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【2次】漫画SS総合スレへようこそpart43【創作】

1 :作者の都合により名無しです:2006/09/23(土) 03:30:30 ID:0/gg0FjE0
元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1155992956/
まとめサイト
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm

2 :作者の都合により名無しです:2006/09/23(土) 03:31:05 ID:0/gg0FjE0
ほぼ連載開始順 ( )内は作者名 リンク先は第一話がほとんど

オムニバスSSの広場 (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/bare/16.htm
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
上・ドラえもん のび太の超機神大戦 下・ネオ・ヴェネツィアの日々(サマサ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tyo-kisin/00/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/samasa/05.htm
聖少女風流記 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
やさぐれ獅子 (サナダムシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/yasagure/1/01.htm
鬼と人とのワルツ (名無しさん)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (487氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/487/03-01.htm
シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい (一真氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/silver/01.htm

3 :作者の都合により名無しです:2006/09/23(土) 03:31:57 ID:0/gg0FjE0
ドラえもん のび太と魔法少女リリカルなのは (全力全開氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/fullpower/00.htm
戦闘神話 (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/ginnan/1/01.htm
パパカノ (41氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/41/01.htm
バーディと導きの神 (17〜氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/birdy/01.htm
金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』 (かまいたち氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/kindaiti/01.htm
MUGENバトルロイヤル (コテ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/mugen/01.htm
フルメタル・ウルフズ! (名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm
上・オーガの鳴く頃に 下・それゆけフリーザ野球軍 (しぇき氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/nakukoro/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/ballgame/01/01.htm
永遠の扉 (スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/star/06-01.htm
ダイの大冒険アナザー (オタク氏)
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1155992956/382-385

4 :バーディーと導きの神〜強化兵〜:2006/09/23(土) 06:03:01 ID:e7YfPq6+0
「ありました。ザンの目印です」
シドガーが岩石砂漠の岩肌に刻まれた矢印を発見して一行に告げた。
「ザンたち、順調に進んでいるようだな」
ソシュウが岩肌に刻まれた『兄ちゃんたちがんばれ!』の文字を発見してほっと一安心する。
「今夜はここに野営するか。他の怪物どもがまた来ないとも限らんからな」
牙炎が宣言する。
「シアンとバーディーが来るかもしれんし」
ヨキーウが付け加える。
「そうだな。ルアイソーテの連中はまだ後方だろうし、ここで合流を待つのも悪くないかもな」
ソシュウも答え、一行は見張り番を立てて岩石砂漠の端にその身を休めたのだった。

夜が明けた早々、バーディーとシアン、それからルアイソーテ軍のサーラを加えた三人は、
牙炎たちと合流すべく行動を開始した。
シアンが先頭に立って、抗術の中心を目指して進んでいく。
今度はちゃんと岩石地帯らしき場所に出てきていた。
しかし、その行動に疑問を呈する者がいた。サーラだ。
「あれえ、あなたたち抗術の中心に向かってるんじゃなかったの?」
「そうだよ。それがどうした?」
昨夜のことが後を引いてるのか、仏頂面のシアンがそっけなく答える。
「でも抗術の中心ってこっちよ」
サーラが進行方向の右手を指差す。
「む……」
「え、そうなの?」
シアンをちらんと見やるバーディー。
「あなた魔導士なのにこの圧迫感を感じないの?」
サーラも揶揄するようにシアンを言葉でいじめる。
「か、感じてるさ、そのくらいっ!」
いつになくシアンが動揺した声を出す。
仕方なくシアンはサーラが指し示した方向に向かって走り出す。
そしてしばらく走ったその時、霧の彼方で何者かが格闘している音が聞こえてきた。

5 :バーディーと導きの神〜強化兵〜:2006/09/23(土) 06:03:43 ID:e7YfPq6+0
「ムンッ!」
気合の入った声が聞こえ、続いて大地を揺るがすような大音響を立ててなにかが落下した
ような振動が伝わってくる。
「大佐か?」
シアンが駆け出そうとしたが、耳のいいバーディーがそれを止める。
「待ってシアン。声が違うわ」
「じゃあ誰だってんだよ?」
「静かに!影が見えてきたわ」
サーラが身を伏せて二人に忠告する。同時に地面に伏せるバーディーとシアン。
次第にその姿が見えてくる。
「あれは……」
バーディーがつぶやく。見えてきたのは人間型の怪物だった。のっぺらぼうに牙の生えた口。
筋肉質のその体。ガロウズの強化兵そのものだった。
「あれはこの島の怪物たちとは様子が違うわ」
特捜のカンから、その姿の異質さを見抜いたバーディー。
サーラがそれを肯定する。
「多分、ガロウズに改造されたあたしの元仲間ね……」
ガロウズが本当にやってしまったことにショックを受けたサーラは、仲間のその変わり様に
怒りさえ覚える。
その時、強化兵の後ろから、バーディーたちがこの島に来たときに初めて遭遇した双頭竜が
その鎌首をもたげて強化兵を攻撃しようとした。
しかし、強化兵は呪文を唱えると、その双頭竜を念放射であっさり一刀両断にした。
「すげ……。この抗術の中、あいつを一撃かよ……」
そうシアンが呆けたようにつぶやいた時、強化兵が不意にこちらを向いた。
「まずい!見つかったわよ!」
サーラが起き上がる。
「あいつはヤバイわ!」
すでにバーディーは飛び出している。
「お、おい!」
女たちの対応に面食らいながら、シアンも自身の体を戦闘体勢にもっていく。

6 :バーディーと導きの神〜強化兵〜:2006/09/23(土) 06:04:30 ID:e7YfPq6+0
「だああああっ!」
最初の一撃はバーディーに軍配が上がった。
地面すれすれの低い位置から強化兵の懐に入ったバーディーは、強烈なボディーブローを
見舞った。
たまらず吹っ飛び、大岩に体ごと突っ込んでそれを破壊して倒れる強化兵。
「やりやがる!」
シアンが改めてバーディーの戦闘能力に舌を巻く。
しかしサーラがその気を引き締める。
「まだよ!」
倒れたと思った強化兵は、地面を転がりながら体勢を整えると、バネではじかれたように
飛び上がり、バーディーに球形の念を放射する。
「ぐっ!」
そのあまりの速さについていけなかったバーディーは、それをまともに食らって別の岩石を
粉砕しながら倒れこむ。
「バーディー!」
倒れこんだバーディーに向かってさらに襲い掛かろうとする強化兵の間に入ろうとしたシアン
だったが、サーラに引き止められる。
「待ちなさいっ!」
するとガラッと岩石を跳ね上げてバーディーが飛び上がり、強化兵にカウンターの回し蹴りを入れる。
「こんなことでやられる私じゃないわよ!」
トンッと軽やかに地面に降り立ち、軽いステップを踏むバーディー。
「頑丈すぎるにもほどがあるぜ!」
「どっちのことよ!」
「両方だ!」
軽口を叩きあい、シアンが念を放射する。強化兵はそれを飛びずさってかわすが、そこに
タイミングを合わせたバーディーの強烈な飛び蹴りが決まる。
そして強化兵はサーラの側まで転がり、昏倒したようにぐったりとした状態になる。
「ごめんよ……」
サーラはそうつぶやくと、強化兵全体に意識を集中して伝導熱放射でその体に火をつける。
全身が炎に包まれる強化兵。

7 :バーディーと導きの神〜強化兵〜:2006/09/23(土) 06:05:11 ID:e7YfPq6+0
だが、そこで終わりではなかった。
「危ないっ!」
バーディーが危険を察知して飛び出す。
「ガアッ!」
全身を炎に包まれたまま強化兵は立ち上がり、サーラに一撃をくれようとする。
そこにバーディーのラリアットが決まり強化兵は吹っ飛ぶ。
「効いてないの!?」
サーラは驚愕する。
「固い甲皮を持ってるのよ!炎じゃだめよ!」
サーラの前に立ち、かばう格好のバーディー。
「じゃあどうするのよ?」
「動きを止めて気絶させるわよ!」
「どうやって?」
「任せて!」
そう言って飛び出していくバーディー。
サーラの炎を振り払った強化兵はバーディーを迎え撃つ。
「だああああっ!」
フェイントをかけたバーディーの右フックが強化兵の顎を捉える。
そして脳を揺すられた強化兵の膝がカクンと落ちた瞬間を見計らい、バーディーの必殺技が
炸裂する。
「クラッシュ!」
強化兵の腹に当てたバーディーの手から電撃が爆ぜる。
強化兵は完全に意識を失った。
「なんなんだこいつは?」
二人の元に戻ってきたシアンが呑気な声で強化兵を転がす。
「言ったでしょ。ガロウズに改造された私の元仲間だって」
サーラが不満げに先ほど言ったことを反芻する。
「これがか?どうやったら人間をこんなにできるんだよ?」
「それは……」
バーディーが言いかけたそのとき、バーディーの頭部に装備された近距離通信回線の呼び出し
音が鳴った。

8 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/09/23(土) 06:10:04 ID:e7YfPq6+0
新スレおめでとうございます。早朝から失礼します。

410さん
意外と女たちのほうがつよいかも、です。
411さん
サーラはツンデレ系としてもいいのか迷うキャラですが。
相変わらずのんびりしてるのはバーディーのキャラに
よるところが大きいです。
ふら〜りさん
ガロウズが浮いてみえなくなるのはこれからです。

9 :バレ:2006/09/23(土) 09:22:00 ID:HZ+qhfnU0
>スターダスト さま
古舘の実況解説みたいな出だしや「ライダーマンの右手」の特性165分割
にニヤリとさせられました。
(小札といい前作の久世家といい、喋りが印象強いキャラは結構好きです)
複数の錬金を一度に使えるアゲマキの力の謎、頭の中で仮説を色々と立てていますが、まだコレというのが思い浮かびません。
ラスト辺りには明かされるのでしょうが、楽しみにしています。
最後にスレたて乙でした。

>17さん(私も今月胃をやられてしまいました。お互い体は大切にしたいですね)
トリオの初戦闘(といってもバーディが殆どやってますが)
抗術の中では魔術師二人に戦闘は厳しそうですね。
しかし人間を調整してこれだけ強化できるなら、竜族や亜竜人を使えば
凄いことになりそうですね。
>サーラはツンデレ系としてもいいのか迷うキャラですが。
サーラは原作のイメージからしてもツンデレが似合いそうな気がします。

10 :バレ:2006/09/23(土) 09:24:55 ID:HZ+qhfnU0
>ふら〜りさま
遅まきながら完結お疲れ様でした。(途中、間柴に新一が入ってたような・・・)
現代の最強拳闘家二人によるコンビプレー(?)がステキでした。
結局止めの美味しいところはクウガに持っていかれましたが、生身で怪物相手に
一泡吹かせただけでも凄い。
最後もほのぼのした感じでよかったです。また充電された後に、次回作を
書かれることを楽しみにしています。

>かまいたちさま
次回で最終回ですか。
最初から読み返すと、食料やらその他伏線が色々と張られているのに気付きます。
今回で時系列が繋がりましたので、最後は金田一のまとめモードでしょうか。
それとも何かどんでん返しがあるのか?

>サマサさん
ラストバトルまでの充電期間ですね。
狐面が面を取って茶を飲んだのは、私もちょっと(かなり?)残念でした。
彼の新生13階段の趣味性やツンデレへの思いは原作でも出ているのでしょうか?
>端折り
そうかなあ。結構分かりやすい気がするような。
でも1年以上かかった話が2行で説明されちゃうのか・・・



11 :バレ:2006/09/23(土) 09:26:12 ID:HZ+qhfnU0
>銀杏丸さま
武装錬金もいよいよ本格的に参戦ですね。
聖闘士も世代交代の新キャラが台頭してきて、彼らと戦団とがどう絡んでくるのか
次回以降が楽しみです。
今回の話では、紫龍と王虎の絡みが良かったですね。紫龍が即承諾するとは読んでて
予想外でしたが、彼のキャラだったら友の苦悩を見過ごしは出来なかったのでしょうね。しかし王虎も人間が出来てきましたし、彼に聖闘士叙勲してやれば万事解決なのに、
とかも思ったりしましたが。
あと、長編カテの配色は「幻の29巻」に合わせてみましたが、どうでしょうか?


>サナダムシさま
ハウルというか、ラピュタですね。(ハウルの城は只の見せかけですし)
空手でどうにか出来る事態ではない気がしますが、加藤には無理でも
それでも独歩なら、独歩なら拳一つで何とかしてくれそうな・・・
(まだ味方として出てくるとは限りませんが)


長期間更新をさぼっており、申し訳ございません。
原因は仕事の追い込みと引越し、トライク購入手続きなどによるものです。
仕事が昨日で一段落し、引越しも来週に完了予定ですので、今後はもう少し頻繁に更新が出来ると思います。
ただ、今日はこれから火曜まで台湾に行きますので、次の更新は水曜以降になりますが・・・(苦笑)

12 :作者の都合により名無しです:2006/09/23(土) 10:28:15 ID:vXFZOQC20
スターダストさんスレ立て乙です。

・永遠の扉
小札はなんか緊張感をブチ壊しでいいなあwオリキャラだけど存在感あるw
斗貴子はやっぱり戦っている時が一番華がある。母性に満ちた斗貴子も好きですが。
まひろや桜花だけでなく斗貴子も主役のトリプルヒロイン制?

・バーティと導きの神
お、今回はロールプレイングしてますね。巨大な魔力を持つ敵のマジシャンに対し、
シアンは少し頼りないですねえ。戦いの中で成長するといいけど。
戦士バーディと魔道士シアン、一応は王道ですね。


バレさん、胃は大丈夫ですか? 台湾でリフレッシュして下さい。

13 :作者の都合により名無しです:2006/09/23(土) 16:06:26 ID:oQ+FKBx00
スターダスト史、スレ立てと前スレの締め乙。

>スターダスト氏
オリジナルキャラとはいえ、物語の最重要キャラっぽいですね。
錬金は詳しくないけど、トイズフェスティバルもオリジナル能力ですか?
なんとなくジョジョの億康の兄貴の能力を思い出した。

>17氏
バーディの背中を見ながら、シアンも成長していくのでしょうね。
隣にサーラも見ているからかっこわるい事は出来ないでしょうから。
最後のヒキが急にシリアスですね。

>バレさん
お疲れ様です!台湾で美味しいもの食べて頑張って下さい!

14 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/23(土) 18:59:15 ID:/ruUOqnh0
>>402より。

15 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/23(土) 19:00:07 ID:/ruUOqnh0
 『香取大明神』『鹿島大明神』
 掛け軸となりて神心会本部道場を守護する神々。
 長年通っていた聖地とはいえ、ところどころがぼやけてしまっている。加藤は最大トー
ナメントが終わってからは、再び闇社会に堕ちていたためだ。
 しかし、この人だけはぼやけることがない。たとえ何年会わなかろうと。
 耳を澄ませば、声すら聞こえてくる。
「……ぇな」
「……だとッ!」
「──ったく、おめぇといい末堂といい、分かっちゃいねぇな」
「なんだとッ!」
「これが三戦ってんだよ……。攻守に長け、なによりバランスがいい」
「バランス……」
「船の上で考案された代物だからな。あいつにもいったが、電車の中で喧嘩売られたら試
してみな」
 
 回想を終える。と、加藤はごく自然に三戦立ちの体勢となっていた。
「館長、ありがとう。俺はもうこれに賭けるしかねぇ」
 背水の陣。もし三戦が通用しなければ、城の落下と同時に加藤は吹き飛ばされ、彼にお
ぶられている井上は絶命を免れない。
 二人の命運は、琉球の格闘士が試行錯誤の末に生み出した型“三戦”に委ねられた。
 腹式呼吸で、精神を統一する加藤。
 程なくして、急速落下が始まった──。

16 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/23(土) 19:00:55 ID:/ruUOqnh0
 浮かばない。
 先の二回はいとも簡単に天井に叩き上げられていた加藤が、微動だにしない。
(これが……三戦ッ!)
 これが優れた型だということはとうに知っていた。事実、師匠である独歩は豪腕を誇る
リチャード・フィルスのパンチをこの構えで無力化している。
 知っていたとはいえ、これ程とは。喜びと驚きを噛み締める加藤。
 結果、三戦は降下から着陸まで、加藤と井上を完璧に護りきった。
「よし……ッ! こっから反撃開始だぜ、このクソ城がァッ!」
 自ら落下して、中にいる人間を浮遊させて壁や天井にぶつける。城からの攻撃はこれだ
け。すなわちこれを破った今、城は無力も同然。
 さて、どうやって加藤が反撃するかというと、
「セリャアッ!」殴るだけであった。
 鍛えた拳をひたすら壁にぶつける、ぶつける、ぶつける、ぶつける、ぶつける。
 材質は石。一流ならば、素手でも十分に壊せるレベルだ。
「キョアッ!」ひびが入り、
「セイイィィィッ!」ひびさえ砕け、
「オルアッ!」穴が開く。
 この調子で、あちこちの壁を砕いていく。さらに、城は自ら行っている上下運動のせい
でどんどん自壊していく。
 やがて亀裂は城全体に及び、何度目かになる着陸の際、加藤は井上と一緒にそっと城を
降りた。
 そして、再度追跡モードに移行した城だったが、もはや崩壊寸前。
「あばよ」
 加藤がこういうと、城中に奔っていたひびがひとつに繋がり──城は散華した。

17 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/23(土) 19:01:44 ID:/ruUOqnh0
 城、消滅。
 やはり今までと同じく、城を構成していた破片はいずれも溶けてなくなった。歓喜はも
ちろん、一抹の寂しさも覚える加藤。
 一方、井上は気絶から睡眠に移行していた。命に別状はなさそうだ。
「………」
 そばに井上を寝かせ、ボーッと体育座りで海岸に佇む加藤。水平線を特に意味もなく眺
める。
 そんな加藤に、後ろから声をかける者があった。ヤツしかいない。
「おめでとう」
「……来たか」
 武神だった。さして心のこもっていない口調で、加藤を褒め称える。
「よくぞ今日まで生き延びた。もう君は東京でも立派に通用するだろう。ただし、あと十
日間耐えねば水泡に帰すがな」
「分かってるよ」
 武神が話題を変える。
「さて、あのお嬢さんの処遇だが、どうする」
 ついに来た。井上が口を利けない今、加藤が決断をしなければならない。だが動揺はあ
れど、迷いはなかった。すでに彼の心は決まっていた。
「俺たちがいた世界に、帰してやってくれ……」
「分かった。そうしよう」
 武神は横たわっている井上を、両腕で抱え上げた。出会ってしまったからには絶対に避
けられぬ、別れの刻(とき)。

18 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/09/23(土) 19:08:31 ID:/ruUOqnh0
新スレ立て、お疲れ様です。
またバレさん、いつも保管ありがとうございます。

また、しけい荘復活を期待している方もおりますが、まだどうするかは分かりません。
とりあえず、この作品は次回で一旦ケリがつく予定なので、その後じっくり考えてみたいと思います。

19 :作者の都合により名無しです:2006/09/23(土) 23:07:14 ID:1Vw9rSWe0
え、次回でケリがつくんですか?
まだ途中の感じですけど。
もしかして第一部完、という感じかな?
でも井上さんと別れちゃったからなあ。

20 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/09/23(土) 23:30:02 ID:78xSSdt10
二十九 抵抗

 はじめは、身体を押さえ付けて『制圧』の体制を取っていた警察官を、二人纏めて跳ね飛ばした。
 二人が、東廊下へと歩いて行く上司の行動を追って目を逸らし、力を緩めた、一瞬の隙だった。
 靴も履かないままに、まだ開け放たれたままの玄関から、外へと飛び出す。
 背中から警察官達の怒号が追いかけて来たが、振り向いている余裕などなかった。
 鮮やかに色付いた木の葉が、緑色のうねりとなって、視界の端から端へ流れては消える。
 尖った枝葉が、頬を切り裂くのも構わず。踏み付けた小石が、足を痛めつけるのも構わず。
 はじめはゴールなき山道を、獣のように駆けた。

 だが、極度のプレッシャーを伴う全力疾走である。
 マラソンランナーでもなければ、そう長続きするものではない。
 必然、急激な酷使に耐えかねた肉体は悲鳴をあげて、序々にスピードが低下する。
 気付けば、身体中は擦過傷だらけになっていた。
 心臓は、今にも破裂しそうなほどに激しく脈動している。
 目が霞み、視界一杯に白い霧のようなノイズがかかる。

 と。はじめは、前方に信じられないものを見た。
 山道に、異様な存在感を持って立ち尽くすそれは……人影だった。
 しかも、その人影は私服姿だ。警察官では、ない。
 一般人が、どうして、今、こんな場所にいる……!?
 素朴な疑問。が、酸欠に喘ぐ頭は、曇ってしまった瞳は、すぐには解答を導き出せない。
 誰だっていい。無視して走り抜けてしまえば……!
 最後の力を振り絞るように、再びスピードを上げる。
 しかし人影は、回避しようとするはじめの動きを読むようにして、進行方向に立ち塞がった。
 そして。人影は何の遠慮もなく、はじめに向かって隠し持っていた刃物を突き出した。
 ぐさり、と。突き出されたナイフは正確に、はじめの左胸を貫く。
「え……?」
 刹那。はじめは自分にナイフを突き刺した『その人物』を、白鷺奈々だと勘違いした。
 もしかしたら、その勘違いは『その人物』の風貌に残る奈々の面影によるものだったのかもしれない。
 はじめは――寄りかかるように倒れこみながら、自分を刺した人物の名前を口にした。
「白鷺……正人……」

21 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/09/23(土) 23:31:40 ID:78xSSdt10
三十 運命

 正人は、はじめの胸からナイフを引き抜き、後ろに退がる。
 全力疾走の惰性で、二、三歩足を前に進めてから、はじめは地面にうつ伏せで倒れた。
 鼓動に合わせて、まるで間欠泉のように、傷口から鮮血が噴出する。
 流れ出た血が、瞬く間に土を赤銅色に染め上げて行く。
 多くの人間を殺めてきた、はじめだからこそ理解できる。
 こうなってしまえば、もうどう足掻いても、助かる術はない。
 こうして意識を維持していられる時間も、そう長くはないだろう。
 きっと数十秒後には、目覚めのない、深い眠りに落ちる。
 全身から力が抜ける。手足の先から、感覚が遠のいて行く。

 一体、何処で選択を誤ったのだろう……?
 闇に飲み込まれつつある意識の中で、ぼんやりと考える。
 凶器の入手経路が悪かった? 犯行の手際が悪かった? それとも、逃げこんだ場所が悪かった?
 どれも違う。今はもう、わかっている。そんなものじゃなくて、もっと根本的な過ちがあったのだと。
 はじめにも把握できる、分かり易い運命の分岐点があったとしたら、それは――あの時。
 公園で、最初の殺人を思い止まっていたら。そして、快楽殺人になど目醒めていなければ。
 また別の未来が、全く違う今日と言う日が、存在したのではないだろうか。
 それは、あったかもしれない、もう一つの世界の話。真面目に考えるのも馬鹿馬鹿しい、死に際の戯言。
 だが――はじめはそれでも『ifの世界』に思いを馳せずにはいられなかった。
 純粋に、興味があったのだ。同じ時間をもう一度繰り返したとして。自分は再度、同じ選択をするのだろうか……? と。
 どうなるのかは、はじめ自身にも予想できない。でも、もしかしたら。
 案外、拍子抜けするくらいにあっさり、思い止まってくれるのかもしれない。

 常習性のある嗜好なんて、大抵そんなものだ。
 一生に大きな影響を及ぼすものなのに、手を出した切欠なんてみんな下らない。

22 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/09/23(土) 23:34:07 ID:78xSSdt10
 大人ぶってみたくて、見よう見まねで咥えてみた、一本の煙草。
 酒宴の席で、ちょっとした好奇心から手を出した、一缶の酒。
 それらの嗜好品は、その時興味を示していなかったら、一生縁がなかった代物かもしれないのだ。

 目を開いているのに、何も見えなくなった。
 耳を澄ましているのに、何も聞こえなくなった。
 こんな時だと言うのに、ファンタジックな御伽噺を夢想している自分に苦笑する。
 死に瀕した人間の思考なんて、ドラマみたいに劇的なものではないのだろう。
 ただ、生きたいという願いとか、大切な人への想いとか、戻れない過去への憂いとか……
 そういった、人間くさい想いが、幻灯機で映し出されるように、儚く浮かび、消える。
 自分が、何の感慨もなく、欲望を満たす為だけに手にかけてきた人々も。
 おそらくは皆、同じように、それぞれが言葉にならない幾つもの思いを抱えて、そのまま……
 そこで、思考は中断した。はじめは両の手で地面を握り締めて、動かなくなっていた。

 正人は、その死を確認するように、倒れているはじめの脇腹を爪先で蹴った。
 反応はない。くたびれたタイヤを蹴ったような感触が、足に伝わる。間違いなく、はじめは死んでいた。
 新宮家の前で、慌しく散開する警察官たちを見て、正人は急いで外に飛び出した。
 犯人の正体を知っていた正人としては、何が起こっているのかは、説明されるまでもなく理解できた。
 それから、はじめを探して彷徨い歩き、何かに導かれるようにして、ここまでたどり着いた。
 思い返せば、無数の偶然に助けられたものだ。
 幸い、関係のない人間を巻き込んでしまうような事もなかった。
 万事滞りなく、最良の形で、復讐は達成されたのだ。
 しかし、当の正人の表情からは、悲願成就の喜びなどは微塵も感じられなかった。
 遠く、鳥の鳴き声に混じって、無粋な、警察官たちの怒鳴り声が聞こえてくる。
 正人は血の付着したナイフをはじめの死体の脇に置くと、声のする方向に向かって歩き出した。

23 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/09/23(土) 23:36:51 ID:78xSSdt10
〇 未来

「どうしたの?」
 呼びかけるその声で、はじめは我に返った。
 夜の児童公園。白鷺奈々が、血の気の引いたはじめの顔を、心配そうに覗き込んでいた。
「……なんでもない」
 返答に窮する。それだけ言うのが、精一杯だった。
 はじめは後手に隠し持っていたナイフを、刃が見えないよう、ズボンのベルトに挿した。
「散歩に、付き合ってくれないかな、とか」
「散歩……? こんな夜遅くに?」
 訝しげな目で、はじめを見る。
「今夜は月が綺麗だから、たまにはそんなのもいいかと思って」
 自分でも何を言っているのか、わからなかった。
 ともかく、この場をなんとかして、取り繕おうと必死だった。
 公園に呼び出した本当の理由なんて、冗談でも言える訳がない。
 君がいたら人を殺すような気分にならないから、君を殺そうとしていた……なんて。
 冷静になって考えると、まったく馬鹿げている。そんな理屈が通ってたまるか。
 今までも何度か、そういった、物騒な欲望に突き動かされそうになった経験がある。
 そして、その欲望を押さえ込んだ後は、決まって自分自身を殺してしまいたい衝動に駆られるのだ。
 奈々は黙って、空を見上げた。暫く、無言の時間が過ぎる。
「こんなことで呼び出して、すまなかった。もう帰ろう」
 沈黙に耐えかね、そう言って踵を返したはじめの手に、奈々の手が触れた。
「いいよ」
「え?」
 はじめが振り向く。そっと、触れた手に力が込められる。
「散歩。付き合ってあげても」
「無理に付き合わせたみたいで……本当に……すまない」
 はじめは、その場で項垂れるように、深々と頭を下げる。
 奈々としては、突然の大仰な謝罪の言葉に、違和感を覚えずにはいられなかった。
「えっ、そんな、大袈裟に謝らなくてもいいのに……」
 狼狽えながら、はじめに視線を送る。それでも、はじめは頭を上げない。
「謝りたいんだ……謝らせて、ほしい」

24 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/09/23(土) 23:40:51 ID:78xSSdt10
「……変なの」
 奈々は目を丸くして、ぽつりと呟く。それでようやく、はじめは姿勢を正した。
「それより、早く行こう?」
 月明かりの下。二人は手を繋いで、あてもなく歩き出した。

*  *  *  *  *  *

 二人の様子を、公園横、廃倉庫の物陰からじっと観察する、一人の男がいた。
 彼――草壁功は、自覚症状があったかどうかは定かでないが、ストーカーと呼ばれる種類の人間だった。
 草壁が初めて白鷺奈々と会ったのは、休日で混雑した、とある駅前だった。
 会ったといっても、偶然肩がぶつかって、一言二言、社交辞令的な会話を交わしただけに過ぎない。
 しかし、たったそれだけで、草壁は彼女の纏う雰囲気に魅せられ、虜になっていた。
 それは、見事なまでの一目惚れだった。
 女性経験のなかった草壁にとって、彼女は身近で見付けた偶像そのものだったのかもしれない。
 草壁は彼女の後を尾けて自宅を突き止め、氏名、年齢、趣味……その他諸々の個人情報を蒐集した。
 自宅の左隣が彼女の家である事を知った時、草壁は文字通り、狂喜乱舞した。
 これは『運命である』とまで言い切り、そのパラノイアぶりを遺憾なく発揮した。
 その草壁はと言えば、物陰で頭を押さえて、怒りに震えていた。
 二人の間に交わされている会話こそ聞き取れないものの、流れる親密な空気は痛いほどに伝わってくる。
「あいつ……あんなに、奈々と馴れ馴れしく……!」
 瞬く間に、彼の中に憎しみの炎が灯る。
 すぐにでも出て行って、殴りかかりたい気分だった。だが、愛する奈々の前でそんな真似はできない。
 それに、一発殴ったくらいでは、この苛立ちは収まりそうもなかった。
 と、彼の頭の中に浮かんだのが、庭木の伐採用にと物置に入っているマチェットだった。
 そうだ。剣だ。剣を使って、ちょっと脅してやればいい。
 そうすれば、あの害虫とて、二度と奈々に近付こうとは思うまい。
 名案だ、と賞賛する心の声に、そうだ、と一人で相槌を打つ。
 俺は命を賭けて姫を守る『正義の騎士』なのだから……


金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』 了

25 :作者の都合により名無しです:2006/09/23(土) 23:42:35 ID:NoGBB4Ry0
乙です。
こういう結末になるとは・・・思いもよりませんでした。

26 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/09/23(土) 23:43:02 ID:78xSSdt10
スターダストさん、スレ立てお疲れさまです。
そしてバレさん、お忙しい中の更新に敬礼。
と言うことで、今回で完結とあいなりました。前回投稿は前スレ379です。
60KBと少々で終わるつもりが、予想以上に長くなりました。

・補足解説
このお話には、同一人物と見せかけて別人、な仕掛けが二つありました。
一つは、はじめ≠金田一一。
もう一つは、マチェットの男≠白鷺正人。

前者に関しては、話の中で説明した通りですが
後者に関しては、読んだだけでは消化不良の部分もあるかと思います。
なので、蛇足かもしれませんが、念の為に解説を。

視点が正人からもう一人の人物に移行したのは「二十」ゲームのシーンからです。
以降「正人は〜」と言う書き方がされなくなったので、違和感を覚えたのではないでしょうか。
同じ手を二度も使ってしまっていて、しかもわかり易いので
この時点で、これは別人物の視点なのでは、と看破された方も多いかもしれません。

ですが、それは俯瞰視点で「そうかもしれない」と漠然と意識するだけのものであって
それ以降が別人の視点である、確固たる証拠ではありません。
しかし、正人視点と二十以降の視点が、別視点である証拠が、実はありました。

正人視点、十八に以下のような記述があります。
>それでも、向かいの家――新宮家の二階、はじめの部屋から、明かりが漏れているのは確認できた。

マチェット男視点、二十の記述と比較すると矛盾しています。
>だから……気付かなかった。左隣の家、新宮家の玄関から、ジャケットを羽織ったはじめが出て行った事実に。
「向かいの家」はどう頑張っても「左隣の家」にはなり得ません。

27 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/09/23(土) 23:45:10 ID:78xSSdt10
それから、二十一、はじめ視点での記述。
>着の身着のままで、道路側からは死角になっている方の窓から、外へと身を躍らせる。
道路側から死角になっている方の窓から脱出したのであれば「向かいの家」の正人からは見えません。
左隣の家から監視していたマチェットの男だからこそ、飛び降りる現場を目撃できたと解釈するのが自然と思われます。
ここから先は、マチェットというアイテムの所持と、騎士に関しての思考が同一の視点を決定付けています。

もっと突き詰めて考えると、パトカー二台しか視認できなかった筈の
白鷺正人が、はじめを追って林の奥深くまで入り込んでいたのは何故か?
あまりにもご都合主義的ではないか?との、新たな疑問が出てきたりしますが……
それは明らかな矛盾ではなく、偶然でどうにかなる範囲なのでスルーということで一つお願いします。
どうも、長々と失礼しました。本当は本編で補完できればよかったのですが
視点云々というのはメタレベルの話なのでこうする他ありませんでした。

・最後に
ともあれ、拙いお話に最後までお付き合いいただいて
ありがとうございました&お疲れさまでした!
もし、次回があれば、またよろしくお願いします。それでは。

28 :作者の都合により名無しです:2006/09/24(日) 00:17:11 ID:C4kc3bpP0
>サナダムシさん
え、次回最終回?まだまだ続くと思ったのに。
サナダムシさんにはうんこやしけい壮とかをまだまだ書いてほしいです。
井上さんと、加藤らしい別れをしましたね。次回どう決着するんだろう?

>かまいたちさん
ああ、終わってしまった・・・。面白かったけど、寂しいなあ・・。
最後は、希望だか絶望だかどちらに繋がっていくかわからない
余韻に満ちた終わり方でしたね。今度もまた名作だったと思います。

また、いつの日かかまいたちさんの作品を楽しめる日を祈ってます!

29 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/09/24(日) 00:49:07 ID:ceyqKaIc0
作業しながら流し読みしていたら最後の最後でミスを発見しましたので修正です。
>>24、14行目を、以下に差し替えお願いします。
正↓
>自宅のすぐ近くに彼女の家があると知った時、草壁は文字通り、狂喜乱舞した。
誤↓
>自宅の左隣が彼女の家である事を知った時、草壁は文字通り、狂喜乱舞した。
草壁家から見て白鷺家は向かいでした。重要な箇所ではないと思って気が抜けたようです。
それでは今度こそ撤退します。失礼しました〜。

30 :作者の都合により名無しです:2006/09/24(日) 01:01:41 ID:YdU23h2a0
お疲れ様でしたかまいたちさん。
前作から、その精密なプロットと考え抜かれた展開に舌を巻いてました。
今度の作品も、やっぱり「予想を裏切り期待を裏切らない」作品でした。

しばらくの間は、ゆっくりお休みください。
また、お帰りをまっています。あえて「さようなら」は言いません。

31 :作者の都合により名無しです:2006/09/24(日) 11:57:41 ID:+z6aLz0I0
かまいたちさんしばらくお休みか。寂しい。
また、俺たちの創造を超える展開の作品で楽しませて下さい。
金田一少年、シリーズ化すると思ったんだけどな・・
何はともあれお疲れ様。

32 :作者の都合により名無しです:2006/09/24(日) 17:27:30 ID:PjbYLzNi0
>やさぐれ獅子
井上さんと別れて、いったん終了ですか。
でも試練はまだ10日残っているみたいなので、第一部終了かな?
なんにせよサナダさんの作品好きなのでまだまだ楽しませて下さい。

>金田一少年の事件簿
最後、こういう結末でしたかwなるほど、ハッピーエンドといえばそんな感じも。
でも、いろいろと含みのある終わり方ですね。
楽しみにしてた作品でした。また、是非是非、次回作を。お疲れ様でした。

33 :ふら〜り:2006/09/24(日) 19:06:22 ID:XqSuYdKT0
>>テンプレ屋さん&スターダストさん
おつ華麗さまです! 確かに、「そろそろ復活してくれるかも。つーか、して欲しいっっ」
って職人さんが増えてはいますね。でもそうして待っている間にも新しい方が書かれて、
それを読んでる間に待ってた職人さんが復活……ってのもよくあったこと。待ちませぅ。

>>オタクさん
ミストバーンに大人しく従う軍団長たち、違和感があるようなないような。まぁ原作でも、
参謀って肩書きで副官みたいにバーンに寄り添ってましたし。非常事態につき全権委任っ
てとこですか。あと気になるのはハドラー。もしかしてダイパーティの一員になるとか?

>>スターダストさん
小札嬢とは趣味が合いそうな。それはともかく総角、余裕で遊んでるって表情や口調では
ないけど余裕ですね。完全に圧倒してるのに、なお次から次へと新しいカードを出して、
最後の一枚に(いや、まだあるかも)懐かしのアレ。で小札もいるし。どうする斗貴子っ。

>>17〜さん
シアン、両手に華ながらそれをニヤけていられる状況ではないですな。まさかここへきて、
あの双頭竜がカマセ扱いとは。とはいえ見た限りでは強化兵、うまくやればバーディー一人
でも何とか倒せそう。でも材料さえ用意すればまだいくらでも出せそうだし……前途多難。

>>サナダムシさん
まさかここまでストレートに、単純に、空手でケリをつけてしまうとは。私が思ってた以上
に、加藤が成長してたってことですかね。精神的にも肉体的にも、そして純粋な空手の技量
も。で井上、一人だけ帰ってから目覚めたら……でも加藤も必ず帰る。ひと時の辛抱ですね。

34 :ふら〜り:2006/09/24(日) 19:07:18 ID:XqSuYdKT0
>>かまいたちさん
こんな最後の最後で、また凄い捻りが。前作もそうでしたが、同じ時間の同じシーンを、別
人物の別視点で眺めて体験するというのはサウンドノベルのザッピング的で面白かったです
(考えるのは凄く難しいと思います)。逆に細かいところでは、殺人を煙草や酒と同列に
並べてるところ、いい感じにゾッときました。実際、快楽殺人鬼にとってはそんな感覚なん
でしょう……また自作で、極寒恐怖と重厚思考を味わわせて下さい。お疲れ様でしたっっ!

