5ちゃんねる ★スマホ版★ ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50  

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

【2次】漫画SS総合スレへようこそpart41【創作】

1 :作者の都合により名無しです:2006/07/25(火) 21:15:16 ID:ZGq8nRyD0
元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1151847721/
まとめサイト
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm

2 :作者の都合により名無しです:2006/07/25(火) 21:17:24 ID:ZGq8nRyD0
ほぼ連載開始順 ( )内は作者名 リンク先は第一話がほとんど

虹のかなた (ミドリ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/niji/01.htm
オムニバスSSの広場 (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/bare/16.htm
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
上・ドラえもん のび太の超機神大戦 下・ネオ・ヴェネツィアの日々(サマサ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tyo-kisin/00/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/samasa/05.htm
聖少女風流記 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
影抜忍者出歯亀ネゴロ (スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/negoro/01.htm
やさぐれ獅子 (サナダムシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/yasagure/1/01.htm

3 :作者の都合により名無しです:2006/07/25(火) 21:18:09 ID:ZGq8nRyD0
鬼と人とのワルツ (名無しさん)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (487氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/487/03-01.htm
シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい (一真氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/silver/01.htm
ドラえもん のび太と魔法少女リリカルなのは (全力全開氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/fullpower/00.htm
戦闘神話 (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/ginnan/1/01.htm
パパカノ (41氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/41/01.htm
バーディと導きの神 (17〜氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/birdy/01.htm
金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』 (かまいたち氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/kindaiti/01.htm

4 :作者の都合により名無しです:2006/07/25(火) 22:35:35 ID:y69ZjEeS0
1さん乙です。旧スレ消費早かったなあ。

5 :作者の都合により名無しです:2006/07/25(火) 22:47:57 ID:znE1enOe0
>>1さん乙ッス。流れ早いね〜。

6 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/25(火) 23:21:31 ID:bbPmyt+60
木が爆ぜ刃が飛び移動。
木が爆ぜ刃が飛び移動。
久世屋は陽炎のように掻き消え、陽炎は木へと成り代わる。
右肩下がりに斬りつける飛刀だが、やはり時遅く──…木肌が爆ぜる。
緋牡丹の炎と散るらん艶やかさ。
木肌が爆ぜる。黒煙に塵(あくた)入りまじる。
金の刃は地に落ち込み、間髪いれず久世家めがけて再殺到!!
されど。
久世屋は陽炎のように掻き消え、陽炎は木へと成り代わる。
右肩下がりに斬りつける飛刀だが、やはり時遅く──…木肌が爆ぜる。
緋牡丹の炎と散るらん艶やかさ。
木肌が爆ぜる。黒煙に塵(あくた)入りまじる。
金の刃は地に落ち込み、間髪いれず久世家めがけて再殺到!!
されど。

木が爆ぜ刃が飛び移動。 木が爆ぜ刃が飛び移動。 木が爆ぜ刃が飛び移動。
木が爆ぜ刃が飛び移動。 影抜忍者出歯亀ネゴロ。 .木が爆ぜ刃が飛び移動。
木が爆ぜ刃が飛び移動。 木が爆ぜ刃が飛び移動。 木が爆ぜ刃が飛び移動。

(なんつーループ)
トイズフェスティバル。
これを木に仕掛けると、久世屋への攻撃に反応し、自動で身代わりになる。
よって彼がシークレットトレイルに間隙なく狙われしまえば、今のようにただ入れ替わりを続
けるだけとなる。
(特性がアダになっている!)
久世屋は乾いた唇をぐぐぃと噛み締めた。
ループの先に待ち受けるのが何か、はっきりと気づいている。
設置したトイズフェスティバルの全滅だ。
それはイコール回避の喪失。生存の可能性は激減だ。
根来とほぼ互角に渡り合って一矢を報いるコトができたのは、入れ替わり(自動回避)のお
かげで、真っ向勝負ならまず負けているというのが久世屋自身の自負だ。
自分が負けるから、自負だ。

7 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/25(火) 23:22:32 ID:bbPmyt+60
(一番いいのは逃げるコトだ。コウモリになって、電車並みの速度で空を飛べば大丈夫な筈)
臆病なようだが、数と武装と戦闘経験の差をきっちり勘定すれば自然にこうなる。
(けど、今逃げちゃあ、いつか自分を臆病者だと思うようになって、おもちゃ買っても楽しくな
くなる!! 劣勢なら劣勢なりに、勝てる手段を尽くすべき。人間だって熊に勝つために技術
を尽くして、銃を抽出した)
違うと思うが。
(フフ。俺の持ってるのは百雷銃だから銃つながりだな)
「じゅう」じゃなく「づつ」と読むのだが。
(相手から見れば稚拙でも、作った人間にとっちゃ、輝かしい勇気と機略の抽出物さ! だ
からちゃんと使って、戦い抜かなきゃダメなんだ!!) 
お前は主人公か。
(少なくても根来さんの耳は潰せたし!)
やっぱ違うか。
ともかく、である。
ループから脱却すべく、設置中のトイズフェスティバルを解除すれば、その瞬間にシークレット
トレイルを喰らってしまう。
詰みつつある状況に、流石の久世屋もシリアス顔だ。
(まったく。ねめつけた景色すら次々変わるこの始末。嫌になっちゃうよ)
ジグザグに木立を飛び続けて、砂利道を勢いよく横切り、向かい側の森へと移動。
かつて千歳が行った探索の道順を、遡って行きそうだ。
(人が見たら、なんだこの武装、使い勝手悪っ!とかいうだろうな。でも、これは充分いい武
装なんだ。ただ、穴をついた根来さんたちの頭がキレるというコトだけで…… ともかく俺は
ピンチだな)
またシークレットトレイルが木肌を削り、爆竹が焼滅した。
(実はまだいい状況かも。あの二人が後ろに瞬間移動してくるよりは)
一番恐れているコトはそれ。
(あんな体術も剣戟も忍法も並外れた人間兵器に、背後を取られるのは嫌すぎる!)
運良く根来をかわしても、横には千歳がいる。
戦闘能力こそ根来よりは格段に劣るが、久世屋の逃走防止ぐらいはするだろう。
(うわ。背後取られたら俺は絶対死ぬ)
乾いた笑いを力なく漏らして、久世屋はだいぶヘコんだ。
(いかん、ここで落ち込んだら本当に負ける。頑張れ俺。ポジティブシンキングだ俺)

8 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/25(火) 23:23:16 ID:bbPmyt+60
首を振りつつ火炎鼓を一生懸命思い出し、精神の均衡を取り戻す。打開策を色々考える。
移動中にコウモリは出せない。出せたとしても、声帯が完治してない状況ではうまく操れる
かどうか。
例え亜空間をくぐらせたとしても、撃墜される公算の方が高い。
和風チェーマインも、先ほど考えたように接近戦の用に満たない。
本当に詰みかと思いかけたその時。
(ん……?)
久世屋はある兆候を捉えた。
(待てよ。これ)
入れ替わりを繰り返しながら、耳を傾けるは……シークレットトレイル。
(カウントしてみよう。……8、9、10。うん。やっぱり段々、『音』が小さくなってる。俺が遠ざ
かっているせいかと思ったけど、距離を考慮に入れると、間違いない。んで、11!)
戛然とシークレットトレイルが通り過ぎ、手近な木に潜り込む。
(やたら速度が早い。なのに到達するタイミングは他と同じ。で、『音』が大きくなってる)
それが一体、何に対する感想で、何を現しているのか。
久世家は居所をころころ変えつつ、一人で納得し、そして悩む。
(もしかするともしかするとだけど、今の糸口にはなりそうにない。さてどうしたもんか)

「手を貸してやる。リーダーたるもの、部下候補にも優しくあるべき」
森の奥、山の標高的に見るならば頂上付近で、一人の男が認識票を握り締めた。

いつの間にか出たのか。
辺りが乳白色の霧に包まれ始めた。
乳白色の霧と形容したが、しかしそう根来たちに映ったのは最初だけであり、徐々に徐々に
プラチナホワイトの光を帯びていく……
「…………まさか、な」
他者とあまり親交を持たぬ根来でも、戦団に籍を置いている以上、ホムンクルスにまつわる
大掛かりな任務、陰謀、組織についての情報は一通り知っている。
だからかつて銀成学園高校にて繰り広げられた、一大攻防戦も知らぬわけではない。
その際、街中にある銀成学園高校を外界から完全に遮断したのも確か、霧ではなかったか。
正確には、チャフ。
チャフというのは、空中に撒いてレーダーなどをかく乱する金属片。

9 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/25(火) 23:24:02 ID:bbPmyt+60
例えばアルミホイルなどを貼り付けて、レーダーの電波を乱す。
ちなみにこれを用いた武装錬金の名は、
『アリスインワンダーランド』
もちろん、創造主たる男、蝶野爆爵は死んだと聞き及んでいるし、武装錬金は各者各様、指
紋のごとく──
そう、例え双子でも完全同一の物を発現したりはしない。
「少なくても、私たちにとって良いモノじゃないコトだけは確かね」
レーダーを見る千歳の顔が、ひどく曇った。
画面中の久世屋は……壊れたテレビのようなグニャグニャ状態で移っている。
霧の濃度が増すたび、映像の乱れはひどくなり。

ジグジグジグジグしてやる殺す! 
ジグジグジグジグジグ殺す!
ジグジグジグジグジグぶっ殺す!

などとイカれたセリフが画面いっぱいに広がったのを最後に、ヘルメスドライブは何も映さな
くなった。
本来のアリスワンダーランドは、拡散した霧の状態であれば、武装錬金には作用しない。
ただし、元々の武器の相性が良くない。
正体がチャフである以上、レーダーであるヘルメスドライブは妨害できてしまう。
「確定、だな」
根来は手元にシークレットトレイルを戻した。闇雲に動かすは不利と見たらしい。
「久世屋さんに核鉄を渡した第三者が、この辺りにいる」
「ほう。気づいていたのか」
ええ、と千歳は頷き、根来が久世屋に披露したのと同じ推測を述べた。
「でもどうして知ってたのかしら? 彼が仕事柄、郵便物を受け取る立場だって」
「何らかの手段で、社内の情報を得ていたと見るべき──…」
根来の片眉が不意にピクリと跳ね上がり、振り向きざま木陰に向かってシークレットトレイル
を投げた。
位置でいうなら、根来からみて4時の方向。右斜め後ろ10メートル。
カツッと地面に刺さるシークレットトレイルの上で、ひどくユーモラスで、ひどく小さい影が踊り
上がった。

10 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/25(火) 23:25:11 ID:bbPmyt+60
根来は憮然と呻いた。
「……あの時の伏兵が、なぜいま此処にいる」
「え?」
一拍遅れて振り返った千歳は、思わぬ姿を見た。
なんと形容するべきか。
水玉型の顔に、ライトのような三白眼と、ひらがなの「え」が刻み込まれた額を持ち、頭から
は線一本でハートマークをぶら下げ、顔とほぼ同じ大きさの体から申し訳程度に手と足と羽
を生やしている物体が、そこにいた。
50cmもない身長とひどく金属的なパールグレーの体は、非生物でないと悟るには充分な材料。
「エンゼル御前……!?」
千歳は思わず口を押さえて、名前を呼んでいた。
自動人形だというそれに、かつて彼女は遭遇したコトがある。
といっても任務の途中に同席しただけの間柄だが、姿の珍妙さと威勢の良さは、千歳の持
つ観察眼や記憶力と相まって覚えている。
ただし、その創造主が来ているとは一切聞いていない。
照星の性格なら必ず告げるはずだし、押しかけてきた援軍なら背後に潜まないだろう。
千歳の知っている御前なら、軽口を叩きながら登場する。
「細部は違うな」
根来の言うとおり、御前の胸には本来あるべきハートマークがなく、目つきも心持ち悪い。
付記すると彼も御前と遭遇したコトがある。どころか物騒なコトに、胸を突き刺した。
二人の凝視を受ける御前(に似た自動人形)は、無言のままかききえた。
「武装解除か」
「のようね。恐らく、社内の情報を得たのも、あの自動人形」
千歳の声音は暗い。
任務も大詰めの時に巻き起こった不可解に、戸惑っている様子だ。
周囲でザラザラときらめく霧は、千歳が頼みとするヘルメスドライブを無効化する魔の粒子。
武装錬金と同じく呑まれそうな予感がある。
「まずは今の相手から手早く潰すぞ」
素っ気なく声をかける根来が、いつもより頼もしく見える。
だが頼っているだけでは良くないと、千歳は自身を奮い起こし
「ヘルメスドライブのレーダーは使えなくなったけど──…」
ツナギのポケットから折りたたまれた紙片を取り出した。

11 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/25(火) 23:26:39 ID:d+ufiPAz0
森はもう、ずいぶん景色が変わっている。
砂利道に向かってあちこちで炎がくすぶり、傾きかけている木も多数だ。
入れ替わったせいで根元の土が緩んだのだろう。
それらと開いた紙を見比べつつ、千歳は呟いた。瞳には平素の沈着さが戻りつつある。
「まだ方法はありそうね」
「ああ。ただしこちらも賭けに出る」
長引いて、第三者に隙を突かれるのだけは断固阻止。
根来はそういう。
「ただし、鶉隠れからの一撃はしない。この短期間に二度も破られているからな」
千歳は思い出す。
例の鷲尾に仕掛けて、前髪をばっさりと切られた根来の姿を。
ちなみにもう一つの「破られた時」は、この夏の中村剛太との戦いだ。
「よって、近い方から順に破壊し、貴殿の能力に任せる」
とここで、根来は一つ頼み事をした。
むろん千歳は快諾し、瞬間移動。(こちらはできる。ただ目当ての場所は映せないので、記
憶頼りのだが)
指定された場所から指定された物を手早く回収し、再度瞬間移動。
「それは」
「奴の物とは違う。本家本元だ」
亜空間の中から何かを取り出し終えた根来へ渡す。
彼は流麗な手つきで渡された物と取り出した物を融和させ、近くで一番高い木に駆け上った。
平素なら見通しは良いのだろうが、おりからの霧で視界はひどく悪い。
が、構わず懐から栄螺(サザエ)の貝殻を取り出して、耳に当てた。
瞑目しつつ細かに向きを変えている所を見ると、何かを探しているようだ。
やがて彼は目を見開き、ある方向を見据える。
「かすかな気配と霧の濃さから推測すると、あちらか」
彼の見たのは、山の頂上の方だ。

(しくじる訳にはいかない。私の行動に任務が懸かっている。戦士・根来の命も──…)
千歳は生ぬるい唾液を嚥下して、「その瞬間」を待つコトにした。
(……役立てばいいのだけど)

12 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/25(火) 23:28:04 ID:d+ufiPAz0
ツナギの胸の辺りをぎゅっと握り締め、森の奥を見つめる。
並みの女性ならば、不安と緊張に震える時だろう。
では千歳はどうなのか?
無表情な外見からは、伺い知るコトはできない──…

根来は口から血を吹き、何かに卍を描いた。
で、手にした物を思いっきり山の頂上目がけて投げた。
そして下に舞い降り(火傷まみれの裸足でそれをやるので、千歳は破傷風とかを心配した)
「7分だ。7分までなら奴に手出しはさせない。その間に決めるぞ」
とだけ告げて、亜空間の中の人になった。
霧が出てからここまで、1分ぐらい。

「御前が見つかったか。だが霧を出した以上遅かれ早かれだ。収穫は依然、俺の方が大き
い。御前を使って3人の武装錬金をじっくり観察した俺の方がな」
金髪を肩まで垂らした端正な顔の男が呟く。場所は山の頂上だ。
先ほど「総角主税(あげまきちから)」と名乗ったこの男の胸には、2枚の認識票がある。
市販のアクセサリーとはかけ離れた、やけに幾何学的な認識票が。
果たしてそれが何で、彼の目的が何かは分からない。
なお、総角(あげまき)とは大鎧の背についた、各パーツを連結する輪の名前だ。
大和時代ごろの少年の一般的な髪型でもあり、韓国では('A`) を指す。
その総角、颯と踵を返し頂上から離れる旨を呟いた。
「ここに長居は無用だ。行くぞ。留まっていれば発見される恐れが──」
鉄砲のような乾いた音が、突如響いた。
言葉半ばで息を呑み、大きく後ろに飛びのく総角。
襲いかかってきたのは銀の雨。
アイスピックより鋭利な針をむき出した扇が、辺り一面に降り注ぐ。
角度も速度もみなバラバラのこれは、忍法・天弓扇!
久世屋のコウモリをさんざん撃墜した怪異のわざが、再度発現した!
「……しまったな。移動もクソもない。俺がアリスを出している以上」
霧は総角の周りから立ち上る。
いきおい、移動しようと彼の居場所は周りに知れる。
「まるで煙突からの煙で所在がバレる蒸気機関車だな」

13 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/25(火) 23:28:57 ID:d+ufiPAz0
霧によりレーダーを封じられた根来だが、逆に、霧の出所から総角の場所を突き止めた!
とはいえ、連なる枝に天蓋がごとく頭上を覆われた彼らだから、少し見上げた程度では霧が
山の頂上から出ていると分からない。
だから根来は先ほど木に登り、周囲を見回し、出所を突き止めた。
爆発で聴覚を奪われているので、栄螺(サザエ)の貝殻は、補聴器代わり。
で、栄螺(サザエ)の貝殻は忍びの卍の虫篭右陣の……もういいか。

俊敏に回避を行う総角だが、動くたびに死角を衝かれ衣服はみるみるうちに裂けていく。
更に落ちた扇は針のせいで地面に刺さって、辺りを大根畑のような景観に書き換えている
のだが、それらが不意に爆発を始めた。火薬が仕込まれているらしい。
ただでさえ回避に忙しい総角は、足をもつれさせつつため息をついた。
「どーせ逃げても変わらんか。ならば」
左手を認識票に当てる。
「出でよ! 日本刀の武装錬金、ソードサムライX!」
右手に出現したのは、刀身そのものに下げ緒と飾り輪をあしらっただけの無骨な刀。
それを足元へ振りかざす。
爆発しかけていた扇がすぱりと切り裂かれた──などという鎧袖一触ぶりは金属と紙の性質
を踏まえれば当然のコトだが、その切り口から半透明の光が刀身へ流れ込んだのは不可思
議だろう。
詳しい説明は避けるが、この日本刀はエネルギーの吸収と放出を行える。
いま下げ緒から飾り輪へと移動している光は、爆発のエネルギーだ。
そしてそれは飾り輪に到達すると、一気に爆ぜた。
同時に驟雨(しゅうう)のように降り注ぐ扇が幾つか、溶接火花より眩しい光に消し飛ばされた。
後はもう単純作業だ。地上の扇を切り裂き、火薬の持つエネルギーを飾り輪から放出して
扇の雨を総て蒸発させるのみ。
だがいかんせん数は多く、全滅までには5分を要した。
……よって。根来の希望的観測は2分もズレた。
流石の彼も、ソードサムライXの特性までは予想できなかったのだ。
最中、地上からは先ほどと同じく断続的に爆音が響いている。
そして作業を終えた総角は、なぜか木立の中へ一瞬目を這わせ、安堵の息をついた。
「大丈夫、のようだな」
ついで、天を仰いで低く唸る。

14 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/25(火) 23:30:08 ID:d+ufiPAz0
「扇の出所はこれか」
視線の先で大きく広げられた番傘が、枝に引っかかっていた。
よもや、と辺りを見回せば、計6箇所。番傘が同じように引っかかっている。
こちらは忍法かくれ傘。物を収蔵したり、開いた状態で遠くまで飛んでいける。
よく見ると、もう1本番傘が落ちている。赤い破片や火縄の焦げカスも。
落ちている傘の柄からは、まず1本の火縄が伸びていて、6cmほどの部分で6本の火縄に
枝分かれていている。といっても、途中でほとんど焼け落ちているが。
「フム。落ちている奴で扇の入った傘を運んできたという所か」
伸びた紐で他の傘が開かぬよう縛りつけ、総角のほぼ頭上まで運んだらしい。
忍法・火まんじで縄に火をつけ、到達と共に縄の結び目辺りが爆破されるように調整し。
そして。
実は縄の正体は百雷銃。久世屋操る武装ではなく、本来の忍具の方の。
他の傘を縛っている結び目部分に赤い筒をあてがっておけば、爆破と共に傘の拘束がスル
リと解けて、舞い落ちる寸法だ。
多少破れはするだろうが、開いて枝に掛かりさえすれば天扇弓が出るので問題はない。
「してやられたという他ない。まさか、俺に気づくなり速攻でこんな真似をするとは」
根来のいる場所から「こちら」へはかなりの距離がある。勾配だって半端なものではない。
だが現に傘は到着している。もはや妖術の類といっても過言ではない。
「傘から扇を降らせるのも並みの戦士ではできんし、」
下界から響く爆音へと耳を傾け、感心と屈辱半々の唸りをもらす。
「久世屋を追い詰めるための時間稼ぎときている。あのやたら規則正しい爆音──」
理由は分からないが、霧をものともせずループにはめている。
「いやはや。奴の忍法恐るべし。敬意すら覚える。が」
総角は傘の内側が鏡のようになっているのに気づき、露骨に顔をしかめた。
再び認識票を掴んだ左手には、やや苛立たしげな力が篭っている。
「出でよ。名も知らぬ彼の武装錬金」
ソードサムライXと入れ替わりに出現した黒い蝶が7匹、総ての傘へ突撃し、吹き飛ばした。
「俺は鏡が嫌いだ。見せられた以上、少しばかりシビアなタイミングで手出しさせてもらう」
舞い起こる燃えカスの中、総角はきつと下界を見すえた。

15 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/07/25(火) 23:31:17 ID:d+ufiPAz0
やはり投下は早くて2日に1度くらいにします。
どーも自分の場合、書いてすぐ投下となると後で粗を見つけて悔いてしまうので……
ネゴロ自体を書き上げてから、投下と平行して次回作やら総集編やらに着手するのも手ですし。
あ、急いでたのは上二つが控えてるからなのです。でもやはり兼ね合いは大事で、
自分が尊敬してやまない人も兼ね合いを大事にされるので、2日に1度くらいがベストかも。
それに長く連載すれば、感想も連載分頂けるので、こんなに嬉しいコトはないのです。ヒャッホウ!

>>403さん
おでんではないコトさえ分かっていただければ、もう大成功の部類です!
夏場もたまにはおでんが食べたいですね。白米とかつお梅干とぬるーい麦茶と一緒に。
そういえばなんでおでん用の味噌は黒しかないのか。白味噌でも美味しそうなのに。

>>404さん
ですよねきっと。声高にでしゃばらないけど内助の功はしっかりするというのが自分の千歳
観なので、きっと。そしてあの大人っぽさは良いです。佇まいとか10巻38P2コマ目とか。
ネゴロはもうすぐ終わりますが、次なるネタもありますよ。お楽しみに。

>>410さん
倒し方については「かなり独特」とだけ。ネゴロという話をここまで描いてきたのは、倒し方の
ためといっても過言ではないのです。どうも長編を描くときは、オチの部分をまず考える性格
のようでして……実は。次なるネタも、「主人公がラスボスにどう勝つか」は考えていたりします。
こっちもかなり独特で、かつ燃える、武装錬金ならではの方法。

>>416さん
お恥ずかしい話なのですが、いまだに文系と理系の区別がつかない始末でして、ただ、根来
が理系なら描いてる自分もそうなのかなぁと思う次第。ちなみに根来はA型らしいです。千歳も同じく。
で、こんなHPが。二人は冷めにくいようですね。
ttp://www.nan.co.jp/deaimasse/ketueki/aboy.htm
ttp://www.nan.co.jp/deaimasse/ketueki/agirl.htm
ttp://www.nan.co.jp/deaimasse/ketueki/aishou/abag.htm

16 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/07/25(火) 23:39:14 ID:d+ufiPAz0
    傘           総角/
    ノ             /頂上
   傘×6(畳まれてる)  /   
               /
根来&千歳      /

分かり辛いので傘の補足。図のような調子で傘は山に向かったのである。

17 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/07/26(水) 02:04:17 ID:db5jGrhN0
第十八話「3年Z組銀八先生 二時間目」





世に銭ほど面白き物はなし。(井原西鶴)


金で買えねーものだってあるさ。(長谷川泰三)


金持ってないマダオがほざいてんじゃねーヨ。(神楽)






18 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/07/26(水) 02:04:54 ID:db5jGrhN0
「おーっス。今日も元気に銀八先生の時間だぞー。よい子のみんなはディスプレイの前に集合ー。生徒共は席につけー」
「Z組」と記されたプレートが掛けられた一室のドアを開け、教師、坂田銀八は今日も朝のホームルームを開始する。
なんだかんだあった前回であったが、これはれっきとした第三部第二話。今日からは平常授業なのである。
「今回は無駄な説明なんかでスペースは使わせねぇぞー。さっさと出席確認するから覚悟しろー」
「押忍!」
「なんだぁー? 今日はやけにはりきった返事だなー。前回出番なかったからって飛ばしすぎだぞおまえらー」
「押忍!」
「まあいいや。じゃ、出席取るぞー」
「押忍!」
「いや、オスはもういいから。たまには違うこと言えねーのかテメーら」
「メス!」
「おいおい、捻りもなにもあったもんじゃねーな。そんなことじゃあ先生のナイスツッコミは貰えないぞー。それどころか出番減らされる恐れもあるから気をつけろー」
「押忍!」
「だァァァ! お酢はもういいって言ってんだろ! なんですかここは! 男塾ですかこんにゃろう!?」
と、朝っぱらから些細なことで怒声を上げる教師銀八だったが、教室内を見渡して唖然とした。
前回は空席だらけだった3年Z組。それがなんと今回は、満席ではないか。
教師として、生徒全員出席は実に喜ばしいことだ。喜ばしいことなのだが。

「…………なんで皆さん、そろいも揃って長ランなのかな? それに皆さん、なんでそんな濃いー顔してるのかな?」
「押忍! 教官殿! それはここが、男塾三号生の教室だからであります!」
教壇の真ん前に座っていた生徒が、元気に答えた。

「…………」
事態が飲み込めないので、改めて周囲を確認してみる。
席に座っている生徒は全員男子生徒。しかも、そろいも揃って昭和育ちのおっさん面という風貌だった。
銀魂高校男子の制服は学ランだが、彼らの羽織っている上着は明らかに丈が長すぎる。現代の不良共だってこんなものは着ない。
時代錯誤も甚だしい。銀魂は21世紀の作品だぞ? と冷や汗を流しながら無心にツッコミを入れる銀八。
っていうかここは3年Z組じゃなかったのか? 今回は正当学園モノで攻めるんじゃなかったのか?

19 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/07/26(水) 02:05:23 ID:db5jGrhN0
「気をつけいーーーーーっ!!」
銀八が数十人の屈強男子相手に成す術もなく棒立ちしていると、何者かの号令と共に全員が一斉に立ち上がった。
皆が背筋をピンと伸ばし、額に汗を流しながら緊張するように直立する。いったい何が始まると言うのか。
「男塾三号生筆頭、大豪院邪鬼様のおなぁーりぃー!」
教室の扉がガラッと開き、外から身の丈3メートルはあろうかという大男が入ってきた。
威風堂々迫力十分な強面顔に、王者の風格を醸し出すマント。そして何故か半裸。
少なくとも、普通の学校でこんな格好をした生徒がいたら即指導室送りだろう。もしくは通報される。

「……見ぬ顔だな」
「あんたも銀魂じゃ絶対に見れない顔だな」

坂田銀八と、男塾三号生筆頭にして男塾の帝王、大豪院邪鬼の初対面の時だった。
片や男の代名詞とも言える存在。片や現代のゆとり教育が生んだゆるゆるだらだらの化身。
絶対に相容れぬことのない二人が、この夢の舞台で遭遇を果たしたのだ。

「あの、とりあえず席ついてもらえますかね……」
「うむ」
その迫力に気圧されて、控えめに促した銀八だったが、案外すんなりと指示に従ってくれた。
先ほど大豪院邪鬼のことを身の丈3メートルと紹介したが、そんなデカブツがどうやって席に着くのだ。という疑問は自己解決でお願いしたい。
とにもかくにも、これでやっと授業が始められる。
ここからが、3年Z組銀八先生の本番なのだ。

「じゃ、授業始めるぞー――」


20 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/07/26(水) 02:06:00 ID:db5jGrhN0

「――と、いう夢を見た」
「夢かよ! しかも内容薄っ!」

はい、夢オチでした。すいません。お騒がせしております。こちらは正真正銘銀魂高校3年Z組です。
「なんだよコレ、なに二話目でいきなり大冒険しちゃってんのォォ!? 今回は学園編じゃなかったのかよォォ!?」
「いや、学園モノじゃん。男塾」
「漫画がちげェェェ!!」
元の世界に帰って早々、銀八に強烈なツッコミを入れているのは、銀魂のツッコミ役といえばこの人、生徒の志村新八だった。
一話目欠場で二話目にしてやっと登場と思いきや、最後の最後にツッコミを入れるだけが仕事というなんともぞんざいな扱いだった。
もちろん、細かなプロフィールは省かせていただく。知りたかったら原作か小説版か今までのお話を拝見してみて欲しい。
「まぁまぁ慌てるな新八。前回神楽が言ってただろ? 『そんなことじゃあこのスレの厳しい生存競争には生き残れませんよ』って」
「だから?」
「だからここはこのスレの王道になぞって、クロスオーバーというものに挑戦してみた」
「なるほど……たしかに『銀魂』と『男塾』のクロスオーバーなんて画期的……って言うとでも思ったかアホがァァァ!」
「アホじゃねーよ。あれよ? 次回は『ジョジョ』を組み込む予定らしいよ?」
「認めるかァァァ! おま、急な路線変更は読者離れの元になるんだぞ!?」
「ちょ、言葉遣いが荒いよ新八君。それに知らないのか? かつてジャンプには『タカヤ』という突然の路線変更で大成功した作品があってだな……」
「またジャンプネタかよ! 学園編の意味全然ないじゃんコレェェ!?」


――懸命な読者の方々ならそろそろお気づきのことかと思うが、さっきから銀八と新八しか喋っていない。
まことに残念ながら、今回は銀八の夢話で大半を使ってしまったので、他のキャラクター登場はまたまたお預けである。
とにかく、これにて学園編二日目のお話は終了。出席は新八一人。

次回こそは全員主席でありますように(by新八)

21 :一真 ◆LoZjWvtxP2 :2006/07/26(水) 02:07:40 ID:db5jGrhN0
正になんでもあり。
こんな好き放題やれるのもシリアス編突入前の外伝だけなので、どうか大目に見てやってください。

そもそも今回のネタだって、ある日パッと閃いてなんとなく書いてしまったそんな作品なんです。
深みも何もあったもんじゃない。文句があるならバシバシ言ってやって、いや、やっぱりすみません。

それはそうと新スレ乙です。
最近ペース早くて嬉しい限りです。活気があるのはいいことだ。
私ももうちょっとペース早くできるように精進します。
一真でした。

22 :作者の都合により名無しです:2006/07/26(水) 07:51:52 ID:NrSAOidB0
>スターダストさん
最近、投稿ペース速くて嬉しいです。前は一ヶ月に1度の投稿ペースだったのにw
久世屋、ここ最近まるで主人公のような存在感だなあ。
ネゴロが主人公にしては地味だから、どうしても千歳や久世屋が目立つ。
でも、敵キャラやヒロインが目立つのは漫画でも人気ある作品ですよね!

>一真さん
元ネタの漫画の方の銀玉が、何でもありの中にいい話がある、って感じなので
全然OKですよ。更新ペースは私生活に負担の掛からない程度で頑張って下さい。
マジで男塾とのコラボも良かったな。しかし夢オチかよw
塾長なんて怪物が出てきたら、神楽だろうと銀ちゃんだろうと適わないだろけどw

23 :作者の都合により名無しです:2006/07/26(水) 08:36:51 ID:PWemwoPvO
高アプリでモバゲェ〜
http://mbga.jp/AFmba.fONgc8aa9/


24 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/26(水) 12:12:14 ID:krIjfVGX0
MUGEN バトルロイヤル

プロローグ
薄暗い部屋の中に火のついた十数本の蝋燭があった。蝋燭はテーブルの周りに置かれていた。
赤い軍服を着た男が椅子に座っていた。彼の顎は割れており肌は褐色である。
その他にも二人の男達が円卓を囲んで座っていた。
「オンスロート氏。あなたの言う“ゲーム”とは何かな?」
軍服の男が言った。
「単純なバトルさ。戦士を集めて闘わせる。」
オンスロートと呼ばれた男が言った。
「ベガ。お主とオンスロートが作ったのか?どうやらワシのいた世界とは違うようだが。」
モンスターの様な顔をした男がベガに聞いた。
「私のサイコパワーとオンスロート氏のパワーだ。それだけでは不完全なのでアナタを呼んだのだよ。竜魔帝王。」
「ほおう・・。で“ゲーム”はいつ始まるのかね?」
竜魔帝王は興味津々に聞いた。彼にとってバトル、即ち闘争とは生き甲斐の様なモノなのだ。
「ふふふ、今からだ。」
ベガが言うのと同時にテーブルの前にスクリーン型のヴィジョンが現れた。


25 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/26(水) 12:12:46 ID:krIjfVGX0
第一話 開戦
洞窟があった。奥には棺があった。
棺の蓋が内部から開いた。ゴトリと音を立てて。
一人の吸血鬼が立ち上がった。
男はすぐに自分の首に輪があるのに気付いた。
「なんだ・・・これは・・。」
突如、男の疑問に答えるかの様に首輪から声がした。
“えー参加者の皆さーん!この度は私達主催のバトルロイヤルゲームに参加して頂きありがとうございまーす!”
声は洞窟内に響き渡っていた。洞窟の奥にこだましている。
“ルールは簡単。皆さんにバトって貰って最後に残った人の願いを何でも一つ叶えてあげまーす!”
“後戦略性を持たせる為に「禁止エリア」を設定してまーす。禁止エリアに入ったら即効強制リタイアですので気をつけてくださいねー!”
“最後に・・・皆さんに配給物としてデイパックを持たせました。中には食料と水と地図が入ってます。では皆さんの健闘を祈ります”
放送は切れた。
吸血鬼は一瞬考えた。要は他の参加者を倒し最後の一人になればいいわけだ。
これは一興。バトルを楽しませて貰おう。
今は昼らしい。洞窟の入り口付近から光が漏れている。
夜まで待つか。
吸血鬼は眠るべく棺へと戻った。


一人の少年が草原を歩いていた。服装はTシャツにスウェットパンツ。
何気なく歩いている姿からは想像も出来ない程の筋肉を持っている。
彼の視界に何かが映った。白い何か。鳥かと思ったが違った。
こちらに向かってくる。少年と同じ速度で。

26 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/26(水) 12:13:18 ID:krIjfVGX0
間合いになるとソレは立ち止まって構えた。
「君の名は?」
ソレが聞いた。
「範馬刃牙だ。」
少年が応えた。
「俺の名はカンフーマンだ。」
カンフーマンの言葉とジャブは同時だった。
バチィンと音が鳴った。
カンフーマンの左拳が弾かれていた。しかも骨折している。
痛みで動きを止めたカンフーマンに刃牙はミドルキックを放った。
「オワッ!」
カンフーマンの体は一メートル程吹き飛ばされた。
地面に転がりながらカンフーマンは思った。
こいつはやべえぜ。初っ端から強敵かよ。けっ。
こういう時は・・。
「くらえーッ!」
カンフーマンは地面に何かを放り投げた。
直後、ブシューッと音がなり白い煙が出始めた。
「へぇ・・・。」
刃牙は自信からニタリと笑った。
が・・・刃牙の予想は外れカンフーマンからの攻撃は無かった。
本人が逃走していたからである。
「あのガキ・・・覚えてローッ!」


DIO@ジョジョの奇妙な冒険
装備 デイパック一式
状態 普通
思考 1 夜まで寝る
   2 ゲームのクリア


27 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/26(水) 12:13:49 ID:krIjfVGX0
範馬刃牙@範馬刃牙
装備 デイパック一式
状態 普通
思考
   1ゲームのクリア
   

カンフーマン@MUGENオリジナル
装備 デイパック一式
状態 左拳骨折
思考 1刃牙から逃げる
   2ゲームのクリア

登場人物一覧(説明略)
主催者 ベガ/オンスロート/竜魔帝王
参加者
範馬刃牙 刃牙/加藤清澄
ジョジョの奇妙な冒険 DIO/空条承太郎
漫画版鋼鉄ジーグ 司馬宙/卯月美和
漫画版サムライスピリッツ 覇王丸/シャルロット
漫画版ヴァンパイアハンター モリガン=アーンスランド
漫画版セーラームーン ムーン/マーキュリー/マーズ/ヴィーナス/ジュピター
漫画版ストリートファイター リュウ/春麗
ドラゴンボール ヤムチャ/18号
キン肉マンII世 キン肉万太郎
MUGEN カンフーマン/カンチョーマン


28 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/26(水) 12:15:08 ID:krIjfVGX0
初めまして。自分、「MUGEN」という同人格闘ゲームをやっていてふと「これを元に
SSを書けたらいいな」と思って書きました。
登場人物が少ないので早く終わると思います。
以後お見知りおきを。

29 :作者の都合により名無しです:2006/07/26(水) 12:47:22 ID:keOMkoo30
新連載お疲れ様です。
登場人物多いじゃない!これですぐは終わらないですよ、きっと。
長編カテゴリ目指してがんばって下さい。
個人的にはやっぱりリュウが好きかな。
しかし鋼鉄ジーグってえらい昔の漫画じゃないか?

30 :作者の都合により名無しです:2006/07/26(水) 15:18:51 ID:F2lxXylA0
ヤムチャはともかく18号がいるのが以外。

31 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/26(水) 16:18:52 ID:sUUav2gs0
十一 襲撃、そして警戒

 高瀬はトイレの奥、割られた窓に走り寄ると、外を見た。
 まだ昼間だと言うのに、分厚い雷雲が陽光を遮っているせいで極端に視界が悪い。
 それでも、地面に残されていた『R』のものと思われる足跡は、はっきりと確認できた。
 その足跡の大きさからみて、まず間違いなく男物の靴によるものだろう。
「く……!」
 我知らず、歯を食い縛っていた。喉から、呻くような音が漏れる。
 本音を言ってしまえば、高瀬は元々、外部犯行説には懐疑的だった。
 少年の、はじめの推理……内部犯行説を最初に聞いた時から、最終的にはそこに落ち着くんだろうな、と諦観していた。
 けれど今は、サークルメンバーを疑惑の色眼鏡で見てしまっていた自分を、心の底から恥じていた。
 殺人鬼『R』は、この屋敷(もしかしたら、近辺の空き別荘などにも侵入していたかもしれない)を根城にして殺人を繰り返しており……
 その縄張りに入り込んで来た、葦原を殺害した。
 そして、残る六人が屋敷の捜索を始める旨を、会話を聞くなり、気配で悟るなりして知って、厨房の裏口から、一旦外へと逃げたのだ。
 今の状況から判断するに、それ以外の可能性は考えられない。高瀬はそう結論した。
 憎むべき敵は、少なくとも、見知った相手ではない。その事実に、いくらか勇気付けられる。
 高瀬はバットを、両手で強く握る。足跡を追おう、と思った。
 忌々しい殺人鬼に、一撃喰らわせてやる。人の痛みってものを、身を以って教えてやる。
 そう決めて、窓枠に足をかけたその時、後ろから肩を掴まれた。
 須藤が苦虫を噛み潰したような顔をして、首を左右に振っていた。
「設楽の傷を見ただろう? 『R』はおそらく、大振りの刃物を持っている。今追っても返り討ちになるだけだ」
 言われて、高瀬はちら、と設楽の死体に目を向けた。
 刻み込まれた傷は、遠目で見ても分かるほどに深かった。小振りのナイフなどでは、決してこうはいかないだろう。
 須藤の言い分は正しい。一対一では、分が悪いと言わざるを得ない。

32 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/26(水) 16:20:36 ID:sUUav2gs0
 熱くなった心を鎮めるように深呼吸を一つしてから、渋々頷く。
 もう一度襲ってきたら、その時は容赦しない……
 静かな怒りを瞳に込めて、高瀬は窓の外の闇を睨んだ。

 日月はまだ、十文字の死体に縋って泣いていた。
 はじめはそんな彼女の隣で、何をするでもなく立っていた。部外者の負い目もあって、声をかけるのは憚られた。
 だからと言って、じっと見ているのも酷く失礼な気がして、視線をトイレへと逸らした。
 須藤と高瀬がトイレへの扉を全開にしたおかげで、玄関ホールからでも中の様子が見渡せた。
 生温い風に乗って漂ってきた血の臭いから、中の様子は大方予想がついていた。
 そのおかげか、血糊と斬殺死体が織り成す地獄絵図も、さして動揺することなく受け入れられた。
 そしてすぐに、はじめは現場の隅々にまで目を這わせ、つぶさに観察を開始する。
 まるでそうすることが、自分の唯一無二の使命だとでも言うように。

*  *  *  *  *  *

 高瀬と須藤は、窓の外を警戒していた。
 日月は、十文字の隣に座り込んでいた。
 はじめは、無心に殺人現場を調べていた。
 そんな状態のまま、十〜十五分くらいの時間が経過した。

33 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/26(水) 16:22:49 ID:sUUav2gs0
 人数差に臆して退いたのか、それとも、虎視眈々と次の機会を窺っているのか。
 それはわからないけれど、ともかく今の所は殺人鬼が襲撃してくる気配はなかった。
「このままでは、あんまりだな」
 ようやく窓の外を見るのを止めて、高瀬が言った。
「少年、手伝ってくれ」
 はじめは一瞬、何のことだかわからなかったが、高瀬の視線を追って、すぐに死体のことだと気付く。
「とりあえず、ホールに運ぶから」
 高瀬が肩を、はじめが足を持って、設楽の死体を運ぶ。
 須藤も二人を手伝おうと動いたのだが、
「須藤はそのままで、頼む」
 そう言って、高瀬がそれを制止した。
 高瀬の意を汲んだのか、顎を引いて、須藤はまた窓の外に向き直る。
 先の殺人鬼の侵入経路である窓の外を、誰も監視していないというのは、やはり不安なのだろう。
 元からそれほど体重がなかったのか、大量の出血で軽くなったのか、或いはその両方か。
 設楽の身体は、蛇の抜け殻のように軽かった。ホールの隅に寝かせて、腕を胸の前で組み合わせる。
 十文字の死体も同じようにして、ホールの隅、設楽の隣に寝かせた。
「……談話室に、戻ろう」
 疲れきっているのだろう。魂が抜け落ちてしまったような表情で、須藤が言った。
「明日の朝には、警察が来てくれる。それまで何とか、持ちこたえるんだ」

34 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/07/26(水) 16:24:56 ID:sUUav2gs0
毎度ありがとうございます。そして新スレお疲れさまです。前回投稿は前スレ343です。

・内部犯じゃない
全員談話室にいて、アリバイがありますからね。
これを崩せたらすごいのですが、不可能犯罪は、流石に荷が重そうです。
・立て続けに二人も
ただでさえ登場人物が少ないのに、一気に減りました。
短めですが、そろそろ終わりが見えてきたかなと思います。

35 :戦闘神話:2006/07/26(水) 17:51:57 ID:kFpVO5En0
part.3

黄金世代と呼ばれ、黄金聖闘士十二人すべてが結集した聖戦から四年。
貴鬼は牡羊座アリエスの聖闘士として忙しい毎日を送っている。
彼の現在の任務は、喪われ、傷ついた黄金・白銀・青銅聖衣の復活である。
修復者としての技能研鑚の末、今聖戦で傷つき、破壊されてしまった青銅および
白銀聖衣修復はほぼ終了しているものの、
神話の昔から存在しつづけ、強力な自我・魂すら持つと言われている黄金の聖衣の修復は、
未だなってはいない。
死んでしまった五体の黄金聖衣を復活させるのは、想像以上に難しい。
黄金聖闘士が十二人なのは、一人の黄金聖衣を誕生させるのに一人の黄金聖闘士の命を吸うからだ、
などと怪談めかして言われているのは、あながち冗談でもないのかもしれない。

散逸した文書の追跡という、聖域そのものを揺るがしかねないこの現状では、
その任務も一時中断しなければならず。貴鬼の内心の焦りの色は濃い。
彼の師とて、彼と同じころは日々焦りと迷いの毎日であったことを知らない貴鬼は、空回りしていた。
日々、懊悩し、日々、思索し、試作し、壊して失敗して、泣いて喚いて、それでも諦めずに研鑽している。
かつて存在したムー大陸の錬金術師たちの最高傑作というべき黄金聖衣の再建、貴鬼に課せられた責務は重い。

そして、聖衣製造法の秘技が記されているとされる文書すら喪われていたとの報告により、
貴鬼はアドニス同様に聖域の外へ飛び立つことになる。


36 :戦闘神話:2006/07/26(水) 17:56:00 ID:kFpVO5En0


「と、言うわけで。
 黄金聖闘士ふたりが雁首そろえていながらも、
謎の自動人形によって異空間に閉じ込められてしまったのでした。」

貴鬼はからかいまじり、かつ、うんざりとした調子でアドニスに言う。
何の因果か、彼もまた別ルートから偶然にも同じところにたどり着いたのだ。

「いえいえ、おかまいなく」

いつもの事なので、アドニスもまた素っ気なく返す。

「不用意に怪しげな鞄開けておいてよく言うよ、アドニス?」

嫌味交じりになったとしても、仕方がないといえるだろう。
何しろ、この空間は文字通り「何もない」のだから。
錬金術師境界に属する錬金術師の工房、もっともただのアンティーク収集家のコレクションルームだったのだが、
に二人そろって踏み込んでみたところ、
厳重な封印がなされ、薔薇の紋章の入った鞄以外には「それらしい」ものはなく、
アドニスはいつものように不用意に鞄をこじ開けたのだった。

「そんな小説、あったよね…?」

アドニスのつぶやきは尤もだろう。
鞄の中にいたのは、銀色の髪の毛の美しい少女だったのだから。

「人形?」



37 :戦闘神話:2006/07/26(水) 17:59:13 ID:kFpVO5En0
内容:

貴鬼のつぶやきに、その少女はカっと目を見開き、
同時に背中に畳んでいた黒い翼を凄まじい勢いで展開した。

「…ツ!?」

少女の黒い翼から放たれた羽を含んだ暴風が巻き起こった。
少女、いや、まるで本物の少女のような人形は貴鬼とアドニスを睥睨すると

「あらぁ、あの人間じゃないのね」

気だるげな、猫なで声のような口調で、その銀髪の少女人形は言ったのだった。

「だーかーらーさー」

貴鬼は、アドニスにむかって怒りを込めて睨みつける。

「手前ぇええはぁあああああああああああ!
 何度いったら分かるんだコーゥルルルルゥアァァアアアアアー」

我慢の限界。そんな声色だ。

「アドニス!お前ときたら毎度毎度おなじよーな事しくさってー!」


38 :戦闘神話:2006/07/26(水) 18:04:23 ID:kFpVO5En0

「何をいう!宝箱があったら開ける!怪しいものがあったら試してみる!
 これこそ冒険の醍醐味だろうが!」

「お前のその醍醐味とやらでオイラが何度危ない目にあってると思ってるんだ!」

少女人形を無視したまま、少年二人は口げんかをおっぱじめたのである。

「おばかさぁん」

口調は楽しげだが、無視されたことが彼女の気に触ったのだろう。先ほどとは比べ物にならない密度で、
烏の濡れ羽のような光沢をもった羽が、漫才を続けたままの貴鬼とアドニスに向かって襲い掛かる。

「クリスタル・ウォール!」
「ローズ・ディフェンス!」

貴鬼はアリエスの一党に伝わる透明にして極薄、しかし、鉄壁の防御技をもって羽の暴風雨を防ぎ、
アドニスもまた、敬慕する師・アンドロメダ瞬のローリング・ディフェンスから着想した技、
ようは小宇宙によって変化させた茨の鞭によるローリングディフェンスだ、によって黒羽を弾き飛ばした。
だが、二人の漫才はとどまるところを知らない。

「何が冒険だコラぁ!」

少女人形の顔色は、さらに不快さをましていった。

「騒がしいのは、きらぁい」

少女人形は、その美しい顔を不愉快に滲ませると、彼女の入っていた大きな鞄。
その対面にあった古鏡を光らせ、二人を鏡の中の世界へと叩き落したのだった。

そして、冒頭へと戻るのである。
黄金聖闘士とは思えない、失態であった。

39 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2006/07/26(水) 18:21:08 ID:kFpVO5En0
新スレおめでとうございます、銀杏丸です
ペース速いですね

>37の『内容:』はコピペミスです、すみませんが収蔵される際には削除をお願いいたします。
というわけで、ようやく第二回サブタイトルの元になった漫画より、僕が一番すきなキャラクターが登場です
パピヨンと違い、興味なくもないですよ、スーパードルフィーとかって

>かまいたちさん
お目汚しすみません

>サナダムシさん
いえ、おかまいなく
サナダムシさんのSSの前座とは光栄です

前スレ>225さん
今回登場のキャラクターの元ネタ作品で八割ほどになります
けっこう人数多い予定です
エドとカズキ、意外と馬が合いそうな気がします

40 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2006/07/26(水) 18:22:31 ID:kFpVO5En0

前スレ>232さん
彼らが相対するときの一発目の台詞は、笑えると思います、たぶん

前スレ>233さん
そして、戦闘開始です
聖衣もつけてない、完全に生身ですが、ハンデでもつけないとまーず、適いっこない…
聖闘士って反則ですね

>スターダストさん
爆爵とヴィクターのやり取りに関しては、もう少し後、もしくは第三回か?あたりで
濃くやる予定ですのでご期待をば
スターダストさんにそういっていただけると、グゥレィトォ!な感じです!

>ふら〜りさん
生きることは戦うこと、そう言い切れる強い少女たちが登場します
乞う、ご期待

では、またお会いしましょう♪

41 :作者の都合により名無しです:2006/07/26(水) 18:29:23 ID:kFpVO5En0
バレさま、すみません以下の部分を削除お願いいたします

>その美しい顔を不愉快に滲ませると、

申し訳ございませんでした。

42 :作者の都合により名無しです:2006/07/26(水) 19:41:33 ID:xDD4GJAt0
新スレ早々いっぱいキターーー!すげえ。
でも、出来ればちょっとズラしてほしい。一本一本じっくり読みたいので・・

>ネゴロ
動きと感情が大きいのに、バトル自体は詰め将棋みたいにロジカルですな。
サムライXが出た時にはニヤリとした。一番好きな武装錬菌なんでw

>シルバーソウル
絶対に感動などありえない学園物になりそうだなw(それはシリアスの4部か)
いい意味での楽屋オチの連発の銀玉風味の学園物を期待してます。

>MUGEN
正直、最初スレが違うと思ったw しかし18号は強すぎないか?
他のキャラ全員でかかってもドラゴンボールキャラに勝てるのか?

>金田一少年
大振りのナイフを持った殺人鬼というのは、虎のようなものだ。
素人が何人いても適わないな。全員死亡エンドというのも面白いかも?

>戦闘神話
少女人形ってどの漫画のキャラ?新キャラだよね?ダッチワイフか?
最初の前フリがシリアスだったのに、すぐドタバタになったしまったなw


43 :作者の都合により名無しです:2006/07/26(水) 22:34:45 ID:KrHFhteW0
>コテさん
新連載お疲れ様です。好きな格闘ゲームのキャラクターが沢山出てるので楽しみです。
すぐ終わるとなどいわず、長編カテゴリ目指して頑張って下さい。

>かまいたちさん
なんか、建物自体がじわじわと小さくなってくるような緊張感がありますね。
殺人鬼は名探偵によって倒されるのが王道とは思いますが、油断できませんね。

>銀杏丸さん
物語が動きそうでなかなか動きませんね。登場人物も続々と増えて、
どんどん物語の厚みがましてます。でも、そろそろ決戦が欲しいかな?

44 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/27(木) 07:25:59 ID:vJSJ4iOG0
根来が傘を投げた頃である。
(まさか助け舟を出してくれるとは! アナタは少なくても部長よりは信頼できる上司かも!
この戦いに勝てたら、傘下に加わってみるのも良さそう。でもその前に、火炎鼓を買うぞ)
仄かな月光に煌く粒子の中で、久世家は汗をぬぐった。
肌には血色が戻り、弱々しいながらに笑いが浮かんでいる。
(霧に見えるけど、細かい金属だなコレ。千歳さんの持ってたのはレーダーだから、電波が
乱されて俺を見失っている訳だ。……ん? じゃあ)
手近な木に、「やっ」と声を向けてみる。
彼が根来に肝臓をブチ撒けた時のように、入れ替えは任意でもできる。
合図については、コウモリの操作と同じく。声に含まれる超音波で行う。
のだが、久世屋の場所は変わらない。
(やっぱり。粒子に当たって分散してる。なら、コウモリは操れない。ま、助かっただけよしと
しよう。自動で入れ替わる特性に影響はないし)
少し考える時間を得た久世屋は、考えた。
自らの能力。根来たちの能力。両方ともを考えて考えて、考えつくした。
(考えてみれば、一つの使い方に拘泥するのって惰性だよな。もっとこう、意表をつける攻撃
を……なおかつ、残りの弾を温存できて、見栄えのする攻撃方法を……そうだ!)
やがて必死の思いは、もとより豊かな思考力と結合し、有効打を抽出した。
(いいコト思いついた。でもこれを活かす為には、トイズフェスティバルの数を把握しなきゃい
けない。ずいぶん減ったけど……ひいふう…………14個か。そ、あくまで『仕掛けた』奴は、
14個しか残っていない。…………フフ……)
意味ありげに頬を綻ばせると、 大きく息を吸い込み独り言。喉枯れした声で独り言。
「頃合……かな。多分」
彼の足元から、シークレットレイルが飛び出した。
「ほーらドンピシャのタイミング」
また入れ替わりのループが開始。
(いっつも思ってるけどさ、仕事熱心な男と俺の相性って激悪だよなぁ。されたら困るって時
に色々してくる。もうちょい力を抜くべきだよ本当。人生長いんだから、目の前の仕事にいち
いち命を燃やしちゃ、長持ちしないのに)
直立不動でひょいひょいと位置を変えつつ、霧を眺める。

45 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/27(木) 07:27:12 ID:vJSJ4iOG0
「このせいでレーダーが使えないのに、トイズフェスティバルの配置を読んでるなんて。敵なが
ら本当にすごい。で、理由だけど、たぶん──…」

「彼の後を追っていて気づいたけど、百雷銃はかなり規則正しく仕掛けられているようね」
地図を手にしながら、千歳は木立を歩く。
彼女は地形の把握が得意だ。加えて、数日前にもこの界隈を探索していたから、どこがど
うなっているかはレーダーがなくても手に取るように分かる。
「だから、仕掛けた位置を推測できる」
地図上の、千歳が駆けつけた時の久世屋の位置に印をつける。
次に、根来へ教えた「久世屋の移動の方角と距離」を元に、入れ替わり後の場所、つまり百
雷銃の設置場所に点をつける。
実際に焦げた木の配置と照らし合わせればより確実だが、あいにく時間がない。
鶉隠れで破壊された2個の百雷銃の設置場所こそ確認したが、他の、入れ替わりによって
破壊された所については、根来流の「伝票の合計チェック法」を元に、全設置地点の半分、
半分、また半分という要領で手早く確認しつつ歩いていく。
久世屋の後を追う形だから、寄り道にはなっていない。
そして千歳は砂利道に出た頃、地図上に書き込んだ点──つまり、入れ替えの成否を問わ
ず、百雷銃が仕掛けられていた木の位置──を


46 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/27(木) 07:28:27 ID:vJSJ4iOG0
木木木木木木木木木木木木木木木
19木木木17木木木15木木木13木木
木木木木木木木木木木木木木木木
木木18木木木16木木木14木木木12
木木木木木木木木木木木木木木木
05木木木06木木木07木木木11木木
木木木木木木木木木木木木木木木
木木☆木木木☆木木木08木木木10
木木木木木木木木木木木木木木木
04木木 03, ─── 、木木09木木木.
木木木 ィ        ヽ木木木木木
木木02(   木      )○□木木
木木木 ヽ         ィ木木木木木
木木木木01 ─── ´木木木木木
木木木木木木木木木木木木木木

線で結んだ。

19   17    15    13  
 \ / \ / \ / \ 
  18    16    14   12
 / \ / \ / \  / 
05   06   07   11  
 \ / \ / \ / \ 
  ☆   ☆   08   10
 / \ /     \ / 
04   03        09
 \ /
  02
   \
    01


47 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/27(木) 07:29:18 ID:vJSJ4iOG0
「多少の誤差はあるけれど、ダイヤグラムのように規則正しく配置されている」
「仮にも人間社会で優秀と評されていた男だ。命に関わる武装の配置を、雑然とやる道理は
ない。何らかの規則性があると見たが、やはり」
先回りしていた根来が地面から、にゅっと上半身を現した。
「ええ。この通り。道の向かい側の配置も」
千歳は地図を見せた。
砂利道の向こうの部分にも、点と線が書き込まれているが、それらが醸し出すダイヤグラム
は途中でぶっつりと途切れている。
「規則性を捉えた以上、奴を斃すのは造作もない。貴殿が地図に記した最後の点から、幾何
学模様を描くように攻めれば、奴の生命線は7分以内に断たれる」

「といった所だろうな」
ほんの1分ぐらい前、実際にあったやり取りを的確に想像しながら、
「しかしよくもまぁ間髪いれずにここまで読むよあの二人」
久世家は困惑と感心半々で頭をかいた。
「またこれだ。今から配置を変えれたらいいけど、解除して再配置する時間はくれそうにない」
襲い掛かるシークレットトレイルと、ループ状態に、久世家はうんざりしていた。
既に8つまでトイズフェスティバルは撃破されている。
「しっかし」
身代わりになった木がまた爆発した。
「根来さん根来さん。もうすぐ俺は弾切れですよ。いまの爆発で残り6…アチチ。また爆発し
た。5つしか仕掛けた奴は残ってないんです。5つっていったら、チェーンマインの半分です。もし
真っ向勝負を受けてくれるなら、あなたが気にされてた『第三者』についてじっくりお話をして
みたいんですがどうでしょうーか? ただ敵を倒すだけじゃなく、背後関係を解明するのも、
組織人なあなたには大事でしょう」
どこからか、無愛想な声が響いた。
『断る。貴様は残弾数を近接武器に換算し、『第三者』の情報をエサに勝負を持ちかけたが
必ず吐くとは何ら保障していない。まずは貴様から斃し、しかるのち霧の主に向かう』
抜け目も容赦もないセリフに、久世家はがくりとうなだれた。
「そうですか。根来さんたちから貰える唯一の生存チャンスがこれで費えた。しかも残り4つに
減った」
バァン! 迫り来るシークレットトレイルが木に接触し派手な爆炎を上げた。

48 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/27(木) 07:29:59 ID:vJSJ4iOG0
光は霧に乱反射し、久世屋の顔をノイズィに照らす。
その顔は、落胆に染まって……いなかった。
「でも」
ひどく澄み渡った嬉しそうな笑みを浮かべて、久世屋は両腕を前に突き出した。
「答えてくれましたね?」
なんというコトであろう! 彼の左右の袖口からビューっと火縄が伸びすさり、土くれに没した。
「忘れちゃあいけません。俺はコウモリ! 耳はいい! うかつに答えれば場所が分かりッ!」
ワイヤーが巻き取られるように、地中から戻ってきた火縄の先には、根来!!
両肘から下を胴体ごとがんじがらめにされている。
久世家が大きく腕をうねらせると、どういう原理か火縄は根来ともども宙に止まった。
「よし!」
縄をがっつり握り締め、久世家は大きく頷いた。
シークレットトレイルが根来の手首ごと拘束されている。
「いくらなんでも、刀がいつまでも自動で飛ぶ道理はありませんよね」
千歳は立ち止まり、声にじっと耳を傾けた。
「他のホムンクルスや人間ならいざ知らず、俺の聴覚ならばよく分かる! その忍者刀がわ
ずかばかりの電流を帯びて、バチバチ鳴っているのを! それは神経に通うヤツで、きっと
動力源の筈!!」
武装錬金の中には創造者の生体電流を用いて動作するものがある。
例えば、処刑鎌の武装錬金なら、着装した大腿部からの生体電流で。
戦輪(チャクラム)ならば、速度、角度、回転数を神経に通う電流でインプットして射出する。
シークレットトレイルが飛び交う原理も、これらと同じくなのだ。
ただし、前者二つと大きく異なるのは。
動力用の電流と、コントロール用の電流が別々な所だ。
ラジコンで例えよう。
車に入れられた電池が、動力用の電流。リモコンからの電波がコントロール用の電流。
普段ならコントロール用の電流は、亜空間内でやり取りされているが、今回は特別。
現空間に留まってた根来は、千歳による位置報告を即座に電流へと変え、足から亜空間に
向かって流し込んでいた。
電流は、攻撃の後に亜空間へ戻ったシークレットトレイルへと一瞬で伝わる。
先ほどの鶉隠れはそういう操作の元に行われていた。
本来なら、靴に邪魔されそうな操作法。だが思い出して欲しい。

49 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/27(木) 07:31:16 ID:0AMiodGR0
彼は爆破により靴を焼かれて今は素足。伝達になんら支障はない。
ただし流している電流は、ラジコンでいう「リモコンからの電波」であって、動力源ではない。
飛来するたび、動力用の生体電流を失うのは必然だ。

「当たらなかったおかげでよぅく観察できましたよ。刀が飛ぶたび電流が薄れていく気配を!
さらに、10回に1度の割合で早くなるのもね。俺が見抜き、狙ったのはそれ」
根来たちから少し離れた木の陰で、千歳は思索する。
(つまり彼は、充電の時を狙った)
彼女も先ほど見ていた。根来が何度か手元にシークレットレイルを戻すのを。
武装錬金を熟知している千歳だから、動力源を充電しているとすぐに分かった。
そして手元に戻すから、ペースは遅れるとも。
(だから充電後最初の鶉隠れは、ペースを保つために早くせざるを得なかった)
そして充電は、鶉隠れの10発目を終えた後、必ず行われていた。
ループを始めた頃も然り、今も然り。
久世家が残りの百雷銃を残り14発と把握した瞬間、根来の手元からシークレットトレイルが
放たれ、襲撃を開始した。
そして今しがたの破壊を以て、残弾数は4発。計算すると、数は10。
斬撃の数は、10。
シークレットトレイルを手元に戻す区切りの数だ。
「当たってるでしょ? 俺の推測。現に刀がそうしてそこにありますしねぇ」
千歳は頷く。
久世家の声にそうできるのならば、根来の危機ももちろん知っている。
だが、焦燥に駆られて飛び出せば失敗するのは明白だ。
待っているのは、たった一瞬。一撃の後に生じる、重大な一瞬だ。
どこに行くべきかをしっかり反芻する。
しくじりはけして許されない。
(彼は敢えて喋り、敢えて捕まっているのだから)
千歳の瞳は瑠璃色に濡れ輝きながら、時を待つ。

「ま、火縄が届くかどうかは博打でしたがね。結構ギリギリですよ。何かあったら切れるぐらいに」
「大方、百雷銃の余剰部品という所か」
濃霧の中で枝に頭をつけつつ、根来は冷静に呟いた。

50 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/27(木) 07:35:40 ID:0AMiodGR0
至って冷静だ。もはや彼の手には何もなく、抗する手立てを何ら持たぬように見えるのに。
そう。彼の手には何も『ない』というのに……
「撃墜されたコウモリたちの分です。筒1個につき、何cmかセットでついてるんですよ。さて。
あなたの武器さえ封じればもう決定打はないでしょう。」
いくら久世家が並みのホムンクルスであり、ヘルメスドライブが硬質を誇る盾であろうと、そ
れを扱う千歳の腕力が低ければ、殴ったとて斃すまでには至らない。
ならばいかに忍法を受けても死なない自分の勝利が確定。
声高に説明する久世家だが、根来はあくまで冷ややかだ。
「いいのか?」
「何がですか?」
「一旦手元に戻しさえすれば、再び飛ばせるというのが貴様の見出した道理だろう。ならば」
根来を素早く観察した久世家は、喜色が一転、一気に顔を曇らせた。
そう、根来の手元には何もない。
捕縛したときにはあった筈のシークレットトレイルすらも!!
「……ない! というコトは!」
シークレットトレイルの特性。
それは斬りつけた物に亜空間を形成し、潜り込めるコト。
いかな芸当を根来は施したのか。
久世家の袖口にある火縄から数条の稲妻が立ち上ったと見るやいなや、忍者刀が飛び出した。
霧を猛然と突き破りつつ顔面狙うは、シークレットトレイル!
新鮮なる生体電流により速度は戛然! 距離は至近!
通常ならば回避は叶わないだろう。
緊縛をもたらす道具を以て、好機につなげた根来。恐るべき抜け目のなさである。
「しかし!」
笑う久世家は陽炎と共にかきうせる。
木が代わりに現われ、シークレットトレイルが掠る。
爆風をくぐり抜け、転移済みの久世家の横を通り過ぎ、シークレットトレイルは。
赤い雫に濡れひたった。
「避けられるというのもさんざん繰り返した道理でしょう?」
「そうね。けど、今は違うわ」
久世家は背中に突きつけられた冷たい感触に、息を呑んだ。
入れ替わり不能の硬直時間にそうされた動揺と、不覚にも生じた食欲の両方に。

51 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/27(木) 07:36:18 ID:0AMiodGR0
(……甘やかな匂いがするな)
背後にいるのは、千歳。
(きっと彼女は手を切ったな。そこまでやるとは予測できなかった)
無表情のまま、ゆるやかに手を押し込もうとしている。
(背後に瞬間移動するコト自体は読んでいた。が、それはあくまでっ! 根来さん込みだ!)
久世屋の胸にある章印目がけ、背中から。
(先入観に捕らわれていたのは俺こそ! 決定打は誰が使おうと決定打じゃないか……!)
手にしたシークレットトレイルで、
(飛んでたヤツを無理やりつかんだらしい)
ずぶずぶと。
(つかんだのが先か、俺が攻撃を避けれない一瞬を狙って背後に瞬間移動したのが先か。それ
は分からないけど、なんて甘ったるい匂いだ。気づかなかったのが惜しいぐらい、いい匂い)
シークレットトレイルを握り締める千歳の手は、血にまみれている。
猛然と飛びすさる刃物をつかもうとした場合……
柄を目当てにすれば、掴み損ねる恐れがある。
だから千歳は迷うことなく、刀身をつかんだのだ。よって、出血している。
全ては決定打を手にし、久世家の隙を突くためだけに。

『奴の生命線は7分以内に断たれる』
久世屋が予想した会話の後、根来は千歳にペンを要求し、地図の片隅にこう書いた。
『が、第三者の存在が明らかになったいま、百雷銃の全滅より久世屋の抹殺を優先する。
奴は全滅を防ぐべく何らかの策を隠し持っているだろう。私は敢えてそれに乗り、隙を作る。
いいか。シークレットトレイルを奴の後ろに飛ばす。移動後の奴の後ろへだ。貴殿はそれを
使え。少々際どい賭けだが、貴殿の能力は私より不意打ちに向いている』

(刺さった以上、もはや身代わりは無意味だな。今から転移しても、俺の体に接触しているも
のはついてくる。じゃなきゃ、俺が服ごと転移する理由がない)
よってシークレットトレイルも、それを突き刺している千歳も、久世家についてくる。
つまり回避の手段は、封殺済み。
以上の思考は、入れ替わりが発動するまでのわずかな時間に行われ。
久世屋の手元で何かが切れる音がした。

52 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/27(木) 07:38:11 ID:0AMiodGR0
それはギリギリに伸ばした火縄が、切れる音。
通常の物理的見地から見れば、根来が引かれる程度で済んだのだろうが……
入れ替わりで久世屋ごと5mほど一気に転移したせいで、一気に伸びてちぎれた。
根来はまだ捕縛されつつも、ゆっくりゆっくり高度を下げて、やがて地面に落ちた。
現状が『このまま』推移したなら、彼が自由を取り戻し、千歳に加勢するのは明白だ。
(先が見えたな)
久世家は起こりつつある光景をひどく冷静に見据えながら、行く末を悟っていた。

(この勝負──…

俺 た ち の 勝 ち だ ! !)

