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【2次】漫画SS総合スレへようこそpart42【創作】

1 :作者の都合により名無しです:2006/08/19(土) 22:09:16 ID:qqfShL4o0
元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1153829716/ 
まとめサイト
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm


2 :作者の都合により名無しです:2006/08/19(土) 22:10:39 ID:qqfShL4o0
ほぼ連載開始順 ( )内は作者名 リンク先は第一話がほとんど

オムニバスSSの広場 (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/bare/16.htm
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
上・ドラえもん のび太の超機神大戦 下・ネオ・ヴェネツィアの日々(サマサ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tyo-kisin/00/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/samasa/05.htm
聖少女風流記 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
やさぐれ獅子 (サナダムシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/yasagure/1/01.htm
鬼と人とのワルツ (名無しさん)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (487氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/487/03-01.htm
シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい (一真氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/silver/01.htm


3 :作者の都合により名無しです:2006/08/19(土) 22:11:40 ID:qqfShL4o0
ドラえもん のび太と魔法少女リリカルなのは (全力全開氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/fullpower/00.htm
戦闘神話 (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/ginnan/1/01.htm
パパカノ (41氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/41/01.htm
バーディと導きの神 (17〜氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/birdy/01.htm
金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』 (かまいたち氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/kindaiti/01.htm
MUGENバトルロイヤル (コテ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/mugen/01.htm
フルメタル・ウルフズ! (名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm
上・オーガの鳴く頃に 下・それゆけフリーザ野球軍 (しぇき氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/nakukoro/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/ballgame/01/01.htm
永遠の扉 (スターダスト氏)
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/star/06-01.htm



4 :作者の都合により名無しです:2006/08/19(土) 22:18:29 ID:qqfShL4o0
>ハシさま(テンプレうっかりしてすみません)

>倒れ伏した後にハラワタをぐちゃぐちゃにするのもいいし、間接の付け根を全て粉砕して五体を
>バラバラにしたり、手っ取り早く耳から体内に入り脳髄を破壊するのだっていい。
>さすがはアメリカ。自由の国。

いや、アメリカでも北朝鮮でもそれはダメだろうw
と、思わず突っ込みを入れましたが、そんな描写が自然に思えるほどハードな展開ですね。
リップヴァーンも策を弄しながら勝利を確信したと思いますが、シグバールの
蹴りひとつで粉砕されましたね。

一度、原作読んでみようかなあ。もっとSSが楽しめそうだし。



5 :作者の都合により名無しです:2006/08/19(土) 23:27:00 ID:y1USr5+r0
1さん乙

>Der Freischuts
原作の雰囲気をハシさん流にアレンジしてますな
描写もリキ入っているし、これからも楽しみです


6 :作者の都合により名無しです:2006/08/20(日) 13:45:30 ID:Celb9nPg0
1氏乙です。盆からちょっと止まっているな・・

ハシ氏、ガンアクション上手いですね。
これから少し更新も増えそうな感じで期待しております。
俺も原作知らないけど、絵柄を知りたいから読んでみるかな?
どうやら有名な漫画みたいだしね。

7 :ふら〜り:2006/08/20(日) 16:16:06 ID:uNHYc+x00
>>1さん&テンプレ屋さん
おつ華麗さまですっ。仕事や学業が忙しくなって一時お休みの職人さんがおられても、
仕事や学業が一段落して復帰して下さる職人さんもおられる。もちろん、また
新人さんも来て下さることでしょうし。今スレも賑やかに参りましょう!

>>スターダストさん
秋水って(状況が状況だから当然なのかもしれませんが)、誰に対しても思いが深いですね。
姉に対して敵に対して仲間に対して、愛したり憎んだり。彼のそんなとこを和らげるのが
まひろなんでしょうけど、そのまひろを見ればカズキが思い浮かぶでしょうし。辛そう。

>>サマサさん
狐もなかなかでしたがシュウも。「立ちはだかるのが運命なら運命と戦う」って、普通は
モロ主人公理論。やってることはちゃんと悪事なんですけど、本人に明確な悪意がないと
いうか。その彼の隠し玉、正直今のドラたちに勝つにはまだ不足な気も……実力の程は?

>>一真さん
一途といっていいのかどうか、今回のヒロインさっちゃん。態度の変容っぷりに関しては、
愛する人にはいつも自分の可愛いところを見て貰いたいが故と好意的に解釈しときます。
でも暖房の効いた保健室に置き去りにされた新八、本音の本音は少し羨ましかったりして。

>>ハシさん
速いわ細かいわ、頭の中で映像化してるだけなのに目が疲れる思いでした。しかし、何か
奇策でくるかと思ってましたが正面突破の実力行使でしたね。身体能力と武器の性能とで
反撃成功。単純なだけに強さが実感できます。次回、逆にリップヴァーンが策というか罠?

>>どうにかこうにか、ご披露できそうです
今週中には必ずや。お待たせした割には短いですが、私としては珍しく刃牙以外の
現役メジャー少年漫画ネタ。前スレ>>395さんもきっとご存知。も少しお待ちあれ。

8 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/20(日) 17:58:01 ID:nptcv1A40
第二十二話「3年Z組銀八先生 六時間目」





これからも銀八先生をよろしくね。(坂田銀八)





今回で最終回ですよ。(志村新八)






9 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/20(日) 17:58:48 ID:nptcv1A40

 ――いや、だって普通の学校って一日六時間くらいじゃね?

 どこかで誰かが主張してる。だが本編にはまったく関係のないことだ。気にしないでおこう。
 今日の開幕シーンは銀魂高校の屋上。出演者は主人公である坂田銀八と志村新八。
 二人は揃って屋上に寝そべり、空を見上げていた。
 遥か頭上は晴天。夏雲が早足で駆け抜け、二人の顔に影を作ったり作らなかったり。
 陽気は暑すぎず寒すぎず、まるで春を思わせるかのような麗らかさだった。
「ねぇー、先生」
「んー、なんだー新八?」
「なんか今回で学園編終わりらしいですよ」
「そうみたいだな」
「なのに僕たち、こんなところでこんなことしてていいんですかね?」
「ん? どういう意味だー?」
 ぼーっと空を見上げながら、二人はほのぼのした調子で話す。
 ゆるさは銀魂テイストなのだが、前回までに比べるとどうにも激しさが足りない。全体的にテンションが低めだった。
「ほら、なんか学園編って、半分がジャンプネタに便乗したパロディみたいなものだったじゃないですか。もっと学校っぽい行事をネタにしたほうが盛り上がったんじゃないですかね? 学園祭とか」
「残念だが新八、学園祭は既に小説版でネタにされちまってる。それにこれ単なる外伝だよ? 二次創作の外伝なんて、ビックリマンチョコのおまけのシールに書いてあるストーリー紹介みたいなもんじゃねーか」
「今日の例えは一際分かりにくいですね先生。もっと考えてもの言ってくださいよ」
「いいんじゃないか別に。ギャグ漫画なんてみんなこんなもんだろ」
「いやいやこれは漫画じゃなくて、仮にも小説なわけでしてね。文章で勝負しているわけですよ。だからこそ微妙な台詞回しが求められて……」
「おいおい何文学少年みたいに語っちゃってんだよおまえ。おまえの属性は『ツッコミ』『眼鏡』『アイドルオタク』の三種だけだろうが。欲張ってんじゃねーよ」

10 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/20(日) 17:59:43 ID:nptcv1A40
 毎度おなじみの罵り合い。
 いつもならこの辺でどちらかがキレるところだが、今回は至って平穏だった。
 平穏な罵り合いというのも変な話だが、空を見る二人に怒りの感情はない。
 ああ、今日も平和だなぁ……そんなモノローグが付きそうな日常の一コマだった。

「って、授業中になに和んでんですか先生。仕事放棄も大概にしてください」
 銀八と新八がうつらうつらしていると、屋上に新たな訪問者が現れた。
 女性を思わせる整った顔立ちに、綺麗な黒のロン毛。3年Z組の桂小太郎君だった。
「なんだヅラ。おまえも授業サボって昼寝しに来たのか?」
「ヅラじゃない、本編第二話でちょっとだけ登場したもののそれ以降まったく出番がなく、期待していた学園編でも最終回になってやっと登場できた桂だ」
「長いし説明的だし波乱万丈だなー。ま、あんまくよくよすんなよ。出番なんてこれからわんさかあるさ」
「最終回でも内輪ネタですか先生……」
 先生を呼びに来たものの、己の出番の少なさにしょげる桂。
 だが、そんな後ろ向きな感情はこの広大な空を見ればどうでもよくなってくる。
「空がキレーだな」
「そうっすね」
「本当に」
 男三人、川の字になって空を眺める。
 今日も雲は流れ、次第に青は赤に変わり、黒を出迎える。
 これが空。これが地球。
 人間なんてものは、この壮大なカラクリの一部分でしかない。
「授業なんてどうでもよくなってくるよなぁ」
「そうっすね」
「本当に」

11 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/20(日) 18:00:51 ID:nptcv1A40
 いつもならここでツッコミがくるとお思いでしょう?
 しかし今回は本当のマジにツッコミなし。ツッコミの主砲ともいえる新八が仕事を放棄しているせいもあるが、本人も「たまにはいいんじゃない?」的な気分でいる。
 時は経ち、空は青から赤へ、昼から夕方に変わり始めていた。
 チャイムが鳴り、生徒たちの下校を知らせる。
 退屈で平凡で、それでいて輝かしい学園生活の一ページ。その終わりを告げる音。
 この音を聞いていると、再度「こんな日があってもいいんじゃない?」と思えてしまう。
 今日は駄目でも、明日から真面目にやります。なんかもう、最近はこれでいいんじゃないかもう?
 ボケもツッコミも、そんな感じで。
 思う銀八だが、やっぱり新八のツッコミはない。
 隣を見る。寝ていた。
 そろそろ夜がやってくる。このままだと風邪をひいてしまうだろう。
「やれやれ……」
 銀八は立ち上がり、熟睡している新八と桂を起こしてやった。
 そんな教師っぽい思いやりを見せつつ、今日も銀魂高校の一日は締めくくられていく。

 人が少なくなってきた放課後の校舎を、新八と桂が下校する。
「それじゃあ先生、また明日」
「おお、気ぃつけて帰れよー」
 遠くなっていく二人の背中を見送りながら、銀八は煙草を吹かす。
 今日も平和な一日だった。




 オチなし。

12 :一真 ◆LoZjWvtxP2 :2006/08/20(日) 18:02:04 ID:nptcv1A40
 これにて第三部「外伝・学園編」は終わりです。
 や、我ながら好き勝手やったなーと思います。本当に。
 書いている最中は楽しかったんですが、やはりギャグ一本で書くというのも辛いものがありますね。
 後にシリアスな展開が控えていることも考えると、どうにも筆が迷ってしまうような場面が多々ありました。

 おそらく、ジャンプネタで馬鹿やったりするのもこの学園編がラストだと思います。
 この先の展開には男塾はもちろん、ジョジョも出る予定はないのでご安心を。
 
 次回第四部「完結編」は舞台を江戸に戻し、第二部の続きから始めたいと思います。
 解散を迫られた真選組、そしてそれを知った銀さんたちがどう立ち回るのか、ご期待ください。
 あと多少オリジナルキャラが混ざりますが、そこらへんはご勘弁を。

 それでは今回はこのへんで。
 一真でした。

13 :作者の都合により名無しです:2006/08/20(日) 19:40:12 ID:Nit7GMVw0
新スレ一番乗り乙です、一真さん。
オチ、本当にないある意味投槍っぽいラストでしたなw
でも、このシリーズは神楽が特に生き生きとして好きでした。
次回のシリアス編をお待ちしております。

>ふらーりさん
楽しみにしてます。

14 :作者の都合により名無しです:2006/08/20(日) 21:47:29 ID:cTR/lw670
オチも突っ込みもなく、本当に淡々と終わったなーw
一真さんは次のシリアス辺に心が行っているのかw
完結編、楽しみにしてますよ。

15 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/21(月) 00:26:10 ID:aPN2BeUz0
十七 霊安室にて

 所轄署の霊安室は、簡素なパイプベッドが三つばかり並んだ、小さな部屋だった。
 空調はなく、換気扇が一つ取り付けられているだけなので、ひどく蒸し暑い。
 スーツに身を包んだ体格のいい男――白鷺誠一。
 学生服を着た高校生――白鷺正人。
 二人は、中央のベッドを挟むような形で立ち尽くしていた。
「ご遺体の確認をお願いします」
 刑事が沈痛な面持ちで言った。誠一は頷くと、そっと、ベッドを覆うようにかけられていた白いシーツを取り払った。
 ふわりと、微かに血の匂いが漂った。ベッドに横たわっていたのは確かに、誠一の娘であり、正人の妹である、白鷺奈々だった。
 大量出血の所為か、顔は生白く、人形のようで。左胸のあたりには真っ赤な血が、大輪の花を咲かせていた。
 そして――腕に刻まれた、アルファベット。傷から流れた血で見難いが、その文字列が『REVENGE』であるというのは、辛うじて判読できた。
 正人はその場に座り込んだ。暫く奈々を見詰めたまま、動けなかった。そして、これが悪い夢ならば、早く覚めてほしいと願った。
 信じられなかった。昨日までは元気だった奈々が。昨日までは微笑んでいた奈々が。今日には警察署で、物言わぬ亡骸と化している。
 肉親を異常者に殺されて、悲嘆に暮れる家族。哀れむような、諭すような、刑事の眼差し。
 公園に張り巡らされた『KEEPOUT』の黄色いテープ。人の気持ちなんかおかまいなしに焚かれる、カメラのフラッシュ……
 そんなシーンはいつだって、ブラウン管を通して覗き見る、別世界の出来事だった筈だろう?
 そうは思っても、一向に暖かいベッドでの目覚めは訪れてくれなくて。正人はこれが現実だと、認めざるを得ないのだった。

16 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/21(月) 00:28:17 ID:aPN2BeUz0
 正人は見上げるようにして、誠一の表情を窺った。
 愛娘がこんな死に方をしたと言うのに、誠一はいつも通り、能面のような顔のままだった。
 早くに母親が亡くなって以来、白鷺家は父親と兄と妹との、三人暮らしである。
 と言っても、父親は根っからの仕事人間で、家に帰ってくる日の方が珍しかった為、実質は二人暮しに近いものがあった。
 正人は今まで一度も、誠一が感情を表に出しているのを見たことがない。
 正人の知っている限り、誠一は常に無表情で。怒りもしなかったし、笑いもしなかったし、泣きもしなかった。
 超然としている、と言えば聞こえはいいかもしれない。しかし正人は、誠一のそんなロボットのような人間味のなさを、不気味に思っていた。
 今となってはもう聞くことかなわないが、きっと奈々も、少なからず正人と同じような思いを共有していたに違いない。
 正人は過去に思いを馳せる。そう。母さんが交通事故で亡くなった時も、誠一は涙一つ流さなかった。
 通夜から葬儀までのプロセスを、まるで溜まった仕事を片付けるように、淡々と、事務的にこなしていった。
 だから。こんな反応も、想定の範囲内ではある。だけど、それでも無性に、正人は居心地が悪かった。
 誠一にとって、家族とは何なのだろう。妻も、子供も、その死に何の感慨も抱かないくらいに、彼の中では希薄な存在なのだろうか。
 必要以上にナーバスになっていた正人はつい、そんなことを考えてしまう。ただでさえ憂鬱な気分に、拍車がかかった。

「殺人事件ですので、司法解剖の為、遺体は数日の間、ご自宅へは帰れません……」
「犯人が残した文字については、捜査に支障をきたす恐れがありますので、他言しないよう……」
「捜査活動へのご理解とご協力を……」

 隣では、刑事がしきりに言葉を投げかけていたが、正人の耳には届いていなかった。
 下を向き、奥歯を噛み締めて、床を睨む。細めた目から零れた一滴の雫が、床を濡らした。

17 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/21(月) 00:30:32 ID:aPN2BeUz0
十八 犯人特定

 新宮はじめが、白鷺奈々を殺害した犯人である。
 正人がその結論にたどり着くまでには、そう時間はかからなかった。
 奈々の葬儀に参列したはじめに、正人はそれとなく、事件当夜、奈々に会わなかったかどうか、問い質してみたのだ。
 はじめの答えは『会っていないし、会う約束もしていない』とのものだった。
 正人には『会っていない』と言う証言の真偽は分からない。はじめと、どこかで待ち合わせをしていて、その途中で不審者に襲われた可能性もあるから。
 しかしながら『会う約束もしていない』と言う証言の嘘だけは、直ぐに見抜くことができた。
 確か、以前に何度か……はじめが奈々を遊びに誘ったことがあった。
 奈々はその度に、姿見の前に長い時間立って、着て行く洋服を吟味したり、長い髪をしきりに整えたりしていた。
 普段、友達と遊びに出かけたりする時などは、そこまでファッションには気を使わないと言うのに。
 妹のそんな、浮き足立った様子を見て、正人は一度『随分とご機嫌だな』と、冷やかしたことがある。
 奈々は頬を膨らませると、無理矢理不機嫌な表情を作って『別に!』なんて、そっけなく答えたのだけど。
 その声のトーンは、いつもより一オクターブくらい高いのだった。
 きっと。白鷺奈々は、新宮はじめが、好きだったのだろう。色恋沙汰に疎い正人でも、それくらいはわかる。
 そして、あの晩も。奈々との最後の別れになってしまった晩も、そうだったのだ。
 だから『会う約束もしていない』と言う証言は嘘だ。では、何故嘘をつく必要があるのだろうか?
 解はシンプルだった。新宮はじめが、犯人だから――である。それ以外の理由は考え難い。

18 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/21(月) 00:32:24 ID:aPN2BeUz0
 最初は、自分の推理が間違っているのではないかと、不安だった。
 確かに、新宮はじめは昔から、何を考えているのかよくわからないような、得体の知れない雰囲気があった。
 だが、だからと言って、即座にはじめと殺人事件をイコールで結びつけるのは、いささか安易なように思える。
 それに、はじめには、奈々を殺害する動機もない。二人は正人が見る限りでは、それなりに仲良くやっていた筈である。
 妹の死で、ありもしない妄想に取り憑かれたのではないかとまで、一時は考えたものだ。
 新宮はじめ犯人説に確信を持ったのは、周辺で次々に発生する、同様の手口による殺人事件の報道を見てからだった。
 そこでやっと正人は、最大の謎だった『犯行の動機』を悟った。この殺人に動機などは存在せず、被害者は『誰でもよかった』のだと。
 それに気付く頃には、抑え難い憤怒が心中に渦を巻いており、はじめを警察に告発しようと言う気も失せていた。
 まったくもって、世の中は不条理に満ちている。
 被害者――白鷺奈々の名前は、死人に人権なしとばかりに、連日晒し者になり、好き放題書き立てられていると言うのに。
 新宮はじめは少年法の名の下に保護されて、匿名の『少年A』として、社会的制裁も受けないまま、目まぐるしい時の流れの中に埋もれていくのだろう。
 そして、世間から事件の存在が忘れ去られた頃に出所し、何事もなかったかのように第二の人生を謳歌するのだ。
 許したくはない。許せるものか。殺人鬼にも幸福を享受する権利があるとするなら、あまりにも殺された者が不憫ではないか。
 正人は、警察の捜査が及ぶ前に、自らの手で犯人に裁きを下してやろうと誓った。
 犯人が何を思って『復讐』の文字を刻んだのかは知らないが、奈々は断じて、殺されるに値するような恨みを買うような人間ではないのだから。
 目には目を、歯には歯を――かの有名なハンムラビ法典の一節が、正人の脳裏を掠めて消えた。
 乱暴な理論だが、今はそのワンフレーズが、殊更に心地よく響いた。
 そう。理不尽な復讐には、復讐を……
 正人はおもむろに立ち上がると、窓を開けて外を見た。空はその面積の大半を雲で覆われており、時折、月や星が雲間から顔を覗かせる。
 深夜の住宅街を朧に照らすのは、まばらな街灯ばかりで、あまり視界は良くない。
 それでも、向かいの家――新宮家の二階、はじめの部屋から、明かりが漏れているのは確認できた。
 警察とて、そう甘くはない。限定された地域で、あれだけ派手な犯行を繰り返しているとなれば、はじめが逮捕されるのは時間の問題だろう。
 残された時間は少ない。しかし、正人としては、無関係な人間を巻き込むのを極力避け、はじめだけを、安全確実に始末したかった。
 故に、空いた時間にはこうして外を見て、新宮家の動向を監視するようにしている。
 はじめが一人で出歩くのを……獲物を求めて人気のない場所に行くのを、正人は辛抱強く待っていた。

19 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/08/21(月) 00:34:23 ID:aPN2BeUz0
毎度ありがとうございます。前回投稿は前スレ326です。
テンプレ屋さん、>>1さん、新スレお疲れ様です〜。
さて。おそらく、このあたりで全貌の予想がつくのではないでしょうか。

・犯人失言
はじめ≠金田一一も、もう一人の犯人も
暗示するものが何もないと、後からなら何とでも言える状態になりますからね。
なるべくそういう、後付け設定がないようには気をつけています。

20 :作者の都合により名無しです:2006/08/21(月) 08:08:06 ID:yQerplgQ0
全貌は徐々に明らかにされていくけど、まだまだ恐怖は加速していく感じですね。
正人の静かで冷静な狂気が恐ろしい。狩る者と狩られる者の緊張感がすげえ。



21 :作者の都合により名無しです:2006/08/21(月) 12:16:26 ID:c5Kx5IqP0
金田一少年イイ!
シリーズ化とは言わないけど、このR編が終わってもまた続編読みたいな。
でも、意外とかまいたちさんのコメディとかも読みたかったりしてw

22 :作者の都合により名無しです:2006/08/21(月) 13:22:00 ID:avoJ/MEn0
>一真さん
学園編完結おめです。番外編とはいえ、
本編と変わらないノリが楽しかったです。
次はいよいよ銀魂の裏の魅力ともいえる人情話ですか。
本格バトルも入るのかな?

>かまいたちさん
理不尽と不条理が錯綜しているのに、
物語の構成にはロジカルなのが凄いです。
正人もはじめも根の部分では似ているのかも。
あと、ラストまで数回かな?結末はどうなるんだろ・・・


23 :作者の都合により名無しです:2006/08/21(月) 20:42:09 ID:UW4jVwgW0
かまいたちさん、どうやってお話を考えているんだろう。
勉強の為に、ちょっと次回の後書きで教えて欲しい。

でもでも、仕事や勉強しながら猟奇犯罪の事を考えていると思うと怖いW

24 :作者の都合により名無しです:2006/08/21(月) 22:15:22 ID:uBU+Hks10
ロジックの作品は最初から設計図を書いていると思う
フローチャートとか活用したりして

25 :バーディーと導きの神〜魔の島ガソン〜:2006/08/22(火) 18:12:24 ID:ar4sIgjP0
低層雲の上を飛ぶ牙炎と高速浮き砲台。移動時間にして3時間弱。すでに太陽が昇り始め、
周囲には水平線と雲しか見えない。
牙炎の背中に乗ったザンとリュミールとモルプだったが、上空でも牙炎のたてがみに包まれ
ているため寒くはなかった。
「あとどのくらいだい?」
牙炎が背中のリュミールに問う。
「あともう少し……。誰一人として入ることのできない土地があるはずなんですが……」
リュミールが雲の切れ間に見える小さな島々を見渡しながら答える。
「なあなあ、それってもしがしで『ガソン』ちゅう島でねえげ?」
思い当たるところがあったモルプが身を乗り出してくる。
「ごめんなさい……。私、名前は知らないの……」
リュミールが被りを振るが、モルプは確信したように言う。
「そりゃあそんだよ。この世界で人さ入れねえ所はガソンしかねえがらよ」
「ガソンか。聞いたことがあるな」
牙炎も話に乗ってくる。
「確か天然の霊的磁場とかで術が使えないとかどうとか……」
「んだ。だがら浮遊術とかで行ぐとたぢまぢ落っこぢてしまうだよ。……ああいうふうに」
モルプはソシュウたちの悲鳴を乗せて垂直に落下していく高速浮き砲台を指差して言った。
「兄ちゃんの浮き砲台が!」
ザンも気づいて叫びかけるが、途端に自身も急速に落下を始めてしまう。
「しまった!俺も飛行術で飛んでるってことを忘れてたぜ!影響がでやがった!」
牙炎も島の影響に支配されたことに気づく。そして高速浮き砲台とともに雲の中に埋没する。
「けど俺にゃ羽根があるから滑空だけはできる!大丈夫だ!」
幾分かの余裕を残して牙炎が背中の三人に告げる。
「でも兄ちゃんたちの浮き砲台にはついてないよ!」
リュミールを抱きしめたザンが叫ぶ。
「そ、そうだった……」
牙炎は本気で焦りを感じてなんとかしようとするが、雲が邪魔をして視界はゼロに近く、
どうすることも出来ない。


26 :バーディーと導きの神〜魔の島ガソン〜:2006/08/22(火) 18:13:24 ID:ar4sIgjP0
しかもそうこうしているうちにもう地表が見えてきた。
牙炎は羽根を一杯に張り滑空して地面に降り立った。
「やべえやべえ。危うく俺たちのほうが地面に激突するところだったぜ」
背中の三人を地面に下ろしてやりながら冷や汗をかく牙炎。
ザンは周りを見渡すが、一面の霧で数レブ(メートル)先さえ見えない。
「凄い霧。まるでクリームの中みたいだ……」
牙炎の目もこの霧では高速浮き砲台を発見できない。
「わからんな。近くに落ちたはずだが……」
業を煮やしたザンが、胸いっぱいに空気を吸い込む。
「おーい!兄ちゃーん!返事しておくれよーーー!!」
思いっきり大声で叫ぶ。
「ザンかー。こっちだーっ!きてくれーっ!」
意外に返事はあっさり返ってきた。
「兄ちゃんの声だ」
「無事みたいだべ」
「どうしたの兄ちゃん!動けないの!」
ザンたちは声のするほうに走りながら問うた。
「いいから早く来てみろよ!」
あくまでソシュウの声は呑気なものだった。
ザンたちが現場に到着してみると、高速浮き砲台は、体長30レブはあろうかという巨大な
二つの頭を持った今まで見たこともない生物の上に落下していた。
その周囲にソシュウたちアーマヤーテ軍の一行やバーディーもいる。
「な、なにこれ……」
生物の巨大さに圧倒され、ぽかんと口を開けたままのザン。
「命の恩人だ。こいつがいなかったら俺たち少なくともクッションなしで地面に激突して
大怪我してたよ。ははは……」
少しぼろぼろになったように見えるソシュウが怪獣を眺めながら説明する。
「あら、あなたたちは内念とかで体を頑丈にできるんじゃなかったんですか?」
こちらはまったく無傷のバーディーが疑問を口にする。

27 :バーディーと導きの神〜魔の島ガソン〜:2006/08/22(火) 18:14:04 ID:ar4sIgjP0
「んあ、なんでか知らねえが、この島にゃ強力な抗術がかかってやがる。こいつがいなきゃ、
ちっとばかし危なかったかもな」
シアンがそれに答える。そして怒鳴る。
「んなことより!落ちたときに砲台の装甲版に顔型残すほど派手にぶつかったお前がなんで
『痛い』で済んでるんだよ!頑丈にもほどがあるぜ!」
「頑丈なのは生まれつきなの!なんであんたが怒るのよ!」
「うるせえ!俺より頑丈な奴は気にくわねえんだよ!」
「なに変なプライド持ってるのよ!体の頑丈さなんてなんの指標にもなりゃしないわよ!
現に私より丈夫じゃない巡査部長だって無傷じゃない!」
「ネズミ野郎は小せえだろが!」
「あーいえばこーいう!……」
ギャンギャン口ゲンカを始めたバーディーとシアンを眺めながら、一行は大きなため息をついた。

28 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/08/22(火) 18:18:38 ID:ar4sIgjP0
帰省明けで慣らし運転です。

347さん
牙炎は強力な助っ人となります。
348さん
リフレッシュしてきました。
ふら〜りさん
さて、どうなりますやら。

29 :作者の都合により名無しです:2006/08/22(火) 20:40:32 ID:2W8PsuGu0
お久しぶりの乙です。
騒がしく喧嘩ばかりですが、どこか微笑ましいパーティですね。
(なんとなくサマサさんと通じるような)
アドベンチャーぽい雰囲気が好きなので、これからも頑張って下さい。


30 :作者の都合により名無しです:2006/08/22(火) 22:25:36 ID:XSSqu88D0
17さん乙。
慣らし運転との事だけど、徐々に頑張ってくれ
以前より大分書き慣れてきた感じだね

31 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/08/23(水) 00:38:29 ID:KtOEZG6A0
「どーも俺には『これだ!』としっくりくる髪型がない。だいたいどんな雑誌をめくってもダメ。
ため息が出る。だからちょくちょく変えてみるコトにしている」
はぁ〜と大げさな仕草を取る総角(あげまき。でも筆者は「そう」「かく」で入力してるので「そう
かく」でもいいです)に、鋭い眼光が突き刺さる。
発生元は秋水。彼はかすかに眉を吊り上げたまま、微動だにしない。
そんな秋水の背後からちょいと首を出してたまひろ、首を上に向けて気づいた
(わ。秋水先輩すごい汗。熱いからからな?)
汗ばむ端正な横顔と首筋を気遣い、ハンカチを探してみた。が、ポケットにないので諦めた。
そんな彼女に、矛先が変わる。
「な、そこな娘さん。キミもそういう経験はないか? 例えば曜日ごとに髪型を変えたいとか」
「うーん。あまり……」
姿勢を正しながら、まひろは栗色の髪を見た。
海水浴の時に後ろで縛ったぐらいで、日常生活で変えようと思ったコトはあまりない。
「一度くらいはある筈だ。俺には分かる。そういう声をしているからな」
よく分からないが、そういう声なのだろう。
「しかし秋水よ」
エメラルドのように澄み渡った紺碧の瞳に映るのは、厳戒態勢丸出しの美青年。
総角(あげまき。でも筆者はry)はひどく親しげな苦笑を漏らした。
「無粋になるから理由までは聞かないが、後ろの娘さんに『何か一つでもしてやりたい。守る
べき義務がある』という表情(かお)だな。少し驚いたぞ。お前が桜花以外に心を動かすとは」
ハっとした面持ちになったのは秋水ばかりではなく、背後のまひろもだ。
(どーして?)
親交はない。接触といえば剣道の練習を観戦したのと、さっき屋上で遭遇した位。
(あ)
心中で情けない声をあげて、まひろは固まった。
(よく考えたら私、泣いているトコを見られちゃったんだ…… どうしよう)
なんだか急に恥ずかしくなってきて、俯いた。
同時に泣いた理由を思い出して、涙がじんわり滲んでしまう。やるせない。
恥ずかしがったり泣いたりと、とかくまひろの情動は不安定。

──今度は少し長いお別れになるけど、必ず帰ってくるから心配するな


32 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/08/23(水) 00:42:15 ID:KtOEZG6A0
カズキがそういい残した時から、心は「長いお別れ」という単語に揺らされている。
そして彼が月に消えたと伝え聞いた瞬間から、「長いお別れ」はますます現実味を帯びてきて
生来の落ち着きない気質を、更にぐらついたモノに変えている。
同じ世界にいる筈なのに、声も鼓動も届かない。
さながら重苦しい扉の向こうに呼びかけるように。押し込められた人を求むるように。
届かないコトに落胆し、打開できない無力に打ちひしがれながら、戻ってくるコトを切望している。
永遠とも思える寂しい時間を扉の前で。
(やだな…… なんだか私、泣いてばかり)
まひろはごしごしとまぶたをこすって強引に首を伸ばした。
眼前にある大きな背中を見据えると、ちょっとしたデジャビュが去来する。
正体まで説明できるほど巧みな言葉を持っていないが、まひろはそこにいる青年にひどい
申し訳なさを感じた。
そもそもまひろが学校に侵入しなければ、彼はいつも通り姉と一緒に帰れた筈なのだ。
けれども彼はまひろを送ると申し出て、今に至る。
(ゴメンね秋水先輩)
できうるコトなら場を去って、強引にでも桜花を送らせてやりたい。
前きょうだい、というのは姉弟だろうと兄妹だろうと互いになくてはならない存在だと、まひろは
強く思う。
そっと踵を返そうとしたその瞬間。
「だが、あまり思惑を出しすぎるのも考えモノだぞ? もし俺がお前に牙剥けば、娘さんから
狙う所──…」
電撃にも似た衝撃性が、欧州的な美形の前面総てを襲った。
服の生地がビリビリと断裂の悲鳴を上げ、女性のごとき白き肌も波打つ。
耳の前に垂らした金髪も突風後のように舞い、戻る。
まひろにその光景は見えなかったが、恐るべき気配に足がすくんで歩が止まる。
総ては、一流の剣客のみが発するコトができるという「裂帛の気合」の成せる技。
「……いい剣気だ。以前より鋭さを増しつつも、どろりとした嫌な気配を見事に失くしている」
「彼女に手を出すな」
褒め言葉に対しては不適切な低い声が、静かな夜に響いた。
「そう警戒するな。俺の信条なら知ってるだろ?」
「ああ。嫌というほど聞かされた」
「ならノープロブレムだろうに」

33 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/08/23(水) 00:43:55 ID:KtOEZG6A0
総角はやれやれと手を上げた。さながら、武器を持っていないコトを告げるように。
「悪いが、今は状況が違う。鵜呑みにする訳にはいかない」
不穏な秋水の言葉に、まひろは首を傾げた。
(本当にお友達なのかな?)
彼女なりに違和感を覚えているらしい。
「フ。どうも俺は歓迎されていないらしい。この街に着くなり偶然会えた旧友と、ただ話したい
だけというのに」
瞑目と微苦笑を顔に湛えて、総角はゆったりと後ずさった。
秋水との距離は約8m。
飛び道具でも持っていない限り、即座に攻撃できる距離ではない。
「不服ならもっと退くぞ? 今すぐ消えてやってもいい。ちょうど、試したいコトがある」
総角はゆったりとした動作で秋水を指差す。
頬には相変わらず笑みが張り付いているが、尊大さはあまり感じられない。
端々にあるのは、年下の従兄弟のワガママを聞いているような親しみだ。
「皆神市って所で、新しいモノをいくつか手に入れた。恐らくどれを使ったとしても、消えるの
はたやすい。『下準備』はしてあるしな。フフ。羨ましいだろう?」
「なんだか変わったお友達だね」
まっすぐな背中から顔半分を覗かせつつ、まひろは秋水を見上げた。
「こういう男だ。むかしから。それと知り合いというだけで、友人ではない」
困惑気味のまひろを手で制し、背中へ引っ込めると秋水の口からため息が漏れた。
「とにかく。争う気はないんだな」
「ああ」
彼は距離を測り、透明な緑の眼差しを見て、最後に総角の首と襟元を見た。
危険な物体を探そうとする慎重さが端々に見受けられる。
「この通り、認識票はないだろう?」
言葉の意味はよく分からない。
だが秋水にとっては、白旗を見るより安全な文句だったらしく。警戒が解かれた。
キリのない警戒にまひろを付き合わせるのも悪いと思ったのだろう。
「ようやく分かってくれたか」
安堵の笑みと共に、総角は踏み出す。
秋水は見た。
8mもの距離を暴風のごとく詰める総角を。

34 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/08/23(水) 00:44:50 ID:KtOEZG6A0
襲いくるのは、秋水の剣気など到底及ばぬ圧倒的音裂!!
総角の動きにつれて校庭の壁がミシミシと軋み、質素な剣道着のそこかしこが有無をいわさ
ず鋭い真空の波に食い破られていく。
反応はできなかった。
背後のまひろに危害が及ばぬ動き方を考えた分、一手遅れた。致命的なタイミングで。
最後に見えたのは、『何か』を持ったまま電光のように手を動かす総角──…
斬られる。
敢えてそれを受け入れたのは剣士ならでは。
せめて出血を少なくせんと身を硬くする秋水を、一陣の風が突き抜ける。
「気を抜くとはまだまだ甘い。俺が敵ならひどく良くない事態を招いていたぞ?」
風は止みしなに、路傍の砂塵とまひろのスカートの裾をぶわりと巻き込み、終息した。
と同時に、綽綽たる余裕声が秋水の耳を叩いた。
「認識票がポケットにでも忍ばされていたらどうする? それでなくとも俺の身体能力はお前
より遥かに上。万全を期するなら構えぐらいは取るべきだ」
「え、え? さっきは向こうの方にいたのに」
スカートを抑えながらきょろきょろするるまひろのいう通り。
一瞬でどう詰めたのか。
総角は秋水の背後にいた。まひろからもゆうに5mは離れた場所に。
背中に背中を向けているのは、西部劇の決闘開始5秒後を彷彿とさせる姿だ。
「フフフ。このベタな演出はナイスだろう。一度やってみたかった」
秋水は無傷を知ると、先ほどの交錯がただのからかいだと気づいた。
が、(まひろの安全を優先した結果とはいえ)からかいに反応できなかった心情は察するに
余りある。
切歯し振り向く秋水に、かかるのはなだらかな話し声。
「ただ秋水よ。気を抜くのも悪くはない。ずいぶん丸くなった証拠だ。昔と違って人間味があ
るともいえる。ま、今のように守るべき人間に気を取られ、負けを喫する危険もあるが」
総角は右手のサインペンにフタをはめた。
ペンは柔らかめの材質でできているらしく、キュポンと軽快な音を立てて収まった。
(……サインペン?)
降り返った秋水は疑問を抱いたが、総角は別段答えない。
「いずれまた会うだろう。積もる話はその時に。さらばだ秋水。我が永遠の好敵手」
顔だけ振り向き、伸ばしきった左の先で親指を立てると

35 :永遠の扉:2006/08/23(水) 00:45:50 ID:KtOEZG6A0
「あ。あと、そこな女のコ。たぶんもうすぐ爆笑必至のモノが見れるぞ。俺の力作を」
愉しげに言い残し、夜の帳に消えていった。

「静かでいい夜だ。俺たちが動き出すには格好の。ま、職員室の方が若干騒がしいがな……」

秋水に聞こえないほどの小声でぼそりと吐き捨てながら。

「変わったお友達だったね」
額に手をあて、遠くを見るような仕草をしながら、まひろは感心したように呟いた。
「友人では別にない」
秋水は不快そうだ。
懐手に掴んだ核鉄は汗みずく。その生理的嫌悪感が先ほどの出来事への印象を悪くして
いるし、咄嗟に武器を展開できなかった自分への苛立ちもある。
『核鉄』というのは掌に収まるほどの大きさと厚みをした六角形の金属片。
闘争本能によって作動し、持ち主に見合った武器を発現する。
されど秋水は反応できなかった。からかいだとしても、そうと分かったのは今しがたであり、
最中においては反応すべきだったというのに。
似たような経験を持つ秋水だから、気分は余計に苦い。
「それはともかく…………」
すぅっと息を吐くと、彼は表情の険を務めて抜いて、言葉を発した。
「送っていく」
笑顔でいえばいいのに、仏頂面で彼はいう。
L・X・E在籍時には生徒からの信望を得るため、かなりにこやかな笑顔を振りまいていた秋
水だが、今は取り繕う必要がなくなったのであまり笑わない。
第一、話題が話題でもある。
秋水なりにまひろを送るコトを真剣に考えているし、真剣な話題ならば余計に笑うワケには
いかない。
だが秋水、この命題に対して、やや悩みを抱き始めていた。
先ほど決意をしたのはいいものの、まひろにとってそれが有益な話題か否かはまた別次元
の問題なのだ。
結局はカズキへの贖罪意識が先行した決断で、押しつけるのは迷惑にも思える。
秋水は前歴のせいで、他人との距離を測るのが苦手なので悩んでいる。

36 :永遠の扉:2006/08/23(水) 00:46:39 ID:KtOEZG6A0
もっともそれは、彼の銀成学園における人気度を知る者からすれば噴飯モノである。
容姿端麗で成績優勝、剣道部のエースでなお且つ副会長。
高スペックすぎる肩書きを持つ彼だから、当然、女子からの人気も高い。
秋水のような人気者との接触は、よほど特殊な感性を持っていない限りは役得に転じる。
いわばタレントからサイン色紙を貰ったり手を振ってもらったりするような、そういう気軽な役得だ。
まして「寄宿舎に送る」という行為など、金を払って望む者すらいるだろう。

実際、まひろも秋水の申し出は嫌ではない。
かつて剣道の練習で、秋水が力余ってカズキを気絶させてしまったコトがある。
その時まひろは抗議すると、秋水は美青年パワーのキラキラ全開で謝った。
美青年というのは魔力すら秘めている。
基本的に「お兄ちゃんっ子」だと思われていたまひろですら、目にハートマークが浮かぶくら
い熱を上げて黄色い声をあげた。(残酷な裏切りに、カズキは泣いた)
以上のように、まひろの美的感覚は一応普通。秋水を「カッコいい」と思っている。
カッコいい先輩に送ってもらえるのは少女冥利につきるし、親友2人へのいい話題になるし
カッコいい先輩がふだん何を考えているのか、色々と聞きたくもある。
(でもダメ! それじゃ桜花先輩が学校に1人ぼっちになっちゃう)
弟な秋水先輩は、お姉さんと一緒にいなきゃ寂しいと、内心で一生懸命かぶりを振る。
「だ、大丈夫! 学校から寄宿舎までなら何回も歩いたコトがあるから、桜花先輩の方を……」
踵を返すと、ギザギザしたロングスカートがふわりと舞った。
それが元の形に落ち着く頃、まひろは懸命な顔で秋水を見上げた。
見上げた。
ただじーっと、見上げた。
161cmの彼女からすれば、181cmの秋水は山がごとき高き位置なのだが。
首の疲れもモノともせず、見上げている。
「もし君が嫌なら、タクシーを呼んで寄宿舎まで送る」
対する秋水は、ひどく真剣な面持ちだ。
それを見た瞬間、”童顔めいたOL”という幼いのか幼くないのかよくわからない顔立ちに、ひ
どく無邪気な微笑が浮かんだ。
「何か」
「先輩、猫さんになってる!」
「は」

37 :永遠の扉:2006/08/23(水) 00:47:17 ID:KtOEZG6A0
手を伸ばしたのは……秋水の顔だ。
身長差を補うためか、すっくと背伸びをしている。
そして右手の人差し指から小指までを頬に当てて、親指でせっせと猫ヒゲを拭っている。
さすがに秋水は驚いたが、強い拒否はできない。
黒目がちな瞳に灯る真剣な光や、やわやわと顔を撫でる小さな小さな親指。
まひろが本当に心から一生懸命、インクを落とそうと動いているのが見てとれる。
それを拒むのは、ひどい悪事のように思えた。されど白い指が汚れるのも忍びない。
「その、消してほしいのは携帯電話で撮った写真の方だ」
葛藤の末、秋水はなるべく柔らかい声で呟いた。
「あ、ゴメンね。てっきり顔の方かと」
「俺の方こそすまない。主語をつけ忘れていた」
秋水は微妙な表情だ。
彼自身、自分の顔に浮かんでいるのがどういう意味合いかよく分からない。
困ったような安心したような、……もうちょっと別の感情があるのか。
幼い頃の境涯が元で、他人はおろか世界に対しても心を鎖(とざ)してきた秋水だから、他人
に対する情動は区分し辛い。
完璧に見える秋水なのだが、他人絡みの事柄となると途端に弱い。
で、まひろが正に、写真を消さんと試みた瞬間。
携帯が震えた。どうもマナーモードだったらしい。
おっかなびっくりに出たまひろのする会話内容に、秋水は「おや?」と思った。
どうも覚えがある。「転校生」だの「外人さん」というフレーズに。
やがてまひろは恐縮しきったお辞儀をし、携帯電話に何かの操作を施して秋水に差し出した。
「桜花先輩から」
調べ物が終わったのだろうか?
「ま、まぁ。半分ぐらいは」
桜花の声はかすれて震えている。秋水は心配したが、どうも笑い声らしい。
「私のコトはいいから。とにかくまひろちゃん、私が心配で動けないでしょ? だから今から
5分置きに『私は無事よ』って電話するコトにしたの。これならいいでしょ?」
帰りが少し遅れそうと付け加え、桜花は電話を切った。
後に残ったのは、気まずさと若干の嬉しさがブレンドされた栗髪の少女と、秋水だ。
「えーと。色々ごめんなさい! とりあえずここはお言葉に甘えて」
秋水は無言で深く頷き、まひろとつかず離れずの位置で寄宿舎に向かって歩き始めた。

38 :36と37の間へ入れ忘れです。すみません…:2006/08/23(水) 00:49:56 ID:1gN2anVs0
秋水は不審も露に問い返した。
猫? 一体何をいっているのか?
「ゴメンね。せっかくのシャッターチャンスだから! エイ!」
まひろはすかさずポケットから携帯を取り出すなり、秋水を撮った。
「ほら、ほら! 面白かわいいよ秋水先輩」
くるりと裏返された携帯電話の、その画面に映し出されたのは。
黒い猫ヒゲを描かれた秋水の顔。
右頬に3本。左頬に3本。
間の取り方は実に派手だ。
目元から鼻に向かってちょうど45度の角度で振り下ろされたヒゲと。
頬の中央で水平に描かれたヒゲと。
頬の端から鼻に向かってちょうど45度の角度で振り上げられたヒゲ。
それらが片頬に1本ずつで計6本。
更に、顎の中央から下唇にかけても線が1本。鼻にも点が1つ。
前髪をかきわけ額中央にも1本。

(あの時……!!)

総角が突如踏み込んできた時、描かれたようだ。
それも一瞬のすれ違いに『9回』も。

総角がくれた、初めての猫ヒゲ。
それは水性塗料で、数は9本でした。
その形はとても長くてチャーミーで、こんな素晴らしい猫ヒゲを貰える秋水は
きっと特別な存在なのだと感じました。今では秋水は猫さん。
ただ焦るのは、もちろん「これが刃物だったら」
なぜならこれもまたベタな演出だからです。

気難しい顔で秋水は頼んだ。
「頼むから消してくれ」
粘るかと思ったが、まひろはあっけなく頷いた。
「うん。嫌なら消すよ」

39 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/08/23(水) 00:51:59 ID:1gN2anVs0
バレさん、保管ならびに時系列の塗り分けの方、ありがとうございました。
大変分かり易く、見ると妙に嬉しいです。

話に限らずモノを作るというのは因果なモノでして、考えれば考えるほどできあがったモノに
新鮮味が感じられなくなるのです。ある程度たてば「お、意外に面白いじゃん」とか思うので
すが、できた瞬間は作ったモノよりご感想や保管の方法に興味津々なのですよ。

前スレ>>406さん
桜花にはもう1つの顔があります。そりゃもう面白いのが。
元気で表情豊かなまひろと、生一本で愛想少なめの秋水の関係は少女漫画的な発展を遂
げるかも知れません。性格的には新条まゆ先生の作風が好みですが、なるべく真っ当な方向で。

前スレ>>407さん
総角については、恥ずかしながらオリキャラです。話作りの都合上、敵がいないと締まらない
のですが、錬金終盤で動かせるのは1人しかおらず、そいつにも別の役目を負わせたかっ
たので総角の出番と相成りました。まひろについては、3巻の最後の方でちょこっと秋水にw

前スレ>>408さん
「あげまき」らしいです。分かり辛いですよね。ちなみに武装錬金キャラの命名則は「武器・
戦闘にちなんだ単語を含む」らしいので自分も一応従っています。総角というのは、鎧の板を
留める部分です。で、「主税」にも意味があり、苗字の一文字と共に英訳すると……

前スレ>>409さん
何しろ平時ですら恋人と縁が遠そうな性格なので、秋水とひっつくかどうかは自分にも予想が
つかない所です。ひとまず、秋水とあれこれ悩む状況は考えてあるのですがバトルとの兼ね
合いはまた難しく…… バトル物で戦闘不参加のヒロインって、かなり扱い難しそう。

ふら〜りさん
秋水はるろうにの雪代縁のリボーンキャラなので、「思い」は良くも悪くも深そうですね。そん
な余裕のない青年を和らげる少女というのはベタですが、心惹かれてやまないのです。時に
辛さが見え隠れしそうですが。あと、根来でやれなかった分、主役の心理描写は多くなります。

40 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/23(水) 01:37:30 ID:HpUBYmOK0
前スレ>>353より。

41 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/23(水) 01:38:04 ID:HpUBYmOK0
 しばらくして、満足したように王者が振り向く。
「井上、今日から俺がおめぇの先輩だ。よろしくな」
 汗と血が付着した手で、握手を求める王者。この無神経ぶりも、どこか加藤を漂わせて
いる。
 態度だけではない。なにもかもが似ている。
 だが、彼ではない。彼女と苦楽を共にし、苦しいほどに憧れた先輩は、今は地べたを舐
めたまま微動だにしない。
 無性に込み上げてくる悔しさを、井上は上手に処理できない。
「……おい、どうした。なに震えてやがる」
「よ、よくも……」
「あぁ?」
「よくも、先輩をォッ!」
 潤んだ瞳で王者を睨む。
 拳が自然に出てしまっていた。王者の顎に鮮やかに突きが命中した。「敵わないから止
めておけ」という打算を「先輩の仇を討ちたい」という願望が凌駕した。
 ──が、現実は甘くはない。
 パンチに使った手首を大きな手にガシッと掴まれた。いくら引っぱってもびくともしな
い。
「なかなか激しい気性じゃねぇか。……気に入ったぜ」
「……くっ!」
「あんま暴れんじゃねぇよ、ぶち殺すぞ」
「はぁっ!」
 左で金的蹴り。これも綺麗にヒットするが、コツカケには通用しない。
「てめぇ、いい加減に──」
 言い切る前に、左手での眼突きが飛んできた。とっさに額を下げる。
「あうっ!」額に指が当たり、井上は突き指してしまう。
「いい加減にしねぇかッ!」
 防いだとはいえ、反抗されたことがよほど不快だったのか、王者が怒りをあらわにする。
強引に井上の腕をねじり上げた。

42 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/23(水) 01:39:22 ID:HpUBYmOK0
 折れる寸前にまでねじられているが、井上は攻撃を止めようとはしない。
 まだ動かせる両足で、必死に蹴りを放つ。
 ささやかな抵抗を受け、王者の苛立ちがいよいよ沸点に達した。
「クソ女がァッ!」
 かなり強めに放たれた裏拳による制裁。喰らった井上は、地面に激しく叩きつけられた。
「ぐっ! ……かはっ!」
「──ったく、ざけやがって。俺だって女を殴るのは趣味じゃねぇんだ。せいぜい大人し
くしてるんだな」
「……うぅっ……くっ!」
 悔しい。自らの“憧れ”を奪った男に、一矢を報いることさえかなわない。せめて一撃
くらいは有効打を与えたかったが、もう拳に力は残っていない。
 うなだれる井上に、王者は吐き捨てるように呟く。
「けっ、やっと大人しくなったか。明日になれば、武神が俺とおまえを現実世界へ連れて
いってくれるはずだ。そうなりゃ、俺もおめぇに空手を教えてやるし、おめぇもあんな偽
者なんかすぐに忘れちまうぜ」
 と、倒れている加藤を指さす。──ところが。
 さっきまで地に伏していた加藤がいなくなっている。
「……ど、どこへっ! どこへ行きやがったァッ!」
 後頭部にハイキックが迫っていた。

 どごっ。

43 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/23(水) 01:41:35 ID:HpUBYmOK0
「がはっ!」
 後ろからハイキックを浴び、王者が転倒する。受け身をとったとはいえダメージは大き
い。喰らわせたのは、むろん加藤清澄だ。
「て、てめぇ、せこい真似しやがって……!」
「………」
 追い込みをかけるチャンスだが、なぜか黙ったまま仁王立ちする加藤。
「おい、来ねぇのかよ。やっと、てめぇに勝ち目らしい勝ち目ができたんだぜ?」
「………」
「てめぇが俺に勝てそうな分野(ジャンル)は、せいぜい卑劣っぷりくらいなもんだろう
が。オラァ、やってみろよ」
「……立て」
 今までにない気迫で加藤が凄む。
「さっさと立ちやがれ! てめぇはぶち殺すッ!」
「……けっ。俺と同じ顔と声で凄まれて、びびるわけねぇだ──」
 呆れながら立ち上がろうとする王者に、またもハイキックが火を噴く。
「なっ……! ま、まだ俺は立ち上がってねぇ──!」
 王者のボディに拳がめり込む。さらに加藤は髪を掴み、むりやり体を起こし──殴る。
「ぐえっ、ぐはっ! つぅっ……!」
「俺の後輩に手ぇ出したこと、ただじゃ済まさねぇぞ。たとえ俺より空手が達者だろうが
なァ!」
 対して、残念ながら“暫定”となってしまった王者。彼とて、加藤としての性質を受け
継ぐ男。はっきりいって気は長くない。
「ただじゃ済まさねぇのはこっちの台詞だ! 次こそ息の根止めてやるッ!」

44 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/08/23(水) 01:48:35 ID:HpUBYmOK0
お久しぶりです。
明日か明後日にまた短編投下します。

45 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/08/23(水) 01:52:05 ID:HpUBYmOK0
書き忘れ。

1氏、新スレ乙です。
あと、十八日目は少し長くなります。

46 :作者の都合により名無しです:2006/08/23(水) 07:39:51 ID:UlFNMJ1u0
>スターダストさん
前作の千歳と違って、まひろは普通の女の子みたいに悩んだり泣いたり。
その辺がまたいいですね。千歳とは年が違うけどw
姉さん命の秋水も、少しずつ変化しそうですな。

>サナダムシさん
井上さんと加藤の絆が少しずつ深まっていきますねえ。
不意打ちができない加藤は、やはり加藤じゃない。卑怯こそ加藤。
短編はいよいようんこかな?

47 :作者の都合により名無しです:2006/08/23(水) 11:49:38 ID:DW9my3930
・永遠の扉
兄は生き死にをさ迷ってるのに、妹は結構上手くやってるなあ・・
まひろは連金の中で一番可愛いと思った。あんまり原作で活躍しなかったが。
だからこそ、このSSでくらいはいい思いしてほしいな。

・やさぐれ獅子
加藤と井上のSAGAモードにフラグたったか?w
偽者の方は強いけど、案外真正直で隙だらけだな。
そのくせ女に手をあがるはw
短編はうんこ以外がいいなあ・・

48 :作者の都合により名無しです:2006/08/23(水) 19:32:30 ID:iQdm4CN50
>サナダムシさん
どうせコピーなら本物の姑息なところもコピーしないとw
加藤は卑怯がうりだものw井上はいい女だなあ

>スターダストさん
ストロベリーな関係になるのかな>まひろ&秋水 
まひろはあの3バカのリーゼントといい感じだったような

49 :壊す拳と護る拳:2006/08/23(水) 22:22:39 ID:Hp2FGd+Q0
深夜。冷たいアスファルトの上で、生温かい血が土砂降りの雨水に溶かされていく。
ピクリとも動かない少年の頭部から流れているその血は、逃げだそうとしたもう一人の
少年の足を滑らせ、転倒させた。少年は慌てて立ち上がろうとして顔を上げる、と、
その目の前に痩せた青年が立ちはだかった。
長い黒髪で顔の右半分を隠し、黒一色の無地のラバースーツを着た、幽鬼のような容貌
の青年。少年が掠れた悲鳴を上げるより速く、青年の右手が一閃。少年は何が起こった
のかもわからぬまま、頭部から血を流して倒れ伏した。その頭に、青年は何度も何度も
両の拳を振り下ろす。少年の生死が判らないのか、それとも判っていてやっているのか。
その背後では、青年によって両膝を砕かれた少女が呆けた様子で全てを眺めていた。
現実感がないのである。こんなことが自分の身に降りかかるはずがない、と。
やがて少年の頭を殴ることに飽きたのか、青年はゆっくりと振り向き、少女に向かって
歩き出した。それを見ても少女は、これは悪夢であり目が覚めれば自室のベッドの中、
と信じて疑わなかった。だから涙も悲鳴も出てこない。
目覚まし時計に起こされて、朝食はトーストとハムエッグ、母親の説教と父親の……

《死亡した少女は頭蓋骨を破砕されており、辛うじて命を取り留めた少年二人と
同じく、拳の執拗な殴打によるものと思われます。警視庁は一連の事件と同一の》
ぶつっ、と音がしてアナウンサーの声が途切れ、その姿も消える。男は手に持った
テレビのリモコンを畳の上に置いて、ぽつりと呟いた。
「拳による殴打で殺人、か。オレもそれぐらいやってたかもな。あいつがいなけりゃ」
夕陽が差し込む、狭いアパートの一室。両親を早くに亡くした兄妹二人きりの生活の場だ。
成績優秀なのに大学へ行きたいなどと口にせず働いて、家事も引き受けて、毎日健気に
頑張っている妹。その妹に、少しでも楽をさせてやりたい。心からの笑顔を見たい。
妹が、誰に対しても胸を張って語れる兄貴になりたい。
それだけを念じ続けて、男は毎日毎日、汗を流している。
「さてと。そろそろ時間だな」
男はスポーツバッグを肩にかけて、アパートを出た。一日の仕事で体は疲れているが、
トレーニングを休むわけにはいかない。全ては、妹の笑顔ために。
そういえば最近、ちょっと気になる相手ができたらしい。そいつのことを話す時、
妹はなかなか楽しそうな笑顔を見せてくれる。……兄貴としては複雑な気分である。


50 :壊す拳と護る拳:2006/08/23(水) 22:23:10 ID:Hp2FGd+Q0
いつも通っているジムまでは、歩いてもそう時間はかからない。夕闇迫る街を、男は
黙々と歩いていく。長身に革ジャン、肩にはスポーツバッグ。これで表情が陰気でさえ
なかったら逞しいスポーツマンで通るのだが、残念ながらこの男はいつも陰気である。
つい先日、とうとう日本一の座に着いたというのにその辺は全く変わらない。世界への
通過点、としか考えていないからだろうか。
「あっ、お兄ちゃん!」
陰気な男に、明るい少女の声が降り注いだ。買い物袋を脇に置いて、電柱の根元に
しゃがみ込んでいる。その目の前にはダンボール箱があり、中では仔猫が鳴いている。
「捨て猫かよ。言っとくが、ミルクとかやるんじゃねえぞ。着いて来られたら面倒だ」
「うん、わかってる。アパートじゃ飼えないもんね」
少女は名残惜しそうに立ち上がり、買い物袋を持って男に向き直った。
「じゃ、先に帰ってるね。お兄ちゃんはまたジム? あんまり無茶はしないでね」
と言って帰宅の途についた妹を、男は見送る。見送ってから、声を出した。
「……いい加減に出て来い。ここ数日オレをつけ回してるのは判ってる。それだけなら
どうでもいいが、もし妹に手を出してみろ。即、ボコボコにして警察に突き出すぞ」
辺りを油断なく見渡しながら、胸クソの悪くなってくるような気配に向かって
男は言った。すると男のすぐ近く、電柱の影から……
「勘が・いいな」
黒いラバースーツと長い黒髪の、痩せた青年がユラリと出てきた。
「その通り・お前の妹に・私は・手を出す・具体的に言うと・殺す」
「何!? てめえ、冗談でも許さねえぞ!」 
「冗談では・ない・そういうルールだから・殺す・できれば・嫌がって欲しい・
そして・私を・止める為に・戦え・もし・そうしないのなら……ああ・そうだ」
青年は、ぽんと手を打った。何か思い出したように。
「昔・よく使った手だが・あの娘を・殺す前に・繁殖に利用・してみようか?」
「はんしょく? ……って、おい、まさか」
「それをやると・大抵は・泣いて・怒り狂って・だが・落ち着いて考えれば・
解ることだが・種族が違うのだから・結局・受精は・できないわけで」

51 :壊す拳と護る拳:2006/08/23(水) 22:24:00 ID:Hp2FGd+Q0
青年の言葉が終わる前に、男が殴りかかった。スポーツバッグを投げ捨てて、右拳を
まっすぐ突き出し、青年の顔面に叩き込む。……つもりだったが、青年は素早く足元の
ブツを拾って翳し、男の拳を受け止めた。
男の拳は、そのブツに当たって「ゥギャッ」という声といくらかの血飛沫を飛び散ら
せたに留まった。拳が命中したのは、男が摘み上げ拾い上げた、仔猫の顔面。
「なるほど・お前の拳は・速くて・強い・もっと・どんどん・やってくれ」
青年は、顔面を紅く染めて痙攣している仔猫を電柱に投げつけると、もう
それには関心を示さず、ゆっくりと男に向かって歩き出した。
男の異様な言動に呆然としてしまった男は、慌ててバックステップして距離を取る。
『野郎……どこまで本気か判らねえが、今ここで叩き潰さねえとヤバそうだ……!』
男は両拳を固めて構えを取った。ボクシングスタイルだが、左手の位置が低い。これは、
ある特殊なジャブを撃つ為の構えである。
青年も拳を構えた。とはいえ適当に両手を握っただけ、ガードが甘い。明らかに素人だ。
『けっ、ナメてやがるな。五秒、いや三秒で沈めてやる』
だが男は知らない。この青年の正体を。遥か古代、人間種を虐殺していた者たちを。
世界征服も人類絶滅も考えず、ただ仲間内のルールに従いゲームとして人々を襲い、
そのスコアを競う凶悪な超人たちの存在を。現代に蘇った殺戮民族グロンギの恐怖を。
「喰らえ、この野郎っっ!」
特異なまでに伸びる左のパンチ、男の得意技フリッカージャブが先制で放たれた。

警視庁広域指定事件関連・未確認生命体28号こと メ・ゾエビ・ギ 
VS
東邦ボクシングジム所属のJ・ライト級日本王者 間柴 了…………FIGHT!                


52 :ふら〜り:2006/08/23(水) 22:25:10 ID:Hp2FGd+Q0
♪「大丈夫だ」って……想えれば それが 第一歩になる!♪
恥ずかしながら、最近になって読み始めた『はじめの一歩』。ことあるごとに「ぽ〜っ」
「ドキ……ドキ……」な一歩が可愛く微笑ましく、見てるこっちまでシアワセになれます。
が、その方面に妄想暴走すると皆様に披露できぬ作品になるは必定。故にシリアスバトル
作品とのコラボにしました。ゾエビの出展作品の彼は、大好きっつーか憧れです↓。
♪完全独走! 俺が、超えてやる……超・変・身っっ! 仮面ライダークウガ〜!♪

>>一真さん
ほ、本っっ気でオチがないですね。更に言うならヤマもなくイミもない。だからといって
アレでもなく。ま、今までさんざん東奔西走してきた彼ら、シリアス編を前に一休みですね。
たまにはこういうのも、のどか風味で良いものです。さあ、次に会う時の面構えが楽しみだ。

>>かまいたちさん
動機告白回想モードですな。原作『金田一』もそうですが、重くドロドロした怨念が何とも
……怖い物見たさで引き込まれます。はじめの方にもまだ謎が残されてますから、それも気
になりますし。実際の犯行の経緯にその時の心情にと、冷たい汗を握って続き待ってます!

>>17〜さん
シアンとバーディーのケンカはもう、この一行の定番と化しましたな。誰がどう見たって、
ケンカするほど仲がいいってタイプのケンカ。いずれ来る(と勝手に確信)進展が楽しみ
です。に比べて、ザンとリュミールは序盤の序盤以来、いまいち距離が……がんばれザン。

>>スターダストさん
総角カッコいい! 強敵キャラとして非常ぉ〜に好きですよこういうの。わざわざ凝った、
洒落た演出で自分の強さを見せつけて去る。で狡猾な罠を張ってくるか、正々堂々に拘るか
……どっちもいいなぁ。まひろも期待通りの無垢さが可愛いし、男女とも魅力大! です。

>>サナダムシさん
一気に悪役染みてしまった王者加藤。まぁ今の井上とこういう風に絡んでしまうと、ねえ。
愛する騎士を殺されて、敵討ちすべく非力な細腕で剣を構えるお姫様ですよ彼女は。でも、
騎士は生きていた。今の彼は彼の意地だけで戦ってるわけではなく、守るべきものがある!