>>バレさん
永きに渡り、いつもいつも、本当にありがとうございます。にしても新一に気付かれた
のは流石です! スターダストさんや他の方もそうですが、こういう小ネタに気付いて
下さると、ちょっと特別に嬉しいんですよね。お仕事も私生活もいろいろ大変そうですが、
お体を労わられますように。そしてこれからもどうか、よろしくお願いしますっっ!

35 :作者の都合により名無しです:2006/09/24(日) 22:02:33 ID:UdRrsGYY0
カマイタチ氏の早期復帰を激しく望む。ファンだもん。
それにサナダムシさんも次回でいったん終わり?

36 :バーディーと導きの神〜危機〜:2006/09/25(月) 00:20:39 ID:zCXfH67N0
時は少し戻って早朝。
草原にまばらに生えていた木の陰で休んだザンたちは、ゆっくり朝食をとっていた。
「オラちょっと用足ししてくるだ」
モルプがちょっと恥ずかしそうに言って立ち上がった。
「俺っちも同道するぜ」
モルプの頭の上のキデルも得意の変な時代劇口調で言った。
「じゃあ行ってくるだ」
「うん。一応気をつけてね」
ザンは笑顔で送り出す。
モルプとキデルは連れ立って草原の別の木陰へと走っていった。
すると、時を置かずにザッザッザッと草を踏む足音がザンとリュミールに近づいてくる。
「あれ、早いな?」
相変わらずの濃い霧の中、あまりにも早い二人の用足しにザンが疑問の声を上げる。
「ザン、足音が変よ!」
しかし異変を察知したリュミールがそう言ってザンに寄り添う。
「変って?あっ!!」
「ようやく会えたな小娘!」
ザンが最初に形容したクリームのような濃い霧の中から姿を現したのは、髪が逆立ち、顔の
抗術用の刺青も頬に横三本筋だったものが両目を通して縦三本筋へと変容し、人体改造で
体格も一回り大きくなったガロウズだった。
「このときを待ち焦がれたぞ!」
圧倒的な威圧感で迫りながら、ガロウズは凶悪な笑みを浮かべる。
「お前は!」
ザンはガロウズの術式服の襟についていたルアイソーテの紋章を見て、というよりもその
醸し出す凶悪な雰囲気から瞬時に敵と判断し、リュミールをかばって前に出る。
なぜこの場所が分かったのかなどの疑問はもはや問題ではなかった。
「リュミールは渡さないぞ!」
両腕を広げてガロウズに自分の意思を示すザン。
だがガロウズはそんなザンのことなどまったく意に介さず前に出る。
「小僧、お前の役目は終わった。もはや用はない」
「いや、まだ残っていたな」

37 :バーディーと導きの神〜危機〜:2006/09/25(月) 00:22:10 ID:zCXfH67N0
ガロウズの目に邪悪な炎が灯る。
「生贄だ」
そう言って右手を差し出す。
途端にザンは直接握られてもない首に圧迫感を感じ、実際に首が絞まって宙に吊り上げられる。
ガロウズの強力な念動だ。
「ザン!」
リュミールが悲鳴を上げる。
「リ……、リュミール……。逃げて……」
金縛りにあったように体を硬直させながらも、ザンはリュミールを気遣う。
「ほう、まだ娘をかばうほど余裕を見せるか、小僧」
対するガロウズは冷静そのものだ。
「やめて!ザンを離して!!」
苦悶の表情を浮かべるザンを見て、リュミールはガロウズに懇願する。
「小娘、こいつを放して欲しいか?」
ガロウズは冷酷な目でリュミールを見やる。
「はいっ!」
リュミールは本能で感じるあまりの恐怖感で立っていられなくなって膝を落とし、涙を流しながら
答える。
しかし、その願いも無下に却下される。
「お前の心の拠り所をこの俺が残すと思うか?」
まるでリュミールのことをなにもかも知っているかのごときガロウズのこの言葉に、リュミールの
体は硬直した。全神経が危険を訴える。
「お前の力は全てもらう」
ガロウズの左手がクンと持ち上がった。
「ぎっ!!」
ザンが悲鳴を上げる。
その足元に肩から先のザンの右手が落ちる。盛大な血しぶきも宙に舞う。
ガロウズの鋭利に尖った思念が物理的な力になってザンの肉体を傷つけた。
抑揚もなにもない、冷酷な一撃だった。
そのあまりの出来事に顔面蒼白になるリュミール。

38 :バーディーと導きの神〜危機〜:2006/09/25(月) 00:23:04 ID:zCXfH67N0
「小僧の右手がなくなったぞ。どうする小娘」
含み笑いをもらしながら、ガロウズはリュミールに選択を迫る。
ザンと自分の命、どちらを差し出すかを。
だがその時、その様子を影から覗いていた者がいた。用足しに行ったモルプとキデルだ。
「どうすっぺどうすっぺ!ザンが死ぬべよ!」
小さな木陰から現場を覗くモルプが怯えた声を上げる。
「落ち着けモルプ君。今私たちが出て行ってもどうにもならない」
そんなモルプの頭の上でキデルは比較的冷静に状況を見てその頭脳をフル回転させ始める。
「したっけしたっけしたっけ!」
しかしモルプがその思考を阻害する。
「待て待て待て待て!なにか手があるはずだ!なにか手がある、忘れているだけだ。落ち着け俺!」
キデルは頭を抱えて打開策を考える。そして一つの道を見つけ出す。
「そうだ、これがあった!これしかない!」
キデルは左手に装着した腕時計型の超空間通信機を操作すると、最大広域帯、最大出力で
亜空間ビーコンを発信した。
「バーディー!届いてくれ!」
宇宙船との超空間通信、捜査員同士の超空間通信は原因不明で不通となってしまったが、
近距離の亜空間信号、それも相互通信用回線ではなく単純に三次元位置を特定するだけの
発信信号ならば届くかもしれない。
キデルはすぐに気がつかなかった自分の失態を叱責しながらビーコンを打電し続けた。

「亜空間ビーコン!」
横たわった強化兵のすぐ側、シアンに強化兵の人体改造法を説明しようとしたその時、かすかな
信号を受信して、バーディーは思わず叫んだ。
「は?」
その言葉の意味を知らないシアンがとぼけた声を上げるが、バーディーは無視する。
「テュート、携帯端末モードへ」
バーディーが命じると、その姿が生体防壁からソシュウの服を着た姿に戻り、その右手に
通常つとむが携帯電話として使用している端末が現れる。
「な、なにそれ?」

39 :バーディーと導きの神〜危機〜:2006/09/25(月) 00:23:47 ID:zCXfH67N0
初めてその端末を見たサーラが話しかけるが、バーディーはそれも無視して慌ただしくいくつかの
キーを押す。
「出た!」
バーディーは受信が幻ではなかったことを喜んで、ビーコンの発信点を示すフラップが点滅
していることを確認する。距離は意外と近い。
「いったいなにしてんだよ!」
とうとうキレたシアンがバーディーに向かって怒鳴る。
「巡査部長の緊急救難信号が来たの。なにか起こったんだわ!すぐに行かなきゃ!」
シアンの罵声も耳に入った様子もなく、バーディーはすぐに行動を起こす。
「私は先行するわ!二人はソシュウさんたちと合流して!」
「お、おいっ!」
シアンはわけが分からず止めようとするが、バーディーは疾風のようにその場を去っていった。
「なに、あの速さ!」
瞬動法と見間違うかのようなバーディーのスピードに、開いた口が塞がらないサーラ。
「あーあ、行っちまいやがった」
シアンもサーラと並んでバーディーの去っていった方向を見ながらごちた。
横たわった強化兵の右手がピクリと動いたのはその時だった。

40 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/09/25(月) 00:33:17 ID:zCXfH67N0
暴虐のガロウズ。ただその一言です。

>>バレさん
胃のほうは大丈夫でしょうか?更新お疲れ様です。私もまたぞろ病気の虫が……。
シアンとサーラ、二人きりになりました。さてはて。
>サーラは原作のイメージからしてもツンデレが似合いそうな気がします。
やっぱサーラはツンデレ系ですかね。
>>12さん
シアンには期待してください。頼りになるあんちゃんですよ。
>>13さん
とうとうのっぴきならない状況になりました。こっからが大変です。
>>ふら〜りさん
本当、これからは前途多難満載ですw

41 :作者の都合により名無しです:2006/09/25(月) 10:00:24 ID:LeH3Pv9w0
お疲れ様です17さん。

ガロウズ復活ですか。復活した悪役は弱くなるもんだけどな。
でも、バーディに頼っててはいつまでたっても強くならないね。


42 :作者の都合により名無しです:2006/09/25(月) 15:39:09 ID:s95rS1xX0
かまいたちさん乙です
素晴らしいとしか表現しようがない

43 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/09/25(月) 22:53:06 ID:7ueDC8ly0
第二十六話「昔の知人はいつかの重要キャラ」

「あーなんか暇だなーこれ。久々の登場なのにやることがないってどうなのよこれ」

万事屋銀ちゃんは、常時満員御礼の激安スーパー店とは違う。
忙しい日もあれば暇な日もある。それを決めるのはお客様である依頼主次第。
ま、大半は暇な日がほとんどで、大黒柱である坂田銀時も毎日がサンデー状態が続いていた。

「ちょっと、シャキッとしてくださいよ銀さん。いくら仕事がこないからって、最近だらけすぎですよ」

ソファの上でゴロゴロしているぐうたら主を指摘したのは、仕事はなくとも生活はする男、志村新八。
今はハタキ片手に、万事屋内の埃群と大戦を繰り広げている最中だった。
「しかしなー、新八。ネタのないギャグ漫画なんて載っててもやることないだろ? 
 仕事のない社会人なんて、いてもやることないんだから大人しく寝てろって理屈に繋がると思わないか?」
「は? どういうことですかそれ?」
「つまりな、仕事もない上、な〜んも面白いこと喋れないようなら黙って寝てろってことだ。じゃ、お休み」
「おいィィィ! なに開幕早々寝に入ってんのォォ!? おまえはせっかく巡ってきた僕たちの出番を棒に振るつもりかァァァ!!?」
新八がよくわからない雄叫びをあげること数秒。

ああ、今回もこんな可もなく不可もなくなツッコミ日常が続くのかなと思った矢先、事件は起きた。
いや、正しくは、事件の発端となる人物がやって来たのだ。

44 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/09/25(月) 22:54:00 ID:7ueDC8ly0
「お〜い、ちょっくら邪魔するぜ」

ちゃきちゃきっとした挨拶を土産に、懐かしい声が万事屋に訪れた。
「あ、いらっしゃい……って、あなたは!?」
新八が振り向いたその先には、実に十九話ぶりとなる男の顔が。
「よう銀さん、久しぶりだな」
「西本先生じゃねーか。ずいぶん久々の登場……って、いきなりどうしたんだ?」
万事屋に訪れたのは、『シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい』第一部に登場した、新人漫画家の西本だった。
意外な再登場にやや困惑する銀時と新八を尻目に、西本は豪快な笑顔でこう言った。
「いや、今日は銀さんにちょっくら相談事があってな。って言っても俺がって訳じゃないんだ。おう、芝村さんも、いつまでも悩んでないで顔見せな」
「は、はあ」
西本の声に呼び出され、玄関に入って来たのは、弱々しい様相と妙に腰の低い姿勢が印象的な、中年の男性。
芝村と呼ばれた男性は万事屋に脚を踏み入れてなお、何かを躊躇するような戸惑い顔を見せていた。
普通に考えて、何か相当な悩み事があるように思える。
そうでなくても万事屋を訪ねるほどだ。その相談事というのも、一筋縄ではいかないものなのだろう。

「よかったですね、銀さん。出番を活かすチャンスがきたみたいですよ」
「そうダネ、新八クン」

微笑む新八に、銀時は面倒くさそうに返した。

45 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/09/25(月) 22:57:44 ID:7ueDC8ly0
うっす〜い髪が視界にちらつく。
「相談があるってのは実は俺じゃなくて、この芝村さんなんだよ」
それが気になって気になって、この人完璧ハゲになるまであと二、三年はかからないな。とか思っちゃったりする。
「この人には恩があってな。困ってる姿を見たら放っておけなかったのよ。んで、俺が銀さんとこの万事屋を紹介してやったわけだ」
「あーそうかそうか。でも毛髪の悩みならアデランスに行った方がいいと思うぞ」
「は? 毛髪?」
銀時のまったく話を聞いていない発言に、新八はため息をついた。
世間では、あの近藤、土方が属していた武装警察・真選組が解散し、新たに『新選組』なる集団が結成されたという大事件が起きたというのに。
この人は相変わらずというか、なんというか。

「あの、坂田さん。わたくし、こういうものをしております」
おどおどとした動作で芝村が差し出したのは、一枚の名刺だった。
名刺には、『集英屋 週刊少年ジャンプ編集部 芝村』と書かれている。
銀時はまず、その黄金に輝く肩書きを目にし、驚愕した。
「マジデ!? あんたジャンプの編集さんなのか!?」
「はあ……」
「編集もなにも、この人は講談屋を蹴った俺を拾ってくれた人だよ。『連載すっぽかし』の汚名を持つにも関わらず、俺の力を見込んで即連載ありつけるようにしてくれたのもこの人だ。言わば、俺の漫画の恩人ってわけだ」
誇らしげに胸を張る西本の横で、芝村は恐縮そうな顔をする。
「いえいえ、西本先生のセンスには目を見張るものがありましたから。私なんかが目をつけなくても、その内どこかの出版社が引き抜いていましたよ」
「またまた〜嬉しいこと言ってくれるじゃねえか!」
「それだけに、西本先生には本当に申し訳ないことをした……私の力が及ばなかったために、あんな結果になってしまって……」
「いや……うん、あれはね……しょうがないのよ……芝村さんのせいじゃないって……単純に、ウケが悪かっただけみたいだし……」
さっきまで笑っていた西本が、急に意気消沈してしまった。
新人漫画家、西本。そんな彼の初連載作品は、もうジャンプには載っていない。
硬派な絵柄でラブコメなんて描いたのがそもそもの失敗だったのか、読者アンケートではすこぶる評判が悪く、あえなく全十八話で打ち切りを迎える結果となってしまった。
ちなみに、西本の作品に代わって今ジャンプ本誌で連載しているラブコメ漫画といえば、『To LOVEる』だ。
西本には悪いが、銀時もこっちの方がおもしろいと思っている。
「だけどよ、芝村さんがいなかったら、今の俺はねえ! 芝村さんが恩人であることには変わりねえんだよ! 俺は、そんな芝村さんの助けになりてえのさ!」
「西本先生……ありがとう。こんなダメ編集者が今もここにいられるのは、あなたという成長が楽しみな種があるからこそですよ」
ああっ、麗しき作家×編集愛。二人の持ちつ持たれつの関係は正に理想といえ、全国の漫画家さんたちが羨むほどだった。

46 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/09/25(月) 22:58:25 ID:7ueDC8ly0
「それで、芝村さん。俺に相談したいことってのはなんなんだ?」
ひとしきり感動を覚えたところで、銀時が本題に入った。
視線は依然として危機信号を発している芝村の頭部に向いているが、耳はちゃんと集中しているので心配ない。
「実は……他でもない集英屋のことについてなのです」
「集英屋の?」
なにやら大掛かりな依頼の臭いがした。
悪い予感というのはよく当たるもので、銀時がたたずをのんで耳を傾けると、芝村はゆっくりと語り始めた。
「いつかの講談屋事件……真相は誤解だったわけですが、講談屋がテロリストのパトロンをしていたという話はご存知でしょう?」
「ああ」
忘れもしない、桂が持ってきたとんでもないデマ情報のことである。
しかもそのデマ情報、どうやら真選組の方にも流れ渡っていたらしく、相当な赤っ恥をかいたと聞く。
だがそれも過去の事件だ。講談屋も今ではすっかり平和になり、マガジンの売り上げも上々。変な噂も立っていない。

「実はですね……そのテロリストのパトロンをしているという話、どうやら講談屋じゃなくてうち……つまり、集英屋のことみたいなんですよ」
「……は?」
芝村が突然告げた言葉に、銀時と芝村は同時にポカン。
我らがジャンプ、我らが集英屋が、テロリストのパトロン?
「おいおい、なんでそうなるんだよ」
「私は見てしまったのです。編集長が、宇宙海賊らしき天人と一緒に武器の横流しについて話し合っているところを」

「……マジか」
疑いようのない、本格的な事実だった。
まさか、今度ばかりは漫画の打合せと言う訳でもあるまい。
しかもテロリストというのは、攘夷浪士ではなく宇宙海賊。ますます厄介な話に発展してきた。

47 :一真 ◆LoZjWvtxP2 :2006/09/25(月) 22:59:27 ID:7ueDC8ly0
久々に戻ってまいりました、一真です。

約一ヶ月ぶりの銀さん登場。
そしてもう何ヶ月ぶりかも分からない西本先生登場。
間が空くとキャラクターって忘れちゃうもので、ところどころ違和感感じながら書いてたんですがどうでしょう?

ここからしばらく銀さんサイドとなり、真選組連中はお休みとなります。
あんまり皆さんに忘れられないようなスピードで進行できたらいいなぁ……と常々思ってみたり。

では今回はこの辺で。
一真でした。

48 :作者の都合により名無しです:2006/09/25(月) 23:03:38 ID:iofPlH9C0
>17さん
ガロウズくらいはザンやリュミールが倒してほしいよね
今回はバーディーは脇に回って、ザンに根性を見せてほしいです

>一真さん
真選組サイドも大変だけど、しばらくは銀さんサイドという事は
いずれ宇宙海賊とかの話も1つにまとまるのかな?
最終部ですから、やっぱりそれなりのうぷ速度にしてほしいなあ。


49 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/26(火) 01:45:05 ID:2e7CPwyY0
>>17より。

50 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/26(火) 01:45:53 ID:2e7CPwyY0
 武神と井上。憎むべき敵と愛した後輩。ふたつの姿が薄れていく。
 はっきりと目に映っていた輪郭は徐々にぼやけ、極めて透明に近い濃度となる。
「じゃあな、井上……」
 そっと微笑み、加藤が別れを告げる。
 次に会えるとしたら、試練を全て耐えた後。十日後、自分は生きているだろうか。もは
や死に対してはさほど恐れはないが、井上に会えなくなることはとても恐ろしかった。
 もうまもなく、武神と井上が完全に消える。
「………」
 いなくなる瞬間は目にすまいと、加藤が背を向ける。と、後ろからだれかがのしかかっ
てきた。
「──なっ?!」試練か、と拳を握る加藤。
 しかし、柔らかいこの感触──女のボディだ。
「待ってください!」
「え……えっ? い、井上!?」
 背中には井上が泣きながら張りついており、姿もくっきりと映っている。振り返ると、
武神が立っていた。
「空間転移する寸前、息を吹き返したようだな」淡々と語る武神。
 今生の別れになるかもしれない──覚悟した途端の再会。嬉しさと戸惑いが加藤を包み
込む。
「井上……」
「全部分かってます。私は今日で先輩とお別れします」
「………」
「でも、何も伝えられずに別れるのは嫌なんです。だからあと一時間、いえ三十分でいい、
時間をくださいっ!」
 武神に向かって涙ながらに訴える井上。武神は特徴がまったく見受けられない口で、冷
徹に答えた。
「分かった、ただし十五分だ。長居で気が変わられては面倒になる」
「ありがとうございますっ!」
 ほんの十五分、加藤と井上の時間が復活した。

51 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/26(火) 01:46:45 ID:2e7CPwyY0
 黙って彼女を帰そうとしたことに、加藤は後ろめたさを感じていた。
「すまねぇ、俺は……」
「先輩、何もいわないで」
「え?」
「実は私も同じ気持ちでした。これ以上先輩につきまとったら、絶対に足手まといになる
って分かってました」
 まるで体内にある汚れを浄化させるように、吐露を始める井上。
「……それでも、私は先輩とずっと暮らしたかった。そのためなら、試練に巻き込まれて
死んでもいいとさえ考えていました」
「井上……」
「でも、やっぱりダメだったんですね。今日、あの城と戦って私は知ったんです。私の存
在は先輩を殺してしまう、って。あの城の攻撃、たしかに凄かったけど先輩ひとりだった
らもっと楽に攻略できたはず。……そうでしょ?」
 問いかける井上。
 ここは世辞や慰めなど使うべきではない。加藤は真実を述べる。
「あァ」
「……良かった。私の目も節穴ではなかったんですね」
「ついでに、もうひとついっておくことがある」
「えっ……?」
 押し寄せる“照れ”をむりやり押し止め、加藤がさらに真実を述べる。
「俺はお前を足手まといだと思ったことはねぇ。まして、仮にお前のせいで俺が死んだと
しても、それは俺にしてみれば最高の死に方だったはずだ」
「………」
「お前が来る寸前、俺は身も心もズタズタだった。戦友(ドッポ)も死に、試練はまだ三
分の一を終えたばかり……マジでやばかった」
 今度は加藤がこれまで表に出さなかった心情を吐き出す。
「しかしよォ、そんな折にお前が来てくれた。最初こそギクシャクしてたが、本当に楽し
かったぜ。孤独も、試練の辛さも、全部忘れさせてくれた。最高のパートナー……いや」
 ごくりと唾を飲み込み、考えるだけでも恥ずかしい言葉を捧げる。
「女神だった」

52 :やさぐれ獅子 〜二十日目〜:2006/09/26(火) 01:48:01 ID:2e7CPwyY0
 残された時間はわずか──だというのに、双方とも喋らなくなってしまった。短時間で
急激に本音をぶつけ合ったことで軽いショック状態に陥ってしまったためだ。
「あと一分」無機質な声で武神が呟く。
 まずい。まだ伝えきってはいない。とっさに口を開く加藤。
「俺は必ず戻ってくる。ヤロウが仕向ける試練、どいつこいつもぶっ倒して必ず戻ってく
る。だから……泣くなよ」
「お、オス」目に浮かぶ涙をこらえる井上。
「じ、じゃあな……」加藤は逃げるようにうつむく。これ以上は、未練を残す。
 加藤の心は後悔で一杯だった。
(いいのか、いいのかよ?! もしかしたら、最後かもしれねぇんだぞッ!?)
 心の中で奮い立とうするも、ここ十五分で散々に“加藤らしからぬ行為”を連発した彼
に、これ以上“らしからぬ行為”をこなす勇気はなかった。このまま別れちまえばいい。
試練をクリアさえすれば、またいつでも会えるのだから──。
「先輩ッ!」
 逃げの思考は、井上の声で打ち切られた。
「ど、どうした……」
「先輩……最後に、どうか」ぶわっと、井上の目から涙が溢れ出した。

 唇と唇とを交える、加藤と井上。
 半ば成り行きで知り合い、なすがままに今日まで衣食住を共にしてきた。
 お互いに内から出でる疑惑。
 ──本当に俺(私)は彼女(彼)を愛しているのだろうか。
 ──極めて稀有な状況が生み出した幻ではないのだろうか。
 ならば試すしかない。出会ってしまった雄と雌。疑問に決着をつけるべく、二人は唇を
通じて自身に問いかけた。
 そして理解できた。──この感情を生み出したのは外因ではなく、他ならぬ自分自身。
「また会おうな」
「えぇ、次は道場で」
 再会を誓う二人。もう十五分を経過していたが、武神も咎めることはしなかった。

 ──さらば、井上。

53 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/09/26(火) 01:49:11 ID:2e7CPwyY0
二十日目終了、そして第二部終了です。
ここで井上は退場です。
前にも書きましたが、ホントだらだら長くてすいません。
一ヶ月設定にしたのはまちがいなく失敗でした。

正直、今後この作品をどうするかはまだ未定です。
まぁ、ぼちぼちラストまでいきたいです。
とりあえず、少し『やさぐれ獅子』はお休みさせて頂きます。

54 :作者の都合により名無しです:2006/09/26(火) 11:37:09 ID:qag57pMu0
>一真さん
ようやく主役の登場ですね。いや、このまま新撰組がメインで突き進んでいくかと思いましたが。
(それもいい感じですが)でも、「やはり銀玉は銀さんや新八たちが活躍しないとね。
怪しげな海賊たちも見え隠れして、不穏な空気が流れていますね。ギャグは控えめになるのかな?

>サナダムシさん
失敗なんてとんでもない!俺はこの作品好きですよ。どんな形にしろ決着は付けてほしいな。
最後は純な高校生同士のような分かれ方でしたね。井上はともかく、加藤には不釣合いだけど、
成長したということですか。のんびりぼちぼちラストまで持っていって下さい。

55 :作者の都合により名無しです:2006/09/26(火) 13:36:18 ID:1tpsxS5F0
一真さんお久しぶりです。最終章はやはり、銀さんと真選組を中心とした
お話になるようですね。また、銀さんが美味しいところを持っていきそうだがw
宇宙海賊、真選組と前途多難な強敵ばかりですねえ。


サナダムシさん、このお話好きだから完遂してほしいなあ。
手を変え品を変え、よくぞここまで試練が思いつけると感心したものです。
井上さんと別れちゃったけど、エンディングでまた再会してほしいな。

56 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/09/26(火) 16:03:28 ID:xQxqHoV40
やっちゃいました。今から再入院です。皆様すいません。

57 :作者の都合により名無しです:2006/09/26(火) 17:15:16 ID:LWKcQH/F0
サナダムシさん、俺もこの作品大好きだ。
ぼちぼちでいいからまた再開して下さい。

17さん再入院って大丈夫か?
内臓系ならしっかり治したほうがいい。

58 :作者の都合により名無しです:2006/09/26(火) 22:18:09 ID:4ssxTMW00
>一真さん
乙です。銀さんたちは流石にギャグから始まりますね。
でも最後のレスでシリアスに動きつつあるのがわかります。
宇宙海賊テロリストとの戦い、どうなるんでしょ?

>サナダムシ氏
え、一時休載ですか?うーん、残念。俺も結構好きでした。
でも、毎回の試練作成にちょっと苦しんでるかな、とは思ってました。
キスシーンいいですね。ちょっと休んでまた復帰して下さい!

>17氏
この前入院したばかりですよね。本当に大丈夫?
お体を大切にしてくださいね。

59 :作者の都合により名無しです:2006/09/27(水) 00:52:55 ID:H3HyuRzB0
井上さんの名前って何だろう?確か原作では出て来なかった気がするけど。
それにしても、どこか仄悲しいラストですね。
出来れば最後まで書いて頂いてハッピーエンドで終わらせて欲しいです。
サナダムシさん、早く復活してね…


17さん、体調を戻してまた復活して下さい。
それにしても再入院って、本当に大丈夫ですか?
何か大きな病気の気がするんですが…

60 :鬼と人のワルツ:2006/09/27(水) 12:40:41 ID:iKr7XSdg0
同刻
「甘味処たちばな」と書かれた店にて。

(「たちばな」といっても変な藻の浮いた水槽に浮かべられた人や、天下を取るといって剣道を徹底的にコケにした人とは関係がまったくないことをここに明記しておきたい。)

「今日もお疲れ様」
猛士の隠れ支部に帰った響鬼は返し扉の奥にある分析室へと向かった。
今日見た魔化魍の様子がおかしかったからだ。
「どうしたの?何か気になることでもあったの?」
「いや、今日戦ったオオカマキリね、普通の奴より大きかったんだよ。それに大きさの割には脆過ぎたんだ」
「脆過ぎたってのは別にいいけれど、大きかったというのは問題ね、見てみようか」
響鬼はおもむろに円盤状の物体を取り出しテレビにつないだ。
「お、今回のディスクアニマルはよく撮れてますね、みどりさん」
「カメラの接続をちょっといじってみたのよ」
みどりとよばれた女性がテレビのリモコンを取り上げながら言う。

ちなみにディスクアニマルというのはCD大の円盤型からいろいろな動物を模した姿に変形し、攻撃や情報収集などを行う鬼のサポート用の小型ロボットである。
式鬼と呼ばれていた呪術と科学技術の融合した猛士の独自技術の一つであり、音撃武器と相まって鬼の主力武器となっている。
そのかわいらしさにも定評がある。

映像が始まり、穴に潜むオオカマキリの姿が映し出された。
それを見ていた二人の表情が次第に凍り付いていく。

61 :鬼と人のワルツ:2006/09/27(水) 12:41:43 ID:iKr7XSdg0
「うそでしょう?」
カマキリの発見から、響鬼の戦闘終了までを記録した映像である。
当然、刃牙の姿もある。
己を鍛え、鬼となって戦う者と、それを影で支える者。
魔化魍という巨大な化け物と日夜戦う者達の目に刃牙の姿はどう映ったか?

「素手で…」
「この子は本当に人間?」
「間違いないけど…なんだか怪しく見えてくるな」
「見てよ、チョップで首を切っちゃった」

のれんを開けて壮年の男が入ってくる。
「おお、響鬼、帰ってたのか」
男がテレビを覗き込んだ。
「ああ、オヤッサン、御苦労様です」
「その生身で戦っているのは…?」
「見てください、この少年すごいんですよ」

もう一度巻き戻して刃牙が戦うところを映し、ところどころに響鬼が解説を入れた。
「オヤッサン、どう見ます?」

62 :鬼と人のワルツ:2006/09/27(水) 12:43:31 ID:iKr7XSdg0
「どう見るというより、あれだな、この少年、スカウトできないか?」
「この少年を鬼に?」
「うむ」

さて、猛士というのは特殊公務員の一種であるとは云え、基本的に秘密組織である。
魔化魍の存在を現代社会でつまびらかにするわけにはいかないため、実際に被害にあった人間及びその関係者のみにしか猛士の存在が伝えられない。
結果として猛士という組織に入る人間の数は極めて限定される。
全国的にネットワークが広まっているとはいえ、あくまで草の根レベルのネットワークであり、協力者たる「歩」となるものに留まるのが一般的なのだ。
まして戦闘要員たる「角」すなわち鬼になる人間は少なくなる一方だ。
相撲取りになる人間が減っているのと同じである。

「なってくれるでしょうか?」
「わからないが、人を助けに降りてきたところからみて正義感はあると思う、戸田山の例もあるしな、なにより」
「なにより強いわね。少し訓練すれば直ぐに鬼になれそうなぐらい」
かぶせるようにみどりが言った。響鬼はすこし微妙な表情をした。
「直ぐになれるような、そんな甘いもんじゃないけど…」
しかし刃牙の強さが本物であることは、映像を通して見てもよくわかった。
貴重な人材であることは間違いない。
「みどりさん、彼を送っていった人に住所を控えてもらったと思うんだ」
「わかった、連絡しておくよう香須美に伝えておくわ」

「しかし、生身でここまでできる人間がいるなんてねぇ」

63 :鬼と人のワルツ:2006/09/27(水) 12:45:26 ID:iKr7XSdg0
「どこかの国が秘密裏に生み出した改造人間だったりして、オリンピック対策に」
「おいおい、みどりさん。映画の見すぎですよ」
「いや、わかんないわよ」

そんな会話をしながら響鬼には一つ気になることを見つけた。
なぜ笑っているんだ?
ということだ。
映像からははっきりとした表情はわからない。
だが少年−刃牙−が笑っていると直感した。
初めはそうではなかった、戦況が悪くなるにつれ刃牙の口元が緩んでいくようにみえた。
追い詰められ、響鬼が戦いの中に飛び込む寸前の刃牙の顔はガードする腕に隠れていた。
その刃牙を見て、ぞくり、と冷たい何かが背筋を走った。
確信があった。笑っている。
この絶望的な状況下で何故笑っているのか、おかしくなっていたようには見えなかった。
この少年には何かある。

不安を声に出してみた。
「随分楽しそうに戦うなぁ、この少年」
「そうかな?」
戦闘員ではないからか、みどりにはわからないようだ。

64 :鬼と人のワルツ:2006/09/27(水) 12:47:10 ID:iKr7XSdg0
だがオヤッサンこと立花勢地郎には感じるところがあったようだ。
「ふむ、戦いが楽しいんじゃないかな」
「どういうことです、オヤッサン?」
「たまにいるんだよ、死線っていうのかな…それを超えるのが好きな連中がね」
なんでもないことのようにそういうと、勢地郎は腰を上げた。
「それじゃあ、スカウトの方、よろしく」
勢地郎はもんぺの袖を翻して店の方に戻っていった。
今日は団子がよく売れているようだ、響鬼は勢地郎が置いていったみたらし団子に大口を開けてかぶりついた。



65 :鬼と人のワルツ:2006/09/27(水) 13:12:49 ID:iKr7XSdg0

うーん。歯切れよくしようとするとブツ切れ、丁寧に書こうとすると冗長になってしまう…
日本人としてこれでいいのか…

>360
語ろうぜスレの存在は知っていますが、私は行ったこともないし書き込んだこともありません。
他の誰かだと思います。前スレの様子を見るとハイデッガさんでしょうか。
楽しみです。
>361
虎が、虎が…

>サナダムシさん
やさぐれ獅子2部完結ですか、まったりと次の作品とやさぐれの続きをを待ってます。
私は何とか勇次郎戦(というか刑務所に行く前)につなげられるよう努力してみます。
失敗したらうんこに埋めてください。

>ふらーりさん
>やるか?
やらいでか!

>17さん
お大事に。復活待ってます。



66 :鬼と人のワルツ:2006/09/27(水) 15:34:15 ID:a8w2w0ZN0
もんぺじゃなくて甚平だった orz

67 :素晴らしい国:2006/09/27(水) 20:05:36 ID:IQk6ONcy0
 見たところ、何の変化もない。
 外壁が壊れているなんてこともなけりゃ、煤けてもいない。
『素晴らしい国』で、俺は確かに聞いた。
 俺の故郷――『最悪の国』が、危機に瀕していると。
 ――『最悪の国』なんて呼ばれているとは、知らなかったが――
 ロクでもない国だってのは、18の頃までここで過ごしてきた俺が一番良く知っている。
 無菌。
 清潔。
 正直。
 ――思い返すだけで、吐きそうになる。
 俺は、異端扱いされていた。ただ歩いていただけで、ジロジロと見られ、店の店主は、
カウンター下の銃に手を掛けた。
「国を出る」と言っても、誰も止めやしなかった。
 その時、悟った。「俺は、ここでは生きられない」
 なのに、どうして、今――これほど、胸がざわつく?
 殺しもやった。放火も数限りなくやった。強姦だって。
 誰かに訊いてみたくなった。
 その時、重い鉄の門が、くたびれた音を上げた。
 出てきたのは――ここからじゃあ、よく見えないな……
 もう少し近付いてみる。
 …旅人だ。
 モトラドを携えた、背の小さな、ガキみたいな男だ。
 まだ、待とう。国のヤツに見られたくはねえ。
 あの、いかつい門が完全に閉まってから――あの男に、訊いてみよう。


68 :素晴らしい国:2006/09/27(水) 20:07:46 ID:IQk6ONcy0
 俺は気付いた。姿を見られるのも、よくない。
 ここ数日水も浴びていないし、着替えもできていない。髭も伸びっぱなしだ。さらに、
俺のガタイと目付き、顔付きを考えると、間違いなく、賊と思われる。
 俺の格好は、まさに賊そのものだろう。ならず者という点では一緒か……だけど、
俺は賊ではない。一匹狼だからだ。
 門が閉まった。鼠が通れる隙間もなさそうだ。
 旅人は、モトラドに跨らない。好都合だ。モトラドで走られちゃあ、置いてけぼりになる。
 モトラドを引いて、旅人はゆっくりと、こちらの方へ向かってくる。俺の隠れている木の
すぐ前を通るまで、すぐだ。
 あと、三歩。
 二歩。
 一歩――よし。
 訊こう。国の様子を。そして、もう一つ――きっと、ヤツは困ったような顔をするだろうが、
あと一つ、どうしても訊きたい。
 木蔭を出て、旅人の肩を――

 オレハ、ニンゲンラシクミエルカ?