一瞬のできごとだった。
「クエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!」
突如響いた奇怪なる声に、銃声が重なるまで、本当に一瞬のできごとだった。
千歳の視線の先では、恐るべき事態が勃発していた。
縛られた根来の肩口から、血煙が舞い上がる!
彼は恐らく、とっさに身をよじって心臓への打撃を避けたのだろう。
そして傍にはあったのは……新鮮な硝煙を銃口から立ち上らせる拳銃と。
鼻の大きな薄ら汚れた白スーツの男!!
「クエエエエエ!!」
もはや瞳は正気をなくしている。
瞳がグルグルと渦を巻き、自我があるかも疑わしい。
ただあるのは、殺意のみ。離れた千歳ですら背筋に冷たい物を感じた。
男──鷲尾は根来へ銃口を突きつける。身動き取れぬ根来の胸へと密着させて。
千歳の目に、それらの光景と鷲尾の冷酷な笑みが焼きついた。
迷う暇は、なかった。
千歳はシークレットレイルを引き抜くと、根来の下へ瞬間移動した。

気配を感じた久世家は瞳を濁らせた。
(ほらね。いま振りまいている血液のように甘ったるい考えこそ、つけいる隙!! ま、別に
俺が考えたワケじゃあないし、本当にもう一押しでやられてたけど)

53 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/27(木) 07:40:04 ID:0AMiodGR0
ちょっとバツが悪そうに頭をかいてみる。
(数の上では一応フェアだけど、実際は俺たちが有利)
被弾した根来と、戦闘専門でない千歳

単体では攻撃を当てられないホムンクルスと、銃を手にした元金融会社社長代行。
(ともう1人。姿を見せない優秀な人。彼が加勢に加わったら、決定的だ)
さする背中の刺し傷も、ゆるやかながらに回復しつつある。

「さて。見ものだな」
森の奥で、金髪の男──総角(あげまき)はボソリと呟いた。
手にしているのは、鉄の鞭。
「LXEの連中は馬鹿にしてたが、使いようによってはこうなる」
景気づけに振るうと、山肌に当たって乾いた音がした。
「鉄鞭(スティールウィップ)の武装錬金、ノイズィハーメルン。催眠という特性は、行きずりの
馬の骨をして切札に仕立て上げられるもの。だが正直、扇が降ってきた時は、ヒヤリとしたぞ。
あのままならば鞭が打てず、奴を行かせられなかったからな」
じゃらり。
開いた方の手で認識票を握り締めた。
「アリスの方も強めておこう。意味は無さそうだが念は入れる。危機に対して備えてこそ、リ
ーダーたりうる。だが少々、手出しのタイミングがシビアすぎたきらいもあるか……」

54 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/07/27(木) 07:46:52 ID:0AMiodGR0
実はこんな長い戦闘を描くのは初めてなのです。
ああ、説明が長い。情報量が多すぎる。分量も長い。みなさんすみませぬ……

>>22さん
そうですなぁ。戦闘一点張りの性格なので、情緒豊かな他の二人の前じゃどうも地味に。され
ど地味な仕事人振りが好きなのでそれもまた。なんだか久世屋はホルマジオみたいになりました。
>でも、敵キャラやヒロインが目立つのは漫画でも人気ある作品ですよね!
ありがとうございます。

>>42さん
千歳と根来の能力を活かすため、こんな戦闘にしてみましたが、いかがでしたでしょうか。理
詰めで勝つというのは結構好きですよ。まぁ、アリバイ崩しはすっ飛ばしていたりしますけどw
サムライXは良いですよね。またいずれ、これを用いて色々やるのでお楽しみに。

銀杏丸さん
鏡からいかにして脱出するか。やはりここは師匠曰くの「要は小宇宙です!」にて?
賑やかしい方が逆境を爽やかにくぐり抜けられるモノなので、二人はこれいいと思いますよ。
爆爵とヴィクターのやり取り、楽しみにしております。
>スターダストさんにそういっていただけると、グゥレィトォ!な感じです!
いえいえ。自分などは一介の錬金好きに過ぎませんので。恐縮です。

55 :作者の都合により名無しです:2006/07/27(木) 07:58:11 ID:TzOlNs6U0
朝から力作、お疲れ様です。
久世屋は優秀なんですね。戦略家としてなかなか。
ただ、決定的な弱点として調子に乗りすぎるところがあるな
性格的にどうしても冷静になれないというか。
鷲尾とのコンビで根来&千歳はピンチだけど、
ギリギリのところでその隙を突かれそう。





56 :作者の都合により名無しです:2006/07/27(木) 12:15:58 ID:bTcrjBm60
>カマイタチさん
警察が着てくれる、か・・
なんかこの言葉が新たなる死亡フラグに思える。
全ての単語に意味がありそうですごいな。

>銀案丸さん
アドニスってオリキャラだったっけ?
チャンピオンでハーデス編が掲載されるけど
それも反映してくれるともっと楽しいかな?

>スターダストさん
知能の高そうな2人の戦いも終焉を迎えそうですね。
是非とも千歳に決めてほしいところだ。
ここからの逆転のカギを担ってほしい。


57 :バーディーと導きの神〜突入直前〜:2006/07/27(木) 16:46:40 ID:QaWof12f0
こちらは黒竜城の下までたどり着いた潜入部隊一行。ユウの長屋を出てからというものの、
これといった障害もなくたどり着けたのは不気味だが、今はそれを不審に思っているとき
ではない。
黒竜城は、天然の山を削りだして創られた自然の要害だった。
城の周囲4箇所から長い支柱のようなものが延び、城の本体につながっている。支柱の下
は本体のところまですべて堀に囲まれており、入り口は正門一箇所しかない。城というよ
りはタワーと言うべき代物だった。
「さあて、どうにかここまでこれたけど、ここからが大変よ。どうやって上に行くか。そ
れが問題ね」
一本の支柱の根元に集まった一堂の中、バーディーは悪の要塞にたどり着いたゲームの
主人公の気持ちで言った。
「城の中から行けないかな?」
モルプに問うザン。
「無理だんべな」
モルプは即座に否定した。
「今の時間、昇降機は動いでねえし、各階の階段には見張りがいるだ。中からはまず行げ
ねえと考えたほうがよかっぺな」
「じゃあそうなると……」
バーディーは支柱を見上げながらため息を漏らした。
「仕方ねえな。最悪の計画で行くか」
900レブ(メートル)の強行登坂。それ以外に選択肢はなかった。
しかしモルプは明るい。
「だけんどオラほうは全然平気だべ」
『なんで?』
一斉に聞く他三名。
「んっとな……」
そういうとモルプは背中の服のボタンを外した。
「オラほうは空を飛ぶことが出来っからだべ」
大きな翼をにょっきり出して、笑顔で答えるモルプ。
『ずりー』
再び三名の言葉がハモる。しかしそこでザンがあることに気づく。

58 :バーディーと導きの神〜突入直前〜:2006/07/27(木) 16:47:36 ID:QaWof12f0
「ねえモルプ、もしかして僕たちを連れて飛べないかな?」
はっと気づくバーディーとシアン。それができれば大幅な時間短縮の上、無駄な体力の
浪費をせずにすむ。
「んー……」
モルプは三人を見渡して答えた。
「そうだなや、なんとかなるかもしんねえべ。……ザンだけな」
「本当!」
喜ぶザンに不満げなバーディーとシアン。
「どーして私たちはダメなの?」
バーディーが不平をもらす。だがモルプの答えはあっけなかった。
「重いから無理。地道に登ってきてくろ」
その言葉に肩を落とすバーディーとシアン。
バーディーはもう一度ため息をつくと、今度はザンに向かって釘をさした。
「ザン君、焦って先走りしないようにね。駐屯地でのこと、私忘れてないわよ」
「はい自重します」
返事だけはよいザンだった。

同じ頃、王都に近い森の中に身を隠しているソシュウたち。
森の木の上から念で状況を探っていたヨキーウがソシュウたちのところに降りてくる。
「どうだ?」
「ん、まだ動いてないようだ」
ソシュウの問いに、ヨキーウは気楽に答える。
「バーディーとシアンがついてるんだ。なにかあればすぐに分かるさ」
「そうだな。知らせがないのは無事な証拠……、と言うしな。待つしかないか……」
ソシュウがごちたそのとき、なにかを踏みつけるような音が辺りに響いた。
異変に気づき、とっさに転送術で木の上に隠れて気配を消す二人。
結構な重量を持った足音はソシュウたちの側まで近づき、そこで止まった。
「それで隠れたつもりかい?気配がバレバレだぜ、ソシュウ」
その声にソシュウとヨキーウは驚く。
「義伯父(おじき)!牙炎義伯父!」
ソシュウとヨキーウは安心して木から降りる。

59 :バーディーと導きの神〜突入直前〜:2006/07/27(木) 16:48:20 ID:QaWof12f0
「よお、久しぶりだなソシュウ。元気だったか?」
牙炎はまるで散歩中に出会ったかのような調子で言った。
そんな牙炎をソシュウは相変わらずだと思った。
「んなことよりどうしてこんなところへ?」
当然思った疑問を口にする。しかし牙炎はあくまでのほほんとしている。
「本国から無電で知らしてきたんでよ」
ソシュウは呆れた。
「たったそんだけで来ちまったのかい?自分の部隊をほっといてさ!」
「親父に言われたのさ」
「親方に?」
「ああ、親父が予言師としても才幹を振るっていたことは知ってるな」
「そりゃあ……」
「その親父が俺に行けと言いやがったのさ。嫌な予感がするとぬかしてよ」
「親方が……」
「だから、そんな危ねえところに部下をこさせられねえからな。俺たちだけで来たのさ。
そのほうがなにかと身軽だし、万一やられても被害は最小限ですむ」
「嫌な予感、親方が……、って、ちょっと待て義伯父。今『俺たち』って言った?」
ソシュウは自身の考えを中断して、牙炎のセリフを指摘した。
辺りには牙炎一人しかいない。
「ああ、そりゃこの人のこった」
牙炎が言い、自分の頭の上を指差したところには、小さなネズミが一匹乗っていた。
「やあ、お初にお目にかかる。私は連邦特殊捜査官でキデル・フォルテ巡査部長という者だ」
ちゃっかり牙炎の頭の上に陣取ったキデルがひょっこり顔を出して挨拶した。
ソシュウたちは唖然とした顔になる。当然のことだが。
「ネ……」
ソシュウが指差して言いかけたところ、キデルは機先を制して押し止める。
「分かってる。分かってるよ君たち。この星にも私に似た生物がいることはよく存じ上げ
ている。しかし私はネズミなどではない。リクルス人というれっきとした人間だよ。君た
ちと言語で意思疎通もできれば読み書きもできる。ま、それで納得してくれたまえ」
キデルが牙炎の頭の上で人差し指を立てて得意げに言ってみれば、ソシュウたちはそれ以
上なにも言えなかった。

60 :バーディーと導きの神〜突入直前〜:2006/07/27(木) 16:49:01 ID:QaWof12f0
「ま、そういうことらしい。こいつはお前さんたちが知っているバーディーとか言う娘さ
んの同僚だそうだ。仲良くしてやんな」
「よろしく頼むよ」
鼻をヒクヒクとさせながらキデル。もはや毒気の抜かれたソシュウたちにはそれで納得す
るしかなかった。
「ま、まあいいや。それならそれで。で、それはそうとなんて格好してんだい義伯父」
とりあえず受け流すことに成功したソシュウは、牙炎の衣装について話題を移した。
牙炎はめったに着ない煌びやかなフルプレートアーマーを着込んでいたのだ。
「こいつか?この姿、竜人以外が見たらけっこうビビると思って着てきたんだけど、どう
だ、かっこいいだろう」
ふふんとなにやら自慢げな牙炎。ソシュウはバッチリと親指を立てる。
しかし次の瞬間には牙炎は真顔に戻る。
「ところで……、気がついていたか?」
牙炎は空を見つめながら言った。
「ん、あるかなしかの気配ならね」
ソシュウもそれに応じる。
「むこうも気づいてると考えたほうがいいだろうな」
「まあね」
「さあて、この状況で、奴らがどう出てくるか楽しみだ」
牙炎は不敵に笑ってそう言った。

61 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/27(木) 16:59:19 ID:QaWof12f0
新スレオメです。

竜人牙炎が援護に到着。ついでに忘れていたキデルもくっついてきてます。
ザンは一人楽ちんです。

416さん
バーディー読んでくださいね。話が進むほど味が出てきますよ。
422さん
気に入ってくれてなによりです。
423さん
バーディーの少女時代も語れてますからね。結構奥が深いです。

62 :作者の都合により名無しです:2006/07/27(木) 20:15:34 ID:eOiECGqF0
>影抜忍者出歯亀ネゴロ
朝からお疲れ様です。確かに、バトルとしてはかなり長いですね。
でも多分、お話の中でも重要な部分を占める戦いでしょうから
きっちり書き込んで下さい。根来の千歳を見る目とか僅かに変わってるし。

>鉄腕バーディ
かなり危険な状況へと向かってるのに、バーディパーティは
どこかほのぼのとしてますね。原作でも彼女はこんな感じだけど。
続々とキャラが集合して、お話も徐々に激動しそうですな

63 :ふら〜り:2006/07/27(木) 22:56:02 ID:0OuthGAO0
当スレ史上最速では? と思われる勢いの中、いよいよ50に向けて踏み出しました41。
職人さんたち&バレさんに♪感謝と敬意〜♪しつつ、今日も今日とて読ませて頂いてます。
これから次スレまでの間にまた、より一層多くの人たちが集い賑わいますように……

>>1さん&テンプレ屋さん
おつ華麗さま。新人さんの好調活躍も嬉しいですが、ご無沙汰の方々の復帰も待ち遠しい。
元ネタの傾向もSSの作風も、みんなバラバラでそれぞれの楽しさがありますものね。
どんなにスレが好調でも、しばらく読まないと恋しくなるもの……待ってますよっ!


>>スターダストさん
>それは根来・千歳両名の姿勢(スタンス)からはありえるコト。
手作り弁当な関係のヒーロー&ヒロインだというのに、↑が容易に想像できてしまうから
コワいこの二人。で以前仰っておられたように、言動もシチュも久世屋、主人公してます
ね。劣勢の中で必死に策を巡らす姿(私は待ってたシリアス顔)、応援してしまいました。

>>サナダムシさん
おぉ井上強い……と言いたいけど芸術家弱すぎ。多分、このままKOで終わりではない。
と思いたい。速攻連攻で命令させなければいいってのは偶然とはいえ良策、でもって加藤
っぽい。何気に敬愛する師匠の路線を踏襲してた井上、この戦い勝てば褒めて貰えるぞっ。

>>17〜さん
緊迫した状況の中にあっても、どこかほのぼの和気藹々とした雰囲気の一行。けれども、
その内には重く負っているものがある、と。それに潰されないのが彼らの強さでしょうが、
当面の目標たるリュミールが……状況悪化フラグに見えて仕方ない。次回、何かありそう。


64 :ふら〜り:2006/07/27(木) 22:57:22 ID:0OuthGAO0
>>一真さん
いや〜笑った笑った。そりゃまあ男塾だって学園モノっちゃあ学園モノですけどね。一応。
で容赦なく夢オチですかぃ。しかしまぁやっぱり、この二人が噛み合うと楽しいですね。
心なしか銀時が嬉しそうに見える。これでイメージ固めてのシリアス編ってのも楽しみ!

>>コテさん
おぉロワですか。特異な意味で意表突かれました。思い起こせば、私の初SSはバキスレ
より先にレゲロワ……懐かしい。で参加者リストを見たところ、大体は知っているキャラ
なのでほっとしました。脱出か優勝か、誰が誰をどう殺すのか。先行き期待してますぞ。

>>かまいたちさん
ん、はじめが「現場で無言でじ〜っと観察」をしてた。ってことは多分、後々何かの閃き
のタネになるものが、今回提示されてるんだろうなと。そういう神の視点な予測はできて
も、実際ちゃんとした推理はできず。死体運びが証拠隠滅活動になってるとかかな……?

>>銀杏丸さん
はははは。貴鬼だ貴鬼だ、成長しようが出世しようがこれぞ貴鬼。と微笑ましく読ませて
頂きました。それでもやっぱり成長し出世した彼、少女人形をうるさい黙れっとばかりに
軽くいなして……でもオチがつく。後輩が見てるこの場で、実力と威厳を示せるか貴鬼。


65 :作者の都合により名無しです:2006/07/28(金) 06:08:05 ID:NZP9pK640
バーディ、結構面白くなってきたな。
俺が原作を読み始めたってのもあるが

66 :作者の都合により名無しです:2006/07/28(金) 12:36:09 ID:7Rs4ikQQ0
現スレも1ヶ月以内で終わりそうだな
パート50は年内は無理だろうけど

67 :作者の都合により名無しです:2006/07/28(金) 20:45:06 ID:sKNw+7zl0
ミドリさんマダー?

68 :作者の都合により名無しです:2006/07/29(土) 07:37:29 ID:LQ9i76Qp0
ふらーりさんもそろそろなんか書いてよ
ふらーりさんのパタロリ好きなんだ

69 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/29(土) 10:38:10 ID:rq0bayp20
まず千歳は。
鷲尾の背中を袈裟懸けに切り捨てた。
かすかにひるんだ鷲尾だが、かかとを軸に右回転! 振り向きざまに発砲を試みる!
だがその半ば!! 
千歳は横殴りの凄まじい一撃を、鷲尾へ炸裂させていた!
形こそ平手だが、装着しているモノも威力もそんなチャチなモノではない。
硬質を誇るヘルメスドライブの筺体を、逃亡生活ですっかり骨ばった顔面に遠慮なくブチかまし
2〜3mほど吹き飛ばしていた。
いわゆる火事場の馬鹿力が、もろに鷲尾の反転速度にカウンターを合わせた結果こうなり、
彼は中空で意識をなくした。
その体が地上に沈むより早く、千歳はシークレットトレイルを根来付近の地面に刺し。
鷲尾の隣へ瞬間移動!(目視できる所ならば、付属のタッチペンを使わずとも可能)
右手からリボルバー式の拳銃を奪い取り、くるり反転。
ややぎこちなく構えながら撃鉄を引き起こし、発砲。
弾丸が濃霧を切り裂き久世屋へ向かう。
むろん、例の入れ替え能力はいまだ有効。久世屋代わりの木に着弾。爆発。
親指が慎重に撃鉄をなぞり、再度発砲。硝煙が霧に溶け込んだ。
弾丸は、斜め後ろ5mへ入れ替わった敵へと向かい、入れ替え発動。木が爆発。
千歳は同じ要領で3発目を発砲。同じ結果が生まれた。
「無駄なコトですよ。当たりませんし、仮に当たったとしてもホムンクルスの俺には通じ」
グリップを血に濡らす掌が4度目の引き金を引いた。木に着弾した。
百雷銃より甲高い爆発音が轟く中、千歳は弾切れを確認して、予想外の行動を取った。
14mはある久世屋との距離を瞬間移動で一気に詰め、銃を投げつけたのだ!
がつり。
鈍い音と共に、銃は久世屋の顔面に当たった。
「ヤケですか」
千歳は止まらない。また姿を消し
「いいえ」
久世屋の背後で、ヘルメスドライブを最上段に大きく振りかぶる。
「人間相手ならともかく、俺を倒すには至りませんよ」
久世屋は振り向きもせず細腕をつかみとり、正面へと投げ捨てた。

70 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/29(土) 10:39:20 ID:rq0bayp20
ツナギをまとった華奢な体は紙飛行機のように軽々と飛んでいき、背中から木に激突。
木肌に波紋が広がったのをみて、久世屋は衝撃のすごさに舌を巻いた。
「しかし、千歳さんらしくもない。不意打ちを何度も繰り返えされちゃ、警戒ぐらいしますよ」
「……どうやら、あなたのいった通り」
「何のコトですか?」
「百雷銃の数。本当に残り4個だったようね。だからもう、自動回避はできない。違う?」
「え」
久世屋は言葉の意味を反芻し、理解をすると愕然とその場に立ち尽くした。
(しまった! さっきの銃撃はダメージを狙ったんじゃない!)
彼は先ほどこういった。

──そうですか。根来さんたちから貰える唯一の生存チャンスがこれで費えた。しかも残り
──4つに減った

対する千歳は弾丸を4発、久世屋に撃った。
そしてその数だけ、入れ替わりをさせた。
4引く4は、いうまでもなくゼロ。
(なんてコトだ。銃を投げたのも不意打ちも、ヤケなんかじゃない。入れ替わりができなくなっ
たかどうかの確認! しかも銃は弾切れ。例えあの浮浪者が立ち上がれても、もう使うコト
はできない……!)
正に一石二鳥。敵2人の切札を千歳は一気に使い尽くしたのだ。

「念が入ってますね。あの忍者刀を根来さんのところへ残したのは、万が一を考えてのコト。
俺を仕留め損ねて、忍者刀を奪われたら本当に打つ手がなくなりますからね。だから百雷
銃の破壊に徹して、俺へのトドメを根来さんに託した」

けれど状況はなお悪い。
根来の肩からはとめどなく血が溢れて地面を濡らす。
かつて中村剛太という新米から受けた傷が完治してない状態で、幾多の爆発をその身に受
けて、肩を銃撃されたのだ。肉体的な損傷、酸鼻を極めている。
千歳も万全ではない。

71 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/29(土) 10:41:12 ID:rq0bayp20
まず昼に関東界隈、夜には関東近郊にある森と瀬戸内海近くの戦団日本支部を瞬間移動
で往復している。
これだけでも実は莫大な精神力を消費しているし、一連の戦闘で短い距離の瞬間移動を繰
り返し、久世屋の位置も追尾していたから、消耗は激しい。
いま木に叩きつけられたダメージも少なくない。シークレットトレイルを掴んだ時に負った左手
の傷からもいまだに出血している。
甘やかな匂いが久世屋の鼻をつき、彼は生唾を飲んだ。
(いいコトを思いついたぞ。俺の悪癖をうまく使って、秘密裏に勝利の準備をしよう)
チスイコウモリのホムンクルスはつかつかと千歳に歩み寄り、抵抗を物ともせず捕獲した。
「攻撃を避けられなくなったんじゃ仕方ありません。この体勢で根来さんのダウンを待つとし
ましょう。あの忍者刀を使えるのは彼だけになりますからね」
千歳の右腕からヘルメスドライブを剥ぎ取り、はるか背後へ投げ捨てて。
「これであなたは何もできない。逃げるコトも不意打ちをするコトも」
体の前で千歳を無理やり立たせ、共に向きを変えた。
彼女の苗字どおり、楯にする形だ。誰からの楯か? むろん、根来への。
彼はおぼつかないながらも刀を杖に立ち上がり、凄絶な目つきで久世屋たちを睨んでいた。
「何しろお二人とも頭が非常に回るので、野放しにしておくと俺が負けかねません。それは
さておき、先ほどから漂うこの甘やかな匂いには、ついそそられてしまいます」
舌なめずりと共に千歳の左腕を捻り上げ、掌の傷を口に運ぶ。
熱い粘着質な舌が柔らかな肌をぬらりと舐め上げ、出血を呑んでいく。
走る疼痛とふいごのように吹きかけられる鼻息に、千歳は眉根を苦悶に引きつらせた。
「やはりおいしい。規則正しい生活を送っていなければこうもサラサラにはならないでしょう。
千歳さんに比べたら、部長の血なんて脂切ってるだけのファミレスの食事みたいな感じです
ね。おっと話が逸れました。千歳さんは人質になって、根来さんの手出しを防いでください」
そうすれば出血夥しい根来は、いずれ戦闘不能になる。
(そうじゃなくても、勝てる。いま俺がやったのは、ただの欲求を満たす行為じゃない。フフ。

72 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/29(土) 10:42:02 ID:rq0bayp20

トイズフェスティバルの筒は俺の体の『どこからでも』出せるんだ。根来さんのDNA込みでね)

やがて腕を解放された千歳は、伏目がちに呟いた。
「無駄よ」
息こそかすかに乱れているが、あらゆる迷いのない静かな声だ。
「私は人質にはならない。そのための下準備もしてあるわ」
「下準備ですか。それは多分、『人質になった時は見捨てていい』とかいう約束だか頼みゴト
といったところでしょうね」
「……そうね」
「下らん」
口を開いたのは根来。
「私に構い、唯一の機会を逃すからそうなる」
ひどく糾弾的なトゲが含まれている。
「ごめんなさい。けれど、あの男を近づけてしまったのは私のミスだから。私のミスのせいで」

7年前の雨の日、千歳は多くの人命を死に追いやってしまった。
その時がループしている錯覚を、千歳は感じている。
ヘルメスドライブは、彼女が顔を知っている人間の居場所を特定できる。
もし霧が出る前に、辺りを索敵さえしておけば。
第三者(総角)は無理でも、鷲尾の所在ぐらいなら分かったかも知れない。
けれどしようとしなかった。結果、根来への発砲を許し、重傷を負わせた。

「……あなたを死なせたくはなかったの。本当にごめんなさい。あなたが任せてくれたチャン
スを不意にしてしまって……本当にごめんなさい。だから、あなたには私を犠牲にしていい
権利があるの。あなたが任務を遂行できれば、私はそれで構わない」
霧の中でうっすら見える。
毅然とした眼差しを、うろんげに受け止める根来が。その顔には憤りすら浮かんでいる。
「昼間にいった筈だ」

──任務において戦士などは、所詮歩にすぎん。一定の 訓練を施しさえすれば補充は効く。
──ならば遂行を優先した結果、多少減ろうと問題ない。そして。

73 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/29(土) 10:42:53 ID:rq0bayp20

──それは貴殿のみならず、私とて例外ではない。

「我々のうちどちらかが犠牲になろうと、戦団から見れば数は変わらないのだ。ならば、貴殿
は私を見捨てても支障はなかった」
「ええ。でも私にとってはそうじゃないから」
久世屋は内心でニンマリした。
(なんだか、こう聞こえますよ根来さん。『千歳さんが助かるなら自分は死んでも良かった』って。
どうやら、いいお仲間と組織への帰属意識をお持ちのようでで。けど残念ですね根来さん。あ
なたが後生大事にしているその2つは、けして勝利に結びつきません。いまから千歳さんを
助けようと犠牲にしようと、あなたは負けます)
なぜか?
(トイズフェスティバルの残弾全て10個! あなたの作った空間を利用して、千歳さんの中に
仕掛けてありますからね。所詮、倫理観だとか職務意識なんてモノは、抽出物のエネルギー
の前じゃ真っ黒コゲになるしかありません。部長がなすすべなく俺に殺されたように)
実は先ほど血を舐め取ったとき、久世屋は足裏から赤い筒を10個出して、亜空間へと潜ら
せてある。むろん、根来のDNAを含んで形成しているから出入りは自在。
(血を舐めたのは、千歳さんの手に超音波を当てて、コウモリたちを動かすため。この霧の
せいで、声を普通に出しても例の空間まで届かない。だから千歳さんの手に直接当てて、体内
の空間から地面へと流した)
その甲斐あって、コウモリに変形した筒どもも、亜空間経由で千歳の足から体内へ浸入している。
両肩と、首と、背骨の辺りで火縄を伸ばし、筒へ変形。巻きついた。
現空間にてやれば露見は明らかのこの手段。
だが、亜空間においては別。
戦闘開始直後の千歳が根来の潜入を気づかなかったのを見ても分かるように、亜空間内の
異物は知覚できない。
(フフ。すごいぞ俺の機転と戦略眼。そういえば、俺に核鉄と手紙を送ってきた例の人。いま
霧を出してる人が手紙に書いてたな。『戦いに勝ったら、試しに俺の組織を見てみないか?』
って。なんだったけなぁ。名前。そうだそうだ。ザ・ブレーメンタウン・ミュージシャンズ。そこで
参謀や軍師をやるのも悪くないかも。きっと俺には軍略家の才能があるに違いない)

74 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/29(土) 10:43:53 ID:dtK6lUYz0
余談になるが、司馬遼太郎曰く、軍略家の才能というのはひどく稀有で先天的なモノらしい。
一民族に1人か2人生まれれば良い方と彼はいう。
古代中国で漢を勝利に導いた韓信。源義経。日本陸軍の礎を築いた村田蔵六(大村益次郎)。
といった辺りが代表例だが、果たして久世屋にそういう才能があるかどうか。
彼の思案、続く。
(あなたたちは肝心なコトを忘れている。苦労して全滅させたのは、あらかじめ仕掛けておい
た物だけだってね。万が一ぐらい俺はちゃんと踏まえて、残弾は温存している)
加えて。
(身代わりにできるのは木だけじゃない。トイズフェスティバルさえ巻きつけておけば何でもい
い。千歳さんの背骨とかでもね。だから、奇襲で俺だけを狙っても、真っ向から千歳さんごと
俺を狙っても結果は同じ。入れ替わった千歳さんが攻撃を受けて中から爆発。10個もあれ
ば、満身創痍の根来さんを巻き添えで殺すコトぐらいは可能。もちろん場合によっては俺にも
爆発が当たるけど、2人を相手にする恐怖を考えれば、爆発を浴びる方がまだ気楽)

殺伐とした思考をおくびにも出さず、久世屋はのんびりと告げた。
「お話は結構ですが、すればするだけ俺が有利になりますよ。いいんですか。コレ、根来さん
たちが好きだからいうんですよ。だって筋道立った考えで俺を追い詰めてきたんですから。
部長みたいに惰性まみれで遊ぶ時間を削ぐ人間は大嫌いですが、あなたたちは別」
おしゃべりしつつ時間切れを待つのも面白そうと、久世屋は会話を変えた。
「例えば昨日。ディスクアニマルを組み立てるクリーンルームへ入った時、根来さんは逆立っ
た髪の毛の上に帽子を乗せてて、ちびまる子ちゃんに出てくる永沢君みたいで面白かったと
か、そういう話題で時間をつぶしてみましょうか? あの後、ちゃんと普通に帽子を被れてい
たのはなんでとか、根来さんの髪はどういう原理で逆立っているのとか、色々ね」
「よく喋る男だ」
根来は徐々に距離を詰めつつある。少し駆ければ、久世屋へ攻撃できるだろう。
千歳が巻き添えを食らうコトを無視すればの話だが。
「すみませんね。根がおもちゃ好きなので、いい加減な部分の方が多いんですよ。すぐ調子

75 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/29(土) 10:45:22 ID:dtK6lUYz0
に乗るのは悪いクセ。でも、調子に乗ってる方が人生何かと楽しいじゃないですか。で、根来
さんの髪はどうセットしてるんですか?」
「答える必要はない」
根来の顔はもはや紙のように白く、肩で息を激しくついている。
「ですか。ならば血がなくなる前に早く攻撃をしないと大変ですね」
言葉に呼応するように、根来の全身から凄絶な攻撃気配がほとばしった。
彼は斬り込むべく、つま先に最後の力を込め──…
そこで意外な人物が会話に乗った。
「私も知りたいわ」
千歳である。根来は攻撃に移るきっかけを潰され、露骨に顔をしかめた。
「この状況で何を」
「だってあなたの髪は柔らかくて、とても自然に逆立つとは思えないもの」
言葉を遮ってまで意見を述べる千歳に、久世屋は苦笑した。
(生真面目なコトで。でも良かった。2人とも策には気づいてないようだ。俺は優勢に見えるけ
ど勘付かれたら絶対負けるから、一安心って所だ。さて。攻撃の中で気をつけるべきは、突
き……かな。千歳さんごと俺を刺せば、入れ替わっても刀は抜けない。そこにさえ気をつけ
ておこう)
「まったく判じ難──」
根来は言葉半ばで口をつぐんだ。ひどい違和感を覚えたのだ。
やがてそこまでの会話に、けしてありえない内容が含まれているのに気づいて。
根来は霧に霞む千歳を見た。彼女も一瞬だけ視線を送り、さりげなく逸らした。
その反応にどういうおかしみを覚えたのか。
根来は笑った。唇の端を歪めるだけの、猛禽類的な笑い方で。
「そうだな。聞けば貴殿は色を成す。もっとも、生きていればの話だが」
言葉と共に、根来は二人に向かって駆けた。シークレットトレイルを携えて猛然と!

(来たか! 今まで俺がやってきた苦労は、スポーツ選手や研究者の苦労! おもちゃを
買い漁れる時間を抽出するための、それこそ買ってでもやるべき苦労! 勝って完遂して
みせるぞ絶対!)

久世屋が全神経を研ぎ澄ます中!
千歳の足元から頭にかけ、金の刃が大きく弧を描いていた!

76 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/07/29(土) 10:46:46 ID:dtK6lUYz0
何事もなければ、次回もしくは次々回にて最終回となります。
月並みではありますが、ここまでこれたのは皆さまのご感想あってこそ。
ありがとうございます。良ければ最後までお付き合いのほどを。

話は変わり千歳が銃を奪うところは「いい銃(ry)」がちらついてちらついてw

工場の社員の名前は「零(ゼロ)」という和風ホラーゲームのキャラが元です。
久世屋の元ネタは「久世 夜舟」。3作目に出てくる手をめっさ生やしたお婆さんお化け。
錬金キャラの「戦闘絡みの名詞を含む」命名則にちなんで、「久世 夜襲」にしたかったので
すが、チョビがいつの間にかチョビだったように「久世屋」で定着してます。
あ、「総角主税」は零ではなく、仮面ライダーカブトが元。総てが力になる〜♪のですよ彼。
以上、錬金読者へお送りするキャラファイルもどき。

>>55
白状します。前回は出社間際の投稿だったので、危うく遅刻をする所でしたw
そして実は久世屋、今回時点ですでに隙を突かれています。攻撃より一段階上の部分で。
でも確かに参謀とかやらしたらイイ線行くかも。……ああ。それも捨てがたく、されど…………

>>56さん
前々から考えていた彼女のリカバーっぷり、果たしていかがでしたでしょうか?
逆転のカギはもちろん千歳も握っております。のみならず、三人ともが。一人はそれを利用
され、一人は思わぬところからもう一本出して、一人は全員のカギを上手くまとめる予定です。

>>62さん
いかんせん、バトルというのを本格的に書いたのは鷲尾戦から数えてまだ2度目だったりす
るので、つい長引いて……あ、根来も押さえるべき所は何とか押さえてあります。彼の千
歳を見る目は、このSSを奇麗にまとめるためにどうしても必要ですので。いや本当。

ふら〜りさん
今までの彼らのスタンスが、ようやく一つの結果へ結びつきそうです。
シリアス顔に喜んでいただけると嬉しいです。自分も某所では、感想を反映してもらって喜ん
だ記憶がありますので……久世屋の主人公ぽさはノリノリで描いてますw いい感じに育ってくれました。

77 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/07/29(土) 11:04:08 ID:dtK6lUYz0
しまった。卍に引き続いて致命的なミス発見。

バレさんすみません。ミスが長いので修正したのを改めてお送りします。

残り4発じゃなく、2発。火縄からの刀を避けたときと、千歳に刺された後の
入れ替わりを勘定に入れ忘れてたorz

78 :作者の都合により名無しです:2006/07/29(土) 12:41:52 ID:j67Omzzq0
あと1、2回で終わりかぁ・・。正直、もう少し続くと思ってた。
好きなSSだったので残念ですけど、最後まで頑張って下さい。
やっぱりハッピーエンドがいいな。

79 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/29(土) 17:49:24 ID:2Jo0YnRF0
MUGENバトルロイヤル

第二話 ウルフ
林の中をワンピース姿で頭にカチューシャをしている一人の女が歩いていた。
女は周囲を見回したが誰もいない。風で植物の葉が鳴る音しかしない。
まだ安心出来る。少なくともまだ危険は無い。女がそう思った時だった。
彼女は尻に鋭い痛みを覚えた。
「あうっ!」
突然の痛みに耐え切れず女は声を上げた。
下を見ると一本の腕が地面から生え手刀が女の尻を突いていた。
否、腕だけではなかった。地面から人の上半身が生えていた。
「あひゃあ!」
再度尻を突かれ女は声を上げた。ガクリと力が抜け膝を付いた。
そして今度は鋭い突きが女の尻に来た。
「ッ・・あうう・・・。」
柔らかい声を上げうつ伏せになった女の尻をさらなる突き、つまりカンチョーが襲った。
「うう・・。」
「俺の名はカンチョーマン。アンタの名は?」
地面から男の体が浮かび上がった。
「うう・・・私の名は・・・卯月美和(うづきみわ)。」
下は土である。美和の服は土だらけになっている。
土だらけになりながらも這いつくばって彼女は男から逃げようとした。
だがその抵抗は無駄に終わった。男が美和の四肢を腕と足で固定したからである。
「へっへっへ・・・これから犯す女をよぉ・・・逃がしてたまるかよぉ。」
カンチョーマンが美和の股間を手でまさぐる。下着を指で押しのけ直に手で触れる。
「嫌ッ・・・。」
美和の声も聞かずカンチョーマンは美和の股間に指で刺激を与え続ける。
すると美和の股間が湿り始めた。
(こんな野蛮人にこんな事をされて・・・湿り始めるなんてッ・・・)
「ん・・?嬢ちゃん処女か。んじゃ最後に取っておこうか。」
カンチョーマンは片腕で美和の豊満な胸を揉み始めた。
「そこはぁッ・・・。」

80 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/29(土) 17:49:55 ID:2Jo0YnRF0
柔らかく弾力のある胸をカンチョーマンがマッサージをするかの様に揉みしだいていく。
「あひッ・・あうッ・・」
乳首を指でコリコリと刺激され美和が体をビクンと仰け反らせた。
「んじゃそろそろ唇を奪わせてもらうぜ。」
カンチョーマンは美和の体を仰向けにしその上に覆いかぶさっていく。
「ん・・・んんッ・・。」
言葉を発しようとした美和の口をカンチョーマンの唇が覆う。
「んッ・・・。」
遂に美和の舌とカンチョーマンの舌は触れ合った。
(あんッ・・気持ちイイ・・)
ねっとりした唾液の感触が美和の舌を覆い尽くす。
(あッ・・あうッ・・)
美和の膣を指で、美和の舌を舌で同時に攻めるカンチョーマン。
「ワカったぜお前のツボ。ほおら・・気持ちイイだろう?我慢しなくていいんだぜぇ。」
美和の臍(へそ)を舐め回すカンチョーマンに美和は抵抗しなかった。いや抵抗出来なかった。
快感が体中を巡り肉体が火照っているのだ。
(力が入らない・・・全く動けないよぉ・・)
「乳首が弱点なのかなぁ?」
カンチョーマンが美和の乳首を吸い、舌でネットリと舐める。
(ダメッ・・アタシそこ弱いのッ・・・やめてぇ・・。)
美和の心情とは裏腹に彼女の肉体は敏感に反応していた。

81 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/29(土) 17:50:27 ID:2Jo0YnRF0
「さあて・・・準備が出来た所で・・本番だぜぇ。」
下衆な笑いを口元に浮かべカンチョーマンが美和の下着を指で下げる。
「あッ・・・。」
「言っただろ。最後にとっておくって。」
(嫌あああッ!やめてぇええ!私の処女ォォォ!)
カンチョーマンが腰を降ろす。
美和の膣の中に肉棒が入って行き処女膜を破る。
「アアッー!」
電撃の様な快感が美和の脳を刺激し理性を吹き飛ばし意識すら朦朧にする。
数分後、呆けた顔をした美和が地面に転がっていた。
「ふうぅ・・イイ感じだったぜえ。まさかこの“ゲーム”とやらでムチプリに出会えるとはなぁ。」
すっきりした表情でその場を歩き出すカンチョーマンだったが彼は何かを感じ取り立ち止まった。
何かが来る。迫ってくる。それは人の気配の様に思えるが視線では無い。それでいて熱を帯びた何か。
カンチョーマンは後ろを振り返った。立っている人間はいなかった。
だが彼が「人間がいる」と思って振り返った事、それ自体が失敗だった。
なぜならカンチョーマンの目の前に青白い光弾が迫っていたからである。
「なにッ・・・これは一体ッ・・ぬおおお!」
腕でガードをするもカンチョーマンの体は光弾によって遥か彼方へと弾き飛ばされていった。
「ふぅ・・・不意打ち成功って所か・・。」
カンチョーマンがいなくなり、美和が倒れているその場所に一人のロンゲの男が現れた。
オレンジ色の道着を身に付け頬には十字傷がある。
「宙・・・・さん・・・?」
「え・・?」
美和はそれだけ呟くと動かなくなった。気絶したのだ。
「俺の名はヤムチャ・・・あ・・・寝てる。どうすっか。」

82 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/29(土) 17:51:09 ID:2Jo0YnRF0
【カンチョーマン@MUGENオリジナル】
状態 吹っ飛ばされている。
装備 なし
思考 ?

【卯月美和@鋼鉄ジーグ】
状態 レイプ後 気絶
装備 なし
思考 気絶中

【ヤムチャ@ドラゴンボール】
状態 普通(気弾発射により軽度の体力消耗)
装備 なし
思考 1ゲームの脱出
   2美和を助ける
   3仲間を集める

83 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/29(土) 17:57:28 ID:2Jo0YnRF0
どうも。コテです。のっけからエロシーン書いてしまいました。
バトロワみたいな状況だったら弱者は強者に踏みにじられるのではないかとイメージして作ってみました。
今回のラストで美和がヤムチャの声を聞いて「宙さん?」と言った理由は・・・・声優ネタです。
古谷さんはアムロ=レイ役として有名ですが昔「鋼鉄ジーグ」というアニメの主人公の
声も当てていたのです。
美和自体原作だと単なるサポートキャラなので何の変哲もない唯の人間です。
>>29さん
リュウは自分も好きです。波動拳も昇龍拳も漫画版では「奥義」ですし。
「殺意の波動」はゲーム版の設定だと思うので出す予定はありません。
>>30さん >>42さん
一応この世界では何かしらの「制限」がかかっているという設定にしたいと思います。
>>43
応援ありがとうです。
>>ふら〜りさん
一応メジャーな作品からキャラを集めてみました。


84 :作者の都合により名無しです:2006/07/29(土) 19:01:02 ID:fxugDvfN0
>スターダストさん
俺ももう少し続くと思ってた。
でも、この濃密で長いバトルがラストバトルということでちょうどいいかもね。
しかし、ようやく根来と千歳の息があってきたところでやっぱり惜しいかなあ?
最終回と気が早いけど新作、楽しみに待ってます。

>コテさん
バトルでなくエロシーンから入りましたか。しかもカンチョーマン。
陵辱されているという感じですなw
でも、お子様も多いと思うので、ほどほどに。
早くバトルがみたいですね。



85 :五十二話「剣と盾の会議」:2006/07/30(日) 02:09:23 ID:ozhObp9k0
目の前に居る痩せ細った老人は、笑顔でそこに座っていた。
彼の名はハインリヒ、港町オイゲンシュタットを治める騎士団の長である。
威厳のある髭を生やした顎を撫でながら、彼は口を開いた。
「二人とも軽装だね、腕に自信のある冒険者のようだ。
特にお嬢さんの方は鎧とはいえない、まるで盗賊みたいだ。」

これが年の功というものだろうか、一瞬で素性を見抜かれてしまった。
ルーティは正確にはレンズハンターなのだが盗賊と大差はない。
実際、敵の所持品を奪う技術も持ち合わせている。
そして一番厄介な特技は「道に落ちている金をネコババする」という物だ。
仲間に敵の攻撃を止めさせ、本来の役割である回復を行わず金品の収集に努める。
かなり年期の入った技のようで、雪の下に埋もれている金も彼女の眼からは逃げられない。
城等で使えば敵地の物を戦闘中に目の前で奪う為、敵の精神面にダメージを与えるが、
ネコババ中は回復を一切行わないので仲間の肉体、精神共にダメージを与える諸刃の剣である。

「その若さで君がどんな経験をしたのか気になる所だが、今からミルザブールで会議を開かねばならん。
どうだろう、その道中の護衛を騎士と共にしてくれれば会議の見学を認めよう。
私も馬車から見慣れた風景を眺めるだけではつまらんからな、道中で君達の旅の話でも聞かせてくれないか?」
この申し出を聞いて驚いたのは自分達だけではなかった、それも当然だ。
ここの騎士は一般人がこの門を潜るのには慣れているのだろう。
入ってきた時には動揺のような物は感じられなかった。
しかしハインリヒの言葉が終わると同時に、甲冑が大きく動く音が幾つも室内に響いた。
急いで姿勢を正していたが、先程までの落ち着きは見られない。
一体この老人は何故、このような申し出をしたのだろうか。

86 :五十二話「剣と盾の会議」:2006/07/30(日) 02:10:12 ID:ozhObp9k0
「おっと、もうこんな時間になってしまった。来るなら急いで支度をしてくれんか?」
騎士達の慌て様から、事前に仕組まれた事では無いのは判る。
これが演技だとすれば騙し討ちになってしまう、それは騎士道に反する行為だ。
だが罠でじゃ無い、とは言い切れない。道中で従者を使えば簡単に包囲されてしまう。
いや、彼は老いている身、配置の時点で既に囲まれていても全く不自然ではない。
ここは断って酒場の安い依頼でも受けた方がいいかもしれない。

「判りました、じゃあ早速荷物をまとめて来ますね。」
頭の中で築いていたこの場を凌ぐ策も、この一言で崩れてしまった。
何故気付かなかったのだろうか、このバカが何も考えないで他人を信じるのはいつもの事だというのに。
スタンの言葉に満面の笑みを浮かべるハインリヒ、とても策を弄しているとは思えないが信用は出来なかった。
「そう言ってくれると思ったよ、私の馬車を手配するから遠慮せず使いたまえ。」
ハインリヒが手早く従者を呼びつけ、荷物運びを手伝うように言い付けている。
今、誘いを断るのは不自然、下手な言い訳をすれば騎士達に目をつけられる事にもなりかねない。
急いでスタンの耳を引っ張り叱りつけてやろうとしたが、それも間に合わなかった。

「さぁ、急ぐとしようか、余り遅れるとテオドールの喝が飛ぶぞ。」
椅子から立ち上がったハインリヒは、先程まで腰掛けていた老人とは一転し、
騎士達を統率するに相応しい威厳と気品を備えた城主へとなった。
だが、その姿を見たからといっても信用出来る事にはならない。
かといって後戻りは出来ない、渋々ここは従う事にした。
そう考えたルーティは渋々、ハインリヒの従者を従えて宿に戻る事にした。

「ハァ・・・。」
「どうしたんだよ、溜息なんかついちゃって。」
「アンタのせいよ!アンタの!毎回言ってるけど、やたらと他人を信じるとその内痛い目見るわよ!」
荷物を整理しながら、スタンの軽率な発言に呆れていたルーティが怒声を上げた。
幾ら言ってもこいつのお人好しは治らないのは判っている。
だが毎回とばっちりを受けるこっちの身にもなって欲しい物だ。

87 :五十二話「剣と盾の会議」:2006/07/30(日) 02:11:30 ID:ozhObp9k0
数台の馬車の内の一つを借り、荷を積み込む。この世界でも一部の魔物は武具を所有している。
だが、ここでは各地で物価が違うらしく、ルーティがより高く売るため、
物の価値も判らないのに取って置いた大量の武具が荷袋に詰まっていた。

「何やら賑やかな音がするが荷袋の中身全てが武具なのかね?
よくそれだけの量を魔物から奪えた物だ、最近はモンスターの凶暴化も進んでいるというのに。」
感嘆の声を上げるハインリヒ、ルーティは話さなかったが、
これは恐らく、嵐の起きた日に投げ出されたキャプテンの物だ。
あの状況下で奪う事は出来なかったのは確かだが、
多分海岸へ流れ着いたものをネコババしたのだろう。

「でも長旅には向かないわ、スタンの剣だってまだ痛んでないし。
余りいい武器とは言えないけど騎士団で買い取ってくれたりしないの?」
ハインリヒを差し置いて、先頭の護送用の馬車にさっさと乗り込むルーティ。
「お、おい、俺達は客人・・・」
「構わんよ、レディーファーストと言う事で。
君も先に乗っていてくれたまえ。」
袋から飛び出している槍や剣をまじまじと見つめるハインリヒ。
少しして急いでいるのを思い出したのか、馬車の方に歩き出した。

「いや、中々に実用的な物ばかりだが騎士団には専用の武具があるから買い取れんよ。
だがこの地方は騎士を夢見る者が多くてね。武具の物価は高い方だ。
ミルザブールについたらそこで売り払ってしまうといい。」
この地方の物価に詳しいようだ、流石に城主という名目を背負っているだけの事はある。
だがハインリヒが物価に詳しい事を知ると、ルーティが眼を光らせ質問攻めを行った。
結局、旅の話より他の国では何が高く売れるのか、といった金の話になってしまった。

88 :五十二話「剣と盾の会議」:2006/07/30(日) 02:12:22 ID:ozhObp9k0
「ふ〜ん、参考になったわ、ありがとう。」
「いやいや、これ位の事で良ければいつでも聞きにきてくれ。」
2,3時間も掛けて金の事を話し続けていたので、スタンは付いて行けずに風景を眺め続けていた。
退屈から来る眠気が頭を支配しそうになった頃、馬車が止まってしまった。

「ほら、着いたわよ・・・って真昼間から眠るんじゃないの!」
半分以上に脳内を支配していた眠気もルーティに引っ張られてすっかり覚めてしまった。
人で賑わう簡素な町並みだったが巨大な城が町までも気高く見せる。
「さぁ、行こうか。これ以上遅れてはテオドールに手討にされてしまうぞ。」
ハインリヒの言葉に荷物を積んだ馬車を急いで走らせる騎士達。
オイゲンシュタットと同様に、門には槍を持ったガードが城の守りを固めていた。
ハインリヒが歩み寄り、ガードに名を告げると直ぐに槍を収めた。

城門を潜り抜け、謁見の間へと通じる扉を潜り抜けると同時に怒声が響いた。
「遅いぞハインリヒ!例え10分と言えども、魔物に10分も与えてしまえば町は壊滅だぞ!」
怒声を響かせるその男も、ハインリヒと同様に白い髭を生やしていた老人であった。
だがその肉体は白い髪と髭、そして老いた顔がなければ老人とは判らないほどに逞しかった。
「む、客人が居るようだな。お前が連れてきたというなら、
見学は許可するが、騎士ではないなら会議での口出しは控えてもらってくれ。」
筋骨隆々とした肉体からは周囲の若い騎士すらも上回る力強さを感じる。
間違いなく、彼が『騎士団の剣』ミルザブール城主、テオドールだろう。

「ああ、最初からそのつもりだ。スタン君、自己紹介は後にしてくれ。
ラファエル、お前も見習いなのだから余計な事で口を挿むなよ。」
端に居た周囲の騎士より一際若い騎士を見ながらハインリヒが注意を促す。
少年の様な顔をした、というよりは少年と言って差し支えない様な青年だった。
戦いの経験はその細身の体からは全く感じ取れなかった。
「こんにちわ、俺はスタン・・・」
「全員整列!これより騎士団会議を始める!」
テオドールの声に挨拶を遮られ、着いて早々に騎士達の会議が始まってしまった。

89 :五十二話「剣と盾の会議」:2006/07/30(日) 02:16:08 ID:ozhObp9k0
やっべ、久しぶりにロマサガやったら港町はミルザブールだったよ・・・。
まぁかなり重大なミスですがストーリーに差し支えは無いのでこのままこのまま。

〜コメへの感謝〜

ふら〜り氏 >>おっさんズによる怪談大会
シコルとドイルは若者に入るけどユダの年齢で3:3か2:4か決るなぁw
しかしユダがオッサンだと原作のレイがますます不憫に・・・。
ちなみに一般兵は基本は噛ませですが一部で漢なのがサガイズム。
きっとその内出番もやってきます。

サマサ氏 スレの繁栄っぷりに読み逃して全開コメしてませんでした、申し訳ないw
>>輪郭の歪みを直す秘密道具って何かありましたっけ?
あー、道具の名前忘れちゃったけどここは綺麗なジャイア(ry
って輪郭直ってなかったね・・・。

360氏 テンプテーション見切りなしなら竜脈バグ辺りかクイックタイムをw
竜脈バグを行う際は霧隠れで物理攻撃を無力化して竜脈を掛け捲って攻撃力をバグらせたら
シャドウサーバントでヨーヨー連射、これで一人でも勝てるらしい。
探せば動画もあったはず、動画は女皇帝でしたが男ならテンプされる前に殺しましょう。
正攻法でいくなら全員を女&亜人で固めるwサラマンダーとかは男でも女でも無く、
マッスルだし斧が得意でヨーヨーに最適。ちなみにそんな僕はクイックタイム、
だって見切りが無かったんだもの。初めてまともに出来たサガはミンソンくらいですよええ。
アンリミもかなり進めたけど時間の無駄(ry

361氏 身体能力とかはスタン達の方が上っぽいけど
バキキャラみたいな使い方をしないから普通に見えると思われる。
ドイルみたいにいきなり2階に飛び込めるRPGなんて滅多に無い筈w

362氏 >>お笑い死刑囚の時とは違い、スタンとルーティの恋愛事がメインになる感じかな?
死刑囚編でもラブロマンスはありましたがね、カイルにリアラ、ユダとスペッ(ry

90 :コテ付け忘れ常習犯邪神?:2006/07/30(日) 02:21:20 ID:ozhObp9k0
>>サマサ氏 スレの繁栄っぷりに読み逃して全開コメしてませんでした、申し訳ないw

全開コメになってますたorz 正しくは前回で。
つーか後書きの訂正するなって前に言われたような。
気になったものでこの場は見過ごしてくだされ。

91 :作者の都合により名無しです:2006/07/30(日) 11:06:52 ID:xlQ3kFTQ0
お疲れ様です邪神さん。
なんか、死刑囚のときのコメディっぷりとは違う
騎士っぽい雰囲気ですね。どこか高貴な感じというか。
ある意味、RPGのSSらしい展開ですね。

92 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/30(日) 15:00:23 ID:HU9D+ntf0
十二 警戒、そして思考
 
 圧し掛かるような、重い沈黙の支配する談話室。
 バリケード製作のとばっちりを受け、床への立ち退きを余儀なくされた置時計が、十四時三十分を示す。
 あれから――設楽と十文字の二人が殺害されてから――丸一時間が経過していた。
 はじめたちはその間、いつ襲ってくるとも知れぬ殺人鬼の影に恐怖しながらも、当面の方策を話し合った。
 最優先課題はやはり、警察の到着まで、どうやって殺人鬼から身を守るか、だった。
 しかし、襲撃を防ぐいい手立てなど、簡単に思い付く訳もない。話し合いは何の成果もあげないままに、早々と暗礁に乗り上げる。
 バリケードを作って一部屋に立て籠もろうと言う意見も出たが、かえって逃げ場を失う、との結論に落ち着き、実行には至らなかった。
 まあ、もし実際に『立て籠もり』が実行されたとしても、あまり効果のほどは期待できなかっただろう。
 と言うのも、地下音楽室を除いて、どの部屋にも、人が侵入するには十分な大きさの窓がある。窓を割られてしまえば、それで終わりだ。
 板か何かで窓を塞ぐ手もあるが、そんな工具がどこにもないのは、屋敷内の捜索で確認済だった。
 結局『常時周囲に注意を払い、襲ってきたら協力して取り押さえよう』なんて、改めて言葉にする価値もない、当たり前の方針を確認しただけだった。
 三人寄れば文殊の知恵、などと言うが、四人寄っても何の知恵も浮かばないとは。皆一様に、失望を隠せない様子である。

93 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/30(日) 15:01:17 ID:HU9D+ntf0
 そんな、思考停止ムード漂う中、はじめはしきりに頭を掻き毟りながら、事件の経過を整理して、自分なりに考えを纏めていた。
 はじめにとっては、どうやって殺人鬼から身を守るかよりも、殺人現場で生じた違和感の処理の方が、優先順位が上らしい。
 そう。最初の現場から受けた印象が『欠落感』だとするなら――先程の現場から受けたそれは、確かに『違和感』だった。
 そして、一時間にも及ぶ思考の甲斐あって、その『違和感』の正体も、大分はっきりしてきた。
 依然として『欠落感』の方は手がかりすら掴めないのが、気になる所ではあったが……
 ともかく。設楽と十文字の殺害に関して、はじめは二つの『おかしな点』を発見したのである。
 先ず一つめは、設楽と十文字の殺害方法の違いだ。
 殺人鬼は窓を割って侵入、設楽を刃物で斬殺、十文字を紐のようなもので絞殺し、また窓から外へと逃走したとみられる。
 二人が一時、集団から離れた所を狙うという手口。はじめたちの接近を察知して、すぐにその場を離れるなどの行動。
 それらから推測するに、殺人鬼は、最低限の判断能力は持ち合わせていたとみるべきだろう。
 硝子を割れば、残る四人が駆けつける。四人が駆けつければ、四対一では勝てない。勝てないなら、今は逃げるべきだ。
 殺人鬼はおそらく、そのような思考過程を経て、二人にトレードマークである『R』の傷をもつけないままに、逃走を選んだのだろうから。
 だとすれば、だ。迅速な犯行が要求されるあの場面では、殺傷力の高い刃物で、二人をまとめて斬殺するのが道理ではないのか。
 一刻を争う切羽詰った状況下で、わざわざ殺害方法を変更する理由は、果たして何処にあったのか。
 最も――と、そこではじめは目線を床に落として、一息ついた。相手は、被害者に『R』なんてアルファベットを刻んでみせる殺人鬼である。
 多彩な凶器を駆使して、殺人を存分に堪能したかった……なんて、常人の理解の範疇を超えた、サイコキラー特有の理由があるのかもしれなかったが。
 次に二つめは、使った形跡がみられない催涙スプレー。
 はじめは先程、現場を調べた時に十文字の両手を見たが、催涙スプレーは握られていなかった。
 どこにあるのかと探してみたら、トイレの端、血の池の中に無造作に転がっていた。
 殺人鬼は窓を割って侵入してきた。殺人鬼が、設楽と十文字、どちらを先にターゲットにしたのかはわからない。
 が、どちらだったとしても十文字は、手持ちの催涙スプレーを噴射して殺人鬼を怯ませ、その隙に逃げおおせる事ができた筈だった。
 そのくらいの時間の余裕は、確実にあったとはじめは推理する。なのに、何故……?
 はじめとしては、人差し指一本で相手を無力化できる武器を持った彼女が、あっと言う間に殺されてしまったというのは納得がいかなかった。
 それも、無抵抗のまま。悲鳴すらあげずに。
 そこまで考えて、何かがひっかかった。もしかすると、これは――

94 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/30(日) 15:01:52 ID:HU9D+ntf0
「もう……」
 朧げながらも一つの形を成しかけた思考は、突然の須藤の言葉に断ち切られた。
 はじめの手から滑り落ちた完成間近のジグソーパズルは、床に落ちてバラバラになった。
 ピースがあちらこちらへ散らばって、その内のいくつかは何処かへ消えてなくなった。
 うう、と小さく唸ってから、はじめはまた、頭を掻き毟った。
「諦めてくれたなら、いいんだが」
 それは全員の総意と言ってもよい発言だったのだが、しかし、誰も返事をしなかった。
 発言するのも、首肯するのも、今は面倒なのかもしれない。
 少し間を置いて、須藤はまた口を開いた。
「叔母さんの忠告を、素直に聞いておくべきだったかもしれないな」
「叔母さんの忠告?」
 興味を持ったのか、高瀬が尋ねた。

95 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/30(日) 15:03:45 ID:HU9D+ntf0
「ああ。叔母さんは、占い師をやっててね。『火上サバト』って名前なんだけど……」
「そう言えば、名前、どこかで聞いたことがあるかも」
 先のショックが尾を引いているのか、幾分生彩のない声で、日月が口を挟んだ。
「うん、一部にカルト的な人気を誇っていて、知る人ぞ知る存在らしい。
 何度か雑誌にも紹介されたみたいで、それで日月も知っていたのかもしれないな。
 で、その叔母さんなんだが、一昨日、土産片手に、家に遊びに来たんだ。久々に、母さんの顔でも見に寄ったんだと思う。
 それで、俺とも少し、話をする機会があった。まあ、他愛もない世間話だったんだが……問題なのは、その、話の終わり際だった。
 俺の顔をじっと見たかと思ったら、急に真剣な顔になって、言ったんだ。『災難の相が出ている。雨降りの日、外出には気をつけなさい』ってね。
 叔母さんは、占い師なんて無茶な職業に就いてはいるが、生真面目な性格だった。冗談を言ったり、人を脅かしたりするようなタイプじゃない。
 だから俺は、鳩が豆鉄砲を喰らったみたいな顔をして、頷くしかできなかった」
「それ……本当なの?」
 日月が、目を丸くした。
「こんな時に、嘘を言う趣味はない」
 ほんの少し笑んで、須藤は続ける。
「この近辺は、気圧の影響で大気が不安定になっていたみたいで……
 一昨日、昨日と、雷を伴った雨が断続的に降り続いていた。それで何となく、占いの一件を思い出したんだ。
 と言っても『ああ、そう言えば雨の日の外出になるのか……縁起悪いな』なんて、それくらいのものだった。
 過ぎたことをいくら言っても仕方がないが、俺が、もっと真摯に受け止めていれば、もしかしたら――」
 そこまで言って須藤は、口を閉ざした。その先は、語らなかった。

96 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/07/30(日) 15:05:44 ID:HU9D+ntf0
毎度ありがとうございます。前回投稿は>>33です。
変な名前の占い師は『TRICK』の二次創作に出そうかななどと思っていた没キャラです。

・全員死亡エンド
何気に、前回はそれでしたからね。今回はどうなりますやら。
爽やかに終わりたいとは言ったものの。うーむ。無理そうかも。
・全ての単語に意味がありそう
単語と言いますか、話の流れに無駄がないといいなあ、と思いながら書いております。
あくまで理想で、実際はなかなかそうもいきませんけれど……

97 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/30(日) 16:13:48 ID:3TD64rp90
MUGEN バトルロイヤル
第3話 サキュバス
「マーキュリー、マーズ、ヴィーナス、ジュピター、どこなのぉ・・・。」
か細い声を上げている一人の女の子が立っていた。
足元はふらつき、視線も定かではない。木に手を当てて歩いている。
彼女は川の近くまで来た。喉が渇いた為水を補給しに来たのだ。
物資はあるが消耗は避けたい。仲間を探さなくてはならないが体力が無ければ見つけられない。
水を掌で掬い上ようとした時だった。突如、掌の水が蒸発した。
「えッ!?」
彼女は顔をキョロキョロさせた。襲撃。狙撃か。
「意外と近くにいたのね。セーラームーン。」
声がした。
ムーンが振向くと、そこには木の枝の上に立ったセーラーマーズがいた。
「さっき・・・」
ムーンのセリフが終わらない内に第二波が来た。
マーズは炎を操るセーラー戦士である。
鳥を象った炎がムーンに襲い掛かった。
「え・・・なんでぇ!?」
炎をまともに食らい後方に飛ばされたムーンに対してマーズは弓矢で追い討ちをかけた。
矢はムーンの腕・足・首から数ミリ程度ずれた地面に刺さった。
それでも牽制には充分だった。
「うう・・・。」
状況がまだ理解できていないムーンに何処からか更なる攻撃が加えられた。
水玉が発生しムーンの周囲を霧で覆っている。
「この霧は・・・マーキュリーのッ・・・。」
何とか立ち上がるムーンだが視界はほぼゼロである。
音は無い。

98 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/30(日) 16:14:23 ID:3TD64rp90
ガードを固めたムーンの肩を一本のビームが襲った。
「ううッ・・ヴィーナス・・・」
ゴロゴロと雷の音がした。
「まさか・・・」
ムーンの予感は当たった。避ける間もなく空中からの電撃がムーンの体を痺れさせた。
「きゃあああ!」
片膝を付いてムーンはうな垂れた。彼女はもう理解していた。
探していた仲間4人は自分を狙っている。精神的肉体的ダメージと疲労で目は霞み始めている。
マーズの矢を掴みなんとか立ち上がり前方を見た。未だに霧は晴れていない。
おかしい。あの4人が全員で自分を狙うなどと。
思考中のムーンの前方に人影が現れた。
「初めまして。セーラームーン。私の名はモリガン=アーンスランド。」
「あなたがマーズ達を!?」
「よくわかったわね。あの子達に会った時攻撃されたんでサキュバスになって貰ったの。コウモリに噛ませてね。」
レオタードの様な服装をした女の周りには数羽の小さなコウモリが飛んでいた。
「ムーン、あなたもサキュバスになったら?」
いつの間にかモリガンの周りにセーラー戦士達が並んでいた。いや正確に言えばセーラー戦士達の形をしたサキュバス達である。
「これがオトコだったエッチな事して精気を吸い取れるんだけど女じゃねぇ・・。」
マーズがぼやいた。
「皆目を覚まして!」
ムーンは腰からスティックを外した。「ムーン・ティアラ」と呼ばれ浄化エネルギーを増幅させるアイテムである。
「ムーーンティアラーアターーック!」
ムーンは体をくるッと一回転させてティアラを投げた。
ティアラがブーメランの様な軌道を描いてモリガンへと飛んでいく。
そのまま命中すればサキュバスは浄化されマーズ達は元に戻るはずだったーーー。
だが現実は違った。
膨大な浄化エネルギーを帯びて飛んで来るティアラをモリガンがパシッと受け止めたのだ。
片手で安々と。キャッチボールの様に。

99 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/30(日) 16:15:07 ID:3TD64rp90
「あ・・・え・・・。」
ショックで棒立ちになったムーンをマーズ達は嘲笑った。
モリガンはティアラを地面に落とした。
「それがあなたの必殺技なのね。今度は私ね。」
モリガンは後ろに体を逸らし腕を伸ばした。
手にエネルギーが収束されていく。
やがてそれは球状へと変化した。
「行くわよ。ソウルフィスト!」
エネルギーを帯びた白い球体がムーンへと迫る。
ダメージを負い、ティアラを失った今のムーンに反撃したり防いだりする手立ては・・・無い。
「きゃあああー!」
前方から迫ってきた球体に飲み込まれムーンの体は空の彼方へと弾き飛ばされていった。
「まずは一人って所ね。この調子でバンバン行きましょうか。」
「賛成です。」
モリガンとサキュバスとなったセーラー戦士達はその場を後にした。




モリガンが放った気弾は暫くセーラームーンを巻き込んだまま空中を移動していた。
だが一定時間立つと自然消滅した。その結果ムーンは地面へと落下していった。
下にあった木がクッションとなったのか激突は免れ結果木の枝にぶら下がる形になった。
「痛い・・・」
痛みに耐えながらムーンはなんとか木から降り地面に自分の足でたった。
骨折はしていないらしい。
ムーンの前に洞窟があった。
暫く休もう。ムーンはそう決めた。
そこに先程のサキュバスより更に恐ろしい存在がいるとは知らずに・・・。

100 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/30(日) 16:17:24 ID:3TD64rp90
【セーラームーン@美少女戦士セーラームーン】
状態 軽度の怪我
装備 なし
思考 1 洞窟で休む
    2 仲間を探す

【モリガン=アーンスランド@ヴァンパイアハンター】
状態 普通
装備 なし
思考 1ゲームのクリア
    2参加者を全滅させる。


【セーラー戦士達@美少女戦士セーラームーン】
状態 サキュバス化
装備 なし
思考 1ゲームのクリア 
    2モリガンに忠誠を誓う

101 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/30(日) 16:19:11 ID:3TD64rp90
ども。コテです。前回のエロスを払拭するべくバトルを描いてみました。
サキュバスとは西洋のモンスターで男性に卑猥な夢を見せてエネルギーを吸い取るという
女性型のモンスターです(インキュバスという男性型もいます。こちらは女性の精気を吸い取ります)
今後エロスは多くて2,3回でしょうか。


ではでは。

102 :作者の都合により名無しです:2006/07/30(日) 17:43:33 ID:uLKEstkn0
前回のようなエロス(とすら言えない内容)なら、ゼロでいい。

103 :バーディーと導きの神〜潜入〜:2006/07/30(日) 18:59:05 ID:BGTVIGbC0
こちらは王都潜入部隊一行。
モルプに連れられて飛んでいったザンとは違い、地道に登坂を続けるバーディーとシアン。
既に二人は400レブ(メートル)ほど登りきり、さらに上を目指して黙々と登り続けている。
しかし、そこでなぜかバーディーとシアンの登坂速度に差が開き始め、500レブを越えた
あたりからは、バーディーの姿が見えなくなるほどシアンの速度が遅くなる。
地上500レブともなると、下から舞い上がってくる風も強烈なものであり、シアンはその
風と自分の体躯に悩まされる形となっていたのだ。
「あんの大食い、俺よりもヒョイヒョイ軽く登っていきやがって……。男のプライドをな
んだと思ってやがるんだ」
既にかなり登坂速度が落ちてきたシアンは、無限の体力を持つバーディーの登坂技術に
驚嘆し、同時に悪態をつく。
大の男が細身の女に遅れをとっているこの状況は、シアンの自尊心を大いに傷つける。
しかもバーディーはザンの先走りを非常に気にかけているらしく、差がつき始めた頃には
先に行くからと言ってシアンのことなど歯牙にもかけずに置いていったのだ。
しかし、どんなにプライドを傷つけられようと、現実をひっくり返す方法はないし、いかな
頑丈なシアンとて、この高さから術なしで落下したら死を免れることはできない。
注意してかからねえとなと、自戒しながらシアンは黙々とまた登り始めた。

そしてモルプの飛行によって、すでに900レブの地点に到達したザン。
二人は150階の出っ張りに降り立ち、リュミールが閉じ込められているはずの牢の外壁を
眺めた。
「目の前が牢屋だけんど、入るのは無理だんべな」
垂直に切り立ち、なんの足場もない外壁を指差してモルプが説明する。
「ここが……」
ザンは外壁の表面を触った。そこにリュミールの存在を確かめようとしているかのように。
(リュミール……)
ザンははやる気持ちを抑え切れなかった。
「よし、中に入れるところを探そう!」
決意して、モルプに言った。しかしモルプは呑気に答える。
「探さねえでもあっちにあるだよ」


104 :作者の都合により名無しです:2006/07/30(日) 18:59:47 ID:rgFYsx8T0
>邪神さま
スタンへのルーティの原作から変わらないツンデレっぷりが爆発してますね。
でも、お話はシリアスな方向へと着々と。窮地に立つと息が合うけど、この2人。

>かまいたちさま
嫌な名前の占い師ですなw どんどん、追い詰められ感が増していきますね。
作内全てのベクトルが悲惨エンドへ言ってる感じw でもそこが良かったりもします。

