレ 495 >クッチーもSSスレ補正かけて餓狼伝化して迎え撃て!
「キモオタ!」「キモオタ!」の部分は確かに餓狼伝(小説の方)を意識したかも知れません。
>デパートか電気屋の人かな?
ヒ・ミ・ツ☆

前スレ 496  >昔あった「マダやん」と同じ人が書いてるのかな?
いや、別人です。つーか、いわゆる「SS」というジャンル書いたのコレが初めてです。
2chの文字ネタ文章ネタ系のスレとか板には昔から生息してるクチですが。

前スレ 509 >なかなかラブやんも細かく読まれてますね!なるほど…
いやー、コレが、ラブやんは単行本持ってなかったり。
ただカズフサの「オタとしての薄さ」は前々から気になってたんで少しそこを掘り下げました。

>>33-36
深夜四時台にコレだけレスがつく件について。
いやまー、あんな時間に投稿する俺もなかなかの夜更かしさんな訳ですが。

……そして、Girl's Sideを楽しみにしてくださってるお二人には申し訳なく、
DMCで噴出すお二人にはある意味朗報とゆーかなんとゆーか。

今、俺の両手が勝手に動いて「アキハバラ・メタル・シティ」と言う名のプロットが書きあがりました。
……どうしましょう、コレ? ちょっとしんみりした萌え話を書くつもりが、またしょーもないギャグですよ奥さん。

>>37
俺の脳内では「ラブやん女性キャラ」もラブやん以外に来てる設定だったので無問題。
アンコとか『委員長』の、みのりチャンとか。
出すと収拾が付かないと思ったので、出しませんでしたが、田丸キャラに愛があるなら脳内で補完してあげてください。

43 :マロン名無しさん:2006/05/07(日) 21:13:31 ID:???
>「アキハバラ・メタル・シティ」ちょっとしんみりした萌え話を書くつもりが、またしょーもないギャグですよ奥さん。
え〜…ちょっと見たい…ような?ていうか是非読みたいっす。

44 :マロン名無しさん:2006/05/07(日) 22:52:49 ID:???
A・M・C! A・M・C!
とかいって煽ってみる。

「今だから言える 1999年7の月 オタクを滅ぼそうか迷った」

45 :マロン名無しさん:2006/05/08(月) 03:02:11 ID:???
オギウエーさんが0.5ワープ差で勝った!!

46 :マロン名無しさん:2006/05/08(月) 13:09:17 ID:???
荻上さん→濡れ場を誤魔化してんじゃないよ!と罵られる
オギウエーさん→斑目に笹原の子を出産させた都市伝説を作る

47 :マロン名無しさん:2006/05/09(火) 01:19:44 ID:???
1秒間に11回ワープなんてしたら・・・・オギウエーさんがぶっ壊れるんじゃ・・・

48 :マロン名無しさん:2006/05/09(火) 01:50:55 ID:???
>>47
地獄から来たオギウエさんをバカにすんなー!

49 :マロン名無しさん:2006/05/09(火) 02:23:46 ID:Gcw5n65y
うわー、DMC祭りだw
こんな雰囲気の中、こんなの投下して良いのかな…。
>>42さん、是非A・M・Cを公表してください!

それでは現聴研続編書いたので、3レスです。
荻上さんは出ますけど、オギウエーさんは出ません。残念ながら。

50 :現聴研第8話(1/3):2006/05/09(火) 02:25:07 ID:???
夏!照りつける太陽が傾きつつも、なかなか日は沈まない夏の夕方。
ここは夏祭りの音楽フェスティバル会場、中央公園。
特設ステージと、その前の椅子が並んだ野外会場が向こうに見えて
今出ているバンドの演奏が聴こえてくる。
綿菓子や焼きソバ、アメリカンドッグやかき氷などの出店が並んでいる
そこそこの人ごみの中を、斑目を先頭にして、笹原、荻上、大野達、
現聴研のメンバーがぞろぞろ歩いている。
斑目「今聴こえてるの、MOON CILDRENだぜ。渋いな!」
笹原「あー、言われてみれば…。」
斑目「今やってる名曲『日暮と少女』と『微熱帯』のメドレーがわからんのか!
    まさか『雪のハレルヤ』やドラマ主題歌の『逃避』も知らないのか!?」
笹原「やー、ちょっと今まで範囲外でしたねぇ。」
斑目「ええい!現会長がこの程度の知識とは嘆かわしい!今度特訓だ、特訓!」
後ろから荻上は話についていけなくて傍観を決め込んでいるし、
大野と一緒に歩いている田中は苦笑して聞き流している。
田中「斑目、テンション高けーなぁ。緊張してんのかな。」
大野「あっ、終わったらアレ食べましょうね!」
そう言ってチョコバナナをチェックする大野には緊張が見られない。
しかし本番前の時間を全員がそわそわと手持ち無沙汰な様子ですごしている。
クッチーは既にステージ最前列で撮影&録音しまくりだ。
田中のカメラバッグも預けてある。高坂は咲に連れ出されて別行動。
ステージ上は、いつの間にか次のバンド、スピッシのコピーバンドになっている。
ボーカルが女の子なので印象がかなり変わっているが、なかなか上手い。
「♪だからもっと遠くまで君を 奪って逃げた〜」
手拍子や拍手、声援など会場もかなり盛り上がっている様子が伝わってくる。

51 :現聴研第8話(2/3):2006/05/09(火) 02:25:40 ID:???
荻上「有名バンドが原曲だと盛り上がってますね…。」
笹原「良い曲だし、俺も聴くしねぇ。それにしてもこの曲、うねってるベースが
    特徴だけど、打ち込みでやってるね。」
荻上「これ弾くの面白いけど大変でしょうね、ベース。」
次の曲になって、歌い出しからして観客から歓声が上がる。
「♪遠く 遠く あの光まで――――」
斑目「次の曲は、新曲だな。笹原こないだこれカラオケで自爆してたよな。」
笹原「やー、なんかスピッシ、年々声が高くなってますよ(苦笑)。」

そんな会話をしながら、会場裏へと移動してきた。高坂と春日部も遅れてやってきた。
出演準備の最終チェックを始める。
荻上や高坂はそれぞれエレキギターとベースのチューニングをしている。
久我山は係の人にドラムセットの確認を受けている。
係員「出ているドラムセットの中で、スネアと、バスドラペダルだけ自前で使用ですね?」
久我山「え、は、はい、それで。」
まずは田中の用意したステージ衣装に着替えるが、荻上が抵抗を見せる。
荻上「これ、私には似合いませんから!普段着で良いです!」
大野「まあまあ、可愛いですよー。お祭りなんですし、全員特別の衣装なのに
    一人だけ普段着の方が目立っちゃいますよ!」
田中「歌う曲に合わせて作ってきたんだからさ、頼むよ。
    これってあのPVの服装を元にして……。」
などと説得を受け、やや強引に更衣室へ引っ張り込まれて行った。

52 :現聴研第8話(3/3):2006/05/09(火) 02:26:31 ID:???
係員「椎応大現聴研の皆さん、ステージ入りして準備してください〜!」
着替えに手間取っているのか退室に荻上が抵抗しているのか、女性陣が
出てこないうちに呼び出しが掛かった。
もう、前のバンドが捌けて、機材入れ替えに取り掛かる。
恥ずかしがっている場合ではない。荻上たちも飛び出してきて楽器を手に、
ステージ袖の階段からステージ内に飛び出していく。
全員初めての事なので、ボランティアの係員さんにかなり誘導されながら準備をした。
といっても弦楽器がチューナーごと楽器を持ち込んで、アンプに繋ぐだけで、
ドラムのセッティングと、笹原の音源のセッティングがやや面倒なぐらいである。
そんな準備の様子まで丸見えで見られているのが、地域イベントらしい感じだろう。
今は少し薄暗くなってきて照明は落とされているので、まだ目立つ感じは無い。
あわただしく準備完了して、舞台脇の司会のお姉さんの紹介が掛かる。
司会「次は、マイナー曲を広める使命を帯びたバンドだそうです。
    それでは『げんちょうけん』の皆さん、どうぞー!!」
照明が灯り、白い光に照らされる。夏祭りらしい雰囲気の中、さあ、ライブ本番だ!

53 :マロン名無しさん:2006/05/09(火) 02:27:43 ID:???
実は本番で演奏させる曲がまだ決まってなくて、寸前までしかまだ書けませんorz
とりあえず、以上です。

54 :マロン名無しさん:2006/05/09(火) 06:01:09 ID:???
>現聴研第8話
乙でっす!次が本番ですね!イベントの熱気が伝わってくるようで、ワクワクします。
荻上さんの歌声、どんなんだろう。ハスキーな感じなのかな?

55 :マロン名無しさん:2006/05/09(火) 15:06:35 ID:???
>現聴研第8話
夏と祭りのワクワクした気分が楽しい。俺もクッチーの隣で見たい聞きたい弾みたい。
「演奏本番に大期待」なんて書いたらプレッシャーかな?

それにしても野外の地方ステージの雰囲気がいいですね!
九州の某高原で、クライズラー&カンパニーの野外ライブに行った時のことを思い出したりして(古ッ!)

あとMOON CHILDネタありがとうございます。
斑目に語ってもらえるなんて幸せ〜。


>GENSIKEN VS LABUyan
遅くなりましたがオモシレー!
燃える対決、そして、「夢の対談=実は隔離」のからくりに笑いました。
俺もシオンたんを眺めたり触ったり舐めたり……。

56 :マロン名無しさん:2006/05/10(水) 01:19:16 ID:???
>現聴研
え〜、「バクチク」とか進めてみたり。
すいません!ビジュアル系でスイマセン!
でも「唄」は名曲です・・・。
次回楽しみです!

57 :マロン名無しさん:2006/05/10(水) 01:31:14 ID:???
いつもの夏休みの宿題を提出しに来ました。
感想レスは前スレに。

またまた25レスほどで投下します。

今回も読んでくださる方々に深く感謝の意を表すと共(長いので省略されました。

58 :現聴研:2006/05/10(水) 01:31:22 ID:???
感想ありがとうゴザイマス。

>>54
歌声はきっと、地の部分が少しハスキーっぽいざらつきがあって低音がしっかり出て、
高音もうって変わった感じに伸びるような歌声と予想!
基本的にちょっと低い声だけど歌うと音域広いよ。みたいな。

>>55
このシリーズは下書き無しに気楽に書いてますので、あんまりプレッシャー
ありません。頑張ります。
MOON CHILD聴いたことないのでこんな扱いになってしまいました。

>>56
バクチク…これこそまさに、有名な割に曲が知られてないという、
現聴研にうってつけな題材っぽいんですけど、僕が聴いてなくて書けませんorz

こんな感じで狭い知識で書いてます。ライブ編終わったら皆さんで
他バージョン書いて頂けるとありがたいです。
では次回頑張って取り掛かります。

59 :マロン名無しさん:2006/05/10(水) 01:32:20 ID:???
あ、焦った(汗)。
夏休みの宿題楽しみです!!wktk

60 :801小隊14話『テンプルナイツ』1:2006/05/10(水) 01:33:07 ID:???
ゴウン・・・。ゴウン・・・。
宇宙ドッグ『ビッグサイト』の艦船港にて盛大な起動音が鳴り響く。
今まさに、一機の艦船が星の海への航海に乗り出そうとしていた。
「旧式とはいえ、こんなたいそうな代物よく使わせてもらえるよな。」
艦長席の前、言ってみれば副官席のような場所にマダラメは座っていた。
彼の呟きはもっともであった。
宇宙専用とはいえ、MSを6機まで収容可能という連盟でもかなり貴重な艦船だ。
通常、小隊に支給される艦船で3機なのだから、規模の違いを伺えるだろう。
「でもさー、それだけ期待が掛かってるって事じゃん?」
何も考えていないような声を出し、ケーコがそう返す。
彼女は通信席に座り、操作をおさらいしているようである。
「でもな、妹さんよ、我々の任務は上層部からは感知されていないも同然なんだぞ。」
「妹さんって・・・。まあいいけど。でも、私たちはこれに乗ってるじゃん。」
「・・・もっともだわ。あまり考えんようにしとくか。」
そういってふんぞり返るマダラメ。右手は、動く。宇宙について早一週間が経過していた。
その間、MSのテスト、新しいメンバーとのあわせなど、色々と忙しかった。
幻痛にも悩まされていたが、今ではずいぶんと収まった。
「・・・あのオーノさんの昔馴染み、いい腕してるわ・・・。」
テストで模擬戦を行った時に、その腕に感心させられた。
(特にあのアンジェラって方・・・。あの動き、かなりの死線を潜って来たに違いない。
 スーって方は・・・。なんか不思議な動きしとったなあ・・・。あの武器、役に立つんかね?)
しかしながら、強力な仲間を得たことに間違いはない。
連盟の主力部隊は行程の半分を終える頃だ。
途中何度かの小規模の戦闘があったようだが、そこはあの第100特別部隊がいるわけだ。
あっさりとはいかずとも、潜り抜けているようだ。
「・・・さーて、そろそろかね?」
「そろそろだね。」
「うわっ!」
気付くと後ろの艦長席に大隊長の姿があった。ケーコもそちらのほうを見ながら目を丸くして驚いていた。
「い、いつの間に・・・。」
「今だよ。・・・皆準備できたみたい。出港だね。」
「・・・分かりました。ふう、宇宙・・・か。」

61 :801小隊14話『テンプルナイツ』2:2006/05/10(水) 01:33:55 ID:???
宇宙の海は、何も見えず、何も感じさせない。
そこには、何の感情もなく・・・。善意も悪意さえも感じさせない「無常」が漂っている。
思えば人は、なぜ宇宙に飛び立とうとしたのだろうか。
巣から飛び立つ雛鳥のように・・・。いつかは飛び立たなければならない運命だったのだろうか。
しかし、その飛び立ちが宇宙に住む人々と、地球に住む人々に溝を作り・・・。
いや、人とは溝を作らなければ生きていけないのかもしれない。
実際問題、宇宙に飛び立つ前にも、地球上で戦争はいくらでもあった。
それが・・・。更なる大規模な溝になったに過ぎない。人は、歴史から何も学んでいない。
そんなことをぼんやり考えるにいたり、
宇宙に初めて出た頃のワクワク感はもはやないことをタナカは実感していた。
「・・・クガヤマ・・・。間に合わなかったか・・・。」
この一週間でシャトルの一機でも飛んでくるだろうと思っていたのだが、来なかった。
通信はスパイ傍受される可能性があるため、強力な電波で行うことが出来ない。
そのため、地上・宇宙間の連絡は手紙などに頼らざるを得ない。
「・・・大丈夫・・・だろ。」
心配していても仕方がない。しかし、長い付き合いの三人である。
マダラメも、心配しているんだろうな、と一人整備場で考えつつ。
「タナカさん、一休みされたらどうです?」
「オーノさん・・・。すまんね。」
気付くと隣に立っていたオーノが作業をしている田中に向かって、コーヒーを差し出す。
もちろん、働いている重力は大きくないため、カップではなくチューブである。
「最近、根詰めすぎじゃありませんか?」
「んー?そうでもないよ。いつものことだって。」
そういって受け取ったコーヒーをすすりながら、答えるタナカ。
オーノは、心配そうな表情をしながらその姿を見る。
「ただ、新型機が多くて、やらなければならないことも多くてね。」
「それならいいんですが・・・。」
そういって、タナカの横に座るオーノ。
「・・・なに、もうすぐ終わるさ。それまで、頑張ればいいんだから。」
「・・・そうですね。あともう少し・・・。ですね。」
「戦争ももうすぐ終わる。そうしたら・・・軍を辞めようかと思ってるんだよね。」

62 :801小隊14話『テンプルナイツ』3:2006/05/10(水) 01:34:31 ID:???
「えっ・・・!」
「まあ、ずいぶん前から考えてたことではあったんだけど・・・。
 戦争が終われば、軍は縮小するだろう。そうなると、自分の好きな仕事が出来るとも限らないしね。」
そういって、タナカは少し寂しそうな顔をして宇宙を眺める。
「そうなんですか・・・。」
「・・・だからさ。一緒に来ない?」
「え・・・?」
驚きを隠せない顔をするオーノの方に顔を向けて、タナカは笑う。
「知り合いの工場が、もう使わなくなるらしくてね。そこで、整備工場でも開こうかなって・・・。」
「わ、私も行っていいんですか?」
「うん・・・。人手は多いほうがいいし・・・。その・・・。」
少し恥ずかしそうに顔を背け、少し黙る。
「・・・俺が来て欲しいってだけだから・・・。」
「タナカさん!」
そう声を上げると、オーノはタナカに抱きつく。
「絶対生きて帰りましょう!私たちだけじゃなく、皆!」
「う・・・、うん。」
オーノの大きな胸に顔をうずめながら、顔を赤らめるタナカ。
宇宙に戻ってきて良かったと思った。これで自分に決着がつけれそうだから。
「はーい、カナコ、ここー?」
そこにやってきたのはアンジェラだった。中の状況を見て、笑う。
「アラ・・・。ごめんなさいね。お楽しみ中だったかしら。」
「・・・いや、そうでもないよ、はは・・・。」
「もう、アンジェラ、何の用?」
手をタナカから離すと、アンジェラのほうに向き直る。
「ん、まあ、話し相手もいないからさ。」
「・・・ああ、そうか、まあそうだよな。」
そういって、椅子に座るよう合図を送るタナカ。
「どう?この小隊は?」
オーノの問いに、アンジェラは楽しそうに話し出した。
「いいね。特にあの隊長さん・・。いい動きしてるよ。」

63 :801小隊14話『テンプルナイツ』4:2006/05/10(水) 01:35:50 ID:???
アンジェラは心底楽しそうな笑顔を浮かべる。
「あの接近戦での腕前は並じゃないよ。
 コーサカやササハラも悪くないけど、腕前じゃダントツだね。」
「そう?てっきりコーサカさんの方がいいんだと思ってた。」
「彼は・・・なんていうか遊びに走りがち。満点は出せるけど平均以下の時もある。
 特に宇宙はトリッキーな動きが出来るから、色々試しちゃうんでしょうね。」
「まあ、それがコーサカの強みでもあるし、あのMSの特徴でもあるんだけどな。」
「サシ勝負なら一番強いのは隊長さんだね。うーん、しびれる〜。」
そういいながら興奮した様子で体に腕を巻きつけて体を震わせる。
「ササハラさんはどう?」
「分かりやすいというか、教科書どおり。常にアベレージは出せるけど満点は出せない。
 まあ、あのシステムっての?のせいで先読みされちゃうんだけど・・・。」
「それもまたササハラのいいところだ。あいつは自分をわきまえているからな。」
「そうね、だから、隊としてはすごく良いんじゃない?
 今まで参加した事のある隊の中じゃ三本の指に入るわ。」
「アンも、スーも、溶け込めてる?」
「それは問題じゃないよ。私たちはあくまで傭兵。
 あんたたちのうまいように使ってくれればいいのさ。捨て駒としてでもね。」
その捨て駒、という響きに、顔をしかめるオーノ。
「そんなことしないわよ!」
「でもね、はっきりいえば私たちは部外者だよ。一番切り易いのは私たちでしょ。」
その言葉にタナカは苦笑いする。
「んー・・・。まあ、普通の部隊ならそうだわな。」
「?ここはそうじゃないっていうの?」
アンジェラは不思議そうな顔をする。
「ま・・・実際出撃してみれば分かるさ。」
「ふー・・・ん。ま、別にされても恨みはしないけどね。」
「アン・・・。」
不満そうなオーノの顔を見て、アンジェラは少し笑って言う。
「カナコ、私たちにとってはそれが普通だってこと。
 別にね、それでいいって訳じゃないけど、それが仕事なんだよ。」

64 :801小隊14話『テンプルナイツ』5:2006/05/10(水) 01:42:51 ID:???
ブーブーブーブー・・・・。
警報が鳴る。その音に、一斉に立ち上がる三人。
『敵の強襲だ。すぐにパイロットはMSへ。急げ!』
マダラメの声である。緊迫した空気が流れ出す。
「ラッキーだね。ここならすぐに乗り込める。」
「アン・・・。頑張って。誰も死んで欲しいなんて思ってないんだから。」
「カナコ・・・。OKOK。大丈夫だよ。」
そういって笑顔を作ると、すぐさま自分のMSへと向かう。
「・・・大丈夫さ。マダラメたちもいるんだ。」
「そうです・・・けど。少し、変わったかな・・。アン・・・。」
タナカとオーノはその後姿を見つめるしかなかった。
そこに、走ってきたコーサカと、ササハラ。
「タナカさん、問題ないっすよね!」
「行って来ます。」
口々にそういうと、二人ともそのまま止まらず自分の機体へ。
「おう!頑張れよ〜!」
「・・・ふう、厄介なこった。おう、これから出る。」
現れたマダラメは、なにか不安そうな表情だ。
「・・・どうかしたのか?」
「ん、まあ、こんなところに現れる奴らなんてどんな奴らだよ、と思ってな。
 普通、連盟の領地に堂々と侵入してこんだろ。」
「自信の表れってことか?」
「・・・一筋縄じゃいきそうにないのは確かだわな。ま、勘だが。」
そういうと、ゲルググへと向かうマダラメ。
「・・・頑張ってください!」
そのオーノの声に、背中を見せたまま手を上げて振るマダラメ。
「あいつ・・・。珍しく緊張してるな。宇宙・・・だからか。」
「・・・かもしれませんね・・・。ってスーは?」
緊急警報に気付いていないのかと思い、あたりを見渡す。
「・・・もう、座ってるよ。」
スーのMSの方を見やると、その姿はすでにあった。
「・・・いつの間に・・・。不思議な子だね、本当に。」

65 :801小隊14話『テンプルナイツ』6:2006/05/10(水) 01:43:41 ID:???
「・・・見られてるでありますな・・・。」
クチキは敵機の様子を大型ディスプレイで確認しながら舵を取っていた。
睨み合いが始まってすでに30分が経過しようとしていた。
「クチキくん、油断はしないでね。」
クチキに向かって、大隊長が言葉をかける。
「分かってるであります!」
油断するなんて考え付くはずもなかった。
実際、ここまでの行程、クチキはしっかりと舵を取ってきた。
「・・・あの艦船のフォルム・・・。どこかで見た気がしたんだけど・・・。」
ケーコが頭を抑えて、考え込む。
「本当、知ってるの?」
隣に座っていたサキが、ケーコに向かって聞く。ケーコは少し考えたあと手を叩く。
「・・・そうだ!え、でもちょっと待ってよ!そんなこと!」
「な、なんなのよ!」
「・・・あれ、第13独立部隊・・・。テンプルナイツだ・・・。」
その言葉に、びくっとするクチキ、そしてサキ。
「ま、まさか・・・。」
「嘘でありますよね・・・?」
「いや・・・。まえ、仕事で・・・。見たことがあるんだ。」
第13独立部隊、通称テンプルナイツ。連盟の優秀な部隊を数多く壊滅させた悪魔の部隊。
連盟の奇跡、第100特殊部隊と数多くの死闘を繰り広げたとして有名な部隊だ。
「見間違うはずもないよ。あの、蛇の尻尾を二本にしたような形、他にあるわけがない。」
確かにディスプレイには二尾の蛇、といってもいいフォルムをした艦船が映っていた。
「・・・当たりだよ。」
そう呟く大隊長に、皆の顔から血の気が引く。ブリッジに、重い空気が流れる。
「何でそんなやつらがこんなところにいるでありますか!」
「・・・大丈夫、彼らなら。きっと切り抜けてくれる。」
いつもの表情は崩さずに、大隊長は言葉を続ける。
「・・・ミノフスキー粒子散布。彼らの邪魔にならないよう、射程からは離れて。」
「「「了解!」」」

66 :801小隊14話『テンプルナイツ』7:2006/05/10(水) 01:44:53 ID:???
「よし、全員準備は良いか?」
『OKOK。頑張っていきましょ、隊長さん。』
マダラメの通信に答えて、アンジェラが一番に答える。
すでに全員がノーマルスーツを着込み、準備は万端だ。
『大丈夫です。』
『同じく、です。』
『・・・大丈夫・・・。』
その言葉が出揃ったところで、マダラメはいつもの掛け声を上げた。
「よし、第801小隊出撃するぞ!全員、生きて帰るぞ!」
『生きて・・・?』
その言葉に反応するアンジェラ。
『まあ、私たちの部隊の決まり文句なんですよ。』
「隊長命令だ。守ってもらうぞ、全員な。」
ニヤリとディスプレイに映るアンジェラとスーの方を見るマダラメ。
『・・・OK。』
『・・・了解・・・。』
そう呟くアンジェラ。そしてスー。
「よし、行くぞ!」
ゴウン・・・。ゴウン・・・。
タナカがMS格納庫の外から、MSの誘導を行う。
空気が、流れ出す。宇宙への道が開けた証拠だ。
「よし、マダラメ、ゲルググ、出る!」
バシューン!!
景気のいい音と共に発射台がMSを外に押し出す。
次々と出撃するMSたち。宇宙は、彼らを包み込む。
「・・・来るぞ。気をつけろ!すでに、向こうはMSを・・・。
 いや、ありゃなんだ!!?」
マダラメが声を上げたのも仕方がない。
向こうに佇んでいたのは、まるで大きなカニの化け物・・・。
「MAってやつか!!厄介なこったぜ!」
それが二機。青いカラーと、赤いカラー。
そしてその真ん中には、騎士を思わせるフォルムをしたMS・・・ギャンがいた。

67 :801小隊14話『テンプルナイツ』8:2006/05/10(水) 01:47:52 ID:???
「ちぃ、ギャンかよ・・・しかも普通のとまた違うじゃねえか・・・。」
その三機が動く。早い。急速にこちら側に接近してくる。
「くそ!ギャンはコーサカ、任せた!アンジェラ、スー、俺と一緒に青いのをまずやるぞ!
 ササハラ、こっちが済むまで、赤いの牽制しとけ!」
『『『『了解!!』』』』
五機のMSはみな、自分の役目のために移動していく。
まず、スーが牽制のためにバックパックから小さなボールを・・・それでも直径2Mはあるが・・・
射出し、宇宙に浮かせる。それはまるで意思があるかのように敵に向かって突き進む。
十数個あるそのボールは、青いそのMAに向かい、ぶつかっていく。
スーの機体は、ジムをベースとしており、白を基調にピンクで彩られている。
また、体に似合わない大きなバックパックを背負っており、
そこに、多くのビットと呼ばれる小型サイコミュ(脳波制御)兵器が搭載されている。
これはNT専用試験機であり、ジャグラーと呼ばれた機体の発展機なのである。
しかし、そのビットは脳波制御システムを搭載するのが限界であった。
つまりは、ボールを投げつけてるだけのような兵器になってしまったのだ。
盛大にぶつかるボールに、少々戸惑ったのか、青いのの動きが滞る。
そこに、大きなビームが打ち込まれていく。
アンジェラだ。ある程度の距離から、ビームバズーカを撃ち込んでいる。
うまく避けた青いのだが、ボールの衝突がやはり足かせとなっているのか動けない。
アンジェラの機体は、青をベースに黄色のカラーリングをしたジム。
肩部に大きなバズーカ砲二門装備しているのが特徴で、
ジム・バズーカと呼んで過言ではなく、基本この兵装しかない。
なぜなら、ビームサーベル用であるバックパックのエネルギー射出部を、
バズーカ用に転用してしまっているからだ。接近戦では頭部バルカン以外に兵装はないのである。
「よし、いいぞ!」
そういいながら、マダラメはゲルググを駆り、青いMAへと向かう。
両手のビームナギナタを回転させ、接近する。しかし、大きなそのアームで弾かれる。
「うおっと!」

68 :801小隊14話『テンプルナイツ』9:2006/05/10(水) 01:49:10 ID:???
マダラメのゲルググもまた、極端な兵装をしていた。
両手のナギナタ以外に兵装がないのである。
遠距離をあまり良しとしないマダラメ用に、ライフル等の兵装はカットされていた。
その代わり、そのエネルギーをブースタ出力などに転用しているのだが。

69 :801小隊14話『テンプルナイツ』10:2006/05/10(水) 01:54:20 ID:???
一方、コーサカは、ギャンと五分五分の勝負をしていた。
「・・・中々やるな!」
そういいながら右手にしまっていた鎖を射出し、敵に向かって巻きつけるように動かす。
しかし、宇宙では上下の移動がたやすく、あっさり抜け出されてしまう。
「面白いな・・・。」
コーサカの駆るガンダムは、前大破されたガンダム・クラフトをベースに、
そのMk−2ともいえる機体である。宇宙用にチューンアップされている。
黒い機体のそこかしこにギミックが仕掛けられているのである。
ギャンが下方から接近してくる。ガンダムはそれに対し、右膝から白い目潰しを射出する。
ミノフスキー粒子の広がる宇宙空間では、視界が大きなファクターとなっている。
それを潰し、狙いを定め、ビームサーベルを振るうガンダムであったが、かわされてしまう。
かわしたギャンはそのまま突進し、ガンダムと切りを結ぶ。
ビームの弾けあう音が響いたように思える。実際は宇宙で音は伝わらないが。
そして、ばっとお互い距離を開ける。
「・・・中々・・・一筋縄じゃいきそうにない相手ですよ、隊長!」
そういって、高坂は少し笑みを浮かべた。

ササハラはひたすらに逃げるように動いていた。
彼のジム・コマンドは、平均的に能力が高い汎用機である。
この赤いMAを倒そうとするのならば、おそらく無理。
しかし、ただ引きつけておくだけ・・・。というのならば難しくはない。
「・・・相手が意外と単調で良かった・・・。」
相手のパイロットが直情的なのか、単調な攻撃が繰り返されている。
メガ粒子砲を放ったかと思うと、避けたところへアームで攻撃。
それをただひたすらに繰り返しているのであるが。
『・・・油断はしないほうが良いですよ?』
そういった会長の声に、少々気を引き締める。その矢先。
辺り一体を電磁波の渦が襲う。間一髪そこから逃れる。
やはり音は聞こえていないのだが、振動が伝わってくる。
「こいつは・・・。プラズマ!!なんていうもん隠してるんだよ・・。」
『やはり油断大敵でしたね・・・。』
その会長の言葉に苦笑いし、ササハラは再び牽制を開始した。

70 :801小隊14話『テンプルナイツ』11:2006/05/10(水) 01:55:11 ID:???
青いMAは、中々隙を見せてくれなかった。
遠距離からアンジェラとスーが牽制しながら動きを規制し、
そこにマダラメが攻撃を仕掛けるというパターンを徐々に読み始めていた。
実際、スーの攻撃は破壊力に乏しく、MAの装甲をへこますに留まっている。
また、アンジェラの攻撃も当たればダメージは免れないだろうが、そこはしっかり避けてくる。
なんとも冷静に判断を下しているのである。
「敵ながら・・・。感心するぜ・・・。」
仲間の援護も期待できず、囲まれた状況でありながらもしっかりとした判断が出来る。
戦いとは、腕や火力だけでなく、こういう精神が大きな要素なのである。
『・・・隊長さん、私が囮になるわ。うまく狙って。』
アンジェラがそう、マダラメに伝えてきた。
「ちょっとまて!そんなこと・・・!」
言うが早く、アンジェラは青いMAの接近する。
MAも、これが好機とみなしたのか、足並みが乱れた部隊へ攻撃を仕掛ける。
アンジェラのジムを、MAの両のアームが狙う。
それをかわし損ね、アンジェラは敵のアームの虜となる。
『くぅ!いまだよ、隊長さん!』
敵の接近武器はアームのみであり、ここで接近すればおそらく仕留められる。しかし。
「それではお前がやられるだろうが!」
例え、攻撃がうまくいってもMAが機能停止するよりも早くジムのコクピットは粉砕されるだろう。
『いいのさ。さっさとやっちゃってよ。』
「くっ!!」
接近するゲルググ。MAは、アームをはずすことが出来ず、そのまま動く。
しかし、二体分の重量を動かすにはパワーが足りず、接近を許す。
「うおりゃ!」
マダラメのナギナタは、アームを見事に切り落としていた。
そこに、MAがメガ粒子砲が放射しようとする。
『何を!!これじゃ共倒れだよ!』
アンジェラの悲鳴が響く。
しかし、放射される前に、MAの方向が変わる。あさっての方向へ放出されるメガ粒子砲。
スーのビットが、MAに衝撃を与え向きを変えたのだ。
「・・・生きて帰ってもらわにゃ、寝覚めが悪いからな。」

71 :801小隊14話『テンプルナイツ』12:2006/05/10(水) 01:57:01 ID:???
そこで、均衡していた戦いに終焉が来た。
相手の三機が急に戦闘宙域を離脱し、艦船へと帰っていく。
「何だ・・・?」
『さあ・・・。』
『・・・深追いは・・・やめときますか。』
「だな。艦船も去っていくようだし・・・。よし、帰還するぞ!」
ふぅ、と大きな溜息をついた隊長は、久々の宇宙戦が無事終わり、ほっとした。

「・・・なんであそこでMA本体を狙わなかったの?」
「だから何度も言ってるだろう。死んでもらっちゃ寝覚めが悪いってな。」
帰還したあとのMS格納庫のすぐ外、整備室にて、口論が起こっていた。
詰め寄るアンジェラに苦笑いを浮かべながらマダラメは何度も繰り返した言葉をまた述べる。
「あのままじゃ共倒れだったじゃない。」
「・・・それでも助けられそうな仲間をほっとくことは出来ねえよ。
 生きていることが一番大事だ。・・・そうだろ?」
そういって、俯くとすぐに顔を上げ、廊下の方へと向かう。
「ちょっと手が痛んできた。カスカベさんに見てもらうわぁ。」
右手を回しながら、ゆっくりと歩いていく。その姿が消えた後。
「・・・変わってるだろ?あいつ。」
タナカが、アンジェラのほうを見ながら、苦笑いする。
「変わってるというか・・・。あんな人もいるんだね、連盟軍には。」
「まあ、色々あったんだよ。情けないとか言わないでやってくれ。」
遠い目をするタナカ。しかし、アンジェラは体を震わしながら。
「最高!あんな隊長今まで会った事ないわ!気に入ったわ!」
笑顔を振りまきながら、スキップをして廊下の方へと向かう。
「・・・なんなんですか、あの人。」
「・・・・・・でも、昔はああいう感じだったんですよ。色々、アンにもあったんだろうなあ・・・。」
ササハラの苦笑い交じりの言葉に、オーノも笑顔を見せる。
「・・・みんな、生きて帰れた。よかった。」
スーの言葉に、コーサカが笑う。
「そうだね。やっぱり、生きているのが一番いい。隊長の言うとおりだ。」
少しの間のあと、皆で声を出して笑った。

72 :801小隊14話『テンプルナイツ』13:2006/05/10(水) 01:58:38 ID:???
「あっはっはっは。やってくれるよあの部隊。久々に楽しめた。」
一方、テンプルナイツの艦船内では、少年のような男の笑い声が響く。
「・・・アレックス大佐、笑いすぎです。」
「まあ、そういうなよホシノ。俺は今機嫌がいいんだ。
 ガンダムタイプにああいうのもいたとはね。非常に面白かった。」
そして再びクックックッと笑う。
「仲間を犠牲にしない戦い方は好感持てましたけどね。」
「おい、アーム直すの面倒じゃねえか、全く。」
「・・・すまん、ツカハラ。」
ホシノと呼ばれた青年は作業員風の眼鏡をかけた青年に声をかけた。
「でもさ、私もしかして遊ばれてた!?相手全く攻撃してこなかったんだけど!」
「・・・今気付いたのか?ネギシ。だから俺とホシノは安心して専念できたんだが。」
「ネギシさん、いくらなんでも気付くの遅すぎです。」
「・・・!!うるさい!」
バシィ!盛大なビンタがホシノを襲う。
「おいおい、ネギシ。」
「うー・・・。ならあいつ無視して二人の加勢すればよかった!」
「いや、そうしたら後ろからあのジムに狙われてましたよ。・・・気付かなくてよかったです。」
「・・・ま、本気で倒すつもりはなかったんでしょ、大佐〜?」
そうネギシにいわれ、アレックスはニヤリと笑う。
「まあな。俺達はあくまでテンプルナイツ。軍の命令に従うのが目的じゃない。
 あくまで、王家の護衛。まあ、今じゃその守るべき相手もいないわけだがな。
 ちょっと恩を売るつもりで動いたが、思わぬ収穫だったよ。楽しめた。」
『大佐。『茸』、やっぱり『サン・シャ・イン』に向かってるらしいね。』
アレックスはそこに入ってきた連絡にニヤリと口の端を上げる。
「さっきの通信どおりか!ご苦労、メグロ。それが我らの最優先事項だからな。」
「ヨーコちゃーん、それじゃこのままそっちに向かうって事?」
『そうなるんじゃない?あ、それと『無敵の零式』さんが加勢にきてくれるって。』
「え、姉さんがですか!」
驚きの表情を浮かべるホシノに、アレックスの笑いは止まらない。
「よし、全速転回!最短距離を通って敵の真正面へと向かうぞ!
 これで最後だ!あの白いのとケリをつけなきゃなあ!!」

73 :801小隊14話『テンプルナイツ』14:2006/05/10(水) 02:00:03 ID:???
「・・・そうですか・・・。わかりました。申し訳ありませんでしたな。
 いや。ああ。頑張ってください。ああ・・・。」
通信が切れる。荒野の鬼の顔はさえない。
「まさか・・・。テンプルナイツですら退けるとは・・・。」
思ってもなかった事態。あともう一つ仕掛けているとはいえ・・・。
「どうした?じい、顔色がさえないぞ。」
横にはニヤリと口の端をゆがめたナカジマが立っていた。
「・・・なんでもありません。どうかなさいましたか?」
「フフフ・・・。心強いパートナーの誕生だ。」
ナカジマの見つめるほうに目を向けると。
そこには。
氷のように冷たい目をしたオギウエが立っていた。

74 :第801小隊『次回予告』:2006/05/10(水) 02:06:05 ID:???
後の記録に記されない噂話がある。
地球圏において、皇国軍の一個大隊が、一日にして壊滅したというのである。
なぜそこに大隊があったのか、そして、誰が壊滅させたのか。
流れる噂、黒い悪魔の存在。
連盟がその脅威性を恐れ、隠した一つの戦いがあった。

次回、「贖罪」
お楽しみに。

75 :幕間〜逆襲のヤナ(?)〜:2006/05/10(水) 02:08:30 ID:???
「またベタな次回予告だな。
 だが、それがいい。
 あと四話だっけ?まとまるんか?まあ、いいけどさ〜。
 そうそう、ラジオ更新されてるって言ってたっけ。
 最近の曜湖さんのテンションおかしすぎるよな〜。すげえ楽しそう。
 今日もいい壊れっぷり聞けるのかな?」

76 :ラジヲのお時間『長月』1/11:2006/05/10(水) 02:09:56 ID:???
〜BGM・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』テーマソング〜

〜FO〜

「どうも〜、いつ誰が聞いてるか分からないげんしけんのネットラジオをお聞きの方、
 今日も私、神無月曜湖と!」
「於木野鳴雪でお送りします。」
「まだ暑さも残ってて、なかなか涼しくなりませんねえ。」
「地球温暖化ってやつですかね。正直、東北生まれの私には堪えます。」
「そういえばそうでしたね!わたしも、西海岸はこんなにむしむしはしてなかったですから〜。」
「やっぱり、暑いのはあまり好きじゃないですね。」
「・・・でも、色々とお熱いことになってるんじゃありませんか〜?」
「ブッ!・・・何を言うんですか!」
「ここ数日の地球温暖化の原因は、もしかして、と思いまして・・・。」
「そんなわけないじゃないですか!!」
「・・・何がそんなわけないんですか?姉さまにも分かりやすく説明してくださらない?」
「スールの関係を結んだ覚えはありませんよ!」
「くふう、いい突込みですねえ。それでこそ於木野さんです。」
「何を言ってるんですか・・・。全く・・・。」

〜BGM・完全にFO〜

「まあ、まあ、それはともかく。」
「何がともかくですか。」
「えっと〜、やっぱり言うべきだと思うんですよ。」
「・・・何をですか。」
「先月否定したことを、そのままにして誤解を生んだらいけないかなと。」
「ま、まさか!」
「たぶん、そのまさかで当たってるんじゃないですか〜。」
「言う必要ないですよ、全く、そうやって人を話の種にして楽しもうとして・・・。」
「いえいえ、そんなつもりは全くないんですけど。でも、先月読んだメールをくれた方を始め、
 ラジオ放送をお聞きの方に事実は伝えるべきでしょう。今後、その方々が妙な勘繰りをしてくるその前に・・・。」

77 :ラジヲのお時間『長月』2/11:2006/05/10(水) 02:10:59 ID:???
「や、でも・・・。」
「恥ずかしいなら、私から発表しても構いませんよ〜?」
「それは一番嫌です!」
「なら、ベンジャミンさんに入場していただいて・・・。」
「それはそれで嫌です!」
「全く・・・。ならどうしたらいいんですか?」
「いや、言わなければいいじゃないですか。」
「なんですか!?もしかしていえないようなハヅカシイ関係とでも・・・。」
「恥かしい関係なんかじゃありません!」
「まあ、この辺で勘のいいリスナーの方は気付いてるとは思いますけど・・・。」
「う゛・・・。」
「覚悟のススメ!」
「覚・悟・完・了!・・・ってなに言わせるんですか!」
「や〜、最近の於木野さんはノリがよくていいですね〜。
 そんな於木野さんに、しびれるぅ!あこがれるぅ!」
「いい加減ウザイです。」
「うう!ウザイですか!私ウザイですか!
 絶望した!於木野さんの言葉に絶望した!」
「そういうところがウザイって言ってるんです。」
「最近、きついですよ〜・・・。於木野さ〜ん・・・。」
「そうでもしなきゃこっちがやっていけません。」
「なるほど!それは於木野さんが心を保つための手段だったわけですね!
 ・・・なんて可愛い子。」
「ぶっ!なにを言い出すんですか!」
「もう〜、かわいくて仕方ありませんね、最近の於木野さんは。
 ・・・食べちゃいたいくらい。」
「・・・なんかリアルに怖いです。」
「ははは〜、ぢょうだんですよ、冗談。」
「・・・涎・・・。」
「はっ!二人でやるコスプレ考えてたらついつい・・・。」
「まだ諦めてなかったんですか!」

78 :ラジヲのお時間『長月』3/11:2006/05/10(水) 02:12:47 ID:???
「もちろんです!・・・まあその話はまた後で。とりあえず、お手紙〜。
 於木野さん、よろしゅ〜お願いしますだ。」
「・・・はあ。RN『MISA』さんから頂きました。ありがとうございます。」
「ありがとうございます〜。」
「『どうもはじめまして!曜湖さん、於木野さん!
  友達に紹介されて過去放送分も全て聞かさせていただきました!
  とても面白いです〜。新しい更新もぜひ、聞かさせていただきます!
  そうそう、於木野さんはハレガンが好きだそうですが、(私も好きです。)
  最近の飛翔系でいえばどれがお好みですか?やっぱり乙女の嗜みとして外せませんよね。
  曜湖さんも、一緒にお答えください!それでは、また〜!!』」
「今日はこのテーマで語れというわけですね〜。」
「乙女の嗜み・・・。なんでしょうか?」
「そこは突っ込んじゃイヤーン。」
「・・・はい。えーと。私としては・・・。」
「そこは突っ込まなきゃ駄目じゃないですか〜。」
「・・・モウダレカタスケテ・・・。」

〜『ウィーアー!』CI〜

「さてここで音楽です!
 アニメ『ツーピース』より。第一期OPテーマ『ウィーアー!』」

〜『ウィーアー!』FO〜

「ツーピースはなんだかんだいっても面白いですね〜。」
「ですね。多分魚人海賊団のあたりがピークだとは思うんですけど・・・。」
「アラバスタ編で大きな山越えて、今はなんかまあ・・・。」
「コミックスでまとめて読むと面白いんですけどね。話がとっ散らかってて連載では・・・。」
「まあ、週刊連載ならではといいますか。」
「同人のネタとしても・・・。一流です・・・ね。」
「キャラ多いですしね〜。」

79 :ラジヲのお時間『長月』4/11:2006/05/10(水) 02:18:41 ID:???
「私としてはゾロ×サンで・・・。」
「ほほう!やはり素敵マユゲ受けですか!メガネ掛けてますもんねー。」
「まあ・・・。王道といえば王道のカップリングですしね・・・。」
「サン×ゾロかで悩む所ですが・・・。」
「サンジが受けです。これは譲れません。」
「・・・私としては・・・。」
「あまり聞きたくないんですが。」
「え〜、そんな〜、聞いてくださいよ〜。」
「はいはい・・・。」
「ゼブ×サン・・・。」
「う!それはちょっとおいしいかも・・・。」
「でしょでしょ!師弟であり親子のような関係の二人にはそれ以上の感情が生まれて・・・。」
「うわ・・・。おいしいシチュですね・・・。」
「ふふふ〜、於木野さんも、ちょっとかじって見たらどうです?こっちの道を・・・。」
「うう・・・。オススメ今度貸してください・・・。」
「はい〜。」
「・・・まあ、ツーピースはおいしいところが多いですが、一昔前といえば前なんですよね。」
「ですね〜。ブームとしてはそれこそアラバスタあたりで終わってる感はありますね。」
「安定しているとも言えますけどね。それでは、一旦CMです。」

〜ジングル・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』〜

〜CM〜
「私の横に大きな影」
「あなたはだあれ?」
「仲良くなって見えてきた」
「その人の姿」
「となりのクガピ」
「DVD好評発売中!」
「この大柄な男は どこかにいるんです きっと。」

〜ジングル・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』〜

80 :ラジヲのお時間『長月』5/11:2006/05/10(水) 02:19:54 ID:???
「いいお話でしたよね〜。」
「少女と一人の青年との交流ですね。最後の終わり方がなんとも。」
「未来の情景を想像して嬉しくなっちゃいますね。」
「少女はもちろん、青年もしっかり成長する・・・。うまいお話でした。」
「さて、ここで話題を戻していきますが・・・。」
「・・・えー。最近の流行といえば・・・。」
「そっちではなくて!」
「・・・何の話でしょうか?私には全く見えてきませんが・・・。」
「くう!自然に流そうとしている!」
「最近といえばやっぱり『鰤一』でしょうか。」
「・・・そうですね〜。」
「私としては、イチ×ウリですか。」
「やっぱそこ突いてきそうですね〜。・・・アイゼン隊長は?」
「あ〜、死んでたと思わせてた時まではギン×アイゼンだったんですけど・・・。」
「確かに・・・。復活してからキャラが全然違うというか・・・。」
「まあ、それは作者の旨さでしたけどね。
 どこかのファンサイトで、『アイゼンが死ぬ時のシチュで色々考えてたのに〜。』という
 叫びを見たときは思わず共感してしまいましたが・・・。」
「あはは〜。想像させるにぴったりの情報の少なさですからね。
 その当たりも旨かったというか。でも、最近はキャラが多すぎで。」
「その分楽しめるカップリングも増えましたけど。」
「そうですね〜、可哀想なぐらいスポットの当たってないキャラもいますけど。」
「その辺りはアニメでフォローするんじゃないですか?」
「アニメ製作者にとってはおいしい素材ですからね〜。」
「飛翔系のアニメはすぐ追いついちゃいますからね。『鳴戸』とか、最近オリジナルですし。」
「まあ、確かに・・・。え?『もっとオリヒメを出せ!オリヒメを!』・・・。
 ベンジャミンさん、あんな事言ってますけど、いいんですか?」
「まあ、いいんじゃないっすか。・・・後で・・・覚え・・・。」
「え?何か言いました?」
「いえ?」
「・・・そうですか?」

81 :ラジヲのお時間『長月』6/11:2006/05/10(水) 02:20:45 ID:???
「マムシさんとしては・・・。『ウルルを出せといっとるだろうがぁ!』・・・。
 ・・・相変わらずなお二人です。」
「まあ・・・。キャラが多いって言うのも大変そうですね。」
「だって・・・。隊長格が学校に来るって言うのも・・・。」
「・・・あの選考、どうやって決めたんですかね・・・。」
「さあ・・・。人気順って訳でも・・・まあ、比較的良心的なメンバーってことでしょうか?」
「マユリ様が来なかっただけでもよかったですかね?」
「あの人が来るのはありえませんね・・・。地上壊滅しますよ?」
「え・・・。そこまでは・・・。」
「まあ・・・。マユリ×ウリって言うのも・・・。」
「わあ、陵辱系!」
「・・・やりすぎっすかね?」
「・・・もし描いたら見せて下さいね・・・。」
「・・・はい・・・。」

〜『D-tecnoLife』・CI〜

「では音楽です〜。アニメ『鰤一』より、OPテーマ『D-tecnoLife』。」

〜『D-tecnoLife』・FO〜

「アニメ版ってどうですか?」
「さすがといいますか。まあ、しっかり作ってるんじゃないですか?」
「だけど、だいぶ追いついてきちゃいましたね〜。」
「ですね。もうすぐオリスト展開になるかもしれませんね。」
「そうかもしれませんね。そうなったらたくさんのキャラをうまく使えるか・・・。」
「楽しみでもありますけど、大概オリストは評判悪いっすよね・・・。」
「まあ・・・。『ツーピ』も、『鳴戸』も・・・。」
「期待したいところですけどね。」
「アニメといえば。『ぎんたま』、アニメ化決定!」

82 :ラジヲのお時間『長月』7/11:2006/05/10(水) 02:21:29 ID:???
「ようやく来たかって感じですけど、あれ、アニメでも人気でますかね・・・。」
「意外と、低年齢層を掴みそう。」
「あー、あのマッタリした馬鹿加減、子供好きかも。」
「『ぼーぼぼ』とはまた違うギャグですけど、子供ギャグ好きですし。」
「大人向けでもありますけど、バトルでもギャグを失わない姿勢は好きですね。」
「『ジャプン』は、ギャグのセンスはいいと思いますけどねー。」
「ですね。まあ・・・。『たいぞう』はきっついですけどね。」
「あれは・・・え?『オタク濃度の高い人ほど楽しめるのは『改造』や『糸色望先生』と一緒だよ。』
 なるほどー。絵柄とか、シモネタで回避するのはもったいないと。」
「確かに・・・。『好きなものは好きだからしょうがない』は吹きましたけど・・・。」
「パロディは加減具合で批判・アンチの対象にもなりますからねー。」
「その辺りは自粛したりで大変かもしれませんね。」
「そうですね・・・。え、『作者はコミフェスにも出てたんだぜ』
 へーそうなんですか!マムシさん。」
「もともとパロディを描きまくってた人なんですね。」
「今度もう少ししっかり読んでみようかな。」
「同感です。」
「まあ、『ぎんたま』といえば・・・。」
「ああ・・・。『アニメ化なんて知るかぁぁぁぁぁぁぁ!!』ですね。」
「大爆笑しちゃったんですけど!」
「『しんぱち』は、なんか色々やらかしてくれるんで好きですね。」
「台詞が一つ一つ面白いんですよねー。」
「決して正義の味方なんかじゃなくて、どこか皆歪んでるというか・・・。」
「それがいいんですよね。それでもどこか互いを信用してるというか・・・。」
「切ない話もしっかり織り交ぜて、『人情ドタバタドラマ』って感じですよね。」
「まあ・・・。仮にあの辺りを描写してもしっかりアニメ化した前例がありますけどね。」
「『いちご』ですね。その辺りは『ぎんたま』の中でも『ふわふわっとした描写でごまかして・・・』」
「あれも笑いましたねー。」
「『いちご』も終わって沈静化した頃に・・・。『いちご』好きなんでしょうね・・・。」
「それでは一旦CMです!」

〜ジングル・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』〜

83 :ラジヲのお時間『長月』8/11:2006/05/10(水) 02:22:23 ID:???
「押入れの奥に見知らぬ箱」
「おいおい・・・。何の冗談だ?」
「突如現れた自称天使に振り回される男」
「私に全部まっかせなさ〜い!!」
「・・・ごめん、無理」
「マダやん」
「アフタコミックス絶賛発売中!」
「続編『大魔王あらわる』も本誌で好評連載中!・・・マジか。」

〜ジングル・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』〜

「ギャグ話で花を咲かせてたところでこれです。」
「これは・・・。かなり面白いとは思うのですが・・・。」
「いかんせんシモネタが多すぎますね。」
「それが人気の要因だとは思いますが。」
「その辺りをもう少し抑えると・・・。」
「中途半端になるんじゃないですか?」
「そうかもしれませんね〜。まあ、青年誌ですし、OK?」
「ですかね。」
「・・・さて。」
「ああ、コーナーですね。」
「・・・また逃げようとしてる。」
「何の話でしょうか。」
「いいですよ、いいですよ。・・・ニヤリ。」
「・・・嫌な予感がする。」
「さていきましょうか!
 二回目のCMが終わったらいつものこれです!
 『漫画・恥ずかしい台詞を大声で言ってみよう』のコーナー!」
「今回は、『ブソウレンキン』です。」
「『ブソウレンキン』、終わっちゃいましたねえ。」

84 :ラジヲのお時間『長月』9/11:2006/05/10(水) 02:27:41 ID:???
「アンケートの結果が悪かったんですよね。」
「でも、ネット上では大人気だったのに・・・。」
「そういう人たちって大概アンケ葉書出しませんからね・・・。」
「あらー。となると終わるのに納得いってない方々もいるのでは?」
「そうでしょうね。だから、赤丸で補完すると。」
「しかも、この前のでは完結してないという。」
「冬の赤丸ですかね。完結編が載るのは。」
「きっちり伏線が全部拾われればいいんですけど。」
「まあ・・・。何とかやってくれるんじゃないですか?」
「ですね。」
「では一緒に行きますよ〜!」
「え、一緒に言うんですか。」
「はい〜。それでは、せーの!」

「「『臓物(ハラワタ)をブチ撒けろ!』」」

〜ほお〜 という嘆息の声〜

「これ、思うんですけど恥ずかしい台詞じゃなくないですか?」
「でも、道端でこれ言えます?」
「・・・スイマセン、無理っす。」
「というわけでトキコさんの決め台詞でした〜。」
「この人、ジャプンヒロインにしては中々激しいっすよね。」
「まあ、ここまで敵に容赦ないヒロインはいないと思いますけど・・・。」
「その辺りが人気の秘訣と。」
「ですね〜。キャラが色々と立っていた漫画だったと思うんですけどね〜。」
「カズキ、シュウスイ、ブラボー、ゴウタ・・・そしてなんといってもパピヨンですね。」
「特にパピヨンは一部に熱狂的な人気がありますからね。」
「悪役のはずなのにどこか憎めない。そういう系ですね。」
「カズキとケリをつけるためには方法をいとわない・・・。
 そして認めたはずの『人間』が人間をやめてしまいそうになる・・・。」

85 :ラジヲのお時間『長月』9/11:2006/05/10(水) 02:28:18 ID:???
「シチュエーション的にはかなりうまいといいますか・・・。」
「や〜、ライバルという関係には何かそそるものがありますねえ〜。」
「何ででしょうかね・・・。」
「そこに友情とは違う、相手を求める何かを見てしまうのかもしれません・・・。」
「なるほど・・・。」
「さて、三曲目がそろそろ入るタイミングなのですが、今日は無しで、
 於木野さんから発表があります〜。」
「はあ!!?」
「ささ、どうぞどうぞ。」
「や、だから言う必要ないって・・・。」
「あら・・・。じゃあ私の口から・・・。」
「ちょ、やめてください!」

〜ドタバタ 喧騒の音 息を荒くする音〜

「はぁ、はぁ、まだ言わないつもりですか。」
「ふぅ、ふぅ、なんでそこまでして言わせたいんですか。」
「・・・隠し事はいけないとおもいます!」
「・・・・・・まほろさん?」
「おお、流石!」
「・・・・・・流石じゃねくって・・・。」
「だって〜、先月あんな力いっぱい否定しといて本当はそうなのかよ!
 って思われてもいいんですか?いやらしいと思われますよ。」
「そんなことはないでしょう!」
「・・・世の中色々な方がいますからねえ・・・。分かりませんよぅ・・・。」
「うう・・・。言えばいいんでしょ、言えば・・・。」
「そうです、言えばいいんです。」
「まあ・・・。別に悪いことしてるわけでもないですしね。」
「ですよ!ですよ!」
「えー・・・、私、於木野鳴雪は、先月時点では確かにお付き合いしてなかったのですが、
 この一ヶ月色々ありまして、ベンジャミン武世さんとお付き合いしてます。」
「・・・ふう、こう改めて言われると恥ずかしいものがありますね・・・。」

86 :ラジヲのお時間『長月』11/11:2006/05/10(水) 02:29:06 ID:???
「いや、言えって言ったの曜湖さんでしょう!?」
「まあまあ、そこで!」
「そこで?」
「新コーナー!『鳴雪さんに聞いてみよう!命短し恋せよ乙女!恋愛相談始めました。』!」

〜BGM・『ゲキテイ』(そう、あれっす。)CI〜

〜BGM・『ゲキテイ』FO〜

「ちょっとちょっとちょっと!!」
「この幸せいっぱいの於木野さんに、あなたの悲しい胸のうちを相談してみませんか?
 幸せ分けるぐらいなんでもないって感じですので、多少深刻でも大丈夫!」
「いやいやいやいやいや!!」
「性別は問いません。あなたのご相談を親身になって・・・。」
「なんか某CMっぽいっすね!って突っ込んでる場合じゃない!」
「悲しいけど、これも企画なのよね・・・。」
「・・・そんな相談されても何言えばいいか・・・。」
「於木野さんの思うがままに答えればいいんですよ。」
「うう・・・。そんな・・・。」
「正直、私たちは責任は持てません!相談の答えをどうするかは投稿者自らです。」
「まあ、そうなんでしょうけど・・・。」
「・・・於木野さんの一言で救われる人がいるかもしれないじゃないですか〜。」
「そう・・・かもしれないっすけど・・・。」
「まあ、どっちにしろ言っちゃったからには来ちゃうでしょうし〜。」
「む、無責任な!!」

〜BGM・FI〜

「というわけで、今日はお別れですね。メインパーソナリティは神無月曜湖と!」
「於木野鳴雪でした・・・。あまり深刻のなのは・・・。やめてください・・・。」

〜BGM・CO〜

87 :幕後〜今月のヤナマダ:2006/05/10(水) 02:30:37 ID:???
「言ったとおりだったじゃないか〜。」
「まあな・・・。」
「本当に気付かなかったのか?」
「・・・うるせえなあ。」
「お前、どこかそういうところ抜けてるっていうか・・・。」
「しょうがねえだろ、わからねえもんは。」
「鈍感だよなあ。もしかして、自分に好意を持ってる相手にも気づいてなかったりな。」
「はあ?そんな奴いるわけねえだろ。」
「わからないぞ〜?世の中広いからな。」
「・・・俺、於木野さんに相談したほうがいいのかな・・・。」
「・・・・・・それは痛いからやめとけ?」

88 :後書:2006/05/10(水) 02:35:45 ID:???
え〜今回は補足など。
テンプルナイツの面々はアレックスを除いて
「みかん」で有名な『ラブロマ』からゲスト出演してもらいました。
面白い漫画なので、未見の方はぜひ。
まあ、『無敵の零式』ネタが使いたかっただけという。
第100特別部隊の正体が、なんとなく見えてきたと思います。

あと、ラジヲ。
「アイゼンの死んだ時のシチュで〜」云々は小学六年生女子児童(当時)の言葉です。
私が世も末だな〜と思ったときでした。
ジャンプは今「タカヤ」が熱い!とか嘘をついてみる。

長らく占拠して済みませんでした。楽しんでいただけると幸いです。

89 :マロン名無しさん:2006/05/10(水) 05:00:03 ID:???
>801小隊とラジヲ
乙です!えーマダラメとアンジェラのやりとりに自分も震えました。「生きて帰れ!」かっこええ〜…。
ラブロマ出てきたのも噴きました。さて、読むか!!
ラジヲではぎんたまネタがwジャンプネタいいですね。
次も楽しみにしてます〜w

90 :マロン名無しさん:2006/05/11(木) 00:14:54 ID:???
>>801小隊テンプルナイツ
まさかラブロマだったとは!!あれも突然終わった感がありました。。。
それにしても斑アンにフラグ立ちそうですかね?