「危なかったね、キノ」
「うん、そうだね」
 モトラドにキノと呼ばれた黒髪の旅人は、今撃ち抜いた賊のような男の眉間から迸る
鮮血を見つめながら、言った。
「やっぱり、聞いた通りだ。国から一歩外に出ると、途端に危なくなる」
 モトラドは言った。
「この先の国が『最悪の国』らしいからね。国の中だけで収まりきらない悪人が、外に出て
賊になっているんだろうか。まさか、出た瞬間襲われるなんて、思わなかったけど」


69 :素晴らしい国:2006/09/27(水) 20:11:31 ID:IQk6ONcy0
 キノは、これからの旅について、ある懸念を抱いていた。今回は、その懸念が的中
してしまったということなのかもと、キノはそう考えた。
 ここのところ、キノは、男装では隠せないくらいに、“女”として成長し始めていた。
それは急激な変化だった。乳や尻は女らしく張り出し、顔立ちも、以前の少年(少女)
らしい丸顔から、色香を漂わせる細い顔に変わってきていた。
 この『素晴らしい国』に入国した最初、門近くで遊んでいた少女に、「旅人の“お姉さん”、
どこからきたの?」と言われた時の、キノの狼狽っぷりは、内心に留められたものの、相当な
ものだった。
 尤も、キノはそこまで、女である自分を隠したがっていたわけではなかった。しかし、旅人
として生きるには、男として通用する方が、何倍も安全であるということは、常識すぎるほど
の常識だった。
 男であれば、旅をする上での敵は、ほぼ野生動物と天候、そして餓えのみである。しかし女
であれば、そこに“獣”が加わる。性欲に狂わされた、“人間の男”という名の獣が、牙から
唾液を滴らせて、女をその毒牙に掛けようとする。
 考えれば、旅というものに楽しみはない。キノは幸いにして、“旅を楽しめる旅人”であった
ものの、そうでない旅人のほうが圧倒的に多いのだ。特に、男の旅人に多い傾向がある。旅をす
るうちに、彼らの神経は磨耗し、削れた神経の埋め合わせに、二つの本能が隆起してくる。それ
は食欲であり、性欲である。キノはまだ男を知らない。しかし、性欲に支配された男の恐ろしさ
というものは、これまでの旅の中で数度聞かされてきていた。
 勿論、キノは自分の戦闘能力に自信を持っていた。銃を使わせれば、そこらの賊などには負け
ないと考えていたし、体術でも、対抗はできるだろうと、自分の能力と、一般の賊の力とを客観
的に眺めた上で、確信していた。
 しかし、それでも、何が起こるかなど、誰にも分からない。偶発的な要素は無視できなかった。
「どんなに気をつけて手入れをしていても、壊れて使えなくなるかもしれない」
「肝心なときに弾切れを起こすかもしれない」
「体術でも、一対一なら、相手にもよるが負けないだろう。だけど、銃抜きで、自分より
力の勝る男三人に囲まれたら」――
 リスクファクターは、考えれば考えるだけ顔を覗かせるものだ。
 もし倒されたとして、犯されることは、破瓜の激痛は恐ろしいものの、それほど怖いも
のではなかった。だが、性欲が脳に回ってもはや正常な判断の利かなくなっている男達が、
犯したまま放っておくとは、キノにはどうしても思えなかった。
 殺されると、キノは考えた。

70 :素晴らしい国:2006/09/27(水) 20:13:56 ID:IQk6ONcy0
 男に限らず、人間というのは嗜虐心でできているらしく、本質的に他者に危害を加えること
のみで満たされる存在である、ということだ。それはこれまでの旅を思い返せば、キノにも
合点のいく話だった。嗜虐心が、ボクを嬲るだけで収まるものだろうか。そう考えた。実際
には、大半の強姦者は射精した段階で満足してしまい、その場に女を放っていくケースが
大半なのだが、射精が男にもたらす満足感など分かりようもないキノには、そこまで考えが
至らないのも当然のことだった。
「ここにずっといるのも、キケンじゃない?」
 モトラドは言った。キノは答えた。
「そうだね。じゃあ、行こうか。動き続けるのが、一番安全だ」
 キノはモトラドに跨った。そして、砂利道を走りだした。

「いい国だったね」
「うん。とても」
 モトラドの言葉に、キノは、高速で過ぎ行く草原の風景に目をやりながら、答えた。
意識には、『素晴らしい国』で受けた様々なサービスが浮かんでは消えていった。
「でもね、エルメス」
「うん?」
「あまりにも、素晴らしすぎた気がするんだ。今思うと」
「親切にされるのは、とってもいいことじゃないの」
「それはそうだけれど、あまりにも、そう……まるで、作り出されたかのような、素晴らしさ
だった。人為的に作られた、楽園だったんじゃないか――今、冷静に思い返せば、そんな気が
するよ」
「人為的にって、どういうことさ」


71 :素晴らしい国:2006/09/27(水) 20:14:29 ID:IQk6ONcy0
「人為的にって、どういうことさ」
 モトラドは、怒気を声に孕ませて、粗野を気どって言った。彼にしてみれば、恩人を侮辱
されたような感覚なのだろう。
「だって、あまりにも素晴らしい人ばかりだった。建物や食べ物が素晴らしい国なんて、
沢山あるよ。だけどそういった国は大概、人間が汚れていた。あの国だけ、なんで人も
素晴らしかったんだろう」
「きっと、教育がしっかりしてるとか、性格のよさがひたすら遺伝しまくったとか、
そういうことだよ」
「やけに、肩を持つじゃないか」
「キノに感謝の心が足りてないだけさ」
 キノは苦笑した。
 察しはついていた。『素晴らしい国』は、素晴らしい人間だけがいられる国。そして、
素晴らしくないと判定された者は――
 ここで、キノは考えることを止めた。ここから先は、考えたからといってどうなるもの
でもないからだ。
「“素晴らしい”と“素晴らしくない”の基準って、なんなんだろうね。ボクには分から
ないや」
「さあね。キノはそんなこと考えなくていいんじゃない。もし基準が明確にあって、それに
照らし合わせた結果“素晴らしくない”と判定されたからって、そこからどう変わりようが
あるのさ? 変わろうと思って変われる程、人間って器用にできてないもの」
 それを聞いて、キノはまた笑った。
「人間のこと、全部知ってるみたいだ」
「当たり前さ。もう長いこと接してるもんでねぇ」
 旅人とモトラドは、そうして話しながら、見晴らしのいい草原から、深く暗い森の中
へと入っていった。



72 :作者の都合により名無しです:2006/09/27(水) 20:16:14 ID:IQk6ONcy0
書きたいので書きました。読んでもらいたいので、ここに置きました。(確か漫画版もあったので、アリかなと)
読みきりなので続きはありませんが、楽しんでいただけたら幸いです。

73 :作者の都合により名無しです:2006/09/27(水) 21:48:39 ID:PovmwBaD0
>鬼と人とのワルツ
おお、結構うぷして頂いてありがとうございます。(確か受験か就職でしたよね?)
確かにバキは響鬼に近いレベルの強者だし、勇次郎にいたっては鬼そのものですしね。
スカウトも当然かあ。化け物だし。でもいずれ、響鬼とも戦うんでしょうね。



>素晴らしい国
元ネタの漫画は何でしょう?すごく気にかかる。
旅立ちの緊張感と、それでも出発する爽快感がよく現れてますね。
キノの少女としての怯えと、少女の中の少年の勇気。
また、何かできましたらうぷお願いします。

74 :作者の都合により名無しです:2006/09/27(水) 22:23:54 ID:tdJsboQU0
>ワルツさん
あぁ、たしかにバキなら改造人間と見られてもおかしくないかw
魔化魍とガチでやりあえてたりする生身の人間がいたら、さしもの響鬼さんや
天下のおやっさんも驚くだろうしなぁ…

個人的に、斬鬼さんあたりとバキのからみが見てみたい
彼はいい人生の教師だし

75 :作者の都合により名無しです:2006/09/27(水) 23:07:44 ID:ZszcZehI0
>ワルツさん
改造人間バキなら裕次郎とやりあえるかなあ。そろそろバトルがみたいな。
響鬼って知らないけど、仮面ライダーだよね?なんか正義の味方っぽくない名前w

>新人さん(こんにちわ!)
うーん。長編のオープニングに相応しい書き出しと思いますがね。読み切りか。
冒険前の不安と希望が、少女の胸にごちゃまぜになってるのがよくわかります。
俺ももとのネタわからんな。誰か教えて。

76 :作者の都合により名無しです:2006/09/27(水) 23:09:29 ID:F5kz9hAq0
ラノベの「キノの旅」?

77 :作者の都合により名無しです:2006/09/27(水) 23:11:10 ID:7rR+C0uv0
『キノの旅』がくるとは思わなかったw
原作に混じってても遜色ないんじゃないか、これ。

78 :作者の都合により名無しです:2006/09/27(水) 23:13:32 ID:tdJsboQU0
>>75
仮面ライダー響鬼(かめんらいだーひびき)
2005年度の仮面ライダー
おそらく平成ライダー中、クウガとならんで一・二を争うほど健全な主人公像と
熟達した演技者陣営による厚みのあるドラマ展開が児童層以外にも人気を博した
が、1〜28話までの回とそれ以降の回でガラリと作風が変わってしまったので
「響鬼は全29話」を主張する人間多し

>>73
>>76氏もいうとおり、ライトノベル「キノの旅」だろう

79 :ふら〜り:2006/09/27(水) 23:26:13 ID:DblqzlsD0
>>17〜さん(何であれ早期発見・早期完治が肝要。くれぐれも侮られませぬように)
ここんとこ続いてる、ガロウズの冷酷残虐さアピールシリーズ……とうとう、ザンに牙を
突きたてましたか。一方的にいたぶりつつも、サディスティックなだけでなく戦闘能力の
高さも魅せてる。腕一本あっさりスッパリってシャレになってませんてば。エグく凄い。

>>一真さん
ジャンプだの編集だのといった単語を聞くと、ギャグパートの匂いが少し戻った感じです。
作家×編集って表記は少々思うところありますが、でもこの二人も巻き込んでまた新選組
絡みのシリアス展開かと思って読んでたら宇宙海賊っ? この先、一体どこへ向かうやら?

>>サナダムシさん
面白いとか感動とかいうより、満足です。ここまでタメにタメたものが見事に昇華されて。
>……良かった。私の目も節穴ではなかったんですね
そこいらの甘々カップルにゃ真似のできねぇ、この二人ならではのこのカッコいい空気!
故にこの二人のキスシーンは独特に素敵でした。加藤の凱旋、井上と一緒に待ってますっ。

>>ワルツさん
流石は響鬼さん、鋭く見抜いているようですな。刃牙の本質。でもワルツさんとこの刃牙は
いい子ですから、心配いらないでしょう。正直、明日夢よりずっと強くて優しくて勇敢で
文句なしだと言いたい。にしても楽しみだなぁ刃牙vs鬼。誰と、どの音撃と、どんな風に?

>>キノさん(ほんとにプロローグっぽいですね。気が向かれましたら、ぜひ続きを)
私も原作は未読ですが、ほとんど会話とモノローグだけでこれだけ内容があるというのは
なかなか。原作の世界観の厚さと、キノさんの技量ですな。雄の射精後の満足感は、雌を
護る為の戦闘準備で……とは生物学的見解。雌でなく女性としてはそう簡単にいかない、と。

80 :作者の都合により名無しです:2006/09/28(木) 01:27:04 ID:TV/K0qgw0
キノの旅…か
SS読んで興味出てきたな。一度読んでみるか。

81 :AnotherAttraction BC :2006/09/28(木) 09:37:01 ID:366iRWab0
前スレ144から
―――爆発より約三時間前。

イヴは涙の跡を貼り付けたまま人の溢れる大通りを歩いていた。
周囲に溢れる何一つ、心の暗雲を晴らす事など無いと知りつつも彼女はそれを求めてただ歩く。
その間も、スヴェンの言葉が幾度も幾度も木霊し、彼女の心を責め刻む。
……どうして…?
心の中の今先刻の彼に、無駄を承知で問い掛けた。だがやはり答えは返って来ない。ただ冷たいリフレインが寄せては返す波の様に
突き刺さるだけだ。
…ひとりぼっちは嫌だよ……
『………俺達の旅には連れて行けない』
『…お前は絶対に死ぬ…』
『これがお前の限界だ、イヴ』
問うと返って来るのは決まって残酷な拒絶。それしか無いのはそれ以上聞かなかったからだ。
ならば訊きに行くか? ともすれば或いは、笑顔で悪ふざけを詫びてくれるかもしれない。もしかしたら変心するかもしれない。
―――だが、現実は飽くまで冷たいのだ。そんな事は有り得ないと、彼女自身が一番弁える事ではないか。

イヴは雑踏の中で足を止めた。それでも周りは歩みも談笑も止めようとはしない。
独りだ。何処までも独りだ。
見渡せば其処には家族連れが居る。または友達同士が居る。或いは恋人同士が居る。周囲の誰にも分かち合える仲間が居る。
その中で、たった一人の自分は世界にすら取り残された様な気分だった。
…また、俯く眼から涙が零れ落ちた。…一つ、二つ、三つ………そして後は雨の様に。
何をどうすればいいのか判らなかった。この底無しの寂寥感を前に、寂し過ぎる諦観を持て余すより無かった。
この深い孤独、かつては世界はこうだと諦めていたから耐えられた。
しかし今は、そうでは無いと知った。暖かいものも有った、優しいものも有った、心惹かれるものも有った。
それを知ってしまったから、最早この寒風に耐える事など出来はしない。
『……足手纏いは要らない』
また言葉が、鋭く突き刺さった。
スヴェン……わたし、要らないの………?
絶望の悪循環が、彼女を更なる思考の暗闇へと引きずり込んで行った。

82 :AnotherAttraction BC :2006/09/28(木) 09:37:56 ID:366iRWab0
「…………お嬢ちゃん、迷子か?」

突然の呼び掛けに気付くと、髭面の大男が体を縮めてイヴを覗き込んでいた。
服装を見るに、そこいら中で店を構える屋台の店主の一人だと言う事が見て取れる。
「…え……」
「父ちゃん達とはぐれたか? 全く、祭りの時は子供の手を離しちゃいけねえってえのに……」
そう言ってイヴの手を引き、近くの警備員の所に引っ張って行こうとした。
「………え…あ、あの……その、ちょっと……」
「ま、なーにすぐ見付かるから安心して………」
「………い…いえ、その……違います!」
先刻の心象も忘れ、慌てて見識の違いを男に告げる。
「んあ?」
「あの……別にわたし迷子じゃないです」
実際この街の地理は地図を見ただけで完璧に物にした。確かに当て所無く彷徨ったが、此処からでもマリアの家まで普通に帰れる。
その気になればスーパーコンピュータ以上の働きが出来る頭脳に、迷うなどは有り得ない。
「ん〜? そうか。なら何だってまた泣いてんだお嬢ちゃん?」
「……あ」
事情を知らぬ為遠慮抜きの質問に、彼女はまた表情を陰らせた。一瞬忘れたあのどうしようもない感覚がまた彼女の胸に押し寄せる。
だがその沈み込む彼女を見て、
「…お嬢ちゃん、ちょっと此処で待ってな」
そう言い残して男は彼女から離れると、串に刺した焼き林檎を幾つか握って戻って来た。切った林檎の表面に香ばしく
焼き付けたカラメルが、実に食欲をそそる香を放つ。
「ほれ」
と、握らされたそれは、どう見ても男の屋台で売っている物だ。
「あ……あの…」
「あー、良い良い金なんざ。持ってけ持ってけ。
 ……何処の悪ガキに苛められたか知らねえけどよ、可愛いんだからしょぼくれてんのは似合わねえぜ」
目線を彼女の高さにし、笑顔で彼女の頭を撫でた。
事情を勝手に解釈したらしいが、それでも其処には彼女の哀感への優しさが有った。

83 :AnotherAttraction BC :2006/09/28(木) 09:38:48 ID:366iRWab0
「お嬢ちゃん、これも持ってけ」
男とは別方向の声に振り向くと、似た様な服の若い男が焼き菓子を突き出した。そしてそれを皮切りに、あちこちの暇になった
屋台から人種も性別も年齢も様々な店主達が当惑する彼女に売り物を次々と寄越した。
どうやら一部始終彼らの見る所だったらしく、その全てが彼女の消沈の様を慰めてやりたくて斯くなる事態に及んだのだ。
……間も無く彼女の手の中には、抱え切れないほどのお菓子が花束よろしく大挙した。
「…いやー、ゲンさんがこの娘に声掛けてる時はあたしゃ年甲斐も無くナンパかと…」
「かみさんに黙っとく仲にゃ若過ぎねえか?」「ひゃはは、違え無ぇ」
「こきゃあがれ馬鹿共。俺みてえな善人に下心が有る訳ゃ無えだろうが」
そして割れんばかりに笑い出す彼らを前に、イヴはどうして良いか判らなかった。しかしそれは決して焦燥や困惑とは縁遠い。
根本的なものは拭えなくとも、間違い無く彼らの一助は彼女の胸に暖かだった。
「ま、腹も一杯になりゃあそう泣くほどの事でも無えって判らあな。良くは判らねえが気にすんな、な?」
そう言って頭を撫でると、彼らはそれぞれの屋台へと帰っていく。
「あ………あの!」
その背中を、イヴは今出来る限りの精一杯の元気で呼び止めた。
「………本当に…本当に、ありがとうございます!」
それを見た彼らは、皆一様に笑ってその場を後にした。

「………お姉ちゃん! ―――…って、うっわ何それ!?」
ようやく彼女を見つけたシンディは、その腕一杯に抱えられた菓子に驚いた。

84 :AnotherAttraction BC :2006/09/28(木) 09:39:32 ID:366iRWab0
「――――――そっかあ…美人ていいなー」
手近の植え込みの縁に腰掛け、同様に座るイヴの手から菓子を取りながらシンディは羨ましそうに呟いた。
だがイヴの貌は余りその事を喜んでいる風には見えない。彼らの笑顔が一過して、また本来の苦悩を思い出したのだ。
「……お姉ちゃん、気にしなくていいと思うよあたしも。
 おじちゃんちょっと意地悪しただけかもしれないもん」
彼女の様を見たシンディが何とか慰めようと幸せな想像をするが、イヴにはそれが所詮想像止まりだと言う事を心得ていた。
「……あ…あのさ、良く判んないけどさ、おじちゃん酷いよね。お姉ちゃんの事悲しませてさ、ごめんの一言も無いんだもん。
 あれじゃ女の子にもてないよねー」
無理して気遣うが、やはりそれには何の効果も無い。
「それにママもさー、お姉ちゃんの味方してくれてもいいと思うのに……」「シンディ」
続く筈のシンディの言葉を、イヴが急に断ち切った。
「……シンディも、知ってたよね。スヴェンがああ言う事」
「え…?」

話題の矛先が自分に向かってくるとは思わなくて、彼女は動揺を露わにした。
「あ…と、その……何? お姉ちゃん」
「ううん、別に責める訳じゃ無いから安心していいよ。ただ、教えて。
 何でシンディは、三日も前に知ってたの?」
それを言われてシンディは硬直した。イヴの言うのは紛れも無くオリガミに興じていたあの部屋での事だ。

『おじちゃんはお姉ちゃんの事が好きだから……嫌わないでね』

ついうっかり洩らしてしまったその言葉を、イヴは憶えていたのだ。
今度はシンディの表情が沈む。二人がこうなると、流石に領域そのものが一気に落ち込んだ。
だが、決心した様に溜息一つ吐くとその顔のままイヴを覗き込んだ。
「……お姉ちゃん、実はねあたし…ママにも秘密にしてる事があるの」
一句一句念を押す様に話す彼女を見て、かなり真面目な話であろう事が窺えた。
「…パパが生きてたときにね、言われたの……」

85 :AnotherAttraction BC :2006/09/28(木) 09:45:12 ID:366iRWab0
昼前の公園には、秋晴れの清々しい太陽が季節を移りゆく木々に名残の陽光を降り注いでいた。
はらはらと歩道に舞い落ちる木の葉は、花弁や雪の趣と違って全てをノスタルジックに彩って行く。
「パパ、こっちこっち!」
その木の葉を蹴飛ばして、小さく元気な足音が更に元気な声でゆっくりと歩いてくる青年を呼んだ。
細君に「偶には私の苦労を味わって見なさい」と娘を押し付けられたロイドだったが、愛しい娘と一緒のこの時間に
苦労など有る訳が無い。寧ろ彼女の小動物の様な可愛らしい躍動と生命力溢れる仕草に、殺伐とした世界に傷付けられた心が
癒されていく様だ。
そんな風に心を風景に漂わせていると、不意に子供の泣き声が耳に入った。
シンディか? と思い目を向けると…………彼女は明らかに年上であろう少年を、先端に毛虫がぶら下がった小枝で追い駆け回していた。
「うわああぁぁ! 何やってるんだシンディ!! 止めなさい、早く!!!」
そしてその少年の両親に平身低頭していると、今度はパンダ模様に塗られた野良犬が急き立てられる様にロイドの横を駆け去る。
その後を追うのは有ろう事か、からからと笑いながら複数のマジックを握る愛娘ではないか。
「な…」
少年の両親と共に、水飲み場を中心にぐるぐる回る一人と一匹を唖然としながら見入っていると……如何にもな不良達が
年不相応に肩で風を切ってぞろぞろとやって来た―――――が、
「……お……おい、アレ…」
と、一人が震える指でシンディを示す。
それに気付いたか、彼女は犬とのトラック競走を止めて彼らへと振り向いた。
「にっ……逃げろ―――――ッッ!!!」
その中で一番大柄で悪そうな少年が、叫ぶや血相を変えて元来た方へと駆け出した。他の仲間達に到っては殆ど転びそうになりながら
逃げる有り様だ。
…一体、何が……ッッツッ!!!
もう唖然どころではない、ロイドは嫌な汗が湧くと同時に膝から力が抜けて跪いた。その彼の肩に、少年の父親が優しげに手を置く。
「…気を……落とさないで下さい」
詫びるべき相手にすら慰められ、ロイドはもう泣きたい気分だった。

86 :AnotherAttraction BC :2006/09/28(木) 10:04:28 ID:366iRWab0
改めて散歩を再開すると、今度はしっかりと手を繋いでいた。
シンディは不自由さにいまいちご機嫌斜めだが、彼女の無茶苦茶な行動力を目の当たりにした今となってはこの手を離せなかった。
……マリア、この娘は全く以って君の子だよ…
心の中で呟きながら長嘆息する。普段仕事の所為で余り構ってやれないが、その普段の彼女を知りたいようでも有り知りたくない
ようでも有り、ともあれ間違い無くマリアはこの愛嬌溢れる危険物に手を焼いているであろう事が判る。
やっぱり男親がしっかりしていないといけないのかなぁ…とぼんやり思案していたその時、
「ねえパパ、おねがいがあゆの」
シンディがいきなり袖を引いてロイドを呼んだ。
「だぁ〜め、悪いけどしばらく離してあげない」
「ちがうの。ちょっとしゃがんれ」
意外な事に彼女は、自由になりたいのではなく別件を提示した。
「…何で? 何か有ったのかい?」
「ないしょのおはなし。らからみみかして」
言いながら自由な片手を口に添えてロイドを見上げた。
初めこそはこれもお転婆の一環なのではないかと思ったが、自分の娘をこれ以上警戒するのは流石に宜しくないと思ったのだろう。
仕方ないな、と彼女に耳を傾けた次の瞬間、

―――ロイドの頭が一瞬前まで有った空間を、硬球が通過した。

「な……ええ!?」
「す…っ、済みません! 大丈夫ですか?」
キャッチボールの最中だったのだろう、グローブを左手に付けた少年が詫びながら駆け寄って来た。
だがロイドの頭の中では、その少年に応じながら全く別の事に思考を巡らせる。
………まさか…
それが形になっていったのは、目端で見下ろすシンディが明らかに安堵しているからだった。

87 :AnotherAttraction BC :2006/09/28(木) 10:13:09 ID:366iRWab0
「…あたしね…少し先のことがね、見えるんだ…」
父親譲りの光が零れる様なライトブルーの瞳が、僅かにくすんで見えた。
「だからパパ、居なくなる前にあたしに言ったの。
『この事は誰にも、ママにも言ってはいけない。
 でも、もしどうしても言わなくてはならない時が有ったら、これだけは守って欲しい。
 信じて絶対に後悔しない人にだけ話す。いいね?』
 ……って」
ああ、とイヴも得心した。
確かにそんな能力が人に知れれば、利用しようとする胡乱な輩は老若男女問わず世の中ごまんと居る。自身がそうであった様に、
自分以外の命が物にしか見えない連中には、異能は忌避でも嫌悪でもなく利潤と映るのだ。
「…だからごめんねお姉ちゃん、あんまり先のことだとどうしていいか判んないんだもん」
それについても責める気にはなれなかった。
多分は彼女なりに何とかしたいと思ったのだろうが、何時だか上手く判別し辛い一コマを見ただけではその状況になるまで判るまい。
あのカフェで、スヴェンの台詞に先んじて席を立ったのはそう言う事だろう。
「……良かったの? わたしに話して」
だからこそ訊いた。
勿論イヴにシンディを利用するつもりなど無いが、斯様な大事を云わせたのは他意無くとも彼女の言葉だ。
「うん」
しかしシンディは、秘事を告げた様には見えないはっきりとした首肯を示す。
「え……どうして?」
「だって、お姉ちゃんだったら信じてもこーかいしないもん」
疑念など微塵も含有しない、新雪の如く純真な微笑だった。

88 :AnotherAttraction BC :2006/09/28(木) 10:21:43 ID:366iRWab0
その二人の会話を、マリアは遠くから見ていた。
会話そのものが聞けるほど彼女の聴覚は鋭敏では無いが、唇を読めば事足りる。
娘の意外な秘密に少々驚いたが、それも夫の不思議な捜査力を照らし合わせれば十全に到る事だった。
…だからか。本当に貴方の娘なのねぇ、あの娘
少し寂しい気もしたが、ロイドが娘に緘口令を敷いたのは決して悪気が有っての事では無い。寧ろ不都合やトラブルから家族を守る為の
甘すぎるほど優しい彼ならではの配慮だろう。
それにしても、もし会話に不具合が出たら出張ろうと思っていたのだが、娘の勇気付ける様を見て彼女はその機を失していた。
今のイヴに欲しい物は理屈や損得では無い、誠心誠意の優しさとそれを伝える裸の心だ。そのどちらもシンディに用意されては、
哀しいかな出る幕が無い。仕方なくスヴェン達の所へと戻る事にした。
「全くもう…損な立場ね、母親って」
少しの失望と暖かい喜びが、つい唇を動かした。
ついこの間まであんなに小さくて手に負えなかった我が家の可愛い怪獣が、知らない内に人を気遣う優しさと不条理に怒る正義感を
しっかりと身に付けて、それを他者の為に存分に発揮しているのを見ると、胸の奥が柔らかく疼く。シンディが今こうしているのは、
生まれる前からその後まで、彼女への二人分の愛が満ちていたからだ。
「…寂しいわロイド、私からあげる物が本当に少ないんだもの」
見上げる夜空にはロイドの微笑が見えた―――…などと言う事は無い。でも、こちらからの笑みは向こうに届く様な気がして
マリアは夜空に微笑んだ。
―――――その彼女の横を、小柄な影が通り過ぎた。
足音は強くも無く弱くも無く、しかし先をしっかりと見据えた足取りだった。そしてその先には、談話する二人が居た。

89 :AnotherAttraction BC :2006/09/28(木) 10:29:33 ID:366iRWab0
「まだ会って一月もたってないけど、それでもお姉ちゃんがどう言う人なのか判るもん。
 …お姉ちゃん。あたしもね、お姉ちゃんのこと好きだよ」
子供らしい言葉だが、真摯な眼差しでイヴを見詰めた。
人ですらないこの身を人と言う彼女に、少しずつ――――…本当に少しずつではあったが心の黒い泥濘が洗われて行く。
「あたまが良くて、美人で、子供っぽくて、傷つきやすくって、そんなでもあたしのこと気づかってくれるお姉ちゃんが好きだよ。
 そんなにあたまが良いのに、オリガミとかお祭りとかではしゃいでるお姉ちゃんが好きだよ。
 『好きか?』って言われて、出し惜しみしないで好きって言えるお姉ちゃんが好きだよ。
 ………あとね…」
突然シンディは目を背け、少し口ごもる。
「あとね……たぶん…」
すると意を決した様に改めてイヴへと向けた貌は、酷く紅潮していた。
「たぶん……たぶんね………あたしと同じひとのこと好きなお姉ちゃんが、あたしも好きだよ!」
…やはり気付いていたのだ、イヴの意中の人が果たして誰か。
その勢いに乗ったか、彼女の話は或る意味無茶な方向へと加速する。
「でももうおじちゃんは嫌い! お姉ちゃんのためとか言いたいんだろうけど、あたしはぜったい許さない!
 だからもうおじちゃんは、お姉ちゃんの『どれー一号の刑』にけってい!!
 もし逆らったら、いつでもあたしに言ってきていいから! ぜったい「うん」って言わせてあげるから!!!」
そのまま鼻息も荒く一気に言い終えた。
そして当のイヴはと言うと、彼女の口勢に驚いたか固まったまま彼女に見入っていた。
だが―――――――しばらくすると、イヴの貌が氷壁が解け崩れて行く様に綻んで行く。

「…『一号』って………二号三号って居なくちゃいけないの?」
笑み崩れたイヴに便乗し、シンディもまた得意の満面で応じた。
「もっちろん!! 女の子はみんな『じょおーさま』だから、どれーだったらいっぱい居ていいの!!!」
親指まで立ててしかと意思を示した。
―――しかしイヴは知らない、彼女がスヴェンから身を引いた事を。
スヴェンが誰かの物になったらイヴが一人ぼっちになる事を、消沈の様で知ってしまった以上そうせずに居られなかった。
だがそれを完全に封じ込め、シンディは元気いっぱいにイヴを励ました。
気付きはしない、だがその献愛は確かにイヴを癒していった。

90 :AnotherAttraction BC :2006/09/28(木) 10:30:13 ID:366iRWab0
「…有り難うね、シンディ。お陰で少し楽になったよ」
「えへへ〜、そう? じゃあこれからしょんぼりの時はあたしにおまかせだね」
二人はにこりと微笑み合う。自分への慰めと相手への慈しみで。
情愛は多くの場合無益だ。しかし、だからこそそれは人の営みの中で評価され、讃えられる。美しいと形容されるのは実にそれだ。
人である事の証明など、誰にも完全には出来ない。だがそれに限り無く近いと言うなら、この二人の様な他者への情義かも知れない。
…と、不意に今までの奮迅をぶち壊しにするタイミングで、イヴのお腹が小動物が鳴く様な音を立てた。
「なんだお姉ちゃん、ぜぇんぜん元気じゃない」
少し底意地悪げな指摘に、イヴは頬を染めた。
泣いても枯れても腹は減る。しかも両手一杯に出来立てのお菓子を抱えているのだから、ひもじさは一塩だった。
「…とってもおてんばさんなシンディほどじゃ無いけどね」
「あ、ひどい。そう言うこと言うわけ」
イヴの反撃に、シンディは口を尖らせる。
だがすぐにその応酬も解けて二人は笑顔を見合わせると、そこにまるで暖かな日が差す様に、彼女達は全ての気負いを忘れてくすくすと
感情を声にして聞かせ合った。
――――――――…しかし、日は陰る為に有るのだ。

「……おい」
何処か陰鬱な響きに、少女二人は声を止めてその方向を見た。
其処に居たのは一人の少年。イヴと歳は同じ位だろうが、妙に重い空気を漂わせている。
一瞬シンディの知り合いかと思い彼女を見るが、彼女は首否で応じた。当然彼は、イヴの知り合いでもない。
「…お前がイヴ…だよな?」
誰何をするも、どうも彼の言葉は歯切れが悪かった。
「オレは………リオン=エリオットって言う」
自身の問いの返答すら待たず、彼は勝手に話を進めて行く。まるで何かに急き立てられる様に、言わなければ止まってしまうとでも
言いたげに。その居辛そうな言い辛そうな不思議な雰囲気に、二人は不信の目を強めていった。
しかし事態は、彼の次の台詞で一変した。

「……星の使徒の…道士だ……」

91 :AnotherAttraction BC :2006/09/28(木) 10:30:57 ID:366iRWab0
今まで消えていた筈の痛み、そして恐怖。それがイヴの中に一瞬で甦る。
『おぉ―――っとぉ、痛ェか? でもオレが悪いんじゃねえぜ』
『…どんだけブチ込んだら死ぬのか、見せてくれ』
『………もういいかぁ、死んどけ。
 無駄な時間過ごさせやがって……頭どころか上半身丸々消してやるぜ。ほれ、この世の見納めだぞ』
銃声、撃鉄、悲鳴、銃弾、鮮血、嘲弄、激痛、暴悪、死の恐怖――――
何もかもを思い出した証拠に腕一杯の菓子が地面に散らばり、貌は恐怖に強張り、手足は意に反して震え出す。
「…お姉……ちゃん…?」
急変のイヴにシンディが問うも、彼女は答えず座っていた植え込みからよろめく様に立つ。
「…い…」
慄然を全身で示すイヴの口から、言葉にならない声が零れた。そして、
「……嫌ああぁぁ―――――ッ!!!」
絹を引き裂く悲鳴を従え、彼女は少年とは逆方向に走ろうとした。
だがそれより速く、少年の手が僅かに遅れた彼女の手を慌てて捕まえた。
「…まっ……待てよ! 待てって! 待ってくれよ!!! オレ、そう言うつもりで此処に来たんじゃないんだ!!」
彼女を渾身の力で引き止め、少年は何とか説得の態で切り出した。
「…オレ……オレ…お前に謝りに来たんだ!!!」
その言葉に、イヴの必死の抵抗は止まった。
「…え………?」
「デュラムの事、ホントに済まなかったと思ってる。オレがもうちょっとしっかりしてたら、こんな事にしなかったのに…
 ホント………ご免な」
少し気を落ち着けて、改めて見た彼の貌は、深い謝罪に彩られていた。

92 :AnotherAttraction BC :2006/09/28(木) 10:54:52 ID:366iRWab0
先生…そろそろバトル、書きたいです(挨拶)。
今年に入って最高のベストバウトは、バイオ4のレオンとクラウザーのナイフ戦なNBです。
…いやほんと、イッペンで良いからあんな華麗でスタイリッシュな戦いを書いてみてえもんです。

さてさて、遂に始まりました第十一話「火蓋」。
しばらくジャリの話ばっかりだったので、俺の中から大人分が欠乏しています。誰かお助け。
ともあれ、次回よりとうとう吹き荒れる戦火を前に、一行は果たしてどう立ち向かうのか。
そして迫り来る強敵達をどう切り抜けるのか!?
甘言に戸惑うイヴは!? 孤立無援のスヴェンは!? そしてこの開幕の意味は!?

次回、AnotherAttraction BC第十一話「火蓋」を、乞う御期待!!

………って、前回やりたかったなァ。ま、今更なんですが。
と言う訳で、今回はここまで、ではまた。

93 :作者の都合により名無しです:2006/09/28(木) 12:48:02 ID:q1X7NzBR0
お疲れ様です、NBさん!

イブみたいな美少女なら変質者とかに襲われそうで危ないけど
(まあ、返り討ちにされるでしょうが)
テキ屋の人たちがいい人たちで癒されましたな。
シンディはシンディで心に傷と秘密がある。2人とも救われるといいな

いよいよバトルが近そうだ!

94 :作者の都合により名無しです:2006/09/28(木) 15:50:28 ID:7xNabfTm0
NBさんキターーーー!