105 :バーディーと導きの神〜潜入〜:2006/07/30(日) 19:00:43 ID:BGTVIGbC0
ホラホラとモルプが外壁ではない自然石に見える出っ張りの一部を押すと、ガコッと音が
して扉が開き、中に入る階段が現れた。
それは城というものには付き物の、非常用の秘密通路だった。
「壁さ壊さねえかぎり、城さ入れんのはここだけだんべ。牢屋に行くにはちと遠回りになっ
けどよ」
モルプは中を指差しながら説明する。
そうなると待ちきれないのがザンという少年だ。バーディーとの約束もどこへやら、既に
体は臨戦態勢だ。
「遠回りはかまわないさ!さあ行こう!」
ザンは宣言する。
「バーディーさんやシアンさん待たないのけ?」
モルプが当然の疑問を口にする。
「じっとしてられないんだ!案内頼むよモルプ!」
ザンは今にも飛び込んでいきそうな勢いだ。
モルプは少し考えた末、分かったと了承する。
「任しでくろ!」
「ありがとう、それっ!」
バーディーの危惧したとおり、ここでもザンは先走りしてしまうのだった。

「シアン、かなり遅れているようね」
すでに700レブを突破したバーディーは、眼下にシアンの姿が見えないことに対して軽くごちた。
まあ仕方がない。彼は普通の魔導士。特殊任務のために専門的に訓練された自分とは違う。
バーディーはそう思い、再び登坂を開始した。
「ザン君、くれぐれも自重しててよね……」
バーディーはそう願うが、その願いが聞き届けられることはなかった。
真っ暗な隠し通路をモルプに案内されて歩くザンは、バーディーとの約束を破った報いか、
様々なバチが当てられた。


106 :バーディーと導きの神〜潜入〜:2006/07/30(日) 19:02:03 ID:BGTVIGbC0
曲がり角で顔面強打。
段差で足の先をぶつける。
下り階段で転び腰を強打。
側溝にはまって股間を強打。
はっきり言って自業自得以外のなにものでもない。
「もう勘弁してくれよ〜……」
さすがにヘロヘロになったザンが壁に手をつこうとしたときにモルプが注意する。
「そりがらやだら壁さ触るんでねえぞ。隠し扉があっがらよ」
「え?」
モルプの忠告も無駄に終わり、壁は無常にも回転してザンはその奥に消えていった。

「この辺りが900メートルね……」
驚異の勢いで150階に到着したバーディーは、出っ張りに登りきるとザンの姿を探した。
しかしそこには垂直に切り立った外壁と、口を開けた小さな隠し扉があるだけだった。
『おいバーディー、ザンがいないぞ!』
頭の中のつとむが事態に気付いて声を上げる。
「分かってるわよ。あの子ったらやっぱり!」
迷わず隠し扉の中に飛び込みながら、バーディーはザンの無鉄砲さに憤慨した。
「自重しますって言ったの誰よ!」
そのままザンとモルプの体臭の跡を辿って、正確に後を追いかけてゆく。優れた感覚器官
によって暗闇も気にならない。
しばらく全速力で駆けていくと、行く手に小さな明かりが見えてきた。
「あっ!バカッ!だがら言ったのに!」
モルプの叫ぶ声も聞こえる。それだけでバーディーは事態を理解した。
「どいて!モルプ君!」
暗闇から飛び出したバーディーは、返事も待たずに明かりの中に飛び込んだ。
そこは蛍光灯の明かりに灯された大きな通路で、バーディーが飛び出したときには、ルア
イソーテの軍服を着た兵士がザンを後ろから羽交い絞めにしてた。
「その子を放しなさい!」
通路の反対側の壁を蹴りながら、バーディーは兵士に飛び掛っていった。

107 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/30(日) 19:09:01 ID:BGTVIGbC0
あらら、行間空けるの忘れたとこが…。皆様勘弁してください。

ザンの先走り第二弾です。はやる気持ちは抑えられません。若いですから。

>>ふらーりさん
この体たらくの一行ですが、見捨てないでやってください。
>>65さん
原作読者仲間が増えて嬉しいです。

108 :作者の都合により名無しです:2006/07/30(日) 19:29:30 ID:rgFYsx8T0
今回は追いかけっこですかw
でも2レスは微妙に少ないかな?俺的に。
個人的には4〜5レスが一番ありがたいです。

109 :作者の都合により名無しです:2006/07/30(日) 21:38:46 ID:VKt9klEm0
カマイタチさん、相変わらず凄く面白いけど、
今回はそれより『TRICK』の二次創作ってのが気にかかる。
もしそれを既に書いてたら是非どこに書いたか教えて下さい。
他にも作品を書いてたら教えて下さい。マジ読みてえ。


110 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/07/30(日) 21:41:37 ID:fgSnAAbg0
第八十五話「決戦の地へ」

「そうか・・・大体分かった」
ムウが腕組みをしながら得心したとばかりに頷く。
朝になってからのび太は仲間たちを集めて、昨夜の顛末を語った。
「ごめん・・・ほんとなら、何とか捕まえるべきだったかもしれないんだけど」
「いや、それはしない方がよかったよ。相手は仮にも未来の時間犯罪者だ。無理をして反撃を食らったら、どうにも
ならないよ」
ドラえもんはそう言った。のび太もそう思いながらも、別の事も考えていた。
もしも自分が狐面の男を連れて行こうとしたなら、彼は抵抗しなかったのではないのだろうか?自分では何もできない、
最悪にして最弱の<狐>。
彼は気紛れの権化のような男だ。そして、全てが等価という価値観の持ち主でもある。
ならば、<抵抗しようとしまいと同じ>だの何だの言って、自分からほいほい付いてくる可能性すらあった。
―――だが、今さらそんなことを考えても仕方ないということは分かっていた。
「で・・・それは置いといて、もう一つの問題だよ」
ドラえもんがちらりと見やった先には、シュウから渡された例の装置―――CPSがあった。
「これがあれば、平行世界を自在に行ったり来たりできる。つまり、稟さんたちが元いた世界に行くこともできる」
「稟さんたちの世界、か。おっちゃんたちにもまた会えるってことだな!」
ジャイアンが喜色を浮かべる。だが、稟は難しい顔をしていた。
「元の世界に帰れる―――か。いいことなんだけど、それだけじゃないんだよな」
「ボクたちの世界で決着を付けようなんて・・・どういうつもりなんだろ、あいつ」
亜沙も困惑しているようだった。
「分からない・・・あの人は、怖い。何をするのか分からない・・・だから、怖い」
プリムラは少し身を震わせる。
<シュウとの決着・・・か>
マサキはいつになく固い声だ。肉体を失い、精神のみの存在と成り果て、なお追い続けた宿敵―――
シュウ=シラカワ。
マサキにとって彼との決着は、避けて通れない道だった。
「で、でもさ。サイバスターで一応は勝てたわけでしょ?だったらみんなでかかれば意外と楽勝だったりして」
「さあて、それはどうでしょうね」

111 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/07/30(日) 21:42:09 ID:fgSnAAbg0
スネ夫の楽観的な意見に対し、アザミが反論する。
「あの男は意味もなく勝算のない戦いをするタイプではありませんよ。何か隠し玉を用意していると考えるのが妥当
でしょう。それが何かまでは分かりませんが・・・ね」
「かといって、放っておいていいというものでもないでしょうね」
と、ペコ。
「ここで止めなければ、彼は更なる混乱を世界に撒き散らす―――そんな気がします」
「まあみんなごちゃごちゃ言ってるけどよお・・・あいつは確かにぶっ倒しとくべきだと俺様も思うぜ?このまま
ハイサヨナラ、で隠居しちまうような奴でもないだろうしな」
USDマンもペコに同意する。
「難しいことは分かんないけど、あいつがラスボスってことなんだろ?ぶっ飛ばしてやろうぜ!」
ジャイアンが拳を振り上げる。
「そうだとも。ラスボスを倒して、ハッピーエンドを迎えるしかないじゃないか!」
アスランが鼻息荒く宣言する。
「これで本当に最後の戦いなら・・・やるしかないよ」
「そうよ。この戦いにも勝って・・・今度こそ、平和に暮らしましょう」
キラとリルルも、力強く頷く。
「ま、ここまで来たんだ。やっちゃうしかないでしょ」
「全く貴様は・・・もうちょっとシャキっとしろ!」
「まあまあ。ディアッカだって、本当はちゃんと分かっていますよ」
ディアッカが軽い口調で語り、それをイザークが見咎め、ニコルが諌めた。
「だけど・・・いいの?」
しずかがリルルたちを見つめる。
「何が?」
「だって・・・もうメカトピアは平和になったじゃない。これ以上、リルルたちまであたしたちに付き合うことは・・・」
「そんなこと言わないの。メカトピアに平和が戻ったのも、みんなのおかげだもの。だったら今度は、わたしたちがみんな
を助ける番よ。ねえ?」
「そうだよ。今さら僕たちだけ残るなんてできないよ」
「うむ。友のため戦火に身を焼く―――それでこそ漢と書いておとこじゃないか!あ、だけどディアッカ、お前たちも来る
のか?それは正直よした方がいいと思うんだが・・・」
「あん?何でだよ!」

112 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/07/30(日) 21:42:41 ID:fgSnAAbg0
食って掛かるディアッカに、アスランは言いにくそうに口を開いた。
「いや・・・正直、お前たちではこれからの戦いについていけないというか・・・出撃させてもらえなくて、艦の中から
セリフを叫ぶだけの間抜けなキャラに成り果てるというか・・・」
「て、てめえ・・・またスパロボやってない人には分からねえネタを・・・」
「ははは、すまんすまん。冗談だ。来てくれるというなら大歓迎!なあ、みんな!」
「そーだそーだ!弱くっても大丈夫!とりあえず来てくれるだけで嬉しいぞ!」
フー子が無邪気故に邪気を撒き散らす発言を行う。
「ちくしょう、ここまで馬鹿にされちまうとは・・・やっぱメカトピアに残った方がいいのかな、俺ら」
「はっはっは、冗談だ冗談。頼りにしているぞ、三人とも」
「ぜんっぜん頼られてる気がしないんですが・・・」
「ま、それはともかく―――シュウとの最終決戦に臨むことに、誰も異論はないということだね?」
バカ王子が全員の意志を確認するかのように言うと、一同は顔を見合わせる。
―――そこには、迷いは見られなかった。
「・・・よーし、みんな。泣いても笑ってもこれで最後だ。頑張ろう!」
「おーう!」
全員が円陣を組んで、手を重ね合わせた。その温もりが、彼らの絆を象徴するかのようだった。

113 :作者の都合により名無しです:2006/07/30(日) 21:55:42 ID:VKt9klEm0
今月は書けないとかいいながら、いい人だなあサマサさんは。

114 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2006/07/30(日) 22:00:35 ID:t5lTA0uG0
投下完了。前回は前スレ319より。
次回、ついにラスボス機体登場予定。
ネオグランゾン+PS版第四次+とある秘密道具(機神大戦にも登場している) となります。
これで分かる人いるだろうか・・・
まだまだ仕事が忙しいので、九月まではよくて週一更新になるかと思います。
そう言いながらばんばん更新したりする嘘吐きかもしれませんが。

>>かまいたちさん
火上サバト・・・なんか西尾作品に出てきそうな名前ですね。
狐は言うなら、ネコソギ中巻での敗北宣言といったところなので、まだ出ます。
予想については気にしないでください、まさしく戯言ですのでw

前スレ337
狐には、いわゆる漫画的な救いは訪れないかと。原作からして救えない連中が救われないまま
それでも生きていく、みたいな作品ですので。

前スレ339
今回は、絵に書いたようなハッピーエンドになるかと。暗さのない、笑顔になれるエンディングで。

>>邪神?さん
テイルズチームは死刑囚と違ってファンタジー風味満載ですね。むしろあっちが異常なのかもしれませんが。
綺麗なジャイアン。あれは衝撃、いや笑撃でした。たしか顔を整形する道具ならあったような・・・

>>ふら〜りさん
戯言を読む限りでは、狐自身は実はすげえポジティブな男だと思うんですけどね。そうでなきゃ生涯に渡って
世界の終わりを追い求めるとか絶対できないし。

前スレ425
まあ、週一くらいでなんとかいけたらなあ・・・と思っていますので。

115 :作者の都合により名無しです:2006/07/30(日) 23:05:54 ID:xlQ3kFTQ0
>カマイタチさん
人間はあまりの恐怖と不安の前には無気力になりますね。
前作のカイジのように誰かが確変すればあるいは?
あと、僕もカマイタチさんの今まで書いた作品読みたいです。

>コテさん
セーラーたちにエロはやめてほしいですね・・
ちょっとイメージが崩れる。サキュバスはいいんですけど。

>バーディさん
今回、ちょっと少ないかな?でも仲間の仲の良さが良いですね。
バーディが一般兵士にやられるとは思えないけど、
もっと強いのが出てくるのかな?

>サマサさん
真剣なはずの議論なのに、どこか楽観的で、でもやっぱり真剣で。
余裕というより、どこかでお互いを信じる信頼感があるんでしょうね。
いい仲間ですね、このチームは。


ところで、USDマンって小池さんって名前じゃないんですね、本当は。
「小池」ってのは居候先の大家さんの名前で、本当はラーメンすすっている人は
違う名前らしいですね。その名前は忘れてしまいましたがw

116 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/30(日) 23:23:40 ID:3TD64rp90
MUGEN バトルロイヤル 第4話 グラップラーとジョースターとサイボーグ
時刻は昼頃になっていた。ゲームが開始されたのは朝8時頃である。
静観する者達と動き始める者達が出会うのも時間の問題だった。
意外な事に脱落者はまだ出ていない。
そして、今一人、動き始める男がいた。彼の名は加藤清澄。神心会空手の使い手である。
彼は今小さな小屋の中にいた。どうやらこの“ゲームの世界”は人間の世界を模して作られた様な感じがする。
支給されたデイパックに入っていた地図を見るとどうやら自分は今島にいるらしい。
アイテムを探して休憩を含めて数時間程探索に専念した結果、彼はいくつかのアイテムの入手に成功した。
ナイフ10本、テーピング用のテープ、コントローラー。
加藤はナイフ10本をポケットにしまい、手首をテーピングした。
武道家としての体裁など彼は考えなかった。
(俺にとって空手は道具だ。)
脱獄した死刑囚と闘った時自分はそう思った。今もそれは変わらない。
バトルロイヤルというこの状況もある意味自分には合っていると思う。
テーブルの上にコントローラーを起き、先の事を考えた。
勝者になれば願いが叶う、と主催者は言っている。
地上最強になる。それが彼の夢である。
これまで色々な相手と戦って来た。その多くの相手に彼は敗北を喫してきた。
今や皆の中で自分は脇役だ。だが。
もしこのゲームに勝ったなら自分が主役になれるかもしれない。
そんな事を考えている加藤の耳に音が聞こえてきた。
ザッ ザッという足音。誰かが近くにいる。
神経を尖らせ窓の方を見る。いた。長身の学生風の男。
まっすぐ小屋を見ている。
入ってくるのかと思っている加藤を無視するかの様に学生風は向きを変え歩き出した。
(何なんだ・・・こっちの位置はバレて無いようだし・・・やるなら今か。)
音を立てずにドアを開け歩く。
(ナイフに頼るのか。けっ、トドメは蹴りで行くぜ。)
ヒュッと音を立てて加藤の投げたナイフが学生風の男に飛んでいく。
肩口に刺さるかと思った直後、加藤はとんでもない光景を見た。
投げたナイフが空中で止まっていたのだ。

117 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/30(日) 23:24:26 ID:3TD64rp90
(ドリアンみたいな催眠術かッ!?もしそうなら一体俺はいつかけられたんだッ!?)
「気配を殺して近づいたのか・・・やるじゃないか。」
学生風は振向くと加藤にナイフを投げ返した。ナイフは加藤の体では無く地面に刺さった。
「どうやって止めたのかは知らないが・・・いくぜッ!」
加藤が走って間合いを詰める。そのままジャブとミドルキックを放つ作戦だった。
が。
ドゴッという音を加藤は聞いた。直後脇腹に鈍い痛みを覚えた。
学生風はその場から一歩も動いていないし体を動かしてすらいない。
「空条、どうした。」
加藤の後ろ声がした。
そこに立っていたのは70年代の服装をした男だった。
「司馬(しば)、こいつがナイフを投げて来やがった。テーピングも巻いてる。場慣れしてるぜ。」
「そうか。じゃあやっちまおうぜ。」
司馬と呼ばれた男と空条という男に加藤は挟み撃ちにされる形になった。
(相手の強さは未知数ッ・・・ここはッ・・・)
加藤は小屋の壁を蹴って右へ飛び空条達から距離を取った。
これだけで挟み撃ちから抜け出した事になる。
「やってやるぜ!」
加藤はポケットからナイフを2本取り出し同時に投げようとした。
が、それは未遂に終わった。
突如として加藤は顎に重い打撃を食らったからである。
(又だ・・・一体何が起こったんだ・・・)
薄れ行く意識の中、加藤が見たモノは自分の腕を持つ司馬の姿だった

118 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/30(日) 23:25:06 ID:3TD64rp90
(うう・・・痛い・・・手品かよ・・・)
(何も出来なかった・・・触れる事すら・・・)
加藤はガバッと起き上がった。
周囲を見回すと自分は先程の小屋のベッドの上にいる事がわかった。
「目が覚めたか。」
声の方向を向くとそこには空条が立っていた。
「なぜ俺を助けた。」
「言いたい事があるからだ。俺達と手を組まないか。」
加藤にとって空条の言葉は意外だった。
自分にトドメを刺さなかったのもそういう理由からか。
「俺じゃ足手まといになるかもしれないぞ。」
「大丈夫だ。それは無い。骨は折れてない。」
司馬が加藤達の会話に割り込んだ。
「嫌だと言ったら?」
「断るなら俺達はお前をここに置いていく。デイパックは貰っていくが。」
空条がはっきりとした声で言った。
「勝者になるのは一人なんだぜ?」
「勝たなきゃいけないってわけじゃないだろ。」
「どういう事だ?」
「この馬鹿馬鹿しいゲームから逃げるって事さ。」
加藤は一瞬呆然とした。
ゲームからの脱出など今まで考えた事すら無かった。
「勝てば元の世界に戻れるんじゃないか?最後の一人になればゲームは終わるわけだし。」
「いいか。恐らくこのゲームで“殺人”はルール違反じゃねぇ。寧ろ推奨してるんだろうな。」
加藤は戦慄した。確かに主催者は“禁止エリアに入ったら強制リタイア”とは言っていた。
だが“殺人はルール違反”とは言っていない。
「ゲームで人が死ぬのは下らないと言いたいのか。」
「ああ。俺達は主催者をぶッ斃す計画を練ってる。その為に仲間が必要なんだ。」
「俺達はあいつらに取っちゃ見世物なんだろうな。殺し合いという名の。いいだろう。俺も癪に思えてきたぜ。乗るぜ。その話。」
「そうか。俺の名は空条承太郎だ。よろしく。」
「俺の名は加藤清澄だ。あんたは?」


119 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/30(日) 23:29:20 ID:3TD64rp90
加藤が司馬に話しかけた。共闘する案もこの男が出したのかもしれないと思いながら。
「俺の名は司馬宙(しばひろし)。よろしくだぜ。」
今、戦場で空手家・スタンド使い・サイボーグというスリーマンセルが生まれたのだった。


【加藤清澄@範馬刃牙】
状態 軽症(応急処置済み)
装備 ナイフ9本@ジョジョの奇妙な冒険 テープ@グラップラー刃牙 コントローラー@ドラゴンボール
思考
1ゲームからの脱出
2主催者を倒す
3承太郎達に協力

【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
状態 普通
装備 デイパック一式 ナイフ一本@ジョジョの奇妙な冒険
思考1 ゲームからの脱出
   2 主催者を倒す
   3 仲間を集める

【司馬宙@鋼鉄ジーグ】
状態 普通
装備 デイパック一式
思考 1 ゲームからの脱出
    2 主催者を倒す 
    3 仲間を集める
    4 承太郎に協力
    5 卯月美和を探す

120 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/07/30(日) 23:29:52 ID:3TD64rp90
以上です。

121 :ふら〜り:2006/07/30(日) 23:36:32 ID:0L16pmmQ0
>>スターダストさん
>根来は霧に霞む千歳を見た。彼女も一瞬だけ視線を送り、さりげなく逸らした。
以心伝心アイコントタクトってやつですな。直前二行でこの戦いの最後の推理を済ませ、
もう二人の中では勝利確定済みってことかも。で能力の性質上、攻撃に使えばそういう
路線になるのは当然とはいえ、久世屋の策もなかなかエグい。でもそれも、次回粉砕?

>>邪神? さん(バキも北斗も、フケて見える絵柄ですからねえ)
う〜ん。何だかあまりにも清潔すぎるというか。騎士たちはともかくとして、ハインリヒ
とテオドールのどっちか、あるいは両方が、実は何か企んで演技してるのではと思えて
しまう。で絶望する純真な若い新入り君。……予想と言うより願望かも。さぁどうなる?

>>コテさん
ん、殺意の波動は新声社漫画では出てましたよ。もしその気になればお使いあれ。しかし
四人揃って傀儡と化したセーラーチーム……誘惑されたって訳でもあるまいに、ベテラン
戦士として不甲斐なさ過ぎ。能力制限はないっぽいから、治せる可能性は充分あるけど。

>>かまいたちさん
さあ推理だ。抵抗の跡がないのはやはり顔見知り=当然内部犯として、問題は殺害方法か。
サイコキラー特有の理由だけは絶対にないから(当然)、すなわち何らかの必然性が……
って必須項目を並べてるだけだ私。あるいは↑二行、既に何か見落としを? うぅ難解。

122 :ふら〜り:2006/07/30(日) 23:37:05 ID:0L16pmmQ0
>>17〜さん
>男のプライドをなんだと思ってやがるんだ
密かに待ってました、これ。シアンみたいなタイプなら、バーディー相手にいつか言って
くれるだろうと期待してたんです。次は名誉挽回、男のプライドの見せ所が楽しみ。ザン
がまた少年らしくしてますし、できればバーディーのピンチを救ってほしいところですが。

>>サマサさん
サマサさんやうみにんさんみたいな大長編で、ある意味ラス戦クライマックスより高揚し
拳を握るシチュ、決戦前夜の「いくぞ!」「おーっ!」ですねぇ。いつものちょいギャグ
もまた楽し。改めて実感する大所帯、各々の思いを重ねた手で一つに合わせ、いざ出陣!

>>68
過分な御言葉、五体に染み渡りまする。牛の歩みに等しき速度なれど、既に準備は進めて
おります故、今しばしお待ち下され。今回はパタではありませぬが、ご存知の通りアレは
非常に応用の効く、他作品と絡め易い題材にて。いずれ、また描くこととなりましょう。

123 :やさぐれ獅子 〜十七日目〜:2006/07/31(月) 01:20:07 ID:PGhUCNEE0
前スレ>>408より。

124 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/31(月) 01:20:35 ID:gupOWaw30
【備+】そなえあればうれいなし

シークレットトレイルは、千歳の鼻先すれすれを大きく掠め上げていた。
瞬き一つしない彼女をがっしりと捉えつつ、久世屋はほく笑む。
(やはり。今の一撃はフェイク。大方怖気づいた俺が逃げるのを待っていたのでしょうが、
突き以外なら避けるまでもなくこちらの勝ち。動く必要はありません)
ただ、いまの攻撃。千歳を楯にした分、久世屋からは遠い。
入れ替えの有効範囲内からも遠い。
(けれど!)
見れば根来は、千歳より30cm前方。疾走からの斬撃と同時に急停止したようだ。
頭上でシークレットレイルを振り上げ、わずかに硬直している。
(いま千歳さんを爆発させればこちらの勝ち!)
「喰ら──」
爆破合図を叫ぼうと瞬間、決定的な異変が生じた。
ゆらり。
千歳を捉えていた腕が、急激に重みを帯びた。
(な、なんだ?)
腕につられて意図せぬまま、上体は前のめりに曲がっていく。
(……い、いや違う! 異変が起こっているのは俺の身じゃない!)
久世屋は気づいた!

.・ ・ .・ ・ ・ .・ .・ .・ .・ .・   ・ ・ ・ ・ .・ .・ ・ ・ .・ .・
眼前にある千歳の頭が、徐々に沈んでいるのを!

頭だけではない。首から背中、腰から足に至るまで、垂直に沈んでいる。
(まさか)
彼女の足元では稲光が荒れ狂い、千歳自身を地面に引きずりこんでいる。
久世屋が重みを感じたのむべなるかな。
しっかと捉えていた千歳が土中に没していけば、下に引かれるのは自明の理。
そしてこの現象は、亜空間内に根来が潜る時と酷似している。
(けどおかしいじゃないか!? 俺の肝臓は振り払われていたぞ!! なのに)
不可解な事態に、久世屋は思わず千歳から手を離していた。

125 :やさぐれ獅子 〜十七日目〜:2006/07/31(月) 01:21:18 ID:PGhUCNEE0
 ──空手が、芸術を圧倒していた。
 耐えがたい恥と屈辱が、芸術家にのしかかる。コレクション候補に過ぎなかった人間、
しかも女に歯が立たない。無様にも程がある。
 どうにかして紙人形に命令すれば、たやすく仕留めることはできるだろう。が、内なる
プライドがそれを認めない。なんとしても自力で屈服させなければ気が収まらない。
 初志貫徹。この女は自分で倒し、はく製にしてみせる。
 井上は実戦における、こうした執念をまだまだ読み切れていなかった。
「うおおぉぉぉぉっ!」
 膝をついた状態から、いきなり飛びかかる芸術家。まさかの反撃に驚き、飛びのく井上。
 わずかに開いた二人の距離を、芸術家は見逃さない。
「もらったぁっ!」
 芸術家が、今度は先ほど弾かれた絵筆に飛びつく。
「あっ!」井上も彼の狙いに気づくが、すでに手遅れ。
 再度、芸術家は絵筆を手にしてしまった。
「さぁ、仕切り直しだ」
「しまった……!」
 顔をしかめ、井上は自分の甘さを悔いた。
 再度、向かってくる芸術家。井上も構えるが、動揺した彼女の動きは明らかに精彩を欠
いていた。簡単に懐への侵入を許してしまう。
「喰らえッ!」
 絵筆がしなやかに舞い、井上の胸にセーターの上から一本の線を描いた。

126 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/07/31(月) 01:21:22 ID:gupOWaw30
割り込んでしまった……orz
すみません。こちらは後で。

127 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/07/31(月) 01:21:55 ID:PGhUCNEE0
すいません、お先にどうぞ。

128 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/31(月) 01:23:27 ID:gupOWaw30
(なんで彼女は……いや違う! 俺がいま気をつけるべきのはこっちじゃなく)
「終わりだ」
根来は鬼気迫る表情で、最上段の構えから右手を後ろに引いた。
金の刃が、毒々しい霧の輝きを吸い込みながらスルスル動く。
やがてその柄が、わき腹と平行になった所で一瞬だけ固定され。
本当に静かに突き出された。
更になぜかひらりと手首を返し、峰を上に向ける根来。
すっかり地面に沈んだ千歳の頭上経由で、久世屋の胸の中心を狙いつつ。
一連の動作はあまりに静謐すぎた。
警戒していた久世屋ですら、攻撃だとは思わなかったほど。
だがトイズフェイスティバル!
静かに差し出された忍者刀を攻撃と忠実にみなし! 例の入れ替えを発動!
久世屋と入れ替わるのは、百雷銃を仕掛けた物体!
すなわち。
現存最後の百雷銃をその身に仕掛けられた千歳と、久世屋は入れ替わる!
だが!
理由は不明だが、千歳は下半身のほとんどを沈めている!
『根来本人、もしくは根来のDNAを含むもの』以外の浸入を許さぬ亜空間へと!

そんな彼女と全く同じ位置へと入れ替わればどうなるか。

久世屋は。
入れ替わりと同時に、亜空間から垂直にはじき出された!
むろん、頭上にはシークレットレイルが差し出されている。それは峰を上に向けてもいる。
よってまず、彼の頭にシークレットトレイルの刃がめり込み、後はもう加速の赴くまま。
拒否の追放に成すすべなく飛びながら、頭頂部から股関節に至るまで両断されていた。

「お、おかしいじゃないですか。何で俺ははじき出されたのに千歳さんだけ」
地面に落ちた久世屋の左半身が、力なく呻く。
斬られた後に落下し、仰向けで5cmほどの間隔を空けて左半身と右半身を並べている。
額にある章印(ホムンクルスの急所)も真っ二つだ。

129 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/31(月) 01:24:15 ID:gupOWaw30
先は長くない。
そばで見下ろす根来の瞳には、そういう冷たい判断があった。
シークレットトレイルは解除され、核鉄の状態で肩に当てられている。
核鉄には人間の自然治癒力を高める効果があり、止血にも用いられるのだ。
「知ってはいますよ。根来さんのDNAを含む物体なら、あの空間に入れるって。でも何でです
か? 千歳さんが俺のコウモリみたいに肌へあなたのDNAを含ませていたワケでもないでし
ょう。せっかく、せっかく勝てそうだったのに、ワケの分からない理由で負けるのは、納得が」
「髪よ」
答えたのはいつの間にかヘルメスドライブを拾って、根来の隣にきた千歳だ。
「髪?」
「ええ。戦士・根来は」
「服に髪を縫いこみ、亜空間へ浸入させている」
会話に割り込み、根来はこうも答えた。
「恐らく同様の真似を施したのだろう」
「だろう……? ちょっと待って下さい。縫いこむならそれ相応の量がいる筈でしょ? なら
根来さんが『だろう』っていうのはおかしいじゃないですか。沢山の髪を千歳さんが手に入れる
ためには、根来さんの協力がなくちゃ無理のはず」
千歳は根来の前髪に視線を注ぎ、ついで、はるか後方で白目を剥いて倒れている鷲尾を
一瞬だけ振り返った。汗に濡れた短髪が少し揺れ、香しい匂いを森に撒く。
「あなたは覚えている? この森で戦士・根来の尾行を撒いた時のコトを」
「ええ。あなたたちが赴任してきた日の夜でしたが」
「きっかけはその時よ。戦士・根来は髪を斬られた」
「え? あ、ああ。あの浮浪者にってコトですか」
「確かにそうだな。真・鶉隠れを仕掛けた時に」

──ただの偶然か怒りに身を焦がす男が生んだ超集中力のたまものか。
──根来の額近くを、ナイフの銀閃が猛然と通過する。
──皮膚こそ傷つけなかったが、かなりの量の髪が斬られ宙を舞う。

「だから私は回収して、ある人にクローン培養を依頼した」

130 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/31(月) 01:25:07 ID:gupOWaw30
ある人……というのはヴィクトリア=パワードという少女(外観上は)である。
彼女は諸事情によりその身をホムンクルスと化し、とある女学院の地下で100年間、母と
2人きりで暮らしていた。
ヴィクトリアはその暮らしと食事の都合上、クローン培養に携わっている。
だから千歳は根来の髪の毛の培養を依頼し、今日の昼、受領した。

「この任務に赴く前、貴殿が要求した1時間の猶予は、私の髪を縫いこむためか」
フード付きのツナギを見つつ、根来は問う。
「ええ。この服にしたのは、再殺部隊の制服だと私の足や頭までは覆えないから」
「はぁ。でもよく思いつきましたねそんな下準備」
久世屋の右半身が感心したように呟き、千歳は少しの沈黙を経て、答えた。
「ここに来る途中、電車の中で彼がやっていたから」

──そして根来が車内で忙しく動かす針に通してあるのは、灰色の長髪だ。
──体組織の中で一番採取しやすく、また匂いなどで潜入を察知されにくいのは、やはり髪だろう。
──それを根来が慣れた手つきでスーツやカッターシャツに縫いこんでいるのは、工場において
──迅速かつ十全にシークレットトレイルを発動させるための行為というのは、明らかだ。
──ゆえに下準備。

「本当は彼が亜空間の中で危機に陥った時に、ヘルメスドライブで助けられるよう準備して
いたのだけど……」
「俺に捕まったから咄嗟に変えた?」
「ええ。目線だけで伝わるかどうか不安だったけど」
瞑目の根来は即答した。
「土壇場ではあったが察しはついた。貴殿の先ほどの台詞からな」

──「だってあなたの髪は柔らかくて、とても自然に逆立つとは思えないもの」

「髪を触られた覚えがないにも関わらず、感触を知られていた。加えて、ここに至るまで戦士・
千歳が時おり垣間見せたものいいたげな態度を繋ぎ合わせれば、答えは自ずと出る。髪を
用いたシークレットトレイル絡みの策がある、と。よって私は走りながら、戦士・千歳の足元を
斬りつけ、亜空間への入り口を開いた」

131 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/31(月) 01:26:13 ID:m+Pax23K0
後は貴様の知るとおりと、目を開いて突き放すように久世屋へいう。
「下から上に弧を描くような斬り方はそのためですか。ん? 待って下さい。その後の突き
はなんだったんですか? やっぱり俺の策を見抜いていたんですか?」
根来はフンと鼻を鳴らした。
「当然のコト。もし私がその武装錬金を扱うのならば、残弾は確実に残し、戦士・千歳へと
仕掛けるだろう」
「あなたの性格ならそうでしょうが、でも考えて見てくださいよ。俺はチスイコウモリのホムン
クルスですよ? いざとなったらチスイコウモリへ変形する可能性だって」
「それはない」
「根拠は?」
「いかに貴様が電車並みの速度で飛べるといえど、ここは森。貴様の図体では木立にあたり
機動力は活かせないだろう。かといって地上にいてはむしろ戦闘力は激減するのだ。何故
ならコウモリは直立できぬほど脚力が弱く、羽も百雷雷を振るうのに不向きだからだ。よって
変形する利点は皆無。だが、それ以上に」
根来はニヤリと笑った。
「玩具を好む貴様のコト。元の姿は嫌悪しているだろう」
「ははは。確かに。あの姿はおもちゃで倒される側の姿ですからね。怪人っぽいので。根来
さんが覆面をつけないのと同じ理由かも。覆面の忍者なんて、ショッカーの戦闘員並みの扱
い。やられ役の姿で戦うのは誰だって嫌かと」
「だな。ついでに思い返してみろ。策を弄している時の貴様は、必ず多弁になっていた」
2つに分かれた久世屋は、バツが悪そうに笑った。
「そーでしたか? んー。いわれてみればそうかも知れませんね。でもいまは本当に何も企
んでませんよ。いってはみるものの我ながらあやしいですけど。ハハハ。ま、詰まる所、俺は
あなたの洞察力に負けたってコトですかね」
「違うな。貴様の敗因は、戦士・千歳の存在そのものだ」
(え?)
千歳はとても驚いた顔で根来を見た。
「策は密かに弄してこそ功を成す。私にさえ秘匿し続け、土壇場で貴様の言を逆手にとって
違和感なく策を仄めかしたのは、並みの戦士ではできぬコト」
(……もしかして、褒めてくれているの? 私を? 私は人質に……なったのに)
無表情ながらにどぎまぎと鼓動を早める千歳を、根来は横目で見て、非常に無愛想な声音で
呟いた。無理に無理して、声音を作っている。そんな印象がある。

132 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/31(月) 01:27:28 ID:Q7PGwkeS0
「充分、優秀といえよう」
万が一に備えて策を練り、調査と索敵をこなし、根来の窮地を救い、鷲尾の乱入を逆利用し、
些細なやり取りから逆転の一言を導き出した千歳だ。
冷徹に誰よりも正確に物事を見る根来が、「優秀」と評価するのは当然だろう。
「え?」
けれどいわれた当人はひどく揺れた気分だ。
工場長のように社交辞令的な言葉でもなく、防人や火渡や照星のように千歳を慮った暖かい
言葉でもない、真実そのままの言葉を反芻すると、頭の中に新鮮な光が差し込んでくるようで、
少しむず痒い。
心なしか、顔の筋肉も少し強張りが抜けて、懐かしい気持ちがどこからか湧いてくる。
「……まさか、あなたにそう言われるとはね」
俯いたまま、千歳はぽつぽつと呟いた。
「不服か? ならば取り消しても構わない」
根来は首だけを千歳に向けて誰何した。
「いいえ。光栄よ。それから──…」
顔を上げると、根来を見据えてゆっくりと、いうべきコトを口にした。
目を細めて、唇の両端を柔らかくして、頬も緩めて。リラックスして。
「ありがとう」
柔らかで暖かな声が、森に響いた。
するとどういう訳か、根来の細い目の中で瞳孔がみるみる開き、やがて彼の無表情は、驚
愕に変貌を遂げた。
千歳も驚いた。根来の狼狽した顔を初めて見たからだ。
「何か?」
「いや……」
彼はせわしくなく言葉を探しているようだ。額がうっすらと汗ばんでいるようにも見える。
ややあって、少し乾いた声を根来は出した。
「貴殿も笑うのだな」
「え?」
思わず千歳は頬に手を伸ばした。
「いや、既に消えている。だが……」
根来はまた首を正面に向け、口早に呟いた。
「それは防人戦士長にのみ見せるべきだろう」

133 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/31(月) 01:28:16 ID:oGLf+n2P0
「どういうコト?」
「防人戦士長に聞け。私には関わりなきコト」
「……でも、本当に?」
千歳自身、自分が笑っていたとは信じられないが、根来がそういう嘘をつく訳はないから、
きっと笑ったのだろう。
嬉しくもあり、罪深いような気もして、まだ戸惑っている。
そして千歳の言に被さって誰の耳にも届かなかったが、こんな声も存在していた。
「ひとまず、眼福だったといっておこう」
と。

その足元で、久世屋は消滅を始めていた。
額の章印を真っ二つにされたので、彼はもはや死を迎えるしか出来ない。
にもかかわらず彼は、ひどく満足そうな笑みを浮かべていた。
(ほらね。俺のいったとおり。輝かしい物を抽出した時は誰だって喜ぶのさ。ま、それが俺の
嫌いな『優秀』って言葉がきっかけなのは皮肉な話だけれど、別にいいや。それより死後の
世界だ。あっちにもおもちゃは沢山あるだろうね。今まで捨てられたり企画段階でボツにされ
たのが沢山。それで飽きるコトなく遊ぶさ。部長がいたらまた殺すけど。あ、そうそう千歳さん。
あなたに仕掛けた百雷銃は爆発させませんよ。今からあなたと根来さんを殺しても仕方ない
ですし、会社でも何かと助かりましたし、……抽出物だってちゃんと出せる『優秀』な人です
からね。フフフ。俺は粋でしょう。でもコレいったら根来さんが呆れるから黙ってますけどね。
でも。手出ししないのはあくまで俺だけ。霧を出してる人に対しちゃ、自己責任でお願いします。
…………ようし。死ぬ前に思うべきコトは全部思ったぞ俺)

いつしか薄らぎ始めた霧の中、久世屋の体は細かい粒子と化して空気に溶け込んでいき
彼の思いが終わると同時に完全消滅した。

久世屋 秀。死亡。

と同時に、千歳の肩から核鉄がこぼれおちた。
彼女は迷いを浮かべて鷲尾と根来を交互に見比べた。
根来は知らん顔をした。ので、千歳は鷲尾のところへ歩き、核鉄を当てた。
鷲尾は背中と頭に傷があり、放置していれば危険なのだ。

134 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/31(月) 01:28:47 ID:oGLf+n2P0
それとほぼ時を同じくして、霧が完全に晴れた。
千歳は訝しみつつも、皆神警察署へ電話し、鷲尾の回収を依頼する。

「第三者についても気にはなるけど」
「現在の状態で遭遇すれば、確実に負ける」
深い疲労の息をつき、根来は憮然とした。
負ければ世界に97個しか現存しない核鉄を奪われる。
それに、仰せつかった任務自体は遂行した。後は無事に戻るコトこそ重要。
第三者の正体については、後日別の者が調べればいい。
2人とも同じコトを考え、撤退を選択。
千歳は根来の肩に優しく手を当てて、瞬間移動した。

彼らの判断は実に賢明だった。
移動と同時に彼らのいた場所を、青白いエネルギー波が凶悪に薙いでいたからだ。
形容するなら、チェーンソーの刃の部分。
飛翔速度を緩めぬまま木に激突し、まばゆい光を2〜3度散らすと165分割した。
「やれやれ。瞬間移動であっさり逃げを打ったか」
エネルギー波が飛んできた方から、金髪の男がぬっと姿を現した。
胸元には認識票。その右手には幾何学的なチェーンソー。
第三者こと、総角主税(あげまきちから)と名乗る例の男である。
「しくったな。好奇心で好機を逃した。同族をどう倒したか聞いている内に……」
歩みを進め久世屋の死んだ辺りに立つと、認識票を握りながら力強く呟いた。
「すまんな。今は表立って戦団と争いたくはない。だからこうやって不意打ちや暗躍をせざる
をえなかった。ただ──お前のいう『抽出物』だけは消滅しない。俺の心に留め、来るべき
戦いに必ず役立てる」
次にさっと目を開き、鷲尾を見る。正確には彼に当てられた核鉄へと。
浮かんだ逡巡は、回収への欲求だろう。だが、総角は笑ってかき消した。
「1個ぐらい、戦団の奴らに差し出すさ。今回は俺の負けだからな。けれど」
チェーンソーを右手に乗せつつ、余裕の笑みをますます広げる。
「銀成市ではうまくやるさ。部下どもとな」
パトカーの音が近づいてきたのを察すると、彼はいずこともなく消えた──

135 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/31(月) 01:29:29 ID:fTrdqZUs0
【終】エンド

千歳が移動した先は、聖サンジェルマン病院。
根来はすぐさま診察を受け、入院生活が決定した。
原因は全身至るところに点在する火傷や銃創、開いた古傷に、あと睡眠不足と栄養不足だ。
(結局、食事は偏っていたのね)
千歳は妙に納得した。ついでにいうと、根来が戦団に申告している体重は55kgだが、今回
の任務での粗衣粗食や戦闘での出血がたたって51kgに減少していた。
一般に忍者というのは、体重の目安を米1表分以下に設定している。
常日頃、人差し指と親指だけで米俵を持つ鍛錬を行い、天井にぶら下がれるよう務めてい
たからだ。米俵より軽ければ自分の体重を指2本で支えられるというコトになり、ぶら下がり
も可能だ。これは「☆大・丈・夫☆ ファミ通の攻略本だよ」という帯で知られるエンターブレイ
ン社刊、「忍道─IMASHIME─ 公式コンプリートガイド 皆伝之書」にすら乗っている事実だ。
話を戻す。
千歳の操るヘルメスドライブが瞬間移動できる質量は最大で100kg。
そして千歳の体重は47kg。普段の根来となら55+47=102で2kgオーバーだが、根来の
粗衣粗食などが幸いして、共に瞬間移動ができたようだ。
で、千歳が何となく近くの公園でベンチに座っていると、皆神警察署から「鷲尾を保護し、核
鉄も無事回収した」旨の電話が来た。安堵の彼女だったが、
「それと例の事件の犯人ですが、殺された麻生部長がゲームソフトに残していたダイイング
メッセージによると、久世屋秀という男が犯人です! 失敬、ゲームソフトはポートピア連続
殺人事件というモノでして、その犯人はヤス。久世屋秀は職場でヤスと呼ばれているので──…」
などと意気込んで報告されたのには辟易した。
後日、千歳がそれを見舞いがてら根来に話すと、彼は笑ってこういった。

「警察といえど所詮組織。組織などはえてしてそういうモノだ」

最後に。千歳は照星へ報告の電話をした。
これで今回の任務は終わった形になる。
だが千歳は一つ、納得できないコトがあり、思い切って聞いてみた。
「ところで大戦士長。戦士・根来への言伝ですが」
言伝というのは、『足手まといになった時、切り捨てていい』という旨の物。

136 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/31(月) 01:31:40 ID:fTrdqZUs0
されど結果から見れば分かるように、根来はそうしなかった。
確実性を重んずるなら、人質に取られた千歳など無視すれば良かったのだ。
いちいち久世屋の近くまで裸足でひた走り、無防備な攻撃姿勢を晒す必要などない。
あえて千歳を爆破し、その隙をつくという手もあった筈。
照星はそんな疑惑を察したのか、
「ああ。あれですか」
と答えかけたが、急にクスクス笑いだした。
言伝うんぬんの話題のどこに、笑う要素があるのだろうか?
やがて照星、短く詫びると最終的な回答を出した。
「内緒です」
電話の向こうにいる照星の頬には、実に楽しそうな微笑が張りついている。
「キミはどっちだと思います?」
スピーカーから流れる上司の声に、千歳は疑問符を浮かべた。いわんとするコトが分からない。
「彼があくまで私の命令に従ったのか、それとも命令に背いてまでキミを助けたのか」
「それは──…」
後者だとすれば、根来らしくはない。されど否定できない何かもある。
記憶の中の根来はどこか人間味を帯びているし、千歳を『優秀』とも評していた。
「私が喋れるのは、私個人の願望が混じった話ぐらいですが」
照星は本当ににこやかだ。部下の話でここまで機嫌を良くするのも珍しい。
「戦士・根来はキミを、戦友と認めているかも知れませんね」

電話が終わると、千歳は携帯電話をパチリと閉じた。
やや華やいだ気持ちに少しだけ彼女は浸り、それから、殺された麻生部長とやけに人間味
のあったホムンクルスを思い、深く静かに黙祷を捧げた。

翌日、工場では。
久世家の机に火炎鼓があり、社員たちは誰が置いたのかと首をひねった。
しかしその机はまた新しく入った社員のものとなり、火炎鼓は遺失物扱いとなり、倉庫で半
年間埃をかぶった後、ゴミとして捨てられた。

一人のホムンクルスが欲した物は、結局それだけの価値しかなかったのだろうか?   (終)

137 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/07/31(月) 01:32:23 ID:fTrdqZUs0
まず、サナダムシさんすみません…… 後1回リロードしとけば……

ネウロを目指していたものの、色々混ざりまくったSSでした。
特に最終戦。ジョジョなんだかダイなんだか遊戯王なんだかよく分からない代物ですねこりゃ。
でもネウロの良さは、「アクの強さ」なので、エクセルやら忍法やら変なウンチクやら入り乱
れるこのSSはある意味においてネウロっぽいと……ダメですか? ええ。ダメでしょうこの理論。
【備+】というサブタイは、ネウロの【手+】とかぶせていますが、焼け石に水かも?

根来の髪うんぬんは、最大最後のトリックとして用意してました。
勘のいい人なら気づいていたかも? で、これを成り立たせるために「根来の髪を切ったり
乱入してピンチをもたらす敵」役として鷲尾を、切られた分だけじゃ足らないので、クローン得意なヴィクトリアを。
おかげで、「協力ありきの勝利」というのを描けたと思います。

何はともあれ読んでくださった皆様方には感謝。
新作は、もうちょい少年漫画的に行こうと思ってます。恋愛とかライバルありきの。

>>78さん
>好きなSSだったので残念ですけど、
ありがとうございます。好いて貰えるかどうかはSSを描く時の一番の懸念事項ですので、
「好き」という言葉はかなり染み渡ります。終わり方については和月伸宏その人もハッピー
エンド思考なので、コレしかないと。るろうにの雪代巴と被る部分もありますが、ネゴロ的にはコレしか。

>>84さん
そうなんですよ。根来と千歳のコンビは描いてる内にかなり気に入ってしまったので、終わら
せるのも少し惜しく。だから新作にも、脇役で登場させたいなぁと。あ、ネゴロの中で幾つか
消化不良的な要素もあったと思いますが、そちらは新作に繋がっております。鬼平犯科帳方式ですね。

ふら〜りさん
ご推察の通り! ネゴロの構想当初から、あの場面はありました。だから、いままで描いてき
た要素のほとんどは、あの場面を成立させるためだけにあったといっても過言では。久世屋
の最期の策は、客観的に見ると確かにエグい。内心でケタケタ笑いながらやろうとする精神がエグいですね……

138 :やさぐれ獅子 〜十七日目〜:2006/07/31(月) 01:48:06 ID:PGhUCNEE0
 ──空手が、芸術を圧倒していた。
 耐えがたい恥と屈辱が、芸術家にのしかかる。コレクション候補に過ぎなかった人間、
しかも女に歯が立たない。無様にも程がある。
 どうにかして紙人形に命令すれば、たやすく仕留めることはできるだろう。が、内なる
プライドがそれを認めない。なんとしても自力で屈服させなければ気が収まらない。
 初志貫徹。この女は自分で倒し、はく製にしてみせる。
 井上は実戦における、こうした執念をまだまだ読み切れていなかった。
「うおおぉぉぉぉっ!」
 膝をついた状態から、いきなり飛びかかる芸術家。まさかの反撃に驚き、飛びのく井上。
 わずかに開いた二人の距離を、芸術家は見逃さない。
「もらったぁっ!」
 芸術家が、今度は先ほど弾かれた絵筆に飛びつく。
「あっ!」井上も彼の狙いに気づくが、すでに手遅れ。
 再度、芸術家は絵筆を手にしてしまった。
「さぁ、仕切り直しだ」
「しまった……!」
 顔をしかめ、井上は自分の甘さを悔いた。
 再度、向かってくる芸術家。井上も構えるが、動揺した彼女の動きは明らかに精彩を欠
いていた。簡単に懐への侵入を許してしまう。
「喰らえッ!」
 絵筆がしなやかに舞い、井上の胸にセーターの上から一本の線を描いた。

139 :やさぐれ獅子 〜十七日目〜:2006/07/31(月) 01:49:31 ID:PGhUCNEE0
 その刹那、胸に凄まじい熱と痛みが加わった。
「うぅっ……! ああぁぁぁっ!」
 胸部を抱えるように、しゃがみ込む井上。ただ絵筆で塗られただけ。なのに、まるで胸
を刃物で斬られたような激痛が彼女を襲っていた。
「形勢逆転……だな」絵筆についた絵の具を舐め、芸術家が井上を見下ろす。「どうだ、
痛いだろう? 苦しいだろう?」
 井上にはまったく声は届かない。
「こいつで生き物を塗ると、塗った箇所に痛みを与えてくれるのさ。ただし、痛みだけだ。
肉体的にはなんのダメージもない。たとえ全身に塗られても、病院ではなにひとつ異常は
発見されないだろう。だが……世の中には“ショック死”というものがある」
 さらに、絵筆でうずくまる井上の背中に一閃を浴びせる。また痛みが増える。
「うぁっ!」
「痛みに耐え切れず、健康なはずの体が勝手に死を選んでしまうのさ。肉体を傷つけずに
敵を殺すには最適の道具だッ!」
 さらに井上に筆を振り下ろす芸術家。が、井上は転がるように筆筋から逃れた。
「ほう、まだ動けるのか。だが、さっきまでのように戦えるかな?」
 指摘通り、井上はとても戦える状態ではなかった。肉体にダメージはない。拳も振るえ
るし、蹴りも出せる。しかし、熾烈な痛みが全ての動作が封鎖する。
「くぅっ……先輩……」

 こつこつと床を踏み、動けぬ井上ににじり寄る芸術家。
「散々コケにしてくれたからな。お返しはたっぷりしてやらんとな」
 芸術家の中でスイッチが入り、踊るような筆先で井上に線を描いていく。ひと塗りされ
るごとに、筋肉を抉られるような苦痛が彼女に追加される。それでも必死に避けようと身
をよじる井上を、芸術家は笑いものにする。
「気品の欠片もないダンスだな」
 抵抗も空しく、井上の動きはだんだんと鈍くなり──ついに顔から床に堕ちた。

140 :やさぐれ獅子 〜十七日目〜:2006/07/31(月) 01:50:57 ID:PGhUCNEE0
 倒れた井上を見つめ、深く嘆息する芸術家。
「死んだか……。およそ二十筆、大の男でも十筆も喰らえば絶命するというのに。とんだ
烈女だったな」
 ところが、死体であるはずの指がぴくりと動く。
「な、なんだと?! ……バカなッ!」
 次に、両腕でがっしりと床を掴む死体。
「嘘だ、ありえん……ありえんぞ!」
 ついに、死体は立ち上がった。否、死んでなどいない。井上はれっきとした生者だ。一
流剣客の太刀に匹敵する激痛を二十も浴びて、なおもこの女は立つ。
「せ……」か細く、井上が唇を開く。
「せ……?」
「先輩は必ず人形を倒すッ! 私はあなたを倒すッ! たとえ死んでもッ!」
 ──井上が吼えた。
 痛みに泣く体に鞭を打ち、残る生命力を絞り出す。鼻血まで出して立ち向かう井上の姿
に、芸術家の内面が軋む。
「──う、美しい」
 初めて出会えた美に対し、もっとも的が広い胴体めがけ、芸術家が筆を走らせる。が、
井上は寸前に屈み、体を前へ回転させる。
「でやぁぁぁっ!」
「うわぁぁぁっ!」
 顔面を強襲する大技、胴廻し回転蹴り──炸裂。
「ぶおァッ!」

141 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/07/31(月) 01:52:19 ID:PGhUCNEE0
>>137
いえいえ、こちらこそすいませんでした。

142 :作者の都合により名無しです:2006/07/31(月) 07:46:27 ID:gDALu+tT0
スターダストさん、最終回おめでとうございます・・かな?
好きな作品だったので、完結して嬉しいというより寂しい方が勝りますが・・
とにかく「完結おめでとうございます!」

新作、早くも楽しみにしてますよ♪
わがまま言わせていただければ、出来るだけ早く現スレ中に・・
でも、ここ最近スレの流れ早すぎるからなあw

143 :作者の都合により名無しです:2006/07/31(月) 12:34:04 ID:4g6uLrf90
まずスターダストさん完結お疲れ様でした。次回作をお待ちしております。

>サナダムシさん
井上さん猛々しいですね。加藤と、多分先輩後輩の絆でしょうけど
しっかりとした絆が見られて。しかし、芸術家はあまりに弱すぎるw

>スターダストさん
最後は意図的にあっさりとした感じで終わらせたんでしょうね。まだ続く感じ…
後半の主役の久世屋が死んだのは残念だけど、根来も最後に笑ってくれたし良かったな。


144 :作者の都合により名無しです:2006/07/31(月) 18:59:34 ID:31jLxFA50
>サマサ氏
何回目かの団結と迷いだけど、少しずつ闇が深まっていく感じだね。
終わりが近い証拠か。寂しいけどまだ一波乱も二波乱もあるだろうね。

>コテ氏
丈太郎や加藤たちは強そうだけど、ジーグって知らないなあ。
これから先、どんな展開になるか楽しみです。

>サナダムシ氏
おんなっぷりがいいですね、井上。胴回しなんて曙でも出来ない技だ。
芸術家がサディストなだけに、強さが美しい。ところでバキ世界で井上は美人なのか?

>スターダスト氏
ほぼ1年くらいでしょうか。完結お疲れ様です。最初から楽しませて頂きました。
錬金でありながらネウロの要素もあり、スターダストさんのうんちくもあり、
錬金の爽快さもありで、好きなSSのひとつでした。終わるのは惜しいな。
でも、新作を書いてくれるというので安心です。待ってます。


145 :作者の都合により名無しです:2006/07/31(月) 22:28:21 ID:9xW/eGud0
スターダスト氏力作完結乙。
この作品は中盤から明らかに千歳が主役っぽかったな。
後半は久世屋が主役だったしw

でも、好きな作品だったよ、復活待ってます。

146 :作者の都合により名無しです:2006/07/31(月) 22:43:40 ID:kwicTJjP0
スターダストさん、ネゴロ完結おめでとうございます。
最初は照星はアレでしたけど、最後は渋く締めましたね。
ただ今回の更新で総角主税の武装錬金がさっぱり予想がつかなくなってしまいました。
それも次回作への大きな謎ってことですね。
次回作(秋水かな?)も映像作品の方も楽しみにしてます。

147 :やさぐれ獅子 〜十七日目〜:2006/08/01(火) 01:48:41 ID:g2jLoRz60
 まともに喰らった芸術家はよたよたと後退し、窓にまで到達する。
 もう足腰は使い物にならない。芸術家の身が、窓の外にするっと抜け出す。
「あっ、危ないっ!」
 すぐに手を差し伸べようとする井上。が、ここに来て「窓を固めろ」と命令されていた
紙人形が初めて動く。ぺらぺらな外見からは想像もできない力で、井上を押し止める。
「ち、ちょっと……!」
 命令を忠実に遂行する紙人形。
「あなたを作った人が危ないのよ!」
 命令を忠実に遂行する紙人形。
「どいてっ!」
 命令を忠実に実行する紙人形。
 この様子を見て、かろうじて窓の縁に掴まっていた芸術家が自嘲気味に微笑む。
「……おじょうさん」
「えっ?」
「こんなものだ。自己満足の美に浸っていた男の最期など、こんなものだ」
「早く彼に命令してっ! あなたを助けるように!」
 だが、芸術家は首を振った。
「いや、いい。今のエクセレントな一撃を喰らう前に、すでに私は敗けていた。美しいお
じょうさん……さらばだ」
 縁から、手が離れた。

148 :やさぐれ獅子 〜十七日目〜:2006/08/01(火) 01:49:12 ID:g2jLoRz60
 一方、加藤は粘土人形を相手に奮戦していた。すでに一昨日倒した数は超えている。ペ
ース配分を頭の中できちんと組み立てたことにより、スタミナ消費を極力まで抑えたこと
が大きい。
「けりゃあっ!」正拳で粉砕。
「きゃらあっ!」肘で撃砕。
「どるあっ!」廻し蹴りで破砕。
 とはいえ、数は前回の三倍。ペース配分だけでやり過ごすには荷が重い。さすがの加藤
にも疲れの色が浮かんできた。
「オラァ、どんどん来やがれッ!」
 ここで気合を入れ直す。こうしたメリハリをつけられることも、格闘士においては重要
な才能となる。
 ──と、その時だった。

 ぐしゃっ。

 突然、上から降ってきた男が頭から地面に激突した。頚骨が折れ、紛れもない即死。
「な、なんだァッ?!」
 すると、まだわらわらと集まってきていた粘土人形たちが急にどろどろと溶け始めた。
これは主である芸術家が死んだからなのだが、加藤にはまったく状況が掴めない。
「上から……ってこたぁ、井上ッ!」
 本能的に井上の危機を感じ取った加藤は、疲れを忘れて城の階段を駆け上がった。

149 :やさぐれ獅子 〜十七日目〜:2006/08/01(火) 01:50:49 ID:g2jLoRz60
 三階に行くと、ひとり井上が倒れていた。すかさず加藤が駆け寄る。ちなみに、彼女に
つけられた筆跡とそばにいた紙人形はとうに消滅していた。
「──井上ぇッ!」
「せ、先輩……」
「大丈夫か、おいっ!」
「へ、平気です……。痛みもなくなりましたし……」
「すまねぇ……こんな目にあわせちまって……」
 悔やんでも悔やみきれない。加藤が目を伏せる。
「え、へへ……。でも、私……ひとり倒しましたよ。できれば、助けてあげたかったけれ
ど……」
「すげぇよ、お前はすげぇ!」
「これからは、私も……。お願いします……」
「あァ……これからは一緒だ……!」
 込み上げる感情を抑え切れず、井上を抱きしめる加藤。
 これは男女の関係を意味しない。が、二人は今、深い絆によって結ばれた。

150 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/08/01(火) 01:52:30 ID:g2jLoRz60
十七日目終了です。

151 :らぐぅん。 ◆enHFbh9QUI :2006/08/01(火) 05:48:49 ID:M+2CYYub0
始めまして

これからSSを書こうかな、と思ってるらぐぅん。です

質問なのですが、ここのSSまとめサイトは、エロゲーベースに、他漫画などのネタを使った青春系SSを受け付けておりますでしょうか

ご返答よろしくおねがいします^^

152 :作者の都合により名無しです:2006/08/01(火) 07:54:09 ID:8sycJw780
>サナダムシさん
井上さん頑張ったなあ。
加藤との仲も深まったようで良かった。
その分、末堂が悲しいけど・・
でもやさぐれ獅子もなんか終わりそうな予感・・

>らぐぅんさん
大丈夫ですよ。期待してます。
サマサさんがシャックルとかいうエロゲのキャラ使ってますよね

153 :作者の都合により名無しです:2006/08/01(火) 12:44:31 ID:uplh/Cwl0
サナダさんお疲れ様です。1年前のペースに戻って嬉しい!
井上さんと加藤、以外にプラトニックな関係ですね。
これから井上さんはお姫様のように守られるのかな?
今回すごく強かった代わりに。

>らぐぅん氏
うみにんさんの掲示板にいた人かな?頑張って下さい

154 :五十三話「剣と英雄」:2006/08/01(火) 15:53:09 ID:1he2Uis70
数十名の騎士達が、鎧姿ではなく正装でその場に集結していた。
ラファエルと呼ばれた青年を見ると、何時の間にか横に少女が立っていた。
スタン達の視線に気がついたのか小さな声で青年が自己紹介を始めた。
「スタンさんでしたか?初めまして、私はラファエル。
見習いの騎士です。彼女はコンスタンツ、彼女の父はあそこに居るテオドール殿です。」
ラファエルの紹介が終わると、横に立っていた少女がペコリと頭を下げた。
可憐な花をそのまま人間のサイズに合わせた様なドレスを身に纏い、
顔には美しい笑顔を浮かべている、どう見ても外見からは父親の血筋は感じられない。

「よろしく、ラファエル。こっちは仲間のルーティだ。」
スタンも周りの騎士が気付かない様に小さく御辞儀をし、ルーティを指差した。
しかし、ルーティは自己紹介よりも騎士達から感じられる重い空気が気になり、ラファエルに尋ねた。
「ちょっと、この会議って何の為に開かれるの?」
「西部の山岳地帯にある、今はもう使われていない騎士の拠点に魔物が住み着いたんです。
拠点としての役割を果たせていなかったので、見捨てられて今は廃屋になってます。
そこへ討伐隊を送ろうという事なのですが・・・皆、金が掛かるとかで渋っているのです。」

「テオドール、今回の会議における議題の説明を頼む。」
こういった説明事項はハインリヒが行う物だと思っていたスタンは意外そうにテオドールを見た。
ハインリヒは物音一つ立てずに、これから始まる議題への皆の提案に意識を集中させる。
「西部の山岳地帯にモンスターが住み着いた。討伐隊の派遣を提案したい。」
深いため息が周囲で漏れ始める、顔には出さないがテオドールが不機嫌なのが一目で判る。
「前にも言ったが、そんな場所に人は寄り付かん。被害が出ないのなら放って置けばいい。」
ここに居る騎士達に疑問を抱くスタン、強者揃いで正義を貫く騎士団のイメージは崩れ去ってしまった。
良く見ると、ここに居る騎士達からは闘志など微塵も感じ取れない。誰もが偉そうにしているばかりだ。
テオドールとハインリヒ、そしてラファエルの3人以外は。
「騎士団領でモンスターを見過ごす気か?騎士としての誇りは無いのか!?」
遂に騎士達の不甲斐無さに怒りを表に出すテオドール。
ハインリヒは黙っているばかりだ、明らかに不満を感じているのに何故だろうか。

155 :五十三話「剣と英雄」:2006/08/01(火) 15:54:44 ID:1he2Uis70
「戦いには金が掛かる、あんな所では食料もろくに取れん。
見晴らしもいい所にあるし、攻め込んで来るようなら対処すればいい。
それにモンスター達も放って置けば、そのうち消えるかもしれん。
何にせよ、戦わずに済むのが一番だ。」
一人の騎士がそう言うと、周囲の騎士もその意見に頷いていた。
これが騎士か、情けないと思うのはテオドールとハインリヒだけでは無い。
人を守るべき騎士の実体を目の当りにしたスタンも、少なからず怒りを覚えていた。

「ねぇ、アンタもしかして『それでも騎士か!』なんて叫びださないでしょうね?」
「えっ、いや、だって・・・。」
思いもせぬ所でルーティに心の内を見破られ、動揺を隠せないスタン。
隣で睨みを効かせ続ける彼女に、それ以上何も言う事は出来なかった。
「金、金、金!騎士として恥かしくないのか!」
何事かと思い、声のした方を見るとラファエルの顔が怒りに歪んでいた。
冷たい視線を送りつける周囲の騎士達、いつ乱闘が始まっても可笑しくは無い。

「騎士以外の発言は認めない!」
ハインリヒの一括でその場は納まった、見習いであるラファエルに発言権は無いのだ。
「ふん、最近の若いもんは礼儀を知らん。」
「見習いがでかい口を叩くな!」
「くっ・・・!」
次々と罵声が飛び交う中、ラファエルは唇を噛み締め屈辱に耐えていた。
殺伐とした空気の中、扉が静かに開くと同時にざわめく騎士達も口を閉ざした。

「遅れまして申し訳ありません、ですが話は聞いていました。
騎士ではありませんが、同じ志の下、騎士団領を守る者として発言してもよろしいかしら?」
突然現れた女性はコンスタンツとは違う、年上らしい美しい整った顔立ちをしていた。
顔に微笑を浮かべながら玉座の側へと近づくとハインリヒとテオドールに頭を下げた。

156 :五十三話「剣と英雄」:2006/08/01(火) 15:55:46 ID:1he2Uis70
「どうぞ、フラーマ殿。」
ハインリヒがそう言うと顔に浮かべた微笑を消し、深刻そうな面持ちで話を始めた。
「ありがとう、最近のモンスターの活発な動きはこの地域だけの事では無いようです。
イスマス城がモンスターに滅ぼされたという話も既に他国で広がっています。」
その話を聞いた騎士達は口々にまさか、そんな筈はと騒ぎ立てた。
騎士団領の地図にはイスマス等という地名は載ってはいなかったが何処なのだろうか。

「まさか・・・難攻不落のイスマス城が・・・。」
騎士達の慌てようから、強国にある有名な城である事は何と無く判る。
その城の話をしたという事は、ここから決して遠くない城なのだろう。
恐らくフラーマは、イスマスを滅ぼしたモンスターでは無いかと危惧しているのだ。
「そのモンスターの実体を調べる為にも、調査が必要なのではないですか?」

フラーマの発言にも首を縦に振らない騎士達、
何だかんだ理由をつけた所で結局は金が惜しいのだけなのだ。
「意見をありがとうフラーマ、それでは裁決を行う。
モンスターの討伐に賛成の者はいるかね?」
只一人、強い意志を持って手を高々と上げる騎士が一人居た。
だが他の者は、皆渋っているばかりで何もしようとはしなかった。

「・・・反対多数、議題は否決された。閉会とする。」
己の玉座へと歩み寄り、椅子の後ろから剣を引き抜くとテオドールはそれを掲げた。
「私は一人でも行くぞ!騎士としての誇りに掛けて!」
巨大な両手大剣、バスタードソードをその手にした彼を、去り行く騎士達は見ようともしなかった。

157 :五十三話「剣と英雄」:2006/08/01(火) 15:59:28 ID:1he2Uis70
着々と準備を進めるテオドール、その武具は他の騎士とは違い高価な物とは言えなかった。
バスタードソードの刃はよく研がれていたが柄や鍔は欠けている。
鎧も鉄や銀で出来た物ではなく、ボロボロになった石鎧を身につける。
どれも使いこなされており、テオドールが現役の騎士である事を悟らせる。
「どうしても行くのか?」
「こうなる事は判っていた、私が騎士の見本になり今一度、騎士とは何かを判らせる!
ハインリヒ、君は残って若い連中が馬鹿なことを仕出かさない様に注意してくれ。」

二人の視線が交差する、今まで険しかったテオドールの顔も、
ハインリヒと話す時には、普段の力強さと本来の優しさを併せ持ったように雄大になる。
「ならば私を連れて行ってください!」
テオドールに懇願する、その声の主は他でもないラファエルだった。
腰には見習いに与えられる守りに特化した作りになった片手剣、ディフェンダーを下げている。

「駄目だ、お前の様な未熟者では足手まといになるだけだ、許さん。」
ハインリヒがラファエルの行く手を遮るように立ちはだかる。
だが、その細身の身体にテオドールの手が静かに置かれる。
「いや、ラファエルにもチャンスを与えよう。心配なのは判るが私がついている、大丈夫だよ。
コンスタンツ、出撃の準備だ!私の馬を出せ!行くぞラファエル!」

(まぁ、二人には悪いけど報酬も出ないんじゃ行っても・・・。)
「俺達も連れて行ってください!」
ルーティの思考を遮ったのは、いつも通りのお人好しの叫び声だった。
まただ、人を信じすぎるなと忠告しておいたのにもう忘れている。
その時、スタンを見るつもりが何故かハインリヒの方へと視線が移った。
スタンを見てニッコリと微笑んでいるハインリヒ。
スタンのお人好しを見抜き、この為に連れて来たのだ。

「私は今、猛烈に感動しているぞ!かたじけない。」
ガッシリと握手を交わすスタンとテオドール。
魔物退治で金を稼ぎに来たはずが、と今更ながら後悔するルーティだった。

158 :五十三話「剣と英雄」:2006/08/01(火) 16:00:17 ID:1he2Uis70
最近、後輩からモンハンの小説をパクって読んでた邪神です。
イァンクックとか懐かしい、モンハン自体最近やってなかったw
3が待ち遠しいんですがPS3買う金が溜まってませんorz
金の生る木がポコポコ生えてきたらなぁ・・・。
それはともかく、今週もサガ講座は無しでございます。

〜感謝の場〜

ふら〜り氏 取り合えず騎士団長の二人はともかく、新人君は絶望君フラグの立て所満載です。
まぁ大分後ですけどね、サガが判る人なら判る所です。

サマサ氏 >>テイルズチームは死刑囚と違ってファンタジー風味満載ですね。
死刑囚にかかれば剣と魔法の世界でも、血反吐を吐きあう殴り合いの世界へ。
まぁロマサガにも体術はあるけど・・・「ヒャハハハ!切れ(ry」なんて無いですからね。