>>ラジヲ
ついに笹荻成立後キタ!!
なんだかはじけた感がありますね〜〜〜。
恋愛相談ですか…。
うわー思わずリアルに相談送りそうになったかもwww

91 :マロン名無しさん:2006/05/11(木) 00:30:07 ID:???
さて、今から投下しても大丈夫かな…?
18レスで投下予告。

92 :マロン名無しさん:2006/05/11(木) 00:35:20 ID:???
>>91
オールグリーンのようです!ヨロw

93 :「空の下、大切な場所」(前編)1:2006/05/11(木) 00:35:42 ID:???
「空の下、大切な場所」(前編)

(斑目のSS「さくら」の続編。斑目の話。)


***


 5月の初め。空は青く青く透き通り、辺りは爽やかな春の日差しに包まれている。
…痛いほどに、明るい日光が自分の心にまで差し込んでくる。
そのためだろうか。見ないようにしていた生傷まで鮮明に見えてくるのは。

もう幾度めかのため息をつく。
どうしたら、この痛みから抜け出せるのか。
何故これほどまでに痛みから解放されないのか。

あれからもう1ヶ月はたっているのに。
…いや、4年という月日を忘れるのには、1ヶ月では全然足りないということか。



卒業式の日から、あの思い出から抜け出せない。
あの花のような笑顔を忘れられない。

思い出すたびに、息苦しくなる。
なぜだろう?昔は、あの人の顔を思い出すだけで楽しい気分になれたのに。



94 :「空の下、大切な場所」(前編)2:2006/05/11(木) 00:36:52 ID:???
今の感情を一言で言うと、不完全燃焼、だった。
終われなかった思いがくすぶって、黒い煙をいつまでも吐きつづけている。
まっすぐ刺すようだった悲しみが、いつの間にか鈍い痛みを残し続けている。

暗く深い水の中で、息ができない。ぎりぎりまで息ができない。
ふっ、と苦しみが和らいだかと思うと、またすぐに引き戻される。
ただ、そんな日々。

いつの間にこんなものを背負い込んでいたのだろう。


大学の校門をくぐる。
…そう、俺は未だにここに通い続けている。
階段のすみに、向こうのベンチの影に、あの人の幻影を探す自分がいる。
こんな所にいるはずがないのに。

覚悟はしていたはずだった。もう、「安心」を得られない覚悟を。
この体中の力がなくなっていくような喪失感を、頭ではイメージできていたはずだった。

少し、覚悟が足りなかっただけの話だ。


95 :「空の下、大切な場所」(前編)3:2006/05/11(木) 00:37:37 ID:???
 斑目は部室のドアを叩いた。
奥から、少し低い女性の声で「どうぞ」と聞こえた。
ドアを開ける。そこには荻上さんがいた。

荻「あ、ども…」
斑「こんちは」
斑目はいつもの笑顔で答える。
(…大丈夫、ちゃんと笑えてるはずだ)
荻「あ、すいません片付けますね」
部室のテーブルには、ベタ入れした原稿が散乱している。乾かしていたのだろう。独特の墨の匂い。
斑「悪いね」
荻上さんが原稿をまとめるのを見ていた。手伝おうと思うのに、体が動かない。力が入らない。
荻「どうぞ」
斑「ん、アリガト」
斑目はようやく席に座る。

最近荻上さんと部室で会うことが多い。荻上さんはたいてい原稿をかいているか、ネーム作業をしている。
斑「また新しいやつ?」
荻「ええ、今回は投稿用なので、801ではないんですけど」
斑「フーン、できたら見せてくれな」
荻「ま、まだ駄目です!もう少し自信がついてから…」
荻上さんは慌てて言う。少し顔が赤くなる。
斑「ん、またいつでも、荻上さんのタイミングで」


96 :「空の下、大切な場所」(前編)4:2006/05/11(木) 00:38:25 ID:???
荻上さんは乾いた原稿をまとめると、またすぐ描きかけの原稿に向かった。
よく飽きないなと感心する。
たまに、話しかけても答えないときがある。ものすごく集中しているときだ。
…どうしようかなと思ったが、話しかけることにした。

斑「今描いてるのって、801じゃないんだよね?どんな内容?」
801のときは、内容まで聞かない。原作は何かだけ聞いたりはするが。
荻「あ…少女漫画です」
斑目はコンビニで買ってきた昼飯を広げた。今日はサンドイッチだ。
斑「へえ、荻上さん少女漫画描くんかー」
荻「一度描いてみようと思って。笹原さんに、私の絵は少女漫画向きじゃないかって言われたんで」
斑「笹原、元気?最近忙しいって言ってたけど」
荻「ちょっと疲れ気味ですね…ストレスたまってるみたいです。最近イライラしてて」
斑「そうなん?」
荻「…ええ。今まではこっちが甘えてる状態だったのに、最近は逆です」
荻上さんは少し苦笑した。
付き合い始めのころは、恥ずかしがってこんな話しなかったのに、今ではすごく自然に笹原との話をする。
(可愛くなったよなー荻上さん…。入部したときとはえらい違いだ…。)

『オタクが嫌いな荻上です!』
最初の挨拶を思い出す。あのときの周り全てが敵という感じの、挑むようなあの目つき。


97 :「空の下、大切な場所」(前編)5:2006/05/11(木) 00:39:01 ID:???
(…そういえば、春日部さんもある意味そんな感じだったな)

初めて部室に春日部さんが来たときのことを思い出した。
高坂が初めて部室見学に来たときに、一緒についてきたのだ。

………………

高「こんにちは。僕、高坂といいます。こちらのサークル見学したいんですけど、いいですか?」
高坂ははきはきと喋った。
そのとき初代会長は席をはずしていた。
斑「お、見学!?ようやく来たな!」
田「はは。このまま来ないかと思ったよ」
久「ぜ、ぜんぜん勧誘してなかったからなー。やる気なかったからなー」
斑「お前もな!」
田「…ん?そっちの人は?その人も見学?」
高坂の後ろから、仏頂面でくっついてきた女がいた。
高坂の服装と似ていた。黒いジャケットに赤いネクタイをしている。化粧が濃い。
その女が開口一番にいった言葉。

咲「オタクはだまってろ」

すごむような目つきでそう言った。まるでヤンキーだ。


98 :「空の下、大切な場所」(前編)6:2006/05/11(木) 00:39:46 ID:???
思わず固まる一同をよそに、その女は高坂に甘えるようにこう言った。
咲「ねーコーサカぁ、天文研にしとこうよ!あそこ、夏は合宿あるらしいよ」
高「うーん、そうだね…。でも今はこのサークル見学してからね」
咲「じゃ、このサークル見学したら、あとで行こうよ。」
高「そうだねー…。あの、すいません。ここはどんな活動されてるんですか?」
高坂はその女の提案をやんわり流し、自分の聞きたいことを聞き始めた。

斑「そーね。うちは現代視覚文化研究会つって、漫画からアニメから、果ては同人誌から、なんでも研究するサークルなのです!!」
田「ま、なんでもありってことだ」
斑「研究内容は、その都度積極的に会議で話し合われ、不定期に「メバエタメ」という雑誌に編集されマス!
あ、今は俺が編集してんだけど」
田「ま、てきとーにくっちゃべって、気がむいたら本にしてるんだ、こいつが」
斑「おーーーい田中、さっきからツッコミがキビしいぞーー?」
田「ああ、気にすんな。こいつ、演説好きなんだ。俺の言ったことでだいたい合ってるから。」
高「あはははは」
高坂は楽しそうに笑った。
咲「…なに、その内容。ただの雑談?サークルでする必要あんの?」
その女はずばりと言った。再び固まる空気。

(…この女、痛いところを…)
最近、アニ研の近藤にも似たようなこと言われた。
その時は口八丁で煙に巻いてきたが、本当はちょっと、気にしていた。
(………でもなあ。田中も久我山も、あんまりやる気ないしなあ…。)
それを、いきなりさっき見学についてきたばかりの女に指摘され、ちょっとムッときた。


99 :「空の下、大切な場所」(前編)7:2006/05/11(木) 00:40:30 ID:???
斑「あのさー君、さっきから何なの?興味ないなら帰れば?」
田「おーい、そういうこと言うな」
斑「こっちの『コーサカ』君は興味あるんだし。君、オタクじゃないんでしょ?
君とサークルの内容について話し合いする必要はないと思いますがネ?」
咲「ああん?喧嘩売ってんのか」
再び睨まれ、ちょっと怯むが、ここで引いたらオタクがすたる。
斑「そっちが先に売ってんだろ。こっちは別に迷惑かけてないんだから、一般人は口出し無用!自分の星にカエレ!」
田「おい…」
田中が制した。ちょっと言い過ぎたかと思ったが、生意気な一般人には、こんくらい言っといたほうがいいのだ。
棲み分けのために。これでこの女も来なくなるだろう。

するとその女はつかつかとこっちに向かってきた。
お、やるのか、と身構える前にいきなり右ストレートが自分の顔面に炸裂した。
「!!」
思わずよろける。一瞬だけ頭が真っ白になる。
そんなに思ったほど痛くなかったが、ついよろけてしまったのがショックだった。
斑「…ってーな、何しやがる!」
咲「だからオタクは駄目なんだよ」

春日部さんは毅然とした態度で言った。
…そのときは、春日部さんの言葉の意味がよく分かってなかった。そのときは。

(あ、「親父にもぶたれたこと(ryって、言うの忘れた………)とか思っていた。


100 :「空の下、大切な場所」(前編)8:2006/05/11(木) 00:41:08 ID:???
………………………

今となっては、懐かしい。自分の未熟さとか、春日部さんの攻撃性とか、そういうイタい面も含めて。

思い出して、少し可笑しくなる。同時に、心がちくりとする。
そんな時代もあったのだ。

斑「そう言えば、笹原には漫画見せてるの?」
荻「ええ。…やっぱり、編集者ですから、自信がないのでも見てもらったほうがいいかなって。
というか、笹原さんがしょっちゅう見せろって急かすので…。」
荻上さんは笑う。
斑「フーン、でもどうなん?あいつちゃんと評価してくれる?」
荻「ええ、笹原さんけっこう厳しいんですよ」
斑「へー、あいつ意外と言うからね」
荻「前は褒めてくれたんですけど、最近は仕事疲れでイライラするせいか、酷評されますね。
あんまりストレートなんで、腹立つこともあります」
斑「腹立つ?荻上さんが?」
最近の穏やかな荻上さんを見ていると、腹を立てているところが想像できない。
荻「ええ。あんまり腹立ったんで、こう言ってしまったんです。『笹原さんって見る目あるんですか?』…って。」
斑「………………(汗)」
荻「そうしたら笹原さんにこう言われました。
 『荻上さんこそ、本当にこの漫画面白いと思って描いてるの?だとしたらすごいね!』」
斑「………………………………………(激汗)」


101 :「空の下、大切な場所」(前編)9:2006/05/11(木) 00:41:51 ID:???
荻「さすがにそう言われたときはショックでしたけど。
でも、ストレートに言ってくれたほうが自分のためになるってわかったんです。
笹原さんも、あとで何度も謝ってくれましたし」
斑「………なんか壮絶だね、君タチ」
荻「私、けっこうキツいこと言ってしまうタイプだし、笹原さんも思ったことそのまま出ちゃう人ですから。
だから、その方がかえって楽なんですよ」
荻上さんは相変わらず笑っている。心からそう思っているのだろう。

(…そういえば、春日部さんとよく喧嘩したな。春日部さんもやたらムキになって…。
本当なら、ウザがられて無視されるとこだよな。たいていはさ………。)
初対面のときから、何かと口喧嘩しまくっていた。
今思えば、本当に言いたい放題言ったのだが、春日部さんが部室に来なくなることはなかった。
もちろん、高坂のために来ていたんだが。
どんなにこっちの言いたいことを言いまくって、その後ちょっとだけ後悔しても、春日部さんは再び,、こりずにオタクに対する自分の疑問(喧嘩のネタ)を持ってやってくる。

面白くなった。根性ある一般人だな、と。
だから、とことんからかってやろうと思ったのだ。
(あれも、ある意味コミュニケーションだったんだなーー…。)


102 :「空の下、大切な場所」10:2006/05/11(木) 00:43:25 ID:???
いつからだろう、口喧嘩しなくなったのは。
…あれは俺が4年のときか。なんだか急に、春日部さんを強く意識し始めて、それからは言えなくなった。
そのころ、春日部さんも丸くなって、あまり喧嘩越しの態度に出てこなくなった。
親しくなったからか。少なくとも春日部さんは、そう思ってくれていたんだろうか。

(憧れだったんだろうな………春日部さんの存在が…。
すごくしっかりしてるとことか、実は情に厚いとことか、面倒見がいいとことか。
もちろん美人なとことか、そのわりに気取ってないとことか。意外と内面が繊細だったりとか………。)

また、心が疼き始める。『いい思い出』のはずなのに、苦しみと表裏一体になっている。


荻「斑目先輩?」
斑「…ん?」
荻「どうしたんですか?」
荻上さんは心配そうな顔で、こちらを見ている。…そんなにひどい顔をしていたんだろうか。
荻「疲れてる、とかですか?」
斑「あ、いや!大丈夫。」
荻上さんは心配そうな顔でこっちを見る。…そんなに心配されると、なんだか照れくさい。
斑「いや、本当に平気よ?ちょっとボーッとしただけ!」
荻「…そう、ですか。」
荻上さんは言葉を止めた。


103 :「空の下、大切な場所」11:2006/05/11(木) 00:44:05 ID:???
荻「…寂しいですね。」
斑「え?」
荻「いえ、新入生が、4月は入ってこなかったんで…大野先輩は就職活動だし、朽木先輩も何だか忙しいようですし」
斑「あれ、じゃ朽木君、最近来てないの?」
荻「いえ、夕方になったら来るんですけど。1,2年生のとき遊びすぎたらしくて、3年になってから単位取るために授業たくさん取るハメになったらしいです。自業自得ですね」
荻上さんは呆れたように言った。

斑「あーそう…じゃ、朽木君が会長に、って話はなくなったのかね?」
…だいぶ前に大野さんから、そんな話が出ていると聞いたとき、正直驚いた。
大野さん自身不安そうにしていたが、それでも前向きに考えているようだった。その大野さんの変化にも驚いたものだ。
(…それにまあ、あの朽木君に任せて大丈夫なんか?という不安もある。やっぱり。)

荻「いえ、今は朽木先輩が会長ですけど」
斑「え…マジで!?いや、こういう言い方はアレかも知れんけど、あの朽木く…」
荻「全然頼りになりませんよ、はっきり言って。」
荻上さんはズバッと言ってのけた。
斑「…あ、やっぱり?」
荻「書類の提出期限は破るわ、会議は脱線するわ、遅刻するわムダ口が多いわ、会長としては最悪ですね」
斑「………………」
どんな状態かはっきりとイメージできてしまう。
では何故、朽木くんに任せてるんだろう。どう見ても荻上さんのほうが向いている。


104 :「空の下、大切な場所」12:2006/05/11(木) 00:44:43 ID:???
荻「…でもですね。最近朽木先輩変わったんですよ」
荻上さんの口調が、少し柔らかくなった。
荻「あの変な挙動は相変わらずなんですけど、少しずつ人に気を遣えるようになってきたみたいなんです。
あと、場を寒くするような言葉が大分減りました」
斑「ほー!あの朽木君が!」
荻「自分がまとめる立場になって、ようやく他人の苦労が分かったんじゃないですかね。
だから良かったと思います。あと、こっちも我慢強くなりました。些細なことで怒っても仕方ないって思うようになって」
荻上さんは少し皮肉まじりに言い、笑った。

斑「会長になったら、みんなすごく成長するんだなあ…」
荻「でも斑目さんは元々会長向きだったんじゃないですか?」
斑「いやいや、俺も例外じゃないよ」
荻「そうなんですか?」
荻上さんは意外そうな顔をした。荻上さんは自分と春日部さんがさんざん口喧嘩していた頃を知らない。
斑「春日部さんがなぁ…」
荻「え?」

(………ん?)
妙な沈黙。
荻「春日部先輩が…何ですか?」
斑「…え?あ、あーいや、最近寂しいっていってたからさ!
笹原もだけど、春日部さんも高坂も卒業したから寂しいのかなーーーって!」
慌てて取り繕う。
荻「え、ええ…そうですね…」
(うわ、ヤベーヤベー!思わず口から出てたよ…最近こんなことばっか考えてっから…)


105 :「空の下、大切な場所」13:2006/05/11(木) 00:45:21 ID:???
荻「…そう言えば、春日部先輩、昨日来てましたよ」
斑「え、昨日?部室に?」
荻「ええ、久しぶりに顔見に来た、って」
斑「…へー!そうなんだ」
荻「ちょうど斑目先輩と入れ替わりで…昨日は大野先輩もいましたし」
斑「へえ、それは会いたかったなー」
(…ここで「会いたい」って言っても不自然じゃあるまい)
荻「ええ、春日部先輩も、会えなくて残念って言ってましたよ、斑目先輩に」
斑「え、春日部さんが?そんなこと言ったの?」
荻「ええ」
斑「フーーーン………………」


(…あれ、何か、スゲー嬉しいような………)
急に、体が熱くなるのを感じる。
(会えなくて残念…………………春日部さんが?本当に?)

荻「あの…」
斑「ん?」
荻「春日部先輩と、何かあったんですか?」


106 :「空の下、大切な場所」14:2006/05/11(木) 00:45:58 ID:???
斑「…へ!?」
荻上さんはじっとこちらを見てくる。
斑「え、いや別に………な、何で!?」
荻「いえ、先輩最近元気ないから……………」
斑「え、そ、そうかな!?」

(バ、バレてる!?えーーー、どこまでバレてんだ!?)
焦ってしまい、頭が回らない。冷や汗がダラダラ出てくる。
斑「えーとその、そーいうアレじゃ…」
荻「えっ?」
斑「別に春日部さん意識してたとかじゃなくて、ただの仲間というかそんなんだから!!」
荻「…え?あの、春日部先輩と喧嘩でもしたのかな、と思っただけなんスけど………………」
斑「へっ!?」
荻「…いえ、それで気にしてるのかな、って…………………………」
目を見開いていた荻上さんの顔が、見る間に赤くなる。

(………アレ?なんか今いらん事言っちゃった??
えーと、『墓まで持っていく』つもりで『墓穴を掘った』みたいな。
あ、今うまいこと言ったな。

………………………って、全然うまくねーーーーー!!!!!)


107 :「空の下、大切な場所」15:2006/05/11(木) 00:46:31 ID:???
荻「………………………………(汗)」
斑「………………………………(激汗)」

沈黙。嫌な汗が出てくる。
(………荻上さんにバレた?今ので…………バレたよな。
ていうか何言っちゃってんの俺……?アレ?え、どーすんだコレ………)

荻「え、春日部先輩のこと…?」
斑「………いやその………………」
しばらく固まっていたが、次第に、急激に体中の力が抜けていくのがわかった。
胸の奥が締め付けられる。

見ないようにしていた苦しみが、一気に襲ってくる。
自分でも驚くほど、狼狽している。がっくりと肩を落とした。
(………何で………何でこんなに、落ちてるんだろう……………。
というか、今まで誰にも言わなかったのに………言わないつもりだったのに………………)

正直、誰にも言わずにいるのは辛かった。でも、誰かに言っても状況が変わることがない以上、その人にまで秘密を背負わせるのはどうかと思った。第一こういう話をすること自体苦手だし。
…なのに。


108 :「空の下、大切な場所」16:2006/05/11(木) 00:47:11 ID:???
(…とりあえず、荻上さんには黙っていてもらおう。それしかない………)
斑「………荻上さん」
荻「は、はい」
斑「その…。誰にも言わないでくれるかな………。頼む!!か…春日部さんにも言ってねーし………………」
言いながら、自分の声が震えるのが分かる。

荻「…言いません」
少し低い声で答えが帰ってくる。斑目は顔を上げた。
荻「言いません。絶対、誰にも言いません。」
荻上さんは真剣な目でこっちを見ていた。それを見てほっとする。同時に色々な思いが込み上げてくる。
斑「…ちょ、ちょっと頭冷やしてくるわ………」
そう言って席を立つ。部室の扉を開けて出て行った。

トイレで顔を洗う。…いつから自分はこんなに弱くなったのだろう。
冷たい水に、少しだけ冷静さを取り戻す。同時にひどく空しくなった。

戻ってくると、荻上さんも動揺していた。心配そうな目でこちらを見上げる。
荻「あ、先輩………」
斑「…変なこと言ってスマンね」
荻「いえ!そんな………」
そう言いかけて荻上さんは視線を泳がせる。


109 :「空の下、大切な場所」17:2006/05/11(木) 00:47:54 ID:???
斑「アハハ……墓の中まで持っていこうと思ってたのになー…」
そう言いながら思った。
(重いって、そんな言葉…荻上さんにこれ以上気を遣わすなって………!)

荻「…それが先輩の秘密なんですか?」
斑「え?ああ、そうね………」
荻「最近元気ないの、それが原因ですか?」
斑「…情けねーよなー俺…たかがそんなことでさ………」
荻「そんな風に言わないで下さい」
斑「え?」
荻「私も、人に自分の秘密が言えなくて、心を閉ざしてました…このサークルに来るまで。
人は何かしら心に傷を抱えてると思います。傷一つない人間なんていないと…私も………」
そこまで言って荻上さんは口を閉じた。少しためらい、再び話し始めた。

荻「…私も、斑目先輩に秘密にしていることがあります。」
斑「え?」
荻「………じゃあ、今度は私がそれを打ち明けたいと思います。明日の昼、また部室に来てもらえますか?」
斑「あ、明日?いいけど………?」
荻「明日、私の秘密を見せたいと思います。」


110 :「空の下、大切な場所」18:2006/05/11(木) 00:48:30 ID:???
………………………



会社に戻りながら、考えていた。
(…『私の秘密を見せたい』って、何だろ?
ていうか、それなんてエロゲ…いやいや、ゲームのやり過ぎだっての。
…しかし、つい言っちまったなぁ……)


言ってしまったことが、やはりショックだった。だが、今は明日のことに気をとられている。
(何を見せられるんだろう…?)

次の日、斑目はある意味「エロい」ものを見ることになるのだが、それはまた次のお話。


                          前編 END    続く。



111 :あとがき:2006/05/11(木) 00:49:28 ID:???
えーまず、6月号の時点ではまだ皆には「斑→咲」がバレてない、という前提で書いてます。
(大野さんと春日部さんは別ですが)
意見が分かれるところだと思いますが、そこは大目に見てください。すんません。
後編もだいたいできてるので、近日中に投下します。


112 :マロン名無しさん:2006/05/11(木) 00:52:41 ID:???
>「空の下、大切な場所」
朽木君が会長とか、笹荻の今とか、色々面白かったのですが・・・。
何より。
み、見せるのか?あれ見せちゃうんですか?
わー、わー、わー。

どうなることか・・・。後編が楽しみであります。

113 :マロン名無しさん:2006/05/11(木) 02:04:39 ID:???
>>空の下、大切な場所
斑目、誰が上手いこと言えと(ry かなり笑いましたwww
笹原と荻上さんの口論がリアルだったり、斑目にすごく感情移入し易かったり
GJですね!続編期待です。

114 :マロン名無しさん:2006/05/11(木) 02:10:58 ID:uKFr+uUp
くはー、久々の斑目の長編ですね。やっぱいいですねー斑目物は。

荻上も好きなんで、斑×荻の組み合わせが最高です(誰か、斑×荻の恋愛系SS書かないかな・・・)
後編楽しみっす。

115 :マロン名無しさん:2006/05/11(木) 02:11:47 ID:???
>801小隊&ラジヲ
おお〜、ついに本格的な宇宙(そら)の戦闘ですね。
また、他作品からの参戦とは……!
アンジェラ&スーのMSがまた個性的でグー!

そしてそして、ラジヲで「おつきあい」がバレるとは!
恋愛相談激期待!

あ、あとCMネタありがとうございます!


>空の下、大切な場所
あ、アレ見せるんですか、斑目に?
斑目の想いがバレる展開はナカナカ。(激汗)にワロタ。

それにしても、春日部さん初登場のくだりは読んでるこちらが汗がでそうなくらいの価値観の違いが生み出す悲劇ですね。
ここからよくまあ恋愛対称にまで昇華されたもんだ(片方だけですが)。


116 :マロン名無しさん:2006/05/11(木) 02:16:19 ID:???
ああっ…!
言うの?言っちゃうの?
見せちゃうの?
「これ斑目さんカワイソスギ
絶対 本人見せらんない」
やつを?
こっちがドキドキシマスネ!
いやマジで!早く早くプリーズ!

117 :マロン名無しさん:2006/05/11(木) 05:38:19 ID:???
荻上さんの見せたがりキングデビルっ!!

118 :マロン名無しさん:2006/05/11(木) 12:04:46 ID:???
>現聴研
何か細かいところのリアルさが臨場感出してるね。
こういうイベントの経験者かな?
音楽雑誌の記事か何かを頼りに書いてるなら、それはそれで凄いが。

>801小隊
また今回のは細かいね、いろいろ。
マダラメとアンジェラのモビルスーツの装備の対比が何か面白い。
ラブロマは分からんかったな、読んでたけど。

>ラジヲのお時間
すんません、最近ジャンプ読んでないんで、大半のネタ分かりませんでした。
でも大荻コンビのノリは楽しめた。
大野さんまで絶望先生化し始めてるとは、恐るべし糸色望。
それにしても荻上さんに恋愛相談か…
好きな女の子に801絵のモデルにされちゃいました、てなのはやめた方がいいかな?

>空の下、大切な場所
斑咲初対面シーンキター!
でもこういう風に並べてみると、意外と第一印象は似てるんだな、春日部さんと荻上さん。
ついにあれを見せるのか、荻上さん。
次の日から斑目が部室に来なくなるってな鬱展開の無いことを祈る。
(まあ本来は毎日のように来てる方が問題なのだが)
あと大野会長就任で誰の目にも消えたと思われていた、クッチー会長就任はワロタ。
4年生で会長を任せられるぐらいだから、少なくとも5ヶ年計画は確定なんだろうな。
荻上さん、安心しなさい。
あなたが卒業した後も、彼がげんしけんを守って行くから。


119 :空の下、大切な場所:2006/05/11(木) 20:26:43 ID:???
「前編」に感想を書いてくれた方、読んでくれた方、ありがとうございました。
さて、連投になってしまい申し訳ないのですが、後編もできたので投下しちまいます。19レスです。

120 :空の下、大切な場所(後編)1:2006/05/11(木) 20:27:46 ID:???
「空の下、大切な場所」(後編)

***


「明日、私の秘密を見せたいと思います。」
………………今日の昼、荻上さんにそう言われた。


その夜、斑目はベッドの中で、なかなか寝付けないでいた。
暗がりでじっと考えていると、昼間よりもさらに気持ちが急降下していくのが分かる。
(…ずっと「底」だ、と思っていたのに…。まだ底があるんだな………………)
こんな形で本音が出てしまうなんて。しかも言う相手を間違えている。

過去の幻影にすがっても、得られたものは苦しみしかない。
…本当はずっと分かっていた。でも、忘れることもできず、振り切ることもできず、打ち明けることも出来ない。
ただじっと身をかがめてやりすごす方法しか、自分は知らない。
だから耐えるしかないと思っていた。それなのに。

明日、本当は部室に行きたくない。
これ以上格好悪いところを見られたくない。…でも。

(荻上さん…すごく真剣な目だったな………。
行かなかったら、あの目を裏切ることになるんだな………。)

(どうしようか…)
頭が少しずつ思考停止してゆく。考えすぎて疲れた。
ゆっくりと浅い眠りの中に落ちていった。


121 :空の下、大切な場所(後編)2:2006/05/11(木) 20:28:27 ID:???
………………………


次の日の昼休み。直前まで悩んだが、やっぱり部室に行くことにした。
行かなかったら、荻上さんと気まずくなってしまう気がする。それは避けたかった。

斑「………………」
部室のドアの前で固まる。一度深呼吸して、決意を固める。ゆっくり2回ノックする。
荻「はい」
いつものように荻上さんの声が聞こえ、斑目はドアを開けた。
荻「あ、ども…」
斑「や〜どうも。今日は暑いね、特に」
荻「そうですね、5月だっていうのに夏みたいな気温ですね。」

荻上さんが右に座っている。自分はドアに一番近いところの椅子を引いた。
最初は当たり障りのない話から入った。斑目は笑顔を作る。
斑「今年は気候が極端だよな〜」
荻「きっと地球温暖化ですよ」
斑「ああ…温暖化ネ…」
荻「………………」

荻「で、これが例のモノなんですが!!」
斑「は、ハイ!?」
荻上さんは急に大声で言った。びっくりする斑目。
荻上さんは手に大きめの茶封筒を持っている。


122 :空の下、大切な場所(後編)3:2006/05/11(木) 20:29:15 ID:???
斑「え〜それが”私の秘密”??」
荻「…そうデス」
荻上さんが封筒を差し出したので受け取る。
斑「見ていいの?」
荻「…どうぞ」

茶封筒を開けて中の紙束を取り出しかける。その間荻上さんは体を硬くして縮まっていた。
何かをこらえるようにぎゅっと目をつぶる。
斑「お、荻上さん?大丈夫?」
荻「大丈夫です…とりあえずそっちを見てください」
大丈夫に見えないのだが、ひとまず言われたとおりにする。封筒から紙束を取り出す。


(…あ、やっぱ801漫画か………)
一応予想はしていた。荻上さんは今までちゃんと見せようとしなかったのだが、ようやく見せてくれる気になったのだろう。
最初に見たのは2人の男の顔のアップだった。
(?…何の漫画のキャラなんだろ?麦男?でもこっちのメガネは千尋っぽくないな…)
紙をめくると、その2人が裸で抱き合ってるところだった。
めくるごとに表現が直接的になる。
…ただ、今まであらゆる成人向けの同人誌を読んできたので、それほど驚くような内容でもない。
(…フーン、こんなんなのか…絵がきつくないから見れなくはない、かな…ん?)
コマ割りで漫画になっている表現の絵が出てきた。
そのページを見て、固まる。


123 :空の下、大切な場所(後編)4:2006/05/11(木) 20:29:55 ID:???
『ネクタイの正しい使い方を教えてあげますよ…斑目さん』
『さ、笹原…何を……』
『お仕置き…ですよ』
そこにはちょっと眉毛がつり上がり気味の笹原と、妙に線の細い女の子みたいな自分(?)の姿が。

(………………………ていうかこのメガネ、俺!!!???)
他の絵も同じキャラのようなので、…この絵は全部、笹原と自分を描いたモノらしい。

(…はーーー!!そういや801って実在の人物もネタに描くらしーけど…まさか自分が描かれてたとは…。
うわーこれは…いや、内容はともかく…………………………。)

(俺が受けなんだ…orz)
(えーそうなんだ…組みしかれてる絵が多いけど…俺ってそんな弱そうに見えるのかね?うーむ…)


荻「言っていいですよ、気持ち悪いって」
荻上さんが言った。
斑「え、いや、その…」
荻「言ってください、正直に」
荻上さんは真剣な目でこっちを見ている。この絵を見せるのに、そうとうの覚悟をしていたらしい。
斑「………正直言うと…俺、『受け』なのかー、って」
荻「…ああ、それですか…」
斑「え?」
荻「試しに笹原さんが受けの漫画を描いて、笹原さん本人に見せたことがあります。そしたら、やっぱりそこで引っかかってました。
攻めのほうがいいかな、って」
斑「………………」


124 :空の下、大切な場所(後編)5:2006/05/11(木) 20:30:42 ID:???
荻「もし描かれるなら、攻めで描かれてたほうがいいんですかね…?」
斑「…まあ、人によると思うけど…。」
荻「私…中学生のとき、クラスの男の子の『総受け本』を描いた事があります。それは私と仲間の周りだけで見せ合うだけの本だったのに、その男の子本人の手にそれが渡ってしまったんです。
…その男の子は、不登校になって…転校してしまいました。私のせいで。」
斑「………………」
荻「もしかしたら『総攻め』だったら結果は違ってたのかも。…いえ、801自体が受け付けなかったのかもしれませんが…。
…今となってはもう、分かりません。聞くこともできないですし。」
荻上さんの瞳に、少し翳りが見えた。

荻「私はその時からずっと、自分の趣味が男の人に激しく嫌悪されるもので、恥ずかしいものだと思ってました。でも…。
もっと深く考えてみる必要があったんじゃないか、と思ったんです。
なぜ『嫌悪される』のか、それでもなぜ自分がこんなに801を描きたくなるのか。
801好きの人がなぜこんなにいるのか、って。…だから、男の人の意見を聞きたかったんです。」

荻上さんはそう言うと、ひとつ息をついた。青ざめて、額に汗をかいている。
荻「…でも、すみません。気持ち悪いもの見せて…」
斑「うーん、でもさ、例えば女の人で、男性向け同人誌見て拒否反応示す人いるし…。それに似てるんじゃないか?
単に個人の趣味とか、許容範囲の問題じゃないのかね。
…まー確かに、中学生の時に自分のそういうの見たらショック大きいかも知れんけど。今は801がどーいうモンか知ってるしなぁ。
笹原も俺も、前知識があるからそんなに気持ち悪いとは思わんよ。
…ま、俺の意見は参考程度にしといてな。他の感じ方もあるだろうし。」


125 :空の下、大切な場所(後編)6:2006/05/11(木) 20:31:19 ID:???
荻「そうですか…。そう言ってもらえると…。
でも…中学のときに私がしたことは、悪気がなかったからといって許されることではないです。それはわかっています。
だからこそ男の人の率直な意見を聞きたかったんです。過去と向き合うために。
でも、コレ最初に笹原さんに見せたとき、何ていったと思います?」
斑「…?何だろ。『攻め』で良かった、とか?」
荻「…えーと、その………一瞬だけど『反応した』って言うんです」
斑「反応?」
荻「ええ、その、アレが……………(///////)」
斑「………………」
斑(ささはら………………………………………orz)

荻「直接的な表現が多くて、絵柄がキツくないからって言ってました。別にホモなワケじゃないけど、『エロいから』ってことでした」
斑「なんかあまりにストレートで…つーかそういうこと言うかフツー?好きな女の子の前で!」

  …自分が昔、春日部さんに「正月休みに冬コミ新刊がないとヒマでしょーがない!」とか言ったことは忘れている斑目であった。

荻「ええ、でもそのストレートっていうか、『見当違いな答え』なのが良かったんです」
斑「?」
荻「ああ、この人嘘つかないな、って。その上で気持ち悪がられなかったんです。だからすごくホッとしました…」
斑「ナルホド、フツーだったらもっと気を使って発言しそうなトコだもんな。全くあいつは…」
荻「そうですねー」
荻上さんは思わず苦笑する。それを見て自分もホッとして笑う。


126 :空の下、大切な場所(後編)7:2006/05/11(木) 20:31:56 ID:???
斑「…しかし俺、受けなのかー…」
荻「受けです。というかですね、私が『メガネ受け』萌えだからです」
斑「そーなん?」
荻「その人を低く見てるとか、弱そうに見えるとか、そういうことじゃないんです。そのメガネキャラに萌えたから、受けさせたいんです!
というかこの配役も、メガネキャラを受けさせたいがために笹原さんを強攻めにしたんです!」
荻上さんは熱く語る。
荻「…あ、でも、あくまでキャラとしてなので…」
斑「ほほう…ま、荻上さんが実際付き合ってるのは、メガネキャラじゃないしな、笹原。」
荻「そうです…そーいうモノなんですよ」
斑「ふーん、なるほどねー…」

属性と、実際好きになる人が違う。…それは自分もそうだから分かる気がする。

荻「ま、『カワイソスギ』なのはさすがに…そこに入れてませんし…ブツブツ…」
斑「へ?」
荻「い、いえ何でも!!…あっそうだ、大野先輩は『斑目先輩はへタレ攻めのほうがしっくり来る』って言ってましたよ」
斑「………君らいつもそんな話してんの?(汗)」
荻「いっ、いつもじゃないスよ!…いやでもスミマセン(汗)」
斑「まぁ複雑な気持ちにはなるわな」
荻「スミマセン………」
斑「…例えば、例えばだよ?俺が笹原や他の男どもと、百合モノで『大野さん×荻上さん』について語り合うよーなモンかね?」
荻「え!?」
斑「いや例えばの話。そんな話はしたこと無いけど」
荻「…それは…複雑ですね………。」
斑「でしょ?きっとその違和感と同じよーなモンなんだよ。」
荻「わたすが受けなんですか………orz」
斑「そっちかい!!!」


127 :空の下、大切な場所(後編)8:2006/05/11(木) 20:32:37 ID:???
荻上さんが「受け」に不満があるようなので、試しに逆の、
『荻上さん×大野さん』について考えてみた。
    ↓
  荻「なんですかこのネクタイは?わたすを置いて卒業しようとでも?(ニヤリ)」
  大「いっ、いえ違うんです、コレは………!」
  荻「わたすから逃げられっとでも…いやわたすを忘れられるとでも思ってんですか?」
  大「くうっ…」

斑・荻「………………………………………。」

斑「変だろ(汗)」
荻「変ですね…(汗)」



…会社に戻りながら、さっきまでのことを考えていた。
荻上さんは、自分が絵を見ている間ずっと顔色が悪かった。きっとそうとうな覚悟で、あの絵を見せたのだろう。
…話を聞くことで、荻上さんは少しでも楽になったのだろうか?楽になったのならいいのだが…。

その次の日も部室に行った。
自分にも、話したいことがある。今まで誰にも言えなかったことが。


128 :空の下、大切な場所(後編)9:2006/05/11(木) 20:34:09 ID:???
斑「…でさあ、何かついてるなーと思って見てみたら………………鼻毛出てたんだよ」
荻「は、鼻毛ですか!?」
斑「やーもうびっくりしてさ、思わず飲んでたお茶噴きそうになったよ。
…注意してあげよーかと思ったけど、ホラ相手が仮にも(笑)女の子だしさー。」
荻「確かにそれ、男の人に注意されたらハズカシイですね…。でも、教えてあげなかったんですか?」
斑「もちろんそーしようと思ったが!でも、下手な言い方したら傷つくかも知れんよなーって思って、どんな風に言おうか考えててさ。
それに俺、一回話しかけたのに無視されたしさーーー。ジュースもいらないって言われたし。声かけづらかったんよ。
どーしようかなーって、頭の中にゲームの選択画面が!!」
荻「ああ、わかります!私もそんなことあります。」
斑「でも良く考えたら、いねーよな。…絶対いねぇ〜、『鼻毛のヒロイン』!!」
荻「ぶっ…そ、そうですね………」
荻上さんは思わず噴き出した。

斑「俺ぁ心の中で叫んだね。
『気づいて〜〜〜春日部さ〜〜〜ん!!色んな意味で!!!』」
荻「ぶはっ!あはっ、は、はは………!!」
荻上さんはお腹を抱えて笑っている。


129 :空の下、大切な場所(後編)10:2006/05/11(木) 20:36:01 ID:???
斑「も〜俺一人でオロオロしてさー。でも言おうとしたんだぜ?このままじゃ自分に負けるっつーか、何かに負けてしまう気がしたのだよ、魂的に!!そんで勇気を出して春日部さんに近づいたらっ!」
荻「ど、どーなったんですか?」
斑「変に力んじゃっててさ。急に春日部さんの方に近づきすぎたらしくて、ビビった春日部さんに殴られた。」
荻「殴られたんですか!?」
斑「『うわーーーーー!』って叫ばれて、バシーン!!吹っ飛ぶ俺とメガネ!!!」
荻「あ、あはは…ははっ………!!先輩、ハハ…腹痛ぇ……!!」
斑「あ、その勢いで鼻毛も飛んでったみたいでな。殴られた後に見たら、もうついてなかった。よし!
結果オーライ!!!みたいな」
グッと握り拳を作る。
荻「あ、はははははっ………!!」
荻上さんは笑いすぎて呼吸困難になっている。



荻「…す、すいません、笑っちまって………」
荻上さんはまだ肩を震わせて、涙目になっている。
斑「いや、笑ってくれて助かったよ。」
荻「え…そうですか?」
斑「うん。」


130 :空の下、大切な場所(後編)11:2006/05/11(木) 20:36:45 ID:???
…話せて良かった。
誰かに笑って話すことができて良かった、と思った。
もう少しでこの思い出さえ、「辛い思い出」に変わってしまうところだったから。


だから…良かった。

妙に体が軽くて、不思議だった。
特に何か状況が変わったわけでもないのに。…春日部さんに言ったわけでもないのに。
肩の荷物をようやく降ろせたみたいな………。


………………………


…その日から一週間が経っていた。
斑目は今日も昼休みに大学に来ていた。部室に行こうとして、ふと廊下から中庭を眺める。

最近は以前のような、胸が締め付けられるような気持ちにはならなかった。
5月の空は相変わらず高く、青く透き通っている。


131 :空の下、大切な場所(後編)12:2006/05/11(木) 20:37:17 ID:???
(いい天気だなぁ…)
今日はとても過ごしやすい日だった。
日光が降り注いでいたが、涼しい風が吹いている。
しばらくじっと中庭を眺めていた。

「斑目!」
不意に自分を呼ぶ声がして、振り返る。
すぐ後ろに春日部さんが立っていた。

咲「よっ」
斑「…ひ、久しぶり」
咲「久しぶり。どうしたのこんなトコで」
斑「あー、ちょっと中庭見てた」
咲「ふうん?」

春日部さんは自分の横に来て、中庭を眺める。
…少し髪を短くして、跳ね気味だった髪を内巻きにしている。
襟のついた袖なしの少しぴったりしたワンピースを着ていた。白地に薄い青のストライプが入っている。
ちょっと大人っぽい服装になった。

思わず見とれていると、春日部さんはこっちに気がついた。
慌てて目をそらし、中庭のほうを見る。


132 :空の下、大切な場所(後編)13:2006/05/11(木) 20:38:05 ID:???
咲「ん?何、どうしたのニヤニヤして」
斑「…え、マジ?ニヤニヤしてた!?(汗)」
咲「なんかいいことでもあった?」
春日部さんも笑いながら言う。
斑「え、あ、まーね…………………」

咲「そーいえばさ、さっき校門のトコで笹原に会ったんだけど」
斑「お、今日笹原も来てるのかー」
咲「…なんかさ、変なこと聞いたんだけど」
斑「ん?どんな」
咲「最近荻上さんがアンタの話ばっかする、って。なんか不安そーにしてんの、笹原が」
斑「はぁ…。何で不安になるのかね?」
咲「だからアンタと荻上が…って思ったんじゃないの?」
斑「は!?何だそりゃ。笹原のやつ何考えてんだ?」
咲「私もまさかって思ったけどさ」
斑「馬鹿だなー。荻上さん、俺に笹原のノロケ話とかすんだぞ?」
咲「へえ!そうなんだ、あの荻上が?じゃあ、笹原の話って…」
斑「ない。全然ない。」
咲「なあんだー、アハハハ。心配しすぎだね」
斑「ったく、笹原はー…」
アハハハと2人で笑う。


133 :空の下、大切な場所(後編)14:2006/05/11(木) 20:38:50 ID:???
さて。そのころ部室では、笹原が同じことを荻上さんに聞いていた。
荻「………は?」
笹「いや、その、ねえ?だって最近ずっと斑目さんの話ばっかするからさー…」
荻「…笹原さん、もしかして妬いてるんですか?」
笹「え、んんー…。まあねえ………」
荻「………くすっ」
笹「荻上さん?何で笑うの?」
荻「いや、スミマセン。なんだか嬉しくて…」
笹「え?」
荻「笹原さん。私は斑目さんのことなんとも思ってませんよ。ていうかなんでそんな話になるんスか」
笹「いや、ホラ…。例の801漫画でも、斑目さんの方が気合いいれて描かれてたし…」
荻「それはそれ、コレはコレです。」
笹「…そっか。」
荻「それに斑目さんは、か………」
言いかけて、止まる。
(あ、駄目だ。これ言っちゃいけねって。絶対言わないって約束したでねか!)
笹「ん?斑目さんが?」
荻「え、えーと…斑目さんはメガネキャラだからです!私が『メガネ受け』が基本なんで。でもあくまでキャラとしてですよ?」
荻上さんは慌てて取り繕った。
笹「ふうん、なるほどね…………」

(そうかァ…笹原さん妬いてくれたんだァ…)
妙に嬉しくなって、一人でニヤニヤしてしまった。


134 :空の下、大切な場所(後編)15:2006/05/11(木) 20:39:35 ID:???
廊下では、斑目と春日部さんがまだ話をしている。
斑「最近どう?店とか。やっぱ忙しい?」
咲「そうだね、大変だよ。特に今の時期…オープンしたてで、まだ客足はあるけど。今後どうなるか…。」
斑「フーン…大変なのか…」
咲「覚悟はしてたつもりだけど、ね…。気苦労がね…」
春日部さんはひとつ息をついた。

斑「…高坂はどうしてんの?」
咲「それがねぇ…全然顔合わせられなくてさ。」
斑「そーなん?」
咲「休みも合わないし。出勤時間も違うから、せっかく来ても、こっちが寝てる時間に来て、私が起きる時間にはまだ寝てたりさ…。
これじゃあねえ…」
斑「………」
咲「…でも仕方ないかな、って思うようにしてる。コーサカも仕事頑張ってるわけだし。寂しいなんて言ってられな…」
斑「それ言っといたほうがいいんじゃないか?」
咲「え?」
春日部さんは斑目の顔を見た。
斑「言っとくだけでも全然違うと思うぞ。言わなきゃ伝わらんし。高坂もそんな風に思ってるかも知れねーし。」
咲「………………そう、か…。そうだね…。」
春日部さんは頷きながら言った。
咲「アンタ、たまにすごく良いこと言うよね」
斑「たまにって失礼な」
思わず苦笑する。
咲「でも、そうだね…言ったほうがいいんだよね………」
春日部さんは少し考え込むように俯いた。


135 :空の下、大切な場所(後編)16:2006/05/11(木) 20:40:10 ID:???
咲「ねえ斑目」
斑「ん?」
咲「…アンタさ、私に何か言い忘れてることって、ない?」
斑「へ?ないけど…?」
咲「…本当に?」
春日部さんはじっと斑目のほうを見つめる。
斑「………………。」
言い直すことにした。


斑「…前はあったけど…今はねーよ。」
咲「…………そっか。」
斑「うん。」
春日部さんはしばらくこっちを見ていたが、再び中庭に目をやる。自分も中庭のほうを見た。

咲「…ならいいや。」
斑「うん。」


(言わないって自分で決めたからな………。)

今、自分は穏やかに笑えていると思う。
あの時、卒業式の日、春日部さんに言ったことを思い出した。
(『幸せに』………か。今は本気でそう思う。)


136 :空の下、大切な場所(後編)17:2006/05/11(木) 20:40:49 ID:???
木々の緑がまぶしい。まだ柔らかい若葉の色をしている。
風が吹いて、ひとつひとつの葉が日光を浴びて輝きながら揺れる。

しばらく黙って木が揺れるのを眺めていた。


大「あ、咲さーん!斑目さんも!!」
後ろから大きな声が聞こえた。
振り向くと、大野さんがこっちへ歩いてくる。後ろに朽木君もついてきていた。
咲「おお!大野じゃん。元気だった?」
大「はい!最近ずっとコスプレのイベントに行ってたんで忙しかったんですけどね。今とっても充実してます!」
咲「…ふうん、そりゃよかった………」
大「良かったら咲さんも…」
咲「もー絶対やらん!!!(怒)」
大「わかってますよ。もう無理じいはしません。咲さんが『やりたい』って言ってくれる日まで気長に待つことにします!」
咲「安心しろ大野。そんな日は絶対来ないから!」
大「あうう〜…」

斑「…朽木君?なんか疲れてるようだけど、どーしたの?」
さっきから妙に大人しい朽木に話しかけた。朽木は猫背のまま、がっくりとうなだれている。
朽「…ハア。実はワタクシ、最近五代目会長に就任いたしまして…。」
斑「あー、それは知ってる。荻上さんに聞いた」
咲「へー、クッチーが会長やってるんだ」


137 :空の下、大切な場所(後編)18:2006/05/11(木) 20:41:31 ID:???
朽「そーなんデスガ…慣れないことやるとどーしても、投げ出して外に飛び出して行きたくなりまして…。毎日、自己の衝動と闘っているでアリマス。
今のトコ7割くらいの割合で、衝動に打ち勝っているでアリマスが!!」
咲「…つまり3割の確率で、外に飛び出してるワケね?(汗)」
斑「…まあ、今までの朽木君のことを思えば、成長したか…な?(疑問形)」
朽木君は急に姿勢を正して右手を額につけ、ビシッと敬礼する。
朽「不肖朽木、皆さんの期待に応えるべく、至らないながらも立派に勤め上げてみせマス!!」
大「ええ、本当にまだまだ『至らない』んで、頑張ってくださいね?」
朽「おおぅ、大野先輩の厳しい突っ込み!これぞ私が求めていたものだァ、アハハハハ!!」
斑「…朽木君、ヤケクソになってないか?」
咲「ま、いいんじゃない。クッチーにはいい薬でしょ。」

皆でわいわい話しながら、部室に向かう。


 5月の中頃。空は青く青く透き通り、辺りは爽やかな春の日差しに包まれている。
…とても暖かく感じるほどに、明るい日光が自分の心にまで差し込んでくる。
そのためだろうか。今は心が弾むように軽い。


五月晴れの空の下、大切な場所は、今も変わらずここにある。

                            END



138 :あとがき(18レスでした):2006/05/11(木) 20:42:38 ID:???

今まで自分が書いてきたSSの、「まとめ」のつもりで書きました。時間かかった…。
「801」に関しては、本スレの四月号予想(笹荻成立直前)で何度か「笹原は『攻め』だから、見てもそんなにショック受けないだろう」という意見があったのを参考にしてます。801への反応、こればっかりは人それぞれだと思うのですが…。
ま、イチ意見ということで…。
荻上さんも、斑目も何とかしたい、と思っているうちにこんな話になりました。
荻上さんは「巻田君」の代わりに斑目に思いを話し、斑目は「春日部さん」の代わりに荻上さんに思いを話す。
…「本人」に話せない場合、信頼できる人に打ち明けるだけでも、気持ちはだいぶ落ち着くものです。
これで安心………いや!!まだ心配な人がいる。その名はクッチー!…この話もまた書きたいと思います。
では、読んでいただきありがとうございました。


139 :筆茶屋はんじょーき4:2006/05/11(木) 22:09:13 ID:???
傑作続きのあとで恐縮ですが、続きです。
前回の感想で、「次も鬱?」と言っていた人がいましたが、
…そのとおりです。

ごめんなさい。

140 :筆茶屋はんじょーき4:2006/05/11(木) 22:09:57 ID:???
千佳の義母の葬儀は、滞りなく行われた。
通夜の席で、千佳は高柳を呼び、告げた。
「遅くなりましたが、荻上の家を守るため、縁組をしたいと思います」
「承りました」
千佳の決意に満ちた表情を見て、高柳は懐かしさと、悲しさを感じた。
それは、荻上家に来たばかりの彼女の顔だった。

141 :筆茶屋はんじょーき4:2006/05/11(木) 22:10:28 ID:???


”筆茶屋はんじょーき”



142 :筆茶屋はんじょーき4:2006/05/11(木) 22:11:04 ID:???
あの日、恵子に言われて以来、笹原は暇を見ては荻上屋を訪れるようにしていた。
しかし、店が開くことはなかった。
隣近所に話を聞くと、夜になっても明かりが灯らぬことから、既に空家なのではないか、ということだった。
笹原は少なからず衝撃を受けた。
ここにさえ来れば、たとえ無視されても、顔を見て、声を聞けると、そう思っていたのだ。
しかしあては外れ、彼女に会えないという現実が笹原を苦しめる。
斑目とともに、ただひたすらに剣を振る事で、気持ちを鎮めようとしていた。
そんな日々が続くにつれ、笹原の中で一つの思いが膨れ上がる。
(千佳さんに会いたい)

その日、笹原が荻上屋を訪ねると、ひさしぶりに表が開いていた。
気色ばんで駆け寄ると、そこに千佳の姿は無く、複数の男達が家財道具を片付けていた。
一人を引きとめ話を聞く。すると、
「へえ、店を閉めることにしたんだそうで。なんでも持ち主の家に不幸があったとか。ここの娘さん?家に戻ったらしいですぜ」
そう答えると、再び仕事に戻ろうとする。
笹原が呆然としていると、その男は何か思い出したようで、一つ手を打つと付け加えた。
「そうそう、そういえばその娘さんは喪が明けたら祝言だとか。まったく、忙しい話だねえ」

143 :筆茶屋はんじょーき4:2006/05/11(木) 22:11:36 ID:???
笹原はどこへ向かうでもなく、ただ歩きつづけていた。
歩きながら千佳のことを思った。
行き倒れた自分を助けてくれた彼女を、自分に茶と団子を出す時のつんと澄ましたような彼女を。
何か手伝わせてくれと頼み込んだ時の困ったような彼女を、そして、自分に笑いかける彼女を。
笹原の中をいくつもの感情が入り乱れる。
悲しみ。寂しさ。後悔。怒り。
笹原は足を止め、空を見上げた。
不意に自分が滑稽に見えて、自嘲する。
(何で俺はこんなに千佳さんのことを考えているんだ?)
脳裏にいつかの恵子の声が聞こえる。それは笹原を激しくなじり、そして、
(そうか。俺は彼女が好きなんだ)
ようやく笹原は自分の気持ちに気付いた。

144 :筆茶屋はんじょーき4:2006/05/11(木) 22:12:41 ID:???
時は少し遡る。
荻上家の客間で、千佳と男が向かい合っていた。
高柳は、千佳の横で苦虫を噛み潰したような顔をしている。
男が口を開く。
「原口と申します。このたびの荻上家との縁組、当家にとっても誠にありがたき申し出。誠に恐悦至極に存じます」
「こちらこそ、末永くよろしくお願いします」
無表情に千佳が答えると、高柳の渋面はさらに深くなった。
そのまま立ち上がると、千佳に一声かけて部屋を出る。
追って部屋を出た彼女に、高柳は詰め寄った。
「千佳さま。今からでもこの縁談、お断りなさい。あの男は駄目です」
「そもそもあの男は金で御家人株を買い、更にその立場を利用して、相当にあくどく稼いでいるという噂です」
「今回の件も、荻上家の財産だけが目的に決まっています!」
「でも、主家筋からの紹介では…」
「確かに。ですが、千佳さまが嫌といえば、この高柳が腹を切ってでも取りやめにして…」
「用人風情が家の一大事に口を挟むものじゃないよ」
いつの間にか、原口が二人の傍に立っていた。
原口は笑顔だった。
しかしの目が笑っていない事は、二人にも良くわかった。

145 :筆茶屋はんじょーき4:2006/05/11(木) 22:13:25 ID:???
原口は千佳を抱き寄せると、高柳に告げる。
「お前は首だ。今すぐ荷物をまとめて出て行け」
「お待ちください!彼は荻上家の家臣です」
千佳は原口を睨みつける。
原口は鼻で笑う。
「ならば、貴方が首にしなさい」
「!」
「家を潰したいのか?」
原口に凄まれ、千佳は目を閉じ、うなだれて言った。
「高柳。長い間ご苦労様でした…」
「千佳さま!」
「と、言う事だ。さっさと出て行け」
そう言い置くと、原口は千佳を抱いたまま、引きずるようにして客間へ戻っていった。

それ以降、千佳の周りは急変した。
原口は、荻上家の使用人全てを解雇し、家事の全てを千佳に押し付けた。
そして使用人たちと入れ替わるように、ごろつきやヤクザ者が入り込んだ。
彼らの世話まで押し付けられ、ついに倒れてしまった千佳に、原口は笑いながら話す。
「すまなかったね、千佳。これぐらいで倒れるとは思わなかったんだ」
「だから、一人雇う事にしたよ」
「俺の部屋にいるから、後で挨拶に来なさい」
「…ありがとうございます」
千佳にはそう答える事しかできなかった。

146 :筆茶屋はんじょーき4:2006/05/11(木) 22:14:03 ID:???
布団の中で千佳は思う。
(わたしはまた、間違いをしてしまったのかもしれない)
(でも、こうしなければこの家は…)
千佳の脳裏に義母の遺言が響く。しかし千佳は寂しげに笑うと、
(いいんです。この家さえ守れるのなら、わたしはどうなっても)
(それでいいんです)
心の中で、そう答えた。
まだ酷く重い体を、無理に起こす。
(挨拶に行かなくては…)
よろめきながら、千佳はかつての義父の、今は原口の部屋に向かった。

部屋の中からは、話し声がかすかに漏れている。
「失礼します」
言って襖を開けると、そこには原口と、忘れる事のできない、決して見たくなかった顔の女性がいた。
その女性はおもむろに口を開いた。
「お久しぶり。千佳」
「中島、様…」
千佳が呆然としていると、原口が口を挟む。
「知り合いか?」
「ええ、過去に、少し」
その悪びれない態度を見ているうちに、千佳の内心を様々な感情が過ぎる。
怒り。悲しみ。後悔。憎しみ。郷愁。
そして彼女のその態度が、過去の行いを忘れて同じ事を繰り返そうとしていた自分と重なり、千佳はその場に崩れ落ちた。
「能無しめ。挨拶もまともにできんのか」
倒れた千佳を冷ややかに睨みながら、原口は言い捨てた。

147 :筆茶屋はんじょーき4:2006/05/11(木) 22:14:39 ID:???
「ずいぶんとこき使っているようね」
千佳を抱き起しながらの中島の声には、明らかな険が含まれていた。
「ほとんど用済みだからな。抱く気にもならぬ、とすれば雑用にでも使うほかあるまい?」
原口は平然と答える。
「用済みなら、私がもらうわ。あと、もう一人雇うから」
「ずいぶんと御執心だな」
千佳の頭をなでながら話す中島を、原口は探るように見つめる。
「ええ、そうよ」
「なぜだ?」
「あなたにはわからないわ」
中島は、原口を見上げながら、見下した。
空気が険悪化していく中、原口が口を開こうとした直前に、中島は言う。
「むしろ私には、なぜあなたがそこまで金にこだわるのかわからないわ」
「…金は力だ」
原口の声は唸り声に近かった。
中島は千佳を抱くと、部屋を出る。去り際に振り向くと、
「その『力』で何をするの?」
と、明らかに嘲笑を含んだ台詞を残して去っていった。
残された原口は、しばらく黙り込んだ後、吐き捨てた。
「女狐め…」
同じ頃、それを聞いたわけでもなく、中島も吐き捨てていた。
「豚が」

148 :筆茶屋はんじょーき4:2006/05/11(木) 22:15:18 ID:???
千佳が目を覚ますと、そこには優しく微笑む中島がいた。
「大丈夫?」
中島の声とともに、千佳は冷やりとした感触を額に感じた。
ぼんやりとした意識の中、中島の声が聞こえる。
「ねえ、憶えてる?前にもこうやって倒れた千佳を看病したことがあったよね」
「すごい熱だったのに、無理に出てきて、突然倒れたの」
「『どうしてそんな無理したの』って聞いたら、『皆に会いたかった』なんて答えて」
「千佳が手を離さないから、私は添い寝までしたんだから」
憶えている。
ずっと隠していた、自分の衆道好きを受け入れてくれた友達を。
その友達と過ごした日々を。
うれしくて、楽しくて、夢のようで。
…そして夢だった。

『ねえ、巻田の息子って知ってる?』
『え、う、うん』
『あ〜、彼?ちょっと線の細そうな…』
『そう彼。もし彼を主役にするならどんな話を作る?』
『う〜ん。やっぱり”受け”よねえ』
『ただの”受け”じゃ面白くないよね。ここは”総受け”で!』
『あはは、それ良い!ねえ千佳。あなた書いてみない?』
『え、で、でも…』
『大丈夫、千佳なら書けるって』
『そうそう、それに千佳の書くのって本当にすごいし』

149 :筆茶屋はんじょーき4:2006/05/11(木) 22:16:04 ID:???
彼女たちはもういない。
彼もいない。
わたしが書いた本の所為で。
わたしの所為で。
わたしの所為で!!

「うわあぁぁぁあぁあ!!!」
千佳は叫びながら飛び起きる。頭を抱えて、全身を酷く震わせる。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
呪文のように呟きながら。
「千佳!」
中島が千佳の肩を掴む。
千佳はゆっくりと振り向く。虚ろだった瞳の焦点が合う。そして千佳は大きく目を見開き、
「ごめんなさい」
とだけ言うと、気を失った。
中島は悲しげにため息をつくと、千佳を布団に寝せて部屋を出た。

その日以降、千佳は寝込む事が多くなった。
そんな彼女を中島はずっと看病していた。
そして原口はそんな二人を苦々しく見ていた。

三人が三人とも、このままでは終わらない事を予感していた。

150 :筆茶屋はんじょーき4:2006/05/11(木) 22:18:52 ID:???
以上です。
次はちゃんばらやって、〆ということにしたいです。
あと、衆道に攻め・受けがあるかどうかは知りませんw

151 :マロン名無しさん:2006/05/12(金) 01:47:16 ID:???
>空の下、大切な場所
うーん、いい。
所々笑わせるのに、最後の斑目と咲のシーンがとても切なく。
クッチー、頑張れ、クッチー
>筆屋繁盛記
ぬふぅ、な感じですかね。>衆道の春本
あったんですかね〜。ちょっと気になるw
今後の展開に期待したいお話でしたww次回を待つw

152 :マロン名無しさん:2006/05/12(金) 15:01:26 ID:???
>空の下、大切な場所
悩み事の相談というものは、相談できた時点で半分は解決したも同然、と昔何かで聞いた事がある。
その意味で今回の斑荻は正解だったと思う。

あとはクッチー会長編が読みたいな。
テンパって逆切れして大野さんに締め上げられたり、部室の窓から飛び降りようとして、荻上さんに「ここは3階です!」ってしがみ付いて止められたり…
案外おいしいかもしれない。

>筆茶屋はんじょーき
鬱展開に絶望しかけたが、次回はちゃんばらということで盛り返した。
例えばこんな感じかな…

笹原、原口の屋敷の入り口の戸板越しに1人目の用心棒を刺殺。
用心棒と外れた戸板を串刺し状態のまま内部に侵入。
その他大勢用心棒たちを前にひと言。
「笹原完士見参!」

あと斬られ役でいいからクッチー出してやって下さい。
用心棒役とか、あるいは笹原側の助っ人とかで。
例えば…

示現流の達人で、得物は子連れ狼・拝一刀御用達の戦刀・胴太貫。
示現流とは上段の構えからの最初の一太刀に全力をかけ、かわされたら後は知らないという豪放磊落な剣術。
ところがクッチー、屋敷内の戦いということを忘れてた。
上段に振りかぶったら、長身が災いして胴太貫が天井に刺さり、「にょにょにょ?」とか言ってる間にバッサリ。


153 :マロン名無しさん:2006/05/12(金) 18:21:27 ID:???
>>筆茶屋はんじょーき
>しかし、店が開くことはなかった。

↑繁盛してねーよ!(w
マダラメ3世とか801小隊に助けてもらいたいくらいの荻上の不遇。原口許さん。
次回のカタルシスに期待してまっせ!

個人的には、春日部さんが助っ人に現れて「暴れん坊大名」とか、笹原高坂斑目で「三匹が斬る」とか(まあ、斑目は論外だけど)。

154 :マロン名無しさん:2006/05/12(金) 21:56:56 ID:???
>>118
現聴研野外初ライブ編は、イベント経験も無く、雑誌を頼るでもなく
音楽やってた友人からの又聞きの記憶と妄想で書いていますorz
感想ありがとうございます!!

>>空の下、大切な場所(後編)
なんか読後感がものすごくすっきりしてます。ほぼ全てを清算したような…
まさに神作品!!斑目に幸アレ!!

>>筆茶屋はんじょーき4
うわあものすごい欝。。。このままではもやもやが収まりません!
次回作に超期待。

155 :マロン名無しさん:2006/05/13(土) 11:42:25 ID:???
>筆茶屋はんじょーき
>>152です。
たびたびスマンが、クッチー斬られ役の場合の死に様、もう1つ考えた。

のど笛を斬られたクッチー。
傷口から空気が漏れる音がする。
朽木「おー僕チンの首が鳴いてるにょー。首袈裟に斬ると木枯らしのような音がするんだが、それをモガリ笛と言いますにょー。1度そんな音がするように斬ってみたいと思ってたんですが、自分の首で聞くことになるとは、いやー笑っちゃいますなー」
斑目「ところでのど切られて空気もれてるのに、何でそんなに長々喋れるの?」
朽木「あっ…」
まるでそのことをツッコまれて思い出したかのように、突如傷口から噴水のように血を吹いて絶命。


156 :マロン名無しさん:2006/05/13(土) 12:59:38 ID:???
>筆茶屋はんじょーき
荻上さんの過去話、原作に忠実ですね。しかもハラグーロにいいように使われて…くう…
欝ですが、だからこそ!次の話であの人が助けに来るトコが生きるんだろーなーと予想。
ちゃんばら楽しみでアリマス!

「空の下、大切な場所」(前編・後編)の感想いただきありがとうゴザイマス。(連投してスイマセンですた)
>斑・咲初対面シーン
第一話読み返してて、「うわー斑目も咲も、最初はちょっと痛いキャラだったんだなー」と思ったところから妄想が始まり。
コーサカに服を合わせてくるのとかはいかにも女の子らしいけど、仏頂面でいきなり人の顔なぐったりとか。
斑目はキャラ作りのためか、敵作るような発言したり。今となっては成長っぷりがまぶしいです。
>>151
今まで斑目書いてて、初めて告白させなかったんですが、自分で書いてて「なんで告白せんのだ!」と思いながら書いてました(汗)
でも告白しないことでずっと信頼できる仲間でいられるかも知れない、とそんな風にも思いました。
>>152
>相談できた時点で半分は解決  そうですね。自分一人で考えててもどんどん悪い方に考えてしまったりするし。誰かに言うことで自分でも考えを整理できるし。
クッチー会長話も今書いてます。オタノシミニ〜。
>>154
なんかすっきりさせすぎて、今軽く虚脱してます。(汗)いやまだだ、まだ書くぞ!!

157 :マロン名無しさん:2006/05/16(火) 01:09:24 ID:???
ファーストシングル 
「MOUSOU」 

アタイは地獄の筆女 
昨日は元カレ犯したぜ(紙面で) 
明日は先輩ほってやる(紙面で) 
ワープワープワープ 彼氏でもワープ 
妄想せよ モウソウせよ 
脳内を薔薇に染めてやれー 

『出たー!オギウエーさんの音速ワープだぁ!!』

2日間スレが止まってるのでダレモイナイ…イマノウチ…に書いた。
ていうかD.M.Cネタがやりたいだけだった。
今は反省している。でも懲りていない。

158 :マロン名無しさん:2006/05/16(火) 01:12:38 ID:???
ちょっとひと息。

159 :マロン名無しさん:2006/05/16(火) 01:21:01 ID:???
ε=( ̄。 ̄;A フゥ…

ここまでちょっと駆け足だったから、
一休み一休みw

160 :マロン名無しさん:2006/05/16(火) 13:06:30 ID:???
>>159
つ旦
お茶でもどうぞ〜。セットで筆だんごはいかかですか?

161 :マロン名無しさん:2006/05/17(水) 00:25:27 ID:???
>>160
どもども

旦(゜∀゜)つ─○○>

ウマー(゜д゜)

162 :終末の過ごし方:2006/05/17(水) 03:08:52 ID:???
「例えば・・・明日世界が滅ぶとしたらどうしますか?」
「うーん、そうだなあ・・・。」
「やっぱり、いつもは出来ないことしたいと思います?」
「いやー・・・。」
「・・・。」
「いつもどーりに過ごすかな。」
「え?」
「いつものように大学行って、部室来て。」
「そんなんでいいんですか?」
「そして、荻上さんと一緒に過ごすんだ。」
「・・・。」
「それが一番でしょ?」
「・・・はい。」

163 :マロン名無しさん:2006/05/17(水) 04:58:11 ID:???
>週末の過ごし方
絶望した!最終回間際の終末感に絶望した!

まあそれはともかく、昔何かの雑誌のインタビューで浜田省吾が言ってたことを思い出した。
80年代、彼が政治的なメッセージ色の強い歌を歌っていたことについて訊かれ、こんな風に答えていた。

みんなが恋愛オンリーの歌ばかり歌ってるからこそ、俺は政治的な歌を歌う。
もしみんなが政治的な歌を歌うようなヤバい政治状況になったら、俺はむしろ「この時代に君に出遭えてよかった」みたいなラブソングを歌いたい。

164 :マロン名無しさん:2006/05/17(水) 05:14:49 ID:???
>>終末の過ごし方
終末、一見暗そうなテーマだけど、ただのノロケ話じゃあああ!w
…と、叫んでみる。ずっと幸せでいてください君ら。止めません。というか誰も二人を止められません。

165 ::2006/05/17(水) 15:02:01 ID:???
「・・・まだ、思い出す?」
「まあ・・・。忘れることは出来ません・・・。」
「そっか・・・。」
「でも。」
「・・・?」
「前みたいに無理に忘れようとは思わなくなりました。」
「それは・・・。」
「それでいいんです。」
「・・・うん、そうだね。」

166 :マロン名無しさん:2006/05/17(水) 22:44:10 ID:???
さて、皆さんこんばんは。
「アキハバラ・メタル・シティ」が、ある程度形になったので投下にやってきました。
DMCを知ってる方が多いようで、少々安心しました。

そして、いきなりですが、最初に謝っておきます。
現視研ほとんど関係なくなってしまってごめんなさい。
DMCを存じない方にはまったく訳のわからない作品だと思いますがご容赦を。

なお、今回の投下は「前編」です。続きはまた後日に。


>まとめさんへ
前作「GENSIKEN VS LABUyan」掲載ありがとうございました。

今作品も掲載いただけるのでしたら一つお願いが。
今作の「(*注釈)」は章区切りもかねていますので、
作品の最後にまとめず、そのままの形で掲載お願いできないでしょうか?

167 :AKIHABARA METAL CITY (1):2006/05/17(水) 22:47:13 ID:???