53 :作者の都合により名無しです:2006/08/24(木) 01:43:36 ID:f8KFDm6E0
一歩は確かにメジャーだけど、メ・ゾエビ・ギとかはまったく知らないわw
でも、新連載してくれて嬉しいです。頑張って下さい。

54 :作者の都合により名無しです:2006/08/24(木) 10:54:02 ID:tN+WvlWd0
ふら〜りさんは必ず一般の人が知らないようなネタを混ぜるなあw

55 :作者の都合により名無しです:2006/08/24(木) 13:34:18 ID:Zl78Z89EO
エビボクサーかw

56 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/24(木) 14:20:28 ID:1/GftOM70
MUGEN バトルロイヤル 第11話 終焉の場所へ
ここはゲーム空間内地下数十メートルの位置する地点である。
地上からは全くわからない場所に入り口がある。
通路は土の壁が剥き出しにあるのでは無くキチンと金属で覆われておりまるで秘密基地の様な場所だ。
そして今基地の中の一部屋に三人の男達が集まっていた
この“ゲーム”の主催者でもあるベガ、竜魔帝王、オンスロートである。
今までゲームの進行具合を見ていた彼らだったが期限を設定していない事に気付き急遽会議を開いているのだ。
しかも何人かは合流し徒党を組んでいる。今は夜なので殆どが寝ている。
つまりゲームの現状は膠着状態にあり一向に動き出す気配が無い。ましてや参加者達は何個かの集団で移動しているので
今後の進行は極めて遅くなる可能性は非常に大きい。
元々主催者側の目的は道楽なのだ。闘いを見るのが好きなタイプの人種なのだから。
「諸君、恐らく参加者である彼らは私達を倒す為に徒党を組んでいると思われる。ゲームに乗る者達もいそうだが。そこでだ。今現在残っている
参加者全員で格闘大会を開きたいと思う。」
ベガが提案した。
膠着した状況を変化させるのには一番の案だった。バトルロワイヤルから格闘大会への変更。格闘大会もある意味戦の一つの形である。
「ルールはどうするか。技の種類の制限は無しで得物もありでいいか。殺人に関してはどうするのかね?」
オンスロートがニタリと笑いながら他の二人を見た。
「殺人か…。仮にも“格闘大会”だから人間達に馴染みの深いルールの方がいいんじゃないか。 故意・偶然等の理由に限らず対戦相手がリング上で死亡
した場合はソイツは失格と言う事にしないか。我々が見たいのは“戦”であって結果では無い。」
竜魔帝王がお茶をズズッと飲み干した後に言い切った。
「では“ゲーム”空間の外壁に張り巡らされたバリアを解除しよう。現時点で外部からの侵入らしき痕跡は無い。」
ベガがスイッチを押した直後、サイレンが鳴った。
「ムッ!?」
「何事だ!」
「何者かが“ゲーム空間”上空に出現したようだが…消えたか。」
「ベガ君、何者かの映像を見れるのか?」
「無論だ。今表示する。」
三人の前にあるディスプレイに映像が表示された。
ゲーム空間上空に現れた“何者か”は馬だった。
否、唯の馬ではない全身は白く額には一本角が生え脇には翼が生えている。
ペガサス。どこから来たのかもわからない天馬。
「まあどっかの世界から紛れこんだだけだろう。心配は無いさ。」

57 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/24(木) 14:21:00 ID:1/GftOM70
---ーーー放送は流れた
----ーーそれは戦士達にとって安堵を齎すモノだった
これでもう不意打ちや奇襲やだまし討ちについて心配する必要も無い。
明日の朝までゆっくりと眠れる。
しかも全員が集まるまで一切の戦闘行為は禁止と言っていた。
エネルギーをゆっくりと補充し明日、つまり試合開始のその時まで寝よう。
それが参加者全員に共通した思考だった。
ーーーーとある吸血鬼と他三人を除いて。
「諸君。朝日が登るまでに試合会場に着かなければならない。急ごう。」
ムーンをスタンドに背負わせながらDIOが言った。
「意外と近いんですね。会場の地点とこっちの地点は僅か1.5kmしか離れてませんよ。森を抜ければすぐですね。」
万太郎が地図を広げ皆に見せながら行った。
「しっかし意外だったわね。魔法の様なモノでいつの間にか皆の首輪を外してるんだから。」
18号は自分の首を摩った。何の感触も気配も感じず歩いていたら何時の間にか自分だけでなくパーティーメンバー全員の首輪が外れていたのだ。
エネルギー弾も打撃も関節技もドライバー等のアイテムも使わず目の前にいる男は首輪を外した。
「DIOオジサマ、私達もう“死んだ”って事になってるんじゃ?首輪外しちゃったら参加出来ないんじゃ…。」
「ムーン君、皆、それは大丈夫だ。私達は大会に参加するのでは無い。恐らく主催者達は会場付近に来るだろう。そこを叩く。」
「オジサマ、私は非力です。ムーンティアラが無いし…。」
セーラームーンはザ=ワールドの肩部分を手で握って悔し涙を流した。
仲間を救いたい。だが今の自分には力が無い。
誰か。誰か助けて欲しい。この三人には腕力がある。だが浄化能力は無い。
ムーンの涙が頬を伝い地面に落ちた。
直後、奇跡が起こった。
地面に落ちた涙から眩い程の光が出てペガサスが現れたのである。
「これはッ!?」
「ムッ…イカン!」
DIOが地面を蹴ってその場から距離を取った。
「私の傷が治っていく…ペガサスの光には浄化能力があるんだわ!」
「セーラームーンよ 僕の力を使って欲しい 堕落した戦士達を救う為に。」


58 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/24(木) 14:21:51 ID:1/GftOM70
「スーパーセーラームーン…と言えばいいのかしらね。」
「ムーンちゃん 似合うよ!」
万太郎は顔を赤らめてムーンの姿を褒めた。
「キン肉星の強き人よ、僕は現実空間には僅かな時間しかいられない。僕は美しい夢を持つ人間の中にのみいられる。」
「つまり僕の中に…か。いいよ。」
ペガサスの体が小さくなっていき万太郎の胸から体内へと入っていった。
「不思議な事ばかり起きるわね。DIO,作戦はあるの?」
「ある。アレを斃す事は困難だが不可能では無い。」
DIOは厳しい目で会場に設定された場所の方角を見つめていた。




MUGENバトルロイヤル 第一部完


59 :コテ ◆3BAKIuWgjw :2006/08/24(木) 14:22:47 ID:1/GftOM70
どうもです ロワ系のSSを書く事に限界を感じたので普通の格闘ストーリーを描く事にしました
次回からはMUGENバトルロイヤル第二部の開始です

60 :作者の都合により名無しです:2006/08/24(木) 15:37:07 ID:5LRC8tHZ0
>>52
面白そうだけど

グロンギと人間って生物学的には同一なんで繁殖は可能なのでは
まあ、グロンギ側がそのことを知らないのかもしれないけど

61 :バーディーと導きの神〜エルデガイン〜:2006/08/24(木) 17:05:08 ID:4VnJmufE0
「んで、ここさ来たのはええげども、帰っときはどうすんだ?」
浮遊術が効かなくなって落下した高速浮き砲台。飛行術が効かなくなって滑空するしかなかった
牙炎を見比べながら、モルプは素朴な疑問を口にした。
途端に辺りに静寂が訪れる。誰も答えられないのだ。
「ま、来ちまったんだ。先に進めばなんとかなるだろう」
一行のまとめ役、牙炎が答えになってない答えを返す。
「なんともならんがったら?」
当然、モルプが指摘する。
「だーっ!なんとかなるとしか考えんじゃねえよーっ!」
ヤケになった牙炎が吼える。そんなーと悲惨な声を上げるモルプだったが、底にバーディーが
割って入った。
「みんな静かに。なにか来る音がするわ」
一行は自然とリュミールとモルプを守る円形陣となり、ズルズルと音を立てて接近してくる相手に
対して身構える。
霧のせいで数レブ(メートル)先しか見えないが、その巨体により暗い影が出来る。高速浮き砲台の
下敷きとなった怪物と同じ二つ頭の生物が顔を出した。
「ひゃあああ!でたあ!!」
モルプがびっくりして飛び上がる。しかしそれを制する者がいた。リュミールだ。
「静かに!相手を刺激してはダメ!」
モルプをたしなめると、リュミールは円形陣の中から外にでる。
「リュミール!」
ザンが止めるが、リュミールはにこっと笑って大丈夫と言った。
「みんなそこにじっとしててね」
それだけ言うと、リュミールは怪物と正対した。
(ここが目的の土地ならあの双頭竜……。いえ、この土地の獣すべてに反応があるはずだわ……。
このチップに)
リュミールは紋章の浮き出た左腕のチップを双頭竜に向けて見せた。
すると双頭竜はなにごともなかったかのようにその場から離れていった。
(うまくいったわ……)
リュミールはほっと胸をなでおろした。
そして振り返り、みんなに指示を出す。

62 :バーディーと導きの神〜エルデガイン〜:2006/08/24(木) 17:06:00 ID:4VnJmufE0
「ここに双頭竜の屍骸がある限り、いろいろ集まってくるはずよ。そうならないうちに急いで
移動しましょう」
「リュミール……」
この島に着いてからのリュミールの豹変振りに面食らったザンは、どう対応していいのか
分からなくなる。
そんなザンの戸惑いに気づいたのか、リュミールはザンの手をとって先導し始めた。
「ザン、行きましょ」
リュミールは笑顔でそう言った。
その笑顔がいつもと変わらない素直な笑顔だと分かったザンは元気にうんと答えた。
一行は深い霧の中をリュミールの先導にしたがって歩き始める。
「しかし、確かにこの霧じゃ危なくって飛行機でも来られねえよなあ……」
相変わらずの濃霧に牙炎がごちる。
「しっかしオラあんな怪獣見たの初めてだっぺ。噂は本当だったんべやな」
モルプはモルプでなにか思うところがあるようだ。
「噂ってなに?」
モルプの隣にいたバーディーが興味ありげに尋ねる。
「んだなや。こん島がら生ぎで帰った者はいねえっていうんだども、奇跡的に帰ってぎだ
探検家も怪物に襲われたとか言って気がふれたっちゅう話しだべ」
「ふうん」
ザンもモルプの話を聞いていたようで適当な相槌を打つ。
「けんどたまげたなやー」
モルプは感心したような声を上げた。そして先頭のリュミールに話しかける。
「なあなあ、いったいどうやっであの怪獣さ追っ払っただ?その手首の変なやつでか?」
モルプに悪気があるわけではない。
「……あの……。それは……」
それでもまだリュミールには逡巡があった。
「やめろよモルプ!人には言いたくないことだってあるんだぞ!」
ザンがリュミールをかばってモルプを叱る。しかしリュミールは決心したように被りを振った。
「ザンいいの。ここまでみんなを連れてきてしまったんだもの。知る権利があるわ」
「知る権利?」
牙炎が鸚鵡返しに唱える。

63 :バーディーと導きの神〜エルデガイン〜:2006/08/24(木) 17:07:08 ID:4VnJmufE0
「はい。皆さんも聞いてください」
ついにリュミールは真実を語り始めた。
「この島にいる生物はすべて……、この土地を守るために開発調製した造られた生命体なのです」
「造られたって、人為的にかい?」
幾分冷静なソシュウが問う。
「はい」
リュミールははっきりと答えた。そして左手のチップを示す。
「彼らはこのチップを恐れ避けるように本能に刻み込まれているのです。他の侵入者と区別
できるように……」
「はーん。それであの怪物は逃げちまったってわけか」
珍しくシアンが難しい内容を理解して相槌を打った。
「ちょっとまって」
話に割り込んだのはバーディーだ。
「リュミールちゃん。あなた今この土地を守っているって言ったわね。『人為的に製造された
戦闘用の生物』が、いったいなにからなにを守っているの?」
バーディーには確信があった。この島に入ってからの不自然ともいえるこの濃霧。巨大な
生物と反応するチップ。そしてこの島を覆っているという強力な抗術。これはもう間違い
なかった。
リュミールは一端視線を下に落とすと、少し顔を上げてうつむいたまま話し出した。
「この島には……、導きの神(エルデガイン)があるのです」
『エルデガイン?』
一行は一斉にその名を唱えた。
「はい。創造と破壊を司る恐ろしいシステムです……」
「……テラフォーミングできるのね?」
バーディーは言葉を選びながら聞いてみた。
「はい……」
リュミールはバーディーとリュミールの間でしか分からない単語で話し合った。
「なんだよそのてらふぉーみんぐって?」
シアンが興味ありげに聞いてくる。
「ありていに言えばね、星を自由に改造できる機構のことよ。難しいからそう覚えておいて
ちょうだい」

64 :バーディーと導きの神〜エルデガイン〜:2006/08/24(木) 17:07:50 ID:4VnJmufE0
「星ってこの星か?」
シアンが地面を指差す。バーディーは頷いた。
「まあ、それはいい。それでリュミール、そのシステムや怪物を造ったのは滅んだ先文明の
人たちなのかい?」
今度はソシュウが尋ねる。
だがリュミールは言いにくそうに、それだけは教えられないと言った。
「わかった。創造主についてはもう聞かんよ」
牙炎がリュミールの表情を見て取って言った。
「それより、君は少々焦っているように見えるんだが、なにかあるのか?」
「そうです!」
リュミールはその焦りを示すかのように胸の前で両手を握った。
「エルデガインが動き出すまでもう時間がないのです!」
『な、なんだって!?』
まるでなにかの構成員かのように揃って声を上げるソシュウたち。
「エルデガインは私が目覚めると同時に起動し、生体消去の準備に入るのです。それから
約30日以内に私との接触がない場合、自動的に活動を開始します」
「ならまだ20日以上も日があるじゃねえか。そんだけありゃこんな小さな島どこだって行
けらあな」
シアンが余裕の表情で答える。
「……はい……」
対してリュミールには覇気がなかった。
それを敏感に感じ取る鈍感なシアン以外のメンバー。しかし今はそれをどうこうしてるとき
ではない。
牙炎が問う。
「それで、この島のどこにエルデガインがあるのか分かるのかい?」
リュミールはある一定の方角を指差す。
「はい。あちらの方向から私を呼ぶ声を感じるんです」
「わかった!出発しよう!」
牙炎が宣言し、一行はまた歩き始めた。

65 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/08/24(木) 17:11:45 ID:4VnJmufE0
ついに物語の核心部分に入っていきます。

>>29さん
ありがとうございます。なにより嬉しい応援です。
>>30さん
本人はまだおっかなびっくり書いてます。
>>ふら〜りさん
シアンとバーディーは勝手に動いてくれて助かってます。

66 :作者の都合により名無しです:2006/08/24(木) 17:50:03 ID:saFGr7vFO
名を変え品を変え頑張るなオオクワも

67 :作者の都合により名無しです:2006/08/24(木) 20:28:53 ID:1CBOi8Kk0
17さん、だんだんRPGっぽくなって着ましたねー
原作は知らないけど、SFよりゲームっぽいのが好きなので期待しております

68 :作者の都合により名無しです:2006/08/24(木) 20:32:30 ID:9N0bI66j0
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69 :作者の都合により名無しです:2006/08/25(金) 06:04:46 ID:jvdnzfPY0
>17さん
エルデガインやテラフォーミングってサマサさんの作品でも見たような機がする。
俺の勘違いかな?

だんだん壮大な感じになってきましたな。がんばって下さい。

70 :作者の都合により名無しです:2006/08/25(金) 12:36:25 ID:ElItGYP60
ふらーりさん、またムチャな連載始めたなあw

71 :永遠の扉:2006/08/25(金) 19:12:30 ID:TX1c2zLV0
第002話 「鎖と影と……」

少し前。
桜花は思案顔で学園1階廊下を歩いていた。

まひろの証言によれば、彼女が来る前から校門が開いていたらしい。
恐らく玄関も同じだろう。
にも関わらず、セキュリティは反応していない。
ゆえに疑う。
何者かが侵入し、解除したのではないのかと。
蛇の道は蛇という。
同様の行為をカズキと秋水の戦いで披露しただけに、桜花の鼻に「匂う」モノがある。
とにかく。職員室にあるセキュリティ管理のパソコンを調べれば真偽ははっきりするだろう。
なお、エンゼル御前は別行動。
秋水とまひろの監視へ出向中だ。
御前は桜花と意識を共有している自動人形(オートマータではなくオートマトン)で、御前の見
るモノは同時に桜花の意識にも入り込む。
(付記すると、御前のセリフは桜花の本音でもある)
この頃はまだ、取り残された弟の反応を楽しんでいた桜花だが、表情をすぐさま引き締めた。
「職員室」と書かれた札が斜め前方に見える。
目的地に到着だ。
壁と背が平行になるよう、わずかな隙間を開けて立つ。
右手で引き戸をそーっと開ける。
軽やかな音が廊下に響き渡り、黒髪の後ろで戸が動く。
そして開け放たれた職員室を、深淵を見るように覗き込む。
気配はない。
すべりこむように職員室に入ると、壁際のスイッチを入れる。
天井のそこかしこで蛍光灯が明滅し、やがて白い光が職員室全体を照らし出す。
闇に潜んでいた目には、少々痛い明るさだ。
机の列が3つ、白い光に曝された。
桜花は、歩きながら列と列の間を遠巻きに眺めて、人影のないコトを確認。
「見たところ、誰もいないようね」

72 :永遠の扉:2006/08/25(金) 19:14:49 ID:TX1c2zLV0
ついでに机の下も。侵入者が隠れている可能性も踏まえ、入念に。
だが誰もいない。
「考えすぎかしら?」
桜花は手近な机を見て、くすり……と笑った。
小難しいタイトルの書類や何かのボトルキャップ、2002年の卓上カレンダーに埃の積もった
コップなどなど、ひどく乱雑。
「こんな教師が管理してちゃ、さすがのセキュリティさんも作動しな……え?」
桜花は、机をもう一度観察すると息を呑んだ。
同刻。
御前は校門前の光景を見ていた。その衝撃は桜花にもすぐ伝わり……
「総角クンがどうして銀成市(ココ)に!? しかも」
慌てて他の机に向かい、調べるたびに狼狽は色の濃さを増し。
壁にかかったある物体を見ると、わなわなと震えた。
「今は2005年なのに……」
机に置かれたモノも、壁にかかったモノも一致していない。
不一致なのは、カレンダーの年。
全て「2002年」に変わっている。
(いくら間の抜けた教師でも、こんな間違いはしないはず)
いやに辛辣な言葉だが、実はこれこそ桜花の本性だ。
品行方正に見えるがひどい腹黒策士で、弟に寒気を覚えさせる笑顔だって作れる。
そんな桜花は、職員室を見回すとまた異変に気づいた。
(新しくなっている?)
見慣れた壁の黒ずみはすっかり薄れ、ひび割れも減っている。
(確か、セキュリティが導入されたのは去年のハズ。というコトは)
桜花は職員室の中央にあるパソコンに駆け寄って、起動。
忙しくマウスを動かして、管理システムを探す。
「ない」
動揺のあまりパソコンの場所を間違えたのかと確認したが、そうでもない。
桜花は──状況分析に集中するあまり、せっかく耳が捉えた音を聞き逃していた。
「日付も2002年の8月27日……」
文字に起こすのならばさしずめ、薄闇たゆとう夏夜を涼しませる金属の二重奏。
単純な擬音に起こすのなら。

73 :永遠の扉:2006/08/25(金) 19:15:29 ID:TX1c2zLV0
かちゃりん。かちゃりん。
鎖が擦れる音が、職員室に向かって接近中。
「動かない訳ね。導入前に戻っているもの」
桜花はため息をばかりで気づかない。
音は。
彼女の後ろ、職員室廊下側中央で止まり。かなり熱い文句を垂れた。

『♪熱き怒りのあーらしを抱いてッ! たーたかうために飛ぉび出せっゲッター!』
窓一枚隔てた廊下から響く大音声に、桜花は驚愕の表情で振り返った。                            うぉぅ
『♪明日の希望ぉを取ーりもーどそうぜッ! 強く 今を 生きる 友の う・で・にぃー!!』
うぉぅ〜うぉぅおう。
擦りガラスのせいではっきりとした姿は見えなかったが、廊下側に影が1つ。
………
『風体からすると早坂桜花かっ! 声は掛けたぞ不意打ちではない!』
(だれ!? というか歌の意味は!?)
御前はその時、秋水に向かって殺到する総角を見ていたので、彼ではなさそうだ。
『流星群よ! 百撃を裂けぇ!』
甲高い少年の声と共にガラスが弾け飛び、辺りはまばゆい光に満たされた。
(恐らく飛び道具! でもどうして私の風体が……? こっちからは見えないのに)
戸惑いはするが、化物うずまくL・X・Eで生き抜いてきた彼女の反応は素早い。
まずは屈みながら頭上を見上げ、攻撃の正体を見極めた。
流星のごとく通り過ぎていたのは、金に瞬くエネルギー性のつぶてたち。
つぶてにも一定の形があるようだが、速度が速すぎて分からない。
桜花の疑惑は確信に変わる。
侵入者がいた。
しかも、ただの人間やホムンクルスではない。
攻撃方法からすると武装錬金の使い手のようだ。
武装錬金、それは核鉄という六角形の金属片を介して形作られる超常の武器。
持ち主の闘争本能に応じて多種の武器と多様の能力を発現する。
机上の書類や置物を無残に吹き飛ばしている光のつぶても、武装錬金によるものだろう。
(正体を見てから逃げましょう。私は津村さんみたいに頑丈じゃないし)

74 :永遠の扉:2006/08/25(金) 19:16:02 ID:TX1c2zLV0
何か投げる物がないか探す。
幸い、すぐ近くの机の下に鞄があった。
置き忘れたと思しきそれは、桜花に持たれると程よい重さを主張した。
桜花は中身を改めて、壊れそうな物がないのを確認。そして職員室の前へと投げた。
謎の少年は律儀にも、音のした方そちらに向かってつぶてを照射。
(さて、と)
前方、つまり少年めがけて少し匍匐前進。机の列の影だから、気づかれてはいないだろう。
(どこのどなたかは知りませんけど、いつまでもそこにいたら正体丸見えじゃなくて?)
敵は自らを隠すガラスをブチ破った。
その上飛び道具に頼って動かないから、桜花が立てば風体は露見する。
あわよくば武装錬金の形状も分かるだろう。
桜花はこの戦闘で勝ったり負けたりするつもりはさらさらない。
敵の情報をさっさと得てさっさと逃げて、別の者に始末を任す算段だ。
(津村さんならちゃんと始末してくれるはず。人間でもホムンクルスでも見境なしだもの)
とてもとても深い信頼が胸の中にあるのだ。
死体があればカラスが群がる、ヨハネスブルグにいけば身包み剥がされる。
それと同義の信頼を寄せられるほど、桜花の中の「津村さん」は頭がおかし……頼れる存
在なのだ。
だが。
『鞄を投げて、僕がそれに気を取られている隙に正体を暴く──それは百も承知!』
つぶてが止んだ。
『だが当たらじ当たらじ! 貴女の策は的を射ずっ! 僕は囮にすぎない!!』
静寂の支配する世界の中で、桜花は意外な音を聞いた。

がりっ!!

カーテンに閉ざされた窓の、外から異様な音がした。
金属でコンクリートをひっかいたような。
そして、何者かが走り去ってく音も。
『ふはは! 一瞬でも見られれば終わりだったが……危機は脱した! さらばぁ!』
(侵入者はもう1人…!? でも一体何を)
ひどい動揺に支配されながら、とりあえず立ち上がる。敵の正体を見るために。

75 :永遠の扉:2006/08/25(金) 19:16:34 ID:TX1c2zLV0

……廊下には、誰もいなかった。
割れたガラスから覗く廊下では、窓が開け放たれている。

「逃げたようね。とりあえずさっきの音の正体だけでも」
呼吸を整えつつ、カーテンを開ける。
月光くすぶる青い校庭が眼前に広がるのみで、人影はない。校門は角度的に見えない。
桜花は窓を開けて、校舎と校庭の境目──コンクリートで舗装された部分に降りた。
黒いハイソックスごしでも足の裏はひんやりし、緊張が和らぐ。
そして音のした方を調べてみると、壁に奇妙な痕跡があるのを発見した。
長い線と短い線が交差している。ちょうど”メ”の字を描いたように。
深さは約1cm。削られた部分はひどく滑らかで、徐々にではなく一気に切りつけられたようだ。
情報を総合すると、ナイフもしくはそれに準ずる短い刃物で行われたと考えるのが妥当だろう。
としても、開いていた校門や玄関、作動しなかったセキュリティや時間が巻き戻っている(?)
職員室とはあまり結びつかない。
「単なるいたずらの可能性もあるけど」
桜花は携帯電話を取り出すと、念のため現場を撮影した。
その瞬間である。
”メ”の字の削り痕が、すうっと消滅した。
「分からないコトだらけね。とにかく、警備会社にでも連絡……」
言葉を遮ったのか、それとも先取ったのか。
耳障りなブザー音が職員室から響き出した。
桜花は血相を変えて窓をよじ登る、職員室に入り、
「戻っ……てる」
最後に、口へ手をあて驚愕にわなないた。
職員室は、馴染み深い2005年当時のモノに復元されていた。
やや新しかった壁も、黒ずみやヒビがすっかり戻り、カレンダーも至るところで「2005年」の
モノに戻っている。
先ほど少年が割ったガラスも、舞い散った書類もだ。
ただ、桜花の投げた鞄だけは、職員室の前で横たわっている。
ひとまずセキュリティ管理用のパソコンを覗き込む。
「……こっちも」

76 :永遠の扉:2006/08/25(金) 19:17:36 ID:7NXDwGVj0
見慣れた画面に戻っている。日付も同じく。
ついでにいうと、異常警報を画面いっぱいに表示している。
常人ならおたおたと慌てふためき、言い訳の1つでも考えるだろう。
だが桜花は違う。
「あらあら。窓を開けちゃったせいかしら? もう警備会社の皆さんの知るところね」
ゆったりと嘆息して、薄ら笑いを浮かべた。
「ヘタに逃げて騒ぎを大きくしてもつまらないし、素直に残っておかないと」
不可解な現象は気になるが、まずは現実的かつ社会的な対処を優先だ。
すると、ふだん有能な生徒会長を演じている桜花の心は自然に落ち着く。
目を細めて浮かべる冷笑は、悪女そのもの。
あくまで『残る』のだ。夜の学校に侵入していたコトを『謝る』気は皆無だ。
夜の学校に忍びこむなど、L・X・E時代では茶飯事だった。
セキュリティをいじるのも茶飯事だった。やってない犯罪は殺人だけ(ウソ)
何を謝るコトがあろうか。
桜花は矛盾の少ない言い訳をさっさと考えて、警備員や教師の尋問をシミュレート。
信頼厚い桜花なら、さほど嫌疑を受けるコトなく切り抜けられるだろう。
「優等生演じて信頼得るのは大変だけど、こういう時は流石に便利」
そして桜花はまひろに電話をかけた。
帰りは遅れそうだから、件の「5分に1回の電話」を提案してまひろが円滑に帰れるように仕
向けたのだ。自分の身に何かがあった時の保険も兼ねて。
「あ、まひろちゃん。1つお願いしていい」
「私にできるコトなら」
「あのね。ここだけの話、新学期になったら秋水クンの紹介で、転校生がまひろちゃんのクラ
スに来るの」
「転校生!」
感激すら帯びたまひろの声に、桜花はくすりと笑った。
予想通り関心を引けた詐欺師の会心と、純粋な好意が半々の笑みだ。
腹黒い彼女にすれば子犬のように御しやすい相手だが、なるべく利用したくない人徳みたい
なモノも感じている。
「でねそのコ、外国出身だから、なじめるかどうか秋水クンはだいぶ気にしてて……」
いかにも協力相手を欲しがってるカンジの悩ましい声を、桜花は作る。

77 :永遠の扉:2006/08/25(金) 19:18:19 ID:7NXDwGVj0
男子生徒なら聞いたが最後、腎臓売ろうが強盗しようが、100万でも200万でも貢ぎたくな
る魔性の声だ。
「おお、外人さん」
援軍に遭遇した魏の武将みたいな感嘆が、電話口で起こる。実に微笑ましい。
「あ、そのコね、私と秋水クンにとって足長おじさんみたいな人の娘さんなの。だから気にな
ってて……」
「大丈夫。任せて任せて! 私とちーちんとさーちゃんでお友達になるから!」
桜花の良心が精神に占める比率は極めて少ない。
ゴビ砂漠に落ちたMGガンダムシュピーゲルの足用のビスより、いや、太陽につけたアメー
バの繊毛より見つけ辛い。
そんなサウザンドアイズサクリファイスのレリーフレアよりレアな桜花の良心だが、好意に満
ち満ちた声を聞くと、心全体にまで届く大きな痛みを感じてしまう。
「ごめんなさいね。もし良かったら、そのコの様子を秋水クンにも伝えてあげて」
「うん。頑張る。それと私こそゴメンね。桜花先輩」
「大丈夫。気にしてないから。……秋水クンをお願いね。それから──…」

「猫ヒゲ秋水」の写真を送ってもらい、あまりの破壊力に笑いを辛うじてこらえつつ、秋水と
話し、彼とまひろが寄宿舎へ向かい始めた頃に至る。

「な、なにこの凛々しさ。でも、そこはかとなく可愛、可愛っ……ダメ! もう耐え切れない」
桜花は真っ赤な顔で、60センチのウエストをピクピク痙攣させつつうなだれた。
さっきの敵とか、不可解な職員室の現象とかも大事だが、桜花にとっては秋水こそが一番
大事で気に掛かるコトなのだ。

(いい感じかもこの2人。良かったわね秋水クン。けど)

「さすがはカズキンの妹。ごく自然に秋水に触れるとは……少し妬けるぜ」

秋水とまひろの後ろをぷかぷか飛びながら、御前は微妙な表情をした。
(重ねて付記するが、御前のセリフは桜花の本音でもある。そして御前は桜花と意識を共有
しているから、一応女のコだ)

78 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/08/25(金) 19:20:02 ID:7NXDwGVj0
さて、第002話です。
なぜこういう表記なのか? それは2桁表記だと万が一100話超えた時のため。
保管庫で見返して98話、99話、100話。だと見栄えが悪いので念を入れております。
描くべきコトが多々あり、自分にもこのSSがどれほどの長さになるか見当がつかないのです。
予定ではすでに斗貴子さんが出ている頃なのに、まだ桜花・秋水サイド…… むぅ。

>>46さん
いや〜。やっぱりまひろは描きやすいです。心情とか仕草とか、
自分でもどう考え付いたか分からない描写が次から次へと沸いてきます。
で、キャラファイルによるとまひろは千歳と遜色ないサイズらしいです。Wが2cm違うだけとか。

>>47さん
その点、5巻は貴重ですね。調整体相手に一歩も引かなかったあの場面。何度読んでも
ぐっときます。再殺編以降はめっきり出番がなくなってしまいましたが……
非戦闘員ならではの活躍も、出来たらさせてあげたい所。

>>48さん
まひろ&秋水のストロベリーは、自分の中でとても見たいモノですよ!
原作準拠でやるとどうなるかは分かりませんが、見ていて和める関係にはしたいです。
岡倉(リーゼント)もけっこういい男なので、まひろと似合うかも。

ふら〜りさん
ありがとうございます! 本作は彼の動きも1つの軸ですので、ご期待下さい。戦いに
ついては様々なスタイルが出てきます。ああ、でもオリキャラってさじ加減が怖い……
まひろは無垢な所も良いですが、変な表情とかおかしな行動とかも描きたいですね。

>壊す拳と護る拳
クウガ未見につき、メ・ゾエビ・ギについて調べた所、未登場キャラだったのですね。
相変わらず渋くて絶妙な選択眼w 本編は幕開けからしてハードですね…… 仔猫が。仔猫がー!
間柴とゾエビの戦いは、彼らの間だけで終わるのか、はたまた更なる戦いの呼び水に?


79 :作者の都合により名無しです:2006/08/25(金) 21:14:24 ID:ZNi8pYvS0
1話のボリュームでもすごいのに、3ケタいったらとんでもない大作ですなw

御前って女の子だったのかw
秋水と桜花って原作では姉弟とは思えないほど仲良かったけど、
姉さん意外とあったかく見守ってるなーw

80 :作者の都合により名無しです:2006/08/26(土) 11:22:53 ID:eR2NO+2B0
スターダスト氏の武装錬金への愛には恐れ入る。
桜花は上辺の清廉で親切さとは違う、悪女なのか。一欠けらの良心はきっと弟と自分の気に入った人間に向かうタイプなんでしょうね。
敵に回すと一番恐ろしいタイプかも知れないな。能力が高いだけに。



81 :作者の都合により名無しです:2006/08/26(土) 13:30:18 ID:yNMAPR5l0
桜花ってウエスト60センチもあったのか・・
ちょっとショックだ・・
原作は少し忘れてるけど、まひろと秋水ってカプる兆候ってあったっけ?

82 :作者の都合により名無しです:2006/08/26(土) 22:21:57 ID:frQogb790
意外と太いな
57センチくらいと思った
じゃあ、まひろは62センチなのか。
絵柄からはどう見ても、まひろの方が太そうだから

まひろは千歳より桜花よりその辺にいる女の子に近そうだから、
スターダスト氏も書きやすいだろうね。

83 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/26(土) 23:04:54 ID:CGV2TmEY0
第二十三話「夜コンビニに行くと不審者に襲われるから気をつけなさい」

季節――夏。時刻――夜。
今日も江戸の町は、茹だるような蒸し暑さの熱帯夜でございます――本日の天気予報より。

人気の薄い夜の江戸街道。
仕事帰りの服部全蔵(職業:フリー忍者)は、週刊少年ジャンプ片手に家路を辿っていた。
「ったく、急な仕事のせいでもう夜じゃねーか。こっちは早くジャンプ読みてぇってのに」
今日は火曜日。全蔵が毎週心待ちにしている、週刊少年ジャンプの発売日だった。
いつもなら即行で買って読書に溶け込むところだが、生憎今日は忍者としての仕事が入っていたため、日付が変わるギリギリでのジャンプ購入となってしまった。
不本意ではあるが、これも仕事なのだからしょうがない。忍者とはいえ立派な職業。どこかの仕事に恵まれないマダオと違って、全蔵は己の職に誇りを持っていたのだ。
「とはいえジャンプだ。おっ、今回の巻頭カラーは……」
歩きながら、買ったばかりのジャンプを開く全蔵。一見不注意なようにも見えたが、そこはやはり忍者。
ページを開きつつも前方には注意を配らせ、蹴躓きそうになった小石もさりげなくスルーしてみせる。
くだらないことだが、歩きながらジャンプを読ませたら全蔵の右に出る者はいないかもしれない。
だからこそ、全蔵は己の額目がけて飛来したそれにも、難なく対処した。

「……危ねーな。ジャンプに穴でも空いたらどうしてくれるつもりだ」
掴み取った『それ』は、クナイだった。忍者である全蔵には縁がありすぎる投擲武器。刀のようにありふれた代物ではない。
なので必然的に、これを放ったのは同業者ということになる。
「いやはや、ジャンプを読みながらそこまでの反射神経を披露するとは。さすがは摩利支天ですね」
誰もいない江戸街道に、一人の影が佇んでいた。
全蔵の目の前に現れた人物は、一見して黒ずくめの怪しい輩。

84 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/26(土) 23:07:10 ID:CGV2TmEY0
忍装束ととるには十分すぎるほどの影に紛れた衣服。鴉を思わせる漆黒のマント。顔面は、黒光りするメタリックカラーの鉄仮面によって覆い隠されていた。
怪しい。怪しすぎる。
その見た目は同業者というよりは、鳥人間コンテスト参加者、もしくはコスプレイヤーさん。顔面だけ見ればウォーズマンっぽくもある。
全蔵は突然現れた鴉男に対し、長く垂れたの前髪の奥から鋭い眼光を放つ。
「おまえ何者だ? 俺の異名を知ってるってことは、ただの通り魔じゃないだろ」
「通り魔? 酷いな、僕はそんな物騒な人間じゃありませんよ」
鴉男は鉄仮面の下から、苦笑気味の声を漏らす。
クナイを投げておいてこの言い分――全蔵は鴉男のこの笑いを、挑発、ととった。
全蔵は仕事柄、命を狙われることも多い。その中でも同業者の敵というのは、一番厄介だった。
忍は私怨では動かない――忍が動く時には、必ずその背後に命令を下す『主』がいるはず。
全蔵はこの鴉男を全く知らないが、彼を仕向けた主とは面識がある可能性が高い。だとしたら、全蔵の真の敵はその主。
といっても心当たりが多すぎる。仕事柄恨みを買うことなんてしょっちゅうだし、いちいちそんな奴らの相手をするのも面倒くさい。
こういう手合いは、適当にあしらって退却してもらうのが得策だった。
全蔵はジャンプを懐に忍ばせ、入れ替えるようにクナイを取り出す。
そして投擲。もちろん標的は鴉男。彼自身に恨みはないが、敵意を背けぬ以上、交戦は免れまい。
一直線に伸びていくクナイは弾丸の如きスピードで、その狙いも的確だった。
ターゲットは相手の喉元。人体の急所の中でも特に狙われやすい部分。
普通忍はマフラーなどの布で喉元を隠すのが一般的だが(顔を隠す意味もある)、鴉男はそれを鉄仮面で補っているため、喉元には何も纏わず、首はがら空きの状態だった。
だからこそ、狙いやすい。だからこそ、そこに攻撃がくることも予測しやすい。
「――!」
全蔵の放ったクナイは、鴉男の握るクナイによっていとも容易く弾かれた。
(……やるねえ!)
もちろんこの結果を予測していなかったわけではない。相手が防御に成功した場合に備え――攻撃の手は二重三重に仕掛けてある。

85 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/26(土) 23:08:05 ID:CGV2TmEY0
「ッ!」
鴉男の視界に映る、二本目、三本目――計八本に及ぶ新手のクナイ。その全てが鴉男を狙い迫っていた。
それも個々の狙いはバラバラで、とても一本のクナイでは全てを弾くことはできない。防御するなら、全身を覆うほどの盾でも必要なくらいの猛襲だった。
だが、
「――素晴らしいですよ、服部全蔵さん」
ちょうど八本。鴉男の全身から、クナイが飛び出した。
八本のクナイは、全蔵の放った八本のクナイを目指し、吸い込まれるように激突――全蔵が仕掛けた連撃は、その全てが弾かれてしまった。
(なんだ……今の不自然な投擲は!?)
全蔵は相手の思わぬ防御――否、『防御法』に顔を顰めた。
今の鴉男の投擲、八本のクナイは、明らかに不自然なところから飛び出した。
常識であるが、投擲武器というものは普通手から放るものである。
だが鴉男が防御に使ったクナイは、肩、膝、腹部等から、吹き出すように放たれた。
その間、肝心要の腕はピクリとも動かさずに。
服の下にクナイを射出させるカラクリでも忍ばせているのだろうか。
この一秒にも満たない思案の中、鴉男は全蔵の脇を――通り過ぎていった。

「約0.8秒……隙を作りましたね」
「……ッ」
相手の予想外の防御に、全蔵は迂闊にも隙を見せてしまった。
にも関わらず、鴉男は全蔵を攻撃するでもなく、ただ脇を高速で通り過ぎてみせるだけだった。
今の一瞬、確かに殺れた。なのに。
「どういうつもりだテメー。俺をおちょくってるのか?」
「おちょくってる? とんでもない。僕は江戸随一の使い手と言われる服部全蔵さんに対して、ちゃんと敬意を払って戦っているんですよ? これでも楽しみにしていたんです。元お庭番衆の忍の実力がどれほどのものか、ね」
(こいつ……)
いけ好かない。全蔵が鴉男に抱いた分かりやすい印象がそれだった。
しかし分からない。服装や身のこなしから見ても、この男が同業であるのは間違いないのだが、この男の背後の潜む『主』が見えない。
誰かが嗾けた始末人とばかり思っていたが、鴉男はせっかくの仕事達成のチャンスを見逃した。
忠義に尽くす忍なら、チャンスを棒に振るうような真似はしない。
この男の目的は別にあるのでは――そう思えざるをえなかった。

86 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/26(土) 23:10:35 ID:CGV2TmEY0
「しかし、昨今の日本漫画業界の躍進は凄いですね。有名な雑誌なんかは宇宙でも出版されていたりして、天人にも好評だそうですよ」
「は、はぁ?」
ますます混乱することに、鴉男はいきなり漫画について語りだした。
「特に少年漫画は宇宙でも大人気だそうでしてね。僕の知り合いにも一人、熱狂的な少年漫画ファンがいるんですよ」
激しくどうでもいい。どうでもいいのだが、同じ漫画好きである全蔵は、密かにその鴉男の知り合いが好きな漫画はなんなのだろうか、とか考えてしまうのだった。
「そしてなんといってもこの『週刊少年ジャンプ』! これは素晴らしいですね。正に少年漫画の王道を走っています。最近は様々なジャンルの漫画が連載を連ねるようになり、安定感も増してきているような気がします」
鴉男は懐から『週刊少年ジャンプ』(今週号)を取り出し、ペラペラとページをめくりながら熱弁する。
「なんだ? ひょっとしておたくもジャンプ読者? いやぁ〜実は俺もでさ。さっきも今週号買ったばっかで、思わず歩きながら読もうと思っちゃったくらいなんだけど……」
相手がジャンプ読者と知り、若干気を許してしまったのだろうか。全蔵は敵意を抑え、ジャンプを取り出そうと懐を探る。が、
「あれ……おかしいな……たしかさっきここに……あれ? ない?」
「もしかしてなくしちゃったんですか? ドジだなぁ〜。あっ、今週ハンターハンター復活してる」
「え、マジで? いやぁ〜さすがにそれはないだろう…………って、それ俺のジャンプじゃねーかァァァァァ!!!」
やっと気づいた。鴉男が持つ今週号のジャンプは、間違いなく先ほど全蔵が購入したものだった。
おそらくあの隙を見せた一瞬に抜き取ったのだろう。命を取るチャンスであったというのに、なにをやっているんだこの男は。
しかしこれが、全蔵に思わぬ大ダメージを生むことになる。
「あっ、これですか。最近ジャンプで連載が始まったというラブコメ漫画は。絵は『BLACK CAT』の人なんだそうですね。僕は読んだことありませんが」
「おい、やめろ……まさか、おまえっ」
鴉男が、全蔵の目の前でページをめくる。
「あっ、こりゃあすごい……うわっ、いいのかなコレ……」
「な、なに読んでるのオマエ……?」
「『Toらぶる』ですけど」
この何気ない返答が、全蔵の逆鱗に触れた。
「てめぇ……俺が買ったジャンプを俺より先に……それもラブコメ好きな俺の目の前で『Toらぶる』を……」

87 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/08/26(土) 23:12:08 ID:CGV2TmEY0
忍者とは、主君の命に従い生き、死んでいくマシーンだ。
侍とは違い、個人の感情で動いたりすることはない。一流ならば。
もちろん元お庭番衆の肩書きを持つ全蔵も、そのことは心得ている。だがしかし、

男には、譲れないものがある。

「――ジャンプ返せやこの野郎ォォォォォ!!!」
全蔵が飛び出す。狙いは言わずもがな、鴉男の持つジャンプだ。
仕事終わりの平穏なジャンプタイムを乱した罪、万死に値する。
全蔵は持てる力の全てを脚に注ぎ込み、韋駄天の如く駆ける。
しかし標的の鴉男はピクリとも動かず、代わりにフッと笑い声を漏らす。
その瞬間、全蔵の世界が落ちた。
「ノォォォォォ!!?」
落とし穴だ。鴉男の前方の地面に、落とし穴が仕掛けてあった。しかもかなり深い。
声と共に落下する全蔵は手足をピンと伸ばし、壁面に手と足をかける。なんとかふんばることができた。
「熱くなりすぎですよ全蔵さん。忍者がそんな古典的なトラップに引っかかってどうするんですか」
「うるせェェェ! 俺はジャンプに関わる時だけは忍者でなくなるんだよォ! きっとそうだ! そうに違いない! だから今のは忘れてこんちくしょおおォォォ!!」
感情が高ぶっていたとはいえ、これは恥ずかしい失態だった。
穴の中でふんばる全蔵はみっともなく背中を向けつつ、地上に向けて弁解を言う。苦し紛れもいいところだった。
「……もういいです。正直、あなたには少しガッカリだ。これはお返しします」
鴉男は興味をなくしたように呟き、落とし穴にはまった全蔵に向けてジャンプを放る。
「はっ、ジャンプ!」
全蔵はそれを逃さずキャッチ――し、壁面から手を放す結果となった。
当然、落ちる。
悲鳴が聞こえた。忍者としての基礎を忘れ、ジャンプに負けた哀れな男の悲鳴だ。
全蔵の悲鳴が鳴り止んだ頃には、鴉男は広大な闇夜の中に消えていた。

88 :一真 ◆LoZjWvtxP2 :2006/08/26(土) 23:16:49 ID:CGV2TmEY0
学園編での滅茶苦茶な文体に慣れてしまったせいか、どうにも荒い文章になってしまったんですがどうでしょう? 一真です。
さて、本作は「シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい」第四部です。
一応は完結編。いつものギャグではなく、銀魂でも時々やるバトル中心のシリアスものにしていく予定です。

完結編というとなんだか終了ムードが漂ってきますが、この第四部は今までと違ってかなり長くなりそうなんでそんなこたぁありません。
というか今までどおり八話構成で収まるはずがない。下手したらその倍、もしかしたら倍々くらいの話数になるかも。

終了は見ている読者がダレないうちに! そんなことを心中で思いつつ、気長にやっていこうと思います。
ではまた当分お付き合いください。一真でした。

89 :作者の都合により名無しです:2006/08/26(土) 23:30:55 ID:frQogb790
一真氏乙。いよいよ完結偏ですか
会話のノリはいつものノリだけど、鴉男とか不穏な空気が漂ってるな

多分、今までの仲で一番長い部ということで、一真氏が一番書きたかった話だろうね
がんがってください。

90 :作者の都合により名無しです:2006/08/27(日) 00:16:20 ID:KdxYq/2U0
シリアスといえば当然真戦組が絡むイメージがある

91 :バーディーと導きの神〜休息〜:2006/08/27(日) 08:35:11 ID:PUg/sGM90
一方ガロウズ率いるルアイソーテ部隊は、モルプの仲間の鳥人たちに断崖絶壁のガソン島に
縄梯子をかけさせ、登攀を開始しようとしていた。
「ゆくぞ、ボックウェル!」
泰然と構え、上陸艇に乗り込むガロウズ。
「はっ!准将」
ボックウェルもそれに続く。
「准将」
上陸艇に乗り込んだボックウェルは、眼前の上司に語りかける。
「なんだ?」
「王に許可なく出撃してよろしいのですか?これで万一のことがあった場合、お叱りを
うけられますぞ」
「かまわん!」
ガロウズは断言した。
「ここにあるモノを手に入れることができるなら、兵などすべて失ってもかまわん」
その言葉を聞いて、声には出さないものの不安の色を隠せない一般兵たち。
ガロウズは小さく笑った。
「フフフ……。勘違いするな。それほどここにあるモノが我々にとって重要だという
たとえだ」
「『我々』ですか?」
問うボックウェル。
「そう、『我々』だ」
そう答えるガロウズの目が笑っていなかったのがボックウェルには不安だった。

その頃アーマヤーテ軍一行は、本日のねぐらを探して程よい大きさの洞窟を見つけていた。
「おーい大丈夫だ!なにも住んじゃいねえ!」
「中は広いし奥には温泉もあるわよー!」
先行して探索を終えたバーディーとシアンは、洞窟の入り口でみんなを手招きした。
「温泉?始めてみるな。この島にはそれほど高い地熱があるのか……」
地殻も冷え滅び行く星と氷牙が表現したこの星、少なくともアーマヤーテには温泉など
なかった。
ゆらゆらと湯気をあげる乳白色の温泉に指をつけ、味見してみるザン。

92 :バーディーと導きの神〜休息〜:2006/08/27(日) 08:35:50 ID:PUg/sGM90
「ちょっぴりすっぱいけどいいお湯だよ」
「へえ、それじゃメシ食ったら風呂に入れるな」
この洞窟にたどり着くまでの間に集めた木の実や果物を広げながら、嬉しそうにソシュウが
言った。
「食い物っつってもこんなもんじゃなあ」
梨に似た果物をかじりながらシアン。
「これじゃすぐ腹が減っちまう」
「うんにゃ、シアンさん。たらふく食えるだげでもよがったと思わにゃ駄目だべ」
モルプがしたり顔でシアンを諭す。
「モルプの言うとおりだ。この島がこんなに豊かじゃなかったら、俺たち飢えてるところだ」
「そうそう」
モルプの意見に同調するシドガーとヨキーウ。
「ちぇ、言いやがる。しかしなあ、あの大食い姉ちゃんの食いっぷりを見たらどうよ?」
シアンは向かい側でがつがつととてつもない勢いで果物を食べ続けるバーディーを顎で示
して二人をけん制する。
バーディーはシアンの言葉にも反応せず、ただひたすらに食べ物を口に運んでいる。
「ははは……」
「噂にゃ聞いてたが、凄いな、この食べっぷりは……」
シドガーもヨキーウも、バーディーの外見とは裏腹な豪快な食べっぷりにただ笑うしか
なかった。
「そういやザン。お前昨日は大活躍だったな」
ソシュウはソシュウで弟に語りかける。
「好きになった彼女のために命を張ってがんばってたじゃないか!」
うりうりと肘でザンをこずきながらソシュウ。
「や、やめてよ兄ちゃん」
ザンは恥ずかしがってぽっと顔が赤くなる。
「こいつはさ、昔はすごい意気地なしで、いつも俺の後ばっかりついて歩いてたんだよ。
おかげで近所のガキ大将に毎日いじめられてね、いつも俺が助けてやったんだが……」
「わーっ!わーっ!言っちゃだめーっ!」
大声を上げてソシュウを制止しようとするザン。しかしソシュウはザンの頭を抑えて話を
続ける。

93 :バーディーと導きの神〜休息〜:2006/08/27(日) 08:36:29 ID:PUg/sGM90
「ある日森の中でそのガキ大将が熊竜(ユウリュウ)に襲われてね。あわやこれまでと言うと
ころで偶然通りかかったこいつが馴れない瞬動法で熊竜の顔に飛びつき注意をそらしたん
だ。その間にガキ大将の弟分たちが呼んできた大人たちが銃で熊竜をしとめたのさ。ガキ
大将も弟分を逃がす囮になってたんだ。こいつ弱いくせに人が困っているのを見過ごせな
いんだな。そんなときだけは見境なくつっこんでっちまう……」
そう言うと、ソシュウはザンを引き寄せて背中をみんなに見せる。
「ま、それ以降ガキ大将と仲良くなっちまって俺の肩の荷がおりたんだがね。ほら、そん
時熊竜の爪で大怪我したした後がこれだよ」
ジタバタ暴れるザンをよそに、傷をみんなに見せ付けるソシュウ。
「ソシュウはね、ザンのことが可愛くてね、初めての人がいるとすぐああして弟の自慢を
始めるんだ。変わってるだろ?」
牙炎がそっとバーディーとリュミールに告げる。
「まあ」
普通に感心したようなリュミールと、兄弟がいないため、いまいちピンとこないバーディー。
黙って黙々と食べ続けている。
「でも優しくていいお兄さん……。みなさんも」
リュミールはにこりと笑った。
「フフ、それほどでもねえよ」
牙炎も笑いながら答える。
(この娘、本当に底意がない。ザンに似合いのいい娘だ)
牙炎はリュミールの人柄に好感を覚えた。
ザンのほうはソシュウに頬ずりされてほっぺたが赤く腫れている。
「ひどいや兄ちゃん」
「うるわしい兄弟のスキンシップじゃないか。勘弁してくれよ」
ソシュウは頭をかきかき悪気のない顔だ。
「それよりザンおまえ凄く汗臭いぞ。風呂入れ」
「えっ?」
ソシュウにそう言われ、袖の辺りをくんくんと嗅いでみるザン。
「この穴の入り口を見張ってなきゃならんからな。順番に入るんだ」
「うん」
ザンは素直に答え、次いで思い出したようにアッと声を上げる。

94 :バーディーと導きの神〜休息〜:2006/08/27(日) 08:37:02 ID:PUg/sGM90
「そうだこれ、リュミールにってユウさんからもらった服なんだ」
「えっ?私に?」
「うん。ルアイソーテには悪い人ばかりじゃなくて、こうして助けてくれる人がたくさん
いたんだよ、リュミール」
「うん……」
嬉しさに、思わず涙ぐむリュミール。
「じゃあ入ってくるよ兄ちゃん!」
「んー、行ってこい」
「あ、私もお風呂入るー!」
急に言って立ち上がったのはバーディーだ。
みんなは一斉に驚く。
「温泉って一度入ってみたかったんですよー。お先に失礼しまーす!」
やけに楽しげに宣言したバーディーは、ザンの後を追って洞窟の奥に消えていった。

95 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/08/27(日) 08:39:50 ID:PUg/sGM90
バーディーは風呂好きです。

>>67さん
ありがとうございます。
>>69さん
がんばります!

96 :作者の都合により名無しです:2006/08/27(日) 11:41:05 ID:a4NKa+HA0
>一馬氏
さすがにシリアス編だけあって少し今までと変わった始まりだな
でも、シリアスになっても銀玉特有の会話の感じは変えないでほしい

>17さん
異界でも温泉はあるのかw最強の女とはいえバーディも女の子。
風呂は好きでしょうねえ。決戦前の少しの安楽といった感じですか

97 :作者の都合により名無しです:2006/08/27(日) 15:10:21 ID:pmm1cGm20
17さんは真面目にSSを書いているのが好印象だな
もう少し話の展開にメリハリをつけたらいいと思う
ちょっと同じような話が続くかな?
俺がバーディを知らないからそう思えるのかも試練が

98 :壊す拳と護る拳:2006/08/27(日) 15:27:17 ID:RLJ9u4Cf0
間柴の左拳、フリッカージャブ。その驚異的なリーチと独特の角度、威力と速さ、
どれをとっても並のボクサーの普通のジャブとは比較にならない。間柴はその左を
振るって何人ものボクサーを打ち倒し、一人ならず引退に追い込んでいるのだが、
『……こ、こいつ……!』
黒いラバースーツの青年、メ・ゾエビ・ギには当たらない。かすらない。ゾエビは左手
だけを軽く、だがとてつもなく速く動かして、嵐のように降り注ぐ間柴のフリッカー
を打ち流していく。まるで、蝿を追い払うかのように。
「よしよし・すてきな・パンチだ。お前が・この・ボクシングとやらに・注ぎ込んだ・
情熱・時間・エネルギーを・もっと・知りたい」
「な、なめてんのか、てめえっ!」
「?・お前は・店で買う牛肉を・あるいは・衝撃緩和に使うプチプチを・なめているか?
食べるもの・ヒマ潰しに潰すもの・いちいち・なめるか? そんなこと・考えまい?」
ムキになってフリッカーを撃ち続ける間柴は、だんだん息が切れてきた。返事ができない。
だから、ゾエビは一方的に言い切る。
「つまり・私にとってお前は・肉屋の牛肉・そして・お前の妹は・衝撃緩和のプチプチ」
「!」
「だから・なめるとか・なめないとか・そういう問題ではなく・喰う・潰す・それだけ」
不意にゾエビの姿が掻き消えた、と思ったら間柴の目の前、鼻と鼻がくっつきそうな距離
まで踏み込んでおり、間柴の腹に強烈なボディブローが叩き込まれた。その一撃で
窒息した間柴は、ひとたまりもなく両膝をつく。
ゾエビは片手で間柴の猛攻を防ぎきり、拳による反撃で打ち倒したのだ。つまりこれは、
『こ、このオレが……こんな野郎に、ボクシングで負け……た、だと!?』
自分の目の前で土下座に近い姿勢になっている間柴に追撃を加えようともせず、
ゾエビは淡々と言った。
「では・次の展開だ・私に・完敗したお前は・仲間を連れて・再戦を挑む・だが・
それでも敗れて・泣き喚き・絶望し・その二人の目の前で・あの女は・私に・殺される」


99 :壊す拳と護る拳:2006/08/27(日) 15:27:56 ID:RLJ9u4Cf0
「な、何を言ってやがるっ……?」
「調べは・ついている・お前の・妹を・想っている男が・いるだろう? 妹の方も・
憎からず想っている・様子だ・あの男を・連れて来い・そして・二人で協力して・
二人だけで・誰の力も借りず・お前の妹を・護る為に・命を賭けて・私と戦え」
間柴はまだ立てない。立って、今すぐゾエビを殴り倒したいのだが、たった一撃の
ボディブローによるダメージが大き過ぎて立てない。こんなのは初めてだ。
「お、お前は一体、何の為に……何を考えて……何者なんだっ!?」
「知る必要はない・お前は・言われた通りにしろ・さもなくば」
ゾエビは、さっき電柱に投げつけて瀕死の痙攣中である仔猫を蹴り上げた。仔猫の
小さな体が鞠のように真上に飛び、ゾエビの右手が一瞬消える。
「ブギャッ」とまた声なのか音なのか判らない音がして、仔猫の体は宙で一旦跳ねてから、
間柴の目の前に落ちてきた。……仔猫の頭蓋骨が破砕されている。まるで高所から
落とされた、腐ったトマトのように。空気の抜けた風船のように。首から上だけが
潰れきって形を失い、血と脳漿に塗れている。その飛沫が間柴の手にも数滴、付着した。
思わず目を逸らして吐き気を堪える間柴の頭上に、ゾエビの声が降ってくる。
「従わねば・お前の妹が・こうなるだけだ・……ああ・その前に・繁殖実験か?」
「っっ!」
「私は忙しいから・これで・失礼する・再戦は一週間後・必ず三人で来い・場所は」
ゾエビは間柴に背を向けて歩き出しながら、
「テレビとやらを・見ておけ・そこで・指示する・未確認生命体28号・とかいうやつだ」
その名を聞いて間柴の顔色が変わった。未確認生命体といえば、さっきもニュースで……
『ま、まさか? あの連中に、久美が狙われてるっていうのか?』
言葉を失った間柴はもう、悠々と去っていくゾエビの背を睨みつけることさえ忘れていた。


100 :壊す拳と護る拳:2006/08/27(日) 15:31:20 ID:RLJ9u4Cf0
間柴がゾエビに叩きのめされたのと同じ日の深夜。
間柴の家からほど近い河川敷で、一団の暴走族が物騒な集会を開いていた。
鉄パイプに釘バット、チェーンやバールを振りかざした少年たちが、雄叫びを上げて
バイクを走らせ、品のない騎馬武者と化して敵に向かっていく。だが総勢五十の
バイク武者たちの敵は、たった一人。
「三人で来いと・言ったのに・女はいないし・余計なのはいるし」
呆れ顔のゾエビが両手を構えた。『拳のみで殴り殺す』のが彼のルールなので、それ以外
の方法では殺さない。そして、それ以外にわざわざストーリーをつけるのが彼の特異点だ。
そんな彼の後ろに、一人の女がいる。新雪のような白い素肌が薄く透けて見える、純白の
ドレスを天女の羽衣よろしく身に纏った美女。額に刻まれたバラのタトゥが端正な顔立ち
に不思議な印象を加え、まるで人ならぬ神のよう……神は神でも死神だが……な妖艶さだ。
「ゾエビ。お前のゲゲルは、効率が悪いな」
バラのタトゥの女は、抑揚の無い声でゾエビに語りかけた。ゾエビは向かってくる
バイクの少年たちを次から次へと殴り倒し、殴り殺し、殴り潰しながら答える。
「これが・私の・やり方・私の・ゲゲルだ・二人の男が・一人の女を護る為に・
絶望的な・戦いを・繰り広げる・だが敗れ・女は死に・男二人は生涯・悪夢に捕らわれる・
なんとも・滑稽で・味がある・だろう?」
「……理解できない。ジャーザなどは、労力軽減の為に老人や幼児のみを狙う方針だぞ?」
「理解してもらう・つもりはない・私は・勝ち負けや合理性ではなく・ゲゲルを・純粋に・
楽しみたいだけ・リントの言葉で・言うところの・すぽーつまんしっぷ・というやつだ」
「ほう、難しい言葉を。勉強したんだなゾエビ」
と言っている間に、少年たちの雄叫びが消え失せてしまった。リーダーとその親友、
二人を除いて全員が死亡している。頭や胸や腹に、拳型の陥没跡を無数に刻み付けて。
ゾエビはというと汗もかいておらず息も切らしておらず、全くの無傷。両の拳を
唾液胃液血液髄液などの各種体液で濡らして、わざわざ生き残らせた二人に告げた。
「面倒だが・仕方ない・居場所は・調べてあるから・あの女・引きずって来るとしよう」
「! た、た、頼む! あいつだけは許してくれ! 殺すなら俺を……」
「約束を・破っておいて・何を言うか・まあ・約束を守っても・結果は・同じなんだが」
「ま、待て! 待ってくれええええぇぇっ!」


101 :壊す拳と護る拳:2006/08/27(日) 15:32:06 ID:RLJ9u4Cf0
倒れた二人が絶叫するが、いかんせん両足首が粉々なので身動きがとれない。面倒くさ
そうに歩いていくゾエビを、ただ見送ることしかできない。
その様子と、辺りに散らばる新鮮な死体の山を見渡して、バラのタトゥの女は溜息をつく。
「やれやれ。真面目なんだか、不真面目なんだか」
それから数十分後。本当に言葉通り「引きずって来た」少女を、ゾエビは何度も何度も
殴りつけ、頭蓋を潰して殺した。それを最期までじっくりと見物させてやった少年二人も、
同じように殴り殴り殴り殴り、だがギリギリで命だけは助けておいた。
……後に病院で目覚めた二人は、医師や家族の手が顔に近づいただけで
発狂せんばかりの悲鳴を上げたという。

翌朝、鴨川ボクシングジム。鴨川会長らが外出中で誰もいない1階事務室で、
電話が鳴った。練習場にいた青木が駆け込んで受話器を取る。
「はい、鴨川ボクシングジム……なんだ、お前かよ。……ああ、ちょっと待ってろ」
青木は受話器を置いて、練習場に向かって呼びかけた。じゃがいもみたいな印象の、
ジム内では群を抜いてあどけない容貌の少年(でも先日の試合で日本王者に惜敗
した以外、全てKO勝ちの強打者)に向かって。
「おーい一歩、電話だぞ。お兄さんからだ」
「? お兄さんって誰です」
「いいから、さっさと出ろ」
一歩と入れ違いに、青木が事務室を出て行く。一歩は首を傾げながら電話に出た。
「はい、お電話代わりました。幕之内ですが…………この番号は現在使われておりま」
《フザけてねえで真面目に聞けっっ!》
受話器の向こうから間柴の怒声が突き出され、一歩の耳を左から右へと貫いた。
「だ、だって間柴さんがボクに、電話でいい報せをしてくれるはずないでしょうっ?」
《……お前もなかなか言ってくれるな。ぽやぽや顔のくせに》
「どんな顔ですかどんなっ。で、何なんです……ん?」
窓の外に、長い黒髪で顔の右半分を隠した、黒いラバースーツ姿の青年が立っていた。


102 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2006/08/27(日) 15:34:37 ID:RLJ9u4Cf0
鴨川ジムの会長室が一階ではなかったことに、ギリギリで気づきました。ふぅ。
しかし安易なスプラッター描写で恐怖演出した気になっちゃいかん、と解ってはいるん
ですけどね。難しい。ジャラジのゲゲルなんか、あんなことされたら殺される前に
自殺するかも……ってゾッとしたものです。内容と周囲の反応とが凄くて。我未熟也。

>>コテさん
大会に変更ったって、既にあっちこっちでチーム組んでるから敵意や仲間意識があるし
なぁ。どうするつもりか主催者たち。どうなっていくのかこの大会。とりあえずセーラー
チームは救えそうですが、性格・能力ともにいろんなのがいるこのゲーム、先行き読めず。

>>17〜さん
リュミールの抱える謎が少しずつ明かされていく一方、ザンはとことんアットホームな男
の子してる。距離、縮められるのかこの二人? とか思ってたらもう一人のヒロインは
相変わらずですねぇ。普通なら覗き見イベントなのに、覗きどころかこれってまさかっ?

>>スターダストさん
桜花はまひろと対照的。だからまひろの言動が心に響くし、なんだかんだで結構、まひろに
憧れてる部分がありますね。しかし妙なタイムスリップ(?)といい謎な敵襲といい全然
動じてないのは凄い。前作の根来を思い出しましたが、秋水絡みの反応を見るとやっぱり、
>一応女のコだ

>>一真さん
シリアス編に入ったら、一真さんの軽妙なギャグ会話が見れなくなるかという心配も少し
あったのですが……面白い! ジャンプ=日常の象徴と、それに対する全蔵の無邪気さが、
いい感じで鴉男の不気味さ強さ怖さを引き立ててます。他の面々のシリアス突入も楽しみ。

>>60(そんなツッコミを頂けようとは……嬉しい限りですっっ)
言われてみればそうかも。すると先代クウガの隣で、ハーフエルフならぬハーフグロンギ
なんてのが戦ってたりして。でもってその母グロンギが、『寄生獣』の田村玲子みたいに
……そういやバラ姐さん、普段の言動といい最期といい、ちょっと似てるかも。


103 :作者の都合により名無しです:2006/08/27(日) 20:17:37 ID:q63IJKxM0
ふらーりさんって何気に長編完結最多記録者だよね?
てっきりパオ氏かサナダムシ氏と思ってたけど。
これも長編目指して頑張って下さい。

104 :作者の都合により名無しです:2006/08/28(月) 06:31:33 ID:HQB4Th4t0
相手は宇宙人なの?
作中最強の鷹山(だったか?最近読んでないんで名前忘れた)は出ないの?

105 :作者の都合により名無しです:2006/08/28(月) 14:06:54 ID:R+5yWVFe0
長編とか書くのってすごいよなぁ

106 :作者の都合により名無しです:2006/08/28(月) 19:39:00 ID:LZUiON1H0
楽しいもんだぜ。
慣れりゃそんなに疲れもしないし。

107 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/28(月) 23:02:34 ID:EbOX0H/y0
>>43より。

108 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/28(月) 23:03:06 ID:EbOX0H/y0
 王者(チャンピオン)が狙うは短期決戦。
 仕切り直されたとはいえ、双方のダメージ差は大きい。
 所詮、相手は死にかけ──全力で畳みかけてしまえば片はつく。
「せりゃあッ!」正拳を脇に、王者が速攻をしかける。
 ──だが。
 ゴルフスイングのような強烈なローが、王者の下半身を打つ。動きが止まる。
「あぐっ!」
「俺はだいぶ弱ってるはずだから一気に攻めれば倒せる──ってか? 甘ぇんだよッ!」
 一本拳が人中をクリーンヒット。ぐらついた王者に、しなる右ハイキックが左耳に激突
する。鼓膜が破れた。
「くっ……!」
 左耳を押さえ、加藤から離れる王者。
「てっ、てめぇ……」
「俺には卑劣さしか勝てるとこがねぇらしいが、どうやらもうひとつあったようだな。お
めぇよォ、本当に殺されるなんて感じたことねぇだろ。いくら道場に猛者揃いっつっても、
殺されるなんてありえねぇからな」
「ふざけんな! おめぇだって知ってんだろ、愚地流は実戦空手ってことはよ!」
「まぁな。だが、道場での館長はあくまでも“良き指導者”でしかねぇ。それともおめぇ、
まさか館長に野試合でも申し込んだことあんのか? ……ねぇよなぁ、“真面目に空手を
続けてた俺”なんだからよ。するわけがねぇ」
 指摘通り、王者は死を前提としたトレーニングを経験したことはない。愚地独歩、愚地
克己、末堂厚、他にも大勢の黒帯たちと戦ってきた。しかし、試合が荒れればすぐにスト
ップをかけられる。本当に『殺す』『殺される』を感じる機会などまずない。
「う、う、うるせェ〜ッ!」
 再び間合いを詰める王者。すると、加藤は後ろを向いた。
「てめぇ、逃げる気か?!」
「バ〜カ」
 高速で振り返る加藤。後ろ廻し蹴り、炸裂。

109 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/28(月) 23:03:44 ID:EbOX0H/y0
 明らかに空手術では劣る加藤がペースを握っていた。
「先輩……」赤く腫れた頬をさすり、戦いを見つめる井上。
 彼女には加藤が何をしたかが分かっていた。
 今戦っている両者が、ともにもっとも頼りとする技術は空手。だが、空手で競っていて
は三年間の空白(ブランク)がある加藤にまず勝利はありえない。
 そこで加藤はルールを変更した。戦いを“空手”による殺し合いから、“全存在”を駆
使してのの殺し合いへと昇華させた。
「ここからは……技術じゃなく、心の勝負」
 井上の瞳に映る決戦は、さらなる高みへ……。

 加藤が放つ竜巻のようなハイキックを、三戦立ちで迎える王者。
「セイッ!」
 まともにヒット。
 だが、三戦により絶大なバランスを得ている王者はダウンどころか、ぐらつくことすら
ない──ぐらつくことすら、ない。ぐらつく、ことすら。
「ぐっ……?!」
 視界が右往左往する。
 傾く地面。王者は自分に向かってくる大地をあわてて手で抑える。
「な、なんで地面が……? 俺がダウンだとォ……!」
「オラァッ!」
 加藤が両手を組み、一気に王者の脳天へ叩きつける。
 頭蓋骨が軋む音とともに、王者は顔面から地面へ激突した。
「あ、ぐぐ……! な、ん、で……!」
 脳へのダメージが大きい。激しい頭痛と酩酊感が邪魔をして、立ち上がれない。
「終わりだ……」
 加藤は静かに下段突きの構えを取った。

110 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/08/28(月) 23:04:38 ID:EbOX0H/y0
 拳の中にある空気を握り潰すように作られた、力強い正拳。井上が味わった苦痛、自分自
身が味わった屈辱、全てを倍返しするために──加藤が今、下段突きを撃つ。
「キャオラァッ!」
 投下された突きは地面を浅く抉った。外れた。
 ──否、外された。素早く倒立をすることで、王者は下段突きから逃れたのだ。
「ちぃっ!」
 加藤が拳を地面から引き抜くと、すでに王者は鉄壁“前羽の構え”に移行していた。

 王者は反省していた。
 武神によって植えつけられた虚像の記憶とはいえ、彼には神心会で一心に鍛え続けた誇り
がある。敵の心理戦に乗せられ、この誇りを少しでも疑った自分が恥ずかしい。空手で戦う
ことこそが、王者にとっては最善策だというのに。
「……良い眼になったじゃねぇか。少しはよ」
「俺はこれでも、空手だけに全てを捧げて生きてきた。てめぇとはちがう。やれることはた
だひとつ、空手で戦うことだけだ」
「ご立派な決意だが、どうもてめぇは好きになれそうもねぇ。井上をやった分までぶちのめ
すッ!」
 大きく深呼吸をし、加藤が猛ラッシュをかける。無呼吸による連撃。これならば間を空け
ず攻撃できる。
 王者はじっと待つ。次々に飛び込んでくる正拳を一撃一撃見極める。無呼吸で繰り出され
るパンチのリズムを捉える。
「──ッ! ここだッ!」全神経でチャンス到来を感じ取る王者。
 廻し受け、発動。
 ラッシュをしかけていた加藤、両腕を同時に弾かれる。すなわち、無防備。
「二度は耐えられねぇ!」
 先ほど加藤を昏倒させた心臓部への中段突き。
 拳ダコで膨れ上がった凶器(こぶし)が、加藤の胸を貫く──。

111 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/08/28(月) 23:09:40 ID:EbOX0H/y0
短編は近いうちに投下します。
残念ながら、うんこではありません。

112 :筋斗雲と虎眼流:2006/08/29(火) 01:42:42 ID:Okv19bLi0
「こは何ぞ?」
最初にそれを発見したのは伊良子清玄であった。
それは黄色く、ふよふよとした煙のような何かである。
道場の庭先の松の枝に引っかかっていた。風にでも飛ばされてきたのだろう。
道場に持ち帰って内弟子の面々にも見せてみた。
「面妖な…」と呟いたるは宗像進八郎、恐る恐るつついてみる。
つつくとぷるんと震えてうねうね動く謎の物体。
「こは一体?」
首をひねるは内弟子一の学者、興津三十郎。
「興津も知らんのか?」
たずねたるは内弟子一の巨漢、丸子彦兵衛。今朝方、宗像に五文巻き上げられたので機嫌が悪い。
いつも学で見下す興津をこれ幸いにと攻撃し始める。
やれ「役に立たない学」だの、「意外と無知よ」だの、「タレ眼」だの、「包茎」だの言いたい放題である。
ちなみに興津が虎眼流を見放す遠因はこのときの罵声にあるらしい。
丸子が殺されたとき彼の一物が口中に押し込まれていたのは「口が災いの元」ということだろうか?



113 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/08/29(火) 04:49:40 ID:Ee+FKVcy0
病気療養のため、1〜2週間お休みします。すみません。

114 :作者の都合により名無しです:2006/08/29(火) 08:03:07 ID:Zs3fGdh/0
>サナダムシ氏
自分を叩きのめす気分というのはどういう気分だろうか。
加藤ならなんの呵責もないだろうけど。
今は井上を傷つけられた怒りパワーのが上か。

>>112
これは何?コピペ?