91氏 >>RPGのSSらしい展開
死刑囚は異常な集団でしたから本来はそうであるべきなんでしょうw
でも予定してる新キャラ投入したら雰囲気崩れそうな予感。
まぁアミバ様とかモンハンで崩れてるしアバウトにいこうか、うん。

104氏 スタンとグレイはシリアス気取りでいこうかなーと。
まぁスタンはルーティとタッグだし、たまにはイチャイチャとめそ・・・ゲフッゲフッ。

159 :バーディーと導きの神〜思わぬ味方〜:2006/08/01(火) 18:05:57 ID:DiNw36XZ0
「わーっ待て待て待てっ!」
バーディーのラリアットが男を刈ろうとしたそのとき、男はあっさりザンを放すと、頭を
抱えてラリアットから逃れた。
「俺は仲間だ仲間!」
「へっ?」
そう言う男の声に拍子抜けしたのはバーディー。その言葉に危うく反転して打ち込みかけ
た手刀を引っ込める。
ザンも通路に足を下ろして男のほうを見る。
「なんて手の早い連中だ」
男は額に浮いた汗をぬぐうと、両手を広げて敵意のないことを示し、バーディーとザンが
戦闘体勢を解くのを待つ。
「どういうこと?」
バーディーは半分警戒を解きながらも男の真意を測りかねて距離を置く。ザンも同様だ。
男はとりあえずバーディーたちが攻撃してこないことを確認すると、一息ついて話し出した。
「俺は地下組織の一員だ。お前たちだな。例の少女を助けに来た奴ってのは」
「地下組織……」
バーディーとザンは顔を合わせる。
「情報じゃ4人組だって聞いてたが……。まあいい。ついて来い。ここで長話は危ない」
男はまだ訝しがる二人にかまわず、近くにあった詰め所のような場所まで歩いてゆき、扉を
開いて二人を手で招く。
「とにがくいっでみるしかねえべや」
安全と見たモルプが隠し通路から出てきて言い、バーディーとザンを見やる。
「どうします?」
ザンが困ったように言う。
「どうもこうも、これは確かに話に乗ってみるしかないわね。いざとなったらいざという
ことで」
バーディーは妙に自信たっぷりだ。
「それはそれとしてザン君。私との約束を破ったわね」
途端に表情が変わってじろりとザンを睨むバーディー。
「ごめんなさい。つい……」
ザンはその迫力に押され、素直に謝った。

160 :バーディーと導きの神〜思わぬ味方〜:2006/08/01(火) 18:07:45 ID:DiNw36XZ0
「まあこの件については後でたっぶりお説教ね」
完全に保護者の感覚でバーディーはザンにお灸を据えた。

その頃、ようやく150階に到達したシアン。
誰もいない城の出っ張りを見渡すと、バーディーとザンに置いてけぼりにされたことに腹を
立て、手近な岩に腰を据えると不満をぶちまけた。
「あんの大食い女にバカガキが!俺ァどうなってもしんねえぞ!」
一応、場内でなにかあったときにはすぐに対応できるよう、その場で待機という形をとりながら
も、シアンは完全にヘソを曲げてしまった。

通路の詰め所の中には、男のほかにルアイソーテの軍服を着た金髪の人の良さそうなお姉
さんがいた。
「もう一人はどうしたの?」
お姉さんは男に尋ねる。
「いや、知らんが……」
男は答えてバーディーを見やる。
「もう一人は遅れているわ。それより、あなたたちが地下組織の一員だということは、本当の
話なのね?」
あくまで警戒したまま、バーディーは二人に確認する。
男が肩をすくめて言った。
「そうでなきゃ、上に通報もせずこんなところに連れ込んだりしないさ」
「でもなぜ僕たちがそれだって分かったんですか?」
ザンが不思議そうに質問する。
「ん、それはな……」
男はザンの上着を指差した。
「お前さんの着ているその上着のおかげだよ。それを着ている限り、地下組織の者なら誰でも
協力してくれる。その服はな、俺たちの仲間になったしるしなのさ」
「ええっ!」
新たな事実に驚くザン。同時に、だからこの服をくれたのかと、あの優しいユウに再度感謝する。
男の目を見て本気らしいと判断したバーディーは、そこで初めて安堵した。

161 :バーディーと導きの神〜思わぬ味方〜:2006/08/01(火) 18:09:06 ID:DiNw36XZ0
そのとき詰め所の扉をノックする音が響いた。バーディーは身構えるが、男がそれを制し、
三人に壁際に寄るように言うと扉の小窓を開いた。
「あたしよ」
小窓から女の声が聞こえ、男は扉を開ける。
すると詰め所の中に細面で頭に毛のない亜人種の女性が入ってきた。
「どうだ、少女はいたか?」
男が問う。しかしその女性は被りを振った。
「いないわ。デアマシュウが連れ出したらしいの」
「デアマシュウ!」
リュミールをさらったあの大男の名を聞き、バーディーが反応する。
「どこに!」
これ以上リュミールを好きにはさせてはおけないという焦りから、ザンは飛び上がって女
を問い詰めた。
「南側のテラスよ」
女性が言うなりつめ所を出て行こうとするザンとバーディー。男はそれを引き止める。
「おい待て!今行っても無駄だ。お前らじゃ奴には勝てない。それに見つかったらもうか
ばいきれないぞ!彼女が牢に戻ればまだチャンスはある。それまで待つんだ!」
しかしザンはそれを決意に満ちた顔で否定した。
「これ以上リュミールを悲しませたくないんだ!だから行きます!僕自身のためにも!」
「そういうことよ。私たちの心配は無用よ。あのデアマシュウになんか負けないわ。情報
提供には感謝するわ。ありがとう」
バーディーとザン、モルプは連れ立って詰め所を出た。
「いろいろありがとうおじさん!」
扉を閉めながら、ザンは言った。
「やれやれ、危なかしくって見てらんないぜ……」
愚痴る男に、これからの事態に備えて準備する女性陣。もちろん、騒ぎになったとき、
ルアイソーテの兵をかく乱するためだ。
「さて行きますか」
金髪のお姉さんが言い、細面の女性が頷いた。


162 :バーディーと導きの神〜思わぬ味方〜:2006/08/01(火) 18:10:09 ID:DiNw36XZ0
「テラスさ行ぐんなら、足で登ったほうが見っかりにくいだな」
隠し通路から元来た道を戻りながらモルプが言う。
「場所はわかる?」
問うバーディー。
「知らねえはずなかんべ」
自信満々に言うモルプ。
連れ立って急ぎ、外壁の出っ張りへと戻ってきたザンを待っていたのは仏丁面をしたシア
ンだった。
「おめえらどこで油売ってやがった?」
額に怒りマークを貼り付けながらシアン。ザンはシアンのその感情に気づいて素直に謝る。
「すいません。でも、じっとしていられなくて……」
「悪かったわね、待たせちゃって」
「悪いもなにも俺だけ仲間外れはねえだろ」
「だから悪かったって謝ってるでしょ」
「は、どうだか」
「なにいじけてるのよ。大の男がみっともない」
「誰がいじけてるだって?冗談もたいがいにしとけよ大食い女!」
「誰が大食いよ!もともとあんたが遅れたのがいけないんでしょ!」
「け!悪いが俺は怪力姉ちゃんとは違って作りが繊細なんでね」
「なっ!力比べに自信があるのは自分でも認めるけどね、あんたのどこの作りが繊細なの
よ!生体防壁もないくせに、イボガエルの爆薬食らってもケロっとしてたのはどこのどな
たさまでしたっけ?」
「そりゃあ俺の内念が完璧だっつうだけの話だ!」
「減らず口を!」
「んだと!」

163 :バーディーと導きの神〜思わぬ味方〜:2006/08/01(火) 18:10:44 ID:DiNw36XZ0
「あのー」
いきなり始まった二人の言い合いに辟易したザンが、静かに手を上げる。
「早いとこテラスに行ってリュミールを助けたいんだけど……」
少しだけ不満を込めて言うザン。バーディーとシアンははっと気づく。
「そ、そうね。早く行きましょ」
「お、おう。準備は万端だぜ」
二人とも、取り繕ったように言う。
「この連中で助けになるべか?」
モルプが他の三人には聞こえないようにぼそっとつぶやいた。

164 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/08/01(火) 18:16:10 ID:DiNw36XZ0
バーディーとシアンのコンビは相変わらずです。

>>108さん
ちょっと体調を崩してたもんで、すいません。
>>115さん
期待を裏切ってすいません。本番はこの後です。
>>ふら〜りさん
素に戻ると二人はこんなもんです。次に期待してください。

165 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/01(火) 18:56:54 ID:0L7KCLvX0
MUGEN バトルロイヤル 第5話 samurai and knight
穏やかな海だった。かもめが舞い、時折トビウオの姿が見受けられる。
寄せては返す波の音とカモメの鳴き声しか聞こえない風景は“ゲーム”とは無関係にすら見えた。
海岸の端に灯台があった。
3階立てで一階は広間、二階は居住区、三階は制御室である。
今、その前に佇んでいる人間がいた。
全体的に細く、西洋風の甲冑を身に付けた女だった。
インターフォンは鳴らしたらしく誰かの応対の声がした。
「×$%’!?」
「ROFWWQ!」
意味不明な言葉の問答が行われた後、灯台の扉は開かれた。
女は二階へと上がり居間に入った。
「お帰り。尾けられなかったか。」
女を和服を着た男が迎えた。
長い髪を結わき腰に刀を装備している。丁度日本の侍の様な服装をしている。
「それは無いわ。確認しながら来たから。」
「俺も見張ってたんだが実際周囲には誰もいないっぽいな。」
「とりあえずランチを作りましょうか。“腹が減っては戦は出来ぬ”って言いますからね。」
女がキッチンに立った。何故か冷蔵庫の中に材料があったのだ。どれも腐ってはいない。
人間界を模して作られた世界なのに電気やらガスやらが通っているのは疑問に思えるが二人はあえて深く考えないようにした。
「んじゃ俺は出来るまで双眼鏡で景色を見る事にするかな・・・・ん・・・んんッ!?」
男は目を見張った。
今まで誰もいないと思っていた砂浜に二人の人間がいたからである。
彼らは唯いただけでは無かった。闘っていたのである。
「シャルロット・・・飯は待ってくれ。ちょっと見た方がいい。」
「何を…?」

166 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/01(火) 18:57:25 ID:0L7KCLvX0
何の変哲も無い普通の砂浜だった。
そこに二人の男達がいた。
一人は赤い軍服の男、片方は白い道着にハチマキを締めた男。
「リュウよ このゲームでお前は更に強くなれる。」
「・・・何を言いたいんだ ベガ。」
リュウはじりじりと前方に動いた。足首から先だけを動かす。
砂と波以外は動かない。誰一人として声を発しない。
「こういう事だ。リュウよ。良く見るがいい。」
ベガがマントを開いた。
マントの下には一人の女性の姿があった。
気絶しているらしく目を閉じてピクリとも動かない。
スリット入りの中華服を着た女性。リュウにとっての仲間。
「春麗!」
「良く見ているがいい。更に強くなるとはどういう事か。」
ベガが春麗の頭を掴んで前に突き出す。
直後、ベガの体を紫色の闘気が覆い始めた。
サイコパワー。ベガしか持たぬオーラである。
「ぐぅ!」
春麗を人質に取られている為リュウに攻撃は出来ない。
「むん!」
ベガが腕から春麗の頭にサイコパワーを送り込んでいく。
やがて春麗の体はサイコパワーのオーラに覆われた。
「波動拳!」
リュウはもうなりふり構ってなどいれられなかった。
波動拳ならベガのサイコパワーを弾けるかもしれない。そう思ったのだ。
だが結果は違った。逆に波動拳の方が消滅したのだ。
「フハハ!我がサイコパワーはそんなモノでは破れんぞ!」
ベガはリュウをあざ笑うと春麗を地面に降ろした。
春麗の目が開き、リュウを見据えた。

167 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/01(火) 18:58:05 ID:0L7KCLvX0
「春麗・・・。」
春麗の様子はおかしかった。口から白い煙を吐き目が妖しく光っている。
「気孔拳(きこうけん)!」
突如、春麗がリュウに仕掛けた。腰を引いて両手を前に突き出し掌から気弾を出す技である。
「グッ!」
リュウが右腕でガードをするがそれすら弾かれた。
(このパワー・・・以前と闘った時の比じゃない!やはりサイコパワーは・・・)
「リュウよ、お前が私の元に来る気が無いのなら私はこの女を人質に取らせて貰う。」
嫌らしく春麗の臀部を触りながらベガは微笑した。
「春麗!目を覚ましてくれ!そいつは君のお父さんの仇なんだぞ!」
春麗はリュウを見たままニヤァと笑った。まるで道化を見るかの様に。
「無駄だ。リュウよ。我がサイコパワーによる洗脳は生半可な言葉では解けぬ。」
「さいこぱわーだか何だか知らんが今すぐ俺達とここで勝負してもらおうか、ベガとやら」
声がした。
ベガが後ろを向くと砂浜の上には覇王丸とシャルロットが立っていた。
「あなたがこの“ゲーム”とやらの主催者の一人、ベガね。人質を取るなんて小物のする事よ。」
「人質では無い。彼女は私の忠実なる部下なのだよ。」
ベガが自信たっぷりに腕組みをしてシャルロットを嘲笑った。
「強い奴3人、アンタ達は二人。これをどう埋めるんだ?」
覇王丸が刀を構えてベガを挑発した。
「ほおう・・・この私とやるというのか。やれ春麗よ、生まれ変わったお前の初陣だ。」
ベガが指図すると春麗は言われるままにシャルロット達の方を向いた。
「待ってくれ!そいつは俺の元の世界での仲間なんだ!」
「おいそこの空手家。これはもうアンタの仲間じゃねぇ。こいつの僕だぜ。」
リュウの嘆願を覇王丸は一言で切り捨てた。
「行くわよッ!」
シャルロットがレイピアで三連突きを仕掛ける。相手の腹、鳩尾、顔を狙う技である。
得物を持つ相手に対して素手で反撃する場合“剣道三倍段”つまり、相手の三倍の腕が必要と言われている。
しかもシャルロットはかなりの使い手である。普通の格闘家なら苦戦を強いられる。
だが春麗には蹴りがあった。元の世界では彼女の蹴りは怖れられる程である。
三段突きと言ってもシャルロットの場合は全てが真打ちではない。一、二打目は牽制である。
だが鋭いので春麗の腰と脇の衣服は避けた。

168 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/01(火) 18:58:41 ID:0L7KCLvX0
三段目を放つ直前のシャルロットの左腕に春麗のハイキックが当たった。
「あッ!」
鋭い痛みの為にシャルロットはレイピアを落としてしまった。
「よッ!はッ!ふッ!」
春麗の拳の連撃がシャルロットを襲う。一発拳が入る度に頑丈なはずの鎧に皹が入って行く。
「ううッ・・・。」
鎧から伝わる痛みで動きが止まったシャルロットを更にローキックが襲う。
今度は足の鎧にも皹がビキビキと入った。
「トドメよッ!」
春麗の拳が的確にシャルロットの顎を捕らえ脳震盪を起した。試合ならばそれで終わりである。
だがこれはバトルロイヤル。“死”あるいは相手の降参以外に決着など無い。
「ア・・・ウ・・」
膝から崩れ落ちるシャルロットの胸に春麗の足が吸い込まれていく。
その蹴りは相手の骨を砕き、肉を裂き、心の臓を潰し、そして体を貫いたー・・・。
「シャルロットォーー!!」
怒りに我を忘れた覇王丸が春麗に突撃し、刀を振り下ろそうとする。
だがそれが春麗の体に届く事はなかった。春麗が踏み込んで覇王丸にヘッドロックをしていたからである。
「うふふ・・・。」
「柔らかい・・・イイ・・。」
丁度覇王丸の顔が春麗の胸に当たる体勢である。
「眠りなさい・・。そして私の夫になりなさい。」
春麗が覇王丸の首を絞め、唇に口づけをした。
「苦しい・・・ウ・・・ア・・・。春麗・・・。」
サイコパワーは伝染するモノらしく覇王丸もベガの手駒になってしまった。
リュウにしてみれば3VS2だったのが一気に1VS3になってしまった。
これはヤバイ。
「くっ・・・・。」
「フハハ・・・。心配するな。今は殺さん。再度私と会うその時までな。」
そう言うとベガは覇王丸、春麗とともにベガテレポートでその場から消え去った。
あっという間。あっと言う間だった。自分の仲間を利用され、連れ去られてしまった。
しかも目の前にいる人間を救えなかった。

169 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/01(火) 18:59:12 ID:0L7KCLvX0
「ウッ・・・ウウ・・・。」
リュウは力なく膝を落とし、手で砂を叩いた。
リュウの泣く声は寄せては返す波の音にかき消されていた・・・。


【リュウ@ストリートファイター】
状態 普通
装備 デイパック一式
思考 1 ゲームのクリア
   2 ベガを斃し春麗を取り戻す
【春麗@ストリートファイター】
状態 サイコパワーによりマーダー化
装備 デイパック一式
思考 1ゲームのクリア
   2ベガに従う
   3覇王丸との恋
【覇王丸@サムライスピリッツ】
状態 サイコパワーによりマーダー化
装備 日本刀、デイパック一式
思考 1ゲームのクリア
   2春麗との恋

【シャルロット@サムライスピリッツ】
死亡確認。

170 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/01(火) 19:07:51 ID:0L7KCLvX0
どうも。第5話をお届けしました。バキスレのライターの皆さんのレベルの高さには
正直驚かされます。自分も精進して上手い作品を書けるようになりたいです。
>>ふら〜りさん
今後セーラー戦士達は治ります。後傀儡と化した原因は不意打ちを食らったと
考えてもらっておkです。描こうとも思ったのですがそれだと長くなってしまうと
思ったので割愛させていただきました。
>>144さん。
ジーグは「鋼鉄ジーグ」という昔の漫画です。1990年代に再販されたものですが
今となっては本屋においてあるかどうかすらわかりません。

グループが出来たので属性分けすると
クリア派(マーダー派) モリガン組 ベガ組 刃牙 カンフーマン カンチョーマン

主催者打倒派(脱出派) 承太郎組

決めておらず派 DIO セーラームーン 

未登場キャラに関してはこれから決めたいと思います。
まあ結末はもう既に決めているので書き易いとは思います。

投稿規制に引っかかってしまいましたorz

171 :作者の都合により名無しです:2006/08/01(火) 20:26:03 ID:UVvKOMLK0
>邪神氏
スタンとルーティは原作ではまとまるんだったっけ?
何はともあれ、物語も着々と進んでいますね。主人公のホークの影薄いまま・・w
そろそろ、人物相関図のまとめも欲しいかな?登場人物も多くなってきたしね。



172 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/01(火) 20:51:31 ID:pKFe+TJD0
十三 思考、そして戦闘

 一時間が経ち……二時間が経ち……三時間が経ち……四時間が経ち……五時間が経った。
 それでも談話室には、何の動きもなく。
 そして、ついには十五時間が経過した。
 通夜のように(実際、通夜だった。葦原と、設楽と、十文字の)静かな一夜は終わりを告げ……何事もないままに、朝を迎えようとしていた。
 時刻は五時三十分。もう、いつ警察が到着してもおかしくはない時刻である。
 まあ『何事もないままに』と言っても、それは結果論に過ぎなくて。
 一睡もしないで警戒を続けていた四人は、肉体的にも精神的にも、かなり疲弊していた。
 須藤は――昨日から、もう何度目になるかわからないが――窓の外を見た。
 東の空が、うっすらと白みはじめている。
 気が付けば、あれだけ激しく屋敷の屋根を叩いていた雨音も、今は聞こえない。
 代わりとばかりに小鳥の囀りが、心地よく耳朶を擽った。
 一晩中張り詰めていた緊張は、朝の訪れと共に、緩やかに弛緩し始めようとしていた。
 それと同時に、今まで押し殺していた睡魔が息を吹き返し、脳を序々に侵食する。
 思考力が、低下する。判断力が、鈍化する。悲観論が、風化する。楽観論が、跋扈する。

 ――あれから十数時間も経っている――

 ――警察だってもうすぐ到着する――

 ――だから。殺人鬼は、もうこのあたりにはいないだろう――

 そんな、心に生じた隙を見透かすように。
 狙い澄ましたタイミングで、奴は現れたのだった。 
「窓だ、窓の外にいるぞっ!」
 鋭い声で高瀬が叫び、窓を指差した。次の瞬間、窓硝子が粉雪のように弾けて、宙を踊った。

173 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/01(火) 20:52:57 ID:pKFe+TJD0
 間の悪いことに、はじめは丁度、その窓のすぐ横の壁に寄りかかっていた。
 そちらへ振り向こうと、首を動かそうとした。が、視界の隅で何かが煌くのが見えて、反射的に身を伏せた。
 はじめの頭上で、刃物が風を切る音がした。
 回避するほんの一瞬、目に入っただけだったが、確かに刃物だった。
 あのまま、侵入者の姿を確認しようと悠長に振り向いていたら、首を飛ばされていただろう。
 姿勢を立て直し、間合いをとろうと後方へ跳ぶ。
 そこで初めて、はじめは『敵』と、真正面から対峙した。
 敵は、何だか拍子抜けしてしまうほどに、どこにでもいそうな普通の男だった。
 洋服――白いパーカーに、茶色の長ズボン――をびしょ濡れにして、荒い息を吐いている。
 顔は、良くもなければ、悪くもない。ただ、神様に個性を剥奪されてしまったみたいに無個性だった。
 銀行強盗なんかをしでかしたとしても、目撃者はきっと、容姿を説明するのに困ってしまうことだろう。
 それでも、全体的に幼い造作から、おおよその年齢くらいは予想できる。童顔、というのでなければ、もしかするとはじめと同年代あたりかもしれない。
 体格は、成人男子の平均程度。中肉中背だが、若干筋肉質か。
 浴びた返り血で、薄い赤に染まったパーカー。傍目にも殺気が漲っているのがわかる、ぎらついた目。右手に握った、血塗れのマチェット。
 見た目平凡な敵にはとても似つかわしくない、それらの要素だけが、日常から乖離して異彩を放っていた。
「時間がない……もう、時間がないんだ……」
 敵はうわ言のように、同じ言葉を二度繰り返した。
 はじめは思った。敵は、警察の到着予定時刻が近い事を知っているのだ。
「うおああああああ!」
 突然。雄叫びをあげながら箒を構え、須藤が突撃した。
 正面にいるはじめに意識を集中していた敵は、完全に不意打ちを喰らった。
 箒とマチェットでは、考えるまでもなく、殺傷能力の差は歴然だった。だが、箒がマチェットより、武器として優れている点が一つだけあった。
 鈍い音がして、突き出された箒の柄が、深々と敵の脇腹にめり込んだ。
 そう。長いリーチだ。
「うう、うぇっ」
 敵は苦悶の表情で、血液と胃液が混ざったような液体を吐き出す。

174 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/01(火) 20:53:55 ID:pKFe+TJD0
 追加の一撃を加えようと、須藤は箒を一旦引き、柄を天に向けて大きく振りかぶった。が、それがまずかった。
 横軸の攻撃ならば、リーチの差を存分に活かし、敵を近付かせない戦いが出来る。
 しかし縦軸の攻撃では、リーチの差を溝に捨ててしまう上に、モーションも必要以上に大きい。隙だらけだ。
 須藤は焦って、唯一とも言える箒の利点を、自ら捨てる愚を犯してしまったのだ。
 その判断ミスの代償は、あまりにも大きかった。
 敵が苦しみのあまり滅茶苦茶に振り回したマチェットが、須藤の喉を切り裂いた。
 ぱっくりと開いた喉を噴射口にして、真紅の噴水が降り注いだ。
 おごっ、とか、うごっ、とか、気色の悪い声を発しながら、須藤は床に膝をつき、くずおれた。
 それを目の当たりにして、須藤を援護しようと飛び出していた高瀬も、慌てて距離を取った。
 金属バットとマチェットのリーチは同程度。今下手に飛び込めば、須藤の二の舞だった。
「お前が……」
 身体中を血に染めた敵が、倒れて、未だ小刻みに痙攣している須藤を見下ろしながら言う。
「お前が悪いんだ……! 騎士の行く手を遮った、お前が……!」
 怒りなのか、悲しみなのか、それとも、それ以外の感情なのか。敵の声には、微かなビブラートがかかっていた。
 敵の言葉は、はじめには……いや、その場にいる誰にも、理解不可能だった。
 騎士とは、一体何なんだ? 行く手を遮るとは、どういった意味だ?
 こればかりは、考えても仕方ないのだろうと、はじめは思う。いかれてる。答えはそれだけで十分だった。
 敵はまた、正面にいるはじめ目掛けて、マチェットを振るい、襲いかかってきた。
 揉み合う内に床に押し倒されて、マウントポジションを取られた。
 わかっているだけで、二人の人間の血を吸ったマチェットが、はじめの首筋に迫る。
 と、はじめの視界に、敵の後ろで、金属バットを振りかぶっている高瀬の姿が入り込んだ。
 敵の後頭部はがら空きだった。いけるか……?
 そう思ったのも束の間、敵は一度はじめを解放して、後ろにいる高瀬に低姿勢からのタックルを仕掛けた。
 攻撃態勢に入っていた高瀬は、あっけなくバランスを崩して、転倒した。
 金属バットが高瀬の手から離れて、からんと音を立てて床に転がった。
 当の高瀬も、バットの後を追うように後頭部を床に打ちつけて、動かなくなってしまった。
 これくらいで死にはしないだろうが、気絶してしまったのかもしれない。
 ダウンした高瀬に近付こうとする敵の背中に、起き上がったはじめが組み付いた。

175 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/01(火) 20:55:47 ID:pKFe+TJD0
 敵がはじめを振り払おうと躍起になる僅かな間に、日月がバットを拾い上げた。
「恋のカタキ……!」
 日月の振るったバットが、はじめに組み付かれていて動けない敵の側頭部に命中した。
「ぐっ」
 予想外のダメージを受け、敵が怯む。だが、パワーが弱く、ノックアウトまでには至らない。
 その一撃で発奮したのか、敵ははじめを跳ね飛ばし、マチェットを握った右腕で、日月の鳩尾に拳を叩き込んだ。
 一回……二回……三回。四回目で日月は吐血した。小さく呻いて、その場に倒れた。
 敵はマチェットを構え直すと、はじめに向き直り、走った。
 素手では勝ち目がない。しかし、箒も金属バットも、敵の後方だった。回収している時間の余裕などない。
 はじめは不意に、玄関先に置きっ放しにしていた、折り畳み傘の存在を思い出した。
 役に立つかどうかは怪しいものだが、あんなものでも、何もないよりは遥かにマシだった。
 東廊下への扉を開ける。尚もはじめを追ってくる敵から逃げるようにして東廊下を駆け、全速力で玄関へ向かう。
 玄関に着いた。折り畳み傘を手に取って、振るう。柄の部分が、特殊警棒のように伸びた。
 身を低くして、東廊下の出口に、傘で段差を作った。やはり走って追ってきた敵は、見事に罠にひっかかった。
 前のめりに倒れて、マチェットを取り落とす。はじめはすかさず傘を放って、それを奪った。
 そして、立ち上がった敵を、袈裟斬りにした。
「……に、殺…………ても……! 少……年……うがっ…………るな」
 敵が何事か言っていたが、構うものか。そのまま、何度もマチェットを振り下ろした。
 行動は迅速にして正確で、そこには一瞬の躊躇もなかった。だが、それでいいのだと思った。
 もし、敵に刃を振るうのを少しでも躊躇していたとしたら。今頃、殺す者と殺される者の立場は逆転していただろう。
 そう。これはれっきとした正当防衛なのだ。殺られる前に殺らなければならなかった。そこに、何の問題がある?
 全身を切り裂かれた敵が、ぴくりとも動かなくなった頃。玄関の扉が、乱暴に開け放たれた。
「動くな! 警察だ!」
 野太い声が、玄関ホールに響く。はじめはそれで気が抜けて、どさりと床に膝をついた。
 遅いよ、オッサン。もう全部終わった。終わってしまった。せめて、あと十分でも早く来てくれれば、こんな……
 いや。今は、もう何も言うまい。一先ずは、この地獄から生還できたことを感謝しなければならない。
 安堵が生み出す心地よい倦怠感が、はじめの全身を優しく包んでいた。

176 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/08/01(火) 20:57:13 ID:pKFe+TJD0
毎度ありがとうございます。前回投稿は>>95です。

・TRICKの二次創作
カマイタチが終わった後、次は何を書こうかと考えていまして。
その時に挙がった候補が『金田一少年』と『TRICK』の二つでした。
それで、どちらにしようか考えて、金田一少年の方を選んだと言う経緯が。
なので、TRICKは冒頭をほんの数行書いただけで放置状態に……
もし機会があれば、このスレでお見せできたらいいな……と思っております。

>>スターダストさん
第一部完、と言った趣ですが、完結、おめでとうございます&お疲れ様です。
全体の整合性といい、綺麗な纏め方といい、凄かったです。
錬金の方は原作未読だったのですが、それでも、今までさりげなく出てきていた諸要素がラストで収束する様には鳥肌モノでした。
デウスエクスマキナとか出した誰かも、見習いたい所。

177 :作者の都合により名無しです:2006/08/01(火) 21:47:12 ID:8sycJw780
TRICK読みたいです!
しかし、よくそこまでアイデアが尽きないですね。
感心します。

しかも今回は変転ですね。
絶望から、警察の踏み込み、安堵。
ジェットコースターのようにくるくると回る。面白い!



178 :作者の都合により名無しです:2006/08/01(火) 23:02:29 ID:Hdge8t+f0
>邪神氏
正義でお人よしのスタン、ツンデレのルーティ、直情径行のテオドール。
絵に描いたような王道の3人だwいい意味でまっすぐな冒険物展開ですな。

>17氏
バーディは単純というか純粋というか、いつも攻め方がコレですな。
周りを騒がしている分、抑えているザンたちがかわいそうだ。

>コテ氏
ベガは好きなんで最後まで残って欲しいな。スト2チームが好き。
覇王丸に一刀両断されるのもいいけど、やはりリュウに倒して欲しい

>かまいたち氏
息をもつかせぬ展開とはこの事ですね。一気に収束に向かうのか?
でも、数々の伏線がまだまだ残ってますね。もう少し楽しませてくれい!

あと、俺もトリック読みたい!

179 :作者の都合により名無しです:2006/08/02(水) 06:57:36 ID:fzTWLFKN0
TRICKは確かに読みたい。
でも漫画じゃないよね。主人公をどこかの漫画から抜擢するのかな?

180 :作者の都合により名無しです:2006/08/02(水) 12:30:42 ID:yYxi5Cq+0
邪心さんの作品は最初ホークが主役だったのに
死刑囚やらテイルズチームやらが出てきて主役の座が怪しくなったなw
タイトルはキャプテンなのに他のキャラが主役っぽい。
ドクタースタンプみたいだ

181 :作者の都合により名無しです:2006/08/02(水) 19:15:52 ID:sFc2VRlq0
今日は来ないのかな?
出来れば先行投下が2本くらいあったら
1日ずらしてもらって毎日読みたいけど。

182 :フルメタル・ウルフズ!:2006/08/02(水) 22:04:49 ID:5dChKs7y0
第18話 少女
日は照っていた。前年よりも気温が高い日である。雀が鳴き草花は青々としている。
その中を今、一人のサングラスをした男がバイクで疾走していた。ヘルメットを被り、高校の制服を着ている男である。
制限速度ギリギリまでスピードを上げ、バイクを飛ばす。それが彼の朝の楽しみである。
(数年前・・・・俺は乱暴で不良で・・・そして神だった。)
男は中学生時代を回想しながら道を走っていた。当時彼は喧嘩に明け暮れる日々を送っていた。
そんなある日フラフラと道を歩いていたらチンピラに絡まれている女の子を見つけたのだ。
助けた後気絶した女の子を自分のアパートに運んだまでは良かった。
目を覚ました女の子が彼を「変態さん!」呼ばわりして投げたのだ。
(誤解を解こうにもショックでそれ所じゃ無かったしな・・・・だが俺好みのコだ。絶対幸せにしてやるぜ。)
心の中で男らしいセリフを唱えてる間に彼は曲がり角へと差し掛かっていた。
男がスピードを下げようとブレーキを掛ける前にそれは起こった。
角から急に女が現れたのである。
(誰ッ・・・初対面ッ・・・・危ないッ・・・・出来るかッ!?)
男はブレーキを掛け減速しようとした。バイクに気付いた女がビクッと身体を強張らせる。
男を載せたバイクは道に落ちていた小石を踏み台にして空中へと躍り上がった。素晴らしいバイクテクである。
ズンという音がしてバイクは着地した。操縦していた男も無事である。
「アンタ・・・・大丈夫か?」
男が女に話しかけた。
「はい・・・・大丈夫です。」
女は身体を強張らせたまま答えた。信じられないという顔をしている。無理も無い。危うく怪我をする所だったのだ。
「悪かった。お詫びに送っていくぜ。後ろに乗りな。」
「え・・・陣代高校の場所を知っているのですか。」
「隣町だろ。ヘルメットを被ってくれ。」
バイクは男と女を乗せるとすぐに走り去って行った。

183 :フルメタル・ウルフズ!:2006/08/02(水) 22:05:34 ID:5dChKs7y0
「おい・・・・今の見たか。」
誰も居なくなったかの様に見えた道端に一人の男の声がした。
電柱から一人の男が現れたのだ。背広姿でネクタイをしている。
顔に傷跡があり組の者であるかのような出で立ちである。
「ああ。俺らの目の前であんな事をするなんてな。嘗めてるのかアイツは。」
別の電柱の影からも似たような出で立ちの男が現れた。
閑静な住宅街にヤクザ風の男達が二人。
「あの制服の高校を知ってるか。」
「ああ。陣代高校だ。」
男達は「陣代高校」と呼ばれる場所に向かって歩き出した。
時刻は午前8時。穏やかな朝であった。


今、男は大通りをバイクで滑走していた。後ろには先程乗せた女がしがみついている。
「アンタ名前まだ聞いてなかったな。アンタの学校はバイク通学は認められているのか?」
男は声を大きくして聞いた。小さいと車の音に消されてしまうのだ。
「美樹原蓮。わかりません。途中までなら可能かも知れませんが。」
男は女の言葉に応えずにスピードを下げて角を曲がり停車した。
ヘルメットを脱ぎ、バイクから降りる。
「今・・・・何て言った?」
「美樹原蓮です。」
男は狼狽した。
美樹原組と言えば東京都では有名な組である。恐らく目の前にいる女は組の娘である。
はてさてどうしたものか。自分が偶然乗せた女は暴力団関係者だった。もし見られているのなら。
「お嬢さん。さっきはすまなかった。スピードを出してたのかもしれねぇ。ここから歩いていってくれないか。」
「心配しないで下さい。私が説明を・・・・。」

184 :フルメタル・ウルフズ!:2006/08/02(水) 22:06:15 ID:5dChKs7y0
蓮がマジメに説明しようとするがそれは男に手で止められた。男も真剣な目で蓮を見ている。
「聞きゃあしねえよ。あの時は俺の不注意だった。そういう事でいい。後俺の顔も見せとくわ。」
男はサングラスを外した。ごく普通の若者の顔であった。顎鬚を生やしている日焼けした顔である。
「あのう・・・別に探すとかそういう事は・・。」
「名前までは言えないがな。言いたい事があるなら見つけろ。いつでも待ってるぜ。」
そう言うと男は蓮を降ろし、バイクを走らせて去っていった。



陣代高校・・・午前9時ごろ。
校門は開いていた。登校する生徒達の数も多い。
今、播磨拳児は校門前へ差し掛かっている所だった。
「ふぅ・・・何とか間に合ったぜ。いつもの所に止め・・・・んッ!?」
播磨は急ブレーキをかけた。角から何かが出てきたのだ。
それは人間だった。二人の人間。
「よう兄ちゃん。ちょっと来て貰おうか。ウチのお嬢ちゃんがお世話になったね。」
「アンタは何を言ってるんだ。」
播磨と背広姿の男の目が合った。
「さっき兄ちゃんのせいでお嬢は怪我する所だった。ワカるかね?」
もう1人の男が言った。同じく背広姿である。
「ああ・・・あの事か。だから俺は途中まで送ってたんだぜ。」
「そんなモノで済むと思うか。まあ俺らのボスはさっき君が怪我させそうになった子の父親なんだ。ワカるね?」
「へぇ・・・つまり詫び入れろってか。いいぜ。」
播磨は同意すると同時に思った。
自分は先程の女の子を怖がらせた。一歩間違えば事故が発生する可能性もあった。
そう思えば詫びた方がいいかもしれない。「詫びる」だけで済めばいいが。
「今車を呼んだ。バイクは・・・ここに駐めてくれればいい。」

185 :フルメタル・ウルフズ!:2006/08/02(水) 22:06:54 ID:5dChKs7y0
数十分後・・・美樹原邸にて
広い屋敷であった。
和風であり庭園も広く数々の木々がさりげなく「和」の雰囲気を醸し出している。
その中を今播磨達は歩いていた。一言も喋らずに黙々と。
一同は母屋の扉の前に立った。
(さて・・・普通に話すか。あの子は怪我しなかったワケだし。驚いただけだからな。そこら辺はっきりさせるか。)
この時播磨は自分がどんな人間と話す事になるのか気付いていなかった・・・。

186 :フルメタル・ウルフズ!:2006/08/02(水) 22:08:12 ID:5dChKs7y0
どうもです。夏休みなので暑中見舞い代わりに投稿しました。


187 :作者の都合により名無しです:2006/08/02(水) 22:39:11 ID:CZx6UdMg0
フルメタさんお久しぶり。
色々、忙しそうだけど2.3ヶ月に一度位でも良いから
顔出してくださいな。

作中、何気に重要そうなキャラも出ちゃったしさw

188 :ふら〜り:2006/08/02(水) 23:08:41 ID:oB4j1K7A0
名作終われば新作予告。新人さんも来られて復帰の方もおられて。
好調快調のバキスレ、今日も楽しく読ませて頂いております。

>>サナダムシさん
気迫と根性と神心会空手で勝利をもぎとった井上。咆哮と共に襲い掛かる彼女は美しい
というより正直怖かったですが、一瞬の躊躇いもなく芸術家を助けようと手を伸ばした
ところに感心。多分、加藤だったら……ねぇ。その彼に認められた彼女、今後は戦力か。

>>邪神? さん
うん、これはこれで生々しくていい。というか丁寧でいい。こういう作品ではあまり深く
は描かれない公立組織の公立組織らしさ。で、その中で必死に正義を貫こうとする者……
いい図です。奔放なスタンたちとは違う、騎士ならではの美学や強さを期待しております。

>>17〜さん
考えてみればザンはリュミールで固定なわけですから、一方のヒロインであるバーディー
としてはザン以外の相手が必要で、それがシアンになるのかも。今回分を見てると、今後
は互いに認め合っても素直に相手を褒めはせず、でも徐々に……って展開になりそうで。

>>コテさん
は、覇王丸までこうもあっさりと陥落かっっ。リュウや承太郎に状態異常を治せる能力は
ないし(何か特殊アイテムでも出れば別ですが)、ムーンはもともといまいち頼りになら
ない子だし……開始早々、凄いペースで暗雲立ち込めてますね。次回は一体誰が犠牲に?

189 :ふら〜り:2006/08/02(水) 23:09:16 ID:oB4j1K7A0
>>かまいたちさん
何だか急に、問答無用の怒涛の展開。ラストの状況的にははじめが疑われそうな感じです
けど、さすがにそれは他の面々が証言してくれるでしょうしね。オッサンだと明言してる
以上、警察も間違いなく本物。ここからまだ事件が続くとしたら……見当つかないっっ?

>>ウルフズさん(お久しぶりですっ!)
背広の二人組は美樹原家と何の関係もない別組織の者で、播磨を誘い出す為に嘘をついた
って展開を予想してたのですが。ちゃんと美樹原邸に着てるのか……。雰囲気的には腕前
と人格を見込んでのスカウトっぽいけど、やったのは事故寸前のバイクテクだけ。はて?

>>らぐぅん。さん
太平洋のように広い受付範囲も、このスレの自慢の一つ。ご存分に腕前を振るって下され。
エロゲの中にも、萌えと燃えの名作は多々ありますからね。期待してますぞっ。

>>スターダストさん(完結、お疲れさまでしたああああぁぁっっ!) 
ここまでタメにタメてましたから、決着後の二人の会話がもう……お互い、これ以上の相手
はどこ探しても見つかりませんね。お似合いなんて言葉じゃとても足りない。特に根来よ、
眼福とは「美しいもの、貴重なものが見られた幸運」だぞ。美しく貴重だと認めたのだな、
彼女の笑顔をっっ。久世屋もモノローグでまで粋でしたし、理知的バトルと一風変わった
男女模様、ハードにソフトに楽しめました。次回作、ろくろっ首と化して待ってますよっ!


190 :五十三話「最強生物」:2006/08/03(木) 00:28:19 ID:YTH5OZgb0
コンスタンツは城を発つ4人の勇者を見送り、謁見の間へと戻った。
そこでは残されたハインリヒとフラーマの二人が話していた。
「ハインリヒ、彼等の事をどう思いますか?」
「十中八九、間違いないだろう。エロールも創世神には無力。
奴によって今回の戦に巻き込まれた、哀れな別次元の戦士達だろうな。」

扉に耳を当て、二人の話に聞き入るコンスタンツ。
一体何の話なのだろうか、扉から玉座まで結構な距離があるが意外と聞き取れそうだ。
「マルダー・・・今まで人々の戦いには手を出さなかったのに何故?」
「私にも判りません、ですが彼等が正しい心を持っているかを確かめなければ。
その上で邪神を打ち倒す力を手にした時、『ルビー』を手渡します。」

ルビー?宝石を渡した所でどうなる物だと言うのか。
御伽噺のデスティニィストーンじゃあるまいし。
「そうだな・・・今はマルダーよりもサルーインの方が先決だろう。」
「ええ、願わくば創世神が彼等の見方であればいいですね・・・。」
マルダー?それこそ御伽噺では無いのか、世界マルディウスを作った神。
この世に光の神エロールや海神ウコムは居ても、マルダーは居ないと思っていた。
1000年前の戦いの伝承でも、姿を現したという古文書は見つかってはいないらしい。
だが今の二人の会話は至って真剣な物だった、本当にマルダーが存在するのか?

「それで、ディムロスと名乗る剣はどうなったんだい?
その剣の言うソーディアンマスターを、上手くこの地に呼べたが。」
名乗る剣?剣が言葉を話す訳はない、魔剣の一種だろうか。
いや、ハインリヒもテオドールもそういった不吉な武具を嫌っている。
「彼は今、『記憶』を呼び戻してます。『ルビー』の力は炎の力。彼とは相性がいいみたい。」
ルビー、マルダー、名乗る剣、記憶?一体何がどうなっているのだろうか。
コンスタンツの、いや、神も知らぬ所で別世界の運命の歯車は、止まる事無く回り続けていた。

191 :五十三話「最強生物」:2006/08/03(木) 00:30:19 ID:YTH5OZgb0
「ラファエル、こんな所でへばっていてどうする!」
テオドールの怒声が廃屋に木霊する、この階の敵は倒したので多分問題は無い。
だがラファエルの体力の消耗が激しい、出血もしている。
肩で息をするラファエルにルーティが回復呪文を掛けていた。

「すみません、ルーティさん・・・僕が未熟なばかりに手間をかけさせてしまって。」
「そう思うならここから先は自分で手当てして、はい救急箱。」
これ以上体力を消耗すると次の階が辛くなるばかりだ、
ラファエルの体力の続く内に元凶を倒さなければ。
「そんなに気を落とすなよ、俺も最初の頃はそんなもんだったよ。」
優しくラファエルの肩を叩くスタン、出血を止めている間に、
疲れも取れて血色も良くなった様だが顔色は浮ばれない。

「ラファエル、あの場で騎士達に言った事を自分に言い聞かせろ。
それでも騎士か!力尽きても剣を握れ!敵に背を向けるな!」
テオドールの渇に、謁見の間で見せた怒りの表情を見せるラファエル。
無論、テオドールに対して怒っているのではない、情けない自分を叱咤しているのだ。
「判りました!もう大丈夫です、行きましょうスタンさん。」
青年は剣を抜き、魔物から奪った小盾を構えてテオドールの後へと続く。

2階へと上がると廊下には大量の魔物が道を塞いでいた。
テオドールが剣となって持ち前の剛剣で前面の敵を排除し、
スタンがテオドールの周囲に群がる魔物を弾く盾となる。
空中から襲う敵をルーティが弓となって晶術で打ち落とし、
羽を捥がれた哀れな魔物にラファエルが止めを刺す。
こうした連携攻撃によって、魔物で埋まった廊下は瞬く間に血で染まってしまった。

192 :五十三話「最強生物」:2006/08/03(木) 00:32:39 ID:YTH5OZgb0
「廊下を曲がると大広間だ、敵は今より多いだろうが大広間へと繋がる道は狭い。
そこに誘い込んで兵力戦を避けて少しづつ排除していくぞ。」
テオドールの作戦に無言で頷くと、早速廊下を曲がり広間への道を走る。
だが、そこに魔物は見当たらなかった、替わりに『魔物だった物』が転がっていただけだ。

(ブルー、人間の生命反応が4つ、廊下側の道に隠れてるぜ!)
(ファッツ、そいつ等の武器の有無と身体能力を計測してくれ。)
男は手にした銀色の筒、愛銃『サラマンダー』を壁に向け発砲した。
「そこに居るの、かくれんぼは終わりだぜベイビー!」
気配を読まれたのだろうか、ラファエルも息は殺していた。
かなりの達人かもしれないが人間なら味方であれば頼もしい。
「さっさと出ないとケツの穴に鉛玉をぶち込むぜ!」

今の発砲音はレンズ製品の物とは似ているが違った。
だがこの世界の盾と、自分達の世界の盾に大きな違いは無い。
殺傷力は剣より劣る、貫通力は先程の発砲で壁に空いた穴から中々の高さだ。
しかし、戦いになったとしても少し大き目の盾を使えばどうにかなる。
「よく女性が居る場でそんな下品な口を叩けるものだ。」
テオドールが男の前に姿を曝け出し、その手に握ったバスタードソードを男に向ける。

スタンが思わず飛び出しかけるが、ルーティにそれを止められる。
「何するんだよ、速くテオドールさんを助けないと!」
「馬鹿!何の為にあのオッサンが飛び出したと思ってるの!戦いの最中なら、
私達の存在に気付いてはいても注意は散漫になるわ。そこを狙うのよ。」

ラファエルが魔物の屍骸の手に握られていた防具を引き剥がし、
スタンの前へと立った。その眼に秘められた決意には、会議に出席した騎士の様な濁りは無く。
ミルザブールの門を守っていたガードや、ハインリヒの護衛を勤めた屈強な騎士の物であった。
「ならば私が最初に出ます、私を盾にテオドール様を御守り下さい。」

193 :五十三話「最強生物」:2006/08/03(木) 00:34:37 ID:YTH5OZgb0
(ファッツ、サラマンダーの出力を何%まで抑えれば殺さずに済む?)
(奴はかなりの剣の達人だ。出力を抑えすぎれば弾速までスローになっちまう。
見た目はオッサンだが結構丈夫な防具をつけてる様だし80%ぐらいで脚を撃て!)

脳内での会話を済ませた男は、筋骨隆々とした見た目と、
巨大な剣に似合わぬ機敏な動きをする老人の脚部へと狙いを定める。
「シィット!なんて元気なベイベーだ、重装備とは思えねぇ!」
(判ってるだろうがブルー、サラマンダーの連射速度は毎秒60発だ。
お前の腕で連射なんかしちまったら流石に骨まで粉々になっちまうぜ。)

男が得意とする早撃ちも、目の前の老人はあっさりと避ける。
初めて対峙する武器だったが相手の目線と筒の向きを見切れば弾道の予測は出来た。
だが、余りの早撃ちに接近を許してはくれない、足を打ち抜き動きを鈍らせれば待つのは死。
不用意に飛び込む事など出来る筈も無かった、だが策があれば別である。

「どうやら命を取る気は無いらしいが、それはこちらも同じ!遠慮なく行かせて貰うぞ!」
ステップを繰り返し、銃弾を避けていた脚で地面を踏み抜く。
そして真っ直ぐに銃を構えた男の懐目掛けて飛び込んでいく。

(チャンスだブルー!リロードもしてないのに突っ込んで着やがった!)
素早く老人の脚へと狙いを定めるが、空中には丸い物体が浮んでいるだけだった。
周囲の様子をサーチし、熱源を発見した。空に浮んだ盾の裏側に。

「貰ったぞ青年!うおおおおお!」
「ファァァァック!」
ガキーン、という大きな金属音が周囲に響くと、地面には銀色の筒と折れた大剣が転がっていた。
スタン達の盾となるため、魔物から剥ぎ取った重装備をつけていたラファエルがそれを外し近づいてくる。
「やりましたね!テオドール殿・・・」
ラファエルがテオドールの戦い振りを賞賛する言葉は途中で途切れてしまった。
男が腰に隠し持っていた拳銃を引き抜き、薬莢の臭いと煙が部屋に蔓延していった。

194 :五十四話でした、本当に申し訳ない邪神:2006/08/03(木) 00:36:25 ID:YTH5OZgb0
珍しく少し昔のペースで書き上げちゃいました。邪神です。
いやぁー、暇で暇でやる事無くて、パソコンでもゲームできんし。
モンハンやろうかなーと思ったらイベントクエは糞だったり。
そんな訳でSS書いてたらこんなペースに。
でもいつもは暇でもネタ浮びませんので調子が良かったのもあるかも。
まぁ暇なのも今のうちなので出来るだけ進めなければ。
それから題名から勇次郎タソを想像した方、申し訳ない。
まぁ見てる人が少ないから余り・・・ね。(つw0)
それではごきげんよ・・・へナップもうごめんなさいホントもう言いません。

〜感謝の場〜

ふら〜り氏 >>騎士ならではの美学や強さを期待しております。
いや〜、騎士っていうかガンダ(ry な戦い方をしちゃったテオドール。
しかし、ガンダムの使う盾みたいに全身を隠せる程の大きさの盾はロマサガにはありません。
そもそも両手大剣なので盾は使えないんですがミンソンでは予備の武器を持つのも常です。(俺はw)
まぁ盾の大きさは高く飛んで遠近法で誤魔化したって事でオッケーって事で手を打ってくだされ。

171氏 >>そろそろ、人物相関図のまとめも欲しいかな?登場人物も多くなってきたしね。
スタン編が終わったら出す予定です、前回の紹介に無かったキャラ分だけですが。
一応、前回紹介したキャラの紹介文も改変したりしているので、そっちもその内出す予定。

178氏 >>正義でお人よしのスタン、ツンデレのルーティ、直情径行のテオドール。
ここに捻くれ者の一匹でもいれば王道パーティーですね。
ラファエル君じゃ役立たずなのでさっさとコンスタンツの所に帰って欲しいですね。

180氏 >>死刑囚やらテイルズチームやらが出てきて主役の座が怪しくなったなw
ホークを主軸にしつつもパーティーごとのストーリーを・・・って考えでした。
それがだらだらしがちな展開によって主役を追われてしまった訳です。
まぁホークチームにケンシロウが参入した時点で主役の座が・・・w
しかも今回参入したブルー君の出身も原哲夫作品ですよ、スタンまで影薄くなりそうw

195 :作者の都合により名無しです:2006/08/03(木) 05:07:35 ID:ihwJs/4V0
>そもそも両手大剣なので盾は使えないんですが
つバックラー

196 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/03(木) 06:42:30 ID:SBDYdyhr0
あいつが、あんなに嬉しそうな顔をして会いに行くのは、お前以外にいないんだから……

*  *  *  *  *  *

金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』
第二章 解

197 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/03(木) 06:43:10 ID:SBDYdyhr0
十四 真実の扉

 マチェットを床に突き立て、杖代わりにして立ち上がる。
 文字通り、敵と『血で血を洗う』死闘を繰り広げた為に、体力も気力も、もう限界だった。
 身体を動かすことさえも億劫に感じてしまい、眼球だけを動かして玄関先を見た。
 無精髭を生やした、厳つい中年男性が仁王立ちしていた。その後方には、数人の制服警官の姿も認められる。
 はじめはよろよろと、それに近付いて行く。
「下がってろ」
 中年は、後ろにいる警官を手で制すると、一人前に進み出て、はじめと向き合った。
 はじめは、何でもいいから喋ろうと、口を動かそうとした。
 しかし。何か言葉を発するよりも先に、はじめの視界は、ぐるりと一回転した。
 目の前にいる中年に投げられたのだ、と気付いたのは、背中を強打してからだった。
 持っていたマチェットが手から離れて、東廊下へと飛んでいく。
 そのまま腕を捻り上げられて、床に身体を押し付けられた。痛い。重い。動けない。
「うぐ……」
 踏み潰されて床にへばりついた蛙みたいな、無様な姿ではじめは呻く。
「ようし、確保、確保! なぁにをぼやぼやしとる! 手伝え! 手の空いている者は現認だ、急げ!」
 中年が檄を飛ばす。と、警察官たちが思い出したように、慌しく動き始めた。
 そこでようやく、はじめは気が付いたのだ。ああ、この状況、犯人と誤解されても仕方が無いのだな……と。
 警察は、世間を騒がす殺人鬼『R』がこの屋敷に出たとの通報を受け、大急ぎで現場へと駆けつけた。
 そして、扉を開けるなり目にしたのが、斬殺死体と、その前で立ち尽くす、血塗れの凶器を持った俺だった。
 これでは、勘違いしない方がおかしいというものである。
 大丈夫だ、とはじめは自分自身に言い聞かせた。
 警察署で、ちゃんと話せばわかってくれる。現場を、きちんと調べればわかってくれる。
 俺の一連の行動は紛れもなく、正当防衛だったのだと。
 もし罪に問われたとしても、おそらく実刑は免れる。執行猶予付きの判決が下されるだろう。
 何一つとして、問題は見当らない。

198 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/03(木) 06:45:51 ID:SBDYdyhr0
 それなのに……その筈なのに……この、心の奥底から沸き上がって来る、どす黒い不安は何だろう?

 はじめがぼんやりと考えに浸っていた、その時。
 後方に控える制服警官たちの中から、一人の少年が姿を現した。
 チェックのシャツに、カーキ色の半ズボン。警察官の群れに混じるには、あまりにも場違いな私服姿だ。
 少年は玄関先で、スニーカーを乱雑に脱ぎ捨てた。それは綺麗に揃えられたはじめのスニーカーの横に、ひっくり返って転がった。
 そのままずかずかと室内に上がりこみ、押さえつけられているはじめに近付くと、その顔を覗き込んだ。
 はじめは上目遣いに、少年の顔を見た。ポニーテールみたいに、後ろで束ねた髪と、意志の強さを表しているような、太い眉が特徴的だった。
 少年は……金田一一は、はじめを見据えて、言った。
「やっと捕まえたぜ。新宮はじめ――いや、殺人鬼『R』!」
 その一言が、トリガーだった。はじめの心に皹が入り、前提が崩壊する。同時に、眠っていた記憶が、堰を切ったように流れ出す。

*  *  *  *  *  *

 記憶喪失 懐かしい声 囁く 罪悪感 『R』が出たんだよ
    『R』はこの中にいる そうに決まってる 
 過去に何度も 殺人現場に遭遇した経験が 欠落感 違和感
        自己弁護の材料を探す
 血糊と斬殺死体が織り成す地獄絵図 動揺することなく受け入れられた
         殺人鬼はお前だ!
 構うものか 何度もマチェットを振り下ろし 迅速にして正確 一瞬の躊躇もなかった
            違う
 これはれっきとした正当防衛 殺られる前に殺らなければ 何の問題がある?

 そうだ

 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!

199 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/03(木) 06:47:35 ID:SBDYdyhr0
Ω 心を引き裂かれる苦しみ

 少女――白鷺奈々は呼んだ。慣れ親しんだ、彼の愛称を。
「はじめちゃん……」
 刃は、奈々の左胸を正確に貫いた。胸からは血が、瞳からは涙が、溢れた。
 ビデオのコマ送りのようなスローモーションで、奈々は倒れた。
 うつ伏せになった身体から放射状に広がってゆく血液が、溝の色をした床を鮮やかに彩る。
 そんな光景を見ながら、新宮はじめは顔をくしゃくしゃにして、号泣していた。
 白鷺奈々の存在は、はじめにとって一種の安全装置とも言えた。
 心の奥底で得体の知れない黒いものが蠢き『復讐だ』と囁く度に、彼女の存在がそれを中和した。
 幼馴染みである彼女がいる限り、彼女の優しい笑顔が傍にある限り、はじめは復讐なんかできないのだと判断した。
 だから――殺した。彼女に、何の罪があったわけではないが。
 復讐と言ってもはじめの志すそれは、特定の誰か一人ないしは数人に向けた悪意ではなくて、もっと空虚で大きなもの。
 それは昆虫で、それは動物で、それは人間で、それは人々で、それは社会で、それは日本で、それは外国で、それは地球で、それは世界だった。
 はじめは憎悪していた。自分以外の、生きとし生けるものすべてを。
 いつからそんな風に歪んだのかは、はじめ自身も覚えてはいない。そもそも、明確な切欠があったかすら疑わしい。
 故にこれは、生命と云う概念そのものへの、宣戦布告だった。
 はじめは涙を拭った。跪き、奈々の腕を取った。そして、刻んだ。彼女の腕に、深く刻んだ。
 復讐“REVENGE”と。

200 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/08/03(木) 06:49:18 ID:SBDYdyhr0
毎度ありがとうございます。前回投稿は>>175です。
今回から解決編突入。二次創作ならでは、文章ならではの話にしたいなぁと思いつつ書きましたが、叙述トリックがまるわかりなのが反省点でした。
キャラ紹介を省略したのも、これが理由です。少し複雑にはしてみたんですが、うーむ。
ちなみに、冒頭のαと今回のΩは、時系列が繋がっております。
例によって例のごとく構成が面倒なことになっていますが、続けて読むと分かり易いかもしれません。

・ジェットコースター
登り坂を終わって、前回〜今回が急降下地点ですね。少しでもカタルシスを感じて頂けたなら嬉しいです。
・何だか急に、問答無用の怒涛の展開
警察到着までの時間が余りに余って、されど特に書くべきエピソードもなく、どうしようかと頭を抱えたのはここだけの話……
以降は、種明かしがメインになりそうです。

201 :作者の都合により名無しです:2006/08/03(木) 12:41:55 ID:W2GyrwyX0
>邪神さん
最強生物というとどうしても勇次郎を思い出す。しかし、良い展開ですね。
スタン主役の場合は本格的なRPG展開になるので読んでて安心。シコルとかがいるとそりゃもうw

>カマイタチさん
いよいよ解決編、そして佳境ですねえ。連載が終わった後、もう一度まとめて読みます。
出来ればシリーズ化してほしいなあ、金田一シリーズ。でも、トリックもすごく見たい。
あと何回かでしょうけど、ワクテカしながら解決編を待っております。

202 :作者の都合により名無しです:2006/08/03(木) 19:51:00 ID:jzWre8d/0
>フルマタルウルブス!(久しぶり)
主役不在のまま、スクラン路線になりましたね。
これからこいつらも戦いに巻き込まれていくんでしょうけど
やっぱりたまには更新してほしいなー

>キャプテン
サイバーブルーか!俺の記憶の奥底にある漫画の?
あの、原哲夫のトラウマのwいや、いいけどね好きだし。
ホークは主役をスタンに譲った方がいいかも。スタンのが主人公属性高い。

>金田一少年
一気呵成に解決編か・・嬉しくもあり、寂しくもあり。
ロジカルな部分で納得させながら、一気に溜飲を下げるような解決を
お待ちしてます。ま、かまいたちさんは裏切らないですね、いつも。


203 :バーディーと導きの神〜対決!デアマシュウ〜:2006/08/03(木) 20:28:21 ID:z+e643vC0
デアマシュウに案内されたテラスにて星空を眺めていたリュミール。
深夜となった今は空気は澄んでいて、少し肌寒い。
(流星がやんだ……)
先ほどまであれほどたくさん降っていた流星が今は一筋も姿をみせなくなっていた。
(もう……、エルデガインが第2段階に入ってしまったんだ……)
状況が進行したことを確認したリュミールは、本気で焦りを感じていた。
(早く行かないと、本当に間に合わなくなっちゃう……)
今度は眼下の街並みを見下ろしながら考える。
(怖いけど、やらなきゃ!)
覚悟を決めるリュミール。しかしそれに横槍を入れる者がいた。デアマシュウだ。
「さてお嬢ちゃん。外の空気を吸わせてやったんだ。今度はそっちが約束をはたす番だ」
デアマシュウの言葉に、一気に現実に引き戻されるリュミール。
「秘密とやらを聞かせてもらおうか?」
デアマシュウの問いに、無言を貫き通すリュミール。タイミングを計っているのだ。
しばらく黙っていると、デアマシュウは横を向いてペッと唾を吐いた。
この時だ。そう思ったリュミールは、テラスの欄干の下から一気に空中へとその身を躍ら
せる。不死身を利用しての脱出行はこれしかなかったのだ。
「しまった!!」
まさかと思っていたデアマシュウが狼狽した声を上げる。
「くそっ!」
一挙動で欄干まで跳んだデアマシュウは、その右手を振りかぶって貫手の動作のような
仕草をした。
するとその右手が普通ではあらざる長さに伸び、なんと飛び降りたリュミールの髪の毛を
つかむことに成功する。
「ああっ!」
決死の覚悟の脱出も阻まれ、デアマシュウの腕の戻りとともに引き戻されるリュミール。
「ったく。ふざけた真似しやがって……。こりゃあちょっと仕置きをしねえといかんな」
「いやあ!離してっ!」
リュミールは身をよじって逃れようとする。
「くだらねえことを……、ぬっ!」
左手でリュミールの体を串刺しにしようとしたデアマシュウだが、ふと殺気を感じて身構える。

204 :バーディーと導きの神〜対決!デアマシュウ〜:2006/08/03(木) 20:29:54 ID:z+e643vC0
テラスの下から飛び上がってきたのはザン。デアマシュウの右側面に着地する。
そして左手からはシアン。こちらは豪快にドスンと音を立ててその身をテラスに置く。
最後に正面からバーディー。軽快にテラスに着地したかと思うと、電光石火の速さで
デアマシュウの巨体の懐に潜り込み、腹に両手の掌打を放つ。
「ぐおっ!」
デアマシュウはたまらずリュミールから手を離し、数歩後退する。
放り出されたリュミールはザンの手の中だ。
「リュミール!」
「ザン!」
お互いを呼び合う二人。
「迎えに来たよ」
ザンが言うと、目に涙を浮かべてはいと答えるリュミール。
そんな二人を小賢しいとばかりにデアマシュウの伸びる腕が貫こうとするが、その腕は
がっしりとシアンにつかまれ、巨体もろともぶん回し、壁面に激突させられる。
「感動の対面に水をさすんじゃねえ!」
シアンが得意げに言い放つ。
「シアン!」
バーディーが城内からキラエノアとゲシルが姿を現すのを見て呼びかける。
「任せとけ!」
シアンはいきなりキラエノアに向かって念を放射した。キラエノアはとっさに転送術で放
射の範囲から逃れる。
「デアマシュウ、大丈夫か!」
壁際に倒れているデアマシュウを引き起こしながらゲシルが状態を確認する。
「なんのことはない。侵入者を片付けるぞ!」
「おうっ!」
ゲシルが即座に応じる。
ザンは瞬動法独特の気のざわつきを感じて、リュミールを抱えたまま横に飛んだ。直後、
短剣をかざしたゲシルが姿を現す。
「ケッ!気づきやがったか!このクソガキ!」
「リュミールは渡さないよ!」
ザンはリュミールをかばって叫ぶ。

205 :バーディーと導きの神〜対決!デアマシュウ〜:2006/08/03(木) 20:31:00 ID:z+e643vC0
「キラエノア」
「はっ!」
デアマシュウの言葉に反応したキラエノアは、シアンを目標に据えて直進する光線のような
念を発射する。
横に飛びずさってそれをかわすシアン。同時にテラスの石畳を蹴って、キラエノアに肉薄する。
「させるか!」
デアマシュウが割り込もうとする。
「それはこっちのセリフ!」
それをさらにバーディーが割り込んでデアマシュウの腕を取り、投げを放つ。
「くたばれクソ野郎!」
キラエノアに触れたシアンは増幅した念を直接キラエノアの体の中に叩き込む。
パンという風船が割れたような音がテラスに響いた。
キラエノアは文字通り破裂してチリ一つ残さずこの世から消えた。
「キラエノア!」
仲間がやられたのを見てゲシルが動揺する。
しかしバーディーに投げられたデアマシュウは空中で一回転して着地すると、その動揺を
たしなめた。
「臆するなゲシル!ここは我が王都だ!」
怒鳴ると、デアマシュウは仁王立ちになる。
デアマシュウのやろうとしていることを察してその後ろに後退するゲシル。
「よくもやってくれた。だがこれに耐えられるかな?」
そう言って体全体を細かく伸縮させるデアマシュウ。
バーディーとシアンは本能でヤバイと感じる。
「俺は体を伸縮させると高電圧の電気を発生させることができる。聞いた話じゃお前らは
電気に弱いそうじゃねえか」
ニヤリと笑うデアマシュウ。
「くっ!」
無敵の生体防壁も電気には弱い。加えてザンとシアンには抵抗する術もない。
「食らえ雷撃球!」
デアマシュウを中心として、巨大な球雷が発生する。
バーディーたち三人はその光の中に包まれた。

206 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/08/03(木) 20:39:49 ID:z+e643vC0
ザンとリュミール、ようやく再会です。
バーディーはちょっとピンチかも。

>>178さん
バーディーはいい意味でも悪い意味でも単純明快な性格ですから。
本編でもそれで失敗したりしてます。
>>ふら〜りさん
さあ、どうでしょう。今後の成り行き次第です。

207 :完成=未完成:2006/08/04(金) 02:17:07 ID:AMx2hN/C0
〜プロローグ〜

完成という言葉の定義はいったい誰が決めたのだろうか?

未完成という言葉の定義はいったい誰が決めたのだろうか?

途中まで完璧に出来ている絵画でも、たった一つ・・・。
たった一つエッセンスがが欠けているだけで、その作品が未完成だと、いったい誰が決めるのだろうか?

――――作者の意図かも知れぬのに。

そう。
つまり完成・未完星という言葉は、実在してもこの世には無い言葉----存在。
ヒトが作り出した、ヒトの間だけ通じる意味合いの存在なのだ。

しかし、この宇宙は広い。
もしかしたら、完成が未完成と同異義語の場合もあるかもしれない。

――――だから・・・。

宇宙には人を引き付ける何かがあるのだ。


<地球を捨てる・宇宙に進む> 著者:C.ジェームス

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

208 :完成=未完成:2006/08/04(金) 02:18:02 ID:AMx2hN/C0

今日も星雲間を時代遅れな列車(機関車)が光速で走っていた。
その列車の名は『999(スリーナイン)』。
非常に高価なチケットを買わなくては乗れない『それ』は、乗る人も『ある意味』限定されており、
席が満席になることは殆ど無かった。
しかし、それでも999には欠航という文字が掲げられた事はないし、
秒刻みで運行されることも乗車する為に必要な値段同様に有名であった。

そして、今回はヒトとしては完成された体――機械の体を貰うために地球から遥か惑星大アンドロメダまで
旅をしている少年――星野鉄郎が体験した『とある惑星』での話。

そう、果物の蜜柑の形をした惑星。
未完星での話である。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

209 :完成=未完成:2006/08/04(金) 02:20:50 ID:AMx2hN/C0
プシュウウ・・・・。

まるで田舎駅の様なこの星のプラットホームに、蒸気が吹き出る音が辺りに響く。
どうやら999はこの惑星(ほし)へ無事に着陸したようだ。

『ビビビ・・・。ガガガガ・・・・。』

そして999がこの惑星に着陸するや否や、駅のプラットホームについているスピーカーから
この惑星に無事到着した事を知らせるアナウンスが辺りに響き渡った。

『ここは未完星〜。未完星〜。停車時間は28時間16分です。』

アナウンスが終わると同時に999のドアがゆっくりと開く。
すると、ドアの中から999の乗客である『帽子にマントという出で立ち』をした背の小さい星野鉄郎と、
『この世のものとは思えないほどの長身の美女』。
メーテルが姿を現した。

210 :完成=未完成:2006/08/04(金) 02:22:18 ID:AMx2hN/C0
「ふう〜。やっと地面に降りられたよ。アンドロメダに行くまでに様々な星に回れるのは嬉しいけれど、
次の星までの時間がこれだけ長いと本当に退屈だよ。」
鉄郎は少しブツクサ言いながら、「やっとか」といった調子で列車から降りる。
どうやら惑星間の距離は相当なものがあったようだ。
鉄郎の発言の節々から、それを証明するのにも十分なモノを感じてもらえるだろう。

一方、メーテルは鉄郎とは対照的に一言も愚痴を言わずゆっくりと・・・、全くの無表情で999から降りる。
完成された美を持っている彼女だが、必要以上に感情を表に出さないその姿は、美というパラメーター以外、
さっぱりと言って良いほど未完成と言っても可笑しくは無かった。

「さあ、鉄郎。ここに居ても仕方が無いから、少しのあいだ、この星を見てみましょうか?」
「うん。その前に飯にしないと。999の食事は美味しいんだけど、ラーメンが無いからな〜。」
そんな天使と悪魔のような全く異なる姿をした二人は、久しぶりに大地に『ある種の懐かしさ』を感じながら
この惑星(ほし)にあるはずの都市部へ向かって歩き出すのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

211 :完成=未完成:2006/08/04(金) 02:25:12 ID:Wxgxvzcw0
宇宙にある様々な惑星には多種多様な人種が住んでいるが、不思議な事に人型
―――つまり人間タイプの宇宙人というのが非常に多く生息している。
そのため地球の料理と他の惑星の料理は似ている事が多く、初めて宇宙人に接触した地球人が
他惑星の料理を食べた時に、心の奥底からガッカリしたのは有名な話だ。

だが、この事が地球人が宇宙へ進出する際の大きな手助けになったのは間違いないだろう。

なぜなら未開の土地へ行くという事は、食事の保証が無くして中々出来ないことだからだ。
当然、いま鉄郎が大きな音をたてて食べているラーメンも地球のモノとは殆ど変わらない味付けである。

ズルルルルル〜〜!!!ジュルルルルルル〜〜〜!!!