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(前回のあらすじ)
 なんかクッチーとカズフサに友情が芽生えた。
 「べ、別にカズフサさんごときに友情フラグなんか立てて無いんだからねっ!(クッチー)」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「―――と、言うわけでだな、朽木クンよ。アキバに連れて行ってはくれんカネ?」
 ここは椎応大学サークル棟。現代視覚文化研究会部室に入ってきたカズフサの第一声がコレだった。

「お断りいたしますにょ。ワタクシ只今エントリーシートを書くのに忙殺されておりますゆえ」
 朽木はその言葉を無視したい気持ちで一杯だったが、カズフサを無視するとスネるかで暴れるかで
被害が拡大することが用意に予想できたため、簡潔に断りの理由と言葉のみを口にし、手元の書類へと視線を戻した。
 朽木も既に大学四年生。春からの行動とは遅ればせながら、将来に向けて稼働しはじめたのであった。
だいたい、いきなり「――と、言うわけで」と言われてもワケがわからない。
脳内で妄想と計画を膨らませていた、カズフサ本人は別として、だ。

「エントリープラグゥ? いつから朽木クンはエヴァのパイロットになったと言うのダネ? ンン〜〜?」
 毛の先ほども働くことに関する活動をしたことが無いカズフサらしく、エントリーシートの『エ』の字さえ知らないようだ。

「エントリーシートですにょ! エントリーシ・ィ・ト!! ワタクシしゅーしょく活動の真っ最中でありますゆえ、
アナタにかまっている暇はミルモのハナクソほどにもアリはしませんぞ!!」
 自身の言葉どおり『構ったら負け』であることが解っているにもかかわらず、
ついつい声を荒げてツッ込んでしまう朽木。ソコがまだまだ若い。
「だーいたい、何でアキバなんですかにょ? 大坂にだって日本橋というオタク街はあったはずアルね!
オタ空気を堪能したいなら、そっち行けばいいし、とっととラブ穴とおって平方市にお帰りくださいな!」(*注1)

168 :AKIHABARA METAL CITY (2):2006/05/17(水) 22:49:25 ID:???
 その朽木の突っ込みにメガネをギラつかせながら応じるカズフサ。
「クフゥ……『なぜアキバか』だとォ? よかろう、答えてやろうじゃないかキミィ。
それは一生添い遂げる伴侶を見つけるためダヨ!」
 『伴侶』と言う単語を耳にした朽木が怪訝な顔をする。
 この男――大森カズフサはこれ以上は無いという位の非モテ系であり
『伴侶』が3次元の彼女を意味することは物理的にありえない。それに加えて3次元を捨て、
2次元キャラに求愛するほどの覚悟も資質も持ち合わせていないのだ。

 なら『伴侶』とはどういう意味なのか。朽木が不思議に思っていると、カズフサは続けて口を利いた。
「実はまたオナホール師の殿堂入りを目指そうと思っていてネ。
丈夫で長持ち、しかもキモチいいホールを探そうと思っているのだヨ……
……そう、一生添い遂げても良いと思えるような奴を!
聞けば、アキバにはビルの全フロアが紳士淑女のための
オモチャで埋め尽くされた建物があると言うじゃないかネ!
そこに行けばきっと出会える! このオレの泌尿器にジャストフィットす    」
 「ストーーーップ!! ストーーーップ!! 
カズフサさん、アウト、アウトですにょ! 板的にアウトでアリマス!!」
 あわてて止めにかかる朽木。そう、ココは21禁板では無いのだ。

「カズフサさん! アンタいい加減にそのシュミどうにかしないとアフタヌーンから追い出されちゃいますにょ!?」
「えー? せっかくヒデヒコから名人のホールハンドリングをマンツーマンで教授し    」
「黙れ無職。二十九歳童貞」
まだグダグダ言うカズフサを切って捨てる朽木。

「クックックッ……その程度の言葉の暴力でオレを葬れると思ったか、クッチーよ?
『無職』も『童貞』も言われ慣れて、もはやビタイチなんとも感じんわ!!!」
 そして、そんな情けないセリフを威張りながらカズフサは叫ぶ。

169 :AKIHABARA METAL CITY (3):2006/05/17(水) 22:51:10 ID:???
「行くんなら一人で行ってくださいにゃ。椎応大からは立川で中央線に乗り換えて、アキハバラまでは一本アルね」
 もはや朽木は怒鳴る気力も失せて『出てけ』という意思表示だけをする。

 だが空気の読め無さならカズフサのほうが一枚上手だ、そんなイヤミに臆する事無くマイペースで喋りだす。
「ああそうそう、その中央線」
「は? 中央線がどうかいたしましたかにょ?」
「うむ、実は闇ルートの裏オークションで今夜のD.M.C.のライブチケットをゲットしてな。
 ライブハウスがその中央線沿いなのだヨ。アキバでのオナホ探しはオレ的にこのイベントの前座よ!」
 事実、中央線沿いにはライブハウスが非常に多い。

「でぃえむしい? カプセルコンピューター略してカプコンのデビルメイクライですかにょ?」
 朽木は聞きなれぬ単語に興味を引かれたか、ついつい聞き返してしまう。

「き、貴様ァッ! 帝都・お江戸に住んでおりながらDMCを知らんと抜かすかぁっ?!」
「そんな事申されましても、存ぜぬモノは存ぜませんにゃ。ライブって事はバンドかなんかですカナ? カナ?」
「クフゥ……コレだからインディーズと言ったらサウンドホライズンしか知らないようなボクチャンは困る……
無知! 無知無知無知無知! 無知とは罪イッ!」
「カズフサさんに無知を指摘されると、そこはかとなくムカ付きますな……
まあ、語りたそーな顔してらっしゃいますし、話くらいなら聞いて差し上げようじゃアーリマせんか!」

 実際、朽木もココ数週間の就職活動によってストレスが溜まっていた。
面白そうな話なら聞くだけの価値はあるかもしれないと判断したのだろう。

 『ラブやん』作者の田丸氏は大層なメタルッ子であり、
その被造物であるキャラクター達もまたメタルッ子属性を付与されている事が多い。
だからカズフサは語り始めた。ノリノリで。

170 :AKIHABARA METAL CITY (4):2006/05/17(水) 22:53:24 ID:???
 D.M.C.は「デトロイト・メタル・シティ」の略であり、インディーズシーンの
最エッヂを突っ走るデスメタルバンドであるということ。
 プラチナチケットである今夜のライブを取るのに自分がイカに苦労したかということ。
 そのDMCのギターボーカルを務める「ウォルフガング・ヨハネ・クラウザーII世」は
本物の悪魔であり、数々の伝説を残しているということを。

 そして、全てを聞き終わった朽木はこう言った。
「……ハァ? 悪魔がバンドやってるって、何ですその頭の悪ぅぃ設定は?」
「てめぇソレはクラウザーさんに対する冒涜かぁーーーーッ?!
クラウザーさんは生まれた時に『殺してくれ』と発言し、幼き頃に両親をSATSUGAIした 伝説の魔王なんだぞ!」
「カズフサさん……そんなアホ設定を本気で信じてるだなんて……前々から脳味噌が不自由な人だとは
思っておりましたがまさかソコまでとは……もう、ライブでもアキバでも一人で好きに行っちゃってくださいにょ」
そう言い捨てると、椅子に座ったまま反り返るほどに大きく伸びをした。
 すると、ちょうど朽木の真後ろに張ってあった『くじびきアンバランス』カレンダーに目が行き―――
「あああああああああああっっっ!!!!!」朽木は絶叫した。

 そのまま、反り返りから戻る反動で一気に椅子から立ち上がり『くじアン』カレンダーに向き直る。
見れば今日――四月八日だ――の日付に赤マジックでグルグルに丸がつけられ、こう註釈が入れられていた。
『プシュケ新作[食込戦隊ぶるまちゃん オルタナティブ]体験版頒布会。15時より。秋葉原メッセ前』と。(*注2)

「し、しまったぁぁぁぁぁぁぁっっ! 大事なイベントを忘れておりましたぁっ!!」
「ンン〜? いきなり声を荒げてどうしたというのダネ、ハニバニ?」

 朽木はのんきに語りかけてくるカズフサの顔を見、悩み、そしてまた見、また悩み、
逡巡を繰り返したが、やがて重々しく、そしてポツリとこう言った。

                     「二枚」

「は?」
それを、マヌケ面をさらして聞き返すカズフサ。
 そんなカズフサを前に朽木は次々口を開いていく。

171 :AKIHABARA METAL CITY (5):2006/05/17(水) 22:55:48 ID:???
「二枚ですにょ。二枚。カズフサさん、貴方が一緒に並んで下されば、二枚手にはいるのでアリマス」
「えーと、それはドオイウ?」
「体験版でアリマすよ!! プシュケの体・験・版! 特に本日のイベントは絵師の
直筆色紙が当たるやも知れぬ抽選つきナリ! 二人いれば抽選券が二枚手に入るという寸法アルね!」
 言いながらも朽木はカバンを取り、ゴミ溜めの様になっている部室の片隅からビニール傘を発掘する。
午後から雨との予報なのだ。オタアイテムのほとんどが水に弱いことを考えれば、必須装備だといえる。

「えと、朽木クン? 確か就職活動がどうとか……」突如活発に動き始めた朽木に対応し切れていない。
「しゅーしょく活動ですとォ〜〜?」しかし朽木は『それがどうした!』といわんばかりの表情で切り返し、そして続ける。
「にょっほっほっほっほっほ…確かに人間は労働を行い、それの対価として金銭を得ることによって生きていきますナ。
ですが!! 人はパンのみに生きるにあらず! 食らうだけならケダモノでも出来る! 
魂の安寧を得、精神の充足を得てこそ真の人間の生き様と言えるでSHOW!!」
 そういう朽木の表情はうっとりとし、瞳孔は開きつつある。明らかに自分の言葉に酔っている。

「なればこそ! 漢ならば今日のイベントは避けては通れぬと言えるナリね!!
就職活動など明日でも出来ますが、プシュケの配布会は今日しかないのでアリマすから!!
ボヤボヤしないでとっと参りますぞ!! カモンベイビィゴートゥーアキハバラ!!」
そこまで一気に言い終えると、朽木はカズフサの手を引き、飛び出すかのように部室から駆け出した。
「ちょっ……オレもうトシだからそんないきなりダッシュかまされて――」
連れられて叫ぶカズフサの声もどんどん遠くなっていく。

 こうして、本日の現代視覚文化研究会の部室は平和を取り戻した。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(*注1) 『ラブ穴』:「らぶほーる」と読む。ぶっちゃけ『どこでもドア』。ラブやんの便利道具の一つ。
(*注2) 『メッセ』:平たく言うとオタショップ。アキハバラにおけるエロゲーギャルゲーのメッカの一つ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

172 :AKIHABARA METAL CITY (6):2006/05/17(水) 22:57:58 ID:???
「ねえ……西田君まってよ〜〜」

          ドン
一方そのころ『首領・きほーて秋葉原店』では二人の青年が買い物の真っ最中であった。(*注3)
しかし、西田と呼ばれた男は『待て』という声を無視し、カートに次々商品をブチ込んで行く。

 カート内には缶入りクッキー、輸入物の馬鹿でかいコンビーフ、サケ中骨水煮缶、
非常用カンパン、などなどなど、カロリーたっぷりの保存食が山と積み込まれ
今にも崩れんばかりである。
 しかしこれらを常食しているのだとしたら、西田という男の体型にも納得がいく。
小太り……いや、コレは肥満の範囲に入る。はっきり言うとデブだ。

他方、声をかけたほうの青年はヒョロ細い体型をしており、いかにも気弱げだ。
そんな青年に西田はボソりと声をかける「トロトロすんな根岸。このクズ」

「酷いよ西田君……クズだなんて」根岸と呼ばれた青年は半ばベソをかいた様な表情でそう答える。
だが根岸の行動が遅いのも無理も無い、何やら背中には大荷物を背負っている。
 そんな根岸を無視し『次は飲み物だ』と、ばかりに西田がペットボトルのコーナーで吟味を始めると、
「あ、待って、西田君」と、根岸が声をかけてきた。

 声も無く西田が振り返ると、なにやら背中の荷物をゴソゴソいじくり、根岸は一本の大きなビンを取り出した。
中には赤い液体がたっぷり収められている。
「トマトジュースだよ、昨日お母さんが送ってきてくれたんだ。みんなの分もあるよ」
 しかし根岸が喋り終わる間も無く、西田はジュースの選別を再会した。
どうやらトマトジュースはお気に召さないらしい。

 何とか興味を引こうと根岸はトマトジュースについて語り続ける。
「ウチの畑で取れたトマトなんだ。トマトだけどあまーいよ。
へへっ、アメリカのジャックさんにも送ってあげようと思ってるんだ」(*注4)
「トマト嫌い」あっさり返す西田。うなだれる根岸。

173 :AKIHABARA METAL CITY (7):2006/05/17(水) 23:00:14 ID:???
「ところで西田君。食べ物ばっかり買ってちゃダメじゃないかな?」
 トマトジュースを背中に戻しつつ、ふと、思い出したかのように根岸が言うと、
西田もピクリと手を止め、ジュースをカートに積める作業を中止した。

「ほら、今夜はライブだし、社長の言い付けどおり、ちゃんとメイク買って帰らなきゃ」
「……代わりに買っとけ」
 興味なさげに西田が言うと『またか……』と根岸は心の中で毒づく。
根岸は西田とは付き合いも結構長いのだが、未だに西田の考えている事が理解できていない。
 もともと西田が感情をあまり外に出さない性格だと言うのもあるのだが。

 そんなことを考えつつ、根岸は数十分前の『社長』の言葉を思い出す。


『いいかい根岸?! 一回しか言わないから良く聞きな!! 西田の野郎のメイクが切れちゃってねぇ。
西田と一緒に行ってちょっくら買ってきな!! アイツは顔だけ塗りゃいい和田やアンタと違って、
ヘタすりゃ上半身全部に塗るからねぇ、安いので良いわさ安いので。ドンキ行きゃお徳用があったはずさァ。
わかったかい? わかったらとっとと行きな! 寄り道してライブ遅れたらタダじゃすまさないよ!!』


 『社長』の恫喝を思い出し、根岸はぶるりと体をふるわせた。
 あの女性の機嫌を損ねたら本当にタダではすまないのは根岸自身もよーく判っている。
身の安全を確保する為、とっとと本来の用事を済まさねば。

174 :AKIHABARA METAL CITY (8):2006/05/17(水) 23:02:26 ID:???
 根岸は化粧品売り場でメイクの選別を始めたが、
他人の肌のことでもあり、今ひとつピンと来る商品がわからない。
しかたなく、普段自分が遣っている油性のフェイスペイントを、
いくつかカートにほおりこもうとした、その時
「違う。コレじゃない」
 背後から唐突に現れた西田がフェイスペイントを取り上げると、『粉おしろい(お徳用)』と
書かれた缶をじゃんじゃん根岸のカートに積み込み始めた。その数おおよそ20缶ほど。

(……結局自分で選ぶなら最初から来ればいいのに)と、思いつつ、気弱な根岸はそれを言い出せない。
 そう思いつつ西田を見れば、腰に大量の食料品が入ったビニール袋を縛り付けている。
どうやら会計を終らせてから、こっちにきたらしい。

 メイクの会計も済ませ(根岸はおしろい缶全部持たされた。重いのに)、二人が店の外に出ると、
根岸はふと思い出したように西田に尋ねた。
「ねえ、西田君。そういや僕達なんで秋葉原のドンキなんかに来たの? もっと近いところあったでしょ?」

 そう聞かれた西田もまた、ふと思い出したような顔をすると、携帯を取り出し、覗き込み、時間を確かめた。

175 :AKIHABARA METAL CITY (9):2006/05/17(水) 23:05:29 ID:???
―――そして、西田は脈絡無く歌い始めた。

           「パピプペブルマが食い込んじゃぅ〜♪ 昨日の剃毛吉と出た〜♪」

 歌詞は心底イカれているが、正直、上手い。
ちょっとした一節を聞くだけでも西田の非凡な音楽的センスが感じ取れてしまう、そんな歌だった。

「ちょっ……西田君止めてよ! こんな人目のあるところで!」
 しかし、真横でそんな恥ずかしい歌を歌われている根岸はたまった物ではない。
そんな根岸に気づいているのかいないのか、ご機嫌で歌いながらすたすた歩き出す西田。
 根岸もまた、西田の歌を止めようと、必死で追いすがる。

 西田が向かうはメッセ山王。現在14時25分の事である。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(*注3)『首領・きほーて秋葉原店』:註釈しつつもあえて解説しない。どこの事だかわかるヨネ?
(*注4)『ジャックさん』:元・メタルの帝王の座にあった『ジャック・イル・ダーク』の事。
              人間にしてはいい線行っていたが、所詮は人間。クラウザーさんの敵ではなく完全敗北。
              ジャックの『伝説のギター』はいまやクラウザーさんの手中にある。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ぱっぴっぷっぺっブッルマが食い込んじゃぅぅぅぅぅ〜♪ きっのぉのてっいもーキチと出たぁぁぁぁ〜〜〜♪」

 そして根岸と西田がドンキを出た頃、秋葉原駅周辺で西田と同じ曲を熱唱している一人の男がいた。
 しかし明らかに音階が狂っており、歌詞の異常さとあいまって、まさに聞くに堪えない。
 彼こそはご存知、朽木学である。

176 :A.M.Cなかがき:2006/05/17(水) 23:14:49 ID:???
―――と、言う訳で今夜の投下はここまでです。

最初は「クッチー+ウザい」の、クラウザーさんならぬ「クチウザーさん」に
活躍願うつもりでしたが、書いている内に「なんか違うなー?」と思い始めたので
初期プロットはほぼそのままに、クラウザーさん&カミュさんご本人に登場願うことにしました。

あと、言い忘れてましたが「GENSIKEN VS LABUyan」の一応、続編です。
続編と言ってもカズフサとクッチーの繋がりを利用したかっただけですが。

次回、オタチームとDMCチームの出会い、そしてタッグマッチです。気長にお待ちください。



(…………ううっ、僕は皆みたいに感動したりちょっと萌えたりしたりする
 SSが書きたいだけなのに、みんなどうしてファックとレイプとかオナホールとか
 そんな下品な単語が続出するSSを書かせたがるんだよぅっ!【根岸風に】)

177 :マロン名無しさん:2006/05/17(水) 23:52:28 ID:???
>AKIHABARA METAL CITY
乙です!クッチーが急に元気になるところがおもろかったですw
クッチーがちゃんと就職活動してるのとかカズフサの駄目っぷりとかもw
>>下品な単語が続出するSS
えーまだまだ大丈夫です(無責任な発言)このまま突き進んでくださいw
つ・づ・きっ!つ・づ・きっ!!

178 :マロン名無しさん:2006/05/18(木) 00:35:54 ID:???
>A・M・C
キタコレw
次回がwktkでございます。

あ、あとまとめの件了解いたしました。

179 :マロン名無しさん:2006/05/18(木) 05:19:34 ID:???
>AMC
元ネタはよく分からんが、クッチーがノリノリで暴走開始したのは分かった。
これアニメかラジオドラマにしたいな、石田彰フルスロットルで。

180 :マロン名無しさん:2006/05/19(金) 12:01:01 ID:???
>ファーストシングル AKIHABARA METAL CITY
元ネタ読んでないんすけど読みたくなった。
世界をひろげてくれてありがとう(w

終末の過ごし方と痕は同じ人?
短いのにどちらも胸にキますね。
笹荻こんな日常過ごしてるんだろうなー。

181 :家族計画:2006/05/19(金) 16:02:44 ID:???
「あ、小学生だ。」
「やっぱり子供はかわいいね。」
「・・・それ・・・。」
「違う違う、決して性的な意味じゃ!」
「・・・わかってますよ。」
「・・・・・・からかったね。」
「でも・・・。子供は確かにかわいいですよね。」
「・・・欲しい?」
「えっ!そんなこと急にいわれでもぉ・・・。」
「あ、あ、いや、将来的なことで!今すぐって訳じゃなくて!」
「・・・・・・将来、ですか?」
「あ・・・。まあ、そうなったらいいとは思うんだ・・・。」
「はい・・・。二人くらいは欲しいかな・・・。」
「そうだね・・・。一人はかわいそうだしね。」

182 :マロン名無しさん:2006/05/19(金) 16:04:54 ID:???
>>163>>164>>180
どうも感想ありがとうです。
>同じ人?
そうです。短い笹荻SSを連投していこうかなと考えてます。

183 :マロン名無しさん:2006/05/19(金) 18:00:55 ID:???
> 家族計画
なんだこのとろとろふわふわ薔薇色ライフは。
ウラヤマシイ…

184 :マロン名無しさん:2006/05/19(金) 20:57:24 ID:???
>>181
なんだよう、一人っ子のおれへのいじめかよう。
まあ、それはともかく、いいよなぁ。

185 :マロン名無しさん:2006/05/20(土) 00:02:04 ID:???
>家族計画
くはー今から計画カヨ!!早いよ!!
…笹荻の結婚って、すごく幸せ〜なイメージできるなあ。
これからも甘甘で頑張って下さいw

186 :まえがき:2006/05/20(土) 01:04:24 ID:???
さて、朽木君の話を書いたので投下いたします。
12レスです。

187 :僕ハココニイル。1:2006/05/20(土) 01:05:27 ID:???
「僕ハココニイル。」

(朽木君の話。笹原たち卒業後。)

***

「会長、お願いします!!」
大野さんは大きな声でそう言った。

朽木君は自分の耳を疑った。
「………え!?ボクチンですか!!!???」



それは新学期の始まる数日前。
大野さん、荻上さん、朽木君は新入生歓迎会の打ち合わせのため部室に来ていた。
大「…今日は大事な話があります。」
大野さんは妙に真剣な面持ちで言った。
荻上さんは黙っている。朽木君はにょ〜としている。

朽(次期会長のことなんダローなーーー。去年は盗塁のフリしてみたけど、今年は何のフリしてミヨーカナーーー?)
誰も朽木君のリアクションなど見ていなかったのだが、朽木君はそんなことおかまいなしだった。
荻上さんに会長をゆずるところを見て、『俺じゃねーのかよ!』とコケる気マンマンでいた。

ところが、『会長』に選ばれたのは自分自身である。
朽木君は驚きすぎて言葉が出なかった。あまりに驚いたのでいつものナイスなアドリブ(と自分では思っている)が出なかった。


188 :僕ハココニイル。2:2006/05/20(土) 01:06:28 ID:???
朽「え、マジデスカ?僕が会長に???」
大「大マジですよ!」
朽「え、でも荻上さんは嫌じゃナインデスカーーー?」
荻「朽木先輩、お願いします。」
荻上さんは何かを決断したような真剣な面持ちで、朽木君に頭を下げた。
朽「エエエエーーー???でもボクチン、そんな大役務まるかどーか………」
大「ええ、本当は私もそう思ってます。」
大野さんは少し機嫌が悪い。マスクつけてないのに。
朽「え?では何で??」
大「…実は、笹原さんに言われたんです。」
朽「笹原先輩に?」
思わず荻上さんを見る。荻上さんは、頷いた。あらかじめ知っていたらしい。



笹「朽木君を会長にしてみたらどうかな?」
その言葉に、大野さんは度肝を抜かれた。
大「な、何がどーなったらそーなるんですか!!!」

大野さんは春休みに入ったある日、笹原に相談していた。
これから三人きりで活動していく不安、朽木君をどー扱えばいいのかという悩み。自身の就職活動のこともある。
…そうしたら、笹原の口からこんなとんでもない言葉が出てきたのだ。


189 :僕ハココニイル。3:2006/05/20(土) 01:07:05 ID:???
笹「駄目かな?」
大「ダメに決まってるじゃないですか!あんな人に会長なんて任せたらメチャクチャになりますよ!問題起こして即廃部ですよ!」
笹「でも、順番としては朽木君から………」
大「荻上さんも何か言ってください!朽木君なんかに任せられないですよね!?」
大野さんはそういって荻上さんを見る。
同意してくれるものと思っていたが、荻上さんは体を固くして前かがみに座り、何か考え込んでいた。荻上さんは人の話を聴くときいつもこの姿勢で聴いている。
荻「…昨日、笹原さんから話聞いてたんです。私も無理だと思いましたけど、笹原さんがこう言ったから。」
そう言いながら顔を上げ、大野さんの顔を見た。
荻「現視研の会長になった人は、みんな、会長になる前より成長するらしいんです。斑目さんも笹原さんも、そして大野先輩も…。」
大野さんは自分の名前がでて、ぴくっと反応する。

笹「えーと。これは俺の実感としてあるんだけど、自分自身、会長になって部の責任をもつこととか、あと自分のしたいこと、サークル参加とかやってみて、すごく成長できたと思う。もちろん失敗もしたし、へコんだり、キツいと思ったこともあったけどさ。
…でもそのおかげで、今まで見えなかったことが見えてきたんだ。自分の短所とか、そして自分を生かせる長所とか。大野さんも、実感ないかな?会長になってから、すごく積極的になったよね」
大「え、…そうですか?」
笹「うん。前よりずっと自分を出せるようになったじゃない」


190 :僕ハココニイル。4:2006/05/20(土) 01:07:40 ID:???
大「う〜ん、そう言われると…そうかも…」
笹「だからさ。朽木君も、一度会長をやってみて、会長の責任とか苦労を知って欲しい、と思ったんだよ。朽木君、責任とかあると逃げ腰になるから…」
大「…逃げ腰な人に、会長が務まるとは…」
笹「大野さん。とりあえず、一度朽木君に話してみたら?それでどうしても嫌、ってなったら仕方ないけどさ」
大「笹原さんがそういうのなら…」



大「…というわけです。朽木君!」
朽「は、はい!何でショウ!?」
大「断ってもいいんですよ?」
朽「………………」
大「笹原さんがこんなに推してくれても、自分には自信ない、というのであれば、別にいいです。荻上さんに頼みます。」
朽「………………」
大「…脅してるわけじゃないんですよ、朽木君。」
朽「へ!?」

大野さんはさっきの厳しい口調とは打って変わって、急に口調が柔らかくなった。
別の脅し方かと思ったが、そうではないようだ。
大野さんは真剣な目で朽木君を見る。朽木君はビビった。


191 :僕ハココニイル。5:2006/05/20(土) 01:08:12 ID:???
大「私自身も最初、無理だと思ったんです。笹原さんに『会長』になるよう言われたとき。
…今まで人をまとめるポジションについたことないし、自信がなかったからです。
でも。会長になって、良かったことがありました。周りの人のことを考えて、会長として皆をまとめなきゃ、仲良くしなきゃ、って思って自分なりに頑張ったら、周りの人のことが今までよりも、よく見えるようになってきたんです。
…荻上さんとも、仲良くできるようになりましたし。」
下を向いて聞き入っていた荻上さんが、大野さんの顔を見上げた。

大「…ま、職権乱用したこともありましたけどね〜。」
大野さんが照れ笑いをすると、荻上さんは、
荻「ああ、しょっちゅう乱用してましたね。」
と呆れ顔で言った。大野さんがムウッとむくれた顔をする。
荻上さんはまた下を向いたが、少し口元が笑っていた。

大「…だから何より、自分のためになったんです。その分責任とか、重いと感じることもあったけど。
だから、会長にならないのは、もったいないと思うんです。」
大野さんはゆっくりと、自分の言葉で語った。

大「…でも、判断するのは朽木君です。会長になったからには責任持ってもらわないといけないし、辞退するのが一番と判断したら、それはそれで『負いきれない』との判断、責任の取り方かもしれません。
だからそれでもかまいません。」


192 :僕ハココニイル。6:2006/05/20(土) 01:08:48 ID:???

………………………


朽木君は大学からの帰り道、ずっと考えていた。
こんなに「会長」のことについて考えたのは初めてだった。

まず、自分には無理、という結論がずっと頭にある。
自分のことは良く分かってるつもりだった。
どーしても自分は余計なことをしてしまう。わかっちゃいるけど、いつのまにかやってしまう。
それに「責任」を果たすのが大の苦手だ。
自分ではちゃんとやってるつもりで間違えてたり、うっかり忘れてたり。ちゃんとやりたい気持ちがあるにはあるのだが、興味が失せるとつい忘れてしまう。

仕方ないと思っていたし、今まで周りにも要求されなかった。
あんまり人にアテにされたことがないけど、それも個性!と思っていた。

でも。さっきの大野さんの真剣な目を思い出した。真剣な言葉を思い出した。
笹原先輩が自分を推してくれたことを思い出した。

こんなに人に期待されたことがいままであったろうか。いやない。忘れてるだけかも知れんけど。


193 :僕ハココニイル。7:2006/05/20(土) 01:09:28 ID:???
(むうぅ〜〜〜…不肖朽木、通称クッチー、ここで断ったら漢がすたるのではナイデスカ?
大野先輩のあの目を見て、「自分には自信がないデス…」なんて言うのデスカ!?
「自分の辞書には『会長』の2文字はアリマセン!!」なーんて堂々と言えるのデスカ!?)

(そう!ここで引いたら漢がすたるにょ〜〜〜!!!)
朽木君は鼻息も荒く早足で道をどんどん歩いていった。歩く速度が見る間に早くなった。


………………………


朽「…と、ゆーワケで、会長、就任イタシマス!!!」

次の日、部室で3人が集まったとき、朽木君はそう宣言した。
姿勢を正してビシッと敬礼し、(クッチー的には)決まった!と思える挨拶をした。
さて、大野さんと荻上さんの反応は。

大・荻「………………はぁ………」
朽「む、何デスカそのやる気をそぐよーな反応は!!」
大「…何でって、ねえ荻上さん…」
荻「…今後の私たちの苦労を思うと………」
大野さんと荻上さん、2人顔を見合わせ、再び深くため息をついた。


194 :僕ハココニイル。8:2006/05/20(土) 01:10:06 ID:???
それからというもの。こんな日常が繰り広げられた。

荻「…だーかーらー!もう何回言わせるんですか!」
朽「にょ?」
荻「どーしてこんな大事な書類、ギリギリまで放っといたんですか!」
朽「(忘れてたからにょ〜〜…)むう、何かそのー色々、活動内容とかってどー書いたら良いものか…と考えてまして…、
ぶっちゃけ忘れてたにょ〜!アハハ!!」
荻「………(怒)」
朽「ス、スミマセン!!」
荻「…もういいです。」
朽「…ううう、そー言われちゃうと………」
荻「もーいいって言うのは、小言は後にするって意味です。今できることをまずやってから!時間ないんです、この書類、自治会のはんこもらってきてください。じきに自治会室閉まっちゃうから!」
朽「はっ、ハイ!!」
朽木君はそう言って、慌てて飛び出した。
後ろから大声が聞こえる。
荻「朽木先輩!書類持って行かないでどーすんですか!」
朽「ああ!!忘れてたにょ!!」
慌てて引き返す朽木君。
荻「ハイ、じゃあ頼みましたよ!」
足だけはやたら速い朽木君の後姿を見送りながら、荻上さんはげっそりしていた。


195 :僕ハココニイル。9:2006/05/20(土) 01:10:41 ID:???
さて。朽木君は4年になってから、授業がかなり詰まっていた。
1、2年の頃、遊びすぎたのと、色々落とした授業があったからである。
朽木君は別に頭が悪いわけではないが、ただテストの日を忘れてたり、追試の日を忘れてたり、大事な提出物を忘れていたりしただけの事である。

その上『会長』になってしまったので、今まで考えられないほど忙しい日が続いていた。
…だが、こんなに充実した日々を過ごすのは初めてだった。
今までなにしてたのやら。フラフラして、ゲーセンいったり秋葉原いったり…。



朽木君は今日も部室で、溜まっていた(ぶっちゃけ忘れていた)書類と格闘していた。

(…思えば今まで、「ここが駄目なら次いけ次!」と、フロンティアスピリットでやってきたケド………。
ポジティブ過ぎたんデスカネ〜〜〜?)
アニ研を辞めて(正確には追い出されて)現視研に来たときのことを思い出す。

(そーやって突き進んでても、なーんにも残らなかったよーな………。
いやー、周りの冷たい視線ばっかり、やたら増えていったよーな………。)

…ようやくそのことに気づいたらしい。


196 :僕ハココニイル。10:2006/05/20(土) 01:11:18 ID:???
(もしかして今までのは、ポジティブなんかじゃなくて、逃げてたダケなんですかのう?
じゃあ今、逃げたくないのは………………?)


(そうか………。
ここにいたいのか、ボクチンは…。
あれ、こんな風に思ったの初めてですの〜〜〜〜〜。)

(いや…。本当はずっと思ってたヨ、どの場所でも。「ここにいたい」って〜。
ダカラ、みんなと「溶け込もう」として色々話しかけたり自己主張してきたんだケド…。
うまくいかなかった………。)

(ここにいると、「責任」取ったり、悩んだり、考えたり、我慢したり、空気読んだり、誰かを助けたり助けられたり、色々しないといけないんだろーなーーー。全部ボクチンの苦手分野………。
いや、今までしよーとしてなかったから苦手分野に…。ぐぬう………。)

朽木君は頭が痛くなってきた。元々深刻に考えるのは苦手だ。

(…いや待てよ?「考える」ことないんじゃないデスカ???だってもう、「ここにいたい」って決まってるんだし。
そのために「苦手とか言ってられない」って、結論出てるし。

………なぁーーーんだ、ソウカ!!ならもう、次は行動あるのみデスヨ!!!)


197 :僕ハココニイル。11:2006/05/20(土) 01:11:54 ID:???
朽木君の中で、これからの根幹となる重大な結論が、今まさにはじき出されたとき!

コンコン、と部室の扉がノックされ、荻上さんが部室に入ってきた。
荻「あ、どうも」
朽木君は荻上さんの顔を見て、急に思った。
(そうデス!!「新生」朽木学、通称クッチー、今荻上さんに自分の決意を伝えておくのデス!!
なぜなら自分の記憶装置に入れたままだったら、そのうち綺麗に忘れてしまうカラ!!!)

朽「オギチン!大事なお話が!!」
荻「え…な、何ですか?」
荻上さんはいつものように、朽木君と話すときのクセで身構える。

朽「えーボクチンは………………………………………!!!」
荻「………………………………?」


(…あ、アレ?何だったっけ?)
………どうもひと足遅かったようである。

(えーと、そうだ!「ここにいる」決意をば………!!)


198 :僕ハココニイル。12:2006/05/20(土) 01:12:39 ID:???
朽「荻上さん!!」
荻「…はい?」
朽「僕はここにいるにょ!!」

荻「…そうですね、そこにいますね。」
朽「ずーーーっと、ここにいるにょ〜〜〜〜〜!!!」
荻「…ええ、ずっとここの部員ですよね。」
朽「以上!!!」
荻「………………………何が言いたいんですか(怒)」

朽「さて、宣言はこのくらいにして、と。
オギチン!実はここに、今日締切なのに例によって完全に忘れてた書類がアリマス!!」
荻「はぁ!?またですか!!」
荻上さんはいつものように、怒りながら書類の必要事項を読んで、朽木君にアドバイスしてゆく。

荻「だ〜か〜ら〜!略称じゃなくって正式名で書けと、何度言ったら分かるんですか!!」
朽「えーだって正式名長いにょ〜。現代視聴覚?現代文化視覚??わかんなくなるし。あ、現聴研でしたっけ?」
荻「全然違います。今まで何度書類に書いたと思ってんですか!ていうか何のサークルだと思ってんですか!」
朽「じょ、冗談ですにょ〜(汗)」
荻「冗談言ってる間に手を動かしてください!あとコレ、字が汚くて読めません。読めない字書いてどーすんですか!」
朽「あ、でも意外とボクチンは読めるにょ〜。」
荻「そんなことはどーでもいいんです。他人が読めなくてどーすんですか!!」

…朽木君が成長する前に、自分の忍耐力のステータスが大幅うp(対朽木君以外にはたいがいムダ)
してしまいそうだ、と思った荻上さんであった。

                       OWARI


199 :あとがき:2006/05/20(土) 01:13:14 ID:???

えー朽木君はこれから成長してくれるでしょう…多分。
…アレです!まずは「気づいた」ことが大事なんです!…忘れるかもしれませんが。
荻上さんや大野さんの忍耐力が最大値まで上がるほうが早いかと思われますが…。

とにかく、書いててとても楽しかったです。「明日に向かって、翔べ、クッチー!!」

…言い訳。
「空の下〜」では、学年を間違えてて、朽木君がこれから新3年だと思い込んでました。
あわわ。荻上さんが新3年生で…。そうか朽木君、新4年生なんだ…それで会長って!!ま、いいか…。
就職活動とか言う前に、4年のくせに授業いっぱいとるハメになってる、という設定で。
朽木君には来年に就職活動してもらいましょう。(汗)


200 :マロン名無しさん:2006/05/20(土) 01:50:22 ID:???
>>僕ハココニイル
クッチーはレベルが上がった!
責任感がアップした!
行動力がアップした!
ウザさがアップした!
羞恥心がダウンした!
称号『五代目会長』を得た!

クッチーいいよクッチー
最近、マイげんしけん好きなキャラランキングで徐々にランクを上げているという・・・。
ああ!田中を蹴落としちゃった!

201 :マロン名無しさん:2006/05/20(土) 10:19:26 ID:???
>>199
昔、「8年も行ってる大学生〜♪」てな歌があったが、多分クッチーもあと4年居るから無問題。
背丈はげんしけんメンバーで1番成長してるけど、人としては1番遅れて成長する。
彼はそういう男なのです。

202 :マロン名無しさん:2006/05/20(土) 13:05:29 ID:???
女2人にいいようにこき使われる馬面の男…
クッチーが藤田まことに見えて仕方ない今日この頃。

203 :マロン名無しさん:2006/05/20(土) 13:38:21 ID:???
>>202
それなんてはぐれ刑事?

204 :マロン名無しさん:2006/05/20(土) 15:29:42 ID:???
>>A.M.C
3作品混合キタ!!
どうなっていくんだろう…続編おねがいします

>>家族計画
超短編の笹荻SS、今後とも期待です!!
激甘でも短編ならさらっと読めて良いですよね。

>>僕ハココニイル
なんか、こんな風にげんしけんが連載どんどん続いていく気がしました…。

205 :マロン名無しさん:2006/05/20(土) 19:02:01 ID:???
>203
どっちかと言うと必殺シリーズw

206 :CROSS†CHANNEL:2006/05/21(日) 02:18:56 ID:???
「荻上さんって、どういうときにネタが浮かぶの?」
「え・・・。アニメ見ててちょっと絡んでたりとか・・・。」
「そういう直接的なものだけ?」
「・・・道端で男の子が仲良く話してるとか。」
「・・・うん。」
「・・・・・・二人乗りしてる高校生見たりすると・・・。」
「・・・。」
「・・・びびびって。来るんですよ、何かが。」
「何か。」
「・・・・・・はい。何か。」

207 :マロン名無しさん:2006/05/21(日) 05:23:42 ID:???
>>206
荻上さんの筆センサーが反応するんですね!!

208 :マロン名無しさん:2006/05/21(日) 09:29:42 ID:???
ビビビのヤオイ娘…
反応の仕方はゲゲゲの鬼太郎だが。

209 :マロン名無しさん:2006/05/21(日) 17:26:49 ID:???
>>206
乙です。このシリーズたまらなく好きです。
次も期待。

210 :マロン名無しさん:2006/05/22(月) 03:52:10 ID:???
感想アリガトウございます〜。
>>200
最近自分の中でも、クッチーは好きランクが上がって来てます。最近妙にいいキャラだなあと感じて(汗)
あらら、田中が…(苦笑)
>>201
8年生…そして初代化したりして(汗)ハチクロの森田さんも8年生までやって、その後別のクラスに編入してたのを思い出した。
クッチーは成長自体は早いけど、他のメンバーに比べてスタートラインがものすごく後ろからのよーな気がします。
頑張れクッチー。
>>202 203 205
藤田まことって尻にしかれ役なんですか??知らんかったー。
>>204
連載続いたらいいのになー、と、かなり願望入ってます。

211 :マロン名無しさん:2006/05/23(火) 12:31:36 ID:???
これ読みたい…


115 名前:名無しかわいいよ名無し メェル:sage 投稿日:2006/05/21(日) 15:17:46 ID:CjaDj6Lg
斑目とアンジェラとかは無しですか?

116 名前:名無しかわいいよ名無し メェル:sage 投稿日:2006/05/21(日) 20:49:32 ID:q8f1Kh0p
スージーとです

117 名前:名無しかわいいよ名無し メェル:sage 投稿日:2006/05/21(日) 21:12:36 ID:ucUPG4Y4
>>115
全然アリだと思うが

118 名前:名無しかわいいよ名無し メェル:sage 投稿日:2006/05/22(月) 01:13:13 ID:QmjfcFJG
>>115>>116
どろどろ三角関係にならずに、ハーレム漫画状態に(つまりスーとアン両手に花)。
押されっぱなしで優柔不断な斑目…萌(ry

119 名前:名無しかわいいよ名無し メェル:sage 投稿日:2006/05/22(月) 03:56:23 ID:g8wek2fc
高「ハーレム物ができそうだね、斑目さんの」

うわ、読みてえ、すげえ読みてぇー

120 名前:名無しかわいいよ名無し メェル:sage 投稿日:2006/05/22(月) 14:32:24 ID:nniEQQs4
大野さんをたよって日本に遊びに来たスー&アン。
ところが、肝心の大野さんが急用で実家に帰ってしまった。
泊まるところもなく途方にくれ、とりあえずげんしけん部室に顔を出してみると…

『げんしけん・萌!』8月より連載開始!!

というネタバレまだ?


212 :マロン名無しさん:2006/05/23(火) 21:11:47 ID:???
講義が休講になって、部室に来てみれば・・・

扉が少し開いている

誰か居るのかと思いそっと覗くと・・そこには斑目先輩が・・・

驚いた事に、昨日春日部先輩が忘れていった上着を
斑目先輩が抱きしめていた・・・力一杯、ギュッと抱きしめていた・・・

高坂先輩に呼ばれて慌てて出て行ってしまい
そのまま椅子にかけてあったのを、斑目先輩が・・・

ここでオロオロしてたら、みつかってしまう・・・

早々にその場を立ち去ろうとしたけど・・・
斑目先輩の顔が今まで見たことのない、とても穏やかな顔を見ていると

そこから動けなくなった・・・

・・・胸が熱くなる・・・

けど、この人には恋してはいけない・・・

きっと、この人が上着を忘れて、椅子にかけてあれば・・・

触れたいと思うから・・・温もりを感じたいと思うから・・・

叶わない恋は、したくない・・・

けど、叶わないと思っていても、人が恋に落ちていくのは簡単だから・・・    おしまい

213 :マロン名無しさん:2006/05/23(火) 23:09:28 ID:xhinQHzd
by朽木

214 :マロン名無しさん:2006/05/23(火) 23:12:31 ID:???
>>213
お前かよw

215 :マロン名無しさん:2006/05/23(火) 23:15:14 ID:???
>>211
俺も読みたい
>>212
え、これって誰が主体なんですか?
うわ、なんかすげえ気になる。


216 :マロン名無しさん:2006/05/23(火) 23:17:43 ID:???
>213
さらにできるようになったな!朽木!

217 :215:2006/05/23(火) 23:19:12 ID:???
朽木かよwww気にして損したw

218 :マロン名無しさん:2006/05/24(水) 00:03:14 ID:???
いつものことながら感想感謝します。
>>89
ジャンプネタは意外と知らない方が多くてショボーン(´ω`)
楽しんでいただけてよかったです。
>>90
フラグたってます。
相談送っていただければなんて無責任な発言をしてみたりして。
>>115
アンスーのMSは思いっきり趣味に走った「オレザク」的なものです。
昔よく作ってたプラモ思い出しながら書いていました。
>>118
糸色望先生は心の師。
絶望絶望いいながら絶望しきれていないところとか。

加えてエロゲタイトルミニ笹荻SSに感想をくれた方サンクスです。
これは場つなぎに今後も続けていきます。
今回は第801小隊のほうだけ、投下します。

219 :第801小隊第15話『贖罪』1:2006/05/24(水) 00:05:01 ID:???
その日、マコト=コーサカは、ふとした違和感に気付いた。
皆の輪から外れ、一人MS格納庫のササハラと話をしに行こうとしていた矢先である。
テンプルナイツとの小規模な激突から約3日が経っていた。
遡ること3日前、丁度その戦闘が終了した矢先、一つの連絡が入った。
それは、マダラメらの過去の戦友、ヤナギサワ大尉からもたらされたものであった。
それらしい基地が発見され、地球圏により近い破棄された人工衛星群に紛れるように存在し、
今まさに活動をしようと活発に物資が運び込まれているという。
そこに目的の兵器、そして目的の人物がいる可能性が100%とはいえないが、
それしか手がかりがない以上、彼らは進路をそこに進めるしかなかった。
その行程は順調であり、特に問題もなかった。
ササハラはよく一人で訓練(正確にはシミュレート)を行っていたが、
マダラメは副官席で眠るフリをしていたり、
スーは一人様々な場所に出没しては人を驚かせたり。
サキやオーノ、タナカ、アンジェラ、ケーコなどは、
緊張感を紛らわすかのようによく談笑をしていた。
コーサカも、その輪の中によくいた。
緊張感が取れないのは誰もが同じであった。
その解決法が、人によって違うだけで。
このまま進めばあと24時間以内にはそこに到着するだろう。
徐々に高まる緊張感と高揚感。
そのためだろうか。
いつもより勘の冴えていたコーサカは、それに気付いた。
変哲もない、移動用ベルトのある廊下。
そこに、扉が隠されていることに気付いたのである。
だが、それが何なのかまでは掴めなかった。
彼は持ち前の好奇心と物怖じしない性格から、その扉を開けた。
その先には、彼が思いもしない光景が広がっていた。
扉を開けるまでは、彼自身思っていなかっただろう。
・・・・・・運命とは、ちょっとしたきっかけで変わるもの。
彼は、一つの決心をすることになるのである。

220 :第801小隊第15話『贖罪』1:2006/05/24(水) 00:05:38 ID:???
「・・・ここは?」
コーサカは始めて見る情報集積回路に驚いていた。
「ここまでのものがこの船に・・・?」
自分が働いていたあの最先端のドッグにも、ここまでのものはなかった。
一面見渡す限りの機械群。それが、暗がりの中不気味に光を放っていた。
「・・・何のために・・・。」
疑問は尽きない。とりあえず、奥へと進む。
そこで見たのは大きなディスプレイであった。
地球を中心に、周囲のコロニーの所在、それに加え・・・。
「連盟、皇国の軍隊配備が全て載っている!?」
ディスプレイの前のマウスを操作し、カーソルを合わせると、細かな情報も現れた。
自分らのいる辺りには、『the 801st platoon(第801小隊)』の文字が現れていた。
「・・・これか。大隊長の情報源は。」
おそらく、あの基地にも存在していたのだろう。
正確には、存在していたものを積んでいるのであろう。
どういうルートでかは分からないが、あらゆる情報を収集していたのだ。
大隊長が、なぜああも自由に行動できたのかを理解した。
そのまま、情報の探索に移る。
ヤナギサワ隊のいる位置、そして、その近くにある基地の規模。
さらに、そこにある兵力の大きさ。
「・・・これは・・・!」
顔をしかめるコーサカ。
「・・・これは廃棄されたはずだったのでは・・・。」
予想だにしていなかった情報を得たのか。その顔は冴えない。
「・・・!これは!」
またもコーサカ驚愕の表情を浮かべる。
「まさか、ここまでの兵力を向わせているなんて・・・。」
「そうだね。」
コーサカがその声に振り向くと、そこには大隊長が立っていた。
暗がりの中、いつもと変わらない表情を浮かべながら。
「大隊長・・・。この機械群は・・・。いや、今はそんなことどうでもいい。
 この情報は確かなんですか!?」

221 :第801小隊第15話『贖罪』3:2006/05/24(水) 00:06:39 ID:???
いつもの笑顔はすでにない。コーサカは少し語気を荒げながら話す。
「・・・確かだ。紛れもない、ね。」
「・・・どうするつもりですか。」
視線を離さず、コーサカは少し興奮している様子だ。
「・・・正直、どうしようか迷っていた。」
「迷う?」
「方法はある。これを切り抜けるためのね。・・・だが、それは痛みを伴う。コーサカ君・・・。」
「・・・なるほど。」
1を聞いて10を理解した、と言う様子でコーサカは視線を落とす。
大隊長の調子は相変わらずだ。
「・・・君が決めるといい。この方法は、君の意思によるんだ。」
「・・・・・・はは。選択権はないじゃないですか。」
「そんなことはない。皆で戦えばそれでも道は開けるかもしれない。」
「・・・そうですが・・・。それでも、おそらくそれよりは、今考えてる方法のほうが・・・。」
「その通りだ。だから、君が決めていい。」
静寂が訪れる。少しの間。機械の音が静かに鳴り響く。
コーサカは決心したように視線を上げる。
「やります。」
「・・・本当にいいんだね?」
「ええ。僕には・・・。罪があります。皆さんを欺いた罪が。」
「・・・知っていたよ。」
「もちろん、大隊長さんは・・・。」
「僕だけじゃない。マダラメ君も、タナカ君も、クガヤマ君も。
 ササハラ君や、ケーコ君ぐらいだろう、気付いていないのは。」
「!!そんな・・・。」
「・・・彼らはね、それでも、君を信用したんだ。」
「・・・それなら、尚更です。」
「そうか・・・。」
「では、行って参ります!」
そういいながらコーサカはいつもの笑顔を取り戻し、外へ駆けていく。
「・・・すまん。無事を祈る。」
大隊長は寂しそうな顔をして、その後姿に敬礼を送った。

222 :第801小隊第15話『贖罪』4:2006/05/24(水) 00:07:15 ID:???
廊下を急ぐコーサカ。
「・・・急がなくちゃ。確か・・・。」
ブツブツ呟きながら移動するコーサカの前に、マダラメとサキが現れる。
「おう、どうしたよ、コーサカ。」
「・・・ええ、ちょっと。二人は?」
「え?いつもの検診さ。それよりも・・・なに、隠し事?」
言葉の詰まるコーサカに、怪訝な表情を浮かべる二人。
いつもならさらっとかわしそうなコーサカが、少し動揺している。
「・・・なんだ。なんか重要なことじゃねえだろうなあ?」
「いえ、何でもありませんよ。ちょっとササハラ君に呼び出されまして。
 MS格納庫のほうに。」
とっさについた嘘。しかしもっともらしい内容だ。
「ふー・・・ん。でも、おかしくねえか?」
「何がですか?」
相変わらず怪訝な表情のマダラメは言葉を続けた。
「ササハラ、俺の事呼んでんだよ。『二人でシミュレートしましょう』って。」
その言葉に表情を少し変えるコーサカ。
「おい、本当に何でもねえのか?はっきりしろ。」
「ははは、何でもありませんよ、本当に。」
どうしてか、マダラメは妙に引っ掛かりを感じていた。
いつもと違うコーサカの雰囲気に気付いたのだろうか。
サキも、その雰囲気に気付いている様子だ。
「・・・おい、話せねえのか。」
「・・・何でもありませんから。」
そういいながら、立ちふさがるマダラメの横に移動する。
「・・・おい!コっ・・・。」
ドンッ!コーサカがマダラメのボディに拳を入れる。
「・・・すいません。・・・サキちゃんをよろしくお願いします。」
「・・・っな・・・、おま・・・。」
その耳元にコーサカが呟いた。そのまま落ちるマダラメ。
無重力のため、マダラメの体が宙に浮く。

223 :第801小隊第15話『贖罪』5:2006/05/24(水) 00:17:17 ID:???
「!!なにを!!」
そのコーサカの行動にサキは驚き、詰め寄る。
「何してんのさ!!」
コーサカの胸倉を掴む。
「・・・ごめん。こうするしかなかった。
 隊長、変なところで勘がいいからさ。」
「何を言って・・・。」
「・・・サキちゃん、僕らがここに来た理由、覚えてる?」
「・・・・・・何をいまさら・・・。」
その言葉に顔を曇らせるサキ。
「・・・やっぱりサキちゃんがいってたことは間違いじゃなかったよ。
 人を実験に使うなんて、まともじゃない。」
「でも、それは!」
サキが何かをいおうとするのを手で制し、首を振るコーサカ。
「うん。結果は良かった。でも、僕には罪がある。」
「それは私だって一緒だ!」
叫ぶサキ。しかし、コーサカは優しく微笑んだままサキを抱きしめる。
「サキちゃん。君がいてくれてよかった。」
「・・・なに、お別れみたいなこと言ってんのさ・・・。」
「君と再会できて、あの事件があって、この隊に来れて・・・。
 もちろん、この隊の皆にも感謝はしてる。
 だけど・・・。僕を一番助けてくれたのはやっぱりサキちゃんだ。」
そして、肩を持ち距離を置くと、そのままキスをした。
顔を離すと、コーサカはまた言葉を続けた。
「・・・きっと戻ってこれるとは思う。けど・・・、もしも・・・。」
「もしもってなんだよ!いつも勝手に話を進めて!
 小さい頃からいつもそうだ!勝手だよ、勝手だよあんた!」
気付けばサキは泣いていた。
「・・・ごめん。幸せになってね、サキちゃん。」
コーサカはそういうと、サキの首に手刀を入れ、気絶させる。
「・・・バ・・・カ・・・。」

224 :第801小隊第15話『贖罪』6:2006/05/24(水) 00:18:35 ID:???
サキはコーサカの思い、そしてこの先するであろう行動に気付いたのだろう。
「・・・本当に、ごめんね・・・。」
優しくサキを横にすると、コーサカは再びMS格納庫へと進む。
「・・・馬鹿・・・。」
寝言だろうか。サキの呟きが聞こえた。

「まだかな、隊長・・・。」
いつものように、MS格納庫横の整備室にてシミュレーターをいじくるササハラ。
「一人で続けるのも限界あるしなあ・・・。
 これにどの程度効果があるかもわかんないけど・・・。」
そろそろ来るはずなのに、来ないマダラメに、怪訝な表情をする。
「どうかしたのかな・・・。」
もう一度呼びにいこうとササハラが立ち上がると、コーサカが入ってきた。
「?コーサカ君?どうかした?」
「・・・いやなんでもないよ。マダラメ隊長待ってるんでしょ?」
「・・・まあ、そうだけど・・・。来るまで、ちょっとやらない?」
そういってシミュレーターを指差すササハラ。
「・・・いや、僕はちょっとMSに用事があってね。」
「そうなんだ。もうちょっと待てば来るかな?」
「うん、来るよ。」
そういって、笑顔を向けたままMS格納庫へ入っていくコーサカ。
そこで、ササハラは違和感に気付く。
「・・・なんでノーマルスーツ着てるんだ?」
ばっ、と格納庫のほうを見ると、
コーサカがガンダムに乗り込み、兵装を確認している。
「・・・な、なにしてるんだ、コーサカ君。」
そして、ササハラは気付いた。
この艦に搭載されている最強の兵器であるメガランチャー二門を、
コーサカのガンダムが担いでいることに。
そして、手動で宇宙への扉を開けていることに。その行動の意味を。
「・・・まさか!」
コーサカの行動に、ササハラは、自分もノーマルスーツを着込むために部屋を出た。

225 :第801小隊第15話『贖罪』7:2006/05/24(水) 00:19:38 ID:???
ガンダムは宇宙へ降り立った。目標は、この艦を後ろから狙っている一個大隊。
「・・・どこまでやれるかな・・・。」
用意したのはメガランチャー二門と、エネルギータンク一個。
そこに、近づく一機のMS・・・。
「ササハラ君・・・。」
「何をしてるんだよ!勝手に出撃だなんて!」
通信を通して、お互いの顔を確認する二人。
「・・・これは僕の罪滅ぼしなんだよ。」
「・・・・・・何を言ってるのか分からないよ!」
叫ぶササハラ。
「君は、僕がなぜこの部隊に来ることになったのか・・・分かるかい?」
「・・・いや・・・。」
少し、コーサカは微笑むと、言葉を続けた。
「君と離れた後、僕もある部隊へと配属された。
 そこでちょっと戦果を挙げすぎてね。NTじゃないか、と噂になった。
 軍は、僕をあの研究所に送ったんだよ。サキちゃんと再会したのもそこだ。
 NTの実験と称して様々なことをされた。」
遠い目をするコーサカ。
「サキちゃん、乱暴なように見えて面倒見いいから、よく助けてくれたよ。
 彼女の実験も手伝ったりしたこともあったな・・・。それなりにうまくやっていたんだ。
 だけど・・・。僕は根っから束縛が嫌いみたいで。そこから出たくて仕方がなかった。
 そしてある日、事件が起こった。
 NTを模したOSシステムの開発。その実験の最中、あるNTの少女が意識を失った。」
ササハラはその言葉にはっとする。
「まさか・・・。」
「そう、君の使っているそのシステム。それだよ。
 その少女がその場に居合わせたのは全くの偶然だった。
 しかも、その子は軍幹部の娘さんだった・・・。」
顔を伏せるコーサカに、ササハラは言葉が見つからない。
「その子の意識を戻す方法が見つかった。
 それはシステムを限界まで使い、使用者と完全に同調させること。
 しかし、それには研究室の実験では無理だった。」

226 :第801小隊第15話『贖罪』8:2006/05/24(水) 00:21:20 ID:???
そこまで聞いて、ササハラもようやく理解した。
「つまり・・・。実戦を用いた実験だったってこと?」
「そう・・・。不完全なシステムを、使ったね。
 危険性も把握した上で、僕はこの機会を利用し、自由になることを考えた。
 ・・・その部隊へ赴き、システムの運用を見守ること。
 それが僕らの目的だったんだよ。」
「でも!」
ササハラは叫ぶ。コーサカがこの後言うであろう言葉を感じて。
「・・・そう、うまくいった。
 よもや君がパイロットに選ばれてるとは思ってなかったけどね。驚いたよ。
 NTでは反発が起こるだろうから、よほどそれらしくない人を選んだんだろうけど・・・。」
そういって、コーサカは少し笑う。
「ひどいなあ・・・。」
「ごめん。でも、NTなんていいことないよ。僕はそれを知った。
 そのために他人を犠牲にしようと考えていたんだ・・・。
 僕はその罪を償わなければならない。」
コーサカの顔が引き締まる。
「この隊にこれてよかった。戦争で戦う事や、自分がNTである意義・・・。
 そういうものを、初めて肯定できた気がした。
 だから・・・。君達には生き残って欲しいんだ。」
「まさか、コーサカ君!」
「僕らの艦を、後ろから一個大隊が狙っている。
 それを・・・僕が抑えてくる。」
ササハラの顔が青ざめる。一個大隊といったら、艦船は5隻以上だ。
MSの数もゆうに20機は越えるだろう。
「無理だ!せめて、俺だけでも!」
「君にはやらなければならないことがあるでしょ?」
コーサカはにっこり笑う。
「でも!!」
「・・・早く戻るんだ。追いつけなくなるよ?」

227 :第801小隊第15話『贖罪』9:2006/05/24(水) 00:22:32 ID:???
「・・・力づくでも止める!!」
「・・・そういうと思ったよ。君は昔から変わらないね・・・。」
「コーサカ君もさ。覚えてる?学校の時の・・・。」
「覚えてるよ。先輩に仲間がいじめられた時に、一人僕は仕返しに行こうとした。」
「・・・それを僕は止めた。一人で行っても駄目だって・・・。」
二人は懐かしそうに遠くを見つめる。
「あの時は僕が勝ったんだよね。」
「・・・うん。それで先輩やっつけてたけどね・・・。」
「・・・あの時と、違うかな?」
「・・・・・・ああはうまくいかないよ!止めて見せる!」
ササハラのジムが動く。軌道をこまめにかえ、予測をさせないように。
「・・・うまいね!」
コーサカのガンダムは煙幕をまく。白い煙が一面にたちこめる。
「・・・なんの!会長!!」
『・・・相手は・・・?何故?』
「一人で・・・無茶しようとしてるので!」
『止めるわけですね!』
会長はササハラとの同調で思考を読めるまでになっていた。
同調率が上がる。煙幕の中でも、ガンダムが見える。
「見える!!」
叫ぶササハラ。ガンダムに向って、サーベルを振るう。目標は腕と足。
戦闘力さえ剥げば、向わないだろうという判断からだ。
「当たらないよ!」
コーサカは、すぐさまかわす。こちらも見えている。
「くそ!」
「こっちの番だね!」
そういうと、コーサカはいつものチェーンを繰り出す。
「当たるもんか!」
コーサカのガンダムにどこまでギミックがあるのかは知らないが、
チェーンの使い道は知っている。伸びてくるチェーン。
回転し絡み付こうとするチェーンをかわしたと思ったのだが・・・。
ガチィン!