>17さん
大丈夫か?体を治してまた復活してください。


115 :筋斗雲と虎眼流:2006/08/29(火) 09:26:15 ID:5FynbIvy0

じっとだまって謎の物体を見つめているのは、ひときわ大きな双眸の持ち主、山崎九郎衛門。
彼の瞳は猫科の肉食獣の如く拡大していて、さらに口元に笑みを浮かべている。
笑うという行為は獣が牙を剥く行為にその原点があるとかいっているが、彼の場合もそれにもれない。
山崎が発する異様な空気に謎の物体はちょっと後ずさりした。
「おお、動いた」
驚く一同。道場の戸は開け放たれているので風で動くのは自然なことかもしれないが、虎眼流は不自然な挙動は見逃さない。
「・・・」
黙して何も語らないのが藤木源之助。ほとんど何もしゃべらないこの男だが、今日は少し口を開いた。
「山内、大坪出口を塞げ」
どうやら逃がす気はないらしい。
謎の煙、筋斗雲は一つの事実に気がついた、このままではあの目玉野郎(山崎)に喰われる。
恐慌をきたして震えながら道場内を逃げ回る筋斗雲。
上に3間という間合いは剣術の及ばぬ安全な距離と思われたが、虎眼流には流れと呼ばれる特殊な握りがある。
柄を鍔元から柄尻まで横滑りさせる技法なのだが、これは道場内で使ってはいけないことになっているので使えない。
「おのれ、流れさえ使えればあんな雲…」と悔しがる興津。


116 :筋斗雲と虎眼流:2006/08/29(火) 09:29:55 ID:5FynbIvy0
ここは天性のバネの持ち主、伊良子の出番である。
跳んで斬りつけるが、さすがに届かない、柄尻を握ってみてもやっぱり届かない。
それでは「流れ」も届かないではないかという突っ込みはいけない。届く、届くのだ。
そこで梁に上って掴まえようとしたのだが、そこへガラリと戸を開けて入り来るは師範代の牛股権左衛門。
さすがに師範である。すぐに状況を把握して的確な指示。
「真槍をもて」

座敷牢に入れられた筋斗雲が隙間から出て行かないのは出入り口に山崎刳九郎衛門が陣取って、今にも筋斗雲の尻尾をちゅぱちゅぱせんと狙っているからだ。
いや彼は既にちゅぱちゅぱしたようだ。さっぱりした顔をしている。独り身の内弟子である。
このような山崎を見てみぬ振りをするなさけが虎眼流の内弟子たちにもあったらしいが、あまり関わりたくない。
事実、過去に山崎に話しかけた内弟子は誰もいない。すべて山崎が一人でしゃべっているのだ。
そんな眼に見つめられた筋斗雲は牢の端っこでおびえることしかできない。
ああ、くちがきけたらなぁ
筋斗雲は心よりそう思い、ふるふると震えることしかできないのだった。



117 :筋斗雲と虎眼流:2006/08/29(火) 09:32:02 ID:5FynbIvy0
筋斗雲は心よりそう思い、ふるふると震えることしかできないのだった。

悔しくて文献をあさった興津三十郎、一つの記述を見つけた。岩本家使用人の茂吉の私物にあった「龍たま」なる絵巻物にあったのだ。
「ふむふむ、これは筋斗雲と申し、人が乗りて空を飛ぶ物ならん。」
早速、皆に報告する。空を飛ぶ、それは古来より人の夢であった。
言いだしっぺの、興津が筋斗雲に足を乗せて乗ろうとするが、ずぼりとすっぽ抜けて腰をしたたかに打った。
「こ、こは何事、これは筋斗雲ではないのか?」
「いや、筋斗と申すからには、とんぼ返りをして乗るものなのでありましょう」と進みでたるは伊良子清玄。
この際、興津よりも優位に立っておこうという心の表れである。伊良子清玄はただの内弟子ではない、もっとおぞましい何かだ。
だが筋斗がとんぼ返りというのは正しいが、これは西遊記ではなく、カリン塔にあった筋斗雲だ、乗ることあたわず。
派手にとんぼ返りをして飛び乗った清玄は一瞬雲の上で止まったが、やはり下に転がり落ちた。女たらしに載れるわけがなかろう、亀仙人でもだめだったのだ莫迦奴。
「こ、こいつ」
悪態をたたいてみても乗れないものは乗れない。
「何故じゃ?」
四股を踏むように筋斗雲に片足を突っ込みながら、丸子がぶーたれる。
皆が頭を抱えたとき口を開きたるはやはり師範の牛股権左衛門。
「よいか、筋斗雲の申すはな…」
牛股がいうには清い心の持ち主しか筋斗雲には乗れぬのだ。
筋斗雲もうんうんと肯く。


118 :筋斗雲と虎眼流:2006/08/29(火) 09:37:31 ID:5FynbIvy0
知っていたくせに皆が面目を失うまで口を開かなかった牛股、人の良さそうな顔をして腹黒い。とても筋斗雲に乗れるものではない。口がひどく裂けてるくせに。
というか虎眼流に乗れそうな心の清い者がいるのか誰もが疑問に思った。いや、一人居る。
「されば」
と皆が揃って顔を見たのは藤木源之助である。
剣しか知らない一途さ。師、岩本虎眼の娘三重への思いをひた隠しにするひたむきさ。虎眼に対する忠義。童貞。天然ボケ。どれをとっても清い心を持っていそうだ。まさに筋斗雲好みの男だろう。
しかし源之助より先に足を乗せたるは山崎九郎衛門。
「こは何事」
皆が眼を丸くした。(ちなみに猫科の動物の様にはなっていない。)恐る恐る足を乗せた九郎衛門は完全に大地を離れ、筋斗雲にその体を預けていた。
これで虎眼流の面々の九郎衛門への無視もより強いものになったのだが、それは今はおいておく。
さて、筋斗雲が九郎衛門を乗せたるにはわけがある。
九郎衛門がしっかりと乗ったのを確認した筋斗雲はその名に恥じない動きをしたのだ。
筋斗
すなわちとんぼ返りである。筋斗雲の真意は九郎衛門の抹殺にあったのだ。天井程度の高さから落下し頭をぶつければ人の体はたやすく壊れる。
既にちゅぱちゅぱの体勢に入っていた九郎衛門は避けるすべなく落下した。

しかし無双虎眼流の内弟子たるもの握力は恐るべき強さである。
梁から頭を出している釘をつまんで体勢を立て直し、足から落下、事なきを得た。
多分シコルスキーよりは強い。しこり方も強い。


119 :筋斗雲と虎眼流:2006/08/29(火) 09:43:46 ID:5FynbIvy0
下では牛股が巨大木剣「かじき」を切り上げるように構えていたが見なかったことにしておこう。
ちなみにこのときの牛股の構えが、後に清玄に無明逆流れのヒントになったとかならなかったとか。

落ちた山崎の頭に虎拳を打ち込みたるは清玄。先月山崎に喰われた亀の卵の仇打ちだ。
失神した山崎の口におととい山の中で見つけた目玉の親父を突っ込んで、さっさと女漁りに出発。
大事な笑顔を見逃すことになる。

さて、源之助の出番である。このとき伊良子以外の内弟子は初めて源之助の笑みを見た。(伊良子は見逃した)
ちなみにその日虎眼流を訪れていた近所の侍はこの笑みを見て失禁した。
整った顔なのにそれほどやばい笑みなのだ。
現代ではこれ程やばい笑みをうかべられるのは、少し方向性が違うが,デビ夫人くらいだろう。
(ちなみに次に藤木が笑うのは伊良子仕置きで伊良子がぼこぼこになったり、失明したりするときです。)
さて藤木がいざ乗らんとしたとき乱入者あり。
乱入したるは三重、そして道場の主、岩本虎眼。
「種種種〜〜〜〜」
とケルベロスの脳髄を持って三重を追い掛け回している。
滋養によいものを食べて、強く育ち、たくましい種を宿してほしいという切なる願い。
その親心は確実に三重とその他多数の心を蝕んでいた。
ちなみにケルベロスの唾液からは毒草が生えたりするらしいが、とにかく珍味なら漢方である。
毒をもってなんとやらだ。

逃げ回る三重が筋斗雲を踏みつけると筋斗雲は勢いよく発進した。まるで水を得た魚のようである。
道場の戸を突き破り、大空へ飛び出した。筋斗雲は三重の味方だ。
藤木の面目丸つぶれである、が何も言わずに心に秘めるのが武士道にござる。


120 :筋斗雲と虎眼流:2006/08/29(火) 09:44:35 ID:5FynbIvy0

さて三つ頭の犬の脳髄の内二つを自ら平らげた虎眼は残る一つを持って、東に向かって印を切った。
これぞ無双虎眼流流れ雲。青天にわかに掻き曇り雷が降り注ぎ、真っ黒い雲が虎眼の前に下りてきた。
それに乗って三重を追う虎眼。最早尋常の人ならぬ魔神である。これが濃尾無双クオリティ。

逃げる三重と筋斗雲。筋斗雲は一飛び十万八千里。追いつけるものか。しかし虎眼流は速い。
常よりも一指多い腕を振り降ろすと雷の束で筋斗雲の行く手をさえぎった。
ゆうゆうと三重を捉えて、筋斗雲に飛び移り、うどん玉のように最後の脳髄を三重の口に流し込んだ。
「たねぇぇ」
という叫びはもう聞こえない。虎眼先生は満足したようだ。
筋斗雲に乗り、三重を抱えて悠々と道場に帰ってきた。
さすが虎眼先生だ。藤木は感動の涙を流した。

その後筋斗雲がどうなったのか、誰も知らない。



121 :筋斗雲と虎眼流:2006/08/29(火) 09:50:04 ID:5FynbIvy0
一投目の後に、「公開プロクシからの書き込みはできません」などとでて、書き込めなくなりました。すみません。
串をいじっても直らんかったので大学からです。
ところどころ改行がおかしくなってしまいましたがどうかご容赦を。
お目汚ししました。

122 :作者の都合により名無しです:2006/08/29(火) 12:46:33 ID:rOmy8L2Q0
>サナダムシさん
以外と偽者もいい男だな。筋の通し方は本物よりいい感じだ。
真っ当な空手では加藤勝ち目なさそうだ。やはり井上さんがカギ?

>17さん
元気になって復活してください。

>筋斗雲と虎眼流
シグルイかよwしかもキント雲とのコラボはありえんw
今回はほのぼのとした感じだけど、いずれ血生臭いやつもよみたかったりしてw
新人さんかな?しぇきさんかな?

123 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/29(火) 17:13:19 ID:MeGny7g60
十九 包囲網

 右手で窓枠に頬杖をつき、左手で装飾の施されたハンティング・ナイフを弄ぶ。
 はじめは死んだ魚のような虚ろな目で、二階の窓から道路を見下ろしていた。
 町内会の役員たちが、御揃いのジャケットと腕章を身に付け、自警団気取りで闊歩している。
 ここ一週間ほどは、動き難くて仕方がなかった。
 昼間は、道を歩けば捜査中の制服警官、取材中の報道関係者と顔を合わせるし……
 夜間も毎晩、事件の発生を未然に防ごうと、町内会の有志が巡回に精を出している。
 無理も無い。いまやこの街は、全国ネットで大々的に報道される連続猟奇殺人事件の舞台なのだから。
 それだけに、報道も新情報の収集に躍起になる。警察も威信を賭けて捜査にあたる。周辺住民も最大限警戒する。
 しかし、そんな諸々の抑止力に屈して何もアクションを起こさないなどと云う選択肢は、はじめの中には存在しなかった。
 はじめには、遅かれ早かれ、自分は逮捕されるであろうとの確信があった。
 近年の警察の科学捜査は『名探偵』などという単語を、推理小説の中だけの、過去の遺物にしてしまうくらいに優秀だ。
 DNA鑑定結果が検察に証拠として提出されるようになって、十数年余り。
 運用当初こそ、各方面からその証拠能力を疑問視する声もあったDNA鑑定だったが、現在は指紋鑑定に次ぐ捜査の要である。
 新型自動分析機(フラグメントアナライザー)も導入され、DNA鑑定は飛躍的にその精度――つまりは証拠能力――を高めている。
 犯罪者は今や、現場に一本の毛髪も、一滴の唾液も、一欠のフケすらも残すことを許されない。
 無論、はじめとて、まったくの無策ではない。
 指紋や靴跡等といった、直ぐ足のつくような手がかりは決して残してはいない自信があったし……
 主に屋外を犯行場所として選択していたのは、時間が微細な物的証拠を抹消してくれるとの判断からである。
 それでも。これだけ凶行を重ねているのだから。こんな無節操な殺人が、長期間続く訳もないのは明白で。そのあたりは、はじめも弁えていた。

124 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/29(火) 17:13:50 ID:MeGny7g60
 それならば、とはじめは思う。現逮のリスクを犯してでも、一つでも多くの屍を積み上げたい……と。
 こんな行為には、きっと何の意味もないのだろう。悲しむ人はいても、誰も喜ばない。損する人はいても、誰も得をしない。
 はじめも、理屈の上では理解している。だけど、理屈など関係なく、はじめは行為そのものへの欲望に抗えなかった。
 砂漠で一人ぼっち。今にも力尽きそうな時にオアシスを見つけたなら、水を飲むみたいに。
 世界で二人っきり。男性と女性が生き残っていたなら、身体を交えるみたいに。
 例えるなら、今のはじめは、殺人と言う麻薬に溺れた哀れな中毒者(ジャンキー)だった。
 立ち上がり、本棚の前に立つ。本棚には文庫本数冊と、CDが十数枚収まっている。
 文庫本の裏に隠してあった鍵を取って、その鍵で勉強机の一番上の引出しを開く。
 はじめは中から、片手にすっぽり収まるような、黒い箱型の物体を取り出した。
 マイオトロン、と呼ばれるそれはスタンガンの一種で、以前、通信販売で購入した品だった。
 これは、はじめの犯行になくてはならない、言わば必需品であった。
 はじめが、主に屋外で犯行を行っていることは前述した通り。
 犯行を目撃されない、というのは大前提として……屋外における犯行で、最も注意すべきは何だろうか?
 はじめは、被害者を逃がしてしまう事、大声で助けを呼ばれる事、以上の二点であると結論した。
 その二つの問題点をクリアし、より安全、円滑に犯行を行う為の補助武器が、スタンガンだった。
 顔を見られないよう、背後からそっと忍び寄り……スタンガンで一時的に標的を無抵抗状態にする。
 そして、間髪入れず、愛用のハンティング・ナイフで急所を一突き。致命傷を負わせる。
 それがはじめがいつの間にか体得した、狩りの必勝パターンだった。
 無造作に壁にかけてあった、薄手のリバーシブル・ジャケットを羽織る。
 そしてその内側ポケットに、ナイフとスタンガンを入れる。
 薄手とは言え、この陽気にジャケットは若干暑いのだが、軽装では返り血を誤魔化せない。
「行こう」
 はじめは誰に向けたものでもない言葉を口にしてから、自室から出て、階段を降り、玄関前に立った。
 凶器を持ち、獲物を求めて出歩く。それは時間に関わらず、高いリスクを伴う行動であることは間違いない。
 間違いないのだが、昼夜どちらに行動するのだと問われれば、闇の恩恵を受けられる夜しかなさそうだった。
 スニーカーを穿き、玄関の扉を開け放つ。緩慢な風が吹き込んでくる。生暖かい空気が肌に纏わりつくのを感じる。
 この空気に、血の匂いが混ざって溶けたなら、きっと良い香りになるだろう……
 そんなことを考えていて、知らず、薄い笑みが浮かんだ。

125 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/08/29(火) 17:17:13 ID:MeGny7g60
二十 騎士は剣を携えて

 一人の騎士が倒れても、もう一人の騎士がその意志を継ぐ。
 その騎士が倒れても、もう一人の騎士がその意志を継ぐ……
 悪魔はいつか必ず、しかるべき報いをその身に受けるだろう。

*  *  *  *  *  *

 薄暗い部屋を、テレビ画面の明かりだけが照らしている。
 画面の中では、精緻なポリゴンで構成された甲冑に身を包んだ騎士が、一人森を行進していた。
 今プレイしているゲームの名前は『ファイブ・ソード』
 王の命を受けた、選ばれし五人の勇敢な騎士が、悪魔に攫われた姫を救出する、オーソドックスなロールプレイング・ゲームだ。
 このゲームのシナリオは、ちょっと変わっている。通常、こういったゲームでは、物語の進行に合わせて仲間が増えて行くものなのだが……
 ファイブ・ソードでは、最初五人だった騎士が、敵の計略に嵌り、一人ずつ戦線離脱してゆくのだ。そして、最終的には主人公一人になってしまう。
 主人公は一人で、悪魔との一騎打ちに臨む。
 壮絶な死闘の末、悪魔を討ち取った主人公だったのだが、悪魔の手に落ちた姫は絶望し、既に自らの生命を絶っていた……
 苦難の末のハッピーエンドでプレイヤーに充足感を与えるロールプレイング・ゲームの定石を考えると、不満が残るシナリオである。
 それでも、このゲームはお気に入りで、何度も繰り返し遊んでいた。
 隠しアイテムやダンジョンなどの、やり込み要素に事欠かない……と言うのもあるが。
 最大の理由は、このゲームの主人公である騎士と自分の置かれた境遇が、少なからず似ている、と感じる為だった。
 姫を取り戻すために、悪魔を打ち倒すと誓う騎士。
 奈々の復讐を遂げるために、殺人鬼を打ち倒すと誓う自分。
 このゲームをプレイすると、主人公とシンクロしているような気分になれる。そして、高揚感に、我を忘れる。
 そう言えば、奈々が死んでからと言うもの、こうしてゲームに没頭する機会が増えたような気がする。
 ロールプレイング・ゲーム特有の単純作業は、気を紛らわせるのにもってこいなのかもしれない。
 いつもなら、新宮家の監視に回っている時間だった。だが、今日に限って、ゲームのせいで数十分遅れた。
 だから……気付かなかった。左隣の家、新宮家の玄関から、ジャケットを羽織ったはじめが出て行った事実に。

126 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/08/29(火) 17:20:17 ID:MeGny7g60
毎度ありがとうございます。前回投稿は>>18です。
騎士って何?との疑問がようやく今回で氷解。

・コメディ
コメディも書いてみたいですね。
理屈とか整合性とか一切気にしないで、好き放題にやりたいです。
でも、コメディはセンス必須ですから、滑ると悲惨な事になりそうでちょっと怖い。
次に何か書くとしたら、今度は方針転換して、原作キャラの個性を最大限活かせるものにしたいかなぁ。
・ラストまで
残り三、四回でしょうか。結末は……どうなるでしょう。
最後に持ってくるオチこそ決まっていますが、実際どんな雰囲気になるのかは未定です。
爽やかに終われるといいのですが。
・話
話をどうやって考えているかなのですが、フローチャートは作ってないです。
忘れたらいけない重要事項だけメモして、それ以外は、頭の中でもやもやと。
自転車操業も甚だしいのですが、意外となんとかなっております。
話の中の事とはいえ、次は○○が殺されて……などと大真面目に考えています。何気に危険人物ですね。

127 :作者の都合により名無しです:2006/08/29(火) 20:58:56 ID:eilrQcAu0
>名無しさん
シグルイはいつか俺が書こうとしたネタなのに・・
血みどろではなく、こんなオチもありかな。なんか連載して。

>かまいたちさん
少しずつ皮を剥くように真実が明かれさていく。
騎士の謎の前に、不思議なゲームの場面か。むむ、まだどんでん返しが?
でもあと数回かぁ。最後は爽やか?楽しみにしてます。

128 :作者の都合により名無しです:2006/08/29(火) 22:44:00 ID:1rQSQVvT0
カマイタチさん、頭の中だけで物語を作っていくのか。すごいな。
細かい警察の知識とかもなんでこんなに知ってるんだって位凄い。
空疎なゲームの中から恐怖が伝染して・・
というのは、いい素材ですなあ。

129 :作者の都合により名無しです:2006/08/30(水) 07:54:33 ID:6e5vHEUl0
物語の一番最初の1レス目から、それを最後の最後に着地させる腕がすごいな。
でもかまいたち氏のコメディか。作中、人が惨死しそうだw

130 :作者の都合により名無しです:2006/08/30(水) 12:31:44 ID:Z4UVCtcQ0
>サナダムシさん
この偽加藤は、空手の最終兵器の克己と戦うと勝てるのだろうか?
勝てないだろうなあ。一応、克己は天才だからなあ。
短編、うんこはまだ封印ですかw

>シグルイの人
虎眼先生はボケ老人モードだとギャグに合うかなあ。
狂人モードだと血なまぐさいが。
藤木との仲を筋斗雲が取り持ったのか。

>かまいたちさん
もうすぐ終わりか。でも、氏の作品は最後まで油断できないからな。
次はコメディ?かまいたちさんなら、中島らもの作品のように
最初笑わせて、後からびびらせるって感じがいいな!


131 :作者の都合により名無しです:2006/08/30(水) 21:07:23 ID:eHvp5l9N0
しぇきさんの復活はほんの一瞬だったのか?

132 :壊す拳と護る拳:2006/08/30(水) 22:39:37 ID:XdVjnAfb0
>>101
青年は窓の外から、一歩をじ〜っと見つめている。気味が悪いなぁと一歩が思うと、
その心を読んだかのようにニヤリと笑った。
そして手にしていた白い布を窓から放り込むと、もう用は済んだとばかりに去っていく。
《よく聞け幕之内。実は、》
「あの、すみません。ちょっと待って下さい」
一歩は受話器を机に置いて、青年が投げ込んだ布を拾い上げてみた。折り畳まれていた
それは、広げてみると一着の服。白衣だ。ズタズタに破り裂かれた看護師の制服。
「なんだこれ。なんで今の人、こんなものを。看護師の服……って……え、あ、」
看護師といえば……!
《おい、幕之内? オレの話を》
「あ、あの、間柴さん! 久美さんは今どこにっ!? 無事ですかっっ!?」

河合病院。間柴の妹、久美が看護師として働いている病院である。
そこへ、一歩の話を聞いた間柴が死にそうな顔で駆け込んできた。入ってすぐの
待合室で私服姿の久美と鉢合わせして、
「久美っ! お前、あの、何ともないのかっ?」
「お、お兄ちゃん。何かあったの? 私なら何ともないけど?」
きょとんとしている久美。確かに、見たところ掠り傷一つない。
タチの悪い脅しだったか、いかにもあのクソ野郎のやりそうなこと、と間柴は息をつく。
「ただ、更衣室に置いといた白衣が盗まれちゃったみたいでね。替えを取りに帰ろうと
してたところ。……どうしたの凄い顔して? 大丈夫、怪我も病気もしてないから。
お兄ちゃんこそ、たまには体を休めないとだめよ。筋肉の成長には適度の休養が……」
久美は間柴の体を気遣ってくれているみたいだが、間柴の耳にはその声は届いておらず。
代わりに、待合室のテレビからワイドショーの音声が聞こえていた。
《……の河川敷にて大量殺人事件が発生しました。被害者は少年五十名と少女一名で、
殺害方法は全て拳の殴打によるもの。少年が二人だけ瀕死の重傷で生き残っていたその
手口から、警視庁は以前から続いている未確認生命体28号の犯行と断定しました。
なお、現場には被害者の血文字で『妹も、こうなるぞ』と残されており、おそらく
次回の犯行を示唆するものと……》

133 :壊す拳と護る拳:2006/08/30(水) 22:40:37 ID:XdVjnAfb0
未確認生命体。その犯行による死亡者数は、既に4ケタに到達していた。常に
なんらかの法則に従って、定められたターゲットが次々と襲われて殺される。
今のところ警察は、ある程度の被害者が出たところでその法則をどうにか突き止め、
何とか対応して辛くも退治というパターンである。
「警察は当てにならねえ。通報なんかしようとしたら、奴は即座に久美を襲う
だろう。病院の更衣室から盗んだ白衣を、わざわざお前に届ける奴だからな」
「……」
「第一、奴が『誰の力も借りず二人で戦え』とルールを突きつけてきた以上、
警察に限らず誰の力も借りられねえってことだ」
「……はい」
決戦の日。一週間前、間柴がゾエビに一撃で倒された時刻。場所は少年たち五十人が
ゾエビに撲殺された河川敷。すでに警察の現場捜査は終わっている(未確認生命体の
事件ではあまり意味がない)ので、人気はない。
夕陽に照らされて立つ二人、間柴と一歩。この一週間、ジムには行かず二人で
検討と練習を重ねた結果、素手で戦うことにした。
未確認生命体は超人だが、超「人」だ。別に鋼鉄の鎧を着込んでいるわけではない。
なら、あの鉄壁のガードを潜る為にはできる限り拳を小さく軽くして、
手数とコンビネーションで勝負するのが最適だろう。
だから素手。拳を保護するグローブも、凶器となるメリケンサックなども付けず。
自分たち二人にとって、一番使い易く信用できる武器。拳のみで挑むことにしたのだ。
「おお・なかなかいい表情だ・結構結構・だが、」
ゾエビが歩いて来た。間柴たちとは対照的に、嫌味なほど緊張のカケラもない様子で。
「女はどうした・三人で来いと・言ったはず」
「……必要ねえだろ」
間柴が答えた。
「お前はここで、オレたちに叩きのめされるんだからな。今までの未確認どもは警察が
爆殺してるそうだが、お前はめでたく撲殺だ。今夜には貴重なサンプルとして解剖だぜ」
「ま、間柴さん。何もそこまで」
「黙れ。いいか、『倒す』じゃなく『殺す』気でかかれ。でないと二人揃ってやられるぞ」


134 :壊す拳と護る拳:2006/08/30(水) 22:41:23 ID:XdVjnAfb0
「勝つ・殺す・か・威勢がいいな・昔も今も・リントどもは・実に面白い思考をする・
愛とか・勇気とか・最初に言い出したのは・誰なのだろうな? ああ・いかんいかん・
つい・リント語の・教養が・あふれてしまう」
ククッ、とゾエビが笑った。
「まあいい・女が来ないのも・そろそろ定番として・諦めがついてきた・どうせ・
お前たちの敗北後・また・私が・あの女を・ここまで引きずってくる・だけだ」
間柴と一歩が、その光景を一瞬とはいえ想像してしまい、息を飲んだ。
が、すぐに表情を引き締めて二人同時に構える。間柴はフリッカーの発射態勢、遠距離戦
対応のヒットマンスタイル。一歩は両拳を顎につけた、接近戦重視のピーカブースタイル。
対するゾエビは二人の闘志を感じ取り、少し嬉しそうな顔で両腕を大きく広げて言った。
「さあ・たたかえ! こころのちからを・わすれるな!」
「ほざけ! いくぞ幕之内!」
「はいっ!」
二人を抱擁せんばかりのポーズと表情なゾエビに向かって、間柴と一歩が駆ける。
その拳に、必勝必倒の誓いを乗せて。

135 :壊す拳と護る拳:2006/08/30(水) 22:43:33 ID:XdVjnAfb0
ちょっと短いですが、キリのいいところでしたのでご容赦を。
間柴は、我が最愛の格ゲーキャラにして何度か主演SSも書かせて頂いた山崎竜二の
モデルだそうで。技と、一部セリフの。『一歩』で該当シーンを見つけた時は笑えました。

>>サナダムシさん
悪役に堕ち、戦いのペースも握られ、このまま一気に敗北……と思いきや。いやぁカッコ
良いではないですか王者。空手、独歩、同輩たちと育んだ誇り。でも奢ってた奴が反省して
基本に立ち返り、地味だけど威力のある技で反撃逆転、ってモロに勝ちフラグですけど!?

>>筋斗雲さん
よもや筋斗雲メインのSSが読めようとは。確かに喋りはしないけど意思はありそうだし、
殺せば死ぬ彼。さぞ恐ろしかったことでしょう。本作は、文体は何だか重々しいのに内容
は軽妙というか珍妙で、ちょっと独特な笑い方をさせて頂きました。また書いて下さいっ。

>>かまいたちさん
ジョジョの吉良を筆頭に、こういう殺人鬼の「嗜好」回路ってのは漫画や小説でいろいろ
見てきましたが、これもかなり淡々と冷たく怖く。実際に自分がこの街の住人なら、自分
だけは大丈夫と思って夜間外出してしまいそう。神の視点だからこそ味わえる恐怖感です。

>>17〜さん
今はお休みくだされ。復帰されたその時には、きっと今以上に読者も職人も増えております
故、休養中に蓄えたネタで存分に腕を振るわれますように。お待ちしておりますぞっ。

136 :作者の都合により名無しです:2006/08/31(木) 07:49:04 ID:V9guM0yM0
ふらーりさん乙です。
まあ、化け物相手だから2対1でも仕方ないか。
ちょっと真柴のイメージと違うけど・・
真柴がけん制で一歩がとどめか?

137 :AnotherAttraction BC :2006/08/31(木) 10:42:28 ID:+1+rG8Wl0
Pert40 254から
少年が一人、泣いていた。
いや、それはもう随分前の話だ。涙の跡こそ有れ、今はもうその涙そのものを流し尽くした。
馬鹿馬鹿しい、何で俺が産み捨てただけの男と女に泣いてなくちゃいけないんだ
絶望と悲哀の慟哭から醒めた少年は、我が身への叱咤に心を凍らせた。
冷気の名は、憎悪だった。

少年は、彼にすら意外な事に極めて聡明だった。
世に生まれ出でて今日まで、感じた事全てを彼は憶えていた。そしてそれを、理解する頭が有った。
父親の事、母親の事、二人が自分に向ける厄介者の視線、言い争う二人の言葉、何より自分が此処に居る事。
その全てを彼は、誰に言われるでもなく完璧に理解出来ていた。
だから、母親が孤児院の入り口に自分を置いて行ったまま姿を消した途端、彼は泣いた。
置いて行かれるのは判っていたが、それでも生みの親をまだ信じていたかった。だが、彼の理解力は全てを悟ってしまう。
捨てられたのだ、と言う事を。
しかしそれが今更なんだと言うのだ。もうその全てを、少年は振り切っていた。
結局世の中建前と外面だ。逆に言えば、それさえ問題無ければ自分達の不手際を自分達の都合一つで捨てる連中
であろうが人生薔薇色だ。事実今彼が佇む現実が、その理論を証明しているではないか。
お前等から貰うのはこれだけでいい、残りは全部俺の中に有る
彼の頭脳なら二人を捜す事も出来るのだろうが、それを拒んだ時点で彼の憎悪は矛先をそれ以外の全てへと向けていた。
―――――つまり、その二人が生まれる事になったこの世界そのものへ。

手に入れてやる、何もかも。そして…!
かつては純朴であった筈の双眸に、子供らしからぬ爛れた暗黒が宿る。
そして皆―――――……ぶっ壊してやる!!!

138 :AnotherAttraction BC :2006/08/31(木) 10:43:04 ID:+1+rG8Wl0
――――思い返せばこの日から、スヴェンの純真な復讐は始まっていた。
そして彼の望むとおり、彼は今世界に手が届く所まで辿り着いたのだ。あらゆる物を憎悪のままに喰い貪って、その屍を積み上げて。
だがロイドの遺言には、何故かそれを霞ませる様な恐ろしさが有った。
『…僕はね、君に会うまでずっと人に疎まれる人生だった。ほら、君も言ってたろ? 皆が皆受け入れてくれるとは限らないって。
 その所為でね、僕は人の――――――…悪意っていうのかな、そう言うのに敏感になっちゃってね。
 ……君からはずっと伝わってた、何時の笑顔にも』
それは、哀し過ぎる習性だった。悪意の味に心ならずも慣れてしまった結果、彼は必然その部分の防衛本能に長じていた。
弱さゆえに、彼は切ない審美眼を養ってしまい、それはスヴェンの知らぬ間に彼の本性を見破っていたのだ。
しかし、だからこそ判らない。何故ロイドは、救う価値などおよそ無いスヴェンを命を張って助けたのか。
『驚いてるかい? 君は完璧だからね、とても僕の決断を理解出来ないと思うよ。
 でも、僕は君を恨んでる訳じゃ無い。実は結構感謝の方が大きいんだ』
愕然としながら、スヴェンはまるで怨怒の色が無い独白に聞き入った。
立場が逆なら、間違い無くスヴェンはロイドを助けない。いや、その前に暗殺しているかもしれない。
然るにそれは、ロイドに命を握られていた事を意味する。
そしてそんなスヴェンの思考を笑い飛ばす様な明るさで、ロイドは続けた。
『……君が全てを利用して、僕もマリアも利用して、その過程で何人も殺して一体何を求めてるのか僕は知らない。
 だけど僕は、それでも良かったよ』
相も変わらず友情を信じ、愚かで有る筈の声は秘め隠したスヴェンを次々と暴き立てた。
正に蟻の一穴≠セ。スヴェンの嘘を知るだけで、彼の行動に如何なる意味が有るのかを悟ってしまうのだ。
…………じゃあ、何でお前は…………
その疑問を心が提示した時点で彼も悟る。
今此処に命が有るのは、極細い綱渡りだった。それも、綱の端を常にロイドに握られて、
その事を知らずに自力で渡り切ったと勘違いして。
『…そりゃ確かに、君を助けない選択ってのも時々は考えたよ。
 僕は君と違って弱いからね、派閥争いしてる君を見捨てれば僕の家族は安泰だなって………さ。
 駄目だね、弱虫で』
いよいよ立ち位置の揺らぐ想いだった。

139 :AnotherAttraction BC :2006/08/31(木) 10:43:34 ID:+1+rG8Wl0
『……でもね、君は苛めっ子から僕を助けてくれたよ。それに、僕を気味悪がらないでくれた。
 仕事の上では良いチームだったし、マリアの仲を取り持ってくれたのも君だし、シンディにも君は優しかった。
 ――――――それが全部、嘘だとしても』
声が僅かに重くなった。たったそれだけの事なのに、スヴェンの胸は異様なほど騒いだ。
『だけど、僕にとってはそれ全部、本当の事だった。
 僕だけじゃない、少なくとも僕達一家が君から受けたのは…確かに君の優しさなんだ。
 それまで否定したら、誰も愛せてない君が可哀相じゃないか』
事も有ろうに、卑劣な簒奪者に向けられた真意は哀れみだった。
突き刺さった言葉に狼狽するスヴェンの耳に、微かに泣き声が聞こえた―――否、耳ではなく心に。
『君が自分を捨てた御両親を恨んでるのは判るよ。それで、こんな事してるのかな。
 だとしたら君、間違ってるよ。何もかも恨むなんて、おかしいよ』


「―――本当にその通りだぜ。
 当時の俺は、何をしたかったんだろうな」
血の様な夕日の赤が夜に陰るのは、まるでスヴェンの心情そのものだった。
二人は、掛ける言葉が見付からなかった。彼が失った物を、そしてその代償を、既に悟っていたからだ。


『僕はね、結構幸せだよ。今こうして死にに行くのに、僕は色んな人を想っていられる。
 仲間達を、マリアを、シンディを、そして―――――――…君を。
 でも君はどうなんだい? 君を愛してる人は皆最後の最後まで君が心に居るって信じられる。
 でも君は、一人ぼっちじゃないのかい?』
彼が命を張ったのは、スヴェンが唾棄したほんの僅かな薄皮一枚の欺瞞だ。
だがそれを、今もそう言えるのか? 何故か今は鼻で笑うには重過ぎて、投げ捨てるには深過ぎる。
そして、心の奥底から響く泣き声が少しずつ大きくなっていく。耳障りなほどに。切ないほどに。
『こんな事言っても君は笑うだけかもしれないけど、もしそうならそれでいい。
 だけど僕の知ってる優しい君が、君だけが寂しいまま死ぬなんて………僕は嫌だ』
――――寂しい=Bその一言が深く染み入った時、彼は先刻からの泣き声の正体を知った。

140 :AnotherAttraction BC :2006/08/31(木) 10:44:32 ID:+1+rG8Wl0
……………俺の…声だ
彼は泣いていたのだ。あの孤児院の前から今まで、ずっと。
ならば何故今まで聞こえなかったのか。目を背けていたからだ。耳を閉じていたからだ。そして、逃げ続けていたからだ。
そしてそれこそが、今日まで彼を突き動かしていたものだった。速く、強く………空しく。
それを全て気付かされた今、彼の心には言い知れぬ恐怖めいた何かが忍び寄っていた。
『…スヴェン、君が僕の事を友達と思ってなくたって良い。
 それでも、君は僕の友達なんだ。例え嘘でも、例え僕を利用してるだけでも、もしかしたら捨て駒にするつもりでも、
 君は………僕の友達(ヒーロー)なんだ。
 だって……嘘でも何でも、君が一番優しかったんだ。だから君を、絶対に助けたかった』
彼の静かで壮絶な覚悟に、スヴェンは眩暈すら覚えた。
ロイドは本当に愚かだったのか? 今までそうと断じて来た筈の事柄が崩れ、その向こうから自身にとって恐るべき事実
が顔を出し始めていた。
―――俺は……
有り得ない、それだけは。もしそうだとしたら、今まで彼が手を染めた悪事、殺した人々、得た物。それが悉く意味を無くす。
『そうそう、子供の頃君欲しいって言ってたろ? あげるよ、あれ。
 僕より君が使った方が、きっと役に立つと思うんだ。だから……だからね………』
ロイドの語尾が少しずつ震え出した。それに呼応する様に、スヴェンの手も震え出す。
―――俺は………
つい先刻まで狂喜したかった筈なのに、それに気付いた途端何もかもが色褪せた。
取るに足らない筈の事は、取り返しの付かない事だったのかもしれないからだ。

『――――――…ごめん、やっぱり僕………本当は死にたくない』

141 :AnotherAttraction BC :2006/08/31(木) 10:45:04 ID:+1+rG8Wl0
嗚咽混じりの本心を聞くや、スヴェンは病室を飛び出していた。
マリア達が止める間も無く、彼は着の身着のまま当てなど知らず廊下を走り出した。
『本当は僕……もっと生きていたい。マリアと…一緒に生きたい。シンディを、見守っていたい。皆と…一緒に居たい。
 あの日が……ずっと続いて欲しい。あの幸せだった時間が……ずっと……』
耳に付いたままのイヤホンが涙の独白を流し込む。傷を忘れ、力の限り走るスヴェンもまた泣いていた。
――――ロイド。
心の中で彼を呼ぶ。しかしもうそれは届かない。彼は、こんなにも近くで言葉を紡いでいるのに。
『…こんなの聞きたくないよね。でも、ごめん…今だけ言わせて。
 本当に…………ごめん』
右目を覆う包帯から血が溢れ出す。だがそれは本当にただの血か。
――――ロイド!
奔る。そして心が叫ぶ。しかしそれには何の意味も無い。
傷の所為で不恰好に走る彼をナースや医者が止めようとするが、それを押し退けてなお彼は走る。
『何で……何でこんな事になったんだろう。
 僕はただ………皆と一緒に居たかっただけなのに…………』
――――ロイド!!!
今なら判る。確かに判る。スヴェンだけが知らなかった。
ロイドは本当の親友だった。スヴェンの全てを知りながら、あくまでそう有り続けた。そして最後の最後まで優しかった。
だがそのロイドに…彼は何をした? 裏切り続けていた、最後の最後まで。
ロイドの意志は高潔だった。それに比べ己はどうだ? 醜過ぎた。汚過ぎた。
彼は全てを知っていた。なのに、スヴェンは彼を無知無能と嘲笑っていた。
何処までも愚かなのは、スヴェン一人だった。

142 :AnotherAttraction BC :2006/08/31(木) 11:01:45 ID:+1+rG8Wl0
何につまづいたか、スヴェンは廊下に激しく倒れ込む。
衝撃で幾つかの傷口が開いたが、そんなものはもうどうでも良い。そんな痛みなど何の慰めになるだろう。
許しを乞いたかった。しかし、再生は既に終わっていた。
「……ロイド」
どれだけその名を呼ぼうとも、空虚だけが空しく漂う。
もう聞こえない。もう話せない。今までどうでも良かった物全てに縋り、スヴェンは床に突っ伏して慟哭した。
誰も彼の罪を知らない。誰もその事を信じてはくれない。今までそう計らってきたから。
そして真に許しを乞うべき相手は、彼の改心など知る事も無く世を去った。
その罪は裏切り続けた心。その罰は誰にも許されない事。永遠の咎人となったスヴェンは、我が身を象る全てに哭いた。


「…それから俺は、両派閥のあらゆる刑事罰対象の証拠をシャーリーンに渡して、ISPOを辞めた。
 お陰で今のISPOは、やっと公正な組織になってる」
既に吸い口まで灰になった煙草を灰皿に落とし、スヴェンは長々と息を吐いた。
もう夜も更けて、星が空に瞬くも祭りは一層熱を帯びていく。しかし此処だけが、季節も場所も違っている様に冷え切っていた。
「ところで話は変わるがな……お前ならわかるだろうトレイン、俺がどうして生きてるのか」
リンスには意味を拾えない言葉だったが、その造詣に深いトレインには判る。
スヴェンが廃工場で負った負傷は、例え救急車が間に合った所で助からない。
深手が過ぎる為大量の輸血を必要とし、更に幾つかの臓器は移植が必要なほど損傷している。
ならばそれは――――――――――果たして何処から、しかも短時間で調達したのか。

スヴェンは沈黙のままワイシャツの前を開いた。其処には幾重の戦闘による傷跡と、手術痕が這い回っていた。
「………あいつはな、自分の臓器を残らず臓器バンクに登録してたんだ。優先的に俺に行く様に、色々骨折ってな」
言いつつ前を閉じるスヴェンの隻眼は、ただ静かだった。だがその奥に有るのは、深過ぎる自責だ。
「…医者はしきりに奇跡だとか言ってたぜ。これだけ交換して拒絶反応が無いのは、有り得ないんだとさ」
…それは、トレインにもリンスにも到底真似出来ない世界の話だ。無償―――…どころか救う価値の無い相手への自己犠牲。
ロイドは、本当の意味で命を賭けて、何もかも捨てて、死の恐怖に打ち勝ってスヴェンを助けたのだ。
「残酷な野郎だよ俺は。他人に酷な事を選ばせておめおめ生き長らえてるんだからな。
 今もまた、俺の都合でお袋と同じ事をイヴにしたしな。
 だから俺としては、いっそ恨んでくれた方が気が楽なのさ、判るだろう? マリア」
観念した様な視線の先を二人が慌てて辿ると、二人のすぐ後ろには驚愕に強張る彼女が立っていた。

143 :AnotherAttraction BC :2006/08/31(木) 11:04:22 ID:+1+rG8Wl0
「どうだマリア、これがお前に愛される資格の有る男か?
 俺がもしロイドの言葉を聞きそびれていたら、お前ばかりかシンディの人生まで食い潰してたかもしれないクズだったんだぜ」
酷く投げ遣りに、無感情に、スヴェンの言葉は空気を抉る。
「何でお前に金を送ってたか判ったろう? ようやく目覚めた罪悪感に耐えられなくて、どうにかしたくて…それだけだ。
 お前の為なんて、俺はこれっぽっちも思ってない」
聞きながらマリアの拳が震えていた。
それは心に渦巻く怒りが故か。はたまた別の感情か。
「俺は断じてヒーローなんかじゃなくて、死んだあいつこそが寧ろそうだった。
 何せあいつは全てを捨ててISPOも、家族も、俺も、何もかも救ったんだからな。
 俺みたいな偽物(イミテーション)と違ってな」
彼女のそれを煽る様に、スヴェンは無表情だった。
そしてトレインとリンスは、二人の狭間に居るまま戦々恐々成り行きを見守るより無かった。
常識的ならマリアの憎悪は如何ばかりの物だろう。
頼れる兄貴分だと思っていた男は出世の為に憎むべき不正に手を染め、彼女をも利用し、駄目押しに夫の仇とも言うべき悪漢だった。
人道的に、例え殺されても文句は言えまい。
「そして俺がお前の前から綺麗さっぱり消えたかった最大の理由は…………これを知られたくなかったからさ。
 お前に憎まれるのが怖くて、な」
しかし言葉に反し、今の彼には清々しささえ窺える。それは隠し通すと決めていた全てを明かしたからだろう。
そしてその貌のまま、彼は優しげに微笑んだ。
「俺が憎いか? 殺したいか? そうだろうな、それが普通で、常識だ。
 ――――――だがな、マリア…」
だが唐突に言葉は封じられる。そうしたのは、突然椅子を倒して席を立ったトレインだった。
三人の注目は当然彼に向いたが、彼はそれを全く気にせず雑踏の遥か遠くを凝視する。

144 :AnotherAttraction BC :2006/08/31(木) 11:06:49 ID:+1+rG8Wl0
「何だ、どうし…」
「……何てこった、オレが気付かなかったなんて」
トレインの貌は蒼白だった。それを聞いてリンスが彼の視線に倣うが、そこには祭りに興じる民衆しかない。
「? 何も見えないわよ?」
「そうじゃない。……マジかよ、こんな所で……」
既に彼は視線を周囲にせわしなく巡らせていた。
―――トレインの様に永く命の取り合いに身を置く者に限り、或る嗅覚を身に付ける。
鼻ではなく、魂が感じるその匂いは、その世界に慣れた人間でなければ嗅ぎ分ける事の出来ない匂いだ。
そして、それが出来るからこそ一流と称される人間は、そう呼ばれるまで生き残れるのだ。
「…奥さん、急いで周りの連中を安全な所に非難させろ。早くしないと――――――――」

転瞬、町の西側から全てを揺るがす様な爆発音が鳴り響いた。

『!?』
トレイン以外の三人―――ばかりではない、観光客も出店の店員も大道芸人も、思考を止めてその方角に目をやれば、
其処には夜にも露わな高い黒煙がもうもうとそびえ立っていた。
『な…何だあれ?』
『おい、あっち幹線道路じゃ…』
人込みから囁かれる言葉を聞きながら、三人はようやく事態を察する。
「まさか……」
策士の基本は冷静たる事。それを存分に弁えている筈のスヴェンも衝撃の事実に狼狽した。
更に、それを断定する様にトレインが爆音に塞き止められた言葉を続ける。
「―――――この街が、戦場になるぞ」

145 :AnotherAttraction BC :2006/08/31(木) 11:16:20 ID:+1+rG8Wl0
昨今の世間に一言!
ルパン三世のテーマをリメイクしないで(挨拶)。
いや、俺の中では最高の格好良い歌なんで。
どうも皆さんNBです。文章に気を使い過ぎて随分遅れてしまいました。
さて、次回のAnotherAttraction BCは―――

――――駄目だ、上手い引きが思いつかねえ。
なので手短ですが、第十一話「火蓋」を乞う、ご期待!!

…どうも今回、自慰っぽい文章になってしまった気がしますが、次回からはホント
真面目にやりますので今回はどうか。
さて、この辺で今回はここまで、ではまた。

146 :作者の都合により名無しです:2006/08/31(木) 11:32:46 ID:cFa7LgOD0
久しぶりに乙です。
スヴェンは一気に崩れていきましたね。ようやく自分の愚かさを知ったというのか。
結論が出るのはまだ先…かな。今回の話もまだまだ延びそうですね。
クリード達もまた動き出して、それにまだイヴのことも…ううん、ややこしい。

147 :死因:2006/08/31(木) 13:02:10 ID:P5ScLk++0
 “魔界の神”と下々は呼ぶ。
 絶大な魔力を身に宿す最古にして最強の君臨者、大魔王バーン。
 今日も彼は大魔宮(バーンパレス)にて、玉座に腰を据える。
 彼にはハドラーやミストバーンをはじめ、屈強な部下が大勢いる。動く必要などほとん
どない。彼はただ、時折部下に対する采配を下すだけでよかった。
 ところが、いつの頃からか魔王軍は劣勢に転じ始めた。
 理由はいくらでも考えられる。アバンの使途の存在、続々と起こる部下の造反、人間た
ちのあなどれぬ底力──人類とバーンの差は急速に縮んでいた。

 永らく玉座に落ち着いていたバーンであったが、おごそかにミストバーンに告げる。
「いよいよ余自ら戦うときが来たようだな。……ミストバーン」
「………!」
 めったに言葉を発さないミストバーンが、いつにない雄弁で返す。
「おっ、お待ち下さい! バーン様がわざわざ出向くまでもありません! 次こそダイを、
勇者パーティを抹殺してみせます!」
「もうよい、ミストバーン。奴らの力は予想をはるかに超えるスピードで増してきておる。
余ですら、ここまでの進化は予想できなかった……」
「………」
「だが、今ならばまだ芽を摘み取るのはたやすい……」
「……承知いたしました」
 ミストバーンにとって、主であるバーンの言葉は全てに優先される。大魔王直々の出陣
がここに決定した。

 久しぶりに玉座から立ち上がるバーン。が、その時だった。
「うっ」
 突如倒れるバーン。
 すばやくミストバーンが手を差し伸べるが、どこにも外傷らしい外傷は見当たらない。
 やがて、大魔王はあっけなく息絶えた。
「バ、バーン様! ……一体なぜ!? 人間め、どんな手段を使ったというのだ!」
 バーンの三つの心臓を同時に停止させた要因──エコノミークラス症候群。

                                   お わ り

148 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/08/31(木) 13:02:40 ID:P5ScLk++0
一発ネタです。

149 :作者の都合により名無しです:2006/08/31(木) 18:30:05 ID:95ge2qUw0
>NBさん
お久しぶりです!名職人さんが久しぶりに
登場してくれるとほっとするなあ…他の方も復帰してくれればいいけど。
スヴェンとロイドは、ある意味合わせ鏡のような。もしくはコインの裏表。
過去の傷跡から一気に現在のクライシスまで持っていくのは凄い!

>サナダムシさん
魔界の王の癖にエコノミー症候群か。その辺りの対比も面白い。
しかし、ショートから長編、うんこまで引き出し多いなあ。
急に、しけい壮外伝が読みたくなりました。ゲバルとかいい味だし。



150 :作者の都合により名無しです:2006/08/31(木) 20:40:14 ID:VDOqoTte0
>AnotherAttraction BC 

これで自慰っぽいとかいわれたら俺の文章は…orz
暗い心理描写から、いよいよ爽快なアクションへ展開?
いや、それよりスベンの決着の付け方が気にかかりますね。
ダンディかつメローな、渋いエンドを期待してます。


>死因
バーン様は漫画界で最も威厳のあるお方なのに・・
まあ、お年だからな。
老衰とか、椅子に座りすぎて痔が悪化して即死とかよりマシか。



ルパンのテーマって「おーとこにはー自分のー世界がーある」か?


151 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/08/31(木) 23:44:50 ID:E/78oPjG0
第八十七話「微笑みと死と」

その日、その瞬間、世界各地で異常な出来事が続発した。
ある高名な画家が狂ったように筆を執った。口から泡を吹き、意味を成さぬ言葉を発しながら、彼は突如脳裏に焼きついた
強烈なイメージをキャンバスに描き殴った。
描かれたのは、形容し難き光景。まるで、世界の終わりであるかのような。
犬、猫、鳥、鼠、その他大小を問わぬ動物たちが一斉にけたたましく騒ぎ出し、発狂死した。
まるで、世界の終わりでも感じ取ったかのように。
某国を大地震が襲い、壊滅状態に追いやった。
ある湖が一瞬にして干上がった。
まるで世界が引っ繰り返ったかのような天変地異の数々。

それは<最終>にして<終焉>の名を持つ存在―――グランゾン・F(フィナーレ)がこの世に生まれ出ると同時であった。

「ふむ・・・まさか、この形態を顕現させただけで世界にこれほどの影響を及ぼすとは。計算では、ここまでパワーアップ
する予定ではなかったのですがね。自分で言うのもなんですが、少々強くなりすぎたようです」
シュウは辺り一面の様子に溜息をついた。
見渡す限りの樹海はなくなっていた。グランゾン・Fが現れた瞬間、一気に枯れ果てたのだ。
葉は散り散りになって、残った幹も腐れ落ち、風が吹いただけで粉々になった。
土もまた精気を失い、澱んだ色に変化している。
「馬鹿な・・・アレが存在しているだけで、自然界の法則そのものが歪められている・・・!?どれだけの力があれば、そんな
現象が起こり得ると・・・!?」
アザミが顔色を失い、呆然とグランゾン・Fを見つめる。
「ケッ・・・ビビんじゃねえ。何がグランゾン・Fだよ!俺様がぶっ潰してやらあ!」
USDマンが啖呵を切ってグランゾン・Fに特攻する。音速を遥かに超えた速度で宙を舞い、そのスピードと握力と体重を
存分に乗せた渾身の一撃を頭部に炸裂させる!
「やった!」
歓声を上げるのび太たち―――だが、それに対する答えは、錐揉みしながら吹っ飛ばされるUSDマンだった。
グランゾン・Fはまるで無傷で、逆にUSDマンを殴り返したのだ。
反撃を受けたUSDマンはクレーターが形成されるほどの勢いで激しく地面にぶつかり、瞬時に再び飛び上がった。

152 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/08/31(木) 23:45:28 ID:E/78oPjG0
「ちいっ!んなもんで俺様が参ったするかよ!」
渾身の一撃をあっさり返されながら、それでも心を折られることなくUSDマンが拳を強く握り締める。
防御も後先も何も考えない。USD細胞から得られる全ての力を拳一つに集約させる。
最高のスピード、最良のタイミング、最大のパワー、全てを兼ね備えた究極の拳がグランゾン・Fに叩き込まれる。
それはもはや、神の領域すら遥かに凌駕した一撃だった。
さしものグランゾン・Fも装甲を突き破られ、バランスを崩す。そしてUSDマンがもう一度、超神域の拳を打ち込まんと
した時―――グランゾン・Fの掌が光り輝いた。
「流石ですね・・・はっきり言って、あなたは怪物です。その面子の中においても、間違いなく最強でしょう」
何をしたのかすら分からない。だが、その結果だけは明白だった。
「ですが、このグランゾン・Fの力を持ってすれば、あなたを倒すことすら造作もありませんよ」
USDマンは今度こそ地面に突っ伏したまま動かない。完全に気を失ったようだ。
グランゾン・Fが掌を天に掲げる。繰り出される、知覚不能の攻撃。
それをかわすことなど不可能。受けることもできない。
ただただ一方的に打ち据えられ、全ての機体が沈黙した。
「そ・・・そんな・・・」
のび太は信じられなかった。数々の戦いを、修羅場を乗り越え、自分たちは確かに強くなっていった。
相手がどれだけ強大でも、絶対に負けたりしない―――そう思えるほどに。
そんな自信を、まるで蟻を踏み潰すようにあっさりと、グランゾン・Fは粉々にしてみせた。
やられる―――!?
絶対の恐怖。それは、心に平穏すらもたらす。意外なほどに安らかな心境で、のび太は<死>が訪れるのを待っていた。
だが、それが来ることはなかった。
グランゾン・Fは倒れたロボットたちに背を向けた。
「何を・・・」
「今ここであなたたちを全滅させること―――それは簡単です。しかし・・・それでは駄目だ。それでは、私がここまで
した意味がない」
「意味がない、だって?」
「あなたたちの力は、こんなものではない―――こんな程度であるわけがない。あなたたちの力を全て引き出させた上で、
それを打ち倒す。それでこそ、私は絶対の確信を持って、勝利したと言える」
「・・・・・・」

153 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/08/31(木) 23:46:02 ID:E/78oPjG0
「次に会う時は自分たちに打ち得る手段、戦術、道具、全てを持って全身全霊で戦いなさい―――待っていますよ」
グランゾン・Fが両手を上げる。
空間に暗い孔が広がった。そして、その先に広がるモノをのび太たちは見た。
宇宙だ。
闇が支配する世界だ。
無数の光が煌く星海だ。
―――こことは違う、別の宇宙が広がっていた。
「このまま通常の空間に居座っていては、じきに宇宙そのものが崩壊してしまうでしょうからね―――私の魔力を持って、
新しい宇宙を創らせてもらいました」
宇宙そのものの創造―――もう何でもありか。
馬鹿馬鹿しい。
この世界が物語だとしたら、どんな考えなしの作者がこんな出鱈目なキャラクターとして彼を設定したのだろう。
「入り口は閉じさせてもらいますが、CPSを使えば追ってこれるでしょう―――そうそう、一つだけ、後始末をしないと
いけないことがありました」
シュウは何でもないことのようにそう言って―――次の瞬間、グランゾンが爆破された。
「―――!?アザミ!」
「彼女は私を裏切った―――それも、非情に無礼なやり方でね。その落とし前は付けさせてもらいましたよ」
こともなげに言い残して、シュウとグランゾン・Fが消えた。
広がる沈黙。あまりのことに、誰も声を出すことさえできない。
だって―――そうだろ?こんな、登場人物Aみたいな、全然物語に絡まない、脇役みたいなかんじで、アザミが―――
昔は敵だったけれど、今はぼくらの仲間の、アザミが、こんな―――
こんな―――こんな、物のついでみたいに、殺されるなんて―――!
「アザミ!」
一番最初に我に返ったのは、しずかだった。彼女は自機から飛び降りて、爆破されたグランゾンの元へと駆け寄った。
それはもはやただの残骸―――<機魔王>とまで称された威容の欠片もない。
その中に、アザミはいた。その口元が、微かに動いている。
生きてる―――!
一瞬安堵し―――その直後、声を失った。

154 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/08/31(木) 23:46:33 ID:E/78oPjG0
「ふふ・・・酷い・・・姿でしょう・・・いくら、今の私の身体が、殆ど機械で出来てるとはいえ・・・もう、長く持たない。
自分のことですからね・・・それくらい、分かりますよ・・・」
アザミの身体は胸から下はぐしゃぐしゃに潰れている。喋っているだけで不思議なくらいの損傷だった。
「そんな・・・嘘でしょ・・・ねえ、アザミ!こんなの・・・嘘でしょ!」
しずかの目から涙が零れ、アザミの顔に落ちた。
「いいんですよ・・・泣いて・・・くれなくても・・・そうまでしてくれなくても・・・あなたたちと・・・一緒に過ごした時間・・・
短い間でしたが・・・悪くは・・・なかったですよ・・・」
アザミは苦しげに呻きつつも、そっと笑う。それは彼女が初めて見せる微笑みだった。
よりにもよって、最後の最後で。
彼女はようやく、心から微笑むことができたのだ。
「最後に・・・本当の仲間というものが・・・できて・・・よか・・・った・・・」
アザミの身体から、全ての力が抜け落ちた。もはや生命の鼓動が感じられない。けれどその死に顔は、とても安らか
なものだった。それは、せめてもの救いだったのだろうか。
「アザミ・・・アザミーーーーーーーーー!」
号泣するしずか。ようやく駆け寄ってきた一同はそれを見て、状況を悟った。
しずかの肩に、のび太はそっと手を置いた。それしかできなかった。
「一旦・・・戻って休もう。俺たちの家へ戻って・・・」
稟の提案に、一同は沈痛な面持ちのまま、それに首肯した。
傷ついた心と身体を引きずりながら・・・。

155 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2006/08/31(木) 23:49:19 ID:E/78oPjG0
投下完了。前回は前スレ419より。
USDマンをカマセにするのは自分でも抵抗があったけれど、相手がどんだけ強いか分かりやすく
表現するには、自軍最強クラスのキャラじゃないと駄目かなー、と・・・。
うーん、でもやっぱ拙かったかな・・・。

間が空きすぎたので、今回はレスはお休みで。
悪しからず・・・。

156 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/09/01(金) 00:58:08 ID:Nr0Twx390
第二十四話「調味料の持参はご遠慮ください」

「ねぇ土方さん」
「ああん?」
あれから一ヶ月が経過した。
誰もが「まさか」と思った真選組解散の一件は驚くほどスムーズに話が運び、抗う暇もなく計画は実行された。
「ここの団子、なんかしょっぱくありませんか?」
「……そうだな。きっとマヨネーズが足りないんだな」
松平が近藤に告げ、近藤が当時の局長である沖田に報告した頃には――既に事態は取り返しのつかない領域にまで進展してしまっていた。
幕府からの急な真選組解散通告。強制的に取り上げられた隊服と刀、そして職。
「土方さん、いくらなんでも団子にまでマヨネーズかけることはないでしょうが」
「うるせぇ。マヨネーズはどんな喰いモンにも合うようちゃんと計算されて作られてるんだよ」
昼。
茶店で団子を喰う土方十四郎と沖田総悟のテンションは、驚くほど穏やかなものだった。
身につけた衣装は平凡な和装。堅苦しい黒の隊服ではなく、近所の呉服屋でも売っているようなラフなもの。
別に今日が非番だからというわけではない。もう二度と、あの黒服に袖を通すことはないのだ。
「……土方さん、緑色だった草団子が黄色くなってますぜ」
「…………」
団子は土方のマイマヨネーズによって原型を失い、なんとも脂っこそうな異臭を漂わせていた。
いや、その前に見た目がヤバイ。チューブから搾り出されたマヨネーズは蛇のようにとぐろを巻き、まるでアレみたいになってしまっている。
マヨラーの土方もさすがに食欲が失せたのか、団子の皿を小脇に寄せて懐から煙草を取り出す。
煙草ケースの中身は、一本しか入っていなかった。
「知ってますかィ土方さん? 最近、また煙草が値上げしたそうですよ」
「知ってるよんなことは。ったく、無職の俺らには辛い話だよ」
ラスト一本が惜しいのか、土方は取り出した煙草を再び懐に収める。

――真選組は消滅した。

157 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/09/01(金) 00:58:55 ID:Nr0Twx390
隊服を奪われ、刀を奪われ、居場所を奪われ、職を奪われた。今まで尽くしてきた幕府に、全て。
「やってられねぇよなぁ……天下の真選組が、一転して無職の能無しだ」
「そうですね」
土方のぼやきに、沖田はテキトーな相槌をうった。
真選組隊士は皆、元々近藤の呼びかけによって集まった刀しか能のない侍ばかり。
それがいきなり、生きがいである刀を奪われ、どんな風に暮らしてゆけるというのか。
元副長、元局長である土方と沖田にも例外はなかった。
全てを奪われ、今は貸家住まいで職探しに明け暮れる毎日。
この一ヶ月間。剣術しか取り得のない二人にとって、こんな退屈な日々はなかった。
「土方さん……俺ぁ間違ってたんですかねェ」
「なにがだ」
「真選組の動かし方ですよ」
串に刺さった最後の一玉を口に入れ、沖田は言う。
「そりゃ多少は遊び心があったかもしれやせんが……俺は俺なりに、真選組の局長として頑張ってみようと思ってたんでさァ」
「ほう。そりゃ耳を疑いたくなるような新事実だ」
「でも少しして分かった。やっぱり俺に真選組の頭はむいてねーや。俺らを束ねてくれるのは、やっぱあの人しかいない」
「……気づくのがおせぇ」
「その通りでさァ。なにもかも遅かった。……急すぎたんですよ、あの真選組解散の宣告は」
「イタズラが過ぎたのさ。だから飼い主が怒っちまった。素直に謝って許してくれるような次元じゃなかったってことだろ。あの時はもう、よ」
こんな会話を何度繰り返してきたことか。
真選組が解散してからは、皆己が生きていくのに精一杯だった。
奪われた数々のものは、どれも急ごしらえできるようなものではない。蓄えのない隊士は、何度江戸の夜空で眠ったことか。
「……近藤さんはどこに行っちまったんですかねぇ……あの人がいりゃあ、ちっとは楽しくなるってのに」
「さあな。近藤さんは真選組が解散して真っ先に姿を消しちまったからな……責任感じて雲隠れしてんのか、どっかで女の尻でも追いかけてるのか」
誰もが慕った真選組の元局長、近藤勲は現在行方不明。
何をするでも一緒だった土方沖田の前にも姿を現さず、思い人である志村妙の前にも現れなくなったと聞く。
今はいったいどこでなにをしているのか。

158 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/09/01(金) 00:59:57 ID:Nr0Twx390
「隣、いいですか?」
不貞腐れるように空を眺める二人に、さわやかな声がかけられた。
艶やかな長髪に、沖田にも引けを取らない童顔気味の美形。
柔らかな物腰と長身は、一見して女性とも捉えることが出来る美青年だった。
そして、目を引いたのはその腰元。青年の腰には、一般人がぶら下げてはならないものがぶら下がっていた。
「おいおい、真選組がなくなったからって白昼堂々銃刀法違反かい? 江戸の町も随分と治安が悪くなったもんでィ」
「なんだテメー? ひょっとして攘夷浪士か?」
見た目は好青年だが腰元が物騒なこの男に対して、二人は明らかな疑心の目を向ける。
いくら真選組がいなくなったとはいっても、法律が改正されたわけではない。
廃刀令は依然として有効だし、だからこそ侍が職に困っている。
真選組不在の江戸で刀を所持している輩など、攘夷浪士以外にはありえない。
「やだなぁ。僕をそんな不逞な輩と一緒にしないでくださいよ。それに仮に攘夷浪士だとしてどうするっていうんです? 僕を捕まえますか?」
青年は至ってさわやかに、悪意を持たない顔で二人に接する。
確かに、今の二人の立場ではこの青年を捕まえる理由はない。
「あなた達、元真選組の十四郎さんと総悟さんでしょ? お会いできて光栄です」
青年は承諾もなく沖田の隣に腰を下ろすと、フレンドリーな態度で会話を始めた。
「俺たちを下の名前で呼ぶたぁ酔狂な奴がいたもんだ」
「そうだそうだー。馴れ馴れしいぞー。土方さんが怖くないのかー」
二人は青年を適当にあしらうつもりなのだろう。目線も合わせず、食べ終わった団子の串を片付けながら席を立とうとする。
が、
「……怖くなんてありませんよ。だって、お二人は『元』真選組じゃないですか」
その言葉で、持ち上がろうとした二人の腰が止まった。
「刀はね、研ぎ澄まされてこその刀だと思うんですよ。錆びたり刃こぼれしてたりしたら、使い物にはならない」
ゆっくりと、視線が青年に向く。土方の顔には『鬼の副長』と呼ばれる所以たる迫力が利いていたのだが、それでも青年は屈託のない笑顔を浮かべていた。
「使い物にならないナマクラなんか持ってたって、自分の身は守れないでしょう? その点ではこの国のお偉いさんは賢明だったと思いますよ」
違う、この笑顔は笑顔なんかじゃない。
言うならば敵意を持った笑顔――そう、まるで挑発。

159 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/09/01(金) 01:01:45 ID:Nr0Twx390
「『真選組』っていう使い物にならなくなった刃を捨てて、新しい刃を取り入れた。江戸を守るためにね」
一瞬、青年の顔から笑みが消えた。これが合図だった。
沖田の腕が、青年の顔面に振り下ろされる。団子の串を構えて。
その切っ先が青年の頬に触れるか触れないかの瀬戸際、土方が沖田の腕を抑えた。
「やめとけ総悟。瞳孔開いてんぞ」
「……何言ってんですかィ土方さん。こいつ、明らかに俺たちに喧嘩売ってますぜ」
「わぁってるよ。……けどそれ買うのは、こいつの正体聞いてからでも遅くねぇだろ」
「――さすが鬼の副長、ごもっとも」
青年のその言葉が引き金だった。
茶屋の周囲で鳴り響く、ピーッという笛の音。よく団体が連絡などに使う笛の音と同じものだった。
その笛を聞いてか聞かずか、十秒とかからず茶屋の周囲に男達が群がってきた。
集まった男連中には皆共通点として――『青』の真選組隊服を身につけていた。
「なんですかねィこりゃ。ひょっとして俺たちのファン? 集団コスプレイヤーさん?」
「知るか。ただもしそうだとしら教えてやらなくちゃな。俺たちの隊服は青じゃなくて黒だって」
青の軍団に取り囲まれる土方と沖田。いつもならもっと飄々としていられるのだが、今回に限って珍しく汗などかいていた。
それもそのはず、現れた青服連中は皆二人に向けて――抜刀していた。
「そういえば紹介が遅れましたね」
いつの間に着替えたのか、先ほどの青年が男集団と同じ青の隊服を着て現れた。
刀は、既に抜いている。

「僕の名前は沖田総司。そして彼らは武装警察『新選組』。真選組という鈍った刀に変わる――幕府の新しい刃ですよ」

160 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/09/01(金) 01:03:40 ID:Nr0Twx390
シリアスムード増強、第四部第二話でっす。
今回のお話に登場の沖田総司さんは、数ある新選組漫画の沖田総司さんとはどれも無関係です。
あくまでも一オリジナルキャラとして見てやってください。

今回は語ること少なし。一真でした。

161 :一真 ◆LoZjWvtxP2 :2006/09/01(金) 01:13:51 ID:Nr0Twx390
忘れもの。

162 :近代剣術:2006/09/01(金) 02:10:40 ID:Gvj3yqyA0
 “国盗り”へ向け、いよいよ志々雄一派が動き出す。
 兵たちは全国へ散らばり、精鋭“十本刀”も各々の仕事をこなすためアジトを去った。
 むろん、首領である志々雄も鍛錬を怠らない。
 いくら人を斬っても、決して斬れ味が劣化しない究極の殺人奇剣“無限刃”。日本刀史
上最悪ともいえる得物を手に、志々雄が試し斬りを行う。
 材料は宙吊りにされた死んだ人間。失態を犯し、処刑された雑兵の一人だ。
 
 ──居合い一閃。

 部下は瞬時に胴を両断され、下半身がぼとりと落ちた。
 続けて、斬られた箇所が激しく燃え上がる。壱の秘剣“焔霊(ほむらだま)”は、部下
を斬るだけでなく、鮮やかに火葬まで済ませてしまった。
 だが、当人にとっては不本意な一撃だったようだ。
「ちっ……火力がイマイチだな」
 ちなみに今生じた炎は妖術などではなく、れっきとした物理現象だ。何十何百と人を斬
ってきたことにより、無限刃にはおびただしいほどの人間の脂が染み込んでいる。志々雄
はこの脂を燃やすことによって、秘剣を完成させたのである。
「最近斬ってねぇからな……脂がどんどん減ってやがる。久々に斬りに行くか」
 と、剣を鞘に納めた志々雄に、背後から意見が飛んでくる。
「非合理ですな」
 立っていたのは佐渡島方治。十本刀の一人であり、組織における実務を一手に引き受け
る有能な男だ。
「方治、てめぇ……」包帯の隙間から、鋭い眼光で方治を睨みつける志々雄。
 すると方治はここぞとばかりに舌を回し始めた。
「よろしいですか? だいたい人を斬って秘剣を会得したというのに、今度は秘剣のため
に人を斬るって、本末転倒じゃないですか。いくら日本に人間がいても足りやしませんよ。
我々が“国盗り”を遂行した頃には、日本にいるのは私と志々雄様だけ、ってことにもな
りかねません。別に私は構いませんが、あなたはイヤでしょう? せっかく覇権を握った
というのに、部下が三角マユゲ一人なんて──」
 機関銃のように発せられる方治の弁舌に、早くも志々雄は降参した。
「わ、分かった、もういい。──ならば方治よ、てめぇはどうすべきだと考える?」

163 :近代剣術:2006/09/01(金) 02:11:21 ID:Gvj3yqyA0
「石油です」方治は即答した。
「え……?」
「臭水(くそうず)という呼び名がまだ一般的でしょうか。炭化水素を主成分とする、自
然界に眠る原料のことです。非常に可燃性に富んでいるので、志々雄様にはぴったりでは
ないかと」
 淡々と説明を終えると、すぐさま方治は石油をドラム缶ほどの樽に入れて持ってきた。
「これが石油です。さぁ、さっそく無限刃に染み込ませましょう」
「ちょっと待てよ、方治。本当に大丈夫だろうな?」
 なかなか煮え切らない志々雄を、方治が一喝する。
「志々雄様ッ!」拳を握り、眼を血走らせながら熱弁をふるう。「これから強国を造り上
げようというお方が、そんな弱気でどうするのですかッ!」
「す、すまねぇ。じゃあ、やってくれ」
 半ば押される形で志々雄は命令を下す。命じられた方治は、意気揚々と無限刃を石油に
浸し始めた。志々雄はというと愛刀が改造される様子を終始不安そうに眺めていた。

 懸念はあったが、石油という新たな力を得た“新生・無限刃”は好調であった。
「少し燃えすぎてる気もするが、火力は格段に上がったな。よくやった、方治」
「ありがとうございます」
「これだけの燃料があれば、幻だった終の秘剣“火産霊神(カグヅチ)”を日常的に使え
るかもしれねぇ」
 舞う火の粉。炎を自在に弄ぶ志々雄に、方治は意外にも冷たい言葉で返した。
「非合理ですな」
「なんだと……?」
 怒りをにじませる志々雄の気配を察し、またも方治が神速で舌を稼動させる。
「決して石油も無料(ただ)ではありません。志々雄様の秘剣のためにいちいち石油を買
っていては、我々の財力を瞬く間に圧迫してしまいます。いくら志々雄様が強くとも、今
の主流である資本主義ではやはり金銭は必要不可欠な要素です。私も全力でやりくりして
いるつもりですが、なにぶん何事にも限界というものがあります。そもそも包帯代からし
て結構バカにならない──」
 だんだん耳が痛い話になってきたので、志々雄が強引に方治の口を押さえる。
「よ、よく分かった。とりあえず聞いてやるから、話してみろ」

164 :近代剣術:2006/09/01(金) 02:12:30 ID:Gvj3yqyA0
「火炎放射器です」またも即答であった。
「は……?」
「実は今、戦艦を手に入れるため密かに通じている武器組織があるのですが、どうやらそ
こで火炎放射器という新兵器開発に成功したそうなんですよ。これさえあれば、より広範
囲に火を撒き散らすことが可能です。加えて燃費も極めて良好です」
 だが、今度ばかりは志々雄は納得しなかった。
「ふざけんじゃねぇッ! 俺はあくまで人斬り……火炎放射器なんて下衆な代物、使うわ
けねぇだろうが!」
 鬼をも畏怖させる志々雄の恫喝。が、今回も方治が一枚上手だった。
「志々雄様ッ!」体中に血管を浮き立たせ、歯ぐきをさらけ出して叫ぶ。「日本刀とそう
でないものを明確に区別する基準なんて、この世に存在しませんッ! 広い視野で捉えれ
ば、火炎放射器とて刀になりえるのですッ!」
 鼻息が届く距離にまで顔を近づけてくる方治に、もはや志々雄はなすすべもなかった。
「よ、よし……採用」

 ついに剣を捨て、火炎放射器を得物とした志々雄。もっとも彼は今でも火炎放射器を刀
だと主張しているが。
 燃え盛る火炎が、訓練相手となった部下たちを一気に焼き払う。
「だいぶ使いこなせてきたぜ、方治」
「さすが志々雄様。きっと由美も喜ぶでしょう」
「うるせぇよ」
「では、おやすみなさいませ」
 今日は夜伽を務める由美が不在なため、珍しく志々雄が一人で寝床に入る。
 寝室に安置され、すっかり使われなくなった無限刃。かつては妖刀さながらの血気を放
っていたが、今となっては石油の残り香をかすかに宿すだけ。
「なんつうか、俺……どうなっちまうんだろうな」
 無限刃は答えない。答えるわけがない。

                                   お わ り

165 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/09/01(金) 02:16:31 ID:Gvj3yqyA0
弱い志々雄さんと強い方治さん。

ちなみに私は方治がるろうに剣心では一番好きです。
あと、ゲバルを交えたしけい荘はぜひやってみたいです。

166 :作者の都合により名無しです:2006/09/01(金) 02:18:46 ID:3WB5dqnX0
またもや短編、乙です
というか志々雄が弱すぎるwww無限刃使わない志々雄なんて志々雄じゃないよ!!