イヴが愛らしくていじらしいな
子供同士のほのぼのとした感じが癒される。
最後も、最初はバトルの始まりかと思ったけど
ちょっとほっとした。
でもやっぱりそろそろ激闘がみたいな


95 :作者の都合により名無しです:2006/09/28(木) 19:52:21 ID:SmIzBXeo0
NBさんお疲れ様です。
バトルのうまさは定評あるNbさんですが、こういう優しい感じの描写もうまいですね。
うまい人は何でも出来るなー。うらやましい。
セフィリアファンですけど、このパートでは出番無い感じですねw

96 :永遠の扉:2006/09/29(金) 00:30:02 ID:EDjqTaIo0
第4話
「ザ・ブレーメンタウンミュージシャンズ」

彼女は知った。
いかに気をつけて行動していても、偶然や他者の恣意、あずかり知らぬ慣習がそれを打ち
崩すコトがままあると。
失敗。
綿密に練った計画ですら状況の如何によってはそちらへ触れる。
反射的にとった言動ならば、なお。
幸い大きな綻びには至らなかったが……軽挙妄動は慎むべき。
彼女は、潜入生活の始めにそう学習した。

「全く。まひろといいあなたといい、門限を破るなんて」
「ごめん千里ちゃん」
「? 珍しい。私をあだ名で呼ばないなんて」
「あ、えと。あちこち歩き回って疲れてるせいかな。あはは。まひろみたいについ忘れてて」
「ホントに疲れてるみたいね。まひろまであだ名で呼ばないなんて…… ブラボーさんに謝っ
たらすぐ寝なさい。夏休みだってもうすぐ終わるんだから、そろそろ生活のペースを戻さない
と新学期から大変よ。沙織」
「うん。分かってる」

失礼します。失礼しまーす。

貞淑な声と元気な声と共に、寄宿舎管理室の扉が開いたのと。

扉を開いた2人の人物のすぐ目の前で、妙齢の美人──楯山千歳が瞬間移動を完了した
のは全くの同時だった。

突如現われた謎の人物に、4つの目は釘付けだ。
黒いおかっぱ頭の、優等生じみた眼鏡の少女は息を呑んで。
黄色がかった髪を頭の両側で縛った幼い顔立ちの少女は、興味津々に。
UFOやUMAに対するような神妙な視線をひっきりなしに注いでいる。

97 :永遠の扉:2006/09/29(金) 00:30:35 ID:EDjqTaIo0
「あー……何というかだな。若宮千里、河合沙織」
キャプテンブラボーこと防人衛は、部屋の中央で気まずそうに頭をかいた。
年は20代後半。黒いボサボサ頭に無精ひげのがっしりした体格の男性だ。
彼が「戦士長」という指揮官役職にあるのはすでに述べたが、それは銀成市での生活におい
ては裏の顔。
表立っては銀成学園の寄宿舎の管理人を務めている。
千歳は彼を手伝う形で寮母として働く段取りなのだが、しかし、のっけから戦士としての正体
を生徒に晒してしまった。
「大丈夫。武藤クンと同じ戦士の人だから。でもなるべく他の人にはヒミツよ。ね?」
桜花はちゃぶ台の前で行儀よく湯のみを持ちながら、柔和な笑みを浮かべた。
「というコトですから、あまり心配はありません」
さすが生徒会長だけあって、場をくつろげるのは上手い。
少女たちが安心したのを見届けると、今度は千歳に笑いかけた。

「明日からしばらくここで寮母を務める楯山千歳です。宜しくお願いします」

見えざる流れに千歳は乗せられ、無表情ながらもごく自然で滞りのない挨拶をしてしまった。
しながらも部屋を観察し、1つの疑問を抱いていたが。

ちなみに千里同伴による沙織の門限破りについての話は滞りなく終わった。
で、彼女たちはめいめいの部屋に戻った。
途中、沙織は携帯電話片手で妙にかけたそうな顔をして、千里にまた少し怒られたりもした
が、それはごく普通の日常の光景でもあり、別段特筆には及ばない。

管理人室は4畳半ほどのこじんまりとした作りだ。
これといった装飾は特になく、あるのはロッカーや黒板、湯沸かし器に流し台、ガスコンロと
小さな冷蔵庫、子機付きの電話など、ごくごく事務的な物ばかり。
部屋の中央に置かれたちゃぶ台に置かれているのも、皿に入ったせんべいや2つの湯のみ
と非常に質素だ。
そのちゃぶ台の前で、千歳は向かい側の桜花を見た。
「単刀直入に聞くわね。あなた以外にエンゼル御前を使える人に心当たりは?」
──この前日。

98 :永遠の扉:2006/09/29(金) 00:31:32 ID:EDjqTaIo0
千歳は戦闘の中で見た。彼女ともう1人を密やかに監視する影を。
桜花の武装錬金、エンゼル御前を。
それは発覚と同時にかき消えたが、戦闘を影からかき乱していた『第三者』の使役せし物
とは想像に難くなく、千歳がそれを手がかりに桜花の元を訪れたのも無理のない話だろう。
桜花は即答した。
「あります。彼の名前は総角主税。武装錬金の特性は」

限定条件下における、他者の武装錬金の使用!!

(条件は2つで、どっちかを満たせば使用可能なのです。1つは、武装錬金を見るコト)
霧が充満する大部屋をうろうろしながら、小札零は考えていた。
(でもそっちの威力は安定性に欠けますゆえ、万能無敵とまでは。対象となる武装錬金への
印象度や創造者との相性、記憶の新旧に性能が左右されるのは困りモノ)
彼女はロッドの先っぽで床をかりかりしながら、20mほど先で戦う人影をぼけーっと見た。
(おねーさんはなかなかお強い。見ただけの武装錬金では圧倒に少し届かずといった態。
やはりもう1つの条件でいくのが得策でありましょう)
斗貴子は果敢にも、バルキリースカートの可動肢のみで戦っている。
処刑鎌は分割されているから、頼みは間接部についたトゲだけだ。
にもかかわらず斗貴子の気迫は充分で、濛々の霧を裂きつつ総角を後退させていく。
「こういう時こそ焦りは禁物。しばらくじっとするのが吉」
小札は手を一振りした。
手中に現われたのはトランプ。ハートのクイーンだ。
「トランプ占いもそう告げておりますし、ここは不肖の武装錬金を発動するに留めましょう」
そして、登場時から手にしていたロッドをトランプにかざす。
トランプは得体の知れない長方形の金属片に変じ、ピンクの光を放ち始めた。
「これでこちらに来るはず。ちなみに」
縁から滲む光は、風になびく煙のようにゆらゆらとしていたが、とある一点に向かって静止した。
「探すのをやめた時、見つかるコトも良くある話で」
霧が収束していく。戦う2つの影めがけて。
小札は斗貴子と思しき人影を遠巻きに眺めながら、にこりと口を綻ばせた。
「踊りましょう夢の中へ。行ってみたいと思いませんか?」


99 :永遠の扉:2006/09/29(金) 00:33:53 ID:EDjqTaIo0
寄宿舎の管理人室。防人は難しげな表情だ。
「ところで千歳。桜花の話を聞きながらでもいい」
防人は話に割り込むと、難しい顔をした。
「戦士・斗貴子の様子を見てくれないか? 定時連絡がないのが気に掛かる」
千歳は頷き、六角形の楯を再発動すると軽やかにペンを動かした。
だが。
「映らないけれど、恐らく接触しているとみるべきね」
ヘルメスドライブの画面は、「ジグジグジグジグぶっ殺す」などの汚い言葉に埋め尽くされて
いる。
「昨日も霧のせいで、同じ現象が起こっていたから」
防人と桜花は顔を見合わせた。
「霧……チャフ(レーダーを撹乱する金属片)の武装錬金か」
「そういえば」
花びらを塗りこめたような桃色の唇に手を当てて、桜花は呟いた。
「彼がもっとも得意とする武装錬金は、アリスインワンダーランド……」
「既に交戦中だとすると、間に合うか?」
唸る防人の横で、桜花は首を捻った。
(でもどうして? 彼はアリスインワンダーランドの特性を2つ同時に扱うコトはできない筈。
津村さんと戦っているなら、方向感覚の撹乱を使う筈。でも、いま使っているのは電子機器の
遮断の方……? 変ね。まるでこの人が)
千歳を見ながら思う。
(レーダーの武装錬金を持つこの人が、寄宿舎、いえ、銀成市に来たのを知っているような──…)

影が飛び退いた。
大部屋と、斗貴子が入ってきた細い通路のちょうど境界線のあたりに。
影は総角。しなやかに着地し距離を稼ぐと、胸の認識票を握り締つつ深く息を吐いた。
「これ以上長引けば、双方共に命が危ない。本領を発揮させてもらうぞ」
辺りを素早く見回した斗貴子は、異変に気づく。
立ち込めていた霧が、自分を中心に収束しつつあるのを。
歯噛みしながら総角を執拗に狙うが。
「もう遅い。捉えた」
斗貴子の周囲で毒々しい光が瞬き、彼女の視界を燦然と灼いた。

100 :永遠の扉:2006/09/29(金) 00:34:46 ID:EDjqTaIo0

黒板に血飛沫が飛散し、描かれていたもの全てを洗い流す。

覚えてないの?

掃除道具入れの隙間を気取られないようそっと閉めたのは、男の子の首が爪に引き裂かれ、
皮一枚で肩にごろりと乗った時か、泣きじゃくる女児が生きながらに腹をさばかれ、内容物
と血の滴る腸をうじゃらうじゃらと啜られ始めた時か、いや、大人しげな同級生が突然隣の
席の生徒に手をかざして消滅させ、教室が沈黙に包まれた瞬間だったか、逃げようとした生
徒達の前に怪物が群れを成して出現し、教室に生を求むる叫喚が木霊し始めた頃か。

遠くから轟然と土砂の音が響き、激しい揺れと共に視界はブラックアウト。
だが間髪いれず、手に枷をつけた大人しげな眼鏡少年のアップに切り替わる。

  ホラ一緒に日直してた 同級生の西山

……知

知らない…… 来ないで……

凄まじい悪寒と混乱にひりつく中、顔の中央に鋭い痛みが走る。
冗談のように熱い概念が視界にしぶき、新たな自分を創っていく。

赤い。

赤い。

真赤な誓い。

「さすがだな。この状態で攻撃を仕掛けた相手は初めてだ」
刃なきバルキリースカート。
ゼンマイの切れたおもちゃの兵隊のように力なく3歩進んで静止した斗貴子。

101 :永遠の扉:2006/09/29(金) 00:35:24 ID:EDjqTaIo0
だが、悪夢の中でなお、攻撃を行っていた。
むしろ悪夢に捕らわれているからこそ、その中の戦いをなぞれたともいえるが。
右の肩口と左の二の腕、胸の中央。
総角が可動肢に薙がれた位置だ。
「だが克服は困難。密集状態のアリスインワンダーランドが見せる悪夢の数々には、さすが
のお前も耐えられまい……」

けしてほどけぬよう、しっかと手を握り合い出撃した。
ドス黒く荒れる海面をはるか下に、彼と並んで突き立てる。最後の切札を。
突撃槍(ランス)状に展開した山吹色の光が、ただ闇の中でまばゆく光る。
やがて光は途絶え、轟然と叫ぶ敵の大戦斧が迫り来る。

「来るぞカズキ! 手を離すな!」

まだ、やれる。
まだ、大丈夫。
約束したのだから。

「キミと私は一心同体。キミが死ぬ時が、私の死ぬ時だ!」

そう誓ったのだから、彼はけして諦めないのだから。
2人で最後まで戦い抜ける。きっと。かならず。

圧倒的な敵意に慄きながらも、もう一度だけ彼の手を握り締めた。

だが彼は。
一滴の汗を頬に浮かべて、詫びた。
まったく何をいっているのか分からなかった。
これ以上ない明瞭な言葉なのに、理解するまで数秒を要した。

「ゴメン。斗貴子さん。その約束守れない」


102 :永遠の扉:2006/09/29(金) 00:36:51 ID:EDjqTaIo0
彼が天に昇っていく。手の届かないところへ昇っていく。
違う。握り締めた手が振り解かれ、ドス黒い海面へと落ちていくせいだ。
手を伸ばす。
手を伸ばす。                                届かない。
「本当に、ゴメン」
寂しげに微笑む彼の表情から理解した。
彼が天に昇っていく。手の届かないところへ昇っていく。
堰を切ったような涙の中で彼の名を叫ぶ。
だが彼は消えた
星明りへ。

「落ちたな」
完全に光の途絶えた瞳を確認すると、総角は踵を返した。
肩口と襟足に掛かった柔らかい金髪が羽毛のように闇を舞う。
「まぁ、よく持った方だ。その間に俺たちは……」
「カズキ」
総角はぎょっとした様子で歩みを止め、哀切の呟きを振り仰いだ。
「カズキ……」
青く鋭い瞳は平素の毅然をくしゃくしゃに打ち捨てて、涙で目じりを飽き果てるコトなく濡らし
ている。
総角の頬は、耐えがたい笑いの兆候に激しく痙攣した。
「ハハっ」
唇がにんまりしたのも束の間、裂けんばかりに細く歪んで、大哄笑が巻き起こる。
「ハハハハハハ! ハーッハッハッハ。ハハハハ……」
笑いを徐々にフェードアウトさせ、余韻に震える肩を深呼吸で沈めた総角。
斗貴子に向き直って叫んだ。
「しまった!」
表情は3枚目のように崩落し、全身真っ白で硬直だ。
「この子、別離がトラウマか!!」
「でありましょう。涙を流して人の名を呼ぶのは別離がトラウマの証拠」
おたおたと手を動かして、斗貴子の眼前で振ったりしてみるが、それで涙が止まる訳でもない。

103 :永遠の扉:2006/09/29(金) 00:38:30 ID:1DmNcSP+0
「実に困った状況でありますね」
「まったくだ。凶暴な性格だからてっきり、そっち系統は大丈夫だと思ってたのに」
忙しく認識票をいじくり回すのは、事態打開の代物を探しているのだろう。
「ぐぬぬぬ…… 人は見かけによらんから困る。別離はまずいぞ別離は。鏡と並んで俺が最
も嫌うモノだぞ。それを人に見せるのは良くない」
総角は心底困った表情で首を振った。
「分からんコトもない。とゆーか、俺と似ているからやり辛い。ああしかしだがしかし、いま
情けをかけて核鉄を見逃したら今度は部下どもが危ない。情けを捨てろ総角! それが
唯一の礼だとハドラーもいってだろ、だから非情になるんだ。なるんだー! というトコロ
でありましょう」
総角は一瞬きょとんとしたが、すぐジト目になり、背後へ呼びかけた」
「お前なぁ。俺の心情を代弁するなよ」
そこで情感たっぷりに語っていたのは、零だ。
いつの間にか総角の後ろにいた彼女は、またロッドを口に当てている。
「ままま。不肖の目ならば大丈夫。見逃すのを見逃しましょうぞ。対・鐶さんたち用の厳正なる
緘口令を自らに課して口をチャックで縛りつけ、お墓まで秘匿を持ち込むのもまた美徳!」
小札は、わー!とロッドを天に突き上げた。意味もなく。
「お前いいやつだな」
「ただし不肖の先走りをば帳消しにしていただきたく、お願い申し上げる次第」
「構わんが、なァ。お前ならどーする? この子。核鉄奪う気にはならんつーか、悪いつーか」
「おや、相当お悩みの様子。いつもの余裕たっぷりの口調もどこへやら」
「余裕もなくすさ」
素晴らしいキューティクルの髪をわしゃわしゃかき乱して、総角は大きくため息をついた。
「敵だがな、人間だ。正義に従ういい奴だ。戦いで翻弄するのはまぁ許容範囲なんだが、
尊厳を傷つける真似は好かんつーか。ま、悪夢見せといていうのは偽善だが、別離の記憶
を見せるのは良くないつーか。ああややこしい」
「なればコレをあげますか?」
小札はひょいと何かを取り出した。
3cm×1cmほどの金属片で、蝶らしい体の一部が描かれている。
「割符、か」
「ハイ。割符であります。不肖の武装錬金の特性にて無事入手致しました」

104 :永遠の扉:2006/09/29(金) 00:39:19 ID:1DmNcSP+0
彼ら、そして斗貴子が探す『もう1つの調整体』にたどり着く為に必要なアイテムだ。
「いや待て。それはマズイだろ。侘び代わりにやりたいのは山々だが、今度はお前らの苦労
が台無……」
総角と小札の背後には非常口がある。
最初に斗貴子が入ってきた場所だ。
それに背を向けていた総角は、嬉しさと緊張の混じった奇妙な表情で、小札に呼びかけた。
「お前、年の割りに背が低くて助かったな」
「うぅ。不肖のコンプレックスをなぜにいまここで」
しくしくと泣いてみせる小札の背後で、非常扉が袈裟懸けに斬られ、上半分が部屋の内側に
ドタンと落ち込み、
「安心しろ。おかげでシルクハットが台無しになるだけで済む」
向こうから撃ち放たれし青い直線状の電影が、狂気のごとく総角を襲う。
「ひぇ、こは何事! こは何事ぉ!」
頭上を掠めさった正体不明の攻撃に、小札は首をすくめた。
もっともその努力は無駄だった。シルクハットのクラウン(てっぺんの部分)が斬られてたので。
「やれやれ。武器を投げるのは感心せんぞ」
喉元の前で人差し指と中指がキャッチした物を見ると、総角は微苦笑を漏らした。
相も変わらず、無骨な武器だ。
肉厚で中反りの刀身に下緒をあしらっただけで、柄すらない。
そのせいでむき出しになっている船底型の茎(なかご)には、鑢目(やすりめ)がかかってお
らず、安定して振るうためには手にサラシを巻く他ないだろう。
「敵に奪われたら不利だし、何より味方に当たったらどうする。取り返しがつかないだろう?」
棟区(むねまち。柄もしくは茎と刀身の境目あたりを指す)には、丸の中に×印をあしらった
幾何学模様と、アルファベット表記の銘が刻まれており、その少し上から切っ先にかけては
細い溝の彫物が続いている。
切っ先は日本刀にしては珍しく、両刃。
突きと斬撃の両方を目的としたこの造りは、名を鋒(きっさき)両刃造りといい、有名な所では
平家重宝の小烏丸が挙げられる。
薄暗い青に彩られたその刀身の下で、小札がシルクハットの破損にしくしく泣き始めた頃。
ドアの向こうから白い影がゆっくりと入室した。

その頃、寄宿舎では。

105 :永遠の扉:2006/09/29(金) 00:40:06 ID:1DmNcSP+0
千歳が、部屋に来たときからの疑問を桜花に投げかけていた。
「ところで、弟さんは──」
代わりに返答する防人は、実に浮かない表情だ。
「戦士・斗貴子の所へ向かってもらった。間に合えばいいが」

「仲間の危機に間に合ったようだな」
さびさびと懐かしむような声と共に、日本刀の武装錬金、ソードサムライXが投げられた。
「武器は返すぞ。だからのんびり世間話でもしようじゃないか」
放物線を描いて飛んだ日本刀は、入出者の真ん前で両刃をザクリと床につき立てる。
「なぁ、秋水よ」
早坂秋水は切断されたドアを踏みしめながら、無言で刀を引き抜き、青白く輝く瞳を総角に
向けた。



以下、後書き

小札の外見。脳裏に浮かんだのを採用してしばらく後、ドラマCDパッケージ裏の桜
花の下を見て仰天。……どうやら無意識下でモチーフにしてたようで。

>バレさん
正に怒涛の更新、お疲れ様です。

錬金ファンとしてはもう、165分割は垂涎のネタでしてw
描くコトはもとより、それで喜んで頂ければ天に昇るような嬉しさがあります。
実況はメリハリ付けや描写の省略になる上に、ぱーっとエネルギーを解放できるので
今後もちょくちょく使いたく。総角の能力は、いかがでしたでしょうか。
「他者から引継ぎを出来る武装」を考えた結果、とある装飾品(もはや隠す必要もないのです
が一応)となり、加えて万能すぎるので色々と制約をつけてあります。ラスト辺りでは、この制
約が大きな結果を生み出す予定です。その時は、「誰かの代わり」というテーマも昇華します。必ず。

106 :永遠の扉:2006/09/29(金) 00:40:49 ID:1DmNcSP+0
>>12さん
やはり武装錬金の設定に縛られない分、彼女は好き勝手動かせて楽しいです。
斗貴子さんは描いてる内に予想より奮闘してくれて、さすがバトルヒロインといった趣。
ん〜… でも秋水相手にヒロインになりうるかといえば難しく。やはりカズキ相手でないと。

>>13さん
総角はそこそこ重要な役を。時系列ゆえに話を動かすにはどうしてもオリキャラで引っ張ってくしかなく…… 
トイズフェスティバルは、前作の終盤でちょっと出した奴ですね。ハイ。で、ですね。ありがとうございます。
京兆兄貴の存在から構想しているモノと被っているのに気づき、差別化のアイディアが浮かびました!

ふら〜りさん
14巻のアレ(やはり男の絆は良いです)の、前後の場面を使わせて頂きました。
総角は想像以上に冷静な奴になってしまいました。で、アレは総角の能力的に使わないの
は変&苦労して作ったので再利用。斗貴子さんは実質敗北ですが、彼女らしい戦い方は何とか把握。

かまいたちさん
完結、おめでとうございます。そして、お疲れ様です。

はじめや正人のどこまでも窮々とした重苦しい心理が好きでした。
加害被害問わず、犯罪のもたらす闇に打ち克てない脆さは、本当に人間らしくてリアルで。
負の海の中で情感がドロドロとたゆとう光少なき世界観ともども、希代でした。
一旦終わってから本当の最初へ巻き戻り、別方向からの追体験を経て物語の開始時点に
至り、最後の最後で彼の動機付けが予想だにしない形で完成される構成は、もはや
物凄いとしか形容のしようが…… 発想のスケールからしてお見事。

次回作もお待ちしております。(個人的には、短くて軽〜い感じのを)

107 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/09/29(金) 00:47:36 ID:1DmNcSP+0
HN忘れてた。

108 :作者の都合により名無しです:2006/09/29(金) 10:33:29 ID:8E6au9xu0
千歳、こういう感じで本編に参加ですか。なるほど。
トキコさんの中でもっとも美しい思い出が最も悲しい思い出になってるなあ。
カズキが帰ってくる大団円まで壊れないといいけど。

109 :作者の都合により名無しです:2006/09/29(金) 12:44:40 ID:c09RQPlQ0
スターダスト氏お疲れ様です。
斗貴子の心情が切ないな。戦いで悲しみを一時でも忘れようというか。
相手がコミカルなので少し救われるかな?


110 :作者の都合により名無しです:2006/09/29(金) 17:14:11 ID:CrV0Bkwr0
スターダスト氏乙です。
心理描写が巧みで羨ましい限り。

111 :作者の都合により名無しです:2006/09/29(金) 19:26:48 ID:p+T7ANhT0
斗貴子が出てくるとやはり締まるなあ。
まひろだと、どんなシリアスな場面でもお花畑みたいな雰囲気がw

112 :待たせたな!:2006/09/29(金) 23:26:41 ID:jT0eGQBS0
聖少女風流記  【慶次編 第一話  前田 慶次という男】

前田 慶次朗 利益という人物は、そもそも謎が多い人物である。

勿論、ジャンヌ・ダルクと同様に実在の人物ではあった。
が、これもジャンヌと同様、現在に残る資料が少ないのだ。
その華々しい傾き振りとは裏腹に、詳しい生年も没年も分かっていない。

まず、素性からして明らかではない。
慶次は織田信長の臣下であった滝川 一益の子で、その妻が後に前田 利家の兄、
利久と再婚し、連れ子であった慶次が前田姓を継いだ、という説がある。

また、利久の妻は元々一益の弟、益氏の妻であり、益氏が戦死した後に
嫁に入ったという説もある。その時には既に、益氏の胤(たね)を宿していた。
その胤こそが慶次である、という説もある。

それ以外にも諸説あり、慶次の実の父親というのが一益なのか、益氏なのか、
それとも別の誰かなのかがはっきりとしないのである。

だが少なくとも前田 利久と慶次は血の繋がりは無かったのは間違いない。
それでも慶次は利久を愛し、この養父が死ぬまで義理を尽くした。
利久も慶次を愛し、なんとか前田の家督を慶次に継がせたかった。
面白くないのは、弟の前田 利家である。

利久は体が弱く、武の人ではなく、治と文の人であった。
対して弟の前田 利家は屈強のいくさ人であり、信長の覚えも良かった。
ここに、利久と慶次の悲劇が生まれる事になる。

利家は、利久と慶次が目障りで仕方なかった。
そこで利家は信長に進言し、利久と慶次から荒子城と家督を奪う事に成功する。
(それ以前に政治的な絡みがあるのだが、それは割愛する)
利久と慶次は不当に小さい領地に押しやられ、不遇を過ごす事になる。

113 :聖少女風流記:2006/09/29(金) 23:28:08 ID:jT0eGQBS0
だが慶次は不満を言う事は無かった。
本来ならば、加賀百万石の城主となれたのに、である。
言えば利久を苦しめるだけだからである。
彼が時に、『無念の人』と呼ばれるのはここに起因する。

が、我々が思う前田 慶次は、城主に収まり政治に腕を振るう男ではない。
異風の姿形を好む『傾奇者』であり、惚れたものの為なら死をも厭わない、
剛毅で優しい『いくさ人』である。

男が男であった時代。その中においてなお男であった男、前田 慶次。

小説『一夢庵風流記』(漫画・花の慶次の原作)の作者、故・隆 慶一郎氏は、前田 慶次という人物についてこう評している。


     『学識溢れる風流人で、剛毅ないくさ人である。
      したたかで優しく、生きるに値する人間であるためには、
      なにが必要かを良く承知している自由なさすらい人』


生きるに値する人間となるには何が必要であるか、作者にはよく分からない。
慶次の時代と現代では、倫理も価値観も観念も何もかもが違うからだ。
が、それでもやはり、人の世にはきっと何か変わらぬものがあるのだろう。


第二部は、慶次を中心に話が進んでいく。
物語の軸はやはりジャンヌであるが、聖少女を守る為に剣を振る慶次の姿が
第二部の柱となる。どうぞお楽しみ頂きたい。

114 :聖少女風流記:2006/09/29(金) 23:29:04 ID:jT0eGQBS0
(なんとまあ楽しい男だ、この男は)
ラ・イールが酒を呷りながら、しげしげと慶次を見ながら思った。
慶次はニコニコとしながら注がれる酒を次々と一息で飲み干していく。

「いや、俺もいろんな人を見たがよ、旦那のように酒強い人は見た事ねえ」
「いや酒だけじゃねえ。あのいくさ場での槍捌きはどうよ」
「どうだい、俺と一緒に今からイギリスへ殴りこみに行かねえかい?」
「馬鹿ヤロ、おめえなんか泣かされて帰ってくるのがオチだ」
どっと笑いが巻き起こる。荒くれ者たちが子供のようにはしゃいでいるのだ。

オルレアンの解放と言う、偉業を成し遂げた夜である。
気分は高揚し、次第に声は大きくなり陽気な笑いが満ち溢れていく。
それは当然の事である。が、この男、前田 慶次。
宴が進むにつれ、彼の周りに人が集まり始め、慶次の杯に一人、また一人と
酒を注いで行くのだ。まるでごく自然の儀式のように。

ジル・ドレは宴を辞退し、ジャンヌは疲れからかもう寝入っている。
即ち、この宴の中で、もっとも位が高い男はラ・イールである。
その自分を荒くれどもはさて置き、異風の男に我先にと酒を注ぎに行っている。
そして注がれた酒を慶次は一息で呑む。もう何十杯呑んだか分からない。
それでも、この男の顔色は変わらない。

慶次という男は、不思議な男である。
まず強さを鼻に掛ける事が無い。そして相手の身分で態度を変える事がない。
身分を気にしないという事は、全ての者に対して同じ接し方をするという事だ。
上級騎士であり、名門貴族と同様の地位を誇るジル・ドレや自分に対しても、
ここにいる素性の分からぬ傭兵どもに対しても、同じように接している。

ラ・イールはそれが心地よい。
元はといえば、自分も一介の傭兵から成り上がった男である。
自分にも、ただ戦場を駆け、戦勝の酒を爽やかに呷った時期が確かにあった。
今は、貴族の面倒を見るような毎日でも、そんな時が、確かに。

115 :聖少女風流記:2006/09/29(金) 23:29:52 ID:jT0eGQBS0
慶次に、ラ・イールはほんの少し眩しさを感じる。
男が、男のまま生きているその姿に、少しだけ目が熱さを感じたのだ。

宴が佳境に入ってきた。ラ・イールの酒量も進んでいる。
(この男は、そこにいるだけで男を笑顔にさせるな)
だが、しかし。その慶次の眩しさが、ラ・イールに不安を覚えさせる。
……おそらく、この男はシャルルに疎まれるだろう。そして、ジャンヌも。
あの王太子は小心であり、それ故に嫉妬と劣等心が深くとぐろを巻いている。

男が感じる慶次の眩しさを、万民がジャンヌから感じる聖性を。
あの男は疎ましく思う日が、きっと来る。そんな確信にも似た悪寒がする。
いや。今は無粋だ。解放の悦びに浸ればいい。
王太子とて、王位に付かれれば、きっと王としての御自覚を持たれるはず。
ラ・イールは不安を振り払うように酒を呷った。

慶次は相変わらず、泰然とした顔で、ニコニコと笑っている。
しまいには、上半身を脱ぎ、何やら変わった踊りをし始めた。
それがまた陽気で風流で堪らない。荒くれたちが我先にと踊りを真似始める。

まったく、叶わない男だ。この前田 慶次という男は。
(ジャンヌ殿が慶次殿に寄り添っているのは、こういう男だからだろうな)
ふと、そんな事が思い浮かんだ。
そしてほんの少し、ラ・イールは慶次に嫉妬の感情を覚える。
神々しいばかりの御姿のジャンヌが、慶次の近くにいる時だけほんの少し、
ただの少女の顔を見せるのを思い出したのだ。

(聖少女を護る、異国の風流なる騎士、か)
そしてラ・イールも己の地位を忘れ、上半身を脱ぎ、風流舞いを踊り始めた。

116 :聖少女風流記:2006/09/29(金) 23:33:31 ID:jT0eGQBS0
全員が寝静まる。幸せそうな顔で荒くれたちが寝言を繰り返している。
うわ言のように、ランスへ、ランスへ、と。
おそらく、オルレアンの街中が似たような状況だろう。
慶次はそっと抜け出し、松風の待つ厩舎へと向かった。

「すまないね、松風。……あそこへ、行ってくれるか」
背に跨ると、松風は疾風のように一直線に目的地を目指す。
しばらくすると、ムッとした臭気が立ち込める場所で松風は立ち止まった。

戦場跡である。オルレアンの2番目の砦、オーギュスタン砦跡。
累々たる死体に満ちた戦場跡の中で、少しだけ地が盛り上がった場所。
数輪の花が添えてある。そして、先客がいた。
「やはり来ていたか、ジヤン」
慶次が声を掛けると、ジヤンはからかうように言った。
「遅いぞ慶次。もう、ベルトランとはたっぷり呑んだというのに」

盛り上がった場所はベルトランの墓である。慶次は墓の前で腰を下ろした。
「すまん。俺とも酌み交わそう、ベルトラン」
瓢箪の蒸留酒を墓に掛けると、自分のぐい、と残りを呷る。
「美味いな。誰と呑むよりも、お前と差し向かいで呑むのが一番美味い」
墓に語り掛ける。だが勿論、墓は応えない。沈黙が流れる。

ジヤンがポツリ、と言った。
「駆けるだけ駆けたら、後は死ぬだけでいい。なあ、ベルトラン」
慶次は黙って頷く。ジヤンが星を見上げて言った。
「……もう少しだな。ランスの大聖堂で、フランス国王が生まれる日も」
今度は慶次は頷かなかった。ジャンヌへの不安が頭を掠めたからだ。

117 :聖少女風流記:2006/09/29(金) 23:34:59 ID:jT0eGQBS0
ふと、目の前の墓を見る。ベルトランが怒ったような顔で見ている気がする。
(何をそんな顔をしている。お前は、聖なる神子の剣だろう?)
慶次は思わず笑った。死してもなお、この男は俺に厳しく当たるらしい。
(心配するな、ベルトラン。俺は必ずジャンヌ殿を守り抜いてみせる。
 イギリスからも、そしてフランスからも。 ……月を護る、雲のように)

ベルトランの顔がやっと微笑んだような気がした。

そして翌日。ジャンヌとジル・ドレは、慶次たちに決意を告げる。

118 :ナイスガイ ◆duiA4jMXzU :2006/09/29(金) 23:43:57 ID:jT0eGQBS0
何を勝手に人の作品見てやがんだこのヤローーーーーー!!!!

とりあえず復帰早々の照れ隠しに叫んでみた。
いや、色々あったんだ本当に。
訴えられたりとか、会社辞めたりとか、ケンカしてフクロにされたりとか
電車で女の人の尻を触ってたら痴漢に間違えられたりとか…。
まあ、人生色々ですな。

もう、話忘れちゃったという馬k・・いや、読者も多いかも知れない。
ご心配なく。書いてる俺もすっかり忘れた。
で、一度最初から読んでみた。

な〜んだ、けっこう面白えじゃん。テキトーに書いてた割には。

ま、一部の出来がそこそこ良かった分、二部ではその分ありゃりゃに
なる事間違いなしだが、抗議は一切受け付けない。
しかもいきなりジャンヌ出てないな。

それにしても、ミドリさんどうしたんだろうなあ。
やはり俺のせいだろうか・・。

119 :作者の都合により名無しです:2006/09/29(金) 23:45:35 ID:4z9BGlKs0
ハイデッカの大将!おひさ!
よぉ〜う帰ってきてくれたぁ!

一夢庵の出だしから引用とはこれまた重厚な出だしだ!
完結にゃまだ早いが、完結したら今度は「捨て童子」のSSかいてくりょ

>訴えられたりとか、会社辞めたりとか、ケンカしてフクロにされたりとか
これはまだわかるが

>電車で女の人の尻を触ってたら痴漢に間違えられたりとか…。
弁明できねーだろーおーい!

120 :作者の都合により名無しです:2006/09/30(土) 00:12:03 ID:I395M3420
本文のクオリティの高さと後書きの基地外っぷりに
ハイデカ復活を実感してるw
本当に期待してるので頑張って下さい。

>電車で女の人の尻を触ってたら痴漢に間違えられたりとか
植草教授?w


121 :作者の都合により名無しです:2006/09/30(土) 00:27:32 ID:LKST+s4F0
122 :ひよこ名無しさん :2006/09/20(水) 01:22:05 0

 垣内洋次郎を虐めんな。あんな豚面でも一生懸命に生きてるんだ。
垣内は高校ん時、親譲りの豚面で散々虐められた…そんなあいつも二十歳で、自分を変えようと
ゴミ溜めの熊本から東京に出て、燃えるゴミを漁りながらでもシブトク生きてんだ。
どうか虐めないでやってくれ。

122 :作者の都合により名無しです:2006/09/30(土) 01:13:48 ID:9prprxuT0
後書きでは適当とか書いてるけど、真面目に書いてるのがわかる。
よく調べてあるし、隆先生の著作を読み込んでいるのもわかる。
書き手としてのレベル高いのに、ツンデレだなハイデッカ氏はw
この作品は大好きなので、頑張って完結させて下さい。
信長がどう動くか、ジャンヌの処刑が避けられるのか非常に楽しみだ。

123 :作者の都合により名無しです:2006/09/30(土) 10:47:36 ID:Iy1+1sre0
人間性は相変わらずガキだがSSは相変わらず素晴らしいな
楽しみにしてるので頑張って下さい>ハイデッカ氏

ミドリさんが戻ってくるまで、責任を持って書き続けてくれな

124 :作者の都合により名無しです:2006/09/30(土) 13:12:20 ID:wdHFnGUc0
NBさん、スターダストさん、ハイデッカさんと好きな書き手が連続で来て嬉しい。
でもこの方々更新ペースが遅いんだよなw



125 :作者の都合により名無しです:2006/09/30(土) 13:36:57 ID:ugSyIDkR0
かまいたちさんとハイデッカがニアミスか…
世の中うまくいかないもんだ

126 :作者の都合により名無しです:2006/09/30(土) 23:15:28 ID:wdHFnGUc0
>かまいたちさんとハイデッカがニアミスか…

ごめん、意味がよくわからん

127 :作者の都合により名無しです:2006/10/01(日) 03:41:16 ID:YmY64fi30
かまいたちさんへレスするハイデッカさんか、その逆か
それぞれ相手にどんな事書くか見たかったんじゃないの?