228 :第801小隊第15話『贖罪』9:2006/05/24(水) 00:29:09 ID:???
「!?」
一瞬何が起こったのか分からなかった。
チェーンが、なぜかジムの横腹に引っ付いている。
「・・・なんで!?」
「あの、密林のときのザクが使ってたものを参考にしてみたんだ。」
思い出がまざまざと蘇る。
「く、こんなもの!」
言うが早く、ジムが引きちぎろうと動く。
しかし、コーサカはすでに次の行動に移っていた。
「少し苦しいけど、ごめんね!」
チェーンをもったままガンダムを回転させ始めるコーサカ。
「なっ!」
驚いて一瞬の躊躇がいけなかった。回転が軌道に乗ってしまった。
ウォン!ウォン!
回転音がコクピットに響く。遠心力が体に響く。
「ウ・・・ぐぁあああ!!」
宇宙には重力がないため、遠心力がモロに横に掛かる。
そのG(重力単位)は壮絶な値にまで上昇する。
ササハラはコクピットに押されたまま、息が出来なくなる。
「くっ、はぁっ!くそぉおおお!!」
叫びが木霊する。ササハラはそのまま意識を失った。
「ごめん・・・。」
ササハラが気絶したのを見定め、コーサカは回転を止めた。
「・・・頑張ってね。」
そういうと、コーサカはチェーンを外し、艦の進行方向の逆へ踵を返した。

『・・・さん!サ・・ハラ・・ん!ササハラさん!』
会長の声で、意識を戻すササハラ。目を見開き、宇宙を見渡す。
「・・・コーサカ君は!」
しかし、視界にはただ宇宙が広がるのみ。椅子に力なくもたれ呟いた。
「・・・また負けた・・・か・・・。」

229 :第801小隊第15話『贖罪』11:2006/05/24(水) 00:30:48 ID:???
コーサカは、一人宇宙を駆けていた。そして、ある位置で停止した。
メガランチャー二門を抱え、一つの方向に狙いを定める。
「情報によれば全部で八隻・・・これで四隻落とせれば勝機はある・・・!!」
その方向には、皇国の一個大隊が進軍しているである。
ランチャーから粒子砲が放たれる。宇宙に、光がきらめいた。
メガランチャーを手放すと、エネルギータンクを接続する。
二発分のエネルギーが元に戻り、ガンダムは息を吹き返す。
「・・・孫子、拙速を尊ぶ・・・。ここが勝機だ。いくぞ!」
ガンダムのテールランプが宇宙に閃いた。

『三隻大破!二隻が中破・・・。』
「何が起こっているんだ!」
コージ=イバト少将は困惑していた。
一隻の艦を後方から攻める任務、簡単なものと安心していたのだ。
旧知の仲である男からの依頼、特にする任務もなかった彼は、
二つ返事で引き受けていた。この事態は予想だにしていなかった。
「気をつけろ・・・とはいわれていたがな・・・。
 ・・・しかし、まだMSは15機以上残っているのだ・・・!
 すぐに追撃が来る!MS隊出撃せよ!」
叫ぶが早く、周囲にはリック・ドムの部隊が出動する。
少し沈黙が続く。イバトがふと目を横のドムに写す。
「・・・なんだ!!」
その瞬間、一機のドムが大破する。目に見えぬ何かに壊されたかのように・・・。

この後の様子を後にイバト少将はこう語っている。
『黒い何かに、次々とMSが壊されていくんだ・・・。
 体中から何かが飛び出してきて・・・。翻弄されてるうちに・・・。
 もちろん、奴にダメージを与えられなかったわけじゃない・・・。
 ・・・私たちは全滅した。私は・・・。何とか逃げ出すのがやっとだった。
 ・・・あれはまるで悪魔だった。黒い、悪魔だった。
 ・・・気付くとその姿は無くなっていた・・・。
 あれがなんだったのか、いまだによく分からないんだ・・・。』

230 :第801小隊第15話『贖罪』12:2006/05/24(水) 00:31:58 ID:???
艦がササハラを拾い・・・気付いたマダラメとサキに状況を説明した後・・・。
一人笹原はコクピットでうなだれていた。
「・・・止められなかった・・・。」
もちろん、止めれば危険は増したかもしれない。
だから、こうなった以上はこのまま進む以外にない。
時間はない。それは、大隊長も言っていたことだ。
「だけど・・・。」
納得は出来なかった。戦争に犠牲はつき物だ。
しかし、コーサカの場合は、何とかならなかったんだろうか。
『ササハラさん・・・。』
「え!?」
スイッチは切っているはずだった。しかし、声が聞こえた。
『徐々に・・・。覚醒しているみたいです。
 スイッチが入ってないときでも、意識を外に出すことが出来るようになりました』
「・・・そうですか・・・。」
『コーサカさんが・・・。私に話しかけてくれました。』
「え?」
意外な言葉に、体を起こすササハラ。
『あの後・・・。私はコーサカさんに呼びかけました。彼はこう答えました。
 多分、あと少しであなたも解放されます。
 もうすぐ自由になれますが、もう少しだけお願いしますね、と。
 そして、私の本名を教えてくださいました。』
そこで一旦会長は言葉を切る。
ササハラは言葉を待つ。
『最後に・・・、ササハラ君に、ありがとうと伝えてください、と。』
 そういって、あの方は去ってしまいました・・・。』
「・・・コーサカ君。」
『ササハラさん。あなたの目的がなされるまでは共にいます。
 ・・・コーサカさんの、願いでもありますから。』
「はい・・・。会長、お願いします・・・。」
拳を握り締めたササハラの目に、再び意思が宿った。

231 :第801小隊第15話『贖罪』13:2006/05/24(水) 00:32:39 ID:???
「全滅だと!」
召喚した一個大隊の全滅を聞き、声を荒げる荒野の鬼。
「・・・くそう・・・。なんなんだ・・・。奴らは・・・。」
苦虫を噛み潰したような顔をする男に、女が近づく。
「・・・中佐、ナカジマが呼んでる。」
「オギウエか・・・。」
その言葉に、怪訝な顔をしつつも、鬼はオギウエと共に移動する。
「・・・何をつけている?」
オギウエの胸にぶら下がっているペンダントに興味を持つ鬼。
触ろうとするが、手を強くはじかれる。
「触るな!」
「・・・何なのだ、それは。」
「・・・分からない・・・。けど・・・。うぅ・・・。」
頭を抱えるオギウエに、
「・・・まあ、いい。」
二人はそのまま廊下を進み、どこかの部屋へと消えた。

232 :第801小隊『次回予告』:2006/05/24(水) 00:34:22 ID:???
大きな犠牲を払い基地へとたどり着いた第801小隊。
そこで彼らが見たのは巨大なレーザー砲だった。
マダラメは呟く。昔見た光景を思い出すように声を震わせながら。
「あんなもの蘇らせやがったのかよ・・・。」
第801小隊は大量の虐殺を止める事が出来るのか。

次回「蘇る悪夢」
お楽しみに。

233 :後書:2006/05/24(水) 00:35:23 ID:???
これが構想を浮かべたときに一番書きたかった話です。
後三話、お付き合いください。

234 :マロン名無しさん:2006/05/24(水) 00:39:41 ID:???
>第801小隊
リアルタイムで読んだ。
本編最終回間際の滑り込み投下乙。
とりあえず最終回以降の楽しみが出来たことに感謝。

それにしても高坂が斑目と咲ちゃんどつくシーンなんて、ここでしか読めんな…

235 :マロン名無しさん:2006/05/24(水) 02:08:22 ID:???
>>801小隊
おおおお…お疲れ様です。なんかもう…次回が気になって眠れなくなりそうです。
コーサカの勇姿とか、ササハラの友情とか…。うう、胸が熱いです!!
…次回予告のマダラメの過去と台詞が一番キましたが。ええ。すいません(汗)
イバトってのはあの人ですね、5巻の大手の…うわマニアックw(自分もだが(汗))

…それにしても、超短編も書かれてたとは、スゲー…いつも感嘆してます。

236 :212:2006/05/24(水) 20:53:18 ID:???
続きみたいなものです・・・

あの日以来、まともに顔も見る事が出来ない
恋に落ちるのは本当に簡単だった・・・
あの顔が、忘れられない・・・
斑目先輩が春日部先輩に恋をしている顔を・・・
そんな斑目先輩を好きだと確信してしまった自分・・・
そして、それがどういう事なのか自分には解っている
茨の道・・・
斑目先輩と同じ道・・・それでも良いと思った・・・
想いを隠し続け、そして斑目先輩達の卒業式の日・・・

「ご卒業おめでとうございます・・・」
「ありがとう」

斑目先輩はそっと手を出してきた

「色々あったけど、その、なんだ、がんばれよ」
「はい・・・」

驚きを隠すのに必死になりながら、斑目先輩と握手をした
温かい・・・
自分の欲望が、こんなカタチで実現出来るなんて思っていなかった

その後の事は、あまり覚えていない
自分以外の人とも握手をしていたようだが
少しでも温もりを逃がさないように、ずっと手を握っていた

帰る頃には消えてしまったけど
手を自分の胸にあて、その日は丸くなって眠りについた・・・

あの人の夢が見れるように、願いながら・・・

237 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 00:03:59 ID:???
げんしけん最終回

春コミサークル「げんしけん」で留守番する斑目と咲
700円500部は2時間ほどで完売
ボロイ商売になってきたと言い出す咲 9割荻上さんのお陰だけどねと言う斑目
笹原の部屋で仮眠取ってる荻上のカット
次回以降の皮算用を始める咲に「アナタモ2ページホドカイテミマスカ?」と切れ気味にツッコム斑目
あ、はいすいませんマジスイマセンと謝る咲

しかし色々あったよねえとしみじみする2人
げんしけんの活動の日々が回想シーンで挿入
間に耐えられず飲み物を買いに行こうとする斑目
近い奴に買いに行かせればいいよ座ってなと
クッチーに携帯で連絡する咲
荷物(買った同人誌)を置きに来るついでに飲み物買ってこさせる
2人で待ち 間

238 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 00:08:17 ID:???
クッチー到着 なんで自分パシリッスかもー
でも私の知識総動員して激ヒヤのPETボトル買ってきましたよさあありがたく飲むがいい!
咲「はいはいありがとねー」 斑目「悪いねあーこれ代金ね(2人分)」 朽木「ん(3の口で)」
朽木「ん? んー………
あっ自分は島中で新しいサークル開拓したいんで続き買ってきます 斑目さんいいのがあればキープしときますけどどうしましょ」
斑目「あーその辺は完全に任せるから(追加軍資金を渡す)」
朽木「いってきまーす」
咲「よく体力が続くね」
斑目「ははは」

夜の打ち上げまでまだ時間あるし一旦帰って休んだらどうかすすめる斑目
イベント終わってないし田中や大野がまだ戻ってきてないしいいのか聞く咲
俺が留守番してるからいいよと斑目
じゃあ一旦銭湯でも寄って休んでおこうかなと席を立つ咲
そうしなよ俺は閉会準備ちょっと手伝ってから行くからと斑目
んーやっぱやめたと言って今まで閉会までいた事無いから今回は残ると席に戻る咲
椅子に座る2人の後姿
笹原の部屋で休む2人 コスプレスペースの2人 サークル回るクッチー
クガピーとコーサカは仕事中
日常は続いていく

げんしけん 完

239 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 00:14:26 ID:???
ウソバレだが面白いから許す

240 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 00:48:30 ID:???
アフタヌーン、明日買って読みます。切ないけど、あとはココのSSをじっくり楽しみながら補完していきたいです。


>801小隊
待ってましたぜ〜。
コーサカ最後の戦い? 押し止めたい笹原との、友情を感じさせるバトルも魅せてくれますね。
イバト少将ってネタは気付きませんでした。出す人も、分かる人(>>235さん)もすげえ。
原作終わっちゃうんで、ラジヲもノンビリやりましょ。余韻を楽しみながら……。

>212さん
これもby朽木っすか?
なんか切ない、胸きゅん、でもクッチー…。

> げんしけん最終回
椅子に座る2人の後姿、これいい風景ですね。
「春日部さん売り子なんてアリエナイよそんなの!」とは思うけど……幸せそうだから許す。
みんなの中にみんなの分だけ最終回があるんだい!

241 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 01:22:52 ID:???
スレ汚しですスミマセン。
妄想の赴くままに、私も時代劇でSSかいてみました。
筆茶屋の人スミマセン。

筆茶屋さんとかぶらないように、また、初期メンバーでの話として作った物なので、笹荻は(まだ)出てきません。
必殺モノなので、あの時代劇のイメージを描くのは難しく、MIDIなどで必殺のテーマ曲を検索して聞かれることをオススメします。

6レスの予定です。

242 :必殺御宅人:2006/05/25(木) 01:25:18 ID:???
カネに生きるは下品にすぎる
恋に生きるは切なすぎ
出世に生きるはくたびれる
すべて浮世は視覚之文化
萌えにギリギリ生活かける
仕事はよろず引き受けましょう
人呼んで御宅人 ただしこの稼業
江戸職業づくしには載っていない

  ※       ※
錦絵(浮世絵)や華々しい見世物など、庶民を中心に視覚文化が大きく花開いた江戸時代。見る文化が発展すれば、おのずとさまざまな嗜好も生まれてくるもの……。

ところは江戸浅草の外れにある椎応長屋。
夕刻、この長屋に住む浪人・斑目晴信は、傘貼りの内職を終えると、同じ長屋の奥まった一角へと足を運び、ある部屋の前に立った。
そこの扉には、美人錦絵が貼られて飾られている。
しかしその絵は、菱川師宣に始まり喜多川歌麿、東洲斎写楽が人気を博す美人絵や役者絵とは趣が違っていた。瞳が大きく肌の露出も多い、春画(エロ絵)スレスレの「萌絵」と呼ばれる錦絵である。

カラリと戸を開いて斑目が中に入ると、そこは周りを棚に覆われた狭い空間だった。棚には当世の萌絵や読物、木彫りや陶器の萌人形が所狭しと並べられている。
「遅かったな斑目。見ろ武者頑我留が組み上がるぞ」
部屋の中央のちゃぶ台で、木彫りの人形を組んでいる男が声を掛けた。
裁縫や木彫物まで何でも寝ずにこなせる侍崩れ、人呼んで「梟の田中」である。
田中と向き合う形で座り、斑目に目もくれずに帳面に絵を描いているのは、遅筆のために絵師になりきれずにいる町人・久我山だ。
そして、部屋の上座に鎮座している、一見置物の如く生気や気配を感じさせない男が一言、「やあ、揃ったね」と声を発した。

「元締、急な呼び出しは困りますよ。内職の納期があるんで……」
「悪いね斑目君」
彼らは、当世の庶民風俗の好みとはちょっと違った趣味の錦絵や人形、絵草紙などを収集している。
江戸市中では、彼らのような極端な嗜好は、幼稚であるとか、時にはワイセツであると糾弾され忌み嫌われてさえいた。
彼らの様な者達は、「主に自宅に御座ましまして外に出たがらない者」……略して「御宅(オタク)」と呼ばれていた。

243 :必殺御宅人1の2:2006/05/25(木) 01:26:53 ID:???
  ※       ※

必殺御宅人

第壱話「あんたこのオタクをどう思う」

  ※       ※


244 :必殺御宅人1の3:2006/05/25(木) 01:31:38 ID:???
この部屋に集まった御宅人たちは重症…いや筋金入りだ。
町人文化が始まった元禄時代から、当世までの視覚文化を研鑽する集まりとして、彼らは自分達を「元禄由来視覚之文化研鑽會」、略して「元視研」と名乗っていた。

元締と呼ばれた、なで肩で眼鏡を掛けた男が口を開く。
「実は萌絵の同人版元から泣きつかれてね……最近、おかしな事件が起きてるんだ」
「同人版元が次々に殺されている一件ですね」と、事情通であり元締の代わりに会計も行う田中が、後を継いで語った。
萌絵は春画のように未成年禁止で取り締まられてはおらず、かといって子供に見せられないきわどい物もあり、中途半端な代物として危険視されていた。
特に正規の版元ではない同人の絵師や版元は、ご法度になるかもしれない恐れがあった。

斑目「危ない絵だからと、私怨を持って殺しをしていると?」
元締「いや、それだけではなく、絵の題材(モデル)になって版元で働いていた女性が乱暴され、河原で殺されていたり、売り飛ばされたという噂もある」
斑目「酷い話だ……それで…」

そのとき、ガラッと扉が開いて、元視研の部屋に珍しい来客が訪れた。
一人は眉目秀麗の武士。その後ろに、唐人のように赤く明るい髪をした美人だが目つきの悪い女が付いてきていた。
「元禄由来視覚之文化研鑽會はこちらですか。入りたいんですけど」
武士がニコニコと笑いながら問う。斑目、田中、久我山は目を点にして、「はあ」と答える。こうした入会希望者はめったにいないのだ。
武士の連れは憮然として、「ねえコーサカ、こんな掃き溜めみたいな処よりもさ、狩野派や光琳好みの絵を学びに行った方が良くない?」と、斑目たちへの遠慮もなく呟く。
「失礼な女だな!」と斑目が怒ると、女はギロリと睨み返して、「御宅はダマッテロ」と釘を刺した。火花を散らす両者。
そんな殺伐とした空気も何のその。高坂と呼ばれた男は、「咲ちゃん、ちゃんとした絵師は金持ちのパトロンがいないと続かないよ。僕はここでノンビリしたいなあ」と笑顔で返す。

田中が、「とりあえず今日はたて込んでいるんで、明日にでもまた来て下さい」とその場を鎮めて珍客を帰した。


245 :必殺御宅人1の4:2006/05/25(木) 01:34:31 ID:???
「何だアイツ」と斑目はご立腹だ。田中がまあまあと抑えながら用件を続けた。
「話を戻すが、事件の前には、定町廻の同心が版元の周りをうろついていたという話もある」
「泣きついてきた版元は、同心や岡っ引きが近くをうろついていたので不安になって僕らに相談してきたという訳だよ。さっそくそこに行って事情を聞いて来てくれないかな」と元締。
「さ、さっきの2人も次に、ど ど 同人版元の処に行くって外で話してたよ」
無言だった久我山が口を開いた。
斑目は眉をひそめ、「えー、またややこしい事になるんじゃねーだろな」とザンバラ髪をかきむしった。

その夜、斑目、田中、久我山の3人は相談者の同人版元へ向かう。佃島の郊外は人の通りも少ない。
まもなく版元の家に付くという時になって、静寂を破るように、目的の家から悲鳴が聞こえた。3人は漁の網や建物の物陰に隠れる。
血糊が付いた刀を持った町廻同心が、版元の家から出てきた。
「おい斑目、あれ見ろ」
田中が指差したのは同心の方ではない。近くに、夕方の無礼な女・咲が立っていたのだ。彼女は何が起きたのか分からないでキョトンとしていた。

同心が咲を見かけ、「そこの唐人女!萌絵の題材になった女じゃないのか!?」と、咲の色の明るい髪に目を付けた。
「ちょっ!、私は関係ないし唐人じゃないってば!、連れがここに来るのを待ってただけよ!」
「五月蝿い。言い訳は番所で聞くわい」
岡っ引きにしょっぴかれていく咲。
その様子を見た斑目は、思わず同心の前に出ていた。出たはいいが腕っ節も弱い斑目には咲を助ける術がない。
「何だお前は?」
「あ、いや……通りすがりの者ですが、さっきの人をどうなさるんで?」
「お上の取り調べに文句があるのか?」
同心は斑目のみすぼらしい容姿を一瞥した後、斑目が腰に差している刀に手をかけた。本来なら浪人相手とはいえ、このような無礼が許されるものではない。
同心は、刀の手応えの軽さに気付いて一気に引き抜いた。それは竹光(たけみつ)だった。
竹でできた斑目の刀を投げ捨てて、同心は「ケッ、命が惜しけりゃじゃまするな」と言い捨てて去った。

246 :必殺御宅人1の5:2006/05/25(木) 01:36:49 ID:???
物陰から出てきた田中らと共に、斑目は屋内に入り、斬られた版元に駆け寄った。
「も…元締めの使い…ですか、こんな非道が許され…て…」
版元はそのままこと切れた。斑目の眼鏡の奥の瞳が鈍く光る。
(許せねえ。それにあの生意気な女も、このまま乱暴されるとあっちゃ仕方がねえ…)
斑目は久我山の方を向き、「お前は元締と、高坂とやらに知らせてこい!」と告げた。
「こ 高坂は、ど どこにいるんだよ」
「うるせえ、こっちに来る約束だったんだから走ってる間に出くわすだろ!」
巨体を揺すりながら久我山が駆け出して行く。すぐに息が上がるのが遠目にも分かった。人選ミスだ。

田中が斑目に声を掛ける。
「お前、久しぶりに“マムシの晴信”に戻るのか」
「俺は前世がヘビだからな…。この獲物は俺ら二人で十分だ。行くぜ」
彼ら元視研は、今までも、視覚文化に関わる事件で許せぬ者があれば、「仕置き」を行ってきた。

仕置き。法によって処刑することを江戸時代こう呼んだ。
しかしここにいう仕置とは、法の網をくぐってはびこる悪を裁く闇の処刑人のことである。
ただしこの存在を証明する記録古文書の類は一切残っていない。
世に言う「仕置人」と彼らが違うのは、カネでは動かないこと。萌えを基準に動くのだ。

咲が連れて行かれた番所。竹刀で折檻を受けた咲は気を失っていた。
「ま、お楽しみはこれからだ」と同心と岡っ引きが野卑な笑いを浮かべる。
岡っ引きが厠に行く為に外へ出た。
番所の外は夜の闇。その闇の中に一瞬、“梟の田中”の顔が浮かんで、消えた。
(※ここから殺しのテーマを適当に脳内再生してください)
岡っ引きは明かりもほとんど届かない闇の中に、人の姿が浮かび上がるのを見た。
「ヒッ!」と驚く岡っ引きだが、その影をよく見ると、柳に吊るされた羽織物であった。
いぶかしげに羽織に近づく岡っ引き。その背後にはすでに田中が立っていた。
田中が手にした反物から、糸を一本引き抜くと、岡っ引きの首に絡めて絞めたまま、闇の中へと姿を消していった。
岡っ引きが闇の中から戻ってくる事は無かった。

247 :必殺御宅人1の6:2006/05/25(木) 01:40:48 ID:???
代わりに夜の闇の中から歩いてきたのは、斑目だった。その姿が番所の灯りに照らされて、次第にハッキリしてくる。
斑目は、腰の刀に手をかける。鞘に納めたまま、鍔(ツバ)の部分だけを半回転させると、中からカキンと音がした。

番所で、気を失った咲の美しい顔立ちを眺めていた同心は、背後でガラッと戸の開く音を聞いた。
同心が、「おい、遅いぞ」と振り向くと、そこに立っていたのは、先刻出会ったみすぼらしい浪人だった。
「なんだ、さっきの“竹光”か。喧嘩でも売りにきたのか?」
斑目は無言のままだ。
「こんな竹の刃で何ができるんだ。ハハっ」

同心は、再び斑目の刀に手をかけて、“竹光”を引き抜いた……つもりだった。だが、手応えが無かった。手には柄(取っ手)だけがあった。
次の瞬間、彼の体に熱と激痛が走った。
斑目の本来の「刀」は、柄の中に仕込まれていたのだ。鍔を回転させることで竹の刀身が抜けないように固定して、鞘ごと「槍」として使えるように改造してあったのだ。
同心は、目の前の事が信じられないという顔をしたまま崩れ落ちた。

翌朝、咲が目を覚ますと、元視研の部屋に居た。
「咲ちゃん大丈夫?」と、枕元で高坂がにこやかに声を掛けた。
ホッとした表情で布団から半身を起こした咲は、「こうさかぁ……」と高坂に抱きついて甘えた。
その部屋の外には、斑目と元締が立っていた。

「目が覚めたんならとっとと出て行けばいいのによ〜」
毒づく斑目の後ろで元締が、「彼女を助けた本人がそんなことを言ってはいけないよ。新しい仲間なんだから優しくしてやってね」と語り掛ける。
「仲間?、あいつら元視研に入るんですか?」と、斑目が振り向いた時には、もう元締の姿は無かった。神出鬼没の男である。

これまでの穏やかな御宅生活(オタクライフ)が、どうか乱されないように、と願う斑目であった。
<おわり>

248 :必殺御宅人:2006/05/25(木) 01:47:14 ID:???
終わりです。

元締には言及してませんが初代です。
第1話になってますが、2回か3回ですぐに終わりにします。

どうもお邪魔しました。

249 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 03:10:29 ID:???
>>212>>236
不思議な話だなあ…誰の視点なんだろ?ホントにクッチーなのか(汗)でも何か切ないです。
>>237
嘘バレだけどもーイイ、斑咲なら!くっはーーー!
仲いい二人が読めて幸せだったアリガトウ!!(涙)あ、あとクッチー出てるとこも!
>必殺御宅人
…くうう…斑目かっこええ…!!いやーそれにしても、細かい設定に感心します。
「御宅(オタク)」とか、「元視研」とか、「梟の田中」とか(かっこええ)、“マムシの晴信”とか(めちゃかっこええ!)
………あと、斑咲初対面シーンとか。(ニヤリ)こんな風に使ってもらえて嬉しいですよ〜w
いやー改造竹光に激燃えです。くはー!続き、楽しみにしてます!!

250 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 12:29:52 ID:???
「梟の田中」、「マムシの晴信」…久我山は何になるんだろ
豚?ヒデエw

251 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 13:17:57 ID:???
「木霊の久我山」とかかな?動物じゃねえけどww

252 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 13:40:47 ID:???
>必殺御宅人
こりゃまた最終回当日に、とんでもないのが投下されたな。
いやー細かい。
高坂の台詞にあったパトロンを谷町(相撲用語だが)とでもしておけば、百点満点の出来。
「とらの会」(必殺シリーズのファンクラブ)の人かな?

続きも楽しみ。
次は斑目、竹光の方で斬殺ってのもアリかもしれない。
(本家必殺で、それやってた浪人の人がいた)

253 :初代スレ1:2006/05/25(木) 16:43:42 ID:???
祝・完結!
…ということで、今月号に付随して即興で書きました。
出来については完結に免じて大目に見てください。

254 :「ありがとう」 1:2006/05/25(木) 16:45:44 ID:???
もう外は明るくなり始めてきた。
荻上さんの家に到着。部屋の鍵を開けた。

当の家主は背中の上で寝息を立てている。
すっかり酔っ払ってしまったみたいだ。
かくいう自分も足取りが心もとない。

玄関に入り、荻上さんをおぶった体勢のまま靴を脱ごうとすると、

「あっ、も、もう大丈夫ですっ」
「…あ、起こしちゃった?」

背中から荻上さんの声が聞こえてきた。

「いや、…ゴメンなさい、寝ちゃって…」
「大丈夫、大丈夫」

ふと部屋の中の時計を見ると、針は五時を指していた。

「もうこんな時間か……」

二人とも部屋に入って、このまま眠りにつこうかと思っていた矢先、
手に何も持ってないことに気付く。

「あああっ!!」
「ど、どうしたんですか?」

255 :「ありがとう」 2:2006/05/25(木) 16:46:47 ID:???
「忘れたぁぁ!!」
「へ?」

「同人誌…」


「…そんなんどうだっていいじゃないですか!!」
「いや、…そうね…、う〜んでも…」
かなりお気に入りだったんだよなぁアレ。
「…寝ていいですか」
呆れた様子で、荻上さんはソファに寄りかかる。


「…でもまさか、あんなになるとは思わなかったなぁ」
「まだ同人誌ですか」
「いや、…それもあるけど、そうじゃなくて、
 女性陣は随分盛り上がってたなあって思って」

合宿の時は仕切られてたからどんな話をしてたか全然分からなかったけど、
知らない間に随分と仲良くなってたんだな、と思った。
無理矢理ついてきた恵子とも、それなりに打ち解けてたのが、
ちょっとした驚きだったり。


256 :「ありがとう」 3:2006/05/25(木) 16:47:45 ID:???
「笹原さんこそ、おとなし過ぎですよっっ!」

「チラチラ見てても、酒呑みながらいつものオタク話
 ばっかりだったじゃないですか!」
「んー…
 でも俺達いつも、あんな感じだしなぁ…」

男性陣は男性陣で、まったりといつものオタク話。
斑目さんと高坂くんの仕事話や田中さんの衣装話も
軽く話したりしたけど。
でもそんな話を気兼ねなく話せる人たちだし、それだから
楽しく続けていられたんじゃないかと、今になって思う。

「それにしたって!!」


「最後なんですよ!もっと色々
 話す事とかあったじゃないですかぁっ…ヒッ!…ク」
息を吸い込みすぎたのか、しゃっくりが出てきた。

「……まだ酔ってる?」
「酔ってないです!!」
「水、持って来るね」
「大丈夫です!…話聞いてますか笹原さん!?……ブツブツ」

ソファーに座りながら煮え切らない様子の
荻上さんを尻目に、台所から水を取りにいく。

257 :「ありがとう」 4:2006/05/25(木) 16:48:29 ID:???
…コンパの後は二次会、三次会、カラオケとオールナイト。
久我山さんも残業後にかけつけてくれた。

全員が久しぶりに集まる。お酒も随分空けたし、
朽木君が例によってハメを外したりしたけど、
それも含めて凄く楽しい夜だった。
多分もうこんな機会はないだろうなと思う。


「…荻上さんさ、」
汲んできた水を渡す。勢い良く水を飲む荻上さん。

「どこか大野さんに似てきたよね」
「!!」

驚いたように水をこぼす。


「ど、どこがですかっ!!」
「…いや、良い意味でだよ」

「似てませんよっ!!」

「でもさ、」
服の上に零した水を拭いてあげながら、言葉を続けた。
「以前の荻上さんだったら、あんな風に泣いたりしなかったよね」

「………」

258 :「ありがとう」 5:2006/05/25(木) 16:48:58 ID:???
入学当初、誰も寄せ付けないような感じだったのに。
…別れ際、春日部さんと話してて涙ぐんでた荻上さん。
酔っ払って、タガが外れたのだろうか。

春日部さんも大野さんも困ってたな。
荻上さんが感情を表に出すのって珍しいから。

春日部さんは荻上さんを落ち着かせようと
頭を撫でながらよしよしやってたけど。
大野さんは貰い泣きしちゃってたみたいだ。



「…だって、……卒業しちゃうんですよ……」
急に声が尻すぼみになる。

「大野先輩達はまだ居るし、笹原さんは傍にいますけど…」

「もしかしたら、もう会えないかも…」
そういって荻上さんの目が潤む。
「荻上さん…」

「春日部先輩や、大野先輩にっ……。現視研に…私…、どれだけっ……」
そのまま言葉を詰まらせてしまった。




259 :「ありがとう」 6:2006/05/25(木) 16:49:30 ID:???
「……大丈夫だよ」
「……っく……ひぐっ…」

荻上さんの隣に座る。

「みんな荻上さんの気持ち、分かってると思うよ、きっと」

なかなか素直にはなれないけど、
本当の荻上さんは真っ直ぐな気持ちを持っているってこと、
現視研のみんなはもう知ってる。


「それに…卒業したって、また会えるし、ね」
「……」



「だから、…大丈夫だから、ね?」
そういって、目の前の彼女を抱き締める。
「………ハイ……」

こうしていると、根は本当に良い子だよなあと、改めて思う。

260 :「ありがとう」 7:2006/05/25(木) 16:50:02 ID:???
「かわいいな、荻上さんは」
「……どさくさに、何言ってるんですかっ……」
「…ハハ」

荻上さんにとって、いつのまにか現視研が
かけがえの無いものになっていたんだな、と思う。
もちろん、自分にとっても同じだ。
何となく、嬉しい気持になった。


「ありがとう」
「……」

誰に向けるでもない言葉が、自然と自分の口から出てきた。

いや、目の前の人に向けた言葉には違いないんだけど、
それだけじゃなくて。
酔っ払ってるせいだろうか。


「そんな…まるで、これで終わりみたいな風に言わないで下さい」
「そんなんじゃないよ」
「分かってます…ケド…」

261 :「ありがとう」 8:2006/05/25(木) 16:50:39 ID:???
「…ずっと一緒ですよ」
そういいながら、彼女が抱き付いてきた。

「うん」
返事をしながら抱き返す。


しばらくそのまま、目を瞑ってみる。
すると、さっきまで一緒にいたみんなの顔が浮かんできた。
本当に、四年間…色々あったな……



…気がつくと、傍から寝息が聞こえてくる。
あれだけハシャいだもんなぁ。
…自分も眠くなってきた……

カーテンの隙間から差し込む明かりと
隣に感じる温もりを感じながら、
ゆっくりとソファーに身体を預けていく。


こんな感じで、僕達の卒業式は終わっていったのだった。


262 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 16:51:21 ID:???
笹原の気持というよりは、まんま自分の気持であります。
今号柱じゃないけど、こういう作品及びキャラクターに出会えたのは
読み手としても幸せだったなぁと。ホント木尾さんはじめ
関連スレ住人その他げんしけんに関わった全ての皆さん、
感想書いたりSS書いたりエロSS書いたりコミケで本漁ったり、
色々楽しかったです。本当にありがとうございました。

263 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 18:53:06 ID:???
>>「ありがとう」
最終回では荻上さんは泣くと思っていました。
家で二人になってからか・・・。せつねえ。
社会へと旅立つ笹原に敬礼!

264 :To Heart:2006/05/25(木) 18:59:58 ID:???
「プハーーーーーーーーー。」
「おお、義姉さん、呑むようになったね。」
「うるさいですね!さっきのうさ晴らしです!」
「うさ晴らしって・・・。いつもは出来ないの?」
「してますよ!!でもしたいときにしたいじゃないですか!」
「じゃあ、いつもはエロエロなの?」
「エロエロですよー!あのですね・・・。」
「ふんふん。」
「へ・・・。」
「・・・。」

「おい、笹原、荻上さんすごいことになってるぞ。
 春日部さんも大野さんも妹さんもなんか聞き入ってるし・・・。」
(もうやめてくれ荻上さん!!)

265 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 19:49:56 ID:???
>>ありがとう
ほんとう、幸せになってよかった…荻上さん。
自分を責めて人を受け入れられなかった女の子が、こんなに幸せな時間を得られるなんて……


敢えて言いたい……「高柳GJ」と!


でも、262での、
>本当にありがとうございました。
のあとがきが一番切なく感じました。何だか総てが幕引きされちゃうみたいで……。


>>To Heart
そしてこういう姿も げんしけん らしくていいですよね(w

266 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 21:45:33 ID:???
>>ありがとう
いいですなぁ‥‥‥
堪え切れずに泣いてしまう荻上さん
頭なでなでしてあげる春日部さん
もらい泣きしてしまう大野さん
このシーンはツボですわ

俺はただの読み手側ですが
げんしけんの二次創作に手をだすようになったのはこのSSスレがきっかけなので職人の皆様にはこの場を借りてありがとうと言わせていただきます

原作は終了しましたが、単行本もあるしSSスレはまだ終わらんよ!

267 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 21:59:31 ID:???
>ありがとう>To Heart
この2本読んだら、追い出しコンパ実況SSが読みたくなった。
誰か手の速い人、お願い。
(俺が書いたら再来月ぐらいまで出来ない気がする)

268 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 22:21:35 ID:???
>ありがとう
…泣きそうになりました。自分も荻上さんみたいに、「げんしけん」にありがとうと言いたい。
げんしけんのおかげで、このスレに出会えて、自己表現の場ができて、この数ヶ月どれだけ楽しかったことだろう。
げんしけんのおかげで、今まで出し渋っていたオタク的趣味や興味を出すことができて、どれだけ嬉しかったことだろう。
「初代スレ1」の人、本当にありがとうです。
>To Heart
荻上さん…(笑)ノロケはほどほどに。

>>267
じ、実はもう昨日書いちゃったんだな。追い出しコンパ話。しかし、個人的趣味(斑目)に走った話なのですが、それでもよければ…。
もっかい見直してから投下しようかな…と。

269 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 22:34:00 ID:???
>>268
テレパシー?ニュータイプ?
とにかく速っ!
ぜひ、お願いします!

270 :まえがき:2006/05/25(木) 22:51:59 ID:???
「げんしけん」最終話、卒業式の後の「追い出しコンパ」での話。
8レスで投下します。

「薄明かり」(7月号最終話の、コンパの話。)

271 :薄明かり1:2006/05/25(木) 22:53:14 ID:???
大「え〜それではっ!
笹原さん、咲さん、高坂さんの卒業と、荻上さんの会長就任を祝して!」

「かんぱ〜〜〜〜〜い!!!!!」
グラスを合わせる音が響く。

田「や、おめでとう」
笹「ありがとうございます」
恵「おめでとうゴザイマス、コーサカさん!」
高「ありがとう」
咲「あーこらこら。あんまくっつくな」
恵「えーいいじゃん、今日くらいさー!」
咲「…ま、いいけどね。今日くらいは」
恵「うわ、余裕?なんかむかつくなー」
咲「何でよ(苦笑)」

荻「笹原さん、そっちお皿あります?」
笹「え?ああ、ありがとう」
恵「うっわ、お姉ちゃん、何だか新婚さんっぽ〜〜〜w」
荻「な、何言ってんですか!(///////)」
恵「もーずっとお兄ちゃんの部屋行き来してるしー、新婚同然?」
荻「変なこと言わないで下さい。ていうかお姉ちゃんはやめて下さい。」


272 :薄明かり2:2006/05/25(木) 22:53:46 ID:???
もうすでに賑やかな席になってきている。
…いや、隅のほうで、朽木君が珍しく静かに飲んでいる。
朽「…次期会長はワタクシだと思ってましたのに。シクシク………」
斑「まー、そんな落ち込むことないって。会長なんて面倒くさいだけだぞ?」
朽「…斑目先輩も会長デシタよね?面倒くさいって思ってたんデスカ?」
斑「むう、フォローしてんのに。何でそんな質問振るかなー…」

久「よ、よう。盛り上がってるなあ」
田「よう!」
斑「ようやく来たな」
笹「あ、お久しぶりっす。久我山さんも来てくれたんですねー」
久「し、仕事があったから、来れるかどうか分からんかったんだけどな。何とか時間内に終わらせられたからなあ」
斑「はー、大変なんだなー営業ってのも…。」
久「…お、お前は大丈夫なんか?この不況下でそんなヒマそーにしてて」
斑「う、うるせーな。事務はそんなもんなんだよ」
田「はは、久我山も言うようになったな」

大「すいません生大追加〜」
咲「早っ!しかももう大ジョッキかよ!!」
大「中ジョッキじゃおっつきませんよ♪」
高「うわばみだね」
大「あら(汗)高坂さん、今日はツッコミ厳しいですね」
高「あまり出番ないからねー(ニッコリ)」
大「え、えーとえーと…そんなことは………(汗)」


273 :薄明かり3:2006/05/25(木) 22:54:27 ID:???
朽「アレ、斑目先輩どこ行くんデスカ?」
斑「んー?ああ、ちょっとトイレ行ってくるわ」
そう言って斑目は席を立った。

トイレから出るとすぐ、裏口につながる通路がある。
少し外の風にあたりたくなり、なんとなく裏口から外に出た。

上を見上げると、建物の隙間から四角い星空が見えた。
春でも、夜はけっこう冷える。
でも酒の入った体にはむしろ気持ち良いくらいだった。
裏口を背にして、建物の壁にもたれかかる。

「………………………」

何だかあの賑やかな雰囲気の中にいるのが苦しかった。
最近ずっと感じていた。でも表には出さないようにしていた。
(何でかね…。一人でいるときよりも、皆といるときのほうが寂しく感じる。)

(…疎外感?いや、それよりも、やっぱ……。)

(もう部室に行く意味が、今日でなくなろうとしてる…。多分そのことが………。)


274 :薄明かり4:2006/05/25(木) 22:56:18 ID:???
咲「こんなトコで何してんの?」
斑「うおっ!?」
急に後ろから声をかけられ、びっくりする。
咲「何、酔い覚まし?もう回っちゃったの?」
斑「え、いや、まーね…」
咲「フーン。はー、外けっこう涼しいね。気持ち良いかも」
斑「………………」

店の中から皆の騒ぐ声が聞こえる。薄暗がりで、裏口から少し光が漏れている。
春日部さんが、酒が入って少し赤くなった顔で笑っている。
急にこの空間が特別なもののように思えた。

斑「あ、えーと、卒業おめでと」
咲「何、今さら?」
斑「んー、まぁ一応ね」
春日部さんは呆れた顔で笑った。
咲「ありがと」
斑「…春日部さんも丸くなったよなあ………」
咲「ん?」
斑「いやね、昔はしょっちゅう怒ってたのに。最近穏やかになったよな」
咲「んー、そうかな。…そういやコーサカにも最近、そんなこと言われたよーな気がする」
斑「そーなん?…じゃあやっぱ穏やかになったんだな。高坂がそう言うくらいだから」
咲「そうかもねー」


275 :薄明かり5:2006/05/25(木) 22:56:58 ID:???
なんだか、こうしていると落ち着かない。
腕を組んだり、また下ろしたりしていると、それを見て春日部さんが言った。
咲「ん、寒い?じゃあ中に入ろうよ」
斑「え?あーいや、寒くは…」
咲「じゃ、先入ってるよ」
斑「あ…」
咲「ん?」

春日部さんがこっちを見て、「?」という顔をする。
斑「いやその、えーと…(汗)」

何か言いたいのだが、言葉が出てこない。
…もう当分、こうして二人で話すことなどできないかも知れない。いやもしかしたら、もう一生………。

斑「いや、今日さ、春日部さんと喋れて良かったよ…」
咲「はあ?大した話してないじゃん」
斑「うん、それでもさ…」

言いながら、かなり自分にしては大胆なことをしてるなと思った。
気持ちがバレるかもしれないのに、大丈夫なんか?
…でもそれでもいいかな、と思っていた。少し気持ちが投げやりになっているのかも知れない。

斑「…少しでも話せて、嬉しかった」


276 :薄明かり6:2006/05/25(木) 22:57:41 ID:???
咲「………酔ってる?」
斑「うん、そうかも知れねー」
咲「元気ない?」
斑「うん………」
咲「元気出せよ。アンタらしくもない」
斑「ハハ、そーだな…」
春日部さんが、軽くこっちの胸の辺りを叩いた。びっくりしたので少しよろける。
斑「………………」
咲「頑張れ」
斑「え、あ…うん。か、春日部さんも」
咲「うん」

少し沈黙があった。
急に春日部さんが笑い出す。
咲「アハハ!なんか変、こんなかしこまっちゃってさ!」
斑「え?あ、アハハ…。そうだな」
咲「じゃ、そろそろ戻るね」
斑「うん…酔ってる?」

思わず聞いてしまった。春日部さんの顔がさっきより赤い気がしたから。
咲「あー、ちょっとね…」
そう言って春日部さんは店の中に入っていった。


277 :薄明かり7:2006/05/25(木) 22:58:45 ID:???
「………………………………」
しばらく放心していた。

薄闇の中、春日部さんが今までいた空間が、少し暖かいように感じた。
すぐに夜風が吹いて余韻をかき消してしまう。


「………………………………」

今はまだ何も考えられない。未来のこととか、いや、明日からのことでさえ、考えられない。
ただ立ち尽くしている。
俺はまだ迷っている。標識のない暗闇の中を、道を探してもがいている。

でも。
一人一人があの部室から旅立っていくように、自分も何かしらの「道しるべ」を見つけて進まなければならないのだ。
「光」を見つけだして、進まなくては…。

店の中から皆の騒ぐ声が聞こえる。薄暗がりで、裏口から少し光が漏れている。
不意に皆の中に戻りたくなった。


………………………


278 :薄明かり8:2006/05/25(木) 22:59:48 ID:???
朽「遅かったですにょ、斑目先輩!!うんこでしたかにょ?」
斑「あ?あー…、まーな…」
言い訳を考えるのも面倒くさかったので、適当に相槌を打った。



高「…いいですよ、今日くらいは」
高坂が斑目のほうを向いて言った。鉄壁の笑顔で。
斑「!!!!!」

高坂が何を言おうとしてるか、ものすごく身に覚えがあるのでびびった。
斑「は、ハイ!!!(激汗)」
朽「ん?どーしたんデスカ斑目先輩??汗びっしょりにょ〜。」
斑「いっ、いや何でもねーし!!!(汗)」

高坂、今日はツッコミ厳しいな!!と焦りながらも思う斑目であった。

                        END


279 :あとがき:2006/05/25(木) 23:00:19 ID:???
また斑目の話です。でも最近クッチーも好きなんで大目に出してみました。
あと、原作最終話で高坂のするどいツッコミにも惚れました。(笑)
クッチーと高坂が漫才コンビとかなったら見てみたい気もします。

SSスレに感謝をこめて。改めてありがとう。
これからも「げんしけん」の過去話や、未来の話(斑目が進む話とか)を書いていきたいと思っております。
「そっか、連載終わっても、みんな一緒だ。」  ………と、いうことで。


280 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 23:14:46 ID:???
>薄明かり
オロロロ〜ン!!!(男泣き)
いやーさっそくリクエストに応えて頂き、感謝の極み。
まあこんな調子だったんだと思います、斑目。
やはり墓場まで持って行く積もりなのかな、春日部さんへの思い。

今日は休肝日の予定だったが、やっぱ飲も。
酒買いに行ってきます。

281 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 23:29:28 ID:???
すみません265です。またしてもスレ汚しです。

何だか淋しくなってきまして、勢いだけで昨日の「御宅人」の続きを書きなぐりました。
ゴメンナサイ。本当にすみませんが、投下させていただきます。
6レス予定です。

>>249-252さんご感想ありがとうございます。
後ほどゆるりと御礼申し上げたいと思います。

282 :必殺御宅人2の1:2006/05/25(木) 23:31:04 ID:???
カネに生きるは下品にすぎる
恋に生きるは切なすぎ
出世に生きるはくたびれる
すべて浮世は視覚之文化
萌えにギリギリ生活かける
仕事はよろず引き受けましょう
人呼んで御宅人 ただしこの稼業
江戸職業づくしには載っていない

  ※       ※
江戸の絵草子や見世物のポスター、大売出しのビラなどの印刷物が多色刷りになったのは、江戸時代中頃からであるという。
優れた絵師や彫師をはじめ、今でいうコピーライターを起用して宣伝文を書き、より多くの顧客を獲得しようとせめぎ合い、それが100万の人口抱える大都市・江戸の文化と経済を発展させる一翼を担った……。

早朝の椎応長屋。普段は昼近くまで寝ている斑目が、息せき切って自分の部屋を飛び出して行った。
隣の部屋の久我山は、斑目が出ていく物音に気付き、「め 珍しいこともあるんだな…」と目を擦りながら呟き、再び眠りについた。

斑目はこの日、新規開店の装飾店で出される限定版の「引札(チラシ)」を目当に目抜き通りまでやってきた。斑目好みの絵師が描いた錦絵が、しかも開店当日の限定版として配られるのだ。
しかし斑目は、店の前の雑踏で意外な人物の姿を見かけた。先日助けた春日部のお咲だ。気を失っていた所を斑目に救われた彼女の方は、その事実と彼らの裏家業を知らない。
 
咲が斑目の姿に気付いて、「あ、御宅じゃん」と声を掛けた。
斑目は少しムッとしたが、(この混雑の中で俺の姿に気付くとは、まんざら悪い印象ではないのか)と思う。
「お咲さん…だっけか。こんな所に何しに来てるんだ?」
「買い物よ。あんたこそ女物の飾りの店に何の用よ」
斑目は錦絵の事ばかりに気が向いていたが、この引札の店は、女性向けのものである。
咲がすぐに斑目の姿に気付いたのも無理はなかった。

283 :必殺御宅人2の2:2006/05/25(木) 23:32:10 ID:???
  ※       ※

必殺御宅人

第弐話「あんたこの属性をどう思う」

  ※       ※

284 :必殺御宅人2の3:2006/05/25(木) 23:33:10 ID:???
斑目はようやく、周囲に居る男が自分だけだったことに気が付いた。
引札の錦絵目当てに必死でやってきたため、まったく気が付かなかったが、彼にとっては全く相容れない洒落た世界である。

急に息苦しくなり、一旦、女ばかりの空間から離れて、近くの射的屋(ゲーセン)で休憩(ワンプレイ)。
その後、店の丁稚にまで頭を下げて、張り紙(ポスター)は貰うことができた斑目だったが、限定版の引札はついに手に入らなかった。

肩を落として長屋に帰ってきた斑目。長屋の一角にある元視研の部屋に行くと、そこには、同じ店から買ってきた簪や蒔絵の櫛で高坂の気を引こうとしている咲がいた。
ため息をつく斑目。高坂はニコニコして咲の呼び掛けに返事をするが、目は絵草子から離れない。

フンと鼻息を吹いた斑目が、「無駄無駄。ここ数日見てて思ったけど、高坂はかなりの御宅なんだからさあ、無駄なあがきだよ」と咲に語り掛ける。
部屋で絵を描いていた久我山も、「だ 第一、髪を結わえてもいないのに簪を飾るなんて無謀だな」と呟く。
「うっさいわね。この方が頭が楽なのよ!」
咲は、日本髪を結わえることなく、自然に流していた。
(そんなんだから唐人に間違えられるんだ)と斑目は思った。

斑目がふと、ちゃぶ台の上に目を移すと、自分が欲しがっていた限定版の引札が、無造作に丸められているではないか。
思わず、「あーーーーっ!、なんて事を!」と絶叫する斑目。咲は、「これが欲しいの?、趣味悪ッ。この絵じゃ店の雰囲気に合わないと思うわ私」と呆れ顔だ。
「何だと!、人の好みにケチつけやがって!」

咲は丸まった引札を開いて見る。童顔の幼女体系、いわゆるロリでツルペタだ。汗だくになった咲は、無言でもう一度丸めて土間に投げ捨てた。
「あーーーーっ!」
再び斑目の悲鳴が長屋に響いた。

285 :必殺御宅人2の4:2006/05/25(木) 23:34:37 ID:???
そこに、息せき切って田中が駆け込んできた。土間に捨てられた引札は、丸まったまま今度は田中に踏みつけられた。
「あぁぁあ…」斑目の声が空しく響く。
「おい、斑目、久我山、ちょっと来てくれ!」

久我山と、意気消沈の斑目を長屋の井戸端に呼び出した田中は、ヒソヒソと用件を話しはじめた。
北町奉行所が、今回配られた商店の萌絵の引札が風紀を乱すとして、引札の回収と、原画や刷りの木版を没収するというのだ。

斑目「くっそー。これ以上俺から萌絵を奪おうというのか。許せん」
田中「何のこっちゃ」
久我山「あ、気にせずに、な 生暖かく見守るが吉」
元締「しかし、今回の取り締まりは、そのまま見送るとマズイよ」

三人の会話の輪の中に、いつの間にか元締が入っていた。驚く田中ら。
元締は、今回の取り締まりを契機に、萌絵や絵草子を手掛ける絵師や刷師が怖じ気づいてしまうことを危惧していた。

斑目「じゃあ、俺らで一つ花火を上げて…」
田中「奉行所の失態を見せつければ、職人も頑張ってくれると…」
元締は、「郊外の版元で没収した原画や引札を乗せた馬車が、奉行所に行く道筋は調べてあるよ。警備の者もほとんどいない」と事も無げに言う。
その飄々とした言動に斑目は、(一体この人は何者なんだ)と疑問に思った。

その日の午後、人気のほとんどない郊外の農道。元締が教えてくれた馬車の通り道だ。

道の向こうから、久我山が歩いてくる。道の脇にポツンと建っている小屋まで来ると、そこから、馬車が来る方向へと歩き出し、1間(1.8メートル)ごとに石を置いていった。
石は、青い岩絵具で塗られており、1間ごとの目印になった。

10間(約18メートル)ほど石を置いたら、再び道を引き返し、小屋の玄関に置いてある大きな樽のそばに座った。
昼間の陽に照らされて、久我山は汗だくだ。
ふいに、「久我山、頼むぞ」と声が聞こえてきた。道を挟んだ向かい側の木の陰に、田中と斑目が隠れている。
久我山は、「お おう…」と、控え目に返事をした。

286 :必殺御宅人2の5:2006/05/25(木) 23:35:41 ID:???
まもなく馬車が通る時間だ。
(※ここから殺しのテーマを適当に脳内再生してください)

樽の陰に大きな体を隠した久我山は、懐から厚手の皮手袋を取り出して、左手を覆った。
続いて、竹製の大きめの絵筆を取り出す。
筆管(筆の胴体部)を革手袋をした左手でゆっくりと握った。
いつも以上に、汗が体中から吹き出してくる。
首から掛けた手ぬぐいを右手に握りしめ、顔の汗を拭うと、「ふひー…」と大きく息を吐いた。

その時、目標の馬車が走ってくる音が聞こえてきた。
樽の陰から音の方向を覗き込むと、役人が一人で馬車を操っているのが見えた。
物陰から馬車と自分の距離を計る久我山。既に10間を切っている。馬車が目印の青い石を過ぎるごとに、「ご、五間……四間……」と呟く。

近付いてくる馬車。久我山は汗だくになりながら、馬車が3間先の目印を過ぎるのを見た。
「……三間ッ!」
物陰から身を起こした久我山は、筆先を馬車に向け、右手で筆管の端の掛け紐を勢い良く引き抜いた。

ズバァァァンッ!!

毛先が爆発したように弾けて、筆の穂が勢い良く散る。同時に弾丸が馬車の車輪近くに命中した。
久我山の仕込み筆には火薬が仕込まれ、掛け紐を引くことで小さな火打石がこすれ、弾丸を射出する。
ただし、命中させるには3間(約5.5メートル)以内の間合いが必要なのだ。しかも一度撃った仕込み筆はバラバラに壊れ、連発は出来ない。革手袋をしていないと、久我山自身がケガをしてしまう。

錯乱する馬と慌てる役人。久我山の銃撃を合図に、黒覆面を被った田中が役人の背後に走り寄る。
田中は、役人の背中から相手の腕を絡め取ると、手製の強化糸を通した針を、役人の羽織りの袖、襟、袴へと瞬く間に通していく。
クキュキュッ!と、糸を引き絞る田中。役人は、まるで拘束具を着せられたかのように、がんじがらめにされ、手も足も出ないまま地面でのたうち回った。

続いて出てきた覆面姿の斑目が、田中と二人掛かりで役人を抱え、小屋の中へと押し込んだ。
「ざっとこんなもんか」と斑目。すかさず田中が、「お前は大した事してないだろ」と突っ込んだ。

287 :必殺御宅人2の6:2006/05/25(木) 23:36:47 ID:???
翌日、街頭で仰々しい口上とともに、刷物(かわら版)がばらまかれた。

「没収お取り上げになった萌絵の引札大量に奪われる」「白昼の強奪劇、北町奉行所大失態也」

その刷物を手に街を歩く田中。(しかし、北町奉行の“女奉行”キツそうだからな。逆効果で余計に厳しくなるかも知れんな……)と心配が過る。
ふと、通りのにぎわいに顔を上げた田中は、目の前でひらひらと舞い落ちる無数の引札の一つを拾い上げた。

「何だこりゃ」
引札は呉服商の新規開店の告知だったが、その錦絵が一風変わっていた。丸坊主のいかつい男性、ひげ面の中年侍が、鮮やかな反物を広げて暑苦しくアピールしているのだ。
「こりゃまた凄い趣味の引札だな。斑目は嫌がるだろうな」と笑う。田中はこの店が開店したら、その店の主人の顔を見に行こうと決めた。
引札には、「呉服“神無月”」と書かれていた。

一方、椎応長屋の一角にある元視研の部屋では、斑目が久我山とともに引札を眺めていた。馬車から強奪した引札は密かに隠し、ほとぼりがさめれば絵師に返す段取りになっているが、元締の許しを得て、その一部を譲り受けたのだ。
そこに高坂と咲もやってきた。咲はいつも通り、面白くなさそうにしている。

「どうだ奇麗だろう高坂。この可憐な表情、現物の女じゃあ出せないよなあ!」
斑目は、絵を高坂に手渡そうとするが、咲が斑目の手からサッと奪い取った。
「現実の女を知ってるのかよエラソーに。この絵なんかまるで子どもじゃん、ただの絵じゃんか!」
「何を!、絵から性的欲求を高める高度な精神活動を…(以下略」

呆れ顔の咲は、斑目の熱弁を無視して、高坂に向かって錦絵を広げる。
「コーサカもこういうの好きなの?」
「うん好きだよ」と高坂。罪のない…いや、かなり罪な笑顔を咲に返した。
咲は、無言で錦絵を丸めて土間に投げ捨てた。
「あーーーーっ!」
またしても、斑目の悲鳴が長屋に響き渡るのであった。
<おわり>

288 :必殺御宅人:2006/05/25(木) 23:39:12 ID:???
以上です。
お邪魔しました。

今回は殺しをやっていません。むかしの必殺は殺しのない話もあったそうで、オタが毎回人殺しをするのもアレなので、ご容赦ください。

活劇部分の主役はクガピーでした。
彼の技のモデルは、知る人ぞ知る仕置人です。

あ、笹原忘れてた……。

289 :マロン名無しさん:2006/05/25(木) 23:42:12 ID:???
>薄明かり
斑目マジセツナス
なんか彼だけ本当に幸せにはなってない気がするんだよなあ・・・。
未来の話、是非読みたいです。

290 :マロン名無しさん:2006/05/26(金) 00:00:04 ID:???
今月号読んで、ついでに某単行本読んで、猛烈に書きたくなったので投下。
ああ、笹荻です。多分。間違いなく。

291 :マロン名無しさん:2006/05/26(金) 00:01:05 ID:???
「ところで荻上さんは何を着ていくの?」
卒業式前日。笹原さんの部屋。
それまで大野の『コスプレ教』を非難していたわたしに、笹原さんは唐突に尋ねた。
わたしは困惑する。
大野先輩を非難する自分に愛想が尽きたのか、とか
自分の普段の服装が気に入らないのか、とか
もしかしたら二人でペアルック的なものを着たいのか、とか…
さんざん悩んだ末、習い性になったきつい答えを返す。
「笹原さんの卒業式で、わたしには関係ありませんから」
言った瞬間に後悔する。
嘘です。
関係あります。
だから、『そうだね』なんて言わないでください。
「…ねえ荻上さん」
「なんですか」
「入学式の事憶えてる?」
笹原の問いに、わたしは昔に思いをはせる。
どうだったろう。
出席はした。式典の経過も憶えている。
でも、奇妙に遠い。
まるで幻のように。
ああ、でも憶えている。
これから始まるであろう新しい日々への期待を。

292 :マロン名無しさん:2006/05/26(金) 00:01:57 ID:???
「荻上さんは何を着てた?」
「俺はあの時もスーツを着てたんだ」
「自分でも似合ってないってわかってさ」
「いっそのこと高校時代の制服で来たら良かったなんて思った」
「でもさ、今、卒業式を迎えて」
「少しでもスーツの似合う男になれたのかなあ、なんて…」
笹原さんの独白を聞きながら、自分を省みる。
自分はあの時から変われただろうか。
(変われたよ)
(こうやって他人と会話出来るじゃない)
自分の中のわたしが答える。
(そう?)
(過去を『忘れた』だけじゃないの?)
わたしが問い掛ける。
(わたしだって幸せになりたい。恋人を作って。デートして。・・・して。家庭をもって。互いに幸せだって笑いあえるような…)
(そうやって他人を犠牲にして自分の趣味を満たすの?一度でもそうしておいてまだ懲りないの?捨てられないのに、変われないのに、『彼が変わるかもしれないのに』)
心の中でわたし達が暴れる。
わたしを責める。
「荻上さん、大丈夫?」
気が付けば笹原さんが、心配そうにわたしの顔を覗き込んでいた。
「大丈夫です」
微笑みながらそう答える。
でもこの時は、笹原さんが微笑みに誤魔化されてくれたか自信がなかった。

293 :マロン名無しさん:2006/05/26(金) 00:02:45 ID:???
卒業式当日。
いつもより三時間も早く起きて、わたしは服を選んでいる。
一度は、いつも通りの服装で出かけるつもりだった。
でも思ったのだ。
これはわたしの、もしかしたら一生に関わる大事な人のイベントではないのか、と。
そうと決まれば、そんな格好ではいけない。
タンスやクローゼットを引っ掻き回す。
自分の持っている服を脳内に列挙する。
高校時代の服は却下。いくらサイズが変わらないからといって、それはダメだ。
いつもの男物+オーバーサイズはダメ。これじゃ普段と変わらない。
いつか店員に押し付けられて買ったような服もダメ。あくまでわたしのスタイルで。
服という服を引っ張り出し、あーでもないこーでもないと見比べた挙句、悩みに悩んで決めた。

そしてその時。
「こんにちは!」
意気込んで話し掛ける。
気付いてください。
わたしを。
何か言って下さい。
否定でもいいですから。
でも、返ってきたのは
「こんにちは」
という挨拶だけ。

思わず不機嫌になる。
その後の会話なんて、わたしにとって無意味だと思った。

294 :マロン名無しさん:2006/05/26(金) 00:03:38 ID:???
そして今、笹原さんと二人きりで部室にいる。
「部室に用事って…なんですか?」
「ん、いや…大した事じゃないんだけどね…」
わたしの問いにも、笹原さんは顔を向けてくれない。
それどころか、”お気に入りの同人誌(しかもエロだ)”を探し始めた。
わたしは凍る。
高校時代のように。
全てに興味がないかのように。
笹原さんが何か言う。
わたしは何か答える。
でも、ただ
「ただ」
聞きたくて
「何か忘れてないすか?」

笹原さんがいろいろ言う。
違います。
そんな言葉を聞きたいんじゃないんです。
でも確かにその通りです。
あの時の、出会ったときのわたしは。
自分の事しか考えられなくて、傷つきたくなくて、他人を傷つけて、孤立して…
ごめんなさい。わたしは初めて出会ったとき、あなたが…いえ、あなたも嫌いでした。
だってあなたもオタクだったから…

でも今は思います。あなたがオタクで…いえ、現視研で本当に良かったと。

だから、応えて下さい。
わたしに。
わたしを受け入れて下さい。
わたしを抱きしめて下さい。
わたしにキスして下さい。

295 :マロン名無しさん:2006/05/26(金) 00:07:45 ID:???
そう思いながら彼に近づく。
彼がわたしの肩を抱く。
彼の唇が近づく。
彼が目を閉じ、わたしも目を閉じて、
互いに触れ合う唇の感触に全てを委ねようとして、
期待に胸を膨らませていると、
彼が不意に口を開く。
「大野さん、トイレにしちゃ長すぎねえ?」

「は?」
我ながら間抜けな声を出す。
(どうして?どうして大野先輩の名が出るの?どうしてわたしだけを見てくれないの?どうして?)
疑問だけが渦巻く。
笹原さんは窓の外を睨み、携帯を取り出す。
つられるように視線を追う。
手を振る高坂先輩。
ようやく気付く。
全て見られていたことに。

296 :マロン名無しさん:2006/05/26(金) 00:11:35 ID:???
わたしはむくれる。
見られていたことに。
見られていたのでキスしなかった、笹原さんに。
「お姉チャンの方からせまってたよね」
そうです。
その通りです。
でも、だって、あの時は、普通なら…
大野先輩が何か言う。
”会長”
その言葉だけが残る。
皆が言葉を連ねる。
(やめて)
(わたしにはそんな資格ない)
(でも…)
否定しながら、どこかで思う。
(『わたしが会長になったあかつきには…』)
皆の推薦を否定する。そんな中、心のどこかで期待していた笹原さんの言葉。でもちっともわたしに響かない。
恵子さんが笹原さんをけなす。大野先輩まで否定する。
(やめて。わたしの所為で笹原さんを否定しないで)
「なんですか、もう」
わたしは口を開く。
もう止まらない。止まれない。
「やればいいんでしょう」
口に出してしまった以上。
「さあ。ほら。みなさん一度帰って着替えるんでしょう」
皆を見渡す。
皆がわたしを見つめている。
嬉しそうに、切なそうに、楽しそうに、くやしそうに…
笹原さんも見つめている。
「笹原さんもです!!…わたしも一緒に行きますから!」
その言葉を受けて笹原さんは笑いながら答えた。
「はい」

297 :マロン名無しさん:2006/05/26(金) 00:12:18 ID:???
まわる まわるよ 時代はまわる
別れと出会いを繰り返し
今日は倒れた旅人たちも
生まれ変わって 歩き出すよ

298 :マロン名無しさん:2006/05/26(金) 00:13:51 ID:???
以上です。タイトルは”時代”とでもして下さい。

299 :あとがき:2006/05/26(金) 00:22:59 ID:???
>必殺御宅人2
ううむ、やっぱいい。時代劇のシブさとげんしけんの雰囲気がからみあって「ネオ・エドシティ」です。(21エモン…)
今回はくがぴーがカッコヨス。…自分的には田中の技(というか業)が特にすげー!かっこええ!!とおもいますた。
…でも一番は萌絵求めて場違いな店に出没する斑目が(ry
>時代
荻上さんの心の動きがリアルで良かった。荻上さんも、これからもっと素敵な人になってゆくのでしょう。

300 :マロン名無しさん:2006/05/26(金) 01:15:47 ID:???
>必殺御宅人2
クガピー巳代松ですか…
いいねー、必殺テイスト全開ですなー。
まあ本家必殺にも、初期にはタダ働きする話や人殺さない話もあったから、今回のも十分アリだと思います。
GJ!
>時代
いーねー、荻上さんの内面劇。

みんな筆が速いねえ。
これならまだまだ続きそうだな、SSスレ。

301 :マロン名無しさん:2006/05/26(金) 01:39:08 ID:???
昨日今日はすごいね!

302 :マロン名無しさん:2006/05/26(金) 02:05:54 ID:???
炸裂してるなあ妄想が。
読むのが追いつかないぞ。

303 :マロン名無しさん:2006/05/26(金) 11:08:59 ID:???
>>300
「筆が早い」が笑えてしまう
しばらくそんな感じになるんだろう

304 :マロン名無しさん:2006/05/26(金) 11:21:15 ID:???
>>303
>「筆が早い」が笑えてしまう
通常の3倍のスピードでワープする荻u(ry

305 :必殺御宅人:2006/05/26(金) 20:19:15 ID:???
「必殺御宅人」
せっかくの最終回ムードに水を差す異色物を投下してしまいました。
しかも2晩連続でホントにすみません。

(もう終わってしまう) という焦燥感から温めていたものを書きなぐって吐き出したもので……。でも感想を書いてくださる人が居て良かった。
少し落ち着きました。



>薄明かり
コーサカきつ〜!
> (もう部室に行く意味が、今日でなくなろうとしてる…。多分そのことが………。)
楽しかった時間が過ぎ去って行くのに、自分だけ取り残されて前に進めない。切ないです。頑張れよ斑目。。。

>時代
荻上視点の卒業式。いいですね。
気合いを入れて服を選ぶ様子が、本編でのセリフや積極的な行動を裏付けていてGoodです!
会長推挙承諾時の荻上の心理もイイ!!


306 :必殺御宅人あとがき:2006/05/26(金) 20:22:30 ID:???
感想書いてくださった方、あと読んでくださった方も、ありがとうございました。
必殺モノのにしたのは、斑目田中久我山(+初代)が、まんま仕置人パーティとして絵になるなあ、と思ったからでして……。
で、シリーズを重ねるごとに、げんしけん同様に世代が移り変わり、人も変わる……。
「新必殺御宅人」とか「飛べ!必殺もえごろし」とかの後続で、笹原、荻上、朽木あたりが新加入するんでしょうね。
(さすがにそこまでは出来んけど……)

>「御宅」とか「元視研」とか
必殺モノにするとしても“げんしけん”なので、出来る限り現代の設定をもじって遊んでみました。
1話は説明が主になっちゃって、らしくないですけどね。

>斑咲初対面シーン
あまり意識してなかったんですが、やっぱりこうなってしまうんですよね〜。アノ話大好きです。

>改造竹光
斑目は基本的に弱いので、武器で工夫をしたいと思いました。

>「梟の田中」、「マムシの晴信」
…久我山は考えてなかった……「木霊の久我山」でいいッス(w

> 「とらの会」(必殺シリーズのファンクラブ)の人かな?
中学の頃、入ろうと思ってました。マジで。結局入会しなかったけど。

>田中の技(というか業)
あの3人の中で一番腕が立つのは田中(>久我山>斑目)。やっぱ原作で生産性の高い人が、強くなるわけです。

>クガピー巳代松ですか…
備後(ビンゴ)です。

長々とすみません。ありがとうございました。

307 :マロン名無しさん:2006/05/27(土) 00:43:06 ID:???
>薄明かり
最終回なんだなあ。寂しいなあ。
自分もSSスレに感謝したい。
まだ『げんしけん』と出会って一年も経ってないが、いろいろ面白かったなあ。
このスレに来て、読んで感動して、自分で書いて、読んでもらって。
『げんしけん』は自分にとって特別な作品になった。

そろそろ新しいヤツを書かなくては。

308 :CLANNAD:2006/05/27(土) 03:33:58 ID:???
「そういえば、荻上さんって弟さんいるんだよね。」
「ええ。」
「・・・大学入ったりする時期じゃないの?」
「そういえば今年受験したって言ってましたけど・・・。」
「え、どこに?」
「さあ・・・。それ言わないんですよね。合格したってのは聞いたんですけど。」
「・・・・・・うちなんじゃないの?」
「ええええ!!それはぜってーにないですよ!」
「・・・なんで?」
「馬鹿ですもん、あの子。」
「・・・・・・ひどいなあ。でも隠してるって・・・何かありそうじゃない?」
「・・・・・・怖い事いわないで下さいよ。」

309 :マロン名無しさん:2006/05/27(土) 09:19:49 ID:???
>>308の続きを勝手に妄想。

突然響くノックの音。
荻上「誰だろう、こんな夜遅く?(玄関に行き)どなた?」
荻弟「俺俺、○○だ!千佳姉、開けて!」
荻上「(赤面)なっ、なんであんた…?」
荻弟「俺、椎応受かったんだ。そんで今日住むとこ決めて来て、ついでに遊んでたら電車無くなった。泊めて!」
アタフタと服を着たり部屋片付けたりする笹荻…

310 :マロン名無しさん:2006/05/27(土) 09:27:50 ID:???
>>308
なんだかげんしけんのメンバーが増えそうな予感がしますねw

311 :マロン名無しさん:2006/05/27(土) 13:03:41 ID:???
荻「弟は攻めデス」
笹「…は?」
荻「わかってください///」


312 :マロン名無しさん:2006/05/27(土) 13:09:45 ID:???
こんな感じかな、荻会長体制の現視研

会長     荻上      
学外会員   恵子 
就職活動中  朽木・大野
新入生    荻弟
半年遅れ入会 スージー・アンジェラ
昼食     斑目
地縛霊    初代会長
  

313 :マロン名無しさん:2006/05/27(土) 13:12:31 ID:???
>>311
やらせる気かよ、荻上さん?

314 :マロン名無しさん:2006/05/28(日) 07:34:48 ID:???
>>309
>アタフタと服を着たり部屋片付けたりする笹荻…

服を着たり
服を着たり
服を着たり
服を着たり
服を着たり……

315 :マロン名無しさん:2006/05/28(日) 07:45:39 ID:???
>>314
まあ、夜だからな!

316 :マロン名無しさん:2006/05/29(月) 14:47:32 ID:???
人大杉続いたせいか、増えてないねSS。
みんな書くことは書いてるのかな?