167 :作者の都合により名無しです:2006/09/01(金) 07:49:30 ID:dIc9Iqrf0
ダマになって急にくるなあ、バキスレはw

>サマサさん
インフレ前提の作品だから仕方ないけど、やはりもう少しUSDマンには頑張って欲しかったかな?
前作からの重要キャラのアザミはここでリタイアかな?1年以上ご苦労様でした。

>一真さん
流石にシリアスだけあって、個人の戦いだけでなく、組織での戦いもメインになりそうですなー
原作で沖田少しヘタレちゃったから、このSSでも偽者?に苦戦しそうな感じがする。

>サナダムシさん
志々雄と方治、もて王の太蔵と悠みたいな感じだ…w志々雄の情けなさがかわいいですw
ゲバル交えてしけい荘ですかー! 原作ではオリバがゲバルに負けそうだけど、SSはどうかな?



168 :作者の都合により名無しです:2006/09/01(金) 12:43:47 ID:qzaPe7tD0
・NB氏
スヴェンが違う漫画のキャラのようだw黒猫の世界とは思えない渋さw
久しぶりのトレインと、イブの問題と・・。読みどころが多いな

・サマサ氏
ラストバトルが近づくにつれ、インフレと犠牲者が次々と・・
USDマンは人気キャラだからこのまま終わらないと信じてる。アザミは残念だけど

・一真氏
やはり、シリアスには真戦組が絡まないとダメだよね。
しかも本物っぽい名前の新撰組と絡むのか。偽者の沖田の方が風格あるなあ

・サナダムシ氏
前回のバーンといい、今回のシシオといい、ラスボスっぽいキャラを美味く落とすなあw
しけい荘外電楽しみにしてます。シコルに会いたい。

169 :作者の都合により名無しです:2006/09/01(金) 19:57:37 ID:NDYKC8bD0
一真氏はシリアスも書けるんだなあ
ちゃんと原作をトレースしながら二次創作してくって
意味では一番上手い気がする

170 :作者の都合により名無しです:2006/09/02(土) 07:32:40 ID:aSfbEt6L0
うみにんさんやミドリさん、お仕事忙しいのかな・・

171 :作者の都合により名無しです:2006/09/02(土) 20:27:46 ID:8WyGLkee0
もう来られないかもね、お2人とも…
凄くファンだけどな

172 :永遠の扉:2006/09/02(土) 22:31:47 ID:4Wr/e45E0
皆さまは先従隗始(せんじゅうかいし)という言葉をご存知だろうか。
中国は戦国時代に生まれた言葉で、先(ま)ず隗より始めよともいう。
ある国の君主が人材を求めたとき、側近の郭隗(かくかい)という人がこう進言した。

「先ず自分から用いて下さい。私のような劣った人間でさえ重用されていると聞けば、優秀な
者は千里の先からはせ参じる事でしょう」

転じて、『物事は手近な所から始めよ』という意味がある。

姉を守りたいと欲して剣を取り、姉と2人だけで生きるため不死のホムンクルスを目指す。
望みを叶えるために、できうるコトを着々と積み上げる。
早坂秋水の昔の姿勢(スタンス)は、建設的な物だった。
ホムンクルスという単語には非現実的な要素がてんこもりだが、実在し、製法を知る者も少
数ならがにいるとすれば、現実的なモノといえよう。
秋水と桜花がL・X・Eという怪物の寄り合い所帯に付き従っていたのも、功を上げてホムン
クルスへの転身を図るため。
もっとも。
秋水の姿勢は建設的ではあったが、外付け一択の感もあった。
剣の強さもホムンクルスの不死も、秋水自身の精神を大きく変えるモノではない。
大きな力や概念が肉体に宿るだけであり、つきつめれば糊塗……傷を避けるために鎧と
武器を求むる兵のような印象がある。
悪いかどうかは別とするが、少なくても精神的な成長が見込み辛い姿勢ではある。
原因は秋水が幼児期に負った一種の精神的外傷だ。
彼はそれにより世界へ心を鎖し、「世界などもうどうでもいいコト」と諦観していた。
よって他人との関わりを極力避け、交流のもたらす変化を逃していた。
同様に、錬金術の知識を深く収めようとも思わなかった。
知識を収めるのに必要なのは、優れた頭脳でも記憶力でもない。
知識を面白いと思う精神と、面白くなるまで考え続けられる精神だ。
さればこそ探究心や向上心が生まれ、芋ヅル的に能力が上がっていく。
それが秋水にはなかった。
世界に関心がなければ、世界から生まれた知識を面白いと思える道理はない。

173 :永遠の扉:2006/09/02(土) 22:34:18 ID:4Wr/e45E0
学校の授業も、優秀な成績で信頼を得るため棒暗記していたに過ぎず、楽しいと思える要素
はまるでなかった。
もしわずかでも世界に関心があれば、L・X・Eの盟主──100年の長きを友人の再生のた
めだけに費やしてきた1人の男──に師事し、ホムンクルスへ転身する術を学ぼうとしただ
ろう。
(もっともその場合、確実に盟主の怒りを買うが。L・X・Eにおいては盟主のみがホムンクル
スの製法を熟知しており、それが為に彼を頂点に組織は成り立っていたのだ。にも関わらず
秋水が師事を望めば将来的に造反の意思ありと見なされ、悲惨な結果を招いたに違いない。
盟主にとり組織維持と友人の守護はイコールであり、組織を瓦解させる因子は友を害する
憎むべき敵でしかない)

やや余計な話になるが、秋水には「奪う」という概念もなかった。
一度ガラス片を握り締め、「おかねとたべものとおくすり」を道行く者から強奪しようとしたが
あえなく圧倒的な力に軽々と阻止されてしまった。
三つ子の魂百までというように幼児期の体験というのは強烈で、記憶が薄れても無意識下に
残る。終生の好悪を決定づける。
幼い秋水が必死で叶えようとした「奪う」という概念についても同じコト。
いとも簡単に跳ね除けられた瞬間、終生叶わぬモノと無意識下にすりこまれてしまった。

そんな秋水だが、カズキとの戦いを経て少し変わった。
「自分に勝ちたい」と望んでいるのだ。
背後から刺してしまったカズキへの贖罪は、自らに打ち克つコトでしかできないだろう。
では、勝つためには何をすればいいか? 
結論からいえば、世界と関わるコト。
関わって、心を動かし融和させ、何らかの問題にきちんとした解決方法を提示していくコト。
されば内面は成長し、勝利へと結びつく。
そして目標を得た秋水が取る行動は1つ。
先従隗始(せんじゅうかいし)。
近しい人間と少しずつ関わっていくのだ。
それは結局、「望みを叶えるために、できうるコトを着々と積み上げる」という昔の姿勢と同じ。
賛否はあるだろう。
だが、ただ捨て去るだけでは駄目なのだ。

174 :永遠の扉:2006/09/02(土) 22:35:22 ID:4Wr/e45E0
姉との死別を恐れて、人間の身を捨てようとした時と変わらない。
そういう不都合をもたらすモノを排除せんとする考えこそが、過ちの元凶だったのだから。
故に昔の姿勢を保ったまま、精神の向きを変えていくのは重要だ。
秋水が剣を捨てない理由も同じ。

もっともまひろを送ると決意した瞬間は、上記のような成長の希求はまるでなかった。
ただ。
贖罪意識であろうと親近感であろうと、他者──つまりまひろだが──へ向けて感情が沸い
たのならば、秋水はごく自然に世界へ関わろうとしている。
これもまた先従隗始といえる。
兄を失いかけて落胆している「妹」を、姉を失いかけて落胆した「弟」が助けようとする。
立場の近しさをきっかけに、他者と接触し、助力する。
秋水にとってそういう者は、カズキを除いて2人目だ。
望まぬままホムンクルスと化し、鎖された空間で100年を過ごした少女に引き続き。

とまれ、まひろを寄宿舎に送ると決めたはいいが、あいにく秋水のできるコトはそれ位。
道中での会話は実に弾まない。
まず、夜道を1人で歩こうとしたまひろの姿勢を軽く注意した。
「君はもう少し気をつけるべきだ。世の中、いい人間ばかりとは限らない」
乳児時代に誘拐された秋水としては、まひろが同じ目に合う可能性をつい描いてしまう。
元気でマジメだが、人が良すぎるというかボケているというか。
秋水の後ろをトコトコと歩きながら、まひろは双眸をきらめかせた。
「あ! いい人はいたよ」
「どんな」
秋水は振り向かない。
面倒臭がっているのでも、まして「若さって何だ」という問いかけに答えているのでもなく、ま
ひろが横に来ないからだ。
きっと桜花のコトを負い目にし、近くに来づらいのだろう。
と秋水は考えて、距離と位置関係を生真面目に維持している。
だがまひろはそこまで細かく考えて後ろにいるワケではなく、なんとなくだ。
闇に浮かぶ剣道着の後姿を眺めるのがなんとなく気に入ったので、後ろにいる。

175 :永遠の扉:2006/09/02(土) 22:36:08 ID:4Wr/e45E0
「つばをね、ビンいっぱいに入れるだけで5千円くれた人! それで私はお兄ちゃんの16歳
の誕生日プレゼントを買ったんだよ!」
喋る間にも、2人の影は学校からだんだん遠ざかっていく。
あたりはとても静かで、鈴虫の鳴き声に混じって犬の遠吠えが遠くから響いてくる。
秋水はやや黙り、やがて薄暗い住宅街にさしかかった頃、
「そうか」
とだけ呟き、「いい人」の部類に見当をつけた。
(恐らく研究者。実験用の唾液を回収していたのだろう)
世界を知らない秋水だから、心底そう思っている。
桜花が御前経由で知ったら呆れるコト間違いなしだ。
そして5千円くれた人の出没場所に行き、ビン入りの塩水を自分の唾液と偽って売るのだ。
「ところで秋水先輩。転校生ってひょっとすると、さっきの金髪の人?」
声をかけた男は十字路で立ち止まり、左右を念入りに確認中だ。
右方向で大小2つの人影が歩いている位で、車の心配はなさそうだ。
なお、金髪の人というのは校門前で遭遇した総角主税(あげまきちから)のコト。
「違う。確かに総角(あげまき)の趣味の1つは転校だが、彼じゃない。姉さんがさっき君にい
った転校生は女性だ」
車のないコトを確認すると秋水は十字路を早く渡るよう手振りをした。
素っ気ない挙措だが、まひろの頬はちょっと綻んだ。
学園一の人気者に安全確認をして貰えるのは、かなり嬉しい。
「そーいえば。足長おじさんの娘さんっていってたような……ちなみに総角さんはどんな人?」
やや苛立ちの見える足運びで道路を渡りきると、秋水は振り返った。
「……仲間と一緒に、放浪している男だ。それから、初対面の相手には必ずこう聞く」

『この顔を見なかったか? 俺よりちょっと老けてると思うが』

「うん。確かに聞かれたけど……なんで?」

「俺も知らない」
まひろの道路横断を見届けると、白い剣道着はまた背を向けた。
その大きな背中を見た瞬間、まひろはドキリとした。

176 :永遠の扉:2006/09/02(土) 22:42:20 ID:4Wr/e45E0
(同じだ)
寂しさをはらんだ心地よい記憶が沸いてくる。
ずっとずっと前の春の夜。
まひろはカズキに手をつかまれて、学校から寄宿舎までの道のりを半ば引きずられるような
形で爆走した。
(あの時と同じ景色……)
違うのは、前を歩く背中だけ。
でもその背中は、カズキと形は違えどまひろを気遣っている。
悲しいような嬉しいような複雑な感情に、まひろは慌てて立ち止まる。
真っ黒な瞳がしゃばしゃばに潤んで、無事に歩ける自身がない。
(どうしよう。止めないとまた秋水先輩が心配──…)
「いつになるか俺には保証できないが」
「え?」
秋水の声は生真面目ゆえに装飾がなさすぎて、ぶっきらぼうにも聞こえる。
けれどぞんざいな調子ではない。心から語りかけている。
「彼は必ず戻ってくる。君の元へ戻るコトを諦めたりはしない」

──今度は少し長いお別れになるけど、必ず帰ってくるから心配するな

カズキがそういい残した時から、心は「長いお別れ」という単語に揺らされている。
(でも……必ず……必ず帰ってくるって約束してくれたんだよね…… なのに、どうして信じて
あげられなかったんだろう………ごめんね。本当に、ごめんね。お兄ちゃん……でも、早く
帰ってこないと、斗貴子さんが寂しいよ)
俯いた顔から熱い雫がぽたぽたと落ちて、道路に染みる。

秋水は、しばし足を止めていた。
気配から心情を悟り、とっさに励ましてみたものの……忸怩たる思いだ。

その頃。

右に300m進んだ所にある曲がり角では、先ほど秋水が見た2つの人影による会話
が繰り広げられていた。

177 :永遠の扉:2006/09/02(土) 22:43:26 ID:4Wr/e45E0

「あ〜あ。集合場所変更か」
「………」
「演技派なのはいいけど、逃げる時ぐらいさっさとしてよ。ガラス割るハメになったじゃない」
「………」
「戻ったらちゃんと言い訳しといてね。うまくやらないと計画が狂うから」
『とにかくもりもり氏に連絡だ!! 桜花の台詞ではそう遠くない所にいるっ!』
「ま、犬の遠吠え聞けば察しはついてるでしょうけど」
『うろついてるあの人にも連絡だぁ!』

しばらく後、秋水とまひろは寄宿舎門前に到着。
古めかしい2階建ての和風家屋で、昭和時代の寮といった佇まいだ。
ここでまひろを始めとする銀成学園生徒のほとんどが暮らしている。
夜遅い時間だが、幸い門は開いていたので2人は難なく玄関に入るコトができた。
立ち並ぶ4段重ねの下駄箱の前に、木製スノコが無造作に置かれているのも何とも昭和風。
奥の方に備え付けられた2段ばかりの階段で廊下と行き来する構造だから、やや面倒でも
ある。
で、まひろは自分用の下駄箱に靴を入れ、秋水が何か迷っているのに気づいて微笑んだ。
「あ、お客さん用の下駄箱ならそっちだよ」
秋水は礼を述べると、指し示された一角へ歩き、靴を入れる。
この挙動を見ても分かるように、彼は寄宿舎に住んでいない。桜花も同じく。
にも関わらずここに来た理由は、管理人に用があるからだ。
剣道で鍛えているだけあり、流石に秋水の動作は速い。
踵を返すなり玄関を通り過ぎ階段を上り、廊下へ上っていた。
まだスノコの上のまひろは、驚くやら感心するやらで表情の動きがせわしない。
「もし良かったら案内するよ」
「もう夜も遅い。部屋に戻って休むべきだ。場所はこっちで聞いておく。それと、すまない。さっ
き余計なコトを──…」
深々と礼をされて、まひろはあたふたした。
「えと」
汗を浮かべながら目を白黒させ、必死に言葉を探すのだが。

178 :永遠の扉:2006/09/02(土) 22:44:22 ID:4Wr/e45E0
友人曰く「ユラユラ揺れてる」まひろ脳ではとっさに器用な言葉を紡ぎ出せず、表情の焦りは
ますます拡大中だ。
秋水はけして悪事を働いたワケじゃないしむしろ自分の方こそ泣いたせいで2度も秋水を待
たしたワケで……などという情報をまひろ脳は、消してリライトして起死回生リライトして全身
全霊をくれよとばかりにゆだっていき。結果。
動揺によって脳から分泌された脳内麻薬か……
そこに立つ秋水が下げた頭によってもたらされた罪悪感。
そしてその昂ぶりから形造られてしまった化学物質か……
あるいはそれら全てがまひろの内部で出会ってしまい。

化 学 反 応 を 起 こ し ス パ ー ク !

ガゼルを襲うライオンのような勢いで、段上の秋水へ突進し、二の腕をつかんで叫んだ。
「さっきのは屋上と違うよ!! 悲しかったんじゃなくて、嬉しかったからッ!!」
今度は秋水が驚く番だった。
袖の生地がみしみしいうほどの握力で握られたコトもだが(さっき顔のインクを拭った小さな
指がウソのような力だった)、面と向かって嬉しいなどといわれても返答に窮する。
良かったなとか良かったねとか、そういう親しげな言葉は抵抗があるし、堅苦しい言葉も雰
囲気にそぐわない。
(この気迫と臆面のなさ、さすが武藤の妹)
力いっぱい目を見開いて、眉を逆ハにいからし頬に汗を少々。
まひろの顔にカズキの面影がありありと見える。
けどンな感心やらオーバーラップやら、打開策にならねぇよ。
礼をしたままの姿勢で二の腕を掴まれたから、身を起こせず困惑顔で呟くのが精一杯。
「い、いや。それならいいんだが、力を……」
「あらあら。もう仲良くなってる。でももう夜も遅いからあまり騒いだらダメよ」
背後から掛かった声に秋水は息を呑み、まひろも素っ頓狂な声を上げた。
「お…桜花先輩!? どうして廊下(ココ)に!」
「どうして寄宿舎(ココ)にって。ブラボーさんに会いにだけど」
長身の黒髪美人はしれっとした様子で2人を見比べた。
視線を浴びるとまひろは慌てて秋水から手を離して、真っ赤な顔で「ごめん」と謝った。
(そうか)

179 :永遠の扉:2006/09/02(土) 22:46:30 ID:4Wr/e45E0
秋水は胸中で納得した。
十字路でまひろの涙が収まるのを待っている間に、桜花は2人を追い越したのだろう。
実際その通りで、警備会社がかけつけるなり顔面蒼白でガタガタ震えて、色々な不審点──
なんで夜遅くに制服で学校にいるのとか色々──を涙と立場と弁舌を縦横に利用しごまかし
て、あまつさえ車で寄宿舎まで送ってもらった。秋水とまひろの歩いていたのとは別ルートで。
一応、警備会社の人に悪い気がしたので、お礼の手紙とせんべいでも送ろうかと思案中だ。
ちなみに秋水。
うろたえるまひろより、桜花のコトを気にしているあたりはまだまだ昔と変わらない。

「とにかく、秋水先輩桜花先輩。今日はありがとう。おやすみなさい」
「ああ」
「ハイ。おやすみなさい」

まひろはお辞儀をすると、寄宿舎の中へ走っていった。
道中。
(しまった。転校生の名前聞き忘れちゃった。また明日にでも聞かないと)
と後悔しつつ。

後悔といえば桜花も同じくだ。
秋水とまひろが仲良くなるのを望んでいたが、いざその光景を見ると、少し胸が痛んだ。

少し前までは、二人ぼっちの世界で生きていた。
閉じた世界の中で秋水はひたすら桜花を守ろうとして、濁ったモノ総てを引き受けていた。
だから桜花は申し訳なく思っている。
「ある一言」を発しなければ、秋水はもっと違う道を……と考えるコトもある。

──先輩たちだって今夜の、この夜がきっかけになって
──二人ぼっちの世界から、新しい世界が開けるかも知れないんだ。

(そうなったら、いいけど)
カズキの言葉と、まひろを見つけた時の花の匂いがオーバーラップする。
入院中の桜花が花束の香りに涙を浮かべた時のように。

180 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/09/02(土) 22:47:44 ID:4Wr/e45E0
もし秋水が誰かと仲良くなれば、その分桜花からは離れていくだろう。
彼の世界が開いて、桜花も1人で立てるようになるのが理想ではある。
それでも、ずっと続いてきた距離が広がるのは寂しくもある。
(私って損な役回りね)
内心で物憂げに呟いた。
思い返せば、世界が開き始めて以来、2度も激しい痛みを味わっている。
それも、秋水以外に発動した良心のせいで。
1回目は秋水のつけたカズキの傷を、エンゼル御前の切札で請け負った時。
2回目はエンゼル御前が、真剣白刃取りをしくじった時。
その相手は──…

ギザギザに逆立った頭髪から三角形の前髪を顔半分へ下ろし、猛禽類的な三白眼を常に
光らせている。
彼は平素マフラーを愛用しているが、それは寝巻きを着てても同じらしい。
入院時、メガネをかけた看護婦とマフラーをめぐって揉めたというが、本題ではないので省く。

彼──根来忍は入院2日目の大半を、紙屑や同僚と共に過ごしていた。


※ ここから後書き
というワケで次回はネゴロの事後処理を。
ネゴロといえば、前々号あたりのネウロのサブタイ、潜【もぐる】。
ネゴロ序盤で同じのを使っていた自分としては、本家本元の感性に近づけたと嬉しい限り。
これでデビルークの叛旗兵verの春菜を本誌で見れたらもっと嬉しいけれどもあっちゃならないコトですね。

>>79さん
舞台設定と状況説明、あとメインどころの顔見せをしただけで気づけば約30レス……
行く末を思うと、果てしない気分になります。桜花はしばらく、戸惑いながらも秋水とまひろを
あったかく見守る方向です。彼女を軸にしたエピもあるのですが、描くとなると果てしなく。

181 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/09/02(土) 22:48:55 ID:2YzxowSz0
>>80さん
るろうにの1話からずーっとファンをやってるので、やっぱり好きの度合いは大きいみたいです。
敵だった頃の桜花はそりゃもう、初登場時の良い生徒会長振りがウソのように黒い言動を。
良心を誰にも向けなかったらザボエラ的な末路を辿っていたかも。クロコ役は斗貴子さんで。

>>81さん
残り2つの数値を見ていただければ、その落胆は裏返るかも。生々しくて良いとかどうとか。
秋水とまひろの原作での接触は、3巻の最後ぐらいでしょうか。兆候はアリかも。
フフ。好きですよ。わずかな描写を、「司馬遼太郎的・こうであるべき理論」で膨らませるの。

>>82さん
何を描いてるんだってジョニィが突っ込んでくるでしょうが、そこをガツンだ! (順に身長、体重、B・W・H)
まひろ 161 49 85・59・88 桜花 167 50 88・60・89 千歳 169 47 85・57・88
あと、日常生活でうら若い女性の気配に触れる度、それをまひろに反映できないかと常々考えとります。

ふら〜りさん
ほら、マンガに出てくる不良って子犬蹴れないじゃないですか。桜花もそんな感じかな〜と。
さてさて。起伏が欲しかったので急遽盛り込んだ敵襲ですが、桜花はてきぱき順応してくれて
助かりました。冷静な対処具合は確かに根来と似ていますね。倫理より実利重視な所も。

>壊す拳と護る拳(ゾエビのセリフ、メモリアルが駆け抜けてゆきそうな。てか、定番なんですかw)
相手の尊厳とか抗いとかをぐしゃぐしゃに踏みにじるゾエビ、良いです。やはり人外はこうで
なくては! 破滅的で改心の余地がなければないほど、立ち向かう人間の勇気や素晴らしさ
が際立つってもんですよ。泥臭くて血へどまみれの戦いは、想像するだにそそられるモノが。

182 :作者の都合により名無しです:2006/09/03(日) 14:46:29 ID:qE3LO5Li0
そういえば、秋水と桜花はおぞましい過去を経験してるんでしたね
この2人が他の人間と壁を作るのは、その辺りの事からでしょう。
トキコの過去と重なるな。
でもまひろといい、カズキといい、平気で踏み込んでいくからなw

ネゴロの話楽しみにしてます。

183 :壊す拳と護る拳:2006/09/03(日) 18:01:47 ID:ayjYIqIv0
>>134
姿勢を低くした一歩が鋭く頭を振って、猛牛群の突進の如き連打を叩き込む。
その後ろから間柴が死神の鎌を、左拳のフリッカーを雨よ霰よと連射する。
……が、それでも当たらない。一発たりともゾエビの体には届かない。さすがに両手と、
若干の体捌きを使ってはいるものの、間柴と一歩の全てのパンチを掠らせもしない。
「これはこれは・古代の・拳闘士たちとは・違うな・技術が・洗練されている」
ゾエビは感心した面持ちで二人の拳を捌き、かわし、打ち落す。
「だが・彼らと比べれば・お前たちは・まだまだ・気迫が足りない・
1敗すれば・イコール死・そんな彼らと・比べれば・甘い・甘過ぎる」
「ふざけるなっ! 今のオレに、甘さなんざねえ!」
激昂した間柴が、大きく踏み込んで一歩と並んだ。いや、一歩を肩で突き飛ばした。
自身のスタイルを忘れ、怒りのままに拳を振るう。間近にゾエビの顔を睨みつけながら。
「オレが死のうが幕之内が死のうが、お前さえ殺せればいい! 何が何でも久美を護る、
それしか考えてねえんだ今のオレは! ……休むな、幕之内!」
「は、はいっ!」
ちょっと怯んでしまった一歩だったが、何が何でも久美を護りたいのは一緒だ。
開戦直後は縦に並んでいたが、今度は間柴と一歩が横に並んでゾエビに連打を浴びせる。
だがゾエビは変わらず涼しい顔。いや、少し不満げに眉を寄せた。
「拳闘士たちは・他人を殺すことで・自身の命を・維持するのが・日常・その彼らと・
比べれば・今のお前たちなど・ただの・無我夢中・ただの・ヤケクソだ」
そもそも比べるのが間違いだったと言わんばかりに、ゾエビの裏拳がつまらなさそうに
振られる。それを横っ面に喰らった一歩が、よろめいて片膝をついた。
低く落ちた一歩の頭、後頭部。それを砕かんとゾエビの拳が振り下ろされる。
「させるかっ!」
一歩の上からゾエビ、そのゾエビの上から間柴が拳を放った。フリッカーと並ぶ
間柴の主武器、右拳の打ち下ろしチョッピングライトである。
標的が高い分、ゾエビ→一歩よりも、間柴→ゾエビの方が明らかに速く着弾する。どうせ
まともに喰らっても大したダメージにはならないだろうから、ゾエビは無視できるのだが、

184 :壊す拳と護る拳:2006/09/03(日) 18:02:26 ID:ayjYIqIv0
『……こんな奴ら相手に・掠り傷一つでも・負うのは・バカバカしい』
ゾエビはとりあえず一歩への攻撃をやめ、後退しようとした。
が、その時突然、一歩が跳ね上がった。ボクシングでは起こりえない状態、片膝を地面に
つけて体を一番縮めた状態からの爆発的な跳ね上がり、大地からの反動を利しての
アッパー。一歩の得意技ガゼルパンチ、その最大威力バージョンだ。
身長差があるので最初からアゴは諦めてボディを狙ったのだが、それが幸いした。もう
間柴の方に視線を移していたゾエビからは完全に下方が死角となった為、初めての
クリーンヒット! ゾエビの鳩尾に一歩の、全身をフルに使った渾身の拳が叩き込まれた。
並のボクサーならダウン必至、素人ならそのまま気絶しかねない一撃。だがゾエビは
僅かに揺らいだだけで、呻き声一つ上げずに平然としている。
『そ、そんな……!』
一歩は眼前の光景を信じることができない。間柴も同じだったがこちらは一歩のように
呆然としたりはせず、チョッピングライトを躊躇わず打ち下ろした。
ゾエビはそれを、体を逸らせて軽くかわす。いや、かわすはずだったが一歩の一撃で
体勢が崩れていた為、かわしきれなかった。逸らした状態の、腹の辺りに間柴の拳が
僅かに掠る。
「……グ・グッ」
ゾエビが少し、ほんの少しだけ息を詰まらせたような声を出した。そして数歩、
大きな歩幅で二人から離れる。
一歩と間柴の全力ラッシュ、二人の必殺技のコンビネーションすら、結局はゾエビに
ダメージらしいダメージを与えられなかった。胸の中で広がっていく絶望の黒雲を
ムリヤリ抑えつけ、二人は再度ファイティングポーズをとる。
「や、やっぱり強いですね、あいつ」
「んなことは、前にやりあった時から知ってる。だが奴が強かろうが弱かろうが
関係ねえ。オレたちは奴を倒して久美を護る、それだけだ」
「もちろんですっ!」
改めて誓いを交わし、闘志を奮い立たせる二人。そんな二人を見て、ゾエビは。
「ふん・いいだろう・お前たちに・少しだけ・名誉をやる」
「何?」

185 :壊す拳と護る拳:2006/09/03(日) 18:04:22 ID:ayjYIqIv0
「この私が・本気で・相手をしてやろう・真の・姿でな・今以上の・圧倒的な・
力の差を思い知って・絶望の底の底というものを・味わうがいい」
ゾエビが、何か大きなものを掲げるように両腕を上げる。と同時にゾエビの体が、
衣服まで巻き込んで劇的な変化を始めた。
鈍い光に包まれたゾエビの細い体が、明らかに異質なものへと変化していく。薄っぺらな
黒いラバースーツが沼に沈み込むようにして消え、代わりに重厚な赤い鎧が
出現してきて……ほんの数秒で、ゾエビはその身の変質を、すなわち「変身」を終えた。
今のゾエビは、頭から爪先まで真っ赤だ。見るからに硬質な鎧、いや、外骨格。甲羅だ。
生物的なカーブを描く、まるで貝殻のような真紅の甲羅の装甲が体を覆っている。顔も
例外ではなく、もう人間の面影はない。二本の足で地上に立つ甲殻生物だ。
「待たせたな・これが私の・真の姿・リントに見せたことは・殆どない・光栄に・思え」
言いながら、ゾエビはゆっくりと歩いてきた。今度は素人構えすらせず、ただ漫然と
歩いているだけ。隙だらけではある。が、
「こ、このバケモノがっっ!」
間柴が走った。拳大の石を両手に拾い上げて振り被り、叩きつけるようにワンツー! が、
石の方があっさりと砕け散った。ゾエビの装甲、甲羅には傷一つついていない。
吼えながら間柴がも今度は蹴りを繰り出す。遅れて一歩も駆けつけ、全力ダッシュで
肩から体当たりを食らわせた。
が、やはり効かない。まるで巨岩のような硬さと重さのゾエビに、むしろ
攻撃してるこちらの足や肩が痛めつけられるだけだ。
……状況が一変してしまった。これは到底、拳で殴ってどうこうできるものではない。
そんなことをすれば、拳の方が一撃で砕け散るのは目に見えている。
たとえメリケンサックなどがあっても、いや、斧や鉈を全力で振るっても、果たして
傷をつけられるかどうか?
ただでさえ、一発掠らせるのに悪戦苦闘しているというのに……!

186 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2006/09/03(日) 18:08:25 ID:ayjYIqIv0
来る時は一気に来るのがバキスレ。ギャグありシリアスあり、長編あり短編あり、
強敵で絶望ありラブコメで和みあり、漢あり乙女あり、燃えあり萌えあり。
こんなに幅広い魅力の連載陣を抱えてる雑誌が無料配布とは、ありがたいことです。

>>NBさん
おそらく連載開始以来最大のイベント、スヴェン改心。どう締め括るかと思ってましたが、
>スヴェンは彼を無知無能と嘲笑っていた。
>何処までも愚かなのは、スヴェン一人だった。
この辺が流石ですね。単に甘々人道論で感動で改心ではなく、この時点ではまだ裏返り
きっていない黒スヴェン自身の流儀で打ちのめされてそこから、と。後はイヴが心配……

>>サナダムシさん
死因
本体の若さを保つために所持している仮の老体が死因になってしまうとは、どうしようも
なさ過ぎる皮肉ですな。戦闘能力がいくら高くて不敗でも、死ぬときゃ死ぬ。真理です。
近代剣術
二人とも可愛い! 常識人が常識を力説してるはずが、いや確かに間違っちゃいないけど
何か違う、でも反論できない。でも刀って名は譲らない。いつか会う剣心の反応や如何に。

>>サマサさん
スゲェ、と呟いてしまう凄さ。強さにおいて今のドラチームを越えるってそう簡単には、と
思ってましたが「強さ」の枠を越えてますね。普通は神のような強さってのは凄く強い奴、
USDマンみたいなのを指しますが今のシュウは神そのもの。応戦手段が思いつきません。


187 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2006/09/03(日) 18:09:47 ID:ayjYIqIv0
>>一真さん
職というよりも生きがいを失っての喪失感、自分と仲間たちを侮辱されての怒りっぷり、
>責任感じて雲隠れしてんのか、どっかで女の尻でも追いかけてるのか
兄貴分(?)に対する冗談か皮肉か本気かの呟き。どれをとっても、決してカッコ良くは
ないけどある種の男らしさがありました。覇気は秘めてることを明かした彼ら、どう動く?

>>スターダストさん(気づいて下さって嬉しい。通ですな。秋水は振り向かず躊躇わず)
やっぱりまひろ、可愛いなぁ。けどまひろは秋水と過ごす時間を嬉しく思っている様子が
あるけど、秋水の方はまだまだ。その辺りの秋水の変化というか成長も、今後の見所か。
にしても根来も秋水もついでに久世屋なんかも、美女に対して頬が緩まない連中ですな。


188 :作者の都合により名無しです:2006/09/03(日) 23:07:30 ID:424hPna10
スターダストさんの永遠の扉、まひろと秋水がうまくまとまるのか楽しみだ。
桜花は本当に応援しているかどうかわからないな。何気にバキネタが入ってて笑った。

ふらーりさん、いつもお疲れ様です。
ゾエビてのがマジで何かわからんけど、一歩と真柴のコンビがどう立ち向かうか楽しみです。


189 :作者の都合により名無しです:2006/09/04(月) 08:01:49 ID:QX45Tr7I0
・永遠の扉
俺はまひろと秋水より桜花の方が気にかかるな
作中一番美人と思うし。
桜花に似合いの奴って原作でいなかったなぁ

・壊す拳と守る拳
なんかもうすぐ終わりそうだなw
一歩が決め役なんだろうけど、真柴が一歩と妹を認める所とかあるのか?

190 :作者の都合により名無しです:2006/09/04(月) 20:26:49 ID:cfOkhvLN0
来る人が固定になっちゃたな。勿論、素晴らしい事だけど。
来ない人も固定になってしまったし

191 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/09/04(月) 20:30:14 ID:2oOLXTmv0
第二十五話「類似品にご注意下さい」

「どう見ますかィ、土方さん?」
「なにがだ」
逃げる。
黒服と牙をもがれた獣が、青を掲げる正義から。
「何って、あの連中についてですよ」
「そうだな……個人個人の動きはいい。統率も取れてる。だが、どうにもこの町の地理を把握しきれていないようだ。……大方、どっかから招集した他所者だろうな」
元真選組の二人――土方と沖田は、現在『新選組』なる青服の集団に追われている。
理由は不明。だがこんな白昼から事を起こすくらいだ。それ相応の名目あってのことだろう。
となれば――
「捕まればただじゃすみませんよね、コレ」
「分かってんなら無駄口叩かず走れ。地の利はこっちにあるんだからよ」
逃走劇を繰り広げる舞台は、江戸の町。
土方や沖田が普段巡回していた町並みは正にホームグラウンドといえ、全力で疾走しながらも的確に逃走ルートを割り出し、無駄なく新選組を引き離している。
茶屋で二人を襲った青服の集団、新選組はというと、おそらくまだこの町になれていないのだろう。
土方たちが選択する入り組んだ経路に四苦八苦していた。
このままの調子でいってくれれば、あの集団を煙にまくことも容易のはず。
だが、

192 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/09/04(月) 20:31:20 ID:2oOLXTmv0
「!」
差し掛かった路地の曲がり角。
その影から、躊躇いのない真っすぐな刺突が繰り出された。
「て……めぇ!」
土方の鼻スレスレで刺し貫かれたそれは、紛れもない『侍の刃』。
常人では避けきることなど不可能だったろう。相手もそれを分かって仕掛けたのだ。
「危ないなあ……こっちも考えて手加減してるんですから、下手に避けたりしないでくださいよ。もし誤って心臓でも貫いちゃったらどうする気ですか? 僕が副長に怒られちゃいますよ」
他意のない笑顔で姿を見せたのは、追撃者の証である青の隊服。
茶屋で出会ったあのいけ好かない青年――新選組の沖田総司だった。
「どうやら追いつかれちまったみたいですねィ」
「ああ。こいつら、俺たちを追いつめるためにわざとここまで誘導してやがったんだ」
周りは総司だけではない。一匹見つけたら十匹はいるというあの虫のように、続々と新選組隊士が集まってくる。
あっという間に集結した数人の隊士によって、円形に囲まれる土方と沖田。
辺りは江戸の町でも特別人気の少ない空き長屋の裏路地――狼藉者を確保するには、最適の場所といえた。
「……てめーら、いったい何者だ? 俺たちを捕まえてどうしようってんだ」
「言ったでしょう。僕らは武装警察『新選組』。真選組に変わる、幕府の新しい刃ですよ」
土方の質問に、総司は茶屋の時とまったく同じ答えで返した。
「つまり、俺たちの後任ってわけですかィ。しかし分からねえな。だからってなんで俺たちが狙われなきゃならないんでィ」
「それは言えませんよ。僕は副長の命令で動いているだけですから。命令内容については他言無用なんです」
総司は沖田の問いにも笑顔で返し、口元でばってん印をつくって「ダ・メ」と口にした。
このアクションが妙にカンに触った。
「土方さん……俺ァ、今胸の奥底でどす黒い感情がエクストリーム真っただ中なんですがどうしましょう」
「奇遇だな。俺も心になんか芽生えそうな感じだよ。なんかSっぽい種子が弾けそう」
幕府の命令は絶対。一ヶ月前までは幕府に使えていた二人だ。もちろんそんなことは知っている。
だがしかし、今の自分たちは幕府とは無縁。だからこそ、捕まってやる理由もない。
だがしかし! 今がピンチであるということには変わりない。
だがしかし!! 簡単に捕まってなどやるものか。
だがしかし!!! 打開策がまったくないことも否定できない。


さて、どうしよう――

193 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/09/04(月) 20:32:26 ID:2oOLXTmv0
「副長、沖田隊長、逃げてください!」
絶体絶命打つ手なしと思われた二人に――救いの女神が現れた。
「ぶほっ!?」「くそっ、なんだこれは!?」
声と共に、土方沖田を囲う輪に煙玉が放り込まれた。
瞬時に巻き上がる煙幕は新選組隊士の視界を遮り、土方と沖田の拘束を困難にさせる。
「大丈夫ですか二人とも!?」
「山崎!?」
救いの女神の正体は、全身を黒の忍者装束で包み込んだ元真選組監察(密偵)、山崎退だった。
「おい山崎! こりゃあいったいどういうことだ!?」
「俺にだって分かりませんよ! 分かりませんけど、真選組の仲間があちこちでこいつらに捕まってる! 残ってるのは、多分俺たち三人だけです!」
煙幕の中、山崎から驚きの報が届けられた。
「俺たちだけって、近藤サンまで捕まっちまったっていうのかよ!」
「それも分かりませんよ! ただあの人は真選組がなくなった直後にいなくなったから……ひょっとしたらそのときにはもう……」
なんてことだ。
あまりの出来事に、土方と沖田は逃げることも忘れ、その場に立ち尽くしてしまった。
周囲を煙幕が覆っているとはいえ、敵はまだそこら中にいる。このまま棒立ちでいるのは――
「――それは、命知らずのやることですよ」
「――!」
煙の外側より、刃が一閃。
「危ねえ!」
沖田の脇腹を狙ったそれは、山崎の繰り出すクナイによって弾かれた。
ギリギリもいいところ。今の一瞬のピンチで目を覚ました土方と沖田は、即座に体制を立て直すが、
「土方副長! 沖田隊長! ここは俺に任せて、二人は逃げてください!」
「な!? ふざけんな山崎!」
山崎の自身を犠牲にした申し出に、土方はすぐさま拒否を示した。
「お願いだ! 二人まで捕まっちまったら、それこそ真選組は終わりだ! だから、だから……」
それでも、山崎の意志は強い。
よく仕事中にバドミントンをやって怒られたっけ。仕事でミスしたときは人間バドミントンとかやらされたっけ。
あれ? あんまりいい思い出がないぞこの人たちには。いや、それでも。

194 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/09/04(月) 20:33:11 ID:2oOLXTmv0
「お願いだァァァァァ!! 二人ともォォォォォ!!!」
「山崎……」
土方と沖田はそれ以上何も言わず、拳を握りしめたままその場を去ることで、山崎の誠意に応えた。
「おい総悟! いったん二手に別れるぞ!」
「がってん!」
煙幕から抜け出て、二人の生き残りたちが遠ざかっていく。
後に残されたのは、監察(密偵)一人のみ。
「それでいい……それでいいんだ二人とも……」
「あちゃー、逃がしちゃったかぁ。こりゃ副長に怒られるなぁ間違いなく」
次第に煙幕は晴れ、山崎はその姿を新選組の前に晒すこととなった。
「元真選組監察(密偵)山崎退……随分と面倒なことをしでかしてくれましたねえ。大変なんですよ、副長の新技の実験にかかるの」
「……」
ぼやきながら山崎に刃を向ける総司。対して山崎は、一歩も引かずにクナイを握りしめていた。
「ひょっとして、僕らとやるつもりですか? やめた方がいいですよー。僕たちみんな、真選組のみなさんより強いから」
総司は余裕の表情。汗を垂らしながら機会をうかがう山崎を嘲笑うかのように、笑顔で接してみせる。
「それに……僕はあなたよりも強い『山崎クン』を知ってますよ」

――そこから、山崎の世界は止まった。
よ」――このタイミングで抜かれた神速の刃が山崎を襲ったのだ。
断末魔の悲鳴を上げることもなく、負け惜しみを言う暇もなく、山崎退は、地に伏した。

195 :一真 ◆LoZjWvtxP2 :2006/09/04(月) 20:35:36 ID:2oOLXTmv0
ギャ、ギャグがねぇ……。
一番驚いているのは自分です。

逃亡した土方と沖田。
次回ですが、二人は少しお休み。
真選組騒動については少しばかり間があく予定です。

というわけで、次回は久々に銀さん登場。
銀八先生ではなく銀時の方の銀さん。ホント何日ぶりの登場だろう。

次回は少しギャグ分もあるはず。
それでは。一真でした。

196 :作者の都合により名無しです:2006/09/04(月) 22:10:23 ID:cfOkhvLN0
いや、最後だからこのままシリアスで行ってくれればいいかな。
こういう展開の方が俺は好きだ。それでも会話は銀玉っぽいし。

ちょうど原作も真選組でシリアスやってるしね。


197 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/09/04(月) 23:00:01 ID:V93FR7UO0
 唇から血が落ちる。
 断じて喰らってはならない一発を、加藤は今まさに喰らってしまった。
 心臓という人体における急所中の急所への正拳。肉と骨に守られているとはいえ、被害は
甚大だ。まして二撃目──たとえ死を免れようと、闘争続行はありえない。
 無防備になった刹那、加藤は頭突きを放とうと間合いを縮めたが間に合わなかった。
「悪あがきも通じず、残念だったなァ……今度こそ俺の勝利だ」
 両手をだらりと垂れ、加藤の体が傾いていく。
 時間にして一秒にも満たぬ間。まず王者は達成感をしみじみと噛み締めた。次いで、倒れ
るであろう加藤にどうトドメを刺すかを思案する。セオリー通り、下段突きか。あるいは踏
みつけで屈辱を味わわせるか。いや、投げ技というのも奇抜で面白いかもしれない。
 ところが突然、脱力しきっていた加藤に力が蘇る。
 45度ほど傾斜していた加藤が、右足を前へ出し、踏みとどまった。
「な、バカなッ!」
「はぁっ、はぁっ……げふっ。あ、危ねぇ……」
「ちっ!」王者、振り下ろし気味のフックを打つ。
「うおっ!」加藤、半ば逃げるように回避する。
 またも、向かい合う同じ顔。
「おめぇ、どんだけタフなんだ……?」
「いや、俺は大してタフじゃねぇぜ。ただ、悪あがきがなかったらやられてたな」
 悪あがき。加藤が頭突きを放つため間合いを狭めたことが幸いした。これにより中段突き
は威力を半減され、すんでで加藤を助けた。
「なるほど……。どうやらてめぇは急所を叩くなんて生易しい手段じゃ死なねぇらしい。全
身が原型をとどめねぇくらい、ボコボコにしてやるしかねぇなッ!」
 王者が怒涛の連撃を開始する。
 無呼吸での運動と心臓へ浴びた一撃が重なり、加藤はほとんど瀕死に近い。ブロックを固
めるだけで精一杯だ。
「安心して死にな。この俺が新たな“加藤清澄”として愚地流を受け継ぎ、大成してやっか
らよ! 刃牙も克己も烈も死刑囚も、みィ〜んな俺が代わりに倒しといてやるぜェッ!」

198 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/09/04(月) 23:00:40 ID:V93FR7UO0
 こうまで挑発され、加藤とて黙ってうなずくわけにはいかない。
「たしかに下らねぇことばっかやってきたけどよォ、てめぇ如きがなり代われるほど俺の人
生は安かねぇぞッ!」
 血と唾が混ざった液を吐きかける加藤。王者も目を血走らせる。
 これを合図に、壮絶な“死合い”が始まった。
 さすがは同じ者同士、キレるタイミングも同時刻。
 また、キレたとはいっても、これまたさすがは空手家。二人とも、攻撃防御ともに空手を
使って行われた。ただし、後退は一切ない。攻めも守りも休みなし。これ以降は探り合いは
なし。快復機会もなし。心技体、これらのトータル数値が1でも上回った方が勝者となる。
 左右から高速で拳を叩き込む加藤。すかさず王者は廻し受けで全弾散らす。
 が、廻し受けは下段にまでは及ばない。散らしたと同時に、王者には金的蹴りが贈られて
いた。
「おごォッ!」鈍痛がほとばしるが、大量分泌されたアドレナリンが一瞬で痛みを消してし
まう。「……ケリャアアッ!」
 即、反撃に転ずる王者。加藤の眉間に中高一本拳をぶち込む。さらにハイキック、貫き手
を首に刺す。
「ガハッ」喉を圧迫され、加藤が呼吸のリズムを崩す。が、止まらない。体重を乗せたヘッ
ドバッドを返す。汚れた鼻血が髪に降り注ぐ。
 喉を潰された加藤、鼻を潰された王者、ともに憎らしく笑う。
 戦っている時間に比例して、速度がどんどん上昇していく。
 見守っていた井上は、目の前で繰り広げられる死闘が、まるで第三者によって早送りにさ
れているような錯覚を覚えた。
 しかし、そんな非現実とは裏腹に、奇妙な懐かしさをも感じていた。
「これ……組み手だわ」
 お互いに拳で肌を切り、すでに血まみれ──それでもなお、この戦いは“組み手”を髣髴
とさせる正しく熱いぶつかり合いだった。

199 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/09/04(月) 23:01:25 ID:V93FR7UO0
 寸止めでのフェイントから、加藤が上段廻し蹴りを放つ。が、かわされ、軸足にローを当
てられバランスを崩す。
 絶好のチャンス。王者が吼える。
「俺がっ……俺こそがッ! 現実に生きる権利があるッ!」
 加藤との練習量の差をまざまざと見せつけるような、猛攻。
 魂を込めた拳、執念を秘めた足刀、どれもが痛い。どれもが響く。全身を打たれバイブレ
ーションしつつ、加藤はというと──笑っていた。
「……来た」
 ほどけそうな結び目を連想させる緩んだ笑みで、加藤は脳から絶大な快感を仕入れていた。
 ──エンドルフィン降臨。
 脳がふやけ、ぐにゃぐにゃになり、ふわっと裂ける。
 
「轟亜亜亜亜亜亜亜亜亜亜亜亜亜ッッッ!」

 歯医者にかかった患者でも開かぬような大口で、加藤が大気中に声を放出した。
「壊れたか……」呆れる王者。
 隙だらけの加藤に、二本指で眼突きを放つ。寸前、加藤は開いていた口を閉めた。
「う、うわっ!」人差し指と中指は、がっちりと上顎と下顎に挟まれていた。「や、や、止
めろォッ!」
 いくら引っぱっても抜けない。
 次いで加藤は噛みついたまま、頭突きを喰らわせる。頭を引いて助走をつけ、前へと振る。
この反復動作により、口に固定されていた二本の指はグニャグニャに折れ曲がった。
「バカかてめぇッ!」恐怖に引きつった王者が、加藤の脇腹を貫き手で突き刺す。同じ箇所
を何度も刺す。だのに、加藤はへらへら笑っている。
 やがて解放された指は、まるで子どもに弄ばれた針金のような、無残な代物と化していた。
 さらに、前蹴り。後ろへ飛ばされる王者。

200 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/09/04(月) 23:01:56 ID:V93FR7UO0
「グアッ!」
 尻餅をついた王者が、前方を改めて凝視する。
 すると、先ほどまではほとんど自分と変わらなかった男が、まるで次元が異なる存在と化
していた。
 正統空手、喧嘩空手、脳内麻薬、加えて野性──あらゆる要素を混合(ミックス)してで
きあがった魔獣。もう加藤じゃない。未知への戦慄ゆえか、指先から体温が抜け出ていく。
そしてこの現象は瞬く間に体中に広まった。
「俺は今までこんな奴を相手にしていたのか」
 アドレナリンにより制御されていた血と汗がどっと噴き出る。体中で洪水が起こる。
「でも俺は……」王者が駆け出す。「空手家だ……」
「空手しかやることがねぇん──!」
「雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄ッ!」
 空手家の独白は魔獣が吐いた咆哮にかき消され、コミュニケーションは途絶えた。伝わっ
たのは、ただ一発の拳だけ。
 決着。

 城内最上階にて、窓辺に立つ加藤と井上。
 終わった。王者は正拳を真正面から受け止め、心身ともに砕け散った。武神によってシミュ
レートされた“正しい道を歩んだ加藤清澄”は敗北という形で表舞台から姿を消した。
「……先輩。おめでとうございます」
「けっ、ちったあ惚れ直したか?」
 頬を上気させ、井上が視線を逸らす。
「ほ、惚れ直すだなんて……わ、私は……」
「わりぃわりぃ、からかっただけだ」
「いえ、あの……」言いたいことがあるのだが、上手く声が出てこない。
 これで会話は中断、と思いきや珍しく加藤が話しかける。
「井上、ありがとう」
「え……?」
「おめぇがいなけりゃ俺は多分……」
 言い終わる前に、照れ臭そうにそっぽを向く加藤。一方、井上は近くに落ちていたガラス
片を拾うと、それをそっと背後から先輩へと突き刺した。

201 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/09/04(月) 23:05:23 ID:V93FR7UO0
>>110より。
偽者死亡、そして……。
次回へ続きます。

202 :作者の都合により名無しです:2006/09/05(火) 08:00:11 ID:NPOQq5R/0
>一真氏
新選組は本物よりスケールアップしてるのか。
なんか、町の治安を守るには偽者の方が頼りがいあるね
本物の方はいつもふざけてるし

>サナダムシ氏
空手を最後までまっとうした偽者の方が好感持てるなあ
井上さんと本物加藤は結構いい感じだけど。
そろそろ、物語もクライマックスかな?


偽者ネタが続いて笑ったw


203 :作者の都合により名無しです:2006/09/05(火) 12:28:19 ID:J1f7IgAJ0
>一馬さん
シリアスでギャグなしとはいえ、ノリは結構今まで通りですね。
このノリを維持したままシリアス色が強くなるのか、途中でガラリと変わるのか?
最後、銀さんのがどう名セリフで締めてくれるか楽しみです。

>サナダムシさん
本物の方が悪役っぽいですねw最後ヒロインといい感じにはなりましたがw
加藤、エンドルフィン発動かー。ほんの少し、バキに近づいたな
独歩や克己はエンドルフィン出来ないから、今は加藤のが強いかも

204 :戦闘神話:2006/09/05(火) 18:31:54 ID:BzgiKVX50
part.4
「で、だ。
この状況下でなんだけどさ、
なんでさっさとあの人形ぶっ壊さなかったんだ?」

二人とも、光速の住人である黄金聖闘士だ。
極端な話だが、あの程度の攻撃など攻撃と感じない。
アドニスあたりには、魔鈴の舌鋒のほうがまだ堪えるだろう。
小宇宙も何も宿っていない、ただ高速で打ち出された羽など、
たとえ生身であったとしても、黄金聖闘士にはたいしたダメージにもならないのだ。

「…オイラの元々の任務は、聖衣の再生だって言うのは、知っているよな?
その関連さ。
黄金聖衣再製のヒントになるんじゃないかと思ってね、探してたんだよ」

貴鬼は自分の口調に苦いものが混じる事を隠しもしない。

「お前だから話すけどさ、実際のところ、煮詰まっているんだよ…
白銀聖衣って青銅聖衣に比べて生命力があるから、
損壊しているように見えても再生がけっこう容易いんだ」

セブンセンシズに完全覚醒している状態の星矢たちに壊されたんだったら、
状況違ってたろうけどね。と、貴鬼にしては珍しくため息交じりの口調で語った。
ちなみに、白銀聖衣中唯一、本物の黄金聖闘士に破壊されたケフェウス座の聖衣は、
ほぼ完全に死滅状態にあった為、アンドロメダ瞬の血をもって再生されている。

「おかげで、アステリオンの聖衣を筆頭に白銀聖衣全二十四体中、
修復の必要があった十四体の修復は終了している。
琴座の聖衣は冥界と一緒に消し飛んじゃったけどね」

呆気にとられたような顔をするアドニスに、貴鬼は毒気を抜かれたような顔になっていた。
なんて顔してんだよ?という貴鬼に。

205 :戦闘神話:2006/09/05(火) 18:34:53 ID:BzgiKVX50

「モノつくりの達人のお前でも、そんな事あるんだ…
不謹慎かもしれないけどさ、なんだか安心した」

そう、ぬぐいきれない不安を抱いたままで、アドニスはいった。

「達人って…。
オイラはまだそこまで達しちゃ居ないって。
ムウさまやシオンさまっていう、聖闘士としても聖衣修復者としても超一流の方たちからしてみりゃ、
未熟もいいトコだよ」

「良いよな、何かを作れるのってさ…。
僕は、壊すこと以外、能がない」

「なぁーに言ってんだよ?
あの薔薇園だってたいしたもんじゃないか」

苦笑してごまかしたアドニスの本心に、貴鬼はまだ、気がつかない。
一瞬、会話が停まる。
それは話題が尽きたからではなかった。

「錬金術の極致である賢者の石、それをつかって生み出された七体の少女人形。
 それが、薔薇乙女(ローゼンメイデン)。
 ま、賢者の石そのものが訳の分からない、いわば形而上的な側面をもっているって点を踏まえると、だ」

貴鬼の言葉に同調するかのように、真っ白い、何も無い空間が変わる。

「古鏡の中に叩き落すくらいは、できるってこったな」

アドニスがいつもの様に素っ気無く言う。

「それに加えてまぁ、これくらいは出来ちゃうんだろうなぁ…」

206 :戦闘神話:2006/09/05(火) 18:41:07 ID:BzgiKVX50

もはや無の空間ではなかった。
其処は、死んだように静まり返る古い欧州の町並みとなっていた。

「あ〜、オイラ似たような所行ったことある…。
 ドイツの古い街並がこんな感じだったっけ?」

至極どうでもよさそうな声だが、貴鬼は警戒して居ないわけではない。

「僕に聞くなよ。観光なんてしたこと無いんだから。
 でも、ま、殺風景なところじゃなくなったのは嬉しいかな?」

みれば、石畳の上には無数の壊れ、汚れた人形の残骸が転がっている。
良ぃーい趣味してるね、このオニンギョさんは…。そう、胸中で呟き、貴鬼は少女人形に語りかける。

「さぁて、ちょっとばかりコイツの人形遊びに付き合ってくれないか?手間、とらせないし、ちょっとばかり給料でるよ?
今なら聖衣のオマケつき〜」
 
と、とんでもないことをほざくアドニス。貴鬼はそんな彼を殴りつける。

「おばかさぁん」

軽口を叩く二人を面白くもなさそうに少女人形は見やると、美しい黒翼を展開した。

「同じ手は…」

飽きられるよ?といいかけたアドニスに、その少女人形の返答は巨大化した翼によるなぎ払いだった。

これは予想外だったぞと、多少ぞっとした声で、貴鬼は呟いた。



207 :戦闘神話:2006/09/05(火) 18:44:19 ID:BzgiKVX50

「アドニス、無事かな…」

ぼそりと呟いたのが聞こえたのか、それとも漏れ出た心情を読んだのか、アステリオンは

「大丈夫だろう。
 師匠の君が弟子を信じてやらないでどうする」

そういった。
あのサガの乱の時点で既に師表の立場にいた彼の言葉だけに、重みがある。

「師といっても、あの時は駆け出しの新米師匠に過ぎないさ。
 私の弟子たちも最近、ようやく、一人青銅聖闘士になったのだからね」

苦笑交じり、自嘲交じり、そんな声音は瞬の不安を少しだけ軽くした。
あの時戦った白銀聖闘士たち、彼らの中で既に師の立場に居たものは少なくない。
その実力から当代の白銀聖闘士の中から一目置かれていた蜥蜴座・リザトのミスティは、
瞬の師、ケフェウスのダイダロスに並び立つ伯楽として教皇、サガであったのだが、の信も厚かったのだ。
予定ならば、彼の弟子たちは瞬たちと同期で青銅聖闘士となっていたはずなのだ。
麒麟座の麒星(キセイ)、イルカ座のチルは、本来ならば
日本で銀河戦争・ギャラクシアンウォーズが開催されていた時期に聖闘士となるはずだったのだ。
残念ながらミスティが星矢に打倒されたため、彼らの聖闘士叙勲が執り行われたのは、
なんと聖戦の完全終結した初夏だった。
聖戦が終結した直後だけに、叙勲に参加した青銅聖闘士たちの中で、
星華を守るために傷ついた邪武たちの疵は完治に近かったものの、
その身に傷を負っていないものは居なかった。
特に満身創痍の星矢を見た麒星は、毒気を抜かれた貌をした後、師の最期を尋ねていた事を、瞬は印象深く覚えている。
その彼も今や昇格の話が持ち上がる程になっている。
サガ政権時にはこの昇格が一度も行われなかったため、知らぬものも居るが、聖闘士はその実力において階級分けされており、実績を積み上げることによってこの階級が『昇格』される。
本来実力至上主義で成り立つ聖域において頻繁に行われるべき事であったので、ようやく聖域が正常化しつつある傾向だとみる者も多い。
麒星は一度青銅聖闘士になった後にも研鑽を忘れず、聖戦を戦い抜いた五人の元青銅聖闘士たちに師事して回ったのだ。


208 :戦闘神話:2006/09/05(火) 18:46:12 ID:BzgiKVX50
一輝だけはとうとう捕まえられずじまいだったが、それでも彼は四人に師事したのだ。
中でも紫龍の戦闘スタイルが最も自分に近いと見たのか、第二の師と仰いで今も尚弟子としてついて回っている。
紫龍もまんざらではないらしく、紫龍のもう一人の師・山羊座カプリコーンのシュラの技であるエクスカリバーを授けたのだという。
四年、短いようで長い歳月だ。人が変わるには申し分ない時間でもある。
師の仇に師事する者、一人仲間の服喪に過ごす者、次世代を育む者、聖闘士を辞す者。
人は変わっても、人の暮らしは変わらない。

「彫刻具座、先代教皇シオンさまがかつて纏っておられた聖衣を引き継ぐ…。
 凄い事じゃないですか」

混じりっ気なしの賞賛に、アステリオンは少しばかり面映(おもはゆ)そうな貌をした。

「貴鬼のところへと修行に出さなければいけないのが少しばかり不安でね」

前聖戦以来久々の装着者の現れたこの聖衣を纏うものには、一つの宿命が負わされている。
元々、青銅聖衣には特殊なギミックやシステムが組み込まれた物が多々ある。
ネビュラ・チェーンの無限再生と追跡能力、フェニックスの再生能力などが有名だが、
その中でも髪の毛座・コーマベレニケの聖衣と並び、
彫刻具座の聖衣には聖闘士にとって非常に重要な任務が与えられている。
聖衣の修復補填、場合によっては新規作成である。
前教皇シオンは彼の出身部族の関係上、まず真っ先にこの聖衣を得ることが宿命付けられていた。
ムー大陸の錬金術師を祖とする彼の部族は、聖闘士の排出と聖衣の作成補填修復をその命題としている。
まるでサラブレッドのように交配を繰り返されたその血族は、グラード財団が聖域に接触するまで
聖域外部で、最も多く聖闘士を排出した集団として名高かった。


209 :戦闘神話:2006/09/05(火) 18:47:55 ID:BzgiKVX50
教皇シオンを筆頭に、シオンの曾孫にあたるアリエスのムウ、
孫にあたるアリエスの貴鬼といった名だたる将星を輩出した血族から、
三年前、新たに聖域に送り込まれたのは僅か十歳の少女だった。
聖衣修復技能者は一人でも多いほうがいい、そういった聖域首脳部の思惑と血族との思惑が合致した結果である。
魔鈴は貴鬼の特訓中、シャイナは二人目の弟子にかかりきり、ジャミアンは一輝との戦いで負った傷が完治せず引退、
瞬たち神聖闘士(セイント)は称号・呼称・階位等の煩わしい問題があり当面は二人も弟子は取れない。
こうした状況から、アステリオンの元へと彼女はやってきたのだ。
因みに、瞬たちの呼称・称号が『神聖闘士(セイント)』と定まったのは季節が一つ変わった初秋の頃だった。
もはや彼らが纏うのは青銅聖衣ではない、
普段は女神の血によって蘇った最終形態をしているが、
一度エイトセンシズの脈動を感じ取ればもっとも神衣にちかい神聖衣となるのだ。
故に、青銅でも白銀でも黄金でもない、もっとも純粋な女神の守護者として神聖闘士・セイントという称号が生まれたのだ。
そして、黄金聖衣が消失した関係上、五人それぞれの星座を守護宮とし、代行官として配属、
黄金聖闘士と同等の権力を与えることが決定したのは、その年の暮れになってからだった。
星矢などは、あまりの煩わしさに何度もなく逃走の気配を見せていたのだが、魔鈴の一睨みと星華の一言で大人しくなっていた。
その魔鈴もまた、この会議自体を小田原評定などと痛烈な評価をくだしていたのだが。
そして、瞬の実兄一輝は何処へともなく旅の空。あの戦いが終結して直ぐに、だ。おそらくこの決定など知るまい。
エスメラルダの命日には、彼女の墓前に必ず顕花されている事から生きていることは確からしい。

「貴鬼には色々と負担をかけてばかりだ…。
 いくら、彼らのしきたりとは言え、黄金聖衣復活で忙しい貴鬼にこれ以上厄介をかけたくないのさ」

苦笑まじりに言うアステリオン。彼の態度を意外に想う者も居るかもしれないが、彼は基本的に世話焼きかつ仲間想いの男だ。
癖のある面子が多かったが、白銀聖闘士は、基本的にはいい奴らばかりだったのだ。
本来ならば青銅も白銀も黄金も肩を並べ、戦友として同じ苦しみと喜びを分かち合うはずだったのに、
サガの乱では青銅・白銀・黄金は互いに争いあい、白銀聖闘士は僅か四人を残して死んでしまった。
それぞれがアテナを信じ、アテナの名の下に戦って。


210 :戦闘神話:2006/09/05(火) 18:50:47 ID:BzgiKVX50

「本音は、心配なのでしょう?」

瞬の言葉はマスクの下を見られやしないか、という意味だ。
女性聖闘士にとって、マスクの下の素顔を異性に見られるという事は一生を左右するほどの重要な意味をもつ。
最初に素顔を見られた異性は特に重要で、愛するか殺すかといった物騒極まりない風習が存在した。
瞬の恋人であるカメレオン座のジュネは、非常に情熱的な告白の仕方をしたことが一部で有名だったりする。
なお、アステリオンの同僚の白銀聖闘士・蛇使い座オピュクスのシャイナ女史もこの方法で告白した事で有名だが、
その結果は寡聞にして聞かない、聞けない、聞けるわけがない、だって怖いもの。
星矢が未だ独り身なのがその証左だろう、でも聞けない。
彼女の弟子であり、妹分であり、青銅聖闘士・蛇座のガイスト嬢が当の二人以外でその真相を知る唯一の人物であるらしい。

「貴鬼よりも、むしろアドニスに対して不安だ…」

という言葉を、アステリオンは瞬の手前胸の内だけで吐いておく。
アドニスは聖域内で知られざるエロガキである。
風呂場を覗かれた女性は数知れず、被害者に女性聖闘士も多いといわれている。
瞬は知る由もないが、シャイナ女史やガイスト嬢の入浴姿、挙句の果てにジュネの入浴姿までアドニスは覗いていた。
かつて教皇シオンが覗いていた女湯の覗きスポットは潰されることなく、今も尚現存しているのだった。
挙句、黄金聖闘士の気配遮断である。同等以上の聖闘士ではなければ、まず気配を殺して居る事すら分からないだろう。
そこまで分かっていても、覗きだの痴漢だのは現行犯でなければ立件はまず不可能なのだ。
風呂覗きですんでいるのがまだ可愛いところなのかもしれないが、
もし瞬がそれを知ったのならば、冗談では済まされないだろう、
多分間違いなく全力全開のネビュラ・ストームが飛んでくる。
黄金聖闘士ですら葬ったネビュラ・ストームだ、今の未熟なアドニスがくらえば、命はない。
風呂覗きがバレて悲劇の師弟対決などとなったら、
十二宮の戦いで師弟対決を演じたアクエリアスのカミュは草葉の陰で滂沱の涙を流すに違いないだろう。
だが、幸か不幸か、魔鈴さんの入浴姿を覗こうとしてバレ、それからぷっつりと彼の悪行は止んでいる。

211 :戦闘神話:2006/09/05(火) 18:53:49 ID:BzgiKVX50
「ちょん切るよ?」

この一言が効いたらしい。
そりゃ怖いだろう、もっとも冷酷な聖闘士と影で呼ばれる魔鈴だ、絶対に実行する。

「可愛い弟子がかどわかされないか心配だなんて、まるでお父さんみたいですよ」

まぁ、十三になったばかりの少女にそんな真似はしないだろうとアステリオンは思うのだが。
瞬の言葉を苦笑して交わすと、アステリオンは飛行機の窓の向う、ドイツの黒々とした森を眺めた。
トゥーレ協会。
かつての国家社会主義ドイツ労働者党の立ち上げに深く関与したといわれるオカルト集団である。
近頃のオカルトブームの時流にのって復活したとも、ただ潜伏していただけとも言われるが。
聖域とグラード財団調査部が合同で調査に乗り出したのが今年はじめ、
もう四ヶ月になるが、いまだにその詳細は明らかではない。

「に、してもだ。
 諜報員といえども聖闘士の鍛錬を積んだ面々だぞ。
 そんな奴らに尻尾も掴ませないだなんて、どういった集団だ…?」

ベルリン国際空港までまだもう少し時間がある。
ギリシアからは陸路でも行けるのだが、時間短縮のために飛行機での移動となったのだ。
本来ならば聖闘士としての異能・テレポーテーションで赴くのが筋なのだろうが、慎重を期しての事だ。
空間転移などの特殊技能は逆に魔術的な感知や小宇宙による察知が容易いのだ。
教皇シオンやムウ、彼らからすればやや劣るが、貴鬼のレベル、
もしくはエイトセンシズに達することができた瞬たちならば感知の無効化は可能だが、
生憎とアステリオンはそこまでに達していない。
ならばそういった感知からは逃れることができる手段で赴くより他になかったのだ。
余談だが、今は亡き巨鯨座・ホエールのモーゼスの隠れた趣味は、飛行機のマイレージ貯めだったりする。
弟子を持たない彼は身軽であるため、任務で世界中を飛び回ることが多かったのだ。それ故のこの趣味だ。
彼以外にも、この趣味を持つものは意外と多いらしい。
先代の流黄金聖闘士内には、そんなまねをする者は居なかったらしいが…。


212 :戦闘神話:2006/09/05(火) 18:55:09 ID:BzgiKVX50

「黒い森の怪物…。
 そんな未確認情報まで飛び交うのですから、しかたありませんよ」

シュバルツバルトには龍が居る、そんな噂がここ最近まことしやかにささやかれている。
大きな青銅色の蛇なのだという。
UMAだのなんだのは聖域の守備の範疇ではないが、事情が事情だけに
聖域としても見過ごすことができず、紫龍が調査に当たっていた。
龍を守護星座とするだけあり、見過ごせなかったのだろう。
ゆえに、今の聖域に黄金聖闘士に該当する戦力はない。
貴鬼もアドニスも聖域の外部だし、瞬も今こうして空の上だ。
入れ替わりで氷河、という選択肢があるにはあるが、彼は現在、北欧にある凍土の国・アスガルドへと出張中だ。
聖戦が終結して以降、アテナの意志により外部組織とは親和的外交を行うことになっている。
その大事な使者として彼は今赴いているため、聖域守護には程なく星矢が召集されることになるだろう。

「四年前、聖戦終結とともに、世界の歯車が狂ってしまった…
 そんな気がします」

瞬のつぶやきは、なぜか重くアステリオンの耳に残ったのだった。


213 :作者の都合により名無しです:2006/09/05(火) 18:57:50 ID:hrDcfxRg0
銀杏丸氏乙。
正直、2回に分けて欲しかった量だけど、
文体が前作の黄金のようになってるな。
意識的にそうしたのかな?