「プッハ〜〜!!懐かしいな〜。」
メーテルが『用がある』という言葉を残して一人どこかへ行ってしまった為、鉄郎は一人寂しくラーメンを食していた。
食べているメニューはもちろん醤油ラーメン。
どうやら地球でも宇宙でも、ラーメンのスタンダートは醤油ラーメンであるようだ。
「親父さん!!お勘定。ラーメン美味しかったよ!!」
数分後、ラーメンを食べ終えた鉄郎は意気揚々と都市部を探索しようと立ち上がる。
「おうおう。いい食べっぷりをしていた兄ちゃん!!ありがとよ。それにしても、その姿・・・。
兄ちゃんは他の星から観光に来たのかい?」
「えっ?」
突然の言葉に少々面食らった表情に変化する鉄郎。
しかし、自分のマント姿が『それ』を匂わせていたのだろうと解釈したので、
無駄に大きなリアクションをすることは無く返答した。

212 :完成=未完成:2006/08/04(金) 02:26:17 ID:Wxgxvzcw0
「うん!地球から来たんだ!!」
「そうかそうか。それならば、都市部から少し離れた蜜柑畑に行くといい。あそこは良いぞ〜!!
蜜柑が食べ放題だからな〜〜!!正に未完星だけに、蜜柑星って奴よ!!はははは〜〜!!」
「へ、へえ〜。じゃ、じゃあ、僕はここら辺で・・・。ありがとうございました。」
ラーメン屋のおじさんが発したギャグのあまりの寒さに、その場に居たたまれなくなった鉄郎はまるで逃げるように外に出る。
(ふう・・・。それにしても・・、蜜柑食べ放題か・・。)
そして・・・・、『せっかく教えてもらったので・・・』という人情と、『食後のデザートも欲しい』という短絡的な思考の元、
鉄郎はラーメン屋のおじさんが教えてくれた都市部郊外にある蜜柑畑へ歩き出すのだった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

213 :完成=未完成:2006/08/04(金) 02:27:15 ID:Wxgxvzcw0
「うわあ〜〜〜、やっとつい・・・。あれ・・?も・・・り?」
約一時間ほど歩いた鉄郎の眼前に広がったのは宇宙の中でも貴重な碧で埋め尽くされた森――ではなく蜜柑畑。
どうやら未完星の蜜柑は、非常に背の高い木に生っているようだ。
「そんな・・。せっかく来たのに・・・。ふう・・・・、仕方が無い。登るしか・・・。」
地球基準でモノを考えていた鉄郎は、蜜柑の生っている木の大きさに驚愕すると共に、
自分の短絡的な思考に少々の嫌気を感じながらゆっくりと蜜柑の生っている木に登り始めるのだった。

「んしょ!!んしょ!!ふう・・・。まさか蜜柑を食べに来て、木に登る羽目になるとは・・・。」
登り始めて数分。
半分も満たない所で思わず疲れたような声を出してしまう鉄郎。
確かに様々な星で大活劇を繰り広げてきたが、彼の体はいかんせんまだ小さい。
いくら惑星タイタンで戦士の称号を得たといっても、未開の土地を歩いた上での木登りは相当堪えるモノがあったようだ。

―――更に数分後。

「ふうふう・・・。ヒイヒイ・・・。はあ・・。やっと着いた・・・。ホイッと!!」
やっとの思いで木の上まで登頂した鉄郎は、近場になっていた蜜柑を無造作に毟り取る。
そして、”待ちに待った”という表情をしながら、相変わらずの大きな口で皮ごとかぶりついた!!
「もぐもぐもぐ・・・。ん、ん〜!!!!んまい!!!」
あまりの美味しさに、鉄郎の顔から自然と笑みがこぼれる。
体力を消耗している時に甘いものを食べると無駄に美味しく感じるという話があるが、
この蜜柑はそれを差し引いても十分に美味しいようだ。

どうやら鉄郎の苦労は大分報われたようである。


214 :完成=未完成:2006/08/04(金) 02:28:51 ID:Wxgxvzcw0
「う〜〜ん♪それにしてもこれが食べ放題だなんて!!も、もう一個!!」
僅か十数秒で一個目を食べ終えた鉄郎は、「一つじゃ足りない!」と言わんばかりに
真横にあった蜜柑を目にも止まらぬ速さで掴み取る。
どうやらラーメンで腹いっぱいだった鉄郎の胃の中も、ここまでの移動と木登りですっからかんになっていたようだ。

「いっただっきま〜〜す!!!」
一個目のときよりも大きな口を開けながら、たった一個の蜜柑を・・・。
いや、何時の間にやら大量に採っていた蜜柑を、鯨が食事をするときのように流し込む。
真横にある蜜柑一個を採ったはずが、無意識のうちに辺りに生っていた蜜柑を全て採り尽していた様だ。

全く・・・。
無意識の力とは恐ろしいものである。

「んん!!おおお!!!ふい〜。うまかった。これでもう蜜柑は十年はいらないよ。」
そして、遂に最後の一個を美味しく食べ終えると、鉄郎は通常よりも数倍ほどに膨れたお腹をさすりながら
『木の枝の上』に大の字で寝転ぶ。
(ふう〜。こんだけ美味しいと、もう他の蜜柑は食べられないよな〜。・・・・そうだ!!
教えてくれたラーメン屋のおじさんにも何個か持っていこう。冗談は寒かったけど。)
鉄郎の頭の中に、『ピカッ!』っと電球が点く。
そう、親切にも、この場所を教えてくれたラーメン屋のおじさんに蜜柑を届けようという名案が浮かんだのだ。

215 :完成=未完成:2006/08/04(金) 02:29:27 ID:Wxgxvzcw0
「ようし〜〜!!せっかくだから、一番美味しそうなのを・・・・。――――あそこか!!!」
善意から来た行動は必ずしも良い結果へ運ぶとは限らない。
正にそれを体(てい)で示すかのように、近場に在る蜜柑へ手を伸ばそうと隣の木の枝の先端まで足を運んだ―――その時!!

ズルッ!!

「う、うわああ〜〜〜!!!」
運悪く枝の先端から足を踏み外してしまう!!
突然の事で、全く受身が取れずに地面に叩きつけられる鉄郎。
背中から落ちたおかげで外部に損傷が無かったのは幸いだったが、落下時の衝撃で脳が揺れたせいで
身動き1つ取る事さえ許されずに意識を失ったのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

216 :完成=未完成:2006/08/04(金) 02:34:21 ID:QkvdXAKT0
どうも、しぇきです。

オープンキャンパス用の作品展示が終わったので、SSを再開させてもらうついでに
投下させてもらいました。
長いので明日に続きを投下します。

217 :作者の都合により名無しです:2006/08/04(金) 07:31:16 ID:GM5XJIsD0
しぇきさんキター!
良かった。もういなくなっちゃうかと思ってた。
アホが沸くかもしれませんが、気にせず頑張って下さい。


218 :作者の都合により名無しです:2006/08/04(金) 12:39:13 ID:YvIvEMbX0
しぇきさん復活おめでとうです。3ヶ月ぶりくらいかな?また頑張って下さい。

・17さん
救出劇もうまくいって、いよいよ脱出か・・と思われたところまたピンチが起きましたね。
バーディたちのパーティ、一人も落ちず脱出できるかな?バーディの反撃は?

・しぇきさん
スリーナインはいいなあ・・ちょっと鉄朗が子供っぽいかな?とも思ったけど、キメる時以外は
こんな感じか。きっとメーテルはいい所で出てくるんでしょうね。彼女は場を引き締めるし。

あと、フリーザやオーガもお待ちしてます。

219 :作者の都合により名無しです:2006/08/04(金) 14:35:19 ID:xi7Ug8BU0
しぇきさん復活乙。
銀河鉄道の話も楽しみだけど、連載中の作品もまた楽しませて下さい

220 :コテ ◆SiidOxqQJI :2006/08/04(金) 19:26:32 ID:2qAx9W3N0
MUGEN バトルロイヤル 第6話 少女と吸血鬼
時刻は夕暮れ時になっていた。夜行性の生物以外は活動を休止する時間である。
夕暮れ時の森林は視界が殆ど無い。懐中電灯か松明でも無ければ足元すら見えない。
ゆっくりと暗闇に染まっていく森林を洞窟の中から見つめる1人の少女がいた。
体育座りをして憂鬱な表情を浮かべる彼女から元気のカケラも見受けられなかった。
(これから一体どうしよう・・・何とかして逃げないと・・・。)
モリガンというサキュバスによって吹き飛ばされた後彼女は暫く眠っていた。
起きた後、ボーッとした頭で作戦を考えた。
だが何も思いつかず今に至る。今の所誰にも頼れない。
「うう・・・どうしたらいいの・・・。」
遂に彼女は泣き出した。悲しみではなく焦燥と絶望感から。
「どうかしたかね?お嬢さん?」
声がした。
少女が後ろを振向くとそこには金髪で筋肉質の男が立っていた。
「私の名はセーラームーン。あなたは?」
「私はDIO。逃げてきたのかね?服が所々傷ついている。奥に来たまえ。匿ってあげよう。」
そう言うとDIOは洞窟の奥へと消えていった。明かりは無い。
(どういう事かしら・・・?)
彼女とはDIOという男とは初対面である。だが洞窟の奥に避難する事は得策であるのは事実である。
セーラームーンは洞窟の奥へと進んだ。
闇の中を暫く歩くと明かりが見えてきた。
そして開けた場所に出た。中心には棺が置かれていた。
「ようこそセーラームーン。ゆっくりと過ごしたまえ。」
DIOは壁によりかかっていた。
「DIOさん。私の仲間になって下さい。」

221 :コテ ◆SiidOxqQJI :2006/08/04(金) 19:27:03 ID:2qAx9W3N0
しばしの静寂が流れた。初対面でいきなり協力を申し込んだのである。
「まあいい。一人よりも多人数の方が楽しいからね。所で君は先程悲しんでいたが一体どうしたのかね?」
「私・・・友達を奪われたんです。探してたら襲われて・・・しかも操られてて。元に戻そうとしたけど無理だったんです・・・。」
セーラームーンは膝を付いて顔に手を当ててグスグスと泣き出した。孤独感が彼女を追い詰めているのだ。
その時彼女は自分の頭の上にフワリとした感触を覚えた。
上を見るとDIOが彼女の頭の上に手を置いていた。
「そう焦るな。この“ゲーム”の主催者とやらを斃せば何とかなりそうじゃないか。」
ムーンの頭を手でくしゃくしゃと撫でながらDIOは穏やかに話した。
「ア・・・はい・・。」
ムーンは朗らかに微笑んだ。今の彼女には軽い言葉でも気休め程度にはなった。
今ここにセーラー戦士と吸血鬼のコンビが出来たのである。
「ああそれと・・・これとあそこにある物を見てくれ。」
DIOはポケットから白いカプセルを取り出して壁を指差した。カプセルスイッチの様なモノが付いている。
そして壁には穴が開いており何か乗り物の様なモノが安置されていた。
「なんです?それらは。」
「乗り物の方は私にもわからん。説明書を見るにカプセルは何かを収納出来るらしい。」
「それで飛んでいけば・・・主催者の人たちを斃せるかも!」
「まあ待ちたまえ。気持ちは分かるが“禁止エリア”を忘れてはいけない。」
DIOがムーンをたしなめた。「禁止エリア」とは文字通り踏み込んではいけない区域の事で
入ったが最後ゲームからのリタイアを余儀なくされるルールである。
恐らくエリアの上空にいても同様であろう。
「まあこのスイッチを押して物に投げつければ収納出来る事はわかった。」
DIOは壁の穴に安置されていた乗り物にカプセルを投げつけた。
ボンッという音とともに白い煙が巻き起こり乗り物の姿は消えた。どうやら収納されたらしい

222 :コテ ◆SiidOxqQJI :2006/08/04(金) 19:28:59 ID:2qAx9W3N0
「これは・・・魔法なんでしょうか?」
「いや恐らくコレは科学だ。信じがたい事だがな。」
DIOはカプセルを拾い上げ暫く考え込む様な動作をした。
「ムーン君。君は仲間を救いたいといったね。君の様子を見る限り大分手ごわい敵に操られている様だ。力が欲しいかね?」
「突然何を・・・。」
「吸血鬼にならないか?私が君を噛めば君は力を・・・。」
「お断りします。私は仲間達を浄化しなければならないんです。その私が吸血鬼になったら皆はもう永遠に・・・」
ムーンは言葉を区切った。自分の使命の重さを改めて認識したのだ。
「まあいい。必死で努力する人間の姿は美しい。今の君の様にな。」
ムーンが顔を真っ赤にする様を見てDIOは苦笑した。
仲間の為に必死に行動を起す人間。彼が過去に出会った人間、ジョナサン=ジョースターもそういう人間だった。
今はDIOの体になっているが。
(ジョナサン・・・お前が必死だった理由がわかった気がするぞ・・・)
夜は長い。戦士達の闘いはまだ始まったばかりである。

223 :コテ ◆SiidOxqQJI :2006/08/04(金) 19:31:14 ID:2qAx9W3N0
【セーラームーン@美少女戦士セーラームーン】
状態 普通
装備 デイパック一式
思考  1 サキュバス化した仲間達を元に戻す
     2 主催者達を倒す
     3 DIOと協力

【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
状態 普通
装備 ビッグシューター@鋼鉄ジーグ in ポイポイカプセル@ドラゴンボール デイパック一式
思考  1主催者達を倒す
     2ゲームを楽しむ
     3セーラームーンと協力

224 :コテ ◆SiidOxqQJI :2006/08/04(金) 19:35:32 ID:2qAx9W3N0
どうもどうも。昨日投稿出来なくてすみませんでした。
個人的に悪役と別の作品での主人公が協力する展開があってもいいと思います。
DIOの性格に違和感を覚える人がいたらすみません。個人的に優しい性格のDIOが
いてもいいんじゃないかなーと思っているので。
ではでは。
>>178さん
自分もベガはリュウや覇王丸に倒されるべきだと思ってます。
力を合わせてラスボスを斃すのは少年漫画の王道ですから。
>>ふら〜りさん
犠牲・・・あまり増やさないつもりですが普通の人間(卯月美和等)は弱いので
ピンチになる事が多いかもしれません。
まあ弱い人間を守る為に強者と組ませているのですが。

225 :作者の都合により名無しです:2006/08/04(金) 20:00:00 ID:d1x80jVt0
しぇきさんお久しぶり。また楽しませて下さい。
999とか嬉しいな。連載になるのかな?

17さん、コテさんともに連載好調ですね。
17さんは異星のファンタジーで楽しいし
コテさんはバトルで楽しませてくれますね。
ちょっとDIOの性格違う機がするけどw


226 :作者の都合により名無しです:2006/08/05(土) 07:34:22 ID:WP51NPmt0
コテ氏乙。
ディオが普通に紳士だな。
まだまだ文体は荒いけど、精進して成長して下さい。応援してます。

227 :作者の都合により名無しです:2006/08/05(土) 13:00:24 ID:O67R35gM0
17さんのバーディ、もう少し人物関係をわかりやすくすればもっと面白くなると思うんだけど。
今はちょっとゴチャゴチャしてるね。俺は原作知ってるから別にいいけど。

228 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/05(土) 13:39:55 ID:ZffH8V3N0
MUGENバトルロイヤル 第7話 悲運!カンチョーマン!
木々がまるで暴風にでもあったかの様に薙ぎ倒されていた。
真っ二つに折られたのもあればどこか焼け焦げたのもある。
少し前にヤムチャが放った気弾が激突したのだ。
今、その中からゆっくりと起き上がる人影があった。
「イテテ・・あの女・・・とんだ隠し玉を用意してやがったのか・・・。」
彼はすっかり薄暗くなった辺りを見回した。どうやら自分は数時間程気絶していたらしい。
目が慣れるまで待つと彼は作戦を立て始めた。
夜は活動を休止する連中もいるだろう。自分は不意打ちでそこを叩く。
一人ひとり確実に。組んでいれば分散させて仕留める。
体中が痛いがまだ闘える。幸い骨は折れていないらしい。
その時、ザッという音がした。枯れた落ち葉を踏む音だ。
(誰かいるのか・・・?それも複数・・・?)
カンチョーマンは慎重に周囲を見回しながら歩き出した。

229 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/05(土) 13:40:29 ID:ZffH8V3N0
「加藤、今日はここで野宿するぞ。」
「へーい、わかった。」
承太郎達は森林の中の開けた場所に出た。
デイパックから小さい寝袋と枕を取り出し支度をする。
「今日の見張りは俺でいいな?」
司馬が言った。彼はサイボーグなのでスタミナ切れはない。
「ああ。頼む。」
加藤達はスヤスヤと眠りに付き司馬は周囲を見回した。
異常なし。そう思っている彼の目に人影が目に付いた。
(誰だッ?)
夜襲か。ゲリラ等が良く使う戦法だ。戦力の差を作戦で埋める。
相手が寝ていればこちらの攻撃は先制攻撃になる。
司馬は目を凝らした。前方に二人の人影が見える。
1人はもう1人を背中に背負っているらしい。徐々にこちらに近づいてくる。
司馬は背負われている人間を見た。まさか。そんなまさか。
「ミッチー!?ミッチーじゃないか!」
司馬は思わず声を挙げた。元の世界では幼馴染でありパートナーである女性。卯月美和。
「宙・・さん・・・。」
「どうも。彼女がカンチョーマンという奴に襲われたんで助けたんだ。俺はヤムチャ。よろしく。」
「ああ・・・俺の声に似ているな。一瞬俺の声色を使ったのかと思ったぜ。」
「ここで休ませてくれないか。彼女は安静にする必要がある。」
「いいだろう。今日の見張りは俺だ。遠慮なく休んでくれ。」
ヤムチャと美和も寝静まりその場に起きている者は司馬だけになった。
寝息以外の物音一つしない空間。その静けさの中で司馬は空を見た。
満点の星空。日常生活の中では見る事すらおろか考えもしないであろう光景。
司馬は暫しの間それに見とれた。
「うぐぅ。」
「?」
そら耳か、あるいは誰かの寝言かと司馬は思った。
だが現実は違った。司馬の足元に見知らぬ男が手を押さえてうずくまっていたのだ。
(バカなっ!俺のカンチョー攻撃が通用しないだとぉ!)


230 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/05(土) 13:41:02 ID:ZffH8V3N0
「誰だ?お前?」
司馬が尋ねるとカンチョーマンは後ろへ下がり距離を取った。蹴りの間合いである。
「はっはっはー!俺の名はカンチョーマン!そこに寝てる卯月美和とかいう女を襲って犯したのも俺だぜぇー!」
「何ッ!?ミッチーを!?おのれカンチョーマンめぇ!全滅だぁ!」
叫ぶ司馬の前からカンチョーマンが姿を消した。
そして次の瞬間には司馬の足元にその姿を現した。
「食らえぇぇ!連続カンチョー!」
「なぬッ!?」
カンチョーマンの手が連続で司馬の尻を襲う。
が・・・現実とは非情なモノで不幸にも彼の左手は砕け、右手も同様になった。
「バカなッ・・・我慢したのではないというのか・・!?」
「生憎俺はサイボーグなんでな。カンチョーなんて通用しないぜ。」
「まだまだぁ!俺にはまだ拳法がある!」
汗だくだくになりながらもカンチョーマンは左足で蹴りを放った。
が、それも司馬にカットされる。しかもカンチョーマンの左足の甲の骨に皹が入った。
「まだやるかい?」
司馬の余裕たっぷりの挑発にカンチョーマンは激怒した。
「俺を嘗めるなぁーーーッ!」
カンチョーマンが怪我をした左足で地面を蹴り右足で蹴りを放つ。
「これはミッチーの分だ!」
司馬も同様に飛び蹴りを放った。
二人の飛び蹴りはすれ違うと思われたがタイミングの関係で司馬の蹴りがカンチョーマンの鳩尾にめり込んだ。
「ごふッ・・・。」
口から胃液と唾が混ざった液体を吐きながらカンチョーマンは地面に落ちた。
その直後、ビキィという音がした。
司馬がカンチョーマンの右足を踏みおったのだ。

231 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/05(土) 13:41:38 ID:ZffH8V3N0
「お前にもあの時ミッチーが味わった恐怖を味あわせてやるぜ!」
数分間、司馬のカンチョーマンに対するリンチは続いた。
終わる頃にはカンチョーマンの全身の骨は砕けていた。
「うゥ・・・許してくれよぉ・・。出来心だったんだよぉ・・・。」
「氏ねぇ!」
司馬の拳がカンチョーマンの鳩尾を貫いた。
後に残ったのは肉塊となったカンチョーマンの体だけであった。
「けっ・・・。埋葬してやるか。」
1人の外道拳法家と一体のサイボーグの闘いを見ていた者は1人としていなかった・・・。


【司馬宙@鋼鉄ジーグ】
状態 普通
装備 デイパック一式
思考 1見張りを続ける 
   2主催者を倒す

【卯月美和@鋼鉄ジーグ】
状態 睡眠中
装備 デイパック一式
思考 睡眠中
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
状態 睡眠中
装備 ナイフ1本@ジョジョの奇妙な冒険 デイパック一式
思考 睡眠中
【加藤清澄@範馬刃牙】
状態 睡眠中
装備 テーピング コントローラー@ドラゴンボール ナイフ9本@ジョジョの奇妙な冒険  デイパック一式
思考 睡眠中


232 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/05(土) 13:44:15 ID:ZffH8V3N0
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
状態 睡眠中
装備 デイパック一式
思考 睡眠中

【カンチョーマン 死亡確認】




>>225さん
読んでくれてありがとうです。
面白く読み応えのあるバトルを描ければいいと思っています。
>>226さん
文体の荒さ・・・・一応イメージしてから書いているのですが拙者の拙さ故・・・
申し訳ございません。精進します。

次回でオリキャラは全滅します。元々オリキャラは頭数を増やす為に入れたので
大してストーリーには絡んできません。
ではでは。

233 :作者の都合により名無しです:2006/08/05(土) 15:36:54 ID:/hWbDXaK0
ディズニーキャラ擬人化、ドラえもん、JOJO、ジャガーさん、ジブリ等のパロ漫画サイト。
たまに横顔が変形するけどこの人はマジ上手い。この人より萌え話を描けるヤシなんて居ない m9( ・`ω・´)
絵BBSに絵を描くと漫画家のように自信タップリに辛口でコメントくれるじぇ☆

ttp://www.geocities.jp/makidontstop2/index.html


234 :デビルークの叛旗兵:2006/08/05(土) 18:27:03 ID:CsXKMgBe0
ある夜、デビルーク王は娘のララをカメラで見た。
彼女は居候宅の長男リトの部屋で夜遅くまで話をしていたが、やがて若い肢体はもつれ合い
耳たぶは舐めしゃぶられ汗に濡れ光る乳房が揉みしだかれてドス黒いイボイボと和田アキ
子のブロマイドつきのバイブがリトの肛門にインサートされて工事現場で活躍してるホッピン
グの親玉めいた機械がごとき騒音を撒き散らし始めた。

ダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカ
ダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカ

リトの顔ときたらどうだ!
恍惚にだらしなく頬を緩めて、ヨダレをだらだら流して笑ってやがるのは夢遊病者さながらだ。
「てめっ! あのバイブ俺のじゃねぇか!」
デビルーク王は激怒して、地球に極太のビームを放った。滅ぼした。

いまや地球には日本とエロマンガ島以外の大地はなく、そことて年がら年中黄色い砂塵が
びょうびょう吹きすさぶひどい有様。
政府機能などはとうに麻痺。
街角の至るところに死体があふれ、そのそばで抵抗空しく中年男性が犯されるのも茶飯事だ。
「クキャキャ! やっぱデブったリーマンの抱きごこちはたまんねぇ!」
「まぁそれも、50間近の鍛えられたおっさんにゃ及ばんけどなあ!!! うおお! 引き締
まったケツに腰打ちつける感触、想像しただけで出る! 出るうぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
ゴロツキどもは狂乱の叫びをあげながら獲物談義に華を咲かす。

そんな荒んだ時代を招いたリトだから、世界を良くしようと戦っている。
だが傍らにいるはずのララいない。すでにこの世いない。
原因、バイブの挿れすぎ。1週間ばかり挿れぱなしにしてたら膣が腐て死んだね。
ま、それだけのコト。
膣といえば、交尾後のメス猫はすごい激痛を味わっておるらしい。
なぜならオス猫のペニスにはトゲトゲがついておるのだ。
引き抜く時はすさまじく痛い。いやマジに。ボラギノール塗ってるのになかなか直らん。
だからメス猫は交尾後に反撃する。オス猫はその辺り踏まえて、交尾中はメス猫の首を噛ん
で反撃するなと前フリしてる。おお、なんと因果で美しい生き物か。

235 :デビルークの叛旗兵:2006/08/05(土) 18:27:47 ID:CsXKMgBe0
「女ぁ! 女ぁぁぁぁあ!!」
ザスティンはギンギンにおっ立てながら、呻く春奈に駆け寄って胸倉をつかみ、また頬げた
を殴りつけた。
「女ぁ! 女ぁぁぁぁあ!!」
しばらく頬げたを殴りつけて、ぐったりしたのを血眼で確認するとブレザーを剥ぎ取りまた自
らのベルトもがちゃがちゃと外して、やり始めた。
「おいおい。ンな山のフドウみてーなんとやっても仕方ないだろ」
「女ぁ! 女ぁぁぁぁあ!!」
頬げたを殴りつけながらザスティンが達しようとした時!
彼が一瞬揺らいだかと思うと、そのまま彼は前のめりに倒れこんだ!
リトは動揺した。
「ザス……」
手を伸ばそうとした姿勢のまま、その場へ凍りついた。
声が届いた。とても懐かしく、とても忌まわしい声が。
「脳はどうも不便極まる。視覚を司っておきながら、自身の色は知るべくもない」
春菜の胸の中でトマトソースのような液体を垂れ流すザスティンの躯。
「ブチ撒ければ多少は分かるが、既に時遅く息はない。自身に知らしめる意気がない」
ほの暗い場所から近づいてくる、ゆるやかな足音。
カカトを踏んでいるらしく、ペタペタとユーモラスだ。
それに聞き覚えがあったからこそ、リトの頬を冷たい一滴の汗が流れ落ちたし、ねぎはおいしい。
「ある種、人の評価に似ているとは思わないか? 死後観察する者がいて、ようやく全体像
がはっきりする。いま弾けた頭蓋のように、余分な物を削ぎ落とし、内面の深い部分に迫って
ようやくだ。ようやく明確な像を結ぶ。それがなくば偉人とて偉人たりえないのだろう。奴らが
価値を帯びるのは観察者ありきだと私は思う」
「美柑!」
アゴをわななかせ叫ぶ声を合図に、リトの妹はそこで立ち止まった。
名前の通り頭のてっぺんをミカンのヘタのようにくくった少女だ。
彼女は背と尻の境目に両手を当て、相変わらず冷めた目線を兄へと這わす。
「久しいな兄者よ。クロムバレーでのユダ狩り以来か」
「んな挨拶はどーでもいい! ザスティンに何しやがった」
「クク。何をだと? 我らが故郷を滅ぼした一族に連なる者を誅殺したまで。このようにな!」
腕を一振りするとリトの後ろで大理石の壁がすごい音を立てた。

236 :デビルークの叛旗兵:2006/08/05(土) 18:28:42 ID:CsXKMgBe0
見ればなんかすっごい破壊痕を刻んでいて、威力の強烈さが伺える。
だがリトは臆するコトなく叫ぶ!
「違う! ザスティンはデビルークを裏切ってまで地球再興を果たそうとした男だったのに!」
「フン。兄者らしいわ。つまらん情にほだされ喧(かまびす)しい。その男がデビルークの叛旗
兵というコトぐらい既にこちらは知悉済みだ」
「だったら何で」
一方、春菜。茫然自失から復帰し美柑へ横へと瞬間移動。
大理石の壁がビリビリ震えるほどの大音声(だいおんじょう)で咆哮した。
「よくもやってくれたなぁ! こっからは復讐タイムだ! リトのために守り通した春菜の操を
今さら人に捧げさせやがって! 兼ねてブッ潰してやる覚悟しろ! 兼ねンのは! 俺らの
地球グダグダにしやがったア、デビルークの連中への復讐だぁぁぁぁ!」
後ろで影のように黙っていた美柑が合図を下す。
「というコトだ。出ろ。くんくんトレースくん」
指パッチンをすると、四ツ足の獣が2匹、現われ出でた。
造形は両方とも犬コロ。新造人間キャシャーンのフレンダーみたいな犬コロだった。
1匹は大きなハンマーを咥えていて、ぼとりと地面に落とした。
「我らが目的のため、兄者にはしばし沈黙して頂く。……行け。くんくんトレース君」
合図と共に犬コロどもは凄い荒れ狂って辺りをめちゃめちゃにしてリトをボロボロにした!
「くんくんトレース君の意味を知っているか? ”狂犬病”だ。狂っているモノというのは始末に
負えないだろう? 私もかつて狂ったデビルークの連中に煮え湯を飲まされたからな……」
「うおお、動けん!」
「さぁて、リト、てめぇはしばらくそこでじっと見てな。仲間の死体が、かつての私の生活と恋心
のごとくズタズタにされる様をなぁ! それから戻れ! 春菜の大好きだったてめぇにな」
ハンマーを拾い上げ、一糸纏わぬ姿でザスティンの遺骸めがけて歩く春菜。
発情したのか、リンゴ大の左乳房を愛撫し始めた。
「キくぅ〜〜〜! ヘタな男よりツボ心得てる分キくぜぇ〜!」
「さっさと終わらせろよ。そいつの始末の次は兄者の狂気を抜かねばならんからな。全く。春菜
や私のような真人間にしてみれば、狂人というのはほとほと始末に終えん。狂人でありながら
自らが正常だと思い込んでいるからな」
美柑は大儀そうにため息をついた。
「へ! 春菜の色香なりゃ3秒で覚醒させてやるぜゎー! いまやパンパンだッ!! 二度と
貧相などとは言わせねぇぞぉぉぉぉぉぉ!!」

237 :デビルークの叛旗兵:2006/08/05(土) 18:29:16 ID:CsXKMgBe0
手をスイカほどある右乳首へと映し、一生懸命もみしだきながらザスティン前に到着。
「こらテメッ、テメッだ、テメッ!」
ぺっと手にツバを吹きかけ、ハンマーを握る。軽く振って、これだ!という握り方にして。
ザスティンめがけて轟然と打ち下ろす!
「デビルゥゥゥゥゥクのッ! 叛旗兵のォォォォォォ〜〜〜!! みじめったらしいゴミクズが
美しい地球を汚すんじゃねぇぞぉー!」
既に潰れた頭へ真っ黒なハンマーが直撃! ネバっとした肉片が糸を引いた。
「ふむ。久方ぶりに納豆が食べたくなったな。白米と味噌汁があればなおいい」
「ヒャッハ! 汁出したぜこのクズ。汁をよぉ。春菜はこいつを食べちまいてぇ!」
嬉しそうにハンマーを振り下ろす。
また肉片が散った。リトは思った。ハルヒ2期があるなら最終回は消失だろうと。
「だから地球汚すなつってんだろうがァァァ!!!」
ザスティンの亡骸に何度も何度も何度もハンマーを振り下ろす。
「どうしてくれんだぁ!? 春菜の暴力衝動のせいでこんなにも地球が汚れてくじゃねぇか!
「もうそろそろ切り上げろ」
時間が惜しいと肩をすくめて美柑が忠告する。
「でなくば貴様の膣にインサートした濃硫酸の瓶をこの場で叩き割るぞ」
「割って!」
「ああ」
パチリと指を弾くと、春菜の腹が服ごと裂けた。
ウォーターカッターのようにビュルビュル血が出るかと思ったが、白い煙が代行して肉の焼ける
匂いが辺りに立ち込めた。
「ふへ! ふへへへ! 地球汚したかんなあー! 子を育む能力なんざ捨ててやるぜぇぇぇえ!」
「クク。これが噂に聞く膣とやらか。思ったより美しくない臓器だな。劣情を催す男の心理が分
からん」
絶叫の春菜へと美柑は駆け寄り、腹から飛び出た袋状の物体をむしり取り、食べた。
白い卵がびっしりついているそれは、ほどよい歯ごたえの音を響かせる。
「オ、オレにはお前らが分からん!」
努力と工夫の結果、ようやくくんくんトレース君を倒したリトが呟く。美柑へと近づきがてら。
「ふぁふぁらふとふぉけっふぉう! ひふぉふぁへたふぁひふぉひへふぉ!」
「喰ってから喋れよ! つかそんなもん喰うなボケ!」


238 :デビルークの叛旗兵:2006/08/05(土) 18:29:59 ID:gvgNiwGW0

(……ふ。懐かしい。子どもの頃はこう怒られていたっけな)

「分からずとも結構。血を分けた兄といえど私は一線を画すのだよ」
「お前は変わった」
リトは大きく首を振った。表情には深い苦悩と悔恨が刻み込まれている。
「変わるさ。あの日、兄者の菊をララに散らされて以来、私は変わった。ドアの前でヘチマを
取り落として、深い失意に泣きじゃくったあの日以来な」
「すまない。オレのせいで傷付いたんだなオマエも」
優しい声音で妹の両手を取り、リトは顔を近づけた。
「よ、止せ!そんなコトして何にな……!!」
言葉半ばで可愛らしいピンクの唇が塞がれた。
「いまのオレにできるのはこれぐらいだ」
「黙れ。たかだか唇を触れ合わせたぐらいで、私の無念が晴れると……晴れると……んっ」
再度接吻がかまされた。しかも舌を入れられた。
(阿呆……っ! まだ春菜の膣の残骸が……!)
リトは構わず妹の後頭部に手を添えて、ゆっくりゆっくり舌を動かす。
ぬめった舌が構内粘膜を這いずるえもいわれぬ感触に、美柑の瞳はとろみ、ミルクのような
肌が朱に染まっていく。
全身に広がる甘ったるい痺れに、美柑はただ瞑目し兄の口付けを受けていた──

「いいか。一時的に貸してやるだけだ。我が無念はわずかしかまだ晴れていない」
しばらく後、美柑はリトに呟いていた。
場所は198階から199階に至る階段だ。
「ここからは並外れた強敵がいる。ゾゾゲ神ヒミュンとの契約により魔獣と化したペケや、
暗黒肉斬惨挫地獄を操る我らが父、それからゾゾゲ神ヒミュンがな」
そいつらにリトが殺されたら、未来永劫無念は晴れぬと美柑は言い訳に呟く。
「わーってる。でもお前がそばに居れば何とかなるさ」
リトは気楽に笑って、美柑も微かに笑って、やがて199階に到着した。
彼らの戦いが終わるまであとわずか。                             (終)

239 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/08/05(土) 18:33:04 ID:gvgNiwGW0
今回の題材は「To LOVEる」。最近、単行本を全巻購入したのですよ。
この作品、入浴シーンやら直揉みのよーなエロが何かと語られがちですが、序盤の人情路線や
中盤以降のバトル路線の方が好み。敵の造形が良くて、親衛騎団や暗殺チームが好きな自
分のツボをつきまくり。キャラの表情や武装錬金並みの展開の速さもまた良し。
ともかく、パラノイドサーカスの面々には生き残って欲しいものです。ミズチを看取る所にグっと来たので。

ネゴロへのご声援、本当にありがとうございました。
そしてサナダムシさん。お気遣い、本当に本当にありがとうございました。
以後は投下直前にリロードするよう気をつけます…… すみません。

>>142さん
んー、続くといえば続くのですが、根来と千歳が主役のパートは終わりですね。
新作はできれば現スレ中に投下したいのですが、率直な所、核になるアイテムがまだ未決定
なのでどうしようか悩み中です。一応、ストーリーの流れや総角の部下全員の名前と能力と性
格は決定してますので、乞うご期待! なるべく錬金世界に馴染むようなオリジナルでいきたいです。

>>143さん
いやはや、千歳の切札と笑顔を描いたら、後はもう照星のアレと総角のアレしか描くべきモノ
がなくなってしまったので……読み返すと駆け抜けすぎた感が多々あります。
ので、まとめサイトで収蔵して頂く分につきましては、若干の加筆訂正があります。詳しくはBBSの方で。
久世屋は殺すかどうか悩みましたが、作劇上、ここで退場と相成りました。けど、軍師の彼にはかなりの未練がw
根来は彼なりに頑張ってたのでご褒美を。たまにはああいう出来事が人生に有ってもいいはず。

>>144さん
振り返ってみれば、やりたいコトは全部やったというSSでした。ただ途中、総集編に専念して
たのと、久世屋の武装錬金を考えるに大分間が開いたので、そこだけが心残りですね。
新作はなるべくコンスタンスに投下できたらいいのですが、果たして。そうそう。一年前といえ
ば「フィソステギア」って短編作品にも千歳を出してます。すごく可愛いので良かったら見てください。

240 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/08/05(土) 18:38:15 ID:gvgNiwGW0
>>145さん
根来は戦闘では隙がなく、人間的にも「掘り下げていいんだろうか?」っていう雰囲気のキャ
ラだったので、どうしても「欠如」とか「未熟さ」のある千歳や久世屋の方に焦点が合ってしま
いました。けれどそこも含めて描いてて楽しかったです。今度彼を描く時は、「強い味方その1」
なポジでいきます。新作の主役は、ちゃんと主役する筈。(多分。総角一味に食われる恐れもありますが)

>>146さん
照星は、どうにか挽回して原作準拠でいけないか考えた結果、ああいう形で締めてみました。
自分の中の照星像はああいう形なのですが、いかがでしたでしょうか?
次回作はもちろん秋水主役! 総角の武装錬金は、うーん。正に「総てを手に入れる」という感じでしょうか。
最後のチェーンソーはオリジナルですが、錬金と筋肉少女帯が好きな方はニヤリとできる名と能力ですよ。

かまいたちさん
ま、正に予想外のご感想、恐縮しきりです。色々と横道に逸れがちなSSゆえに全体的な整
合性を保つコトだけは集中してみたのですが、お気に召して頂ければ幸いです。ブッちゃけ
ますと、最後の切札に対する伏線を張るので実は精一杯でして、殺人黙示録中盤の期待感
や、終盤の各キャラの思惑と時系列が錯綜した謎が謎呼ぶスリリングな展開はとてもとても。
一ジャンルを描き切れる筆力には、瞠目しきりです。とにかくお見事!

ふら〜りさん
>お互い、これ以上の相手はどこ探しても見つかりませんね
2人の関係を描ききってしまうと、心底からこう思ってしまいます。
千歳の笑顔はそれはもう、美しく貴重なモノですよ。想像するだけで「いいなぁ……」となるほど。
久世屋はただ死なすだけじゃ惜しかったので、どこか貫いているモノローグで締めてみました。
すると最後の火炎鼓の下りが、彼への救いになったような気が。全く意図してなかったのですが、
これもまたSSの醍醐味でしょうか。そして次回作はなるべくふら〜りさんの肩が凝らないうちに!

しぇきさん
まずは復帰のほど、おめでとうございます!
フリーザやオーガ、そして今回のご作品の続き、お待ちしております。

241 :作者の都合により名無しです:2006/08/05(土) 19:24:19 ID:kDiFHoRJ0
スターダストさん、復帰第一作目乙です。

休息中に、デンパに犯されましたか?w
でも楽しめました。新連載お待ちしております。

242 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/08/05(土) 20:11:17 ID:+UalEziK0
しまった。>>234と235の間に入れ忘れがあったので投下します。

>>241さん
何といいますか、適応機制? マジメなSSを描くと反動でこんなのをw
楽しんで頂ければ一安心です。こーゆーのは『賭け』みたいなモノで
投下した後はヒヤヒヤしているのですよ。でもデンパは好きですよ。愛しています。

243 :デビルークの叛旗兵:2006/08/05(土) 20:12:52 ID:+UalEziK0

しかしである。
現在地球が追い込まれている絶望的状況を覆す最後の(最後のー)切札をララは生前作っ
ていた。
「ずばばんズバ蛮くん」という名のそれは、いーなづぅまーで敵を撃てるし手にした物の願い
をなんでも叶えるよーするにドラゴンボールのパクリみたいな存在で百と八つに分割されて
日本各地に隠されていた。リトはザスティンと共に「ずばばんズバ蛮くん」を探す旅に出た。
けれど古来こういうジャンプ読み切りで良く出てくる「集めモノ」を全うさせるのはすごく大変
そうだし、長編にしても息切れが目に見えているのでパーツは既に百と七個ぐらい集めたと
いう方向でよろしく!

んで砂の嵐に隠された何たらの搭にラスイチがあると聞きつけ、突入。
全200階のうち198階までは楽々登った。しかしここで意外な人物が出現!

待ち受けていたのは、でっぷり太って青髭を生やしたブレザー姿の少女。
「リトォ〜! 逢いたかったぜぇ!」
春菜である。ニタニタと下卑た笑いを頬に浮かべてしわがれた声で喚く。
「学校も政府もみぃ〜んな吹きとんじまったが、春菜だきゃ快活だ!! 女一人荒野で生き
抜くにゃ体売るしかなかったが、前は取ってあるぜ! てめぇの為に!!」
ガラガラとした声が大理石の壁に反響して、うるさい。
「おぉっと。声がつぶれちまってんのは気にすんなよぉ。お仕事のせいだ。宇宙人のよォォ
アレが長い奴を相手にした時、奥まで突っ込まれて声帯が破れちまったんだ! だから、
ムカついたんで噛み切ってやったらよ! 笑えるぜェ〜、その刺激でクソみてぇな茶褐色の
液を発射しやがんの! んで、アイツ、喜んでんのか苦しんでんのか、床でヒィヒィのたうち
やがって鬱陶しいから顔面に愛液ひっかけてハンマーでブッ潰して財布奪って逃げてやった!」
リトは茫然と言葉を聞いていたが、やがてあらん限り叫んだ。
「何だてめぇ!!」
リトの横にいたザスティンは影も見せずに飛び出し
「春菜だああ!! デビルークを憎むっ、春菜だああ!!」
春菜の頬げたを有無をいわさず殴りつけた!
580kgを誇る巨体も、流石に不意を突かれてはたまらない。
どう!ときりもみながら数十m吹っ飛んで、大理石の壁に激突。大理石にヒビがいった。

244 :バーディーと導きの神〜決着!デアマシュウ〜:2006/08/05(土) 21:58:32 ID:AGR7MkNo0
「動いた!」
王都からほど近い距離。黒竜城に咲いた球雷の花を見た森に控える牙炎たちは、一斉に行
動を起こした。
「行くぞ!」
「了解!」
自らの羽根で飛行を始める牙炎と、高速浮き砲台に乗り込んで出発するソシュウたち。
一直線に黒竜城へと向かう。

「あっちだ!あっちのほうだったぞ!」
テラスの騒ぎとは見当違いな方向を指差しながら、兵士をあらぬ方向へ誘導する地下組織
の男。
その声につられて、兵士がどかどかと足音を立てて通り過ぎていく。
(悪いな、坊主。俺たちは兵隊を散らすので精一杯なんだ。そのかわりなるべく長く引っ
張り回すからな。しっかりやれよ……)
最大限、自分にできる『協力』をする男。それが地下組織の約束だった。

一方、デアマシュウの必殺技を食らった潜入部隊一行は、全員その場に倒れこんでいた。
「くっ……」
来ると分かって構えてみても、生来の弱さだけはどうにもできないバーディー。
リュミールをかばう格好でうつ伏せに倒れているザン。肩が大きく上下しているところを
見ると、直撃に近い衝撃を受けたらしい。
ただ一人、シアンだけが内念を最大に効かすことでしりもちをつく程度にダメージを抑え
ている。だが体中の筋肉が勝手に引きつるのだけは防げない。
「不死身の少女はともかく、全員これで死なぬとは凄いな。面白い相手だ。だが、これで
止めだ!」
デアマシュウはひとしきり感嘆すると、まず一番弱いとみられるザンに向かって貫手を伸
ばした。
「があっ!」
筋力を振り絞って、それに飛びつくシアン。腕をつかみ、なんとか攻撃を押し止めさせる
ことには成功する。

245 :バーディーと導きの神〜決着!デアマシュウ〜:2006/08/05(土) 21:59:34 ID:AGR7MkNo0
「ふざけたまねを!」
デアマシュウは、その強靭な膂力でシアンの巨体を投げ飛ばす。シアンは壁面に激突して
倒れこんだ。
「こ……の……」
その隙にテラスの欄干をたよりに起き上がろうとするバーディー。
ザンも不屈の闘志でリュミールをかばって立ち上がる。
「邪魔が入ったが終わらせてもらう。もう一発食らえ」
再び体を伸縮させて電気を集めるデアマシュウ。
だがぞれを阻止しようとバーディーが気合を込めて立ち上がった。
「させ……、ないっ!」
今出せる最大限の力で欄干を思いきり蹴って跳躍し、両手でデアマシュウの体に触れる。
そして最後に残ったなけなしのエネルギーでデアマシュウの動きを止める。
「クラッシュ!」
「がっ!」
一瞬、デアマシュウの動きが止まる。
「ザン君!今よ!」
バーディーの呼びかけにザンが応える。
瞬動法。
残った体力で一気にデアマシュウの懐に飛び込むと、手のひらでデアマシュウの顔に掌打を
食らわせる。
ゲフッと血を吐いて後ろに倒れこむデアマシュウ。
(ぬかったわ!衝撃で肺が破裂しちまった!)
敵を侮った己のうかつさを呪いながら、デアマシュウの意識は途絶えた。
「リュミール!」
最大の敵を倒した安堵感からか、ザンはリュミールに注意を向ける。
そのとき。
「俺を忘れたかガキ!」
最後に残った傭兵ゲシルが瞬動法で背後に近づき、短剣をかざしてザンに襲い掛かる。
しかしそれを黙って許すようなバーディーではない。
「なめるな!」
両手を突いて、逆立ちのような格好でゲシルの顎に蹴りを入れる。

246 :バーディーと導きの神〜決着!デアマシュウ〜:2006/08/05(土) 22:00:16 ID:AGR7MkNo0
弱っているとはいえ、連邦内外で化け物と恐れられているアルタ人捜査官の蹴りだ。その
衝撃にゲシルは完全に昏倒して崩れ落ちた。
「いつまでも痺れてられないわよ……。詰めが甘いぞ、ザン君」
額から脂汗を流しながらバーディーはウインクする。
「は、はい……」
ようやく戦闘は終了した。
しかし、地下組織の男たちが散らしていた兵たちが、ことここに至ってようやく潜入部隊
一行を発見する。
「いけない!逃げなきゃ!」
まだ足元もおぼつかないザンが焦る。
「捕まえろーっ!!」
口々に騒ぎ立てて殺到する兵たち。
しかし、兵たちの前の石畳がはじかれたように持ち上がる。シアンの念放射だ。
「ようやく痺れが治ったぜ。後は任せて先行きな、お二人さん。ここは俺とバーディーで
食い止める」
「そうね。あなたたち二人ならモルプがなんとかしてくれるでしょうし……」
ダメージからある程度回復したバーディーも一緒に立ち、シアンと背中合わせで兵たちに
向かって構える。
「バーディーさん、シアンさん。ありがとう……」
ザンはリュミールを抱きかかえながら感謝の言葉を述べる。
「気をつけて、バーディーさん、シアンさんも」
リュミールも二人を気遣う。
「任せて」
「おう、早く行きな」
それぞれに応えて二人ともにやりと笑う。
「さて、これでやりたい放題ってわけだ」
「好き勝手に暴れられるわね」
「じゃあ、死にたい奴から……」
「かかってきなさい!」
二人が同時にタンカを切る。
だが、テラスに集った兵たちは、なぜか我先にと逃げ出す。

247 :バーディーと導きの神〜決着!デアマシュウ〜:2006/08/05(土) 22:01:52 ID:AGR7MkNo0
「お?」
「え?」
その様子に呆気に取られる二人。ルアイソーテ側の術者も何人かいたのだが、みな
転送術でその場から消える。
バーディーとシアンの切ったタンカは単なるハッタリに過ぎなかったのだが、あっという
間にテラスから人がいなくなる。
「あーあ、みんな逃げちまった……」
「私たちってそんなに恐ろしい顔してるのかなー……」
少し傷つく二人。しかしその後ろから声がかかる。
「おいシアン。なにしてんだ、逃げるぞ!」
その声に振り返ると、テラスの欄干にザンとリュミールを抱き、それからモルプを背中に
乗せた牙炎が立っていた。
「大佐!来てたんですか!」
そういうわけだった。なにも兵たちはバーディーやシアンを見て怖くなって逃げ出したの
ではない。完全武装の竜人が現れたから逃げたのだ。
「そっちの美人がバーディーだな。親父とキデルから聞いてるぜ。俺は牙炎。よろしくな」
呑気に挨拶をする牙炎。バーディーはわけが分からないながらも軽く会釈をする。
「ほれバーディー、シアン急げ!」
高速浮き砲台からはソシュウが身を乗り出して手招きしている。
二人は急いで乗り込んだ。
「垂直上昇!結界内から脱出する!」
牙炎が宣言し、牙炎と高速浮き砲台は移動を開始する。
眼下では、敵の侵入を知らせる警報が鳴り始めていた。

248 :バーディーと導きの神〜決着!デアマシュウ〜:2006/08/05(土) 22:02:25 ID:AGR7MkNo0
「遅い遅い。今頃警報さ鳴らしてるべ」
モルプが痛快そうに言う。
「お願いします。私をこのまま西のほうへ連れて行ってください」
牙炎につかまった格好のリュミールがお願いする。
「なぜだい?」
牙炎が当然の質問をする。
リュミールは少し暗い顔になって答える。
「わけは……、そこへ着いてからお話します……」
リュミールの表情を見てとった牙炎は、それ以上なにも聞かなかった。
「西だな。しっかり捕まってろ!」
それだけ言うと、その飛ぶスピードを上げたのだった。

249 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/08/05(土) 22:08:49 ID:AGR7MkNo0
デアマシュウとの戦い、決着がつきました。
バーディー、地味に役に立ってます。

>>218さん
最後の一打の決め手となる「クラッシュ」でザンをサポートしましたよ。
>>225さん
楽しんでもらえれば幸いです。
>>227さん
確かに。私の不徳の致すところです。もっと分かりやすくなるよう努力します。

250 :作者の都合により名無しです:2006/08/05(土) 22:45:50 ID:WP51NPmt0
>スターダストさん
プチ復活おめ。そういえばスターダストさんの読みきりって初めてだったかな?
原作はほのぼのエロでしたがしっかりと壊しましたね。面白かったです。
でも、連載がそろそろ(まだ早いけど)読みたいな。

>17さん
バーディは不屈の上にいい女ですな。ピンチのときでも周りに気を使って・・
大脱走を経て、そろそろこのパートも終了しそうだけど、また新たな冒険の始まりかな?



251 :作者の都合により名無しです:2006/08/06(日) 11:15:37 ID:1fMr21330
スターダスト氏ってこういうのも書けたんだ。ネゴロの時から片鱗はあったかw

17さん、そろそろキャラもこなれてきましたよ。書きなれてきた感じですな。

252 :ふら〜り:2006/08/06(日) 13:49:38 ID:ShWxaco20
>>邪神? さん
テオドール強い、シブい、カッコいい。こういう頼りがいのある年配先輩キャラって好き
ですよ〜。で、それはそうとブルーって、サイバーブルー!? うわぁぁ懐かしい! 記憶
おぼろですが、アレは結構好きでした! ……ので、現状の本作の立ち位置が少々不安。  

>>かまいたちさん
そうだったのかっっ。たま〜にミステリもので見かける手法ではありますが、まんまと
引っかかってしまいました。確かに漫画やアニメなんかではできない、文字媒体ならでは
の足払いですねこれ。これは解決編まで全部読み終えたら、改めて冒頭から読み返さねば。

>>17〜さん
おっ、バーディーがシアンともザンとも軽快にコンビプレーしてる。立場的にリュミールが
捕らわれのお姫様なら、ザンとバーディーは二人共主人公っぽく、シアンは頼れる相棒
って感じ。しかし不死身を完全に自覚してるリュミール……ちょっとヒヤりとしました。

>>しぇきさん(お帰りなさいませっ。心配してましたが、お元気そうで何よりです)
これまた懐かしいものを。メーテルには憧れましたねぇ幼心に。にしてもあれだけ幻想的
な作品世界なのに、醤油ラーメン啜ってる姿が違和感ないってのが鉄郎らしい。オヤジ
ギャグといい蜜柑丸齧りといい、今のところは平和そのものですが、次回どんな事件が? 

>>コテさん
うぅむ。私もできればDIOには裏の企みがあって欲しいところですが、それはない模様。
ならばいっそ、ジョナサンの最期をなぞってムーンを逃がす為に犠牲になってみるとか。
けどモリガンが手下を引き連れてる現状、DIOはゾンビを作らずに対抗できるかどうか。

>>スターダストさん
打って変わってというか芸風が広いというか。確かに片鱗はありましたが、ここまでとは。
忠実に映像化すれば思いっきりグロさ満点の連発なのに、勢いに飲まれてグロさを堪能する
暇もなかった感じです。で新連載、前の事件を経て根来にも多少の変化……ないだろなぁ。


253 :邪神:2006/08/06(日) 14:42:12 ID:ADxEyDCg0
こんにちわ、遂にPCが逝ってしまった邪神です。
弟のPCを使って書き込んでますがSSの続行は無理っぽいです。
なんか電源ランプから付きません。プラグ刺し直しても治らないし。
まぁボロかったしコレを機に新しいのを買ってくれるらしいんですが、
経済的に厳しいのでクリスマス辺りに買ってくれるとか。
でも一応受験生ですので復帰は未定です。
期待しないで待ってて下さい(0w0)ノシ

254 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/06(日) 15:02:22 ID:0SEqieiN0
MUGEN バトルロイヤル第8話 カンフーマンの最期

森の中の開けた場所だった。滝があり飲料水の補給に適した場所である。
今、1人の拳法家がそこに座っていた。骨折した左手を冷やす為である。
範馬刃牙と名乗る少年と交戦してから数時間経過していた。
他の参加者と出会わない様極力注意しながらここまで来た。
滝壺の水に左手をチャプリとつけ患部を冷却する。
包帯などは無い為体を安静にするしかない。
彼は今困っていた。五体満足であれば何とか闘えるかもしれない。しかし骨折とは・・・。
これが足やアバラでは無くて良かったと彼は思った。
(眠い・・・寝るか)
仰向けに寝転がりデイパックを枕代わりにして彼は眠りについた。
霧が出始めた。月の光すら霞む程の濃い霧だった。
「うふふ・・・おねんねしてるわね。」
霧の中で彼に近づく5人の人影があった。
モリガン=アーンスランドとセーラー戦士達である。
「モリガン様、“サキュバス”は殿方から精気を吸い取りますが・・・どのようにするのですか?」
マーキュリーがモリガンに質問した。彼女達はサキュバスになりたてでその方法がまだわからない。
「いいわ、見ていなさい。」
モリガンが寝ているカンフーマンにゆっくりと歩み寄って行く。
数_程の距離になってもカンフーマンはピクリとも動かない。そのくらい深い眠りに落ちているのだ。
「戴くわ。」
モリガンがカンフーマンの上に馬乗りになり唇に口付けをする。
直後、カンフーマンの顔が見る見る内に細くなり始めた。

255 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/06(日) 15:03:04 ID:0SEqieiN0
1人の拳法家が夢を見ていた。
(・・・・ここは・・・道場?)
見慣れた風景。そう彼の元の世界の場所。道場。
(なんだってここに・・・。ゲームは・・・?)
その時、道場の戸がガラリとあいた。
「ごめんくださぁい。」
朱色のチャイナドレスを着た妖艶な女が戸口に立っていた。
大胆なスリットに胸元が開いた服を着ている。
「こんにちは。何か御用で。」
「私、あなたとバトルをしに来たの。」
「ッ!」
カンフーマンは身構えた。そうか。ここは“ゲーム”の世界の場所なのか。
「イかせてあげますわ。ウフン。」
女が空中を舞い、カンフーマンの顔を両足の太腿で挟み込む。
「ム・・・ムグゥ・・・」
動こうにも首を太ももでガッチリと固定され動けない。
(気持ちイイ・・・)
頬に柔らかい感触が走りカンフーマンはだらしなく涎を垂らしていた。
普通はこうはならない。いつもなら首を太腿で固定されても何らかの方法で抜け出していた筈である。
ではなぜそうなったのか。理由は相手の女の股間にあった。股間からしたたるピンク色の液体がカンフーマンの鼻から
体内に入り彼の筋肉と精神を弛緩させているのだ。
「ウフフフ・・・我慢しなくていいのよ・・・。」
女が魅惑的な笑みを浮かべながら顔を足で挟んだままの体制でカンフーマンの股間に触る。
「うッ・・アア・・・。」
右手で陰茎をシゴかれ左手でツボを押されたカンフーマンはへたりこんでしまった。
丁度女がカンフーマンの上に馬乗りになっている体勢だ。

256 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/06(日) 15:03:36 ID:0SEqieiN0
「カワイイわね。ウブなのかしら?」
女はクスクスと笑いながら体を下にずらしカンフーマンの肉棒を手で握り口で咥えた。
「イイッ!あうッ!」
あまりの快感に声を上げるカンフーマンに女はさらなる責めを加えた。
舌で陰茎を丁寧に舐め唇で亀頭を吸う。道場内にはチャプン、チュポンッという音が響き始めた。
「逞しいアソコだ事。私だけじゃなくてあなたも私に触れて下さる?」
「喜んで。」
女はカンフーマンの顔の上に太腿を乗せた。カンフーマンがそれを舌で舐め手でやんわりと揉みしだく。
「アハッ くすぐったい。」
妖艶な笑みを浮かべ喜ぶ女にカンフーマンは欲情していた。いまや陰茎は反り返っており我慢汁も大量に出ている。
カンフーマンは道着の下を脱ぎ下半身を露にした。本番を始めるつもりなのだが女の胸に触れた所で動きが止まった。
「いくら何でも道場で・・・。」
「道場の規律は厳しいのでしょう?つらいのでしょう?今だけ忘れちゃいなさいよ。ねぇ?」
甘美な誘惑の声がカンフーマンの本能を刺激し精神をも痺れさせた。
ニンマリとした顔で涎をたらし完璧に性欲の塊となっている今のカンフーマンにその誘惑を振り切れる程の気力は無かった。
「イクぜ。」
カンフーマンが女の乳房を揉みしだき乳首を優しく舐める。
「ああッ!アアン!そこッ!はぁんッ!」
女の体が電気を流されたかの様にブルブルッと震える。
「気持ちいいかい?イカせて上げよう。」
カンフーマンがニヤリと緩んだ顔をして女に話しかけた。
「どうせならここでお願いします!」
女が自分の股間を指差して仰向けに寝転がった。本番だ。
「ああ・・・気持ちよくさせてあげよう。」
遂にカンフーマンの肉棒が女の膣の中に入った。
くすぐったさがカンフーマンの股間から体の上の方へと伝わっていく。
「はぁん!突いてぇ!気持ちよくしてぇ!」
「うおおお!」
カンフーマンが腰を動かして女の膣を突く。
「イッ・・・イっちゃうー!」
「あひゃああ!!」
自分の股間から白い液体がドピュッと出ると同時にカンフーマンは頭の中も真っ白になり何もわからなくなっていったーーーー

257 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/06(日) 15:04:08 ID:0SEqieiN0
霧が晴れた。滝の音が月夜に響く光景はどこかワビサビを感じさせるモノがあった。
月光りが二人の男女を照らしていた。
女は立ち上がった。何食わぬ顔で口を拭い前に歩き出した。
「モリガン様、殿方が眠っている時に夢を見せればいいのですね?」
「あなた達は優秀ね。一目見て理解出来るとはね。」
女達は去って行き後には男だけが残された。
一羽の蝙蝠が男の上に止まった。だが反応は無かった。
否、息をしていなかったのだ。今や男の体は干からび絶命していたのだからーー


【モリガン=アーンスランド@漫画版ヴァンパイアハンター】
状態 好調(カンフーマンからエネルギーを吸い取った)
装備 デイパック一式
思考 1参加者を全滅
   2ゲームのクリア
【セーラー戦士達@漫画版セーラームーン】
状態 サキュバス化
装備 デイパック一式
思考 1モリガンに従う

【カンフーマン 死亡確認】

258 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/06(日) 15:11:15 ID:0SEqieiN0
どうも。サキュバスの設定だとエネルギーを吸収できるのは相手が夢を見ている時のみ
なので夜間のエッチな夢を描いてみました。
一応モリガンは昼間でもそれなりにバトルは出来て強いんです。これからセーラー戦士達は
分散して1人ずつ参加者を刈って行く事になりますが彼女たちにエロスは似合わないと思うので
あくまでサキュバス化してパワーアップしたという事にして下さい。(筋力up等)
>>ふら〜りさん
裏の企み・・・主催者を倒す為の秘密の作戦をDIOが担う予定です。
ゾンビ・・・原作の設定だと夜しか活動できないので描きにくくなるので・・・作っても
1、二匹程でしょうか。


259 :作者の都合により名無しです:2006/08/06(日) 20:45:48 ID:XJQUUZhd0
しぇきさんが復活してくれたのに邪神さんが一時引退か。
うまくいかんもんだな。しかし、受験を成功して元気に復活してくれるのをお待ちしてます。

コテ氏、モリガンは確かに元ネタが淫魔だが、少し自粛してくれ。
小中学生も見ているだろうし・・

260 :作者の都合により名無しです:2006/08/07(月) 01:33:04 ID:tFh0g0IC0
>コテさんへ
そういう描写が書きたいのであれば、
どうぞエロパロ板へ行って下さい。

261 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/07(月) 02:25:21 ID:KTRns5C90
第十九話「3年Z組銀八先生 三時間目」





たとえ小さな斧でも、数百度これを打てば堅い樫の木も切り倒せる。(シェークスピア)


なに言ってんでィ。そんなもん使わなくてもコイツで一発でさァ(ガチャ)。(沖田総悟)


総悟くぅぅぅん!? なに教室でバズーカ構えちゃってるのォォォ!!?(近藤勲)






262 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/07(月) 02:26:08 ID:KTRns5C90
キョロキョロキョロ。
首を左右上下四方、視線を左右上下四方、教室全域に気を配りながら何かを探す男が一人。
この作品のツッコミ眼鏡――といえば理解してもらえるだろうか。志村新八である。
「あら新ちゃん、いったいどうしたの? そんな挙動不審な態度を取っちゃって。あ、私は新八の姉の志村妙。なにげにこの作品では初登場ですね。以後よろしくお願いします。で、どうしたの?」
「いや、ひょっとしたら今回本当にジョジョキャラが紛れ込んでいるんじゃないかと思って……ってか姉上、誰に言ってるんですかそのセリフ」
新八にものを尋ねたのは実の姉、志村妙。通称お妙さん。
容姿端麗の和服美人であったが、今回は学園編のため、セーラー服を着ていた。
姉だから当然なのだが、歳は新八よりも上をいっている。なのに同じクラスなのはどういうことか。
大丈夫。留年とかそんなんではないので大丈夫。よくある『制作上の都合』なので深く考えないで頂きたい。

それはそうと新八である。
前回がとんでもない夢オチであったため、今回もクロスオーバーで攻めるのではないかと警戒していたのだ。
いつどこに男塾塾生が紛れ込むか分かったものではない。ツッコミポジションに立つ者として、部外者の介入は是が非でも阻止しなければ。
そういえば、今回初めてクラスがまともだ。
この場合の『まとも』とは、クラスメイトのキャラクター性のことを言っているわけではなく、前回前々回に比べて人が揃っているという意味である。
先ほどの志村妙に始まり、本編では真選組メンバーを務めていた近藤くん土方くん沖田くん。さらにはその宿敵であるはずの桂くん。
マダオの長谷川くんに、まだ本編でも外伝でも未登場のヘドロくんやさっちゃんまでいた。
新八は内心で「ああ、このうち何人の人間がお話に絡めるんだろうなぁ」と不安に思いつつ、一つ一つの席に空条とかジョルノとかブランドーとかいう苗字の人物がいないか確認していく。
が、警戒していた矢先だった。

「ストーンフリー!」

263 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/07(月) 02:27:57 ID:KTRns5C90
教室内に、NGワードっぽい単語が飛び交った。
(なっ……部外者は既に教室内に? それもまさか第六部のキャラクターが乱入してくるなんてェ……!)
即座に声の方を振り向くと、そこには向かい合って言葉をぶつけ合う女子生徒が二人。

「ストーンフリー!」
「盗賊の極意(スキルハンター)!」

そこにいたのは、よく見慣れたクラスメイト。
一人は、ぐるぐる眼鏡を装備したいつものトラブルメーカー神楽。
もう一人はこれまた初登場、留学生のキャサリンだった。
キャサリンは凛々しい(男らしい)眉に厚ぼったい唇の、妙に顔の濃い女子。しかしそのビジュアル最大の特徴は、なんといっても猫耳にあった。
猫耳と言えば、普通は猫ないしは二次元美少女に備えられているものだが、キャサリン別に美少女というわけではない。どちらかと言えば、お近づきにはなりたくないビジュアルだ。
猫耳が猫耳として機能していない。萌え要素はプラスどころかマイナスに傾いている。まったくもっていらないオプションだった。
さて、キャサリンの紹介はこの辺にしておいて、本編に戻ろうと思う。

「って、なにしてんのあんたらァァァ!!?」
「なにって、スタンド使いごっこアルヨ新八」
「イマ銀魂高校デ一番トレンディナ遊ビナンダゼ! 知ラナイノカヨ!?」
ちなみに。カタカナ口調で言葉がやたら乱暴なのがキャサリンである。

「スタンドって、この時期に紛らわしいことしてんじゃねーよ! ってかキャサリンさんのそれはスタンドじゃなくて念能力だァァァ!!!」
「あー仕方ないね新八。スタンドはスタンド使いにしか見えないものアルから。新八は見えていないかもしれないけど、今ワタシの隣ではストーンフリーが激闘を……ゴハァ!?」
突然、神楽がぶっ飛んだ。
周囲の机をガッシャァァンと蹴散らし、豪快に転げまわる
「ば、馬鹿な……ワタシのストーンフリーがダメージを……!?」
「フッ……私ヲタダノスタンド使イト思ッテ油断シタナ!? 実ハ私ハスタンド使イデアルト同時ニ、念能力者デ聖闘士デ悪魔ノ実ノ能力者デ残虐超人ダッタノサ!!」
「な、なんだってェェェ!!? か、勝てるわけねぇよ父ちゃァァァん! ゴッハァァァ!!?」
キャサリンの思わぬ正体を知り、神楽は吐血して倒れてしまった。

264 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/07(月) 02:29:23 ID:KTRns5C90
「って、なんだそのふざけた設定はァァァ! 謝れ! 荒木先生と冨樫先生と車田先生と尾田先生とゆでたまご先生に謝れェェェ!!?」
新八がキャサリンにツッコんだところで、朝のホームルーム開始を告げるチャイムが鳴り始めた。

「うーっす、今日も元気に銀魂の時間だぞおまえら。って、なに朝っぱらから死んでんだ神楽。さっさと席に着け」
担任教師坂田銀八は、いつもの調子で教室に入場。
吐血して倒れている神楽にも平静を崩さず、何事もなかったかのようにホームルームを始める。

「あー、三回目にしてやっと全員集合かぁ。今回も夢オチとかだったら先生どうしようかと心配しちまったよ」
「その夢を見てたのはアンタだろうが」
新八の冷たいツッコミが入るが、銀時は無視してホームルームを進行する。
「さて、今日はみんに嬉しいニュースだ。なんと、この3年Z組に転校生がやってきた」
「えぇぇぇーーーーー!?」と驚く一同。
さすがの新八も、転校生とは予想していなかった。
いったい誰だろうか。本編を際置いて転校生=新キャラなど……オリジナルキャラだろうか。

(……ハッ)
考えていくうちに、新八はある最低の答えに行き着いた。
先ほどの神楽VSキャサリンのスタンドバトルが蘇る。

ガラッという音をたてて、教室に転校生が入ってきた。
「あー、紹介しよう。転校生の空条承太郎くんだ」
「やれやれだぜ」

「って、やっぱりJOJOかァァァ!!!」

265 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/07(月) 02:30:59 ID:KTRns5C90
今回も好き勝手やらせていただきました、一真です。
なんだかどんどんはめを外しているというか、文がもう小説として成りたたなくなってたような気がしてきました。
完結編ではもうちょっとまともな文章書きます。だからこればっかりと思ってもう少しお付き合いください。