317 :マロン名無しさん:2006/05/29(月) 17:46:43 ID:???
書いてるヨ〜。2本同時進行中。
>>1のテンプレにあるSSアンソロ本に参加して執筆中だったけど、最終回読んでさらに妄想して内容急変。アンソロの中の人ごめん。締め切りは必ず守ります。
普段の仕事も文章を書く仕事だから四六時中テキストエディタと格闘中。

318 :マロン名無しさん:2006/05/29(月) 21:38:28 ID:???
好きでないと出来ないよな>四六時中テキストエディタと格闘

マンガ終わってもSSに期待しているのでがんがれ>スレの中の人


319 :マロン名無しさん:2006/05/29(月) 23:38:56 ID:???
>四六時中テキストエディタと格闘中。
す、すごい…本職の人。妄想だけで生きてる自分とは大違い
…とは言っても!!自分もSSなら数本同時進行なんでこれからも頑張って書く所存。外伝的なものを書いていきたい。
>>317さんのSSにも超期待。

320 :まだ格闘中:2006/05/30(火) 00:38:12 ID:???
いえいえ、SS・小説とはまったく関係のないジャンルの文章なんで、どちらにとっても全く糧にはなりません。家でまだ、ダラダラと仕事してます(涙
はやくSS書きてー!

321 :マロン名無しさん:2006/05/30(火) 03:18:13 ID:???
仕事で眼を悪くし、メガネになる笹原。
ちょっとした思いつきではじめてコンタクトにする斑目。
「ああーっ! どどどどdどうしたらっっ!」
と、おかしなワープをする荻上。
仕事の愚痴なんかで、じつはちょくちょく2人で飲んでたと知りさらに(スーツ×スーツ)ワープ。


322 :マロン名無しさん:2006/05/30(火) 04:04:48 ID:???
斑×笹っすか?うわ、読みてぇすげえ読みてぇーw
健全SSスレの範囲内で書いてみてくれないだろうか。

323 :マロン名無しさん:2006/05/30(火) 08:04:26 ID:???
いっそのこと、数年ぶりに全員集合したら男子全員メガネになってて、1人で大いに悩む荻上さんでもいいなw

324 :マロン名無しさん:2006/05/30(火) 10:13:30 ID:???
罠だ!
荻上さん逃げて〜

325 :マロン名無しさん:2006/05/30(火) 11:37:34 ID:???
笹原とコーサカあたりはしっかりメガネ男子になってそうだな。

326 :マロン名無しさん:2006/05/30(火) 18:18:51 ID:???
さらに数十年後、久々に全員集合したら男子全員ハゲになってて、荻上さんと一緒に悩む大野さん…

327 :sage:2006/05/30(火) 21:08:30 ID:E2dm1cnl
「えっと……なんでメガネなんだ……」
「ま……斑目さんだって、そ、それコンタクトっすか……?」
互いの変化に戸惑う二人。
以下、心の声
笹「うわぁ……めちゃくちゃ良い感じ……どうしよう、顔が熱い……」
斑「うーん、これはこれでアリだな……顔が緩んでるのバレてないかな……」
「と、とりあえず飲みに行くか?」
「そ、そうっすね」
お互い、相手に気持ちを気づかれないように、普通に振舞う
その後二人は、いつのもの店に入り、くだらない話で盛り上がり、終電間際に店を出て解散。
「じゃあ、またな……」
「あ、はい。それじゃ……」
二人は違う方向に歩き出した。

この先、両思いだった事に気づくのは、また今度の話。

328 :マロン名無しさん:2006/05/30(火) 23:45:00 ID:???
絵板で早速絵になっててワロツ

329 :マロン名無しさん:2006/05/31(水) 04:33:59 ID:???
絵になるとさらに笑えるシチュだということがよく分かるw

さてさて第801小隊、投下するべくやってまいりました。
残り三話は連続物なので、早く書き上げて投下したいと思います。
>>234
リアルタイムサンクスです!
こんなのでも楽しみにしていただけるなら幸いです!
>>235
私もあなたもげんしけんマニアw
今回はマダラメが中心です。お楽しみいただけるとw
>>240
そうっすね〜。
ラジヲは単純にネタ切れです。二人に話させる話題が・・・欲しい!
こっちは最後までのプロットが出来てるので、一気に行きますよ!

それでは、14レスで投下します。よろしくです。

330 :第801小隊16話『蘇る悪夢』1:2006/05/31(水) 04:36:07 ID:???
「やめろ!」
俺は叫ぶ。・・・いつもの悪夢だ。
「・・・ククク・・・。止めるなら、その引き金を引けばいいじゃないか。」
「う・・・うう・・・。」
銃口が震える。照準が定まらない。
妙な起動装置の前で、その爺さんは・・・何かをいじくっている。
また止められないのか。俺は何度この悪夢を繰り返せばいい?
「う・・・うわああああああ!!」
俺がようやく打つ決意を固め、銃をしっかりと構えなおした時。
「遅いわ!!」
光が迸る。何かが・・・動いた。
「外を見ろ!!綺麗だろう!!これが私の生み出した光の槍だ!!」
「う・・・うあ・・・。」
まさに、光の槍が連盟、皇国が戦う空間へと突き出していく。
小さな爆発が多数生じ・・・。宇宙には静寂がおとずれた。
「あはははははは!!ひゃはははははっはははは!!」
爺さんが狂気じみた笑い声を上げる。それを見ながら、俺はがっくりと膝を落とした。
「貴様も・・・共犯だな・・・。仲間も・・・殺した。」
爺さんが俺に呟く。いやな笑いを浮かべて。
そんなことはない。そんなことはない。
俺は俺は俺は俺は・・・・!!
「隊長、仲間を犠牲にするのはつらいですね。」
はっとして気付くと、目の前にはコーサカが居た。
「お前!」
「・・・大丈夫ですよ、僕は。サキちゃんを・・・お願いします。」
コーサカが消える。
「待て!待てよ!」
そこで、がばっと体を起こす。夢から覚めたようだ。
いつもの部屋のベッドの上。
「コーサカよう・・・。俺はどうすればいいよ?」
しかし、それに返ってくる言葉はない。
「・・・やるだけやるしかねえ、か・・・。」

331 :第801小隊16話『蘇る悪夢』2:2006/05/31(水) 04:36:57 ID:???
『・・・というわけで、奴らの基地の活動は徐々に活発になってるわけよ・・・。』
少しけだるそうな話し方をするヤナ隊長。
ブリッジにて発見したヤナ隊と通信で会話する第801小隊メンバー。
「早く到着したがよさそうですね。」
『そうね。そうしてくれればこっちとしても助かるよ。』
ディスプレイにうつったヤナの顔が苦笑いする。
『俺達だけじゃ手に負えないのは分かってるんだけど・・・。
 どうもうちの隊の面々は血の気が多くてね・・・。』
「そりゃ大変だな。」
マダラメが同じように苦笑いして返す。
『まあ・・・。もう少しでしょ?』
「ああ。あと5時間以内には確実に着く。」
『りょーかい。じゃあな。』
プツン、と通信が切れる、
「まあ・・・あの精神兵器だけなら何とかなるだろ。」
「ですね・・・。あとはどうやってオギウエさんを救出するか・・・。」
ササハラが送られてきた基地の画像を眺めながら呟く。
「ああ・・・。まあ、何とかなるだろ。」
「・・・はい。」
そこまで話してマダラメは少し間を置いたあと呟いた。
「あー・・・。ちょっとトイレ行くわ。」
「・・・はあ。」
そういって廊下の方へと出るマダラメ。
「隊長どうしたんでしょか?」
クチキがササハラに向って話す。
「・・・カスカベさんのところに行くのかな?」
「ああ・・・姉さん、沈んだままだね・・・。」
「・・・私たちが何言っても無駄って感じがします・・・。」
ケーコとオーノが口々に言葉を発した。
「・・・・・・あのコーサカがなぁ・・・。あそこまでするとは思ってなかったよ。」
タナカが少し悔しそうに呟いた。
一同、沈んだ顔をするしかなかった。

332 :第801小隊16話『蘇る悪夢』3:2006/05/31(水) 04:38:06 ID:???
「カスカベさん、ちょっといいかな?」
「・・・いいよ。」
サキの部屋の前。マダラメは少々緊張しながら扉を開ける。
「あー・・・。食事くらいには来ようよ。」
「・・・ごめん。動けなかった。」
「あー・・・。」
かける言葉が出てこないとはまさにこういうことなんだろう。
戦闘でかける言葉ならいくらでも出てくるのに。
こういう状況に弱いことを自覚するマダラメだった。
サキがうずくまるベッドの縁に腰掛ける。
「・・・コーサカね、幸せに、って言ったんだ。」
「うん。」
「でもさ、私にとっての幸せって・・・。あいつと過ごす事になってた。
 前は・・・仕事とかあったけど・・・。それも今またやろうと思えるようになったのは・・・。
 あいつが・・・無駄にいつも笑ってくれてたおかげだって分かってるんだ・・・。」
「・・・うん。」
「勝手だよ・・・。あいつ勝手だよ・・・。」
涙をこぼすサキに、少しの静寂が訪れる。
「それはあいつにとってもそうだったんだろうなあ・・・。」
マダラメがぼそりといった言葉にサキははっとする。
「だから、少しでも安全な策をとりたかった。安全度はこっちの方が明らかに高いからな。」
「・・・でも・・・。」
「ササハラに罪滅ぼしなんていってたらしいが・・・。
 俺たちゃ・・・何も責める事なんて考えていなかったのにな・・・。」
「・・・。」
「それに・・・。よっと。コーサカが死んだとは限らん。
 それなら・・・俺らが生き残らなきゃ生きてあいつに合わす顔がねえだろ。まさにな。」
立ち上がりながら話すマダラメのその言葉に、サキがプッと噴出す。
「・・・何いってんのよ、こんな時に。」
「その顔。その顔でいねえと。生き残れねえって。」
「・・・ありがと。」
その言葉に、マダラメは胸に熱いものがこみ上げる・・・が、それを必死に抑えた。

333 :第801小隊16話『蘇る悪夢』4:2006/05/31(水) 04:38:43 ID:???
「・・・ごめん。」
「サキさん、大丈夫なんですか。」
何時間かぶりにようやく出てきたサキを、オーノが心配する。
ブリッジは、少しの安息がおとずれる。
「ああ・・・。生きて合わす顔がなくなっちゃうからね。」
そういって、満面の笑顔で通信席に座る。
「・・・?でも、元気になってよかったです。」
「よし、第801小隊!いくぞ!もうすぐ敵の制宙圏だ!
 MS隊はコクピットについとけ!!」
マダラメの掛け声と共に、パイロットメンバーが立ち上がる。
「「「了解!!」」」
アンジェラ、スー、ササハラ、そしてマダラメがMS格納庫へと向う。
『よーし、早く来い!今回のチューンは完璧だ!』
通信から聞こえるタナカの声が響く。
「クチキ君、十分注意してね。」
「了解であります!」
操舵を握るクチキの手に汗が滲む。
「ミノフスキー粒子、散布。敵はもう一個厄介なものを抱えてる。
 重々注意するよう。
 ・・・これは僕らのケジメでもあるんだよ・・・マダラメ君。頑張ってくれ。」
大隊長はぼそりと呟く。その声を捕らえられたものは居なかった。
「敵基地がレーダーに映ったよ!目的地まであと1時間!」
ケーコの声が響く。
「・・・コーサカ、生きてるんだろ?だから、私も生きるよ。
 ・・・・・・生きて帰れたら、また一緒にご飯食べよ。とびっきりの作ってやるからさ。」
サキの目に光が宿る。皆の緊張が徐々に高まっていく。
誰がどう考えても最後の戦い。そして、今迄で一番つらい戦い。
いままでのように艦船に攻撃が及ばないことはないだろう。
「・・・・・・大丈夫。我々には女神がついている。
 第100特殊部隊に居たあの女神がね・・・。」
大隊長のメガネがきらりと光った。
第801小隊の艦船は、敵基地へ全速力で向っていた。

334 :第801小隊16話『蘇る悪夢』5:2006/05/31(水) 04:51:15 ID:???
『ササハラ・・・緊張してるか?』
マダラメの声が聞こえる。
「当然でしょう。・・・正直どうなるか分からないんですから・・・。」
『ははっ、まあそうだよなあ。』
まだ発信の合図が出ない格納庫で皆静かに時を待つ。
「隊長も、緊張してるんでしょう?」
『まあなあ。・・・なんかいやな予感もするしな。』
「いやな予感?」
ディスプレイに映っているマダラメの顔が少し沈む。
『・・・ここんとこ昔の夢をよく見るんだよ。』
「昔?」
『隊長さん、昔何かあったの?』
そこにアンジェラが割って入る。
『・・・・・・前よ、俺がいた隊の話は聞いたろ?』
「・・・ええ、あの大量虐殺の起こった・・・。」
『あの時な、俺はその兵器の起動室にいた。』
「ええ!!?」
驚きを隠せないササハラ。
『俺はまだ入隊したばかりで血の気も多くてな。
 任務でその兵器に攻撃を仕掛けてたんだが、一人で単身突入した。
 MSから降りて、起動室を発見したまさにその時。
 起動しようとしている瞬間だった。』
遠い目をして思い出すように話すマダラメ。
『妙なじいさんがな、なんかいじくってるわけよ。
 俺は銃をかまえて撃とうとした・・・だが撃てなかった。
 直接人を殺す度胸がなかったんだな。MSではいくらでも出来てたっていうのにな。
 結果、そいつは起動し・・・多くの人命が失われた。』
『それ、まさか、カリフォルニア・コロニー宙域の・・・!!』
アンジェラの顔が変わる。スーも、めったに変えない顔が変わる。
『・・・そうだ。あのコロニーの被害もそれが原因だよ。
 多くの人が死んだ。皇国も連盟も関係なくな。
 ・・・・・・俺はそれを手伝っちまったようなもんだ。』

335 :第801小隊16話『蘇る悪夢』6:2006/05/31(水) 05:01:54 ID:???
沈黙が続く。
「そのときの夢を・・・見るって事ですか?」
『ああ・・・。それ以来、俺は人を殺すことに抵抗が出来た。
 あの時出来なくてなぜ今出来る?ってな・・・。』
宇宙に来てから特に酷くなった。あの夢が。
何か警告を与えるように・・・。
『状況が似てるせいかも知れない・・・な。』
宇宙。大量殺戮兵器。そこへ攻撃を仕掛ける隊。
『・・・隊長さん、それは違うよ。』
アンジェラが声をかける。
『違う?』
『あんたは何も悪くない。撃てなかったのは・・・後悔するべきかもしれないけど。
 やっぱり、作って使った奴が悪いのさ。手伝ったなんて、言わないでよ。』
「その通りですよ。・・・隊長。今回は、同じようにはなりませんよ。」
『・・・大丈夫、貴男なら出来るわ。』
スーがぼそりと呟く。
『・・・そうだな。』
ふう、と溜息をつき、席にもたれ、目を瞑る。
「隊長・・・。」
『だから、これはけじめになるかもしれん。俺の、過去へのな。』
目を見開き、ニヤリと笑うマダラメ。
『それでこそ隊長さん。頑張りましょう!』
『やるのだ!我々の手で!』
「・・・そろそろですね。」
ササハラも目を見開き、システムを起動させる。
『・・・いよいよですね。』
「・・・はい。何か、感じますか。」
『・・・・・・今は何も。もう少し近付かないと・・・・・・。』
時は迫る。緊張が高まる。
『・・・よし。基地が目の前だ!!』
マダラメのこれが響く。
『第801小隊、出撃する!全員、生きて帰れ!これで・・・最後だ!』

336 :第801小隊16話『蘇る悪夢』7:2006/05/31(水) 05:03:29 ID:???
「お嬢・・・いや、ナカジマ大佐。あの兵器を利用すると?」
荒野の鬼はナカジマに向って尋ねる。
「ああ・・・。だが目的は連盟の部隊殲滅ではない。
 それだけなら、ミノフスキーウェーブで十分だ。」
「・・・では、なぜ。」
ナカジマはニヤリと笑うと、親指を立て、下に向けた。
「・・・地球を燃やすのさ。奴らの故郷を、無くしてやる。」
「馬鹿な!!そんな事!!」
荒野の鬼は目をかっと見開き、狼狽する。
「なぜ、悪い?奴らは私達の故郷を消滅させたんだぞ?」
「・・・それは・・・。」
「コロニーも地球もない。やられたらやり返す。それだけさ。」
そういって、笑うナカジマに、荒野の鬼は下唇を噛み、震える。
(私がいけないのか・・・。私が望むままに・・・。)
「ナカジマ大佐、準備できましたぞ、ほっ、ほっ。」
一人の老人がそこに現れる。
「おお、博士。完璧か?」
「もちろんでございますよ。射出量もカリフォルニアのときの3倍。
 ここまでの支援、ありがたく感じます。」
そういってお辞儀をする老人。
「・・・お前を宇宙でかくまったことに恩義を感じているのなら当然だ。」
「私としても、この兵器の完成が夢でございますからなあ・・・。」
ニヤニヤ笑いながら言葉を続ける老人。
ブーブーブーブー・・・。
そこに警報が入る。荒野の鬼は、部屋の外に出て行く。
『連盟の部隊が攻撃を仕掛けてきました!』
「・・・爺、頼むぞ。オギウエと共に出てくれ。二つの兵器だけは守らねばならん。」
「・・・・・・了解しました。」
背中でその声を受けながら、歩を進める荒野の鬼。その姿が闇に消えた。

337 :第801小隊16話『蘇る悪夢』8:2006/05/31(水) 05:04:49 ID:???
『オギウエ、準備はいいか。』
「もちろんだ。・・・連盟軍は皆殺しだ。」
そういいながらコクピットでディスプレイに映る荒野の鬼を見る。
『・・・まあ、無理はするなよ。貴様の乗ってるMAには大切な兵器が積んであるんだ。』
「なに、これを使えば動けなくなる。無理のしようもないさ。」
そういいながら、操縦桿を握る荻上。生まれる感情は憎悪と怒り。
心が冷えているように感じる。
しかし、その時無重力の中で、ペンダントが浮かび上がる。
「・・・これ・・・なんなんだ・・・。」
捨てようとしても捨てられない。見ると何かが疼く。
中には覚えのない女性。しかし、何かが・・・。
『オギウエ?』
「・・・なんでもない。いくぞ。」
『・・・了解。MS隊出るぞ。一機たりとも近づけさせるな!!』

「あれは・・・!?」
廃棄衛星を利用して作られた基地の横には、見た覚えのある巨大な射出装置。
体に震えがこみ上げる。その形、大きさ、全てが悪夢の再現のように・・・。
「・・・・・・あんなもの蘇らせやがったのかよ・・・。」
『隊長、あれは?』
宇宙で併走する4機のMS。ササハラから通信が入る。
「さっき話した奴だよ・・・。」
『まさか!!?』
『とんでもない隠し玉だね!また!!』
『・・・くやしいけど、これが戦争なのよね・・・。』
マダラメは震える体を強引にいきり立たせる。そして、一つの事実に気付く。
「あの兵器・・・射出方向を地球に向けてる!?」
『狙いは・・・地球なのか!!?』
ササハラが驚愕の声を上げる。
『その通りだ。皆、奴らの狙いは連盟軍の殲滅だけでない。地球そのものだ。』
大隊長から連絡が入る。その言葉に、誰も声が出なかった。

338 :第801小隊16話『蘇る悪夢』9:2006/05/31(水) 05:06:27 ID:???
『全く・・・冗談じゃねえぞ・・・。』
ようやくマダラメは呟く。
『隊長・・・どうする?』
『・・・くそ、敵さんがきやがった。』
アンジェラの問いにマダラメが答えるに早く、敵が現れた。
黄色いゲルググを中心に、リック・ドムによる編隊である。
そして、一機、大きなMAが後ろに続いていた。
「・・・まさかあれに?」
『・・・いやっ!』
ササハラの頭に、会長の声が響く。
「どうしました!!?」
『強烈な悪意と・・・憎悪・・・なんてつめたい意識・・・。
 でも・・・あれがあなたの大切な人・・・。』
MAを指差す会長のイメージ。同時に、スーが声を上げた。
『・・・感じる・・・。感じる・・・。あの大きいのに私に似た人がいる・・・。』
NTという存在をようやく信じ始めていたマダラメは、
スーの言葉から、ひとつのことを察知した。
『そういうことか!・・・ササハラ、お前の役目は、分かるな。』
「・・・いいんですか、隊長。」
ササハラが、マダラメに申し訳なさそうに尋ねる。
『馬鹿野郎。別に気遣って言ってるわけじゃねえ。
 精神攻撃を止められりゃ、ヤナ隊だって動けるんだ。
 お前の役目はあれを止めて来ることだ。いいな!』
「了解!」
言うが早く、ササハラは宇宙を駆ける。
『よし、俺らはササハラを援護するぞ!
 ・・・あの黄色いのは借りがある。俺がやる。
 あとの雑魚は任せた、二人なら大丈夫だ!』
『・・・ふふ、了解!任せてよ!』
『・・・・・・出てこなければやられなかったのに・・・。』
スーがビットを大量に放出させていく。
それが敵編隊に降り注ぐ。戦闘開始の合図となった。

339 :第801小隊16話『蘇る悪夢』10:2006/05/31(水) 05:07:32 ID:???
ビットの強襲に、編隊を乱すリック・ドム部隊。
「く、玉遊びなぞに!!」
叫ぶが早く、荒野の鬼は敵を認識する。
「・・・きたか、あの赤いのだな!!」
急速接近するマダラメのゲルググ。
『借りを・・・返させて貰うぜ・・・荒野の鬼さんよ!!』
両手のナギナタを振り回しつつ、突撃をするマダラメ。
「なにを!・・・性能は互角か!」
それを間一髪で交わすが、そこにビットが降り注ぐ。
「くそ!邪魔だ!」
ビットを切り払いつつ、サーベルを振り回す鬼のゲルググ。
『・・・お前ら、何を企んでやがる・・・。
 地球を火の海にでもするつもりか!!?』
「その通りだ!」
叫びながらぶつかり合う二機のMS。
『そんなことをすれば・・・!!皇国だって地球を支配したいんだろうが!』
「そんなことは関係ない!!私はただお嬢様の意志を貫かせる手伝いをするだけだ!!」
ライフルがマダラメを狙う。それをかわしながら、再びマダラメは接近する。
『てめえ、それでも!』
「私には守らなければならない存在がいる!」
再び切り結ぶ二機。火花が散るのが見える。
『・・・それは俺だって同じだ!大切な・・・大切な仲間がなあ!!』
再び離れる二機。少し牽制するように動きが止まる。
「・・・止めたければ私を倒せばいい!」
『そうさせてもらうわ!・・・今回はあんなことにはならねえからよ!』
再び戦闘体制に入る二機。
宇宙を自由に駆けながら、一進一退の攻防は続いた。
『お嬢さまだかなんだか知らねえが、俺らは生きる為に、自分の為に戦ってんだ!
 大した忠誠心かも知れねえけどな、そんな奴に負けるもんかよ!』
「うるさい!貴様に私の何が分かる!」
『分からないね!分かりたくもねえよ!』

340 :第801小隊16話『蘇る悪夢』11:2006/05/31(水) 05:25:12 ID:???
アンジェラは、一機のドムを落としていた。
「まったくわらわらと出てきて・・・!」
しかし、妙なほど数のいるドムに、後手後手に回ってしまう。
『アンジェラ、あせらない!ササハラがあのMA止めるまでの辛抱だよ!』
サキから檄が飛ぶ。
「サキ、OKだよ!」
その声に笑顔で答え、ジムを動かす。
「避けるだけなら・・・!!」
ドムの編隊からビーム・キャノンが一斉放射される。
「くっ!」
それを体を回転させながらかわす。
そこにドムからの追撃が入る。上からビームサーベルがアンジェラを狙う。
「ちぃ!」
かわしようがなくなったアンジェラを、スーのビットが助ける。
ドムがビットの直撃を受け、姿勢を崩す。
「そこだね!」
バズーカ砲がドムを直撃する。
「スー、サンキュ!」
『・・・遊びでやってんじゃないんだよ。』
しかし、そのスーを、ドムが狙う。ビーム・バズーカがスーを照準に入れる。
「スー!」
だがスーはそれを予想していたようにあっさりかわす。
『・・・・・・見える。』
その様子を見て胸をなでおろすアンジェラ。
スーを狙っていたドムを、粒子砲の光が包む。
『スー、アンジェラ、気をつけて!』
艦船からの支援攻撃であった。

「・・・ササハラ君。早く。君に掛かっているんだ・・・。」
大隊長が呟く。目の前で手を組み、上目遣いにディスプレイを見る。
「大隊長!ドムがこちらにも!!」
「弾幕を広げるんだ。オートで動くようにしてある。・・・ここが堪えどころだ。」

341 :第801小隊16話『蘇る悪夢』12:2006/05/31(水) 05:35:09 ID:???
ササハラは一直線にMAに接近する。
途中邪魔をするドムを二機ほど撃墜しながらである。
自分でも、不思議なほどMSの扱いがうまくなっている事に気付く。
「・・・これも会長との同調率が上がっている証拠なのか?」
『ええ。貴方の見ている世界がよく分かります。』
「俺もですよ!」
叫びながら、もう一機、ドムを切り払う。
「出てくるからっ!」
爆発を背に感じながら、ササハラは進む。
「死にたくなければ出てくるな!!・・・あまり殺したくはないんだ!!」
叫ぶササハラのMSから、光が発せられ始めていた。
『来ますよ!本命のお出ましです!』
会長の声と共に、目の前にMAが現れた。
中心にメガ粒子砲を装備し、左右と上にアンテナを装備している。
「・・・オギウエさん!!」
『・・・なんでここまで・・・。心を操作されている可能性があります・・・。』
感じる冷たい思念波に、会長は少し震える。
「そんな!」
メガ粒子砲がササハラのジムを襲う。
「くっ!分からないのか!?俺だよ!」
通信をつなげようとするが、繋がらない。
『来る!』
「くそ!近寄るしかない・・・けど!」
しかし、MAからの砲撃がやまない。周辺をドムが囲み、自由に動けない。
「どうすれば・・・どうすればいいんだ!」
『・・・答えて!答えて!』
会長は叫ぶ。オギウエに向って、思念を飛ばす。
「・・・くそ!」
襲ってきたドムを切り払う。
四面楚歌の状態になりつつ、ササハラはそれでも希望を捨てていない。
「・・・まだだ、まだいける!」

342 :第801小隊16話『蘇る悪夢』13:2006/05/31(水) 05:37:29 ID:???
「・・・え?」
声が聞こえた気がする。
聞き覚えがある・・・優しい声・・・。
しかし、それを思う出そうとすると、頭が痛む。
「原因は貴様かああ!!」
目の前にいるジムに向って、激昂するオギウエ。
照準をつけ、メガ粒子砲を放つ。・・・が、かわされる。
「なら!これを起動させるまでだ!・・・動けなくなれえ!!」
ミノフスキーウェーブが起動する。見えない振動が宇宙に広がる。
・・・戦いは激化していく。

343 :第801小隊『次回予告』:2006/05/31(水) 05:39:14 ID:???
出会ったのが悪かったのか。
出会わなければよかったのか。
無常の宇宙で、彼らの思いはすれ違う。
・・・どこで狂ってしまったのだろうか。
でも。それなら。
元に戻せばいい。
そう信じて。

次回
『シンデレラ・チカ』
お楽しみに

344 :後書:2006/05/31(水) 05:39:58 ID:???
あと二話です。
お付き合いください。

345 :マロン名無しさん:2006/05/31(水) 05:47:02 ID:???
>801小隊
リアルタイム乙!…ふはあ〜。緊迫感のある話で、読んでてドキドキですね。
斑目が原作の3倍カッコヨス 重い過去を背負っているのが、彼に深みを与えていますね。
咲ちゃんをはげましに行くところが好きだ。
荻上さんが…。あ〜、どうなるんだろ。笹原頑張れ笹原!

346 :マロン名無しさん:2006/05/31(水) 09:47:17 ID:???
もはや全然違う話になってる…
キャラも「あんた誰だよ」状態だし。
だが、それでもいい。
この際アリだ。
がんばれあと2話。
いや可能なら、続編や外伝もお願いしたいものだ。

347 :A.M.Cなかがき:2006/05/31(水) 23:29:28 ID:???
お久しぶり……になってしまいました。
もうちょっと早く投下するつもりでしたが、遅れに遅れてこの体たらくです。申し訳ない。
ともあれDMCの単行本も発売した事で資料も一気に充実しました。
では、今夜しばらくお付き合い願います。

>>177
>えーまだまだ大丈夫です(無責任な発言)このまま突き進んでくださいw
このまま突き進んでみました。責任は>>177さんが取ってください(無責任なry

>>178
まとめさんですか? いつもお疲れさまです。
こちらのワガママを飲んでもらったみたいで申し訳ないです。

>>179
ごめんね、クッチーあんまり活躍しないかもだけどごめんね。
代わりに今回のげんしけん側の主役は高坂です。

>>180
元ネタ『デトロイト・メタル・シティ』は、先日5月29日に単行本が発売されました。
興味があるなら是非……と、言いたいところですが、本日現在、
供給が需要に追いついていないようで、難民続出中です。
1〜2週間後に増刷されるかと思いますので、その頃にでも良ければ探してみてください。

>>204
ごめんね、待っててくれてるのに無意味に長くなっちゃってごめんね。
……いや、ギャグはホント短めにしないといけないんですけどねぇ。

348 :AKIHABARA METAL CITY (10):2006/05/31(水) 23:32:30 ID:???
「ぱっぴっぷっぺっブッルマが食い込んじゃぅぅぅぅぅ〜♪ きっのぉのてっいもーキチと出たぁぁぁぁ〜♪」

 そして根岸と西田がドンキを出た頃、秋葉原駅周辺で西田と同じ曲を熱唱している一人の男がいた。
 しかし明らかに音階が狂っており、歌詞の異常さとあいまって、まさに聞くに堪えない。
 彼こそはご存知、朽木学である。

「おっぱいせいちょうとまらへ〜〜ん♪ エッチな教師がみていま〜〜〜す♪」

「クッチーよ……もーちょっとこー、ボリューム下げて歌ってくれりゃ、オレが助かるんダガネ?」
 迷惑そうな顔をして朽木の横を歩くのは、もちろん本日のツレであるカズフサだ。

 朽木はその言葉を耳にするとピタリと歌う口を止め、じろり、とカズフサの顔をねめつける。
「……ふん。先ほどカズフサさんの『買い物』に付き合った時のワタクシの恥辱に比べれば
アナタが今感じている感情など、キラ・ヤマトを前とした時のシン・アスカのよーなモノと言わせて頂きますにょ!」

 イベントまでは時間があったため、二人はカズフサのほうの『用事』を先に済ませていたのだった。
「シカシダネ? やっぱ実用品だけに色々吟味して買わなきゃならんだろ?」

「実用だからって、店員さんにわざわざサンプルもって来させるナリか?! 
しかも、持ってきたサンプルに指突っ込んでヒダがどーとか!! シマリがこーとか!!」

 往来のド真ん中である事をも忘れたのか、朽木は卑猥な単語の混じった苦言をぶつけてしまう。
すると買ってきた『ブツ』の入った袋をしげしげ眺めながら、カズフサは文句に応じる。

「フムウ、できれば指じゃなくて、ちん「 う る せ え バ カ 黙 れ そ し て 死 ね 」
 言い終わるが早いか、怒鳴りつけて後半部分をかき消す朽木。グッジョブ。

349 :AKIHABARA METAL CITY (11):2006/05/31(水) 23:34:27 ID:???

「あ、朽木くーん」

―――ふと、気づけば、朽木を呼ぶ声が聞こえる。
 朽木のカン高い上に良く通る声で怒鳴った為か、知り合いに発見されてしまったようだ。
キョロキョロとあたりを見回してみれば、少し離れた路地の方から手招きする人影が見える。

「……え? あの? その……コーサカ……先輩でアリマスか?!」
 そう、声をかけてきたのは高坂だった。
朽木が驚いているのは、何も知り合いに偶然出合ったからではない。問題なのはその『格好』である。

「そっちが大森さん? はじめまして高坂真琴です」
 カズフサたちが高坂の方へ駆け寄ると、流石は社会人らしく、深々と頭を下げながら高坂は挨拶する。
 もっとも、その『頭』には黒いフリルカチューシャがはまっているのだが。(*注5)

 しかし、挨拶されたカズフサは、なにやら思うところがあるらしく、
高坂をギラリと見つめたまま返答しようともしない。

「えと……その……『それ』は……?」
 高坂を指差しながら質問をぶつけ、ちょっとづつ現実に対応していこうとする朽木。
 どうやら、両親に『気安く人を指差しちゃいけません!』と、教わらなかったらしい。

「あー、うん。今日はウチのイベントだしねぇ」
 
 高坂はいわゆる『コーサカスマイル』を顔に浮かべながら、にこやかにそう答える。
そしてその『顔』には、メイクが施されていた。
童顔の高坂を良く引き立てる出来となっており、もはやパッと見には少女としか思えない。
濃すぎず、薄すぎず、素人目にもプロの手によるものであろうと理解できた。

350 :AKIHABARA METAL CITY (12):2006/05/31(水) 23:36:23 ID:???
「だ、だ、だ、ダークスパッツたーーーん!!」

 ―――突然、奇声を上げて、カズフサが高坂に飛び掛る。
 しかし、高坂の身体能力からすると、こんな奇襲を避けるくらいは手間ですらない。

 ゴ ィ ィ ン !

 高坂が、フリルの付いた短く黒いスカートをなびかせつつ、ヒラリとかわすと、
かわされたカズフサは、思いっきり壁に頭をぶつけた。
そして舞い上がったスカートから見える高坂の太腿は、ぴっちりとスパッツに包まれている。
毛の一本すら生えていないその美脚を、誰が男のモノと思おうか?


 そう、本日高坂が着こんでいるのは『ダークスパッツ』のコスチュームであった。(製作協力:田中総一郎)
ダークスパッツとは、高坂自身もプログラマとして参加している、エロゲーブランド『プシュケ』の
プチヒットタイトル『食込戦隊ぶるまちゃん』に置ける主人公チームのライバルキャラであり、
ファンサイトにおける非公式人気投票では、メインヒロイン3人をぶっちぎって一位を獲得するほどの人気キャラでさえある。
 その人気をメーカー側も放置する訳が無く、続編である『食込戦隊ぶるまちゃん オルタナティブ』での
続投が決まり、貧乳属性持ちのプシュケ信者を大いに湧かせたものである。



351 :AKIHABARA METAL CITY (13):2006/05/31(水) 23:39:11 ID:???
「……カズフサさん、アナタなんて言うか……もう」
 朽木はぶっ倒れたカズフサを『かわいそうだけど明日の朝にはお肉屋さんの店頭に並ぶのね』と、いった感じの眼で見ながらそう呟く。

「大丈夫ですか? 大森さん」
 一方、高坂は、襲われかけたことに対して、微塵もなんとも感じていないのか、
ケロリとした顔で、倒れたカズフサへと手を差し出す。

 カズフサは頭をぶつけたショックから徐々に復帰しつつあり、首を振り振りひとりごつ。
「フウ……アブナイアブナイもう少しで人の道踏み外すとこだったヨ」

「アナタの口から『人の道』なんてセリフが出てくるだなんて思わなかったアルね…………ソレはソレとしてコーサカ先輩」
 カズフサを引っ張り、助けおこしつつある高坂を見ながら、
朽木が声をかけると「ん? なに?」屈託の無い笑顔で高坂は答える。

「なんと言うかその……良くできておりますにょー」
「あ、コレ? うん、田中先輩に作ってもらったんだ、会社の経費で」
実際良くできていた。kid's atの血鶴や、くじアンのいづみなどの貧乳娘をこよなく愛する田中の、
貧乳属性オタによる、貧乳娘の為の、貧乳キャラコスチュームであった。まさに渾身の一作。
―――もっとも、着用している人物こそ『娘』ではないのであるが。

352 :AKIHABARA METAL CITY (14):2006/05/31(水) 23:41:19 ID:???
カズフサは、そんな高坂をしげしげと眺めながら、隣の朽木にボソボソと呟く。
(……な、なあ、クッチー。このコーサカ君だったらオレ、ちんちん付いててもイケるかもしれん!!)
(だからアナタはなんでそんな! イヤしかし、コレは確かに付いてるモン付いててもイケそーな……)
朽木も高坂の全身をまじまじと見つめながらそう答える。

そのまま高坂を眺め続ける二人であったが、やがて自己の欲求に忠実すぎる29歳児が無遠慮に口を開いた。
「コーサカクンよ、そのスカートの下って……どうなっているんダネ?」

高坂はちょっと思案する表情を浮かべたが、黒い超ミニのスカートに軽く手をかけると
「………………見ますか?」と、答えた。
             
           
          「「  是 非 と も ! ! 」」


―――その高坂の言葉に、アフタヌーンが誇る二人の変態が、まったく同じセリフで超反応する。


「ダークスパッツたんの絶対領域を見る事ができるのならば、セッシャの愚息はもう! モウッ!!」叫ぶカズフサ。
「あ、ワタクシはカズフサさんと違ってそんなヨコシマな感情は抱いておりませんにょ!
女装コスプレを愛する者どうし、純粋に学術的興味を持って後学のためとしたいにゃー、などと思いまして!」わめく朽木。

353 :AKIHABARA METAL CITY (15):2006/05/31(水) 23:42:58 ID:???
「……あ、あはははー」

 ヒイていた。
 『あの』高坂が、ド変態二人の発するプレッシャーの前にヒイていた。

「そんな風に詰め寄られると、ちょっと見せづらいかなー、なーんて……」冷や汗さえ流していた。

「ナァニ減るモンじゃなし、パパっと見せればいいだけの話じゃないカネ、ハニバニ?」

「いやーワタクシもこんな事はしたくないんです! したくないん で・す・が! 
煩悩中枢がメルトダウンして頭の中がジャンルコード29な感じでアリマして!!」
 
 口々に好き勝手な事を喋くりつつ、じりじり、じりじりと、二人の変態が高坂へと詰め寄っていく。

「あ、あはははは……」
 高坂。
 絶体絶命。



                「ソコの人達! やめなよ!」


―――しかし、幸か不幸か、乱入してきた一人の青年の制止の声によって、状況は大きく変わる事となったのであった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(*注5)『フリルカチューシャ』:平たく言うと「メイドが頭につけてるアレ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

354 :AKIHABARA METAL CITY (16):2006/05/31(水) 23:46:13 ID:???

「うう……西田くん、早く帰ろうよぅ」

 時間は少しさかのぼる。

 根岸と西田は、オタショップの多数入居している雑居ビルを巡回していた。
正確に言うと『シュミの買い物』の為に、アキバのあちらこちらを
フラフラする西田を、根岸が一方的に追いかけていた。
根岸は先ほどから何度も何度も西田に声をかけているのだが、西田は根岸の方を振り向こうとすらしない。

 つい先ほどまで、二人はDVDショップにいた。
DVDショップと言っても、街角のそれとは明らかに客層とジャンルが違う。
店内はイイ年した男性客で溢れかえり、いわゆる『萌え系』という奴だろうか……
……美少女キャラがポーズをキメるジャケットのアニメを真剣に吟味していた。

 その少し前にはフィギュアショップにいた。
恥部や局部もしっかり作りこまれたフィギュアが堂々と展示されており、根岸は目のやり場に困ることとなった。
そしてそんなモンに数万円の値がついていると言うのは、根岸の理解をはるかに超えていた。

 更にその前には同人本屋にいた。
その『更にその前』まで、根岸は『エロパロ同人』と、言うモノの存在そのものを知らなかった。
女性キャラがあられもない姿を晒している本が棚一杯にびっしりと並べられていた。
アニメや漫画にうとい根岸でさえ知ってるような、マガヅンやジャプン系の女性キャラさえいた。

 ショックだった。
 少年少女が純粋に楽しんでいるであろうその作品を元に過激な性的妄想を行い、
それを漫画にしてしまうという人種がいると言う事実が何よりショックだった。


 そして根岸が、この街が、秋葉原の街が『こんな店ばっかり』であるという事実に気づくまでにそれほど時間はかからなかった。

355 :AKIHABARA METAL CITY (17):2006/05/31(水) 23:48:53 ID:???

「……ねえ、早く帰らないと社長に怒られちゃうよ?」

 そして今、ボンレスハムのようにぐるんぐるんに縛られた少女のポスターの前で、根岸は再び西田に声をかける。
 正直、こんなおかしな街からは早く帰りたいのだが、西田から目を離すとどこに行くかわからないし、
何をしでかすか判ったモンじゃ無い。
 だが、自分ひとりだけ先に帰るわけにも行かない、西田が行方知れずになった場合
『社長』の叱責を受けるのは根岸自身なのだ。

 そんな根岸のセリフを聞いているのかいないのか、西田はお構い無しに歩き続けていたが、
とある建物の前に来ると「ここだ」と、ポツリ言い、遂には足を止めた。

 メッセ山王。秋葉原店別館。この建物はそう呼ばれている。
 エロゲーイベントのメッカであり、体験版配布、原画師サイン会、開発者との質疑応答などなどなど、
ありとあらゆるタイプのイベントが行なわれ、エロゲオタの消費意欲を扇動し続けている。
本日ココではエロゲ業界をリードするブランド『プシュケ』の販促イベントが行なわれる予定なのだ。

 もっとも、今日のソレは開発者にとっては残念な事にオタの注目度はあまり高くない。
人気作のイベントならば、溢れんばかりに人がいるのだが、イベント開始直前になっても15名ほどが行列を作るのみ。
 混雑対応の店員も、今日はそれほど殺気だってはいない。
 そして西田が行列の後ろにつくと、根岸もやむなくそれに続いた。

 ―――だが、そこでの出来事は『一般人』の根岸には到底理解しがたいモノであった。

 人目気にせず「ブルマが!」「スパッツが!」と大声で属性論争を競い合わせる者。
 半裸の――いや、ほぼ全裸の女子キャラが描かれた特大ポスターを広げだす者。
 そして、ノートパソコンでHなゲームを路上で堂々とプレイし始めるもの。
「お兄ちゃん……ダメだよぅっ!」と、言う幼女の叫び声が十分聞こえるほどの大音量だ。

 トドメに西田に至っては、エロゲーのノベライズを読み始めた。しかも音読。
「うふん くすぐったいだめよ もうすぐままがかえってくるんだから と まーがれっと は いったのだが ぼぶはごういんに―――」

356 :AKIHABARA METAL CITY (18):2006/05/31(水) 23:51:12 ID:???
 そう、注目度が高くないだけに、集まったのはかえって『濃い』オタクばかりだったのだ。

                  「 も う ヤ ダ ッ !」

 気づけば、根岸は顔を紅潮させ、周りのオタクたちがビクッとするくらいの大音声で叫んでいた。
並んでいた時間はわずか数分ながら、その数分で、もはやガマンの限界を超えていた。
何より、一緒に並ぶ事で彼等と『同じ人種』と思われることに耐えられなかった。

「西田くんなんてライブに遅れて社長に怒られちゃえばいいんだッ!」
 どっしり腰を構えてエロ小説を読みふける西田にそう吐き捨てると、根岸は当てもなく駆け出した。
その怒りは、西田個人に向けられた者なのか、はたまたアキバ全体に向けられたものなのか。

 根岸は駆ける。
 駆ける。
 駆ける。

     おかしい、おかしいよ、みんな!
     どうして、アニメなのに、マンガなのに、いやらしいことをするんだよ! 
     小さい女の子まで、いじめちゃ、かわいそうじゃないか!

 もはや根岸には秋葉原という街の存在そのものが、耐えがたい物となりつつあった。
表通りを避け、人目から、オタクから逃れるように、裏道へ、路地へと根岸は走っていく。

 ―――その路地で、根岸は聞いてしまった。見てしまった。


          「「  是 非 と も ! ! 」」



357 :AKIHABARA METAL CITY (19):2006/05/31(水) 23:53:01 ID:???

 その場所が、その時間が。
 根岸の、そして朽木とカズフサと更には高坂の……いや、アキバ史に残る伝説を築く運命の分岐点であったのだ。
 根岸は聞いた。二人の『いかにもオタクっぽい』連中が「是非とも」と、大声を張り上げるのを。
 根岸は見た。メイドのような奇妙な格好をした『少女』がそのオタクどもに絡まれる現場を。

 自分が叫んでどうにかなると思ったわけではない。
 自分に止められると思ったわけでもない。

 ただ、今の気分では許せなかった。この街と、それに関わる奴等が許せなかった。
―――それに、何より暴漢に絡まれる『少女』が相川とダブって見えたと言うのもある。(*注6)

 だから叫んだ、だから止めようとした。馬面のオタクに。やけに筋肉質のオタクに。


          「ソコの人達! やめなよ!」 と。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(*注6)『相川』:根岸の彼女(のような者)。でもヤったかヤって無いかで言うと、まだヤって無い。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

358 :AKIHABARA METAL CITY (20):2006/05/31(水) 23:55:30 ID:???

「……ハァ?」馬面のオタクが根岸に振り向いた。
「ンン〜〜?」筋肉質のオタクも根岸に振り向いた。
「…………?」メイド風な姿の『少女』も首だけを動かして根岸を見た。

 もちろん彼等は朽木&カズフサのアフタヌーン変態コンビであり、そして彼等の餌食となりつつある高坂であった。

 カズフサは横目で根岸の方を見ると、クイッとメガネを押し上げながらこう言った。
「クフウ……なんだね、そこのキミィ? オレタチに何か意見でもあるというのカネ?」

「や、やめろって……いったん……です」

 勢いで『止めろ!』と言って見たものの、根岸は既に後悔しはじめていた。
オタク達は二人とも背が高く、そのうち一人はありえないほどの筋肉量の持ち主だ。
単純な腕力勝負では、とてもかないそうに無い。

「止めろと申されましても困りますにゃー。『スカートの中を見せる』と、
言ったのは、こちらの方が先に提案してきた話でアリマスぞ?」

 『こちらの方』と言いながら、朽木は高坂を指差す。

 指差された高坂は「あはははは……」と苦笑いするものの、否定も肯定もしない。
朽木の言葉は事実であるが『うん』と言うには空気が悪い。そんな場を誤魔化す為の笑いであった。

 しかし、その高坂の態度を、根岸は『嫌がっている』と解釈した。
良く見れば、困っている顔も大変かわいらしい。
「やめてくださいよ。その女性(ひと)嫌がってるじゃないですか!」
今度は場に慣れてきたせいか、多少は大きな声をだす事が出来た。

359 :AKIHABARA METAL CITY (21):2006/05/31(水) 23:58:41 ID:???
その言葉を聞いたカズフサはズズイと前に出ると、筋肉を誇示するポージングを決めながらこう言った。
「アァン? ……電車男きどりかァ、ゴボウ君? 絡まれッ子一人助けるくらいでフラグが立つなら誰も苦労はせんわ!」
なぜか目には涙を浮かべていた。何か嫌なトラウマでもあったのだろうか。

 ここでカズフサと朽木の発する空気から解き放たれたせいか、ようやく高坂が口を開いた。
「……あの、大丈夫ですから。本当に大丈夫ですから。……それに、ボクが、その……『見せれば』済む話ですから」

 その言葉に、根岸はドキッとした。
自分の事を『ボク』と言う女の子は始めて見たが、思いのほかにハートにヒットしてしまった。
コレがいわゆる『萌える』と言う感情であろうか?
―――それに、正直、根岸自身も『見たい』とさえ思ってしまったのだ。
なんのかんのと言ってもやはり根岸もオトコノコである。

「おおっ! やっと覚悟完了でアリマスな!!」「待ちかねてイタヨ、ハニバニ!」そして、口々に期待の言葉を叫ぶ変態二人。
 高坂は諦めたような顔で再びスカートに手をかけると、ためらいがちに、それを上げていった。少しづつ。少しづつ。

「みっ・せっ・ろっ!」カズフサが煽り。
「ハイ、みっ・せっ・ろっ!」朽木がそれに合わせた。
 変態ズのテンションは上がる一方であり、呼吸までもがピタリあっていた。

―――ダメだ。こんなことしちゃダメだ。
―――見ちゃだめだ、見ちゃだめだ、見ちゃだめだ。

 そして根岸は葛藤の極みにあった。見たい。けど見てはいけない。見てしまってはこの変態たちと同類なのだ。

―――ううう、ダメだ、ダメなんだよぅ。
―――女の子がそんな、はしたない事しちゃイケないんだよぅ。

「にげてーーーーーっ!!!」
ついには葛藤に耐え切れなくなったのか、気づけば、根岸は叫んでいた。叫びながらカズフサの背中に飛び掛っていた。

360 :AKIHABARA METAL CITY (22):2006/06/01(木) 00:00:55 ID:???
「何をするかコゾウ!!」張り付いてきた根岸を振りほどかんと、カズフサは必死で身体をゆする。
 張り付きつつ根岸は更に叫んだ「君! 逃げて! 僕がコイツを押さえている間に逃げてーーーッ!!」

「……え、でも」あまりに突然の出来事に、流石の高坂も困惑するしかない。

「にゃにゃにゃ、にゃんですかにょー?!」朽木に至っては興奮のあまり、もはや日本語になっていない。

「ふんぬっ!!」「にげてー!!」
「オルァッ!!」「にげてー!!」
「そおぃっ!!」「にげてー!!」

 しがみつく根岸と、振りほどかんとするカズフサ。
ある意味一進一退の攻防が続いていたが、やはり基礎腕力が違いすぎる。
 40秒もたたないうちに、己の首をつかんだ根岸の手を引き剥がすと、
カズフサはゴミでも捨てるかのように、根岸を路上に放り投げた。

「ぎゃわんっ!」したたかに頭をぶつけたのか、悲鳴を上げる根岸。
力尽きたのか、目をつむりぐったりとしている。

そんな根岸を見下ろしながら、カズフサは勝利宣言する。
「クックックッ……モヤシ君にしては良くやったと思うが、ドオやらオレの敵ではなか…………って、ええ?!」
なぜか、余裕ぶっこいていた筈のカズフサの顔がみるみる青ざめ始めた。

「…………え!?」同じく、それを見た高坂もが硬直する。

「にょ?! にょにょにょにょにょにょにょにょにょ〜〜〜?!」朽木に至っては興奮のあまり、もはや人間の言葉ですらない。

―――見れば、倒れた根岸の頭部付近から、どくどくと、赤い、赤い液体が多量に流れ出していた。
流れ出す赤い液体は、みるみるうちに根岸の服を染め、身体を染め、アスファルトに赤い液だまりを生み出した。

361 :AKIHABARA METAL CITY (23):2006/06/01(木) 00:03:12 ID:???
「血ッ……血だァァぁぁぁぁぁぁっ!!」
 流石のカズフサもこの光景にはビビって叫んだ。

「どーするんですかにょ、カズフサさん?! ヘタすりゃ死んでるナリよ、コレは!」
 やっと日本語が喋れる程度に落ち着いた朽木が、カズフサに詰め寄る。

「え? どーするって、その……」
「あ、ワタクシ知りませんからにょ。かんけーありませんからにょ。やったのはカズフサさんですからにょ」
「てめぇ、クッチー! オレ一人に全責任を押し付けるつもりと言うのカネ?!」
「いやほら、暴力アピールをしたのもカズフサさん。ポイとほおり投げたのもカズフサさんじゃ、アーリマせんか!」
「……え、だって、その、抱きついてきたの、コイツからだし」

「しりまセーン、ワタクシ無関係デース」
朽木は最後にそう言い捨てると、カズフサからも、倒れる根岸からも目をそらした。

 この世の全てに見捨てられたカズフサは、アワアワと慌てふためいたり、
指をくわえてみたり、根岸や周囲を見回したりしていたが、
突然「ボ、ボクもう、おうちかえゆーーー!!」と、叫ぶと、あさっての方向に向かってダッシュした。
 罪を犯してしまった成人男性とはとても思えない、責任感の足りなさすぎる29歳児丸出しの行動であった。

「ちょっ……カズフサさん、マジでどーすんですかコレ?!」
 おいていかれた朽木は、根岸を見ればいいのか、カズフサを追いかければいいのか判断に迷い、マゴマゴするばかりである。

362 :AKIHABARA METAL CITY (24):2006/06/01(木) 00:05:18 ID:???
―――かたや、醜く責任を押し付けあう変態二人とは違って、高坂は迅速に行動に移っていた。

「大丈夫ですか?!」まずは声をかけ、意識があることを確かめる。
「う、う〜ん」声に反応したのか、倒れた根岸はうめき声をあげた。

 良かった、意識はあるようだ。しかしこの出血では……とりあえず止血か?
それとも無理には動かさず、救急隊が来るまで待った方が良いのだろうか?
そうだ、救急隊だ、まずは呼ばなければ。

「朽木君! 救急車を呼んで!」朽木に向かって高坂は叫ぶ。
「きゅっ、きゅーきゅーしゃでアリマスか?! えーと、117,117……」違う。それは時報だ。

その時。
「服が……濡れちゃったよぅ」
回復しつつあるのか、倒れたままの根岸が口を開いた。

「あ、喋らないほうが! かなり出血してるんです!」そんな根岸に注意を促がす高坂。

しかし、聞こえているのかいないのか、根岸はかまわず喋り続ける。
「ヒプノタイズで……相川さんにみたてて貰った奴なのに……」(*注7)
「じっとしててください! すぐに救急車がきます!」とにかく、高坂は根岸を落ち着かせようと声をかける。

だが、それも意に介さず根岸は決定的な一言を口にした。
「……それに、割れちゃったよぅ。おかーさんが送ってくれたトマトジュース」

363 :AKIHABARA METAL CITY (25):2006/06/01(木) 00:07:27 ID:???
「……は?」「……へ?」
 それを聞いた高坂と朽木の眼が点になる。

 高坂はぴくぴくと鼻を動かすと、周囲の臭いを嗅ぎ分けた。
 血液の鉄臭さとは全然違う、爽やかさすら感じるこの香りは……
「……トマトだね」

 朽木もまた、赤い水溜りに指を突っこむと、ためらいもなくその指をベロリと舐めた。
「……トマトでアリマスな」
 どうやら両親に『道に落ちていたものを不用意に口にしちゃいけません』と言う教育を受けなかったらしい。

 つまり、路上に溢れるこの赤い液体は。
「トマトジュースではアーリマせんか?!」わかりきったことをイチイチ口に出す朽木。


 そうとわかれば一安心である、高坂も、朽木も、内心ホッと胸を撫で下ろしていた。
だが、油断はならない。ビンを割ったのであれば、その破片で何らかの外傷を負っているかもしれない。
そう考えた高坂は、根岸の頭部を診るためにしゃがみこんだ。


―――――そう、しゃがみこんでしまったのだ。

 超ミニのスカートをはいているのに。

 倒れた成人男性の頭部の前なのに。

 ホッとしたがゆえの油断もあった。

 スカートを押さえて隠す事など考えも付かなかった。


364 :AKIHABARA METAL CITY (26):2006/06/01(木) 00:11:18 ID:???


  「な、なんだそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 そして根岸は吼えた。吼えると同時にバネ仕掛けの人形であるかのように起き上がった。
背にはトマトジュースの入っていたバッグがあり、そこからボタボタと赤い液体がこぼれ落ちた。

 「なんだそりゃ! なんだそりゃ! なんだそりゃ! なんだそりゃぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 見た。根岸はその眼でしかと見た。高坂のスカートの『中身』を。
 そこにはスパッツに包まれた形のいい腿と、根岸の常識ではあってはならない『モノ』があった。
根岸は両手で顔を抑え、今見たものを否定するがごとくブンブンと頭を振る。
 轟く感情に翻弄されたせいか、足元を赤い水溜りにすくわれ、滑って転んで、またもや赤いしぶきを舞い上げた。

「あの……まだ動かない方が良いですよ。頭ぶつけたみたいですし」
 再び赤い水溜りに全身を浸からせた根岸を助けおこそうとして、高坂は根岸に手を伸ばす。

 しかし根岸は差し出されたその手を殴りつけるかのごとく、払いのけると
「俺に触るなぁっ! このオカマ野郎がぁぁぁぁぁぁっ!!!」と、叫び、自力で立ち上がると、凄まじい勢いで駆け出した。

 この状況でも、ドンキのビニール袋を回収する事を忘れなかったのは『社長』を恐れるが為だろう。

365 :AKIHABARA METAL CITY (27):2006/06/01(木) 00:19:07 ID:???

そして、根岸が走り去ったあとには呆然と立ち尽くす高坂と朽木だけが残された。

「アレだけ走れるならだいじょーぶでしょうナ」朽木が言うと
「アレだけ走れるなら大丈夫だろうね」と、高坂が答える。

「一体なんだったんでしょうかにょ?」朽木が聞くと
「一体なんだったんだろうね?」高坂も問い返す。

二人とも、それ以上の言葉は交わさなかった。
あまりに一気に起こった出来事のために、二人とも思考が停止していた。

〔……だいま午後2時51分30秒をお知らせしますプップップッポーンただいま午後2時51分40秒をお知らせしますプップップッポーンただい……〕
沈黙の支配する路地で、先ほど朽木がかけたケータイの時報だけが機械的に時を告げていた。

「「あ」」
 その時報が二人を我に返らせた。

「いかなきゃ」「そうでアリマスな!」
二人が向かうはメッセ山王。秋葉原店別館。

 その場所で、更なる混沌に出合う事を、二人はまだ知らない。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(*注7)『ヒプノタイズ』:代官山にあるオシャレ服屋。デザイナーのアサトヒデタカが根城にしている。(DMC設定)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


366 :AKIHABARA METAL CITY (28):2006/06/01(木) 00:22:43 ID:???

―――どこをどう走ってたどり着いたものか。
気づけば、根岸はとある雑居ビルの個室トイレに潜りこみ、あふれ出る感情の奔流に、ただただ身を任せていた。




なんだこの街は! なんだこの街は!
                                    せっかくお母さんが送ってくれたモノだったのに
誰も彼もがアニメやマンガの事しか考えていない!
                                    とてもおいしいトマトジュースだったのに
しかも奴等はそれを性的妄想の材料としていやがる!
                                    お父さんが育てて、妹が絞った奴だったのに
白昼堂々とオタク野郎がコスプレの女に『脱げ』と迫り!
                                    事務所のみんなに飲んでもらおうと思ったのに
そしてその女までもがオカマ野郎だった!
                                    ジャックさんにも送ってあげるつもりだったのに
アレが許されるのは、ゆびさきミルクティーだけだ!(*注8)
                                    壊された!  あのオタク共が割ったんだ!!

                                     

                    …………グロテスクだ………この街はグロテスクだ!!
                    秋葉原と言う街の存在そのものが、もはや許せぬ!!
               SATSUGAIだ!! この街の奴等全員SATSUGAIしてくれるわーーーッ!!!



367 :AKIHABARA METAL CITY (29):2006/06/01(木) 00:26:52 ID:???
―――怒りに支配され、理性を失った根岸は、赤い汁にまみれたバックを開き、復讐への準備を始めた。

 いや……もはや根岸の肉体を操るのは『根岸崇一』と、言う男の魂ではない。
『それ』は、根岸の精神の奥底に宿る、人知をはるかに超越した存在であった。

『それ』は信者曰く、人型をした破壊と破戒の象徴。
『それ』は信者曰く、這い寄る混沌の化身の一つ。
『それ』は信者曰く、666の刻印を持つ審判の獣。
『それ』は信者曰く、パンドラの箱に最後に残った『悪』。
『それ』は信者曰く、数億の悪魔を従える地獄の軍団長。
『それ』は信者曰く、アルファにしてオメガたる存在。

 とは言え、以上はどれも俗説に過ぎず、確たる証拠など何一つ無い。
 だが、一つだけ確実にいえる事がある。

       メタル
 『それ』が音楽をもって人心を操り、狂わせる事さえ可能な真の悪魔だと言う事を!!

        そう! 彼こそがクラウザー!! ヨハネ・クラウザーII世!!

 デスメタルバンド『デトロイト・メタル・シティ』のリーダーであり、
 数々のリアルレジェンドを生み出した彼の実力は、まさに帝王のそれである。

 怒り狂うクラウザーさんを呼び起こしてしまったアキバの街は、一体どうなってしまうのであろうか?
 それは誰にもわからない。

 ただコレだけは言える。
 たった今、秋葉原の街は地獄と直結したのだ、と。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(*注8)『ゆびさきミルクティー』:DMCと同じくヤングアニマルで連載中のマンガ。
                    詳細は省くがDMCとは穴兄弟のような関係である。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

368 :A.M.Cなかがき。:2006/06/01(木) 00:29:04 ID:???
さて、クラウザーさん降臨で今夜の投下は終わりです。
投下だけで一時間近くスレを占拠してしまい、すみませんでした。
では、次回があったらまた。

369 :マロン名無しさん:2006/06/01(木) 00:34:15 ID:???
>A・M・C
>「うふん くすぐったいだめよ もうすぐままがかえってくるんだから と まーがれっと は いったのだが ぼぶはごういんに―――」
DBネタフイタwwwww
つーかクラウザーさんマジ怒りっすか!!?
やべえ・・・アキバが・・・アキバが火の海に・・・。
続き、楽しみにして待ちますwww

370 :マロン名無しさん:2006/06/01(木) 00:43:01 ID:???
>A.M.C
例によって元ネタは分からんが、高坂とクッチーは名コンビということは分かった。
それにしてもまたもや女装高坂。
まあアキバに寄る可能性は少なそうだが、咲ちゃん見たら泣くなこりゃ。
そして多分代わりにどつかれるクッチー…

それにしてもカズフサと高坂の間に居ると、クッチーが意外に常識人に見えるのはどういうことだ?



371 :マロン名無しさん:2006/06/01(木) 01:43:21 ID:???
>>801小隊16話
斑目の過去が意外と重かったですね…!
荻上さんどうなるんだろ。。。キャラの性格が違う気がするのはアレですよ、
ドラえもんの登場人物が映画だと良い奴になる効果みたいな物で!!
ともかく、続編宜しくお願いしますー

>>AMC
ゴートゥAMC!ゴートゥAMC!
ちょうどDMC1巻読んだところでしたw
カズフサ、マジで駄目駄目だァ
いよいよクラウザーさんのオタ殺しが見られるのか!?
続編期待!!