セイントの日常書かせたら本当にうまいな

214 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2006/09/05(火) 19:01:34 ID:BzgiKVX50
前回から大分間があきましたが、part4をお送りしました
ようやく第二回サブタイトルの意味が明かされました
予定が狂いまして戦闘はだいぶずれ込んでます…

前スレ>>42さん
ダッチワイフじゃなく、ローゼンメイデンです
原作でも同じツッコミいれらてましたが、もしかして原作既読の方でしょうか?
シリアスとドタバタのさじ加減は難しいです

前スレ>>43さん
次回、ヴィクター・バタフライ、そしてまた新たなローゼンメイデンの登場で
ようやくバトル開始となります
スロースターターですね、ジャンプじゃ打ち切られてるところです

前スレ>>56さん
アドニスは僕のオリキャラです、さじ加減が一番難しい…
昇格等の新設定、車田版・手代木版からの反映など、自分なりに解釈してみた次第です
バキと星矢が同じ雑誌で掲載されてる… うーん、自分でも信じられないなw


>スターダストさん
連載完結&新連載おめでとうございます
ヴィクターとバタフライのやり取りやバタフライの姿勢、目的
できる限りかぶらないようにがんばります
この愉快なコンビを気に入っていただけてうれしい限りです

>ふら〜りさん
そういっていただけると実にうれしい
こんなの貴鬼じゃないよ、なんていわれないように精一杯気をつけてやってます
クロンギVS一歩&真柴、固唾を呑んでよんでいます

銀杏丸でした

215 :作者の都合により名無しです:2006/09/05(火) 22:42:14 ID:rjXTY5fo0
お帰り銀杏丸さん。
一気のうぷお疲れです

セイントのメインメンバーが揃いつつある?
ゴールドの消えた後、セイヤたちが聖地を守るものたちだろうけど。

もう少しペースを上げてね、忙しいだろうけど


216 :作者の都合により名無しです:2006/09/06(水) 07:44:52 ID:rHEXCGyd0
銀杏丸氏乙。
正直、鋼の錬金術師は未読なのでわからないけど、聖矢は好きなので前作のようなテイストで書いてくれるといいな。


217 :作者の都合により名無しです:2006/09/06(水) 19:54:15 ID:kT3aPpjT0
何故か商業ベースで車田作品が盛り上がってるからタイムリーだな
実際は、リンかけ2といいセイヤといいどうしようもない出来だがw

218 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/09/06(水) 20:24:57 ID:LGC6Ez0U0
第八十八話「最悪、再来」

一同はほとんど無言で街を歩いていた。統一性というものが皆無な連中がぞろぞろ集まって、しかも一様に深刻な表情と
きていては、それこそ悪い意味で注目されてしまう。
しかし、そんな周囲の奇異の目すらも今の彼らには気にならなかった。
あまりにも強大すぎる敵。
そして、アザミの死。
それらが心を押し潰してしまいそうだった。
とにかく今は―――ゆっくり休みたかった。
ああ、そうだ。みんなに上手いこと言っとかないと。随分長いこと留守にしてたもんな。稟は思った。
楓やネリネにシア。麻弓に樹、カレハ先輩。紅薔薇先生。亜麻さん。
そうだ、忘れちゃいけない。神王と魔王のおじさん。
今までどこに行ってたって、最初はみんな怒って、だけど、すぐに笑って「お帰り」って言ってくれるんだ。
早く、会いたいな・・・そうだ、のび太たちがまたやって来たことを知ったら、きっと喜んでくれるだろう。
ペコやキラといった新しい友達のことも、大歓迎してくれるはずだ。
それでまた、宴会でもして、大騒ぎして―――
現実逃避だったかもしれないが、幸せな空想を描くことで、少しだけ気分が楽になった。
―――その時であった。
「ん?誰か俺を呼んだか?」
「え?・・・あれ?言われてみれば確かに、稟さんを呼ぶ声が・・・」
そう、聞こえる。それは―――その声は―――
「・・・稟殿ォォォォーーーーーーーーーっ!」
「・・・稟ちゃーーーーーーーーーーーーーんっ!」
誰かは語るまでもなかった。
まるで海を渡るモーゼの如く、群集が二つに割れていく。その中を、二人の中年男性が走り抜ける。
和服がさっぱり似合わない大男と、長く艶やかな髪の色男。
二人は満面の笑みを浮かべ、こちらに手を振りながら―――
砂埃が巻き起こるほどの凄まじい速度で―――
稟に向けて突進し―――
熱い抱擁をぶちかました。

219 :永遠の扉:2006/09/06(水) 20:25:15 ID:dFdC2Now0
根来は現在、任務で負った傷が元で入院中だ。
「聖サンジェルマン」と教会めいた名を持つこの病院、錬金の戦士たちの御用達で何かと融
通が効くようになっており、治療にも錬金術の手法が取り入れられている。
例えば、患者の体に核鉄を取り付けて、回復を促進したり。
武装錬金の触媒たるこれには、治癒力を高める効能があるのだ。
創傷程度ならば核鉄を当てればたちどころに治るし、深い裂傷を負った場合でも止血程度は
行える。
しかし根来の負った傷はなかなかに深く、診断では

核鉄治療を施しても、完治までに10日ほどかかる

らしい。
で、夜。根来の病室に1人の女性の姿があった。

「……流石に時間がかかったけど、どうにか」
ベッドサイドテーブル(コの字型の机にキャスターがついた器具)の上に乗ったモノを前に、
楯山千歳は一息ついた。
はねつきショートヘアーというありふれた髪型だが、それを補って余りある美貌の人だ。
とりわけ瞳が美しい。深々と佇み、瑠璃にも劣らぬ気高い光を宿している。
竜が住まう湖があるとしたら、千歳の瞳のような色だろう。
一見貞淑な彼女だがファッションは大胆な物を好むらしく、今は腹部や「へそ」が露わな緑の
サマーセーターを着用している。

この日の朝。
任務を前日に終えたばかりの千歳へ新たな命令が下った。
それは、ホムンクルスが工場で起こした殺人事件の後始末。
犯人は苦戦の末に撃破したが、その中で見え隠れした協力者については謎のまま。
根来たちが『第三者』と呼ぶ協力者は、犯人に核鉄を渡し、武装錬金の概念を教え、更には
奇策を以って任務の妨害を行った。
報告を受けた戦団は体裁上、第三者を捨て置くワケにはいかないと後始末を命じた。
だがそれは、2日以内に証拠がつかめなければ保留(テイクノート)扱いという半ば形骸化し
た命令でもあった。

220 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/09/06(水) 20:25:28 ID:LGC6Ez0U0
「稟殿!今までどこに行ってやがったんだ!?俺たちはもう心配で心配で、夜も眠れなかったんだぞ!?」
夜も眠れなかった割には御壮健そのものであったが。
「全くだよ稟ちゃん!いきなり姿を消してしまって・・・神界と魔界の最強精鋭部隊で地球上を荒野に変えてでもキミを
探し出そうかと思っていたところだった!」
人探しで地球を滅ぼすつもりか、あんたら。そう突っ込みたい稟だったが、熱い抱擁のおかげで首が締まって声が出ない。
ちなみに周囲から人の気配は全くなくなっていた。余りにも濃すぎる二人の登場に、誰もがそそくさと帰ってしまったらしい。
「し、神王さん、魔王さん、稟さんの顔色がやばいことに!首が極まっちゃってるよ!」
「お、こりゃすまねえなのび太。いやあ、こんなところで稟殿を見かけたもんで、ついつい嬉しくなっちまって・・・」
ようやく稟を解放した神王と魔王は、そこで目をパチクリさせてのび太たちを凝視した。
「のび・・・のび太!おい・・・お前、本当にのび太なのか!?それにドラ助にスネ夫にしずかに・・・タケシ!」
「へへ・・・久しぶりだけど、相変わらず元気そうだな、おっちゃん!」
ジャイアンが照れくさそうに鼻の頭を掻く。
「タケシか!おいおい、どうしたんだよお前ら!元の世界に帰っちまったんじゃ・・・ええい、んなこたどうでもいい!
よっしゃ、またこっちに来ちまったってんなら大歓迎だ!」
「いやあ、めでたい!稟ちゃんたちが戻ってきて、のび太ちゃんたちがまた来てくれた!今日は取って置きのワインを
開けよう。オールナイトで飲み明かさねば!・・・ん?稟ちゃん。ちょっといいかい?」
「・・・はあ、何でございましょう?」
「何だかキミの内側から奇妙な存在を感じるんだ。もしかして悪霊にでも取り憑かれたんじゃ・・・」
<誰が悪霊だ!>
マサキが思わず大声で突っ込み、それを聞いた神王と魔王が血相を変える。
「姿は見えねえのに声だけが聞こえる・・・いけねえ!やはり悪霊だ!待ってろ稟殿、神界に伝わる悪霊退散の儀式で
今すぐ除霊を・・・」
「いや、ここは魔界秘伝の成田山のお札を使って・・・」
<いい加減にしろ!・・・ったく。なあみんな。本当にこの親父コンビが神王と魔王なのか?>
「うん・・・一応ね。全く、本当に相変わらずだよね・・・」
のび太はそう言いながらも、顔は自然と笑みが零れていく。
沈んだ気分は文字通り、この二人がぶっ飛ばしてくれてしまったようだ。
「・・・なんていうかその、凄い、二人だね・・・」
キラは苦笑いを浮かべて言った。それに反応してか、神王と魔王が新顔たちへと目を向ける。
「あちらの方々も、稟ちゃんの友人かい?」
「ええ。なんて言いますか、色々ありまして・・・」

221 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/09/06(水) 20:25:47 ID:dFdC2Now0
すみませぬ。お先にどうぞ。

222 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/09/06(水) 20:26:01 ID:LGC6Ez0U0
―――色々ありまして。
そう、本当に色々とありすぎた。
親父コンビは顔を見合わせ、小さく笑う。
「ま、稟殿やのび太のダチだってんなら問題ねえさ。根掘り葉掘り聞く気はねえよ」
「そうそう。それよりもみんな疲れた顔をしてるじゃないか。よかったら私の家に来なさい。美味しいお茶とお菓子
をご馳走するよ」
何も聞こうとしない二人。その気遣いが、何より有難かった。
「それじゃあ、お言葉に甘えて・・・」
そう言おうとした時だった。
―――ぞわっと、のび太の背筋を嫌な予感が駆け抜けた。
のび太はこういう嫌な予感だけは、妙に当たるのだ。
テストを返される前に嫌な予感がして、返ってきた答案は案の定0点だったり、しずかの家に遊びに行く途中で嫌な
予感がして、野良犬に追いかけられたり―――いや、そんなことはどうでもいい。
きょろきょろと辺りを見回す。凄いスピードでこちらに近づいてくる車があった。
白いメルセデス・ベンツ。それもSクラス。
それが猛スピードでのび太の元へと突っ込んできたのだ。
「危ねえっ!」
「うわあっ!?」
間一髪、神王がのび太の襟首を引っ掴んでその身体を持ち上げたおかげで事なきを得た。ベンツは急ブレーキをかけ、
ようやく停止した。そしてドアが開き、一人の女性が降りてきた。
年の頃は二十代半ばか。顔立ちはかなり綺麗だった。洒落た眼鏡が美貌に華を添えている。それだけ見れば何の問題も
ないが、服装が大問題だった。
レインコート。しかも長靴。ちなみに空は快晴だ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
今、奇跡的に全員の心が一つになった。
変態だ。変態が現れた。そして変態はおどおどした態度で語り始めた。
「ご・・・ごめんなさい。つい、うっかり・・・」
変態は目を伏せた。

223 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/09/06(水) 20:26:34 ID:LGC6Ez0U0
「のび太くんの姿が見えたものだから、ついうっかり轢き殺そうとハンドルを切っちゃって・・・」
マジで轢き殺すつもりだったのかよ。・・・いや、問題はそこじゃない。
なんで―――ぼくの名前を知ってるんだ?
「あの・・・どうしてぼくの名前を?」
「ほ、本当に、ご、ごめんなさい・・・だ、ダメな女よね、あたしって。本当、なんでいつもこうなのかな、失敗して
ばっかで、役立たずで、ゴミで、屑で、カスで、生きてるだけで公害で・・・ああ、どうしてあたしなんか、この世に
生まれちゃったんだろう、生まれてきてごめんなさい・・・」
「・・・・・・」
まるで話が成り立たない。つーか、話なんぞ成り立ちそうにない。そこに、男の声が響いた。
「<どうしてぼくの名前を>ふん。簡潔に答えると、こういうことだ」
その声はベンツの中からだった。のび太たちの顔が強張る。
「なんで・・・」
ぼくたちからは、手を引くって言ったのに。もう関わらないって言ったのに。
ベンツから降りた男。長身に和装。そして―――狐面。
「やれやれ・・・もう会うつもりなんて本当になかったんだがな。気まぐれに<ドクター>の車なんぞに乗ったのが
間違いだったか。いや、そんなことはどっちでも同じことだ・・・ここでこうして再会した以上、どうしたところで
再会するのが運命。そういうことなんだろうぜ。なあ、そう思うだろ―――俺の敵」

―――最悪の狐が、またしても舞台の上へと。

224 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2006/09/06(水) 20:30:33 ID:LGC6Ez0U0
先に投下させてもらいました。
スターダストさん、こちらこそ失礼しました。
前回は>>154より。
今回出てきた変態は、戯言ファンなら誰だか分かるでしょう。ストーリー上では出す意味全くないんですが、
どうしても出してみたいキャラだったのでつい・・・

>>167
まあラスボス相手ということで、勘弁してください。

>>168
どうにか一糸報いさせてあげたいですね、作者的にも。

>>ふら〜りさん
ずばり、<合体に対抗するには合体>です。

225 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/09/06(水) 20:35:25 ID:dFdC2Now0
司令部が投げやりな条件をつけたのには、2つの理由がある。
人手不足で他の任務に戦士が欲しいのと、暗躍に徹して姿1つ見せなかった『第三者』が証
拠など残すかという疑問のせい。
大戦士長・坂口照星も同感だったらしい。
黒い帽子とコートをまとい、慈悲溢れる神父の笑みを常に絶やさぬこの男は、大戦士長室に
はせ参じた千歳に対し、
「事後処理ですから、そう気張らず」
と優しく優しく声を掛けた。
だが千歳は性分上、すぐさま調査にとりかかろうとした。
と同時に、行うべき手順のほとんどは1本の電話で簡略された。
「貴殿は居合わせなかったが、『第三者』については一通り尋問してある」
電話口で無愛想に述べたのは、根来だ。
入院中だから携帯電話は使っていない筈だ。
となるとケガの身を押し、公衆電話から話していたに違いない。
照星は顔を伏せてくつくつと忍び笑いを漏らした。
根来の心情を考えるのが心底楽しい様子だ。
「のらりくらりとはぐらかされたが、奴は『第三者』から手紙を受け取っている筈だ。小包に入
った核鉄と共に。それも昨日の内にな」
「根拠は?」
「仕事には引継ぎという概念がある。奴がそれを終え、小包を受け取れるようになったのは
昨日だ」
ケガのせいで少し疲れた声の根来だが、次の断定には力が篭っていた。
「そして奴を終始尾行していた私は、手紙らしき物を処分するのを見ていない。ならば、処分
は社内で行われたとみるべき。雑多な書類に手紙を混ぜ、シュレッダーで裁断したのだろう。
ゆえに貴殿には、紙屑と工場で使われる印刷用紙の回収を頼む」
千歳はすぐさま工場に移動し、工場長に聞いた。
「昨日の午後から今朝にかけて裁断された紙を全て欲しい」
幸い、まだ捨てられていなかったので回収はすんなり終わった。
ゴミ袋1つ分だが、量は流石に多い。
シュレッダーにかけられた紙は、機種にもよるがおおよそ幅2mm、長さ10mmほどだ。
そしてA4サイズの紙は縦297mm、横210mmだ。
裁断による紙片の数がどれ位か、A4用紙と紙片の面積から計算してみよう。

226 :永遠の扉:2006/09/06(水) 20:36:37 ID:dFdC2Now0
297×210÷2×10=3118.5 ……約3119だ。
サンマの産卵数がだいたい2000〜3000なので、結構な量といえる。
紙を3枚裁断したら、約9357……ししゃもに勝利だ。(8000前後なので)
げに恐ろしきはマンボウ。
産卵数3億だからA4用紙を10万枚裁断しなければ勝てん。
閑話休題。
とにかく、シュレッダーにやられた紙を復元するのは難儀だ。
元の絵が分からぬ1000ピースのジグソーパズルを想像してほしい。
難解だ。非常に気が遠くなりそうだ。
その上、他のパズルのピースとごっちゃだったら? 完成は非常に困難だ。
シュレッダーに裁断された紙屑から、手紙を復元するのはそんな感じの作業。
終わるまで1週間以上かかると思われた。
だが。
「一見、膨大に見えるが……選別は容易い」
根来は膨大な紙屑を前に平然と呟いた。
「手紙は外部から来たものだ。ならば、工場で普段使われる紙……すなわち、頻繁に裁断
される物と同じ可能性は?」
「低いわね」
千歳は納得し、まっさらな印刷用紙をベッドサイドテーブルに置いた。
根来が用紙の回収を命じたのは、厚さや紙質、色などの違いから手紙の破片を絞り込む為。
マンボウの卵の中にししゃもやサンマの卵が混じっていても、特徴さえ分かれば取り出せる。
要はそんなお話だ。
加えて、シュレッダーは性質上、裁断された紙が積もっていく。
地層のように新しい物は上に、古い物は下に。
昨日の昼以降に裁断されたモノならば、上の方にあるだろう。
それらを踏まえて千歳と根来は、手紙の選別を行い、全ての破片を揃えた。
文に起こせば一行だが、朝から夜までずっと彼らは病室で、飯も喰わずに黙々と紙屑を漁っていた。
途中、キャプテンブラボーこと防人衛が
「すまん戦士・根来。俺は一足先に退院だ。夜から寄宿舎の管理人に復帰……」
などと報告しにきたが、千歳も根来も紙屑を掬ったり見たり調べたりしているばかり。
「……俺も手伝おうか?」
「防人君には不向きだと思うわ」

227 :永遠の扉:2006/09/06(水) 20:38:06 ID:dFdC2Now0
「復職に対し下準備を整えられるのが先決では?」
無表情2人に感情の篭ってない目をいっせいに向けられて、ブラボーは逃げるようにその場
を去った。
というか、根来は目上の者に対しては一応敬語を使うらしい。

やがて落日の陽が病室を鮭色に染めて、硯の色へと変じて蛍光灯の光に消された頃。
手紙の復元、完了。
紙片の数は3648。奇しくも、ヤツメウナギの最大産卵数と互角だ。
千歳はひとまず写真を撮ってから、復元した手紙をビニールケースに封入した。
内容は、核鉄の扱い方や尾行者の示唆、ホムンクルスや錬金の戦士などの錬金術の説明
など枚挙に暇がない。
それらの次に、手紙の差し出し人の素性や属する組織についての一文もあったが、あいにく
ところどころがむしられていて、証拠能力は期待できない。
受け取ったのが殺人犯だけあって、証拠隠滅に尽力したのが伺える。

最後に、千歳と根来の方針を決定付ける文があった。

・戦士を倒した後について … 良ければ傘下に加わってくれ。目的地は銀成市。いい街だぞ。

以上を念頭において、頑張ってくれ。健闘を祈る。                       敬具

手紙を読み終えた千歳と根来は、思い思いに呟いた。
「銀成市……」
「ここだな」
とすれば半ば形骸の事後処理は、先日の任務並みに長引くかも知れない。
目的は1つ。
『第三者』の捕縛。
何を企んでいるかは分からないが、ホムンクルスに加担するコトは明らかだ。
現在銀成市にいるL・X・Eの残党と手を組めば、街は更なる危機に見舞われる。
そして。
彼らは知らない。
『第三者』の名が総角主税(あげまきちから)であり、彼が既に秋水と接触しているとは。

228 :永遠の扉:2006/09/06(水) 20:39:12 ID:dFdC2Now0

「とにかく。あなたの協力に感謝するわ。でもしばらくは療養に専念して」
ごく自然に病室を片付けながら、千歳は聞く。
「勝敗は兵家の常だ。かような作業もむしろ私の性にあっている」
「でも、休養を取るのも兵家の常よ」
根来は頷いた。
何かと理屈っぽいこの男が、すんなり頷くのも珍しい。
千歳が去ると、彼は息を吐きながらベッドに沈み、目を閉じた。
疲労や怪我、火傷や軽度の栄養失調と睡眠不足が重なり合い、心地よい眠気が彼の全身
を満たしていく。

「たまにはこういうのも良かろう……」

まるで自分に言い聞かせるように呟いたきり、彼は穏やかな寝息を立て始めた。

千歳はひとまず病院の外に出て駐車場を抜け、歩道に出た。
幸い人気はあまりなく、上司への報告をしても大丈夫そうだ。
電話をかけた照星は何か忙しい状況にいたらしく、7コール目でやっと出た。
「なるほど。分かりました。キミは防人と合流し、他の戦士のサポートに回ってください。その
間の活動拠点は寄宿舎とします。防人は退院直後で、管理人の仕事も色々辛いはず。です
からキミには、寮母さんとして潜入してもらいます。いいですね」
「というコトは、他の戦士は現状のまま?」
「ええ」
千歳はやや不思議そうな顔をした。
「交代ではないのですか?」
「ええ」
多すぎないだろうか。
まず、ブラボーがいる。
彼は一線を退いたが、役職上ではまだ戦士長(戦士を束ねる指揮官)だ。
桜花と秋水がこの街で戦っているのも既に知っている。
彼らに加えて、もう1人の戦士──千歳にとっても忘れ難い少女──もいる筈だ。
1つの市に1人の戦士長と3人の戦士。

229 :永遠の扉:2006/09/06(水) 20:40:02 ID:dFdC2Now0
数ヶ月前なら、むしろ少ないともいえる数だった。
戦団にとって脅威となりうる『ある男』の復活を目論む組織が活動していた頃ならば、3人は
少なすぎた。
されど今は違う。その組織ことL・X・Eは解散状態。残党を細々と刈っている状態だ。
人手不足の戦団からすれば4人の派兵は多いぐらいというのに、千歳を加えるという。
「ええ。分かっています。正直、かなり辛い状況です。戦士・根来もしばらく入院ですしね」
医師の見立てでは10日ほどだ。
照星は話を戻した。
「防人から聞いているかも知れませんが、実はムーンフェイスが気になるコトを──」
千歳はため息まじりの上司の声を聞くと、なるほどという顔をした。
(もしかすると『第三者』もそれを狙っている……?)
「分かりました。私は戦士・斗貴子の任務を引き継ぎつつ、『第三者』を捜索します」
照星は電話口で深々と礼を述べた。千歳の体調を慮りつつ。
(大戦士長の方こそ)
上司の疲れた声に、千歳は何か滋養のある弁当でも差し入れようかと思った。

「しばらくこの街で過ごすコトになりそうね」
携帯電話を閉じると、千歳は周囲をぐるりと見回した。
前にはごく普通の2車線道路があり、左右に向かって果てしなく伸びている。
遠くには住宅の光がちらちらと夏の夜に瞬いている。
偵察や索敵が専売特許の千歳としてはこの街を散策し、地形を把握しておきたい所だ。
「けど今は後回し。まずは──…」
前回の事件で、気になった事柄がある。
「あの人に聞けば、何かつかめるかも」
人がいないコトを確認すると、核鉄を手に取り、無音無動作で楯を形成した。
ヘルメスドライブ。
六角形の楯を筺体にしたレーダーの武装錬金であり、特性は索敵と瞬間移動。
千歳は付属のペンで画面を一撫でし、歩道からかき消えた。

230 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/09/06(水) 20:41:59 ID:dFdC2Now0
もう1ヶ月も経つというのに完全版6巻を見ると…… 京都炎上編のCMも切ない。

>>サマサさん。
こちらこそすみません。またやってしまったorz

>>182さん
過去を乗り越える桜花と秋水が見たいというのが、このSSを描いた動機の1つでして、タイト
ルもそれに倣ってます。ので、乗り越えるべき過去についてもいずれお披露目を。で、まひろ
は細かいコトを決めず、その場その場で遠慮斟酌ない行動を取らしている方が「らしい」かも。

ふら〜りさん(ネタは良いものです)
>根来も秋水もついでに久世屋なんかも、美女に対して頬が緩まない連中ですな。
思うに、秋水以外はそれでも大丈夫っぽいんですよ。趣味のおかげで死ぬまで楽しく過ごせ
そうなので。……久世屋は実際にそうでしたし。(よく戦ったなぁコイツ) でも秋水は、女性に
興味持って結婚しないと、晩年無趣味で寂しく過ごした挙句、孤独死しそう。せめてこのSSではまひろと。

>壊す拳と護る拳
いよいよ反撃か?という所で間髪入れず大変身。特撮キャラでありながら、少年漫画的脅
威を振るうゾエビくん。エビボクサーな外見を払拭するほどの勝ち目ゼロ的危機感がひしひしと。
「体硬いのは弱点」とはターちゃんの弁ですが、それは組み技での話。果たして拳で攻略はできるのか?

>>188さん
ずっと構想を練っていながら、いざ執筆すると秋水が恋愛しそうにないのです。むむむ。コイツ
はガンコな朴念仁。まひろの積極性と桜花の支援をうまく使うしかなさそうです。ま、根来に
千歳を惚れさせるよりは遥かに楽ですが。スパークはノリですw 辛い時こそ、ネタを描きたくなるのです。

231 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/09/06(水) 20:44:47 ID:dFdC2Now0
>>189さん
似合うかどうかは別として、絡ませたら面白そうなキャラは見繕ってます。傷心の所を励
まされてうんたら〜とか。自分的に一番似合いそうなのはパピヨンですね。彼が桜花へい
うセリフも暖めております。秋水との関係の変化に関係したエピも近いうちに。

銀杏丸さん(お久しぶりです)
こちらこそかぶらないように気をつけます。あ、でもヴィクターとバタフライのやり取りは少し
しかないかも。彼らの関係性はある2人を軸に掘り下げてみたいので。
ちなみにヴィクターとバタフライが出会ってから約10年後(1915年)が、斉藤一の没年……

>戦闘神話
若いというのは良いです。偉大な先人と自身を比べて限界を知り、僚友にあって自分にない
物を羨む。そんな思いをナチュラルにこぼしあえる関係も若さならでは。そして聖域の内情
にかけては正に抜群の筆致。元作品に対する愛情は、感服の至りです。

232 :救援求む!:2006/09/07(木) 00:03:13 ID:L23Taw960
架空の武勇伝・ここに集え
http://sports9.2ch.net/test/read.cgi/budou/1156475665/l50


233 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/09/07(木) 05:32:17 ID:YDXcZyDE0
二十一 逃走

 破局は、はじめが予想していたよりもずっと早く訪れた。
 セールスマンすら滅多に通りかからないような、閑静な住宅街である。
 自室で凶器の手入れをしていたはじめの耳に、インターフォンの音が聞こえてきた。
 眉を顰めながらカーテンを開け、道路に面した窓から外を覗く。はじめはそこから見える光景に、思わず歯噛みした。
 パトカーが二台、丁度はじめの家の玄関を塞ぐような形で駐まっている。
 今、警察が家に用事があるとすれば……その目的は、一つしかないだろう。
 はじめは、警官たちの人数と雰囲気で察する。これは、事情聴取とか任意同行とか、そんな生易しいものではない。
 この傍目から見ても物々しい布陣は明らかに『逃走する被疑者』を想定しているとしか思えなかった。
 おそらく、もうタイムリミットなのだ。警察は既に、はじめの言葉を待つまでもなく、起訴に踏み切れるまでの証拠を握っている。
 逮捕、拘留、起訴、裁判……そんな単語が、頭の中でぐるぐる回る。両腕に絡みつく鉄の鎖のイメージが、絶望的なまでの現実感を以って迫る。
 どうする……? どうすればいい……!?
 はじめが迷う間にも、インターフォンは鳴り続けて、焦燥感に拍車をかける。
 はじめは決断を迫られ、天を仰いだ。午前中と言う事もあってか、報道用ヘリのプロペラ音はしない。聞こえるのは、蝉の鳴き声だけである。
 つまりは、逃走経路を上空からヘリで追われて、手詰まりになる可能性はない……!

234 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/09/07(木) 05:33:14 ID:YDXcZyDE0
 それに気付いた瞬間、はじめの行動は決まった。最早一刻の猶予もない。
 着の身着のままで、道路側からは死角になっている方の窓から、外へと身を躍らせる。
 二階と言っても、それなりの高さはある。着地の衝撃で足の骨を折らないとは限らない。でも、いまさら、そんなこと。
 一瞬の浮遊感。そして、着地。意外と大きな音がして、肝を冷やす。だが大丈夫、足も痛めていない、警察もこの脱出劇に感付いた様子はない。
 家の正面には、警官が屯している。裏手の塀を乗り越えて、その先にある公園を突っ切る。そのまま、林へと逃げ込むのが最善だろう。
 はじめは心の中で行動方針を反芻すると、気配を殺しながら、裏手に回る。そして、細かな凹凸を足掛かりにして、塀を乗り越える。

 塀の向こうに広がる風景に、はじめは既視感を覚えた。
 そこは闇に包まれた、無人の児童公園で。電灯の下に立っているのは、一人の少女だった。
 少女ははじめに気付くと、振り向いた。優しい微笑を浮かべて、信頼の眼差しでこちらを見る。
 ああ、だけど……彼女は知らない。後ろに回した俺の手には、ナイフが握り締められていて……
「新宮さーん!」
 威圧するような男の声が、後方から聞こえてきた。続いて、ドンドン、と乱暴なノックの音。
 それで、はじめの感傷が生み出した幻想世界は消滅した。思考が、過去から現在へと引き戻される。
 そう。時刻は昼間で、夜じゃない。電灯の下にも、勿論誰もいる筈もない。
 はじめは我に返ると、急いで塀から飛び降りた。兎に角、この場から逃げなくては。

 逃げた先には、何が待っている……? 逃げ切れたとして、どうやって生きていく……?
 そんなこと、はじめは欠片も考えていなかった。はじめを突き動かしているのは、狂気染みた欲望だけだった。
 まだ、終わりにしたくない。もっと、多くの屍を積み上げたい。そして、その上に座って笑う王になりたい。
 出来るだけ早く自宅から離れたかったのだが、ここで走り出してしまっては目立ち過ぎる。
 今にも駆け出しそうになる足をどうにか宥め、はじめは競歩のような早歩きで公園を進んだ。

235 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/09/07(木) 05:34:07 ID:YDXcZyDE0
二十二 追撃

 暇さえあれば、新宮家を監視するようにしていた。とはいえ『その現場』を目撃したのは、まったくの偶然だった。
 はじめが、おもむろに二階――自室の窓を開け放ち、外へと飛び降りたのである。
 最初は、あまりに唐突な光景を目前にして思考がついて行かず、状況が把握できなかった。
 だが、新宮家の玄関前に並ぶ二台のパトカーを見て、すべての事情を察する。
 そして同時に、自分に課せられた使命を思い出す。
 今から追って……果たして間に合うだろうか?
 いや、間に合うかどうかを検討している場合ではない。何としてでも間に合わせるのだ。
 そうでなくては、奈々に申し訳が立たないではないか。
 部屋の片隅に立てかけられたテニスラケット用のバッグを手に取り、玄関へ走る。
 テニスラケット用のバッグ、とは言っても、このバッグの中に入っているのはラケットではない。マチェットだ。
 復讐を果たす前に犯人と間違われて、銃刀法違反で逮捕……なんて事になったら、とんだお笑い種である。
 このバッグは、白昼堂々物騒な凶器を持ち歩く為のカモフラージュだった。
 近所にはテニスコートがあるから、テニス用品を持ち歩いていても、何ら不審ではない。
 靴を履く時間ももどかしく玄関を開け、はじめが逃げたと思われる方向に向かって、我武者羅に走った。
 警察よりも先に新宮はじめを見つけて……殺す。至難のミッションだが、失敗は許されない。
 大丈夫。自分には土地勘がある。警察の先手を取る事だって、決して不可能ではない筈……!

236 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/09/07(木) 05:35:11 ID:YDXcZyDE0
毎度ありがとうございます。前回投稿は>>125です。

・最後
多分、それなりに救いのある終わり方になると思います。
しかし、ちょっとばかり不安です。
・知識
お話なので、わかった風な事を書いていますが……
何しろ、私のへぼい知識なので、鵜呑みにすると危険かもしれませぬ。
素で間違えて書いている部分、あえて間違えて書いている部分も多々あります。
例えば、カマイタチで四人組が、カイジを眠らせる為に使用していたクロロフォルム。
実際は、布に含ませたクロロフォルム程度では、人間を数秒〜数十秒で無力化などできません。
その手のプロなら、頚部を圧迫して失神させて無力化する方が効率的なのではないかと。
小説や漫画での『お約束』な要素なので、まあいいや、と思ってそのまま使用しました。

237 :作者の都合により名無しです:2006/09/07(木) 08:12:11 ID:mNTkeTpO0
>超機神
アザミの死の深刻な跡なのに、救いがあるのは仲間のおかげですね。
前作のメンバーも集まりつつあって、最終決戦の予感を感じますな・・

>永遠の扉
根来って外伝みたいな感じで別の作品でやるかと思った。
しかし、相変わらず事務的だなあこの2人。進展とかしそうにないなw

>金田一少年
追い詰められるはじめの中に、決意のようなものが見え隠れしますね。
最後のミッションに奔走する男とはじめ。本当に救いのある結末になるのかな?

238 :作者の都合により名無しです:2006/09/07(木) 20:34:04 ID:tiQ1AkM60
・サマサさん
のび太に次ぐ副主人公みたいな感じの稟ですけど、流石に今回は落込んでますね。
前作では敵だった女ですけど、のび太も稟もそういう事に関わらず落込めるのが
温かい。神王と魔王のコンビと再会できたのは良かったですけどね。

・スターダスト氏
千歳と根来は本当にテンションが低いですねえ。まひろとはえらい違いですな。
でも、前作より微妙に息が合ってる感じもしますね。甘ったるい関係には
絶対にならないでしょうけど。根来たちは今作にも絡んできそうですね。

・かまいたち氏
逮捕とか拘留とか、非日常的な単語がリアルに迫ってくる気分はどうでしょうかね。
でも、はじめもそれまでは異常な空間にいた訳ですから、もう日常かな?
しかしこれで救いのあるラストは、かまいたちさんの力量でも本当に出来るのかな?w


239 :壊す拳と護る拳:2006/09/07(木) 22:45:59 ID:/LlyBnQe0
>>185
「おいおい・お前たちは一応・現代の拳闘士・だろう? 拳はどうした・拳は」
バカにした口調でゾエビが言い、両手を突き出した。二人の襟首をぐっと掴んで、
「ぅおっ!?」
「えっっ?」
間柴と一歩を、頭上に軽々と投げ上げた。二人には何が何だか理解不能、襟首を
締められた次の瞬間には、二階の高さにいたのだ。そしてすぐさま落下が始まる。
眼下でゾエビが両拳を握った。二人に向かって突き上げる。落下中で身動きの取れない
二人は、慌ててガードを固めた。ゾエビの狙っている軌道はボディ、だが万歳をする
ように両腕を伸ばすだけの動きだ。いくら怪力でもこんな打ち方では、
「まだ・死ぬ・なよ」
……甘かった。両腕で腹部をガードした二人だったが、そのガードの上に特急列車が
突進してきた。今度は三階に近い高さまで突き上げられ、二人並んで放物線を描き、
地面に激突する。
「お前たちは・残りの人生・悔やみ泣き狂って過ごす・義務がある・頑張れ・生き抜け」
ゾエビは動かない。すぐさま追撃を加える意志はないようだ。そんな必要はないが。
「ぁう……ぐ! げふっ、ぇふっ、ぅくぅっ……」
一歩は仰向けに倒れたまま、ぎゅっと目を閉じて苦しそうに咳き込んでいる。そのたびに
血の混じった胃液が真上に飛び、噴水のように自分の顔に落ちてくる。
間柴はうつ伏せの状態で吐き気を堪えていた。必死に顔を上げ、離れて立っているゾエビ
を睨みつけるが、それ以上のことはとてもできそうにない。
『く、く、くそぉっ……! 何だ、何なんだこのバケモノじみた強さは? 見た目通りの
バケモノってことかよ? オレたち人間が、太刀打ちできる相手じゃねえってのか!?』
そういえば警察が未確認生命体を駆除しているというのも、未確認生命体第4号と協力
してのことらしいし。つまり未確認同士での仲間割れに便乗してるだけだ。やはり、
人間の力の及ぶ相手ではないのか?
だがこのままここで敗れれば、ゾエビが今までやってきた殺人イベントが繰り返される。
自分と一歩は瀕死の重傷、その目の前にわざわざ久美が連れて来られて、じっくり惨殺だ。
いっそ自殺したくなるほどの無念に、歯軋りする間柴……の目に、あるものが映った。
『? あ、あれは?』

240 :壊す拳と護る拳:2006/09/07(木) 22:46:30 ID:/LlyBnQe0
悠然と立っているゾエビ。その全身は甲羅に覆われているが、腹部にベルトのバックル
らしきものがある。他の部分と同質の甲羅のようだが、微かにヒビが入っているのだ。
今、石をぶつけたり蹴りを喰らわせたりした時には何ともなかったのに。あれは?
『っ! まさか、あの時の……チョッピングライトを掠めた時のキズだってのか?』
一歩がガゼルパンチをボディに叩き込み、ほぼ同時に間柴が打ち下ろした、あの時。
確かにあの辺りに拳が掠って、ゾエビの表情に変化が見えたが、たったあれだけで?
だとすると、あの場所が奴の急所か。あそこを攻撃できれば、勝機はあるかも?
しかしあの時のゾエビは一応人間の姿をしていたが、今のゾエビはどこに出しても
恥ずかしくないバケモノ、怪人、肩書き通りの未確認生命体だ。少々ヒビがあると
いっても、今から攻撃して本当にダメージになるかどうか。
それに甲羅がなくてもゾエビの防御は完璧だ。今の甲羅姿になってスピードダウンしてる
かも、なんてのは甘い期待だろう。それに、やはり蹴りなどではなく素の拳こそが一番
頼れる武器だが、それをやると拳が砕ける……って殆ど可能性ゼロの話ではないか。
『だがやらなきゃ、確実なゼロ。だよな』
覚悟をキメて、間柴は立ち上がった。拳に闘志と覚悟を握り締めて、ゾエビに向かって
歩き出す。と、一歩の背がジャマをした。
「ボクが行きます」
いつの間にか立ち上がっていた一歩も、同じ一点を見つめている。気づいているようだ。
「まだまだ未完成だから、不安で使わなかった技があるんです。でも、もうそんなこと
言ってられませんからね。一か八かですけど、あの技ならきっと」
「きっと、なんだ。きっと当てられるってのか? で拳を豪快に砕いてみせますってか」
「……両方その通りです。加えて、あいつも砕いてみせます。きっと。いえ、絶対。
これは間柴さんにはできないことですから」
「何ぃ? どういう意味だ、てめぇ」
「解らないんですか。間柴さんの拳に万一のことがあれば、久美さんが悲しみます」
言いながら一歩が、当然のように前に出る。


241 :壊す拳と護る拳:2006/09/07(木) 22:47:07 ID:/LlyBnQe0
「久美さん、言ってましたよ。最近ようやく少しずつ、ボクシングしてる間柴さんを
素直に応援できるようになってきたって。間柴さんが世界王者になるのは、もう
間柴さん一人の夢じゃないんです。だったらボクは喜んで、久美さんの夢を護る為なら」
「って、ちょっと待ておい!」
前進する一歩の肩を、間柴が掴んで止めた。
「拳が砕けて、ボクシングができなくなって、それで久美が悲しむって言うなら……
言うなら……その、だから、それはお前だって同じことだってんだ! 久美がお前の
こと話す時、どれだけ幸せそうな顔してると思ってるんだこの大バカ野郎っ!」
「……っ……あ、あはは、はは」
間柴が掴んでいる、一歩の肩が震えた。
「何がおかしい」
「だ、だって間柴さんの口から、そんなセリフが聞けるなんて思ってなかった……から」
一歩が振り向いた。少し潤んだ目に少し微笑みを浮かべて、少し哀しそうで。
「充分です。もう思い残すことはありません。宮田くんや会長もきっと解ってくれます」
「ま、待て、おい幕之内っ」
「だから、見てて下さい。ボクの、ボクシング。ボクの……最後のボクシングを!」
間柴の手を振り払って、一歩が突進した。両腕と上体を小さく畳んだピーカブースタイル
で、ゾエビに向かって一直線に。低い姿勢を保ち、進路は真っ直ぐなままで、だが
頭部と上体は激しく左右に振って、数字の8の字を横にした軌道でローリングさせる。
間柴も一歩自身も知らないが、これは攻防一体の高等技術「デンプシーロール」である。
相手に攻撃の的を絞らせず、自分は体を振った反動で体重の乗った拳を連続で叩き込める。
これを受けては、立っていられない。並の相手なら、いや並じゃない相手でも、そして
人間外生物でも……必ず!

242 :壊す拳と護る拳:2006/09/07(木) 22:47:50 ID:/LlyBnQe0
「ほう・なかなか・面白そうな・技だな」
向かってくる一歩を楽しそうに見ながら、ゾエビが拳を握る。
「ではとりあえず・お前の・その自慢の拳から・殴り潰すと・しようか」
「やれるものならやってみろっ!」
「ああ・やってやろう」
一歩がゾエビに迫る。ゾエビの目線、拳の照準は一歩の頭や胸や腹ではない。拳だ。
言葉通り、拳を砕く気なのだろう。今までのことから考えて、充分に実現可能なことだ。
一歩が打ち勝つ可能性は限りなくゼロに近い上、勝てたとしてもその時には一歩の拳が……
『幕之内っ……てめぇ、久美の夢を護る為にだと!? 何様のつもりだっ! 大体、
初めて会った時からてめぇは気に食わなかった! ボクシングってのはブッ潰し合い、
ブッ殺し合いだってのに、てめぇはいつもいつも……オレとの試合の時でさえ……
だからオレは、いつかてめぇをこの手で、リングの上でギタギタにしてやると誓って……』
久美の顔、一歩の顔、一歩との試合、久美との思い出、東邦ジムでの日々、胸に描いた
未来の光景、一歩も抱いたであろう同じ夢、それらが間柴の中で交錯し渦巻いた。
そして、
「っ……うおおおおおおおおぉぉぉぉっっ!」
間柴は走った。一歩を追って、ゾエビに向かって。拳を握り、左を下げ、照準を定めて、
「幕之内いいいいいいいいぃぃぃぃっっ!」
放った! 間柴の必殺のフリッカーが、狂気凶暴の大蛇が、鋭い毒牙を剥いて飛翔する。
その顎が狙う先は……


243 :作者の都合により名無しです:2006/09/07(木) 22:48:24 ID:uTn85EBW0
>サマサ氏
戯言の変態って誰なんだろ?小説読まないからわからない。
でも、まだ新キャラが出て来るって事はまだ続きそうですね

>スターダスト氏
前作と永遠の扉は地続きなのか。このコンビ(ネゴロとチトセ)は
好きだったので嬉しいです。

>カマイタチ氏
最後の瞬間が近づきつつある感じだな。カマイたちさんだから
俺の想像を超える結末にしてくれると信じてます。


来る時は同日に来るねw

244 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2006/09/07(木) 22:51:14 ID:/LlyBnQe0
まあその……例えば、14巻の165・166ページだけで何本か書けてしまい
そうな勢いなので。今の私の頭の中。だってあれって、普通ヒロインですよ?
剣心でいうところの、「みんなで一緒に東京に帰ろうね」ではないですかっっ。
なので。これでも一生懸命頑張ってバトルしてる、と生温かく見てやって下され。

>>一真さん
ほんとにギャグがない……どころじゃないこの緊迫感。単に戦闘力だけでも厄介な相手が、
国家権力を翳して社会的にも攻撃してくる、ってハリウッド映画でよくある構図ではない
ですかっ。鏡のように自分に対応した敵、戦えば犯罪者扱い、自軍は散り散り、どうする!?

>>サナダムシさん
王者は空手しかやることがない、なら加藤は「加藤」しかやることがない、か。そういや
空手は道具だって言ってましたね。どんな技も加藤の強さを構成する一部分に過ぎない、
空手とその他(この島に来てから得たものも)とを使いこなしてこそ真の加藤足り得ると。

>>銀杏丸さん
白銀を中心に、黄金や青銅との関わりや聖域の様子を丁寧に描かれてますね。原作の現状
がアレなだけに、銀杏丸さんの「星矢」への愛が心地よいです。何だか今回分を読んで、
青銅一人一人の現状にカメラを振って貰いたくなりました。構成上可能でしたら、何卒。

245 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2006/09/07(木) 22:56:33 ID:/LlyBnQe0
>>サマサさん
ほのぼの、らぶらぶ、などなどが時々展開しても、やっぱり随分と長いこと戦場を旅して
いたのび太たち。忘れかけてた本物の日常空間を、一気に思い出させてくれました御二方。
と思ってたら戦場の象徴とも言える奴が復帰。でもこの雰囲気だと……もしかして味方に?

>>スターダストさん
>上司の疲れた声に、千歳は何か滋養のある弁当でも差し入れようかと思った。
またこういう萌ゆることをっっ。無表情で論理的で愛想もないけど、気配りできて優しくて
女性らしい。根来と二人でツラつき合わせて、一日中黙々と紙屑に取り組んでる姿ってのも
微笑ましくて楽しい。でOLに続いて寮母さんですか。エプロンなんかも似合うんだろなぁ。

>>かまいたちさん
文字通り走り始めましたね。いよいよラストスパート? 超能力者でもなんでもない二人
ですから、警察がここまで食い込んでる状況ではできることは限られるはず。お互いに。と
なると、もう今更殺人なんか辞さないであろうこの二人、目的達成の為に何をしでかすか?

246 :作者の都合により名無しです:2006/09/07(木) 23:28:30 ID:uTn85EBW0
ふらーりさんいつも乙
間柴と一歩のコンビはやはり決裂しそうか・・

247 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/09/07(木) 23:41:29 ID:fLEj+kmY0
>>200より。

248 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/09/07(木) 23:42:05 ID:fLEj+kmY0
 疲弊しきった肉体に、透明な刃が牙をむく。
 刺した当人は虚ろな目つきで立ち尽くしている。
「な、おまえ……」
「先輩、どうしました?」
「どうしましたって、オイ……」
「刺しただけですよ、ちょっとお背中を」
 そういうと、井上は五センチは刺さっていただろう破片を力任せに抜き取った。温かい血
が柔らかい軌道を描き、体外へ流れる。
「キレイ……。憧れていた、先輩の血だわ」
 床に広がっていく血を、猫のようにぺろぺろと舐め始める井上。どう考えてもおかしい。
「てめぇ……井上じゃねぇな?!」
 刺された痛みなど意に介さず、加藤は井上の胸ぐらを掴んだ。
 素直に白状するとは思わなかった。だが、予想に反して井上はあっさりと自白する。
「えぇ、私は井上ではありません。こいつに乗り移っています。正確にはずっと乗り移って
いたんですが、満を持して“操縦”を開始いたしました」
「……やっぱな。今すぐ出て行け。じゃねぇと、ただじゃおかねぇぞ」
「どうただじゃおかないんです? 殴りますか、蹴りますか、あるいは犯してみますか。私
はかまいませんよ。実害を受けるのはこいつですから」
 唇を醜く歪め、不敵に笑う寄生者。本来の彼女ならば、絶対にこんな顔はしない。乗っ取
っているというだけでも許せないのに、こうした井上(の中にいる寄生者)の行為は加藤の
怒りをさらに助長させた。
「て、てめぇ……!」
「武神がこいつをここへ呼び寄せた理由はふたつ。ひとつはアンタが武道家として“弱者を
守れるか”をテストすること。もうひとつは、武道家として“弱者を倒せるか”をテストす
ることです」
 寄生者によれば前者はすでに及第点らしい。が、後者に関してのテストはまだ採点に入っ
ていないという。つまり試験はこれから行われるということだ。
「アンタはこれまでこの娘に気を許してはいなかった。だいぶ親しくなっていたとはいえ、
心の中にはずっと警戒する部分を持っていた。でもついに、さっきアンタはこいつに百パー
セント気を許してしまった。あっさり後ろから攻撃を受けてしまうほどに、ね」

249 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/09/07(木) 23:42:43 ID:fLEj+kmY0
 かわいい後輩を使って偉そうに舌を動かす寄生者に、加藤は腹を立てていた。殴りたい衝
動をぐっと抑える。
「武神の計算によると、アンタが完全に娘に気を許すのはちょうど明日の今頃のはずだった。
つまり、私こそが明日の“試練”を担当するはずだったんですな。でも、アンタらの関係は
予想以上に良好で、少し時期が早まってしまった……」
 再び、ガラス片が振るわれる。
「ぐっ!」腕を一文字に斬られる加藤。
「隙だらけですよ」寄生者が井上をしたり顔で微笑ませる。
 普段ならば避けられない攻撃ではなかった。なおかつ、一秒も置かずに反撃に転じていた
はず。相手が井上でさえなければ……。
「はっきりいって、今回の試練はメチャクチャ簡単です。サービスみたいなもんです。井上
さんをぶちのめせばクリアーなんですから。今までで一番難度が低いんじゃないですかね?」
 加藤と井上とでは、比較にならないほどの戦力差がある。。事実、初対面の時点だったな
らば、加藤は迷わず“クリアー”を選んでいた。彼はフェミニストではない。
 とはいえ、彼女を過ごした約八日間──あまりに重い八日間だった。
「本格的な試練は明日にしましょう。明日正午より、私はこいつを使って全力でアンタを殺
害に向かいます。娘を倒すか、あるいは殺されるか、好きな方を選択してください」
 一方的に無理難題を押しつける寄生者。どこか武神と似ている。
「……ただし、逃げたりして引き分けを狙うなんてのは止めた方がよろしい。もしアンタが
逃げを選ぶようだったら、私は自害しますんで」
 八方塞がりだった。
「手首でも切るか、あるいは海があるから溺死かな。ハハ」
 自殺方法を楽しそうに取捨しながら、井上と寄生者は城から立ち去っていった。おそらく、
明日正午まで姿を現すことはないだろう。
 加藤は独り、城に残された。

250 :やさぐれ獅子 〜十八日目〜:2006/09/07(木) 23:43:14 ID:fLEj+kmY0
 ため息をつき、うなだれる加藤。
 自分と同じ姿をした強敵──を倒した喜びなど、とうに彼から失せていた。
 一難去ってまた一難。
 もっとも楽で、なおかつ正しいであろう選択肢は、むろん井上を倒すことだ。どんな技を
使っても、一撃で葬ることが可能だろう。実行できれば、の話だが。
「できりゃあ苦労しねぇんだよっ! ……できりゃあな」
 むしゃくしゃを晴らすため、石床を殴る。少しひびが入った。
 もはや彼には井上と敵対することなどできない。寄生者がいっていた『百パーセント気を
許してしまった』とは、すなわちそういうことだ。
 敵の術中にまんまとはまった自分に頭がくる。
「……井上(あいつ)だったら、なんていうかな」
 ──私に構わず、敵を倒してください。
 まず、こうだろう。声量や拍子も想像がつく。加藤は少し笑った。
 だが直後、加藤は己をグーで打った。何発も、何発も。
 彼は自分を軽蔑していた。自分ひとりで決めねばならない岐路、かつ彼女の生殺与奪を自
在にできる局面で『井上だったら、なんていうかな』などという思考をすること自体が恥ず
かしい。卑劣にも程がある。男らしくない。
「くそっ、くそっ、くそっ!」
 結局、考えがまとまらぬまま、加藤は横たわった。
 まるで眠れない。
 周囲を暗黒が包み込む。ドッポを死なせたあの夜に匹敵する、あるいはそれ以上に、冷た
く気持ち悪い夜となった。

251 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/09/07(木) 23:44:19 ID:fLEj+kmY0
十八日目終了です。
黒沢が終わった……。

252 :作者の都合により名無しです:2006/09/08(金) 12:49:02 ID:qSc8V7jr0
一番簡単にして一番難しい試練ですな
たとえ、井上と8日間暮らさなくても
加藤は悩む気がするな。結構甘いし。


黒沢の最終回はないよねえ・・

253 :作者の都合により名無しです:2006/09/08(金) 19:56:11 ID:X01hUYFx0
黒沢はアリだと思うあの最終回も。
サナダムシさん乙です。
井上さんと加藤、随分接近したと思いきや最大の試練ですな
加藤の男気がどう炸裂するか楽しみ。

254 :バーディーと導きの神〜戦闘と銭湯?〜:2006/09/08(金) 20:10:30 ID:xwq0e4LL0
>>94より

バーディーが洞窟の奥へと消えていった後、リュミールもザンから預かったナップザックを
抱えて同じように奥に歩いていった。
「おいおい、バーディーにリュミールまでザンと混浴かよ」
シアンが驚いたように洞窟の奥へ続く通路を見やる。
「まさかー。バーディーはともかくリュミールがそんなことするわけないだろ」
ソシュウがシアンの妄想を一蹴する。
「でもよう……」
シアンが言いかけたとき、牙炎が一行をたしなめた。
「そんなことよりだ。例のことを考えろ。エルデガインとやらが作動するまで20日くらいと
リュミールは言ったが、もっと短いと考えたほうがよかろうな……」
「彼女は顔に出る性格だ。嘘はつけんことくらいは分かるさ」
真顔に戻ってソシュウ。
「まあ10日前後と考えときゃよかろうよ」
牙炎を見やり、意見を述べる。
「それから確証はないが、先文明を滅ぼしたのもエルデガインだと考えられる……。理由は
わからんがね。そう思えるんだ」
ソシュウの意見に同意見なのか反論せず、牙炎は次の持論を述べる。
「そしてその強大な力を狙っている男ガロウズ!奴の手だけには渡すわけにはいかん!」
「もちろん!」
「分かってますよ大佐」
ソシュウやシアンも同調する。
「奴はもう近くに来ているはずだ。油断はできんぞ」
牙炎は洞窟の天井を仰いでそう言った。

その頃リュミールのチップの文様を持たないルアイソーテ軍一行は、島を守る怪物相手に
苦戦を強いられていた。
超巨大なオオトカゲに似た生物相手に一般兵が小銃で対抗するが、厚い甲皮に阻まれて決定打と
ならない。そしてその舌先から飛ばす溶解液は、人間をたやすくドロドロに溶かす。

255 :バーディーと導きの神〜戦闘と銭湯?〜:2006/09/08(金) 20:11:25 ID:xwq0e4LL0
「うわああああっ!」
「たすけてくれえっ!」
一方的な殺戮に、一般兵は逃げ惑うばかりだった。
その前にサーラが出る。
サーラはオオトカゲの頭部に焦点を絞って高熱伝導念を放射する。途端、オオトカゲの頭に
炎が上がる。
「やった!術次長!」
一般兵は喜ぶが、サーラはもっと下がれと兵に命じる。
「強力な抗術のせいで火のつきが弱い!熱が上がらないんだわ!」
舌打ちするサーラ。そこにボックウェルが登場する。
「サーラ下がれ!全員でわしに増術をかけろ!」
『はっ!』
ボックウェルの後ろに控える術者部隊が一斉に答える。
「はーーーーっ!!」
ボックウェルの必殺技集合念雷が炸裂する。念雷はオオトカゲ全体を包み、その身を焼いていく。
「ふう……、なんとかなったわい」
肩をトントンと叩きながらボックウェルが疲れたようにつぶやく。
しかし、それで終わりではなかった。
「術長!まだです!」
術者の一人が叫ぶ。
「なにいっ!」
信じられないといった表情のボックウェル。
オオトカゲは身を焼かれながらもその鎌首をもたげてボックウェルを睥睨していた。
「逃げてください術長!」
すでに自分は逃げながら、別の術者がボックウェルに声をかける。
だが次の瞬間、オオトカゲの体はまるで刃物で両断されたように真ん中から切断されて崩れ
落ちる。
「感心せんな、ボックウェル」
驚くボックウェルに声をかけたのはガロウズだった。
「じ、准将」
振り向いたボックウェルは泰然と佇む上司の顔を見た。

256 :バーディーと導きの神〜戦闘と銭湯?〜:2006/09/08(金) 20:12:12 ID:xwq0e4LL0
「このような雑魚も倒せぬとは腑抜けたか?」
「申し訳ございません!」
ボックウェルはただただ恐縮するのみだ。
「隊を組ませろ!出発する!」
ガロウズはそんなボックウェルを見返ることもなく命を下す。
そんな中、背後からガロウズを見つめる者がいた。サーラだ。
(なんという男だ……。この強力な抗術の中、あれだけの術を使えるほどの力を持っていると
いうのに……。これ以上の力を得てなにをしようとしているのだろう?奴の本意、見届け
なければ……)

「やっほー!ザン君!一緒に温泉入りましょ!」
呑気な声にザンが振り向けば、バーディーが一糸まとわぬ姿で温泉の淵に立っていた。
「うわわわわわっ!バ、バーディーさん!なんでここに!?」
「なにって温泉よ温泉!私初めてなのよ!しっつれーいっ!」
どぎまぎするザンをよそに、バーディーは一気に湯船に飛び込んだ。
そしてしばらく湯船の中に潜っていたが、がばっと飛び起きると淵にゆったりと肩まで浸かって
のたまう。
「んあ〜。これ凄いわ!この感覚サイコー!」
ジャブジャブと足でお湯をかき混ぜながら、バーディーは視線をザンの後ろに向けた。
そこには、ザンのナップザックを持ったリュミールが立っていた。
「リ、リュミールまで!ど、ど、どうして?」
ザンは完全にパニックに落ちいって、どうしていいかわからなくなる。
「リュミールちゃんも一緒に?」
バーディーが問うが、リュミールは被りを振った。
「いえ。ザンとバーディーさんの近くに居たくて……」
「じゃあ、一緒に温泉に入りましょ。裸になるのが恥ずかしかったら、ザン君に向こう向いて
もらえばいいし、お湯に入れば見えないし。ね?」
「は、はい……」
リュミールは素直に頷いた。
「じゃあザン君回れ右!」
「はい!」

257 :バーディーと導きの神〜戦闘と銭湯?〜:2006/09/08(金) 20:12:54 ID:xwq0e4LL0
「ほいリュミールちゃん服脱いで」
「はい」
「脱いだら湯船に浸かっちゃって」
「はい」
「はいザン君こっち向いてよし」
「はーい」
ザンが振り向くと、リュミールはバーディーに抱かれるようにして温泉に浸かっていた。
「あ、あったかいね」
ザンはとりあえずかける言葉が見つからず、ありきたりなことを言う。
「うん。いいお湯」
リュミールは笑顔でそう答える。
「リュミールちゃん。後で色々あるかもしれないけれど、今はゆっくり休みましょ今は、ね?」
「はい。バーディーさん……」
「難しいことは私たちに任せていいから」
「はい……」
バーディーの豊かな乳房に頭を預けながら、リュミールはバーディーの言うとおり、今は
なにも考えないことにした。

258 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/09/08(金) 20:19:18 ID:xwq0e4LL0
やっと復活できました。人間健康が一番ですね。

>>96さん
長いことあいてすいません。まだ温泉浸かってます。
>>97さん
メリハリですか。自分の未熟さが露呈した形です。精進します。
>>ふら〜りさん
覗き見イベントは次に回りましたw
>>114さん
ありがとうございます。やっと退院できました。
>>122さん
ゆっくりペースとなるかもしれませんが、どうにか復活できました。
これからもよろしくお願いします。

259 :作者の都合により名無しです:2006/09/08(金) 20:33:16 ID:X01hUYFx0
お久しぶりだね17さん。体は治りましたか?
バーディ、歩く爆弾みたいなのに意外と母性ありますね。
戦い前の一休みといった感じですか。

260 :作者の都合により名無しです:2006/09/09(土) 11:03:07 ID:OHg5SzGB0
17氏乙。結構、女っぽいバーディに感動したり。

261 :作者の都合により名無しです:2006/09/09(土) 22:05:33 ID:UKE5xaI70
温泉ののんびりした描写は、病み上がりの17さんにはぴったりではないかな
これからものんびりと頑張って下さいね

17さんも帰って来た事だし、ミドリさんやハイデッカさんやうみにんさんもどうか・・

262 :作者の都合により名無しです:2006/09/10(日) 17:19:14 ID:rgs0E9KO0
バキスレも投げ出し多くなってきたなあ
特に長編行ってからが
短編のままならなんとも思わないが

263 :壊す拳と護る拳:2006/09/10(日) 17:52:44 ID:rsH0v6bI0
>>242
「クククク・見事見事・古代の拳闘士とは異質な・だがそれに匹敵する・気迫だぞ・
今のお前は・だが残念ながら・あと二呼吸の後には・お前の拳は・この世から消える・
安心しろ・後ろの男も一緒だ・二人で抱き合って・泣き暮らすがいい」
ゾエビが何か言ってるが、一歩は無視して上体を振り、突進する。
『……いくぞっ!』
一歩がゾエビの間合いに入った。ゾエビが拳を繰り出す。軌道は低めのフック、明らかに
一歩の拳を狙っている。今のゾエビの装甲と怪力で殴られれば、粉砕骨折どころか手首から
先が千切り落とされるかもしれない……が、一歩はもう退かない。退く気などない。
ゾエビの装甲の腹部、小さなヒビに向かって。小さな小さな勝機に向かって、
己の全てを乗せた拳を叩き込む。それだけだ。
『宮田くん、会長、八木さん、本当にごめんなさい。鷹村さん、青木さん、木村さん、
もうリングには上がれないけど、ずっと応援してます。そして久美さ……ぁごっっ!?」
モノローグ中に突然、マヌケな発声。かくんっと顎を外しそうなほど大口を開けて、
ムチウチになりそうなほど首を後ろに逸らせて、一歩はジタバタとたたらを踏んだ。
無理もない。前傾姿勢で全力疾走してたところに、突然後ろから髪を引っ張られたの
だから。おかげでリキ入れて握り締めてた拳が、必殺のパンチがヘロリと流れて、
「な・何・だと?」
それを迎撃しようとしていたゾエビのパンチも空振る。空気を掬い上げるような姿勢で、
腹部がガラ空きだ。間柴と一歩が命に替えてでも狙い打ちたかった、ゾエビのあのヒビが。
『! 今だっっ!』
チャンス! その瞬間、間柴の頭からゾエビへの殺意以外全てが消え失せた。無我夢中
で一歩を止めなくてはと必死に追いかけ、指を開いたフリッカーで一歩の髪を掴んで
引っ張って、何とか止めたのだがそのことすらきれいに意識消失した。
「喰らいやがれええええぇぇぇぇっっ!」
ゾエビのヒビに向かって、フリッカーの集中砲火! 一歩の髪をバンデージにして、
一歩の頭……というか顔面……をグローブにして。これなら拳を保護できるし、
結果として見事にゾエビの意表もつけた、などという冷静な判断はなく。

264 :壊す拳と護る拳:2006/09/10(日) 17:53:31 ID:rsH0v6bI0
ただただ間柴は、叩き込み続ける。寺の鐘を乱打するが如く、一歩の頭で乱打する。
派手に舞う血飛沫は九割以上一歩のものだが、そんな些細なことは無視する。なぜなら、
「あ・が・ぐっ……ギ・ゲ・グ・ゴゴォッ!」
あのゾエビが、回避も防御もできないほど苦悶の表情を浮かべて硬直しているのだ。
くたばれ、くたばれ、くたばれ、くたばれ。それだけを念じて間柴は叩き続けて、
「トドメだこの野郎おおおおおおおおぉぉぉぉっ!」
必殺の凶器(一歩の頭)を右手に持ち替え持ち上げながら、大きく踏み込み振り被って
得意のフィニッシュブロー、体重を乗せての打ち下ろしチョッピングライト!
「ァゲグウゥゥッ!」
潰れるような悲鳴を上げてゾエビがよろめく、後ずさる。見れば腹部のヒビは面積こそ
小さいが無数に増えており、今にもバックル(のような部分)全体が砕け散りそうに
なっている。……やったか?
ゾエビは苦しそうに痙攣し、体をくの字に折り曲げて俯いて、何か言っている。
「……も……」
「! まだやるかっ!?」
「……………………もうゲゲルのルールなんかどうでもいい。この私に対して、
リント如きが苦痛と恐怖を与えたんだぞ。生きてていいと思うか、そいつら」
「な、何を言って」
ゾエビが突然顔を上げて、
「ギェアアアアアアアアゥゥゥゥ!」
吼えたと同時に姿が消えた、のではなく跳躍していた。半分以上沈んでいる夕陽を
背にして、紅い空に赤い甲羅が溶け込む中、目だけが異様にギラついて輝いている。
「ボソグ・ボソグ・ボソギデジャス・リント・ボ・ブズゾロガアアアアァァッ!」
意味不明な、呪詛のような呻き声のような恐ろしげな声……グロンギ語を叫びながら、
ただでさえ怪人と化していたゾエビの顔がさらに歪み、悪鬼の形相で急降下して
くる。人間の殺人鬼などとは比較にならない圧倒的な殺意・悪意を燃え上がらせ、
眼下に立つ間柴に向かっていく。
決死の逆転劇のつもりが、ただ怒りを買っただけなのか……? 絶望した間柴は
呆然とゾエビを見上げて、逃げることも出来ずに突っ立っていた。と、
「グァッッ!?」

265 :壊す拳と護る拳:2006/09/10(日) 17:54:03 ID:rsH0v6bI0
ゾエビが止まった。空中で。まるで標本にされた昆虫のように、ピンか何かで
止められたように。苦しそうに胸を掻き毟っている、その胸の辺りには何やら
松明のように炎が灯り、見たことのない紋章のようなものを象っている。
その炎の紋章から、炎のヒビが八方に走った。それはゾエビの体を這うように
広がっていき、やがてその一筋が間柴のつけた腹部のヒビに到達する。と同時に
炎は一気に燃え上がり、ゾエビの全身を飲み込んだ!

己の身を包む紅蓮の火炎の中、絶命の寸前にゾエビは見た。
4キロ、いや5キロほど先にあるビルの屋上。よほど急いで駆けつけたのであろう、
肩で大きく息をしている男がいた。
エメラルドのような碧色の甲冑に身を包み、流麗な装飾が施された黄金の射出武器を両手
で構えた戦士。ゾエビは知っている。あれは破邪の光弾を放つ武器、ペガサスボウガンだ。
遥か古代、数百に及ぶグロンギたちの、全ての拳と剣と爪と牙と毒と酸と膿をたった一人
で受け止め、己が命を犠牲にして封印の鍵となった、あの忌々しきリントの戦士……無論、
その本人ではない。あれは現代に蘇った、受け継いだ二代目だ!
「ク……ク……ク、ク・ウ・ガッッッッ!」
爆発! 炎の中でゾエビの肉体は砕け散り燃え尽き、その邪悪な魂は永遠の消滅を迎えた。
ビルの屋上に立つ戦士クウガ。その雄姿を、遠くから眩しそうに見上げているのは、
「彼方よりその姿を知りて、疾風の如く邪悪を射抜く戦士あり……空高く翔ける
天馬の弓……か。それにしても、今回は間に合わないと思ったのだがな。あの二人が、
あんなに戦えるとは予想外だった」
純白のドレスを着た妖艶な美女。バラのタトゥの女だ。
「やはり、リントは変わったな。今や我々に抗し得る戦士は、お前一人ではないらしい。
そういえば警察とかいう組織も、徐々に力を着けてきたようだし。楽しみだ」
フフッ、と含み笑いを漏らして、バラのタトゥの女は歩き出す。
「さてと。次のゲゲルは、誰の番だったかな……?」

266 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2006/09/10(日) 17:55:15 ID:rsH0v6bI0
勇次郎vsグロンギなら。毒とか遠距離狙撃とかの不意打ちを喰らわない限り、ダグバ
以外は誰が相手でも勝てそうな気もしますが。さすがに間柴&一歩が勝ててしまうと、
一条さん以下警視庁チームが可哀想なのでこうしました。次回エピローグです。

>>サナダムシさん
ドッペルに続いて今度は憑依霊ですか。ずっと趣向を凝らした派手な相手が続いただけに、
基本というか地味さが効いてます。構図が単純なだけに、これといった攻略法がなくて。
悪霊だけ貫く剣なんてものがあるわけもなく。加藤の声で井上覚醒、自力脱出ぐらいか?

>>17〜さん(祝・復・活! 生活の為にもSSの為にも、体と心は大切に。ご自愛下されぃ)
>バーディーはともかくリュミールがそんなことするわけないだろ
「ともかく」なのかっっ。そんなもんかもと予想はしてましたが、やはりパーティー内
の男性陣にそういう目で見られていたヒロイン1。ヒロイン2もなんだかんだで堂々混浴。
おおらかだなぁこやつらは。でも覗き見バレでボコボコもお約束で見たいし。……シアン?