128 :月宮 ◆FugKlWswtM :2006/10/01(日) 09:39:06 ID:DIGkuQd2O
通りすがりの者です
素人ですがSS創作の参考にどうぞ
http://megaview.jp/view.php?v=292099

129 :ブラックキング ◆vI/qld5Tcg :2006/10/01(日) 11:21:30 ID:5sN7LvZ70
|д゜)

130 :作者の都合により名無しです:2006/10/01(日) 11:33:09 ID:KiJw7qha0
騙りかと思ったらトリップ見たら本物だな
暇があったら復活して下さい

131 :作者の都合により名無しです:2006/10/01(日) 13:48:35 ID:RmOJu44k0
ブラキンさん、今復活したら美味しいぞ
というか復活する気ないなら
わざわざトリップつけてレスしないで下さい

132 :作者の都合により名無しです:2006/10/01(日) 14:03:39 ID:k9YgvGhe0
おまいら一緒にマンガよもうぜ
http://live22x.2ch.net/test/read.cgi/livevenus/1159676526/

おもしろい


133 :ふら〜り:2006/10/01(日) 21:07:04 ID:/icrpISo0
>>NBさん
シンディ、お前もか……です。本作の柱の一つ、「超能力者の悲痛」がひしひしと伝わって
きました。その力で世界征服を目指すでなく、そんな悪人と激突するでなく、平凡な生活を
送りたいが故の苦悩。バトルに加えてこういう心理描写も卓越してるNBさん、羨ましや。

>>スターダストさん
>正義に従ういい奴だ
その言葉、アンタにそっくり返しましょうぞ。斗貴子に何か、一太刀なりと浴びせられるか
とも思いましたが、終わってみれば気遣っているという……。秋水の出現にも動じないし、
小札のドタバタちょこまかぶりと好対照。なんつーか、強いわ優しいわの完璧超人です総角。

>>ハイデッカさん(お帰りなさいませ!)
やはり絵になりますね慶次は。戦場で騎乗して敵兵の首を飛ばしまくってる姿も、こうして
男たちと酒を酌み交わして歌い踊る様も。なるほど同じ男であれば、憧れもするし妬みも
するのが当然か。そして彼の場合、周囲のそういった感情が時に歴史を動かしてしまう……

>>ブラックキングさん(お懐かしやですっっ)
そんなとこにいないで、出てきて下さ〜い。あの頃よりもっと賑やかにもっと楽しくなった
今のバキスレを、更に更に華やかにして下さること、勝手ながら期待しますぞっ。
……個人的には、久々に本部さん分の補給をして下さると嬉しいなとか。

134 :作者の都合により名無しです:2006/10/02(月) 00:23:43 ID:u4Eu3Hkf0
しばらく見ぬうちに
ふら公の芸風が少し変わってるな

135 :作者の都合により名無しです:2006/10/02(月) 06:42:04 ID:aT37UV8G0
そうか?
良い意味で変わってないと思うが

136 :鬼と人のワルツ:2006/10/02(月) 13:25:57 ID:tyWgSn1M0
その夜は残暑が厳い夜で、眠れない飲茶は三度目のため息をついた。
脳裏に昼間の事件がこびりついて離れない。
諸々の感情が浮かんでは消えていく。
「暑いなぁ」
もう一度ため息をついて部屋の窓を開けた。
少しばかり風が吹き込んできたが1LDKの部屋は一向に涼しくならない。

クーラーぐらいつければいいのに。

うんざりした気分で電灯の紐を引いた。
豆球の発する熱でも減らしたいと思ったのだ。
無論ただの気休めである。
完全に電気の消えた部屋で、電灯のスイッチの先についたプラスチックの重りが浮かんで見えた。
何とはなしにファイティングポーズを取り、夜光塗料でぼんやり光るそれに拳を降った。

狼牙風々・・・

紐が揺れてまたもとの位置に戻る。
重力とは偉大なものだ。

もう一度繰り返す。
三発目のパンチのとき、紐が指の間に挟まって電灯が派手に揺れた。
一瞬ビクリとしたが、電灯は何も無かったかのように元の位置に収まり、明かりがともった。

安堵のため息をついた。

137 :鬼と人のワルツ:2006/10/02(月) 13:26:52 ID:tyWgSn1M0
よかった、こわれなくて

そう思って自分の拳を見た。
重力も、紐の張力も、切なくなるほど偉大だった。

もう一度ため息をついてベッドに仰向けに倒れこんだ。
顔のすぐ隣に名刺があった。

手にとって明かりにかざしてみる。

明かりがまぶしくてよく字が良く見えない。
ごろんと転がりうつ伏せになってみた。今度は読める。
しばらく眺めて脇に置いた。
電灯はまだ少し揺れている。
いつの間にか窓から涼しい風が吹き込んでいた。



138 :鬼と人のワルツ:2006/10/02(月) 13:34:06 ID:tyWgSn1M0
今週は急な仕事が入ったので少しだけです。
戦闘に入るとこまで行けませんでした。
次回はもう少し書けますように。

>73
受験でも就職でもないです。大学関係ではありますが。

139 :作者の都合により名無しです:2006/10/02(月) 18:58:28 ID:aT37UV8G0
お疲れ様です。
本当に少ないけどw
在りし日のヤムチャの技を見れてうれしかったですw

140 :作者の都合により名無しです:2006/10/02(月) 21:10:12 ID:LPnUCKgj0
鬼と人さんってこの前、どっかの国の砂漠の真ん中に行かなかったっけ?

ともあれ乙。でももうちょっと書いてくれw

141 :作者の都合により名無しです:2006/10/03(火) 06:46:41 ID:3eXpXFyJ0
うーん、流石に定期更新する人がいなくなると進行遅いな

142 :作者の都合により名無しです:2006/10/03(火) 19:58:37 ID:Oph0ovNBO
でも油断するとまとめてくるんだよな

143 :作者の都合により名無しです:2006/10/03(火) 21:02:33 ID:X4nIrSZk0
来ないよりはまとめてでも着た方がいいな

しぇきさんは復活した途端また消えたな

144 :作者の都合により名無しです:2006/10/04(水) 21:57:59 ID:PO9g2pSZ0
誰か来ること願ってアゲ

145 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/10/04(水) 23:53:45 ID:VJZiPnf+0
第九十話「最後の勝負・2」

絵本が振り翳したメス。その矛先は―――自らの手首だった。血が面白いくらい勢いよく飛んだ。
「な・・・何やってるんですか、あなた!」
ペコが血相を変えて問い詰めると、絵本は自分で傷の手当をしつつ困ったような顔をして言った。
「だ、だから、精神を落ち着けようとリストカットを・・・こうすると、血が抜けてく感じがして、気分もスゥーっと楽に
なるから・・・」
「・・・・・・」
嫌すぎる精神安定法だった。
「リ・・・リストカットで気分スカっと」
しかも笑えなすぎるジョークのおまけ付きだった。
「くっくっく・・・どうだ、園樹は。いい眼鏡の上に、中々面白い奴だろう?面白いなあ。本当に面白い」
狐面の男は、つまらなそうにそう言った。
「あなたは・・・なんでそんなに平然としてられるんですか」
キラは苛立ちを抑えきれない様子で狐面の男に問いかけた。
「こんなとんでもないことをしでかして・・・色んな人を傷つけて・・・アザミだって・・・!」
「アザミ・・・ふん、あの女か。ありゃあ仕方がないさ。あれがあいつの運命だった。そういうことなんだろうぜ」
「運命・・・だって?」
「そう、運命だ。俺の持論を覚えているか?時間収斂―――バックノズル。起きるべき出来事は、必ず起きる出来事と
いうこと。今、ここでそれが発現しなかったところで、いつか、どこかで必ずその事象は発生する。これをアザミに
当てはめてみれば、話は簡単だ。あいつは元々、そこにいる野比のび太たちと敵対していた。その結果として敗れ、
本来ならばそこで死ぬはずだったのだろう。だが、生き残ってしまった。つまり、<アザミが死ぬ>という事象は
発生しなかった。
次に、シュウとの接触。ここでシュウに殺されるはずだった。だが、ここでも結局生き残ってしまった。またしても
死に損なったわけだな。
しかしながら、これでは世界は―――物語は成り立たない。死ぬべき時に死ぬべき登場人物が死なないというのは、
物語にとっては誤植もいいところだ。それを是正するためにバックノズルが働き、ようやくアザミは死ねた―――
そういうことだ。結局、アザミがどこで死のうと同じことだ。奴が死ぬのは運命の決定事項だったのだから。ただ、
時系列が前後したせいでちょっとややこしい話になった。それだけだ」
「―――そんな・・・」

146 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/10/04(水) 23:54:17 ID:VJZiPnf+0
誰かが死んだことを、そんな風にしか語れないのか。そう言ってやりたかったが、言葉にならなかった。
言ったところで、何も感じない。何も思わない。それが狐面の男だ。
「ふん。そんなことよりも、当面の問題はシュウじゃないのか?どうするつもりだ、あいつを」
「シュウ・・・!」
ごくり、と誰かが唾を飲み込んだ。
「あの力・・・ありゃあ文字通りの―――デウス・エクス・マキナってやつだ」
「デウス・・・なに?」
「なんだ、知らんのか。演劇用語で機械仕掛けの神と言う。収集のつかなくなった物語を理不尽なまでの力で無理矢理に
終わらせちまう神様って意味だ。全く最近の若い者はからくりサーカスも読んでいないのか?」
「それ、漫画の知識じゃない・・・てゆうか、漫画好きだったの!?」
「愛している」
狐面の男はきっぱりと言った。ある意味かっこよかった。
「まあ、それはともかくだ・・・シュウの野郎、あれじゃあ下手すりゃあの場でそれこそ世界の終わり・・・いや、待てよ。
うん・・・ああ、いや・・・ふむ、そうか・・・そういうことか・・・」
狐面の男は考え込んで一人で頷いたり首を振ったりして、手をポンと叩いた。
「そうか・・・あれが、グランゾン・Fこそが、俺の求めていたディングエピローグの答えなのかもしれん。あの力は・・・
正に世界の終わりと呼ぶに相応しい。そう呼ぶしかない力だ。しかし・・・そうだとすると・・・俺はなんてつまらないもの
を長年追い求めちまったのか・・・」
「つまらない?」
「ああ、つまらん。実につまらん。俺が生涯を賭して追いかけた、あらゆる存在を犠牲にして辿り着こうとした境地が、
<やたら凄いロボットが好き勝手暴れたら何もかもぶっ壊れました>だ。ろくでもねえ。ろくでもなさすぎる。それこそ
一心不乱に読み続けた小説の最後の最後で、とてつもなくくだらねえオチをつけられたってところだな」
狐面の男は、ふうー、と長い息を吐き出した。
「まあ、こうなったら仕方がない。あいつが世界をぶっ潰すのをまな板の上の鯉のように大人しく眺めるしかないのかも
しれん。それが運命ならば従うまでか。所詮俺たちは運命に流していただいている身なのだからな」
「けっ・・・なんだそりゃ」
USDマンがふん、と鼻を鳴らした。
「ふざけんなってんだ!死にたきゃ旦那一人で死ねよ。俺様はこのまま終わりなんざ御免だぜ。それにあいつにゃあ借りも
あるんでね」
「<あいつにゃあ借りもあるんでね>ふん。ああ、そうだったな。お前、シュウにあっさりやられたんだったな」
「う!」
痛い所を突かれて、USDマンが怯んだ。

147 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/10/04(水) 23:54:48 ID:VJZiPnf+0
「しかし、USDマン・・・ウルトラ・スーパー・デラックスマンか・・・ふん。あれだけあっさりやられといて、いつまで
そんな大層な名前を名乗ってるつもりだ。俺だったら恥ずかしくてそんな名前はとても名乗れんね。その辺は自分としては
どう思ってるわけだ?是非とも聞きたいな」
「う、うう・・・!」
USDマンがだらだら汗を流す。そして―――ゆらり、と立ち上がった。
その姿は正に威風堂々。最強キャラに相応しい風格を醸し出していた。そして―――
「いや」
<いや>と言った。
「いやいや」
<いやいや>と言った。
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや」
<いやいや>と10回言った。
「いや、まあ、確かにあの時は思いっきりやられて意識飛んじまったけどよ。たったそれだけのことでもうUSDマンを
名乗るな、とか言われてもな、こっちだって困るわけよ。一回や二回の結果だけ見て、それでもうお前はダメだ、みたい
な物言いはさあ、よしてほしいわけだよ、うん」
「・・・・・・・・・・・・」
USDマンによるウルトラ・スーパー・デラックスな言い訳が始まった!
「最強ってのはそういう意味じゃねえだろ。 こっちはもっと長いスパンで物事を考えてるんだから。なんせUSDマンって
ぐらいだからな。そんな些細な事にいちゃもん付けられても困るわけよ。
重箱の隅をつつくかのように揚げ足を取られても、も、なんていうかさ、わかるだろが、ほら、最強っていうのは、やっぱり
そんな短期的なサンプルじゃ、計れないわけだしよ、1回や2回じゃまぐれって事もあるし、やっぱりさ、長い積み重ねとか、
がんばりとか、そういうのも考慮に入れた上で、そういう判断はしなくっちゃ、な。
まあまあ、狐の旦那よ、あんたの言う事もわかんないでもないよ、俺様も一応、柔軟な対応をな、考えてるしよ」
「・・・もう分かった。分かったからやめろ、USDマン。こっちが悲しくなってくる」
肩をポンポンと叩くペコ。USDマンはぶすっとした顔で答えた。
「・・・へっ。冗談だよ、冗談。いくらなんでもここまでヘタレ丸出しのセリフをマジで言うわけねえだろ」
「ふん、どうかな。そもそも主役サイドに寝返った元敵キャラはへたれるのがお約束だからな」
またしても狐面の男が油に火を注ぐような発言をかました。

148 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/10/04(水) 23:55:21 ID:VJZiPnf+0
「てめえ・・・俺様をヘタレキャラ扱いしちまったら、それこそ全部お終いだぜ」
「くっくっく―――まあいいじゃねえか。どうせ最後だ、みんなでへたれて終わろうぜ」
「嫌だ。前作から考えると足掛け三年にも及ぶ大長編のオチがそれなんて、絶対に嫌だ」
稟は本当に嫌そうに言った。
「恥ずかしい告白大会しようぜ。一番、人類最悪。実は俺、何も考えてないんだよ」
「知ってるよ」
稟が突っ込む。
「では二番、バカ王子。実は僕、他人に嫌がらせをするのが大好きなんだ」
「とっくの昔に分かっとるわ」
今度はクラフトが突っ込んだ。
「ならば三番、アスラン・ザラ。実は俺、渚カヲルくんの声真似が大の得意なんだ。ではいきます。
<歌はいいな、キラ>」
「サルファやってないと分かんないよ!」
次はキラ。
「じゃあ四番、プリムラ。実は私も声真似が得意。<リリカルマジカル、全力全か・・・>
「アスランさんと被ってるし他職人さんをネタにするのは色々ヤバいからやめなさい!」
そしてペコ。ボケに対して突っ込み役が総動員していた。
「まあ、それはともかく・・・相手が誰だって、やるしかないよ」
のび太が決意を込めて、拳を握り締める。
「あいつを放っておいたら、大変なことになる―――そんなことは、分かりきってることなんだ」
「ふん―――そりゃあ立派な心がけだ。だがな、勝てる見込みなんぞあるのか?お前ら全員、あっさりやられてたじゃ
ないか。お前らがシュウに勝つ確立なんざ、ジャンプの次回予告が当たる可能性より低いぞ」
どういう例えだ。そう思ったが、もう突っ込まないことにした。


149 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/10/04(水) 23:56:34 ID:VJZiPnf+0
「それでも―――戦うよ、ぼくらは。ねえ、みんな」
「そうだね。今さら逃げたりできないよ」
ドラえもんが頷く。
「おうよ。負けたまんま終われるか!」
ジャイアンが鼻息を荒くする。
「やっぱそうなるのね・・・ま、しょうがないけどさ」
スネ夫もまたいつものこと、と肩を竦めた。
「そうよ。このままで放っておけないわ」
しずかが決意を秘めて語る。
「ふん・・・そうか。それでこそ主人公と言ったところだが―――それで、もしも勝てたとして、どうするんだ?」
「え?」
「俺のことはどうするんだ―――そう聞いている」
狐面の男は、そう問いかけた。
「お前らがシュウに勝てたならば―――シュウもまた俺の求めるディングエピローグの答えではなかったということ。
そうなれば俺はまた、世界の終焉を求めるだけだ。そうなればお前らはまた、俺との因果に介入してくるかもしれん。
そうなれば―――不毛なマッチポンプが続くだけだ。それは、俺の主義ではない。俺は一度やったことは、それが
成功であったにしろ、失敗だったにしろ、二度とはやらん」
「・・・何が、言いたいのさ」
「賭けをしよう、俺の敵。俺とお前らとの、最後の勝負だ」
最後の勝負。それは―――
「俺はシュウの勝ちに賭ける。お前らは当然、自分たちの勝ちに賭けろ。俺が勝ったならば、その時はもうどうにも
ならん。負けたお前らはまず間違いなく死ぬというわけだからな。後は野となれ山となれ、だ。
だが万が一、お前らがシュウに勝てるようならば―――その時は、今度こそ俺の完敗だ」
そして、狐面の男は、言った。
「その時は―――俺を殺す権利をくれてやろう」


150 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/10/05(木) 00:05:25 ID:fR2zmafN0
投下完了。前回は前スレ396より。
ようやく産みの苦しみから脱出できたような、そうでもないような。
USDマンのセリフは、戯言作中での人類最強のセリフほぼまんまです。
ところでデウス・エクス・マキナが出てきたのって、からくりサーカスで合ってたっけ・・・?

前スレ398
大河SS・・そう言うとなんだかかっこいい

前スレ410
結構間が空いちゃいました、すいません・・・

前スレ411
シリアスな場面でもついバカな描写入れちゃうのはもう癖です。

>>ふら〜りさん
新キャラの彼女、マジでいる意味がありません。考え無しに好きなキャラを出しちゃえ!
な書き方してるとこういう困った事態になります。

前スレ413
ラスボスというのは確かに違うかもしれません。言わば、物語の観測役?

>>バレさん
いつもお疲れ様です。
狐があっさり仮面を取るのは原作準拠です(あれほどあっさり仮面を外した仮面キャラもそうはいないと思います)。
ツンデレはどうか知りませんが、眼鏡フェチなのは西尾維新による公式設定です。

151 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2006/10/05(木) 00:05:57 ID:fR2zmafN0
トリップ忘れ、失礼しました〜。

152 :作者の都合により名無しです:2006/10/05(木) 06:56:16 ID:2PJUWRYY0
サマサさんお疲れ様ですー
USDマン、言い訳も最強ですが復活も最強にしてください。

あと、からくりサーカスであってますよ。

153 :作者の都合により名無しです:2006/10/05(木) 07:49:45 ID:NaYqlgrv0
サマサさんスランプ脱しましたか。
物語りも大詰めで、役者も迫力が漲ってますね。
でも告白大会見ると、別にみんなそんなに危機感ないなあw
狐面の男は相変わらず不気味だけど。

154 :作者の都合により名無しです:2006/10/05(木) 21:11:30 ID:Q2DtbtqZ0
サマサ氏も年末か来年早々に終わってしまうんだなあ

好きな作品&職人さんがどんどん消えていく・・

155 :作者の都合により名無しです:2006/10/06(金) 11:39:10 ID:aKhKU8i40
糞みてぇな文章しか書けない低脳作者ばっかだから、廃れてるんだろうが。


156 :作者の都合により名無しです:2006/10/06(金) 14:51:38 ID:PgOgd3sWO
>>155
例えば?

157 :作者の都合により名無しです:2006/10/06(金) 15:11:35 ID:ZWyRz5vR0
質問です。
当方エロパロスレでSSを書いていたのですが、
肝心の濡れ場が苦手で、どうしたものかとウロついていたらここを見付けました。

マイナーな作品のSSをイキナリ投稿してもアリでしょうか?

158 :作者の都合により名無しです:2006/10/06(金) 16:12:41 ID:xc1nGk4G0
あまり露骨なエロが無ければ大丈夫だと思いますよ。
どんどん書いてくださいな。

159 :作者の都合により名無しです:2006/10/06(金) 19:36:58 ID:ltg5Uwe80
test

160 :作者の都合により名無しです:2006/10/06(金) 19:39:24 ID:QaQmUTzP0
というか、少々のエロ描写があっても、
描写が上手くて、かつ、キャラの性格にあってれば問題なし。

161 :戦闘神話:2006/10/06(金) 19:59:35 ID:ltg5Uwe80
part.7

少女人形の美しい光沢のある黒い翼のなぎ払い、それをアドニスは単純に飛んで避け、
貴鬼は何時もの様に空間転移で避けていた。

「…!?」

そう、驚愕する少女人形の真後ろへと。
ごめんよ、と一声かけると。

「クリスタル・ネット!!」

アリエスの一党の誇る鉄壁の捕獲網が彼女を捕らえていた。
この技は、詰まる所クリスタル・ウォールの応用系である。
クリスタル・ウォール自体、対手との零距離で用いれば
面攻撃の打撃技として通用するという一面を持っている事を鑑みると
まさしく蜘蛛の糸の如き束縛を可能としていた。
事実、かつての聖戦でムウが用いた時、対手であった冥闘士・地妖星パピヨンのミューは
なす術もなく捕らえられていた。
空間を支配しようと飛び回る相手には、非常に有効な手段なのだ。

「よぉーし、人形のアソコが…」

虎眼、いや、ごがんという、骨が金属にカチ当たった重い音が廃墟の空間に響き渡った。
そろりそろりと少女人形のスカートに手を伸ばしていたアドニスの頭に貴鬼が拳骨を落としたのだ。

162 :戦闘神話:2006/10/06(金) 20:02:28 ID:ltg5Uwe80

「お前な、いくらバキスレでもやって良いネタと悪いネタあるぞ。
 職人諸氏に詫び入れて来やがれ」

貴鬼は、幼年期から愛用しているブレスレット、元は二の腕につけていた腕輪だ、
をメリケンサックのように握りこんでアドニスに拳骨をくれていた。
因みにこの腕輪、貴鬼の師・ムウお手製の一品であり、
聖衣の修復時に余ったオリハルコン・ガマニオン・銀星砂で出来ている。
強度だけなら十分に黄金聖衣レベルであったりする。
そんなモンでぶん殴られたら、いくら石頭のアドニスでも悶絶は必至だ。
事実、アドニスは声も無くのた打ち回っている。

「あきれた…。
 人間の牡は想像以上に下劣ねぇ…」

苦笑交じりの嘆息、
少女人形は漫才で捕らえられてしまったことが余程精神的に堪えたと見えて、ぐったりとしていた。
もうどうにでもなれ、と微妙にやさぐれた空気すら漂わせている。

「で、確認するけど、君はローゼンメイデンの一人でいいんだね?」

纏う空気を一遍させて、貴鬼は少女人形に語りかけた。
威圧、黄金の聖衣を纏うことを許されたものだけが持つ威圧感だった。
並の人間なら気絶必至の壮絶な威圧をうけても、少女人形はすまし顔だった、表向きは。
貴鬼もアドニスも鋭敏な感覚を有する黄金聖闘士だ、彼女が今、
怯えに近い感情を誇りという理性でムリヤリ押さえ込んでいる事ぐらい容易に察しえた。

「…先ほどは失礼、お嬢さん。
 僕の名はアドニス。ピスケスのアドニス。
 もしよろしければ、お名前を教えていただけないかな?」


163 :戦闘神話:2006/10/06(金) 20:04:49 ID:ltg5Uwe80

一転、貴公子然とした態度でアドニスは彼女に自己紹介を行った。
呆気にとられる貴鬼をよそに、彼女は

「あら、下劣な人間なくせに礼儀は知っているのね」

元がいいだけに得だよな、そう思う貴鬼だが、ここはアドニスに任せることにする。
普段の行動が思春期丸出しのエロガキな分、こういったギャップは失笑を通り越して驚愕ものだ。
小さい子供やある程度年上の人間のあしらいなら貴鬼が得手とするが、
女性に関しては途端に年齢相応の無様を晒してしまうのだ。
これが師・ムウならば泰然とした面持ちを崩さずに居るのだろうな、と詮無き事を思うあたりが、貴鬼の未熟の証明だ。
女性に対して割と素っ気無い態度を取ってしまう為か、貴鬼の周りには女っ気が無い。
対するアドニスは、エロガキぶりからくるひょうきんな態度が妙に女性陣に受けが良いらしい。
なんか、不公平だなぁ。その呟きを聞かないでおく優しさくらいアドニスにはある。
互い、女の子が気になる年頃だ。
そういう事もあるさ。ああ若人よ

「私の名は水銀燈。
 誇り高きローゼンメイデンの第一ドール、そして…」

喩え、蜘蛛の糸に囚われていようとも、捕囚の辱めを受けようとも、その姿に、その視線に込められた誇りは
些かの綻びも無かった。
気高き銀の乙女、それが彼女に対して貴鬼の、アドニスの抱いたイメージだった。

「もっとも優れたローゼンメイデンよ」


164 :戦闘神話:2006/10/06(金) 20:09:50 ID:ltg5Uwe80

「手荒な事をしてすまなかった。
 オイラとしては君に手を上げるつもりは無かったし、
ちょっとしたお手伝いをお願いしたかっただけなんだ」

貴鬼は出来る限り優しい声色で、だが威圧感をますます強くして言葉を紡ぐ。
対する少女人形は、無言だ。
尋問戦術の一つ、怖い刑事と優しい刑事という奴だ。
貴鬼が怖い刑事役、アドニスが優しい刑事役という分担を即興で割り振ったのは、
まさに親友同士だからこそできる息の合ったコンビネーションだといえよう。
参ったね、と貴鬼は内心思う。
ここまで意固地になられては、たぶん殺されたって協力しない。貴鬼は完全に交渉方法を間違えたことを理解した。
とりあえずは、鏡の中から出ないと、と思う。
空間転移を行ってみてわかったが、此処は世界の薄皮のような場所だ。亜空間とでも言うべきだろうか?
貴鬼は師から伝え聞いたサガの技を思い出していた。
アナザー・ディメンション、
巨大な小宇宙によって異次元への穴をこじ開け、そこへ敵を叩きこむという豪快な技だ。
空間転移を得意とした師や前教皇、もしくは一輝ほどのデタラメな生還能力をもった人間でなければまず生還は不可能だろう、
黄金聖闘士同士の戦闘で用いられたケースはない為分からないが、おそらく特殊能力系統に強くなければ生還は黄金聖闘士とて
一人では難しいだろう。
なによりこの技はたとえ見切ったとしても回避が出来ない。
その亜空間に閉じ込められた以上、一輝ほどの小宇宙の爆発力を持たなければ生還は不可能だろう。
幸い、アドニスも自分も黄金聖闘士だ。この亜空間に人二人が通れる程度の風穴は開けられるだろう。
だが、それではこの少女人形を放置する事になる。
それだけは避けたい。
捨てられた子犬のような瞳をしたさびしげなこの少女人形を捨て行く事は、貴鬼の性分が許さなかった。
最初見たときから貴鬼には分かっていた、彼女は無理をしていると。

165 :戦闘神話:2006/10/06(金) 20:12:49 ID:ltg5Uwe80
何故ならば、この親友と同じ気配がするからだ。
その原因が一体なのかはまだ分からないが、
過度の攻撃性は臆病さの裏返し、それを貴鬼は経験的に知っている。
師・ムウが戦死した直後の貴鬼自身と、出会った直後の荒れに荒れていたアドニスと同様の、
激情をただ怒りと攻撃性で覆い尽くし、悲鳴をあげる心をムリヤリ騙した姿。
そして、先代の不逞に、今の自分の無力さに歯噛みし、
日々の懊悩を飲み込んで心を鋼で覆いつくし、瓢げ者を装う今の親友と同じ空気を持っている。
貴鬼は知る由もないが、彼の親友の懊悩は、貴鬼の思い至るモノ以外にもある。
とにかく、できれば温順にこの状況を打破したい、拳銃は最後の武器だ。

「…ッ!貴鬼!」

アドニスの鋭い叱咤の声に、貴鬼はそこではじめて廃墟の町並みが細かく震えていることに気が付いた。

「何をした!お前ッ!」

驚愕を隠さずに少女人形に誰何すると、当の少女人形もこちらと同じ表情をしていた。

「ごめん、君もしらないのか?」

一瞬我を忘れた己を恥じ、素直に謝るが、廃墟の町並みの振動はもはや地震というべき物へと変貌していた。
この空間を維持していたのが彼女だとするなら、これは彼女の意思なのだろうが、
当の彼女にその傾向が全く見られない、つまりは…

「異常事態発生ってことか!」

アドニスの、妙に楽しそうな叫び声。貴鬼は驚愕から覚醒し、状況を確認すべく当たりを見回す。


166 :戦闘神話:2006/10/06(金) 20:17:43 ID:ltg5Uwe80
「水…?」

廃墟の空間のそこかしこから、水が滲み出していた。
いや、染み出すなどという生易しい状態ではない、もはや洪水といっていいほどの量になっていた。

「旅行運最悪だな、オイラたち…」

「たちは余計だ!たちは!
 お前だけだろ!飛行機乗ればダイハード!船にのればポセイドンアドベンチャー!
 陸路を行けば追いはぎ盗賊アメアラレ、則巻アラレは地上最強!
 入管で聖衣聖櫃が引っかかったのもお前だけだろう!」

「最後のは今は関係ないだろ!
 お前だってこの間エウロペさんに…」

瞬間、鉄砲水が三人に襲い掛かっていた。

「今年は水難の相がでてたっけ。
 僕、泳げないんだけどなァ…」

水銀燈を抱えて跳びあがりながらしみじみと、アドニスは呟いた。

「そうは言うがね、ピスケス。
 私が溺れさせた人間よりも、バッカスが溺れさせた人間のほうが多いのだよ?」

それは静謐といっていい程の声音だった。
だが、その声音が辺りに響いた瞬間、空間が軋んだ。
廃墟の空間を満たした水は、海水だったのだ。
余りにも巨大な小宇宙によって、空間が軋みをあげていた。
貴鬼の、アドニスの主、戦と智の女神アテナの小宇宙を遥かに凌駕する、恐るべき巨大な小宇宙。
現在地上にこれほどまでに巨大な小宇宙をもった存在など、アテナ以外には一柱しかない。

167 :戦闘神話:2006/10/06(金) 20:21:05 ID:ltg5Uwe80

「海皇…ッ」

呻くようにアドニスは呟く。
もはや先ほどまでの飄々とした空気は霧散していた。
呼吸すら、意識せねば停まってしまうだろう。
総身に小宇宙を漲らせねば、アドニスは恐らく腰砕けになっているはずだ。

「…ポセイドンッ!」

貴鬼は、震えた。
四年前、貴鬼は海皇神殿にて死にかけている。
キグナス氷河の兄弟子であり、北氷洋を守護する海将軍・クラーケンのアイザックに接触し、
貴鬼は彼からライブラの聖衣を守る為に文字通り盾となった。
幸いにして、氷河に死地を救われたものの、その記憶は師・ムウの死と並び、今も尚悪夢として貴鬼を苛む時がある。

「そうか、アリエス。
 君はあの時の小僧か?
 大きくなったなぁ」

莞爾と笑う、一見すれば無精ひげの似合う好青年にしか見えない彼だが、その空気は先ほどの貴鬼の威圧の比ではない。

「…そういうアンタこそ、ずいぶんとむさ苦しくなったじゃないか」

貴鬼はようやくそれだけ吐き出した。

168 :戦闘神話:2006/10/06(金) 20:23:45 ID:ltg5Uwe80

「ああ、この髭かね?
 似合っているだろう、海皇だからね。相応の威厳が必要なのだよ。
 髭は手っ取り早い男性のシンボルだからね」

まさか裸になって見せるわけにもいくまい、そう冗談めかして言ってみせるが、
誰もその笑いにつられる者は居ない。

「まどろっこしい事は抜きだ!
 何が目的だ!海皇ポセイドン!」

アドニスの叫びを柳に風とばかりに流して、海皇は言う。

「私の目的か…。
 そうだな、まずは探し物と言っておこうか?
 ローゼンメイデンを探していてね、足繁く捜し歩いていたのだよ。
 いや、広大で参ったよ、この領域は」

笑みを滲ませた声音と、膨れ上がる小宇宙。相反する二つの感情は、まさしく波濤の如し。

「生憎と、オイラも探していたんだよ、彼女たちをね。
 いやぁ〜、参ったなぁ。探し物が被っちゃったよ」

軽口を叩く事すら全力を振り絞らなければならないという異常。
かつて星矢はこの海皇に向かって「諦めが悪いのが玉に瑕でね」とのたまったという。
今の貴鬼には、星矢のその恐れ知らずの肝っ玉が羨ましくて仕方が無かった。


169 :戦闘神話:2006/10/06(金) 20:24:55 ID:ltg5Uwe80

「そうか、そうか…
 ところで、私の流儀を知っているかね?」

小宇宙の爆発は津波と化して三人に襲い掛かった。

「欲しいものは、力ずくで奪いとる」

いっそ怒号だったらのならば、これほど震えることも無かっただろう。
笑みと共に吐き出されたポセイドンの静かな声は、ただ、恐ろしかった。





長くてすみません

170 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2006/10/06(金) 20:27:09 ID:ltg5Uwe80
引退されていたとはいえ、曽我部和恭氏のご冥福を祈ります
置鮎氏のサガ・カノンも良かったのですが、曽我部氏のサガ・カノンは「重み」があったように思います
前回今回共に長すぎで申し訳ございませんでした。
そして今回はちょっとネタに走ってみました
職人の方々、お許しください…。

>>前スレ306さん
搦め手でいきたいと思っています

>>前スレ307さん
いわば聖闘士版影道を率いて紫龍がどう動くのかはお楽しみに
エド同様つなぎ役ですので

>>前スレ309さん
仕事が忙しいのはいい事です、しんどい時多々ありますがw

>>前スレ310さん
無い頭絞って考えてます…

>>前スレ319さん
申し訳ございません

>>一真さん
ご存知かとは思われますが、Vジャンプの表紙は書店で見かけたとき
仰天しました…
さすが銀魂


171 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2006/10/06(金) 20:28:07 ID:ltg5Uwe80

>>スターダストさん
バタフライ・ヴィクターとパピヨン・カズキは和月先生十八番の「対比」の真骨頂
不肖銀杏丸もそれに習って今作ではいろんな「対比」を仕込んでおります
スターダスト版バタフライ像を楽しみに待っています
斗貴子さん最高です
ツンとデレの絶妙なハーモニーを今から期待しております

>>ふら〜りさん
完結おめでとうございます
最後にいいところを掻っ攫うのも2000の特技の一つなのかもしれませんね
原作の状況は………

>>バレさま
補完ありがとうございます
「夢の二十九巻」になぞらえていただくとは光栄至極
不肖銀杏丸、必ず完結させてみせます

銀杏丸でした


172 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2006/10/06(金) 20:32:31 ID:ltg5Uwe80
遅ればせながらハイデッカさんの復活おめでとうございます。
ジャンヌの暗黒面、慶次の陰と陽、期待しております

173 :作者の都合により名無しです:2006/10/06(金) 21:20:27 ID:B2v/1WaB0
お疲れさんです。
海の前のキキ、大人と子ども以上の力の差ですな
お仕事は相変わらず忙しそうですがちょくちょく更新して下さい。

>>157
人魚姫とか聖少女とかネゴロとか、結構いっぱいエロはあったよ
あんまりドキツイのはダメでしょうが

174 :作者の都合により名無しです:2006/10/06(金) 21:41:22 ID:c5NKxv4n0
申し訳ありませんが私も質問があります。
私もここにSSを投稿したいのですが、例えば違う作品同士の世界を
繋げる為にオリキャラ(あくまで脇役として)を登場させた物でも
よろしいのでしょうか?


175 :作者の都合により名無しです:2006/10/06(金) 21:43:26 ID:QaQmUTzP0
>>174
面白ければOK。

176 :作者の都合により名無しです:2006/10/06(金) 21:44:53 ID:QaQmUTzP0
というか、よくみたら>>157はエロを書くと一言も言ってない。
どころか、エロ描写が苦手だからここを探したと書いてある。

言い換えると、エロ描写は絶対にしないのだろうな。

177 :作者の都合により名無しです:2006/10/06(金) 21:46:10 ID:B2v/1WaB0
>>174
オリキャラは結構登場してるよ
すぐ上の銀杏丸さん(インキン丸と読む)とかでも出てるし

基本的にマンガのキャラがメインで出てるなら
オリキャラでも歴史上のキャラでもゲームのキャラでも
今はOKになってるな。

詳しくはサイトの作品をざっと読むといいかも

178 :作者の都合により名無しです:2006/10/06(金) 21:48:46 ID:c5NKxv4n0
>>175>>177
ありがとうございます!
近日中に投稿させて頂きます。

179 :作者の都合により名無しです:2006/10/06(金) 21:51:06 ID:B2v/1WaB0
>>178
頑張ってくだされ!