372 :マロン名無しさん:2006/06/01(木) 01:45:24 ID:???
さてAMCの人と同様に激しく久しぶりに(3週間ぶり?)、現聴研の続編を投下…
今更っぽいですけど、書かなかったら書かないで尻切れになりますのでorz



373 :現聴研第9話(1/5):2006/06/01(木) 01:46:51 ID:???
舞台の脇で司会のお姉さんがマイクを手に、明るく紹介する。
司会「次は、マイナー曲を広める使命を帯びたバンドだそうです。
    それでは『げんちょうけん』の皆さん、どうぞー!!」
夏祭りの野外ステージに照明が灯り、現聴研のバンドメンバーが
白い光に照らし出された。
ステージの真ん中にはタンバリン片手の斑目が立っている。
暑いが細身のスーツっぽい、装飾の派手な衣装を着ている。
男性メンバーは全員、似たような感じで統一されている。
斑目の左側では、セミアコースティックギターを抱え、髪を下ろして
赤いノースリーブの、ロングのチャイナドレスに身を包んだ荻上が
緊張してモジモジとしている。
右側には笑顔で汗一つかいていない高坂が見える。その後ろにはキーボードが有り、
真っ青なサリー(インドの衣装)の大野が居る。顔を伏せているので髪で顔は見えない。
ステージの奥にはドラムセットがあり、久我山が座っているのが見えるが、既に汗が
だらだらと顔を伝って流れている。

観客の家族連れや中高生の集団が、ステージ上を見ながら軽くざわついている。
ステージ上から見ると、意外と人は多いが、近いうえにそう広くないので、
見に来ている人々の顔が良く見えて、どんどん緊張しそうになるが、最前列に
朽木と田中がカメラを片手に手を振っている。
田中は、衣装の出来栄えが気になるようで、かなり凝視している。
席に座らず横手に立っている、高柳の姿も見える。フォーク同好会も今日、
このあと演奏するので待っているのだ。

374 :現聴研第9話(2/5):2006/06/01(木) 01:47:48 ID:???
斑目「えー、ご、ご紹介に……あずかりました、げんちょうけんです…!!」
そう言うと、ぱらぱらとまばらな拍手を受ける。好意的な観客のようでちょっと安心する。
斑目「俺たちは、あまり知られていない名曲を、えーっと、掘り出して楽しんでまして、
    今日は、皆さんにお勧めのマイナー曲をお届けしようと思います。
    演奏はともかく、良い曲です。えー………それでは始めます。
    1曲目は、ダバザックで『遠いメロディー』です。」
ちょっとグダグダ感のある自己紹介をなんとか終えて、久我山がスティックを打ち鳴らす。
久我山「ワ、ワン、ツー、スリー!」
バスドラムが響くリズムに合わせてギターのアルペジオが始まる。
キーボードの和音と、ベースのうねりも加わったところで斑目が歌いはじめた
斑目「♪そぉっと耳を澄ませて 遠い遠いメロディー…君の小さな胸に届く…」
すこし低い哀愁を帯びた歌声。まずまずの滑り出しだ。
上ずっていた歌声も、だんだんと潤って、伸び伸びとしてくる。
斑目「♪歯車にかき消され 人は何故 歌を失ったのーーー…」
淡々としたサビに合わせて荻上のギターはシンプルな伴奏を確実に刻み、
歌のメロディに絡まるように大野のキーボードもついてくる。
そして曲が終わると、パチパチと拍手が起こる。まずまずの反応だ。
特に目立った失敗も無く、1曲目は上手くいった。

斑目「どうだったでしょうか?続きまして、同じくダバザックで『星の誓願』。」
荻上は足元の切り替えスイッチを踏み、アコースティックギターのエフェクターに切り替える。
高坂のベースに合わせて、ザクザクした感じのギターストロークが響きはじめた。
斑目「♪僕はここにいる 君に遭う為に 数百年の時を越えて…」
だんだんと歌に入り込んでくる斑目。荻上のギターにも力が入る。
ズッチャ、ズッチャ、ジャーーン、ジャーーンとリズムパターンも変わる。
斑目「♪その時のためだけに 僕は生まれてきたのさ…」
間奏ではベースのソロもあったが、高坂はソツ無くこなす。
熱唱を終えた斑目は、曲が終わると少し肩が上下しているようだ。


375 :現聴研第9話(3/5):2006/06/01(木) 01:48:57 ID:???
露店や歩道を歩いていたお客さんも足を止め、立ち見したり、椅子の方に
入ってきたりと、徐々に空席が無くなってきた。
斑目「ハァ、ハァ…ありがとうございました。続きまして、宇佐実森『タペストリヰ』。」
そう言われて、荻上はビクリとしてから、その場に今まで使っていたギターを置くと
斑目が立っていたステージ中央にやってきた。
笹原が身をかがめて、横に立ててあったアコースティックギターを手渡す。
笹原「落ち着いてね。いつも通りに」
小声で言われて荻上はコクリとうなずく。
小柄な荻上に似合う、やや小ぶりなギターを抱えると、マイクに向かった。
荻上「今から歌うのは、私が小学生の頃にCMでやってた曲です、ではよろしく……。」
語尾が小声で消えていったが、それをかき消すようにギターを弾き始めた。
3拍子のリズム。ドラムのスネアも加わり、ハイハットで一旦締めると歌が始まる。
穏やかな歌い出し、だがサビに差し掛かると歌も、ドラムも情熱的だ。
荻上「♪時を載せてタペストリヰ 雛罌粟の華も 出会った空の蒼と一つになって往く…!!」
左足も細かく踏んでリズムを刻んでいるが、上体も大きく揺れている。
身をよじり、熱唱する荻上。今日の赤いチャイナドレスはこの曲のPVを意識したものだ。
コーラスに入りながら、斑目もタンバリンを叩く手に力がこもる。
間奏が終わり、最後のサビに差し掛かると転調して半音上がったが
ここで荻上はギターを弾くのを止めるとマイクをスタンドから外して
しゃがみこむように、マイクを抱え込んで強く歌い上げる。
荻上「♪時を載せて 描いてゆく タペストリヰーー… ah――― ohw―――」
歌のパートが終わり後奏に合わせて荻上の歌声がさらに響く。
今日はスタジオでの淡々とした様子と違い、実に情熱的である。
大野も長い髪を振り乱しての熱演であった。荻上の情熱パルスが伝染したようだ。
荻上「…どうも、ありがとうございました。」

376 :現聴研第9話(4/5):2006/06/01(木) 01:49:35 ID:???
パチパチパチ……(ピィーーーッ)強い拍手に混じって口笛も聞える。
その様子に驚きつつ、曲紹介をする。
荻上「次で、最後です。」
客席から「えーーっ」と聞える。お約束の返答だが、見ると高柳だ。
少し落ち着く荻上。落ち着くと、席の前列でGJポーズの朽木も見える。
それからは、とりあえず目を逸らした。
荻上「川島英六さんといえば演歌っぽいお酒の歌が有名ですが、フォーク歌手で、
    アルバムを聴いていると代表曲以外にも良い曲が多いです。
    その中から『月と花のまつり』、聴いてください。」
落ち着いたことの効用で、長い紹介を無事に述べることが出来た。
荻上「♪あの空の上の月 今は欠けてるけれど 生まれ変わってまた満ちてくる――」
斑目「♪あの空の上の月 今は欠けてるけれど 生まれ変わってまた満ちてくる――」
上のパートを荻上、下のパートを斑目が歌うデュエット編成だ。
曲調は川島本人の原曲を元にしているが、歌部分は実の娘のユニット、マキ&アナムの
バージョンでいく模様である。
荻上のギターはこの曲ではリズムを刻むのみ。キーボードの比重が大きい編成に
なっている。笛の音は笹原の打ち込みである。
久我山はドラムセットでなく、ボンゴを叩いていた。
荻上「♪何もかもが生まれ変わる 月も花も繰り返す波も―――」
斑目「♪  何もかもが〜アーーー        繰り返す波も……」
一部、斑目が主旋律に引っ張られそうになるが、特に違和感無く歌は続く。
荻上「♪命は遠く 空から降りた 地上に咲いている幾千万の花―――」
斑目「♪ラララ ラララ…………。」
曲が終わると、お客さんの拍手の中、全員で立って舞台の前に出て並んだ。
「「どうもありがとうございました!!」」
挨拶に合わせて大きくなる拍手。

377 :現聴研第9話(5/5):2006/06/01(木) 01:50:40 ID:???
そこで司会のお姉さんが出てくる。
司会「はい、げんちょうけんの皆さんでした。初めて聴く曲ばかりでしたが
    良い曲はたくさん有るんですねぇ。それではありがとうございました。
    では次のバンドに入れ替えです、少々お待ち下さい―――。」
その声に合わせて、客席がガヤガヤ、ざわざわとし始める。
席を立って食べ物や飲み物を買いに行ったり、トイレに行ったり、あるいは別の
イベントを見に行ったり岐路に着く人も居るのだろう。
暗くなった舞台の上で、興奮に包まれながらも、係の人たちに急かされて
大急ぎで機材を撤収する現聴研の面々だった。

その日は一旦大学に帰ると、夜遅くなっていたが某大手チェーン居酒屋と
カラオケ屋のハシゴで朝までコースだった。
皆、疲れているはずなのに大盛り上がりであったが、カラオケ屋では
「あの曲が無いのがおかしい!」「うぉぉ、例のバンドが消えてる!?」
と、毎度繰り返されるマイナー曲迫害意識に、熱意を新たにする現聴研であった。
 

378 :マロン名無しさん:2006/06/01(木) 01:52:36 ID:???
選曲に迷いに迷った割りに、激しく偏りまくり…
これで書きたい方が居られたら、是非別のマイナー曲を活躍させてあげてくださいorz

379 :マロン名無しさん:2006/06/01(木) 04:44:24 ID:???
>現聴研
本番キターーーーーーー!!
斑目と荻上さんがデュエット!?…うわー、うわー!もー読んでてドキドキしましたよ。
>すこし低い哀愁を帯びた歌声
斑目の声聴きてえ!荻上さんが必死に歌ってる姿見てええ!とにかくGJでした!!


380 :マロン名無しさん:2006/06/02(金) 09:28:49 ID:???
>現聴研
荻上と斑目のハモリか〜聞きたい!
作者の人のマイナー曲への思い入れが感じられますね。

次、閑話休題的なモノを書かせてもらいたいと思います。
でもネタがあったら、先行してやっちゃって下さい。


381 :380:2006/06/02(金) 18:04:41 ID:???
>閑話休題的な話
現聴研の、です。紛らわしくてスマン

382 :マロン名無しさん:2006/06/02(金) 22:04:57 ID:???
感想ありがとうゴザイマス!!
なんか斑目と荻上さんのデュエットが好評だったようですね。。。

>>379
斑目の声は聴きたいですね…アニメ見て脳内補完するしか無いですが
荻上さんにいたっては、その手段では無理でorz

>>380
現聴研ネタ、是非!お願いしますです〜〜〜
単発ネタ&フリー題材として始めたはずなのに、長期にわたって
続編ものを書いてしまってすみません。



383 :まえがき:2006/06/03(土) 00:03:10 ID:???
さて、6レスで投下します。

「俺たちに明日はある」
未来予想図・序章。

(最終話のその後。)


384 :俺たちに明日はある1:2006/06/03(土) 00:04:02 ID:???
朽「…で、何で最近部室に来ないんですか〜??」
朽木君は単刀直入に聞いた。

斑「いや、だってさー…そろそろ潮時かなーと」
朽「何の潮時なんデスカ〜??」
斑「………。つーか、何でそんなに俺をここに来させたいわけ?」

4月の中ごろ、最近部室に顔を出さなくなった斑目を朽木君が呼び出した。
朽「だって、新会員入らなかったんデスヨ!!
今、就職活動中アンド単位もうほとんど取っちゃった大野さんと、会長になったばかりの荻上さんと、ワタクシしかいないんですにょ!?ワタクシも一応就職活動してますし!」
斑「…あれ、笹原の妹さんは?」
朽「恵子さんも仕事探しで忙しいそーです。もともとあんまり来てなかったし」
斑「そうかあ…。みんな変わっていくんだなあ………。(遠い目)」
朽「たそがれないで下さいにょ!こんな人少なくて活気がなかったら廃部になるにょ!」
斑目の低いテンションとは対照的に、朽木君はなんだか必死だ。

斑「うーん…北川さんがいた頃はそういう危険性があったけど、今はどーだろ?」
朽「活気が少ないのが問題なのデス!ワタクシが一人、悪目立ちするにょ!」
斑「…それは今さら心配することじゃないような」
朽「それに大野さんと荻上さんの腐女子会話に入っていけないにょ!!男一人でとっても肩身がせまいので斑目さんも是非味わってみるにょ!あの空気!!」
斑「道連れかい。つーかそんな理由で来させたいんかい(汗)」
朽「簡単に簡潔に端的にわかりやすく言うとそーです」
斑「…いつも正直なのが朽木君の長所だよな。…短所でもあるケド」


385 :俺たちに明日はある2:2006/06/03(土) 00:04:39 ID:???
気が進まなそーな斑目を見て、業を煮やした朽木君は椅子から急に立ち上がり、大声で言った。
朽「斑目先輩、日和ってるにょ!現役の頃を思い出してみるにょ!!」
斑「…は?現役?」
朽「ここに斑目さんが大学二年の頃の『メバエタメ』がアリマス。」
朽木君はやや黄ばんだ表紙のコピー本を取り出した。
斑「うわ、懐かしー…」
朽「えーと、『(ダミ声で)マムシ72歳。まあワシなどはしにょぶしぇんしぇいのすとーんとしたスーツ姿を見るだけでハァハァできるからすべてが名シーンと言えるがの。』ほうほう。」
斑「音読するなあああ!!(汗)」
朽「『……あのネ、何かもうネ、触覚とかが見えただけでもおぢしゃん泣くほど萌えちゃうノ。少シ壊れ気味ナノ。(泣)』
…少しどころじゃないですな」
斑「ば、ちょ、もーやめんか!!」
斑目は慌てて立ち上がり、朽木君からメバエタメを奪おうと手を伸ばすが、クネクネした動きでかわされる。
朽「昔の斑目先輩はもっとはじけてたにょ!それが今はどーデスカ!すっかり社会人気取りですか!」
斑「社会人だしな!つーか今でもそんなんだったら痛いだろ」
朽「自分で痛いって言っちゃうんデスカ!?」
斑「…『認めたくないものだな若さゆえの…』」
がっくりと肩を落とす斑目。

斑「てゆーかさー、俺ももーいい歳なんだからさぁ…」
朽「若者が何を言ってるでありますか。ボクチンなんかまだまだ心は少年ですにょ」
斑「朽木君はもう少し大人になれよ(汗)」
朽「大人になるっていうのはそんな風にじーさんみたいになることなんですカー!?」
斑「色々あんだよ…仕事のこととかさー」
朽「色々ってナンデスカー?」
斑「う…だからその…色々」


386 :俺たちに明日はある3:2006/06/03(土) 00:05:14 ID:???
さっきから堂々巡りだ。
朽「というわけで部室に来て下さいにょ」
斑「つながらねー!直前までの会話とつながらねーーー!」
朽「もー観念したらどーですか?そんな優柔不断だから、原作でも斑目さんは『未完』ってつきそーな感じで終わっちゃったんじゃないデスカ!」
斑「原作とかゆーな!朽木君だって最終話グダグダだったじゃねーか!」
朽「………顔が切れてたの…、アレ、わざとですかね?」
斑「うわ、気にしてたんだ!(汗)」
朽「さすがに心の広い朽木学ことクッチーでも、あれは流せなかったデスヨ。コミックスで直ってたらいいんデスガ…」
斑「いやでもアレ、真ん中だからねぇ…無理なんじゃ…」
朽「次期会長も、てっきりワタクシだと思ってましたのに…」
斑「『それはない』」
朽「ガー!!何デスカこの冷遇ぐあい!ボクチン、他の人と扱い違うにょ!!」
斑「まー仕方ないね、朽木君変だからねー」
朽「『個性的』なのを『変』という言葉でひとくくりにしないでくれますかにょ!」
斑「『変』なのを『個性的』という言葉に置きかえんなよ!」
朽「フフーン、そーデスヨねぇ。キャラ作ってる人には『変』にしか見えないですよねぇー」
斑「悪かったな普通で!変なモンは変なんだよ!」

だんだんテンションが上がって来た二人。
朽木君の挑発のせいか、だんだん昔の血が騒いできた斑目。


387 :俺たちに明日はある4:2006/06/03(土) 00:05:52 ID:???
朽「開き直りは見苦しいにょ斑目先輩!」
斑「誰が開き直ってるって?開き直って『個性的』とか言ってる君に言われたくねーな!」
朽「おや逆ギレですか。あーそうですか。
………………逆ギレ勝負なら負けたことねーよ!!!」
斑「俺だってえーと、自爆勝負なら負けたことねーぞ!!!」


斑目VS朽木。火花を散らしながら不毛な闘いが火蓋を切って落とされ………!!
数分後に終わった。

斑「………何でこんな意味のない争いしてるんだ、俺らは…」
徒労感に深いため息をつく斑目。
朽「でも久々に燃えましたにょ〜!!」
斑「俺は疲れた…」
ズズズ、と椅子に座り込んだ。

朽「しっかりするにょ!今日ボクチンは確かにこの目で見たにょ、斑目さんの昔の勇姿を!!」
斑「はぁ………?」
朽「もっと斑目さんが活躍する姿が見たいにょ!だから部室に来るにょ!どーせヒマなんでショー?」
斑「ヒマじゃないわい!…でもさー、もーそろそろ読んでる人も、『斑目はもういいよ』って思ってるって。
………うわ、絶望した!!自分で言ってて絶望した!!」
朽「自虐ネタはやめるにょ!それに、まだげんしけん人気が続く限り、斑目さんもいけるハズにょ!!
むしろ心配なのはボクチンの人気にょ!」
斑「…心配するほど人気あったっけ?(ぼそり)」
朽「ということはこれから上がることはあっても、これ以上下がることはないにょー!!」
斑「どっから沸いてくるんだ、そのポジティブ思考(汗)」
朽「で、どーするんデスカ!?」
斑「えーでも、やっぱさー………」


388 :俺たちに明日はある5:2006/06/03(土) 00:06:27 ID:???
そのときガチャリと扉が開いて、荻上さんが入ってきた。
荻「………どうも」
朽「あ、オギチンだ」
斑「や、やあ荻上さん、久しぶり」
荻「朽木先輩と斑目先輩、喧嘩でもしてたんですか?3階の廊下に声が響いてましたよ」
斑「え、マジ?そんな大声出してたのか(汗)」
朽「喧嘩じゃないにょ!男同士の話し合いにょー!」
荻「?…はあ、男同士のですか。」
斑「ろくな話し合いじゃなかったけどな…(疲)」
荻「そうだ、斑目先輩ちょうど良かった。」
斑「?」
荻「笹原さんから頼まれたんですけど。『斑目さんに借りたまま、返してない漫画があるから返しておいて欲しい』って言われてて…。
あ、アレ?袋どうしたっけ……あ!そうだ、今朝玄関に置き忘………。(汗)」
斑「あ、ありゃそうなんだ。でも別に急がないからいいよ」
荻「スミマセン。明日必ず持って来るんで…。あの、明日部室来ます?」
斑「え、あーじゃあ、明日来るよ。」
荻「スミマセン。」
朽「…部室来るんですな?」

目をキラーン☆と光らせる朽木君。
斑「あ、アレ?…まーとりあえず明日はなぁ…。」
朽「クククク………素直じゃないナー斑目サンはー!」
斑「う、うるせーな!明日だけだって!」
荻「え、明日以降は来ないんですか?」

荻上さんはびっくりした目でこっちを見る。
斑「う………………(汗)」


389 :俺たちに明日はある6:2006/06/03(土) 00:07:10 ID:???
結局また部室に行くことに。
(この流れ、お約束だなぁ…てゆーか強引だな…。きっとネタが尽(ry)
などと考えながら家路につく斑目であった。

さて、同じくその頃、帰途についた荻上さん。
(朽木先輩と斑目先輩かァ………。
なーんかあの二人、最近仲良くね?
『男同士の話し合い』って、一体どーすりゃあんな大声で喧嘩するってのよ。)

(んだげども……。
間違いなく斑目先輩が『受け』だよね。)

脳内で朽×斑ワープを始める荻上さんであった。

                  END


390 :あとがき:2006/06/03(土) 00:07:45 ID:???
続くかも…。
「未来予想図」のんびりやっていきたいとおもっております。


391 :マロン名無しさん:2006/06/03(土) 01:41:06 ID:???
>俺たちに明日はある
ワロタ。
こういうのが読みたかったんだよね、この時期。
クッチーテンション高いね。
斑目にもそのテンション、しっかり分けてやって下さい。
それにしてもオギー、とうとうクッチーまで脳内毒牙にかけるとは…

392 :マロン名無しさん:2006/06/03(土) 02:16:43 ID:???
>俺たちに明日はある
いいw
クッチーが健気だなあ。
朽×斑が今後のメインストリームか?なんつて

393 :マロン名無しさん:2006/06/03(土) 02:57:20 ID:???
>朽「だって、新会員入らなかったんデスヨ!!
何やったんだ、クッチーw?


394 :マロン名無しさん:2006/06/03(土) 18:57:57 ID:???
>>俺たちに明日はある
なんだか来月号に普通にこれが掲載されてたらいいのに!
続編お願いします〜。
原作でも未完…発言とか、顔が切れてるの件にBAKUSHOUしました。

395 :マロン名無しさん:2006/06/03(土) 22:34:52 ID:???
それじゃもう騎手はそんじょそこらの精神力で勤まる仕事じゃないですわね

396 :マロン名無しさん:2006/06/03(土) 22:36:48 ID:???
誤爆です
すみません

397 :マロン名無しさん:2006/06/04(日) 01:03:17 ID:???
>>395
騎手・・・騎乗位・・・荻上さんお怒り・・・バカバカ・・・

( ̄ ¨ヽ ̄ )ハ、ハ、ハナヂガ、、、、、

398 :マロン名無しさん:2006/06/04(日) 06:24:15 ID:???
馬並ハイウエイ

399 :マロン名無しさん:2006/06/05(月) 14:23:05 ID:???
「未来予想図・序章」の感想アリガトウゴザイマス。
>>391
クッチーには(空気読めるようになりつつも)ずっとテンション高いままでいて欲しいと思います。
あと斑目はもっと元気になって欲しいなーと、そう思って書いたものです。あと、荻上さんは最強ですw
>>392
クッチーが必死なのは、このままだと会員、男がクッチー1人になってしまうから(笑)
>朽×斑が今後のメインストリームか?
荻上さんほどの妄想力の持ち主ならあるいは…w
>>393
新会員を入れなかったのは、続編書くときにそのほうが書きやすいと思ったからです。朽木君効果かもしれませんがw
9月には新会員入るし(そこまで続編書き続けられたらいいんですが…)
>>394
続編、いま構想中ですー。連作になる予定です。げんしけんの邪道なる続編として(笑)頑張って書きたいと思います。
うわー言っちゃったけど、本当に書けるんだろうか…(汗)

400 :マロン名無しさん:2006/06/06(火) 07:58:48 ID:???
9月に入る新会員とはスーか?

401 :マロン名無しさん:2006/06/06(火) 22:15:06 ID:???
>>400
そうです。あともう一人入る予定ですー。

402 :マロン名無しさん:2006/06/07(水) 01:27:11 ID:???
斑目が聴講生としてもどってきます

403 :マロン名無しさん:2006/06/07(水) 07:16:21 ID:???
>>401
それは楽しみだ!!

404 :マロン名無しさん:2006/06/07(水) 15:11:19 ID:???
デトロイトメタルシティ読んでると、脳内レイプ(ワープ)発言
しまくりの、悪魔のようなオギウエーさんの活躍を読みたくなって
しまうんですが…。
(AMCシリーズとはまた別に)

405 :マロン名無しさん:2006/06/08(木) 06:51:57 ID:???
よっし、完成したけど、今投下する余力無し。
今晩投下予定です。
801とラジヲ、続き書き上げたんで〜、
気になってる方は楽しみにしててください。

406 :マロン名無しさん:2006/06/08(木) 07:44:02 ID:gUTe8boa
>>405
キーター!!
ええ待ちますよ!
ゾンビになるまで楽しみに待ちますとも!!

407 :マロン名無しさん:2006/06/08(木) 20:47:18 ID:???
おおおおお、801小隊!ラジヲ!!超wktk

408 :マロン名無しさん:2006/06/08(木) 23:42:43 ID:???
ラジヲ聞きてえ〜マダー?

409 :344:2006/06/09(金) 01:15:19 ID:???
ども、今帰宅しました。
これから二本連続投下しますが、大丈夫でしょか?

>>345
マダラメがかっこよく描けるのがのがこのSSの良いところ。
でも、彼は相当必死です。
>>346
昔戦場に赴いた人たちも元々普通の人のはずです。特攻隊とか。
そんな普通の人たちも、戦場では勇敢に戦いました。
戦場という場面で現視研メンバーがどうなるか・・・。
という思考実験とか言ってみてキャラ改変を言い訳してみるテスト。
>>371
ジャイアンはいい奴ですよ!と大長編ドラえもんしかもってない私はいってみる。
大長編ののび太は何度か大ボス倒してますからね・・・。
そんな感じで読んでいただくといいかもですw

ではでは、26レス前後で投下しまっす。

410 :第801小隊第17話『シンデレラ・チカ』1:2006/06/09(金) 01:16:33 ID:???
衝撃が船内を伝わる。
「く、左舷、被爆!」
「しっかり回避しろよ〜!」
「む、無茶な〜、多勢に無勢でありますよ〜。」
多くのドムの襲撃を受け、大慌てになる船内。
「・・・クッチーは頑張ってるよ。ぐっ!」
サキの体が衝撃にゆれる。
「・・・敵が多すぎるんだ。なんて基地だよ。小規模に見えるくせになんて戦力だ。」
「・・・ど、どうするのさ・・・。」
ケーコが青い顔をしてサキを見る。
「・・・・・・どうするもこうするも耐えるしかないよ・・・。
 あんたの兄貴を信じるしかないんだよ・・・。」
「あの兄貴だから信用できないんだろ・・・。」
「あら?あんたがなんだかんだで一番信頼してるのはササハラだと思ってたけどね。」
驚いた顔をして少し顔を赤らめ、ケーコはサキから顔を背ける。
「・・・とにかく!このままじゃやばいんだろ!」
「・・・・・大丈夫、もう少しだ・・・。」
大隊長の声が響く。
「・・・く!!」
クチキのうめき声が聞こえる。手元が激しく動く。
目の前からビームバズーカの光が迫る。
しかし、間一髪船はそれを避ける。
「・・・やばいでありますにょ・・・。」
その瞬間である。宇宙空間に妙な振動が伝わった。
「こ、この感覚!」
「・・・前より弱いけど・・・まさか!!」
「・・・・・・これで向こうは動けないが、こちらは動ける。
 こちらには防ぐシステムが配備されてるからね・・・。
 墓穴を掘るとはまさにこのことだよ・・・。」
大隊長のメガネが光る。
「・・・あとは君達が頑張るだけだ・・・。」

411 :第801小隊第17話『シンデレラ・チカ』2:2006/06/09(金) 01:17:45 ID:???
「どうだ、これで動けまい!」
勝ち誇った顔をして、ディスプレイにうつるジムを見るオギウエ。
「・・・これで終わりだ・・・。不愉快なんだ・・・お前は・・・。」
メガ粒子砲がジムに狙いをつける。
「消えろ!」
衝撃と、砲撃の激しい音がMA内に響き渡る。
光が発せられ、一瞬、視界が消える。
視界が開けた後には、消えているはずだった。
「・・・なぜだ!!?」
ジムは、その姿を保ったまま、目の前にいた。
「かわしたと言うのか?・・・嘘だ!なぜ動けるんだ!!」
目の前のMSが、もはや恐怖の対象と変わりつつあった。
ジムが動く。ドムたちは動きを見せない。
自由に、こちらに向ってくる。
「く、来るなあ!来るなあ!!」
闇雲にバルカン砲を放つ。
しかし、それを軽々かわし、ジムは接近する。
『答えて!』
知らない女の声が頭に響く。
「・・・誰だ!私を不愉快にするな!話しかけるな!」
もはや混乱のあまり、言っていることが支離滅裂だ。
『・・・あなたは、オギウエさんでしょう!?』
頭が痛くなる。声が響くほど、何かを思い出そうとする脳から痛みが走る。
「やめろ!やめてくれ!」
頭を抱えてコクピットでうずくまる。
『思い出して!』
「やめろぉぉぉぉぉおおおお!!」
眼光を見開き、意を決したようにジムに突進する。
「声の元はお前なんだな!私を苦しめるな!!」
ジムが間近で、停止する。
「お前さえ消えれば!!」

412 :第801小隊第17話『シンデレラ・チカ』3:2006/06/09(金) 01:18:34 ID:???
『駄目です、聞く耳を持たない・・・。』
「駄目か・・・。」
接近するMAを見ながら、ササハラは苦い顔をする。
「俺の声を聞かせることが出来れば・・・。」
『・・・出来るかもしれません・・・。』
「え?」
『あの時、コーサカさんが教えてくれました。
 私とあなたの同調率が最高に達すれば、
 あなたに私の力を渡すことが出来ると・・・。』
「そんなことが・・・。」
半信半疑のササハラだが、コーサカのいう事である。
「だけど・・・どうすれば・・・。」
『・・・それだけは・・・。危ない!』
メガ粒子砲の光がかすめる。
「・・・くそ、このままじゃジリ貧だ・・・。」
そのササハラの目に、後方にある敵の基地が目に移る。
「そうか!基地に押し込んで、その中で面と向かい合えば・・・。」
そのためにはあの巨体を基地に押し込まなくてはならない。
「誘導するぞ・・・頼む、もってくれよ・・・。」
そういいながらコクピットの操縦桿を握りなおす。
『ササハラさん・・・。』
「会長は、オギウエさんに呼びかけ続けてください。」
『でも、彼女苦しそうで・・・。』
会長の声から悲しそうな感じを受ける。
「・・・かなりひどい洗脳でも受けてるのか・・・。
 でも、それでも反応があるなら・・・望みが・・・。」
『・・・分かりました!オギウエさん!』
会長の声が離れていく。
「・・・君の苦しみの元はここだ・・・。追って来るんだ!」
ジムがブーストを光らせ、MAの裏へと移る。
そのまま、基地のほうへと高速で突き進んだ。

413 :第801小隊第17話『シンデレラ・チカ』4:2006/06/09(金) 01:19:27 ID:???
「なんだ・・・。敵の動きが・・・。」
マダラメは周囲の動きが弱くなったことに気付く。
そして、妙な感覚を受けていることにも気付いた。
「・・・なるほどね、あの兵器が動いてるのか。」
感謝するべきはコーサカである。
このアンチミノフスキーウェーブシステムを配備したのは彼だ。
「多少・・・違和感はあるが・・・大丈夫そうだな・・・。」
周りのドムが逆に動けないのは好機である。
「向こうさんは全MSに配備、とまではいかなかったようだな・・・。」
『き、貴様、なぜ動ける!!』
驚きの声を聞くマダラメは、ニヤリと笑う。
「何の対策も無しで来るとでも思ったか?
 ・・・まあ、無くても来ただろうが、一応自信の素っていうのはあったんだよ。」
『な・・・貴様ら、全員動けるとでも言うのか!!?』
「そういうこった。・・・勝負つけんぞ、鬼さんよ。」
赤いゲルググと黄色いゲルググが距離を置く。
『・・・オギウエ、オギウエ聞こえないのか!!?
 兵器を切れ!こちらが不利になるんだぞ!!』
「余裕だな!」
急速に接近するマダラメ。
『ぐ!』
マダラメの切り付けを受け流し、再び戦闘体勢になる鬼。
「流石だな・・・。・・・勝てねえかもな・・・。」
奇襲をかけても攻撃をかわす相手に、思わず弱音が出るマダラメ。
「・・・だが、やるしかねえ。こいつだけは俺が抑える・・・そう決めたからな・・・。」
改めて操縦桿を握り締め、ディスプレイに移る相手に目をやる。
『・・・さっさと片をつけさせてもらうぞ、赤いの!』
「やれるもんならやってみろっていってんだろ!」
わざと不安を消すように笑ってみる。そう、これが俺だ。
不安を消す為に、いつも口だけは大きく言っとくんだよ。
結局は臆病者なんだ。それは、変わらない。いつまでも。
「・・・でもな、臆病もんには臆病もんなりの勇気の出し方がある!」

414 :第801小隊第17話『シンデレラ・チカ』5:2006/06/09(金) 01:24:52 ID:???
「なんなの・・・?敵の動きが・・・。」
アンジェラは数箇所破壊されつつも、かろうじて生き残っていた。
「・・・これが例の兵器って奴?」
ドムから苦しむような動きが見える。
「スー?スーは大丈夫?」
通信から声が聞こえない。
「スー?スー!!?」
『・・・怖い・・。』
ようやく聞こえた声は、非常に震えたものであった。
「スー?よかった・・・。でも・・・どうしたの・・・?」
『強い悪意を感じるの・・・あの基地と・・・あの大きいのから・・・。』
スーが指しているのは基地と、あの射出兵器のようだ。
『あと・・・強い悲鳴・・・悲しくなるくらい・・・怖い・・・。』
震える声をつむぐスー。いつもの飄々とした元気はそこにない。
「・・・大丈夫よ。あの人たちが信用できない?」
『・・・そんなことはない。あの人たちは・・・信用、出来る。』
その言葉に笑顔を取り戻すアンジェラ。
「そうでしょ。だから、大丈夫。信用しましょう。
 今は、少しでも戦力を削っておきましょ。」
『ウン・・・。』
そうか、と思った。アンジェラはマダラメが誰かに似てると思っていた。
スーなんだ。だから、私はあの人に好感を持ったんだ。
臆病なのに、普段格好をつけてるところなんかそっくりだ。
「・・・生きて帰れ、か。今はあんたに言ってやりたいよ。」
アンジェラが戦闘を続ける二機のゲルググを見る。
「この状態じゃ・・・足手まといだろうから・・・。」
そういいながら、動けないドムの移動能力や武器を壊しに宇宙を舞う。
「頑張れ・・・。臆病者の隊長さん。」
『・・・いくぞ!我が前に立つものは刀の錆にしてくれるわぁ!』
「刀持ってないでしょ。・・・調子戻ってきたね。」
アンジェラは元気を取り戻したスーの声に笑った。

415 :第801小隊第17話『シンデレラ・チカ』6:2006/06/09(金) 01:26:26 ID:???
「・・・基地へと向ってる?・・・させるか!」
オギウエは、敵MSの目的が基地だと判断し、追撃をかける。
「・・・ミノフスキウェーブが効かないなら・・・。」
パネルを数箇所押し、スイッチを押す。
「・・・全門開放だぁ!!」
その声ともに、MAの全身から、銃口が飛び出してくる。
「これで終わりだ!!死ねえええええええ!!!!」
銃弾が大量にジムへと向い、発射された。

「何だ!!あの銃口!!」
MAの変化に気付き、驚愕の声を上げるササハラ。
あと少しで基地の内部に侵入できるという所まで来ていた。
『まずいです!!』
「くそぉおお!!!」
銃弾がジムを襲う。たくさんの弾を避けきれず、各所が被弾する。
「・・・ぐはぅっ!!」
直撃は免れたものの、衝撃を受け、体に痛みが走る。
『大丈夫ですか!!?』
「・・・ノーマルスーツは大丈夫だけど・・・中身は・・・。」
『!!そんな・・・。』
「だ、大丈夫ですよ・・・体は・・・動きます・・・。」
片目を瞑り、血を吐くような声を出す。
『どうすれば・・・。』
「慌てないで下さい・・・。早々・・・。くそ、第二波か!!」
再びジムに狙いをつけたMAが、銃弾を送り込む。
『やめて・・・これ以上・・・あなたの大切な人を傷つけてはなりません!!』
その会長の叫びと共に、光を帯びるジム。
「会長・・・。」
『いきますよ!!』
「・・・はい!!」
ジムが、今までにない速さで動き出す。稼動域から悲鳴を上げるような軋む音が響く。
『お願い、もって!少しだけだから!!』

416 :第801小隊第17話『シンデレラ・チカ』7:2006/06/09(金) 01:28:14 ID:???
「なんだ!!?」
光を帯びだしたMSに、オギウエは戸惑う。
『これ以上・・・あなたの大切な人を傷つけてはなりません!!』
叫びが頭に響く。しかし、第二波は撃ち出したあとであった。
「・・・これで終わりだろう!・・・なにぃ!?」
レーダーになぜか多くの機影が映る。
「ば、バカな・・・。」
その方向には一体しかいないはずなのにだ。
ディスプレイに目を移すと・・・。
「な!!?」
多くのジムが移っていた。
しかし、破損箇所が同じ事から、違う機体だとは思えない。
「・・・残像?
 だかなぜレーダーに映る・・・?質量のある残像とでも言うのか!?」
驚愕するオギウエ。
「・・・なら全てを消し飛ばしてやる!」
第三波を撃つ用意をするオギウエ。
しかし、周囲を残像が取り囲む。
「くそう・・・本体は・・・どこにいる!」
バルカンで残像を消しながら、オギウエは本体を探す。
MSの影を追い、徐々に基地へと接近するMAの機体。
丁度基地の入り口へと近付いたその時。
「ぐはっ!」
衝撃がオギウエを襲う。後ろから、ジムが思い切り突進して押し込む。
「これを狙っていたのか?しかし、MAの出力にかなうと・・・。」
ブーストを駆けようとした瞬間、声が響く。
『・・・聞こえる!?オギウエさん!』
その声に体をビクンと震わせる。
「その声・・・知ってる・・・誰だ・・・。頭が・・・痛い・・・。」
頭を抱えるオギウエ。そのまま基地へと押し込まれていくMA。
基地の中を破壊しながら二体は、奥の整備場と思われる広い空間に出た。

417 :第801小隊第17話『シンデレラ・チカ』8:2006/06/09(金) 01:29:26 ID:???
『なに!?』
荒野の鬼の、驚いたような声が響く。
「・・・基地に・・・ササハラ・・・やったか?」
ササハラのジムの様子を見て、心配そうな表情をするマダラメ。
『・・・バカな・・・。くっ!!』
背中を見せ基地へ向う鬼に、マダラメは叫ぶ。
「バカヤロウ!戦闘中に背中見せてただで済むとは思うなよ!!」
二刀流のナギナタが黄色いゲルググを襲う。
『・・・私には守るべきものがある!!』
基地に向いながら、マダラメのほうを向きライフルを撃つ鬼。
「・・・やるべき事の順序間違ってねえか!?
 俺がこのまま黙ってやられるとでも思ってるのか!?」
そのライフルの銃弾を交わし、迫撃するマダラメ機。
『くそぉ!』
「終わりだな!!」
すれ違いざまにライフルを持った手を破壊する。
すぐに折り返し、足を破壊。返す刀で左手を破壊。達磨状態にする。
『・・・き、貴様ぁ・・・。』
「・・・・・・いくらなんでも、敵に背を向けちゃいけねえよ。
 勇敢なのも考え物だな。後先考えなくなる。」
『隊長さん!やったね!』
元気のいいアンジェラの声が響く。
「おおー、二人とも無事か。」
『もちろん!・・・ササハラは・・・?』
「わからん。だが、終われば通信の一つでも入るだろ・・・。」
そういいながら、マダラメの視線は射出兵器『光の槍』に向けられる。
「・・・お前らはここで待機しとけ。俺はあいつに向かう。」
『隊長さん?何いってんのさ?行くならみんなで・・・。』
「・・・いいから待機しておけ。絶対についてくるなよ!」
マダラメのゲルググがブースとを閃かし、『光の槍』へと向う。
『な、ちょっと待ちなさいよ!』
アンジェラの叫びが響いた。

418 :第801小隊第17話『シンデレラ・チカ』9:2006/06/09(金) 01:32:02 ID:???
「なに?」
ナカジマが険しい顔をする。
「基地に侵入?オギウエのMAごと?」
「ハイ・・・。」
部下の報告を聞き、ナカジマは声を上げる。
「博士につなげ。」
ニヤリと口の端を上げるナカジマ。
「『光の槍』こそ、私の真の目的だ。」
ディスプレイに映し出された博士。
『どうされましたか?』
「射出準備急げ。・・・無論、いけるよな?」
『・・・分かりました。ただしその威力は半減ですがの・・・。』
「構わん。この射出で奴らの気勢を削げればいい。」
ナカジマの言葉にニヤリと笑う博士。
『・・・・・・すぐに準備させていただきます。』
「頼むぞ。」
ディスプレイから博士の画像が消える。それを見届けた後、ナカジマは振り返り、歩を進める。
「ど、どこへ・・・。」
「MSで出る。」
驚きの顔をする部下。
「ま、まさかあのMSで・・・。しかし、あれはまだ8割の出来で・・・。」
「ふん、現状で100%動くさ。それがお前らには分からんのだ。」
そのまま進み、扉の前に立つ。
「・・・オギウエ、待っていろ。すぐに助けるからな・・・。」
開いた扉の中に進み、そのまま姿を消す。
「・・・どうするよ・・・このままじゃ・・・。」
「・・・みんな早くここから脱出するんだ。」
声が響く。声の主を見て、兵士に動揺の色が走る。
「お、おまえは・・・。」
「・・・早く。急ぐんだ。」

419 :第801小隊第17話『シンデレラ・チカ』10:2006/06/09(金) 01:37:09 ID:???
整備室では、戦闘がまだ続いていた。・・・いや、もはや戦闘ではなかった。
『聞こえてるんだろ!?やめてくれ、オギウエさん!!』
「やめろ!声を聞かせないでくれ!」
銃弾が飛ぶ。コクピットでは、オギウエが震えながらMAを操縦していた。
流れ弾が基地を破壊していく。もはや狙っているわけではないのだろう。
ただ、狂ったように弾を撃ってしまっているのである。
それを避ける事はササハラにとって容易かった。
『やめてくれ!もう、やめよう!』
「・・・聞かせないで!その声を!私は!私は!」
狂ったように叫ぶオギウエ。
その声は、非常に暖かかかった。
覚えている、その声を。
あなたの隣にいて、私は幸せだった。
そう、そうなんだ・・・。
私は・・・。あなたと一緒にいたかった・・・。
でももう・・・。
「もう駄目なんですよ!」
『・・・思い出した!?オギウエさん!』
「駄目・・・なんです・・・。私は・・・あなたを・・・傷つけて・・・。」
あなたに向けた銃口。その過去をもう拭えない。
『・・・ははは。』
「・・・なんで笑うんですか・・・。」
涙が流れる。一番聞きたかった声が耳に入る。
でも、それも許される立場じゃない。
苦しみに耐えられず、あなたを忘れた。
『そんなこと、どうでもいいんだよ。』
弱い重力が掛かる基地内で、二人の機体は向かい合って止まる。
「どうでもって・・・!」
『俺はね。君がいてくれればそれでいいんだ。
 一緒にいてくれよ。それだけでいい。
 ・・・・・・俺は!!君と添い遂げたい!!!君が欲しい!!!』

420 :第801小隊第17話『シンデレラ・チカ』11:2006/06/09(金) 01:37:46 ID:???
「・・・何を・・・。」
あまりにも暖かい・・・これ以上ない言葉を聞いて・・・ただ泣く。
不意に、ペンダントが目の前に浮かび上がる。
思い出が、浮かび上がる。短いようで長かった、数ヶ月の生活が。
『・・・オギウエさん。』
「・・・もう、魔法は解けたと思ったんです。
 幸せになる権利なんて私にはなかったんだって・・・。
 魔法が解けた偽者のお姫様のように、私は、元に戻るべきなんだって。
 そう思ったら、記憶が消えていきました。
 暖かいもの全てを忘れようとしました。
 でも・・・結局はそれが欲しくて仕方なくて・・・私は・・・弱いんです・・。」
『いいじゃない。』
そういって、ササハラのジムはMAに近付き、コクピットをこじ開ける。
前に中を見たときに構造を大体把握していたので、容易だった。
オギウエを見つけ、コクピットのハッチを空けるササハラ。
身を乗り出し、オギウエに体を近づける。
「ササハラさん・・・。」
久々に見たササハラの顔に、流れていた涙がさらに増す。
『いいじゃない。みんなそうだよ。みんな、一人じゃ生きていけないから。
 俺もそうだ。だから、君を取り返しに来たんだ。』
そういって、笑顔を見せる。しかし、その顔には、血が流れていた。
「っ!!私・・・私!」
『大丈夫。このくらい平気だよ。ほら。』
手を伸ばすササハラ。その手を、オギウエは握る。
そのまま引っ張り、自分のコクピットに一緒に座らせる。
『・・・さあ、帰ろう。これは破壊して・・・。』
ハッチを閉じ、MAに向けてライフルを放つ。
大きな爆発音と共に、MAが燃えていく。
「・・・はい。」
ようやくオギウエは笑顔を見せる。
『よかった・・・本当によかった・・・。』
会長は、二人の姿に安堵した。

421 :第801小隊第17話『シンデレラ・チカ』12:2006/06/09(金) 01:39:09 ID:???
そこに、大きな爆発音が響く。
「??MAの爆発音とは違う?」
音の方向に振り返ると、そこには一機のMSがいた。
「・・・!?なんだ、あの白いMSは!!?」
『逃がさないよ・・・。オギウエを返してもらおうか・・・。』
『ナカジマぁ!』
叫ぶオギウエ。まるで、美しい天使の様なカラーリングのMS。
MA「エルメス」を基にしているようだ。
しかし、手足が存在し、形状はMSに近い。
『よもやこのプロトタイプを使うことになるとはねえ・・・。
 無敵の零式のエルメス運用データが役に立ちそうだ・・・。』
周りにビット・・・少々形状が違う・・・が浮かぶ。
「オールレンジ攻撃だって?・・・ただでさえ手負いなのに・・・。」
『嘘・・・。あんたNTじゃ・・・。』
『オギウエ。私はね、上に立つために色々な方法を使ったんだ。』
『まさか・・・強化実験を受けたの!?』
『・・・そう。それだけじゃないけどね。
 腐った親父ども・・・もう二度と顔も見たくないような奴らに媚売ったりね・・・。』
語尾に怒りが含まれていることがよく分かる。
「・・・強化実験・・・。」
『やめて!ナカジマ!』
『・・・オギウエ・・・あんたは・・・私の元からいなくなるのか・・・。』
白いMSが、ビットのようなものをこちらに向ける。
『手元からいなくなるならいっそ・・・ファンネルの餌食になれ!!』
「くそ・・・。ぐっ・・・。」
緊張が一瞬解けたせいか、痛みが全身に走る。
『ササハラさん!』
『・・・ここは私が何とかします。サポートお願いします・・・。』
オギウエがMSの操縦桿を握る。
『・・・分かりました。』
会長は力強くオギウエに返事をした。

422 :第801小隊第17話『シンデレラ・チカ』13:2006/06/09(金) 01:40:24 ID:???
マダラメは『光の槍』に乗り込み、過去を思い出していた。
「・・・大きくなっただけで何も変わっちゃいねえ。」
コクピットから降り、記憶どおりに操作室にたどりつく。
そこには。
「・・・・・・やっぱりお前かよ、爺さん。」
思わずデジャ・ビュかと思う様な光景。
銃を構えるマダラメ。
「ヘタレなりに決着つけに来たぜ。」
『・・・お前か。・・・くくく。撃てるのか?』
「撃つさ。お前がやめない限りはな。」
にらみ合いが続く。再び彼に決断の時が迫る。

423 :第801小隊 『次回予告』:2006/06/09(金) 01:42:56 ID:???
『光の槍』射出が迫る中、戦いは続く。
ナカジマは自分の意思を貫く為に。
オギウエは自分の手で決着を付けるために。
マダラメは過去にケリをつけるために。
ササハラは大切な人のために。
・・・リツコは、自分自身の真実のために。

次回、最終話
「地球(ほし)へ帰る」
お楽しみに。

424 :影の主役・ヤナ〜幕間〜:2006/06/09(金) 01:45:04 ID:???
「・・・おいおい、くさい台詞連発だよ。
 さすが少女漫画に傾倒した時期のある監督さんだな〜。
 まあ、うまくまとまりつつあるのか〜?
 でも、最終話一歩手前でわざわざ新MS出さんでも・・・。
 あれプロトタイプ・キュベレイだろ〜?またマニアックな・・・。
 あ、そうだそうだ、ラジオ更新されてるんだったな。
 恋愛相談とか始めるっていってたけどどうなることやら・・・。」

425 :ラジヲのお時間『神無月』1:2006/06/09(金) 01:48:32 ID:???
〜BGM・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』テーマソング〜

〜FO〜

「どうも〜、いつ誰が聞いてるか分からないげんしけんのネットラジオをお聞きの方、
 今日も私、神無月曜湖と!」
「於木野鳴雪でお送りします。」
「だいぶ涼しくなってきましたねえ〜。」
「ようやくって感じですか。」
「ですね〜。サークルの方はそろそろ学祭ムードですよ〜!」
「・・・今年もコスプレ撮影会でしょう?」
「・・・・・・まあ、掲示帰るというのも面倒ですからねえ・・・。」
「いっそのこと全換えしてみますか?」
「・・・あと二週間でですか?」
「無理、ですか。」
「それは来年計画してくださいな〜。」
「・・・まあ、善処します。」
「なにはともあれ今月は私の月!」
「え?・・・ああ、神無月。そういえば何で神無月、なんですか?」
「・・・言わなきゃ駄目ですか?」
「え?いや、別にいいですけど・・・。誕生日でもないし・・・。」
「・・・・・・そんなこんなで楽しい一ヶ月でした!」
「うーん・・・やっぱ気になるなあ・・・。」
「・・・・・・気になります?」
「うぇ!?・・・まあ、そんな思わせぶりにされると・・・。」
「思わせぶりに見えますか?」
「な、なんなんですか!?さっきから・・・。」
「・・・言ってもいいんですけど・・・。荻上さんがショックを受けたら・・・。」
「・・・やめておきます。」

〜完全にFO〜

426 :ラジヲのお時間『神無月』2:2006/06/09(金) 01:49:41 ID:???
「改めてこんにちは、こんばんは、おはようございます〜。」
「こんにちは、こんばんは、おはようございます。」
「さて、この現視研ラジオの歴史も長いもので今回で45回目となりました〜。」
「そんなやっていたんですね。」
「初代パーソナリティから考えるとそうですね〜。」
「初代って誰なんですか?」
「・・・そういえば名前知らない・・・。」
「はぁ?」
「ま、まあそれはともかく二代目・マムシ72歳さん、三代目・ベンジャミン武世さん、
 そして私へと繋いできたバトンがここまできました。」
「あと五回で50回ですか。」
「はい〜。そいうわけで、50回目の時は何かしら考えないといけませんね〜。」
「・・・いままでのパーソナリティ全員参加とか面白そうですよね。」
「・・・・・・ソレダ!」
「うぇ!?」
「今決めましたよ〜!
 第50回の暁にはマムシさんとベンジャミンさんも含めて四人でやりますから!」
「・・・・・・マジっすか。・・・適当なこと言わなければ良かった・・・。」
「え〜、不満ですか〜?」
「不満って訳じゃないっすけど・・・。」
「・・・・・・大丈夫ですよ、於木野さんの思っている通りの・・・フフフ・・・。」
「やっぱいじる気満々だぁ!!」
「ええ?私そんな事いいましたか〜?」
「・・・白々しい・・・。」
「それはともかく、この企画、OKですよね?
 『・・・駄目っていってもやるんでしょ?』分かってらっしゃる〜。」
「いや、そこはプロデューサー、強気で断れば・・・。
 え?『別にそこまで断る理由もないし・・・。』うう・・・。」
「いいじゃないですか。きっと楽しいものになりますよ〜。」
「・・・ですね。その頃には・・・。」
「・・・・・・ええ。最後に、ね。」
「それはともかく、今回の学祭では何のコスプレするんですか?」

427 :ラジヲのお時間『神無月』3:2006/06/09(金) 01:51:05 ID:???
「ひ・み・つ、ですよ〜。」
「・・・聞いた私が馬鹿でした。」
「あ、於木野さん、そんな冷めた目で見ないで〜。」
「馬鹿にしてるでしょう?」
「してませんよ〜!ただ、私は於木野さんと一緒にコスプレできればそれで・・・。」
「却下!」
「ええ〜!!」
「だから、おおっぴらにするのは嫌って言ってるじゃないですか!」
「で、でも、せっかくのお祭りですし・・・。」
「・・・曜湖さんと一緒にしないで下さい。わたしには無理です。
 はっきり言って人に見せるような顔してませんから。」
「あうう〜。そんなことないと思いますよ〜。」
「・・・兎にも角にも絶対しませんから!」
「・・・いいですよいいですよ。なに、その場でちょっと押せば・・・ねえ、ベンジャミンさん?」
「何そこ裏で話付けてますか!」
「・・・なんのことですか〜?」
「全く・・・ちょ、何書いてるんですか!」
「え?『かわいいの用意してくれるんだろうから、やればいいのに。絶対似合うよ?』
 その通り、その通りですよ、ベンジャミンさん!
 ベンジャミンさん、説得をお願いします!あなたにかかっている!全人類の希望が!」
「っ・・・!!何大げさな話してるんですか!」
「顔真っ赤にして何言ってるんですか〜。いける!ベンジャミンさんがお願いすればいける!
 あとで衣装お見せしますよ、ベンジャミンさん。・・・さて、メールのご紹介で〜す!」
「・・・ぜってえやらねえ・・・。・・・えーと・・・。」

〜がさがさ紙を探す音〜

「これだ。RN『躯蜻蛉』さんから頂きました。ありがとうございます。」
「ありがとうございます〜。最近メール増えましたねえ。これも於木野さん効果ですかね?」
「何言ってるんですか、そんな・・・。」
「まあまあ、お願いします。」

428 :ラジヲのお時間『神無月』4:2006/06/09(金) 01:52:37 ID:???
「『曜湖さん、鳴雪さん、いつもラジオ楽しく聞いています。
  前、ラジオの中でお話していた『種死』、終わっちゃいましたねえ。
  ・・・ぶっちゃけ、ヤバいっすよね、あれ。
  そのあたりについて、思いのたけをぶつけていただけたらと思います。
  それでは、次回の放送も楽しみにしています。』」
「・・・正直、黒いこと言い出したらきりありませんよね。」
「・・・まあ、そうですね。放送事故になりかねません。」
「では、こうしましょうか!ガンガル総論でも。」
「あー、でも、そういうのやるんだったらそれこそ50回目の四人の時の方が・・・。」
「その時はその時でやらなければいけないネタがありますし!」
「えー、そうなんですか?・・・まあ、分かりました。」

〜『いつかそらに届いて』CI〜

「ここで音楽です!
 OVA『0080』通称『ポケ戦』より。OPテーマ『いつかそらに届いて』」

〜『いつかそらに届いて』FO〜

「いきなり0080ですか。」
「マムシさんの構成により今回は進むそうですよ〜。」
「まあ、このあたりの話とかはマムシさんに一人、
 とつとつと話させたほうが面白いと思うんですけど。
 え?『俺はトミノの以外しっかり見取らんからな。』
 そうなんですか?初めて聞きました。」
「最近らしいですよ、外伝の類を見たの。
 『キンゲ以降トミノも映画やOVA以外作ってないからなあ。
  ほかに見るもんがなくてな・・・。つい魔がさして・・・。』
 魔がさして見たんですか!!」
「昔のラジオ一通り聞いても、確かに外伝は話してなかったですね。
 まあ、私も見たのは比較的最近なんですけど。」

429 :ラジヲのお時間『神無月』5:2006/06/09(金) 01:53:16 ID:???
「一度ガンダム特集やったときも、宇宙世紀のTVシリーズばっかでしたね。」
「なるほど。」
「というわけで、0080ですけど。」
「監督さんが『マクロス』の演出をされていた方だけあって、
 描写とかがいちいち生々しかったですね。」
「『08』もいい勝負だと思いますけど、ガンガルの初のトミノ以外の作品ということで、
 違う路線を目指していたのかもしれませんね。」
「主人公が小学生というのも、面白かったですね。
 最後の、『もう戦わなくていいんだ!』は、涙なくしては・・・。」
「ですねえ。私としても見ごたえの多い作品でした。」
「・・・え〜、クリスが、バーニィと知らず最後・・・。」
「ちょっと!何で無視するんですか!!」
「だって、分かりきってますし。そんな暑苦しそうな話きいて、誰が喜ぶって言うんですか。」
「ぶーぶー。」
「・・・分かりましたよ。思う存分思いのたけを語ってください。」
「はい!まずですね、シュタイナー隊長。おひげが渋いジオンの職業軍人ですよ。
 バーニィをしかるシーンや、死んでしまう時のシーンなど、もう、萌えまくりです。
 ミーシャもいいですね。酒飲み、豪胆。バーニィとの絡みもよかったです。
 でも、あのアレックスのバルカンにぼこぼこにされて死ぬシーンは、切な過ぎます。それに・・・。」
「ストップ。ひとまず、CMです。」

〜ジングル・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』〜

〜CM〜
「・・・そこに見たのは」
「汚らしい俗世の闇」
「燃やし尽くしてやる」
「地獄から俺が来た以上」
「AKIHABARA METAL CITY」
「第一巻好評発売中!」
「やめてくださいクラウザーさん!
 その二人もう死んでますよ!」

430 :ラジヲのお時間『神無月』6:2006/06/09(金) 01:58:38 ID:???
〜ジングル・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』〜

「・・・え〜、この漫画、ヤバいっす。」
「いろんな意味で、ヤバかったですね。」
「『バカヤロウ!クラウザーさんにギターで殺されたいのか!』
 ・・・それは嫌ですけど。」
「でも、これ売れまくりらしいですね。どこいっても売り切れだったって、
 梟さんが嘆いてました。何とかあるところで買ってきたらしいですけど。」
「編集部もびっくりしてるんじゃないですか?
 予想外に売れてるみたいですから・・・。」
「早く重版がかかるといいですねえ。」
「さてさて、つぎは、何で行きますか?まだ語り足りな〜い。」

〜『Evergreen』CI〜

「音楽です。OVA『0083』より。第二期EDテーマ『Evergreen』」

〜『Evergreen』FO〜

「0083もいいですよね〜。」
「やっぱり曜湖さん的にはデラーズがいいんですか?」
「そうですね〜。でも、あの物語って女性的な観点で見ると、
 あまり賞賛できない部分もありますね。」
「シーマ、ニナの存在は大きいですね。」
「あの話って本当はデラーズを否定してると思うんですよ。」
「でしょうね。二ナは戦争を客観視する立場ですからね。」
「映画版ではばっさりでしたけどね。」
「シーマに関してもカテ公と並んで二大毒婦なんていわれてますけど・・・。
 あの人、利用されまくって、あの場にいますからね。
 大義とかそういうのはもううんざりだったんでしょうね。」
「そうなんですよ。だから、かなりかわいそうだと思いました。
 そのあたりを考えると、ガトーはあまり好きにはなれません。」

431 :ラジヲのお時間『神無月』7:2006/06/09(金) 01:59:20 ID:???
「同感ですね。周りを省みずにひたすら信念のために突き進む、
 って言えば聞こえはいいですけど、他人が自分と違うことを理解できていない。」
「サムライ的といえばそうなのかもしれませんけどねえ。」
「もちろん、シーマに悪い点がなかったわけじゃないですけどね。」
「まあ、戦争に善悪なんてないわけですし。」
「ですね。でも、デラーズの信念を美化しているファンも多そうですね。」
「でもそれも楽しみ方の一つといえば、そうなんでしょうね。」
「私としてはコウとキースが少しづつベテラン達にもまれて、
 成長していく所が良かったですけどね。」
「私はバニング・・・。」
「はいはい。」
「ちょっと待ってくださいよ!」
「なんですか、黙ってますから話してくださいよ。」
「そんな、全く興味のない顔しなくても・・・。」
「へ?興味のない顔なんてしてますかぁ〜?」
「話し方からもはややる気ないじゃないですか!」
「・・・だって興味ないですから。」
「ひどい!今日の於木野さんはひどい!」
「だって、私と曜湖さんの趣味ってかぶりませんし。」
「・・・この前の本、よろこんで持ち帰ったのは誰でしたっけ・・・。」
「ぶっ!そんな事こんな時に言わなくても!!」
「はじめから毛嫌いして他のものを見ないなんて、まさにガトー!!」
「くっ!」
「まあ、それはともかく、いい本があるんですよ、これが。」
「・・・マジっすか。」
「フフフ・・・顔つきが変わりましたよ〜・・・。」
「・・・すいませんでした。」
「分かればよろし。」
「・・・ではいったんCMです。」

〜ジングル・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』〜

432 :ラジヲのお時間『神無月』8:2006/06/09(金) 02:00:14 ID:???
〜CM〜
「どなた?」
「泥棒です。」
「今は囚われの身。あいにく、差し上げるものがないのですが。」
「どうかこの、泥棒に盗まれてやってください。」
「・・・過去を盗みに、未来を渡しに。」
「マダラメ三世」
「キモハラグロの城」
「DVD ON SALE」

〜ジングル・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』〜

「どうです、この作品。」
「どうですかね、ミヤザキ作品としては傑作ですけど。」
「良くあるのは原作からのキャラ改変という件ですね。」
「まあ、もっとヘタレなもんだという意見が多いですけど。」
「でも、あれって原作からずいぶん経ったときの物語らしいですよ。」
「あ、そうなんですか?」
「あのお姫様助ける回想の中が原作の頃で、本編の中じゃ
 ずいぶんカッコよくなってる、って事みたいですよ。」
「ああ、だからああいう感じなんですかね。」
「まあ、これも本当かどうかは分からないですけど・・・。
 そうみると、全ての人が納得できるかもしれませんね。」
「どっちかというとルブランの方に似てるのかもしれませんね。」
「なるほど!年を重ねておじいさんに近付いたって事なのかもしれませんねえ。」
「そう考えるとちょっと面白いですけどね。」
「さてさて!いっきますよー!
 『漫画・恥ずかしい台詞を大声で言ってみよう』のコーナー!」
「今回は何ですか。」
「今回は、私たちじゃなくですねえ・・・。
 録音しときましたんで、流すだけです。」

433 :ラジヲのお時間『神無月』9:2006/06/09(金) 02:01:24 ID:???
「は?何を録ったって言うんですか?」
「まあ、まあ、お楽しみに。
 では梟さんお願いしまーす!」

『・・・・・・俺は!!君と添い遂げたい!!!君が欲しい!!!』

「ぶはっ!・・・何をやってるんですか!!ベンジャミンさん!」
「え〜、今回はこの前発売された801小隊最終巻より〜。
 敵となった思い人に告白して突っ込む主人公の台詞からでした〜。」
「なんでわざわざベンジャミンさんがやってるんですか!」
「え?いや、なんていいますか、言われたいでしょ〜?こういう台詞。」
「・・・否定はしませんけど・・・。い、いや、別に、な、なんていうか!」
「というわけでノリノリでやってもらってこっそり・・・。
 『いや〜、恥ずかしいね。』」
「じゃあやらなければいでしょう!」
「・・・このメッセージの裏に隠されてるものがあるんですよ・・・。」
「はぁ?」
「そう、これは於木野さんに向けたプロポーズ!」
「ちょ、待ってくださいよ!何言い出してるんですか!」
「あらあら、顔真っ赤にして・・・。そう・・・ベンジャミンさんは・・・え?
 『ないない。』え〜、てっきりそのつもりでやってくれてるんだと〜・・・。」
「・・・そんなもんですよ。」
「あ、ちょっと期待してたでしょう?」
「そんなわけないじゃないですか!」
「だって明らかにがっかりした顔してましたよ〜?今。」
「・・・!!ち、違いますよ!!」
「女の子なら一度は憧れますよね〜、純白のドレス。」
「・・・否定はしませんし、ぶっちゃけ着たいですよ!」
「おお!今日の於木野さんは積極的!
 というわけで、ベンジャミンさん、責任とりましょうねぇ。
 『ちょ、ちょっとまってよ!あの、マジで・・・?』」
「・・・イヤですか?」

434 :ラジヲのお時間『神無月』10:2006/06/09(金) 02:02:26 ID:???
「ベ〜ン〜ジャ〜ミ〜ン〜・・・。」
「ちょ、落ち着いてくださいよ、曜湖さん。
 『・・・ま、すぐには無理だけど・・・ね?』
 ・・・分かってます。分かりますから。そんな困った顔しないで下さいよ。」
「・・・あらあら、二人だけの空間作っちゃって・・・。」
「で!?今日はこれだけですか!?」
「そんなに怒んないで下さいよ〜。
 あ、次のコーナーに行きましょうか〜。
 新コーナー!『鳴雪さんに聞いてみよう!命短し恋せよ乙女!恋愛相談始めました。』!」

〜BGM・『ゲキテイ』CI〜

〜BGM・『ゲキテイ』FO〜

「・・・忘れてたぁ・・・。」
「というわけで、メールがきてました。
 前回メールを下さったRN『黒神千砂十』さんが送ってくれました。
 『どうも前回はメールを読んでくださってありがとうございました。
  今回は新コーナーを作るということで、
  こんな私の相談でもよければ聞いて欲しいなと思いメールしました。
  私には好きな人がいます。
  そんなにしょっちゅう会う人ではないのですが、
  会うたびに好きになっていくのが分かります。
  メールはたまにするんですが、あまりするとうざがられそうでイヤなんです。
  でも、少しづつでもいいから、その人に近付きたいんです。
  どうするのがいいと思いますか?於木野さん、曜湖さん、アドバイスお願いします。』」
「・・・いい話ですね。頑張って欲しいです。」
「え〜、私からは一言!とりあえずコクれ!」
「ちょっと待って下さいよ、曜湖さん!それは即急すぎます。」
「でも、思いは伝えなきゃ。」

435 :ラジヲのお時間『神無月』11:2006/06/09(金) 02:08:16 ID:???
「それはそうですけど、まずは親しくなることから始めないと・・・。」
「ぬるい!ぬるいですよ!於木野さん。」
「・・・これ、私の個人的な意見ですけどよければ聞いてください、『黒神』さん。」
「ちょ、無視ですか〜?」
「少し黙っててください。」
「ひ、ヒドイ・・・。なんか真剣ですね・・・黙ってますか・・・。」
「思いに気付けたのは良かったと思います。私の場合はぎりぎりまで気付けませんでした。
 そんな私でも、相手が優しかったからうまくいきました。私は、とても運よかったんだと思います。
 ・・・だから、きっとうまくいきます。こんな私でもうまくいったんですから。
 まずは、共通の趣味とかで話をすることから始めてはどうでしょうか?
 なければ、身近なことでもいいと思います。少しずつ話す量を増やしていきましょう。
 そうすれば、自然と身近になると思いますよ。」
「おお〜、なんかしっかりした返答ですね〜。かっこいいです。」
「・・・なんか、こんな事私が言っても・・・説得力がないって言うか・・・。」
「・・・そんなことありませんよ。迷ってる人はみんな、
 誰かに背中を押して欲しいんです。その押す人は誰でもいいんですよ。
 きっと、伝わりましたから。『黒神』さん、頑張ってくださいね。」
「・・・そうですかね・・・。そうですね。頑張ってください。」

〜BGM・FI〜

「さてさて、今回の放送もこの辺でお開きですね。
 ・・・今日はいい収穫がいくつかあった・・・いい放送だった・・・。」
「・・・絶対にしませんよ、コスプレ。」
「・・・・・・ええ、ええ。分かってますよ〜。ベンジャミンさん、今日お暇ですか?
 ・・・あとでちょっとお時間を・・・。メインパーソナリティは神無月曜湖と!」
「ちょっと待ってください!このあとは二人で出かける予定で・・・於木野鳴雪でした!
 何で乗り気なんですか!ベンジャミンさん!!」

〜喧騒・FO〜

〜BGM・CO〜

436 :今回のヤナマダ〜幕後:2006/06/09(金) 02:09:31 ID:???
「なんか、熱かったね、今回の放送。」
「ああ、端で聞いててイヤになっちまったよ。」
「・・・まあ、でもいいよね。幸せなの。」
「そういえばあの相談、お前のとこの後輩なんだろ?」
「まあ、直接の後輩じゃないけどね。たまにメールするくらい?」
「・・・ほーん。じゃあ、好きな相手っていうのも知ってるのか?」
「好きな相手?んー、こっちから聞くのも野暮ってもんでしょ。
 相談されたら答えるけどね。あ、メール。」
「ん。」
「あ、今話してた子。あはは、この前話した漫画のことか〜。」
「・・・ちょっと思うんだけど、最近その子からメール増えてたりしねえよな?」
「あー、それはちょっとあるかもね〜。漫画の話とかよくしてるよ。」
「・・・・・・まさか、いやまさかねぇ・・・。」

437 :後書:2006/06/09(金) 02:10:24 ID:???
第801小隊・あと一話です。何とか物になりそうです。

ラジヲ・立てたかったものはフラグ。影の主役の。

長い間占拠してスイマセンでした。では、また。

438 :マロン名無しさん:2006/06/09(金) 02:21:56 ID:???
>801小隊・ラジヲ
リアルタイム乙!待ってました!(感涙)
次が最終話ってことで、すごく気合い入ってますね。ていうかもう…!読んでて熱くなりました!
>わざと不安を消すように笑ってみる。そう、これが俺だ。
不安を消す為に、いつも口だけは大きく言っとくんだよ。
結局は臆病者なんだ。それは、変わらない。いつまでも。
「・・・でもな、臆病もんには臆病もんなりの勇気の出し方がある!」
斑目かっこええ…!あと、アンジェラの「スーと似てる」ってのが興味深かったです。斑目は過去に決着つけられるのか…?