>>おまけ
死の寸前、ゾエビの脳裏によぎった映像です↓
ttp://www.youtube.com/watch?v=1n5YQ4y2AKI

267 :作者の都合により名無しです:2006/09/10(日) 20:12:26 ID:Jj4An7zh0
ふらーりさん乙。
クウガはおいしいとこ持ってちゃったなw

268 :作者の都合により名無しです:2006/09/10(日) 23:04:26 ID:8uVgLgP+0
ふら〜りさん、これが完結したら長編何本目だ?
末永くがんばって下さい

269 :作者の都合により名無しです:2006/09/11(月) 07:58:55 ID:3GB0MBIK0
特撮おたの面目を発揮してるなふらーりさんは。
正直、クウガはわからないけど楽しいです。
またパタリロ書いて下さい。

270 :バーディーと導きの神〜バカ二人〜:2006/09/11(月) 20:37:54 ID:JQuCmU430
「おうヨキーウ。見張り番頼むぜ」
洞窟の入り口近くにいたシアンが、瞑想していたヨキーウに声をかける。
「おう」
ヨキーウは気さくに答えると、シアンと入れ替わりで見張りに立つ。
「んじゃ俺はちっと奥で休むわ」
「待てシアン!」
わざとらしく肩をほぐす仕草をしてみせるシアンにソシュウが待ったをかける。
「俺も疲れた。一緒に休もう」
ソシュウのその言葉に、やれやれといった表情の牙炎。
「お前らほどほどにしとけよ」
かといってなぜか止めたりはしない牙炎だった。
「シドガー」
ソシュウが一緒に行くかどうかを決めるために声をかけるが、シドガーは被りを振った。
「俺は遠慮しとくよ」
「とかいって千里眼でもう見てんじゃねえのか?」
「人聞きが悪いな。仲間だぜ」
「だからこそ知っておかなきゃならねえこともある」
「あれだけの美人だ。放っておいたほうがバチが当たるてなもんだよな、シアン」
「ん?おう、まあな」
「下賎な野郎たちだぜ」
亜竜人のヨキーウは、さすがにこういう展開には仮にも貴族に連なる身としては同調できない。
「んじゃ、行ってくるッス」
牙炎に断りを入れ、物音を立てないように抜き足差し足で温泉に迫ってゆくソシュウとシアン。
そして問題の湯船が覗ける絶好のポジションを確保した二人は、揃って岩陰から顔を出す。
「あら、ソシュウさんにシアン。あなたたちも温泉に?」
「どわああっ!!」
いきなり正面からバーディーに声をかけられ、思わずしりもちをついてしまう二人のバカ。
しかもバーディーは自分の体を隠そうともしない。
「ほわ……」
山猫のような俊敏さを漂わせるバーディーの裸体に、二人はしばし見ほれてしまった。

271 :バーディーと導きの神〜バカ二人〜:2006/09/11(月) 20:39:27 ID:JQuCmU430
「バーディーさん、服!服!」
あわてて服を持って駆け寄ってくるザン。
『前を隠せ!バーディー!』
頭の中のつとむも怒鳴る。そのあわてように、バーディーは思い出したように答える。
「ああ、はいはい。この星でも人間が服を着ないことに関して特別な理由をもたせているん
だったわね」
視線が外せないソシュウとシアンの眼前で堂々と服を着て、バーディーはザンとリュミールを
連れて洞窟の入り口のほうへと歩いてゆく。
「二人ともゆっくりしてきてもいいわよ」
「は、はあ……」
バーディーのあまりの堂々とした態度に完全に毒気を抜かれた二人は、ぽかんと口を開けて
生返事をするしかなかった。

「動物たちはどうじゃ?」
こんもりとした高台の上、どうにか怪物たちの魔の手から逃れたルアイソーテ軍一行の実質的な
まとめ役のボックウェルは、部下の術者に携帯食を手渡しながら、眼下の怪物たちの様子を聞いた。
「なぜかここまでは登ってくる様子はありません」
皮製のフェイスガードをつけた部下の一人が携帯食を受け取りながら報告する。
「しかし、蜂の一刺しで人間が即死とは、ここは異常です!」
剃髪の部下がこの島の異常性を訴える。
「ここでは強力な抗術のため、我々は術を使えません。一旦引き返して再度部隊を編成してみては?」
フェイスガードの部下が進言するが、ボックウェルはその禿頭をぽんと叩いてこう言った。
「しかしのう。准将の命がなければ引くこともかなわんからのう……。動物どもが上がって
こぬうちに体を休めるしかなかろうて」
ボックウェルは携帯食を黙々と食べるガロウズを見てため息をついた。

夜が明けてすぐにアーマヤーテ軍一行は行動を開始した。
リュミールの導きに従って豊かな密林地帯を抜け、草も生えぬ切り立った崖が続く荒涼とした
岩石砂漠地帯に足を踏み入れていた。
「しかしアレだな。こんな小さい島に密林に砂漠地帯まであるなんて。これで湿地帯や草原が
あったらまるで実験場だな」


272 :バーディーと導きの神〜バカ二人〜:2006/09/11(月) 20:40:16 ID:JQuCmU430
リュミールとザンの後に続くソシュウが誰にともなく話し出す。
「いや、案外その推測は当たりかもしれんぞ、ソシュウ」
牙炎が話に乗ってくる。
「私もそう思うわ。エルデガインが私の想像しているような代物ならなおさらね」
バーディーも牙炎に同意見のようだ。
「どんなもんだと言うんだ?」
これはシアン。
「リュミールちゃんの言っていた『創造と破壊をつかさどるシステム』ってのがヒントね」
「創造と破壊ね……。俺ァややこしい話はダメだ。ソシュウ、任せた」
「あのな……。ま、俺の考えだと先文明を滅ぼしたのがエルデガインだと仮定して、この島に
そのままの状態で存在するとなると、巨大な殺戮兵器ってとこかな。どうだ?」
「ありえるわね。あと、あの怪物たちがある種の制御をなされるよう調整して造られたとすると
なると話はややこしいわよ」
「なんでだ?」
要所で牙炎が話に割って入る。
「エルデガインを手に入れた者は、『自分の都合のいいように生物を造りだせる』と考えてもいい
からよ。これがどれだけ危険なものかは、あの怪物を見たんだから分かるでしょ」
「それじゃあ……」
ソシュウの背中に怖気が走る。
「ますますもってガロウズの奴に渡すわけにはいかないな」
牙炎は目の前の霧の先を見据えたような目でそう言った。


273 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/09/11(月) 20:47:14 ID:JQuCmU430
覗き見イベントはバーディーの貫録勝ちです。

>>259さん
体は良くなりました。ボチボチやっていきます。
>>260さん
弱い者には優しい、力自慢の姐さんがバーディーの魅力です。
>>261さん
のんびりとさせていただきます。
他の先輩方の動向、私も気になります。
>>ふら〜りさん
残念ですが、バーディーの常識ではこうなってしまうのでした。
でもシアンやソシュウはこういうときには率先して行動するような連中ですw

274 :作者の都合により名無しです:2006/09/11(月) 22:09:05 ID:PSP5kzNn0
バーディってこの世界ではかなり美人の設定なの?
竜人とかいる世界では美の基準が分からんがw

275 :作者の都合により名無しです:2006/09/12(火) 08:05:45 ID:QOWPIarq0
休憩が終わって、いよいよ本格的な冒険か。
最近は文章も読みやすくなったね

276 :作者の都合により名無しです:2006/09/12(火) 12:48:42 ID:bC/oBUlm0
>>274
一応、コミックスとか見るとこの作者の描く典型的な美人顔

277 :作者の都合により名無しです:2006/09/12(火) 14:54:37 ID:yrSUF44kO
中学生の千明がオナネタにするくらいには美人かと

278 :作者の都合により名無しです:2006/09/12(火) 22:29:25 ID:YUY6pvPs0
アニメ版の武装錬金のサイトみてておもった
さっちん、福沢裕巳ににてるねぇ

279 :作者の都合により名無しです:2006/09/12(火) 22:57:03 ID:C4B4I6gd0
今度の日曜か月曜には・・
必ず復活する・・かな?

280 :作者の都合により名無しです:2006/09/12(火) 23:12:07 ID:YUY6pvPs0
待っていたぞハイデッカぁあああああああ!

281 :やさぐれ獅子 〜十九日目〜:2006/09/13(水) 01:53:42 ID:Wz/AzTUX0
>>250より。

282 :やさぐれ獅子 〜十九日目〜:2006/09/13(水) 01:55:36 ID:Wz/AzTUX0
 試練十九日目、正午──城門。
 仁王立ちにて、加藤は寄生者と井上を待ち構える。
 まず、密林から石つぶてが複数飛んできた。かなりの速さだが、加藤は危なげなくかわす。
「ふっふっふ、やりますね。さすがは先輩」女の声が茂みから流れる。
 まもなく井上は姿を晒した。手には丈夫な枝に石をくくりつけた、ハンドメイドらしき武
器。女性の腕力とはいえ、頭などに受ければ危険は大きい。
「じゃ、始めましょうか。先輩」
「先輩ってのを止めろ、あいつを真似るんじゃねぇ。ぶっ殺すぞ」
 怒りをあらわにする加藤に、井上に潜む寄生者も応える。
「はいはい、分かりましたよ。それにしても、殺るか殺られるか。アンタ、ちゃんと考えて
きたんでしょうねぇ?」
「………」
「ノーコメントですか。ま、どちらの結末でも、私は楽しめる……!」
 決戦開始。

 決戦よりおよそ二時間前、加藤は起床した。
 なかなか眠りにつけなかったが、結局はぐっすりと熟睡してしまった。やはり疲労は大き
かった。
 体をゴキゴキとならしながら、独りごちる。
「うぅん……快復具合からして八時間は眠ったか。昨日眠れたのが多分二時くらいだろうか
ら、今だいたい十時ってとこか」
 加藤は知る由もないが、おどろくことにこの時刻はほぼ当たっていた。無人島での生活は、
彼に超人的な時間感覚をもたらしていた。
 しかし、喜んでいる場合ではない。あと二時間で井上と戦わねばならないのだ。
「さて、どうするか……」
 二択に対する考えは未だにまとまっていない。
 倒してしまうのがもっとも楽だということは分かっているが、井上を自分の手で倒すなど
考えられない。
 史上もっとも弱く、もっとも倒しにくい敵──これが加藤にとっての井上(寄生者)だ。

283 :やさぐれ獅子 〜十九日目〜:2006/09/13(水) 01:56:45 ID:Wz/AzTUX0
 三十分余りのストレッチの後、本格的にウォーミングアップに入る加藤。
 シャドーボクシングで、攻撃的に体を温める。
 連打が大気をかき混ぜる。
「せいっ! ……シュッ、シュッ。──とりゃあッ!」
 美しい孤を描くハイキック。ひとたびクリーンヒットすれば、身長二メートルを超える巨
漢ですら地に伏す。
(……打てるのか? 俺に)
 技を出すたび、迷いが生じる。
(……当てられるのか? あいつに)
 迷いが迷いが呼び、シャドーボクシング中断。
「無理だッ! 俺にはできねぇッ! 俺にはあいつに殺されてやることしか……ッ!」
 打てない。当てられない。井上を殺すなどあってはならない。
 ならば──殺されるしかないのか。武神をとことん利用して強くなると決心したのに、こ
んなところで道は途絶えてしまうのか。
 ここで死ねば、寄生者はおろか、武神にすら笑われる。独歩にも、刃牙にも、神心会の仲
間にも、もう会えない。むろん井上にも──。
 嫌だ。
「………」
 頭を切り替え、冷静になる加藤。これまでの試練を振り返る。試練には、必ず穴があった。
武神が意図して組み入れたものか、あるいは偶然かは分からない。とにかく、どこかに弱点、
隙があった。
 また敗北の証として、試練たちは倒すとドロドロに溶けていくが、これは致命傷を意味し
ない。気絶、もしくは心を折られることによってもこの現象は起こる。昨日の王者とて、正
拳がトドメとなったものの、あれ一発で死ぬようなことはなかったはず。が、溶けた。
「……これだ」
 加藤はひとつ、対策を編み出した。
 そして、もしこれが失敗したならば──
「どうにでもなれ。なるようになる」

284 :やさぐれ獅子 〜十九日目〜:2006/09/13(水) 01:57:25 ID:Wz/AzTUX0
 決戦開始。
(まずは、出鼻だッ!)
 手製ハンマーを両手で振りかぶり、井上が突っ込む。
 すぐに間合いは埋まり──まっすぐ振り下されるハンマー。
「ぐっ!」
 あえて肩で受け、加藤が照準を定める。
「ここだっ!」
 一本拳で顎を狙う。先端中の先端。揺さぶるべく。

 こんっ。

 気の抜けるような軽音とともに、一本拳は命中した。
 顎という支点を打たれ、衝撃は脳にまで届く。井上は脳震盪を起こした。
「……よしっ!」
 これこそが、彼女をもっとも傷つけずに勝つ手段──成功。
 失神させれば試練は溶けてなくなり、結果寄生されていた井上だけが残る。日頃から相
手をズタボロにすることを信条にしている加藤にとっては過酷な仕事であった。
 地面に眠るようにして倒れる井上。
「……大丈夫か、井上ッ!」
 加藤の声に応え、井上がゆっくりとまぶたを開く。
「あ、あれ……? 先輩、私は一体……?」
「いや、ちょっと色々あってな……。まぁ、どうやら上手くいったようで何よりだ」
「もしかして、また試練だったんですか?」
「あァ、だがもう倒した。安心しろ、これで今日はもう来ねぇさ」
「よかった……。でもまだ終わっていませんよ?」
 言い終わると同時に、加藤の首すじに小さな枝が突き立った。
「……がふっ!」
 枝は頚動脈に触れている。下手に抜けば、死ぬ。
「て、てめぇ……!」
「油断しましたね、先輩」
 首に枝を刺したまま、井上から離れる加藤。まだ寄生者は“敗北”してはいなかった。

285 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/09/13(水) 02:01:20 ID:Wz/AzTUX0
十九日目開始です。

286 :作者の都合により名無しです:2006/09/13(水) 08:03:52 ID:SZa7MEdN0
珍しく加藤が苦悩しているなあ。
意外と、カプる最後の引き金だったりして

287 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/09/13(水) 13:54:38 ID:vOCJ79FQ0
二十三 交差

 ゆっくりと、目を開ける。とうに、雨の奏でる不規則なメロディは止んでいた。
 おそらく、はじめが寝ている間に天候が回復したのだろう。
 そう。切欠は雨だった。
 はじめが当初の予定通りに林を抜けた途端、黒雲が立ちこめ、バケツを逆さにしたような雨が降り出したのだ。
 生憎、着替えはない。それどころか、所持品も一切ない。愛用の凶器すら、持ち出す暇は与えられなかった。
 はじめ個人の趣味としては、雨に濡れながら歩くのは嫌いではなかった。
 だが、今回に限っては、それは出来ない。びしょ濡れで歩いていれば、否が応でも注目を浴びてしまう。
 はじめは周囲を見回して、付近で唯一雨宿りができそうな、林の近くに設置されていた公衆トイレに駆け込んだ。
 そして、人目を避ける為に、一番奥の個室に籠った。
 お世辞にも、衛生的とは言えない、汚らしいトイレだった。
 変色した壁ではカラースプレーやマジックの類で描かれたと思われる落書きが醜悪な自己主張を繰り広げており……
 おまけに、個室はおろか、洗面台に至るまで、強いアンモニア臭が漂っていた。
 はっきり言って、長居はしたくない場所である。
 はじめも、雨が止み次第、すぐに立ち去るつもりだった。
 しかし、通り雨だろうと甘く見ていた豪雨は、いつになっても止む気配を見せない。

288 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/09/13(水) 13:55:17 ID:vOCJ79FQ0
 その内に、極度の緊張と累積した疲労から、はじめは便座に座ったまま、眠り込んでしまい……
 結局、ここで一夜を明かす羽目になってしまったと言う訳である。

 新宮はじめは、もしかしたら世界中で最もみじめな生物なのかもしれない……
 起き抜けで朦朧とした頭で、はじめはそんなことを考えた。精神的に追い詰められつつある。
 立ち上がり、のろのろとかぶりを振る。
 しっかりしろ、新宮はじめ……!
 多くの生命を奪ってきた死の王がこの体たらくでは、殺された生贄たちも浮かばれまい。
 最後の時まで強く、そして気高く。同情の余地など微塵もない、完璧な悪人でいなければならない。
 それは、自らの意思で修羅の道を選択した、はじめなりのプライドだった。

 公衆トイレを出る。数時間振りの青空が、目に眩しかった。
 と、はじめは、一人の少年とすれ違った。何気なく、少年の歩いて来た方向を見る。
 道路脇に、一台の自転車が停められていた。そして……その後部には、リュックが無造作に置かれている。
 後ろを振り向く。この自転車の持ち主であろう少年は、はじめと入れ違いに公衆トイレに入ったようだった。
 念の為、周囲を確認したが、人目は一切ない。今がチャンスとばかりに、はじめはリュックの中身を物色する。
 中身全部を検めるまでもなく、はじめはこのリュックを奪う事を決めた。
 何故なら……リュックの中には、食料が入っていたから。理由は、それだけで十分だった。
 何もかもを失い、追われる立場のはじめ。今の彼が最も必要としているのは、食料なのだ。
 腹が減っては戦は出来ない、とはよく言ったものである。窮地に陥ったら、それこそ草でも食む覚悟だった。
 それだけに、このリュック発見は、正に神の助け。いや、こんな悪人を助けるのは、悪魔だろうか。
 まあ、そんなのはどちらだって構わない。思わぬ幸運に頬を緩めながら、はじめはリュックを抱えた。
 そして、急いで林の中へと逃げ込む。当面の食料が確保できたのなら、焦る事はない。
 多少時間はかかっても、目立たないよう行動するのが得策と言うものだった。

289 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/09/13(水) 13:56:19 ID:vOCJ79FQ0
二十四 幸運

 新宮はじめが、リュックを抱え林に分け入って行く……
 その様子を呆然と見詰めたまま、微動だにしない一人の男がいた。
「見付けた……」
 からからに渇いた喉から、掠れた言葉が漏れる。
 新宮はじめを追い、途中で一度、見失った。
 しかし、殺害された奈々の無念を思えば、簡単に復讐を諦められるわけもない。
 自分だったら、何処に逃げようとするか。自分だったら、何処に隠れようとするか。
 そんなことを考えながら、丸一日以上、マチェットが入ったバッグを持って、付近を徘徊した。
 途中で雨が降り出したが、それでも歩みは止まらなかった。
 髪が額に貼り付く。服がびしょ濡れになる。水を吸ったバッグが重量を増す。
 今頃、はじめを血眼になって探しているだろう警察に、不審者として職務質問を受けてもおかしくない格好だ。
 でも、構わない。警察に発見されないと言う『幸運』すら望めないようでは……
 新宮はじめを発見するなどと言う『奇跡』など起こせる筈もないと、そう思ったから。
 そして……彼はついに『奇跡』を目の当たりにしたのだった。
 奈々が導いてくれている。疑いの余地なく、そう確信する。

290 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/09/13(水) 13:57:03 ID:vOCJ79FQ0
二十五 盗難

 一が異変に気付いたのは、公衆トイレから出てすぐだった。
 自転車の後部に置いてあった筈のリュックが、目を離している隙に消えている。
 不幸中の幸いと言うべきか、ウエストバッグに入れておいた財布と携帯電話は無事だった。
 だが、そんな事はこの際問題ではなかった。それよりも大切な物が、あのリュックの中にはある。
 地獄の傀儡師――高遠遥一が一に送りつけた手紙と、それに同封されていた『犯罪ガイドマップ』だ。
 そのマップは一見すると、ただの味気ない住所の羅列に過ぎないのだが、実際は違う。
 そこに記されている住所は全て、天性の犯罪者である高遠が『犯罪の気配』を嗅ぎ付けた場所。
 今後、高確率で『殺人事件が発生すると思われる舞台』なのである。
 一はその手紙が切欠となって、矢も楯もたまらずにカンパを集め、自転車で旅に出たのだ。
 一は元々、几帳面な性格ではない。ガイドマップのコピーなどは取っておらず、原本しか所持していなかった。
 その原本を紛失したとなっては、旅の目的そのものを見失ったも同然である。
「ったく、参ったなぁ……こんな辺鄙な場所で置き引きかよ」
 一人ごちてから、くしゃくしゃと頭を掻き毟る。考え事をする時の、いつもの癖だ。
 一は少しばかり思案した後、ウエストバッグから携帯電話を取り出す。
 携帯電話は『ルーウィン』での事件の後、いつでも連絡が取れるようにと美雪に持たされたものだった。
「駄目元で、オッサンに連絡してみるか……」
 魔術列車事件の時。高遠は大胆不敵にも、警視庁に犯行予告として壊れたマリオネットを送り付けてきた。
 高遠は根っからのマジシャンであり、確実性よりもパフォーマンスを優先して犯行を計画している。
 今回のケースでも、一だけでなく、高遠を知る警察関係者にも同種のコンタクトを試みている可能性は高い。
 一は慣れない手つきで、確かめるように、携帯電話のボタンをプッシュした。

291 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/09/13(水) 13:59:01 ID:vOCJ79FQ0
毎度ありがとうございます。前回投稿は>>235です。

・結末
物語の最初へと繋がって行くので、展開の大枠は読めると思います。
ただ、その途中に一つでも「予想外」があれば嬉しいです。
・ラストスパート
ですね。前回に比べると大分短いですが……
あまりに長いと、私の場合完結まで時間がかかり過ぎますので
このくらいで丁度よかったのでは、と思ったり。

292 :戦闘神話:2006/09/13(水) 16:21:53 ID:q9EkCsVW0
Part.5

「友よ、これが君にとって最期の眠りになるだろう」

バタフライは、修復フラスコへ安置した盟友に声をかける。
超常選民同盟の盟主としての貌ではなく、気の置けない友と歓談する貌だ。
パピヨンという被験者のおかげでこの修復フラスコは磐石のものとなった、
その点だけ取れば良い拾い物をしたといえるだろう。

「…そうだな」

磨耗した声だった。
妻を喪い、
戦友に刃を向けられ、
愛娘は化け物へと変えられ、
逃れ逃れてこの東方へと落ち延びてはや百年。
ヴィクターは、もう既に人と呼べる生き物ではなくなっていた。
修復フラスコが完成するまでの百年間、快癒しない疵をかばう為、しばしばヴィクターは年単位での長い眠りについていた。
その夢は常に悪夢であり、正夢であり、この上なくおぞましい記憶の反芻だった。
夢の中で彼は常に憎悪を錬成し、妻の末期を思い返し、戦友を手にかけた事を思い返していた、ただ、まどろみの中で。
だが、それでも、彼は人を信じて居たかった。
錬金術に傾倒する事もなく、人として生涯を全うする者達を信じていたかった。
そうした無辜の人々を守るためだけに、ヴィクター・パワードはその為に錬金の戦士となったのだから。
人でもホムンクルスでもない何かへと変わり果てた今でも、ずっと信じて居たかった。

293 :戦闘神話:2006/09/13(水) 16:22:50 ID:q9EkCsVW0

故に、苦悩はより深く、濃く、彼の心を抉り続ける。
そんな彼を、バタフライは誰よりも痛ましく想っていた。
だから、その人形の力を知ったときには狂喜乱舞したものだ。
伝説の人形師・ローゼンの生み出した七体の少女人形、ローゼンメイデンシリーズ。
その第四ドール・蒼星石(そうせいせき)。
オッドアイで男装の少女人形は、螺旋を巻いたバタフライをミーディアム・契約者と認めると、
己の目的を打ち明けたのだった。
彼女たちの目的は、彼女たちローゼンメイデンを創り出した一人の人形師の求める完璧な乙女・アリスへとなること。
その為に同じローゼンメイデンの七姉妹同士争い、
彼女たちを命ある人形せしめている賢者の石・ローザミスティカを奪い合うのだという。
蒼星石と共に目覚めた双子の姉・翠星石(すいせいせき)は彼女の決意を聞いた時、驚愕し、そして逃げ出した。
信じられなかったのだろう、是非もない。
聞けば、もっとも長く過ごした片割れなのだという。
彼女の本音は、バタフライには容易に察しがついた。
片割れでは居たくないのだ、彼女は。
生真面目で融通が利かないその性を、鏡写しにしたかのような彼女の姉は、おそらく気が付きたくなかったのだろう。
故に、蒼星石は選択したのだ、別離を。

バタフライの願いは只一つ、ヴィクターの懊悩を取り除く事だけ。
その結果、只憎悪のままに殺し尽くす獣が世に放たれようとも構わなかった。
自分に、蝶のように飛ぶ羽を与えてくれた彼への最大の恩返しなのだから。
たとえその結果、彼の糧となって果てようが知ったことでは無い、むしろ望む限りだ。
むしろ、L.X.E.ですらヴィクターへの餌箱でしかないのだ。
覚醒したばかりのヴィクターを錬金戦団の手から守り、かつ高い滋養の餌としてバタフライはこの超常選民同盟を導いてきた。
もう一人の同士、ムーン・フェイスことルナール・ニコラエフすら欺いて。
バタフライが、蝶野爆爵が、人であることを辞めてまで追い求め続ける錬金術の極致、
それと一体化できるのだ、それ以上の至福などありえる筈が無い。

294 :戦闘神話:2006/09/13(水) 16:27:11 ID:q9EkCsVW0

「今から私は、正確に言うのならば私とこの蒼星石が、君の心の中へと潜り、
 君を縛り続けているものすべてを切り払う。」

バタフライの目にあるのは、あの蒼い碧い青い月の下での情景だった。
人とホムンクルスと人でもホムンクルスでもない何か、
この三者が集い、結成した同盟はいまや最終局面を迎えようとしていた。
復活のときは、近いのだ。

「最期に…、最期に確認しておきたい…。
 ヴィクター、本当に良いのだね?君を縛る人間性という鎖を断ち切ってしまっても。
 もう、戻れなくなるのだよ?」

未練は、誰のものだったのだろうか。
ヴィクターの、磨耗した眼差しは、肯定以外の何物でもないというのに、バタフライは思わずたずねていた。
人であった頃への、彼自身気が付かないほど小さな小さな未練が、尋ねさせた原因だった。
蒼星石の力を説明したとき、ヴィクターはこの道を選択した。
人であることにもう、ヴィクターは耐えられなくなっていたのだ。
人の心のままの百年は、諦観と絶望の連続だった。
錬金戦団の活動を随時知るに至り、ヴィクターは絶望を掘り下げていった。
ヴィクターの存在を教訓にし、二度とこのような悲劇を起こさないように行動したのだったら、まだ彼は救われた。
だが、現実には錬金戦団はヴィクターそのものを、
彼の妻アレクサンドリアが生涯を懸けて作り上げた黒い核金そのものを封印し、忘れ去ろうとしたのだ。
そして、その過程において彼ら夫妻最愛の娘は生死不明と成り果てた。
嘗て希望を託し、無辜の人々の平穏を守ろうと命を懸けて戦い、共に辛苦を分かち合った戦友だった者たちからの、
お前など居なかったと言わんばかりの、不都合から目をそらし、耳を塞ぎ、口を噤んだその姿。
世界凡てが彼に向かって牙を剥いたかのような仕打ちは、ヴィクターの心をへし折った。
その時、ヴィクターは人として最期の涙を、赫い紅い赤い朱い涙を流した。
バタフライは、蝶野爆爵は、ヴィクター自身が化け物へと変えてしまったようなものだ。
彼に対しては友情の他に、ただひたすらに、すまないと思う。

295 :戦闘神話:2006/09/13(水) 16:32:56 ID:q9EkCsVW0
ヴィクターが望んでやまなかった平穏の象徴、
それを自ら捨ててまで、バタフライはヴィクターと同じ暗黒へと堕ちていった。
妻子が居た、孫も居た、社会的地位も名誉もあった、そんな彼をこんな魔道へと誘ってしまった事を、
ただひたすらに詫びる気持ちで一杯だった。
人が人としてその生涯を全うする、
それがどれほど素晴らしいことなのか分からぬバタフライでもなかったろうに。
もし、自分があの夜バタフライと出会うことが無ければ、爆爵は爆爵として生涯を全うしたであろうし、
この呪われた己はとうの昔に朽ち果てていただろう。

「構わない…」

人としての心を捨て去ることが、彼の友情への唯一の返礼。
この世のあらゆる錬金術を消し去る獣を生み出すこと、
それこそが、ヴィクターとバタフライの一つの指標だった。

「君の友誼に報いることができるのならば、オレはそうしよう…」

痛ましいモノを見るかのような、労わり合うようなその会話は、
果たしてホムンクルスは化け物なのかと疑って仕舞いかねないものだった。
蒼星石は、固い表情をしたままでそんな二人を見ていた。
彼女とて、姉妹たちが憎いわけではない。
出来るならば、愛しい姉妹たち、特に姉である翠星石とは戦いたくない。
同じ顔をしたこの姉を傷つけたくない。
だが、いつまでも姉の庇護下に居られるわけではない。
父、ローゼンが自分たちを手放したように、翠星石と離れ離れになる日は必ず来る。
理不尽にその日が襲い掛かるのなら、いっそ自分で、そう思ったのだ。

296 :戦闘神話:2006/09/13(水) 16:36:32 ID:q9EkCsVW0
彼女の持つ大鋏は、心のしがらみを切り取る庭師の鋏だ。
その鋏を自分に使うことは出来ないけれど、自分の意思で代用はできる。
人は心という庭園を持っている。
その庭園を整備し、美しく保つことが出来るのが彼女たち双子のドールの能力。
使い方しだいで廃人にもできる。
心の庭園の中心に位置する、人格という樹。それを切ってしまえば人は壊れる。
彼女の姉、翠星石のもつ如雨露は心の樹に慈雨を降らせることが出来る。だが、過ぎた水は根腐れを起こす。
心の樹といえども同じ事だ、腐敗した心の樹を持つ人間など、つまるところは廃人だ。

「おやすみ、ヴィクター。
 良い夢を…」

「おやすみ、バタフライ。
 良い夢を…」

修復フラスコ内に培養液が満たされる中、ヴィクターは目を閉じた。
同時に、バタフライも目を閉じる。
この悲しき宿命を背負った友へ黙祷を捧げたのだ。
一瞬のまどろみの果てに、獣としてヴィクターは生れ落ちる。

「むーん♪
 素晴らしい!素晴らしい!素晴らしいよ…
 これこそ人間…」

その二人を、冷笑する者がいた。
ムーン・フェイスことルナール・ニコラエフである。
錬金戦団とヴィクターを「共食い」させ、消滅させる。
時間経過以外は万事彼の計画通りに進行中だ、思わず声が弾んだとしてもいたし方あるまい。
百年もかかってしまったが、ヴィクターは向うに、己は此処に、万事順調だ。
愉悦に歪む三日月のおぞましい姿を、一人の少女に目撃されていたとしても。
今の彼には気が付く術すらなかった。

297 :戦闘神話:2006/09/13(水) 16:38:46 ID:q9EkCsVW0
part.6

死神に嫌われた人間。
何度も死に瀕するような目にあいながらも無事生還する事のできた人間をさす言葉だが、
五人の元青銅聖闘士、神聖闘士ほどこの言葉が似合う連中は居ない。
紫龍もまた、そんな死線を潜り抜けてきたものの一人だ。
廬山五老峰にて黄金聖闘士にして冥闘士の監視者、天秤座・ライブラの童虎に学び、
このたびの聖戦ではアテナを守って最終決戦を戦い抜いた彼も、瞬同様四年前、弟子をとった。
瞬ほど師としての才があったわけではないのか、彼の性分からか、今の彼の弟子は麒麟座・ジラフの麒星だけだ。
弟子をとるのは聖域の中枢の一画である当然の責務だが、彼は後進育成だけしていれば良いわけには行かない。
童虎から受け継いだのは、聖闘士の技と魂だけではなく、影の教皇としての任務も含まれていたのだ。
聖戦が終結し、ようやく聖域の業態が正常化した頃、紫龍は兄弟子であった王虎と再会した。
紫龍が童虎の弟子となった直後、聖闘士の才なしとされ、童虎の下を去っていった人間だった。
短い付き合いだったが、豪快な王虎は良い兄貴分として紫龍の記憶に残っていた。

「生きていたか!紫龍!」

「王虎!あなたこそ!」

久方ぶりに再開した王虎は、当時の面影を残してはいるものの、いささか影を纏っているようにも思えた。
その理由は、童虎亡き影の集団のまとめ役としての責務であった。
王虎は童虎よりこの影の集団の副長としての責務を授かり、
アテナと射手座の黄金聖衣をサガの魔手より守り続けてきたのである。
紫龍と入れ替わりに童虎の下を去ったのは、影に専念するためだったのだ。

「俄かには信じがたい事かも知れん。
 だが、紫龍。お前には我らの長と成ってもらわなければ成らないのだ」

強い意志の篭った王虎の眼(まなこ)は、嘘偽りや冗談で言っているわけではないという証左だった。


298 :戦闘神話:2006/09/13(水) 16:41:49 ID:q9EkCsVW0

「なんだと…?」

驚愕する紫龍。
敬慕する老師の隠された一面を垣間見た直後に、今度はその長になれというのだ。
いかに紫龍といえども、驚くより他に術を知らなかった。

「オレは所詮代行にすぎん。
老師にもしものときがあれば、老師の最後の弟子である紫龍、お前を長にと思っていた。
黄金聖闘士を制して十二宮を踏破し、あの海皇を制し、そして冥王を打倒したお前ならば…」

兄弟子の言葉は、重く紫龍にのしかかる。

「お前ならば、この地上を守る影の聖闘士の長という役目を、任せることが出来る!」

その言葉に、紫龍は時間の流れを知った。
過去の王虎は、我が強く、己の実力を過信する傾向が強かったのだ。
最後に王虎と会ったのが七年前の初秋、七年という歳月は、血気盛んな彼に怜悧な目を持たせていた。
思えば、あのサガ率いる三人の黄金聖闘士と聖域と暗闘を繰り広げていたのだ。過信はすぐに死につながる状況下、
聖衣すらもたない彼が生き残るためには、現実をすぐさま理解する怜悧な目が必須だったのだ。

「もし、断ればどうなる…?」

紫龍の言葉に、王虎は不意打ちをくらったかのような顔になり、辛そうに顔を伏せた。
それが、答えなのだろう。
童虎という巨大な支柱を喪った現在、影の集団はその意志をまっぷたつに分けていた。
聖域の表に出て聖域諜報部と一体化すべきだという一派と、
このまま影のままで居るべきだという一派に分かれていたのである。


299 :戦闘神話:2006/09/13(水) 16:44:50 ID:q9EkCsVW0
今はまだ小規模な意見対立だから良い。
だがこのまま放置すれば、二つの派閥は武力衝突を起こしかねない。
影として様々な敵対組織の内部分裂を見てきた彼の目には、その恐ろしい未来がありありと見て取れた。
もとより血気盛んな聖闘士候補生だった連中である、影に身を潜めたといえ、その熱い血潮は枯れては居ない。
小さな亀裂かもしれない、だが、亀裂はすぐに成長する。

「結論は、すぐでなくとも良いさ…」

たっぷり三十秒は時間をかけて、王虎はようやくそれだけの言葉を吐き出した。
王虎は、童虎の直弟子とはいえ、聖闘士ではないのだ。それがこの事態を収拾させられない最大の要因であった。
聖域という組織において、聖闘士という位は実は非常に高い。
最下級とされる青銅の位ですら、通常の軍組織に照らし合わせるならば尉官に相当する。
いくら聖闘士クラスの実力を持つとはいえ、聖闘士でないという王虎の身の上では、
最終的な解決を行うには不利すぎるのだ。
童虎自身、聖戦終結後は王虎に全権を任せる腹積もりだったのだろう。
冥王との決戦に臨んで青銅聖闘士五人を最前線から外したのがその証拠だ。
だが、この事態は童虎の予想を超えるものだった。
童虎は事実上ゼロからこの影の集団を立ち上げたが、組織というのはある程度の成熟を迎えると、
創設者の手を離れてしまう事を失念していたのだ。
老師の遺志を違えることに成るが、聖域の暗部を知悉したこの集団の分裂は、
聖戦終結後の世界情勢を一気に暗転させかねない。

「…顔を上げてくれ、王虎。
 俺は、嘘が嫌いだ。
 虚言を用いて欺く事を憎んでさえ居る。
 だが…」

300 :戦闘神話:2006/09/13(水) 16:47:13 ID:q9EkCsVW0

その言葉に、王虎は弾かれた様に紫龍を見やる。

「戦いにおいて、愚直は悪なのだとも理解している。
 正邪合い争えば邪が打ち勝つとも言う」

両者の苦悩は深い。
紫龍は誠実な男だ。恩義には命がけで報い、友誼には必ず応え、理不尽は許さない、そんな男だ。

「俺は、俺を此処まで育ててくださった老師の恩義を決して忘れない。
 そして、僅かな間だったが良き兄としてあった貴方を忘れていない。」

紫龍、と呟いた王虎の顔を真っ直ぐに見ながら、彼は続ける。

「承る。
 春麗にまた、心配をかけてしまうな…」

紫龍の、その苦笑まじりの一言は、王虎に滂沱の涙を流させていた。
そして、四年。
紫龍と王虎の二人は絶え間なく戦っていた。
日に、影に、聖域をねらう組織は多い。
中でも、最大の敵はトゥーレ協会という組織だ。
グラード財団諜報部や、聖域諜報部、
さらには影の集団をもってしても全貌を明らかにできていない、謎の集団なのである。
別に彼らが無能なわけでも、紫龍の手腕が劣っているわけでもない。
影の集団の優秀さは、デスマスクの年俸の使途、
各地の愛人への仕送り、を一日で調べ上げてしまっていた事からしても分かるだろう。
因みに聖闘士の給金は年俸制だ。
紫龍たち元青銅聖闘士五人、青銅聖闘士五人、城戸光政の子たちは、例の銀河戦争の一件で口座が凍結されており、
その後のサガの乱をへて聖戦終結時まで凍結されたままだった為知らなかったのだ。
ちなみに、一流とされるプロスポーツ選手の平均年俸より一桁ほどおおかったりする。

301 :戦闘神話:2006/09/13(水) 16:48:55 ID:q9EkCsVW0
最下級の青銅でさえそれくらいもらっているのだ。
最上級の黄金聖闘士ともなればギリシア郊外に豪邸を建て、
姉と甥を何不自由しない生活を贈らせるくらい容易い金額だったりする。
現在の紫龍はその殆どを堅実に貯金していた。
たまに五老峰へと戻る時は、春麗に手土産もっていったりするくらいに使うだけの為、
たまる一方なだけ、というのが真相だったりする。
王虎からの定時報告を携帯電話で受けた紫龍は、ため息をついていた。
紫龍はこの手のデジタル機器に苦手意識がある。今でも時々間違う。瞬などはすぐに使いこなしていたのだが。
なお、全聖闘士中、もっともメールを打つスピードが早いのはカメレオン座のジュネである。
実力も背丈も瞬に追い抜かれた彼女が、唯一瞬に勝っている部分なのだそうだ。
この二人のやり取りは初々しくて愛おしい。紫龍も人の子、他人の色恋沙汰には興味がある、
それが血よりも濃い絆をもった戦友といえども。

「師匠、例の怪物の情報に変化があったのですか?」

伺うような声の主、麒星は、この影の集団を知る数すくない聖闘士の一人だ。
戦友である四人の神聖闘士すら知らないことを踏まえれば、麒星がいかに紫龍の信が篤いか分かるだろう。
口堅く、義理堅く、そしてなによりも決して弱音を吐かないのが麒星の性分だった事も一因だったのだろう。
そんな彼の性格をミスティは美しいと思ったのか、
麒星はミスティの必殺拳であるマーブル・トリパーを授けられた唯一の弟子だった。
彼はおそらく「化ける」だろう。何らかのキッカケさえあれば、
この四年で鍛えに鍛えたその小宇宙が黄金の輝きを放つと、紫龍は確信している。
その時こそ、再び聖域に聖剣の煌きが蘇るだろう。
だからこそ、こうして自分について回ることを許しているのだし、実戦経験を出来るだけ積ませたいのだ。
死線を潜り抜けることによって八識に覚醒した自分たちのように。

「いや、依然なにもない。
 だが、紛失文書追跡の任で瞬とアステリオンがドイツ入りするそうだ」


302 :戦闘神話:2006/09/13(水) 16:50:10 ID:q9EkCsVW0

長身に、毛が立つほど短く切った髪の毛と、気の強そうな瞳に日焼けした肌、
背丈以外は師・童虎の若かりし頃はこんな感じだったのだろうか?と思わなくも無い紫龍だった。

「アステリオンさんだけじゃなく、瞬さんもですか?
 大事になっちゃいましたね…」

神聖闘士が聖域を空にする。
アテナの警護以外でこのような事態というのは、異常事態以外の何物でもない。
現在、聖闘士と拮抗する戦力を有する組織など存在しない。
城戸光政が一代で築き上げたグラード財団の財力と聖闘士の戦闘力の融合した現在の聖域は、難攻不落の要塞に等しい。
だが、その難攻不落の要塞を陥落させた人間も居るのだ。現にここに。
故に、紫龍は現状を楽観しては居ない。

「ニコルのことだから星矢を呼ぶとは思うのだが…。
 一時的とは言え、聖域にアテナも黄金聖闘士も神聖闘士も居ない。
 シャイナたちが居るとはいえ、大事が起こらなければ良いが…」

今は日本で姉と共に暮らしている親友の顔が、紫龍の脳裏に浮かんだ。
聖闘士としての報酬は姉と二人で生活するには大きすぎる、
そういって普通の勤労青年をしている星矢の姿が、紫龍にはまぶしい。
勿論、聖闘士としての任務があればすぐさまはせ参じるし、
なにより星矢はアテナに最も近しい聖闘士である。
出来るなら、彼にはずっと真っ直ぐでいて欲しいと思う。
人が曲がらずに生きていける為には、影で曲がる人間が必要なのだ。
友が、愛する者が、真っ直ぐに生きていけるのなら、自分がいくら曲がっても構わない。
龍星座・ドラゴン紫龍とはそういう男だ。
だからこそ、麒星はミスティに次いで生涯の師と仰ぎ、兄弟子である王虎が頼ったのだ。

「一応、さぐりを入れてみますか?」


303 :戦闘神話:2006/09/13(水) 16:55:59 ID:q9EkCsVW0

この度の龍騒動の調査、はじめから何かおかしいという違和感を、紫龍も王虎も麒星も抱いていた。
まず、現地に飛んで分かってみたことだが、龍騒動が噂になっているのはごく一部であり、
それも目撃者が酔客や不良少年たちなど、情報源としては些か信用の置けない者であった事。
次に、例のトゥーレ協会が活発に活動している圏内にその目撃情報が限定されて居る事。
三つ目は、これが一番の違和感だったのだが、現地マスコミ、
特にゴシップ専門誌に全くといっていいほど取り上げられては居ないという事だ。
まるで聖域から聖闘士を誘い出すかのようだ。
そして、今度はアステリオンのみならず瞬までトゥーレ内定の任に就いた。
露骨、ともいえる。紫龍も、麒星も、一抹の不安を晴らせないで居た。

「そうだな…。
 不安は小さいうちに潰して置こう」

言うなり、紫龍は携帯電話との悪戦苦闘を再開した。


304 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2006/09/13(水) 17:03:24 ID:q9EkCsVW0
鈴置氏の声で「廬山百龍覇」が聞きたかったなぁ…
銀杏丸です
因みに、麒麟は麒が牡で麟が雌。
鳳凰も同様で鳳が牡で凰が雌を指すのだそうです。
臥龍・鳳雛がいい例ですね
語感がいいので創作物じゃ多用されてますが、
麟童や井萩麟は女性名というオッソロシイことにw
俺、福沢祐麒くらいしか麒がつかわれてるキャラクターしらねぇや…

>>213さん
前作の文体に近づいてきているのは、
自分の中でようやく復調してきた証かなぁと思っております
聖闘士連中を書くときはこういった書き方のほうが話が進む進むw
アステリオンの活躍に乞うご期待!

>>215さん
今回、劇中で紫龍に言わせていますが、
実はpart.5終了時で聖域で黄金に該当する戦力は皆無です
シャイナ・ガイスト・市・那智に瞬の弟子数人がいる状態だったりします
厄いですねぇ
因みに邪武は沙織嬢の馬ならぬガードマンをしてるんじゃないでしょうか?
処女神のアテナに処女の守り神ユニコーン、良いネタになりそうだったのに不遇なり

>>216
ハガレンは実はアニメ版が元ネタだったりします
なので原作未読でも大丈夫ですよ
原作では疾風怒濤の急展開で目が離せない状態です

305 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2006/09/13(水) 17:09:39 ID:q9EkCsVW0
>>217さん
菊ねえ、竜児、剣崎、石松、支那虎、河井…
パチスロはねぇだろ、オイ
星矢関連で好調なのは聖闘士聖衣神話だけですよ、ハハハハ…
故に、ヒルダと愉快な仲間たちの登場は近し

>>17〜さん
露天風呂!それは浪漫!
露天風呂!それは宇宙!
露天風呂!それは銀河!
やっぱりいいですねぇ♪

>>スターダストさん
少し安心してみたりしていますw
ヴィクターは超人になんてなりたかったわけじゃなく、
ただ、自分の力が今を生きる人々の幸福に繋がると思って戦って来たんでしょう
己の手で最愛の妻を死なせ、戦友たちと殺しあう修羅に落ちてしまったとはいえ
そんな彼だからこそ、自分の存在によって運命を狂わせて仕舞ったバタフライとの奇妙な友情
そして利用されていることを分かりつつムーン・フェイスとの同盟関係、そんな感じで書いてみた次第です

>>ふら〜りさん
貴鬼→瞬・アドニス→紫龍・麒星→
氷河・アスガルドチーム→沙織と星矢・星華姉弟という順で書いていきたいなぁと…
星矢勢は半数がオリキャラという事態になりそうで暗鬱です
彼らが五人の元青銅聖闘士を踏み台にするような事が無いように気をつけたいです
メアリー・スーなんて言われないように気をつけます、ハイ
あと間柴、いくら一歩が石頭でもそれはマズイだろう、でもさすがだw

銀杏丸でした

306 :作者の都合により名無しです:2006/09/13(水) 20:17:13 ID:glz0PjPQ0
本当に申し合わせたようにまとまってくるな、平日にw

>サナダムシさん
井上さんを取るか、武道家としての強さを取るかですな
正当なヒーローならともかく加藤だからな予測はつかんな

>かまいたちさん
刻一刻と大団円?が近づいてくる。この作品も本当にクロリティ高いな
暗闇から少しずつ光が差し始めたような、そんな『奇跡』だな

>銀杏丸さん(少し長いって、一回の投下分。2回に分けて欲しい量だ)
このスレで大人気の武装錬金軍団がいよいよ本格参入ですな
正直、光の速さで動くような連中にどう対抗出来るかわからんが楽しみ。

307 :作者の都合により名無しです:2006/09/13(水) 23:27:22 ID:XVTCp2b90
>サナダムシ氏
最弱にして最強の相手を前に、加藤はどうも鬼になりきれませんね。
不意打ちはもっともケンカで有効な手段なのに、闇社会では百戦錬磨の加藤が
あっさりとそれにかかってしまうとは。
アンチヒーローの加藤だからこそ、かかってしまうのかも知れませんが。


>カマイタチ氏
はじめの惨めさが、だんだんと近づきつつあるエピローグに向けて加速しいって、
でも、死の王であるという自負もあり、誇りもあり・・。
どのような着地点で終局するかわかりませんが、決して期待は裏切らないとはわかります。
もう少し、この世界に浸っていたいとは思いますが・・


>銀杏丸氏
俺の好きなムーンフェイスたちが登場して、役者はこれで揃ったのかな?
オリキャラも重要な役どころを占めてるし、この物語は本当にキャラが多いですね。
更新少ないのに。(冗談です)紫龍は聖闘士でもっとも誠実な男だから、
この話でもきっと中心軸の一人ですね。


308 :作者の都合により名無しです:2006/09/14(木) 00:07:06 ID:HI6M1o1m0
かまいたちさんは相変わらず商業レベルだな。恐ろしい。

309 :作者の都合により名無しです:2006/09/14(木) 07:49:48 ID:DT0D0od/0
長いって銀杏丸w
復活してくれたのは嬉しいけど。
仕事忙しそうだな。
SS共々頑張ってね。

310 :作者の都合により名無しです:2006/09/14(木) 12:17:48 ID:MHX89zmi0
・金田一少年
最後はカタルシスをどばっと解消できるのか?
氏曰く、爽やかな幕切れらしいけど、ハッピーエンドは難しいかな?
でも名作が終わるのは寂しいな。

・戦闘神話
長いってwでも、今回は長いなりにエピソードが詰まってるね。
敵の連金チームと、紫流を中心とした聖矢チームと。
でもやはりこの分量は2回に分けてほしい

311 :作者の都合により名無しです:2006/09/14(木) 18:44:30 ID:mT644t4g0
かまいたちさんの日常が気にかかる。
普段からこんな事考えているんだろうかw

312 :やさぐれ獅子 〜十九日目〜:2006/09/14(木) 19:32:37 ID:oVz9bQDz0
>>284より。

313 :やさぐれ獅子 〜十九日目〜:2006/09/14(木) 19:33:22 ID:oVz9bQDz0
 どうにでもなれ。なるようになる。
 早くも戦いは最悪のケースに陥った。
「失神で決着とは、ずいぶん甘くなられたものだ。やはり戦いとは命の奪い合いをしてこ
そでしょうが」
「ぐっ……!」
 ハンマーを携え、井上が歩いてくる。
「下らぬ情など捨て、いつも通り戦えばいいのです。さぁ!」
 ぶんぶんと振り回すハンマーを井上。かわす加藤。
 完璧に欺かれた。てっきり寄生者が消え、井上が戻ってきたのかと早合点した。よりに
よって首に深手を負ってしまうとは。
 寄生者は単に加藤を悩ませるだけの試練ではなかった。殺人も上手い。もう少しずれて
いれば、さっきの一撃で加藤は絶命していた。
(わざと殺されるってならまだしも、本当に隙を突かれて殺されたんじゃ、洒落にもなら
ねぇっ!)
 ハイキック一閃。
 ハンマーの柄をこなしていた枝が叩き折られ、くくりつけられていた石が遠くへ飛んで
いった。
「むっ」折れた枝を感心するように見やる井上。
 一時凌ぎに過ぎないが、これで井上の攻撃力は激減した。
「ふっ……。じゃあ、これからは空手でやりましょうか」井上が徒手で構える。
「ヤロウ……」加藤も同じく構える。

314 :やさぐれ獅子 〜十九日目〜:2006/09/14(木) 19:34:03 ID:oVz9bQDz0
 ローでの先制から、井上が操られるがままにラッシュをしかける。
 先日突き指したはずの指も、強引に拳を造るため曲げられている。
 速い。が、いかに速かろうとも、加藤にとってはスローモーションに過ぎない。初々し
い手技足技を丁寧にかわしていく。
 反撃チャンスは腐るほどあった。そして全て活かされぬまま、腐っていった。
「どうしたんです? さっきから避けてばかりですけど。試合だったらとっくに“注意”
をもらうか、下手すりゃ失格ですよ」
(こいつ……分かってるくせによ……!)
「あいにくこの戦いに第三者(レフェリー)はいませんからね。いくらでも消極的になら
れてかまいせんよ。ただし、審判はいなくとも忠告することはできます」
 唇を吊り上げると、井上は不意に勢いをつけて転倒した。彼女の着ているセーターが破
れ、肩に裂傷ができる。
「てめ……!」
「だから前にも話したでしょうに。アンタが逃げるんなら、私は死ぬと」
「──ふざけんなァッ!」加藤が井上の襟首を掴み、持ち上げる。
 しかし、この行為は寄生者を喜ばすだけに過ぎない。
「おっ、やっとやる気になったようですな」
「くっ……!」
 ハッとして、加藤は井上から手を離す。と、そこへ右フックが飛んできた。
「うっ!」寸前で見切る。
「ボーッとしないでください。私たちは戦ってるんですよ? 殺しますよ?」

315 :やさぐれ獅子 〜十九日目〜:2006/09/14(木) 19:35:37 ID:oVz9bQDz0
 どこまでも神経を逆なでする寄生者に、怒りが沸点を迎える。
 とはいえ、加藤には井上を殴るという選択肢は浮かばない。たとえ、我を忘れていたと
しても。よって、彼の攻撃対象は──。
「殺ってみろッ! 心臓でも首でも好きなトコを刺せ、それで終わりだッ!」
 となった。
 首に刺さっていた枝を引き抜き、井上の足下へ投げつける加藤。
(罠か? ……それともキレただけか)
 井上は血に濡れた枝を拾うと、それを真横に構えた。
「いいでしょう。私としても、できれば勝って終わりたい」
「……やれ」
 左足から力一杯に踏み込み、右手に握られた枝が加藤の左胸へと一直線に突き進む。刺
さればおそらくは死ぬ。
 紅い凶器は──胸まであと数ミリというところで、停止した。
「ぬっ?!」
「───っ!?」
 加藤と寄生者、ともに驚く。
 脳だけではない。全細胞レベルでの反乱。何者をも動かす寄生者が、たかだか井上を操
縦しきれない。
 彼女にとっても等しく重い八日間が、力を与えた。
「こ、こいつ……! なんという力だ……本当に女、いや人間か?」
「……井上」
 神妙な顔つきで、加藤は井上を扱いかねる寄生者に宣言する。
「俺はてめぇに攻撃しねぇ。おめぇも俺に攻撃できねぇ。よって現時点で──俺の勝利は
決まった」
 すると、井上は顔を引きつらせ、枝を自らの首に向けた。寄生者が最終手段に出た。
「ふ、ふ、ふ、たしかにね。ですが、こうなったら死ぬまでです。あなたは殺せなくなっ
たが、こいつは殺せるはず。可愛い後輩の自害を指をくわえて──」
「あ〜あ……そりゃ無理だ」
 がしっ。加藤は井上の枝を持つ手を掴んだ。動かぬよう、潰さぬよう、絶妙な加減を加
えて。
「う……うっ!」寄生者も力むが、井上の筋力では加藤には到底及ばない。「ならば!」
 舌を噛もうと、顎に力を入れる。が、舌を挟まんとする歯に加藤が指を入れて阻止した。

316 :やさぐれ獅子 〜十九日目〜:2006/09/14(木) 19:36:25 ID:oVz9bQDz0
 以後、少しでも体を動かすと、すぐさま制止されてしまう。妨害する加藤への攻撃は井
上のせいでできない。
 八方塞がりだった。
 ──何故ッ。これでは逆ではないか。私は“寄生”という特性ゆえ、多くの自由があっ
た。自分にはたくさんの選択肢があるくせに、他人には理不尽な選択を強いることができ
た。それがたまらなく幸福であった。だからこそ私はこの悪趣味な試練の遂行者に任命さ
れ、迷わず引き受けた。なのに今、私は不自由を強いられている。殺されない、殺せない、
死ねない。なにをどう足掻いても食い止められる。報い、か。
 嗚呼……これが敗北。
 元々勝てる戦いではなかった。二対一なのだから。
 こう悟った時、井上の体に一週間以上も巣食っていた寄生者は泡となって消えた。

317 :やさぐれ獅子 〜十九日目〜:2006/09/14(木) 19:47:43 ID:oVz9bQDz0
「先輩……」
 散々に抗っていた井上が、やんわりと口を開く。
「今度こそ……お前か?」
「オス、私の中に居たヒトは“敗北”しました」
「……そうか」
 沈黙。不思議と心地よい時間が流れる。
「よく戻ってきたな」
「オス……」
 頬をほのかに染める井上とは対照的に、加藤は暗く視線を落とす。
「ホント、俺はダメだな。もうずっと一緒だ、とか吹いておいてまたこれだ。俺がくたば
っちまえば武神もお前を帰すらしいし、もう──」
 パチン。
 平手が飛んだ。
 打たれた瞬間、加藤は『まさかまだ──』と焦りを覚えたがそうではなかった。
「私、あなたのためなら死ねます。先輩は私の覚悟を見くびっているのではないですか」
 まっすぐに、女の瞳が男を射抜く。
「……そうかもな」
「あっ、い、いえ、すいません……!」
「アリガトウ、俺も同じだ」
「え?」
「俺も。お前のためなら死ねる」
 双方とも押し黙り、どちらともなく笑いを吹き出す。
「こんな状況、こんな環境だからこそ、こんなこと言えるんだよな」
「えぇ、我ながらクサかったですね」
「それに……」
「それに?」
「死ぬわけにはいかねぇよな、お互いに。稽古、やるか?」
「オスッ! もちろんです!」
 城の中に入って組み手を始める二人。夕刻、日が傾くまでふたつの気合が城内を轟いた。

318 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/09/14(木) 19:52:38 ID:oVz9bQDz0
十九日目終了。
長すぎですいません。

319 :作者の都合により名無しです:2006/09/14(木) 20:32:16 ID:mT644t4g0
乙。王道ながらさわやかな着地ですな、加藤と井上さん。
エンディングはやっぱり2人が結ばれるのかな


>長すぎですいません
この本物の職人の謙虚さを銀杏丸やハイデッカに見習ってほしい

320 :作者の都合により名無しです:2006/09/14(木) 22:33:05 ID:HI6M1o1m0
最初のころからは信じられないほどほのぼのとした感じのSSになったなw
これも井上さん効果か。井上さんの「オス」はかわいい。


321 :壊す拳と護る拳:2006/09/14(木) 23:30:42 ID:0XDpxqfJ0
>>265
「や、野郎、くたばりやがった……のか」
上を向いたまま、間柴はぺたんと尻餅をついた。見上げる空は間もなく夕闇、だがまだ
微かに夕陽の明かりが残っている。たった今、間柴の目の前でゾエビが爆裂四散した空だ。
その空を見上げていると、すぐそばで倒れていた一歩が苦しそうに目を開けた。
「ぅく……あぅ、あれ、ボ、ボクは何を……あっ!」
状況を思い出したのか慌てて立ち上がろうとして、脳震盪を起こしてるのかフラついて。
転びかけたところで、座っている間柴が腕を伸ばして支えてやった。そして隣に座らせる。
「おら、落ち着け。……終わったよ」
「え?」
「残念ながら、解剖はできなくなったがな。警察がいつも未確認どもを爆殺してるって
のも、どうやら死ぬと自動的に爆発する性質らしいな、奴らは」
「え? え? そ、それじゃ、もしかして、あの、あいつは、」
「何だかよく解らねえが、あの未確認をブッ倒したらしいぜ。オレと、お前でな」
その間柴の言葉を聞いて、一歩がブッ倒れた。
「お、おい? 大丈夫かよ」
「いえ、その……何だか気が抜けちゃって……だって久美さんを護れたし、それに……」
夕空を見上げて寝そべる一歩が、自分の両手を持ち上げて見つめる。そして握り締める。
「ボクも、間柴さんも、拳を護れた。間柴さんのおかげで」
「オレの? どっちかと言えば、大怪我したお前の方が手柄は上だろ、この場合」
「いえ。間柴さんの、意表を突いた作戦のおかげですよ。敵をあざむくにはまず味方から。
まさかボクを突進させておいて、それを寸前で止めて、あんな攻撃をするなんて。
最初から、ボクの拳も護ってくれるつもりだったんですね」


322 :壊す拳と護る拳:2006/09/14(木) 23:31:20 ID:0XDpxqfJ0
「いや、作戦っつーか……ただお前の拳が潰れちまうって思って、でも奴を潰せるなら
お前なんかどうなってもいいとも思って、でもやっぱり止めねぇととか思って、」
「はい?」
何も疑ってない様子の一歩にまじまじと見つめられて、間柴は慌ててとにかく否定する。
「じゃなくてだな、そう! 綿密に練った作戦だったんだ! お前を武器に使う、
お前を血みどろにしてでも奴をブッ倒すという、オレの血も涙もない作戦……ん?」
力説虚しく、いつの間にやら一歩は目を閉じていた。スヤスヤ寝ている。
表情こそ無邪気だが、その顔面は血みどろで真っ赤だ。出血多量、心身両面の酷使、
そして劇的な安堵。眠りに落ちてしまう、というか気絶してしまうのも無理はない。
「……ちっ」
舌打ちして、間柴は立ち上がった。……今日は久美は夜勤、家にはいない。連れて
帰ってもバレないから、まぁ手当てぐらいはしてやろう。血止めとかは心得てるし。
考えてみれば、あのゾエビの装甲に向かって、容赦のない全力フリッカー連発で
叩き付けまくったのだ。気絶の一つや二つしてくれないと困るところではあるし。
「ったく、手間かけやがって。二度としねぇからな、こんなこと」
すっかり日の沈んだ静かな河川敷を、背の高い男が小柄な少年を背負って歩いていく。
少年は頭にひどい怪我をしていたが、何だか安心しきった顔で寝息を立てていた……

翌朝、警視庁からマスコミ各社を通じて、未確認生命体28号の駆除が報じられた。
28号(ゾエビ)事件の遺族にとっては僅かな慰めになったものの、警察も世間も、
これで未確認生命体が全滅したなどとはカケラも思ってはいない。だがそれでも、
その日に向かって僅かでも前進したことは間違いない。
プレイヤーが交代するたびに殺人ゲームの規模と凶悪さを増していくグロンギに対し、
「市民の安全を守る」警察と、「みんなの笑顔を護る」クウガの戦いは続く。


323 :壊す拳と護る拳:2006/09/14(木) 23:32:05 ID:0XDpxqfJ0
早朝の鴨川ボクシングジム。
頭に包帯を巻いた一歩は、ひとつ大きな深呼吸をしてから戸を開けた。
「おはようございますっ! あ、先に言っときますけどこのケガはですね、昨日
久美さんに会いに行って、家の前で転んだんです。嘘だと思うなら間柴さんが証言を」
ばんっ! と一歩の両肩に力強い大きな手が置かれた。やたら重々しい表情の鷹村だ。
「なぁ一歩よ」
「な、なんです(またロクでもないこと言い出しそうな気配……)」
「宮田は解る。オレ様の次くらいにいい男だし、知っての通り世間の女どもも認めてる。
ゲロ道については、まぁ世間はともかくお前にとっちゃ可愛い後輩だ。これもまだ解る。
だが、なあ、おい。間柴ってのはさすがにどうかと思うんだけどよ」
「は、はい?」
困惑する一歩の後ろで、青木と木村が。
「ロードワークの終わり際だから、夜の十時頃だったか。間柴んちから出てきた時の、
それはもう嬉しそうな顔と羽が生えたような軽い足取りったら」
「ほほぅ。間柴と過ごした時間がそんなに楽しかったのか。しかもそんな夜遅くに」
「ち、違います! ボクはあくまで久美さんに会いに行って、転んだ時に気を失って、
気がついたらそんな時間で、」
「残念だが一歩。久美ちゃんが昨日は不在だったってのは、トミ子から聴取済みだ。
つまり久美ちゃんに会いに行ったんなら空振り、落胆してて然るべきのはずだぜ。
なのに、妙に晴れやかな表情だったのをオレはこの目で見ている」
「将を射んとすればまず馬からってか? だが間柴を落とすってのは難しそう……」
「違うんですってばああああぁぁぁぁっ!」
もちろん、こういう時の一歩の叫びが聞き入れられるはずもなく。
「わははははっ! 逃げろ逃げろ、ホモが移るぞっ」
「しかも、かなりゲテモノなホモだぞ〜重症だ〜」
「だ、だからボクは、ちゃんと久美さん一筋なんですっ! ホモ呼ばわり
するにしてもせめて宮田く……って、そうじゃなくてっっ!」


324 :壊す拳と護る拳:2006/09/14(木) 23:32:39 ID:0XDpxqfJ0
どたどたと追いかけっこを始めた一堂を、窓の外から間柴が見ていた。
ふう、と息をついて窓から離れると、ロードワークを再開する。
「……心配ねぇようだな。相変わらず、嫌になるほどタフな野郎だぜ」
たったったったっ、正確なリズムで走る間柴の脳裏に蘇るのは、昨日の一歩。

間柴さんが世界王者になるのは、もう間柴さん一人の夢じゃないんです。
だから、見てて下さい。ボクの、ボクシング。ボクの……最後のボクシングを!

走りながらいろいろと、間柴は考えて。やがて一つの結論に落ち着いた。
『……まあ、アレだ。さすがはオレの妹、男を見る目は間違ってないってことだな』
間柴は走る。最強のライバルと共に、最愛の妹を護った拳。今度はその拳で、
そのライバルと一緒に、妹と共に夢見る未来を掴む為に、今はただ走る。
日本の王者から東洋の王者、そして世界の王者に向かって。


325 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2006/09/14(木) 23:33:57 ID:0XDpxqfJ0
♪だから ずっとずっとずっとずっと 飛んで行けるよ……僕は……青空に なる……♪

ん、ムリヤリ繋げてみましたが歌えなくはないですな。これにて、ちと短かったですが
本作は終幕です。読んでくださった方、感想下さった方、ありがとうございましたっっ!

>>17〜さん
>あれだけの美人だ。放っておいたほうがバチが当たるてなもんだよな、シアン
うむ。こういうセリフがサラっと言えてこそ男、つーかむしろ漢。でもここまで言われて
それかバーディーっ。常識・文化が違うなら仕方ないとはいえ、少々残念。ともあれ、
一休み定番イベントを越えたらまたかなりシリアスな雰囲気。『造られた神』ってとこか。

>>サナダムシさん
頭を絞って考えた策はあえなく破れ、キレて自暴自棄になってみれば井上が止め、最後は
>元々勝てる戦いではなかった。二対一なのだから。
いつも型破りで泥と血にまみれてた加藤が、心で井上と強く結びついた結果、凄く綺麗な
部分を得て成長したというか。今回の試練は意外性のなさ、真っ直ぐさが良かったです。

>>かまいたちさん
だんだん時間が追いついてきましたね。殺人でも戦いでもない、ただうろうろしてるだけ
なのにこの生々しさ、息苦しさは流石です。はじめが、疲労と空腹に耐えかねてつい奪った
リュックが、一と自分を結びつけて導くきっかけになってしまったと。なるほどな皮肉です。

>>銀杏丸さん
見事にリクエストに答えて下さったカメラ振りは嬉しい限りですが……アスガルドにまで
行ってしまうとはまた何とも。しかし紫龍、元々ああいう人だったのに経験を積み地位も
授かり弟子も得て歳も経て、エラい風格を湛えてますね。この調子だと星矢も少しは?
 