一応このスレでは男塾とジョジョは需要あると考えてネタに走ってるんですが、本当についてきている人がいるか不安。
外伝の学園編は銀魂風味のいい話というよりパロディネタが多くなっていますが、やめろと言うならばすぐにでもやめる所存ですので。

次はもっと早い時期に現れられることを願って。
一真でした。

266 :一真 ◆LoZjWvtxP2 :2006/08/07(月) 02:39:29 ID:KTRns5C90
失礼。忘れ物です。

267 :作者の都合により名無しです:2006/08/07(月) 06:21:40 ID:HK+XOIeo0
>邪神さん
残念です。でもパソコンがブレイクしたのはともかく、受験は仕方ないですね。
人生での一大事なので。元気にお帰りになるのをお待ちしておりますよ。

>一真さん
お妙さんは18なのでギリで高3でなんとか?でもキャバ嬢だしなw
承太郎乱入って事で、なんとなく銀魂よりも太蔵を思い出したw
間違いなく作品内では最強のキャラですよね。神楽とかにいじられるっぽいけど・・


268 :作者の都合により名無しです:2006/08/07(月) 13:01:04 ID:ShYyaH4T0
一馬さん乙です。
男塾とジョジョは好きなんでどんどんプラスしてほしいです。
これってコラボになるのかな?そして一応、学園物なんだよな・・
あとゆでには謝らなくていいと思う。だってゆでだから。

あと邪神さん、早期の復活お待ちしてます。受験頑張って。

269 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/07(月) 17:02:46 ID:49SQ3L240
>>149より。

270 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/07(月) 17:03:47 ID:49SQ3L240
 朝早く、加藤が城を出る。朝食を調達するためだ。
 いつもは彼とほぼ同時に起きる井上だが、今はまだ城内で眠っている。先日の戦いでの
疲れが彼女を休ませているのだろう。
「今日は何にするかな……」
 調達といっても、この島で食糧に困ることはない。適当に歩いていれば、それだけで自
然の恵みにありつくことができる。
「よぉし、これとこれ……」
 名前すら知らない、図鑑に載っているかすら定かではない、色とりどりの果実を物色し
ていく。平和でのどかなひとときだ。
 しかし、この平和も長くは続かない。もう少し経てば試練が登場し、加藤と井上は戦火
に晒されることとなる。「これからは一緒だ」と約束したものの、やはり井上を巻き込む
のは避けたい。
「……やべ、いつの間にか結構歩いてたな」
 加藤は考えごとをしているうちに、すっかり城から離れてしまっていた。
「戻るか」

271 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/07(月) 17:04:42 ID:49SQ3L240
 加藤から遅れて三十分後、井上が目を覚ます。慌てて周囲に目を向けるが、すでに加藤
は城を出た後だった。
「しまった、寝過ごした……!」
 加藤を探すため、井上も急いで城を出る。
 草や葉っぱをかき分け、ジャングルを進む井上。まだ危なっかしいシーンもあるが、足
取りはスムーズだ。とはいえ、一向に加藤は見つからない。もう城に戻っている可能性も
ある。
「仕方ない、戻ろうかな」と、密林から突き出た城を見上げる。
 ところが、不意を突くようにあらぬ方向から声が飛んできた。加藤だ。
「よォ、井上」
「あ、先輩──」
 振り向いた瞬間、井上の中で呼吸を含むあらゆる動作が止まった。
 眼前に立っているのは、たしかに加藤そのもの。が、服装がまるでちがう。胸に“本部
神心”の文字が入ったまっさらな空手着を身につけている。どう考えても加藤ではないが、
声と造形は彼としか形容しようがない。
「先輩……?」
「俺だぜ、井上。神心会空手三段、加藤清澄だ」
「くっ!」
 反射的に井上は逃げを選択した。
 城に向かって駆け出す。この男が、今日先輩の相手になる男だと察した。
 残された男は、追うこともせず独りごちる。
「俺こそがホンモノだぜぇ、くっくっく」

272 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/07(月) 17:05:46 ID:49SQ3L240
 ちょうど、二人は城の入り口付近で鉢合わせた。今度ばかりは本物だ。服装から汗臭さ
まで、彼を構成する全てが本物だと物語っている。
「おぉ、起きてたのか」
「あっ、先輩っ!」
 穏やかでない後輩の様子から、異変を嗅ぎ取る加藤。両手に一杯だった果実を地面に置
き、わけを尋ねる。
「おい、何かあったのか?」
「そ、それが……」
 井上が説明しようとした時、彼女の後ろから声が放り込まれた。
「説明は俺がしてやろう」
 声の主は先ほどの加藤そっくりの男。
 非日常に対しての抗体はとっくの昔に身につけていた加藤も、これには驚いて目を丸く
する。決して人形などではない。鏡の中の自分よりも親近感を覚えてしまうほどの瓜二つ
ぶりだった。
「な、なんだ……てめぇは」
「俺は加藤だ」
 実に単純明快な回答だった。目の前の男もまた、加藤であった。
「ふざけんじゃねぇぞ、加藤は俺だろうが」
「ふざけてねぇよ。ただし、出身はちがうけどな。てめぇは向こうの世界からやって来た
加藤で、俺は武神によって生み出された新しい加藤だ」
「なるほど、ようするにてめぇが今日の“試練”ってワケだな?」
 さっそく殺気を流し出す加藤に、男が答える。
「あいにくだが、俺にとってもおめぇは“試練”だ。もしてめぇを討ち取りゃあ、俺が本
物として向こうの世界で暮らせることになっている。武神に従うのは気に食わねぇが、条
件は悪くねぇからな」
「面白ぇ。つまりこの戦いは、“加藤清澄”というベルトをかけたタイトルマッチってこ
とか。俺がチャンピオンで、てめぇがチャレンジャー……悪ぃが防衛させてもらうぜ」
「どうかな」
 服装以外は全く同じといってもよい二人に挟まれ、困惑する井上。しかし、そんな彼女
を置いてきぼりに、まもなく死闘は開始されようとしていた。

273 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/08/07(月) 17:07:26 ID:49SQ3L240
十八日目開始です。
これからも頑張ります。

274 :バーディーと導きの神〜つとむの理由〜:2006/08/07(月) 18:52:54 ID:zYwxxUPP0
「西?なんで西なんかに行くんだ?アーマヤーテは反対側じゃねえかよソシュウ」
その巨体を狭い高速浮き砲台に押し込んだ形となったシアンが航路に気づいて疑問を
口にする。
「ん。義伯父(おじき)が念話で知らせてきた。あの子が行くべき場所を思い出したらしい」
ソシュウが答える。
「記憶が戻ったんですね」
シアンを押しのけてバーディーも話しに加わる。
「らしいな……。しかし腑に落ちんな」
「なにがだ?」
「脱出があまりにも容易すぎることがさ」
腕を組んでソシュウ。
「仮にも王都だぜ。術者の数千人はいるはずだ。なのに反撃がまったくない。おかしいと
思わんか?」
「んー。大佐を見て手を出しかねてんじゃねえか?」
シアンが適当な理由をつける。。
「あの竜人の人ね。……でも根拠は薄いように感じるけど……」
特捜の勘で意見を述べるバーディー。
「バーディーの言うとおりだな。俺はわざと泳がされているような気がする。あの子、リュ
ミールの目的を知るためにね……。ほら、感じないかシアン、気配を?俺たちを森から
ずっとつけてきている何者かの視線を……」
真顔で言ってくるソシュウに、目を閉じてじっと気配を探ってみるシアン。
「……別に感じねえぞ」
これまた真顔で言った。
「かーっ!エセ魔導士!」
鈍いシアンに呆れるソシュウ。途端にシアンが怒り出す。
「なんだと!」
「エセだからエセと言ったんだ!」
「ぬおっ!もう一度言ってみろ!ただじゃおかねえ!!」
「エセ!エセ!」
「二度も言いやがったな!許さん!!」

275 :バーディーと導きの神〜つとむの理由〜:2006/08/07(月) 18:54:23 ID:zYwxxUPP0
とうとう狭い高速浮き砲台の中で暴れだすシアン。操縦席のシドガーがやめてくれーと
悲鳴を上げる。
『呑気な人たちだなあ』
「つとむほどじゃないでしょ」
一人蚊帳の外に立ってバーディー。つとむの感想にも皮肉で答える余裕もある。
「それにしても、巡査部長まで来てるとは思いませんでした」
「ま、それについては色々とね」
バーディーの隣にあった得体の知れない装置の上に乗っていたキデルは、ビスケットの
ようなものを齧りながら言った。どうやらこの機体の糧食をくすねたようだ。
「なんですか、それって?」
バーディーが聞くが、キデルは手のひらをバーディーに向けることで押し止める。
「あー、君たち。騒いでるところを悪いが、ちょっといいかな?」
バカだアホだの低次元なケンカになりつつあった現場に割って入って、キデルがみんなを
呼び止める。
「なんだネズミ野郎」
ソシュウの額にアイアンクローを決めていたシアンが振り向いて失礼なことを言った。
しかしキデルは気にせずに、その先の話を続ける。
「先ほどから聞いていると、この乗り物はアーマヤーテへと帰還するのではないとみたが、
それは本当のことかな?」
「ええ。どうやら反対側の西方面へ向かうようです」
シアンのぶっとい指を引き剥がしながらソシュウが答える。
するとキデルは困ったように見える仕草をする(表情はよく分からない)。
「それはまずいな……」
「なにか事情でも?」
ソシュウが真顔になって尋ね返す。
キデルは得意の人差し指を立てて喋る姿勢をとって説明する。
「私が牙炎殿に便乗してここまで出張ってきたのは、実はバーディーをアーマヤーテの氷牙
殿の家に連れもどすためだったのだよ」
「えーっ!」
『えーっ!』
と、声を上げたのはバーディーと頭の中のつとむだけだった。

276 :バーディーと導きの神〜つとむの理由〜:2006/08/07(月) 18:55:39 ID:zYwxxUPP0
「どういうことですか巡査部長?この忙しいときに……」
バーディーが珍しくうろたえるような声を出す。
「忙しいのはこちらの方々の事情だ。我々のほうは、君からの宇宙船との交信が途絶えて
丸一日以上経ち、それなりの対応策を立てなくてはいけないのだよ。分かるね、バーディー?」
対してキデルのほうは冷静そのものだ。
「そ、それは、交信が途絶えたのは知っていますけど、今はそれどころじゃ……」
「バーディー。私たちの最終目的はなにかな?」
キデルはバーディーへの答えの代わりに問いを用意した。
バーディーはしばし考えてその答えを返す。
「テロリストのクリステラ・レビの逮捕です」
「正解だ」
そこでキデルは一拍間を空ける。
「そこでだ。その最終目的を完遂するために、この星に来てしまった私たちがまずしなければ
いけないことはなにかな?」
また考えるバーディー。
「……地球へ帰る手段を見つけることです」
言いにくそうに答える。
「また正解。……その上で問うよ。君はその手段を探す努力をしてるかな?」
キデルはあくまで無表情に見えた。
ソシュウたちもじっと黙ってことの成り行きを伺っている。
「し、してません……」
バーディーはバツが悪そうに答えた。
「そのようだね。君は目の前の事柄に執着しすぎて、私には我々の本来の目的を見失ってる
ように見える」
キデルはぴしゃりと言いつけた。
「そこで私は君を迎えに来たのだよ」
そう言って今度はソシュウのほうを向く。
「ソシュウ中佐殿。悪いが我々を近くの森にでも降ろしてもらえないかな?」
「巡査部長!」
この申し出にはバーディーが割って入る。

277 :バーディーと導きの神〜つとむの理由〜:2006/08/07(月) 18:57:10 ID:zYwxxUPP0
「この人たち、いえ、リュミールちゃんにはなにか行わなければならない使命があるよう
です。そのために命まで狙われています」
「しかしそれはこの星の人々の問題だ。連邦捜査課の我々の管轄の範疇ではないよ」
「でも!私はそれを……」
『があっ!代われバーディー!』
「なっ!」
いきなり頭の中で響いた大声に驚くバーディー。
『お前の論理じゃどうしたってキデルさんにかないっこない!ここは僕が言うから代われ!』
「つとむ……」
いつになく語気の荒いつとむの感情の意図が分からず、逡巡するバーディー。
『いいから今すぐ代われ!』
再度頭の中に響いた怒声に躊躇はしたが、バーディーは体を入れ替えた。
途端に驚くソシュウたち。
今目の前にいた美貌の女戦士が、これまたまるで力を持っているようには見えないひ弱な
少年の姿に変容したのだ。驚くなというほうが無理だ。
しかしつとむは周りのそんな状況を無視して、激しくキデルに詰め寄った。
「あんたなあ!自分たちのことしか考えてないのかよ!」
「つとむ君、今は君の出る幕ではないよ」
キデルの態度はにべもない。しかしつとむは食い下がる。
「いや!違うね!あんたたちはいつもそうだ!地球じゃ千明(ちぎら)のことを僕たちの問題だと
知らん顔で、今度はこの星に来たらザンたちのことを『この星の人間の問題』だ?この星の
人間の協力もなけりゃメシさえ困りそうなくせしてバカなことをゆうなあっ!」
つとむはシアンでさえ驚くような剣幕でキデルにまくしたてた。
「君は一つ忘れていることがある。我々は連邦法に縛られている捜査官なのだよ。民間人の
それとは違う」
「じゃあなにか?氷牙さんとこでメシご馳走になってこの星の情報をもらって、私たちは帰る
方法を探すから面倒ごとはそちらでどうぞってか?」
「そこまで言ってはいないよ。ちゃんと恩には恩で報いることぐらいのことはする。無関心で
いるわけではない」


278 :バーディーと導きの神〜つとむの理由〜:2006/08/07(月) 18:59:05 ID:zYwxxUPP0
「じゃあ今までの恩を返してやれ!ザンとリュミールは困ってて、命を懸けて自分のする
べきことをしようとしてる!僕やバーディーはそんなザンたちを見捨てない!僕はあんた
たちとは違う!バーディーにはザンたちの助っ人をやらせる!これは僕の意思でもあり
バーディー本人の意思でもある!連邦法なんかクソくらえだ!そんなもんがここでなんの
役に立つ?ここじゃ僕たちみんなただの異邦人なんだよ!!」
はあはあと肩で息を荒くしながら言ってのけたつとむ。これ以上言うことはないのか、黙っ
てキデルを睨んでいる。
「そうか。それほど意志は固いか……。バーディー、ちょっと出てきてくれ」
キデルはふうとため息をつくと、バーディーを呼び出した。
「あっこら……」
つとむが抗議するいとまもなく、外見がバーディーに戻る。
「今つとむ君が言った言葉に同意するのだね?」
バーディーは思いつめたような表情で切り出す。
「はい……。あの子、リュミールちゃんの身には千明君と同じように明らかにルアイソーテ側
から一方的に不正義が行われています。アーマヤーテでの恩を返すためにも、また人道的
見地からも、私たちの介入は連邦法の感知するところではない……、と思っています」
そこで一旦言葉を切り、バーディーはキデルを見つめた。
「それになにより私には、あの子たちに関わった以上、あの子たちを見捨てることなんて
できません!」
「よく言った!」
上がった声に、そちらのほうを振り向けばシアンがにやりと笑っている。
「どういう事情だが細けえことはわからねえが、大食い姉ちゃんの言うとおりだぜ!俺だって
ここまで関わっちまった以上、抜けることなんて考えられねえぜ!」
言って、ガハハと豪放に笑う。
「お前は能天気でいいよ」
ソシュウがその大雑把加減に呆れる。
キデルはもう一度ため息をついた。
「バーディー、やっぱり君はメギウス警部の言ったとおりの人物だね。いいだろう。つとむ君の
言ったとおり、ここでは連邦法も屑篭の中のゴミ同然だ。ザンとリュミールに協力して、その
目的を成し遂げてやろうじゃないか」
「巡査部長!」

279 :バーディーと導きの神〜つとむの理由〜:2006/08/07(月) 19:03:50 ID:zYwxxUPP0
バーディーの表情が目に見えて明るくなる。
「俺っち一人が悪者扱いされるのもしゃくだしよ。後のことは後になって考えようじゃねえか」
キデルは最近お気に入りの時代劇の口調を真似ながら言うと、懐から小さな携帯端末を出す。
「こんなこともあろうかと思ってよ。宇宙船から信号が途絶える前に予備のエネルギーを
確保しておいたんでえ。どうせおめえっちのことだ。後先考えず無駄弾撃ったんだろう?」
『なんだよ!最初からお見通しじゃねえかよ!』
事の成り行きを見ていたつとむが不満の声を上げる。これでは自分のぶった演説の意味がない。
「いや、つとむのおかげよ。つとむが言ったあの『異邦人』って言葉が巡査部長を動かしたのよ。
ありがとう」
キデルからエネルギーの補充を受けながら、バーディーは感謝の言葉をつとむに送る。
『ホントかよ……』
まだ悪態をつきながらも、まんざらでもなさそうなつとむ。バーディーはふっと小さく笑った。
「しかしなんだな。さっきの少年。あれも『君』なのか?」
どうやら落ち着くところに落ち着いたと見たソシュウが、先ほどのバーディーの『変身』のことを
興味深げに尋ねてくる。
「違いますソシュウさん。さっきのは、私が地球という星で誤って殺してしまった千川つとむという
少年の精神を私の体の中で生かしているので、彼の体の修復が済むまで体の交換ができるよう
にしてあるんですよ」
「修復?」
「ええ。彼の体は私たちの世界の技術で再生されます。そういった技術がある、とだけ思っていて
ください。ここではあまり意味がありませんから」
「へえ、あんたたちの世界ではそんなこともできるのか……。マジで凄いな」
素直に驚いて感嘆するソシュウ。シアンは話についていけないようで黙っている。
「私には、こっちの人たちが使う『術』のほうが凄いと思いますけどね。瞬間移動できたり、空飛ん
だり。私たちには考えられませんよ」
「そうか?まあ俺たちゃプロだからよ」
シアンが照れくさそうに言って大声で笑う。

280 :バーディーと導きの神〜つとむの理由〜:2006/08/07(月) 19:04:31 ID:zYwxxUPP0
「なんでお前が威張るんだよ」
転送術も飛行術、浮遊術も使えないくせにと呆れながらソシュウがシアンのわき腹を
こずくが、頑丈なシアンはそれを屁とも思わない。
そんな二人の仲の良さをうらやましく思いながら、バーディーも一緒になって笑った。
こうしてようやくバーディーたちはアーマヤーテの本当の仲間となったのだった。

281 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/08/07(月) 19:20:28 ID:zYwxxUPP0
千川つとむ君、最初で最後の出番かな?

人物設定その14(鉄腕バーディーより)

・クリステラ・レビ:バーディーの世界では名うてのテロリストとして銀河中に
           名の知られたアルタ人の男。
           現在は地球の日本に「浄火学館」という新興宗教団体に
           その身を隠して暗躍中。

・千明和義:つとむのクラスメートで千年以上前に漂着したアルタ人難民の末裔。
       本人はそのことを知らない。
       「酔根草」という植物から抽出できる一種の麻薬によって、「獣化現象」
       と呼ばれる化物へと変身する。
       それによってとある事件に巻き込まれ、現在はその身を隠している。
       つとむが怒ったのは、彼の事件が地球内の出来事と言われ、連邦特捜課が
       積極的に動かなかったため。

>>250さん
バーディーは「いい人」ですよ。
>>251さん
そういっていただけるとありがたいです。
>>ふら〜りさん
リュミール、本格始動です。

282 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/07(月) 19:34:06 ID:teyJnNQx0
MUGEN バトルロイヤル第9話 正義超人と人造人間
古ぼけた寺が建っていた。壁にはツタが生えており数世紀程前に建立された様に見えた。
寺の階段に1人の金髪の女が腰掛けていた。誰かを待っている様でもある。
「悪い悪い。18号さん。見てきたよー。」
女に話しかける男が歩いてきた。タイツと筋肉で身を覆っている。
「どうだった?万太郎。誰かいたか?」
18号と呼ばれた女が質問した。
「今の所誰も。この島って数時間程あれば一週出来そうだけど皆散らばってるのかな。」
万太郎は事もなげに答えたが内心不安だった。
どこにマーダーがいるのかわからない。主催者の居場所も脱出の方法もわからない。手がかりはゼロである。
「万太郎。言っておく事がある。もしこの世界に“コントローラー”があるのならそれを破壊して欲しい。」
「・・・なんでだい。」
「私は人造人間だ。アレを使われたら私の機能は停止する。」
それは18号にとって非常に大きな不安材料だった。機能停止、つまりスリープ状態になり全く動けなくなる。
再起動の方法は再度コントローラーのボタンを押す事。それしかない。
他にも彼女の心配事はもう一つあった。もし自分がリタイアして元の世界に戻れなければこの世界での惨劇を伝える人間はいなくなり
ドラゴンボールで生き返らせる事は出来ない。
生き残る事を優先するならば参加者を全員抹殺し最後の1人になればいい。だが自分は無益な殺生は好まない。
「わかった。見つけたら確認するよ。」
万太郎が伸びをして言った。超人という人間を超えた存在の彼には疲労は無縁のものらしく表情には余裕が現れている。
「ッ!!誰だッ!」
突然18号が大声を上げた。

283 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/07(月) 19:34:57 ID:teyJnNQx0
どうやら誰かが接近したらしい。万太郎は警戒して周囲を見回した。気配はする。
だが姿は見えない。森林の中に身を潜めているのだろうか。
「心配しないでくれ。私達は敵では無い。」
林の中から1人の長身の男と金髪の女が現れた。男は黄色いパーカーに同色のズボン、女はセーラー服に似た出で立ちである。
「名を問おうか。」
18号が構えながら質問した。キッと相手を睨み既に臨戦体勢である。
「私の名はDIO。こちらのお嬢さんはセーラームーン。」
(スレンダーだなぁ。好み寄りだな。太腿・・・レオタードかな?)
万太郎がムーンを見て心の中でほくそ笑んでいるのをよそに18号とDIOの間の空気は重かった。
「初対面で良くそんな事言えるね。油断させて後ろからバッサリって魂胆じゃないのかい?」
18号が手に気弾を発生させて挑発した。油断は出来ない。何しろ周囲を調査しても見つからなかったのである。
そうでなければ万太郎が遭遇していたハズである。
「では素性を明かそう。私は吸血鬼で夜にしか活動出来ない。こちらのお嬢さんは普通の人間だ。」
DIOが表情を崩さずに情報を提供した。
相手に信用されないのならこちらが譲歩すべきだと判断した結果だった。
「へぇ・・・夜はアンタの時間ってワケかい。逆を言えば昼間は動けないって事か。」
「18号さん。ゲームから抜け出るのには人手が必要ではないでしょうか?ならこの人達を信じても・・・。」
空気の重さを見かねて18号を説得する万太郎だったがそれは却って18号の怒りを買うだけだった。
「アンタ・・・本気で言ってるのかい?もし裏切られたらどうするんだい!」
「その時は俺がなんとかしますよ。あなたを守ります。」
ベシッという音がした。18号が万太郎の頬をはたいたのだ。
「守るだって!?協力するとは言ったけど私はそこまで弱くないよ!」
「18号さん。レディーや子供を護るという事は紳士としては当然では無いかね?彼の気持ちは汲むべきだと思うが。」
DIOがため息をつきながら意見を言った。
18号の態度は明らかに焦っている様である。万太郎は仲間の為に戦うと言っているのだ。
「そんな事言われたって嬉しくも何ともないんだからねッ!私は強いんだからねッ!」
そう言うと18号はプイッと横を振向いて寺の中に入っていってしまった。
後に残されたのは打たれた頬を押さえる万太郎とDIO達だった。
「いいんですけどDIOさん達も僕たちに協力してくれませんか。交換条件で。脱出したいのはそっちも同じでしょう?」
万太郎は考えていた。キン肉王族の人間達が使えるフェイスフラッシュ。サキュバスというのは彼は昔本で読んだ事があった。
女の形をした存在で男からエネルギーを吸い取るとかどうとか。
瀕死の人間を再生させたりする事が可能なフェイスフラッシュを自分が使えればセーラームーンの仲間達を浄化できるかもしれない。

284 :作者の都合により名無しです:2006/08/07(月) 19:35:12 ID:faF9iwcV0
>一真氏
俺はこういうごった煮みたいな感じが好きだな。承太郎も男塾も好きだし。
キャラ的に、絶対に銀玉の連中とは相反するけど、だからこそ何が起こるか楽しみだ。

>サナダムシ市
いろいろ考えるなあ・・。加藤対ニセ加藤ですか。ヒーローには偽者がつき物ですね。
どうせならもう少し強いのを、とも思うがw 井上とのコンビがすっかり板についてきた

>17氏
つとむって確か主人公じゃなかったけ?w最初で最後ですか。幸薄いキャラだなあ・・
バーディ、女なのに男気ありますね。ヒーローっぽいヒロインって感じだ

285 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/07(月) 19:35:40 ID:teyJnNQx0
(そんでセラムンちゃんと仲良くなっちゃうんだもんねーッ!グフフ。)
実に単純な思考であった。女の子にいい所を見せればモテると思っているのだ。
「うむ。後は君が18号さんに上手く話を付けてくれないか。心強い味方が2人も増えるのだ。」
「おい!こんな物を見つけたぞ!」
突然寺の扉が開き18号が顔を出した。手には白い包みを持っている。
中には発信機らしきモノと5粒の豆が入っていた。
「発信機はわかりますけど・・・この豆って非常食なんでしょうか?」
セーラームーンが指をさして疑問を述べた。
「これは仙豆と言うのよ。私の元の世界での回復薬。一粒食えばどんな怪我でも治るし暫くはお腹が減らない。病気は無理だけどね。」
「5粒・・・誰か1人は二粒持つ事になるのだな。ムーン君、君はニ粒持ちたまえ。私は再生能力があるので不要だ。」
DIOがムーンに自分の仙豆を渡した。
「私は人造人間なのでいらない。これが効くのは生身の人間のみだ。」
18号は万太郎に仙豆を渡した。
「18号さん。イライラは良くないですよ。焦る気持ちはわかりますが深呼吸するなりしてリラックスした方がいいですよ。」
「あ、あんたにそ、そんな事言われたなくても自分で出来るんだからねッ!し、心配しなくていいんだからねッ!」
18号が真っ赤な顔をして叫んだ。怒りというより恥ずかしいのが表に表れた感じだ。
DIO達三人は18号の妙な態度に戸惑いを覚えながらも脱出および打倒主催者の為の作戦を立て始めた・・・。


286 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/07(月) 19:36:13 ID:teyJnNQx0
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
状態 普通
装備 ビッグシューター@鋼鉄ジーグ in ホイホイカプセル@ドラゴンボール デイパック一式
思考 1主催者を倒す為に仲間を集める
   2ゲームからの脱出
【セーラームーン@美少女戦士セーラームーン】
状態 普通
装備 仙豆 2粒 デイパック一式
思考 1主催者を倒す為に仲間を集める
   2仲間達を救う
   3ゲームからの脱出 
   4DIOに従う。
【18号@ドラゴンボール】
状態 イライラ
装備 デイパック一式 発信機
思考 1主催者を倒す
   2元の世界に戻った後ドラゴンボール使用で犠牲者を生き返らせる。
   3ゲームからの脱出
【キン肉万太郎@キン肉マンII世】
状態 普通
装備 デイパック一式 仙豆 三粒
思考 1主催者を倒す
   2ゲームからの脱出

287 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/07(月) 19:37:47 ID:teyJnNQx0
>>259さん ,>>260さん
わざわざ注意していただけるとは・・・バキスレには真面目な方が多いですね。
今後は直接的なエロスでは無く恋愛シーンを描く事にします。


288 :作者の都合により名無しです:2006/08/07(月) 19:55:15 ID:faF9iwcV0
>コテ氏
あなたが楽しくやってくれればいいけど、エロとかは読んでいる人が嫌悪感とか
持つ場合があるから避けた方がいいかもね。恋愛シーンと18号の活躍を期待してます。


289 :作者の都合により名無しです:2006/08/07(月) 21:58:22 ID:64OcC8yF0
>やさぐれ獅子
偽加藤が出てきたということはこの話も終盤か?
なんか井上さんといい雰囲気になってきたし。
出来れば、他のバキキャラの登場もお願いしたいな!

>鉄腕バーディ
RPGでいうと、バーディは戦士か武闘家の役か?
すいません原作知らんもんで。掛け合いがいいですね。
テロリストとか色んな犯罪者が出てくるな。

>MUGENバトルロイヤル
こういう展開ならいいかもね。流石に過度のエロはイクナイ!
ちょっと18号とかDIOとか原作とイメージが
離れてる機がするけど、期待してますので頑張って。

290 :魔女(最終話) 魔女の城:2006/08/08(火) 00:59:59 ID:cmSH58Hj0
 王女の結婚式を一週間後に控えたその日、魔女は現れた。
 魔女は、王女の城より倍は大きい城を、よりによって嫁入り先の城との中間地点に“置いた”の
だった。
 その城――いや、“巨大要塞”は、堂々たる佇まいで、まるで何百年もの昔からそこに建ってい
たかのようであった。

 そして、遂に結婚式前日。
 城下町はもぬけの殻となっていて、事情を知らない人から見れば、この上なく奇妙な様子であっ
ただろう。
 町の小さな民家のドアが、面倒臭そうな音を出した。
 中から出てきたのは、みすぼらしい青年だった。
 青年は欠伸を一つ、周りをキョロキョロと見た。それから、ああ、と間の抜けた声。

 町の住民達は、魔女の城のある平野を取り囲むようにしていた。
 魔女が現れてからというもの、この平野は戦火で焦げ、爽やかさなど微塵もなくなっていた。
 王女側も、王子側も、魔女の城を協力して攻撃していたからだ。
 東西両側から挟撃すれば、このような孤立した城、一日足らずで落ちる――両陣営とも、そう確
信していた――が。
 魔女はやはり、魔女であった。
 魔女の城からは、人間が今までに見たこともないような、存在さえも知らなかったような摩訶不
思議なモノが大挙して登場したのである。
 空から兵士達に降ってくる、コウモリ型爆弾。
 地を這う風車型カッター。
 城の屋根が分離して、鎖鎌の分胴みたいに回転。
 矢も通さぬ強固な鱗を持つ火吹き竜――
「魔女を生け捕りにしたい」
 そう言ったのは、王女を嫁に貰う予定だった、隣国の王子である。
「妻となる王女への、いい手土産になる」
 王子は結婚式三日前の戦闘で、風車型カッターに轢かれて不幸にも命を落していた。
 こうなれば、隣国の王に遠慮はない。

291 :魔女(最終話) 魔女の城:2006/08/08(火) 01:00:40 ID:cmSH58Hj0
 実は、魔女が現れたその日から、領内にあるだけの火薬を掻き集めて、作れるだけの爆弾を作っ
ていたのである。
 結婚式の前日“であるはずだった”今日、王は全ての爆弾に火を点け、魔女の城に投げ込む気だ
った。

「魔女って、そもそもなんなんだ」
 魔女の城を眼下に見据える、小高い丘の上。
 誰もいないここで、乗り遅れた青年は、呟いていた。
「不思議なものを沢山出すから魔女だ、というのなら、良く当たる占い師や、訳の分からないもの
から役立つ物体を作り出す錬金術師とはどう違う? 自分達に不利益で、尚且つ女だから、魔女っ
て言っているだけじゃあないのか。本当に、不思議だ……」
 青年はとても目のいい男だった。彼のいる位置からは、魔女の顔が良く見えた。もっとも、彼以
外の人間では、遠すぎて見ることは叶わないだろうが。
「…やっぱり」
 青年は、丘を降りた。

 最初の爆弾に火が点いた。
 一投目は、王子を亡くしたばかりの王が、恨みを込めて。見事、城の中に落ちた。
 爆発音。建物を破壊する音が続けて聞こえた。
「…一斉に投じよ!!」
 王の声に応え、次々と爆弾が投じられた。空が一瞬、黒で覆われるほどの量だった。
 次々と、破裂――しない。
 音が、何もしない。
 まるで、時が止まったかのようだった。
 止まった時は、急激に動き出す。
 一人の兵士が叫び、城に背を向けて必死の形相で逃げ出した。
 そして、他の兵士もそれに呼応するかのように続く。
 王が叫ぶ、しかし流れは変わらない。
 王は空を見上げた。空が再び黒く染まっているのに気付いた時には、もう遅かった。
 投げた爆弾が、全て戻ってきたのだ。火は点いたまま――
 それから数秒後、阿鼻叫喚となったのは言うまでもないだろう。


292 :魔女(最終話) 魔女の城:2006/08/08(火) 01:01:21 ID:cmSH58Hj0
「ひでぇ……」
 王女側の民達は、息を呑んだ。
 前方で、死のダンスが演じられていた。
 狂ったように、死が平野を支配する。
 それをただ見ている。
 嘔吐する者もあれば、感情の昂りを抑えられず、握った手を振り回す者もいる。人はそれぞれだ。
 ヒゲ面の小柄な男が、惨劇から背を向けた。
「こんなの、見てられっかよ……頭がおかしくなっちまう」
「いや、あれは当然の末路じゃないか」
 ヒゲ面にこう返したのは、丘を降りてきた青年だった。
「攻撃されたら、反撃しないわけにはいかないだろう。仮にアンタが理不尽に殴られたとして、何
も仕返ししないかい?」
「なんだオメェは?…元はと言やあ、あの魔女がこんな道のど真ん中に城なんざ置くのが悪いんだ
ろうが。姫様が、道を外れて結婚式会場の相手方の城まで赴くような、融通の利く方だと思う
か?」
「道くらい、ずらしてあげればよかったんじゃないか? 魔女があそこに住みたいというのだから、
そこは尊重してあげるべきだったんだ。そうすれば、こんな惨いことにもならなかったし、王子様
が死ぬこともなかった」
「そんなこと、俺に言って何になる。言いたいことがあるなら、直接姫様に言ってやったらどうな
んだ。今ならこの辺にいるんだろ」

 姫は、王族用のテントの中で、父である王の胸の中にいた。
「ああ、お父様……使えない西の凡愚なる王子と王は、本当に何の役にも立たず神の元へ……」
「おお、我が娘よ……分かっておる、西の国になど、最初から期待はしておらんわ。今回の挙式と
て、お前がどうしても結婚生活を体験してみたいと言うから、ワシは渋々だったのだ。お流れとな
って、気分がよいわ」
「お父様、私はどうしても……」
「それも、分かっておる。既に、南の国の王に使いは出しておるわ。南の国は格は低いが、王子は
筋骨隆々、公明正大な男だと聞く。はじめから南の王子にしておけばよかったのう」
「でも……」
 姫は、いかにも泣きそうな声で。演技である。

293 :魔女(最終話) 魔女の城:2006/08/08(火) 01:02:54 ID:cmSH58Hj0
「どうした、姫よ」
「今度はあの魔女、南の国への道の真ん中に城を移動させるかもしれないと思うと……あの化物は、
きっと、私の邪魔をしたいのです……」
「分かっておる。魔女は、ワシが必ず潰す。ワシは愚かな西の王子のように、生け捕りになど拘ら
ん。城を壊すだけなら、訳はない」
「でも、魔女は恐ろしいのです。私は死んでも構いはしません。ただ、お父様にもしものことがあ
れば、私は……ううっ」
「おお……愛しき娘よっ」
 王は見事嘘泣きに騙され、王女を力強く抱き締める。
「王様」
 カーテンの外から、兵士の声。
「なんじゃ」
 パッと王女から離れる王。
「王様と王女様に一言物申したいという男が……」
「なんだと? そのような者、打ち首にでも処しておけ」
「魔女への対策を持っているそうですが……」
「…なに?」

 青年は、カーテン越しに話し始めた。
「魔女に武力は逆効果。怒りを買い、さらなる犠牲者を増やすのみ……」
「ほう、ならば、どうすればよい。策はあるのだろうな? なければ打ち首に処すぞ」
「申し上げれば、聞いて下さいますか?」
「よかろう。貴様の策などなくとも勝てるが、犠牲が少ないにこしたことはないからな」
「では、申し上げます……今すぐ、兵を一人残らず撤退させて下さい。私だけで、魔女を収めて参
ります」

294 :魔女(最終話) 魔女の城:2006/08/08(火) 01:03:30 ID:cmSH58Hj0
「…できるのか?」
「できます」
「何千もの兵士で敵わなかった魔女に――か?」
「ええ」
「…どう思う? 王女よ」
「いいのではないかしら。この男一人が死んでも、何も影響がないもの」
「うむ、では、貴様に任そう。ただし、もし失敗すれば、一族郎党打ち首に処すぞ」
「…有難うございます」
「望む褒美などはあるか?」
「…私が望むものは――」

 青年は、魔女の城の門の前に立っていた。
 武器は何もない。丸腰で、手を上げながら門の前まで行ったのだ。
 兵士は既に、全て帰還した。
 民達は、誰一人として帰ろうとせず、バカな男だと罵り嘲り笑っていた。
「魔女相手に一人でなんとかできるとでも、本当に思っているのかねえ……バカな男だよ」
「目の前でとんでもないの見ちゃったから、頭おかしくなっちゃってるんじゃねぇの?」
「門の前まで行って……まさかノックでもするんじゃないだろうねえ」
 した。
「魔女よ! 私は何一つ武器を持ってはいない。貴女に対する敵意も殺意も持っていない。どうか、
この固く厚いドアを開けてくれ! 私では非力で開けられないのだ」
 数秒後、ドアが軋み、少しずつ開きだした。
 男は、全て開くのを待ってから、中に入った。
 男が入ったとたんに、ドアは先ほどの何百倍ものスピードで閉じた。
 見ていた全ての者が、ぽかんとしていた。
 何千人もの兵士の犠牲があっても入れなかったものを、一人の男が――


295 :魔女(最終話) 魔女の城:2006/08/08(火) 01:10:00 ID:cmSH58Hj0
「…貴女が、魔女?」
「そうよ」
 近くで見ると、やはり美人であった。
「こんにちわ」
「あ……こ、こんにちわ」
 魔女はランプを持っていた。城の中はやはり、薄暗い。
 と思いきや、奥のドアを開けたところは、光に満ち溢れていた。
「窓なんて、ないのに」
「所々、仄かに光っているでしょう? あれが、周りに光を伝達させて、そして増幅されて……こ
れ程の明るさになっているというわけなの。凄いでしょう?」
「魔法で、造ったの?」
「魔法? 貴方、何を言っているの?」
 そうだった。青年は、自分を責めた。
 やっぱり――この女性は、ただの人間だ。
「…ゴメン、貴女は、錬金術師かなにか?」
「違うわ。私は、科学者。あんな曖昧なモノではないわよ」
「科学……」
「そう、科学。認めたがらない頭でっかちも多いけどね」
 ふふ、と頭の固い連中を思い出しながら、魔女は嗤った。
「外の皆は、貴女が魔女だと言ってる」
「…貴方もそう思ってた?」
「まあ、皆が言ってたからね……でも」
「…でも?」
「丘の上から貴女の顔を見て、気付いたんだ。“魔女は人間なんだ”って。当たり前だよね、考え
れば……魔女狩りなんて、混乱を治める為のスケープゴートに過ぎないモノだって、もうとっくに
僕らは知っているはずなのに」
「でも、貴方は気付いてくれた……」
 魔女は、青年の手を握った。魔女の手はゴツゴツしていた。
「硬い……」
「そうね」
 しまった。青年は思わず呟いてしまった自分をまた責めた。

296 :魔女(最終話) 魔女の城:2006/08/08(火) 01:11:05 ID:cmSH58Hj0
「女性に、失礼なことを」
「いいのよ。そう言ってもらえるのはむしろ嬉しいわ。さあ、上に行きましょう」
 階段を上る。遥か上の方に、大きな布のようなものが張られているのに、青年は気付いた。
「…もしかして、爆弾はあれで跳ね返した?」
「そうよ。反発力の強い素材で作ったの。何発か跳ね返し損ねて、城が傷ついちゃったけど、丈夫
にできてるから、このくらいなんてことはないわ」
「地面を転がる巨大風車や、空を飛ぶコウモリとかはどうやって?」
「原理を説明するのは大変だから言わないけど、車輪は中央部が基軸となっているでしょう? 風
車カッターも、根本的にはそれと同じ。コウモリは、ただの玩具よ」
「…玩具?」
「私、子供の頃からコウモリが好きでね……おかしいと思われるかもしれないけど」
 青年は、首をブンブン振った。
「…それで、コウモリ型の機械人形を沢山作っていたの。それに爆弾をくっ付けただけ」
「好きなのに、爆弾にしちゃったの?」
「また作れるし、外の人達を脅かせるかなと思って……」
 …そして、退いて欲しかったんだ。
 最上階が近付いてきた。
「どうしても訊きたいことがあったんだ。いいかな?」
「どうぞ」
「どうして、こんな開けた平野の、それも道の真ん中に城を置いた? 道同士で繋がれた国の姫と
王子が挙式を上げるなんて、貴女は知らなかったかもしれないけど……国の上に立つ人間は、大抵
理不尽で身勝手だから、自分達の都合の良いようにしたがるんだよ。ここから貴女が移動すれば、
問題なかったのに」
「移動したくても、できない理由があるの。もっと言うと、私はここに居たくて居るわけじゃない。
できることなら、移動したいわよ。でもまだできないの」

297 :魔女(最終話) 魔女の城:2006/08/08(火) 01:11:49 ID:cmSH58Hj0
「どうして?」
「物を動かすには、エネルギーが必要なのよ。小さい物を動かすのでも、かなりのエネルギーが要
る。増して、この巨大な城を動かすには……」
「…つまり、こういうことかな? ここに着陸したのは、エネルギーが尽きたから。動けないのは、
エネルギーがまだ足りていないから……」
「…そういうこと。エネルギー源は日の光。今日みたいな好天が後三日は続かないと、再び動ける
ようにはならないわね」
「……」
 青年はそれから、最上階に着くまで、一言も口にしなかった。

「ここが、私の何時も過ごしている部屋」
 青年は、鼻で息を吸った。確かに、ここには濃い女の匂いが充満している。
 ここで住めたら――僕と彼女の匂いが入り混じれば――そんな素敵なことは、この世にそうそう
ないだろうな。
 青年はしかし、そんな思いをすぐに捨て去り、硬い口調で言い放った。
「ここに窓はある」
「そこにあるわ。今は陽射しが強いから、カーテンで隠れているけど」
「これか」
 青年は、カーテンをスライドさせ、下を見た。
 ちょうど、眼下に王族のテントがあった。そのすぐ外では、王と王女が椅子に座り、周りの従者
に団扇で煽ってもらいながら、見物をしていた。王女が男に気付き、手を振った。
 それを見て、青年は思い出した。
『私が望むものは――姫様です』
 本心からではなかった。勿論、好きではない。好きになる要素がない。ただ、青年は己が内から
一瞬沸き上がってきた名誉欲に体を操られたに過ぎなかった。
 青年は、叫んだ。
「魔女は、数日の猶予さえ頂ければ、別の場所に城を移動させることができると言っています!」
「そうか! よくやったぞ、では、降りてきたまえ。君の仕事は終わった!」

298 :魔女(最終話) 魔女の城:2006/08/08(火) 01:12:39 ID:cmSH58Hj0
「え、そんな、まだ――!」
 青年は気付いた。
 まだ、兵士がいる?
 門の脇に、数十人。
 自分が門から出てきた瞬間に城内に忍び込み、そして、そして、魔女を――
「…汚い……なんて、救えない人達……」
 青年は、魔女の方を向いた。兵士達の気配に気付いていない様子である。自分がここにいること
で、彼女の集中を途切れさせてしまったのかもしれない、と思った。
「降りて来い! 一刻も早くだ!!」
 王は段々気色ばんできた。青年に、確かに時間はなかった。
 一瞬の決断を迫られた。だが、しかし。
 青年に迷いはなかった。
 青年は王と王女に向かって笑いかけ、そして、窓を閉めた。
 そしてすぐに魔女に向き直り、言った。
「貴女は魔女じゃない」
「そうだってば」
「だから、名前を教えてくれ。本当の、名前を」
「…ミスティよ。貴方は?」
「僕は――いや、僕の名などいい。ミスティ。君のその素晴らしい名前には敵いようもないから」
 ミスティは、少し頬を赤らめた。だがすぐ冷静に戻り、青年から目を離した。
「ミスティ、こっちを向いて欲しい」
 そう言われて、おずおずと青年の方に目を再び向けるミスティ。
「あはは、今になって、怖くなってきちゃった……人と話すなんて久し振りだし、増して男の人と
なんて、本当に久し振りで……貴方、どうしたの? 目付きが、凄い……」
「僕、ずっとこの城にいてもいいかな」
「えっ」


299 :魔女(最終話) 魔女の城:2006/08/08(火) 01:13:16 ID:cmSH58Hj0
 余りにも予想外の言葉。ミスティは驚きの声を上げた。
「本当は気付いていたんだ。さっき、丘の上ではじめて君の顔を見た時、君のこと好きになっちゃ
った」
「そ、そんな……あ、貴方なら、もっと良い人が……!」
 青年は、か細いミスティを優しく抱き締めた。
「君がいいんだ。たとえば、一国の姫君なんかより、ずっと素敵に輝いてて……」
「…いいの、本当に?」
「会ったばかりだから、君はまだ僕のことが心底から好きにはなれていないかもしれない。だけど、
それは時間が解決してくれることだよ。僕は君を愛する。だから、君も、好きになってくれるかな
ぁ……と思うんだ」
「…あぁ……」
 ミスティは、涙混じりの溜息を漏らした。
「…ねぇ、私達、もしかしてこれから、人に見られたくないような恥ずかしいことをするようにな
るの?」
 顔を赤らめ、小声で囁くように言うミスティ。
「そうかもしれないね。でも、心配はないよ。ここには、誰も入ってくることができない」
 そう言って、静かに唇にキスをした。

300 :ゲロ:2006/08/08(火) 01:14:46 ID:cmSH58Hj0
どうもご無沙汰です。四月以来でしょうか? 間が空いて、もし楽しみにして下さってた方がいる
なら、ゴメンなさい。

と言いながらでなんですが、今回でバキスレで作品発表するのを最後にしたいと思っています。こ
のままでは、今後もこんなペースになってしまうかもしれない。もしかしたら書けないかもしれな
い。それなりにオチをつけないまま消えるのは忍びない――というわけで、ハッキリと区切りをつ
けたいということなんです。
最後ですが、最後だけに力の入った作品に仕上げたつもりです。楽しんで頂ければ幸いです。

ミスティという名前を持つキャラクターは、皆魂のどこかで共通する“ミスティ”だという設定を
使えなかったのはちょい残念ですが、世の中は全てが上手く回るというものでもないので、まあ、
仕方ないですかね。全てを包括するようなオチにしたかったんですけど、これはこれで短編のオチ
としてはまあありかなとは思います。

事後処理、というわけではありませんが、茄子もできればですが、完結扱いにして頂ければ嬉しい
です>バレ様
魔女よりさらに一話完結の色が強い短編集なので、オチがなくても完結してると思うので……正直
言えば、未完になってると不憫、というだけの話なんですけど……エゴですね。すいません。

さて、時間も時間ですし、そろそろ筆を置こうと思います。
拙作を保管してくださったバレさん、感想を下さった皆様、そして、創作小説系スレなどという、
浮き沈みの激しいものの寿命をここまで長引かせている原動力、素晴らしい書き手の皆様。
これからも、心の中で応援しています。

作品は書き続けています。新都社などにも藤沢の名で短編などあります。漫画の原作なんかもあり
ますね。二次創作は正直な話しんどくなりましたが、幸いにも創作意欲は尽きるどころか増し続け
ています。これからも、どこかでお会いできれば。では、さようなら。お元気で。

301 :作者の都合により名無しです:2006/08/08(火) 07:37:25 ID:U7nfzweX0
最終話か・・
確かに内容は良かったけど、それ以上に寂しいな。
でも、最後を飾ってくれたのはありがたいです。
ゲロさん、これからもお元気で。ありがとうございました。

302 :作者の都合により名無しです:2006/08/08(火) 12:01:07 ID:nH6QIah/0
最後は、この作品の最初の雰囲気からは少し想像もできないような
ほのぼのとした感じで終わりましたね。乙です。楽しかったです。

ゲロさんの作品は好きでしたけど、完結させてくれて嬉しかったです。
お疲れ様でした。

303 :作者の都合により名無しです:2006/08/08(火) 19:03:00 ID:LnJdyq640
ミスティの名前ってそんな意味があったのか。
なるほど、大団円のラストでしたね。

子供用に暗い部分を削ぎ落としたのではない、
どろどろした感じの元ネタ通りの昔話や御伽噺のような
雰囲気が好きでした。他所でも頑張って下さい。

304 :487 ◆jOSYDLFQQE :2006/08/08(火) 19:15:28 ID:WGH2vO1SO
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/487/03-03.htmより

305 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2006/08/08(火) 19:17:15 ID:WGH2vO1SO
 瞬間、甲高い悲鳴のような音が部屋に襲い掛かってきた。
 シグバールはその突然の音に、びくり、と体を硬直させた。
「な、なんだァ?」
 振り返り音源を探す。
 そこでシグバールが見たものは―――高地での風圧に耐えれるように設計された
特殊防弾ガラスが、蜘蛛の巣のようなひび割れを生じていた光景だった。
 その編目の中心に埋まっているのは、黒い弾丸。
「――はァ?」
 弾丸。意識外からの狙撃。本来であればソレは脳を完膚無きまでにブチマケタだろう。
 しかし、失敗した。
 窓がそれを邪魔した。その耐久度は伊達ではなかったのだ。
「って、おいおい。いきなりなんだよ、びっくりしたぜ」
 いきなりの凶事が自身に及ぶ前に失敗に終わったことに安堵を覚えたシグバール
は、ふっと肩を下ろし、弾丸を嘲笑する。
 そして興味を覚えたのか、考え込むように腕を組んでその弾丸を見つめた。
 闇の回廊という数多の世界を渡る手段を行使してきたシグバールは、行き着いた世界で様々な
武器を見てきた。これにも見覚えがある。
 世界は夜空の星の数ほど存在する、そしてちょうどこの世界と似たような場所に足を踏み入れたこともあった。
 見覚えがあったということは、たぶんその時にそっくりな銃器の弾を見たのだろう。
「ま、誰だか知らねぇが、残念だったな」
 それにしても、いきなり実力のこもった敵意をむけられるとは。
 往々にして彼ら機関は住人達に歓迎されない。
 歓迎されないことを企んでいる以上、それも仕方ないことだとシグバールは思う。
 それに彼らが隷属を拒否するなら、最も単純なやり方をとればいい。
 圧倒的な武力で原住民達を蹂躙し、屈伏させる。極めて単純な方法。


306 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2006/08/08(火) 19:18:31 ID:WGH2vO1SO
 ――そこで彼が決定的で致命的な勘違いをしていたことを、誰も責めることはできはしまい。
 一度対象に命中し、運動エネルギーを完全に殺された弾丸が、どうしてまた再び―――
「な、なんだぁ!?」
 ―――動きだすことを想像できるだろう。
 変化は劇的だった。
 外部からの接触なしには動くことができなかったはずのその弾丸は、体全体を尋常でない
回転の渦に変えて、今再び使命をはたさんと飛翔した。
 バキリと嫌な音をたてガラスが軋む。弾丸は重力からの拘束を振り切って、今まではまっていた
ところから数メートル離れた空中に静止した。
 それはさながら加速をつける助走のための距離のようで―――
「チィ――――――!!!」
 被狙撃者の行動も迅速だった。
 シグバールはすぐさま窓から離れようと、身を後方へ踊らせた。
 それと同時に。
 今や完全に息を吹き返し、明確な殺意をもった魔弾は、真っすぐに他の世界からの異邦人へ襲い掛かった。


307 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2006/08/08(火) 19:19:45 ID:WGH2vO1SO
 初速はすでに最高速度に達している。
 一度目では突破できなかった防弾ガラスも、二度目の追突には耐えきれず、豪勢な金切り音を
奏で、粉々になった。
 障害物を排除したソレは、自分に課された仕事を全うすべく動く。
 殺す。
 この部屋にいる生命を全て殺し尽くす。
 そこに一辺の妥協の余地もない。
 弾丸は部屋の中央でとまった。
 依然として回転し続けながら、命の気配がする場所を探索する。
 しかし、いない。
 先程までこの部屋には何者かがいた。
 なのに、今は形どころか影も見えない。
 隠れているのか。
 ならば、定石どおりの手を使うまで。
 逃げ道はない。
 扉は閉められているし、そこ以外に脱出口は弾丸が通ってきた窓しかない。
 回転数はあがり続ける。
 きりきりきりきりきりきりきりきりきりきりきりきりきりきりきりききききききききききき――――――。
 それが限界に達したとき、魔弾は―――暴雨のように荒れ狂った。




308 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2006/08/08(火) 19:24:18 ID:WGH2vO1SO
「あ、あぶねぇあぶねぇ」
 ソファーを盾にして呟く影が一人。 シグバールである。彼はとっさに体を、魔弾から遮断できる
大きさをしたソファーの傍らに、滑り込ませていた。
 彼の長年の経験は、目の前の空中に浮く弾丸を見たときから、警鐘を鳴らしていた。アレは自分を殺す。
 魔弾が襲来してすぐに、そしてソレに感知されずに物影に隠れこんだのは、なかなか年季のいった
業であった。
「それにしても、なんだありゃ」
 そっと頭をつきだして、襲撃者の姿を観察する。元所有者が気の毒になるぐらい、魔弾は徹底的
に部屋を破壊していた。
 マホガニーの机を叩き割り、絵画に書かれた貴婦人の頭を粉砕、椅子を吹き飛ばす。
「はは、なんてあはずれだ……っておわっ!」
 飛んできた破片がシグバールの鼻先を掠め、慌てて首を引っ込める。
 荒れた呼吸を整えながら、シグバールは得た知識を整理し打開策を模索する。
 ―――この状況、用意に切り抜けられるものではない。彼がひとたび、遮蔽物からでようものなら、
初撃だけでなく、遠隔操作された魔弾の二撃、三撃がシグバールの体を破壊し尽くすだろう。
 かといって今この状況を遅滞させておくことも致命。
 魔弾の攻撃範囲はシグバールが隠れているところも含んでいる。
 中っていないのは、ただ悪運が強いだけ。それもいつまでもつか。
「あ〜あ、貧乏くじ引いちまったぜこりゃ。やだやだ、早く帰りてぇよ」
 大仰に手を天にかざす。
「だが、ま、アレどうにかしないと帰れもしないってハナシだな」
 そうして胸元に帰ってきた両の掌には―――銃が二挺。奇怪な銃であった。紫を基調とし、白線が
引かれた鋭角的なソレ。引き金の付近には五つの矢が備え付けられている。
 先程警備員を惨殺したのもこの銃だ。
 ]V機関はそれぞれが固有の武器を持っている。戦槍、戦斧、チャクラム、などさまざまだ。
 これがシグバールの武器、銃弾の代わりに魔力で構成された矢を打ち出す魔銃―――ガンアロー。
「さて、とりあえずあの魔弾を黙らせることにするか!」
 そういい、ソファーを踏み台にして、荒れ狂う死の嵐に突撃した。


309 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2006/08/08(火) 19:25:47 ID:WGH2vO1SO
 リップヴァーンはビルの頂上でマスケット銃を構えたままでいた。
 この態勢は彼女の能力を最大限に引き出せるのに有効なのである。
 そして変化が訪れる。
 ぴくりとも動かなかった頬肉が悦楽で歪む。
「やっと出てきましたか……」
 リップヴァーンは魔弾を通し向こうの景色を認識している。
 その視界の中に、黒い影が躍り出たのだ。
 おそらくそれが自分の仕事を台無しにした憎き敵。そうリップヴァーンは断じた。
「許しはしません。さあ、地獄で死ぬほど後悔なさい」
 頬を一直線に裂き開いたような邪悪な笑みを浮かべ、リップヴァーンは意識を集中する。
 殺意は距離を無視し、いまや彼女の分身となった魔弾に至る。
 魔弾は空を奔る。死ねという想いとともに。

310 :487 ◆jOSYDLFQQE :2006/08/08(火) 19:32:52 ID:WGH2vO1SO
 最近暑いですね。私が住んでるところは東北なんで、他の地域の方からはそうでもないんじゃん?
とかいわれるんですけども、山に囲まれてる地域なんで風があんまりはいってこなくて、すごい蒸すん
です。
 でも長いことそんな状態が続いてると、それが段々おもしろくなってきて、ヒャッハー! てな
奇声あげながら妹の持ってるハガレン同人誌を読むという奇行に走りつつあります。
 大佐はどうみても受け、という見解は妹との意見の一致を得ることはできませんでした。
……ダレカタスケテ。
>ゲロ氏
 まだまだ日の浅い伝奇モノ好きですが、魔女を拝見した時には、独特の世界観にほれぼれ
いたしました。
 そして原作を見て、その空気、キャラ、そのすべてを巧く表現していたことを知り舌を巻きました。
氏がバキスレを去ることに寂しさを覚えます。ですが、オリジナルに創作意欲を燃やしているという
ことで、氏の新たな活動を、若輩でありますが心から応援したいと思います。それでは、また次の機会に。
 この夏はSS書きに専念したいと思っていますが、生来の飽き癖ゆえ、あんまり期待しないで
いた方がよろしいとおもいます。では、次の更新の時に。

311 :作者の都合により名無しです:2006/08/08(火) 20:11:16 ID:LnJdyq640
487さんお疲れ様です。
今回はかっこいいガンアクションてんこ盛りで大満足です。
原作はあまり存じませんけど、ハードな雰囲気の描写が素晴らしいです。

更新ペースがちょっと不満でしたけど、この夏はSSを多く書いてくれそうで、
結構嬉しいです。頑張って下さい。

312 :作者の都合により名無しです:2006/08/08(火) 21:45:06 ID:U7nfzweX0
久しぶり、487氏。力作乙。
緊迫感ある場面の中にも、各々の個性が現れてていい感じですな。
ゲロさんは去ったけど、あなたのような方がいれば
バキスレも当分は安心なので、これからも書き続けてください。

313 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/08(火) 21:55:56 ID:DPPQvh5k0
MUGEN バトルロイヤル 第10話 それぞれの心
時刻は午後9時頃になっていた。だが“ゲーム”に休みなど無い。
ある者は就寝し、ある者は仲間を増やし、又ある者は獲物を探していた。
そんな中、突如夜の静寂を切り裂く出来事が発生した。
ーーー戦士達よ 今から一日目の脱落者を発表するーーー
放送であった。
ーーーシャルロット カンチョーマン カンフーマン DIO 人造人間18号 キン肉万太郎 セーラームーン  以上 7名であるーーー
ーーー現在 生き残っている諸君の健闘を祈る 勝者にはしかるべき褒美を与えようーーー
放送は切れた。
僅か一分にも満たぬ時間だったが参加者達に与えた影響は大きかった。
「・・・18号がッ!?そんな・・・バカな・・・」
放送で目を覚ましたヤムチャは呆然とした。
元の世界ではかなりの実力者の18号が・・・脱落、 つまり死亡した。
「お前の知り合いか。ヤムチャ。」
司馬がヤムチャの肩を優しく叩いた。
「うう・・・これで元の世界に戻って皆を生き返らせれるのは俺だけになっちまった・・・。」
ヤムチャはガクリと膝を付いて涙を流し始めた。
18号が参加しているともう少し早く知っていれば舞空術で探していたのに。
迂闊だった。
「ヤムチャさん。大丈夫よ。ゲームを脱出してあなたの世界に行きましょう。」
美和が優しくヤムチャをフォローした。
「皆、悲しいニュースばかりじゃないぜ。朗報だ。俺の元の世界での強敵、DIOが脱落した。これで少しは楽になったはずだ。」
承太郎の一言で意気消沈ムードだった一同は活気付いた。優勝候補が敗れたらしいという事がわかった為安心したのだ。


314 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/08(火) 21:56:31 ID:DPPQvh5k0
その頃モリガン組はーーー
「あなた達の元仲間はリタイアしたらしいわね。」
「彼女は弱いですから。ティアラが無ければ何も出来ないし。」
「私達の攻撃を全く防げませんでしたからね。」
「4人じゃなくても二人で充分だったんじゃないかな。」
「モリガンさんなら指一本でしょうね。」
セーラー戦士達はとても元ムーンの仲間とは思えない程嘲笑した。
「ちょっと蝙蝠達に頼みましょうか。」
モリガンの言葉と同時に蝙蝠が多数彼女の周囲に出現しどこかへと飛び立っていた。
その数、実に40羽程。島をくまなく捜索できる数である。
「何してるんです?」
「獲物を探させてるのよ。」



1人の男が砂浜の上に寝そべっていた。ぼんやりと空を見上げている。
彼は目の前で絶命した女を埋葬し遺品は回収した。
本来なら墓に刺すべきだろうが今回は事情が違った。
ベガに洗脳された春麗の目を覚まさせるのにこれは使えるかもしれないと思ったからだ。
どうすれば洗脳を解除出来るのか。ベガを斃せばいいのか。
そんな事をぼんやり考えている中、彼はとある異変を覚えた。
後ろから自分を睨んでいる。何らかの意思を持って。
彼は振向いた。レイピアから手を離し構える。
「俺の名は範馬刃牙。手を組んでくれ。」
「いいのか・・・こんな俺でも。」
「あんたは強い。俺にはワカる。」
男は唖然とした。強いというだけで手を組むのか。この少年は。
もっと相手を注意深く見るべきではないのか・・・。
「あの地面・・・盛り上がってるけどあんたが誰かを埋葬したのか?」
「ああ。」
男はあの光景を思い出して悔やんだ。あの時動けていれば。自分は春麗の背後にいたのだから。
「埋葬して死者を弔うならあんたはいい奴だよ。悪人ならそんな奴の事なんか放っとくだろうし。」

315 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/08(火) 21:57:12 ID:DPPQvh5k0
刃牙がデイパックから食料と水を取り出し墓に供えた。
「俺は今から寝る。色んな事があったんでな。」
二人は地面に布団をしくと暫く黙った。波の音だけが響く。
「そういやあんたの名前まだ聞いてなかったな。何ていうんだ?」
「リュウだ。」
「リュウさん。さっきのあんたの背中はさびしくつらそうに見えた。何があったんだい。」
「女さ。目の前で連れてかれちまった。」
それだけ言うとリュウは目を閉じて眠り始めた。
「わかった。お休み リュウさん。」
二人の格闘士達は眠る。数時間後に起きて生き抜く為に。

空条組 変化なし(前々回と同じです)
モリガン組 変化なし(前々回と同じです)

【リュウ@漫画版ストリートファイター】
状態 落ち込んでいる
装備 デイパック一式 レイピア@漫画版サムライスピリッツ
思考 1春麗の救出
   2主催者を倒す
【範馬刃牙@範馬刃牙】
状態 普通
装備 デイパック一式
思考 1仲間を集める
   2主催者を倒す


【DIO組 確認未定 生きている可能性も?】

316 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/08(火) 21:59:36 ID:DPPQvh5k0
どうもです。モリガン組以外は主催者打倒なのですが・・・絡ませ所に迷っています。
なにせまだ主催者の居場所すら決めていないので・・・あまりグダグダ長くするつもりは無いので
できるだけ短めにしたいのです。
ではでは。

317 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/09(水) 00:06:29 ID:3RlgxP720
>>272より。

318 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/09(水) 00:07:04 ID:laSmUDVg0
 拳を前面に構える加藤に対し、挑戦者(チャレンジャー)は前羽の構えで迎え撃つ。両
掌を盾と化す、鉄壁の構えだ。
「ずいぶん慎重じゃねぇか。いきなり俺と似てねぇ部分が出てきたな」
「似てねぇ部分? これから嫌というほど味わわせてやるぜ」
 まず、加藤から突っかける。鉄壁“前羽の構え”にも、この男は怯まない。それどころ
かバカ正直に正面から攻める。
「まずは拳(こいつ)で行くか!」
「……来いッ!」
 ──と、見せかけて。
 前羽の構えの守備範囲に入るや否や、加藤が跳んだ。どこまでも汚く、狡く。喧嘩殺法
の真骨頂が、いきなり挑戦者を狙う。
「キャラァッ!」
 高速で、まっすぐに向かってくる跳び足刀。これ程の奇襲に対応できるのは、神心会で
もトップクラスの者に限られる。
 にもかかわらず、挑戦者は笑っていた。
 両掌が宙に球を描く。
 鋭利な足刀は球に弾かれ、加藤は尻餅をついた。
「ぐっ! ……て、てめぇ」
「惜しかったなァ、おい」
「ま、廻し受けだと……?」
「てめぇにゃ出来ねぇだろう。だが、俺には出来る」
 戸惑う加藤に、トウキックが叩き込まれる。鼻っ柱を打ち抜かれ、加藤が転げ回る。
 挑戦者による追撃は続く。転げた加藤が受身を取ったところを、空中から勢いをつけた
踏みつけ。執拗に、何度も、何度も、踏み続ける。
 だが、加藤も負けてはいない。倒れた体勢から挑戦者の膝に拳を打つ。
「ぐぅっ!」挑戦者が動きを止める。すかさず、加藤が攻撃圏外へ逃れる。
「ちっ、さすがは現チャンプ。簡単にはやらせてはもらえねぇか」
「こっちの台詞だぜ。てめぇ……俺でさえマスターしてねぇのに、なんで廻し受けを使え
る?」
 すると、挑戦者はこう切り出した。
「おめぇ、一度神心会から極道に逃げたんだったよな。たまにはこんなこと考えねぇか?
“真面目に修業を続けてれば自分はどうなってたか”ってな」

319 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/09(水) 00:08:29 ID:3RlgxP720
 質問に質問で返され、少しむっとする加藤。そして同時に考える。
 指摘通り、たしかに考えたことはある。真面目にやっていればもっと強くなったかもし
れない、と後悔にも似た感情を抱く時もある。だが、それ以上に感じることは仮定など無
意味だということだ。自分の歩んだ道はまちがっていたかもしれないが、いちいち反省す
るような性格には出来ていない。さらに言えば、どうでもいい。
 ぐるぐると思案をめぐらせたが、加藤は簡潔に回答を述べる。
「考えたことがねぇとは言わねぇが、ぶっちゃけどうでもいいな。俺にとっちゃ」
「……俺だ」
 途端、すっとんきょうな呟きが飛んできた。
「はぁ?」
「もし、神心会から逃げなければ──こんな心に描くのもバカバカしい架空の物語(スト
ーリー)。それを体現したのが、俺だ」
「ふざけん──」
「悔しいか?」
「なんだとッ!」
「威勢だけが商売道具の素人ヤクザどもに武勇を飾って、大事な三年間を捨てちまったこ
とが今になって悔しくなってきたか?」
「てめぇッ!」
 怒りに任せて走り出す加藤。
「先輩、ダメですっ!」必死に叫ぶが、もう井上の声も届かない。
 ありったけの“怒”を込めた正拳は、加藤と同じ人相を殴打した。めり込む拳。ところ
が、ほとんど挑戦者にダメージはない。
「さ、三戦(サンチン)……!」
「基本だがよ、極めればあらゆる攻撃に耐えられる。まァ、到底てめぇにゃ出来ねぇ芸当
だッ!」
 正拳を返される。威力も段違い。紙くずの如く吹き飛ばされる加藤。
「ぐえぇっ! ……おえっ! げぇっ!」
 水月にまともに受け、加藤が胃酸を吐き出す。
 一方、挑戦者は返り血を浴びた空手着とともに、余裕の笑みを浮かべていた。

320 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/09(水) 00:09:52 ID:laSmUDVg0
「立てよ、チャンピオン。まだ始まったばかりだぜ?」
 ノーガードで、散歩でもするように近づいてくる挑戦者。完全に加藤を舐めている。
「クソがァッ!」
 起き上がると同時に、飛びかかる。眼突きで一発逆転を狙う。が、それよりも速くハイ
キックが加藤を射抜いていた。まったく構えていない状態から放たれた、無拍子の廻し蹴
り。これもまた加藤に出来る芸当ではない。
 ダウンした加藤に、挑戦者はまたも徹底的な踏みつけ。
 衝撃は頭蓋骨を飛び抜け、脳みそを何度も揺すぶられる。このままでは肉体が勝手に気
絶を選んでしまう。
「くおっ!」
 加藤が体をねじり、脱出を図る。だが、挑戦者とてこんなチャンスを逃すはずがない。
まして、相手は加藤をグレードアップさせたような男。闘争における狡猾さに関しては、
抜群のセンスを持っている。
「逃がすかァッ!」
 挑戦者が土を蹴り、加藤の眼に浴びせた。
「ぐわぁっ!」もろに眼に入ってしまい、加藤がのたうち回る。
 さらなる地獄が幕を開ける。今度はサッカーボールキックによる滅多打ち。強烈な蹴り
が全身をまんべんなく打つ。ご丁寧にも吹き飛ばさないよう、肉に食い込ませるように蹴
るという徹底ぶりだ。
「オラァッ!」
「ぐあっ!」
「シャリアッ!」
「がはっ!」
「トリェアッ!」
「ごっ!」
 挑戦者が身につける空手着──右足部分が瞬く間に赤く染め上がっていった。

321 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/08/09(水) 00:11:55 ID:laSmUDVg0
ゲロさんお疲れ様です。
長い間、一緒に書くことができて楽しかったです。

322 :作者の都合により名無しです:2006/08/09(水) 07:38:31 ID:3FaDxGaI0
加藤はもしかしたらスペック的には克己より高かったのかも
独歩が後継者とほんの一時期押してたくらいだし
確かに、ずっと真面目に空手やってたらどれほど強くなった事か

俺もゲームなんかやらなければどれだけの男になっていたか・・

323 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/09(水) 07:59:15 ID:O/zdLkER0
十五 矛盾

 あの荷物――金田一一のリュック――が、元からはじめの所持品だと仮定すると、いくつか説明のつかない点が散見される。
 つい最近、コンビニで買い物をしたと思われる形跡があるのに、リュックの中にない財布。
 携帯ストラップだけで、肝心の本体が見当らない携帯電話。
 そして極めつけは『数日の間、何も食べていないような空腹感』だ。
 リュックには、たっぷり食料が入っていた。それでは、あんなに空腹になるまで、食料を口にしなかったのは何故なのか?
 はじめはあの時、とりあえずの合理的な結論として『崖から落ちて、数日の間意識を失っていたのだ』とした。
 気絶していたのだから、食料に手をつけたくともつけられなかった。これは一見、何の矛盾もない、正しい仮説のように思える。
 しかし、はじめは途中で、この仮説の孕む大きな矛盾に気付いてしまった。だが、それを無意識の中に押し込め、気付かない振りをしてやり過ごそうとしていた。
 談話室での須藤の言葉が、鮮やかに蘇り、鼓膜を震わせた。

『この近辺は、気圧の影響で大気が不安定になっていたみたいで……』

『一昨日、昨日と、雷を伴った雨が断続的に降り続いていた。それで何となく、占いの一件を思い出したんだ』

 崖から落ちたはじめが、数日の間、気絶していたのだとしたら……
 洋服も、リュックの中身も、雨に濡れていなければおかしい。 
 勿論、メモ帳などの紙製品はすべて無傷だったし、紙が撓んでいたり、文字が滲んでいたりなどしなかった。
 謎の人物――地獄の傀儡師からの手紙を難なく読めたことからも、それは明らかだった。
 メビウスの輪を、指でなぞるように。
 エッシャーの無限階段を、一人歩くように。
 ここでまた、思考は最初の疑問に戻ってしまう。

 それでは――あんなに空腹になるまで、食料を口にしなかったのは、何故なのか?
 導き出される答えは単純にして明快だった。
 口にしなかったのではなく、口にしたくともできなかったのだ。『空腹になった時点では、はじめはリュックを持っていなかった』から。
 もう一歩踏み込んで考えれば『空腹だったからこそ、はじめは誰かからリュックを奪った』と推理することもできるかもしれない。

324 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/09(水) 08:00:51 ID:O/zdLkER0
十六 コピーキャット

 談話室に戻ろうと歩き出した設楽は、全身を硬直させて立ち止まった。
 何故なら、手洗いから出た十文字が、真剣な眼差しで設楽を見て、言ったから。
「もし。心当たりがあるのなら、自首してほしい」
 一瞬、自分の耳を疑った。が、断じて聞き違いではなかった。
 十文字は設楽に向かって『自首して』と、確かにそう言ったのだ。
 予想外の告発に、心臓が跳ねた。何故わかった、と、語るに落ちる言葉が思わず喉まで出かかった。
 設楽は動揺を極力表情に出さないよう努めながら、問い返す。
「それは、どういうことですか」
 自分でも、声が上擦ってしまっているのがわかる。
「わかってる。葦原くんを、殺したでしょう」
「何の根拠があって」
 設楽は余裕をアピールする為、笑ってみせたつもりだったが、実際は唇を歪めることしかできていなかった。
 そんな反応を目の当たりにして、十文字もいよいよ、自身の考えに確信を持ったようだった。 
「あの時、バリケードを作った後、設楽くん、言ったよね。『そしてまた、葦原を殴り殺すという凶行に走った……』って」
 その一言で、設楽の顔面は蒼白になった。
「みんな、ばたばたしていて流してしまったけど……今考えると、すごくおかしい。
 何で設楽くんは『R』が葦原くんを『殴り殺した』と断定できたの?
 私は現場を見たけど、わからなかった。きっと、他のみんなもそうだったと思う。
 凶器があったわけじゃなかったから、突き飛ばされて倒れたのかもしれないし……床に直接頭を打ちつけられたのかもしれない」
 そこまで聞いて。考えるより先に、身体が動いていた。右手に一撃を加え、握っている催涙スプレーを手放させる。
 そして、十文字が床に転がった催涙スプレーに目を奪われている隙に、衣服の内側に隠し持っていたロープを取り出し、十文字の首に巻きつけた。
 このロープは本来、葦原を殺す為に持ち込んだものだった。
 葦原は成り行き上、部屋に置いてあった真鍮製の置物で撲殺する事になったから、もう使う機会はないだろうと思っていたのだが。

 設楽は、このサークルに入るなり、その容姿と財力とでリーダーの地位を不動の物にした葦原が大嫌いだった。
 少人数で面子の入れ替わりもそれなりの頻度であったとはいえ、葦原よりも古株だった設楽は、お気に入りのコミュニティを土足で踏み躙られたような気分だった。

325 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/09(水) 08:01:45 ID:O/zdLkER0
 親の脛を齧っているだけの分際で、何を偉そうに……
 常々そう思ってはいたのだが、他のメンバーの手前、表立って葦原と対立するようなことはなかった。
 だが、それだけに鬱積した感情は行き場を失って、今回の一件――葦原が、例によって得意気に持ち出した別荘への招待――で、爆発する形となる。
 幸いにも、と言うべきかどうかはこの場合微妙な所ではあるが、付近では正体不明の殺人鬼『R』による連続殺人が相次いでいる。
 テレビで報道されるその手口をそっくりそのまま真似て『R』にすべての罪を擦り付けてしまえばいい。
 そんな短絡思考のもとに、設楽は葦原を殺害しようと思い立ち、実行に移した。凶器である置物は、指紋を拭き取って窓の外へ放り投げておいた。

「今……を……たら…………る……!」
 頚部を圧迫されているせいで、殆ど聞き取れなかったが、設楽には十文字が何を言おうとしているのか大体理解できた。
 おそらくは『今、私を殺したら自白しているようなものだ』と言いたいのだろう。
 確かにその通りで、設楽もそれは承知していた。が、衝動的に芽生えた殺意は、ブレーキの壊れた列車のように暴走を止めない。
 ちなみに。十文字が、こんな場所で告発を行った理由は二つあった。
 一つめは、全員の前で犯人を暴くという趣向が、十文字には、何だか芝居がかっていて悪趣味に思えたと言うもの。
 二つめは、よもや、二人きりで行動している時に危害を加えられることはないだろうとの計算。
 しかし、肝心要の二つめは、あっけなく裏切られてしまった。設楽は、十文字の予想以上に愚かだったようである。
 設楽は、既に意識を失いかけている十文字の首を締め上げながら、必死に次の一手を考えていた。

(談話室での失言は、十文字以外気付いていない。何とかして、誤魔化すんだ。きっと何か上手い方法がある……)

(そうだ、自分をちょっと傷つけて『R』に襲われた振りでもすればいい。元はと言えば『R』に罪を擦り付ける為にこんな殺害方法を選んだのだから)

(硝子を割って、今度は忘れないように、足跡もきちんとつけて……)

 そこでタイムリーにも、後方で硝子の割れる音が響いた。

(ああ、硝子を割ってしまった!? その前に、足跡をつける為の靴を用意しておかないとまずい……)

 極度の混乱で論理性を欠いた設楽の思考を遮断したのは、背中に走った鋭い痛みだった。

326 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/09(水) 08:02:18 ID:O/zdLkER0
 驚愕と激痛に、設楽は叫び声とも呻き声ともつかない、獣の唸りのような声を発して、ロープを握り締めていた手を離す。
 解放された十文字は、よろめきながらも数歩進み、玄関ホールへ出た所で力尽きて倒れた。
 設楽は咄嗟に後ろを振り向き、目を見張った。そこには、マチェットを持った見知らぬ男が立っていた。

*  *  *  *  *  *

 凶悪な連続殺人事件――特に、犯人がメッセージを残すなどの劇場型犯罪――の場合。
 犯人を名乗る悪趣味な悪戯電話や模倣犯対策の為、一部情報は『犯人しか知りえない情報』として、マスメディアには秘匿される。
 設楽は知らなかった。
 犯人が被害者に刻んだ『REVENGE』の文字が、報道では『R』の一文字とされている事実を。
 設楽は知らなかった。
 目の前に立つ男が、何を成す為にこんな場所にいるのかを。

327 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/08/09(水) 08:04:54 ID:O/zdLkER0
毎度ありがとうございます。前回投稿は>>199です。

・シリーズ化
もしシリーズ化したら、原作準レギュラー陣も絡ませて、今度こそ本物の一の活躍を……
とは思うものの、情けない事に、ネタが続かなさそうな予感が。
・補足
欠落感は『REVENGE』が『R』になっていたことが原因です。
話の中で説明するつもりが、その機会を逸してしまいました……

328 :作者の都合により名無しです:2006/08/09(水) 12:33:09 ID:eZQ0+qPw0
>サナダムシさん
「自分の最高形」との戦いですか。加藤、随分サボってたからな。偽者の方が努力してる分、強そうだけど
加藤だって闇社会で鍛えられてるからな。きれいな加藤対オリジナルの汚い加藤の戦いか?