180 :作者の都合により名無しです:2006/10/06(金) 21:59:05 ID:gnmXifwB0
銀杏=ぎんなん

181 :157:2006/10/06(金) 22:40:07 ID:UD6yxE6J0
質問に答えてくださった方、ありがとうございます。
マイナー作品になると思いますが、持ってない文才絞って書いてみます。

182 :ファイナルバトル:2006/10/06(金) 23:44:30 ID:CThFtr590
 門下百万人総出で死刑囚ドリアンに(トドメを刺したのは烈海王だが)敗北を与えてか
らというもの──神心会ではある変革がなされた。
「神心会に敵対する者はだれであろうと潰す」
 という愚地克己の信念のもと、彼らの結束力、組織力はより高められた。
 神心会は武道団体。すなわち戦う団体。
 喧嘩に強いことなど緊急時くらいでしか使えない現代社会において、彼らはあえて素手
でわがままを貫く道を選んだ。

 某日、とある神心会門下生が出世争いに敗れた。
 同期との一騎打ち。どちらか一方が課長になれるという局面だったが、ほんの紙一重の
差で彼は昇進することができなかった。
 克己が創り上げたシステムにより、この報はすぐさま神心会全体に行き渡る。
 そして──数日経った深夜。
 昇進祝いをかねて派手に飲み明かしたサラリーマンが一人、夜道を歩いていた。先に述
べた出世争いで勝利した男である。
 ちどり足でまっすぐ歩くことはできないが、道すじだけはまっすぐ家に向かっていた。
 すると突然、彼を囲むように複数の人影が現れた。
「秋田株式会社係長、板枕氏ですね? いえ、今度課長になられるそうですが」
 酔いが体から逃げていく。これが噂の“オヤジ狩り”かと内心舌打ちしながら、男は半
ば条件反射でバッグから財布を取り出す。
 しかし、彼らの狙いは金銭ではなかった。
「我々はお金などいりません。ただ、あなたを痛めつけるだけです」
「ち、ちょっと、私が一体なにを……」
「覚悟ッ!」
 いびつな拳が一斉に彼に飛びかかった。
 秒針が一回りもすると、全ては終わっていた。
 ついさっきまで平凡なサラリーマンだった男は、かろうじて呼吸だけを行う無残な屍と
なっていた。
「よし行くぞ」
 敵を討った神心会の男たちは、証拠をなにひとつ残さぬまま夜の闇に行方をくらました。

183 :ファイナルバトル:2006/10/06(金) 23:45:17 ID:CThFtr590
 ──以上の調子である。
 今挙げたのは、ほんの一例でしかない。
 神心会百万人に少しでも害をなす者があれば、すぐさま討伐隊が組まれ、実行に移され
る。
 一日に多くて五人、最低でも一人は彼らの拳によって再起不能となった。
 そして報告を聞くたび、
「これこそが神心会空手だッ!」
 と克己は高笑いするのだった。

 ところが、隆盛極める神心会に突如として壁が立ちはだかる。
 深夜、神心会本部道場。正座で精神を養っていた克己に、門下生である寺田が外から駆
け込んだきた。
 息を切らしながら、克己を呼びつける寺田。
「し、師範ッ!」
「どうした寺田、今日は討伐メンバーだったはずだろ?」
「大変です! 神心会最後の敵を倒すチャンスが来たんです! ぜひ師範もお出向きを!」
「最後の敵? ──どういうことだ」
「と、とにかく、来てください! 近くの空き地ですっ!」
 どうやら説明する時間も惜しいようだ。少し訝ったが、寺田から発せられる『是が非で
も師範に来て欲しい』という熱意に押され克己は出陣を決意した。
「分かった、空き地だな」
 このとき克己は心の奥底で、一人の人物を思い浮かべる。
 ──まさか、範馬勇次郎か。

184 :ファイナルバトル:2006/10/06(金) 23:45:59 ID:CThFtr590
 寺田に案内され、夜の空き地を訪れた克己。周囲には電灯がない上、まだ暗がりに目が
追いついていないが、三十人近くが集まっていることは把握できた。
 これで克己はおおよその状況を飲み込む。
「なるほどな、とりあえず多勢で空き地に追いつめたってわけか。……で、最後の敵って
のはどいつだ?」
 首を動かす克己に、集団内でも小さな部類に入る影がひょいとおどり出た。
 はっきりとは目に映らない。だがたとえ暗くとも、克己にはすぐに分かった。
「おっ、親父ィッ!」
 立っているのは紛れもなく愚地独歩。姿形、気配、体格、全てが偉大なる空手家を示す
データと一致していた。
 理由は分からないが、独歩は臨戦態勢だ。戦わねばなるまい。
「なるほど、あんたが最後の敵ってわけかよ。たしかに俺じゃなきゃキツいかもしれねぇ
な」
 偉大な父を相手に、余裕を演じる克己。経験を除けば父を上回る自信はあるし、なによ
り今は数で圧倒している。が、独歩は薄く微笑むだけ。
「………?」
 この反応に異様な不気味さを覚えた克己は、気を紛らわせるために視線を他へ移す。
 さらに狼狽する克己。なんと独歩と克己を囲う黒帯たちもまた、独歩と似たような笑み
を浮かべていた。近くにいる寺田も同様だった。
 克己は神心会最後の敵がだれであるか、ようやく理解した。

                                   お わ り

185 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/10/06(金) 23:46:45 ID:CThFtr590
短編。
ブラック神心会です。

186 :作者の都合により名無しです:2006/10/07(土) 02:44:52 ID:lI73eTSG0
を゛を゛を゛、帰゛って゛き゛た。黄泉の国から戦士達がもごってきたぞぉ。

187 :作者の都合により名無しです:2006/10/07(土) 07:35:25 ID:LOD07AZy0
>銀杏丸さん
俺はあまりアニメとか詳しくないけど、声優さんとか訃報が続いて残念ですね
子ネタを結構挟んでいるらしいですけど、少女人形の下りは何かのパロディですか?
でも、急にバキスレとか書かれるとちょっと違和感かなw

>サナダムシさん
予想以上に早いお帰りで大変嬉しく思います。(加藤の方もいずれどうか)
神心会の宗教団体のような異常さが良くわかりますねw板枕氏が浮かばれんw
元ネタのあの空手団体も相当だけどw またちょくちょく書いてください!

188 :作者の都合により名無しです:2006/10/07(土) 12:36:39 ID:lE3WxWQn0
298 名前:はじめまして名無しさん :2006/09/15(金) 23:22:38 ID:pNL/1NTp   
         ________   
       /:.'`::::\/:::::\   
      /::            \
     /::.  /"""  """\ ヽ
     |::〉   ●"    ●" | 竹石圭佑 
   (⌒ヽ             |) (1986〜 愛知県名古屋市)
    ( __     ( ∩∩ )    |
      |  、_____  /   
      ヽ   \____/  /
       \        /
         \____/

       /;;;;;;;;;;;;`Y´;;;;;;;;\
        /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;',
      l;;;;;r'´ ̄ ̄~  ̄ ̄ヽ;;;;;!
       |;;;;;;|         |;;;;;|
       {;;;;r',;;'"゙`、  .,,;-ー、 ',:;}   植草一秀
      rゝl!. (●)│l (●), :l;jヽ 名古屋商科大学客員教授  
       〉),|   . ノ ヽ   :!ノ/   
        ゝ_.l   ゝ- '   ,jノ
        l、  ___,  /!  
         lヽ  ー‐'  ,/ ! 
          /!、`ー─‐'" /ヽ  

 竹石圭佑と植草一秀氏には多くの重大な「共通点」がある。
竹石圭佑は覗き&盗撮が趣味で高校時代にも最低2回は「覗き」「下着泥棒」で捕まっている。
顔の系統も同じで、かなりレベルの高い金魚面である。
竹石や植草氏は世の中の女性を「性欲処理の道具」としてしか見ていない。
犯罪・変態行為で互いにしのぎを削りあう両名。好敵手とも言える。
しかし、この二人の不自然なほどの重大な「共通点」から考察すると、竹石圭佑は植草一秀氏と血縁関係にあるとも考えられる。

189 :永遠の扉:2006/10/07(土) 15:00:47 ID:lUeH5i6F0
有無をいわさず一足飛びに斬り込む秋水を、総角はひらりと避ける。
そして胸の認識票に手を当て、斗貴子へまとわりついていた霧を拡散。
「確か、千歳さんだったか…… 俺を追ってきた女戦士とお前が顔見知りだと戦略上困る。
先ほどと同じようにレーダーを遮断させてもらうぞ。別にだな、悪夢を見せるのが嫌になった
とかそういう訳ではなく、戦略的に仕方なくだぞ」
霧の正体はチャフの武装錬金、アリスインワンダーランド。
密集状態での特性は、対象の持つ忌まわしい記憶を見せるコト。
つまり。それが部屋一面に拡散した以上……
「戦術級最強レベルの相手が復活する」
斗貴子の瞳に光が灯り、彼女は手負いの獣のような哀愁入り混じる壮烈な叫びを上げ、突撃。
狙われたのはシルクハットの刀傷を押さえつつ、斗貴子に背を向けドタドタと窓際まで逃走。
「さすがにこれは恐ろしゅう! 自衛の許可を頂きたくぅ〜!!」
「許す。さっきの爆発をしのいだ時と同じ手段を使いつつ、部屋の中央へ行け」
「多謝ですっ!」
恭しくロッドを振るう小札の周りに紙吹雪が舞うと同時に、総角めがけて草鞋が地を摺る。
「小札まで呼びつけ、何を目論んでいる」
踏み込み踏み込み攻め立てる秋水の斬撃は、剣風むなしく一筋の毛にすら掠らない。
「総てを手に入れる。それだけだ。昔も今も、コレからも。さぁ、発動せよ」
胸元にて左手で握り締めしその金属片は……
「認識票(アイデントフィケイションタグ)の武装錬金、ザ・ブレーメンタウンミュージシャンズ」
袈裟懸けのソードサムライXが、金属と絡み合う甲高い音を立てた。
総角の手にあったのは刀。
ソードサムライXに比べれば長さはやや劣る直刀で、真四角の鍔をあしらっていた。
微細な形状こそ異なれど、それは正しく忍者刀の形状をしていた。
攻勢から一転、秋水は飛び退き、正眼に構え直す。
が、総角は攻撃せずなぜか天井に向けて刀を投げる。
怪奇。刀は天井に刺さるコトなく、されど弾かれるコトもなく。
波紋と稲妻を巻き起こすと埋没──いや、下から上に投げられた物を「埋まる」「没する」と
表現するコトは甚だそぐわぬ行為だが、外見の特徴上、敢えてこの表現とする──した。
「シークレットトレイル必勝の型。真・鶉隠れ」

190 :永遠の扉:2006/10/07(土) 15:01:33 ID:lUeH5i6F0
朗々たる声と、建物から縦横無尽に秋水を襲う刃のうねりは、当然のコトながら別途戦闘
中の斗貴子の耳にも届く。
(再殺部隊の戦士の武装錬金はおろか、技まで──…)
振り返りそうになる首を強引に正し、小札に向かう。

(いや! アイツがどうなろうと私には関係ない!)

──先輩たちだって今夜のこの夜がきっかけになって、二人ぼっちの世界から新しい世界
が開けるかも知れないんだ。

(そう言ったカズキをアイツは──…)

鮮明に覚えている。背後から日本刀を突き刺す秋水を。
その目はいかなるホムンクルスよりも濁りきっていた。

(どうなろうと知ったコトじゃない)

だがカズキはこうもいっていた。

──だから簡単に、命を切り捨てちゃダメなんだ

斗貴子は正体不明の激しい葛藤に頬を歪めると、八つ当たりのように生唾を嚥下した。
(今は目の前の敵に集中!)
小札の眼窩目がけて繰り出した人差し指と中指は、されどピンク色の光線に弾かれ、斗貴
子をつんのめさせるだけに至った。
歯噛みする彼女の顔は霧に射しこむいかがわしい蛍光に彩られ、不健全な夜の店にいるよ
うだ。
「武装錬金であろーと、素手であろーと、残念ながらいかなる攻撃も通じません」
小札の前後左右上下には、クラッカーやくす玉に使われているような細かな紙片が浮遊し、
各自それぞれが無数の光線によって結ばれている。
「さて、遅ればせながら不肖の武器についてご紹介申し上げます」
口を弓状に綻ばせた小札は、先に宝石がついているだけの簡素なロッドを斗貴子に向けた。

191 :永遠の扉:2006/10/07(土) 15:03:05 ID:lUeH5i6F0
「ロッドの武装錬金、マシンガンシャッフル! 特性は……いやいや、詳細はいまだ闇の中
とし、バリアーを作れるとだけ。されどもうご存知だとは思いますが今の媒体は紙吹雪であり
ます。もりもりさんの引き起こした黒色火薬の爆発を防いだのも然り。ところで」
ロッドの宝石を唇に当てて瞑目。
「部屋の中央に行けというご命令は、おねーさんを振り切るのが前提でしょーか? うむぅ。
誘導しろとは託(ことづか)っておりませぬし、やはり振り切るのがベストかも」
150cmに満たない小柄な少女は思案にくれながら、予想外のコトを口走った。
「不肖はこれでも18ですので、色々思索する次第」
(私より年上……!? いや、ホムンクルスなら不思議でもないか。確か彼女も)
驚きがてらセーラー服姿のホムンクルスを軽く思い出す斗貴子の前で、更に驚きの出来事
が起こった。
「ここは変身をば」
小札の下半身が、見る見るうちに変じた。
ホムンクルスが変形を遂げる時の特殊なヒビ割れ音と共に、人体ではありえからぬ形状へ。
「不肖、実はホムンクルスでして。それは何かと問われたら」
元々細い足は、蹄を支えとするこげ茶色のしなやかな脚へ。
腰部も後ろに向かって肥大し、2本の脚と、ハタキのような尾を生やす。
「ロバ」
読者の皆さまはオノケンタウロスという神話上の生物をご存知だろうか。
ご存知でない場合は、ケンタウロスの下半身をロバにすげ替えて想像して頂きたい。
半人半馬のケンタウロスに対し、半人半驢馬の存在をオノケンタウロスという。
「瞬発力にはそこそこ自信があるのです」
光線をまとったまま軽快に走り去る小札を斗貴子は追うも、距離は広がる一方。
やがて部屋の中央付近、崩落した壁が霧の中でうっすらと見える場所に至る頃。
どこからともなく、音がした。
「こっちも秋水を撒いて合流完了だ。というコトで小札、やれ!」
総角の声に呼応するように響いていたのは、涼やかに透き通った水晶を思わせる音だ。

192 :永遠の扉:2006/10/07(土) 15:03:48 ID:lUeH5i6F0

チャリリ チャリリ チャアリィリリン! チャリリ チャリリ チャァルィッリンッリン!
チャリリ チャリリ チャアリィリリン! チャリリ チャリリ チャァルィッリッリリン!

「あいふぃーあら・りふれくしょん♪ 見つめ、返す、瞳にぃー」

歌っていた! 小札零は歌っていた!
霧中に薄っすら浮かぶ小さな影はロッドを振り振り歌っていた!
童女じみた地声からは想像もできないほど中性的なハスキーボイスに斗貴子はちょっと聞
き惚れた。
(意外に上手……じゃない! 斃さないと!)
「えがいて!」
奇麗な手さばきでロッドを振る。
指揮者のように力強く。魔法少女のように可憐に。
「はるかな! ねばえ───んでぃーんぐ・すとぉりぃー!!」
斗貴子の眼前で、崩落した壁が光を帯び始め、それはやがて床から天井まで網の目状に
伸びて広がり、斗貴子の行く手を阻む。
本来その近くには柱があったが、先ほどの総角の入れ替わりによりいまはない。
だが光の網は柱の形すらも忠実に再現し、そこから部屋の端へと続いている。
すなわち、部屋は光の網に分断された形になる。
「哀しみも痛みも振り切るようにはばたく! 反射モード・ホワイトリフレクション!」
とかく白い光だった。
色的には霧中で目立たぬ筈だが、蛍光灯をはるかに凌駕する光量がそれを許さなかった。
部屋の中央にひしめくのは、剥き出しの高圧電流のような煌びやかな存在感。

小札の歌唱、続く。
「熱く夢を重ねて! あやまち、恐れーずに、求めあーう青春!」

斗貴子はその激し易い性格から短慮に見られるが、けしてそうではない。
戦いに巻き込んだ者があれば状況を説明して動揺を押さえるし、銀成学園において復活した
錬金の魔人との戦いでは、果敢に戦おうとするカズキを押し留め、戦士長・防人衛の到着を
待とうとしたし、桜花との戦いにおいてはまず彼女の武装錬金の特性を知ろうとした。

193 :永遠の扉:2006/10/07(土) 15:06:04 ID:lUeH5i6F0
もっともその直後、キレて桜花ごと給水塔を破壊しようとしたのは弁明のしようがなく、直属
の上司たる防人衛も「優秀だがひとたびキレると手に負えない」と評価している。
とりあえずこの局面においては、まだ優秀な側面が先立った。
というか、何度もバリアーに攻撃を阻まれてなお突っ込んでいくのは脳足らずの獣かバイオ
ハザードアウトブレイクのAIPC(※)ぐらいであろう。

(※ 主人公に同伴するNPCの一種。棒切れを執拗に差し出したり、電磁シャッターに突っ
込み体力を浪費するのが使命の愉快な生物)

小札はいよいよ2番を歌い始めた。しかしJASRACが恐いので歌詞は控える。
筆者は昔、某所でドラゴンロードの歌詞を書き殴ったのだが、その翌日、ボロボロの蓑を身
につけ錆びた大鉈を持つ身の丈2mはあろうかという老婆が我が家の門戸を叩き、多額の
マネーを要求してきたコトがある。それがJASRAC社員であり、当方に金がないと知るやい
なや筆者の愛犬ダークディメンションの尻小玉を引き抜き、壮絶な最期を遂げさせたので悲
劇はもうたくさんだ。

斗貴子は手近なコンクリート片を拾い上げ光の網にぶつけてみる。
それは轟然と弾かれ、投擲速度を遥かに上回る勢いで斗貴子の顔面を襲い。
「金城も昔これでやられた。この光への攻撃は倍速で返される。迂闊な真似はよせ」
声と共に、さらしを巻いた手が石を受け止めた。
斗貴子は憎悪に顔を引きつらせた。
そもそも彼女は、声の主が嫌いだ。
「キミにいわれずとも分かっている。だから石を投げた」
すくりと横に立つ秋水を見ようともせず、拳を握った。
心中を占めていたのは、いっそ爪を食い込ませて血を流してみたい自虐じみた衝動。
かつてカズキを刺した男にして元・信奉者(ホムンクルスに従う人間の総称)の秋水とは相容
れぬ斗貴子なのだ。
もっとも突き詰めると、カズキ以外の男性に助けられる自分というのが非常に惰弱で、汚く思
えたコトの方が主因となるが。
「さて、しばらくはこちらに来られまい」
両者と光の網一枚隔てて、10mほど先に佇む総角は、ポケットから小瓶を取り出した。
透明なせいで、赤味がかった土がぎっしり詰まっているが見える。

194 :永遠の扉:2006/10/07(土) 15:08:15 ID:C+l9JH7O0
もっとも霧のせいで斗貴子たちには見えなかったが、
「取り出したのは恐らく血や皮膚、爪の類だ。気をつけろ。奴が他人のDNAから発動する武
装錬金は、本来そのままの威力を持つ」
秋水は思い当たるフシがあるらしくソードサムライXを握り締め、光る網目を睨んだ。
「覚えてくれていて光栄だ秋水よ。そう、俺のザ・ブレー…長いからブレミュとしよう。ブレ
ミュが他者の武装錬金を発動する条件その2は、創造者のDNAを接触させるコト」
小瓶に入っていたのは、血が染み付いた土だ。
総角がそれを指に掬い、認識票に撫で付けると。

「HERMES DRIVE」

縦長の六角形をしたパールグレーのプレートに、青い文字が浮かび上がった。
なお、プレートの尖端にはギザギザがついている。死者の口をこじ開けるための装飾らしい。
同時に総角の左腕に、六角形の楯が出現する。
「もっとも完全に再現できる分、持続時間は5分ほど。接触させるDNAが血の一滴だろうと
身体まるまる総てであろうと5分ほど。しかもDNAから発動できるのは生涯一度きりで、あと
は見たままの武装を使うほかない…… 少々惜しい気もするが、お前たち相手に退却する
にはこれしかないだろう」
「させるか」
厳然とそびえ立つ光の網が鋭く薙がれ、小札たちのいる方向を内側とすれば内側に向かっ
て青い切っ先が姿を覗かせた。
「のわわっ!? かつてL・X・Eの皆様方を苦しめし、難攻不落のホワイトリフレクションがあ
っけなくぅ〜!! 不肖のこの動揺、論ずるに術がござりません──ッ!」
網は切れ目から光を一気に拡散させて行き、そこから秋水、更に斗貴子が浸入した。
「驚くコトもないさ」
六角形の筐体をペンでちょいちょいとつつきながら、総角はにべもなく回答。
「お前のマシンガンシャッフルで作られるバリアーは、生体エネルギーによる物だ。対する
秋水のソードサムライXは刀身からエネルギーを吸収し、下緒から拡散する。フ。昨日、扇を
斬り捌くのに使ったからよく知って」
得意げなその姿勢だったが、肘の辺りをぐいぐいと引っ張られて崩れた。
ペンも筐体をぐらーっと斜めに掠り、さすがに総角はムっとした。

195 :永遠の扉:2006/10/07(土) 15:10:57 ID:C+l9JH7O0
「わわ〜! 遼来々! 遼来々! 惇も来々〜! お急ぎくださいもりもりさんっ!」
疾風がごとき勢いで駆け寄りつつある秋水と斗貴子に、小札の動揺は甚だしい。
必死の形相で総角を見上げ、肘の辺りを一生懸命くいくい引っ張っている。
「やれやれ。急かすなら大人しくしていてもらいたいものだが」
彼は語尾をやや荒げて、コメカミの辺りに怒りマークを露骨に乗せた。
「逃すか!!」
秋水と斗貴子は気迫充満の面持ちで一気に踏み込んだ。
だが、総角と小札の周りの光はにわかにくすみ、
「さらばだ。できれば戦いのないコトを祈るぞ。それが互いのためだしな」
ソードサムライXは空をナナメに切り裂き、バルキリースカートは虚を突き通し。
総角と小札の姿が、その場から消えうせているのを証明した。
霧も壁の光も消失した真っ暗な部屋。
その一面に金属が跳ねる音が響き、すぐかき消えた。

「しかし……まさか迷わず逃げるとは」
報告を受け呆然と呟く防人の横で、千歳はある作業をしながら自省していた。
(……浮かれていたようね。たとえ後始末まで頭が回らなかったとしても、せめて私たちがい
た場所の監視ぐらいはすべきだった筈)
ブレミュの発動にDNAが必要、と聞いて即座に思い当たった。
彼女は昨日繰り広げた戦闘で、血を流した。
執拗に自動回避を繰り返すホムンクルスを撃つべく、彼の背後に瞬間移動し、根来操るシー
クレットトレイルの刀身を掴み取った。
自然、手に創傷ができた。当然、出血も。
その時に血がこぼれた土を元に、総角はヘルメスドライブを使ったのだろう。
「もりもりのヤローらしいといえばらしいけどな」
ぷかぷかと宙に浮かぶ乳児大の人形……御前が短い手を組み、唸って見せる。
声は低く潰れたガマガエルのようで、愛嬌はあるが不快な響きも少しある。
「何はともあれ、2人ともお疲れ様。秋水クンも、津村さんも」
茶道の家元のような柔らかな手つきでお茶をいれる桜花を前に、秋水と斗貴子は押し黙っ
ていた。
彼らの空気は重苦しく、防人は心配そうに声をかけた。
「戦士・斗貴子。少し休養を取った方が──…」

196 :永遠の扉:2006/10/07(土) 15:12:32 ID:C+l9JH7O0
「構いません」
斗貴子はうつむいたままポツリと告げて、沈黙に戻る。
真・鶉隠れにより剣道着をあちこち裂かれた秋水も、実に気難しい表情だ。
止血処理自体は施したが、剣道着に染み付いた血痕が痛々しい。
「まぁそう落ち込むな。結果的にキミたちは勝ったんだしな」
千歳の手には、3cm程の長方形の金属片。蝶の羽の一部と思しき意匠が施されている。
総角たちの去った場所に落ちてたそれを、斗貴子が防人に提出したのはつい先ほど。
防人は無精ヒゲまみれの口をにしゃりと歪めた。
「さすがに陣内の時と同じ轍を踏む訳にはいかんから、調べてもらっている」
「どうやら発信機や盗聴器の類は仕掛けられていないようね」
確認作業を終えた千歳に続いて、御前が口に手を当て一声唸る。
「でも何のつもりだアイツ?」
「だいたい、見当はつきますけど」
桜花は俯く斗貴子を見て、寂しそうに笑った。
「侘び代わり、か」
秋水の呟きに、斗貴子は軽く歯軋りした。
傷をやすやすと暴いた総角も、事情を察する秋水も同列で腹立たしい。
「ともかく。こちらは1枚。向こうは0枚。話を聞く限りでは俺たちがリードしている。だから今日
はもう休め。戦士・秋水。戦士・斗貴子」

「いやしかし不肖、コレを手がかりに東奔西走、廃墟の中をうろうろしておりましたのに」」
神社に続く石段の下に佇む影が2つ。総角と小札だ。
「記念すべき最初の1枚などと言われて、あやうく、最後の1枚では?と聞き返しそうに」
小札がロッドを振ると、防人の手にあるのと同型の金属片が出現した。
ただし意匠は異なる。
防人は蝶の羽の一部、小札は蝶の触覚、が描かれた物をそれぞれ持っている。
総角は階段に足をかけて、カツカツと昇りはじめた。
「危なかったな。お前の一言で悟られるところだった」
表情は実に得意げで不敵な印象だ。

「6枚必要な割符のうち5枚は、既にこちらの手中にあるというコトを」


197 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/10/07(土) 15:19:54 ID:C+l9JH7O0
誤植発見…… 
>>193最後の1行目、× 詰まっているが → ○ 詰まっているのが
>>196 × 防人は蝶の羽〜  →  ○ 千歳は蝶の羽〜

バレさん、お手数ですが修正をお願いいたします……

いよいよアニメ開始。どうなるのか心躍る気分です。

>>108さん
こういうの好きなんです。別個に展開していたお話が、1つの軸を元に収束していく感じ。
千歳の過去はもうすぐ小説版にて明かされそうですので、永遠の扉でも反映したく。
斗貴子さんは、ストーリー的に段々段々閉塞感に囚われていくかも。

>>109さん
ファイナルを読みながら斗貴子さんを描いたのですが、内面を考えるとジワリときます。
喪失と闘志の間で揺らぎながら、なお戦いに身を投じる彼女を描いてみたくもなりますが。
敵側はしばらくLXE編のノリで行きますよ。敵だけどどこか愛嬌のある連中として。

>>110さん
巧み……かどうかは分かりませんが、ありがとうございます。
キャラの内面をああだこうだと想像しながら描写するのは一番楽しいコトですので
気に入って頂ければ僥倖です。ちなみに一番描きたいのはバタフライ。近いうちに必ず。

>>111さん
描いてみると、基本的な造詣がかなりしっかりしてるのが分かります。>斗貴子さん
冷静さと凶悪さを併せ持ち、かつ根っこは女性らしいので、戦闘に参加させるととても映えます。
しかしですね、まひろでも結構シリアスはいけますよ。ええ。

198 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/10/07(土) 15:20:40 ID:C+l9JH7O0
>>ふら〜りさん
欠点が浮かばないというのは、キャラ造詣上困りそうなのですが、本当に彼は完璧超人。ま
るで比古師匠。でもモチーフは読み切り版の剣心+カブトの「FULL FORCE」に漂う「自信に
裏打ちされた静かな熱情」。それはさておき、いっそ部下に足を引っ張らせる方が良いかも。

>戦闘神話
主人公らしくボーイミーツガールの王道を行ってますね。少女を守る少年
というシチュは、武装錬金でますます好きになった要素。強敵が相手だからこそ
こういう王道的な精神作用がストレートに爆発する熱血展開が映えるのですよ!

自分のバタフライ像は、モノローグと人物説明で5レスぐらい使ってしまうかも……
>斗貴子さん最高です
ありがとうございます。斗貴子さんについてはそれはもう、原作のヒロインですから大事に。
熱さと叙情を上手く織り交ぜて、少しでも原作に近くなるよう務めます。

199 :作者の都合により名無しです:2006/10/07(土) 18:33:29 ID:5PBp0UZk0
クズ作者共がちっと戻ってきたところで、このスレもう終わりだろw


200 :ふら〜り:2006/10/07(土) 20:49:28 ID:tkoMtBKR0
>>ワルツさん
刃牙に響鬼さんに、とそれぞれの作品における最強クラス主人公が続いていきなり飲茶と
きましたか。しかもたったこれだけのシーンで、期待に違わぬヘタレ臭が早くも漂ってて。
となると意地悪な予測としては、本部さんと裁鬼さんが遭遇とか。さぁ次は誰が来る?

>>サマサさん
相変わらず掴みどころがなくて反論し辛い狐理論。決して味方ではないけれど、攻撃して
くる敵でもなし。自分の命も他人の命も分け隔てなく見つめている、但し思いきり軽く。
ヘンな形で執着のない、ある意味悟り切った彼が、この戦いの終焉の時に何を思うのか……

>>銀杏丸さん(いろいろ大変そうですね。焦らず囚われず楽しく、執筆して下されぃ)
>元は二の腕につけていた腕輪だ、をメリケンサックのように握りこんで
昔は腕の太さだったのが今じゃ指で握りこめる、と。簡潔かつ具体的な肉体的成長の表現。
前にも書きましたが貴鬼がちゃんと貴鬼のまま、成長してお兄さんになったのを見るのは
楽しく……リアルでの時の流れも実感。で今の彼なら精神面以外は当時の星矢より上では?

>>サナダムシさん(SSの一休みにSS、ですか。流石也!)
冒頭を見て、政治や経済分野での強さをも手中にって展開を予想したんですけどあくまで
拳か。原作のドリアン編で既に結構うすら寒かった神心会、実際やろうと思えばできそう
ですよねこれ。そして因果応報、人を殴った拳はやがて自分にと。コワ面白いオチでした。

>>スターダストさん(WのOVA? モノは観てませんが当時ダンパでよく聴いた記憶が)
男性の人魚なら本で見たことありますが。少女のケンタロウスってなかなか……可愛いかも。
小札のじっとしてなさっぷりに相応しい。で、そんな小札のドジを総角は何だかんだ言って
ほっとけないとか。小札も無意識に、イザって時は必ず総角が守ってくれると信じてるとか。

201 :作者の都合により名無しです:2006/10/07(土) 22:40:43 ID:GyUgxUOL0
満天の星が降るようなニュージーランドの夜。屋上の屋根に昇った私はあることを考えていた。
「おい、お茶だぞー」
のんきそうに見えて実は危ない橋を幾度も渡っているらしいエノラさんが紅茶が乗ったトレイを持って顔をみせる。
「あ、いただきます」
丁度喉が渇いていたところだ。この差し入れはありがたい。私はトレイを受け取ると、出窓の平らな部分にそれを置いた。
「久しぶりに晴れたな」
何の気まぐれか、エノラさんが屋根に上がってくる。もしかしたらコヨミちゃんの機嫌が悪いのかもしれない。
いや、実際悪いのだろう。今回の仕事は私の単純なミスによるものだったからだ。
ダイブ・アーム通称DAのバラスト調整不良。ありきたりな見落としだった。
「あー、その、なんだ」
エノラさんがタバコを取り出し、火をつけながら言ってくる。
「大将、気ィ抜くなとよ」
今の私にはずしりと思い一言だった。何も言えない。言えた義理じゃないし、何を言っても言い訳になる。
黙って紅茶をすする。ミルクティーの癖になぜか苦かったのは私の気のせいだったか。
しばらくの間、ハウラキバリアに波が寄せる音だけが辺りに響く。
エノラさんが最後の一服を終えて火を消した。
「あのよ、大将が言ってたんだけどよ」
くしゃくしゃになったタバコの箱をポッケにしまいながら、エノラさんは話を切り出した。
「お前さんの案、考えてみるってよ」
頭の中にショックが走った。
「ホントですか!」
ガバッとエノラさんの鼻先に詰め寄る。
「タクティカル・レスキュー・スーツ(TRS)入れてくれるんですか?」
エノラさんはびっくりして引いている。
「あ、ああ。でも過度に期待するなよ。考えてみるって言ってただけだからな。あいつの気まぐれはいつものとおりだし」
そんなエノラさんの声は聞こえてこなかった。私の頭の中には数々のメーカーの海難救助用潜行服のデザインが乱舞し、それどころではなかった。
「エノラさんありがとう!」
新参の私の意見がすんなり通る訳はない。コヨミちゃんに口添えしてくれたであろうエノラさんに抱きついて私はほっぺにキスをした。
「おいおい、俺にサービスしたって何も出んぞ!」
多少顔の赤くなったエノラさんが大声を出す。私はかまわず抱きついた。
まだ、ギガンティックトウキョウに関わることになる前の泳がされていた平和なときの出来事だった。

202 :作者の都合により名無しです:2006/10/07(土) 22:42:41 ID:GyUgxUOL0
通りすがりの者です。なんでもありということだったので、ちょいとお目汚しさせてもらいました。
ネタは分かる人だけ分かってください。では失礼しました。


203 :作者の都合により名無しです:2006/10/07(土) 23:29:38 ID:mvLP6HSr0
>スターダストさん
18ですか。肉体的にも精神的にも幼いけどキャラはいいなあ
でも最後のくだりを見ると、本当に重要キャラみたいですね。

>通りすがりさん
初登校乙です。正直まったく元ねたがわかりませんが、
なんとなくほのぼのとしました。またお願いします。


204 :作者の都合により名無しです:2006/10/08(日) 00:42:35 ID:mFj87m8D0
スターダスト氏と名無しさん乙。

スターダストさん、本当に錬金好きで書いているみたいで感心するなあw
原作ではカズキやトキコに隠れがちだった秋水たちが生き生きとしてる。
錬金&和月漫画への愛情の賜物ですね。

名無しさん、今回は短編みたいですけど通りすがりといわず、また何か投稿して下さい。
読んだ感じ、SFぽい漫画かアニメかラノベかな?

205 :作者の都合により名無しです:2006/10/08(日) 10:10:42 ID:p6c1irYX0
スターダストさん、斗貴子が痛々しくて悲しいですね。
これは錬金ピリオドやアフターに直接繋がる話、ですよね?

206 :二重の極め:2006/10/08(日) 16:38:05 ID:DRvitKKX0
神心会本部五階。
自分のために用意された一室で愚地克己は思い悩んでいた。
「親父に勝てる気が一向にしねぇ…」
このことである。

体格
俺 > 独歩
スピード
俺 > 独歩
パワー
俺 > 独歩
スタミナ
俺 > 独歩
技術
俺 > 独歩
・・・・・・
・・・

俺 > 独歩
経験
俺 < 独歩

「なぜ勝てる気がしないんだろう?」

207 :二重の極め:2006/10/08(日) 16:39:44 ID:DRvitKKX0
経験以外の総てで俺が上回っているはずだ。

父とはいえ、武道家たる者、それは
「納得するわけにはいかねぇ」
というわけだ。

確かに経験の差は大きい。だがそれを補って余りあるものを克己は持っているはずである。
それに経験があると言っても最終的にはそれは技術や戦術として現れ、空手として外に出てくるのだ。
勝てない理由がない。

「敢て言うならオリジナリティか…」
基本しか知らずに戦いの中で愚地流を、そして神心会空手へと技術を作り上げてきた独歩と、既に存在した空手を完成した(つもりだった)克己。
その差が出ているのだろうか?

そういえば俺のオリジナルの音速拳と親父の菩薩の拳。
理屈では音速拳の方が速いはずなのに、作中で決まるのは、いつも菩薩の拳の方だ。
「どうすればいいっていうんだよ」
窓辺に立ち、カーテンを開け夕焼けを眺めた。
「俺はこんなにも無力だったのか」
ジワリとこみ上げてくる思いに胸を焦がした。

その克己の目の端に一つの光景が飛び込んできた。克己の両目とも2.0の視力が、ビルの狭間で一羽の鳥がトンボを鮮やかに捕らえるのを見た。
初めはどうということはなかった。
「トンボか、んん?やごは何処で育ったんだ?この大都心で?」
少ししてポンと手を打った。
「ああ、ああ、空きビルかぁ。バブルのなごりがまだ残ってやがるのか、おいこら日本経済?あぁ?きにくわねぇな畜生め?」
ストレスにさらされている人間の独り言は極めて不可解である。
よってあまり気にしてはならない。


208 :二重の極め:2006/10/08(日) 16:40:59 ID:DRvitKKX0
しかし、その瞬間、日曜の朝八時に見ていたテレビドラマが克己の脳裏にフラッシュバックした。
準主人公の青年が一般庶民に敗れ、悟りを開く場面である。

「これだぁァァ!!!」

大声を出し、手を打った。
今度は「ポン」なんて生易しいものではない。
下段突きで目に入ったソファを切り裂きガラスを割り、床板を貫いた。
割れたガラスは病院から復帰したばかりの末堂の頭頂部に刺さり、病院へ逆戻りさせる破目に陥れたが、それはあまり関係ないので置いておこう。
「ITE」それは末堂の最期の言葉だったのだろうか(シグルイ風に)
ちなみにこれらは手を打ってから、血中アドレナリン濃度が最高値を記録し、平常値の115%まで下がるまでの一瞬(とはいえない)の出来事だった。

 
大声で叫び廊下に飛び出し、興奮に任せしゃべり続ける。
よしよしよしよしよしよしよーし、いい子だ。
「これならなんとかなりそうだぞ。」

途中三人の門弟とすれ違ったが、お互い見向きもしない。
というか眼を合わせるのが怖い。
「やべぇよ、俺の兄貴のダチがラリでちょうどあんな感じだったぜ」
金髪に髭の(イメージカラー黄色っぽい)の太った少年がいう。
「まぁ、そういうなって、横田、街中でリルボム使う赤の戦士よりは無害だって」
イメージカラー青といった感じのつんつん頭の青年が返す。

さて克己は道場に駆け込み、門弟に何事かを頼み、二三の試しを行うや否や独歩の部屋に駆け込んだ。


209 :二重の極め:2006/10/08(日) 16:42:54 ID:DRvitKKX0

「親父ぃぃ〜、今日こそ決着つけようぜぇ」

独歩の隻眼がギロリと克己を睨みあげ、克己は一瞬ひるむが、即座に睨み返す。
二人の間に見えない火花が飛び散り、間にあった机の真ん中に焦げ跡がついた。
ちなみにこの机、松尾松山とおそろいで買った上等なマホガニー製である。
要するにお気に入りの一品だ。

独歩の心に涙が流れた。机も悲しいが、自分の教育に自信がなくなってきたのだ。
「いつからこんな子になっちまったんだろうなぁ…夏江」
この前まで
「お父さん、やっぱりあなたは才能がない」
とか誇らしげに言ってくれる、優しくて折り目正しい、まっすぐな空手をするいい子だったのに。

やはり呼び方ってのは

親父ぃぃぃ、ふしゅる <<(越えてはいけない壁) <父さん<< (越えられない壁)<<お父さん<父上 <(超えて欲しい壁)< おとうさま♪

だろうがよ、やっぱりよ。

呼び方だけならまだ良いのだ。今の克己の空手は邪道に堕ちている。
「いっちょもんでやらねぇといけねぇな」
いやいやながら椅子から立ち、顎をしゃくって道場へ促す。
「いこうや」

二人で誰もいない道場に降りていく。
使い古した空手着に帯をギュッと締め、二人同時に畳の中央に立った。

「稽古をつけてもらうのも久しぶりだな、親父」


210 :二重の極め:2006/10/08(日) 16:44:02 ID:DRvitKKX0
意気揚々と殺気を叩きつける息子。
「ふん、最近の若いのはこらえ性がなくていけねぇな」
笑いながらもうんざりとした様子の独歩。

ふん、俺が上回っているリストに
殺気
俺 > 独歩
を加えなきゃならねぇな
と克己は内心息巻いた。

二人が向かいあって構えると、三メートルほどの空間に空気(加えてけだるさ)が凝縮していく。

独歩の右中段正拳が襲い掛かかる。
克己に当てるには速度も威力も篭もらぬ拳。
「遅い、かすりもせぬわ、かすりも・・・」
しかし、かわしたはずの独歩の拳は克己の肩を打ち抜いた。
「くっ」
吹き飛ばされ、片膝をついて立ち上がった。
これが稽古試合ならば既に技有りである。

「克己よ、おめぇ弱くなっとりゃせんか?」
独歩が諭すように言う。遠まわしに言っているのだ。
"昔の克己ちゃんに戻ってくれ、プリーズ。"(意訳)
拳鬼(おに)は(心の中で)無念の涙を流した。

「まだまだァ、クァ、オラァ」
立ち上がり突進する克己。


211 :二重の極め:2006/10/08(日) 17:05:57 ID:DRvitKKX0
上段、下段、対角線のコンビネーションで独歩の正中線をこじ開け、四連突きへと繋ごうという腹だ。
上段 ― 回しうけの右手で裁かれる。
下段 ― 回しうけの左。
打ち下ろしの右 ― 返ってきた右
左のローキック ― 下段受け

開いた!正中線ッッ!