326 :作者の都合により名無しです:2006/09/15(金) 05:58:29 ID:9wtVisVu0
>>310
>氏曰く、爽やかな幕切れらしいけど、ハッピーエンドは難しいかな?
2次創作スレらしく犯人が喪黒福蔵にドーンされて苦しみながら倒れるというのも
なかなかいいですね。
有次郎に犯人がボコボコにされるなどきっと予想がつかない幕切れだと思うので
どうなるか気になります。

327 :作者の都合により名無しです:2006/09/15(金) 08:02:53 ID:yhK1B8oH0
>>326
面白いと思って書いてるならちょっとセンスを疑うな。

>やさぐれ獅子
加藤が正当な主人公になってきましたね。
井上ってほんの数コマしか出てないのに人気あるな。
蛸があれだからかw

>壊す拳
終幕ですか。お疲れ様でした!
まあ、最後は真柴も一歩を認めたという事で
ハッピーエンドですね。次作期待してます。

328 :作者の都合により名無しです:2006/09/15(金) 19:48:45 ID:a1+zHs9n0
ふら〜りさん、また完結記録更新か。凄いなあ。
新作、また一ヶ月位したらお願いしますね。

329 :永遠の扉:2006/09/16(土) 00:31:17 ID:CIJiKVne0
第3話 「探しものはなんですか?」

階段を上っていた足音が非常口の前で止まり、ドアを押し開けた。
床で埃が波打ち、ドアの閉じる重苦しい音が薄暗さに溶けていく。
非常口からわずかに続く細い通路に足音が響く。
ミニスカートから伸びるまっすぐな脚が、闇の中に艶かしい白さを振りまきつつ5歩進み、止
まった。
眼前に広がる光景の全てを確認するように。
かなり広い部屋だ。
立ち位置を基準にすると縦200m、横50mほどの長方形。
瓦礫を除けば何も置かれていないから、実面積より広く見える。
壁や部屋中央にある柱は白く塗装され、ここがまだ普通の人間に使われている頃は、彼らに
清潔感を与えていたのが伺える。
探索対象の中ではかなり古めかしい。
ようく目を凝らすと部屋の中央で、壁がほとんど崩れ落ちているのが確認できた。
破壊されたのか自然に崩落したのかは分からないが、どちらにしろ元は2つだった部屋が
今は1つになっているようだ。
と分析した彼女は、頬に自嘲とも悔恨とも取れる寂しげな笑みを浮かべた。
(一心同体、か……)
部屋の保存状態は良好に程遠く、心情のまずさが加速する。
澱んだ空気が暑気と絡んで、セーラー服にうっすらと汗を滲ませる。
壁のところどころにできた亀裂は、薄闇でもはっきりと分かるほどに大きい。
柱も塗装が剥げかけて、削られた痕すらある。
左手とはるか遠くの正面には窓があり、四角く切り抜いた月光で黒い床を照らしている。
それが病的なまでに薄白く、今にもかき消えそうに見えるのは、月に抱く印象のせいだろう。

彼女──…津村斗貴子は鋭い視線を維持したまま、歩を進めた。

似顔絵に起こしやすい顔の条件を「他人から際立った特徴持ち」とすれば、彼女の顔ほど
的確なモノはないだろう。
一言でいうなら、他者よりはるかに直線的。

330 :永遠の扉:2006/09/16(土) 00:32:29 ID:CIJiKVne0
両目の下から鼻筋にかけて深く刻み込まれた傷跡も。
首筋辺りで奇麗に切りそろえられた青髪も。
覇気を湛えた男性的吊り目も。
全て全て直線的。
彼女の顔に宿る記号性の再現は、絵心のないものでも可能だろう。
そういう意味で、彼女の顔は「他人から際立った特徴持ち」であり、似顔絵に起こしやすい。
顔のみならず性格も、少年のように起伏のないスレンダーな肢体も、直線的といえる。

時は。
早坂秋水が銀成学園屋上にて、武藤まひろと邂逅した頃に遡る。
斗貴子がいるのは、その銀成学園から北東に3kmほど離れた郊外にある廃ビルの一室だ。
その目的は──…

(バタフライの隠しアジトはここで6ヶ所目。だが今までは全てハズレ。本当に居るのか?)
思案に暮れつつ歩く斗貴子はくまなく部屋を観察し、発見をした。
先ほどは柱の影になっていて分からなかったが、部屋の右隅にもう1ヶ所出入り口がある。
遠い夜目でも、非常口のドアと違うのが分かる。ガラスがはめ込まれた軽やかな印象の物だ。
今の部屋に何もなければそちらに進むコトにして、斗貴子は探索を進める。
とかく何もない広いだけの部屋ゆえの、壁を叩いたり瓦礫を足で除けるだけの原始的な探索
方法を忠実かつ確実に。
やがて部屋の中央に至り、柱の前に立つ。
どうもここには、近所の心ない若者がちょくちょく侵入してきているらしい。
柱には露もない落書きが何箇所もある。
(まったく。廃墟とはいえ、遊び場に使うのは犯罪だぞ)
いたく気難しい顔をしながら、斗貴子は柱を叩く。
或いは中が空洞で、探し物を隠した部屋への通路がないかと期待したが。
反響音は至って普通。
斗貴子はため息をついた。
(とにかく、虱潰しにいくしかない。本当に居るとすれば斃すのみ)
スカートのポケットに手を突っ込み、核鉄と呼ばれる六角形の金属を握り締める。
美少女というより美少年じみた顔に浮かぶ焦燥は戦士相応、されどひとひらの女性らしさも
瞳に織り交ぜ、斗貴子は思う。

331 :永遠の扉:2006/09/16(土) 00:33:19 ID:CIJiKVne0
(急がないと、この街が再び危機に見舞われる。早く探し出し、何としても斃すんだ…………!)
知らず知らずのうちに彼女は目を閉じていた。
瞼の裏に焼きついているのは、1人の少年。
彼は過酷な現実を耐え抜いて、最後に傷だらけの体でお人好しに笑っていた。
いつも、いつも。彼女の傍で。
だが今、彼は居ない。命を賭けて守ろうとしたこの街にはもう居ない。
(私が奪ってしまった。だから、代わりに守らないと)
されどその希求は、自分の真に求める物でないとも分かっている。
本当に求めているのは──
「探しものはなんですか? 見つけにくい物ですか?」
「誰だ!!」
突如響いた耳慣れぬ声に、斗貴子は鋭い誰何の声をあげた。
核鉄を握りしめつつ、即座に声の出所を突き止めたのはさすが歴戦といった所。
先ほど見つけたドアの前に、人影があった。
「まぁまぁまぁ。おねーさんに危害などは加えませぬゆえ、肩の力を抜いていただきたく」
(子…供?)
斗貴子の目が、軽い驚きに見開かれた。
ゆっくりと歩いてくる影は、背丈が低かった。
斗貴子も154cmと年齢の割りには小柄な方だが(17歳女性の平均身長は157.8cm)
声の主はそれよりも低い。おそらく150cm台には達していないだろう。
「何だキミは」
「う、不肖が返答にキューしそうなご質問。そうです私が変なおじさんとかいっちゃ……怒られ
る恐れアリ」
言葉とは裏腹に、影は物怖じしない様子だ。一歩、また一歩と斗貴子めがけて進んでくる。
「悪いがそれ以上近づくな」
警戒色を保ちつつ、斗貴子は釘を刺した。
もし従わず、襲いかかるようなら即座に殺す。
実に殺伐とした思考回路の電流を全身に拡充していると、果たして声の主はそれきり立ち止
まり、のほほんとした声で自己紹介を始めた。
「不肖、名を小札零(こざねあや)といいます。字は……小さい札がゼロとでもお覚え下され
ば、スっと出てくるコト請け合い。以後、お見知りおきを」 
零(あや)という名前が示すとおり、声の主は少女だった。

332 :永遠の扉:2006/09/16(土) 00:36:41 ID:CIJiKVne0
縮んだ距離のおかげで、斗貴子は風体と人相を確認できた。
年のころは11〜2。
両肩の前でちょちょいと結んでいるセミロングの髪の毛と、大きなとび色の瞳が印象的だ。
口元には気楽そうな笑みを湛えて、斗貴子をじっと見ている。
少女じみた細く小さな円筒形の体にはパリっとしたタキシードをまとっている。
右手には小柄な体に見合った長さの、純白のロッド。
上部を六角形にカッティングされた宝石を先端にあしらっているだけのシンプルな造りだ。
なお「零」には、数字のゼロ以外にもいくつか意味がある。
「零れる」が「こぼれる」と読むように、こぼす、したたる、という意味を持ち、やや特殊な読み方
では「零す」を「あやす」と読む。(意味は↑と同じく)
それになぞらい、「零」で「あや」と名乗っていると思しき少女は、
「そして趣味は──マジック!」
ロッドを足元から緩やかに持ち上げ、胸の前で突き出した。
斗貴子は一瞬、攻撃動作に移りかけたが、
「まーかまか不思議! 何もなかったのにこの通り!!」
紫煙と共にシルクハットが出現するのを見ると、すんでの所で押しとどまった。
「遊んでいるだけなら帰りなさい」
少し眉をしかめたのは、任務を邪魔されたからではない。
夜遅い廃屋で遊んでいる不真面目な姿勢が率直に腹立たしい。
(親は何をしてるんだ。まだホムンクルスが街にいるというのに)
「いえいえ。とんでもございません。不肖も実は探しものの途中なのです」
シルクハットをちょこんと頭の上に乗せながら、小札はおおげさな困惑を浮かべた。
「しかしながら、この廃屋は中々の規模…… 休むコトも許されず、笑うコトは止められて、
はいつくばってはいつくばって、一体何を探しているのか分からないほどなのであります」
大方、こっそり侵入して遊んでいるうち、忘れ物か何かをしたのだろう。
すっかり毒気を抜かれた斗貴子はそう思い、そう思うと性分ゆえに協力を申し出さずにはい
られない。
「ならば私も手伝ってやる。ただし」
小札に歩み寄る斗貴子は、さながら何かの部活の女副部長のように、けじめと優しさをくっ
きり分けた毅然の表情だ。
「見つかったらまっすぐ家に帰れ。それから、二度とここに立ち入って遊ばないコト。いいな」

333 :永遠の扉:2006/09/16(土) 00:37:17 ID:CIJiKVne0
「実にお優しい言葉、痛み入ります。不肖めには言葉もないというのが率直なトコロ」
「で、探しものは何だ」
かすかに身を屈め、なるべく同じ視線に立とうとしているせいだろうか。
声はぞんざいだが、相手に信頼を抱かせる心地良い響きを持っている。
小札は、待ってましたとばかり頷き、気軽な調子で答えた。

「『もう一つの調整体』」

瞬間!
斗貴子は後方へ大きく飛びのいた。
着地と同時に床でひび割れ耳障りな音を立てたが、意に介するも煩わしい。
身をすっくと伸ばすと、爛々と輝く眼光で小札を射抜いた。
「キミは何者だ」
「恐らく、おねーさんも同じモノをお探し中でありましょう。けれどご安心を。命令ない限り危害
妨害に連なる行為は一切取りませぬゆえ」
「はぐらかすな。ホムンクルスか。それとも信奉者か」
「むむ。またまた不肖がキューするご質問。黙秘……は甚だ許さぬという態。ああ恐ろしき」
緊迫する空気の中で、小札はまたロッドを一振り。ハンカチが出現した。
それを手にして汗を拭う姿は、戦闘体性にはほど遠い。
だが斗貴子にあるのは真逆の殺意。秘蔵の核鉄を手に、発露の言葉を唱和する。
「武装錬金!!」
部屋一面に響き渡る大音声に呼応するように、六角形の金属片が分解。
同時に大腿部の周囲ではうっすらとした紫の光が膜を成す。
膜だった光はやがて複雑な形状の金属筒へと変じ、傘の骨を思わせるアームを2本形成。
アームの可動肢(マニピュレーター)は計3つ。
それぞれトゲを生やした丸いパーツに覆われている。
そして先端には、奇妙で巨大な銀色の刃物。
大腿部からアームと共に生やしている以上、おおよそ既存のいかなる武器とも違う歪な物で
はあるが、強いてなぞらえるのならば、肉の厚い両刃の剣がやや近い。
ただし片方の刃はわずかに掘られ、周囲と異なる青紫の肌を露出している。
そこに縦に潰れた六角形の刃物が等間隔で4つほどはめ込まれており、剣には程遠い。
武装錬金。

334 :永遠の扉:2006/09/16(土) 00:38:06 ID:CIJiKVne0
それは人の闘争本能が、武器として発現された物。
津村斗貴子の操る武装錬金は。
処刑鎌(デスサイズ)の武装錬金、バルキリースカート。
10mほどの距離を挟んで。
大腿部から生えた異形の刃物が、4つみなみな小札を睨む。
「ホムンクルスなら、例え見た目が子どもであろうと容赦しない!」
部屋に入り込むかすかな月光が、刃物にあたり冷え冷えと輝く。
小札は恭しく礼をした。
「申し訳ありません。正体バラすのは支障がありますゆえ、黙秘とさせて頂きたく」
「ならば五体を解体(バラ)し、地獄の苦痛の中で吐かすまで!」
斗貴子は前方に跳躍し、処刑鎌を打ち下ろす!
秋水とは違う機械的な斬撃が小札に降り注ぎ、彼女は辛うじて避けた。
「されど先ほど述べたとおり、危害を加えるつもりはないのです。良ければ共に探しものをし
てあわよくば共に戦っていきたいとすら」
話す間にも処刑鎌、不気味な唸りをあげて、小札に殺到中。
単純な刃物の動きではない。
4本の処刑鎌は各自干渉せぬよう、上下左右から同時に薙ぎ、そして突き、無限に途切れる
コトなく連撃を見舞っている。
ホムンクルスは強烈な再生力を誇り、通常の戦闘兵器では斃すコトはままならない。
もし小札がホムンクルスであれば、斗貴子操る処刑鎌を受けるのは正に死活の問題だ。
信奉者──ホムンクルスに加担する人間──であれば、尚。
されど慌てる様子もなく、穏やかなるまま小札は避ける。
不思議なコトに、右手のロッドで処刑鎌を払おうとはしない。
あくまで彼女は回避に徹している。
動きは緩慢だ。横に跳ぶのも後退するのも、ウソのように遅く、距離も短い。
「黙れ。何を企んでいるかは関係ない! ホムンクルスならば殺す!!」
「おねーさん、当初の目的を忘れ気味であります。ああ。なんたるキューな豹変振り。沸点が
低すぎなのは困りモノ」
大げさに滝のような涙を流しハンカチで拭う小札は、その間視界が塞がっているはずだが、
処刑鎌をすいすいと避けてかすりもさせない。
「ああ。志は同じであれど、共に天を仰がずといった態。無理なからぬとはいえ、不肖の心は
痛み……あ」

335 :永遠の扉:2006/09/16(土) 00:40:07 ID:CIJiKVne0
後退中のかかとが何かに当たった。
それは壁だ。先ほど小札が入ってきたドアが右に見える。
回避の内に壁際に来てしまったらしい。
「追い詰めたぞ」
「おねーさん。ストップです! 嵐のような攻撃、避けてるだけじゃ、いずれ不肖は負傷します!」
「黙れ」
小札の両肩と両脇に処刑鎌がぴたりと合わせられた。
「わわわ、正にシャレにならぬダメージの予感、到来しておりますひしひしと」
瞳孔をキュ〜ぅっと見開くさまはどこにでもいる少女だ。
その毒気のない様子に、斗貴子はややためらいを覚えた。
もとより弱卒にははなはだ弱い性分だし、記憶の中にいる”彼”も簡単に命を切り捨てる
コトに異議を唱えてもいた。
「白状しろ。信奉者であれば今すぐには殺さない」
「ホムンクルスであれば」
「すぐ殺す」
「それは困るな。……出でよ。名も知らぬ彼の武装錬金」
声と共に飛来したのは黒死の蝶。
それだけを横目で確認すると、斗貴子は飛びのく。
処刑鎌のあった所を蝶が数匹通り過ぎ、爆発。
禍々しいオレンジの燐光が、斗貴子、そして小札をあぶる様に瞬いた。
「まさか……まさかこの声わ……」
「……ニアデスハピネス!? パピヨンか!」
飛来元に向き直った斗貴子は、その人影を見咎めると軽い絶句に見舞われた。
「ほう。そういう名か。この黒色火薬(ブラックパウダー)の武装錬金と、バタフライ殿の玄孫は」
闇の中でさらさらとした光を発する金髪。左手には、六角形の楯。
水色のジャケットにGパンという、どこにでも売っていそうなありふれた服装。
(違う! パピヨンじゃない)
遠目から分かる風体は、斗貴子の予想していた姿とははるかにかけ離れていた。
(だが確かに、さっきの武装錬金は奴の物。ならば一体……)
「『武装錬金は使い手固有の形状を成す物──… なのに何故、赤の他人の物を使える?』
という思考が、表情(かお)に溢れているぞ」
「何者だ」

336 :永遠の扉:2006/09/16(土) 00:41:08 ID:CIJiKVne0
思考の袋小路に迷わぬよう、斗貴子は細い顎(あぎと)をすくりと引いた。
「総角主税(あげまきちから)。ところでどこかでこういう顔を見なかったか? もう少し老けて
いると思うが」
「質問しているのは私だ」
「知っている様子ではない、か。……ま、俺について詳しいコトを知りたくば秋水か桜花にで
も聞いてくれ。今は恐らく、仲間だろう?」
反論を含めて尋問を行おうとする斗貴子だが、声は遮られた。
「ももも、ももも、もりもりさん!? 本日戻られたのはともかく、なぜ不肖の居場所がお分か
りに」
目を白黒させる小札に、柔らかな叱責が飛ぶ。
「まったく。このレーダーの武装錬金を試しがてら探してみれば……集合場所にもいかず何
をやってる。そして勇者王誕生は濁音でないとすっきり響かんぞ」
すると彼女は悪戯を先生に見咎められた小学生よろしく、汗をダラダラ流し
「ああ、お久しゅう。お久しゅう……」
シルクハットを胸にあて、恭しく礼をするのだが、声は露骨に震えている。
「えーとですね。えーと。……変わらぬ元気なそのご様子、おヨロコビもーしあげマス!」
クラウン(帽子の山の部分)を下に向け、持ち手をツバへ変えるとあら不思議。
シルクハットの内側から紙ふぶきやらテープやらハトやらが飛び出した。
「わーわー! もりもりさんの息災ぶりにわーわー!」
小札は騒ぐ。徹底的に騒ぐ。
ついにはシルクハットをでっかいクラッカーに変えて、総角目がけてパーンと弾いた。
「元気であれば何でもできる! 我らがブレミュも安泰でありましょう!」
廃屋の中は華やいだ! まるでパーティ会場だ!
「おお、閉塞感漂う現代社会を癒すこの喧騒。ビバもりもりさん! ありがとうもりもりさん!
とゆーコトで帰りましょう!」
総角はにこりともしない。
「で、なんでココにいる。集合場所にもいかず」
零は諦めたのか、一気に目を伏せ、ズボンの太もも辺りの生地をきゅぅっと握り締めた。
「すみません。先んずれば人を制すと思いまして、待ちがてら調査のほどを」
「まったく。慎めと俺はあれほど。おかげで錬金の戦士と遭遇だ」
闇の向こうで気取った笑みを浮かべつつ、総角は告げる。
「それと小札よ。あだ名で呼ぶな」

337 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/09/16(土) 00:42:46 ID:CIJiKVne0
気難しい顔をしていたと思えば、笑う。いまいちつかみ所のない男だ。
「仲間か」
慎重に小札と総角を見比べる斗貴子は、攻めあぐねている様子だ。
「ああ。一応、俺の部下の1人なんでな。見逃してやってはくれないか?」
「不肖、まだ危害は加えておりませんし。2対1では不利でありましょう? ね。おねーさん」
「断る」
厳然としたその空気から和解は無理と悟ったのか、総角は大きく息をついた。
「ならば、少しばかり圧倒させてもらおうか。引けばこちらも矛を納めるが……まずは」
斗貴子は見た。
「出でよ! 名も知らぬ彼の武装錬金改め……」
総角が胸元に手をかざし、何かを握り締めるのを。
「黒色火薬(ブラックパウダー)の武装錬金・ニアデスハピネス!」
そして彼女の周囲に数十匹の黒死の蝶が充満し、一斉に火を噴くのを。

※ 以下、後書き
話作りには敵が欠かせないのですが、時系列上、原作から出すのはやや弾不足。
こーいう時コラボという手法は効果的。……なんですが、あえてオリキャラで。
武装錬金同士の戦いをやるには、他作品のキャラは扱いが難しそうなので。
なお、「小札」は大鎧のパーツの一部、「零」は剣のOP「Round ZERO 〜BLADE BRAVE〜」より。
基本的にオリキャラの名はライダーソングから。ただし龍騎と昭和ライダー以外の。
剣やクウガ、響鬼の歌にあって龍騎の歌にないもの……ふら〜りさんなら分かるかも?

>>237さん
相手の性質が見えすぎる2人なので、同僚のポジションに留まっている方がベストのように思
えます。つかず離れずの方が見てて安心感がありますし。いえね。甘い言葉を囁きあうだけの
恋愛って、夢が冷めたら普通の人、あなた努力が足りないわ〜♪てな破綻をきたしますし。

>>238さん
協力とか連携については、他の相手よりなじんでいるかと。多分ですけど。
で、 千歳は前作との橋渡しと、ちょっとした説明の為に動くと思います。あ、もう1つ。ギャグ
っぽい役回りも。根来も彼ならではの役が。復帰の時期は決めておりますよ。

338 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/09/16(土) 00:44:38 ID:CIJiKVne0
>>243さん
自分も根来と千歳は大好きです。ありがとうございます。
総角は元々、永遠の扉用でしたが、久世屋に違和感なく核鉄を渡すためにネゴロへ出張さ
せ、こっちと地続きにしてみました。それを利用し、今度は根来たちを逆輸入。うまくいくかな?

ふら〜りさん
良くも悪くもさらっとした女性ですね。江戸時代頃の武家の女房みたいな。で、寮母な彼女は
ひらっひらのエプロンもいいですが、割烹着なんかも捨て難い。考えてみれば、ルックス的に
和装も洋装も似合う女性でもあります。無表情なるまま色々着せて、ネタに走ってみたい所。

>壊す拳と守る拳(拳を”モノ”と読むと、ノーフィアーノーペイン。答えは全てそこ〔2番〕にある♪)
最近の少年漫画(武装錬金含めて)に欠如している素晴らしきギリギリ感、いかに昇華と思って
いたら……ゲゲェー!! だがそれでいい間柴、それがベスト! ゾエビに一泡吹かせ、妹を守り
拳を守り強さの序列を守り、課せられた使命はこれで果たしたという剣心的燃焼感で…完結!!
お疲れ様でした。敵スキーとしては、最後のブチ切れのゾエビにカーっ!と燃えさせていただきました。
往生際の悪さやグロンギ語で喚き散らす所とか、もう。で、最後に見た光景のリンク先ですが、
右下の方にある仮面ライダー緑は蝶・オススメです。見えない力と予告が特に。

銀杏丸さん
戦士だった頃のヴィクターはそうだと思います。ええ。
ただ、黒い核鉄挿入後は(憎悪も含め)、自分の性格的にどうしても想像できないので、戦闘
神話でのヴィクターに期待しております。そのお礼として、近いうちに自分流のバタフライをば。

>戦闘神話
群雄割拠の状態で、戦力を持った紫龍。汚れ役を厭わぬ彼だから、よい意味で何をしでか
すか分かりませんね。組織間の闘争が煮詰まった所で、グサァー!と楔を打ち込み話をひ
っくり返してくれるかも。やられ役は……錬金の時系列的には3巻前後なので、太とか細とか?

339 :作者の都合により名無しです:2006/09/16(土) 08:00:46 ID:0EzbYyzs0
>ふら〜りさん
完結お疲れ様です。これで長編5本目くらいかな?凄いな。
間柴は一歩を認めつつも、まだ口に出せない感じですね。
結構ハッピーエンドでよかったです。

>スターダストさん
武装錬金は連載中に読んでただけでわからなかったけど、
オリキャラですか。キャラ立ってるなあ。口調といい姿といい。
それにしても斗貴子は口調だけ聞くとドSだなあw



340 :作者の都合により名無しです:2006/09/16(土) 11:05:29 ID:jfVA8Mk50
トキコさんが本格参入でいよいよ動き始めた感じですね、ドラマが。
ニューキャラもいい味出してるし。でもトキコが出ると主役のまひろたち食われそう。


341 :作者の都合により名無しです:2006/09/16(土) 12:27:20 ID:7S2xVfSd0
敢えて他の漫画のキャラを出さず勝負するのに心意気を感じますな。
ようは、武装連金の世界の中の世界で物語を収めたいって事でしょうね。
コラボも好きだけど、一種類だけの漫画で書き込んでいくのも好きなので
頑張ってください。

342 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/16(土) 16:38:47 ID:wmbLzQcj0
>>317より。

343 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/16(土) 16:39:23 ID:wmbLzQcj0
 この日は早朝から、加藤は妙な胸騒ぎを覚えていた。
 極限まで肉体と精神を酷使した今だからこそ分かる。
 ヤツが来る。
 ヤツとの二度目の対峙が訪れる。
 どれほど待ちわびたことか。煮えたぎるような想いが、加藤の中でメラメラと燃えてい
る。今開腹手術をすれば、胃から炎が噴き出すのではないか。
「オス、お早いですね。先輩」
 井上が話しかける。いつもながら跳ねるような元気のいい声だ。それでも、加藤の胸騒
ぎは止まらない。おそらくは井上は気づきながらも、言及することはないだろう。できた
女だ。加藤は彼女が後輩であることを改めて誇った。
「それにしても、もう、髪がぼさぼさになっちゃって……」
 髪をいじりながら、珍しく愚痴をこぼす井上。彼女の髪に加藤も視線を移すが、少なく
とも“ぼさぼさ”という印象は受けない。真水もろくにない島にあって、よく手入れがな
されていると感心するほどだ。男女ならではのギャップ。
「ハハ、俺もだぜ。俺なんて髪どころか、きっと垢とかもすげぇんだろうな。ほら昔話に
垢で人形を作ってどうこうってやつがあったろ」
「あぁ、ありましたね。たしか、力太郎」
「力太郎?」
「おじいさんとおばあさんが垢で人形を作ったら命を持って、ものすごい力持ちの子ども
になったって話です」
「あぁ、そんなんだった気がする。で、続きは?」
「その子は旅に出て、色んな強い人と戦って……って話です。結末は忘れちゃいましたけ
ど」
「ふぅん」
「色んな強い人と戦うってところが、先輩に似てますね」
「あァ……」少し微笑むと、加藤はひとつ付け加えた。「あと、垢ってところもな」

344 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/16(土) 16:40:01 ID:wmbLzQcj0
 朝食を済ませ、ストレッチ、気が向いたらたまに行う島一周ランニングを終えても、胸
騒ぎは止まらない。
 今日来ることはまちがいないが、“いつ”や“どこ”までは分からない。
「さて、基本稽古でもこなすか」
「はいっ!」
 海辺が即席道場と化す。ひたすら突きや蹴りを反復する単純作業。しかも一発一発を漫
然とではなく、透明な相手を制すことを考えながら打たねばならない。非常に神経を削る。
 だが、二人はこれを実に楽しそうにこなしていく。空手が好きだからこそだ。
 散々に道を逸れた加藤でさえ、拳を突き出すたび、
(俺ってやっぱ空手がないとダメなんだなぁ……)
 と、自身の空手中毒を認識する。
 井上はエクササイズ的な意味合いで空手を習っている部分が大きいが、
(空手を習って本当によかった)
 と、心底から空手を愛している。
「よし……ここまでっ! 休憩するぞ」
「オス!」
 途端、へたり込む井上。無理もない。黒帯の加藤とほとんど同じメニューを、色帯がこ
なしているのだから。
「おう井上。あまり無理すんなよ。体壊しちゃあ、元も子もねぇからな」
「分かってます。でも空手をこんなに楽しいと感じられたのは本当に初めてで……できれ
ば無理だってしたいんです」
「……けっ」といいながらも、加藤は嬉しそうだ。「だが、俺がこれ以上はダメだと判断
したら、絶対に休ますからな」
「ありがとうございます」
「………」
 さわやかな汗にまみれた井上に、加藤はまた以前感じた“異常”を感知してしまう。
(ヤ、ヤバいな……またかよ)
 真っ赤になった顔を悟られぬために、加藤はそっぽを向く。
「ちょっと、昼飯でも採ってくらぁ」
「あ、私も……」
「いや、まだ休んでな。ただし試練には気をつけろよ」
 砂浜からジャングルに入る加藤。ヤツはそこにいた。

345 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/16(土) 16:41:56 ID:wmbLzQcj0
「久しぶりだな、加藤清澄」
 相変わらず、不自然なまでに特徴を読み取れないパーツを顔にくっつけている。
 不自然はまだまだ続く。不自然なまでの白い肌、不自然なまでに盛り上がった体躯、布
を腰に巻きつけただけという不自然なファッション。
「武神ッ!」
「また会える日が来るとは、嬉しい誤算だよ」
 ただならぬ気配を察し、井上もジャングルに入ってくる。
「久しぶりだな、お嬢さん」
「あ、あなたは……あの時のッ!」
 井上の脳裏に、無人島へ連れてこられた時の光景が蘇える。自転車で家に帰ろうとして
いたら、いきなりこの男に呼び止められ──彼女は島に飛ばされた。
「やっぱり井上はてめぇの仕業だったのか」
「君もなかなか強くなったようだ」
「質問を変えるぜ、今日の試練はまさかてめぇか?」
「試練も残りあと十日か。短いか長いか、感じ方は君次第だな」
「人の話を聞かねぇところは変わってねぇな」
「これからの試練は、今までとは次元がちがう。ところで、今日私がここへ来た目的とい
うのは──」
「聞かねぇんなら、力ずくだッ!」
 空手三段、正拳が唸る。が、体に到達する前にあっさりキャッチされた。
「な……ッ!」
「ほう、格段にレベルアップしている。私に逆らえるほどではないが」
 下から突き上げる強烈な右アッパー。加藤が二メートルは宙に打ち上げられた。
「──ガハァッ!」
「先輩!」
「いい反応だ。打たれると同時に、脱力して衝撃をやわらげている。以前の君ならば、今
の一撃で顎を粉砕されていただろう」
 回転ドアのような滑らかさで、井上に振り返る武神。そしてゆっくりと言い放つ。
「お嬢さん、今日で君にはここでの生活を終えてもらう」

346 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/09/16(土) 16:48:14 ID:wmbLzQcj0
二十日目開始。
ターニングポイントとなります。

347 :作者の都合により名無しです:2006/09/16(土) 17:16:01 ID:jfVA8Mk50
乙です。
加藤と井上、いい雰囲気になったら別れちゃうのか。
生殺しのような加藤・・w

348 :バーディーと導きの神〜目的地とは?〜:2006/09/16(土) 21:39:01 ID:2OBMOjLd0
ルアイソーテ軍も早朝から行動を開始していた。
明け方の一瞬だけ霧が薄くなり、駐屯している高台の真ん中に、明らかに人工的な基礎を
持つ大樹を発見したからだった。
「見ろ、ボックウェル」
ガロウズが顎で大樹の幹を指し示す。
「あれは!少女と同じ文様!」
ボックウェルは再び霧に包まれていく大樹に刻まれた文様を見て驚愕する。
「どうやらアレがそうらしいな。あの文様のおかげで怪物どもが近づかんようだ。調べて
みる価値がありそうだな」
ガロウズがにやりと笑ってボックウェルに告げる。
「准将、負傷兵はどうします?彼らはもう歩けません」
サーラが十数名の負傷兵を示しながら告げる。
その問いにガロウズは邪悪な笑みを浮かべて言いのけた。
「動けんなら殺してやれ」
「しかしまだ助かる者が……」
サーラがそう言いかけたとき、ガロウズは不意に手のひらを負傷兵たちに向けた。
「殺せんのならば私が殺してやろう」
ガロウズが言うと、その念動で負傷兵たちが空中に浮き上がる。看護をしていた衛生兵が
なにごとかと騒ぎ立てる。
「ふん!」
ガロウズが気合を入れると、負傷兵たちは棒切れのように宙を舞いながら高台の下、すなわち
怪物がたむろしている場所に放り投げられた。
悲鳴を上げて落下していく負傷兵たち。
「ひどすぎます!毒を使えば眠るように殺せたものを!」
ガロウズのあまりの仕打ちにサーラは当然の抗議をする。しかしガロウズはにべもない。
「殺す時間を省いたのだ。諸君らもああなりたくなければ負傷などせぬことだな」
サーラのほうになど見向きもしないで言ってのけたガロウズを、サーラは心底憎しみをこめて
睨みつけた。


349 :バーディーと導きの神〜目的地とは?〜:2006/09/16(土) 21:39:59 ID:2OBMOjLd0
「んー……」
最後尾を歩くシドガーが、煮え切らない声を上げた。
「どうしたシドガー」
部隊長のソシュウが素早く反応する。
「いや、なにか後ろの様子がおかしく感じて……」
「後ろ?千里眼で見えるか?」
「抗術のせいでやりにくいが、やってみる」
そう言うと、シドガーは十八番の千里眼の能力を駆使して、出来るだけ遠くまで『観て』みた。
「かすかだが見える。手負いの獣たちが多数、こっちに向かってきている」
「危険です!」
いきなりリュミールが叫んだ。
「集団心理で暴走する怪物たちにはチップの効果が出にくいんです。早くここから逃げないと!」
「逃げるっつったって、ここの岩盤やけにもろくて登れねえしな」
シアンが言うとおり、岩盤の一部を持つとボロリと剥がれてしまう。
「こうなったら迎え撃つしかなかろう」
牙炎が宣言する。
「ザンとリュミール、それからモルプとキデルさん。先に行って安全なところに避難しててくれ」
ソシュウが告げる。
「うん。じゃあ瞬動法で思いっきり飛ばすから、モルプとキデルさんはしっかりつかまっててね」
「わかっただ」
「了解した」
二人が同時に答える。
ザンはリュミールを抱き上げると、ソシュウに合図して瞬動法で奥に消えていった。
「さて、いっちょきばるとするか!」
シアンが気勢を上げる。
「ほどほどにな。それにもし俺たちの中ではぐれた者が出た場合、集合地点は抗術の中心地だ。
いいな!」
牙炎が指示を出し、みんながそれに答える。
「人間以外が相手なら気が楽ね」
戦闘生物の本能からか、どこか楽しそうにつぶやくバーディーだった。

350 :バーディーと導きの神〜目的地とは?〜:2006/09/16(土) 21:40:36 ID:2OBMOjLd0
「准将、本当に一人で大丈夫ですか?」
大樹の調査を一人で行うと宣言したガロウズを、副官であるボックウェルは気遣った。
「危険はない。お前たちは怪物どもを警戒していろ」
ガロウズの答えはにべもない。
「はっ、准将」
ボックウェルは命に服するしかなかった。
ガロウズは大樹の幹に開いた穴から内部へと侵入する。
「おお、これは……」
ガロウズが感嘆の声を上げる。
そこは紛れもなくガロウズが捜し求めていた『機能している』有機コンピュータのユニット
内部だった。
ガロウズは内部を見渡すと、人間が扱えそうなコンソールらしきものを発見する。
「これか……」
言いつつ両手でそのコンソールに触れる。すると途端に膨大な知識の渦がガロウズの脳内に
流れ込んできた。
この島の成り立ち。存在の意味。生物の遺伝情報。その他、その他……。
「直接脳に送り込んでくる仕組みか!」
その脅威の技術に驚きながらも、情報の意味を理解していくガロウズ。
確かにここは彼の目指していた目的の場所だった。

351 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/09/16(土) 21:45:53 ID:2OBMOjLd0
ガロウズの本性が垣間見えてきました。

>>274-277さん
276さんの言うとおりの美人度です。
一応エルデガイン側の人間は、普通の地球人とほぼ変わらない容姿をしています。
>>ふら〜りさん
原作がそうである以上、ああなりました。


352 :作者の都合により名無しです:2006/09/17(日) 15:31:41 ID:i3DxxJpY0
>サナダムシさん
出会いがあれば別れも歩けど、武神の手の上で踊らされているのが悔しいですね。
加藤の、意地を期待しています。

>17さん
バーディは戦闘生物なのか。サイヤ人みたいな?原作のカバーだけ見たけど
バーディは美人みたいですね。一度原作読もうかな・・

353 :作者の都合により名無しです:2006/09/17(日) 18:31:13 ID:NZLQgpBh0
・やさぐれ獅子
力太郎がこれからの物語の複線になっているんだろうか?
なんにしても井上さん退場かあ。清潔な感じのヒロインで好きだったけどな。

・バーディと導きの神
今回は物語の助走みたいな感じか。今まで小さな事件を解決してきたけど
そろそろタイトルの導きの神が関係してくるのかな?目的の場所に着いたし。


354 :作者の都合により名無しです:2006/09/18(月) 01:40:12 ID:RNEzVcro0
17さんがんばってるなあ。題材知らないけど、楽しんでる。

355 :鬼と人のワルツ:2006/09/18(月) 10:32:35 ID:u7rY2aRz0
ttp://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/04.htm
のつづき



夕焼けが美しい日だった。紫がかった雲が薄くのびていて、その尾に太陽が透けて真珠のような輝きを放っていた。
富士の樹海にも夜の帳が下りようとしていた。
吹き始めた夜風が樹々をざわめかせ、揺れる枝葉の隙間から夕日がこぼれて一つの生き物のような影を映している。
寝床へ急ぐ小動物達の動きと相まって、森は一時静かな喧騒に包まれていた。
夕日が沈み、その残照が消えたころ、その静かな喧騒が途切れた。
ざわざわ、としていた森が静まり、小動物達も動きを止めて周りの様子に耳を凝らした。

とこんとこんと歩く下駄の音が聞こえる。足音は二つ。
その足音に動物たちは逃げ出すことも忘れて聞き入っていた。
歩いているのは一組の和装の男女である。整った顔になかなかよい身なりをしている。
二人はゆっくりと小さな崖をくだっていく。
虫も動物も二人に跪くように動きを止めて、二人を見送る。
二人が訪れたのは刃牙と蟷螂、そして響鬼が戦った場所である。
女はそっとオオカマキリの破片を拾い上げ、真っ白な懐紙に包んだ。
二人は顔を見合わせると、ふっと風に乗るようにその場から消えた。
森に元の喧騒が戻るのに数瞬の間があった。
動物達も、森も安心したようだ。


356 :鬼と人のワルツ:2006/09/18(月) 10:33:43 ID:u7rY2aRz0




二人が去った先は山の中の洋館だった。
がちゃりとドアを開けて入った部屋には数々の実験器具が並んでいる。

「今回も失敗だったわね」
ポチャリと女がオオカマキリの破片をビンの中の液体に落す。

「そうでもないさ」
男はその液体から湧き上がる煙を集めて他の瓶へ入れなおす。

「相手を学習し、急速に成長する魔化魍そのものは上手くいったよ」
瓶にふたをし、木棚に置いて、他の瓶を取り出す。

「副産物として随分と回復力があったわね」
「その代わり、寿命は短かっただろうね。長くて一ヶ月ももたなかっただろうな」
「ええ、でも、この子は一週間生きられなかったわ、忌々しい鬼どもめ」
女がかぶりを振って答える。

「だがこのオオカマキリはあの虎の中で生き続けることになるさ、あの虎も実験体だがね」
「例の男ね、準備はいいの?」
「もう少しかかる、集めねばならないものも一つ残っているからね」
「それじゃあ…」
言いながら女は懐からから不可思議な色をした玉を取り出した。
「…次の魔化魍が要るわね」


357 :鬼と人のワルツ:2006/09/18(月) 10:35:26 ID:u7rY2aRz0



洋館の二人が樹海に現れ消えた頃、刃牙は家の床で寝そべって天井を眺めていた。
カマキリとの戦いに思いを馳せ、現れた響鬼のことを考えた。

「世の中は広いな…」
そう呟いたら、強くなりたいな、という思いが蘇ってきた。
自分が、天才でない自分が、何処まで強くなれるのか試してみたい。
そういう思いが刃牙の胸から消えたわけではない。
勇次郎と一戦交えると覚悟を決めたときから、その思いは封印しただけだ。
親父よりほんの少しでいいから強くなりたい。と愚地独歩に言った。
世界で2番目に弱くても構わない…とも。
守るものを捨てた故に出た言葉だった。梢絵との恋を捨て、自分の命も捨てる覚悟だ。


最強トーナメントで徳川光成が言った。
「この世に世界最強を目指さぬ男はいない」と。
そして皆が人生の中途でそれを諦めていくと。
あるものはガキ大将に、病に。
刃牙は「諦めなかった二人」の一人であった。
だが自分は親父の拳骨の前にそれを求めるのをやめた。
諦めたのではない、と思っている。
だが本当はどうなのかは刃牙本人にもわからない。


358 :鬼と人のワルツ:2006/09/18(月) 10:41:54 ID:u7rY2aRz0


勇次郎と戦う。
母の仇であり、自分の目標であり、地上最強の生物である範馬勇次郎と戦うことが今の刃牙そのものだ。
多分生きては帰れない、少なくとも自分の格闘者としての人生はそこで終わる。
そう刃牙は思っている。
(もっとも勇次郎の親バカを知るものは刃牙は殺されないと踏んでいる。そのあたりは人智を超えた勇次郎ゆえ、どういった愛し方をするかは予断を許さない)

ストライダム将軍からの連絡があった、勇次郎は刃牙のカマキリとのリアルシャドーを一笑に付したといっていた。
この上もなく可笑しげだったそうだ。
「百聞は一見に如かず」
そんなことは学のない自分だってだって知っている。だが、今はこれでいいのだ。
親子喧嘩に他の生き物を巻き込むわけにはいかないではないか。
――― 巻き込んでよいのはオリバくらいだ。
あのクソ親父はそれでなくとも迷惑そのものなのだから。
何も自分までその片棒を担ぐ必要はない。
「あんたがいい例だろ、ストライダム将軍」
親父から想像以上の迷惑をかけられているのはね。
「Oh,Boy! そりゃそうだ、実際に見ていなければ君らの事など作り話にしか思えんよ」
「そういう意味じゃないよ」
ガチャリと受話器を置く。

想像上のものであろうとも、経験になればいいのだ。
そして想像をするためには素材が必要だ。

魔化魍

超自然の化け物と鬼の戦い。


359 :鬼と人のワルツ:2006/09/18(月) 10:47:29 ID:u7rY2aRz0
リアルシャドーの素材を仕入れるには絶好の機会である。
あわよくば再び一戦交えたい。
帰り際に猛士の一人が置いていった名刺に眼を向けた。




間がかなり空いてしまいましたが戻ってまいりました。
(この前に一本変なのを書いてますが。)
下手なのは相変わらずですが、どうぞ良しなに。
今回はここで。


360 :作者の都合により名無しです:2006/09/18(月) 13:38:22 ID:/178aWxu0
おお、復活お疲れ様です!

語ろうぜスレで復活を予告されてたのは鬼と人さんだったか。
確か受験か何かでお忙しかったのですね。そっちも成功して欲しいなー

いずれ、バキと響鬼は決着をつける時がくるんですかね?




361 :作者の都合により名無しです:2006/09/18(月) 15:49:18 ID:kVywxOhOO
復活おめでとうございます!
PC復活されたようでなによりです

>変なの
虎眼流ですか?

362 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/18(月) 19:10:36 ID:pDG5FZuW0
>>345より。

363 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/18(月) 19:11:10 ID:pDG5FZuW0
 加藤は立てない。たった一発のアッパーで、肉体はほとんど機能を失ってしまった。
「がっ……かはっ!」
 とても長話を聞くコンディションではないが、武神は容赦なく話を続行する。
「彼女のことは聞いているだろう。彼女もまた、私が君を試すために送り込んだ“試練”
だ。まさか寄生を彼女自身が振り切るとは予想もしなかったが、合格としておこう」
「ぐっ! ぜぇ、ぜぇ、……そうかい」
「よって、彼女は役目を終えた。今すぐ元の世界へ戻す」
 ドミノ倒しのように間を空けず、命じる武神。
「ちょ──」加藤が仰向けで反論するより早く、
「待ってください! いくらなんでも、いきなりすぎます!」井上が拒否する。
「なぜだ、君もいい加減戻りたいだろう」
「そっ……そんなこと」
「君が加藤清澄に対して好意を持っていることは分かっている。まだ別れたくないという
気持ちもあるのだろう。だが、今後の試練に巻き込まれれば、まちがいなく死ぬぞ」
 もしここに留まればどうなるか、『死ぬぞ』という言葉に全て凝縮されていた。だが井
上は怯まず、きっぱりと返答する。
「死んでもかまいません」
「ほう」
「試練を見届けられない方が、死ぬよりイヤです」
「………」
 腕を組み、黙り込む武神。この反応は想定外だったようだ。
 また、加藤も複雑な表情で佇む。慕ってもらえることは嬉しいが、やはり『死ぬぞ』と
までいわれては滞在させたくはない。
「よかろう」しばらく考えた後、武神は頷く。「私も無理に連れて行きたくはない」
 喜びをあらわにする井上、より顔を険しくする加藤。
「これから今日の試練が始まる。君らがそれをクリアーできたら、もう一度聞きに来よう。
よく話し合っておくんだな」
 これで伝えるべきことは伝えたのか、武神は白い煙となって去っていった。

364 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/18(月) 19:11:52 ID:pDG5FZuW0
 やがてアッパーのダメージが収まったのか、加藤が起き上がる。
「いてて……やっぱ強ぇな。あのヤロウ」
 顎を押さえながら、戦力を再分析する加藤。およそ神らしくない性質は多々あれど、実
力は超一流だ。
「井上、あいつが武神だ」
「あれが……武神」
「だがよ、俺は認めちゃいねぇ。所詮は自称だ。武神を名乗っていいのは館長しかいねぇ
からな、そうだろ?」
「もちろんです!」
 武神。文字通り、武の神。武道を志す者にとっては余りにも重い単語だ。
 さらに神心会で空手を習っている彼らにとって、武神といえば一人しかいない。眼帯が
トレードマークの武術家“愚地独歩”。直弟子である加藤はともかく、ほとんど面識もな
い井上にとっても、このビッグネームは絶対だった。
「……それにしてもお前、どうすんだ?」
「え?」
「元の世界に戻れるチャンスじゃねぇか」
 加藤にすれば、希少な親切心から出したアドバイスであった。だが、これはかえって井
上の機嫌を損ねる結果となる。
「先輩っ! 私は決めたんです、最後までここにいるって!」
「……でもよぉ、井上」
 説得を試みようとする加藤。が、その刹那、絶望的な悪寒が彼の身をよぎる。
 ぞくり。
 巨大な影が突如現れる。
 加藤と井上は、とてつもない光景を目の当たりにした。
「嘘だろ」
「嘘でしょ」

 ──空には、城が浮いていた。

365 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/18(月) 19:13:01 ID:pDG5FZuW0
 ついさっきまでは風景であり、住居であり、時には基地代わりにもなってくれた古城。
出現から丸一週間。本日をもって、城は試練となった。
 音もなく飛行を開始する城。さながらSF映画に出てくる空中要塞。
「おい、こっち来んぞッ!」
 目測から算出される速度は、時速十キロ前後。サイズに比例する威圧感を存分に振るい
ながら、確実に迫ってくる。
「ち……まさか、これが試練か? 」
「分かりませんよ。城が変形するとか、城から敵が出てくるとか」
 まもなく、城は二人の上空に停止した。
「……止まった」
 その時、加藤にしがみついていた悪寒が決定的なものとなる。
「やべぇッ! 走れッ!」
「え?」
 井上の腕を掴み、加藤が走る。それから数秒後、攻撃は開始された。

 ズシン。

 城は急降下すると直下に存在した全てを無差別に踏み潰した。
「あ、危ねぇ……」かろうじて攻撃範囲から抜け出していた加藤と井上。
 巨大建造物によるストンピング──これまでとは比べ物にならない危険度。
 被弾イコール即死。こうなったら、逃げ続けることしかできない。井上を引き連れ、加
藤がダッシュを再開する。
「あんなもん、どうしようもねぇ! 逃げんぞっ!」
「はいっ!」
 城も浮き上がり、地上に映る巨大な影と共に加藤たちを追跡してくる。
 走っても走っても、城は一定の速度を保ち追ってくる。しかも二人を見失うことはなく、
スタミナという概念はない。
(このまま逃げてても、いつかは二人とも死んじまう……)
 最大最強の試練が──不吉な未来を暗示する。

366 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/09/18(月) 19:14:30 ID:pDG5FZuW0
次回、ハウル登場(観てません)。

>>353
力太郎は多分何の意味もありません。
生かせれば、使おうと思ってます。

367 :作者の都合により名無しです:2006/09/18(月) 20:53:09 ID:Huig93Ve0
>鬼と人のワルツさん(復活おめ!)
今回は久しぶりともあって、前回までのまとめというか総括というか、
しみじみと過去を振り返る感じですね。そして運命の勇次郎戦へ。
私生活大変でしょうけど、負担にならない程度にがんばって下さい。

>サナダムシさん
力太郎、あんなに意味ありげに井上さん語ってたのに意味なしかw
見ていないハウルを書こうとする気概が好きです(俺も見てないけど)
しかしまだまだ武神と加藤は差がありますねえ。



368 :作者の都合により名無しです:2006/09/18(月) 20:58:07 ID:SE6isBjKO
珍遊記

369 :ふら〜り:2006/09/18(月) 21:04:46 ID:H5PbA0bo0
>>スターダストさん(歌詞中に作品タイトルが出ない、ぐらいしか思いつかないっ……不覚)
小札の口調、久世屋を彷彿とさせますね。飄々としてて。久世屋はそんな雰囲気でもやる
ことはきっちりやってました(エグい攻撃とか)が、さて零はどうか。今はまだ可愛らしい
感じですが戦力は未知数。あと久世屋同様、窮地&シリアス顔が楽しみになるタイプですな。

>>サナダムシさん
>試練を見届けられない方が、死ぬよりイヤです
うん、今の井上ならそう言うと思ってました。つーか武神、結果的には井上がそういう風に
なるのを待ってから「お前だけ帰す」って言ったことになるぞ。極限状況の男女を甘く見て
はいけない。で今度は城ストンピング! ラピュタよりデストピアより迫力……どうする?

>>17〜さん
強さと野望の高さに加え、残虐さも出てきましたねぇガロウズ。戦力描写だけでなく、風格
だけで既にバーディーたちの歯が立つ相手じゃない印象です。でもここまで極端な恐怖支配
だと、部下から背中を刺される展開もあるかも。しかし悠々返り討ちにしそうでもある……

>>ワルツさん(お久しぶりです! 偶然にも、丁度私のクウガと入れ替わりでしたね)
出ましたな大正浪漫。あの二人も謎めいた美男美女で好きでしたが、本作での活躍や如何に。
そして相変わらず、刃牙が真摯で非常〜に良い。最初期と最トー時を思い出します。で今後、
魔化魍はともかく鬼たちの音撃を相手に刃牙が試合したら凄いことになりそう。やるかっ?

370 :バーディーと導きの神〜暴虐のガロウズ〜:2006/09/18(月) 21:59:31 ID:92jU56a50
一方、手負いの怪物を押し止めるために奮闘しているアーマヤーテ軍一行。
竜人牙炎の存在のおかげで荒ぶる怪物たち相手に有利に戦いを進めていたのだが、
なぜかいつの間にかシアンとバーディーの姿が一行から見えなくなっていた。
「二人はもうこの谷にはいませんよ大佐」
千里眼のシドガーが周囲を見渡して告げる。
「簡単に死ぬような連中じゃないが、ちょっと心配だな」
ソシュウがアブに似た生物を重力塊の中に吸い込みながら言う。
「なあに、シアンがいるんだ。抗術の中心部で会えばいいさ」
ヨキーウは気楽に答える。
「それが心配なんだよな、あのエセ魔導士」
「ハハ、言えてる」
ソシュウとシドガーはお互いを見合ってそう言った。

「おお、准将が戻られたぞ!」
大樹の幹から姿を現したガロウズを見つけたボックウェルが部下たちに告げた。
「准将、どうでした?」
「収穫はあった」
大樹の幹の部分から降りてきたガロウズは満足そうに答える。
「はっ!で、それはどのような?」
ボックウェルは聞く。
「うむ。ここはあのバケモノどもの生産工場のようだ」
ガロウズは言い、部下の術者部隊を見渡してこう言った。
「ここの設備を利用すれば、我々の力を数倍にも強化できる。私はそれを行うつもりだが、
お前たちはどうか?」
すると剃髪の部下が一歩前に出る。
「はっ!私も喜んで倍力に参加させていただきます!」
「私も!」
フェイスガードの部下も前に出ると、次から次へと部下たちが前に出る。
しかし、それを諌める者がいた。サーラだ。
「よしたほうが良くってよ。操り人形にされちゃうから」
もはやガロウズの真意を悟ったのか、サーラは一行を前にしてそう言った。

371 :バーディーと導きの神〜暴虐のガロウズ〜:2006/09/18(月) 22:00:39 ID:92jU56a50
「しかし術次長!このままでは我々はいずれ死にます!」
剃髪の部下がなにかとり憑かれたような表情でサーラに抗議する。その口からは小さく泡が
吹き出してもいる。
(くっ……、みんなガロウズの言霊(ことだま)の術にかかっている!)
「そういうことだ、サーラ監査官」
不意にガロウズが言った役職名に、サーラは驚愕したように反応する。
「私が地下組織のリーダーにふさわしいかどうか調べていたようだが……」
ガロウズは邪悪な笑みを浮かべる。
「リーダーにはなってはやるさ。しかし世界のな!」
「くっ!」
すべてが露見していることを悟ったサーラは歯軋りする。
「どうした?自慢の思念虫を飛ばさんのか?フハハハハ!この抗術ではなあ!」
サーラは自身が消されると判断して、踵を返して遁走を図る。
「この血でどこまで逃げ切れるかなサーラ!これは餞別だ!」
ガロウズは球体状の念を飛ばす。そしてそれはサーラが遁走したと思われる場所の付近で
爆発する。
「お見事です。准将」
ボックウェルがガロウズの手際を褒め称える。
しかし、ガロウズの邪悪な目は今度はそのボックウェルに注がれることになる。
「いつまでとぼけておる。我が分身影魂(かげだま)はすべてを見ていたのだ」
ガロウズは問答無用でボックウェルの禿頭をその右手で掴む。
「なっ!なにをなされます准将!!」
「黙れ!黒竜王の間者ボックウェル!」
ごしゃあっとボックウェルの頭が砕ける音が周囲に響く。
とうとうガロウズはその本性を現し、こうして邪魔者を消したのだった。

「シアン。これってどうみても引き返してるようにしか見えないんだけど!」
アーマヤーテ軍一行とはぐれ、再び密林へと戻ってきたバーディーは、先を走るシアンに
向かって怒鳴る。

372 :バーディーと導きの神〜暴虐のガロウズ〜:2006/09/18(月) 22:01:29 ID:92jU56a50
「抗術の中心ってこっちなの?」
走るスピードを上げてシアンに並んだバーディーは、シアンの方向感覚というか、バーディー
自身は感じることのできない抗術の中心部に感じるという圧迫感へのシアンの感覚を疑う。
「るっせえな。いいんだよこれで」
シアンはそんなバーディーのことをうっとおしそうに感じながらも一応答える。
「ちゃんとしてよね。私はその抗術がどんなものか知らないんだから」
バーディーがそう言った時、密林の中の獣道がガサガサと揺れた。
とっさに戦闘体勢をとるバーディーとシアン。
しかしそこに現れたのは、腹部にかなりの傷を負ったサーラだった。その身を包む術式服も
ボロボロだった。
「どしたいルアイソーテの姉ちゃん。全滅でもしたか?」
シアンが構えを解かずに聞く。
だがサーラはキッとシアンを睨むと気丈に言ってのける。
「自分で確かめなデクの棒!」
全滅だったらどんなに良かったことかと心の中で思いながらも、サーラは右足を引きずり
二人の前を通り過ぎようとする。
「その傷じゃ危険よ」
バーディーが人の良さを発揮して優しい言葉をかけるが、サーラはその言葉も跳ね除ける。
「敵の情けなんか……」
言いかけた時、腹部に激痛を感じてよろけるサーラ。
「っとと」
シアンがそのサーラの胸の下に手を回して抱きとめる。
「大丈夫?」
「いや、気絶しちまった」
「とりあえず手当てをしてあげなきゃ」
「おいおい、仮にも敵だぜ」
「かといって負傷してるのに見過ごすわけにもいかないでしょ。とりあえずどこか落ち着ける
ところを探さなきゃ」
バーディーはそう言うと、まだ渋るシアンをよそに手近に安全な場所がないか探し始めた。

373 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/09/18(月) 22:10:09 ID:92jU56a50
ガロウズの本願。活動開始です。

>>352さん
バーディーはもともと強靭な体を持った体質を与えられて人工的に生まれた人間です。
サイヤ人とは違いますが、格闘用に特化した面では同じといってもいいかもしれません。
>>353さん
もうすぐ、出番が近づいてきてますよ。
>>354さん
その言葉だけで意欲がわいてきます。ありがとうございます。
>>ふら〜りさん
ガロウズ、もっと強くなるかも、です。

374 :作者の都合により名無しです:2006/09/19(火) 08:00:57 ID:Dt0X3wyb0
・やさぐれ獅子
井上、結局残りましたか。確かに、加藤だけでは作品に色気が足りないですね。
末同を出すわけにもいかないでしょうし。急にRPGっぽくなってきましたね!

・バーディ
鉄腕対魔術師の戦いですか。純粋な戦士と色々な策を用いたりする者の戦いですな
バーディは猪突猛進タイプだろうから、そういう相手には弱いかも。

375 :作者の都合により名無しです:2006/09/19(火) 11:27:22 ID:k8OEbzFA0
サナダムシさん、17さんハイペース更新乙。

>やさぐれ獅子
格闘ロマンからファンタジーへの移行?
井上さんが残ったのは嬉しいね。

>鉄腕バーディ
バーディは結構優しいですね。
暴れると手がつけられないのに・・

376 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/09/19(火) 17:20:51 ID:+4LRmfRi0
二十六 崖下

 それなりに整った山道とはいえ、人気のない林の中、気配を消して尾行するのは、なかなかに骨が折れた。
 だが、それでも――はじめがリュック発見で浮き足立っていたせいもあるだろうが――気付かれた様子はない。
 どれだけ、尾行を続けただろう。本人としては、気の遠くなるような長い時間に感じたのだが……
 もしかすると、緊張で時間認識が鈍麻しただけで、実際はそれほどでもなかったのかもしれない。
 ともかく。はじめはおもむろに崖の上で立ち止まると、その場に座り込んだのだった。
 もう、かなり林の奥深くに入っている。目撃者など、無論どこにもいる筈もない。
 ターゲットはあろうことか、あんなに足場の悪い場所で、無防備な背中を晒している。
 千載一遇のチャンスだった。奇襲を仕掛けるなら、今しかないだろう。
 バッグからマチェットを取り出して、それで斬りかかると言う手もある。
 だが、それは止めておいた。先に、奇襲を前提に間合いを詰めてしまった為だ。
 ジッパーを開けて、マチェットを取り出す一連の動作で気取られてしまうかもしれない。

377 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/09/19(火) 17:22:16 ID:+4LRmfRi0
 それに、はじめは切り立った崖の上に座りこんでいる。
 刃物など使わなくとも、背中をちょっと押してやれば、そのまま急勾配を真っ逆さまだ。
 自分の潜んでいる位置からも崖下は見えるが、かなりの落差がある。転落すれば無事では済まないだろう。
 上手い具合に、頭でも打って死んでくれればいい。そうすれば、自分がこの手を血に染めるまでもない。
 逃走中の犯人が誤って崖から足を踏み外した、偶然の『事故』として処理されるかもしれない。
 もし、ダメージは負ったものの生命に別状がないとなれば、直接手を汚すしかなさそうだが…… 
 黒い期待を心の内で捏ね回しながら、忍び足で、そうっとはじめの背後へと近付く。
 そして、次の瞬間、その背中を殴りつけるような勢いで突き飛ばした。
 突き飛ばされたはじめは、無様にも崖下へと転がり落ちて行き……ぴくりとも動かなくなった。

378 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/09/19(火) 17:22:58 ID:+4LRmfRi0
二十七 消失

 はじめの生死を確認する為、一度山道を引き返す。
 大きく迂回して、はじめが転落したポイントに向かう。
 はじめの後を必死で追って来ただけで、このあたりを歩くのは始めてだった。
 だから、正確な道順はわからない。それが災いして、崖下に到着するまでに、かなり時間を浪費した。
 はじめは――転落ポイントから、忽然とその姿を消していた。
 崖を見上げる。確かに、あの崖は、先ほどはじめを突き落とした場所に間違いない。
 それが証拠に、周辺にも、人が転がり落ちたとおぼしき形跡がみられる。
 新宮はじめは、生きていたのだ……! それも、すぐにこの場を動ける程度の怪我で済んでいた……!
 ここまで追い詰めておきながらターゲットを逃がしてしまった、自分の詰めの甘さに嫌気が差す。
 誰かに生命を狙われている、と理解すれば、はじめとて、二度とあんな無防備な姿は晒さない。
 もう一度機会があったとしても、今回のように不意打ち、とはいかないだろう。
「畜生!」
 腹立ち紛れに叫びながら、バッグを崖に目がけて投げつける。
 バッグは崖の裾野を転がり、どしゃりと水っぽい音を立てて、泥に頭を埋めた。
「そうだ……土だ」
 それで気付く。目を皿のようにして、転落ポイント付近の地面を観察する。
「よし……あった……!」
 発見したのは、点々と続く、はじめのものと思われる靴跡だった。

379 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/09/19(火) 17:23:33 ID:+4LRmfRi0
 元々柔らかい土質に加えて、雨で地面がぬかるんでいたらしい。
 靴跡はくっきりと地面に刻み込まれて、はじめの向かった先を示していた。
 今度は、こんな手緩い真似はしない。確実に息の根を止めてやる……!
 そう誓って、バッグを拾い上げる。中に入っている、マチェットを取り出す。
 いつでも戦闘態勢に入れるよう、今後はマチェットを、そのまま持ち歩くことにした。
 先の『突き落とし』で、はじめも警戒しているに違いない。悠長に凶器を取り出している余裕などないのだ。
 それに、こんな山の中である。目撃して、騒ぎ立てる人間もいまい。
 これでホッケーマスクでも被れば、ホラー映画の中から抜け出てきた殺人鬼だな……
 そんな、どこか自嘲的な思考が、一瞬ではあるが、浮かんで消えた。
 だが、自分は殺人鬼などではない。殺人鬼を打ち倒す……そう、正義の騎士だ。
 両手で何度か握り締め、マチェットの、柄の感触を確かめる。
 俺は正義の騎士……俺は正義の騎士……俺は正義の騎士……
 自己暗示でもかけるように、心の中で同じ言葉を繰り返しながら。
 はじめの足跡を追って、歩き出した。

380 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/09/19(火) 17:24:36 ID:+4LRmfRi0
毎度ありがとうございます。前回投稿は>>290です。
ようやく、オープニングと話が繋がりました。
次回で最終回です。丁度、メモ帳にして100KBくらいで終われそうであります。
当初、屋敷に到着してからも延々と書こうと思っていたのですが
あまりにも冗長なので、脳内会議の結果カットとあいなりました。

・ハッピーエンド
勧善懲悪がハッピーエンド扱いなら……多分そうだと思います。
・日常
いたって真面目な小市民です。本当です。

381 :オタク ◆6vPGkMowoQ :2006/09/19(火) 17:48:45 ID:jh8WyG9d0
〜プロローグ〜
昔々、とある国で人々は平和に暮らしていた。
だが突如として平和を脅かす魔王ハドラーが現れた。
恐怖し、混乱する世だったが“勇者アバン”と名乗る若者とその仲間達によって魔王ハドラーは打ち倒され世界は平和になった。
だが…

人間達が暮らしている世界とは又別の世界。「魔界」とも呼ばれる世界である。
混沌とした魔界では力こそが全てである。
様々な猛者達が凌ぎを削っている中、突如として絶対的な力を持つ者が現れた。
その者の名は大魔王バーン。
バーンは長身に長い髭を生やした老人の様な姿だが絶大的な魔力を持つ魔王として魔界に君臨し始めた。
彼は今、自分の家でもあるバーンパレスで休息を取っていた。
「魔界も昔と比べて平和になったな。ミストバーン。」
「ええ。今となってはバーン様に歯向かう命知らずなど魔界にはおりますまい。…この私を除いて。」
ミストバーンの言葉にバーンは険しい表情で振向いた。
が、遅かった。
既にミストバーンの掌には高濃度の魔力が集まっていたのだ。
バーンが言葉を発する前にミストバーンの手から魔法が放たれる。
大魔王が消滅すると思われた次の瞬間、黒い影がバーンの体を持ち去った。
ドオンという音がしてバーンパレスの壁には穴が開いた。
「魔王ハドラーか…。」
「バーン様に歯向かうとは…血迷ったか ミストバーン!」
魔王ハドラー。かつて勇者アバンに斃された男。
彼は死後、大魔王バーンの力によって復活したのだ。
ミストバーンが前方にゆっくりと歩き出す。
「散れ。」
再びミストバーンの呪文が放たれた。
爆裂系呪文(イオ系)の衝撃波がハドラーの腕を打つ。
「ぐうう・・・バーン様ッ 逃げますッ!」
ハドラーとバーンの体を白いオーラの様なモノが覆っていく。
「ルーラッ!(移動呪文)」

382 :ダイの大冒険アナザー:2006/09/19(火) 17:49:20 ID:jh8WyG9d0
ハドラーとバーンの体が一筋の光に覆われて空中へと移動しバーンパレスから高速で離脱し始めた。
「逃がすかッ!」
ミストバーンも同様に一筋の光となってハドラー達を追う。
「糞ッ…速度が違い過ぎるッ!」
ハドラーは悪態をついた。魔力なら大魔王バーンの方が自分より遥かに上である。
今こうしている間にも距離はどんどん縮まっていく。
主君を逃がす為に自分は足止めになった方がいいのかもしれない。
「ハドラーよ…命を無駄に散らすな。このまま地上に逃げるぞ。」
バーンクラスともなれば次元移動などお手の物である。
バーンが呪文を唱えると空間に穴が開いた。
穴の向こうは地上世界である。
既にミストバーンは目と鼻の先程の距離まで迫っている。
二人が逃げ切れる時間は・・・無い。
「策を弄するつもりか。無駄だッ!」
「バーン様ッ!ここは私のお任せをッ!」
ハドラーがミストバーンに接近し爪を奮う。
だが爪は空を切りハドラーの腹にミストバーンのイオ系呪文が零距離で炸裂した。
「ハドラーッ!」
「ごふッ・・・。」
「次は貴様だ!大魔王バーン!」
又してもミストバーンのイオ系呪文がバーンを襲う。
「させるか・・・。」
ハドラーが激痛に耐え最後の力を振り絞りミストバーンの呪文に体をぶつけた。
爆音が辺りに鳴り響きハドラーがいた空間の周囲は煙に覆われた。
煙が晴れた後にはハドラーの体もバーンの姿も残っていなかった。
「逃げたか・・・。まあいい。今の魔王軍を取り仕切るのはこの俺だ。フフフ・・・人間共よ・・・支配してやるぞ。フハハハ!」
ミストバーンはそう1人ごちるとバーンパレスへと帰っていった。

383 :ダイの大冒険アナザー:2006/09/19(火) 17:49:50 ID:jh8WyG9d0
第1話 謎の男 ハドラー現る!

ここは南海の島。デルムリン島と呼ばれている。
魔王ハドラーの死後、モンスター達はこの島に流れ着き結界の中で暮らしていた。
ある日、1人の赤ん坊が島に流れ着いた。
ブラスと呼ばれる鬼面導師に育てられたその赤ん坊は「ダイ」と名づけられすくすくと育った。
今、その子は12歳である。
そして育ての親であるブラスが言う「勇者」になる為島を何週もしている最中であった。
何週かしたので一休みしようと砂浜を歩いていた時、彼の目に入ったモノがあった。
砂浜に流れ着いた人、いや魔族の姿であった。
長身で筋肉が盛り上がっており魔族特有に耳が尖っている。
この島で育ちモンスターという生物に慣れている彼であっても目の前にいる魔族は珍しい存在であった。
「グェーッ!」
彼の友人でもある巨大カモメが上空を舞っていた。
が、様子がおかしい。まるで獲物を見るかの様にダイを見下ろしている。
ダイは気付いた。目が赤い。凶暴なモンスターの目をしている。
「グェーッ!」
突如、巨大カモメが急降下してダイに襲い掛かった。
「うわッ!」
咄嗟に体を動かして直撃は避けたもののダイの腕の皮が裂けた。
今のダイに砂浜に倒れている魔族に構っている暇は無かった。
相手の動きを見て構える。防具も得物も持っていない。
どうすればいいのか。
「グエーッ!」
カモメが再度急降下し今度は倒れている魔族に攻撃を仕掛けた。
どうやらカモメは自分の獲物を横取りするなとダイに言うつもりだったらしい。
「やめろ!やめろよ!この人は流れ着いたんだ!手当てしなきゃいけないじゃないか!」
だがカモメにダイの言葉が届いていない。
何度も急降下攻撃を繰り返している。
「うう・・・。」
魔族が呻いた。どうやら目を覚ましたらしい。

384 :ダイの大冒険アナザー:2006/09/19(火) 17:50:33 ID:jh8WyG9d0
立ち上がり周囲を見回す。
「グェーッ!」
急降下して来たカモメを裏拳で弾き飛ばす。
「グ・・・」
カモメは動かなくなった。どうやら気絶したらしい。
魔族はふらりと歩いて砂浜に座りこんだ。
ぼんやりと水平線を沈め何も言わない。
「何も殴る事は無いじゃないですか!」
ダイは抗議した。
先に仕掛けたのはカモメの方だ。だが殴って気絶させたのは魔族の方だ。
「気絶させただけだ。問題ない。」
「そういう問題じゃないですよ!」
ダイは口笛を吹いた。仲間を呼ぶ合図である。
だが・・・一向に仲間は集まらなかった。
(そんな・・・なんで・・・)
「騒がしいな。ケンカでもしているのか。」
魔族の言う通り先程からモンスターの遠吠えがする。
「こうなったら僕だけでも!」
ドン。
ダイの足元で小さな爆発が起こった。
動揺したダイが後ろを見るとそこには育ての親であるブラスが立っていた。
ダイは驚愕した。ブラスの目も先程のカモメと同じ凶暴な目になっていたからだ。
「少年よ。どうやらこの島のモンスター達は凶暴になったようだ。更に・・・アレを見ろ。」
魔族が指差した先には一隻のボートがあった。段々島に近づいてきている。
やがて砂浜に上陸し、二人の人間が降りて来た。
「どうも!アバン=デ=ジニュアール3世です!」
「俺は一番弟子のポップ!」
意気揚々と挨拶した二人の人間など意にも介さぬかの様にダイはその場に立っていた。
恐らくこの島の全てのモンスターは凶暴化している。下手に動けばやられる

385 :ダイの大冒険アナザー:2006/09/19(火) 17:51:09 ID:jh8WyG9d0
正気に戻す手段があるのか?
「ん・・・ポップ君 下がっていなさい。」
「はい先生。」
アバンと名乗った者が魔族に向かって歩いていく。
おもむろに鞘から剣を抜き切っ先を魔族に向けた。
「死んだと思っていましたが・・・しぶとく生き残っていたのですね。魔王ハドラー。」
「私の名は確かにハドラーだ。だが魔王とは呼ばれていない。唯の魔族だ。」
「とぼけても無駄ですよッ!」
アバンが腰を落とし剣を構える。“溜め”の動作だ。
「何をするつもりだ。」
座ったままの姿勢でハドラーがアバンに聞いた。
「アバンストラーッシュ!」
アバンが剣を横に薙ぎ払った。
衝撃波がハドラーの方に飛んでいく。
「ムゥゥ!」
両腕でガードをするもハドラーはそのまま森へと弾き飛ばされた。
「すっ、スッゲー・・・。」
ダイは目の前で起こった光景に呆気に取られていた。
「後はこの島に結界を貼らなければいけませんね。」
アバンが腕を一度クロスさせ広げた。
「破 邪 呪 文 マ ホ カ ト ー ルッ !」
アバンを中心に昼間だというのに眩い程の光が発生し、デルムリン島全土を覆った。
「グェッ!グー・・うう・・・?」
ブラスの目も騒がしかったモンスター達の遠吠えも納まった。
「あの・・・アナタは一体・・・」
ダイが目の前にいる男に尋ねた。
「改めて自己紹介させていただきます。私の名はアバン=デ=ジニュアール3世。勇者の専属教師であります。」
「はぁ・・・。」

これが後の勇者と師匠との衝撃的な出会いであるとこの時は誰も予想していなかった・・・

386 :オタク ◆6vPGkMowoQ :2006/09/19(火) 18:01:36 ID:jh8WyG9d0
初めまして。少し前から構想を練っていたSSを投下させて頂きました。
一応連載予定なのですが・・・かなりパラレル風味になると思います。

387 :作者の都合により名無しです:2006/09/19(火) 20:00:51 ID:YL2yBwUC0
>かまいたちさん
あと一回で終わりかあ。前作といい今作といい、高いレベルでの完結に頭が下がります。
しかも、頭に話がループするというのも練り込まれている。凄いなあ。
勧善懲悪というのはドラマの基本でもありますから、大満足のラストをお願いします!