>かまいたちさん
ほんの少しの綻びから、論理の破綻を少しずつ紐解いていく。色んな面から思考する。
前作から、ロジカルな面とホラーな怖さが見事に融合しているなあ。馬鹿な俺でも面白い推理物でイイ!

329 :作者の都合により名無しです:2006/08/09(水) 18:28:04 ID:DNKZXynZ0
金田一少年はよくここまで細部まで決めてるなあ。
以前のカマイタチもそうだったけど、物語の起承転結のつけ方が凄い。
解決編なのにいまだ緊張感保ってるし。

330 :作者の都合により名無しです:2006/08/09(水) 18:37:17 ID:zpltaaYT0
佐藤ふみやはすごい。


331 :作者の都合により名無しです:2006/08/09(水) 21:04:28 ID:m0bLu1iD0
・487氏
お、夏休み中は結構うぷしてくれるみたいで嬉しいですね。
銃のアクションもさることながら、キャラたちの台詞回しが好き。
相当、原作を研究されてますね。

・コテ氏
えーっと、18号っていつの間に死んだの?前回では確か元気だと思ったけど。
意外というか唐突というかw でも、展開が速いのは嬉しいですね。

・サナダムシ氏
(もう一人自分がいたら)というのは確かに誰でも思いますね。
ましてそれが格闘家なら。昔のファミコン雑誌のスト2の漫画を思い出しました。
基礎体力では適わないでしょうが、修羅場潜った本物の方が強い気がします。

・カマイタチさん
密室というか、追い詰められた状況というか、そんな場を書かせたらプロ級ですね。
だからこそ、解放後のカタルシスが凄そうだ。でも、未だに怖いですね雰囲気。
シリーズ化も良いけど、氏の様々なネタもファンとして見たいな。

332 :作者の都合により名無しです:2006/08/09(水) 21:56:26 ID:O2gDzXXE0
死にかけた体でも全力の半分の力で惑星を粉々に出来るフリーザよりも圧倒的に強い18号が負けるのはおかしいよ。


333 :ふら〜り:2006/08/09(水) 23:17:27 ID:J1/LM/er0
>>コテさん
まぁモリガンなら、単純な戦闘力だけでも充分戦えるでしょうしね。ゲーム中の技を駆使
しての、他作品キャラとのバトルを見たいところ。これがデミトリでDIOと吸血鬼対決
ってのも面白かったかも。それはそうと18号チーム……もしかして一話程飛んでます?

>>一真さん
どのSSも脳内で音声を流してますが、本作は会話も地の文もテンポが良くて気持ちいい。
かと思えば残虐超人なんて、アイドル超人よりもコアな団体をサラりと出す辺り、軽々に
読み流せない奥深さもあり。オチも冒頭から予告してたのに、使い方が巧くて笑えました。

>>サナダムシさん
今更ドッペルとは、随分と普通な趣向……と思ってたらタイムパラドックスというか架空
未来ネタできましたか。ヤクザたちとの戦いによって得たケンカ殺法もある、けど真面目
に修行しないと得られない正統空手技も少なくない、か。こりゃ挑戦者側も応援したいな。

>>17〜さん
うわぁ……何の疑問もなく今まで読み続けてたのに、キデルの凄まじき正論っぷり。いや、
聞いてると全然冷淡とか感じませんでしたよ正直。そっちだってちゃんと正義なわけです
しね。でも、そこを引っくり返したのがつとむ。初めて存在意義を示し……最初で最後?

334 :ふら〜り:2006/08/09(水) 23:18:24 ID:J1/LM/er0
>>487さん
弾丸だけなのにこの威圧感。血の一滴も出さずにこの恐怖感。自作を省みるに見習わねば
ならんとヒシヒシ。この状況で恐怖や驚愕が微塵もないシグバールの様子がまた、本作の
バトルのハイレベルっぷりを示してますな。これだけの芸当に対する反撃、どんなのが?

>>かまいたちさん
みんなを集めて、あるいは犯人と相対しての告発シーンではないから、何だか時間が巻き
戻ったような感覚がしますね。二周目のゲームプレイのよう。あぁでもやっぱりこういう
「犯人失言」があったか……こういうのを気づかせず埋め込むのが技術なんでしょうね。

>>邪神? さん
お気の毒と申しましょうか、書き溜めてた分とか大丈夫でしたか? 環境が整いましたら、
また続けて下さいね。お待ちしておりますぞっ。

>>ゲロさん
思い返せば魔女も茄子もそして蟲師も、ある時はほんわかほのぼの、ある時は情け容赦なく
重く暗くと、非常に幅広い面白さがありました。そしてどんな路線を描かれても、目や耳
のみならず肌にまで実感できるような描写がいつもお見事でした。コメントを拝見すると、
もしかしたら知らない内にどこかで、ゲロさんの作品に触れているかもですね。今までも、
これからも……そう、これからも創作活動頑張って下さい。お疲れ様でした&またいつか! 

335 :バーディーと導きの神〜竜人の力〜:2006/08/09(水) 23:25:19 ID:jPBgHjXk0
「わあー、もう海岸線に出ちまっただが!さすがに竜人様は早いベー!」
飛行術で夜空を飛ぶ牙炎の背中に乗ったモルプが、その飛行速度に感嘆の声をもらす。
深夜のルアイソーテ王都の港は明かりが多く、船も結構な数が出ていた。
「いくら王都とはいえ賑やかだな。いったいなにをしているんだ?」
牙炎はその喧騒に疑問を持った。それにモルプが答える。
「探しものをしてるだよ」
「探しもの?なにをだ?」
「片腕の巨人だべ」
モルプが言ったその言葉に、同じく牙炎の背中に乗ったリュミールがビクッと反応する。
「巨人!」
「んだ。二日前の晩に河川警備隊がそれらしい影と足跡さ見っけでよ。オラたちみでえな
下級市民が捜索さかり出されで、休みなぐ働かされてるんだべ」
「ほう……」
牙炎が興味ありそうな顔をする。ルアイソーテの駐屯地を破壊した巨人の存在は、ソシュ
ウたちの報告で牙炎も知っていた。
「んで、オラほうは夜中にスキさめっげで逃げ出せただよ。見っかったら殺されちまうで
必死に逃げただよ」
「しかし、まだ探してるってことは見つかってないんだな?」
「んだ。見つかりっこねえのによ」
モルプは愉快そうに言う。
「なぜだ?」
牙炎が問う。モルプは得意そうに答えた。
「だってオラ巨人が海ん中入ってぐの見たの誰にも言っでねえもの。こん国さ敵んなっで
くれる巨人様だべ。わざわざ言う必要なかっぺよ」
「はははは!そりゃあいい!」
牙炎が笑顔を見せて笑った。そしてモルプのほうを向いて言う。
「お前気に入ったぞ!」
「ど、どうも……」
貴族たる竜人(牙炎は貴族の位を捨てていたが)に気に入ったと言われてモルプは恐縮する。


336 :バーディーと導きの神〜竜人の力〜:2006/08/09(水) 23:26:19 ID:jPBgHjXk0
「国に帰ったらお前の身柄を正式に受け入れてやるよ」
「えー!本当げ!?」
牙炎が言ったその言葉に、モルプは文字通り手放しで喜んだ。
そのとき。
「と、その前に!」
牙炎は急に振り向くと、宙に向かって念をこめる。
途端に牙炎の隣で飛んでいる高速浮き砲台をも揺るがす大爆発が空中で起きる。
「きゃあ!」
「うわっ!」
急な爆発に驚いたザンたちは、悲鳴を上げて牙炎にしがみつく。
『どひーっ!どうしたんだよ義伯父!』
ソシュウもかなり驚いたようで、念話ではなく機外スピーカで牙炎に問いかける。
「いや、俺たちをつけていた主が視界の隅に入ったんでな。眼力で吹っ飛ばしただけだ」
牙炎はこともなげに言ってのける。
なんと牙炎は直径1センチたらずの黒い影魂(がげだま)を、この暗闇で、その目のみで見抜
いたのだ。
「眼力?あれが?」
バーディーが信じられないといった声を上げる。
今の爆発はルアイソーテの駐屯地で見たガロウズが起こした爆発の数倍に匹敵する。
それを呪文に頼るでも機械の力を借りるでもなく、自身の力のみで引き起こしたというのだ。
それも特別なことではないらしい。
その常識の範疇を超えた牙炎の力にバーディーは絶句する。
「あれが竜人の力さ。王城で大佐の姿を見ただけで逃げ出した敵の気持ち、分かったか?」
あっけにとられるバーディーを見たシアンが、どこか得意げに言ってくる。
「話には聞いていたが、実際目の当たりにすると凄いね……」
シアンの言葉にコクコクと頷くだけのバーディーに代わってキデルが感想を述べる。
「あの力のおかげで俺たちがどれだけ助かってるか……。竜人さまさまだぜ」
「凄い……」
バーディーはシアンの話を聞いてるのかどうなのか、ただただ牙炎のその力に驚いている。

337 :バーディーと導きの神〜竜人の力〜:2006/08/09(水) 23:28:36 ID:jPBgHjXk0
「しかしまずったな……」
そんなバーディーたちの会話を聞いてない牙炎は、少し困ったようにつぶやいた。
「ソシュウ、こいつはかなり話を聞かれちまったぞ。うかうかしてらんねえな。奴のこと
だ、勘で俺たちの目的地に来るだろうからな」
「誰がだよ?」
「奴、ガロウズさ」
牙炎はきっぱりとその名を言った。

同刻、黒竜城内のガロウズは、影魂の一つが潰されたことを察知し、一人ごちた。
「我が分身影魂を消したばかりか、あの一瞬で私をも見抜きおった……。さすがは竜人と
いったところか……」
ガロウズの額から一筋の血が滴り落ちてくる。自らの血を元に作った影魂は、製作者本人
と連動している。
(しかしぬかったわ!これほど近くにあったとはな……)
部下が近づいてきたため、ガロウズは額の血を拭き取る。
(魔の島ガソン……。アレはそこにある!)
牙炎が見抜いたとおり、ガロウズは影魂の情報だけでその目的地を見抜いた。
「ボックウェルを呼べ!出撃する!」
部下にそう命じながら、ガロウズは部屋を後にした。

一方、ザンたちに協力した地下組織の仲間は、上司であるサーラ術次長に叱責されていた。
「なんて軽はずみなことをしてくれたの!」
サーラは兵を散らしてくれた男の頬に容赦なく平手打ちを入れる。
「もしこのことが貴族たちに知られたら、組織全体が潰されてしまうかもしれないのよ!しかも
よりにもよって敵を助けるだなんて……。あなたたちは馬鹿よ。何のための地下組織なの!」
サーラの怒りは大きい。自立自尊を旗頭に掲げて立ち上げた階層制度解放の地下組織にと
って、敵の力を利用してその目的を達しようなどとは言語道断なやりかただ。
「申し訳ありませんサーラ様。私たちの思慮が足りなかったのです……」
率直に謝る男に、下を向いて泣いているお姉さんと細面の女性。全員ザンとバーディーを
助けてくれたメンバーだった。

338 :バーディーと導きの神〜竜人の力〜:2006/08/09(水) 23:29:32 ID:jPBgHjXk0
「ふん!もういいわ!あなたたちのように馴れ合うことばかり考えている人にはなにを言っ
ても無駄ですからね!私たちの地下組織には、得体の知れないバカ力女やアーマヤーテ
の力なんて借りたりしない、自分たちの力だけで自由を勝ち取る気持ちがある人だけしか必
要ないんだから!」
サーラはぴしっと言いつけると、うなだれたままの兵たちにぷいっと背を向ける。
「……けど、思いやる心を忘れないことも大切よね」
付け足すように言う。
「だから、今回だけは委員会に報告しないでおいてあげるわ……」
「サーラ様……」
目に見えて表情が明るくなる兵たち。
(あーあ、あたしも相当な甘ちゃんだわ……)
兵たちの姿を見て仏心を出したサーラは、自分の性分を改めて卑下した。
しかし締めることは忘れない
「でもね、他国の力や正体不明の力を期待することだけはやめてね。それさえ忘れなければ
いいわ。お願いね」
「はい」
兵たちは一斉に返事する。
いつもの柔和な笑顔に戻ったサーラは、満足そうに頷くと、しっかりねと兵たちに声をかけて
その場を後にした。
今から王都潜入者追撃の緊急出撃があるのだ。
当然ガロウズ部隊の術次長を務めるサーラにもガロウズからの命は下っている。
「急がなきゃね」
サーラは集合場所に急いだ。

339 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/08/09(水) 23:40:06 ID:jPBgHjXk0
竜人の実力の一端、見せ付けてくれます。
サーラさんは実は地下組織の人でした。
思念虫は委員会への報告に使っていた記憶媒体です。

>>284さん
バーディーは力持ちに見合った性格をしてるのがリアルと
よしもとばなな氏が11巻のキャッチコピーで書いてますよ。
>>289さん
肉弾戦がバーディーの真骨頂です。
>>ふら〜りさん
あんまりただの地球人の男の子は役に立ちませんからw

340 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/10(木) 02:11:00 ID:a2zeVtT70
第二十話「3年Z組銀八先生 四時間目」





屁のツッパリはいらんですよ!(キン肉スグル)





キン肉マン!?(志村新八)






341 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/10(木) 02:11:46 ID:a2zeVtT70
「やぁみんなおはよう。今日も元気に銀魂の時間だ」
比較的まともな冒頭で始まった今回の銀八先生。
いつものように3年Z組担任教師が朝のホームルームを始める。
が、しかし。教壇の上に立つ男は銀髪天然パーマの男ではない。
両目を覆い隠すほどの長い前髪に、闇に紛れるための存在感の無さが特徴となっている男。
教壇には、銀魂高校日本史教師の服部全蔵が立っていた。

「せんせーい、今日は銀ちゃん……じゃなかった。坂田先生はどうしたんですか?」
神楽が挙手し、全蔵先生に尋ねる。
3年Z組の担任は坂田銀八であって、服部全蔵ではない。では、真の担任はどこにいったのか。
「あー、坂田先生は夏休みを取られている」
「夏休みィ!? 生徒達を差し置いて教師が夏休みとってんのォォ!?」
新八のツッコミを皮切りに、クラス中でブーイングが巻き起こる。
その標的となった全蔵はやれやれと言った顔で、
「んなこと俺だって知らねーよ。坂田先生曰く、『世間は夏休みなのに、学園編てなんかおかしくね?』だそうだ」
「なに今回の外伝全否定するするようなこと言ってんですか! っていうか、仮にも主人公でしょ!? 主人公不在で僕達だけ出てるのっておかしくない!?」
「だから俺は知らないって……その辺については坂田先生曰く、『や、だっておまえら高三じゃん? 受験生に夏休みはねぇじゃん?』だそうだ」
「高三の生徒を担任に持ってる教師にだって夏休みはねーよ! 教師ならちゃんとサポートしろよそこらへん!」
まぁ言ってしまえば、いくら3年生とはいえ銀魂のキャラなので、受験などまったくもって関係ないのだが。まさか大学編でもやるつもりじゃあるまいし。

「先生! 俺は卒業後ちゃんと就職したいんですが!」
元気に手を挙げたのは、とても高三とは思えないヒゲ面サングラスの男子。名を長谷川泰三。
趣味は労働で、学校でも暇さえあれば求人広告を眺めている彼にとって、高三の夏休みは就職活動全盛期。担任不在などと言う理由で燻っているわけにはいかなかった。
「長谷川は大丈夫だろう。今頑張らなくても、将来はちゃんと立派なフリーターになれるさ」
「いや、俺はフリーターじゃなくてちゃんと定職に就きたいんだけど……」
「マダオだから無理アルヨ」
神楽のその言葉に、クラスメイト全員が深く頷く。
「……なんだよ。周りは敵だらけってわけかよチクショー!」
嘆く長谷川だったが、同情する者は誰一人としていなかった。

342 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/10(木) 02:12:40 ID:a2zeVtT70
「そういえば先生」
ちょっとグレ気味の長谷川を無視して挙手したのは、栗色のサラサラヘアに円らな瞳を供えた、ザ・甘いマスクの沖田総悟くん。
「前回転校してきた、空条くんの姿が見えませんが」
「…………ああ、空条承太郎くんなら今日付けで退学した。なんでも、危篤状態のお袋さんを助けるためにエジプトに向かったんだそうだ」
やや声のトーンを低くしながら、全蔵が語る。
それにしてもいきなりエジプトとは。本来ならツッコむところなのだろうが、彼はやっぱりゲストキャラ。
物語に深く関わる前に退場してくれるならありがたい、と新八は心中でホッと安心していた。これで無駄なツッコミをする回数も減る。
そんな新八の心境をよそに、空条承太郎の転校を一人猛烈に悲しんでいるヤツがいた。
「うっ、ううう……」
「は、服部先生?(な、泣いてるゥゥゥ!?)」
言わずと知れたジャンプ愛好家、服部全蔵である。

「俺、学園編今回が初登場だからよぉ……承太郎まだ見てねぇんだよ……畜生、せっかく生のスタープラチナが見れると思ったのに……」
大人気なくメソメソする全蔵に困惑する一同。マジ泣きだった。
「せ、先生!? 気を確かに持ってください! いいじゃないですか、学校離れてエジプトに旅立つのはむしろ原作どおりじゃないですか?」
「そうアルヨ先生! それにスタンドはスタンド使いにしか見えないから、先生じゃスタープラチナは拝めないヨ…………ゴッハァッ!!?」
涙を流す全蔵を慰めようとした神楽の身体が、衝撃と共に宙を舞った。
その横には、不敵な笑みで神楽を見下ろすキャサリン。
「フン……先生ニ気ヲ取ラレテ油断シタナ! スタンド使イデアルト同時ニ念能力者デ聖闘士デ悪魔ノ実ノ能力者デ残虐超人ノ私ハ、血モ涙モ無イノサ!!」
「まだやってたのかよスタンドごっこ! そして各先生方にもう一回謝って来いおまえ!」
キャサリン乱入により、教室内はいっそう騒がしくなる。
とにもかくにも教師が機能しなければ授業もままならない現状、新八はなんとか全蔵を奮い立たせようと頑張ってみるが、
「いいよもう……俺、次回から銀魂降りて『大蔵』に移籍するわ」
「いや、無理だから! 『大蔵』に行ってもJOJOには会えないから!!」
駄目だこりゃ。
大先輩とも言える憧れのジャンプキャラに会えなかったのが相当ショックなのか、全蔵の放つオーラは第一部の頃の半分の輝きにも満たなかった。

343 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/10(木) 02:14:03 ID:a2zeVtT70
担任兼主人公不在、そして代わりの教師もダメダメ。
ある意味銀魂らしいといえばらしいのだが、そろそろ普通に物語を展開していって欲しいと思う新八は、どうにかこの現状を打破しようと頭を悩ませていた。
そんな彼の努力を踏みにじるかのごとく、周りのキャラクター連中は好き勝手をやめようとしない。

「ワタシをあまく見るなよキャサリン……ワタシのスタンドは、まだ全体の20パーセントの力しか出していない……気づかなかったアルか? ワタシが今まで一度も"時を止めていなかったことに"」
「ナ……ナンダト!?」
「やめてェェェ! もう俺の目の前でスタンドとか言わないでくれ悲しくなるからァァァ!!」
眼前で展開する神楽とキャサリンの空想スタンドバトルに、全蔵は地獄を見るような思いだった。
「ああもう! 分かった! 俺今日から日本史教師辞める! そんでもってスタンド使いになるための修行する!!」
「いや、無理だから! いくら頑張ってもアンタじゃスタンド使いにはなれないから!」
「やってみなきゃ分かんないだろそんなの! それに日本史の教科書によると、戦国武将の半分はスタンド使いだったんだぞ!? 知らないのか!?」
(だ、駄目だこの人……本格的に壊れた)
舞台崩壊。承太郎でなくても「やれやれ」と言いたい現状。
収集のつかなくなった銀魂にもはや救いの道はなく、それを心得ていた新八は、さっさと退散を決め込むことにした。

「あっ」
さあ帰ろうと振り返ってみると、既にそこには誰もいなかった。
「ザ・ワールドォォォ!!!」
「ペガサス流星ケェェェン!!!」
「やめろォォォォォ!!」
神楽キャサリン全蔵そして新八を残し、残りのクラスメイトはとっとと退場していた。
逃げ足速いよみんな……と心で思いつつ、新八も教室を後にしていく。
「ト、時ヲ10秒モ止メルスタンドダトォォォ!!?」
廊下まで響くキャサリンの絶叫が耳障りだった。

「はぁ…………ツッコミがもう一人欲しい」
帰り際、新八のさりげない願い事がこぼれた。

344 :一真 ◆LoZjWvtxP2 :2006/08/10(木) 02:15:35 ID:a2zeVtT70
承太郎、衝撃の転校!
それはそうと学生さんは夏休み真っ只中ですね。うらやましい限りです。

毎回毎回のことながら、学園編は後先のことまったく考えてない行き当たりばったりのSSばっかなんで、オチに悩まされます。
今回は「全蔵を登場させよう」というコンセプト『だけ』で書き始めたので、特にオチに悩みました。
正直言うと、頭の中は次のシリアス完結編の構想でいっぱいだったりするんです。
既に脳内では銀さんが滅茶苦茶クサい台詞はいてたりするんです。
つまり、いついきなり完結編が始まっても文句は言わないで下さいということです。

と、執筆に関するぶっちゃけをしたところで今回は幕。
一真でした。

345 :作者の都合により名無しです:2006/08/10(木) 12:42:48 ID:OoXrVzek0
一真産お疲れ様です。
承太郎はイジられるまえに転校してよかったような、ファンとしては。
新八の苦労は耐えませんなあw

346 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/08/10(木) 14:11:51 ID:H7eD8dga0
帰省のため、来週いっぱいお休みをします。
皆さんもお元気で。

347 :作者の都合により名無しです:2006/08/10(木) 19:47:47 ID:+ZviAxpF0
17さん、帰省ですか。少しリフレッシュしてまた頑張って下さい。
竜人というからには、やはり只者ではなかったですね。これからの鍵になるのかな?


一真さん、行き当たりばったりというか、勢いのSSですね。ノリというか。
あっという間に消えた丈太郎やら、往年のジャンプの必殺技で遊ぶキャラたちとか。
ギャグが疾走かつ、迷走wしてますなw シリアス編期待してます。

348 :作者の都合により名無しです:2006/08/10(木) 21:53:28 ID:MEiO5MOM0
俺はぶっちゃけシリアス編の方が楽しみだ。
一真さんもノリノリみたいだしな。

17さん、気をつけて里帰りしてきてな。

349 :めざせ孫悟空!:2006/08/10(木) 22:11:55 ID:uA64UHa80
 漫画『ドラゴンボール』を知る者ならば、だれもが憧れた大技──かめはめ波。
 両手を重ね合わせ、“気”と呼ばれる潜在パワーを蓄積し、一気に放出するという至っ
て単純な技だ。「か、め、は、め、波」というユニークなかけ声も相まって、かめはめ波
は瞬く間に日本一有名な技の一つとなった。
 当然、真似をする読者は後を絶たない。大半の人々が“不可能”ということを知りなが
らポーズとしてやっていたのだろうが、中には本気で撃てるようになると信じきっていた
者もいたようだ。もっとも、さほど深刻な問題でもない。サンタクロースの存在のように、
だれに教わるわけでもなくいつかは自然と常識にたどり着く。
 今回登場する少年は、まだ「かめはめ波は撃てない」という常識に到達してはいなかっ
た。

 子ども部屋でひとり、腕立て伏せをする少年。
 壁には拙い字で「ぜったいにかめはめ波をうつ」と書かれた紙が貼られてあり、床には
『ドラゴンボール』の単行本が散らばっている。
「十九、二十……二十一……、二十二……! に、にじゅうっ……!」
 残念ながら、二十三には届かなかった。うつ伏せに横たわる少年。まだ体が発達してい
ない段階で、この回数はなかなか立派なものだろう。
「三十回できれば、撃てる気がするんだよなぁ〜」
 と、根拠のない理論を独りごちる。
 もう一度腕立て伏せに挑戦しようとするが、あいにく腕には力が残っていない。今日の
トレーニングはこうして終了した。

 来る日も、来る日も、トレーニングは続いた。
 少ないこづかいをやりくりして、気功に関する月刊誌を購読した。
 腕立て伏せも最高回数は五十を突破。かめはめ波のポーズも格段に洗練された。
 あと少し、あと少し──まるで蜃気楼を追いかけるような心境で、少年は鍛え続けた。
 そして、来るはずがなかった日が訪れる。

350 :めざせ孫悟空!:2006/08/10(木) 22:13:36 ID:uA64UHa80
「か、め、は、め……」
 重ね合わせた両手に意識を集中させて、
「波ッ!」
 かけ声と同時に前へ突き出す。
 ──すると、出た。
 火力をもっとも弱めたライターよりもはかない炎が、たしかに出た。一秒と経たずに気
の塊は消えてしまったが、ほんのわずかに残る熱が少年に「撃てた」ことを告げる。
「やっ……やった、やった、やったーっ!」
 少年は部屋を飛び出し、大急ぎで居間でくつろいでいる両親のもとへ向かった。
「どうした、バカに嬉しそうだな」
「こらっ、家の中で走らないの」
 たしなめる父と母に、興奮冷めやらぬ少年は身振り手振りをつけて説明する。
「や、やっと撃てたんだよ! かめはめ波! 今からやってみせるから、ちゃんと見てて
よっ!」
 両親はきょとんとした後、顔を見合わせアイコンタクトを交わした。どうやら二人で息
子に「つき合ってやる」ことに決めたようだ。
「へぇ、すごいじゃないか。やってみろ」
「満足したら、早く風呂に入りなさいね」
 許可を得られた少年は、さっそくかめはめ波のポーズに入った。さすがに練習してきた
だけあって、大人の目から評してもポーズはなかなか堂に入っていた。
「か、め、は、め……」
 両親に掌を向ける。
「波ッ!」
 ──すると、またもや出た。
 先程のがまぐれではなかったことが証明された。ただし、先ほどの一発目とは火力がま
るでちがっていた。放出されたエネルギーはまもなく父と母を包み込み、彼らを大爆発に
巻き込んでしまった。

351 :めざせ孫悟空!:2006/08/10(木) 22:15:28 ID:uA64UHa80
「あ……え?」
 立ち込める煙。ついさっきまで朗らかに笑っていた少年の父と母は、変わり果てた姿と
なって眼前に散らばっている。
 立ち尽くす少年。全てを作り出した両手には余熱が宿っていた。
 薬指に結婚指輪がはめられた細い手、母だった左手。
 いつも水虫の薬を塗られていた大きい足、父だった右足。
 他にも少年を生み育ててくれたふたりの人間の残骸が、あちこちに散乱している。
 人間だけではない。少年が赤ん坊の頃から暮らしていた家は半壊し、大好きだったテレ
ビはただのガラクタと化している。粉々になった茶碗、上半分が消し飛んだタンス、海苔
のような色になった畳、何もかもが失われた。
「おーい!」
「もしもーし、どうしましたかーっ!」
「大丈夫ですかーっ!」
 突然飛んできた声に、少年が気を動転させる。
 パニックに陥ったとき、人は一番頼りにするものに救いを求めるというが、少年にとっ
てそれは“かめはめ波”だった。
「か、か……かめはめ波ーッ!」
 声がする方角へ、手当たり次第にかめはめ波を発射する少年。
 救助に駆けつけた近所の人々、あるいは野次馬たちを、かめはめ波は丸ごと蒸発させた。
 撃てば撃つほど、辺り一面は大騒ぎになっていく。怒号、悲鳴、サイレン、あらゆる騒
音が少年の攻撃本能をさらに刺激する。

 かめはめ波に対して、人類も総力を結集して戦った。機動隊が突撃し、軍隊が投入され、
ミサイルを撃ち込み、あげく狂気に走った指導者が核爆弾を投下した。
 ところがこれらの抵抗も、加速的に完成度を高めていくかめはめ波に対してはなすすべ
がなかった。射程、速度、威力、どれもが近代兵器を上回る数値を弾き出していた。
 永い永い闘争が終わりを告げたとき、少年は地球上に残された最後の生物となっていた。
 彼が「かめはめ波は撃てない」という常識に到達する日は来るのだろうか……。

                                   お わ り

352 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/08/10(木) 22:17:57 ID:uA64UHa80
ドラゴンボールを題材とした短編です。

353 :作者の都合により名無しです:2006/08/10(木) 22:18:20 ID:3BsmFPXP0
>>352
サナダさんだったのかw

354 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/11(金) 00:04:27 ID:L4oUwjYq0
>>320より。

355 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/11(金) 00:05:11 ID:L4oUwjYq0
 凄惨なワンサイドマッチ。平穏なジャングルに鈍い音が幾度も響き渡る。
 立ち上がることすら出来ない。ヤクザを糧に生み育て、無人島で武器を捨てて磨き上げ
た喧嘩空手。まるで通用しない。まっとうに空手に打ち込んだことを想定されて武神に造
り上げられた“挑戦者”とまともに戦うことすらかなわない。
 どうすれば勝てる──加藤は苦悩する。
 無人島で、加藤は非常に濃密な試練をこなしてきた。虎と戦い、リアルシャドーと戦い、
軍人と戦い、悪夢と戦い、剣士と戦い、コンビネーションと戦い、人形と戦った。時には
自身以上の力量を持つ者と相対したこともあったが、見事にぶちのめしてきた。
 これはなぜか。なぜなら、彼らは加藤と異なる存在であったからだ。
 体格の差異、戦法の差異、あるいは性格の差異。これらを上手く突くことができれば、
たとえ相手が格上だったとしても勝利をもぎ取ることはできる。
 だが、今回はどうか。空手以外、まったくの同数値。しかも唯一の相違点といってもよ
い空手は、敵が圧倒的に上回っている。醜く錆びた刀では、きちんと手入れをされた刀に
は勝てない。

「──ぐばァッ!」
 後ろ向きの思考が、強烈な蹴りによって中断される。
 数えられぬほど蹴られた。だが、まだ戦える。勝つ可能性は残っている。
 元の世界へ戻るため。
 ドッポに報いるため。
 井上に応えるため。
 武神をぶっ倒すため。
 まだ敗北は許されない。ナマクラでも名刀を倒す手段はきっとあるはず。なくとも作る。
今日まで加藤が生き延びてこれたのは、創意工夫を怠らなかったためだ。
「ぷぅっ!」
 口の中に溜まった血を、挑戦者に吐きかける。
「ぐわっ!」血の塊は、挑戦者の両目にヒット。
 すかさず申し訳程度の正拳を当て、加藤は立ち上がった。

356 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/11(金) 00:05:55 ID:L4oUwjYq0
 眼球についた血液を拭い去り、挑戦者が加藤を凝視する。眼光にはさらなる殺気が宿っ
ている。
「チッ、往生際がわりぃヤロウだ」
「けっ、偽者如きにやられてたまっかよ」
 現王者と挑戦者──二人に挟まれた空間が少しずつ歪み始める。
「す、すごい……」両者から放たれる熱気に、井上も絶句するほかない。
 歪みはさらに程度を増し、まっすぐに立っていた樹木がいまやミミズのように折れ曲が
っている。
「セヤッ!」
「ダアッ!」
 二人が同時に仕掛ける。
 ローキックの打ち合い。スネ同士が激突し、びりびりと衝撃が発散される。──互角。
 本格的に攻防が始まる。
 互いに手技足技を出し合うが、決め手にはならない。技術では劣る加藤も、直感力と洞
察力でとことん食い下がる。
 早送りのような打撃戦に、井上はすでに対応し切れない。
「全然……何をやっているかすら……分からない」
 加藤が左ハイを放つ。挑戦者は右のガードを上げる。が、左ハイキックはアルファベッ
トの“N”に近い軌道を描き、挑戦者の金的部分を直撃した。
「もらったァッ!」
 手応えあり。

357 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/11(金) 00:06:28 ID:L4oUwjYq0
 金的蹴りをまともに受けたにもかかわらず、挑戦者は涼しい表情を崩さない。
「……甘ぇ」
「あぁ?」
「あいにく、俺はコツカケも習得(マスター)してんだよ」
 コツカケ。腹筋を駆使して睾丸を体内に収納してしまうという絶技。この技がある限り、
術者にとって金的は弱点とはならない。
 平拳が加藤の喉を突く。
「げはぁっ!」
「まだまだァッ!」
 拳から、手をさまざまに変形させる挑戦者。平拳から貫き手、貫き手から一本拳、一本
拳から掌底、掌底から正拳。滑らかに、鮮やかに、武道空手が大暴れする。
「ヤロォッ!」拳を放つが、伸び切った肘に中高一本拳が打ち込まれる。「うぎゃあッ!」
 差が生じ始めた。第六感や洞察力などといったものは、所詮ギャンブルの領域を出ない。
が、おびただしい反復練習によってのみ得られる技量は嘘をつかない。裏切らず、確実な
効果をもたらせてくれる。
「サボりの“ツケ”が出始めたようだなァッ!」
「くっ……るっせぇ!」
 貫き手で応戦する加藤。が、カウンターで一本拳が人中にクリーンヒット。刹那、加藤
の全身から力が抜ける。──そこへ。

 心臓部を寸分のズレもなく抉る、中段突き。

 口と鼻から、血が噴き出る。
 挑戦者が拳を引き抜くと、まるでスローモーションのように──加藤清澄は地に伏した。
「オオオ……ッ!」ベルト奪取を果たした新王者が、まだ敵の体温が残る拳を振り上げて
吼える。「俺がッ! 俺こそがッ! 新たなる加藤清澄……本物だァッ!」
 大声で勝ち名乗りを上げる本物、ぴくりとも動かないさっきまで本物であった偽者。
 そして、始終を観戦していた井上がそっと拳を握り込んだ。

358 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/08/11(金) 00:08:25 ID:L4oUwjYq0
続けて『やさぐれ獅子』です。

>>353
何かありましたか?

359 :白書:2006/08/11(金) 07:09:12 ID:NoOJhWAf0
はじめまして、白書と申します。
さて、突然ですが、俺も小説投稿してもよろしいでしょうか?
どうせ駄作になるでしょうけれど、お願い致します。

360 :作者の都合により名無しです:2006/08/11(金) 07:47:14 ID:1XvRsZRq0
サナダムシさん相変わらず短編の方も美味いなあ。やさぐれ獅子も安定して面白いけど。
ガキの頃、かめはめ波を打つ真似をしてたのを思い出した。流石に出るとは思わなかったがw
サナダさんは短編読みきりだとウンコの印象が強いけど、まとめ方と発想が凄いんだよね。
また期待してます。

>白書さん
頑張って下さい。それに特に断らなくても勝手に投稿していいと思うけど。

361 :作者の都合により名無しです:2006/08/11(金) 12:09:54 ID:dU/1mdle0
>めざせ孫悟空
僕もかめはめはごっこやりましたwでも、それをねたにSS作るとは凄いですね。
最後がドラえもんの独裁スイッチみたいだ。

>やさぐれ獅子
井上さん、またも何か活躍しそうですね。やはりヤクザに絡んだ加藤は弱いのか。
同じくヤクザに絡んだ亀○はクソ判定でチャンピオンになったのに・・

362 :作者の都合により名無しです:2006/08/11(金) 21:29:12 ID:41fHgI8q0
サダダムシさんは職人って言葉がピッタリするねえ
長編も見せ場を心得てるし、読みきり短編も起承転結とかすごくうまい。
切り札のうんこSSも持ってるし・・

>>359
ま、気楽にうぷすればいいよ。

363 :作者の都合により名無しです:2006/08/11(金) 23:29:55 ID:dU/1mdle0
一真さんのシリアスの腕前が気になるな。
結構、ギャグとシリアス2つを掻き分けられる人って希少だから

364 :完成=未完成:2006/08/12(土) 06:03:52 ID:jb7kWfZl0
戦士の閉じた意識が覚醒する時は、いつも決まった夢を見た直後。
そう、母が殺された時の。
機械伯爵に母が殺されたあの瞬間を何度も見ながら、戦士――鉄郎の意識は毎回覚醒されていくのだ。
「か、母さんーー!!!」
そして、いつも通りの夢で起きた鉄郎を待っていたのは・・・。
「あら、やっと起きた?それはそうと、あなた大丈夫?かなりうなされていたわよ。」
蜜柑の木々に囲まれた家に住む、美しく黒い長髪が印象的な女性だった。

「えっ?ああ・・・・。僕は一体・・・。」
「あら、覚えていない?貴方は外にある蜜柑の木の下に倒れていたのよ。
そして、たまたま散歩中だった私が貴方を助けたって訳。・・・・・・どう?少しは思い出した?」
木から落下した時のショックと、先ほどの悪夢のせいか、若干混乱気味だった鉄郎を諭すかのように
女性は優しく問いかける。
「あ・・・。そうか・・・・。ラーメン屋のおじさんに蜜柑を・・・・。」
そう言いながら鉄郎はすぐ右横にある窓の外に景色の方へと目を移す。
―――するとそこには先ほど自分が登っていたような蜜柑の大木が立ち並んでいるではないか。
どうやらこの家は蜜柑畑――――蜜柑の森の中にあるようだ。
「そうか・・。お姉さんはこの蜜柑の森に住んでいるんだね。」
「ええ。先祖代々・・・・。でも、正確言うとちょっと違うかな。 ------『移住』してきのよ。十年前にね。『私は』・・・。」
「ふ〜ん・・・・。あれ?先祖代々ここに住んでいたのに、なんでお姉さん『だけ』ここに移住なの?」
女性の言葉に鉄郎の何気ない一言を返す。
むしろ会話の流れからの当然の疑問と言える一言だった。

しかし、これから起こる出来事が、鉄郎の心に大きな楔(くさび)を打ち込むことに・・・。

365 :完成=未完成:2006/08/12(土) 06:04:29 ID:jb7kWfZl0
「・・・・・・・。」
「あ・・・、何か聞いちゃいけないことだった?」
明らかにバツの悪そうな顔をしながら鉄郎は女性に尋ねる。
「いえ・・・。そんなこと無いわ。ただ・・・。ううん。いいわ。
――――――――それはそうと、ちょっと私の話を聞いてみない?」
「えっ?話・・・ですか?」
本当に突然の話題変換だった為に、豆鉄砲を食らったような顔してしまう鉄郎。
しかし、女性はそんなリアクションを意に返さずに、どんどん一人で話を進めてくる。

まるで・・・、何かに焦っているかのように。

「そうね・・・・。まずは・・・・、この星の由来を知りたくない?気になるでしょ?
未完星なんて変わった名前で。」
「はあ・・・・。確かに変わっていますね。でも、何でなんです?」
一応は助けてもらった恩もあるので、鉄郎は嫌な顔一つせずに女性の話に付き合うことにする事に。
彼自身もこの星の由来に関してはいささかの疑問を思っていたようだ。
「それはね・・。この星自体が『未完成』だからよ。」
「えっ?でも、ここは元からある・・・・。あっ!!」
女性の言葉を察したのか鉄郎は口の前に手を当てる。
すると彼の表情を見た女性は満足そうな表情でさらに話を続けた。
「そう。アナタの思った通りこの星は『人工的に作られた惑星』のよ。
元々は『母星を失くしてしまった』人達が、『自分たちの母星の本当の行く末』を見たくて『作って住んでいた』んだけど・・・。」
「だけど・・・?」
「ええ・・・、だけど・・・。」
そんな鉄郎の問いに女性が答えようとした

―――正にその瞬間!!

まるでこの星が縦に分断されてもおかしくないほどの地震が彼らを・・いや、未完星を何の前触れも無く襲った!!


366 :完成=未完成:2006/08/12(土) 06:05:12 ID:jb7kWfZl0
「うわあ!!地震だ!!お姉さん、逃げないと!!」
鉄郎は瞬時に我を取り戻すと、大きすぎる地震に体のバランスを取られながらも女性の右腕を引いて外に出ようとする。
―――が、何故か女性は鉄郎の好意を頑なに拒否。
全くこの場から動こうともしない。

幸い、家の中には危険な物が無かった為に二人とも怪我こそはしていないが、今は何が起こってもおかしくない状況。
確かに外に出ることも愚行の一つと考えられるかもしれないが、建物の周囲を囲っている蜜柑の木が
地震によって倒れてくるかもしれない危険性を考えると鉄郎の行動は正しいと言える。
「お姉さん!!」
それなのに女性は外に・・・、鉄郎の言うことを聞いてはくれなかった。

唯一つ。悲しみと諦めを胸に秘めた表情をして。

「どうしたんだよ!!お姉さん!!ここに居たら何かが倒れてきた時に逃げられないよ!!」
そう言って鉄郎は、『生を頑なに拒否する』女性の体を何度も無理矢理に引っ張ろうとする。
それでも彼女のリアクションは先程と全く同じ。

拒否の姿勢――梃子(てこ)でも動こうとはしない。

そして激しい地震が未完星中を揺らし続ける中、鉄郎は通常の思考では全く理解できない
行動をする女性に向かって遂に怒鳴り散らした!

「どうするんだよ!!もしも死んじゃったら!!!死んだら・・、死んだらどうするだよ!!」

怒鳴り散らしながら鉄郎の脳裏に浮かぶのは、機械伯爵に殺された母の姿。
まるで『自らの死を選ぶ』女性の様は、かつて自分の力では助けられなかった母の姿を連想させる。
だから鉄郎にとって女性の死を選ぶかのような行動は、j何者にも耐え難いものを感じるようだ。

367 :完成=未完成:2006/08/12(土) 06:05:55 ID:jb7kWfZl0
「早く!!まだ間に合うよ!!早く!!」
この言葉を発したのは一体何度目だろうか?

それでも・・・・。

尚、女性は一歩もその場から動こうとしない。

「ねえ、アナタ・・・。」

―――が、その代わり・・・。
鉄郎の好意を拒む代わりに彼にとっては忘れられない一言。

たった一言だけを残して・・・。

「あなたに言っておきたい事があるの。『この星はもう終わり』よ。
なぜなら『かつての私達が住んでいた母星』は『この地震で失われた』からの。
それに宇宙に出る手段のないこの星の人達は、『この時が来たら死を選ぶしか道がない』の。だから・・・・。」

グシャッ!!

死んだ。
そう。女性が最後に何かを伝えようとした瞬間、鉄郎の懸念した事が現実に―――
自身の家の周りを囲んでいた蜜柑の木が、何の罪もない彼女を押し潰したのだ。

368 :完成=未完成:2006/08/12(土) 06:06:50 ID:tpLXUXgf0
「うわああーーー!!!」
そして目の前の事実に耐え切れなくなった鉄郎は、今度は自分自身が助かる為だけに、
目の前で潰れた自分の恩人を置き去りにして999に向かって走り始めた。

「ハアッ!!ハアッ!!ハアッ!!」

知っていたのだ。
彼女は自分が住んでいる星がもうすぐ崩壊する事を。

「ハアッ!!ハアッ!!ハアッ!!」

知っていたのだ。
宇宙に出るための切符は、一般人が一生かかっても買えない値段で売買されている為に、
この星から脱出する術がない事も。

「ハアッ!!ハアッ!!ハアッ!!」

だから鉄郎に『五月蝿く話した』のだ。
『自分の存在と自分が住んでいた星のこと』を『誰かに覚えて欲しくて』。
この未完星に住んでいた自分の存在が誇れる物だったと、誰かに知っていて欲しくて。
「お姉さん!!くそう!!くそう!!!!」
助けられなかった母と姿を重ねながら、『彼女の行動の全てを理解しながら』鉄郎は999に向かってひた走る。

―――彼女の生きてた意味を無駄にしない為にも。


369 :完成=未完成:2006/08/12(土) 06:07:29 ID:tpLXUXgf0
そして暫く走り続けた鉄郎は大地震に足を取られながらも未完星の都市部へ差し掛かる。
眼前に広がるかつての都市部の光景。
「うっ・・・。くっ!!」
鉄郎は大きな柱に潰された人々などを極力見ないようにしながら、999が停車している駅の方へ向かって
力一杯ラストスパートをかけた。
「ハアッ!!ハアッ!!ハアッ!!ん?ま、まさか・・・・。」
しかし世の中とは無常なもの。
この崩壊していく未完星を脱出できる唯一の手段であるはずの999は、ラストスパートを掛けたばかりの鉄郎に最悪の知らせを届けた。

ポーーーーーー!!!!

999の汽笛の音である。
これは宇宙中に知られている999の悪魔の機能が発動した証だ。
確かに999の自己防衛機能AIはとても優れたものだが『例外が通る事は”殆ど”無い』。
乗客がどんな状態でも時間は守るし、そして999が危険さらされた時は何よりも自身の安全を優先するのだ。
------だから空虚な願いだとしても、鉄郎は自分を置いて出発してしまった999を見ながら叫ぶ。

「死んでたまるかーーー!!」

『生きたい』という、この時代には一番難しい願いを込めながら。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


370 :完成=未完成:2006/08/12(土) 06:08:07 ID:tpLXUXgf0
数分後・・。

『この未完星を作った人の母星で起こった地震』は、この星を崩壊の一途へ向かわせていた。
そう・・。『未完星』という名に似合わず・・・・。
「僕は・・。僕はここで死ぬのか・・?機械の体だって貰ってないし・・。もちろん、アンドロメダにさえ・・。」
半ば放心状態の鉄郎は、倒壊していくビルの破片すら意に返さずにその場に立ち尽くす。

このままでは、『ヒトとして<完成された肉体>である機械の体』を得る事が出来ない。
そんな鉄郎の全てを持っていった死神の声は、生きる為の糧は根こそぎ奪っていったようだ。

それにしても・・・。

人が死ぬ。
これが人が死に直面した時に出す表情なのだろうか。
今、鉄郎が顔の筋肉は、正にそんな悲劇を如実に表していた。

ボーーーーーーー!!

そして先程の死神の声から数分後、もう一度、死神の声が生を求める鉄郎の耳に届く。
その声で我を取り戻した鉄郎は、希望とは真逆の恨めしそうな顔で空を見上げた。
ありったけの・・・、本当にありったけの憎しみを込めながら。

でも、一欠片だけは人間らしい良心を残して。


371 :完成=未完成:2006/08/12(土) 06:08:42 ID:tpLXUXgf0
「メーテルは無事に999に乗れたのかな・・・。って・・・えっ?あれは・・!!」
一欠片の良心と、ありったけの憎しみを込めて空を見上げた鉄郎。
すると、その刹那、彼の表情が先程の死の表情とは一転して、信じられないといった
――-生気に満ちた表情に変化する。

「鉄郎さ〜〜ん!!999を説得するのに時間がかかりました〜〜!!」
「しゃ、車掌さん!!」

そう、鉄郎の眼前に現れたのは先刻見捨てられたと思っていた銀河鉄道999だからだ。

「鉄郎〜〜!!私の手に捕まりなさい!!」
「メーテル!!無事だったんだね!!」
一欠片の良心―――気になっていたメーテルの生還に喜びながら、鉄郎は彼女の伸ばしている手に向かって自身の手を伸ばす。

絶対に届くように。

―――自分の生きる糧を掴むように。

バシッ!!

その手をしっかりと掴んだメーテルは、後ろに居た車掌さんと共に鉄郎を999の中まで引き上げた。

372 :完成=未完成:2006/08/12(土) 06:09:11 ID:tpLXUXgf0
「はあ・・、はあ・・・。ふう・・、助かった・・・。」
999に無事に乗車できた鉄郎は、感慨深い表情で思わず大きなため息をつく。

―――生き永らえた命を噛み締めながら。

そして無事に鉄郎を乗せた999は、大気圏へ向かって急上昇し始める。
未完星から急速前進で脱出する為に。
「さあ、鉄郎。早く中に入りましょう。」
「うん・・。」
突然起こった地震のせいで急速に崩壊していく未完星を横目で見ながら、鉄郎は先に列車内に入ってしまった
メーテルを追う様にして999の中に入ろうとする。

自分を助けて・・、死んでいったお姉さんの事を空に描いて。

(ごめんさい・・・。そして・・。)
鉄郎が999から最後に見た未完星の地上絵は、地震によって引き起こされた地割れに飲み込まれていく蜜柑畑。
もう、あの蜜柑を食べる事は二度と出来ないだろう。
勿論・・・、あのお姉さんに会う事も。
「ありがとう・・。」

鉄郎がそう呟くと同時に、ゆっくりと―――999の扉が閉まった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

373 :完成=未完成:2006/08/12(土) 06:09:48 ID:Hptnhps/0
〜エピローグ〜

「ねえ、メーテル。機械の体ってさ、ヒトとしては完成されているよね。
生身の体とは違って、おなかも減らないし、死ぬ事もないし・・・。」
「そうね・・・。確かに、生きる上では何の不便も無いわ。」
999の旅客席に戻った二人が最初に交わした言葉がこれである。

いつもとは違った鉄郎の考え込んだ表情。

いつもとは違った空気を醸し出しながら、鉄郎は言葉を紡ぎ続ける。

「でもさ・・・。木の上から落ちて気を失っていた僕を助けてくれたお姉さんを見て分からなくなっちゃたんだ。」
「分からなく・・・?」
鉄郎の言葉に優しい笑顔で答えるメーテル。
そう。まるで子の成長を見ている母親のように。

「うん。確かに機械の体になることは、完成されたヒトになる唯一の手段かもしれない。
地球だと権力ももてるし、不自由なく暮らせるし・・・。
でも・・・、別にヒトとして完成されてなくたって、僕としては精一杯生きられるし、
自分自身が存在する事を誇りに思う事も出来るって思ったらさ・・・。
何だか、別に機械の体になる必要があるのかなって・・・。
ううん。確かに機械の体になりたいとは思うけど。」
自分の住む星の寿命と、自分の生の結末を知り尽くした女性との出会いで考えさせられた『機械の体への疑問』。
生身で最下層の人間だった鉄郎にとって機械の体を手に入れるということは、ある意味で転生であり、
亡き母の分まで精一杯生きれるための手段の一つであった。

しかし、今回の件で鉄郎の心は揺れている。
生身の人間であろうと無かろうと、生きる手段の全てが『完成されたモノであろうと未完成であろうと』、
それに誇りさえもてれば精一杯生きる事に意味があることを知ったからだ。

374 :完成=未完成:2006/08/12(土) 06:10:48 ID:Hptnhps/0
だから・・・・、鉄郎の心は揺れている。
今の自分のたびの意味が不透明になることに怯えながら。

だが・・・・・、今はその答えは出ないであろう。
そう。この問題の答えが出るとしたら・・・・。

「ふう・・・。何だか考えながら話すのは疲れるね。―――後でいいや!!」
そう言って鉄郎は自分が座っている座席をベット代わりにして眠りに入る。

――――そして、鉄郎が寝始めてからしばらく経った後、車窓から見える流れ星を見ながらメーテルは一人呟いた。

「そうね・・・・。鉄郎のその疑問の答えも、きっとあそこで見つけることが出来るわ。」

―――――――アンドロメダで・・・・。

<完成=未完星 了>

375 :完成=未完成:2006/08/12(土) 06:14:20 ID:Hptnhps/0
どうも。しぇきです。

わかりにくい話&構成ですが、俺式SFモノです。
もうあと一本くらい短編モノを書いて連載中の奴に戻りたいと思います。

では失礼・・・。

376 :作者の都合により名無しです:2006/08/12(土) 16:55:30 ID:ObJGcR310
メーテル、もうちょっと活躍してほしかったなあ。
最後はうまく締めたけど。(その点、正しく999物といえる)
作品読んで、なんとなくしぇきさんは理系の人だなあと思いました。

短編あと一本ですか。次の元ネタはなんだろう?
出来れば今回の999みたいな、メジャーだけど懐かしいものがいいな。

377 :作者の都合により名無しです:2006/08/12(土) 19:48:02 ID:7AJH085V0
しぇきさん乙。
割合にまったりしてた前編とはまったく違う後編でしたね。
完成されたものの寂しさとか、未完成なものの悲しさとか
そんな少し悲しい結末でしたけど、鉄郎はこの経験でまた大きくなるんでしょうね。

>『生きたい』という、この時代には一番難しい願いを込めながら
悲しい言葉ですなあ。

378 :作者の都合により名無しです:2006/08/13(日) 10:37:42 ID:y7wHUT+J0
しぇき氏の復活は嬉しいけど…
今回の短編も凝ってて面白かったけど…
スリーナイン大好きで嬉しかったけど…

やはり連載ものを先に復活させてほしいな。

379 :作者の都合により名無しです:2006/08/13(日) 18:50:58 ID:WOnYylsw0
みんなお盆休みか?