正中線へ最高のタイミングで四連突き始まりの右の正拳。
だが、その瞬間克己の顔と腹を衝撃が襲い、右拳は空を切った。

大きく踏み込んだ独歩の双掌打、そしてがら空きの右顔面へ更に一歩踏み込んだ横突き。
一瞬意識が体からはみ出し、再び畳の上を転がる。
ぎりぎりで威力をそらしたが、このダメージ。
まるで大人と子供である。親父と息子の差はそれほど大きかった。

「併せて一本だな、しめぇだ、けぇるぜ」
ふぅとため息をついて背を向ける父親。
だから昔のおめぇに戻ってくれ克己。

何を言っているんだ、まだ俺は何も見せてねぇぞ―――待てよ親父
「何いってやがる、親父、俺はまだ立ってるぜ」
鼻血にまみれ、右頬から血をにじませ、眼ににじんだ涙に視界を遮られながら立ち上がり、独歩を睨みつける。
「ほう」
独歩の顔に嘲りと、嬉しさを秘めた笑みが浮かぶ。


212 :二重の極め:2006/10/08(日) 17:06:49 ID:DRvitKKX0
「俺と組み手してるときによ…」
ぼそぼそと克己がつぶやく。
「背中向けてんじゃねぇぇ」
振り返り様の独歩に渾身の胴廻し回転蹴り。
一歩身を引いてかわした独歩に、被せるように大振りの左。
右受けから鉄槌で迎え撃つ。
それを大きくしゃがみこみながら、左脇下へ逃れる。
同時に右フック。
不十分ながらもロシアンフック気味に入ったそれは独歩の顎を十分に下げた。
その顎先を、最高にバネを聞かせられる姿勢から放たれる渾身の左拳が打ち抜く。
本来空手にはない拳

「アッパーカット」

豪快さとは裏腹に、三日月のような美しい弧を描いて立ちあがる左腕。
独歩の体は、浮き上がり、畳を転がった。

「はぁはぁ」
肩で息をしながら、倒れた独歩を見下ろす。
「一本だぜ、親父」
たれてきた鼻血をぬぐう。

「くっくっく」
不意に独歩が笑う。
「ハァッハッハ」
克己は驚愕に眼を見開く、効いていないのか?
「効いた、今のは効いたぜぇ、頭の先から足の先までジーンと痺れた」
克己に眼を向ける。
「まぁだ、眼の前がドロドロしてらぁ、クックック」
糸が切れたかのように笑う独歩を見て克己は恐怖に駆られた。


213 :二重の極め:2006/10/08(日) 17:08:59 ID:DRvitKKX0
これが俺と親父の差なのか。
「だがまだ寝れねぇぜ、克己よ」
おめぇが空手に戻ってこねぇからよ
「よっこらせ」
独歩はゆっくりと立ち上がり、大きく右の拳を振り上げながら、またゆっくりと克己に近づいていく。
「いくぜ、克己」

やはりこれまで範馬星人と戦ってきた親父と、地球の生き物としか戦っていない自分の間には大きな差があるのか。
俺は空手のエリートだが戦いのエリートではないのか。
ここはやはり、さっき閃いたあの技しかない。
一介のショ・ミィーンですらエリートを破るあの技。

独歩が無造作に振り上げた拳に対し、鶴の構えを取る克己。
「克己、おめぇ…」
「言うな親父」

まるでスローモーションのように近づいてくる独歩の拳。
確かに拳は触れるべからざる凶器だ。
だが、腕は?
鶴の構えにより、攻撃部位を正面に限定、独歩の腕を白刃取りし、横に逸らす。
その後開いた横面に一撃。するはずだった。

手首捕まれてなお独歩の拳は力強く克己の両腕を押しのけ、克己の左頬に突き刺さった。
崩れるように倒れる克己。
体と頭の連結が断たれ、脳震盪も起している。
「ダメなのか」
立ち続けようという努力もむなしく、克己は畳の上に横たわった。

しばらくして、眼を覚ました克己の横には独歩がいた。

214 :二重の極め:2006/10/08(日) 17:10:55 ID:DRvitKKX0
「―――克己」
独歩が僅かに微笑みながら言う。
「日曜の朝八時」
克己がハッと眼を見開く。
「俺も毎週見てるんだぜ」
そういうと独歩は道場を出て行った。

「ハッ…」
手を顔の上に載せて、眼を塞ぐ。今はまだ天井を見たくはない。
「・・・かなわねぇなぁ」
克己の顔に少しだけ笑顔が戻った。


本日は晴天なり。(あと、おとうさん♪と呼べ)

二重の極め 完




鬼と人のワルツの戦闘シーンの練習も兼ねて書いてみました。
もしよければ、戦闘シーンで改善できそうな点、気になった点など教えていただけると幸いです。
話が下手なのと、途中までネタなのことは御容赦の程を。

>140
はい、下っ端なのでこき使われてます。好きでやってるのが唯一の救い。

>ふらーりさん
飲村一茶と書いたつもりが、飲茶に変換されていました。
恐るべし脳内変換。


215 :作者の都合により名無しです:2006/10/08(日) 17:29:59 ID:sk9mcr4B0
誰かと思ったら鬼と人さんか!
こういう短編もうまいですね。
克己の独歩を慕う心と、超えられないジレンマみたいなのがいい。
最後ほのぼので終わったね。

216 :作者の都合により名無しです:2006/10/08(日) 19:14:44 ID:p6c1irYX0
最初はサナダムシさんかと思った

才能は上のはずの克己がどうしても超えられない壁の独歩
でも克己には超えたくないって部分もあるんでしょうな

こういう短編もまた書いてください

217 :さい ◆Tt.7EwEi.. :2006/10/08(日) 19:18:09 ID:TcxLWLrs0
>>174で質問した者ですが、作品を投稿させて頂きます。
元ネタは『武装錬金』と『HELLSING』です。


218 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/08(日) 19:21:47 ID:TcxLWLrs0
――200X年 埼玉県銀成市 銀成駅前通り

『段階的な武装解除を表明していたIRA暫定派軍事協議会は○月○日未明、武装闘争
の終結を宣言しました。独立国際武装解除委員会はこれを受け入れ――』

 男はコーヒーの置かれた純白のテーブルに頬杖を突き、商業ビルの巨大スクリーン
に映し出されたニュース映像を、ジッと眺めていた。
 しかし、どう見ても彼の外見は、そのニュース内容とは対極に位置している。
 世を忍ぶ仮の姿だった筈が本来の姿になってしまった、汚れ気味のツナギに軍手と
いう日曜大工ファッション。ボサボサ頭に無精髭。
 どれもがお堅い真面目な国際ニュースとも、待ち合わせの為にやむなく座っている
オープンエアのお洒落なカフェとも、到底似合っていない。
 他の席でお喋りに花を咲かせているのは十代や二十代前半の若い女性客ばかり。中
には男性客もチラホラ見られるには見られるが、全てカップルの片割れという有様だ。
 また、彼自身もこの空間が自分に不釣合いな事くらいは自覚しており、いくら久し
ぶりにかつての同僚達が集まるとはいえ、こんな店を待ち合わせ場所に指定した友人
を恨まないでもなかった。
 だが、偶然、眼に耳に入ったそのニュースはそんな呑気な気分を霧散させ、たちま
ち苦さにまみれた過去の記憶を甦らせた。
 IRA。アイルランド共和国軍。
 多少、国際情勢に聡い者なら誰でも知っている武装民族主義組織。
 人外の化物達を、そしてそれを造り出す錬金術師達を殲滅する事が任務の自分とは
無縁の筈の組織。
 なのに、その任務が為に関わらざるを得なかった、狂人(テロリスト)達の組織。
「IRA、か……」


219 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/08(日) 19:23:22 ID:TcxLWLrs0
 そう呟くと、傷跡の残る胸にチクリとした痛みを感じる。
 その胸の痛みから、自分が関わったもうひとつの、IRAなど足元にも及ばない程の
巨大な世界宗教組織の事が浮かび、更にはその狂信者である一人の男が脳内に鮮明に
浮かび上がる。
 狂気と凶気に満ちた形相、不死身とも言える肉体、人間離れした戦闘能力。
 もはや反射作用と言っても良い程に、それらの連鎖反応は彼の身体に染み込んでいた。
 あれから七年経つが身を抉るような不安は消えていない。いや、むしろ七年の歳月
を掛けて自分の心を侵食しているかのように思える。
 それでも、彼の心には恐怖は無かった。恐怖はあの時、駆逐したのだ。
 彼は、防人衛は、そう信じている。

《EPISODE1:It's hard for thee to kick against the pricks》

 ――199X年 瀬戸内海のとある島 錬金戦団本部

「任務内容は“ホムンクルスを研究・製造している北アイルランドのテロリストグル
ープ『Real IRA』を壊滅させる為、錬金戦団大英帝国支部に協力すること”」
 サングラスに逆立てた金髪というパンキッシュな風貌からは想像も出来ない、低く
優しげな声が男の口から発せられた。声は響き渡る事も無く、会議室の広々とした空
間の中に融けていく。
 もっともその風貌と物腰のギャップに驚く者は初対面の、しかも錬金戦団とは無関
係の人間だけで、戦団内の全ての人間には彼、坂口照星戦士長の穏やかで人望溢れる
人柄が当たり前のように知られている(部下を躾ける時の常軌を逸した厳しさも当た
り前のように知られてはいたが)。
 しかし、それにも関わらず目の前に立つ少年と少女は驚きの表情で照星を見つめて
いた。無論、彼の発した声ではなく、声が紡ぎ出した任務内容に驚いているのだ。
 会議室には照星の他にはその二人ともう一人、だらしない姿勢で椅子に座る目つき
の鋭い長髪の少年がいる。彼はそっぽを向き、上官である照星の話を聞こうともしな
い。


220 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/08(日) 19:24:59 ID:TcxLWLrs0
 短い沈黙の後、鈍く光る銀色のロングコートに身を包んだ少年が戸惑いを見せなが
らも発言した。若き日の防人衛である。
「イギリス……ですか?」
「そう、イギリスです」
 照星は事も無げに答える。
 その横合いから、防人の隣に立つおさげ髪の少女が、おっかなびっくり自分の疑問
をぶつけた。
「あ、あの……。でも、どうして私達なんですか? イギリス支部には私達なんかより、
ずっと優秀な錬金の戦士がいると、思うのです、が……」
 後半はゴニョゴニョモゴモゴとして聞き取りづらかったが、照星は穏やかに笑いな
がら少女の疑問に答える。
「……イギリス支部は、というよりも各国の戦団はそれ程大きな戦力を有している訳
ではないのですよ、千歳」
「は、はあ……」
 千歳と呼ばれた少女は、まるで自分の質問が大きな過ちだったかのように思い、オ
ドオドとした曖昧な返事をする。
「イギリス支部は百年前に裏切りの戦士を出して以来、衰退の一途を辿っています。
日本に戦団の主力が移された事でもそれは推して知るべし、でしょう」
 照星はフウと溜息を一つ吐き、俯き加減に話を続ける。元々低い声が更に低くなっ
ている事に、自分では気がついていない。
「アメリカ支部の場合はもっと深刻です。ボーイングやロッキードマーティン等の兵
器開発製造企業からの買収、CIAのスパイ行為、政府関係機関への内通、戦団員同士
のイデオロギーの違い、そして錬金の戦士の絶対数不足……」
 そこまで言って照星はハッと口をつぐむ。言わずもがなな裏事情まで言ってしまっ
た。明らかに上官としては軽率で、不適切な発言だ。
 戦団の現状、方向性、そして行く末。日本の戦団も、他国程ではないにしろ様々な
問題を抱えている。
 照星の戦団への忠誠心や戦士長としての責任感、それ故の苦悩が彼の口を滑らせて
しまったのだ。


221 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/08(日) 19:26:59 ID:TcxLWLrs0
 訝しげな表情の部下達に、照星は努めて明るく言った。不自然な程に明るく。
「つまりはどこの国も人手不足という事ですよ。イギリス支部はそれが顕著なのです。
そこで欧州方面大戦士長から直々にお達しが来ました。『日本が誇る腕っこきの戦士を
寄越してくれ』とね」
 ここで初めて椅子に座った少年が口を開いた。
「ケッ、くだらねえ。要するに俺達の任務はそいつらの尻拭いってワケだろ?」
 憎まれ口は師であり上官でもある照星に向けられた物ではなく、任務内容そのもの
に向けられた物でもなく、協力を要請した欧州方面大戦士長やイギリス支部の戦士達
に向けられた物だった。
 単に「だらしのねえ野郎共だ」とでも言いたいのだろう。
 不遜な態度は取っているが、彼は照星を錬金戦団の中で唯一尊敬に足る人物だと思
っている。ただ表には出さず、他者に指摘されても絶対に認めないだけだ。
「口が過ぎますよ、火渡。黙りなさい」
 照星も火渡の性格や心意気は充分に理解している。叱責は厳しい口調だが、サング
ラスの奥の眼は優しい。
「フン……」
 火渡は腕を組み、またそっぽを向いてしまった。
 照星は話を続ける。しかし、今度は話の主題を錬金戦団ではなく、標的であるテロ
リストグループに向けた。
「いくつかあるIRAの分派の中でも、Real IRAは最も凶悪な過激派です。彼らのテ
ロ行為によって政府機関や警察機関だけではなく、多くの罪も無い一般市民が今も犠
牲になっています」
 三人の、特に防人の頭の中では、傷つき倒れ泣き叫ぶ市民の映像が容易に展開され
た。それも子供達の。
 親を失い、途方に暮れて涙を流す子供。
 木っ端屑のように吹き飛ばされた子供。
 理不尽な力に笑顔を消されてしまった子供。
 それがつい数ヶ月前の任務失敗の記憶と重なり、防人は人知れず奥歯を噛み締める。
“もうあんな思いはしたくない……。もう誰にもあんな思いはさせたくない……”


222 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/08(日) 19:27:59 ID:TcxLWLrs0
「そのテロリスト達がホムンクルスをテロの道具として使用したらどうなるか……。
いえ、それだけではありません。独力か協力者がいるかは分かりませんが、もしも彼
らの研究が進み、武装錬金等のあらゆる錬金術の力を我が物としたら……。どんな惨
事が起こるかは想像に難くないでしょう」
 防人はキッと眼を上げ、照星を睨む。いや、睨んでいるのは遥か彼方の北アイルラ
ンドだろう。
「……分かりました。誰かが俺達の力を必要としているのなら……。そして、俺達の
力で誰かを救えるのなら……」
 コートと対になる帽子を握る手に力が込められる。
「行きます!」
 防人の言葉を聞いた千歳が、慌てて後に続く。
「わ、私も行きます!」
 火渡は椅子に座ったまま首を捻り、二人を睨みつけた。
「オイ、待てよ。何、テメエらだけで勝手に決めてんだ、コラ。あぁ?」
 火渡の言葉に、照星は指で軽くサングラスを押し上げ、一歩踏み出す。
「これは上官としての命令ですよ、火渡。命令が聞けないのならお仕置――」
「行かねえとは言ってねえだろ、照星サン」
 照星の言葉を遮り、火渡は椅子から立ち上がった。そして、握り締めた拳をもう一
方の掌に叩きつける。
 その顔に浮かんでいるのは不適な笑みだ。
「行くよ。行ってテロリストだろうがホムンクルスだろうが、全員まとめてブッ殺し
てやるぜ!」
 やれやれとばかりに苦笑いで首を振る照星だったが、すぐに神妙な面持ちに戻り、
口を開いた。
「それと、もう一つ言っておかなければならない事があります。これは日本の戦団に
は無い問題なのですが……」
 一度言葉を切り、息を吸い、話を続ける。
「カトリックには、それも法皇庁(ヴァチカン)には充分に注意しなさい。ヴァチカンは錬
金術師を異端者と決め付けています。武装錬金の開発やホムンクルスの製造、賢者の
石の精製……。これら錬金術の力を全て神に逆らう愚かな行為とみなしているのでし
ょう。錬金戦団にせよ、邪悪な錬金術師にせよ、彼らにとっては同じ穴の狢のようです」


223 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/08(日) 19:28:58 ID:TcxLWLrs0
 自身も敬虔なクリスチャンであるが故に、この事実には心苦しさを覚える。しかも
照星はカトリックが異端視するプロテスタントだ。
 三人の顔を見比べ、更に話を続ける。
「ヴァチカンと錬金戦団は、永きに渡り抗争を続けてきました。彼らにも非公式では
あるものの実戦部隊が配備されているようです。小規模、少人数でありながら、その
力は我々に勝るとも劣りません。これが……イギリス支部や他の欧州方面各支部が衰
退に至った、もう一つの原因です……」
 まったくの初耳だった。それもそうだろう。三人はまだ熟練というには程遠い若さ
だ。しかも、当たり前だが日本での任務ばかりで、海外の戦団の活動には眼を向けた
事が無いのだから。
 だが、一度火が着いた決意と闘志は、簡単にはその火勢を弱めない。
 むしろ戦団の仇敵という存在は、消化剤ではなくニトロ並みの燃料となった。特に
火渡には。
「詳しい事は向こうの戦団員から聞けるとは思いますが……。いいですね? ヴァチカ
ンには充分注意しなさい」
 照星は若い三人を危ぶむかのように、念を押して繰り返す。それ程、警戒を要する
組織なのだ。
「はい!」
 防人は精気に満ちた返事を張り上げる。
 若さ故の恐れ知らずなのか、戦士であるが故の勇敢さなのか、日本人であるが故の
無知なのか。
 そのどれかかもしれないし、全てかもしれない。
 だが、照星は彼らの上官だ。彼らに迷える心をさらけ出してはいけない。彼らを信
頼しなければいけない。
「防人衛! 火渡赤馬! 楯山千歳!」
 照星は一際声高に三人の名を呼んだ。今度は広い会議室に鋭く響き渡る。


224 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/08(日) 19:30:03 ID:TcxLWLrs0
「行きなさい!“照星部隊”の力を持って、錬金術を悪用する輩に正義の鉄槌を下す
のです!」
「はい!」
「はい!」
「何だよ、そのヒーロー物みてえなノリは……」
 防人と千歳が意気衝天の勢いで返事をする中、火渡一人はシラケムードで小声の突
っ込みを入れた。
「火渡、こっちへ」
 ギラリとサングラスを光らせて、照星が笑みを浮かべる。今度は本気だ。
「だああああ!」
 三人の中では『お仕置き』の数が群を抜いてトップの火渡は、慌てて会議室から逃
走してしまった。
 その様子を見た防人と千歳は、堪えきれずクスクスと笑い声を漏らす。
 二人とも二十歳になるかならないかの“若者”だが、そんな表情はまだ無垢な“少
年少女”の物だ。
 照星も釣られて笑った。しかし、このまま戦士として任務を重ねていく内に、いつ
かそう遠くない未来にはこの表情も失われてしまうのだろう。そう思うと、また少し
心に影が落ちた。
 笑いの収まった防人と千歳は照星に一礼し、退室しようとする。
「では失礼します」
「あ、千歳。ちょっとこっちへ」
 既に会議室を出ようとしている千歳はビクンと身を震わせ、恐る恐る振り向く。
「な、何でしょうか、戦士長。わ、私、何もしてませんが……」
 錬金戦団の若い戦士達は皆、照星の「こっちへ」という台詞に異常に敏感になって
いる。千歳も例外ではない。
「HAHAHA、お仕置きではありませんよ。少し話があるのです」
「あ、はい、分かりました。ごめんね、防人君。先に行っててもいいから」
 防人は頷き、ドアを閉めた。
 戻ってきた千歳に、照星は懐からある物を取り出した。


225 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/08(日) 19:31:21 ID:TcxLWLrs0
「これを……」
 それは茶色い小さめの封筒だった。
「……これは?」
「あなた一人の時に読んで下さい。そして、そこに書かれてある事を必ず実行するの
です。いいですね?」
「は、はい。分かりました。では失礼します」
 訳も分からず封筒を受け取った千歳は、改めて一礼すると会議室から出て行った。
 パタパタと急ぎめの足音が響く。先に行った防人を追っかけているのだろう。普段
の様子から、千歳が防人に恋心を抱いているのは簡単に見て取れる。
「防人と火渡にはブレーキ役が必要ですからね。あの気弱な性格のままでは少々問題
ですが……」
 会議室に一人残った照星は微笑みながら呟いた。
 しかし、すぐに眼を閉じ、眉を顰め、思いを廻らせる。
 赤銅島での任務失敗、そして生存者はたった一名という惨劇。
 戦士は立ち止る事は許されないとはいえ、心の傷も癒えぬまま苦境に苦境を重ねさ
せても良かったのだろうか?
 未知の土地での未知の敵。初めて相対するであろう因縁の組織。
 彼ら三人にそれを打ち破る力は付いているのだろうか?
 照星は眼を閉じたまま、マタイ福音書第7章第13節にある言葉を唱える。自身の
迷いを振り切るかのように。困難に立ち向かう若者の背中を押すように。
「狭き門より入れ。滅びに至る門は大きくその路は広い。そして多くの者がそこを通
るのだ。生命に至る門は狭くその路は細い。そしてこれを見出す者は少ないだろう。
彼らに神の御加護を……。AMEN――」
 照星は静かに十字を切った。

226 :さい ◆Tt.7EwEi.. :2006/10/08(日) 19:36:03 ID:TcxLWLrs0
連投規制であとがき書き込めなくなってました。
冗長な文章で申し訳ありません。
あと改行が見づらい事に貼り付けてから気づきました。次から直します。
武装錬金は大先輩であるスターダストさんがいらっしゃるので恐れ多いとは思ったの
ですが、武装錬金ばかり書いてきたのもので。すみません。
性格設定は原作中の「七年前」になるべく近づけるようにしました。
それにしても他作品同士をくっつけるのは難しい。
第二話はまた近いうちに。



227 :作者の都合により名無しです:2006/10/08(日) 19:37:09 ID:jN2fK//x0
この時間だと
ちょっと待てばすぐ書けると思うが>連投規制

228 :作者の都合により名無しです:2006/10/08(日) 19:38:21 ID:s9vBQ0Bq0
せっかく、廃スレで支援してたのに……と言うのは冗談。

今から読ませていただきます。

229 :作者の都合により名無しです:2006/10/08(日) 19:46:42 ID:p6c1irYX0
さいさん新連載お疲れ様です
武装錬金は人気あるのでプレッシャーとは思いますが
スターダストさんたちと違った世界を見せて下さい。
陰ながら応援しております

230 :作者の都合により名無しです:2006/10/08(日) 19:49:28 ID:+sNHZ1SS0
賑わってるなと思ったら糞みたいなSSだらけだなw

231 :永遠の扉:2006/10/09(月) 00:51:41 ID:CcvWAH2j0
第005話 「総ての序章 その1」

1850年(嘉永3年)6月28日。
というから「怪談」で知られる小泉八雲に1日遅れた事になる。
ともかくも、彼は生まれた。

生まれた当時は他の人間がそうであるように、ただ泣き喚き乳を欲し、排泄物の処理を他
者に委任していた彼であるから、後年起こる数多の出来事──…

1853年 (03) 黒船来襲           ※()内は年齢
1854年 (04) 日米和親条約締結
1858年 (08) 安政の大獄
1860年 (10) 桜田門外の変
1863年 (13) 新撰組結成
1864年 (14) 池田屋事件 禁門の変
1866年 (16) 薩長同盟成立
1867年 (17) 大政奉還
1868年 (18) 明治元年 鳥羽・伏見の戦い
1869年 (19) 東京遷都 鳥羽・伏見の戦い終結
1777年 (27) 西南戦争
1878年 (28) 大久保利通暗殺
1894年 (44) 日清戦争
1904年 (54) 日露戦争
1905年 (55) ポーツマス条約締結

は知る由もなく、更にはこの年表最後の年において運命的な出会いを果たし、ひいては10
0年の永きに渡り友人を守護するとは到底思いもよらなかっただろう。

蝶野爆爵。

ホムンクルス共同体、L・X・Eの創始者にして盟主。

232 :永遠の扉:2006/10/09(月) 00:52:55 ID:CcvWAH2j0
どちらかといえばDr.バタフライという名の方が馴染み深くはあるが、本章では彼が人間を
やめるその時まで爆爵と記す。

彼の青春期において天下はとかく沸騰していた。
幕末、である。
ただ爆爵は性格上、沸騰を遠くから冷ややかに見つめていた。
第一、彼が今でいう埼玉県に生まれたのも悪かった。
埼玉といえば江戸と隣接し、川越の城下町などは江戸の北方を防衛する役目を課せられ、
「小江戸」と呼ばれるほど栄えていたというから、幕末という時期の熱が江戸を介して爆爵の
身辺に伝わらぬ事はなかっただろう。
しかし江戸より更に南方に位置する横浜と比べれば、熱の度合いは格段に下がる。
開国と同時に多くの西洋文化が雪崩れ込んできた港町と、依然旧態の宿場町しか擁さぬ内
陸部では、火事場と昼下がりの縁側ほど熱が違う。
自然、爆爵の周囲の人間は皆、幕末という時勢を対岸の火事の様に眺め続け、京都や会
津などといった土地に比べれば驚くほど平和な状態のまま維新を迎えた。
だが、時勢に応じて気炎を吐かざるを得ない激越論者という者はどこにでもいるらしい。
根岸友山という50を過ぎた男が徒党を組んで歩き回り、幕府お抱えの浪士組(新撰組の前
身)に参加すると所構わず吹聴したり、宿場町のそこかしこで若衆が拙いながらに時勢を論
ずるのを見るたび、爆爵は白眼を以って断定した。

「劣」

熱に惑わされる彼らが、ではない。
若干13歳にして、物事をひどく現実的に見る癖(へき)を備えていた爆爵からすれば、威勢
を誇り空疎な議論に没頭する輩のみならず、それを育む社会そのものがもはや劣っている
としか言いようがなかった。
元々、蝶野の一族は先祖から子孫に到るまで、物事を極端な二元論で評する癖が備わっ
ている。
例えば子孫の一人には、「要」「不要」で子供を差別する者がいた。
長らく「副」の立場に押し込められたと、「主」である兄を憎悪した青年もいた。
「自分と蝶」だけを愛し、「自分と蝶以外の全て」を憎み、「名を呼んでいい男」「それ以外」の
線引きにこだわり続けた蝶人もいる。

233 :永遠の扉:2006/10/09(月) 00:54:57 ID:CcvWAH2j0
爆爵も「優」と「劣」という二元論を持っているし、思想はそれだけで充分だと思っている。
佐幕や尊王などという、書を読み師を持ち、同士と膝を交えて昼夜激論し続けて、ようやく
「分かったような」気になる空虚で複雑怪奇な思想などは、不要だ。
彼にいわせれば、そういう流行の思想に染まろうとする人間や、伝染を許す社会は「劣」だ。
他者の作り出した流れに惑わされるばかりの連中は役立たずにすぎない。
その点、維新三傑や坂本龍馬のような人物はいい。
思想の空虚さをいちはやく見抜き、的確なる行動を時代に対して打ったのだから。
だが歴史というのは流れるもので、彼らは必ず死に、作り上げた素晴らしい『機構』の数々は
「劣」の人間どもが食い荒らして崩壊させてしまう。
優れた物には、必ず「原則」というものがある。
秀でた人間が、設計思想に伴う数多くの概念を凝集し、それらを滞りなく動作させられるよう、
幾年もの月日をかける以上、必ずあるのだ。
が、「劣」に属する連中は「原則」をまるで理解しない。
「引けば動く」「押せば止まる」
持ちえるのはその程度の認識だ。極めて反射的、蝿と同等の認識力だ。
そういう連中が、優れた物を使役すれば必ずどこかで歪みが生ずる。
機械や道具だけではない。
政府や国、組織といった人間の集団をまとめあげる『機構』という代物もだ。
最初はいい。
それらを作り上げた存在は、まごうコトなき「優」の立場の人間だから、溌剌たる指示の元、
『機構』に美しい機能を伴わせ、属する人間を能力以上に動かしていく。
だが、人間は必ず死ぬ。
始皇帝も頼朝も諸葛亮も家康も、志の全う如何に関わらず土と化す。
彼らの死後もしばらくは、『機構』も残る。が、必ずしも相応しい者に委ねられるとは限らない。
徳川幕府がいい例だ。
要職に就く条件を血の繋がりに設定した結果、ろくでもない劣どもの跋扈を許した。
考えてもみろ。
いかに優れた者の子とて、半分ほどしか「優」の血筋を持っていない。
その子が子を育めば、1/4へ薄まる。
逆に言えば貴人から2世代離れるだけで、3/4の血が別物となるのだ。

世代が進めばそれはますます顕著になる。

234 :永遠の扉:2006/10/09(月) 00:55:55 ID:CcvWAH2j0

 7/ 8
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  :
  :

単純な肉体の話ですらこうなのだから、「優」の精神に至ってはますます継承を望めない。
更に家督などという無意味な概念を保つため、養子を貰い受ければ──
「優」とはまるで無関係の存在が要職につく。
そいつらの目的は、家庭の保持しかなく、職に求むるのは一定の給金だけだ。
『機構』の中で自らの職が機能するよう務めない。決して。
古来、『機構』が永遠に姿をとどめた試しがない原因はそれだ。
現に爆爵が見た「幕末」の光景もそうであり、人間への失意を深めさせた。
仮に国を強くしようとする者が現れ、この動乱を収めたとしても、100年も立てばまた同じ事
が繰り返されるだろう。
人に寿命がある限り、何度でも何度でも。
轍で結ばれた輪は断たれる事なく、何度でも。

爆爵は、西洋貿易により4代にも渡る名家を築き上げたのを見ても分かるように、非常に高
い実務能力を有している。そのせいで並の人間にはおおよそ打ち解けない。
翻せば、相手を一度認めてしまえば後はどこまでも真摯で誠実な付き合いをする側面を有し
ているが、認めるまでがとかく厳しい。
根が現実主義者だからこそ、理想に対して妥協ができないのだ。
しかも爆爵は、自身の求める「優」の定義が良く分からない。
持ちうる二元論は単純だが漠然。論理よりは直感で認めるほかないと思ってはいる。
されどそんな物は、彼の故郷にはない。
前述の通り、瓦解しつつある幕府の原因が人の生命と惰性にあると考えてしまっている以上、
人間を「優」と認めるのはできない。が、認められる物は欲しい。
懊悩は日本という国に対してやがて範囲を広げ、若い爆爵はたまらず横浜へ駆けた。
当時は世界から様々な科学技術が流れ込んできた時代。

235 :永遠の扉:2006/10/09(月) 00:56:31 ID:CcvWAH2j0
横浜ならば彼の直感に叶う「優」があると信じ、若い爆爵はまだ雑駁としている街をうろついた。
そして。
露天で売られていた一冊の本に惹き付けられ、購入した。
それが錬金術と爆爵の出会いであり、彼は支えを錬金術に求めた。

錬金術の大いなる目的は、賢者の石の精製である。
卑金属を金に変える、生命を永遠とする、あらゆる奇跡を起こす。
といえば錬金術を知らぬ物でもピンとくるほど有名だ。
が、最終目的ではない。
実のところは、賢者の石の精製における「大いなる工程」の中で、生命を構成する3つの要
素を高める事こそが、本懐なのだ。
3つの要素とは、精神、魂、肉体。
つながりあうそれらを長大な研究の中で切り離し、別個に活性化させて高みへ導き、そして
完成した形で再統合する。
書により定義はやや異なるが、こと「成長」という物に重きを置く点ではいずれも同じである。
1905年。
55歳になった爆爵はその結論をようやく知った。
知るまでは大変だった。
膨大な量の文献をかき集め、西洋貿易の傍ら日夜研究にいそしむも、なかなかはかどらない。
原因は、錬金術特有のややこしい物言いだ。
例えば「水銀」などというキーワード一つとっても、書かれた時代や国によってまるで別の概
念を現している。
ひどいのになると「斑の豹、緑のライオン、烏の鉛のように青い嘴」などとパラドックスまみれ
の表現が延々と続くだけの文献もある。
懸命に研究する爆爵としては、その曖昧模糊の表現をして悦に浸っている輩もまた「劣」だ。
錬金術の大義が成長であり、高みに到達するのが目的であるなら、実効性のある物を自ずと
生み出せるはずなのだ。
だがかき集めた文献の大半は、言葉をただこねくりまわりしいたずらに難解にしている虚仮
ばかり。
奴らもまた、惑っている。能力を超える莫大な資料の前に惑っている。
爆爵は幕末に見た人間と錬金術の研究者を重ね合わせて歯噛みした。
けれど苦い顔をしながらも爆爵は研究をやめない。

236 :永遠の扉:2006/10/09(月) 00:57:51 ID:CcvWAH2j0
目的を果たせないなら役立たずだ。爆爵自身とて例外ではなく、やめられない理由もある。

維新後、貿易商として大成を収めた爆爵は、自分の寿命について考え始めた。
「死」自体は恐ろしくない。
が、40年かけてようやく学んだ錬金術が死と共に無に帰するのは耐えがたく、寂しい。
錬金術の膨大さに比べ、人間の時間は足らなすぎる。
更に死後、自分の築き上げたモノが「劣」たる人間どもに食い荒らされるコトを想起すると、
死よりも耐え難い屈辱に、身の裡からふつふつと暗い熱が巻き起こるのを感じた。
見も知らぬ想像の世界の「劣」どもに、明確なる殺意を覚えた。

奴らはただ惑えばいいのだ。乏しい才覚で美蜜に預かろうとするのはもはや「劣」以下。
醜い蛾にすぎない。蛾は炎(ほむら)の眩い光を炎と知らぬまま突っ込み、焼け死ね。

唾棄すべき思いの中で爆爵はただ自分のみが生きる事を切望し、錬金術によって永遠の生
命を得ようと思い始めた。
あくまで進化のために。
錬金術を究明し、精神も魂も肉体も高みへ昇らせる為に。
築き上げた物を「劣」の手から護り抜く為に。
けして時勢や他者の行動に、惑わされぬ為に。

研究はいよいよ進み、彼はついに不老不死の手がかりを掴んだ。
核鉄とホムンクルス。
片や精神を武器へ具現し、身に付ければ治癒力を高める金属の結晶。
片や肉体を強固に再編し、錬金術の力以外では倒せぬ半不老不死の怪物。

だが、研究はそこで行き詰まる。
存在や形は分かれど、いかなる方法で精製できるかはどの文献にも記されていない。
当節とって55歳。生物としての寿命にいささかの翳りが見え始めた頃だ。

焦りに目を濁らせた爆爵は、ふと山に行きたくなった。
気分転換。緑多き山に登れば、美しい蝶が見れるだろう。
ただそれだけ。それだけの動機が、大きな出会いと転機をもたらした──…

237 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/10/09(月) 00:59:01 ID:EBqkBfKd0
ちょっとだけ昔描いたモノを再利用してますので、見る人が見ればどこで何を描いていたか
分かってしまうかも?とにかく、バタフライは良いです。ただ信義を貫いている所がもう。
一見すると流れから浮いてますが、しばらくお付き合いを。後で意味が繋がりますので。
今回に限っては、文体模写とまではいかないまでも、司馬遼太郎分が多く出るよう意識してます。
好きなんです。燃えよ剣とか坂の上の雲とか峠とか花神とか。

ふら〜りさん(その通りでございます!)
当初はヒクイドリで、ニワトリを経てロバに決定したのですが、確かに性格的にはあっている
かも。惜しむらくはメカメカしさの不足ですが…… で、2人はこう、付き合いの長さから、ナ
チュラルに頼り頼られで、どんな喧嘩をしても次の日は忘れてて空が青いのを喜んでたりするとツボです。

>>203さん
ありがとうございます。彼女はいい感じにガス抜きできるキャラです。
彼女絡みの昔話とか、ついつい考えてしまってますが然るべき機会があればいずれ。とは
いえ立場的には敵なので、いい感じの難攻不落ぶりをまず描かねば。

>>204さん
思えば戦国の三日月からエンバ2に至るまで、好きでしょうがないようです。
桜花も秋水も御前もブラボーも千歳も根来も、元の良さを活かしてやりたいです。やっぱり。
でも自分の色も出したくて。今回の爆爵、かなりチャレンジフルかも。

>>205さん
描くたび心痛が深まっていきます彼女。こりゃ想像以上に堕ちていくやも。矢車さんみたいに。
もちろん、ピリオド以降への橋渡しも行います。例えばヴィクトリアとかヴィクトリアとかヴィクトリアとか。
ともかく、斗貴子さんに関してはあくまでかっこ良く。それでいて可愛く描いてやりたいです。

>さいさん
自分のコトは気になさらず。突き詰めれば趣味を好きなようにやっているだけの者ですよ。
おたおたする千歳が可愛いです。ドラマCD2の座談会で喋っている中の人の声で再生する
とベネ! 火渡の照星への秘めたる尊敬や、正義一直線の防人も実に彼ららしい不器用っぷり。

238 :作者の都合により名無しです:2006/10/09(月) 01:04:18 ID:7w7M+QtH0
蝶乙。

>司馬遼太郎分
本当だ。
堪能しました

239 :作者の都合により名無しです:2006/10/09(月) 07:33:44 ID:LSyu/RQ90
錬金物が2つ続けて来たかw

>さいさん
新連載ありがとうございます。
照星や火渡たち、先代の錬金戦士たちが大活躍する話になりそうですね。
ヘルシングはしらないけど、大期待してます。頑張ってくださいね!