>オタクさん
新作ありがとうございます!是非、このまま連載へ向けて頑張ってください!
忠誠心の塊のようなミストがバーンに牙をむくのが面白いですね。
ダイとポップも1話から出て、あのメンバーもそのうち合流するのかな?

388 :作者の都合により名無しです:2006/09/19(火) 22:42:02 ID:3hqwuB3Q0
・金田一少年
俺も傑作を2つ続けたかまいたちさんの力量に敬意を払います。
氏の凄い所は、構成がしっかりしていてロジカルでありながら
物語そのものが抜群に面白いということ。
普通は、どこか説明臭くなったり読み辛かったりするのに。
次回最終回ですか。うーん残念。
しばらく休まれてから、次作でまた楽しませてくれると嬉しいけど。


>ダイノ大冒険アナザー
お、これはバキスレらしい元気のある作品になりそうですね。
そういえばここの最初の作品もバキのアナザーですし。
こういうパラレルな物語は自由かつ、ある程度の背骨がしっかりしてるので
読んでて楽しい。いきなりミストの裏切りから入りましたがw
ダイたちの大冒険、楽しみにしてます。

389 :作者の都合により名無しです:2006/09/20(水) 00:39:24 ID:9nLFFP7Q0
新連載とは嬉しい限りですね。頑張ってください。

390 :作者の都合により名無しです:2006/09/20(水) 00:41:20 ID:3A7Ojic30
298 名前:はじめまして名無しさん :2006/09/15(金) 23:22:38 ID:pNL/1NTp   
         ________   
       /:.'`::::\/:::::\   
      /::            \
     /::.  /"""  """\ ヽ
     |::〉   ●"    ●" | 竹石圭佑 
   (⌒ヽ             |) (1986〜 愛知県名古屋市)
    ( __     ( ∩∩ )    |
      |  、_____  /   
      ヽ   \____/  /
       \        /
         \____/

       /;;;;;;;;;;;;`Y´;;;;;;;;\
        /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;',
      l;;;;;r'´ ̄ ̄~  ̄ ̄ヽ;;;;;!
       |;;;;;;|         |;;;;;|
       {;;;;r',;;'"゙`、  .,,;-ー、 ',:;}   植草一秀
      rゝl!. (●)│l (●), :l;jヽ 名古屋商科大学客員教授  
       〉),|   . ノ ヽ   :!ノ/   
        ゝ_.l   ゝ- '   ,jノ
        l、  ___,  /!  
         lヽ  ー‐'  ,/ ! 
          /!、`ー─‐'" /ヽ  

 竹石圭佑と植草一秀氏には多くの重大な「共通点」がある。
竹石圭佑は覗き&盗撮が趣味で高校時代にも最低2回は「覗き」「下着泥棒」で捕まっている。
顔の系統も同じで、かなりレベルの高い金魚面である。
竹石や植草氏は世の中の女性を「性欲処理の道具」としてしか見ていない。
犯罪・変態行為で互いにしのぎを削りあう両名。好敵手とも言える。
しかし、この二人の不自然なほどの重大な「共通点」から考察すると、竹石圭佑は植草一秀氏と血縁関係にあるとも考えられる。

391 :作者の都合により名無しです:2006/09/20(水) 08:34:36 ID:QrMlg99A0
金田一少年終わってしまうのか、いよいよ。
前作が神掛かってたので心配だったけど今回も良かったな。流石かまいたちさんだ。
エンディングと次回作期待してます。

新連載のダイも嬉しいな。こういうアドベンチャー風の作品はSSの華だと思うので
長編・完結目指して頑張って下さい。早くバランがみたいな。


ところで、バンコラン役の声優の曽我部和恭っていう方が亡くなったみたいだな
最近声優さんよく亡くなるね

392 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/09/20(水) 08:49:19 ID:/oqNosml0
第八十九話「最後の勝負・1」

―――そして、ここは魔王の家。
だだっ広い応接間は人で一杯だった。そりゃまあ、二十人以上の人間が鮨詰めになっているのだから当然である。
「くっくっく―――登場人物の取捨選択に失敗するとこうなるという見本だな」
狐面の男は鼻で笑う。
「多すぎる―――登場人物があまりにも多すぎる。それも、物語の本質そのものに関われるくらいに代替の利かない、
殆どがそんな連中ばかり―――その結果が、今の状況か」
そして、悠然と宙を仰ぐ。狐面のせいでその表情は計り知れない。
「・・・で?なし崩し的に私の家まで来たわけだけど、あなたはのび太ちゃんたちとどういう関係なのかな?」
魔王が穏やかに、しかしその目に鋭い光を湛えて狐面の男に尋ねる。
いつもおちゃらけていてともすれば忘れそうになるが、彼はれっきとした魔王である。常人ならば、一瞬にして背筋まで
凍りつくような視線だ。
しかし狐面の男はその眼光を、平然と受け止めた。
「敵だ―――以前は敵だった、というべきかな。今は・・・どうなのだろうな。今の俺の立場は、とてもとても不安定だ。
敵でもなく、味方でもない―――ふん。因果から追放された身である俺には相応しいかもしれんがな」
「訳の分からねえことばかり言ってんじゃねえ。つまり―――友好的な立場じゃねえってんだな?」
神王はボキボキと指を鳴らす。のび太たちに危害を加える意志があるなら、容赦しない―――そう言っていた。
「<友好的な立場じゃねえ>ふん。そう喧嘩腰になるなよ。今はもうこいつらをどうこうしようって気はないんだ。
俺だって本当はもう、姿を見せるつもりなんてなかったんだよ」
「・・・そうかい。まあいい。折角だから、お茶くらい飲みなさい」
魔王が狐面の男に茶を勧めた。
その目は好奇心で輝いている。果たして狐面の男は、仮面を被りながら如何にして紅茶を飲むのか、あるいは如何にして
クッキーを食べるのか?あるいは諦めて、手を付けないのか?
―――結論から言うと、狐面の男はあっさり面を外して悠々と紅茶を飲み、クッキーをボリボリと齧った。


393 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/09/20(水) 08:49:52 ID:/oqNosml0
「なんだ、その露骨にがっかりした顔は」
「いや・・・まさか、普通に外すとは思わなくてね・・・」
「外さなきゃ茶なんぞ飲めんだろうが」
「いや、だけどよ・・・ほら、そんな怪しい仮面を付けてるからにゃ、素顔を見せるわけにはいかないとか、滅多な事じゃ
外せないとか、そういうこだわりがあるもんじゃねえか?」
「そんなものはない」
神王に対し、堂々と言い放つ狐面の男だった。
「昔の悪友の形見だから、とりあえず付けてるだけだ。メシを食ったりなんだりの時にゃあ、そりゃ外すさ」
「・・・・・・」
じゃあ別に付けなくたっていいじゃないか。形見だっていうならそれこそ大事にしまっておいたっていいだろうに。
言いたいことは山ほどあったが、結局言わないことにした。
神王と魔王はむっつりと黙り込む。
この二人を黙らせるとはやはり只者ではない、とのび太たちは変な所で感心した。
「ところで・・・その、<ドクター>さんだっけ?一体どういう人なの?」
のび太は狐面の男から<ドクター>と呼ばれていた女性を見た。ちなみに彼女は家に入る際にレインコートから白衣に
着替えている。いや、ただ白衣を着ているのではない。
白衣の下は、ワンピースタイプの水着だった。しかも、フリフリのレースにパレオ付き。
「・・・・・・」
深く追求するのは避けた。触れてはいけない話題のような気がする。
「<一体どういう人なの>ふん。名前は絵本園樹(えもと・そのき)。<ドクター>って呼称の通り、闇医者だよ。そして、
新生十三階段の候補の一人さ。今回の十三階段は、思いっきり俺の趣味に走った人材を集めてみようと思ってな」
つーことは、こういう女が狐面の男の趣味なのか。嫌過ぎる。
悪いとは思いつつも、ついつい変な目で彼女を見てしまうのび太だった。

394 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/09/20(水) 08:50:26 ID:/oqNosml0
「しかし俺は今回の一件の結果を見ておこうと思っただけで、もうお前らとは会うまいと思っていたのだが・・・ふん。
そう言っておきながらこうしてお前らとまた顔を突き合せるとはな。これでは俺がツンデレだと思われてしまうではないか」
「心配しなくても、誰もあんたにそんな要素は期待してないよ」
稟は言ったが、狐面の男は聞いちゃいなかった。
「ツンデレと言えば、最近はちょっとそういう素振りを見せただけですぐにツンデレツンデレと騒ぎ立てるが、俺としては
どうかと思うな。ツンデレというのはそんな風に軽々しく扱っていい問題ではない。なあ、そう思わないか?」
「知るか!なんであんたとツンデレについて語らなくちゃならないんだ!」
「<なんであんたとツンデレについて語らなくちゃならないんだ>ふん。つれないな」
「つーか、あんたさあ・・・さっきから話聞いてりゃ、黒幕の癖に全然ダメなんじゃないのか?さっぱり何も考えてない
ようにしか見えねえぜ」
「なんだ、今さら気付いたか」
ディアッカの悪態に、平然と首肯した狐面の男。
「俺は確かに何も考えてない。はっきり言って、常に思いつきだけで行動している」
「・・・・・・」
全員の背中から嫌な汗が流れた。やばい。こいつ、マジだ。マジで言っている。
これほどまでにある意味恐ろしい黒幕キャラなんて、見たことない。
「ま、まあ・・・そんな話題は置いといてだ。ちょっといいか」
ゴホン、と咳払いをしつつ神王が手を上げて質問の態勢に入った。
「稟殿やのび太たちは話し辛そうだったから、なるべく詮索はしたくなかったんが・・・どうもそうは言ってられねえみてえ
だな。一体全体、どういうことが起きてんだ?わやくちゃで訳が分からねえ。出来るだけ分かりやすく説明しろ」
「<出来るだけ分かりやすく説明しろ>ふん。いいだろう。簡単に言うと俺は野比のび太らを殺すため手足となってくれる
十三人を集めて戦ったが負けた。で、十三人で最後に残った奴は俺から離れて単独で野比のび太たちと決着を付けるべく
ラスボス化した。どうだ、分かりやすいだろう」
「端折り過ぎで分かりにくいったらねえよ!仕方ねえ、おい、まー坊」
「そうだね。あれをやるか、神ちゃん」
神王と魔王の掌に魔力が集中していく。そしてそれを、狐面の男の額に押し当てた。

395 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/09/20(水) 08:52:35 ID:/oqNosml0
「記憶を探る魔法だ。てめえと話してると埒があかねえからな。てめえの頭に直接聞いてやる」
「少しばかりプライバシーに踏み込むけど、すまないね」
「<すまないね>ふん。何をどうしたところでそうするのなら、一々謝るな。そんなもの―――どっちでも同じことだ」
「・・・・・・」
神王と魔王は無言で狐面の男の記憶を探った。目を瞑り、意識を集中しているようだ。そして―――
「うわあああああああああっっ!?」
二人同時に、弾かれたように狐面の男から離れた。その目は、この世の物とも思えぬ何かを見たとでもいうように大きく
見開かれている。
「おっちゃん!どうしたんだ、大丈夫かよ!?」
「あ、ああ・・・問題ねえ、心配すんな・・・」
駆け寄ってきたジャイアンに対してそう言ってはいたが、神王の顔色は悪い。
「ふん―――どうした。俺の記憶の中で、嫌なもんでも見ちまったか?」
「・・・・・・一つだけ・・・聞きてえ・・・」
「なんだ?」
「・・・てめえ・・・本当に人間かよ・・・?」
「<本当に人間かよ>ふん。仮にも神、しかもその王であるお前がそう言うか。くっくっく―――俺も相当ろくでもない
奴らしい。ちなみに俺は人間だぜ・・・少なくとも肉体的には、な」
狐面の男は嘲るように言ってソファに踏ん反り返る。神王と魔王はぐったりと椅子に座り込んだ。
「・・・なんて奴だ」
魔王がボソっと呟く。のび太はそっと尋ねてみた。
「何が・・・何が、見えたんですか?」
「―――見たくもないものだよ。あんな過去を抱えてなお、ああやっていられるものなのか。彼は・・・人間じゃない。
少なくとも、精神は並の人間のそれじゃあない。強靭にして―――狂人なる意志の持ち主だ」
疲れたように大きく息をついた。そして、のび太にだけ聞こえるように言った。
「のびちゃん・・・キミは、人外にとても好かれやすい」
「へ?」
「そういう体質の者がいるんだ。ヒトならざる存在が心惹かれる人間という者が。思い当たる節はないかい?キミに
好意を寄せた者たちの中には、そういう存在がたくさんいたはずだ」
人と、それとは違うモノ。そして、違うモノに愛される人。
「けどそれは、いいことばかりとは限らない。人外の者たちの中には、害意を持った存在が―――どうしようもない
悪意を持った存在もいるんだ。その最たる例が―――」

396 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/09/20(水) 08:53:13 ID:/oqNosml0
狐面の男に視線をやって、すぐに外した。重い空気が部屋に充満する。
「あ・・・あの・・・」
絵本がおずおずと切り出した。
「なんですか?」
「その・・・重たい空気にちょっと精神的にやられちゃいそうだから、気分転換したいんだけど・・・」
「気分転換?」
まあ、不思議なことではなかった。ちょっとイッちゃってるとはいえ、これだけ気の弱そうな女性だ。この場の空気に
耐えられなくなってもおかしくはない。
「だ、大丈夫。そんなに時間はかけないから・・・」
「別に構いませんが・・・」
「そう?じゃ、お言葉に甘えて・・・」
絵本がポケットから何かを取り出す。キラリ、と光った。
メスだ。鋭く輝くそれは、人間の肉など軽く斬り裂いてしまうだろう。
「何を・・・」
何をするのか、と問う間もなかった。刃が煌き、次の瞬間―――鮮血が舞った。

397 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2006/09/20(水) 09:07:30 ID:oOLAT0O+0
投下完了。前回は>>223より。
執筆ペースが落ちてるなあ・・・何とか今年中には完結させたいところですが。
しかしながら何時の間にやら僕がSS書きデビューしてから2年が経過しました。
神界書いてたころは、ここまで話が訳の分からん方向に進むとは思いませんでした。

>>237
最終決戦と煽りながら、全然決戦まで話が進みません。

>>238
稟は多分、ギャルゲ界主人公でも屈指の<いい奴>だと思っています。
当たり前のことを、当たり前にできる人。そして人の悲しみが分かる人。

>>243
絵本園樹。医者。精神的に凄まじく問題あり。なのに精神科医もやってる。
このSSでは一応ある程度マイルドにしてます。原作まんまで書くと、こっちが精神やられそうですw

>>ふら〜りさん
味方、にはならないですね。戦闘面のラスボスじゃないけど、<物語としてのラスボス>ですから。

398 :作者の都合により名無しです:2006/09/20(水) 09:44:07 ID:YOyo7ZsW0
朝からサマサさん乙。そしてSS職人2周年おめ。

狐の語りは長編にありがちな解説役を兼ねてありがたかったなあ。
流れが整理できました。今年中に完結?寂しいな。

前作を入れると長編どころか大河ですな、このシリーズ。


399 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/20(水) 12:12:48 ID:ze2XHSCM0
>>365より。

400 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/20(水) 12:13:33 ID:ze2XHSCM0
 宙を水平に飛び、加藤たちを追尾。彼らに接近するや否や、急落下。外れると、また浮
き上がり追尾再開。
 ペースを早めることも緩めることもせず、城は以上の行動を繰り返していた。
 立ち止まってはならない。止まったが最後、ぺしゃんこに押し潰されてしまう。
「はぁっ、はぁっ。とんでもねぇもん送り込みやがって!」
「せ、先輩、私は置いて一人で……」
「バカいうんじゃねぇッ!」
 終わりなき逃避行。
 城の威力は計り知れない。ひとたび密林に落下すると、木々は粉々に粉砕され、半ばミ
ステリーサークルのような空間を形成する。
 加えて、いくら逃げても城に止まる気配はない。
「やっぱ、こっちから打って出るしかねぇか」
「で、でも、どうやって」
「乗り込むんだよ」

 まず、二人は上空から狙ってくる城の入り口部分を確認した。
「あそこか……。よし、次降ってきたら、あそこから中に入るぞ!」
「オスッ!」
 次にわざと的となり、城を落とす。
 計算通り、彼らの目の前に入り口が落ちてきた。
「急げッ!」
 チャンスはほんの一瞬。城が浮き上がるより早く、彼らは城内へ滑り込んだ。顔を見合
わせ喜ぶ二人。
「やったな!」
「えぇ、これで安全なはずですよ!」
 中に入ってしまえば、潰される心配もなければ、逃げ回る必要もない。人心地がつき、
ぺたんと二人は座り込む。
 しかし、城はさらなる脅威を彼らにもたらすのであった。

401 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/20(水) 12:14:19 ID:ze2XHSCM0
 しばらくの間、加藤と井上は息を整えていた。城の飛行速度は時速十キロだが、一般的
なジョギングが時速八キロ前後で行われることを考えると、この城から逃げることがいか
にハードであるかが理解できるだろう。
「大丈夫か、井上」
「はい、だいぶ落ち着いてきました」
「まさかこんな試練が来るとは──?」
 加藤がさっき侵入に使った入り口を見る。すると、雲がどんどん下に流れているのが分
かった。つまり、城が上昇している。
 またも、悪寒が加藤の背筋をなぞる。
「まさか」入り口に向かい、外を見やる加藤。
 次の瞬間、加藤は絶句した。
「マジかよ」
 この城は(狭いとはいえ)無人島が見渡せる高度にまで上昇していた。高度五十メート
ルは確実だ。もう飛び降りることもできない。
 もし、このまま永遠に上昇するとしたら──最悪の結末が目に浮かぶ。
 遠ざかっていく地上を、ただ祈りながら見守るしかない加藤。宇宙遊泳なんかしたくは
ない(そもそもこちらの世界に宇宙があるかは分からないが)。
 ──やがて、城が上昇を止めた。
「ほっ」同時に、ぽつぽつと浮かんでいた脂汗も分泌が止まる。
 そして、汗は物理法則を無視して、天に向かって走り出す。
 否、これはきちんとした法則に乗っ取った現象だった。

 城、急速落下。

402 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/20(水) 12:15:02 ID:ze2XHSCM0
「きゃあぁああぁあっ!」
「やべぇっ……!」
 何もかもが上に向かう。エレベーターで時折味わう浮遊感、あれの何倍もの感覚を二人
は味わっていた。
 というより、浮遊していた。
 あっという間に二人は天井に叩きつけられ、さらに城の着陸と同時に床へ叩きつけられ、
城は再び上昇体勢に入った。
 加藤はというと、受け身を取りダメージもさほどではない。が、問題は井上。二度も高
速で体をぶつけ、無事に済むはずがない。
「あ、あ……。あ……」涙目で、ぐったりとしている。
「井上っ!」加藤が声をかけても、井上は唇をかろうじて動かすだけ。
 きっと城はまた今の攻撃を行うだろう。二回目はまず耐えられない。
 井上を背中におぶると、加藤は必死に頭をひねる。
(どうすれば、倒せる……?)

 何もアイディアが浮かばぬまま、無情にも城は上昇を終えた。再度、急降下。
「──うぐァッ!」
 今度は自分をクッション代わりにし、加藤は井上を守った。とはいえ、人を背負ったま
ま受け身が取れるわけもなく──全身を強く打ちつけられた。
「ぐっ! いってぇ……!」
 彼らに一切気遣うことなく、城はまた大空を目指す。もうあと一分もすれば、三回目の
フリーフォールが始まる。
 次に喰らえば、いくら加藤とてどうなるかは分からない。いつまでもクッションを務め
上げる自信もない。
「どっ……」
 追い込まれた加藤。もう、あの人にすがるしかなかった。
「どうすりゃ、どうすりゃあいいんだよッ! 館長ッ……!」
 地上が遠ざかっていく。

403 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/09/20(水) 12:17:33 ID:ze2XHSCM0
次回、独歩登場。

404 :バーディーと導きの神〜サーラとシアン〜:2006/09/20(水) 17:08:10 ID:qM2qqmiR0
邪魔者を始末したガロウズは、さっそく大樹の生産プラントを使って部下の体を改造し始めた。
記憶を消し、筋肉を倍増し、術の能力も数倍にアップさせる。
それは、まるでコックが料理を作るかのように手際よく進められた。ガロウズはすでにこの
大樹の機構を完全に理解しているのだった。
そして程なく十人の強化兵が出来上がる。
そのシルエットは筋肉質の人間と同様だが、その顔には目鼻はなく、のっぺらぼうのように
つるんとして頭部と一体化している。
口はあるにはあるが、大きな牙が生えており、もはやヒトとは言えぬほど変容していて怪物としか
言いようがない。
ガロウズは、そんな強化兵たちを満足そうに見つめながら一人つぶやく。
「即興とはいえこれほどの完成度とはな……」
いまさらながらプラントの生産能力に脱帽する。
「では行け!一人として生きて逃すな!」
一列に並んだ強化兵たちに対して命じると、強化兵たちは一言も発さず転送術で姿を消していった。
ガロウズはもう一度満足そうにつぶやく。
「フフフ、きゃつらめ。どう抵抗するか見物だな」
邪悪な笑みを浮かべると、ガロウズは自らを改造するためプラントの中に入っていった。

その頃ザンとリュミール、モルプとキデルの一行は、岩石砂漠地帯を通り抜け、一面に広がる
草原地帯にたどり着いていた。
「ここらへんがよがっぺ」
草原のある地点に立ってモルプが告げる。
「んー、そうだね。ここにするよ」
そう言うとザンは草を大きな矢印の形に引き抜く。後に続く仲間たちの目印にするためだ。
「もう大分先行したようだ。この辺りで休憩しよう」
キデルが提案する。
「そうだね。お腹も空いたしね」
ザンはナップザックを探って、密林地帯から持ってきていた木の実や果物を取り出すと地面に座る。
「リュミール、これがおいしいよ」
「ありがとうザン」
リュミールは果物を受け取ると、自分たちのやってきた方向に視線を向ける。

405 :バーディーと導きの神〜サーラとシアン〜:2006/09/20(水) 17:09:02 ID:qM2qqmiR0
「みなさん……、大丈夫かしら……」
「大丈夫だよ。みんな歴戦の戦士だし」
「彼らの能力は素晴らしいものだし、バーディーもイクシオラ(調整アルタ人)だからね。滅多な
ことではあの程度の怪物相手に怪我などしないだろう」
陽気なキデルも得意の人差し指を立てるポーズでザンの言葉を補足した。
「だと、いいんですけど……」
自分の使命に巻き込んでしまったことへの自責の念からか、リュミールは憂いをこめてそう
つぶやいた。

凶悪な表情で笑うガロウズ。その威圧感に押しつぶされそうになったサーラは、必死にもがいて
逃れようとするが、いくら走ってもガロウズの笑い声は一向に小さくならない。
「サーラ監査官!」
ガロウズの声が響く。
隠密に内偵を進めていた地下組織の役職をガロウズはどうやって知ったのか?
あの性格で、あの邪悪さで、力などない地下組織のことをどこまで知っているのか?
可愛い部下たちに危険は及んでいないか?
サーラの脳裏にあのアーマヤーテの少年を助けた黒竜城の一般兵たちや、外部のメンバーたちの
顔が浮かんでは消える。
もはやこうなった以上、あのガロウズを地下組織に接近させてはならない。
守らなくてはとサーラは焦る。しかしどうやって?
自分以上の強大な力を持った、一時は人間種族のリーダーになって欲しいと願った特位階級者
相手にただの一部隊の術次長の自分になにができる?
サーラは悩む。
委員会へはどうやって報告を?
強力な抗術の中、思念虫は飛ばせない。
そういえばこの島に先に到着したと思われるアーマヤーテ軍の一行はどうしているだろうか?
そういえば出会ったような気がする。あの正体不明の格闘戦に優れたやたら露出度の高い妙な
服を着てるくせに強い女。
「敵の助けなんてっ!」
自分の声でサーラは目を覚ました。

406 :バーディーと導きの神〜サーラとシアン〜:2006/09/20(水) 17:09:45 ID:qM2qqmiR0
薄暗い洞窟の中、手当てを受けた上で仰向けに寝かされており、頭の下には上着を丸めて
作られた枕があった。
「大丈夫?ひどくうなされていたけど」
手当てをした張本人のバーディーは、サーラの額に浮いた汗を高速浮き砲台から持ち出していた
タオルで拭きながら本人の反応を待った。
「あ……、あんた……」
腹部に軽い鈍痛を感じ、サーラが言えたのはかろうじてそれだけだった。
「心配しないで。私はバーディー・シフォン。アーマヤーテ軍と行動を共にしてるけど、
負傷者に敵味方はないと思っているわ」
「知って……、いる……」
サーラは起き上がりながらそう言った。
バーディーが顔に?マークを浮かべて背中を支えてやる。
「意図不明戦闘能力者バーディー・シフォン……。『例の少女』を発掘した当時から共に行動
するようになる。出自は不明。発掘場駐屯地および黒竜城上層階での戦闘時にその姿を目撃
された……。あたしが知ってるあなたの情報は以上よ」
自嘲気味の苦笑を浮かべてサーラが言う。
「私、有名人なんだ」
バーディーはあくまで明るい笑顔を絶やさない。
「あたし、捕虜になったのでしょ?」
サーラが問う。
「捕虜?どうして?」
「私はルアイソーテの軍人。あなたたちがリュミールと呼んでいる少女の後を追ってこの島に
乗り込んできたのよ。それが味方の裏切りにあって現場を遁走した上に敵に捕まってはね。
どうぞ好きにしてくださいとしか言えないわ」
「裏切り?」
「そう……。あなたも知っていると思うけど、私の上官、ガロウズって人物がこの島の怪物を
製造するプラントを使って……、仲間を……」
サーラの頬に一筋の涙が流れる。
「人体改造を行ったのね?」
バーディーが問うと、サーラは黙ったままコクリと頷いた。

407 :バーディーと導きの神〜サーラとシアン〜:2006/09/20(水) 17:10:22 ID:qM2qqmiR0
「聞いた、シアン?あなたの言っていたとおりね」
バーディーが後ろに振り返る。そこには丸太に刺した怪物の肉を焚き火で焼くシアンの姿があった。
「だから言っただろ。俺が見たって」
「え?」
シアンの言葉にサーラがピクリと反応する。
「そっちの姉ちゃん、お前を抱きとめたときにちょっと、な」
シアンが照れ笑いする。
「お前の乳大きかったから触り心地良かったぞ」
照れ隠しなのか、言わずもがなのことまで言う。
(接触精神感応!この男……)
サーラが怪訝な顔でシアンをチョイチョイと手招きする。
なんだなんだと寄っていくシアン。
サーラはシアンの耳元に口を近づけると、思いっきり空気を吸い込んだ。
「このドスケベ!!」
サーラは大声で怒鳴った。
「人が気絶してるのをいいことに勝手に心の中を覗くなんて!!まさか……」
サーラは頭がグワングワンと回っているシアンを放り出してバーディーのほうに向き直る。
「手当ても二人で?」
真っ赤な顔をして聞く。
「ええ。そのほうが効率がいいし、私はこの星の人間のことに精通しているわけではないから」
「な、なんですってえ!!」
思わず自分の体を抱きしめるサーラ。
「24年間誰にも見せたことなかったのに!!」
敵に助けられたことや自分の体ならいざ知らず、心の中まで知らない男に覗かれたことと、
自身のプライドその他の心の葛藤の末、わんわん大声を上げて泣き出してしまう。
「え〜と……」
耳を押さえてうずくまっているシアンと、子供のように泣いているサーラを見やって、どうして
いいか分からなくなるバーディー。
そのうちシアンがダメージから立ち直ってサーラに詰め寄ってくる。
「なにしやがんだこのクソアマ!」
するとサーラが素早く立ち直ってシアンを睨みつける。

408 :バーディーと導きの神〜サーラとシアン〜:2006/09/20(水) 17:11:00 ID:qM2qqmiR0
「うるさいわね!体も心も勝手に覗くだなんて!責任とってもらうからね!!」
サーラの意外な剣幕に驚いたのか、シアンは思わず後ずさる。
「お、おう。俺は独身だからいつでも責任は取れるぜ」
頭を指でコリコリ掻きながらなんとなく紅潮した表情で答えるシアン。
しかしサーラはさらにヒステリー度をアップさせる。
「アンポンタン!誰が結婚してくれだなんて言ったのよ!あたしはマッチョは嫌いなの!
それにあんたとあたしは敵同士じゃないのよ!!」
キンキン声でわめくサーラ。思わずバーディーが両耳をふさぐほどの声量だった。彼女の傷は
そう深くはないようだ。
しかし、そのサーラのヒステリーに対してまじめな顔つきでシアンは言ってのけた。
「戦争が終わりゃ、その心配もなかろうがよ」
ちらちらと燃える焚き火がシアンとサーラを照らす。バーディーは完全に蚊帳の外だ。
「戦争って、誰が終わらすのよ?」
「誰がって、俺はそいつを信じてくれる奴が一人いればいいと思うんだがよ」
「な、なによう……、ジロジロ人のこと見ないでよ……」
サーラの顔が赤かったのは焚き火のせいではなかっただろう。
だがシアンはそんなサーラの反応に不満があったのか、ふーっと息をつくとまた焚き火の
ほうに戻っていった。
「俺は寝る。お前ら勝手にこいつ食っとけ」
惚れっぽいくせに怒りっぽい男シアンは、バーディーに続いてサーラへのコナかけにも失敗し、
ふてくされて横になったのだった。

409 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/09/20(水) 17:15:41 ID:qM2qqmiR0
新コンビかトリオか。妙な組み合わせの誕生です。

>>374さん
確かに術相手にどうするか、悩みどころです。
>>375さん
前向きで楽天家なのです、バーディーは。だから弱者には優しいんですね。

410 :作者の都合により名無しです:2006/09/20(水) 19:14:41 ID:kf63F/vQ0
なんか一気に着てるW

>サマサさん
神王と魔王のコンビをしても狐面の男は手ごわいですね。
最後の引きから、あんまり間を持たしてほしくないなあ。

>サナダムシさん
おお、なんかSFっぽくなってきましたな。雰囲気変わった。
でも独歩、急にどうやって登場するんだろう?

>17さん
冒険ものの楽しさのひとつはパーティの雰囲気ですな
その点、このトリオはちょっとだけ色気もあるし楽しいです。

411 :作者の都合により名無しです:2006/09/20(水) 22:38:05 ID:pBQ6Av8Q0
多いので1行感想ですみません。

・金田一少年の事件簿
最後までドキドキし通しでした。是非、次回作を!今度は明るい作品もいいかな?

・ダイの大冒険アナザー
連載おめ!バーン様、いきなり不遇だけどあのカリスマが消える訳ない!逆襲期待。

・超機神大戦
ツンデレ談義笑った。本来はシリアスな場面なのに。神王、相変わらず威勢良いな。

・やさぐれ獅子s
いつの間にか加藤と井上がシータとパズーにw武神の招待が独歩、とかじゃないよね?

・バーディと導きの神
もうすぐ決戦が近いのに、いい意味で緊張感のないパーティですねえ。ツンデレしてるしw


書き手の方が固定して来ちゃったけど、相変わらず好調ですね。



412 :ふら〜り:2006/09/20(水) 23:00:34 ID:TFjytKAr0
>>17〜さん(ほんとに、ペースもクオリティも落ちませんねぇ。お見事です!)
バーディーたちが、どんなに緊迫した状況でもある程度は「和気藹々さ」を保っているの
に対して……ガロウズは何だか、徹底的に一人。孤高なんてカッコいいものじゃなくて、
恐怖を纏って周囲を薙ぐ一人。で、そんな時にシアンは両手に華してるし。大丈夫か?

>>かまいたちさん
怪物と闘う者は、自分自身が怪物とならぬように……とはニーチェの言葉。そういや原作
「金田一」でも、復讐型犯人たちはそんな風に言われたりしてましたね。不謹慎ながら、
やっぱり大切な人が無残に殺されたりしたら、そうなる方がむしろ自然かもとは思えます。

>>オタクさん
かなりパラレル風味と言われてる割に、今のところダイ側はほぼ原作通りの模様。その分、
魔界側は根底から覆ってますけど。よりにもよって、あのミストが謀反……何か深い真意
があるか否か。それが明らかになるのは、きっとまだまだ先の話ですね。期待してます!

>>サマサさん
確かに、これだけの人数がいて一人として物語に関わってない奴はいない。改めて思い知る
本作の無駄なき大スケール、そしとてその舵を取るサマサさんに敬服です。物語としての
ラスボス……何だか深い。で、そいつがこんな終盤に連れて来た新キャラ、何をしでかす?

>>サナダムシさん
いや、あの、もう独歩もクソもないというか。塾長ばりの千歩気孔拳でも使えるならまだ
しも、空手でどうこうできる相手では……でもまぁそれを言ったら、今までだってそういう
のをクリアしてきた訳で。独歩がどういう形で関わるにせよ、きっと何とかするでしょう!

413 :作者の都合により名無しです:2006/09/21(木) 01:50:42 ID:8o/0gyS+0
狐面の男って本当にラスボスかなあ?違う気がするんだけど。

独歩はなんとなくラスボスの気もするがw

414 :作者の都合により名無しです:2006/09/21(木) 09:12:44 ID:McdLhqXD0
サナダムシさん、やさぐれ獅子も大好きだけど
俺のフェイバリットSSのしけい荘復活もそろそろひとつ
あと、うんこw

415 :作者の都合により名無しです:2006/09/21(木) 14:33:27 ID:MbfjrDsT0
しけいそうはやさぐれが大団円してからじゃないの?



416 :オタク ◆6vPGkMowoQ :2006/09/21(木) 20:14:40 ID:6vAE8v0h0
第二話 新魔王軍・結成!
バーンパレス 魔王の間ーー
玉座に1人の男が座っていた。
彼の名はミストバーン。
ボスであった大魔王バーンを追い出し王座を奪った張本人である。
今の彼はフードを下ろし頬杖を付いていた。
髪は長く顔は整っている。目は閉じており眠っている様に見えた。
部屋の壁には蝋燭が何本か立てられており雰囲気は薄暗い。
ギィと音がして部屋の扉が開いた。
人型のモンスターが何体か部屋へと入ってくる。
半身の色が違う者、ワニの姿をした者、人間の姿をした者、小柄な者、色々いた。
玉座の前につくと一同は膝を付き恭しく礼をした。
「皆の者、忙しい所集ってくれて感謝する。今から今後の方針、および配置について緊急会議を開きたい。諸君の現在の階級と配属先を述べよ。」
ミストバーンが玉座からよく通る声で呼びかけた。
「魔王軍不死騎団長、ヒュンケル!」
「魔王軍百獣魔団長、クロコダイン!」
「魔王軍氷炎将軍、フレイザード!」
「魔王軍妖魔士団長、ザボエラ!」
「魔王軍超竜軍団長、バラン!」
現在の魔王軍が抱える幹部の勢ぞろいである。
稲光がなり、荘厳な雰囲気の中一同は魔王の間中心にある円卓についた。
「諸君、かつて魔界で名を馳せた大魔王バーン氏はどこかに雲隠れしてしまった。彼が戻るまで私が魔王軍を取り仕切る。よろしいか?」
「「「「「異議なし!」」」」」
満場一致でミストバーンの案は可決された。
「ミストバーン様、今回ワシらを集めたのは何か重大な事が起こったからなのですか?」
軍団長の中でも小柄なザボエラが質問した。
見た目は小柄な老人だが魔力と知識はかなりのモノである。

417 :オタク ◆6vPGkMowoQ :2006/09/21(木) 20:15:26 ID:6vAE8v0h0
「その通りだ ザボエラ殿。人間達の国の中にパプニカ王国という国があるのだが・・・最近そこに強大な魔力が現れたらしいのだ。
しかもパプニカ王国は我ら魔王軍と戦う為の力を蓄えている。その力は日々に増大しておりこのままでは脅威となる可能性もある。
即座に叩きのめさなくてはならない。」
幹部の一同は戦慄した。
ミストバーンをして「強大な魔力を持つ者」と言わしめる程の存在が人間界にいるのだ。
加えてパプニカ王国には軍事力もあるらしい。
単に数で攻めれば勝てる戦では無いかも知れない。
「ミストバーン様、私めにお任せ下さい!」
鎧を着た男、ヒュンケルが立候補した。
顔はわからないが長身で騎士の鎧を身につけている。
「私も立候補します!」
左半身が炎、右半身が氷で出来ているモンスター、フレイザードも立候補した。
「不死身の軍団と炎と氷の軍団か・・・いいだろう。ヒュンケル殿、フレイザード殿、パプニカ王国殲滅作戦をよろしく頼む!」
円卓上においてあった蝋燭が消えた。
会議終了の合図である。
「ヒュンケル殿、まあ詳細は後で。手ごわいかも知れないぜ。」
「やってみるまでわからんが策を練るべきでしょうな。」



同時刻 デルムリン島にて
その昔、魔王ハドラーを斃した勇者アバンがデルムリン島に現れた。
勇者を育てる事が目的の彼はダイに素質を見出したらしく教育を始めた。
ダイは快くそれを受ける事に賛成した。
格闘技の訓練、魔法の講義・実技、体力作り、装備の取り扱い等を朝から晩までみっちりと受けるのだ。
休憩は飯時と寝る時だけである。
今、ダイは午前中の訓練を終え休憩の真っ只中であった。
砂浜で仰向けに寝転がり息を吐いて体を伸ばす。
ザッと音がしたのでその方向を見ると先日、アバンに吹き飛ばされたハドラーが立っていた。
アバンの話ではこの男はかつて魔王として君臨していたらしい。
だがこの島に流れ着いてからの彼の言動を見るにそんな恐ろしい存在とは思えない。
寧ろ良識がある存在に思える。

418 :オタク ◆6vPGkMowoQ :2006/09/21(木) 20:16:07 ID:6vAE8v0h0
ハドラーは呟くと砂浜に腰を降ろした。
ダイはある事に気付いた。
ハドラーの体にはよく見ると火傷の後等が多数にある。ごく最近ついたモノだ。
そして胸に大きい切り傷がついている。先日のアバンに付けられた傷だ。
この男は傷だらけでこの島に流れ着いたのだ。
「アバン君が張った結界は効いている様だ。あれほど騒がしかったのが魔物共が大人しくなっている。」
突然、ハドラーの目が険しくなった。何かを発見したらしい。
「ああッ!あれはッ!」
ダイもソレを目にした。
ガーゴイルであった。
可等なモンスターで二足歩行をする鳥人間である。翼がある為空を飛ぶ事が可能であり手に槍を持っている場合もある。
ダイは身構えた。付け焼刃程だがある程度自分は訓練を受けている。勝てるかどうかはわからない。
だがやるしか無い。
「ダイ君。案ずるな。アバン君の張った結界のお陰であのモンスターは島には入って来れない。遠距離から攻撃すればOKだ。」
ダイは足元にある砂を握った。そして走り出す。
「待ちなッ!」
誰かがダイの肩に手を置き、前に出た。
「ポップさん・・・。」
「ポップでいいぜ。俺たちゃアバン先生の弟子なんだからよ。やい、ガーゴイル!この俺の手にかかればイチコロだぜ!」
ポップが不敵な笑みを浮かべ魔法を唱え始める。
「グハハハ!馬鹿めー!」
ガーゴイルが口から超音波の様なモノを放った。
「火の精霊よ・・・今我に力を・・・・・ッ!?」
ポップは口を押さえた。呪文が続かない。普通の声は出せる。だが呪文の詠唱が続かない。
「ポップ君。それはマホトーンといて魔法を封じる呪文です。下がっていなさい。」
「アワワワ・・・・。」
魔法を封じられた以上魔法使いは戦力にはなり得ない。
ポップは急いで森の近くへと後ずさった。
「けーッ!」
ダイは走った。
「馬鹿め!串刺しだ!」
ガーゴイルが手にした槍を伸ばしてダイを刺すべく突きを出してくる。

419 :オタク ◆6vPGkMowoQ :2006/09/21(木) 20:16:42 ID:6vAE8v0h0
魔物は目に痛みを覚えた。
ダイが砂を投げつけて目くらましをしたのだ。
ガーゴイルの体が一瞬ブレた。
「押忍ッ!」
ダイは勝利を確信していた。
行ける。アバン先生から習った格闘技術で俺はーーーー
グサリ
ダイの体の力が抜けた。
あれあれあれ。一瞬の隙も見逃さなかった筈。
相手に槍を動かす暇すら与えなかった筈。
何故・・・
ああそうか。ガーゴイルには爪があるんだっけ。それで刺されたんだ。
ダイが仰向けに倒れた。
さらに槍の一撃。
「ウッ!」
ダイの意識は朦朧としていた。
体の温度が下がっていき、痛みが酷くなる。
自分はこれで終わりなのか。
否。
「うおお。」
ダイの体に再び力が入った。
生への執念がそうさせているのだ。
「うへへへ。これで終わりだッ!」
ガーゴイルが槍を振り上げ地面に倒れているダイにトドメを刺そうとする。
槍はダイの体に刺さり、ダイは絶命すると思われたーーー
その場にいる全員が目を覆った。
「ギャアアア!」
断末魔の悲鳴を上げたのはガーゴイルの方であった。
ダイの蹴りが相手の胴体に穴を開けていたのだ。
「グフォッ。」
ガーゴイルは体をピクピクさせて、何度か低く呻いた後動かなくなった。


420 :オタク ◆6vPGkMowoQ :2006/09/21(木) 20:17:14 ID:6vAE8v0h0
「ダイ君!」
我に帰ったアバンがダイに駆け寄り声をかけた。
ダイの顔を見るなりアバンはギョッとした。
ダイの額にマークの様なモノが浮かびあがり光を放っているのだ。
ダイは我を忘れているらしくアバンを敵意に満ちた目で見ている。
「青年よ。名をアバンと言ったか。ダイ君は見事ガーゴイルを仕留めた様だな。」
「ハドラー・・・まだ生きていたのですか。アバンストラッシュを食らっても生き残るとはしぶといですね。」
「待て。今は彼の方が先だろう。それに私は君と戦うつもりは無い。傷が癒えるまでこの島にはいさせてもらいたいだけだ。」
ハドラーはそう言うと森の奥へと去っていった。
その時、ダイは砂浜に倒れた。力尽きたらしい。
「おいッ、ダイ!傷の手当をしないと!・・・エ・・・治ってる!?」
ポップは驚きながらもダイを背中に背負いダイの家へと連れて行った。
「ハドラー・・・アナタは一体何なんだ・・・まるで別人の様に・・・記憶を失っているのか?それとも演技なのか?」
アバン達はまだ知らない。今、自分達の目の前で伝説の戦士が目覚めたという事に・・・。
そして当のダイさえも。

421 :オタク ◆6vPGkMowoQ :2006/09/21(木) 20:23:27 ID:6vAE8v0h0
どもです。原作にあるダイの「竜の騎士」への覚醒ってこんな感じだったと思います。
紋章を出すと傷が治るというのはオリジナル設定ですので・・・よろしくお願いします。

422 :作者の都合により名無しです:2006/09/21(木) 22:05:02 ID:yegcJKyj0
お疲れ様です。いよいよ軍団長勢揃いですね。
オレが好きなバランが動き出すのはやはり原作同様遅いかな?

423 :作者の都合により名無しです:2006/09/21(木) 23:39:41 ID:A6RFcLox0
結構いろいろ変わってるなw
でも、ミストバーンにしっぽを振るバランやヒュンケルってのもやだな
早い段階で離反して欲しい

424 :作者の都合により名無しです:2006/09/22(金) 14:59:21 ID:8OffN+8O0
ハドラーはついに生霊と化したかw

425 :作者の都合により名無しです:2006/09/22(金) 15:59:52 ID:Pe8iiBFD0
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426 :テンプレ1:2006/09/22(金) 21:02:54 ID:5wQdfyu90
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart43【創作】


元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1155992956/
まとめサイト
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm


427 :テンプレ2:2006/09/22(金) 21:04:21 ID:5wQdfyu90
ほぼ連載開始順 ( )内は作者名 リンク先は第一話がほとんど

オムニバスSSの広場 (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/bare/16.htm
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
上・ドラえもん のび太の超機神大戦 下・ネオ・ヴェネツィアの日々(サマサ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tyo-kisin/00/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/samasa/05.htm
聖少女風流記 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
やさぐれ獅子 (サナダムシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/yasagure/1/01.htm
鬼と人とのワルツ (名無しさん)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (487氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/487/03-01.htm
シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい (一真氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/silver/01.htm

428 :テンプレ3:2006/09/22(金) 21:05:55 ID:5wQdfyu90
ドラえもん のび太と魔法少女リリカルなのは (全力全開氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/fullpower/00.htm
戦闘神話 (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/ginnan/1/01.htm
パパカノ (41氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/41/01.htm
バーディと導きの神 (17〜氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/birdy/01.htm
金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』 (かまいたち氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/kindaiti/01.htm
MUGENバトルロイヤル (コテ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/mugen/01.htm
フルメタル・ウルフズ! (名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm
上・オーガの鳴く頃に 下・それゆけフリーザ野球軍 (しぇき氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/nakukoro/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/ballgame/01/01.htm
永遠の扉 (スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/star/06-01.htm
ダイの大冒険アナザー (オタク氏)
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1155992956/382-385



429 :テンプレ屋:2006/09/22(金) 21:09:26 ID:5wQdfyu90
今回はテンプレから消えた作品なし。
(ハイデッカ氏は語ろうぜスレに1ヶ月前に連絡あった為)
リリカルなのはが次スレに危ないですかね。最終が7月20日くらい。

最近来られない方々の復帰をお待ちしてます。
そして何より、バレさん。
お仕事お忙しそうですね、HP見ると。
ご復帰とお体の健康を祈ってますよ。

430 :作者の都合により名無しです:2006/09/22(金) 23:34:03 ID:xfClOuFY0
テンプレ屋さんいつも乙

うん、俺もミドリさんやハイデッカも心配だけど
バレさんが一番心配。
お仕事が好調そうで何よりだけどね。

431 :永遠の扉:2006/09/23(土) 03:17:56 ID:eL3mssYg0
「ぜぇぜぇ。なんとか安全策発動完了ぉ〜 とゆーコトで3、2、1、キュー!

おねーさんは戦闘開始直後の奇襲にもめげず、あの変な武器を床に叩きつけて大ジャンプ!
更に更に天井をあの変な武器で突き破り、天井裏に浸入!
黒いちょうちょが上方にはいないコトを咄嗟に見極めての行動ですね!
からくも爆発を逃れたおねーさん。
されど圧倒すると宣言したもりもりさんが手を休める道理はありませぬ!
『出でよ! 弓矢(アーチェリー)の武装錬金、エンゼル御前!!』
などと声高らかに認識票を握り締め、楯を弓に変じると……
天井……いえッ! 天井裏に潜んでいるおねーさん目がけ矢を乱射ぁ───!!
むーざんむーざん、天井は針山の創痍!
10万本の矢を一夜で得たという諸葛亮の船はかような状態であったでしょう!!
爆発でひび割れた天井はもはや崩落寸前!
これはたまらぬとおねーさん、天井裏から転がり落ちると『うおおおおおおー!!』とか叫び
ながらもりもりさんにウラキ少尉よろしく吶喊です! 
あの変な武器で矢を打ち払いつつ、ドア前へと走るおねーさんの足取りの凄まじさ!
正 に 野 獣 ! !
もりもりさんに致命の一撃か!? 否否否(いないないな)っ! もりもりさんは叫びます!
『出でよ! 右篭手(ライトガントレット)の武装錬金、ピーキーガリバー!!』
それは篭手というにはあまりにも大きすぎました!
大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎたのです! それはまさにドムの手でありました!
おねーさん、とっさに変な武器で拳に攻撃を仕掛けますがッ!
もりもりさんの右が一瞬早い───っ! 
周囲の元素を瞬時に定着させ、お相撲さんほどに膨れ上がった巨大な拳が全身にクリーンヒット!
これはキマッたかあっ!?

  人人人人人人人人人人人人               人人人人人人人人
< うわ──っもらっちまったあ >   人人人人    <だめだ〜〜っ!!>
  YYYYYYYYYYYYYYYYYYY   <モロだぜ>     YYYYYYYYYYYY
                       YYYYYY

ギャラリーは居ませんが、こんな悲痛な歓声が不肖には聞こえます!

432 :永遠の扉:2006/09/23(土) 03:18:45 ID:eL3mssYg0
入った!!という声も同じく!
おねーさんは瞳も虚ろに崩れます。
もりもりさんは強いのです。もうダメなのです。
伊達さんいわく、追いつこうとする方より追い抜こうとする方が強いのです。
「あ‥‥が‥‥!」
上体を大きく退け反らせ、後はもはや重力の任せるままマット……もとい廃屋の床へと……
崩れない!?
みみみ皆さまお聞きしましたでしょーか!?
仰け反って顔を天地さかさまにしながらも、奥歯を噛みしめたガリッ!という音を!
姿勢を保つべく、手近にあった壁に変な武器を刺す音を!

こ 、 こ ら え た ぁ ! !

絶対に譲れぬ大事な大事な言葉と情景が、一気に駆け巡ったのでしょうか!?
驚きました。もりもりさんの強打をモロに浴びた沖田……じゃなくおねーさん!
しかし!
壁をささえに断固ダウンを拒否の構え!!
倒れてしまったらもう立ち上がれねえんだと背中が語っております。
いやはやしかし、すごい手応えだったのになんて精神力でありましょう……!」

「少しばかり黙ってて欲しいんだがなぁ小札(こざね)」
「というか……人の戦いを茶化すな……」

ロッドをマイク代わりに戦いを実況していた小札へ、斗貴子と総角の声が刺さった。
小札は今、部屋の中央。崩れた壁の近くで机を構えている。
その机の上には、白い三角錐まで備えられており、ヘタな字で「実況あーんど解説っ! 小
札零!」などと描いてはあるが、夜の廃屋では斗貴子たちには分からない。
分かったとしても文句にプラスアルファが加わるだけだが。
なお、机やら三角錐やらは彼女得意のマジックにより現出したと付記しておこう。
更に、机の下や小札の周りには焼け焦げた紙ふぶきが落ちているコトも……

「なにぶん不肖、ヒマでして。戯れるしかないのです」

433 :永遠の扉:2006/09/23(土) 03:19:38 ID:eL3mssYg0
小札がバツが悪そうに釈明すると、マイク経由の大きな声が、廃屋に響いた。
はて、彼女が持っているのはロッドの筈だが……なぜかマイクの役を果たしている。
ご丁寧にも耳障りなハウリング付きなので、斗貴子のいらつき、ますます拡大中。
爆発の近くにいた小札がなぜ無事なのか、そういう当たり前の疑問が浮かばぬほどに。
「探し物をしてろ。そーいうつもりで来た筈だろう」
「はぁ。ですが一通り探した上におねーさんも見つけてないので、ココにはないと考えるのが
妥当では? ピピィ──ッ!」
耳障りなハウリングに、斗貴子は頬をひくつかせた。
「まぁ待て。この部屋だけはまだ探していないだろう? 入るなり錬金の戦士と戦う羽目にな
ったんだからな」
「あ」
いまや岩石大に膨れ上がった右拳が、壁際で息つく斗貴子の前で大きく広げられた。
「しばらく足止めしてやる。その間にお前の武装錬金の特性で『アレ』を探せ。記念すべき1
枚目の『アレ』をな」
「……1枚目? え、もりもりさ」
「小札よ。お前の快活な喋りは尊敬できるが、たまには黙って従うのも大事だぞ」
意味ありげに交錯する視線の意味など、斗貴子はその瞬間においては考えない。
重要なのは一点。敵に隙が生じたというその一点!
肺腑から絞りだす息と同じ鋭さで、壁から総ての処刑鎌を引き抜き!
夜露滴る絹糸がごとき玲瓏(れいろう)の断線を、奇形肥大の拳に奔らせた!
親指がきりもみながら宙を舞い、突き刺さった天井から瓦礫を落とす。
残る4つの指は第2関節の中ほどから先をことごとく薙ぎ落とされた。
手の平に刻み込まれし×字の傷跡は、内部機械が悲鳴のような火花を散らすほどに深い。
もはや握り締めたところで破壊に足る握力が生産できぬコト明らかな、ガラクタ同然の武装だ。
それを前にしてなお、斗貴子は容赦しない。
こぼれ落ちた指──といっても、小学生ほどの大きさ──を、総角の顔面めがけて蹴り上
げる。
(避けるにしろ受けるにしろ隙が生じる! その隙に斃す! 何を企んでいようと、斃せば済
むコト!)
轟然と回転し迫り来る指に対し!
総角は右足を前に出しつつ右斜めに向き直り、左足を右のカカトにひきつける。
剣道でいう所の「開き足」を流れるような動作でやってのけた。

434 :永遠の扉:2006/09/23(土) 03:20:20 ID:eL3mssYg0
教本どおり一切のぶれなき上体だが、耳前と襟足の長髪は質量上ひらりとたなびき、闇に
金光を振りまいた。
その粒子の中を指が空しく飛んでいくのと同時に、つま先を膨れ上がった殺気に向ける。
「小札っ」
斜にズズりと落ち行く篭手や、その向こうで鬼相を覗かせる斗貴子に顔色1つ変えず
「もう一度言う。”記念すべき1枚目の『アレ』を探せ” 俺が足止めしてる間にな」
襟元に手を当てる。
そこ掛けられているのは、2枚の認識票。
1つはパールグレー。1つはミッドナイトブルー。
薄い緑の光が発するとみるや篭手が瓦解し、
「臓物(はらわた)をブチ撒けろォッ!!」
凄絶な叫びと共に繰り出される処刑鎌。その破壊力は──…
「出でよ! チェーンソーの武装錬金、ライダーマンの右手!」
ひらっとした固い金属とかみ合い、相殺された。
「おお、2番目に得意とされる武装錬金のご登場。ではでは不肖は探し物へと」
斗貴子は舌打ちしつつ小札を見るが、その姿勢はぐらりと揺れる。
ピーキーガリバーの一撃の威力を殺すため、バルキリースカートで攻撃したのが祟っている。
”重い”攻撃をいなすと、形状ゆえに先端の刃物から足へと負荷が掛かってしまうのだ。
「余所見は危ないぞ」
かみ合う金属を支点に、小柄な斗貴子は圧されるのみ。
圧しているのは。
総角の手に現われているのは。
小型のチェーンソー。
ダークブルーの台形ボディに取っ手と楕円形のバーと、それらを固定するパーツのみ。
直前まで使っていた篭手が巨大だった分、本来のサイズよりこじんまりして見える。
フィアット500のように小型だ。二十四分一スケールのカープラモデルと同じぐらいの値段で
買えそうだ。

(※)歌う時はブルースキャンベルの右手になるらしい。……マニアックだけど。

「伊勢湾台風の事後処理で、最も流行った病気を知っているか?」
セーラー服をまとった細い肢体は崩れかけ、踵もぐらつき、後退もやっとという態だ。

435 :永遠の扉:2006/09/23(土) 03:20:57 ID:eL3mssYg0
「……っ!」
膝から疼痛が走り、斗貴子は顔をゆがめる。返答どころではない。
「白い蝋の病と書いて、はくろうびょう。振動のせいで血行や神経の調子が狂い、手の平が
蝋のように白む病気だ。洪水で街に溢れた流木を処理する為にチェーンソーが普及したは
いいが、それが故に白蝋病も流行った。もっとも俺の扱うライダーマンの右手の振動は、静
かなもの。昭和52年だったかに定められた、チェーンソーの規格を守っている。最高でも毎
秒毎秒の振動加速度は、29.4mに満たない…… だが!」
ライダーマンの右手と噛み合っていない2本の処刑鎌が、空を切り裂き総角に向かう。
「威力はぬるくないぞ」

人差し指でスイッチを押すと、”ライダーマンの右手”が僕の手の中で爆音を立て始めた。
直径三十センチの鋼鉄の輪が、自分のしっぽを噛むことができずに牙をむく輪廻の蛇のよ
うに、ものすごい速さで回転を始めた。

「などと実況しつつ不肖は探し物〜 鬼も蛇も出ぬよう祈りつつハラハラと。ああっ、ハラハラと」
部屋をうろつく小札のはるか背後で。

バルキリースカートという名の武装錬金は、4本の処刑鎌を総て粉々に砕かれていた。

ライダーマンの右手の刃が動くと同時にまず2本。
噛み合っていた処刑鎌が粉砕。
ひるまず総角の両側から差し向けた残り2本も、気軽な調子で振りかざしたライダーマンの
右手に粉砕された。

数ヶ月前、恐るべき錬金の魔人が銀成学園の屋上にて復活を遂げた。
その時の表情を浮かべているのが、斗貴子には分かった。
わずかな攻防で最大の武器を総て奪い去られる信じ難い光景の再来に。

「『攻撃したモノを165分割』。それがこのライダーマンの右手の特性」
舞い散る破片の中で、攻撃もせず総角は笑う。
「人体はおろかコンクリートも武装錬金もゾンビになった10代の少女も、165分割だぞ」
小札も口周りに手を立てて、フレンドリーに呼びかける。

436 :永遠の扉:2006/09/23(土) 03:22:18 ID:67IUvUfD0
「かみだってバラバラになるコト請け合い。降伏なさるなら今の内でありますよ〜ぉ」
斗貴子はいまだ舞い散るバルキリースカートの破片の中から、一番大きく、鋭い物を掴み取った。
「それがどうした」
伏目勝ちに搾り出される声は、地鳴りのように低く、激しさの予兆をはらんでいる。
「確かにブチ撒けるコトは叶わないが……」
前髪の奥で、鈍い殺気の光が爛々と燃えている。
「たとえ破片であろうと武装錬金を章印に叩き込めば、貴様達は死ぬんだろう? ならば殺
すのに不自由はしない」
血が出るほど無遠慮に破片を握り締め、戛然と表を上げる斗貴子へため息がこぼされた。
「退く気配がないな」
「当たり前だ!!」

錬金の魔人が復活した後、1人の少年の人生が大きく狂った。
その直接のきっかけを作ってしまった斗貴子は、彼の支えになるべく誓いを立てた。
一心同体。
狂ってしまった歯車が元に戻るその日まで、生きるも死ぬも同じ刻。
だが、彼は守るべき存在(モノ)を守るため、誓いを破り月へと消えた。
生まれ育った街も帰るべき日常も、大事な妹も、友も、決着をつけるべき敵も。
その少年──武藤カズキからは何もかも奪われてしまっている。

(奪ってしまったのは総て私の軽挙の所為──… ならばせめて)

「この街をホムンクルスの好きにさせる訳にはいかない!」
「やれやれ。話が通じそうにない。俺達は人喰いも破壊もあまり好きじゃないというのになぁ」
男性にそぐわぬ繊手が認識表を握り締める。
「仕方ない。出でよ! チャフの武装錬金、アリスインワンダーランド」
部屋一面に白い霧が充満し、斗貴子は総角を見失った。
(まただ…… またL・X・Eの武装錬金……)
ニアデスハピネスにエンゼル御前、ピーキーガリバー、そしてアリスインワンダーランド。
(なぜ使えるんだ? そもそも1人1つの筈の武装錬金を、複数扱えるコト自体──…)
ひとまず、記憶を頼りに部屋の片隅に移動し、壁に背を預ける。
(奴らがどこに潜んでいるかは分からないが、これで不意打ちは避けれる。? 避け……?)

437 :永遠の扉:2006/09/23(土) 03:23:19 ID:qAaPOAEX0
チカチカと目障りな光を立てる霧の中で、彼女はなぜか違和感を感じた。
(漂っている金属の粒子はあの時と同じ。けれどどこかが違う……一体何だ?)
辺りを見回す斗貴子に、どこからか声が掛かった。

「おとなしくなった所で1ついいコトを教えてやろう。お前の探し物について、な」
「何を……!」
「探し物は、『もう1つの調整体』。情報元は戦団に拘束中のムーンフェイス殿。だが彼の性
格上、存在を仄めかすだけで全容がつかめず、内心焦っているのだろう?」
「…………」
「沈黙は了承と捉えておこう。動かないのは情報を引き出すだけ引き出してから、俺を斃す
ため。実に戦士らしい対応だ」
「…………」
「結論からいおう。確かにお前の探し物は実在する。バタフライ殿が作られた『もう1つの調
整体』は、未完成ながらもこの銀成市のどこかに今も眠っている」
「…………!!」
「眠りながらも暴走の危険性をはらみ、使う物によっては確かに災いをもたらすが、正しく目
覚めさせて正しく使えば問題はない。何せ、核鉄にもホムンクルスにも欠落した、錬金術の
重要要素をしかと濃縮した代物だからな。完成すれば、例の黒い核鉄にすら匹敵する成果
をあげていただろう。バタフライ殿は謙遜されていたが、俺はそう信じている」
「…………」
「だが俺たちが調べた結果、『もう1つの調整体』を正しく目覚めさせるには鍵がいる。バタフ
ライ殿らしくもない洒落っ気だが、6枚。6枚の割符が必要だ」
(話が本当だとすれば、奴らはまだその割符とやらを手に入れていないコトになる)
小札と総角のやり取りを反芻すると、自然にそうなる。
「で、総てを探し出し、『もう1つの調整体』のデバイスにはめ込まない限り、正しい目覚めも
安定もなく、いずれは暴走する。それは困るだろう? 俺たちも同じだ。ある日ニュースを見
ていて、なじみのある街が惨禍に巻き込まれている様子が流れたら、楽しい気分で生きられ
ない」
「………そこまで知っているとは貴様もL・X・Eの残党か?」
斗貴子は瞑目し、静かな集中力を部屋全体に差し向けた。
「違うとだけいっておこう。さっきもいったが、秋水か桜花にでも聞いてくれ」
「なぜ、私に情報を教える」

438 :永遠の扉:2006/09/23(土) 03:24:32 ID:wYyYMYow0
次に待つ。ヒントとなる現象を。位置を絞り込むためのきっかけを。
「お前たち錬金戦団の連中と敵対するつもりがない。それだけだ」
斗貴子は声に向かって駆けた! 足の痛みにかすかな苦痛を浮かべながら。
発動中のアリスインワンダーランドは、レーダーを撹乱する金属片の武装錬金。
かつて斗貴子は、この武装錬金と相対したから知っている。
漂う金属片は電子機器を狂わし、人の方向感覚をも狂わすと。
すなわち。
総角の声に向かったとしても、彼に到達するコトは叶わないだろう。
だが!
斗貴子の走る先に、総角は居た!
部屋中央の柱から10mほど前で悠然と。
「ほう。声を頼りに見つけるというコトは、気づいたようだな」
「ああ、さっき私は一歩も迷わず壁際に行けた! というコトは!」
「ご名答。本家本元のように方向感覚は狂わない。正確には、電子機器撹乱との択一だ」
例えば森の中で、レーダーを撹乱するために放ったとき。
2人の戦士が霧の中を迷わず闊歩し、標的──おもちゃ好きのコウモリ型ホムンクルス──
にたどり着いたコトがある。
「フ。霧を出すと同時に報せが入ってな。お前と戦う俺の顔を見られるのは、戦略上非常に
マズい。というコトで、電子機器撹乱を優先させてもらった。仮に負けても戦術的な敗退なら
どうにか挽回できる」
「挽回など不可能だ。死ねッ!!」
斗貴子が叫ぶ頃にはもう、鋭く尖った処刑鎌の破片が総角の胸の寸前にあった。
「うむ。絶対に当たる距離だ。普通ならな」
手応えのある筈の攻撃は、予想より柔らかな感触を走らせ、同時に爆ぜた。
津村斗貴子は、ホムンクルスの質感をよく知っている。
時に抉り時に握り潰し、足で踏み砕き拳で殴り、殺戮の中で体に嫌というほど覚えこませて
いる。
曰く、金属でできた瓶のようだ、と。
が、破片から斗貴子の腕に伝わる感触は違った。
硬質ではあれど生物的な脆さのないコンクリート……
斗貴子や総角から10mは離れた部屋のド真ん中でそびえていたはずの。
柱!

439 :永遠の扉:2006/09/23(土) 03:25:15 ID:wYyYMYow0
それがそっくりそのまま、斗貴子の正面にあり、火を噴いた。
といっても派手なのは音だけ。威力は爆竹ほどでセーラー服に焦げすらつかない。
「フ。人生、寄り道も悪くはない。人手は増やせなかったが、さっそく役に立ったな」
総角は柱の元位置に居た。
まるで柱と『入れ替わった』ように。
驚愕を隠し切れない様子の斗貴子に、総角はよく透る声で呼びかけた。
「百雷銃(ひゃくらいづつ)の武装錬金、トイズフェスティバル。仕掛けは密やかに、回避は派
手に。実に奴らしい便利な抽出物だ。この武装錬金1つとっても、攻略はかなり難しいぞ。で、
まだ続けるか? それとも退くか? 情報を提供してやったのだから、少しばかり手加減して
欲しいというのが本音だが」

斗貴子の頬を一筋の汗が伝い、床を濡らした。

440 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/09/23(土) 03:28:49 ID:wYyYMYow0
武装錬金が好きな人はご存知だと思いますが、この作品の随所には大槻ケンヂの小説や
彼がボーカルを務める筋肉少女帯のネタが散りばめられています。
5100度の炎は「望みあるとしても」、ニアデスハピネス、再殺部隊は「ステーシー」、5巻100
ページ最後のコマでバタフライが言ってる「ジグジグと削り殺してやろう」は、「のの子の復讐
ジグジグ」が元。
で、ライダーマンの右手は「ステーシー」より。こういう所で原作準拠してみたい年頃。
ちなみに、チェーンソーから逆向凱を連想される方はかなりの武装錬金ファン。
ネタバレスレの嘘バレは色々ありましたよね。特性の反転とかバルキリードレスとか。

>>339さん
キャラクターはお話の大事な要素なので、総角も小札も魅力的に書いてやりたいです。彼ら
の言動で楽しんでいただければ幸いです。原作と引き立てあうような関係ならばなお。
斗貴子さんは殺伐としてこそ。殺伐で時々優しく描いてやらないと。本編のヒロインですし。

>>340さん
はい。だいぶ遅れてしまいましたがようやく本筋に。このSSのストーリーは忍法帖+少年漫
画がコンセプトです。ただ色々な要素との兼ね合いで、ちょっとしたひっくり返しが次々回辺
りにあります。しかし……この時期の斗貴子さんは主役を食いかねず……使いどころが難しい。

>>341さん
ありがとうございます。ファイナルとピリオドの間の補完をするには、武装錬金一本に絞らな
いと破綻しそうで怖いのです…… ただ、パロはかなり出てくるかも知れません。本筋をマジ
メにやってると、つい遊びに走ってしまう性格なので。でも、ストーリーの方は原作準拠で頑張ります。

ふら〜りさん(分かりづらくてすみません。藤林聖子という方が作詞された曲です)
小札もこの先、かなりの逆境に立たされる予定です。その時彼女がどうするか、自分も楽し
みにしてます。思いもかけぬ動きを取ってくれると、書き手としては嬉しい限り。実際、久世屋
も予想以上に動いてくれたので。あと、藤林聖子さんはメガレンジャーとかの歌詞も書いてます。

……あ。しまった。残り容量が

441 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/09/23(土) 03:33:43 ID:0/gg0FjE0
というコトで。

【2次】漫画SS総合スレへようこそpart43【創作】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1158949830/

>テンプレ屋さん
いつもお疲れ様です。おかげさまで助かりました。


442 :作者の都合により名無しです:2006/11/05(日) 15:17:42 ID:DE+BAAfY0
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1140972269/565-

443 :作者の都合により名無しです:2006/11/06(月) 23:23:42 ID:/O8fXgbq0
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1162629937/l50

444 :作者の都合により名無しです:2006/11/07(火) 00:27:22 ID:3hqQBVbt0
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1149857322/516-

445 :作者の都合により名無しです:2006/11/07(火) 03:43:39 ID:pFIYTA1V0
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1135465472/416-

446 :作者の都合により名無しです:2006/11/07(火) 07:04:16 ID:S9fImevD0
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1147074721/l50

447 :作者の都合により名無しです:2006/11/07(火) 12:04:36 ID:i5nVc28B0
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/sakura/1155738975/l50

448 :作者の都合により名無しです:2006/11/07(火) 16:47:37 ID:4ulhn5+i0
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1159610450/l50

449 :作者の都合により名無しです:2006/11/07(火) 22:43:21 ID:PnQgcrZC0
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gal/1139271782/315-

450 :作者の都合により名無しです:2006/11/07(火) 23:56:27 ID:v7croXI20
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1115980956/l50

451 :作者の都合により名無しです:2006/11/08(水) 00:25:49 ID:uILDWkPi0
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1145293079/l50

452 :作者の都合により名無しです:2006/11/08(水) 07:48:00 ID:9Iq6dx0e0
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1159693483/l50

453 :作者の都合により名無しです:2006/11/08(水) 17:39:18 ID:nptw6q1Z0
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/sakura/1138868734/125-

454 :作者の都合により名無しです:2006/11/08(水) 23:46:25 ID:nOxbIJcR0
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/geino/1155656055/l50

455 :作者の都合により名無しです:2006/11/09(木) 12:28:50 ID:zUGu6z/t0
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1105632415/l50

456 :作者の都合により名無しです:2006/11/09(木) 16:57:11 ID:fLOcLRtG0
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1160393058/l50

457 :作者の都合により名無しです:2006/11/09(木) 23:14:55 ID:ODx3O5n20
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1154933708/l50

458 :作者の都合により名無しです:2006/11/10(金) 00:23:57 ID:SXk6IlvO0
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1154869545/l50

459 :作者の都合により名無しです:2006/11/10(金) 07:55:04 ID:7W/3c7p80
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1119972846/l50

460 :作者の都合により名無しです:2006/11/10(金) 22:29:02 ID:aU4iqGYP0
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1154959367/l50

461 :作者の都合により名無しです:2006/11/10(金) 23:56:09 ID:qouctUEf0
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/skate/1091256407/l50

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