380 :永遠の扉:2006/08/14(月) 10:13:31 ID:bp6/Vkw70
第001話 「呟いた言葉が現実になるように」

──8月27日。夜。
早坂秋水は月下に蠢く巨大な影を捉えると、正眼に構えなおした。
掃討すべき敵は残り3体。
いずれも幅的な痩肥の差あれど、筋肉質な体とひび割れ三角頭の見慣れた連中だ。
蓮の実を思わせる無数の目玉が妖光を放ち、歩行と共に揺れるのがくっきりと見える。
”調整体”と呼ばれる彼らは、秋水ともう1人に作られた同類同属の屍山を踏み越えて
「喰゛わ゛せ゛ろ゛ォ〜〜〜」
知性などとても見いだせない咆哮をあげつつ接近中。
足元を見れば個々の戦闘能力など秋水に遠く及ばぬのは自明の理だが、悲しいかな。
その設計思想上、調整体たちには状況判断や学習などという行動は不可なのだ。
ただひたすら敵もしくは食料と認めたモノへ爪を打ち下ろすしか、できない。
接近の最中てんでバラバラに歩く愚を犯しているのも構造的欠陥の好例だろう。
布陣も敷けず連携も取れない。
よってまず1体。
裂帛の気合を上げて飛び込む秋水に、なすすべなく唐竹割にされた。
青い刃をキラリとはね上げる秋水。その斜め前後から、残り2体が唸りを上げて飛び掛る。
仇を討つためではない。ただ、静寂を引き裂く音声(おんじょう)に興奮しただけだ。
秋水は大きくつま先を蹴り上げた。
剣道着をまとった181cm70Kgの長身が軽やかに宙を舞い、斜め前方から来ていた調整体
とすれ違いざま、片手殴りで造作もなく胴を斬り捨てた。
短い前髪をなびかせつつ屍骸の山へ着地。足を挫かぬよう片膝立ちで衝撃を殺す。
偶然にも、その一瞬の隙に最後の1体が背後から肉迫。
が、それも束の間。
動揺、などという高尚な感情があればその調整体は叫び、後ろを振り返っただろう。
背後から無数の矢を受け、ハリネズミと化していたのだから。
「あら。全部命中? 一本ぐらいは避けると思ってましたのに」
「ま、オレ様と桜花の腕を考えればトーゼンの結果! とにかく今日のノルマ達成!」
声が終わる頃、調整体は下から斜めに両断され死屍累々の「累々」に堕ちていた。
「助かった。姉さん。それと御前」
秋水は辺りに敵の気配がないコトを確認すると、愛刀──ソードサムライX──を解除した。

381 :永遠の扉:2006/08/14(月) 10:14:41 ID:bp6/Vkw70

早坂秋水。
彼を一言で表すなら「美形」だろう。
名前の通り青く澄み渡った切れ長の瞳に、細い眉は正に眉目秀麗。
引き締まった端正な顔立ちにほどよくかかる前髪と、刈り上げ気味に切りそろえられた後ろ
髪からはさっぱりとした清潔感が漂っている。
すらりと伸びた長身は、剣道部のエースに至るまでの修練の結晶であり、また生真面目な
性格を自ずと現しているようでもある。
剣道部のエースという所からも分かるように、彼は現在高校生。
通っている銀成学園高校内では、トップクラスの成績を収め、更には生徒会副会長すら務め
ている。
もっとも、「副会長」などという役職は、彼が本当に欲しいモノを手に入れるための踏み台に
すぎず、一時はそれを利用して、銀成学園高校の生徒全員を化物のエサにする恐ろしい手
引きを目論んですらいた。

そんな彼が、「化物」である所の調整体征伐を行っているのには理由がある。
1人の少年との戦いで大きな変化を遂げたのが下地ではあるが、直接的なきっかけは。
8月24日。
ある一大決戦で受けた傷の療養と検査を兼ねて入院していた秋水が、退院の許可を得ると
同時に、その指令は下った。

「残党狩り、ですか?」
「ああ。大戦士長からの指令でな。動ける戦士から順に、共同体やホムンクルスを殲滅して
いってな、ゆくゆくはこの世代のホムンクルスを制圧する方針だ」
キャプテンブラボーこと防人衛は、ゆったりとしたベッドに身を預けたまま外を見た。
がっしりとした体格の、職員室を探せば1人はいそうなツンツン頭の男性だ。年は20代後半。
「本来なら、バタフライを斃してから虱潰しに処理していくはずだったんだが……黒い核鉄と
ヴィクターの件で延びてしまってな。正直、ようやくといった所だ」
防人は視線を秋水に移し、
「……活動こそしてませんが、まだかなりの数が潜んでいる筈です」
やや翳を帯びた秋水の肩に、柔らかく手を当てた。


382 :永遠の扉:2006/08/14(月) 10:15:29 ID:bp6/Vkw70
「本当なら戦士・斗貴子の方が適役なんだが──ムーンフェイスが少し気になるコトをいって
いてな。そっちを調べてもらっている。すまんな。お前の立場だとフクザツだろうが、やってく
れるか?」
端正な顔は迷うコトなく頷いた。
「彼には及びませんが、できうる限り」

防人が迷うコトなく1人の少年の姿を思い浮かべたのは、彼が秋水へ大きな転機と変化を及ぼ
したのを知っているからだろう。

で、いまに至る。
秋水たちが戦っていたのは、銀成学園高校裏手にある廃墟。
通称「オバケ工場」という所だ。
周りには雑草が生い茂り、錆びたマンホールすら覆い隠している。
建物はもはや廃墟だ。
壁にはサビが浮き、あちこちで赤茶けた骨組みが空しく月光を浴びている。

「いいのよ秋水クン。たまには私も援護してあげないと」
先ほど「姉さん」と呼ばれた女性は、秋水の前に歩み寄ると優しく笑いかけた。
彼女の名は早坂桜花。秋水の双子の姉だ。
奇麗なMの字に切りそろえられた前髪と、端正な漆黒の瞳が印象的な女性だ。
腰の辺りまで伸びた見事な黒髪は、「大和撫子」という言葉がピッタリで、事実彼女の物腰
は(表向きだが)常にしとやか。人望も厚く、生徒会長すら務めている。
モデル並みの長身をいやにゴシックロリータめいた制服に包んでいる彼女の横で、何とも珍
妙な物体が指を突き出した。
「もう今日の任務終わったし、さっさと帰ってブラ坊に報告しよーぜ。秋水」
桜花とは対照的。一言でいうと心身とも粗悪で不細工。
キューピー人形を上下に押しつぶしたというか、自動車のライトをナイズドした三白眼を肉ま
んみたいな頭に引っ付けてついでに申し訳程度の体を与えたというか。
ユーモラスな二頭身の天使、といおうにも背中から生えた蝶の羽のせいで断言し辛い。
名前はエンゼル御前。ほとんどのものはこの物体を「御前(ゴゼン)」と呼んでいる。
「そうね。ちょっと気になるコトもあったし、寄宿舎で詳しく話しておいた方がいいかも」

383 :永遠の扉:2006/08/14(月) 10:16:04 ID:bp6/Vkw70
「気になるコト?」
「ここに調整体がいたコトもだけど、ちょっと見て」
桜花は携帯電話を取り出していくつか操作をすると、画面を見せた。
そこには人間の胎児を金属質に塗り替えたサッカーボール大の生物が、床に何匹も固まっ
ている様子が映し出されていた。
曰く、秋水が調整体の群れを相手どっている頃、工場の地下で見つけたらしい。
「もちろん、まだ生きていたからトドメは刺しといたぜ」
「本体……にしては変だな」
秋水は眉をひそめた。
本体。正式にはホムンクルス本体という。
動物や植物、もしくは人間の細胞をベースに作られる生物で、人間の脳に寄生させるコトで
人喰い不可避の怪物、「ホムンクルス」が誕生する。
ただし本体自体は非常に脆弱で、密閉フラスコなどの狭い閉鎖空間の外では一日と持たない。
「近くに何か、保存する容器は?」
桜花はかぶりを振った。
「それがなかったのよ。培養器とか、保存できそうなモノは何にも」
「というか、コレでかくね?」
携帯電話の横から画面を2回つつくと、御前は首を傾げた。
「確かに。姉さんと俺がL・X・Eで見た本体は、3cmぐらいだった」
しかし桜花が撮影したのは、サッカーボール大。
「ね。気になるでしょ? L・X・Eの残党が何か企んでいるのかも。だから電話じゃなく、直接ブ
ラボーさんの所へ行きましょう」
やがて2つの足音+珍妙な飛行音はオバケ工場から立ち去った。

のを確かめたのか。

生い茂る雑草の中で、金属とコンクリートが擦れ合う音がした。
濃緑の草に埋もれていたマンホールのフタが、内側から開いたのだ。
外側から器具を使わねば持ち上がらぬほど重いフタが軽々と、だ。
更に隙間からは、大きな瞳が秋水たちの去った方角を睨(ね)めている。
「…………」
マンホールの影から黄色っぽい髪が一瞬覗き、フタが閉じた。

384 :永遠の扉:2006/08/14(月) 10:20:43 ID:bp6/Vkw70

横にやたら長い4階建ての校舎が、うっすら白く輝いている。
銀世学園高校の校舎だ。
夏休み終盤ゆえに校内には人気がない。灯かりもない。
建築材本来の色に月光が照り返して闇にひっそり浮かんでいる。
オバケ工場の方から歩いてきた秋水たちは、校門の前でツと足を止めた。
「なんで開いてんだ?」
まず疑問を口にしたのは御前。
「変ね」
備え付けられた鉄の引き戸が、人一人が通れるぐらい開いている。
そのレールをまたいで、秋水は辺りを見回した。
「校庭に人影はないようだ」
呟きながら、彼はさりげなく右掌を握りしめた。
「誰かが昔の私たちみたいなコトをしてると思ったけど、そんな訳ないわよね」
桜花は秋水を見て、ちょっと沈んだ顔をした。
「ひとまず、学校の周りでも探ってくるぜ」
御前は空高く飛んで、見えなくなり。
5分もしただろうか。
「ね。秋水クン。念のため、学校の中も調べてみない? L・X・Eの残党が潜んでいたら大変
だし」
前触れもなく雑談を打ち切って、桜花が提案した。
「構わないけど」
「じゃあ決まりね。私は御前様と1階から、秋水クンは屋上からお願いね。セキュリティの方
は大丈夫。解除されてるみたいだから」
いやに口早な桜花と共に、秋水は正面玄関まで歩き、そこで別れた。

階段を上っていく弟の足音に耳を澄ませると、桜花は伏目がちに呟いた。
「そうよね。もうそろそろ寂しくなる頃よね」
玄関のドアをそろ〜っと開けて、御前もやってきた。
「さすがにツムリンの特等席にはいなかったけど、じーっと月を見てたぜ」
デフォルメの効いた三白眼をじょぼじょぼに湿らせて、御前も顔を伏せた。
「秋水はカッコいいから、顔を見て少しぐらい元気出して欲しいな」

385 :永遠の扉:2006/08/14(月) 10:22:32 ID:ZHGU06se0
ぽつり呟く御前の頭を撫でながら、桜花も深くうなずいた。

香しい感覚が、彼女の中に漂っている。
鼻に手を当てて、余韻に浸っていたいような心地よさと、涙を浮かべたくなる暖かさ。
原因は……御前。
桜花と意識を共有しているから、御前の見たモノ聞いたモノは桜花にフィードバックされる。
御前を通し、1人の人物を屋上に発見して以来、香りは桜花の中に立ち込めている。
理由は分からない。
(そういえば、お見舞いのお花を選んでくれたのは、あのコとあのコのお友達だったわね)
ただ嗅覚を強く満たす花の香りが催すのは。
かつて覚えた、未来が変わっていきそうな予感。

秋水も姉と同様に、1人の人物を屋上に見た。
暗い階段を上りきり、屋上に至る扉を開けようとしたその刹那、彼は非常にか細い気配を感
じた。
ずっと浸かっていた世界の住人の、獰猛で薄ら汚れた死の気配とはまるでかけ離れた、今
にも消えていきそうな儚げな鼓動。
なぜか、鼻腔をいい香りが通り過ぎた。記憶の底に沈んでいる、いい香りが。
秋水は、一瞬迷ったが、ゆっくりと扉を開けた。

その少女は、扉に背を向けて夜空をじっと眺めていた。
「少女」と秋水が分かったのは、腰まで伸びた栗色の髪と、銀成学園の制服のせいだ。
この学校、男子はオーソドックスな学生服だが、女子に限ってはゴシックロリータじみたひら
ひらの制服を着ている。
髪と暗闇のせいで全身像は分からないが、ロングスカートの裾へギザギザと三角形の布地を
縫ってあるのは間違いなく、銀成学園の制服だ。
正方形の石版が規則正しく敷き詰められた屋上の中央に佇みながら、少女はじっと夜空を
見上げている。
夜の、しかも遠目からでは断言できないが、少女の頭は微風をうけるススキよろしくわずか
に揺れているようだ。
声を掛けるのははばかられ、秋水はただ、少女と同じモノが見えるよう空を見上げた。


386 :永遠の扉:2006/08/14(月) 10:26:39 ID:ZHGU06se0
そこには見事な下弦の月が浮かんでいた。

ただそれだけのコトなのに、秋水は激しく動揺し、少女の後ろ姿を確認すると息を呑んだ。
(まさか……君は)
かき乱れた気配というのは、無言でも空気を介して伝わるらしい。
少女は肩をびくりと震わせると、恐る恐る振り返った。
「……誰?」
夜空に柔らかい声が反響し、秋水は慌てて表情を繕いかけたが、すぐ驚きに転じた。
「しゅ、秋水先輩!? どうしてココに」
振り返って素っ頓狂な叫びを上げる少女の目には、涙がうっすらと残っていたからだ。
秋水は彼女と面識がある。
あるからこそ、月を見上げて涙を溜める心情を瞬時に理解し、理解したからこそ、この生真
面目な青年は紡ぐべき言葉に詰まった。
給水搭を背に、秋水は少女──武藤まひろを複雑な表情でしばし眺めていた。

「お兄ちゃんが月に消えて1週間ですもの。まひろちゃんもきっと寂しいでしょうね」
下駄箱の近くで、桜花は御前の頭を撫でながら深くため息をついた。

8/27。
太平洋における一大決戦にて、武藤カズキという戦士が敵と共に月に消えてから1週間目
の出来事である。

387 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/08/14(月) 10:29:12 ID:ZHGU06se0
この話ですが、作中でかなり日数が経過しそうなので、矛盾防止用の表とかがあるのです。
以下はその一部。○は原作、☆はオリジナルの出来事です。

08/06.   ○「決断を要す」 (カズキが人間で居られるタイムリミットから逆算)
08/09.   ○「BOY MEETS BATTLE GIRL」 (本誌最終回。一般的な登校日から推測)
08/20※.  ○「ファイナル」  カズキとヴィクター、月へ。☆戦闘終了後、秋水が入院。
08/22.   ☆皆神市で久世屋秀による殺人事件発生。
08/23.   ☆上記事件を根来と千歳が請け負う。
08/24.   ☆根来たちが皆神市に到着。潜入を開始。 鷲尾正勝と交戦し撃破。秋水、退院。
08/25.   ☆総角主税が皆神市に現われる。千歳、ヴィクトリアと接触。
08/26.   ☆ヴィクトリア、千歳の協力で銀成市へ。根来と千歳が久世屋を斃す。総角、一時退場。
08/27.   ☆永遠の扉 第1話。
(中略)
09/18.   ○「ピリオド」(序盤〜中盤。回想は除く) 最後の決戦。カズキとヴィクター帰還。
10月半ば ○「ピリオド」(終盤) 蝶人パピヨン東京タワーに出没。ヴィクター以下ホムンクルス月へ。
12月半ば ○「アフター」 

※ 西暦をまず「2005年」とし、劇中の描写を元に「埼玉の夏祭り」と「満月」が重なる日を推測。

月齢 ttp://www.astroarts.co.jp/phenomena/2005/ph200508-j.shtml
祭り ttp://www.ecity.ne.jp/maturi/jan.asp?P_FNO=&P_ANO=&P_MON=08&P_Search=&P_PAGE=4

ここから8/20と決定。(祭りは今年のだけど、去年とほぼ同じの筈)
時系列が「2005年」なのは、「2004年8月」の満月は「8/30」で、夏祭りと不一致な為。
ttp://www.astroarts.co.jp/phenomena/2004/ph200408-j.shtml
ピリオドも同じく、満月の9/18と設定。
5巻31ページ2コマ目では「2004年」のジャンプが投げられてたけど無視。
たぶんアシさんが感性で描いた裏づけなしの描写なので。

ファイナル冒頭や10巻125ページ2コマ目の「夏休みがもうじき終わる」も、残り10日ならば
許容範囲。30日なら「明日で終わる」という方が自然&逼迫感を出せるのにそれをしてない
というのも論拠の一つ。というか、ファイナルが30日だとネゴロの時系列が破綻してしまう……

388 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/08/14(月) 10:34:47 ID:ZHGU06se0
なにぶん、千歳が根来から伝票処理を教わる場面で8/26と描いてしまったので。
以上、長々と申し訳ありません。

新作はいかがでしたでしょうか?
タイトルや内容自体は一年ぐらい前から考えてたので、自分的にはようやくのお
披露目なのです。コレ。

テーマの一つには「代わり」という要素があります。(ちなみに前作のネゴロは「仕事」とか「能力」がテーマ)
登場人物の誰もが誰かの面影を追ったり務めたり求められたり負わされたり。
ただしそこからちょっと外れたキャラもいます。彼の名は蝶野爆爵ことDr.(ドクトル)バタフライ。
過去の中で一つの物事だけを、見つめていくコトになりましょう。多分。

ところで銀杏丸さん。爆爵絡みの「アリス初発動」とか「幕末」とか「劣」に絡んだエピソードはお考えでしょうか。
もし構想をお持ちであれば、こちらは自重いたしますので……

>>250さん
今年入ってからは初めてかも。パっと終わらせられるのは気軽です。
物事を一生懸命組み上げるのももちろん楽しいのですが、破壊にはまた格別の魅力が。
そして新連載です。が、すみませぬ。ペースはまた落ちるので……

>>251さん
やはりデビルークのような作品のが本来の芸風ではないかと思っとります。
なお、最近読んだ作品で気に入ったのは「学園キノ」です。あのノリは最高。
時雨沢作品では「アリソン」「リリアとトレイズ」もなかなか。

ふら〜りさん
ありがとうございます。グロはあれぐらいのテンポのが……えええ!! 堪能されるんですか!?
いやはや。ふら〜りさんは懐が深い。乙一のGOTHや暗黒童話などいかがでしょうか。夏ですし。
根来の変化は自分的にもすごく描きたい部分! プロットでは千歳と2回ほど行動するのでその時に必ず!

389 :作者の都合により名無しです:2006/08/14(月) 11:16:27 ID:FCcVo9Lz0
おお、スターダストさん新作お疲れ様です!
今回は大好きな早坂姉弟が大活躍しそうなので期待しております!
プロットは前から出来てたみたいですね。前作より更に大作になりそうな!

原作とオリジナルの設定のすり合わせが細かくてすごい・・

390 :作者の都合により名無しです:2006/08/14(月) 14:27:12 ID:IHT55Zla0
スターダストさんは本当に武装錬金を愛しておられるなあ。
原作のラストとクライマックスの間に物語か。楽しみだ。

391 :作者の都合により名無しです:2006/08/14(月) 21:31:03 ID:wh5jzUDs0
新連載お疲れ様です、スターダストさん。

秋水と桜花は、正統なヒーローとヒロインって感じがしますね。
トキコさんとカズキよりも。
カズキが戻るまでの間に、どんなドラマチックな展開があるか。
まひろと秋水も少しどうなるか? 楽しみです。


392 :ふら〜り:2006/08/15(火) 00:10:36 ID:TTPc/Q/10
>>17〜さん
ガロウズのみならず牙炎もか。主人公より明らかに強力・有能なキャラって、いつ主人公
が成長して抜いてくれるかという楽しみの目標。後々、牙炎が強敵に惨敗して、そいつを
バーディーとシアンが倒す、とか。地下組織の人々にリュミールの謎にと、興味色々です。

>>一真さん(二日間に及ぶ私の夏休みは明日で終わり。……あるだけマシですね社会人)
求人広告を頻繁に見てるってことは実際あんまり労働してないんじゃないかと思ったり。
でスタンドごっこ、周囲の被害はともかく楽しそうに暴れてますな。私も幼少時に読んで
たらやってたかも。しかしこれを書きつつ構想しておられるシリアス編って一体どんな?

>>サナダムシさん
・めざせ孫悟空!
突き落とされましたね、両親を屠ったかめはめ波で。笑ゥせぇるすまん的というか、望み
が叶った途端にどん底、で人類滅亡までいってしまう。短編ならではの一気呵成ぶりが良!
・やさぐれ獅子
>まだ敗北は許されない。ナマクラでも名刀を倒す手段はきっとあるはず。なくとも作る。
おぉ何だか思いっきり熱血主人公思考ではないですか。でも挑戦者加藤、ちとズルいような
気も。真面目に修行しても、加藤にそこまでできるか? 武神はそう認めてるってことか。

>>しぇきさん
確かにメーテルの出番はもう少し欲しかったですが、でも999らしい哀しさのある物語
でした。原作(アニメしか知りませんが)でも結構頻繁にゲストキャラが死んで、その度
に鉄郎が学んでましたし。その空気は充分感じられました。連載再開も待ってますよっ。

>>スターダストさん(矛盾防止表……執筆に取り組む姿勢の真剣さ、感服しましたっ)
>キューピー人形を上下に押しつぶしたというか、
以下延々。想像できるようなできないような、でも詳細でイカした描写が流石です。原作
未読者としては読み易くて有り難い。千歳や根来も、スターダストさんの作品でさんざん
萌えて抱いたイメージを崩したくないから、むしろ原作を見たくないというのが本気本音。

393 :作者の都合により名無しです:2006/08/15(火) 11:31:30 ID:yjw9M/Y30
ふらーりさん、どんなハードワークだよ。死ぬぞ。
あと錬金は面白いから読んだ方がいいですよ。
少なくとも千歳や根来は原作ではほとんど活躍してないしw


394 :作者の都合により名無しです:2006/08/15(火) 12:41:40 ID:1N0wvC870
育児板【独りで】虐待をやめたいと思う人 5【悩むな】
http://life7.2ch.net/test/read.cgi/baby/1151998845/

21 名前:名無しの心子知らず[sage] 投稿日:2006/07/06(木) 17:15:49 ID:C9eIZrXF
さっき、オムツ替えてる時に吐いたりしたからイライラが一気に爆発してかなり強くお尻と太ももの後ろ側を叩きました
ベビは物凄く泣いて真っ赤になって声が擦れて出にくいのに、泣きまくっています。
それに、またイライラして頬を力任せにつねりました。ベビは泣きまずにずっといます。

28 名前:可愛い奥様[sage] 投稿日:2006/07/06(木) 19:26:34 ID:ZMKP+FEy
毎日一緒にいると疲れてイライラしてひどい罵声とともに叩いてしまう。
外では優しいいいお母さんのところに生まれて幸せだね、何て息子に声をかけてくれる人がたくさんいる。
でもそれは外だけ、私は鬼母です。最近は息子はおびえています。さっきも頬が真っ赤になるまで叩いてしまった。

32 すぐカンシャクを起こし、ごはんを食べない一歳二ヶ月の赤を怒鳴りながらビンタしてしまいました。

61 赤のほっぺをつねってバタバタもがきながら泣いてる姿を見たら楽しくてスカッとした。
お尻もつねって青く腫れた。腫れた赤のお尻をまた指で弾く。
ギャン泣き通り越してひきつけ起こすかってくらい絶叫泣き。このまま、ひきつけ起こしてほしいよ。

78 赤は、叩いたりつねったりしたり眠らせなかったのでひきつけ?みたいな(過呼吸みたいなの)を起こし、
唇が紫っぽくなり顔が青白くなったので一時預かってもらえました。今は赤と離れてホッとしています。

149 夜旦那が仕事でいない間気持ちのコントロール出来ないで子供を蹴ったり殴ったりしてしまいます。

276 まだ産まれて12日目なのにイライラして叩いてスッキリしてしまった。あたしは心の病気?それとも育児疲れ?

既婚女性板【心の】旦那には絶対言えない過去【奥に】
http://human5.2ch.net/test/read.cgi/ms/1154259322/
・援、風呂、整形、堕胎。言ってない   ・経験人数40人以上
・中学の頃円光・整形・家出・乱交やりまくり・風俗・家庭内暴力  他多数

395 :作者の都合により名無しです:2006/08/15(火) 15:24:50 ID:VJ4pkt+M0
ふらーりさんは本当に知識が偏ってるなw
その知識を利用して、新しい連載期待してます。

396 :永遠の扉:2006/08/16(水) 00:15:15 ID:5D8ctPse0
かつての桜花と秋水は、幼い頃の過酷な経験から

「ホムンクルスとなって、2人だけで永遠に生きていく」

コトを望み、L・X・Eという集団に与していた。
銀成学園高校に入学したのも、優秀な成績を収め生徒会で要職に就いたのも、全ては生徒
から信頼を得て、L・X・Eが学校を襲撃した際に『食事』が円滑に進むよう便宜を図る為。
その傍ら秋水は、剣道部で修練を積んでいた。
彼は、強くなれるだけ強くなりたかった。
桜花のために。秋水たちの望みのために。
全国大会で個人4位になっても、希求は尽きなかった。
そんな彼だから、いつしか剣道部内で相手になるものがいなくなり、伸び悩む時期が到来した。
まひろの兄・武藤カズキが、秋水の相手をかって出たのはその頃だ。
個と全。
守りたい対象こそ異なれど、強さを求める姿勢(スタンス)が合致しているから彼らの相性は
非常によく、遠慮なき稽古の中で互いに強さを高めていった。
やがて転機が訪れる。
武藤カズキはL・X・Eの一味を倒す使命を持った「錬金の戦士」であり、桜花と秋水には「錬
金の戦士」を排除する命令が下った。
互いに互いの正体を知らぬまま稽古を続けていたカズキと秋水だったが、紆余曲折を経て
敵対関係が発覚し、戦った。
実力ではカズキを圧倒していた秋水だが、勝負を賭けた一撃の後に奇策を打たれ、重傷を
負った。
カズキは聞いた。なぜ秋水たちがL・X・Eに与するのか。
秋水は答えた。自分と桜花の望みと、それを求めるに至った経緯を。
話が終わると、居合わせたもう1人の錬金の戦士が、桜花と秋水を殺害せんと襲い掛かった。
だがあろうコトかカズキは。
桜花たちを救うべく、もう1人の錬金の戦士に手向かい、殺害を全力で阻止しようとした。
過去ゆえに鎖(とざ)されていた早坂姉弟の世界が、開かれると頑なに信じて。
秋水が、カズキに対して取り返しのつかないコトをしてしまったのは、その時だ。
桜花の機転とカズキのひたむきさにより、どうにか最悪の事態は免れたが、戦闘終了後の
秋水は自らの弱さを深く恥じ、しばし剣の師匠の下へと修行に出た。

397 :永遠の扉:2006/08/16(水) 00:16:57 ID:5D8ctPse0
カズキに桜花を託し、道中、どこからともなく漂う花の香りに双眸をかすかに潤ませて。
自らに打ち克ったその時には、正面からカズキに謝罪するコトを誓いつつ。
約2ヶ月後。
戦闘能力の高さに着目され、「錬金の戦士」にスカウトされた秋水は、太平洋上での一大
決戦に赴いた。
時は8/20。敵はL・X・Eの中核の男。
当時は眠っている彼にさほど関心のなかった秋水だが。
男の叫びに、いいようのない使命感を感じた。
(そして後日、事実関係を把握し、1人の少女に逢いにいった)
男は、怒りの赴くままに斧を振り下ろし、秋水と回りにいた戦士たちをなぎ倒した。
カズキがやってきたのは正にその瞬間。
彼はヘリから男めがけて突撃槍を構え突進し、切札の効力のなさを知ると裂帛の気合と共に
全膂力を解放!
突撃槍から山吹色の奇麗な光を夜空に撒き散らしながら、男もろともぐんぐんと垂直に上昇し
驚嘆、慟哭、咆哮、喪失、落涙、さまざまな思惑が夜空を見上げる中、光と共に月へ消えた。
と同時に。

秋水は謝罪する機会を失った──…

桜花は御前を適当な場所に隠すと、屋上から降りてきた人影に声をかけた。
「あら。珍しい組み合わせ」
玄関付近に艶のある声が響き渡り、まひろは秋水を気まずそうに見た。
年は15で高校1年生なのだが、全体的な雰囲気はどこか大人びている。
まんまるい黒瞳や太くも薄い眉毛は、小さな鼻と小さな口と相まって非常に愛らしいのだが、
見れば見るほど童顔のOLめいていて、15歳だという確証に繋がらない。
身長も同年代の女子の中では低くなく、華奢ながらにかなり豊かな健康美を誇っている。
もし、キリっとした彼女を兄と並べて見知らぬ者たちへ関係性をクイズすれば、「妹」という回
答は全体の0.5割程度からしか来ないだろう。
後は「留年した同級生」「同級生」「幼なじみ」「従姉」「姉」などなど。
(髪のせいかしら)
桜花は折に触れて、まひろのギャップを考えていたりもするが、なるほど。
ウェーブの掛かった豊かで長い栗色の髪には、年不相応のシャレっ気がある。

398 :永遠の扉:2006/08/16(水) 00:18:02 ID:5D8ctPse0
別に染めているワケではなく地毛なのだろうが、兄のカズキが黒髪なのを踏まえるとやや腑に
落ちなくもない。
ただしそんなまひろの顔も、ひとたび何らかの表情が浮かべば一気に幼くなる。
傍らの秋水と、正面で下駄箱に背中を預ける桜花を見比べるまひろは、太い眉をハの字に
しかめて戦々恐々、申し訳なさを全面に押し出していて、まるで怒鳴り声を受ける3秒前の
子犬のように心細げだ。

屋上で遭遇した彼女と秋水はしばらく言葉もなく固まっていたが、それでは埒があかぬと意
を決した秋水にここまで連れてこられた。
(でも、どうして制服を着ているのかしら?)
まひろは例のゴシックロリータめいた制服姿だ。登校日でもないのに。
桜花はちょっと首を傾げたが、ひとつの推論を立てた。
胸にかかったタイや、綿がつめられ丸みを帯びた肩や、腰に巻かれた大きなリボンのせいで
おおよそ学校らしからぬハデハデな制服は、密かに人気がある。
月にいるカズキも心惹かれて銀成学園に入学したという。
ならばまひろは、その衣装を屋上から月にいる兄へ見せようとしていたのかも知れない。
一見荒唐無稽だが、こんな推論をしてしまうほどまひろの性格はボケている。
なお、先ほどまで調整体退治に参加していた桜花が制服を着ているのは
「戦闘で傷付いても、市販の服と違ってすぐ替えが効くから」
という合理的理由による。
秋水が剣道着姿なのもほぼ同理由だが、加えて「動き易い」という理由もある。

桜花が考えている間、秋水はひたすら無言だ。
姉の指示を待っているし、元々どちらかといえば寡黙な性格だし、まひろにどういう言葉を
かけてやればいいか分からない。
考えれば考えるほど、いうべき言葉か否かの判断に悩み、奥底に押し込めるのだが、黙って
いる自分がひどく薄情に思えてまた言葉を探し、悩んで、押し込める。その繰り返しだ。
苦慮に没頭すると、端正すぎる顔はネックになる。
切れ長の目がすっと細められ、頬は強張り、もとより精悍な秋水は期せずして不機嫌めいた
表情へ変じた。剣道着姿で腕組しているのも威圧的だ。
まひろは慌てて、堰を切ったように話し出した。

399 :永遠の扉:2006/08/16(水) 00:18:56 ID:5D8ctPse0
おたおたと冷や汗を飛ばしながらの謝罪は、話があちこちに飛んだり重複していたりしたが、
要約するとこうだった。
「ごめんなさい! お散歩してたら校門が開いているのを見つけて、つい屋上まで!」
(開いてた……? まひろちゃんが開けたんじゃなくて? じゃあ一体誰が?)
桜花は少し訝しんだが、覚られないよう話を変えた。
「まぁまぁ。ちゃんと閉めてなかった先生にも責任はあるし、まひろちゃんは悪いコトする為に
忍び込んだワケでもないんだから、そんなに気にしちゃダメよ。でも、今度からはオイタしちゃ
ダメよ?」
桜花は人差し指を立てて、ゆったりと笑いかけた。
生徒会長というよりは保母さんだ。ぐずる子供も一撫ですればたちどころに笑顔に変えれそうな。
まひろも例外ではなく、救われた表情でコクコクと頷いた。
「とにかくこんな時間だ。俺と姉さんも今から寄宿舎に用事があるから、君を送る」
黙りこくっていた秋水は、ようやくそれだけを口にした。
(あらあら。秋水クンが他の人を気にかけるなんて珍しい)
きっと彼は彼なりに、屋上で見たまひろの姿が気になっているのだろう。
クスクスと桜花は笑うと、一ついいコトを思いついた。
「そうね。じゃあ秋水クンはまひろちゃんをお願い。私はちょっと調べたいコトがあるから、後
から寄宿舎に行くわね」
秋水は明らかに困惑した。
桜花の「調べたいコト」が分からないし、夜の学校に1人置いていくのも気が引けるらしい。
かといってまひろを放っておきたくない様子もありありと浮かんでいて、桜花はますます楽し
くなってきた。
優雅に歩を進めて秋水とすれ違うと、耳打ちした。
「たまにはね、秋水クン」
「?」
「私以外の女のコと話さなきゃダメよ。せっかくカッコいいんだし、チャンスなんだし。少しずつ
でいいから頑張って。ちゃんと私も応援してあげるから」
呆気に取られる秋水を後に、桜花は軽やかに廊下を走り姿を消した。
(そういう問題では)
秋水は困ったようにまひろを見た。
すると同じような表情のまひろと目が合い、彼女は慌てて目を逸らした。

400 :永遠の扉:2006/08/16(水) 00:20:16 ID:5D8ctPse0
今の秋水にとっては、まひろは恩人というべきカズキの妹でしかないし、関係を発展させると
いうのは想像の範疇を超えている。
ゆらい秋水は、かつて世界というものをひどく嫌っていて、桜花以外の人間に心を開いた試し
がない。
カズキとの戦いを経て、世界を歩くきっかけを得はした。
が、他人と関係を構築するのは、自分に打ち克ち、カズキに謝罪をしてケジメをつけてからと
胸中密かに決めている。
だがカズキは地球上のどこにもおらず、謝罪の機会は失われたまま。
それを口実に、謝罪を放棄するのは秋水にとりどうしても許しがたい。
生真面目さゆえの取り決めごとに縛られて、少しも前に進んでいけない自分がもどかしくもある。
さりとてこの場においては、
「……送ってく」
というしかないだろう。
「じゃあ走ろうよ!」
まひろは拳を握り締め、柔らかな声を張り上げた。
「は?」
「今なら桜花先輩に追いつけるよ。それから手伝おうよ! だってほら、真っ暗だし、一人だ
と危ないよきっと。あ、私が帰るのは桜花先輩の用事が済んでからでも大丈夫!」
ああそういう意味か、と秋水は眉を動かした。
まひろは意外に物事をマジメに考えているらしい。
「キミが姉さんのコトを気に掛けてくれるのは嬉しいが、たぶんもう追いつけない」
「どーして?」
「既にどこかに隠れている。探しても見つかり辛い場所に」
「なんで? あ、もしかして用事ってかくれんぼ!?」
「何をいい出してるんだ君は」
秋に肥ゆる馬より天高く飛翔したまひろの思考に、秋水は呆れ果てた。
「じゃあ探しちゃう! 何を隠そう、私はかくれんぼの達人よ!」
いやにアクセントのはっきりした、どこぞの団長じみた威勢のいい声を上げると、まひろは
桜花の消えた方へ走ろうとした。
つい今しがたの判断をもう忘れているらしい。
そもそもかくれんぼの達人は探す方ではなく、隠れる方では?
「やめるんだ。真っ暗で危ない」

401 :永遠の扉:2006/08/16(水) 00:21:40 ID:E90LVNw70
秋水は血相を変えて立ちはだかった。
「ゴメン。でも桜花先輩が気になって」
謝るまひろに、秋水は小さくため息をついた。
「俺も気になるが、まずは君から送っていく」
「え、だからその…」
「俺たちのせいで君の帰りが遅れたら悪い」
転瞬!
「やっぱりいいよ。うん。大丈夫。一人でちゃんと帰れるから。だから桜花先輩をよろしくね」
にっこりと笑うと、まひろは走った。
「……ほら。桜花先輩にもしものコトがあったら、タイヘンだから。ねっ?」
表情は分からない。まひろは秋水に背を向けて、下駄箱の上から靴を取っていたから。
てきぱきと履き、扉めがけて走るまひろ。
くるりと踵を返し、秋水に慌しく手を振って、校庭に出た。
「あ…」
正にあっという間の出来事だ。
秋水は手を所在無げに伸ばしたまま、少し考えこんでしまった。
まひろは別に送らなくていいといった。
これは秋水を嫌っているワケではなく、ただ桜花を送らせようとしているのだろう。
善意でまひろが動いたのなら、それを受け取り、桜花を探すべきだろう。
だが、そんな当たり前の考え方を押しのける映像が、秋水の脳裏に去来する。
まひろは一人、夜の屋上で月を見上げて泣いていた。
抱いた寂しさがどれほどのものか、けして分からぬ秋水ではない。
だからごく自然に靴を履き、扉を開けていた。
目に入ったのは薄暗い校庭だ。まひろの姿はもうそこにない。
言葉もなく立ち尽くし、校庭を眺める。
ぞわぞわとした不気味な肉の感触が、秋水の掌に起こる。
彼はその不快に瞑目した。
闇に浮かぶ思い出は、けしていいものではない。何故ならかつて秋水は──…

──俺は強くなれるだけなりたい。
──姉さんのために! 俺たちの望みのために!!
──勝つ!! 俺はここで負ける訳にはいかない!!

402 :永遠の扉:2006/08/16(水) 00:22:27 ID:E90LVNw70

彼と桜花をかばってくれたカズキを、背後から刺してしまったからだ。
目を狂騒に濁らせて、善悪も倫理も何ら考えず。
肝臓の辺りを見事に貫いた愛刀を引き抜くと、生々しい肉の感触が掌に走った。
カズキは傷口からおびただしい量の血を校庭に吸わせながら、地面へと崩れていき。

その致命傷を、桜花が引き受けた。
彼女の武装錬金、エンゼル御前の篭手から放たれる矢の能力で。
カズキに矢が刺さると、パールピンクの光と共に傷が桜花へ移った。
秋水は駆け寄り、くず折れた姉の手をつかんだ。
だが手からはみるみると暖かさが失われていき。
絶望と悲壮に沈む秋水へ、桜花は笑ってこういった。

──もしもあの時… 早坂の扉が閉ざされた時…

──すぐ外に武藤クンがいたら絶対に助けてくれたんだろうな…って
──そして私達の友達になってくれたんだろうなって…
──そう思ったら…ね……
 
もうずいぶん前のコトなのに、脳裏に響く声は鮮明だ。
秋水が守ろうとした桜花が、皮肉にも彼の行動で死にかかった時の声だから、きっと永遠に
掠れるコトはないだろう。
「君なら迷わず2人とも送っていくんだろうな」
月を見上げ思い出すのは1人の男。まひろが想っていたであろう男。
彼は過酷な現実を耐え抜いて、最後に傷だらけの体でお人好しに笑っていた。
されど彼はけして痛みを感じないワケではない。
傷に呻き挫折を悔いて、殺人を忌み別離を恐れる。
心身ともに、痛みについてはごく普通の感覚を持った少年だった。
もし帰ってこれた時、身内や家族が傷付いていれば、きっとうろたえる。
守れなかった自分を責める。
手の届かぬ場所にいたから、などという諦めも言い訳も絶対ないのだ。
ましてまひろは彼にとり、一番近く一番大事な身内だ。

403 :永遠の扉:2006/08/16(水) 00:23:18 ID:E90LVNw70
何かあれば自責の念はきっととてつもなく大きくなる。絶対に。
秋水には分かる。
夜の校庭を凝視すれば嫌が応にも蘇る記憶たちが、生々しく分からせる。
自責に陥る彼の辛さを。まひろの抱いた寂しさを。
どちらもかつて激しく胸をかき乱した感情だから、分かってしまう。
簡単には消せないと分かっていても、みすみす諦めるコトだけはしたくない。
少なくても秋水と桜花の世界を切り開いた男は、そうしていた。
それに──…

さっき背を向けながら「もしものコト」を案じていたまひろは、自分と秋水を重ねていたので
はないだろうか。
まひろはカズキの妹だ。秋水は桜花の弟だ。
立場は似ている。
秋水が、カズキと離れたまひろの心情を察するコトができたように、まひろも、桜花に危害が
及んだ時の秋水の心情を考えていたとしても不思議ではない。
桜花を必要以上に気遣うのは、まひろが感じている痛みを秋水に味合わせたくないからだと
しても、不思議ではない。
なぜなら、まひろはカズキの妹だからだ。
人の痛みを理解し、取り除こうと戦い続けていたカズキの妹だからだ。

そんな彼女から秋水は、カズキを奪おうとしていた。
自分の感じた暗い感情を味あわせようとしていた。

掌に蠢く肉の感触を握りつぶして、秋水は決意した。
「……やっぱり送っていこう」
桜花を1人で帰すのに抵抗はある。が、今の彼女は身を守る武器を持っている。
ならば少なくても、非力なまひろを一人で夜道を歩かせるよりは──
と自分に言い聞かせるように決めるや否や、秋水は校庭を駆けぬけ、瞬く間に校門前まで到着した。
まひろはいた。
「お、秋水じゃないか。久しいな。半年ぶりぐらいか」
欧州的な美形の男と共に。
女性のように豊かで奇麗な金髪を、両の耳前からも細く肩に垂らしている。

404 :永遠の扉:2006/08/16(水) 00:24:05 ID:E90LVNw70
秋水からは見えないが、襟足の辺りからも太い房が背中の中ほどまで垂れている。
着衣はユニクロで売っていそうな安い生地だが、不思議と貧乏くさく見えないのは、男の持つ
雰囲気のせいだろうか。
粗衣に損なわれない沈着さや上品さが自然に出ている。
それらを確認すると、秋水の身は強張った。
「あ、秋水先輩……」
息を切らしながら、まひろは振り向いた。よほど全力でここまで駆け抜けてきたのだろう。
「こっちに来るんだ」
かろうじてそれだけ呼びかけると、秋水は剣道着の懐に右手を入れ、核鉄を握り締めた。
最初こそ金属特有のひんやりした感覚が手に収まったが、徐々に汗に塗れて熱くなる。
「え?」
「なるべく速くこっちに。できれば俺の後ろに」
「う、うん」
まひろは美形に目で謝ると踵を返し、彼女にしては素早い足取りで秋水へと歩く。
その様子を視界の隅に置いたまま、秋水は美形を鋭い眼光で射抜いている。
「おや。ひょっとして俺を忘れたか? とすればつれないな。昔は剣を競った仲だというのに」
「覚えている」
「ってコトは、もしかして秋水先輩のお友達?」
ちょうど秋水の後ろに到着したまひろが、興味深そうに首を伸ばして総角を見た。
やや痛み気味の栗髪が、斜め45度に傾げた頭から垂れて幼い印象を更に強めている。
「総角主税(あげまきちから)。全国大会の3位決定戦で当たった相手だ」
秋水の紹介に、美形──総角と呼ばれた男はニっと笑みを浮かべた。
「忘れられていないようで何より。娘さんを遠ざけたのは、そうだな。髪型が違うせいで俺を
別人と見間違えたと、好意的に解釈しておいてやろう」

405 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/08/16(水) 00:25:08 ID:E90LVNw70
設定のすり合わせは、読み返した時に矛盾があるとすごく「やってしまった!」とヘコんでしま
うので慎重にやりたい所ですね。
一見荒唐無稽な忍法帖シリーズでも、時代考証とかしっかりしてますし。
最近では「核鉄」というアイテムの所持状況を、エクセルに入力してリストなど作っております。
もはやSSと同じく趣味の世界? 

>>389さん
腹黒い桜花と、生真面目な秋水はどちらも描きがいがあり、また思い入れもあります。
プロットでは……そうですね、桜花は日常面で活躍するかも。秋水の戦闘は、最低でもあと
4回、場合によってはそれ以上ですが、まずは剣戟を描けるようにならないと。逆胴もここぞという場所で!

>>390さん
山田風太郎は歴史の空白を、前後の状況から「こうであってもいい筈だ」と描かれた人でして
(司馬遼太郎だと、「こうなるべきだ」と) そんな歴史小説的なIFが好きなのと、HNが1stとZ
の間を描いた0083由来なので、時系列をファイナルとピリオドの間にしてみました。

>>391さん
いやはや。正当な人たちを自分の芸風で描けるかどうか、心臓バクバクですよ。
当面は秋水とまひろと、桜花ともう1人の関係性が軸になります。頭の中には中盤までの
展開はおおよそあるのですが、読んでて楽しいモノであるコトを切に願ってます。ああ、長編って怖い。

ふら〜りさん
>原作未読者としては読み易くて有り難い。
ありがとうございます。容姿のみならず、設定や出来事などについても読み易くしていきたい
です。時系列が錬金終盤ゆえ、情報量はかなり多いので…… ラノベ的に良い出だしや展開
は、「設定を書き連ねる」より「戦闘とかのインパクト大の場面を挟む」のですが、及べるかどうか……

>>393さん
ですよねw 根来は敵その1で、千歳に至っては敵になる機会すらなかったような。
彼女の武装錬金だって、本来のモノからヘルメスドライブへ変更ですし。
ああ、年齢を操るという「クロム クレイドル トゥ グレイブ」の活躍が見たい。とてもとても見たい。

406 :作者の都合により名無しです:2006/08/16(水) 07:48:04 ID:JYGwzutd0
桜花は高校生とは思えないおっとりぶりだなあ。
まひろは年相応に元気だし、秋水はクールというか無愛想というか。
カズキが帰ってくるまでに、多少は2人の関係が発展するのか?

407 :作者の都合により名無しです:2006/08/16(水) 12:28:08 ID:EQtvOOga0
総角主税って原作に出てきましたっけ?
絶対に読めない名前だな・・w

まひろって美形に弱かったかなあ?
ブラボーの裏技にやられてたけどw



408 :作者の都合により名無しです:2006/08/16(水) 18:58:10 ID:VM8oV8nIO
>総角主税
そうかくちから
でいいのかな?

409 :作者の都合により名無しです:2006/08/16(水) 19:54:58 ID:CBdKMLiV0
お疲れ様です、スターダストさん。
まひろはカズキの事が決着つかない限り、恋人なんてとてもとてもの状態ですね。
いずれ来るだろうハッピーエンドまでに、どれだけ苦しむのか?

もう数日で次スレですか。テンプレ作るか。

410 :テンプレ1:2006/08/16(水) 20:20:56 ID:CBdKMLiV0
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart42【創作】

元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1153829716/ 
まとめサイト
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm


411 :テンプレ2:2006/08/16(水) 20:21:59 ID:CBdKMLiV0
ほぼ連載開始順 ( )内は作者名 リンク先は第一話がほとんど

オムニバスSSの広場 (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/bare/16.htm
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
上・ドラえもん のび太の超機神大戦 下・ネオ・ヴェネツィアの日々(サマサ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tyo-kisin/00/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/samasa/05.htm
聖少女風流記 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
やさぐれ獅子 (サナダムシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/yasagure/1/01.htm
鬼と人とのワルツ (名無しさん)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (487氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/487/03-01.htm
シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい (一真氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/silver/01.htm

412 :テンプレ3:2006/08/16(水) 20:22:45 ID:CBdKMLiV0
ドラえもん のび太と魔法少女リリカルなのは (全力全開氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/fullpower/00.htm
戦闘神話 (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/ginnan/1/01.htm
パパカノ (41氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/41/01.htm
バーディと導きの神 (17〜氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/birdy/01.htm
金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』 (かまいたち氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/kindaiti/01.htm
MUGENバトルロイヤル (コテ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/mugen/01.htm
フルメタル・ウルフズ! (名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm
上・オーガの鳴く頃に 下・それゆけフリーザ野球軍 (しぇき氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/nakukoro/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/ballgame/01/01.htm
永遠の扉 (スターダスト氏)
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1153829716/380-386


413 :テンプレ屋:2006/08/16(水) 20:23:42 ID:CBdKMLiV0
邪神様がクリスマスまで一時お休み、という事でとりあえずテンプレから外れました。
個人的にも好きな作品なので、一日も早い復活をお待ちしてます。
しぇきさんとフルメタルさんは復活おめです。
フルメタルさんはたまたまのご復帰みたいですけど、期待を込めて。

ミドリさんが・・4月17日以来来ていないので・・テンプレから・・消えます・・。
出来れば、一刻も早いご連絡を!!!


414 :作者の都合により名無しです:2006/08/17(木) 12:28:39 ID:OPx4xqnN0
永遠の扉 (スターダスト氏)
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/star/06-01.htm

永遠の扉、サイトに載りましたよ
ミドリさんのご復帰を心よりお待ちしてます

415 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/08/17(木) 16:28:48 ID:bJS2SS350
第八十六話「最終存在」

人里離れた山奥で、それはただじっと待っていた。
巨大な機械―――ネオグランゾンと呼ばれるそれの内側。コクピットに当たる部分で、彼は目を閉じて座っている。
シュウ=シラカワ。
彼は誰よりも真っ直ぐに、誰よりも純粋に、ただひたすらに<完全なる自由>を追い求める男。
真っ直ぐであるが故に、他を省みない。
純粋であるが故に、己を遮る何者をも許さない。
彼はいつ、如何なる時も、自由を欲している。
自由に餓えている。渇いている。
だからこそ、それを手に入れるためならば、手段は選ばない。
他の全てがどうでもいいとまでは言わないが、優先順位は果てしなく低い。
他に大事な物がないではないが、優先順位は果てしなく低い。
それ故に、己が自由を貫こうとするならば―――黙っていない連中も現れよう。
野比のび太。そしてそれに連なる仲間たち。
彼らもまた、そんな連中の中の一つなのだろう。
ふと、狐面の男がしつこいくらい繰り返していた持論を思い出した。
<この世で起こる現象は、何があろうが絶対に起こる現象だ。例え起こらなかったとしても、別の時間、別の場所、その
どこかで絶対にその現象は生ずる>
バックノズル。
今ここで戦わなかったとしても、いつかどこかで戦うのだろうか。
<自分がやらなくてはならないことは、絶対に行わなければならない。それでもそれをしなかった時には、別の誰かが
代わりにやってしまう>
ジェイルオルタナティブ。
彼らと戦わなかったところで、別の誰かと代わりに戦うだけなのだろうか。
(・・・狐。あなたのことは好きでしたがね。その持論だけは受け入れられない。それが真実ならば、それでは・・・
それでは我々はただの、運命の奴隷だ。それでもそれが真実ならば―――)
ならば―――運命そのものが、自分の敵だ。
自分の前に立ちはだかるなら―――それが世界そのものであろうとも、戦ってみせる。

416 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/08/17(木) 16:29:22 ID:bJS2SS350
物音がして、思索が中断された。
目の前には、彼の当面の敵たちの姿。
「・・・来ましたか」
<ああ、来てやったとも。テメエを今度こそぶっ潰すためにな!>
マサキの声。今となってはかつての自分を知る、唯一の男だ。
「ふ・・・相変わらず、下品な言い方だ。もう少し言いようがないのですかねえ?」
少しだけ感傷のようなものが湧き上がる。この戦いが終われば、もはや彼との糸も切れて途絶えるのだろう。
あちらが滅ぶか、こちらが滅ぶか。
グランゾンの姿が見えた。乗っているのはアザミだろう。
「久しぶりですね、アザミ。ああもあっさり裏切られたのは、少々ショックでしたよ」
それは本当だ。気まぐれに動物の頭を撫でようとしたら、逆に噛み付かれたぐらいにはショックだった。
「・・・・・・」
アザミは答えない。その胸中は計り知れないが、別に知りたいわけでもなかった。
ふうっと息を一つ付いて、ネオグランゾンの腕を高く掲げた。
「―――では、みなさん。最後の戦いを始めましょうか」

417 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/08/17(木) 16:29:53 ID:bJS2SS350
<―――なんだ?>
マサキは違和感を感じていた。
シュウの態度には、かなりの余裕があるのだ。ネオグランゾンは確かに恐ろしい性能を誇っている。
だがそれでも、一度はポゼッションしたサイバスターに敗れているのだ。
さらに今は、同等の力量を持ったロボットたちが多数。これほどの戦力差を前に、これだけの余裕を保てるもの
だろうか?
それとも―――何かあるのか?そう、それこそ先日アザミが言っていたように、隠し玉を用意しているとでも?
「不思議ですか?私が焦っていないのが」
シュウがマサキの疑問を読んだかのように言い放った。
「ククク・・・確かにこの戦力では、ネオグランゾンの力を持ってしてもあなた方を倒すのは不可能に近い。
そこで―――こんな趣向を用意しました」
その瞬間ネオグランゾンから眩い光が放たれた。一瞬の閃光ののち、目を開けたのび太たちの前には、信じがたい
光景が広がっていた。
「・・・そんな・・・」
ゴシゴシと目を擦ってみるが、目の前の現実に変わりはない。
ネオグランゾンが―――三機になっていた。
「流石に驚いたようですね―――」
シュウの声が響く。奇妙な声だった。まるで何人かで同時に同じ言葉で喋っているような―――違う。
まるで、ではない。
本当にシュウは、三人で喋っているのだ。
「私とネオグランゾンが三組―――これが私の隠し玉です」
「ケッ・・・分身って奴か?」
USDマンはそう言ったが、シュウは否定した。
「ククク・・・言っておきますが、ただの分身ではありませんよ。これらは本当に私とネオグランゾンです」
「・・・<偏在>」
アザミがぼそりと呟いた。
「ほお?この魔法を知っていましたか。さすがに博識ですね」
最初からいたシュウが感心したように言った。

418 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/08/17(木) 16:30:25 ID:bJS2SS350
「偏在・・・?」
「自分自身を、同じ次元に三人同時に存在させるという古代魔法の一種ですよ。その存在自体が文献にしか残っていない
上に、魔法そのものの難度が非常に高いおかげで、実際に使える術者がいるなどと思ってもいませんでしたが・・・
あなたなら、使えても不思議ではありませんね」
「ククク・・・大体はその通りです。まあ、実際のところ難度が高いというよりは利用価値が低くて使いようがない、という
方が正しいのですがね。何せこれは一度使うともう二度とは使えない、一度限りの魔法なのですよ。しかし―――
一回限りで十分ですよ。あなたたちを倒すだけならね」
シュウの言葉に、別のシュウが続く。
「ですが―――正直言ってこれでもまだ、今のあなた方には勝てないでしょう・・・」
そして、三人目のシュウ。
「そこで、こんなものを使わせていただきます」
一機のネオグランゾンが右手を掲げる。次元が歪み、何かが取り出された。
「あれは・・・」
真っ先にその正体に気付いたドラえもんが唾を飲み込んだ。
「―――ウルトラミキサー!?」
「そう。それも、三つ以上の物体でも融合させることが出来る改良型の・・・ね。ここまで言えばどういう意味か、
お分かりでしょう?」
言うが早いか、改良型ウルトラミキサーが作動した。それは三人のシュウと三機のネオグランゾンを混ぜ合わせ、全く
新しい姿に作り替えた。
自分自身との融合のためか、シュウの姿はほとんど変わっていない。ネオグランゾンの姿も、さほど大きく変化したわけ
ではない。
唯一目に見えて変わったところと言えば、背中に巨大な翼―――闇すらも喰らい尽くしそうな程に暗い、漆黒の翼。
否、正確には翼ではない。
如何なる用途なのかも定かではない、無数の黒い羽のような物体。それが背中に密集しているせいで、傍目には黒い翼の
ように見えたのだ。

419 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/08/17(木) 16:30:57 ID:bJS2SS350
見かけの変化はそれだけだ。
だが、よほど感覚の鈍いものでもない限りは気付くだろう。その内包する、恐るべき戦闘能力に。
もはや宇宙そのものにすら匹敵するほどの、純粋なる力そのものに。
凄まじい威圧感を放つその威容を目の当たりにして、のび太たちは理解した。
これに比べれば今まで潜ってきた修羅場など、修羅場などとは言えない。
小説で言えば序章ですらない。いや、目次にすら到達していなかった。
それほどまでの質量を持って、それはただ、存在していた。

「―――如何です?これがグランゾンの最終形にして、全てに終焉をもたらす力・・・」
その力は究極にして絶対。その存在は最強にして最終―――
「すなわち―――<グランゾン・フィナーレ>―――!」

420 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2006/08/17(木) 16:40:15 ID:g/NK9cti0
投下完了。前回は>>112より。
あー、やっぱ変に捻った名前にせずにスーパーグランゾンとかグランゾンエターナルにしとけばよかったかも。
前回から結構間が空きましたが、忙しい時期はやっと過ぎました。
サービス業にとってお盆は地獄・・・。
そしてああ、ブライト艦長・・・

>>115
いいチームだと言ってくれるのは嬉しいですね。

>>ふら〜りさん
うみにんさんと比べると、やっぱどうにもごちゃごちゃしてますがw

>>144
最終決戦はかなり長丁場になりそうです。まあ最終決戦というからには短かすぎたら問題かもしれませんが。

>>邪神?さん
しばらくゆっくり休んで、また死刑囚やキャプテンやテイルズ連中の元気な姿を見せてください。
待ってます。

>>しぇきさん
復活おめでとうございます。
銀河鉄道は実は見たことないのですが、充分楽しめました。
ロム兄さんも待ってます。

421 :作者の都合により名無しです:2006/08/17(木) 20:13:39 ID:cMaXGQ6h0
サマサさんお疲れです。
最終やフィナーレ、という言葉が近づくといよいよラストが近いのを感じます。
物語の雰囲気も刻々とそれを示してますし・・
ただ、最終決戦も長いということなのでまだまだ今年いっぱいは大丈夫かな?

422 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/17(木) 21:08:35 ID:fA3XLlWd0
第二十一話「3年Z組銀八先生 五時間目」



カーカッカッカッカ!(坂田銀八)

阿修羅マン?(神楽)

正解!(坂田銀八)

おぃぃぃ! なんかもうクイズになってるよ!(志村新八)





423 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/17(木) 21:10:26 ID:fA3XLlWd0
「イタタタッ! もうこれホントマジでイタタタタタタタァ!!」
「……あなた、うるさいからもう少し静かにしてもらえないかしら」
世間は夏休み――そんな時事ネタもお構いなしに、今日も銀魂高校は生徒で溢れかえっていた。
そんな騒がしい構内の中で、唯一静けさの残る空間があった。授業中の廊下である。
そこには生徒も教師の姿もなく、次の授業終了のチャイムが鳴るまでは穏やかな世界を保っているはず。だったのだが。
「イタァッ! イィィィィィタタタタタタタタタタタタタタタタァァァッッ!!!」
「そんなケンシロウっぽく言ったって痛みは和らがないわよ」
授業中にも関わらず、静寂の廊下を練り歩く二人の生徒がいた。
一人はさえない顔に眼鏡の男子。もうこの時点で3年Z組の志村新八ということは明白だろう。
問題なのは、彼の症状。苦痛に顔を歪ませ、腹に手を添えて必死に何かを堪えている。便意ではない。
その新八に肩を貸し付き添っているのは、同じく3年Z組に所属する女子。
セルフレームの眼鏡をかけ、ロングヘアを肩に垂らしたなかなかの美人。
名前は猿飛あやめ。通称さっちゃんである。
保険委員である彼女は、日本史の授業中に突如腹痛を訴えた新八を保健室へ連れて行く最中だった。
「だいたい、学園編になってから僕にツッコミやらせすぎなんですよみんな! こんなことなら出番少なかった第一部とかの方がマシだったっつーのォォ!」
「あら、出番があるだけいいじゃない。私なんてこれ初登場よ? 初登場が眼鏡のさえない男子を保健室に連れて行くシーンよ? どうなのよこれ?」
「いや、そんな製作上の不満を僕に言われても……はいずいません。調子のりました」
猿飛あやめ――原作では始末屋を生業としている彼女の凄みに圧倒され、新八はたまらず黙り込んでしまう。
とにもかくにもこの腹痛は尋常ではない。特に変なモノを食べた記憶もないし、原因があるとすればツッコミによる心労しか考えられなかった。
「ほら、保健室に着いたわよ」
やや怒り気味のさっちゃんに連れられ、どうにか保健室までたどり着いた新八。
扉を開けると、中から消毒液くさい保健室独特の匂いと、見慣れた白衣姿が飛び込んできた。

424 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/17(木) 21:12:21 ID:fA3XLlWd0
「よぉー。どうした新八。腹でも下したか?」
「って、なんで先生がこんなとこにいるんですか!?」
保健室内には、白衣を着た優しそうなおばちゃん――ではなく、Z組担任の坂田銀八がいた。
この男、確かに白衣は着ているが、別に保険教師でも科学教師でもない。なんとなく雰囲気で着ているだけなのである。
ようするに、銀八が保健室にいることなどお門違いなのである。しかも保険室内で堂々と煙草をふかしているあたり、教師としてもどうなのかと思えてしまう。
「いやぁ、前回なんとなく夏休みを取ってみたけど、やっぱこの作品俺が出ないと締まらないからな。こうやって保健室のおばちゃんに扮して登場してやったのさ」
「いや、全然扮してないから! っぽいのはその白衣だけだから! って痛ぇ!」
律儀にツッコむ新八だったが、腹痛のせいかいつものキレがない。
「なんだ新八? おまえまさか……ツッコミを入れると腹が痛くなる身体になっちまったのか? おいおいどうすんだよこの先のツッコミは」
「んなわけないでしょうーが! ってか何すかその特殊すぎる病状!?」
やはり律儀にツッコむのだが、腹の痛みには逆らえない。
新八はたまらずベッドに横になり、再度苦悶の表情を浮かべる。どうやら冗談ではないらしい。
「おいおいマジか? 俺、医療漫画は見たことあるけど適切な治療法なんて覚えてねーぞ。とりあえず手術しとくか?」
「く、薬ください薬……たぶんそこの棚に胃薬入ってるから……」
どうやら、これはふざけている場合ではないようだ。
銀八は新八に言われたとおり、様々な薬品が並んでいる棚に手をかけようとしたが、

「――イタァッ! イィィィィィタタタタタタタタタタタタタタタタァァァッッ!!!」
ケンシロウ風に(イをアに変えて)痛がる病人の声が、新八とは別に聞こえてきた。
銀八が振り向くと、そこには引率してついてきたはずの保険委員、さっちゃんが腹を押さえて床に転がっていた。
「なんだ保険委員の猿飛、まさかおまえまで腹痛か?」
「はい。どうやらそうみたいです。どうか先生の手で手厚い看護を……」
「いや、アンタさっきまでピンピンしてたじゃん! クールな顔で今まで出番がなかったことに文句言ってたじゃん!」
「イイイィィィィィタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタァァァッッ!!!」
さっちゃんは新八のツッコミを自分の声でかき消し、床をのた打ち回る。
懸命な読者の方なら既にお気づきかと思うが、もちろん仮病である。
では、彼女はなぜ突然仮病など使ったのか。それについては、原作未読の方のために補足説明をさせてもらわなければならない。
決して「またかよ」とか言わないで欲しい。これがこの作品のノリなのだと解釈してもらいたい。

425 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/17(木) 21:13:18 ID:fA3XLlWd0
――遡ること原作第四十訓。言わずと知れたさっちゃん初登場の話がそこにあった。
仕事で悪徳な闇商人を始末する際、ひょんなことから知り合った銀時に助けてもらった経験がある。
そこで発生したのが、銀魂では成就不可能と言われた『恋愛フラグ』! この外伝でもそのフラグは有効であり、つまるところ……
さっちゃんは銀さんに惚れていた!

「イタタ……これは駄目ね。どうにもならないわ」
「大丈夫かおい。とりあえずQPコーワゴールド六錠くらいいっとくか?」
「いいえ、そんなことより……ここは裸でお互いを暖め合うのがベストだと思うの。どう?」
「いや、どうって……そりゃ雪山で遭難した時なんかにあるシチュエーションだろ。それともなにか? おまえはこの真夏に凍死しそうなのか?」
「うん、そうね。あなたの裏返しの愛情に凍え死にしそう。だから早く私を暖めて。あなたの温もりで……」
「仕方ねぇ。ストーブでも出すか」
「いやん、そのツンデレ具合に痺れちゃいそう」
さっちゃんの仮病を軽くいなす銀八だったが、さっちゃんもさっちゃんでなかなかの強敵だった。
冷たくあしらわれても、それは銀時の『ツン』の部分としか思っていない。後には必ず『デレ』がくると信じきっているのだ。
それというのも、彼女が真性のマゾであるからこその芸当である。

宣言どおりにストーブを引っ張り出し、真夏の保健室内に暖房をたく銀八。
しかしストーブの真ん前にいるさっちゃんは恍惚な笑みを浮かべ、
「ああ、なんだか身体が火照っちゃった。ねぇ先生、脱いでいい? もう脱いでいい?」
「いや、何言ってんのおまえ。保健室で脱衣って、どんなハレンチ生徒だよ」
「え、なに? 先生は服着たままの方がいいの? もぉ〜さっちゃん困っちゃうぞ☆」
「つーかストーブ点けたからあっちーわここ。エアコンの効いてる職員室いこ」
「まあ。他の先生方がいるって言うのに……いいわ。私たちの愛は人目も気にしないっていうのね。望むところだわ」
逃げるように退室する銀八、続けてさっちゃんがいなくなる。
そうして、保健室に残されたのは腹痛の新八一人となった。

「……薬飲んで寝よ」
それは腹痛か、または呆れ果てたせいか。
あまりの置き去りっぷりにツッコミをする気もおきなかった。

426 :一真 ◆LoZjWvtxP2 :2006/08/17(木) 21:15:03 ID:fA3XLlWd0
さりげなく新キャラを出し続ける学園編。
大丈夫ですか原作未読のみなさん? ちゃんとついてきてくれてますか?

さて、いい具合に暴走さっちゃんが書けたところでお知らせしときます。
この第三部「学園編」、なんと 次 回 完 結 !
今までが八話構成で進んできたので意表をつかれた人も多いかと思われますが、そろそろ幕にしたいと思います。
ほら、早く次の話書かないと伏線とか全部忘れちゃいそうだしね。や、そもそもそんな大した伏線は張ってないけどさ。

とにもかくにも銀八先生に会えるのは次回が最後。
それではまた。一真でした。

427 :作者の都合により名無しです:2006/08/17(木) 22:14:06 ID:9hcHJOqi0
>サマサさん
グランゾン最終形態ですか。最後の魔法にふさわしい秘密兵器ですね。
シュウの執念がいよいよ宿命の決着を呼びそうですね。
ラストバトルも近そうですが、サマサさんの健筆を願ってます。

>一真さん
え、伏線張ってたんですか?w軽妙なトークとギャグに煙幕になってますねw
銀八先生が終わった後は、いよいよシリアス編に突入ですか。
でも学園物も楽しかったな。新八の気苦労が三倍付けって感じで。

428 :作者の都合により名無しです:2006/08/17(木) 22:15:35 ID:GO4J2Her0
>>サマサさん
グランソン最終形態ですか。“グランゾンエターナル”の様な厨機体になりそうですね


429 :作者の都合により名無しです:2006/08/18(金) 07:44:39 ID:mlkPsq8/0
>サマサ氏
シュウもいよいよインフレの最高点にたどり着いたって感じですな
長きに渡る宿敵との決着→ラストバトスですか。王道でいいですな

>一真氏
銀魂のギャグ面の真骨頂って感じですね、学園編は。次回完結か。
少し寂しいし、ちょっと他の話と比べて短いのは残念ですが、
その分シリアスは長くしてくれるのかな?

430 :作者の都合により名無しです:2006/08/18(金) 20:14:38 ID:xZLttVaO0
一真さん、シリアス編は是非、柳生九兵衛を出して下さい

431 :作者の都合により名無しです:2006/08/19(土) 07:58:01 ID:y1USr5+r0
次スレ、後1本くらいで立てた方がいいかな

432 :作者の都合により名無しです:2006/08/19(土) 12:36:06 ID:JaIvDS9m0
立てられなかった
まあ、まだ余裕あるから
あと1、2本来た後でいいか

433 :作者の都合により名無しです:2006/08/19(土) 19:32:39 ID:dEWrG0bc0
最近、立て辛いな
俺も無理だった
立てる人はこそっとミドリさんをテンプレに入れておいてw

434 :ハシ ◆jOSYDLFQQE :2006/08/19(土) 21:22:54 ID:72M7FpkuO
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/487/03-04.htmより

435 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2006/08/19(土) 21:24:28 ID:72M7FpkuO
 敵を見失うことはこの場において死に直結する。
 敵は己を楽々破壊できる。たった今起こった窓の破壊が、それを証明している。
 常に動きを見張り、攻撃に対処しなければならない。
 しかし敵は銃弾そのもの。容易に目で追えるほど大きくはないし、驚異的な速度で動き回っている。
 だから見失うのも無理はない。
 事実、シグバールの視界に魔弾は存在しなかった。
ゆえに彼の運命は決まったようなものだった。
 すでに魔弾は息をひそめながら牙を突き立てようとしていた。
 旋回。
 まずは両足を破壊しよう。
 脆い間接部分を打ち抜けば一発だ。
 後は何でもござれ。
 倒れ伏した後にハラワタをぐちゃぐちゃにするのもいいし、間接の付け根を全て粉砕して五体を
バラバラにしたり、手っ取り早く耳から体内に入り脳髄を破壊するのだっていい。
 さすがはアメリカ。自由の国。
 リップヴァーンは弾丸ごしに獲物を見た。
 ああ、なんて無防備な。まったく気付いていない。見たところ奇怪な銃を持っているようだけど、
一度も使わずに終わることになりそうですね。可哀想。可哀想。せめて、うんと苦しんでから、
死んでくださいね。
 そうして、地面の魔弾に待機命令を解除させ、哀れなダレカの背後に浮かせて、着弾をイメージ。
 ――――死ね!!!


436 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2006/08/19(土) 21:25:51 ID:72M7FpkuO
 そこでリップヴァーンの意識は飛んだ。
 ――――え?
 意識を手放していたのは一秒にも満たない。だがこの戦場においてそのタイムラグは致命的だ。
 リップヴァーンは何が起こったのかわからなかった。リップヴァーンは痛覚以外の感覚を魔弾と共有してい
る。術者の意識が飛んだとしたら、魔弾が攻撃を受けたのだろう。
 ――――ありえない。
 そう、絶対の死角と絶好のタイミングからの襲撃だったはずだ。獲物はそれを読んでいたというのか。
 リップヴァーンがようやく(といってもコンマ数秒だが)魔弾に意識を移し直したとき、それを見た。
 獲物の右手にある銃が、確かにこちらを狙って―――
「後ろか」
 ――――いいのをもらった。そう思った。
 リップヴァーンはまたも意識を失う憂き目にあった。今度は一撃ではない。刺さるように何度も
繰り返される衝撃。リップヴァーンの視界が紅に染まる。
 ――――矢、だと。
 紅はすなわち暴力のこと。暴力は矢の形を為して魔弾に襲い掛かっていた。暴力はガンアローから鋭い音を伴って射出されていた。
 ずきんずきんと響く頭痛。撃たれ続ける魔弾。



437 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2006/08/19(土) 21:28:17 ID:72M7FpkuO
 ――――か、あああああああっ!!!
 ぎゅりりりりりりりりっ!!!
 魔弾は円を描き空を急旋回。幾何学的な軌跡を刻みながら、シグバールから距離を置く。しかし、ガンアロー
の銃口は絶えず魔弾をとらえていた。
「逃がすかよォ、てハナシだ!」
 すかさず踏み込み、トリガーを引く。二度目の弾雨が魔弾を襲う。その一撃一撃を縫うように躱し、魔弾は
超高速で移動。シグバールの視線は目まぐるしく動き回る。その動きにあわせ、ガンアローに流し込まれた
魔力が炸裂。射出された紫弾が魔弾に追いすがる。魔弾は部屋の隅にまで達したところで、上昇。引き付けら
れていた紫弾がその空間に突き刺さる。
 天井で停止した魔弾は、反撃を開始した。一直線にシグバールに突撃。部屋の空気が鳴動した。その運動
は誰の目にも見えまい。シグバールを除いて、だが。
 じわりと額に汗がにじむ。目で追えるとはいえ、その実体は見えずただ残像が映るだけだ。少しでも気を
抜けばこちらがやられる。軌跡を冷静に観察。そして後方へステップ。
 ズン!
 シグバールの足があった空間に、彗星のごとく魔弾が追突した。床にめり込んだ魔弾は、そこから脱出し
ようと回転していた。回転で生じた摩擦熱の焦げた匂いが漂ってくる。


438 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2006/08/19(土) 21:30:42 ID:72M7FpkuO
「は、させるかよ!」
 跳躍。真下の魔弾に紫弾を発射発射発射発射。躱す術をもたない魔弾はその攻撃に甘んじる。直撃するた
びに鈍い音を立てながら床にめり込む魔弾。
 かちん。ガンアローのトリガーが虚しく鳴る。弾切れ。そしてもちろん、その隙を見逃すリップヴァーンではない。
 刹那。魔弾に込められた最後の力を振り絞る。
 がぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎっ!!!
 飛翔させる。
 だが、それで終わり。
「――――ハッ!」
 弱々しく浮かび上がった魔弾を、両側からガンアローの先端で挟み込む。リップヴァーンは対応できない。
思考を魔弾に伝達する間すらない。
 シグバールは左足を軸とし、上体を斜め前方に倒し左足を上げ、それを真横に固定したところで一呼吸。
「つらああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 蹴撃。
 その衝撃に吹き飛ばされた魔弾は壁に激突。そのまま動くことはなかった。


439 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2006/08/19(土) 21:32:59 ID:72M7FpkuO
「……少々侮っていたのかもしれません」
 撃墜された。
 自分の能力が。
 殺人に特化した異能が。
 必滅の掟が。
 ヴォエアウォルフの中でも彼女の魔弾は評価されている。その殺人成功率において。
それがなんだ、この様は。敵は魔弾の位置は看破していなかったはずだ。確実を期して背後からの
不意打ちも狙った。
 生き残れるはずがない。それなのにそれなのにそれなのに。
 敵は生き残った。
 しかも今まで破られたことのない魔弾を、あまつさえ銃撃によって打ち落として見せた。
「おもしろいですね」
 口の端を歪め、不敵に笑う。リップヴァーンは心を痛めない。油断はあった。自分の能力を過信して
いた。それは認めねばならない。
失点を取り返さねばならない。
 リップヴァーンは立ち上がった。
「さて、どうしますか……」
 リップヴァーンは顎に手を当てて考える。おそらく、奴はもう、あの部屋にはいないだろう。もし未だ
留まり、逃げていないとしたら、それはただの阿呆だ。


440 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2006/08/19(土) 21:35:33 ID:72M7FpkuO
 しかし、それほど遠くにはいっていないはずだ。今すぐ魔弾を撃ちだし追跡させれば十分に追い付く。
「しかし、ここからでは狙いにくい」
 そう。あの大きさだけがとりえのビルが邪魔だった。だからといってのこのことあちらに接近する
馬鹿な真似もしない。
 リップヴァーンは狙撃手なのだ。まったく不可能ではないが、接近戦は言うまでもなく不得手。
「手駒が欲しいところですね……」
 そこで後ろから声がかかった。振り返ってみれば、警備員がそこにいた。初老のベテランといった
ところだろうか、落ち着き払いながらリップヴァーンに近づいてくる。手に持った電灯をリップヴァーンに当て、ここで何をしているのかと聞いてきた。
「……ああ、いいことを思いつきました」
 リップヴァーンは警備員に向かって愛想よく笑った。


441 :ハシ ◆jOSYDLFQQE :2006/08/19(土) 21:37:41 ID:72M7FpkuO
山に行ってきました。
あとコテも変えてみました。

>>311さん
>ハードな雰囲気の描写が
ハードさを目標に書いているので、そう言っていただけると嬉しいです。
>更新ペースがちょっと不満でしたけど
がんばります。

>>312さん
>各々の個性が現れてて
バキスレで一度も出てこなかったキャラなので、初見の方にもわかりやすくしてみました。

>>331さん
>キャラたちの台詞回しが好き。
ヘルシングは台詞回しが作品の肝だったりするので、気をつかって書いてます。
でも平野先生には全然かないませんね……

>>ふら〜りさん
>自作を省みるに見習わねばならんとヒシヒシ。
あわわわわ。もったいないお言葉……。
>これだけの芸当に対する反撃、どんなのが?
とりあえず反撃は成功しました。これで五分五分くらいです。

では、次の投稿の時に。

442 :作者の都合により名無しです:2006/08/19(土) 21:40:03 ID:JMCmunUT0
えーとリップバーンはヘルシング 外伝でも本編でも接近されてやられてたな
後生きてる時点で不思議だよね
ついでに銃撃じゃなくて蹴ってない?

443 :作者の都合により名無しです:2006/08/19(土) 22:13:10 ID:qqfShL4o0
新スレ立てておきました。

http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1155992956/l50

ハシさんの感想はそちらに書きます。
すみませんハシさん、コテを前の487さんのままだ・・
うっかりしてた。

481 KB
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

read.cgi ver 05.04.00 2017/10/04 Walang Kapalit ★
FOX ★ DSO(Dynamic Shared Object)