…でも今日はあえて言いたい。
笹原が一番かっこえええええ!!!「君と添い遂げたい」かっこええ…!!!さすが主役です。決めるトコビシッと決めマスね!

801小隊、50回記念の時は4人でラジヲ…?うわあ楽しみ!クラウザーさんにフイタw一巻面白かったっす。原作のほうも。
感想長文になってスマンカッタです(汗)

439 :マロン名無しさん:2006/06/09(金) 07:36:55 ID:???
>>801小隊
ササオギー!!
Gガンガルなノリのササハラワロスwww
マダラメも最終決戦へと…勝てよ、ヘタレ!!(褒め言葉)

>>ラジヲ
自分でやってんのかよベンジャミン…ノリノリだぁ。
この後のお出かけはどうなったのやら…
あと気付けヤナ。

440 :マロン名無しさん:2006/06/09(金) 18:04:13 ID:???
書店と漫画喫茶で全話一気読みして荻に恋してしまった俺が来ましたよ。
まとめサイトとかSSスレとか荻絵とかもひとしきり巡回してきたよ。

お前らどうもありがとう。お前らの恥ずかしい妄想、たしかに受け取ったよ。
SSスレの充実ぶりには脱帽です。まとめサイトがよくできてて、ジャンルごとに読むのがとても楽だった。
原作設定を下敷きにした作品が俺の好物で、笹荻の『不機嫌』とか、斑目の卒業式シリーズとか。
いまプリントアウトして通勤中に読み返してます。このスレッドに入ってる『空の下、大切な場所』
もいいね。
パロ作品の面々も気合入ってて好き。801小隊&ラジヲの作者氏、日付が変わるまで仕事してんのに2本も
連載とは頭が下がります。ササ×オギ邂逅シーンなんかちょっと泣いてしまいました。最終回がんばって
ください。ラジヲも鳴雪さんかわいくていいね。入梅したそうだし健康に気をつけて。

お前らがこの作品を本当に本当に愛しているのが伝わってきた。
俺はげんしけんと、お前らに出逢えてよかったよ。あと荻上さんと。

……で、その、なんだ。
俺も書いたんだけど、投下していいっすかね。
いま文字数勘定中。10レス前後になりそう。
この時間、当たり前だが仕事中なので(マテ、明日の日中にでも置きに来ます。
ってか明日も仕事だけどw

441 :マロン名無しさん:2006/06/09(金) 22:15:49 ID:???
>>440
自分、SS書きの一人ですが、このスレを誉めていただいてありがとうございます。
…こうしてSS読んで行ってくれる方がいて、感想くれて、それが今までとこれからのSS書く動力源になっとります。
ていうか自分の作品を誉められるとなんか、すごい照れますね(汗)いやあ、恐縮ですw

さて、今から投下したいんですが、いいかな?440さんは明日の日中に投下されるんですよね?いいよね?
32レス、かなり長文になってます。

442 :まえがき:2006/06/09(金) 22:21:17 ID:???
「げんしけんの一年前」
あの三人が入学した時の話です。


443 :げんしけんの一年前1:2006/06/09(金) 22:22:35 ID:???

2001年、春。
彼、斑目晴信は意気込んでいた。
今までどおり、ある種のサークルに入ると決意していたからである。

(漫研、漫研♪ アニ研、アニ研♪ オタサークルが俺を呼んでいるっ!!)
浮かれ気分で新歓の雰囲気全開の廊下を歩き回る。

高校の頃は伸び放題になっていた髪を切りそろえ、藪にらみの三白眼でニヤニヤしながら歩いている。
ひょろりと長い体、面長の輪郭にこけた頬。三日月の形に開いた口から八重歯が出ている。
猫背でいつも顔が突き出気味に前に出ている。
彼は中学の頃から同人誌を買いあさり、ゲームは格闘モノからRPG、果てはエロゲーまで幅広くカバー、アニメは毎シーズン最低でも10本は欠かさないという、典型的なオタクであった。

(ん?ありゃーE・E・さくらのポスター…。漫研か!)
意気込んで漫研の机へと突進していった。

さて。意気込んで来たものの、初対面の相手である。最初は丁寧に話しかけたほうがいいよなーと思い、まずは会長らしき人に声をかける。
斑「あの〜。会長さんですか?ここのサークルに興味があるんですけど、見学とかもできるんですかネ?」
「ん?君、新入生?」
妙に貫禄のあるその先輩は、斑目を見てこう言った。


444 :げんしけんの一年前2:2006/06/09(金) 22:23:26 ID:???
斑「はい、新入生ですけど?」
「フ、だからか。俺は会長じゃないよ。まだ2年だし」
斑「あ、そ、そうなんすか」
(さっきから見てると、妙に偉そうにしてっからてっきり会長かと思ったぜ…。ていうか2年!?)
斑「えーと…」
「会長はアッチ。俺は掛け持ちで会員やってるだけだから。」
その先輩はくいっと親指で後ろの人を指した。
斑「あ、ども…」
「じゃ。俺はもー話終わったからごゆっくり〜」
そう言って、大きい体躯を揺らしながら歩いていった。
漫・会「見学?」
さっき『会長』だと紹介された人に話しかけられた。
斑「あ、そーです。」
漫・会「ウチは放課後いつでも活動してっから、今日は午後になったらまた来ると良いよ。サークル棟の2階に部室があるから。」
斑「あーそうですか。2階っすね。」
漫・会「…さっきのヤツ、あんま関わんないほうがいいよ」
斑「え?あの2年の人っすか?」
漫・会「原口っつーんだけど、何考えてるか分かんないヤツでね。1年のときから、絵描けるヤツ集めて同人誌作って、利益吸い上げたりとかね。ろくな噂聞かないから」
斑「はあ…いるんすね、そーゆー人」
漫・会「ま、いつも来るワケじゃねーし、アニ研とか他にも出入りしてっから。あんま気にしないほうがいーよ」
斑「はああ…。」


445 :げんしけんの一年前3:2006/06/09(金) 22:24:17 ID:???
…さて、午後になり、サークル棟の漫研の部室まで行く。
(ふむ。さっきの「原口」って人、もういないよな?あんな話聞いちまったら、次に会った時話しづらいだろーなー。
ま、大丈夫か?漫研の人も「ほっとけ」って言ってたし。)
部室前で考え込んでいると、後ろから急に肩を叩かれた。
びっくりして振り向くと、少し背の低い小太りの男がこっちを見ていた。
斑「!?」
「君もここに見学?」
斑「あ、あーそうだけど。…君も?」
そいつもどうやら新入生らしい。雰囲気でわかる。
「そう。実はさっき、君を新歓のトコで見かけたからさ。漫研の机で会長と話してたろ?
ちょうど俺も見学に来たいと思ってたからさ」
斑「おお、そうなのか。あ、俺は斑目ってゆーんだけど」
「ま…?ん?ワタナベ?」
斑「ワタナベじゃねーよ。マダラメ!」
「へー、変わった名前だな。俺は高柳って言うんだけど」
斑「高柳か。言いにくいからヤナでいい?」
「言いにくいってお前…(笑)」
こいつとは気が合いそうだと思いながら、漫研の部室のドアを叩く。

漫・会「…で、夏コミと冬コミには毎年出てるから。君らにも数ページずつ漫画描いてもらうし、よろしくな」
斑「え、それ全員なんすか…?」
漫・会「今までそうやってきてっから。漫研なワケだし。ウチは積極的に活動してるから、それだけ評価もあるし。」
斑「はあ………。」


446 :げんしけんの一年前4:2006/06/09(金) 22:25:10 ID:???
漫研会長が淡々と説明している間、斑目は心の中でこう思っていた。
(…描けないんスけど…ていうか絵とか漫画っていう以前に俺、美術が全然駄目なんすけど…)
高校の頃までずっと、美術の授業なんかなくなればいいのにって思っていた。
小学生の頃だったか、自分の描いた絵を友人に馬鹿にされて以来、できる限り絵を描く機会を回避してきた。
もちろん、人の描いたものを見るのは大好きである。でもそれとこれは全然別だ。
中学、高校と漫研には入ってたが、活動内容がいつもゲームや雑談ばっかで、漫画や同人誌の批評をしたりが中心だったので問題なかった。本を作るときも文章で参加したり。文化祭とか小規模だったし。

だから、いきなりコミフェス参加とか、漫画描けとか、評価に関わるとか言われても困るのだ。
(ええ〜〜?どーしようかなー。ていうか無理!)
そう思いながら、隣のヤナを見る。
斑「…なぁ。君、漫画描いたことある…?」
柳「ん?俺はあるけど」
斑「………は〜、そうか…」
柳「君は?」
斑「いやー描いたことない。ていうか俺、絵描くの苦手だからさー」
柳「ありゃ、そーなんだ?」
斑「んん〜〜〜…」

大学からの帰り道、考えながら歩いていた。
(ん〜〜とりあえず他のサークルもあたってみるか。アニ研とか…)


447 :げんしけんの一年前5:2006/06/09(金) 22:26:12 ID:???
次の日。斑目はアニ研の部室の扉を叩いた。

ア・会「…と、いうわけで。去年作った自主制作アニメはわりと高い評価を受けてね。去年や一昨年、制作に関わった先輩なんかは、それで就職決めたり飯食ったりしてる人も中にはいるくらいなんで。
もちろんそんなすごいヤツばっかじゃないから、硬く考えなくていいよ。そーゆー人は2、3年に1人出ればいいほうだから。
最初はまー雰囲気に慣れてもらって、そのうち簡単なアニメ制作から作ってもらうことになるけど。GIFアニメとか。
ここまでで何か質問はある?」
斑「………………いや、ないです…。」

(…うわーこりゃ漫研より………。ていうか、こんな活発なサークルばっかなのか?(汗))

そのとき自分の横で「あの〜」という声がした。自分と同じ1年だ。
ア・会「ん、君は近藤君だったっけ。質問?」
近藤と呼ばれた1年の男が、「はい!」と大声で返事してから話しはじめた。
近「アニメの作画なんですけど…アナログってゆーか手塗りのセル画とかまだ使ったりしてるんですか?」
ア・会「いやー、最近はデジタルだね。セル画だと時間かかりすぎるっしょ。金もかかるし。」
近「しかしですね、セル画はセル画の良いところがあると思うんですよ!手作業の温かみというかですね。僕、高校の部活ではずっとセル画描いてアニメ作ってたもんで」
ア・会「ふうん?まあ個人でやる分にはかまわないけど。機材もひととおりそろってるし。昔の先輩が描いたセル画とかも保管してるし、あとで見る?」
近「はい、是非!!」

斑「………………………………」
次元の違う会話を聞きながら、斑目はどっ引きしていた。


448 :げんしけんの一年前6:2006/06/09(金) 22:27:01 ID:???
その日、大学から家に戻ってきて、斑目は考え込んでいた。
(う〜〜〜…何かなぁ…。もっと普通にオタク話ができるようなサークルはないもんかね………?
ていうか創作オタだけがオタクってか?創作ってのはたくさんの消費系オタが支えてるんだぞ!いわば需要と供給。
…とは言っても、確かに難しいかもな。作りだすのが目的じゃないとなると、そのサークルは何の活動するんだってことになるし。)
ふうむ、と考え込む。
(………ん?そういや、何か…)

サークル入会の手引きを引っ張りだし、パラパラとめくる。
(確か………。お、これだ。)
とあるサークルの紹介欄に目を落とす。


『現代視覚文化研究会』

………名前の欄にそう書いてあるのだが、紹介が書いてある四角の中には、びっしりと小さい文字で説明書きが書かれていた。

『このサークルは近代における日本の視覚文化をあらゆる角度から考察、研究することを目的としたサークルであります。特に近代の著しく発達した日本人の粋ともいえる映像文化には………』

最初はここまで読んで興味が尽きたのだった。映画研究会かと思ったのだ。
ただ、もう一度良く読んでみると、ところどころに『アニメブーム』とか『ゲーム世代』とかいう文字がちらほら読める。

『…結論として、日本の視覚文化をクロスオーバー的に研究するサークルが必要だという持論に達し、現代視覚文化研究会はそうした趣旨のもと立ち上がったサークルなのです。』

………正直、何部なのかさっぱり分からない。ただ、アニメやゲームも研究してるのかも、というのだけはわかった。


449 :げんしけんの一年前7:2006/06/09(金) 22:27:57 ID:???
斑「………………………………。」

斑目はサークル棟の3階に来ていた。
304号室。「現代視覚文化研究会」と大仰な名前の札のついた扉には、今週少年マガヅンで始まったばかりの「くじびきアンバランス」のポスターが貼られていた。新連載記念で特別付録でついていたポスターだ。

斑「…映画研究会、じゃないのか?」
ポスターを貼っているところを見る限り、オタクっぽさがにじみ出ているが、斑目はなかなか扉をノックすることができないでいた。

「…君、見学の人ですか?」
急に後ろから声がした。
斑「うわ!!」
驚いて振り向くと、そこには色白の少し背の低いひょろっとしたメガネの男が立っていた。さっきまで気配がしなかったので驚いたのだ。

斑「…え、えーと…。そうです、ちょっと見学に………」
会「そう。じゃあどうぞ入って」
斑「はぁ………。」


恐々部室の中に入ると、そこは立派な「オタク部屋」だった。
壁を埋めるように並んだ本棚に、大量の漫画やゲーム雑誌、美少女フィギュア、隅にはいくつも並んだゲーム機、壁のあいたところにエロゲーのポスター。

(おおお………。何か落ち着くな、ここ。何でだろ。
…あーそうか、俺の部屋もこんな感じだからかな………。もっと散らかってっけど)


450 :げんしけんの一年前8:2006/06/09(金) 22:29:10 ID:???
会「ま、そのへんに座って。」
言われて、とりあえず長机の左側の椅子に座る。
会「さて。僕はここ、『現代視覚文化研究会』、略して『現視研』の会長をしています。よろしく」
斑「あ、ども。斑目といいます。」
会「さて、君はアニメは好きかな?」
斑「え?はあ、好きですけど」
会「漫画は?最近注目してるのは?」
斑「そーですね…。今週連載始まった『くじびきアンバランス』ですかねー。ヒロインの登場の仕方がちょっと面白かったんで。あと、『なんでもくじ引きで決める学校』って設定も斬新で。」
会「そうだね。あの新連載は今後大きくヒットすると思うんだ。アニメ化にもなりやすそうな絵柄だしね。」
斑「ええ?まだ連載始まったばっかで、そこまで言い切っちゃうんですか?」
会「単なる予想だよ。希望的観測。…でもいちおう、そう言うだけの根拠はあるんだけどね。」
斑「へえ、どんな根拠っすか?」
会「それはね…」

斑目は知らないうちに会長の話に引き込まれていった。

斑「…というワケで、富野作品はスバラシイのですよ!!」
会「そうだね。僕はやっぱりファーストかな。」
斑「ファースト!ジークジオン!っすね。」
会「連邦も捨てがたいよ?ホワイトベースの乗組員って、戦闘員が未成年じゃない。アニメではよくある設定だけど、ガンダムでは特に戦争に巻き込まれてゆく少年の心理がリアルに描かれてて、僕は好きだな。アムロが悩みながら闘う姿とか。」
斑「アムロねぇ…でもヘタレですよねぇ。主人公にしては気が小さすぎるってゆーか」

………いつの間にか話し込んでいた。


451 :げんしけんの一年前9:2006/06/09(金) 22:30:05 ID:???
会「…こんな感じで、いつものんびりやってるから。活動方針はその都度決めていくけど、強制しないし。自分の好きなことをやってくれたらいいんだよ。」
斑「はー、そうなんスか。漫研とかアニ研は活動内容が『強制』っぽい感じして、入りづらい感じがしたんですよ。」
会「すぐに決めなくてもいいんだよ。掛け持ちも自由だしね。今は僕と、君の一つ上に掛け持ちで入ってる人がいるけど、他の人は卒業しちゃってね。少人数でゆっくりとやってくつもりなんだよ。」
斑「でもいいすね、ゆっくりできる方が。ていうかこの部屋、自分家を思い出して落ち着くんですが(笑)この大量の漫画とかフィギュアとか」
会「落ち着く、ってことは君も立派に同類だね」
斑「ハハ、そうすね」

帰り道、部室を出てから大学の門をくぐる頃には、もう自分の中で結論が出ていた。
そう、俺はこういうサークルを求めていたのだ!



次の日。斑目が再び現視研の部室に行こうとすると、アニ研の会長に呼び止められた。
ア・会「よう、君、斑目君だったっけ?」
斑「ああ、どうも。」
ア・会「この前見学来てくれた時の説明なんだけど、ちょっと堅苦しかったかと思ってさ。普段はゲームしたりしてのんびりもやってっから、良かったらまた見学来いな。」
斑「ん〜…それなんすけど、もう決めたところがあるんスよ。」
ア・会「あ、そうなんだ。どこ入るの?」
斑「現視研なんですけど」
ア・会「…ああ〜!あそこかぁ…。」
アニ研の会長は何か言いたげな様子で苦笑いする。


452 :げんしけんの一年前10:2006/06/09(金) 22:30:53 ID:???
斑「? 何スか?」
ア・会「あそこねぇ、確か原口が在籍してたんだよ。最初現視研に入ってたハズだ。」
斑「え、原口っていうとあの…」
ア・会「そうそう。俺らは『ハラグーロ』って呼んでんだけど。」
斑「うわー…(汗)」
ア・会「あ、でもめったに顔出さないらしいよ、たまーに漫研とかうちにも出没するくらいで。」
斑「はあ…。そうなんすか」
(どんな人なんだ、あの人。ろくな噂ねーな)
漫研の会長と間違えて声をかけたときのことを思い出した。
(でも妙に貫禄あったよなあ。敵に回したら危険なタイプかも…)
ア・会「しかし、現視研ねぇ…。あそこって、大した活動やってないからつまんないと思うよ。廃部にならないのが不思議なくらいだ。なんで無くなんねーんだろ?そしたらもっとウチに予算…」
斑「………はあ。」
ア・会「…あ、ごめんね。ま、でも退屈になったらまたウチに来るといいよ。じゃね。」
そう言ってアニ研会長は歩いていった。
斑「………………。」
(う〜ん、あの会長もちょっとなあ………。)

やっぱり現視研の方が自分には合っている、と思った。
ただ、一つ気になることがある。『ハラグーロ』のことだ。


453 :げんしけんの一年前11:2006/06/09(金) 22:31:40 ID:???
再び現視研の部室にやって来た。
扉をノックすると「どうぞー」という声が聞こえる。
開けると、現視研の会長ともう一人、眼鏡をかけて髪を無造作に後ろで束ねた女の人が座っていた。

(…?誰だろ。現視研の先輩?)
斑「あ、ども…」
会「やあ。」
「へえ、ここにも新会員、入ったのねえ。」
その女の人はおっとりした声でそう言った。

会「いや、まだ入ったわけじゃないんだ。仮入部だよ。」
斑「あのー?」
会「ああ、この人は児文研の会長さん。」
児・会「どうも〜。」
斑「どーも。あの、ちょっと聞きたいことがあるんスけど。」
会「何かな?」
斑「ええと、ここのサークルの先輩で、原口って人のことで」
会「ああ、原口君か。最近部室に来ないなぁ。」
斑「…どーゆー人なんですか?漫研でも、アニ研でも、ちょっと何か…」
会「あまり怖がることないと思うよ。」
斑「え、はあ…。」
会「めったに部室に来ないというのもあるけど、彼はそこまで脅威ではないよ。周りからは「ちょっとやっかいな人」という認識をもたれているようだけれど。
…少なくとも。彼のためにウチが潰れるようなことはないよ。」
会長は穏やかな表情でそう言った。


454 :げんしけんの一年前12:2006/06/09(金) 22:32:36 ID:???
妙に説得力がある言葉だった。このひょろりとしていて頼りなさそうな色白の会長から、何故こんなに説得力を感じるのか分からなかった。

会「…さて。僕はちょっと児文研の部室に用があるから、行ってくるよ。少しの間待っててくれるかな?15分くらいで戻ってくるから。適当に部室の漫画でも読んでて」
斑「え?はい」
会「じゃ児文研の会長、行こうか」
児・会「ええ、アレですね。」
児文研の会長は、そう言って少し笑った。


部室に一人取り残された斑目。
(…15分、って言ってたな。)
実は昨日から気になっていたのだ。この部屋、あらゆる漫画やゲーム雑誌、フィギュア、エロゲーのポスターがある。
…ということは、必ず同人誌もどこかにあるだろう。それも男性向けなのが。

(さーて…きっとどっかにしまってあるハズだ。どこかな?)
ワクワクしながら、まずは本棚の下の棚を開けてみる。
(んー、あったけどエロじゃないのか。あとは………。)
ロッカーに目をやる。
(あれかな…?あれはアヤシイな!!)
ロッカーまで歩いていき、扉を開く。


455 :げんしけんの一年前13:2006/06/09(金) 22:33:28 ID:???
(お?おおおおーーー???)
戸を開けると、そこには大量の男性向け同人誌が。
(スゲーなこの量!ほほう、けっこう古いのもあるんだな…。
お、これは某大手の!!持ってないのがあるぞ、売り切れで手に入らなかったんだよなー。ここで出会えるとは!!
ほほー。ほーほーほー…)


夢中で読んでいると、後ろでガチャリ!と扉の開く音がした。


斑「!!!!!!」
思わずビクッとなり、持っていた同人誌をバサリと落とす。
振り向くと、会長がこっちを見ていた。
斑「あ、いや、これはその!!」
とっさに何か言いかけたが、頭が真っ白になって言葉が続かない。

会「やあ、ばっちり罠にハマってくれたね。」
会長がどこか嬉しそうにそう言った。
斑「…え?は?………罠???」
会「窓から外を見てごらん。四階の窓があるだろう。」
おそるおそる窓から上を見てみると、さっきの児文研の会長が手を振っていた。
会「あそこは児文研の部室なんだ。毎年罠をしかける手伝いをしてもらってる。」
斑「…あの〜〜〜、罠ってなんのために…。」
会「面白いモンで、罠をしかけるとたいがい君と同じような行動をとってくれるんだ。オタク度が濃ければ濃いほどね。」
斑「………………………(汗)」


456 :げんしけんの一年前14:2006/06/09(金) 22:34:19 ID:???
会「という訳で、君も十分濃いオタクだ。入会してみたらどうかな?」
斑「…てゆーかもー、会長!人が悪いっすよ!!」
会「そう?」
斑「あービックリした…。わざわざこんなことしなくても入会する気だったんですから!」
会「そりゃあ良かった。…ちなみに、その同人誌」
斑「へ?な、何すか??」
会「貸し出し自由です。どうぞ」
斑「………………」

斑目は拳を握り、笑顔でこう言った。
斑「借りていきますとも、遠慮なく!!」



…彼は筋金入りのオタクであった。


………………………


457 :げんしけんの一年前15:2006/06/09(金) 22:36:17 ID:???
2001年、春。
彼、田中総市郎は考えこんでいた。
入ったばかりのサークルで、目論見が外れたからである。

高校の頃は五分刈りだったが、今は伸ばした髪を後ろでひとつにまとめ、顔には無精ひげを生やしている。
少し低めの背だが、がっしりした体つきなので実際より大きく見える。
毛深いので手の指まで毛が生えている。

(うーん…やっぱ無理か…。)
彼はオタクサークルの中でも特に大規模な活動をしているアニ研に入ったばかりだった。
アニメ作りに興味がないわけではない。ただ、今の彼の興味は『コスプレ』一色に傾いていたのだ。
手先の器用な彼は、高校の頃はずっとプラモ作りに情熱を燃やしてきたが、最近コスプレにハマってから、自分で着るコスを自分でも作り始め、最近では仲良くなったレイヤーの女の子にもたまに作るようにまでなっていたのだ。
そのために服の勉強まで独学で始めて、大したハマりようだった。
作るようになってからは、自分で着るよりも誰かに着てもらうことに、より喜びを感じるようになっていた。

…だから、制作費がかかる。
アニ研は規模が大きいサークルなので、制作費を振り分けてもらえないかと思っていたのだ。
相談してみたのだが、アニ研会長は了承してくれなかった。

田「アニメのコスプレなんかどうでしょう?アニ研の宣伝にも使えますよ」
ア・会「そおね〜…コスプレね〜…。ていうか、アニメの制作で予算ぎりぎりなんだよねー」
田「そうなんですか?」
ア・会「どっかから予算回して欲しいくらい…ろくに活動してないトコとかさ。無駄なサークルがいっぱいありすぎんだよね。
…だからね、悪いけど予算は割けないよ。個人でやる分にはかまわないけどさ。」
田「…そうですか。」


458 :げんしけんの一年前16:2006/06/09(金) 22:37:18 ID:???
アニ研の部室でそんな話をしていると、コンコンと扉をたたく音が聞こえた。
ア・会「はい」
ガチャリと扉が開いて、入ってきたのは、痩せた色白の存在感の薄い男だった。

会「やあ、久しぶり」
ア・会「ああ、どうも久しぶりです。珍しいですね、現視研の会長がここに来るなんて」
会「うん、ちょっとね。ここの部室は広くていいねえ」
ア・会「まーそんだけ部員がいますからねー」

田中は横で聞いていた。
(…何かウチの会長、現視研の会長に対して妙な言い方するな。嫌味みたいな…)
会「そういえば原口君、最近こっちに来てる?」
ア・会「そういや昨日は来てましたけど。原口君、現視研の部員でしょ?ヒマだからってあんまり来られても困るんですよね。そっちで活動するよう言って下さいよ」
会「でもねぇ、原口君が来ないから言いようがないんだよ。」
ア・会「はー、そーですか。」
会「…それに、原口君はアニ研で『活動』するほうが好きなんじゃないかな。」
ア・会「…え?」
会「アニ研で、『君のもとで積極的に活動』するのは、原口君の自由だからね。
ウチも、それで『困るようなこと』はないし。」
ア・会「………………」
アニ研会長は急に黙ってしまった。


459 :げんしけんの一年前17:2006/06/09(金) 22:38:25 ID:???
会「…ホラ、掛け持ちするのは本人の自由だからね。」
ア・会「え、ええ!そうっすね!」
アニ研の会長は妙に焦り始めた。
会「ただ、原口君は自分の思ったままに動く人だから、『君にはちょっと扱いにくい』…と、思うかもしれないけど。
まあアニ研も大きいサークルだから、それほど『急に困るようなこと』にもならないよね。」
ア・会「え!?あ、そ、そうですね!」
現視研の会長はそこまで言ってから、「では僕はこれで」と扉を開けて出て行こうとした。
そのときぽつりとつぶやく。
会「…共存、という言葉っていいよね。僕は好きだな。」

そうして部室を出て行った。

田中は横で会話を聞いていた。
(…? 何だったんだ?よく分からん話だったな…。特に、最後の「共存」って何だ?)
ふと見ると、アニ研の会長は冷や汗を流して固まっていた。
田「会長?どうしたんですか?」
ア・会「いや…何でもない…」


(現視研か…大きいサークルで予算がまわしてもらえないとなったら、むしろ小規模の、あまり活動してないトコの方が…)


460 :げんしけんの一年前18:2006/06/09(金) 22:39:15 ID:???
数日後、田中は現視研の部室の前まで来ていた。
(ここか…。さて)
部屋の中から話し声が聞こえる。オタク話が白熱しているようだ。
扉をノックすると、ぴたりと声がやむ。「どうぞ」とさっきの会長の声が聞こえた。

部屋には現視研の会長と、痩せた眼鏡の目つきの悪い男がいた。
田「あの、見学させてもらってもいいでしょうか?」
会「君は確かアニ研の…」
田「ええ、そうなんですが、このサークルにも興味を持ったので。掛け持ちさせてもらえたらと思って。
あ、俺は田中といいます。」
会「そう、掛け持ちも歓迎だよ、田中君。どうぞそこに座って」
田「ども」
田中は薦められるままに入り口付近の椅子に座った。

斑「アニ研?」
目つきの悪いほうが声をかけてきた。じいーっとこちらを見てくる。
田「あ、そうだけど?」
斑「同じ1年で近藤っているだろ」
田「…ああ!いるなぁ。知り合い?」
斑「いやそーじゃねーけど、俺アニ研に一度見学行ったことあってさあ。近藤ってヤツがすごい積極的に質問してたのを覚えてたからさ」
田「確かにあいつはすごいやる気マンマンだったな、始めから」
斑「アニ研の人ってみんな近藤みたいなん?」
田「いや?そんなことねーけど。俺もあそこまでできんし。」
斑「フーン…」


461 :げんしけんの一年前19:2006/06/09(金) 22:40:06 ID:???
そいつは考えこんだ。
会「アニ研に入りたくなった?」
会長がそいつに聞いた。
斑「いやいや、そんなことないスよ。俺はここの方があってます」
田「………」
斑「あ、自己紹介すんの忘れてた。俺ぁ斑目ってゆーんだけど」
田「まだ…??どんな字書くんだ?」
斑「『まだらのひも』の斑に、あとはこの目」
そいつは自分の目を指して言った。
田「まだら…『まだらの蛇』の斑か」
斑「そーそー。…俺の前世はヘビだからな!」
イタいことを言い出した。

(変なヤツだな。…部員こんだけ?あとはあの原口かー。ふうん…アニ研の会長の言うとおり、潰れないのが不思議だなあ。)
そんな風に思った。
田「あの、活動ってどんなことを?」
会「そうだねぇ、去年までは会誌を作ってたから、今年もやる?」
斑「へえ、そんなの作ってたんスか?」
会「うん、こういうのなんだ」
そう言って会長は棚から薄いコピー本を取り出した。
会「メバエタメという名前で、内輪の中で配るような本なんだ。内容はそのときサークルの人がハマっていた漫画やアニメ、ゲームなどを一人ずつが分析して、『どこに萌えるか』を文章化する。人によっては漫画やイラストなども描いていたよ。それぞれの自由でいいんだ。」
斑「『どこに萌えるか』…。あーそれで『メバエタメ』なんすね。」


462 :げんしけんの一年前20:2006/06/09(金) 22:41:04 ID:???
田「…あの〜〜。コスプレ、なんかでもいいんですか?」
田中がおそるおそる聞くと、会長と斑目は「?」という顔でこっちを見た。
田「いや実は俺、コスプレをするんですけど。自分で衣装作ったりとかも。」
会「へえ、それは本格的だね。」
田「…話聞いてると、『萌え』であればどんな活動でもいいのかと思って」
会「うん、かまわないよ。コスプレも現代文化のうちの一つだしね。」
田「ああ、そうっすか。それ聞いて安心しました。」
斑「へえ、君コスプレすんの?」
田「ああ、俺もするけど、最近は知り合いのレイヤーに頼まれて作ることのが多いかな。」
斑「どんなん作るの?」
田「そのときによって色々だなぁ。メイドさんのコスがいいって言われたら作るし、あとはゲームキャラとかも最近多いかな」
斑「ほお…本格的なんだなー。メイド服まで作れんのかー」
斑目はひたすら感心していた。


その日、帰ろうとして部室から出た田中は、廊下で現視研の会長に呼び止められた。
会「田中君、うちでコスプレ作る活動したいんだよね」
田「…ええ、まあそうです。」
会「この前、アニ研の会長と君が相談しているのが聞こえたから。制作費のことで話し合ってたね?」
田「え?ええ、そうですが…」
(活動費目当てって思われたかな…?実際その通りだし…)


463 :げんしけんの一年前21:2006/06/09(金) 22:41:45 ID:???
内心焦る田中とは逆に、現視研の会長は飄々とした態度で言った。
会「制作費のこと、ウチなら何とかできるよ。現視研内の活動の一環として使ってもらってもいい。
その代わりできるだけウチの部室で活動してもらえればね。」
田「ああ!そうですか。助かります!」
会「もちろん掛け持ちでもかまわないよ。その辺は君の判断に任せるよ。」
田「わかりました、ちょっと考えてから…」
会「うん、ゆっくり考えてね。」

現視研会長はそう言って、ゆっくりと廊下を歩いていった。

(…現視研だったらコスプレの活動だけにしぼれるな。スゲー理想的な話だ………。
………………それにしても。)

(何かうまく話が進みすぎな気も…。あの会長、ちょっと何者か分からないとこがあるし。
…でも大丈夫か。敵に回さなかったらきっと…。)


帰り道、部室を出てから大学の門をくぐる頃には、もう自分の中で結論が出ていた。
そう、俺はこういうサークルを求めていたのだ。


464 :げんしけんの一年前22:2006/06/09(金) 22:42:43 ID:???
次の日、田中は再び現視研の部室の前にやってきていた。
アニ研の会長とはさっき話をつけてきた。
現視研の会長に誘われた、と説明したら、アニ研の会長はひきつり笑いを浮かべてこう言った。
ア・会「そ、そうか。うん、君が思うようにしてくれていいよ。向こうに移籍するんだね?現視研の会長によろしく!」
…こんな感じだった。何かビビってるように見えたのだが、何故かはわからない。

斑「へえ、ウチに入ることにしたのか。」
田「うん、さっきアニ研にも抜けるって言ってきたから。これからよろしく」
斑「おう、よろしく〜。」
現視研の部室でそんな話をしていたとき、斑目の携帯が鳴った。『機動戦士Tガンガル』のオープニング曲だった。
斑目はすぐに携帯を開いて通話ボタンを押す。
斑「はい、あ…はい、わかりました。」
ニヤリと笑い、立ち上がる。
斑「ごめ、急に友達から呼び出されてさ。そのうち会長も来ると思うし、待っててくれるか?」
田「ああ、そう」
斑「じゃーな」
そう言って部屋から出て行った。

(ふー…。と言ってもヒマだな………。とりあえずこの辺の漫画でも…。)
本棚に手を伸ばす。ふと、棚の一つ下の段に並べてあるフィギュアに目がいく。

(………………………………。)
手にとって眺めてみる。


465 :げんしけんの一年前23:2006/06/09(金) 22:43:32 ID:???
元々プラモやフィギュアを作るのが好きな田中、つい細部までチェックしてしまう。
(このフィギュア、悪くねーんだけど…胸のラインがイマイチなんだよな。横から見たらちょっとたれ気味なのが………。
お、太洋堂のだ。ここのはいつも作りがキレーなんだよなあ。色のつけ方もいい。このつなぎ目なんかの処理も…。
…懐かしー、美少女剣士ブレザームーンだ。ほほー…。いい出来だなあ。)
つい逆さにしてスカートの奥を眺めてみる。
(ここの細かいしわの表現が………………)


夢中で眺めていると、後ろでガチャリ!と扉の開く音がした。


田「!!!!!!」
思わずビクッとなり、持っていたフィギュアを落としそうになった。
斑目が携帯を持ったまま、部室に入ってきていた。
田「あ、あービックリした!早かったな」
慌てて取り繕うが、斑目はニヤリと笑う。
斑「逆さにしたら何が見えた〜〜〜?女体の神秘でも見えたかな〜?」
田「!!!え、いや、な、何が??」
斑目はくいっと窓のほうを指差す。
斑「窓から外見てみ、正面の上」
慌てて言われたほうに目をやると、向こうのサークル棟の、一つ上の窓から現視研の会長が手を振っていた。
斑「あそこは児文研の部室で、会長同士が知り合いなんだ。いやー、見事に罠にハマってくれたな!」
田「わ、罠??何のために…」
斑「会長曰く!!罠をしかけるとたいがい君と同じような行動をとってくれるんだそうだ!オタク度が濃ければ濃いほどな。」
田「はあ…」


466 :げんしけんの一年前24:2006/06/09(金) 22:44:15 ID:???
斑目はやたら嬉しそうにしながら言った。
会「という訳で、君も十分濃いオタクだ。入会してみちゃどうかな?」
田「だから入会するって…」
田中は恥ずかしさにがっくりと肩を落とした。


斑「あ、ちなみに、このロッカーには男性向けの同人誌がいっぱいです。」
斑目はロッカーをガチャリと開けた。
斑「貸し出し自由です!どーぞ」
田「…うん、また今度…。」
斑「オススメはここのサークル」
田「おお、これ持ってないやつだ。お!?これってプレミアついてるやつじゃないか?」
斑「そーそー、何気にいいのそろってるだろ?」
田「…じゃ、コレ借りてくわ」



…田中も十分濃いオタクであった。


………………………


467 :げんしけんの一年前25:2006/06/09(金) 22:45:10 ID:???
2001年、春。
彼、久我山光紀は悩んでいた。
サークル見学に行く勇気が、なかなか出なかったからである。

(…う〜〜〜ん………。見たトコ、漫研もアニ研も部員が多そうだったなあ………。
ちょっと入りづらいなぁ…。俺、大勢人がいるところだとあんまり喋れないし………。
少人数でまったり活動しているトコってないもんかなぁ…?)

そうこう考えているうちに4月の半ばになってしまった。
少し焦り始めた久我山は、ようやく重い腰を上げたのだった。

見た目はかなりでかい。背が大きくて、横幅もでかい。(自分でもちょっと気にしている。「ブーちゃん」と言われたときは半ば本気でダイエットを考えた。実行はしなかったけど。)
よく「山が歩いてるみたいだな」と言われる。(そのくらいなら許す。)
巨体のわりに気が小さく、自分でもおとなしい性格だという自覚がある。人ごみだと声が通らないのであまり喋らないようにしている。

…とりあえずサークルの見学に行ってみよう、行かなきゃ始まらない、とようやく決意して漫研とアニ研へ行ってみた。

………………そして思ったとおりの人の多さと活発な活動風景に、すっかり入る気を無くしてしまったのだった。


468 :げんしけんの一年前26:2006/06/09(金) 22:45:57 ID:???
(……だいたいなんで全員漫画描かなきゃいけないんだよ。描けない人は入っちゃいけないのかよ。)
久我山は心の中でキレていた。
漫研の会長と話をして、強制的な感じがしたので正直引いたのだった。
(…そりゃあ、イラストとか描くのは好きだけど………。人に見せられるほど上手くないしなぁ………。
自信ないしなぁ………。漫画ってちゃんと描いたことないしなぁ…………。)

アニ研も似たような感じだった。
はあぁ…とため息をついた。



ふと、漫研で「現視研っていうサークルがあるんだけど、知ってる?」と聞かれたのを思い出した。
同じ一年で、確か高柳っていう奴だった。
知らない、と言うと高柳はこう言った。
柳「俺の知り合いが入ったんだけど、そこなら少人数で、とくに活動も強制されないから楽っつってたよ。そいつも元々漫研の見学来てたんだけど、絵が描けないからってウチに入るのはやめたから。」
久「へ、へー…。しょ、少人数かー…」

少人数であること、そして何より『漫画描け』と強制されないところに魅力を感じたのだった。


469 :げんしけんの一年前27:2006/06/09(金) 22:46:53 ID:???
次の日、久我山は現視研の部室の前にいた。
初めてサークル見学に来たときはどこでも緊張する。
おそるおそる扉をノックした。

「どうぞ」と声がしたので、恐々ドアを開ける。
そこにはメガネの色白の男と、同じくメガネの妙に細長い男と、がっしりした体つきの毛深い男が座っていた。
久「ど、ども。あ、あのう、け、見学…してもいいですか…?」
どもりながら小声でようやく言った。

会「見学?いいよ、どうぞ座って」
斑「ほい」
メガネの細長いほうがたたんであった椅子を広げて薦めた。
久「あ、ど、ども」
久我山はよっこいせ、という感じで巨体を椅子に沈めた。
田「この時期に見学?他に何かサークル入ってるの?」
がっしりした男が聞いてきた。
久「い、いや。まだ。け、見学なら昨日行ったけど。漫研とアニ研」
斑「ほほう、漫研とアニ研はどーだった?」
久「う、うーん…ちょっと人が多すぎて、なじみにくい感じだったな…」
斑「そーだろそーだろ!人が多けりゃいいってモンじゃねーよなー!」
その細長いメガネはやたら元気良く喋った。


470 :げんしけんの一年前28:2006/06/09(金) 22:47:34 ID:???
会「それでここに来たんだね?ウチは少人数だから」
久「え、ええ。ま、漫研の人が、現視研を薦めてくれたんです」
斑「へー!誰に?」
久「えーと…た、高柳っていう1年」
斑「ああ、ヤナかー。あいつが薦めてくれたのかー。へー」
久「し、知り合い?」
斑「ああ、ちょっとな。最近良く喋るからさ、あいつと」
会「さて、自己紹介しようか。僕はこの現視研の会長をしています」
田「俺は田中。」
斑「田中はすぐ覚えてもらえていいよな。俺ぁ斑目ってゆーんだけど」
久「ま………?」
斑「ほらやっぱコレだよー。えーとな、『まだらの蛇』の斑に、目ん玉の目で、マダラメ!!」
久「あ、ああ、斑目っていうのか。」

自己紹介が終わったあと、斑目たちは雑談を始めた。
会「さて、今日の会議の議題は何にする?」
斑「昨日はくじアンでしたね。だがあえて言おう、今日もくじアンでいくと!!」
田「またくじアンの話か(笑)まーそれもアリだな。」

少年マガヅンで連載されている「くじびきアンバランス」の話を始めた。
斑「連載3回目にして、早くも人気出てきたみたいっすね。」
田「あの会長と副会長の関係がいいよな。」
斑「お、田中は会長萌えか〜〜?」
田「いやーどっちかというと副会長かな。」
斑「ほほう、副会長もツルペタぶりがなかなか。…しかし、やっぱりあの『忍先生』なくしてツルペタは語れんだろう!!」
田「いつの間に乳の話になったんだ(笑)」
会「忍先生はメガネをかけたら別人のように性格が変わる、というのが面白いね。」
斑「そう、あれは外界への抵抗と自己抑圧の象徴なのであります!理性と本能のせめぎ合いとゆーか…」
久我山はずっと聞いていて、妙に居心地の良さを感じた。こんな話でマッタリ過ごすのが理想だったのだ。


471 :げんしけんの一年前29:2006/06/09(金) 22:48:15 ID:???
会「…さて、斑目君、ちょっといいかな」
会長がそう言って立ち上がる。
斑「はい?…ああ!そーですね、行きましょうか。じゃーちょっと出てくるわ。しばらくしたら戻ってくっから」
田「あいよ」
そう言って会長と斑目は出て行ってしまう。
田「フー…」
久「な、なんかいつもこんな感じでやってんの?」
田「ああ、いつもこんなんだ。基本的に自由」
久「サ、サークルとしての活動は?」
田「特に決まってないなー。自分の好きなことやってたらいいって感じで」
久「は、ハハ。そうなんだ。て、適当だな」
田「…適当だとやりにくい?」
久「い、いや、むしろ歓迎」

そんな話をしていると、田中の携帯が鳴り出した。
昔のFFの戦闘曲だった。
田「はい。…ああ、わかった、うん、すぐ行くから。
すまん、俺もちょっと友達に呼び出された。会長達がそのうち帰ってくるから、その辺の漫画でも読んどいて」
久「え?あ、ああ。分かった」

部室に取り残される久我山。
(………うーん…。みんなどっか行っちゃったなぁ………。漫画…漫画かぁ。)


472 :げんしけんの一年前30:2006/06/09(金) 22:48:55 ID:???
最新号のマガヅンがあったので、くじびきアンバランスのページを開く。
(………………………。)

机に置いてあった落書き長に手を伸ばし、山田の絵を描き始める。
…最初は普通に模写をしていたのだが、そのうち好きなように描き始めた。
服を描かなかったり。体をしならせてみたり。

だんだん興が乗ってきて、ちょっとエロい感じの絵になってきた。
落書き帳の紙をやぶり、どんどん描いていく。



夢中で描いていると、後ろでガチャリ!と扉の開く音がした。


久「!!!!!!」
慌てて机の絵を隠そうとして手を伸ばすが、反動で机が揺れ、何枚か床に落ちてしまった。
斑目が携帯を持ったまま、部室に入ってきた。
久「………………!!!」
驚くやら恥ずかしいやらで声が出ない。斑目が床に落ちた絵を拾い上げ、ニヤリと笑う。
斑「ほっほ〜〜〜?………エロいな!!」
田「………………!!!」
真っ赤になって何も言えない久我山。


473 :げんしけんの一年前31:2006/06/09(金) 22:49:58 ID:???
田「へえ、結構上手いなあ」
斑「なぁ!こりゃあ戦力になるぜ!」
田「何の戦力だっての」
斑「向こうから見てたときは何の絵かわからんかったけど…」
久「む、向こう??」
久我山がようやくそれだけ言うと、斑目はくいっと窓のほうを指差す。
斑「窓から外見てみ、正面の上」
慌てて言われたほうに目をやると、向こうのサークル棟の、一つ上の窓から現視研の会長が手を振っていた。
斑「あそこは児文研の部室で知り合いが多いんだ。君もまんまと罠にハマってくれたな!」
久「え?は?わ、罠………?」
斑「会長曰く!!罠をしかけるとたいがい君と同じような行動をとってくれるんだそうだ!オタク度が濃ければ濃いほどな。」
久「こ、濃いオタク………??」

斑目はやたら嬉しそうにしながら言った。
会「という訳で、君も十分濃いオタクだ。入会してみちゃどうかな?」
久「………はぁ…。」
久我山は椅子に座り込んだ。

斑「いやーそれにしても、このリサのエロ絵はいいな、マニアックなとこが(笑)」
田「こっちの絵、山田と蓮子をからませるとは…。蓮子×山田じゃなくて山田×蓮子かぁ(笑)」
久「…い、いいからもう返してくれよ」
斑「おお、スマン。でもけっこう上手いな君」
田「おお、絵もなかなかかわいい感じの絵だし。」
久「え、そ、そうかな…?」
誉められるとまんざらでもない久我山であった。


………………………


474 :げんしけんの一年前32:2006/06/09(金) 22:50:43 ID:???
会「風が吹くな………。」
その日、会長は一人で部室にいた。
あの新会員の三人は秋葉原の0時売りへ行ったのだった。

会「三人か………今年はよく入ったほうだな。これでしばらくは安心だ…。」
会長は独り言をつぶやいた。

ここ数年、ずっと廃部の危機に晒され続けていたのだ。
あの三人なら、現視研を潰さずうまくやっていってくれるだろう。

斑目君は意外と顔が広いので、他の部との情報交換や付き合いをしてくれるだろうし。
田中君は積極的に活動して、コスプレで現視研の特異性を出してくれるだろうし。
久我山君は得意の絵を描くことで、現視研の活動としていつか大きい仕事をすることになるだろう。

きっと現視研にとって無くてはならない三人になる。
そして、現視研の基礎を一から作っていってくれれば………。

そうすれば、さらに来年、新入生が入ったときにもきっと………。


『初代』会長は一つ大きく息をついた。

                     END


475 :あとがき:2006/06/09(金) 22:51:57 ID:???
32レス、長文スンマセン。笹原たちが入ってくる一年前の様子を、斑目たちの言葉の端々から妄想して書いたモンです。あんまり萌え分がありません。(笑)男ばっかです。
あと、オタク談義があまり濃くなくてスイマセン。自分がヌルオタなもんで(汗)

斑目が二代目会長に選ばれた理由、そして笹原が会長になった後に原口の提案を断ったときに、原口が斑目に最後「いいんだな?」と念を押した理由って、
斑目が他の部の人と交流があって周りが見えてたからだと思うのです。原作で地味にそういうつながりがちらほら見える部分があって、そこまで踏み込んで書けたらよかったんですが。
さすがにこれ以上長くなるのは…(汗)
ここまで読んでいただきありがとうございましたー。


476 :マロン名無しさん:2006/06/10(土) 03:38:07 ID:???
久々に来てみれば、増えてる増えてる!
>801小隊
いよいよ次回「終局である」ですか。
SSスレ屈指の大風呂敷、いよいよ畳む時が来ましたか。
楽しみに待ってます、最終回。
それにしてもマダラメ、カッコ良過ぎ。
惚れちゃいそう…

>ラジヲのお時間
板に付いてきましたね、於木野さん。
次回はマムシさんとベンジャミンさんも一緒ですか。
楽しみにお待ちしてます。
それにしてもいつも思うことだが、この作者の人度胸あるなあ。
俺、八割ぐらいは作品出来てからでないと、怖くて予告打てない小心者なんで、毎回凄いなあと思う。

>げんしけんの一年前
来た見た買ったの喜多商店!
(関西ローカルなネタなんで、分からん人は流して下さい)
待ってましたよエピソードONE!
いやー細かいとこまで作り込んでますな〜GJ!
ちゃんと3人の入会までの経緯が、原作とリンクしてるのがお見事。
それにしても初代会長、思いっきり怪しいな。
他のサークルの人の引きっぷり、まるで必殺シリーズの元締ですなあ。

477 :マロン名無しさん:2006/06/10(土) 03:42:52 ID:???
>>げんしけんの一年前
ふむー、面白かった〜。
三人が三人とも罠に嵌められていく様がいいですねえ。
特にフィギュアに愚痴る田中がいい。
三者三様だけど、集まるべくして集まったこの三人は
初期げんしけんの面白さも支えていたんだなと実感しました。

478 :440:2006/06/10(土) 10:22:47 ID:???
>>441
おー、作者氏だ。反応いただいて光栄至極。斑目作品のどっちかの人かな?
思えば俺が同人始めたのは送り手と受け手の距離がとても近いことに魅力を感じたからだった。笹原が
コミフェスで有名作家と簡単に話してたよね、あんな雰囲気。商業誌にはそういう人間関係は不可能だ
からね。『げんしけんの一年前』今朝読ませてもらいました。いい感じです、面白かった。乙。

田中って登場当初はもっとハジケてたよね。眼鏡を外して突っ込み待ちの斑目を実況してたときとかさ。
たぶん荻を意識し始めた笹と同じで、ある時期から大野さん好みのキャラを被ったものと推察しているw
そんな意味からも、本性看破されて恥をかく田中という描写は素敵だ。オタクはこうでなくちゃね。
ってゆーかげんしけん、やはり斑目世代以前は人いねえw

斑目はいろんな人に愛されとるね。MS乗りに仕事人、耐える男からネコまでなんでもこなす芸達者ぶりw。
誰か探偵モノ書かないの?文中にも出てきた奴とか。彼がホームズ役で、毒蛇殺人のトリックを暴く!

冗談はさておき元気も勇気も出た。では投下します。本文9レス『夕立』でございます。
あっそうそう、先に言っとくわ。

すいませんすいませんすいません。

479 :『夕立(1/9)』:2006/06/10(土) 10:23:51 ID:???
 9月もまもなく終わろうというある日の夕暮れ、大学前駅の改札で笹原と千佳は思案していた。
「降りだしちゃったね」
 大きな紙袋を片手に下げた笹原が千佳に笑いかける。千佳もハンドバッグと一緒に、アニメ
ショップの手提げ袋を持っている。
 今日は秋葉原まで二人で買い物に出ていたのだ。天気予報では降水確率はないに等しく、
空気も乾燥していたのだが。最後の最後、帰り着く直前のモノレールの窓を強い雨が叩き
始めたのは、隣の駅を出発した直後だった。
「うーん、距離的には部室が一番近いんだけど……いつやむかも判らないしなあ。ねえ荻上さん」
「はい?」
「ここからなら荻上さんちより俺の部屋のほうが近いんだけど、来る?」
「え、笹原さんの家ですか?」
「うん」
「……ええ……いいですけど」
「よし、決まり。ちょっと全力疾走しなきゃならないけど、ごめんね」
「いえ……あ」
 笹原が被っていた帽子を千佳の頭に載せたのが合図だった。紙袋を懐に抱え込み、目配せをする。
千佳も笹原の帽子を被りなおし、荷物を抱きしめた。
「行こう!」
「はっはい」
 雨粒が地面で弾ける。滝のような土砂降りの中、二人は走り出した。

480 :『夕立(2/9)』:2006/06/10(土) 10:24:41 ID:???
****
「ひゃー、冷てー。まいったな、あと5分もってくれたらよかったのにね」
 笹原は玄関で上着を脱ぎ捨て、バスルームに手を伸ばしてタオルを2本とった。1本を千佳に
手渡しながら、もう1本で自分の髪の雨粒をぬぐう。
「天気予報、アテになりませんね」
 千佳も入り口に荷物を置き、タオルを手に笹原に続いて部屋に入る。布のキャップは雨具の
役を果たせず、いつもはツンと上を向いている筆の穂先が力なくうつむいている。頬から顎
にも水滴が流れ落ちる。キャミソールの上に来ているシャツはぐっしょり濡れて、体に張り
付いてしまっていた。
「夏の終わりの夕立って感じだね。あ、荻上さん」
「あ、はい」
「そこお風呂だから。シャワー浴びてきなよ」
「えええっ?や、あ、あの大丈夫ですから」
「大丈夫じゃないでしょ。一応ちゃんと掃除もしてるし、このままじゃホントに熱出ちゃうよ」
「でっでも、あのその」
「荻上さん!」
「!……っはいっ」
 千佳が恥ずかしがるのは笹原にも充分解っていた。本当のことを言えば、こちらだってこんな
提案は正直どうかと思っている。まるで下心満載にしか聞こえないではないか。……まあ、
もちろん期待がないといえば嘘になる。
 だが、今の笹原にとってはそのことよりも、純粋に彼女の健康を案ずる気持ちのほうが大き
かった。千佳に会うときにだけ努めている「強気モード」の表情を作り、見つめる。効果は
抜群だ。両肩に手を置くと千佳はうつむいて身を固くするが、避ける様子はない。

481 :『夕立(3/9)』:2006/06/10(土) 10:25:34 ID:???
「体だって冷えてきてるじゃない。いいから暖まってきなよ」
「……はい。ありがとう、ございます」
「タオルは積んであるの使っていいし、シャンプーとかは俺のでもいいのかな……ああ、
恵子がなんか持ち込んでたからそれ使えばいいか。濡れた服は乾燥機使って、洗濯機の上」
「すいません」
「謝ることないでしょ。あいつ今夜は渋谷でこっちには来ないってメール来てたし、気ぃ
使うことないからね」
「はい、……じゃ、じゃちょっとシャワーお借りしますね」
 ようやく顔を上げ、頬を染めて笑顔を見せてくれる。笹原はほっとした。男の本能が
千佳を抱きしめようとするが、かろうじて理性がそれを押しとどめる。
「ほんとゆっくりしてきてよ。俺その間にこの部屋を何とかしなきゃならないし」
「ありがとうございます。でもお気遣いいらないですよ……じゃなくてなにか隠そうとしてる
んですか?」
「いっ、い、いいから行ってきなって」
「……はい、じゃ」
 玄関からバッグをとり、千佳の後姿がバスルームのドアを閉めるのを見守る。と、ドアが
また開いた。
「あの、笹原さん」
「ん?あれ、なにか要るものあった?」
「……覗かないでくださいね」
「のぞ……っ。……はい」
 ふたたび閉じられたドアを見つめて笹原は立ち尽くしていた。覗こうなどとはもちろん考えて
いなかった。が、今のやりとりのおかげで想像力に火が点いてしまったのだ。頭の中にもやもやと
妄想が浮かんでは消える。すでに二人は恋人同士だ。彼女の華奢な体を抱きしめたことも1度や
2度ではない。だがこの新しいシチュエーションは刺激的だった……いま俺の部屋に荻上さんが。
荻上さんが俺んちの風呂に。
「……ふう。俺も着替えよ」
 肩にかけたタオルで顔を拭く。頬が火照っているのが冷たいタオル越しにわかる。クローゼット
に向かいながら頭を振ると、耳の穴からピンク色の雫がこぼれ落ちたような気がした。

482 :『夕立(4/9)』:2006/06/10(土) 10:26:20 ID:???
****
 一方。千佳もバスルームの中で、頬を押さえていた。
「……わっ私……笹原さんの部屋に……」
 笹原の部屋に来たのは今日が初めてだ。初めてお互いの気持ちを確認した日からすでに半月近く
になるが、そのうち半分は笹原の泊り込み研修で会うことができなかった。残りの日々も外で
デートして別れるか、笹原が千佳の部屋を訪ねるパターンだった。こんなに急に彼の家に上がり
こむなど、千佳は想像もしていなかったのだ。
「やべー、私なんも用意してねーぞ」
 今日のデートも、デートというよりそれぞれの「買い出し」が主目的で、買い物と食事を
終えたら二人とも自宅に帰る予定だった。大量の同人誌とゲームソフトを抱えてお洒落な
レストランというわけにもいかず、開店直後の客のいない居酒屋で二人で顔を見合わせ苦笑した
のがほんの数時間前のことだ。
「っくしゅ。いけね」
 体の奥に寒気を覚え、我に返る。本当に風邪をひきでもしたら笹原に申し訳ない。
 髪のゴムを外しながらバスルームを見回す。千佳の部屋よりかなり狭いが、バスとトイレは
別になっている。彼女の立っている脱衣所には洗濯機と乾燥機、服やタオルの積まれた棚が
隙間なく並んでいた。案の定というか笹原はこういったものの整理に頓着しないらしく、天井は
洗濯紐が張り巡らされ、クリーニング店のハンガーにかかったままのシャツやスラックスが
イタリアの裏町みたいにぶら下がっている。部屋の奥にもクローゼットが見えたので余裕が
あるときには片付けるのだろうが、この状態でカビに侵食されなかったのが奇跡に思える。
 綿のブラウスを脱ぎ、体にまとわりつくキャミソールも頭から抜いた。いつも履いている
カーゴパンツもすっかり雨にぬれ、手にとってみるとずっしりと重くなっていた。ちょっと
考えて、ソックスもまとめて乾燥機に入れ、「スピード乾燥」のスイッチを入れる。
 ごぅん、と鈍い音を立てて機械が動き出した。

483 :『夕立(5/9)』:2006/06/10(土) 10:27:10 ID:???
 下着は乾燥機には入れないことにした。乾いたタオルをもう一枚借りて、重ならないように
包んでおく。さっき笹原から渡されたタオルを体に当てたまま、千佳はふとドアのほうを見る。
「うわ、笹原さんちですっ裸だよ、私……」
 私、ここでなにしてるんだ、千佳は考える。恋人の部屋でシャワーを浴びる。することは
ひとつでねえか。いやいや、と頭を振って考え直す。笹原さんはそんなこと考えてない。私を
心配して、シャワーを勧めてくれたんだ。自分もびしょ濡れだったのに。いやらしい考えが
あったら、「一緒に入ろうよ」くらい言うだろう……強気の笹原さんなら。
『ダメですよ、斑目先輩。風邪なんかひかれたら僕が困る。一緒にシャワーでも浴びましょう』
『そんな……雨の中走らせたのは笹原、お前じゃないか』
『それがどうかしたんですか?まるで先輩の服を脱がせるために僕が雨まで降らせたみたいですね』
『笹原……』
『ひどい言いようだなあ、僕は魔法使いじゃないんですから』
『笹原……寒いよ』
『こんなに濡れて……でも大丈夫ですよ斑目先輩。僕がちゃんと暖めてあげますからね、魔法
なんか使わずに』
「っくしゅ。ああ、やべえやべえ」
 あわててユニットバスに移り、シャワーの蛇口をひねる。晩夏の生ぬるい水道水はすぐに
熱湯になった。
****
 笹原が服を着替え、女性に見せるには不都合な物件がいろいろと散乱していた部屋の体裁を
どうにか整え終えた頃、バスルームのドアノブがかちゃりと音を立てた。そちらへ顔を向けると、
千佳がドアの向こうから笹原を探していた。赤くほてった顔と一緒に湯気と、乾燥機の少々
耳障りな音がわずかな隙間から流れ出てくる。
「……あっあの笹原さん、ありがとうございました」
「あ、上がった?ちゃんと暖まった?もっとゆっくりしててもよかったのに」
 落ち着かない笹原は立ち上がり、千佳の方へ足を踏み出す。

484 :『夕立(6/9)』:2006/06/10(土) 10:27:48 ID:???
「あのそれで、服……」
 口ごもりながら、ドアをあける。
「服?ああうん、恵子が色々置いてってるからジャージでも着……て……」
 笹原の体がこわばる。笹原は言おうとした言葉の通り、彼女は妹の部屋着でも見くつろって
出てくるものと思っていた。
 よもや。
「……これ、お借りしましたんで」
 よもや、素肌に笹原のワイシャツを着込んで現れるとは考えてもいなかった。
 桜色に上気した肌。ボタンふたつ外した襟元からは鎖骨のくぼみが見える。袖をぐるぐると
捲った腕。考えてみればちょっとしたミニスカートよりよほど丈があるかもしれないのに、
シャツの裾から覗く素足は驚異的な引力をもって笹原の視線を捕らえ、離さなかった。
 ごぅんごぅんごぅんごぅん。乾燥機がやかましい音を立てる。なにかうまいことを言おうと
思うが、乾燥機の音が邪魔をして何も考えられない。顔全面に汗をかいているのが自分でも判る。
今の自分に比べれば、雨に濡れて帰って来たときは砂漠のスルメより乾燥していたに違いない。
「……お」
 やっと一言搾り出したとき、千佳は笹原に抱きついてきていた。
「あまり見ないでください……恥ずかしいです」
 さっき頼もしいアシストを見せた理性は乾燥機が干上がらせてしまったようだ。笹原は渾身の
力で千佳を抱き締める。
「痛っ」
「あ……っご、ごめん」
 口では詫びるが、腕から力が抜けない。必死で別のことを考えようとする笹原の頭の中に
ようやく浮かんだのは、ゲームのコマンド選択画面だった。
 画面の中央には彼の見ている風景。千佳が頬を染めてこちらを見ている。セリフ窓には
『あまり見ないでください……恥ずかしいです』
 コマンドの選択肢は3つあった。
 ・押し倒す
 ・押し倒す
 ・押し倒す
 ああ、一本道じゃないか。なんだこのクソゲー。てゆーか俺か。あーもう。
 彼は頭の中でコマンドを選択し、実行キーを押した。

485 :『夕立(7/9)』:2006/06/10(土) 10:28:24 ID:???
****
 乾燥機の音はずいぶん前に聞こえなくなっていた。笹原と千佳は万年床の布団にくるまって
抱き合っている。
「びっくりしたよ。荻上さんがあんなカッコで出てきて」
「……改めて言わないでください。すっごい恥ずかしかったんですから」
「でもなんでまた……」
「んー……秘密です」
「えー」
「秘密ですっ!」
 笹原の胸元にもぐりこみ、千佳はつぶやいた。さっきちょっと感じていた寒気もなくなった。
笹原の体温が彼女を暖め続けてくれたおかげだと思った。笹原の体調のことも気になっていたが、
……こんなに元気なら心配はいらないだろう。
****
 ところで、時は少し戻る。
 タオルで体を隠して、千佳は脱衣所を見回してみた。天井まであるスチール棚には、それぞれの
段に少しづつの衣類。乾燥機を使ったあとの一時置きだろうか?さすが男、だいぶ古い物も
一緒になっているようだ。
 見渡しながら、気づいた。棚の半分は彼の妹の服だ。
 ジャージやジーンズ、シャツなどがきちんと畳まれて控え目に入っている。あんな風体でも
ちゃんと女の子だったというコトか。兄に自分の服を洗濯させるなどということはいろいろな
意味で考えていないのだろう、自分で洗って自分でしまっているのだ。ピンときて、ブラウスを
つまみあげてみる。意外とおとなし目なショーツとブラが見えた。普段着用ということか。
 なんで?千佳は思った。なんでこの妹は兄の部屋をクローゼット代わりにしているのか。
自分には弟がいるが、自分の下着を(たとえ見向きもしないだろうと判っていても)あいつの
部屋に置こうなどとは思わない。相手を馬鹿にしているのだろうか。
 浴室へ入ってまた思う。壁ぞいに並んだシャンプーやボディソープ……が、二組。あの
ケバい女はそんなに頻繁にこのバスルームを使っているというのか?笹原のものとおぼしき
トニックシャンプーや青いボトルのボディソープは隅に追いやられ、花のイラストのシャンプーと、
けっこう高いコンディショナーが壁の中央に堂々と座している。あんな痛んだ髪にこんなもの
無駄じゃない。なに考えてんだあの小娘は。

486 :『夕立(8/9)』:2006/06/10(土) 10:29:00 ID:???
 湯温を調節し、体を流す。雨と汗が、水滴となって千佳の体を滑り落ちていく。頭から
シャワーを浴びながら、千佳は男性用のボディソープを手に取った。ちらりと恵子の
ソープに視線を投げる。
「ローズウォーター?……ふん、見たことないヤツだけど、私フローラル系よりシトラス系の
ほうが好きなんだよな。こっちのほうがまだ雰囲気近えし」
 独り言をつぶやきながら、ボトルのすぐ上にかかっていた垢すりタオルを使う。恵子のもの
らしい柔らかなボディスポンジはあえて見なかったことにした。
「シャンプーかあ。いっぺんトニックシャンプーって使ってみたかったんだよな。……うわ、
効くー」
 リンスは……帰ってからもう一度入浴すればいいだろう。トニックシャンプーで一瞬
『笹原……』『斑目先輩』というやり取りが聞こえてきそうになったが、そこは目をつぶって
振り払った。
 ユニットバスの壁に、後から貼り付けたような鏡があった。これも恵子だろうか?ある日
これを発見して、大家にばれるのを心配している笹原の困惑顔が目に浮かぶようだ。四角い
ガラスの向こうに、裸の千佳が映っていた。
「……私」
 鏡の中の自分の顔に手を当てる。この間、笹原さんが触れてくれた頬。笹原さんがキスして
くれた唇。笹原さんが引き寄せた肩。笹原さんが抱きしめてくれた腰。
 笹原さんは私を好きだと言ってくれた。こんな私を。ひとにひどいことをして、変わりたいと
願って、それでも変われない私を。笹原さんは私を変えてくれるの?私を支えてくれるの?私は
笹原さんになにがしてあげられるの?
「私……笹原さんのことが……」
 その先は言葉にはせず、想いを飲み込む。笹原さんは解ってくれたし、飲み込んだ想いは
私の体の中でどんどん育っていくのだ、と思った。私の体で育った想いは、いつかまた笹原さんに
捧げよう。彼が望むことはなんでもしてあげよう。彼が私を受け止めてくれたように、私も彼を
受け止めよう。
 出しっぱなしにしたシャワーで、バスルームに湯気が立ち込めているのに気づいた。やべ、
水道代すげえぞ、きっと。

487 :『夕立(9/9)』:2006/06/10(土) 10:31:41 ID:???
 あらためて体を流して湯を止めたとき、恵子のシャンプーがまた視界に入った。
 ムカ。
 それを無視し、体を拭いて脱衣所に戻る。洗面台にも鏡がある。鏡の前には……歯ブラシが2本。
笹原のものと恵子のものだろう。お風呂グッズと着替えまで置いている彼女なら、歯ブラシくらい
当たり前にあるはずだ。コップだって2個並んでいるではないか。
 ムカッ。なんで歯ブラシがお揃いなんだ。グリーンとピンクの柄。コップの形は違うが、色が
歯ブラシと合わせてあるのがムカつく。歯磨きチューブがひとつしかないのがムカつく。
頭に血が昇って、おあつらえむきのシチュエーションにも笹×斑妄想さえ出てこない。
 歯ブラシの横に笹原のシェーバー。さらにその横には女性用の剃刀が置いてあった。
 ムッカ〜。
 部屋に来た当初は、傘を借りて早々に帰ろうと思っていた。シャワーを勧められた後も、
服が生乾きでもいいから帰らせてもらうつもりだった。しかしたった今、千佳には別の目的が
できていた。
 脱衣所の服に目を走らせる。目当ての衣装はすぐ見つかった。
****
「……笹原さん、もう眠いですか?」
 布団の中で、千佳は目をつぶっている笹原に声を掛けた。彼はすぐ目を開けた。
「ううん?まだ……10時前じゃない。どうしたの?」
「雨……やんだみたいですね」
「ん、そうだね」
「あの、おなか、空きませんか?」
「そういえば。晩飯早かったからな……あー、冷蔵庫空っぽだよ。ごめんね、そこのコンビニで
何か買ってこようか」
「じゃあ、一緒に行きませんか?お買い物」
「え、待っててくれていいんだよ?」
「一緒に行きたいです」
「……うん、そうしようか」
 着替えて部屋を出るとき、千佳は笹原に言った。
「あの、……歯ブラシとかも……買いたいんですけど」
 ドアノブを持ったままこちらを見た笹原の顔が、みるみる真っ赤になる。
 空では月も恥じ入っているのか、消えそうに細くなりながら二人を照らしていた。

488 :『夕立(あとがき)』:2006/06/10(土) 10:32:57 ID:???
もういちど言っときます。ほんとすいません。彼女にアレ着せたかっただけです。
創文活動にえらいブランクがあったし、書いてみればみたでSSスレの一般的なフォーマットとは
全然違うしで正直投下を3日くらいためらっていた。書き上げてなかったらまたいち読者に戻ってた
かも知れん。
イキオイって重要だね。

俺の脳内設定では笹も荻も大学至近に在住。モノレール沿いに笹は大塚方向へ約5分、荻は動物園
側に7〜8分あたりの住宅地にいるんではないかと思ってます。本来あまり大学に近いと友人たちの
たまり場になってしまうのだが、二人それぞれの交友範囲の狭さや、現視研部屋の近さが奏功して
おのおの独立を保てている、とかそんな感じ。

さて、言い訳はしません(←しとるやないか)。この際スルーも受け入れる覚悟ですが、どなたか
コメントでもいただければうれしく思います。

では。よろしくお願いします。




    ゼンブミテル...

    -○| ̄|_





489 :マロン名無しさん:2006/06/10(土) 11:15:56 ID:???
>夕立
いやいや、面白かったw
特に「ムカつく」のあたりは
頭に怒りマークを付けてるオギーが眼に浮かんで
可愛いったら、もう(*´Д`)ハァハァ

3択もGJw
変な所で強気が染み付いてきてるな、笹ヤン

"ピンク色の雫"がちょっと判りにくかったかな、と。
耳から〜のくだりが悪かったのか、一瞬素で病気か!? と思ってしまった

490 :マロン名無しさん:2006/06/10(土) 13:27:37 ID:???
>夕立
もうこういうのはお腹いっぱい、と思ってたが読んでみると萌えるね、やはり。
笹やん、そういうのは三択とは言わん!
妹に嫉妬したり、彼氏のワイシャツ攻撃を敢行したり、荻上さんの素の女の部分が妙にリアルだ。
経験談かな?


491 :マロン名無しさん:2006/06/10(土) 18:00:40 ID:???
>夕立
笹荻空白の半年間きましたね。いいですねえ〜。ラブラブですねえ。
荻上さんが笹妹に嫉妬するのがナカナカ。女ってどーして身内にまで張り合ってしまうのか…。orz
笹やんが思わず理性吹っ飛ぶくらい可愛かったんですね、Yシャツ姿。
よければこれからもSS書いてってくださいねー。

492 :マロン名無しさん:2006/06/10(土) 18:35:09 ID:???
>夕立
荻上さんのYシャツに鼻血を吹いた件について。


493 :マロン名無しさん:2006/06/11(日) 00:42:05 ID:???
帰宅したら女の子がコスプレして待っているって、超 Y・U・M・E ダヨネ!

494 :マロン名無しさん:2006/06/11(日) 05:42:49 ID:???
>488
Yシャツはいいものだよね♪ と言うわけで勢いで描きました。
よろしければ挿絵として貰ってやってください。
( 。 。)ノ⌒☆
http://ogilove.breeze.jp/cgi-bin/bbsnote2/data/IMG_000262.png
 しっぽ@「荻ラブ」げんしけん絵板 より

495 :494:2006/06/11(日) 05:46:29 ID:???
頭のhを削るの忘れてる・・・すみませんorz

496 :夕立の人:2006/06/11(日) 06:03:26 ID:???
ああ!こんなにご感想が!おまいら本当にありがとう。
非オタのニョーボが目覚ます前に書き込み敢行してみる。

>>489
いきなり感想とともにアドバイスまで貰えるとはどれだけ幸運なんだ俺は。
ピンク色の雫、すまねえ、俺ポエム志向なんだよな。推敲するときに結構注意してるんだけど、
俺んなかで全然普通の表現のつもりになってたw
あとから読んでみると全体の中でも浮いてます。次から気をつけますね。

>>490
SSまとめ読んでてもこういう方向の話は多いんだろうな、とは感じてた。
でもね、オイラこーゆーのしか書けません><
あとこんな萌える経験ないし。欲望の状態であるからこそ作品になったのだと自分を慰めてみるw
オタ兄を蔑む妹がいたのだけは笹と同境遇な。

497 :夕立の人:2006/06/11(日) 06:04:27 ID:???
>>491
8.5巻計画とかも作品群自体は好みのシチュ多し。。何人もの人が言ってるように、月刊誌ペースで
リアルタイム進行すると、読者としては欲求不満が残りますね。それがココや、俺の創作活動の
原動力になっている面も少なくないと思います。
読んでのとおりクドい文章ですが、もう一本くらいはいけるかな?

>>492
谷岡ヤスジ乙。服に付いてるようなら早く洗え。

>>493
つ【放課後キッチン】

>>494
伏して感謝○| ̄|_ 一連の初書き込みでココまでしてもらえるなんて昇天しそうです。
ありがとうございます。家宝にします。


俺って褒めれば伸びるタイプだし(オイ、もう少し頑張ってみますね。本当に皆さんどもでした!!

498 :マロン名無しさん:2006/06/12(月) 21:45:23 ID:???
感想ありがとうゴザイマス〜〜。
>>476
関西圏なのに喜多商店が分からない…orz エピソードONE、喜んでいただけてよかったです。
3人の描写、笹原と比較して書いたのですが、違いを出すのが楽しかったです。
アニ研の会長はオリキャラですが、わかりやすい悪役になっちまいました。初代の引き立て役として書いたので。
>>477
田中を書くときに、田中の特徴である「プラモやガレキが好き」というのを取り入れて書きたかったのです。
1巻あたりはこの3人で話を回してましたね。
>>478
えー実はどっちの話も…メガネの人ばかり書いてます。恐縮です(汗)でも嬉しかったです。
具体的な感想いただけて感謝。参考になります。
>ある時期から大野さん好みのキャラを被ったものと推察
なるほど、それは気づかなかった。ああ、そういや「コスプレHする人は信じられない」とか、大野さんに合わせた発言してましたねえ。4コマで。

探偵の斑目…推理モノは好きだけど書けないorz
「見た目はリーマン、中身はオタク、その名も迷探偵・マムシ!!」…って感じのSS、誰か書けたら書いてください…(他力本願)

499 :マロン名無しさん:2006/06/14(水) 19:17:03 ID:???
探偵もの……田中メイン(コスプレ探偵田中総一郎・フクロウ事件簿)で書いたけど、SSアンソロ本用なので、スレには登場しません。ごめん。


500 :マロン名無しさん:2006/06/14(水) 22:14:05 ID:???
>>499
おおお、まじですか!アンソロ楽しみにしてますw

501 :マロン名無しさん:2006/06/15(木) 01:03:39 ID:???
どうも。
久しぶりにSSを書いたので投稿したいのですが、

今更ハルコさんものです。

本当に今更です。波に乗り遅れること甚だしいです。皆さん、彼女を覚えていますか?
覚えていなくても投稿してしまいます。

絵版の絵の設定とストーリーを下敷きに書いております。
絵師の方々、どうかどうかご容赦のほどを。

一応、シリーズ化するつもりで書いてまして、今回は序章です。

それではいきます。宜しくお願いします。


502 :アルエ:2006/06/15(木) 01:05:08 ID:???
「よう」
ところてんを咥えながらハルコは笹原に声をかけた。
ちょっと長めのショートヘア。タマゴ型レンズのメガネ。口元に八重歯が覗かせて、含むように笑っている。
笹原は少し表情を崩してリュックサックを下ろした。
「珍しく居ましたね」
「何だそれ、居ちゃ悪いか」
ハルコはちゅるるんとところてんを啜り上げる。
「どうすか、就活の方は?」
「ダメ…。死にそう…」
ハルコはそう愚痴って残りのところてんをガッガッと喉の奥に掻き入れる。
テーブルの上にはコンビニのレジ袋と食べたてのサラダの容器があった。
「よくそんなで持ちますね。腹減りません?」
「今ダイエット中だから。就活のストレスで太っちゃったからね」
笹原は少し体を引いてハルコの上から下まで視線をパーンさせてみた。
が、太ったようには到底見えない。いつも通りのスマートな肢体が椅子の上にあった。
「ちゃんと食った方がいいっすよ」
「食ってる食ってる」
ハルコは適当な返事を返してペットボトルの烏龍茶をゴクゴクとラッパ飲みした。
笹原は呆れた顔でそれを見ていたが、気を取り直して鞄から大きい封筒を取り出した。
実は一刻も早くこの話題で盛り上がりたかったのだ。
「それよかコレ。コミフェス受かったっすよ」
笹原の上気した顔に、ハルコも思わず息を飲む。大きく目をパッチリと開いて、封筒を凝視した。
「うわ…。マジで来たんだ…。受かってんの?」
「ええ、だから受かってますって…」
「うわ〜〜〜〜〜〜」
受け取った封筒をためつすがめつハルコは眺める。これがコミフェス当選通知を届けた封筒か。
早速、笹原共々来るべきコミックフェスティバルに思いを馳せる。
「久我山には言ったの?」
「ええ、すぐケータイで。『これでマジに本作んなきゃ』って」
「あはははは」


503 :アルエ:2006/06/15(木) 01:05:48 ID:???
笑いながら、ハルコは体がムズムズっとしていた。これまで行って買って帰るだけだったコミフェスに、
本当に売る側として参加するなんて、何だかどうにもヘンな感じで落ち着かない。
(これも笹原のお陰か。いや、笹原を指名した自分の慧眼のなせる業か。なんてね。)
「で、中身どうする? もう結構描いてあんの? 久我山のエロイラスト」
「そーすね…。かなり流用すると思います…」
心なしか、笹原は照れ臭そうに応えた。
(まあ、一応、ハルコさんも女の子なわけだし…)
久我山秘蔵のスケッチブックを眺めながら、透視するように中のイラストを思い浮かべる。
(これはまだ見せない方がいいかな…)
ハルコは食事のゴミをレジ袋に放り込んで目の前を整理すると、すいっと笹原の前にその長い手を差し出した。
まるで笹原の心を読んだかのように。
「見せなさい、それ」
「ダメですよ。それは久我山さんの許可とらないと」
「いいじゃん、見せてみい。噂によると普段の絵より上手いらしいじゃない?」
どこの噂だ…。朽木君か!
「エロイラストですよ? 勝手に女性に見せたら久我山さんが可哀想じゃないすか」
「エロ同人誌を部室に散乱させてるくせに、こんな時だけ女扱いか! いいから見せんかい、笹原!」
言うや否やハルコはスケッチブックをむんずと掴み、力づくで引っ手繰ろうとする。
負けじと笹原も引っ張る。曲がりなりにも男の腕力。易々と奪い取られはしない。
引っ張っても引っ張っても手を離さない笹原に業を煮やしたハルコは、もはや直接打撃の敢行を決断した。
笹原の手や腕を、叩く、ツネる、噛む…は流石にやらなかったが、ビシビシと手にダメージを与える。
「こら、いい加減に離しなさいよ!」
「イヤですよ。いたッ! ちょ、今のはマジで痛かったですって! 血豆になってますって絶対!」
「うっせー! 離さんお前が悪いのじゃ。男のくせにケチケチすん…」

ガチャリ




504 :アルエ:2006/06/15(木) 01:06:20 ID:???
「……………」
「…………………」
「………」

ガサゴソ
     ガサゴソ

「……やあ、荻上。こんにちわ」
「……こんにちわ」
二人は嫌な汗を笑って誤魔化した。
荻上は二人を一瞥するとほんのりと頬を赤らめた。
「今日は帰ります…」
「おうっ。ちょっと待ってくれたまえ荻上っ!」
ハルコは超ダッシュでドアノブを掴んだ。
「この空気のまま帰らんでくれ」
「いや…、でも…。お邪魔でしょーし」
荻上はチラリと笹原の方を見る。
笹原はニハハと苦笑いしていた。
「いやいやそーゆーことではないのだよ。まま、座って座って…。ちゃんと説明するし。ほら笹原!」
「実はさ、ほら、これ。今度の夏コミなんだけど…」
こうして、現視研コミフェス初参加の次第となったのです。


505 :アルエ:2006/06/15(木) 01:06:57 ID:???
部室に集った現視研会員の顔はどれも笑顔であった。まあ、春日部君は苦笑いであったが。
なぜならば、今日は現視研の永いのか短いのかよく分からない歴史において
極太明朝体で刻み込まれるべきイベントが発生していたのだ。
「いや〜、まさかマジで受かっちまうとはな〜」
田中は感慨深そうに言った。
「ホントですね〜。あ。私コスプレして売り子しましょうか?」
「え……、それいいの? モノが男性向けだけに……、ちょっとセクハラっぽくない?」
「あ、私全然気にしません」
大野も嬉しそうに笑っている。
「私、副会長やりますから、春日部君が会長で…」
「なんでだよ」
春日部君はみんなの高揚にやや乗り遅れ気味である。
「オギッペやれよ」
「ヤですよ」
荻上の顔が赤いのはヘンなあだ名に照れたからか、それとも初めてのコミフェス参加がやっぱり嬉しいからなのだろか?
「私は描くの忙しいんです!」
むむ…、っと大野はちょっと残念気に唸った。そして荻上から横に視線を滑らせる。
「じゃあハルコさん! コスプレしましょう!」
「じゃあって何よ。それにもうコスプレはいいよ。もうやんない」
「えー! じゃあ私は誰とコスプレすればいいんですかっ!!」
「一人でやんなさい、一人で」
ハルコは呆れたように腕を組んで溜息を漏らす。ハルコさんの頬も赤かった。
コスプレというとどうしても学祭の思い出が頭をよぎる。
なんやかんやで春日部君と参加することになったペアコスプレコンテスト。
テレまくりの自分としぶしぶ顔の春日部君。漫研提供の素材からこっそりプリントしたその写真が今も引き出しの奥にしまってあった。
人知れず取り出しては、『めちゃくちゃ恥かしかったけど、あれはあれでいい思い出なのかも』と思ったり。
「いいじゃん。ハルコさんやんなよ」
回想にいい気持ちで浸っていたハルコを春日部君の鶴の一声が呼び戻した。


506 :アルエ:2006/06/15(木) 01:07:32 ID:???
「ちょ、ヤーよ! 何でコスプレしなきゃなんないのよ!」
一見、余裕があるふうに見せて言い返したが、嫌なタイミングの春日部君の一言にハルコの心臓は早鐘を打っていた。
それを見透かしたように春日部君はニヤリと笑う。
「ハルコさん…。絵、描けたっけ?」
「う、それは…」
でもそれは真琴ちゃんも一緒であるわけで…。
「元会長ですよね、ハルコ先輩」
「うう…」
真琴ちゃんまで…。
「まあ、無理強いはできないですけどね」
嗚呼、ありがとう笹原。やっぱりお前はいいヤツだ。それでこそ会長に推挙した甲斐があるというもので…。
ハルコの心中での賛辞を他所に、笹原は何か誤魔化すように笑いながら、
「まあ、やってくれるとありがたいっすけどね。ほら…、売り場も目立つだろうし…」
うそーーーん。笹原、お前もか!
「会長がこう言ってるよ〜、ハルコさん」
春日部君は背もたれに体を預け、すでに勝利者の余裕を漂わせている。
ちくしょう。
ハルコはギッと春日部君を睨む。春日部君も睨み返す。

…………………、ぷいっ。

照れてしまって視線を外した。
「あーあれだ、アタシ就職活動あるし。コスプレする暇なんて…」
「クガピーは就職活動しながら原稿描くのかあ。えらいなー」
「うう……」
何が『えらいなー』だ。そこはむしろ『えらいネェー』だろ!と見当違いのツッコミを入れても状況は変わらず、
「ま、今回は俺やらないよ。ていうか、コミフェスいかねーし」
「ううううう……」
「やるよね? ハルコさん」
「………はい、やります」


507 :アルエ:2006/06/15(木) 01:08:16 ID:???
「わああーーー、ホントですか!」
大はしゃぎの大野とガッツポーズの田中を、ハルコは恨めしそうに見つめた。
そして春日部君を見つめた。
あー、やっぱりなぁ。春日部君には勝てないなぁ。これが惚れた弱みなのかなぁ。
そんなことを思いながら。


「よぉ〜〜〜。コミフェス受かったってぇ?」

うわっ……………。

まさに『うわっ』だ。
笹原は最大規模の嫌な予感にじっとりと汗をかいた。
「あれ? 原口さん卒業したんじゃありませんでしたっけ」
憎々しそうにハルコが言った。笹原は顔を上げてチラっとハルコに目をやる。
ハルコはあさって方を向いて、原口を見るのも嫌そうにしていた。
「あぁ、今でもちょくちょく顔は出しててね――。そうだ、ハルコ」
と、原口は呼び捨てにした。
原口はのそのそとそのぽっちゃりした体を揺すってハルコの後ろに回った。
「どう就活。内定何個もらった?」
いつぞや大野さんにしたように、ハルコの両肩に湿った両手をかける。
「何だったら知り合いの会社でも紹介しようか? 僕は友達が多いからねー」
原口がそう言ったとき、ハルコの目が一瞬で鋭くなった。
「大丈夫ですよ。間に合ってます」
「あ〜、そう?」
その反応に原口は薄ら笑いを浮かべて、漸くハルコの肩から手を離した。
「ま、いいや。あのね、ちょっといい話あるんだよ!」
パイプ椅子に座った原口は雄弁に語りだした。


508 :アルエ:2006/06/15(木) 01:09:03 ID:???
「有名同人作家いっぱい紹介してあげるから」

          「まあ、10人は集まるから」

    「単純計算で売り上げ300万

                 「それはオナニーだよ」

        「おや逆ギレだよ」

「でもなあ〜〜。さっき挙げた連中のOK、もう取ってあるんだよな」


「……じゃ、分かりました」
笹原は言った。
「俺が全部断りますから、全員の連絡先教えて下さい」
原口が黙って、現視研のメンツも黙っていた。
春日部君は感心したように小さく声を上げ、荻上はびっくりした目で笹原を見つめていた。
ハルコは初めて見ような目で笹原を見ていた。
まさかここまでキッパリと言い切るとは。意外に男らしいんだなと思っていた。
「―――――ハルコ、それでいいんだな?」
ハルコは一瞬きょとんとして、少しだけ考えるフリをして言った。
「……ま、現会長がそう言ってるんで、勘弁してやって下さい」
それで原口は退散した。
「バイバーイ」
という捨てセリフを残して。


509 :アルエ:2006/06/15(木) 01:09:44 ID:???
部室のドアが閉まると、笹原はふはーっと溜息を漏らした。
「ササヤン、頑張ったなあ」
春日部君が素直に賛辞を述べる。
「さすが会長って感じか?」
「いやはや、つ、疲れたよ。まったくあの人は」
笹原は安堵の苦笑いを浮かべた。春日部君の助力を断った手前、何とかしなければと気張ったが、どうにか追い返せてほっとしていた。
「あーいう人、本当にいるんですね」
荻上が目を吊り上げている。
「まさにイヤなタイプオタクですね。嫌いです」
その横でハルコもほっとした顔で笑っている。
笹原はじっとハルコの顔を窺っていた。さっきの妙に親し気な原口の態度が気になっていた。
ハルコの原口に対する露骨な嫌悪の態度が、それに拍車をかけていた。
今はすっかり、いつもどうに楽しそうにしているけど、ハルコさんのあんな顔は見たことがなかった。

見たことがない。

その言葉で、笹原の頭にひとつの情景が浮かんだ。
初めて人前でコスプレして(それも高露出度の)、恥かしさで顔から火が出そうになっているハルコさん。
よく知っている人のはずなのに、別人のように見えたのはメガネをかけていなかったせいなんだろうか?
あれからすっとハルコさんが別人のままのような気がしていた。
そんなことを考えていたせいで、田中に肩を叩かれるまで、荻上と春日部君の会話の内容は全然耳に入っていなかった。


つづく


510 :マロン名無しさん:2006/06/15(木) 03:26:34 ID:???
>アルエ
面白かったです。ハルコさん大好きっすwすでにひとりのキャラとして確立されてますよねぇ。
ハルコさんは気丈な感じがする。元のキャラより。
いやー女性相手だと色々反応が変わって、それが面白かった。笹原とか、原口とか。
続き楽しみにしてます!

511 :マロン名無しさん:2006/06/15(木) 05:51:51 ID:???
ハルコさんネタ久しぶりっすねー。
ハルコさん好きの自分としてはうれしい限りです。
続き楽しみにしています!

512 :アルエ:2006/06/15(木) 21:37:26 ID:???
>510
どうもです。ハルコさんものをずっと書きたいと思いつつ、機を逸してこんな時期になりました。
頑張って書いていこうと思います。

>511
ありがとうございます。
自分もハルコさん好きなんで、かわいらしく書きたいです。

513 :マロン名無しさん:2006/06/15(木) 21:47:46 ID:???
おー、久々のはるこさんだぁ。
今後の展開が気になるなぁ。
そういえばタイトルの「アルエ」
バンプですねー。「アルエ」→「RA」→「ReiAyanami」→「綾波レイ」
って言うのは有名な話・・・ですよね?
はるこさんがそういう女性って事かなあ。

514 :アルエ第一話あとがき:2006/06/15(木) 23:28:50 ID:???
>513
おおう。バレてもた。
作中でハルコさんに綾波コスさせようと思ってたのに…。
まー、有名ですからねー。
この曲聞いてズカンとイメージが湧いたんで、そのままタイトルにしちゃいました。
恋に臆病なハルコさんのテーマソングって感じかな。

キャラ的には荻上さんのが綾波には近いですね。





515 :513:2006/06/16(金) 00:16:29 ID:VDSFNCIs
>>514
うぁ・・・余計なことを言ってしまいましたね・・・。
何はともあれ期待してます!

516 :マロン名無しさん:2006/06/16(金) 12:08:44 ID:???
週の前半はまじめに仕事してた。おひさ。

>>498
どっちもかYO!
あなたの作品に流れてるほんわかした空気感がいいな。あと斑目をカッコよくしようと必死なところも。
卒業式前日の本当にさりげない告白から「……告った」「えええ!!」「うお!?」までの展開は
情景が目に浮かぶようで心地よかったよ。またあんなのお願いします。俺はオギーが幸せになるように
祈りながらSS書いてるけど、あなたは斑目を幸せにしたいんだな。斑目幸せになるといいね。

>>アルエ
性転換キャラネタは正直得意じゃなかったんだが、読んでみたら面白かったんでまとめサイトのも
全部読んできたよん。サンキュー食わず嫌い克服できた。
ハルコさん、いい女だな。春日部(女)さんのいない現視研でアネゴ役を引き受けつつ、乙女ハート
の溢れそうなのに戸惑う姿。あっはっは、カワエエ。
本作もまだ導入部なので先行きが楽しみです。いくつか『仕掛け』がちりばめられてる気配がするんで
詳しい感想は後日にしますが、この世界の笹原はなんか変なフラグが立ってる気がするw

>>まとめサイト管理人
掲載ありがとうございます。なんか仲間入りできたみたいで超嬉P。

ほいで、俺ももういっちょ書き上げました。本筋とside-Bとで20レス弱の見通し。
テキストベースで16KBくらいだったら、まだスレ容量気にしなくていいのかな?前スレ480KBかそこらで
終わってたみたいなんだけど。
また明日の土曜日に会社で報告書書くフリして投下するつもりです。会社関係者見てませんように。
今晩のうちになにかご指示ご指導ご鞭撻いただくとか、ほかの誰かが大物投下してたりとかがなければ
このスレでいきますよ。

質問で終えるのも味気ないんで、一本小ネタいっときます。自分で振ってた『まだらめの紐』。
小ネタっつうからには推理ものではありません。オヤツにでもどうぞ。ではまた。

517 :『まだらめの紐』:2006/06/16(金) 12:09:54 ID:???
「笹原……いつまで俺の部屋に転がり込んでるつもりなんだ?」
「迷惑なんですか?僕はいつ出て行ってもいいんですけどね」
ベッドから起き上がり、素肌にワイシャツを着込む。
「いや、そんなわけじゃ」
「僕の担当作家がまさか斑目さんの隣の部屋に住んでいるとは僕も驚きましたよ。神の采配って
やつじゃないですか。心配しなくても原稿が上がったら帰りますよ。あと数日ってところでしょう」
「そうか……」
「(にやり)あれ、どうかしましたか?」
「いっいや、なんでもない」
ネクタイをゆるく締め、ベッドに座っている斑目の横にどっかりと腰を下ろす。
「しかし安普請のアパートだ。隣の先生、夜通しネタがネタがって叫んでるのがまる聞こえでしたね」
「安普請は大きなお世話だろう」
「ねえ斑目先輩、先輩の声も隣に聞こえてたと思いませんか?」
「……よせよ、そんな話」
「あはは、可愛いなあ斑目先輩は」
「くっ……」
「ねえ斑目先輩、おなか空きませんか?ゆうべあんなに運動したし」
笹原は斑目の肩に腕を回す。
「何か食事、作ってくださいよ。僕も腹ペコだ」

以上、『斑目のヒモ』でございました。


518 :おまけ。:2006/06/16(金) 12:10:42 ID:???
ガバッ。
「はうあ!!」
「荻上さん、どうしたの?荻上さん!」
ベッドから飛び起きた千佳を、隣で笹原が抱きとめる。心配そうな顔。
「汗びっしょりだよ。……怖い夢でも見たの?」
「……いえ……怖い夢は見てねすけど」
「そう?よかった」
彼の表情に笑顔が戻った。ベッドから起き上がり、腰掛ける。
「びっくりしたぁ。荻上さん急に大声出すんだもん」
「……すいません」
「お隣に聞こえるかと思っちゃったよ、な〜んて」
「!」
「うそうそ、ごめんね……ねえ荻上さん、悪いんだけど」
笹原は千佳の肩に腕を回す。
「何か食事、作ってくれないかな?腹ペコなんだよね、実は」
「!!!」

いねえよ、こんな笹原。


519 :マロン名無しさん:2006/06/16(金) 20:56:37 ID:???
>>518
>ベッドから飛び起きた千佳を、隣で笹原が
ああああ笹原おまえええええ

でもごちそうさまでした(両方)。

520 :マロン名無しさん:2006/06/16(金) 22:43:17 ID:???
>まだらめの紐
あっはっは!ワラタw 書いてくれてサンクスです。つーかそっちのヒモっすか!
荻上さんのワープがどんどん(このスレでは)妙にリアルになっていく件。
>>516
…斑目を幸せにするのは自分の永遠のテーマでやんす。今書いてるのもそっち寄りなんで…
またああいう感じで書けたらいいな、と。具体的な感想、本当に励みになるっす。

さて、確か500KBまでなんですよ。20レスだとぎりぎりですかねえ…?
次スレの季節ですかねえ…

521 :マロン名無しさん:2006/06/17(土) 12:27:46 ID:???
ちわ。来たよ。

>>519
おそまつさまでした。

>>520
荻上ワープオチ、大好きなんですけどねえ。やればやるほど彼女が大変なことにw

さて、いまページ左下のスレ容量は461KB。俺のネタが、すまん計算間違えてた24KB。
合わせて485KBなら、いいのか?いけるのか?数スレ前に溢れた奴いたぞ?

などと悩みましたが、書き込みが少ないのも俺の投下を意識してくれてるものと前向きに
捉えることにしました。他にも言いたい事はあるが、それは無事置けたら言う。

行きます!本文が13レス+side-Bで4レス『チェーン』。
よろしく〜。

522 :『チェーン(1/13)』:2006/06/17(土) 12:28:45 ID:???
 3月も2週間を過ぎようとするある晴れた火曜日。荻上千佳は現視研の部室で個人誌用のネームを
書いていた。だいぶ春らしく、暖かくなった午後。昼過ぎにはいつものように斑目がコンビニ弁当を
提げて現れ、いつものように中身のない会話をして昼飯を平らげ、会社に戻って行った。
 春休みも佳境で、キャンパスに人影は見当たらない。部室までの道行きで誰にも会わなかったし、
斑目が来なければ今日は1日言葉を発せずに終わったのではないか……そんなことを考えていた頃。
部室のドアノブが遠慮がちに回され、鉄扉がゆっくりと開いた。
 千佳が顔をめぐらすと、そこには笹原完士が立っていた。千佳を認めるとうれしそうに微笑むが、
眉間には疲れが見て取れるしスーツも皺だらけだった。
「あ、笹原さんこんにちは……なんか疲れてるみたいですよ?」
「や、こんにちは、荻上さん。徹夜あけなんだよ〜」
 笹原はパイプ椅子を引き出すと千佳の隣に腰をおろした。後ろの本棚に背中をもたせかける。
「え〜?なんでココ来てんですかぁ?帰ってお休みになったらいいじゃないですか」
「荻上さん今日部室で漫画描いてるってメールに書いてたじゃない。だからこっち来たら会えるかな
って」
「あ、ええ、ココでやるとネームの進みがいいんで。あれ?メールって言えば笹原さん、明日まで
カンヅメって書いてませんでしたか?」
「奇跡が起こったんですよ、それが」
 笹原は卒論提出後、週のほとんどを四月からのはずの勤務先に出社していた。実務研修という名目
だったが、要するに人手の足りない会社で一足早く雑用をさせられているのだ。週末からこちらは、
教育係の社員が担当している雑誌の締め切りに巻き込まれ、二人は電話とメールでしか会話していな
かった。
「先生に神が降りてきてさ、原稿上がっちゃった。俺は先輩と一緒にいたんだけど、あれにはオドロキ」
 ネームの段階で行き詰っていた作家に強力なインスピレーションが降ってわき、締め切り大幅超過
を覚悟していた原稿が一晩で完成したのだと言う。
「荻上さんもそんなことってあるの?」
「経験ないっすねえ。あはは」

523 :『チェーン(2/13)』:2006/06/17(土) 12:29:26 ID:???
 笹原は肩越しに、本棚から漫画雑誌を取り出して読み始めた。千佳の手はノートの上で忙しく動いて
いる。
「……だいぶあったかくなったねえ」
「そうですね」
「今描いてるのも個人誌?」
「はい。またゴールデンウイークに即売会出るんで、それ用なんですけど」
「ジャンルは?ハレガン?」
「そのつもりです。劇場版もDVD出ちゃいましたし、たぶん最後かなーとも思うんで」
「けっこう評判よかったんでしょ?なんか賞でもとれば、もうちょっといけるんじゃないかな」
 ……なんのことはない、とりとめのない会話。いつもこの部屋で交わされている心地よい雑音たち。
 千佳の瞳にふと影が差す。笹原に気づかれないように目をぎゅっとつぶり、それを打ち消す。
「あー、あと10日で卒業式かー」
 笹原がぼんやりと口にする。千佳の瞳に、ふたたび影がゆらめいた。
「……そうですね」
「もう毎日フツーに通勤してるから、むしろこっちに顔出せるほうが新鮮だよ、なんか。毎日ココに
来ちゃう斑目さんの気持ちが解るよーな、解んないよーな」
「笹原さんは……卒業したら、現視研にはもう来ないんですか?」
「え?いやー、来る気はあるんだけど、勤務時間メチャメチャだからねー。あはは」
「春日部先輩も」
「うん?」
「……もう、ほとんど新宿住まいだって言ってました。高坂先輩も仕事場で生活してるようなもん
だって」
 下を向いたまま話す千佳に異変を感じる。ペンは握っているが、なにも描いていない。
「私は毎日ここに来て……夕方まで原稿描いて……でも……誰も来てくれないんです」
「荻上さん……?」
「斑目先輩がお昼食べて帰ると、もう誰も来ないんです。笹原さんも、春日部先輩も、高坂先輩も、
大野先輩も。なんか……この世に私ひとりっきりになったんじゃないかって気分になるんです」

524 :『チェーン(3/13)』:2006/06/17(土) 12:30:10 ID:???
 ぎゅっと目を閉じ、搾り出すように話す。
「私。……卒業式が終わっても……4月になっても、なんにも変わらないんじゃないかって私、
思ってたんです」
「……」
「ここに来てれば、いつでも笹原さんの顔見られて……あと斑目先輩や、春日部先輩たちもちょく
ちょく来て、特になんでもない会話して。私はその横で漫画描いてて、……時々、笹原さんと斑目
先輩のこと妄想したりして」
「……あ、妄想は今でもしてるのね」
「朽木先輩がロクでもないこと口走って、春日部先輩にひっぱたかれたりして。……そんな」
 千佳が口ごもる。言葉の後半は細かくふるえていた。
「そん……な日が、ずっと続いてくって……お、思ってたんです。バカですよね私、昔のアニメじゃ
あるまいし、いつまでも同じ日が続くわけないのに」
 笹原は千佳の肩に手を置く。千佳は彼の胸にしがみつき、突っ伏してしゃくりあげた。
「みんな……いなくなっちゃう」
「……」
「前に大野先輩が言ってたこと、だんだん身にしみてきました。私がここに来たとき、私をここに
おいてくれた人たちが、どんどんここに来なくなっちゃう。私だけが現視研に取り残されてく……私
だけがこの部屋につなぎとめられてる」
「荻上さん」
「……」
 くたびれたスーツのズボンの膝に、暖かい水滴が落ちる。
 自分の脚に覆いかぶさる千佳を抱いたまま、笹原は彼女の頭をなでていた。千佳の肩の震えが
おさまるまで、何度も、何度も。
 何分経ったのだろうか。いつか千佳の呼吸は規則正しく、穏やかなものになっていった。

525 :『チェーン(4/13)』:2006/06/17(土) 12:30:49 ID:???
「……そういえばさ。初めてうちに来たときの荻上さん、ヤバかったよなー」
 笹原は急に明るい口調で話し始めた。千佳は笹原の膝の上で目を開ける。
「覚えてる?一言目が『オタクが嫌いな荻上です』って。ありえなくない?」
「あ、あのときは……っ」
 思わず身を起こして抗議する。
「大野さんとも真っ向対立だったよね。春日部さんは春日部さんでオタク呼ばわりされて怒ってたし」
「だってウチなんかにいるんですよ?オタクだって思うじゃないですか」
「それと朽木君。考えてみると結構がんばってフォローしようとしてたんだよね、あん時さ。……
まあ、結果は伴なわなかったわけだけど」
「暴力振るう人なんか最低です」
「盗撮もされたし?」
「ハイ!」
「今もウザい?」
「とーぜんです!……まあ、前よりは幾分マシになったんじゃないですか?」
「おー、高評価だー」
「幾分です。イクブン」
「荻上さん」
 笹原は千佳の顔を覗き込んだ。
「荻上さんとみんなの関係。俺とみんなの関係。俺と、荻上さんとの関係」
「……?」
「全部さ、現視研が中心になってるじゃない」
 にっこり笑ってみせる。
「俺は4年前に現視研に来て、みんなと仲間になることができた。荻上さんもここに移ってきて、
まあ色々あったけどさ、今はみんな仲いいじゃない。……それに、荻上さんがうちに来なかったら、
俺はひょっとしたらきみのことを、顔も知らずに卒業してたかもしれない」
 言われて、気づいた。もしも、椎応大学に現視研がなかったら。漫研で受け入れてもらえなかった
自分が、たとえば学内のほかのサークルでも溶け込むことができないまま、この2年を過ごしていた
としたら。

526 :『チェーン(5/13)』:2006/06/17(土) 12:31:23 ID:???
 高校の制服を着た自分がフラッシュバックする。趣味に没頭することで自分の過去を……その
趣味自体がもたらした傷を封じ込めようとあがいていた3年間。自分に差し伸べられる手を拒否
することで、自分の心を守れると思っていたころ。
 もしこの大学生活が、あの時と変わらない日々だったら。もしも笹原さんと出逢うことがなかっ
たら。ふたたび目に涙があふれる。
「そんなの……やです」
「ああ!ごめん、そんなつもりじゃなくてね」
 笹原は慌ててハンカチを探すが見つからない。一瞬悩み、今度は笹原の方から千佳を抱きしめた。
「現視研はさ、『つなぎとめられる』ようなものじゃないってこと。荻上さんは『取り残されてる』
んじゃないんだよ」
 千佳の涙は笹原のワイシャツに吸い取られてゆく。
「俺たちがこれから色々な道を行くことになっても、そのスタート地点には必ずこの部屋がある。
俺たちが迷子にならないように、現視研と俺たちは細くて長いチェーンでつながっているんだ。
暗くて道が見えないときは、少しの光でもちゃんと輝くように。吹雪や嵐にさらされても、簡単に
千切れたりしないように」
「チェーン……」
「怪物をつなぎとめる太くて乱暴な鎖じゃない。どこかに行こうとするのを阻む檻でもない。雨や風
で簡単に切れるような糸とも違う。ただそこに在りつづけて、永遠になくならないもの。荻上さん、
現視研はね、たぶんそういう場所なんだと思うよ……って、んー、解りづらいよなー、俺説明ヘタ
だなー」
「ううん、解ります!……たぶん、笹原さんの言いたいこと」

527 :『チェーン(6/13)』:2006/06/17(土) 12:32:05 ID:???
 頭をかく笹原にそう言う。漠然とではあるが、千佳の頭に彼女なりのイメージが沸いていた。
ファンタジーRPGの宿屋だ。みんなが集まり、話し、冒険の旅に行き、また帰ってくる場所。遠大な
旅を志し、なかなか戻ってこないものもいる。あるいは近場のダンジョンで気楽に過ごし、毎日の
ように食事に来るものもいる。それでも、彼らが冒険を終えた後に目指すのはこの場所なのだ。
疲れを癒し、友と語らい、英気を養って、また冒険に赴くために。
 私もいつか行くのだ、と彼女は思った。今はまだその時ではないのだろう。でもいつか、誰か
仲間とパーティを組んで、遠い冒険の旅に出てゆくのだ。……それならば。
 その時までは私はこの場所を守ろう、と千佳は思う。たまには客がいなくいなることもあるだろう。
荒くれ者が入り込んでくることがあるかもしれない。私にどこまでできるかわからないけれど、
とにかく私はこの宿屋を守ろう。旅の途中で疲れた者を受け入れられるように。旅を終えたものが
安らかに眠れるように。そしていつかまた、新しいチェーンがこの場所から伸びてゆけるように。
「笹原さん……私、また自分のことばっかり考えてたみたいです」
 笹原の胸に抱かれたまま、千佳は言う。
「春の新歓で会員が増えなかったら、ホントに現視研の存続の危機なんです。そんなときに私が
こんなこと言ってたら皆さんに申し訳ないですよね」
「うーん。この春には新入会員、欲しいよねー」
「私、もっとがんばります。今なら大野先輩もいますから、サークルとしてのインパクトは学内随一
って言えるし。大野先輩にはいろんなコスプレしてもらって、私はコピー誌とか作って現視研紹介して」
「えーと、朽木君は?」
「思ったんですけど……こんな言い方していいのかどうか……『こういう人でもサークルこなせる』
っつう見本にならないすかね?あの人」
「あはは、いーねソレ。去年の変なコスプレ、まだ彼ハマってるんでしょ?田中さんにウケ狙い重視
のやつ作ってもらって……着ぐるみとか露出度の低いやつね、そのカッコで司会とか力仕事とかして
もらえばいいよ」

528 :『チェーン(7/13)』:2006/06/17(土) 12:32:45 ID:???
「目に浮かぶようです……ちょっと複雑な気分ですけど」
「朽木君、笑われるの好きだからね、いけるよきっと。あと紹介誌だったら久我山さんにもカット
提供してもらえばいいし。そうだ、高坂君とコンタクト取れたら、プシュケにうちの出身がいるって
アピールできるよ……てか、堂々とやるのはビミョーかな……俺もさ、手伝えることはするから」
「ありがとうございます、笹原さん。なんか元気、出ました」
 すこし名残惜しかったが笹原から離れ、自分の椅子に座りなおして思いをめぐらす。今日描いて
いたのは個人誌用のネームだが、新歓用のコピー誌に集中するほうがいいだろう。笹原はサポート
してくれると言うが、実質これも個人誌だ。
 ぼんやりと冊子の構成を考え始めたとき、いきなり目の前にブルーの箱が出現した。
「……?」
 リボンのかかった箱は手のひらに載っている。手は、もちろん隣にいる笹原のものだ。笹原は
千佳の顔を、なんだかとてもうれしそうに見つめている。

529 :『チェーン(8/13)』:2006/06/17(土) 12:33:22 ID:???
「わ、……え?なんですか?」
 一瞬わけがわからず顔を引き、笹原を見つめ返す。
「そんな、がんばる荻上さんにプレゼント」
「え?どうして」
「今日、ホワイトデーでしょ。先月のお返し。今朝仕事あけて、新宿で開店と同時にデパート行って
買ってきた」
「ええ?え?まさか私に会いに来たって……このため、ですか?」
「ん」
「そんな……申し訳ないですよ!私なんかなにも」
「なに言ってるの。バレンタインデーの時にはおいしいチョコご馳走になっちゃったしさ」
「い、今だってあんな重たい愚痴聞いてもらっちゃって」
「いーんだって。俺があげたいの。荻上さんに」
 笹原が強い口調で言うと、千佳はなにも言い返せなくなる。
「う、ん、はい。ありがとう……ございます……」
「中身、開けてみてよ」
 白いリボンを解き、箱を開けるとアクセサリーケースが出てきた。その中からは銀のネックレス。
「わ……きれい」
 手にとって見る。二連のプラチナのネックレスで、薄く丸い金のペンダントヘッドがそれぞれの
チェーンに通してあった。
「つけてみてくれない?」
 鎖の端を首の後ろに回し、つなぐ。
「えと、こう……ですかね」
「うん。ねえ、髪、下ろしてみてもらってもいい?」
「……はい」
 言われるままに、頭の髪留めを外す。自分ではゴワゴワしていやだと思っている黒い髪が、意外な
ほどふわりと頬に当たった。恥ずかしくて、笹原の顔をまともに見れない。こわばった顔で横を
向いていると、彼は髪をそっとなでた。

530 :『チェーン(9/13)』:2006/06/17(土) 12:34:03 ID:???
「髪下ろしてるほうが可愛いよ、荻上さん」
「……なに言ってるんですか、もう」
「卒業式の日さ、それつけてきてほしいな。髪もその感じで」
「やですよ、恥ずかしい」
「えー」
「やですっ!」
「まあ、考えてみてよ」
「……考えるだけですからね」
 笹原はイスに座ったまま千佳に近づき、彼女の肩に手を置く。千佳が身を固くする。
「荻上さん」
 千佳の顔を見つめる。千佳も笹原の目を見つめ返す。
「笹原……さん」
 二人の影が近づき、そして……そして現視研のドアが大きくノックされた。
「おっはよーございまあすっ!」
勢いよく入ってきたのは大野加奈子だ。いつにないハイテンション。後ろから恋人の田中総市郎も
顔を覗かせるが、明らかに彼女に気圧されている。
「お二人ともお久しぶり!今日はいーお天気ですねー」
 とはいえ、いま一番心拍数の高いのは笹原だった。
「あっあっおっ大野さんに田中さん、ご、ご無沙汰してます。今日はいっ一体……」
「うーふふー。来週の咲さんとの撮影会の衣装の整理なんですー。ちょうど田中さんも空いてたんで
来ていただいたんですよー」
「よっよう笹原、しばらくだな」
「あらぁ、荻上さんは原稿書きですか?」
 加奈子は硬直している笹原の横をすり抜け、千佳の方へ歩いてゆく。しまった!笹原は思った。
こんなタイミングで来られたらまた荻上さんが!

531 :『チェーン(10/13)』:2006/06/17(土) 12:34:44 ID:???
「荻っ……」
「あ、大野先輩こんにちは。田中先輩も」
 振り向いた笹原の視線の先には『いつもどおりの』千佳。ネックレスはしまい込まれ、頭頂には
筆の穂先が屹立している。
「って元に戻ってるし!ハヤワザ!?」
「?どうかしたんですか?」
「いっいえ……なんでもない、です」
「ちょうどよかった、大野先輩と田中先輩に春の新歓の件でご相談したいことがあったんですよ」
「いーですよお。なんでも相談にのりますよおー。ねー田中さぁん」
 なにか変だ。笹原は声を殺して田中に尋ねる。
「田中さん?今日の大野さん、なんかおかしいですよ?お二人何かあったんですか?」
「笹原なあ」
 田中は頭をかく。同じくささやき声で返答する。
「ソレはお前の胸に聞け」
「……!!?」
 ばくん。笹原の心臓が跳ね上がった。ま……さ、か。
「お……大野さんちょっと田中さん借りますぅっ!!」
 田中の腕を引っつかみ、火のついたような勢いで部室から飛び出す。室内は千佳と加奈子だけになる。
「……どうしたんですかね、笹原さんと田中さん」
「さーねえ。さあさあ荻上さん、相談ってなんですかぁ」
 5分後、サークル棟の階段裏で笹原は、久しぶりになる『やられた』表情を顔に貼り付けていた。
田中から衝撃の事実を聞いたところだったからだ。……また、やられたのだ。田中と加奈子は、
現視研の向かい斜め上にある部屋……児童文学研究会の部室から、笹原と千佳を観察していたのだ。
「い……いったい、いつから」
「たぶん最初から」
「……どのあたりまで」
「1回目のクライマックスまでかな」

532 :『チェーン(11/13)』:2006/06/17(土) 12:35:24 ID:???
 その日、現視研の部室で田中を待とうと思っていた加奈子は、遠くから歩いてくる笹原を見つけた。
部室に千佳がいることは知っていたから、これはチャンスとばかり田中を呼び出して二人で児文研に
忍び込んだのだ。まあその、なんだ、と煙草に火を点けながら田中は続けた。
「お前らがものすごく順調なのはよく判ったよ。とりあえず心配すんな。さっきのことは俺と大野
さんだけしか見てないし、絶対誰にも言わないって大野さんと決めたから。荻上さん、あの感じ
じゃ気づいてないだろ?」
「……すいません」
「いやいや、仲のいいのはいいことじゃないか。って俺なんかお前の親父みたいなコメントに
なっちまってるなあ」
「すいません」
「謝るなって。だけどなあ笹原」
 田中は笹原と並んでしゃがみこみ、肩に手を回す。
「はい」
「部室でアレはやりすぎだ」
「……は?」
「やはりなあ、そういうことは、だ。しかるべき場所でしかるべき手順でだな。お前ら家も近いん
だし、なにもそんな高校生じゃあるまいし。ここらはホテルだってたくさんあるんだから」
「ホテル?あっあの?」
「ま、そんなこと言いながら俺たちもまーその、なんだ、いやいや」
「……田中さん?」
「ん?」
「俺たち今……その、キス……とかもしてなかったんですが、なにか勘違いをしてるんじゃ……?」
「なに?……あれ?え、どういうこと?」
 どうせ見られてる。笹原はさっきの経緯をかいつまんで説明した。田中がなにか思い違いを
しており、それに対する興味が恥ずかしさを上回った。
 説明を終えると、今度は田中がうろたえ始めた。
「……え?それだけ?荻上さんが泣いて、お前が慰めて、それだけ?」
「それだけって言われても……」
「だ……だってお前、あれはどう見ても」
「え?」

533 :『チェーン(12/13)』:2006/06/17(土) 12:41:06 ID:???
「あ、いや、いやもういいんだ、すまん……えーとそうだな、荻上さんがさ、お前に抱きついたろ?」
「……はい」
「アレ見て俺たち、てっきり」
「てっきり?……って?え……え?つまり」
「……最後までイッちゃったんだと……」
 妄想は止められない。……いつだったか、笹原自身が使った言葉だ。いまその言葉を、笹原は
噛み締めていた。自分の顔はきっと今、赤面を通り越してる。
 最後の力を振り絞り、笹原は田中に懇願した。
「田中さぁん。このことホンットに荻上さんに言わないでくださいねええ」
「お、おう」
「それにさっき言いかけたのって、つまり田中さんも大野さんと児文研の部屋で……。大野さん、
顔ツヤツヤしてましたもんねえ?どうかお互いに秘密ってことでひとつ」
「……笹原……おまえ、カンが鋭くなったというか……駆け引き巧くなったな」
「イノチがけですもん、ある意味。……戻りましょうか、部室?俺、ちょっとトイレ行って顔洗って
きます」
「おう。じゃあ先に行ってるわ」
 大野さんの方は田中さんが念押ししてくれるだろう。むしろ、俺の様子で荻上さんがなにか
気づかなきゃいいけど……。笹原は、歩きながら深呼吸した。
 春らしい暖かい空気が肺を洗ってゆく。田中が先を歩いて向かう現視研の部室の方向をながめ、
次に自分の足元を見る。
 あそこから、ここまで。目には見えないが、きらきらと光る細いチェーンがつながっている。
 苦し紛れで千佳に説明した、チェーンのこと。寝不足の頭でショップを何軒も回り、あの
ネックレスを見たときにこれだと思った。買い物馴れしている咲なら笑うかもしれないが、
けっこう勇気の要る金額だった。
 千佳にさぐりさぐり語ったチェーンの話は、ネックレスのことで頭の中が一杯になっていたから
だったが、話した内容はその場しのぎではない。以前から笹原が現視研に感じていたことだ。
 我ながらたどたどしくはあったが、どうやら気持ちは千佳に通じた、と思う。現視研という場所が
自分に与えてくれた、一番大切な人に、自分の思いの一片でも示すことができたなら……その欠片を
繋げることができたなら本望だ。

534 :『チェーン(13/13)』:2006/06/17(土) 12:41:54 ID:???
 部室では千佳が、笹原を待ちながら加奈子と新歓の打ち合わせをしていた。計画の骨子は理解
してもらえたのだが、案の定加奈子は千佳にもコスプレを強要していた。今しがた戻ってきた田中
にも、加奈子を止める気配はない。
「そこまで張り切ってるんなら荻上さんもしましょーよ、コスプレ!」
「だからそれとこれとは話が別だって言ってるじゃないですか!朽木先輩にも着ぐるみ着せるん
だから、全員がコスプレじゃかえって怪しいサークルになっちゃいますっ」
「じゃあ、じゃあですね、交代でどうですか!午前中がわたし、午後は荻上さんが」
「ソコから離れろ!」
 息を切らしながら、千佳は考えていた。もうじき部屋に戻って来てくれる笹原のことを。あと
何回会えるか判らない、咲や高坂のことを。
 ここから、あそこまで。みんなの足元まで伸びるチェーン。
 さっき慌ててズボンのポケットに隠した、笹原のプレゼントを意識してみる。二連のチェーンは、
彼と私をイメージしてくれたのだろうか。
「わかりました!新歓ではやりませんけど、こうしましょう」
「はい?」
「新入会員3人ゲットしたら、大野先輩の卒業のときに合同コスプレ撮影会!」
「!」
 加奈子の双眸に火が宿る。
「言いましたね荻上さん!笹原さんも聞きましたね!」
「え?笹原さんいつの間にっ」
「荻上さん……なんてこと約束してんの」
 あちゃー、ちょっと失敗したか?……いや、かまうものか。

 どんな道を歩いていったって、チェーンは必ずつながっているのだから。

535 :『チェーン(ちょっと一服)』:2006/06/17(土) 12:51:23 ID:???
本編終了。途中で連投規制出てびっくりした。
容量もおおむね予想通りなので続いて別視点話、いきます。
もちろん田中と大野さんの視点だ。


536 :『チェーン 〜 side大田(1/4)』:2006/06/17(土) 12:52:16 ID:???
 田中が加奈子から電話を受けたのは、大学前の駅を降りたときだった。
「ああ大野さん、今ちょうど……え?」
「いいから!大至急児文研の部室へ来て下さい!」
「児文研って……ええ?また誰かのこと見てるの?」
「荻上さんが来てたのは知ってたんですけど、さっき笹原さんが部屋に入っていくのが見えたん
です。ふふふ、これは楽しい事が起きる予感がしますよぉ」
「大野さん……あんまりソレばっか熱中しない方が……」
「何言ってるんですか田中さん!あたしは会長として神聖な部室を汚されないようにですね」
「……それなら直接現視研に行った方が確実でしょー?」
「いーから!もうっ、ノリの悪い人ですねえ」
 最後のセリフの途中から、加奈子の声がくぐもった。あ、マスクした……田中は確信し、
サークル棟へ向かった。
 児文研のドアをあけると、すでに窓際にかがみこんでいる加奈子が見えた。他に人影はない。
「今日は大野さんだけなの?」
「さすがにこの時期学校にきてる人なんかそうそういませんよ、はじめから田中さんにしか声
かけてません。それより早く早くう」
「……趣味わるいなあ」
「なんですか?」
「あっいや」

537 :『チェーン 〜 side大田(2/4)』:2006/06/17(土) 12:53:13 ID:???
 主張もそこそこに、加奈子の隣にかがみこむ。向かいの棟の窓の奥、ポスターの隙間から
見えるのは荻上千佳と、その奥に座る笹原完士だった。表情はまったく読み取れないが、体が
動く様子で会話をしているということは判る。
「……実は、ちょっと荻上さんのことが心配だったんです。休みに入って何度か顔合わせて
ますけど、明らかに元気なかったし。笹原さんはお仕事が忙しいみたいで、あんまり会って
なかったみたいなんですよ」
「ああ、もう働かされてるんだってな」
「帰ってくる時間も遅くて、寝に帰ってるみたいなもんですって。荻上さんは平気なふり
してますけど、寂しいと思うんですよね……。わたしは田中さんでよかった」
 くるりと振り向いて田中に微笑む。マスクは早々に外したようだ。田中は加奈子に笑顔を
返す。……いろいろな寂しさを知っているこの人は、人の寂しささえ許せないのだ。去年の夏、
あの二人に何があったのかは後になってから加奈子が詳しく説明してくれた。
『荻上さん、本当によかったですね〜』
 目をうるませて自分に同意を促す加奈子の姿は、まるで娘を嫁にやる母親のようだった。
そんなふうにからかっても、加奈子は平気な顔をして言ったものだ。
『だって、自分が認めてもらえるのはとても幸せなことじゃありませんか。わたしは田中
さんに認めてもらえたから、次の誰かが認めてもらえるお手伝いをしてあげたかったんです。
幸せが次の人につながっていくのも、また幸せなことですからね』
 いま加奈子は、その相手を見守っている。……ノゾキ行為だが。
「な、なあ大野さん、二人とも楽しそうじゃないか」
 加奈子の肩に手をかける。
「もういいだろ?そろそろあっち行って、冷やかしてやろうよ」
「しっ!」

538 :『チェーン 〜 side大田(3/4)』:2006/06/17(土) 12:53:56 ID:???
「え?」
 加奈子は窓の外を凝視したまま肩の手を探り、握りしめる。
「あ……っ!」
「大野さんどうしたの……っうお!?」
 取り乱し始めた加奈子に異変を感じ、再び階下の窓を凝視する。
 現視研の窓の内側では、千佳が笹原に抱きついていた。
「な、なんという……笹原、やるなあ」
「……というより……やりすぎ……ですね、はは、あ、あんまり二人がエスカレートしない
うちに行きましょうか?」
 言葉ではそう言いながら、加奈子はその場を動こうとしない。田中の手を握る力が増して
きた。呼吸が荒くなる。
「そ……そうだよ大野さん、俺たちはデバガメ目的でここに来たわけじゃないんだ。あくまで
彼らを見守るために、だな」
 笹原、そうだ、笹原はこの部屋のことを知っている。覗かれる可能性がある場所でまさか
そんな……まさか……ええっ?
 加奈子が息をのんだ。田中の視界に入ってきたのは、笹原の腰にかがみこむ千佳の頭だった。
「(さ……っ)」
 あわてて窓に背を向ける。な……なにしてんだ笹原!?ウソだろ?
 肩越しに再確認する。笹原の膝の上では、千佳の頭がリズミカルに動いていた。笹原が彼女の
髪をかき上げる。
「(笹原ぁーーーっ!!!)」

539 :『チェーン 〜 side大田(4/4)』:2006/06/17(土) 12:54:52 ID:???
 俺にテレパシーが使えれば!田中は冗談抜きで願った。それがダメなら、俺じゃない誰かから
奴に電話でもかかってくれないものか。
「まずいよ大野さん、さすがにこれは……大野さん?」
 震えながら握る手の力が強くなる。気分でも悪くなったか?大丈夫か……声をかけようと中腰
になったとき、跳ね起きるように加奈子が立ち上がった。田中の背中に両手を回し、全体重を
彼に預ける。
「んむうっ!?」
 田中の口を加奈子の唇が覆った。あたたかく湿った感触。
 加奈子は田中の唇を舌でこじあける。熱く甘い吐息が田中の口腔に充満する。
「……くはあっ」
 加奈子による蹂躙は永遠に続くかと思われた。堪らず唇を離し、空気を求めて喘ぐ。彼女の
唇はさらに田中に追いすがり、二人は折り重なって床に倒れた。
「田中さん!田中さんっ…!」
 すすり泣くような囁くような、加奈子の声。甘く濡れた瞳。彼女の手が、何かを探し求める
ように田中の体の上をさ迷う。胸に肩に脇腹に腰に。
「田中さん……わたし……わたし、もう……っ!」
 加奈子の手は目標を探り当てた。
 田中は彼女に気付かれないように、ひとつ小さく溜息をついた。児文研の入口を施錠していた
ことを思い出し、少し気が楽になる。加奈子の背中に手を回し、彼女を強く抱きしめた。
「(笹原……場合によっては恨むからな)」

 後に自分たちの勘違いに気付いた二人が、このことを誰かに話すことはなかったという。
 もちろん、田中が笹原を恨む筋合いも存在しなかった。

540 :『チェーン(あとがき)』:2006/06/17(土) 13:09:30 ID:???
全編の終了でございます。
本スレで誰かが「笹は荻の髪も服も褒めたがアクセを褒めてない、きっと彼が贈ったのではないか」
という考察を書いてたのでそこから文章化。荻は誕生日が卒業式後なのでクリスマスかホワイト
デーだろうという思考の流れです。あとは会長フラグとかノゾキ発覚フラグとか、最終回に向けて
後付け伏線をいろいろ。……本当は俺じゃなく、誰かが書いた上手いのを読者の立場で楽しみ
たかった。誰かパラレルストーリーでお願い〜。

大田は……書いてて楽しかったw タナカナものもちょっといいかも。作品数少ないみたいだし。

以上、長々と失礼しました。まだ「本当なら誰かの書いたのを読みたい」イベントはいくつかある
ので、また来るかも。久しぶりに赤面小説書いたらカンが戻ってきて楽しかったよ。

以前も書いたが、お前ら本当にありがとう。8月までまだ間があるし、SSスレはまだいけるよな?

541 :マロン名無しさん:2006/06/17(土) 13:21:47 ID:???
感謝ついでに立ててきた。
余計なコトしたと思ったら叱ってくれ。

げんしけんSSスレ9
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1150517919/


542 :マロン名無しさん:2006/06/17(土) 13:31:10 ID:???
>>521
うお、力作GJ!

新スレってどうしたらいいんだろ。
建てたいけどこの1のまんまじゃいけないよね。

543 :マロン名無しさん:2006/06/17(土) 13:31:41 ID:???
>>541
って建ってるしw
よし、早速投下してくる。

544 :マロン名無しさん:2006/06/17(土) 13:32:10 ID:???
>>541
エローイ。でも咲とコーサカも通った道。
大田コンビの行為も、きっとどこかで『あのお方』が生暖かく見守っておられることでしょう。

そして、スレ立て乙です。
今スレも速度結構早いっすねぇ。最終回近辺だったから仕方ないとは言え。

545 :マロン名無しさん:2006/06/17(土) 13:33:41 ID:???
>チェーン
なんかこんな話が原作で一話あってもよさそうですねw
最終回に繋がる感じが非常によかったです。
番外編のタナカナsideもいいですねえ。
っつーかエロイですよ、この二人は。

&スレ立て乙ですw

546 :マロン名無しさん:2006/06/17(土) 13:35:55 ID:???
いやあ、面白かった>チェーン
舞台を変えて連動する話って大好き。
荻上の取り残され感も、笹原のフォローも、細やかで良かったです。
僕も本日の投下を狙ってたけど、こんないい話の後はちょっとね(w

547 :マロン名無しさん:2006/06/17(土) 17:58:00 ID:???
>チェーン
うまいなー。「絆」と「鎖」、ついでに「つながってます」…いや、ゲフンゲフン。すまん。
笹原と荻上さんの卒業式直前の気持ちがよく書かれてて良かった。笹原の「現視研」についての説明があったかくて泣けました。
そう、げんしけんは皆の心の中にあるのだよ!!
最終話への伏線が何箇所かあって、ニヤリとさせられました。それにしても大野さん…児文研でそんなこと…(笑)田中も大変だァ。

548 :マロン名無しさん:2006/06/19(月) 13:15:16 ID:???
しばらく来ん間に、またまた増えている上に遂に次スレ立つか…
>>541さん、スレ立て乙。

俺今、某ケーブルテレビ主催のアニメシナリオコンクールに応募すべくオリジナル脚本書いていて、すっかりSSの方はご無沙汰しています。
そんなわけで、当分は読者として楽しませて頂きます。
自分語りスンマセン。


549 :マロン名無しさん:2006/06/19(月) 21:27:17 ID:???
>>548
ほっほう…コンクール頑張って下さい。んでもし採用されて有名になったらサインくださいw
そしてまた時間が空いたらSSスレに戻ってくるのだ!

550 :801小隊&ラジヲ:2006/06/23(金) 06:07:04 ID:???
ふぅ、801小隊最終回書き終えて一息の私です。
今回も感想ありがとうございました。
>>438
マダラメはあくまでヘタレです。人が死ぬのが怖いヘタレです。
ササハラはかっこよすぎですけど、これくらいやってもらわないと主人公ですしw
ラジヲの特別編をやるにはあと四回書く必要があるという。
なんていう縛りを作ったんだ私は・・・。
>>439
Gガンガルの告白シーンは最強です。
いつかあんな告白をしてみたいと思う・・・。(マテ
ヤナを幸せにする事が今後のラジヲの目的だったり・・・。
>>440
そういっていただけるとSS書き冥利に尽きます・・・。
>>476
どうやら何とかたたみ終えれたようです。
もしかしたらどっかはみ出してるかもしれませんので、指摘お願いしますw
スイマセン!特別編は50回で後五回やった後なんです!
次回予告するのはやっとかないと書かないからなんです!

では、9の方で、801小隊の最終話落としておきます。

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