>スターダストさん
いきなり年表で何かと思いきや、爆爵の年齢対比かw趣味に走ってるなw
爆爵の異常な行動理念の裏づけみたいなのが見事です。
ふと見に行った蝶が運命の転換点か。


240 :作者の都合により名無しです:2006/10/09(月) 17:01:37 ID:0/bym+zE0
>さいさん
武装錬金とヘルシングが大好きな自分としてはたまりません。
神父様の登場が楽しみです。とても楽しみです。とてもとても楽しみです。

>スターダストさん
ルナールさんも出てくるのかなー。
あと第4話の真赤な誓いとホシアカリにニヤリとしました。
どちらも斗貴子さんのトラウマに絡めてくるとは流石です。

241 :作者の都合により名無しです:2006/10/09(月) 19:57:29 ID:bOYmW6ss0
バキスレが錬金スレにw いいか、和月先生大好きだし

>さいさん
新連載乙です。気長に完結目指してがんばってください。
照星が錬金サイドの主役なのでしょうか?
彼の底知れなさを存分に書いて下さい

>スターダストさん
爆爵から続く因縁。今はお空の星になった
蝶野公爵とのカズキの縁に続きますね。
トキコさんはラストで救われるまで悲しむだろうな


242 :作者の都合により名無しです:2006/10/09(月) 21:36:00 ID:8I8jVyS+0
ヘルシングって結構評判いいみたいね
今度読んでみよう

243 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/09(月) 22:02:14 ID:ayZElVOY0
《EPISODE2:It’s alpha and omega’s kingdom come》

――ローマ近郊 カトリック系孤児院 フェルディナント・ルークス院

「ではみんな、食堂でお茶にしましょう。パッツィさんから頂いた美味しいクッキーも
ありますからね。さあ、行きますよ」

神父は閉じた聖書を片手に、子供達全員に柔らかく言葉を掛ける。
子供達は日曜の礼拝の後にある、お茶の時間が大好きだった。
親切な人達から頂いた美味しいお菓子が食べられるし、優しい神父様がいつもためになる
お話をしてくれるからだ。
孤児院に住む二十数人の子供達ははしゃぎつつ、礼拝堂から食堂に移動する。

「こらこら。危ないから走ってはいけません」
年少の子供達が転ばないようにと、心配そうな顔で後を付いて行く神父。
しかし、その風貌は聖職者とは程遠く見える。
短めの金髪を適当に撫でつけているせいか少し雑な印象を受けるし、顎にはまばらに無精髭を
生やしている。しかも左頬には一本の大きな傷跡が走っていた。
加えて、2m近い長身に肩幅の広いガッシリとした体格は、神父というよりもまるでちょっとした
スポーツ選手のようだ。
これだけを見ると粗野で乱暴者といったイメージだが、彼のにこやかな笑顔と丸眼鏡の奥で
細められた人の良さそうな眼、そしていつも丁寧で穏やかな物腰がそれを打ち消していた。
事実、孤児院の子供達や数少ない近所の住人、マーケットの店員等は皆、彼に対しては
「優しい神父様」「いつも笑顔を絶やさない穏やかな方」「身寄りの無い子供の為に働く人格者」
といった認識を持っている。
アレクサンド・アンデルセン。
それがこの孤児院の責任者を務める、三十絡みの神父の名であった。


244 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/09(月) 22:02:59 ID:ayZElVOY0
アンデルセンが遅れて食堂に入ると、幼い子供達は全員テーブルに付いていた。
数人の年長者が寮母と共にクッキーを配り、紅茶を入れている。
彼は皆に囲まれた中央の席に座ると、テーブルを隅から隅まで見渡した。
「みんな、クッキーと紅茶は行き渡りましたか? こら、マルコ、いけません。食べるのは
お祈りが済んでからですよ」
一番乗りにクッキーに手を出そうとする少年を、厳しくも穏やかに咎める。
全員、テーブルの上で両手を合わせ、眼を閉じた。
アンデルセンも目を閉じ、祈りの言葉を唱え、それに合わせて子供達も不器用にだが祈る。
「天にまします我らの父よ。願わくは皆を崇め給え。御国を来たらせ給え。御心の天になる如く
地にもなさえ給え。我らの日用の糧を今日も与え給え。――AMEN」
子供達はお祈りが終わると、待ってましたとばかりにクッキーを口に運び始めた。
アンデルセンもその様子を微笑ましく眺めながら、紅茶を啜る。

さてお話の時間だ。
お話、と言ってもこの孤児院には十代半ばの子もいれば、幼稚園児程の小さな子もいる。
あまり難しい言葉は使えないし、さりとてあまり内容の無い話も出来ない。
アンデルセンがいつも頭を悩ませる場面である。
だが、子供達はクッキーを頬張りつつも、眼を輝かせて神父様のお話を待っている。
その神父様は頭の中で素早く話を組み立て、満面の笑みで話し始めた。


245 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/09(月) 22:05:08 ID:ayZElVOY0
「昨日、イスラエルの兵隊さんがパレスチナ人を銃でたくさん殺しました。これはとても
素晴らしい事なのです」
アンデルセンの両隣に座る十六、七歳くらいと思われるヨーロッパ系と東洋系の二人の少女が、
彼の言葉にコクコクと頷く。
他の子供達は夢中になり、中には身を乗り出している子までいる。
「パレスチナ人はイスラム教徒というとても汚い異教徒共です。約束の地であるエルサレムを
奪おうとする罪人なのです。
いいですか? カトリック以外の異教徒や異端者は皆、人間ではありません。イエス様の復活と
神の御国がやって来る事を邪魔するサタンの使いです。いわば悪魔(バケモノ)共なのです。
ですから死んで当然、いえ、むしろ殺されるべきなのですよ」
窓から差し込む太陽の光が眼鏡に反射して、その本来の性質を宿す眼は隠れている。
確かに“ためになるお話”だ。孤児達を狂信的なカトリック原理主義者に育てる為には。

話に熱がこもり始めた矢先、ふとアンデルセンが戸口の方を見遣ると、一人の老神父が立っていた。
老神父はアンデルセンと眼が合うと、スッと廊下の方へ姿を消してしまった。
やれやれ、彼がきたか。せっかく子供達が熱心に話を聞いているというのに。
内心、溜息を吐くアンデルセンは無理矢理、話をまとめに掛かる。
「みんなは、一日も早く世界中の全ての異教徒が死んでしまうように、神様にお祈りしましょう。
いいですね?」
「は〜い、神父様」「僕、いっぱいお祈りするよ!」「僕は大きくなったら“いきょーと”をみんなやっつける!」
「僕も〜!」「あたしも〜!」
子供達は神父様のお言葉を守ろうと、思い思いに声を上げる。
「うんうん、よろしい。さて……どうやら私にお客さんが来たようです。少し席を外しますから……。
ハインケル、由美江。みんなの面倒を頼みますよ」
アンデルセンは子供達の素直さに相好を崩しながら席を立つと、両隣の少女達にこの場を任せた。


246 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/09(月) 22:06:43 ID:ayZElVOY0
声を掛けられた二人の少女は笑顔で頷く。
「はい、神父様」「いってらっしゃい」
孤児院の中では最年長の二人はカトリックへの絶対的な信仰を持っていたが、それ以上に
アレクサンド・アンデルセンという人間に深く傾倒していた。
しかし、それはここで語る事ではない。
「ええ〜」「神父様、行かないで〜」「もっとお話聞かせてよ、神父様〜」
ごねる子供達を四苦八苦してなだめながら、どうにかアンデルセンは食堂を出た。

孤児院の敷地の外れに行くと、先程の老神父が立っていた。
彼と話をする時はいつも決まってここだ。“仕事”の話を誰にも聞かれないように。
老神父は無表情で、特に待たされて苛立っているようには見えない。それもいつもの事だが。
アンデルセンは丁寧かつぶっきらぼうに声を掛けた。
「一体、どうしたというのです。何の御用ですか?」
「『Real IRA』の事は知っているな?」
謎掛けのように本題から入る老神父に、アンデルセンはさも当たり前とばかりに返す。
「ええ、ええ。最近『IRA暫定派』から分離した過激派連中のことでしょう。ずいぶん派手に
暴れまわっているようですが……。それがどうかしましたか?
まだ我々が立ち入るレベルではないでしょうし、奴らの標的はどうしようもない英国人(プロテスタント)の
クズ共ではないですか」
自分の職務の範疇ではない。
気づくと、芝の上に雑誌の切れ端やビニール袋が落ちている。
経営が苦しく、信徒の寄進に頼る事が多いこの院では、子供達に菓子も本も玩具も買ってあげられない。
おそらくは風に乗って飛んで来たのであろう。
アンデルセンは老神父の話を背中で聞きながら、しゃがみ込んでゴミを拾い始めた。
「奴らが化物(フリークス)を飼い慣らしていると聞いても、まだ放っておけるかね?」
老神父の言葉に、アンデルセンはピクリと反応し、ゴミを拾う手を止めた。
既に口の端が吊り上がっている。


247 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/09(月) 22:08:50 ID:ayZElVOY0
「ほう……」
「馬鹿なテロリスト共だ。奴ら、化物の力を持ってカトリックの地を奪い返すつもりらしい。
まったく、本末転倒もいいところだ」
アンデルセンはゆっくりと立ち上がった。
「カトリックに身を置きながら、化物の力に頼みを繋ぐ背信の徒め……。ククク、了解しました。
早速、発つ事にします。化物狩りは久しぶりだァ……」

老神父に猫背気味の背を向けていたアンデルセンは、ほとんど首だけをグルリと彼の方に向けた。
その風貌に似合わない綺麗に揃った歯を見せて、不気味にニヤニヤ笑っている。
最早、ギラつく狂人の眼を隠そうともしていない。
そして、今この瞬間、湧き出すのを止められない一番の興味の元について尋ねた。
「ところで、奴らが飼っている化物は何です? 吸血鬼(ヴァンパイア)ですか? 人狼(ウェアウルフ)ですか?
それとも人造人間(フランケンシュタイン)? ああ、人造人間といえば、二年前にドイツでその生き残りを
ブチ殺してやった時は、最高でしたよ。なかなか楽しめた。アレは本当に痛快だった……。
ええと、何といいましたか。確かジョ――」
「ホムンクルスだよ」
化物狩りが職務であり、至上の喜びでもあるアンデルセンの自慢話を断ち切るかのように、
老神父が口を開いた。
「!?」
アンデルセンが眼を剥く。
驚愕とは行かないまでも、存外な事実だ。
彼自身、ここしばらくその名を聞いていなかった。
「ホムンクルス……。では、当然あの異端者共も……」
「察しがいいな、アンデルセン。そうだ、この件には錬金戦団も絡んでくる。現に英国支部が
動き出し、未確認ではあるが日本からも援軍が来るらしい」
呆れた様に首を振るアンデルセン。だが、その心中は嬉々とした使命感の暴風だ。
「ほう、勇ましい事ですな。神に逆らい、汚らわしき錬金術の力で化物や武器を造り出すしか
能の無い、似非魔女の分際で……。クハハハッ、まあいい。
プロテスタントなんぞより遥か古から我々に楯突き続けてきた、あの怨敵を絶滅させる機会が
巡ってくるとは……。
これも主イエス・キリストからの賜り物だ!」


248 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/09(月) 22:10:53 ID:ayZElVOY0
歓喜に打ち震えるアンデルセンに、老神父は痩せた拳を握り締めて言い放った。
「我々の出番だよ、アンデルセン。我々、ヴァチカン特務局第13課“イスカリオテ”のな。
カトリックは、ヴァチカンは、そして神罰の地上代行者“イスカリオテ”は全ての化物共の
存在を許しはしない。
そして、全ての異端共の存在もな」

ニヤニヤ笑いの止まらないアンデルセンは突然、声高らかに聖句を唱え始めた。
「すべて肉なるものは草に等しく、人の世の栄光は草の花のごとし。
何となれば、草は枯れ、花は散るものなれば。されど主の言葉はとこしえに変わることなし」

それに老神父が続く。
「聖霊と子の御名において。――AMEN」

「AMEN」

話が終わり、老神父が去ったというのに、アンデルセンはその場に立ち尽くしていた。
丸い背中をより一層丸めて。
だが、よく見ると肩や背中が小刻みに揺れている。笑っているのだ。
「フフフフフ……クックックックックッ……ヌハハハハハハハハ! ゲァハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハッ!!」
ジワジワと漏れ出ていたアンデルセンの殺気が、哄笑と共に遂に爆発した。
身を捩じらせて仰け反り、歯牙を剥き出し、眼鏡の奥の光には狂気と凶気が同居している。
今や彼は子供達が慕う“優しい神父様”ではなくなっていた。
この場に立っているのは、イスカリオテの“聖堂騎士(パラディン)”、絶滅主義の“首斬り判事”、
異教異端の徒が恐れおののく“殺し屋”、そして闇に潜む人外が忌み嫌う “銃剣(バヨネット)”だ。

「錬金戦団! 錬金戦団!! 錬金戦団!!!
外法を持って神の法理を捻じ曲げる薄汚い異端者共!
幾多の世紀を跨ぎカトリックに仇なし続ける愚者共!
ククククク、待っていろ……。ヴァチカンが! 第13課(イスカリオテ)が! この私がァ!
貴様らを鏖殺(ミナゴロシ)にしてくれる! 全て殺し尽くしてくれる!! 肉も霊も魂も!」


249 :さい ◆Tt.7EwEi.. :2006/10/09(月) 22:11:53 ID:ayZElVOY0
作中でアンデルセンが言っている言葉と、作者の主義・思想は一切関係ありません。念の為。
ちょっとヤバイかなとも思いましたが、アンデルセンの狂信ぶりを表す為にあえて書きました。
物語としてはやっとスタートラインに立ったので、ここからはゆっくり落ち着いて書いて
いきたいと思います。
そういえばHELLSINGが好きな方は、こういったSSの神父様をどっちで
脳内再生してるんですかね? 野沢那智さんと若本御大と。
私は強力若本ですが。

>>229
ありがとうございます。
おっしゃる通りかなりのプレッシャーですが、何とか自分なりの世界観を出していきたいと思います。
でもそれ以上に上手い文章、見やすい文章を心がけねば……。

>スターダストさん
お褒めの言葉ありがとうございます。
私の場合、夢中になって書いていくうちにだんだん違うキャラになっていくという悪い癖が
あるのですが、今回はどうやら大丈夫だったようでホッとしてます。
ドラマCD2の方は、悲しいかなまだ買えていません。早く欲しい……。
それにしてもバタフライでここまで書けるとは。
SS職人というよりも武装錬金史家と呼びたくなるような仕事っぷりですね。
文体も引き込まれるものがありました。

>>239
こちらこそありがとうございます。
錬金キャラの中では防人達、いわゆる大人組が大好きなので存分に活躍させたいと思います。
でも本当はまっぴー原理主義ですけど。
それとHELLSINGを知らなくても楽しんで頂けるよう頑張ります。


250 :さい ◆Tt.7EwEi.. :2006/10/09(月) 22:12:52 ID:ayZElVOY0
>>240
おお、同士がいましたか! 第2話、いかがでしたでしょうか?
彼はHELLSINGキャラの中では飛びぬけて好きなので思わず力が入ってしまいます。
神父様SSの歓喜を無限に味わうために。次の神父様SSのために。次の次の神父様SSのために。
神父様SS書いたの初めてだけど。

>>241
ありがとうございます。
自分でも先が見えそうで見えなくなってますが大団円目指して頑張ります。
あと第1話では目立っていた照星ですが、錬金サイドの主役は防人なのです。すみません。
照星も後々活躍する、かもしれないです……。ホントすみません。

>>242
ぜひぜひ。ほとんどの登場人物が狂ってて素敵な漫画です。


251 :ふら〜り:2006/10/09(月) 22:34:58 ID:VcxX2qG40
>>201さん
苦いミルクティーや潰れたタバコの箱などの小物が効果的に心情描写に使われてますね。
ただ本文か、あるいは後書きに世界観やキャラの説明を少し入れて頂けると有難いです……

>>ワルツさん
回し受けのところ、公式(?)の小説技法なら反則かと思いますが、私は面白かったです。
詳細に映像がイメージできたし、克巳が「独歩のそういう動きを狙ってやった」ってのが
よく解って。上回りリストや独歩の溺愛っぷりも笑えましたし、硬軟両面で良作でしたよ。

>>さいさん(他所でも錬金を書かれてたわけですか。おいでませっ!)
確かに私などは原作未読なせいもあり、先の方々の書かれた作品イメージは濃いです。が、
だからこそ違ったアプローチの千歳たちに期待してますよ。にしても、うすら寒いですね
子供たちの笑顔が。これじゃアンデルセン、正体・本性がバレても大して困らなさそう。

>>スターダストさん
最初は純粋な好奇心、あるいは向学心。真理の探究であった。だが、それが高じてマッド
サイエンティストコースまっしぐら、いつの間にやら世界人類を敵視してしまうという
やつですな。でも優の創ったものを劣が食い潰すのは悔しい、ってのは少々理解できます。


252 :作者の都合により名無しです:2006/10/09(月) 22:37:18 ID:jwallos70
さいさんガンガレ
HELLSINGはネットSS全般でも完投率が低いネタだけにガンガレ

熱狂的で素敵にイカレてるアンデルセン神父が実に神父らしくてGJです
果たしてあの不死身っぷりをどうやって打倒すんでしょう?三人組は

253 :氷の一族:2006/10/09(月) 22:44:34 ID:n8tXA4j/0
 煙を吐き出しながらふらふらと飛ぶ小型宇宙船。
 中に入っているのはフリーザただ一人。単独で支部を視察に出ていた最中であった。
「厄介なことになりましたね……」
 独りごちるフリーザだが、さほど深刻さはこもっていない。宇宙空間でも生存可能な彼
にとって、この程度の事故はとうてい恐れるに値しないからだ。
 ただし、気にしてないというわけではない。今、彼の思考はこの宇宙船を整備した役立
たずをどう処分するかで一杯だった。
 そして、どうにか宇宙船はとある天体に不時着した。

 不機嫌な面持ちで宇宙船を出るフリーザ。
 もっとも近いフリーザ軍支部と連絡を取ったところ、救助に訪れるにはどんなに早くと
も三日はかかるらしい。よほどの辺境に来てしまったようだ。
 自力で適当な支部に向かうという手もあるにはある。だが、もし宇宙で迷ってしまえば
フリーザとてどうにもならなくなる可能性が高い。SOS信号を放つ宇宙船とともにここ
でしばらく過ごすことこそが、広大な宇宙においてはやはりベストな解決策。
「しかし、ふざけた星ですねぇ……」
 ため息をつき、辺りを見回すフリーザ。
 空に浮かぶ恒星が、光と気温をもたらしている。重力は小さい。
「土と泥しかないとは……まったく」
 フリーザが口にしたとおりの光景が彼方まで広がっている。地平線まで、ずっと。
 加えて、生物も植物も存在している様子がまったくない。
 灰色な三日間を想像して、フリーザはげんなりした。

254 :氷の一族:2006/10/09(月) 22:45:08 ID:n8tXA4j/0
 ところが、この退屈で荒涼とした大地は思いもよらぬ副作用を生じさせる。
 フリーザは母を知らなかった。
 幼い頃より彼らの一族は強大な父により鍛えられ、宇宙の支配者となることを強制され
る。兄弟もいるにはいたが、ほとんどは訓練の中で死亡、生き残った者同士も強さと領地
を競い合うという殺伐とした間柄。
 今でこそ、彼は宇宙一の実力を持つ帝王となった。父は立派に育った息子に対し、うっ
てかわって余りある愛情を与えてくれるようになったが、これはあくまでフリーザが一族
に恥じぬ人材であるがゆえに過ぎない。つまり、役立つ道具に対する愛情と大して変わら
ない。
 もっともフリーザは自らの境遇を恨めしいと感じたことは一度もない。彼にも一族に対
する誇りがあるし、また彼自身、支配や陵辱を生来の気質から好んで行っている部分もあ
る。
 だが今日、彼はほんの少し疑問を抱いた。不時着によって抱く時間を与えられた。生後
まもなくから刷り込まれた、“宇宙の支配者”としての生い立ちに。
「ふうっ……私らしくもない」
 戦闘ジャケットを脱ぎ、大地に寝そべるフリーザ。叩きつけられたことこそあれ、寝そ
べるなど初めてだ。
 地面は温かかった。
 体をくっつけると、ほわっと柔らかな温もりがフリーザを包み込んだ。
 初めて訪れたはずなのに、どこか親しみが感じられる地。
 フリーザは母を知らない。ゆえに推測の域を出ないが、彼はこれこそが母に抱き締めら
れた感触なのではないかと思った。
「もしかしてこれが……」
 永久凍土にも匹敵する残虐な心に、今たしかにわずかな変化が表れた。

255 :氷の一族:2006/10/09(月) 22:45:40 ID:n8tXA4j/0
 三日後、フリーザのもとに予定通り救助隊が到着した。
 きっと苛立ちながら待っているにちがいない。もしかしたら殺されるかもしれない。隊
員たちはまるで死地に赴くような覚悟で任務に当たっていたのだが──。
「おう、よしよし。待っていましたよ、皆さん」
 気味が悪いほどに、にこやかに応対するフリーザ。呆気に取られる救助隊の面々。
「フリーザ様、申し訳ありませんっ! 我々もかなり急いだのですが……」
「いえいえ構いませんよ。私も貴重な体験ができましたし」
「え……?」
 さらに呆気に取られる面々。実はフリーザは二重人格で、今は穏やかな方が表面化して
いるのではないか、と思ってしまうほどだ。
「それより、あなたがたに頼みがあるのですが」
「な、なんでしょうか」
「実は私、この星を大変気に入りましてねぇ。すぐにでも植民地としたいのですが──い
ったいここはどういった惑星なのかを調べて欲しいのです」
 頼まれた隊長は一瞬「こんなつまらない星のどこがいいんだ」と考えたが、すぐに部下
に調査をするよう命じた。
 さっそく救助船に備えられたコンピュータで、部下たちが作業にとりかかる。
 すると、まもなく結果が出た。部下から隊長へ、コンピュータ端末からプリントアウト
された紙が渡される。文字に目を通した瞬間、隊長は目をぎょっと丸くさせた。
「なっ……! え、あ、フリーザ様、調査が終わりました」
「ほう、お早いですね。で、ここはどういった星なんです?」
 ごくりと生唾を飲み込み、隊長が言葉を続ける。
「実は……えぇと、ここは厳密には星ではありません」
「星ではない? どういうことですか?」
「いや、え、あの……。おそらく、どこかの星の住民が蓄積したものを、まとめて宇宙空
間に放逐されてできてしまった塊ではないかと考えられます」
 どうにも回りくどい説明にイライラし、口調を荒くするフリーザ。
「いい加減になさい! もっと分かりやすくおっしゃいなさい!」
 怒号に押されるかたちで、隊長はおそるおそる喉からある三文字を絞り出した。ずばり、
今彼らが立っている場所は──。
「う、うんこです……!」

256 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/10/09(月) 22:48:20 ID:n8tXA4j/0
最後の一行だけ読んでください。
感想、お待ちしています。

257 :作者の都合により名無しです:2006/10/09(月) 22:49:47 ID:jwallos70
グレイトフル!
来ない日は来ないけど来る日はすごい来るな!さすがバキスレだ!

258 :作者の都合により名無しです:2006/10/10(火) 00:10:05 ID:gQtHwIHh0
サナダさんあいかわらず
一見平凡な文体なのに文章力すげーな。

259 :作者の都合により名無しです:2006/10/10(火) 00:34:07 ID:EqLSGIoW0
サナダさん超GJ!!!!!
今まで見てきたあらゆる作品の中でも最大級に壮絶なウンコオチですwwww

260 :作者の都合により名無しです:2006/10/10(火) 07:34:14 ID:16EXvWPP0
>さいさん
これが噂のヘルシングの神父様か!噂にたがわぬサイコっぷりですね。
原作知らなくても十分楽しめそうだけど、一度読んでみるか。
このキチガイwが同じような性格っぽい火渡と渡り合うか楽しみ。

>サナダムシさん
すげえやサナダムシさん!こんなラスト一行に全てが集約される
うんこネタは始めてだ。読んでてうんこ物なのにすっきりしたよw

261 :作者の都合により名無しです:2006/10/10(火) 08:07:46 ID:Gsb3DjV40
>>251
すいませんね。元ネタは山下いくと作「ダークウィスパー」でした。

262 :作者の都合により名無しです:2006/10/10(火) 20:46:26 ID:aLrVpp1j0
サナダムシさん、紛れも無くうんこSSという分野では世界一だなw
2位以下がバックミラーにも写らないほどだw

サイさん、アンデルセン神父を思いっきり書いてください!
何分強烈過ぎるキャラですからねえw

263 :永遠の扉:2006/10/11(水) 00:09:07 ID:z7uABdXX0
山の中腹で最初に見たのは、顔の右半分が破裂した西洋人の死体。
まだ死臭は薄く、飛び散った歯も唾液と血液に濡れ光っていた。
熊にやられたとかそういう類の傷ではない。
打撃点に向かって一気に、まるでねじ込まれる様な……
同様の死体が他にも2つ転がっている。
首から上が破裂している者、肩口を抉られたまま恐怖の表情で事切れている者。
皆総て、紺地に幾何学模様をあしらった制服を着用していた。
それが錬金戦団における再殺部隊の制服だとは、爆爵は死ぬまで知らなかった。
目を引いたのは、躯の傍らに落ちている六角形の金属片。
爆爵は文献で読んだからそれが何か知っている。
核鉄。
だが欲し続けたそれをも凌ぐ昂揚感が爆爵を突き抜けた。
未知への震えに口腔が乾く。少年時代、錬金術の本を見つけた時のように。
……視線の先。
切り開かれた木々からぼっかり覗く満月を背に、求め続けていた存在が居た。

淡く光る蛍火の髪!

熱を帯びた赤銅の肌!

筋肉で固めた2m超の巨躯!

指折り数えた特徴に歓喜は有り余り、かえって愕然となるのを爆爵は禁じえなかった。
蝶を探しに来た事など忘却の彼方だ。
赤銅色の彼は大戦斧を両手に、追っ手と思しき者と交戦中。
爆爵の目には全く入らなかったが、追っ手は艶やかで長い金髪をオールバック気味にまとめ
て襟足から背中へ垂らし、片手にはどこまでも長大な剣を持っていた。
眩い光に引かれる蝶のように爆爵は歩みを進める。
すると体が雨に濡れる墨のような煙をたなびかせ、みるみるうちに精気を失っていく……

直感が告げる。それは「優」の礎になれる喜ばしき貢ぎだと。


264 :永遠の扉:2006/10/11(水) 00:10:04 ID:z7uABdXX0
爆爵は心の中で自然と跪いていた。
学者として。錬金術師として。そして人間として。

魂、知識、技術、美学。
ありとあらゆる人間の概念を超越した、永久不可侵の優位性に!
劣こそ従わざるを得ない、弱肉強食という名の圧倒的原則に!
そして!!
その頂点へ立つに相応しい赤銅色の彼に!!

眩い光の中で、快美なる脱力に浸っていた爆爵の表情が一転、凍りつく。
追っ手と思しき金髪の男が、大剣で赤銅色の男の胴を両腕ごと横薙ぎに斬り裂いた。
光はやみ、闇へと向かう。
打ち切られた搾取の中で愕然と膝をつく爆爵は、濁りきった瞳で金髪の男を睨んだ。
金髪の男は赤銅色の男へ歩み寄る。恐らくトドメを刺すのだろう。
だがいかな事情があれど関係ない。
ただ、ようやくめぐり合えた「優」の存在を斃す事だけが許せない。
領分を脱せず終生イモ虫のように見苦しくあり続ける「劣」ごときが光を断つのを。
どうして見逃せようか。
蝶野家の男特有の二元論からすれば、取るべき行動はただ一つ!

「…………え」

幕末の激動や錬金術の膨大さに結局打ち克てなかった愚図どもの様に!

「惑……え……」

そして眩(まばゆ)さの中で焼け死ぬべし! 「劣」が光を直視する時はただかくあるべし! 
傍らにあった核鉄を迷わず拾う。直感がいま使い方を知らせている。
ゆえに蝶野爆爵は、怨嗟うずまく汚濁の瞳で叫んだ。

「惑 え !」


265 :永遠の扉:2006/10/11(水) 00:10:47 ID:z7uABdXX0
山に叫びが木霊する。
プラチナホワイトの光がぶわりと密集し、金髪の男を襲う。
彼は爆爵を認めると、一瞬、信じられないという顔をしたがすぐさま煌く光の虜囚となり、意味
不明の絶叫を数度発すると頭を抱えて昏倒した。

アリスインワンダーランド。
惑いの光をもたらす武装錬金を爆爵はこの時初めて発動した。
拡散状態においては、人間の方向感覚や距離感を惑わせ、電子機器もシャットダウンする。
密集状態においては、対象の脳に作用し、忌むべき幻覚の中で惑わせ精神を破壊する。
蝶・激痛の幻覚を与えれば、ショック死させる事も可能。

数分後。
激しい虚脱に息をつきつつ、爆爵は辺りに散らばる核鉄を拾い集めた。
数は2つ。中央に刻まれているシリアルナンバーは、LXI(61)とXXII(22)。
加えて、爆爵が発動したLXX(70)と金髪の男が握りしめていたXXIII(23)。
それらを懐に仕舞い、爆爵は金髪の男の息が無いのを確認した。
途中、視線が止まる。男の胸元には認識票があった。

「MELSTEEN=BLADE (メルスティーン=ブレイド)」

と記されているが、もはや死んだ男の名など聞くに値しない。聞くべきは──…

「オレを殺さないのか?」
瞑目し、沈撃な声で問う赤銅色の彼に、爆爵は跪いた。
「奴の武装錬金、ワダチの特性によってエネルギードレインの機能は断たれた。自己修復も
もはやままならない。今なら容易く討てるだろう。なのに何故、核鉄を手にしていながらそれを
しない? 見てのとおり存在(い)ながらにしてヒトに仇なす化物を、キミは何故討たない?」
爆爵は首を振り、貴人に触れるような恐れ多い手つきで赤銅色の男を抱えた。
上半身だけとはいえ、筋骨隆々の巨躯の重量は凄まじい。
だが歯を食いしばって、爆爵は歩く。
「……オレの名はヴィクター=パワード。キミの名は?」
名乗るのは恐れ多い。だが、名乗らぬ事もまた恐れ多い。

266 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/10/11(水) 00:11:59 ID:z7uABdXX0
ならば彼の望みに沿う方が美しい。故に答える。
「蝶野爆爵」
長い沈黙の後、ヴィクターは重々しく口を開いた。

「爆爵。1つ頼みがある」

数時間後。爆爵は家族使用人問わず、蝶野家に居るもの総てに命を下した。
曰く。爆爵が研究に用いる蔵には、今後一切彼以外の立ち入りを禁ずる…………と。

同刻。

ヴィクターと爆爵の邂逅した場所で、1つの躯が起き上がった。
端整な顔で碧眼を持つ、金髪の男。年のころは17〜8。
身に付けた再殺部隊の制服は質素であり、かつ、全身汗にずぶ濡れている
だがそれに負けぬ気品を薄っすら漂わせ、そして。

胸には、認識票──…

回り続ける。
轍で結ばれし輪は断たるる事なく、永劫に。


以後、後書き。

主役にして長編描きたいぐらい爆爵は好きです。桜花に通信している時の表情とか。
しかし永遠の扉の主人公は秋水なのでいったんここまで。だいたいこんな感じです。>銀杏丸さん。
さて。次回はアレです。アレを描いてみます。

>>238さん
堪能していただければ光栄です。司馬作品は「〜ではないか」「なにを云やがる」「余談だが」
という言い回しが素敵ですよね。

267 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/10/11(水) 00:12:47 ID:z7uABdXX0
>>239さん
それはもう。最初は志々雄真実の内乱とか描いてましたし。爆爵の肉付けは、パピヨンの性
質や刺爵と次郎のライナーノートを元に、幕末分と司馬遼太郎分を混ぜたのですが、すごく
楽しかったです。で、年表を見ると、爆爵の年齢って剣心と同じだったり……

>>240さん
予定は一応。でもいじるの恐いキャラです彼。アニメや小説でどんな役回りするのか分からな
いので。いよいよ明日聞ける真赤な誓いですが、例の回想に合ってるので遊びましたよw 
ホシアカリはそのオマケ。やっぱネタっていいものです。

>>241さん
まさに爆爵は物語の発端ですよね。彼の残した研究資料がパピヨンに引き継がれ巳田が
ホムンクルスになってカズキを殺して〜と。アニメ第1話を見ると余計にそう思えます。
斗貴子さんにはどこかで救いをやりたいんですが、ピリオドのアレで救われてこそとも。

>さいさん(折りよくブラボーの誕生日でしたね)
平野耕太作品といえば聖学電脳研究部ぐらいしか知らないのですが、アレに漂う電波っぷり
は健在とゆうか、ますますヒートアップしているようなw 話には聞いてましたがなんともぶっ
飛んだ方ですアンデルセン神父。折を見てヘルシング読んでみます。若本声で。

>SS職人というよりも武装錬金史家と呼びたくなるような仕事っぷりですね。
恐れ入ります。ちなみに白状しますが、来るべき小説版には実は怯えてたりします。
1ファンとストーリー協力者の立場の違いを思い知らされるようでどうにも…… 資料としては
これ以上ない素晴らしい作品ですし、1ファンとしては垂涎のアイテムなのですが、でもやっぱり恐い。

ふら〜りさん
正にそういうコースを辿るキャラをもう1名ご用意しております。博士としてではなく戦士として。
爆爵がアッパー系なら、ダウナー系の道を踏み外していく重苦しい破滅の気配を持つキャラも
少し食指が。食い潰す〜のあたりは資産家の爆爵ならではかも? 自分もちょっと同意気味。

268 :作者の都合により名無しです:2006/10/11(水) 07:41:17 ID:wPqiNRYb0
スターダストさん乙です!
今回はスターダストさんにしてはちょっと短めですが
爆爵の意思がよく伝わる回でした。
最近、好調そうに書いてくれるので楽しいです。

269 :作者の都合により名無しです:2006/10/11(水) 21:19:02 ID:8fsO4Hcs0
スターダスト氏の錬金への愛は敬服に値する

爆爵好きですか。好きじゃないとここまでの描写はしませんよね。
というか、スターダスト氏の嫌いな錬金キャラっているのだろうか?w

270 :作者の都合により名無しです:2006/10/12(木) 07:26:27 ID:cuZgzoa50
爆爵が好きなんて流石マニアですねw
でも、物語の最初の重要キャラですからな

271 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/10/12(木) 17:56:16 ID:Y3RLPbaJ0
第九十一話「前夜・1」

「はい、お手」
少女がにこにこ笑いながら目の前の真っ白い犬に手を差し出す。
彼女の名は芙蓉楓。稟とプリムラの同居人にして、学園三大プリンセスの一人と称される美少女。彼女のためなら
命をも捨てる狂信者たちから女神の如く崇められる存在である。
そんな彼女に笑いかけられれば、大概の雄生命体は陥落することだろう。しかしながら、その犬―――ペコは違った。
「くぅーん・・・」
素っ気無く鳴いて、ぷいっとそっぽを向いてしまう。普通の人間の前ではとりあえず普通の犬のように振舞っているが、
お手などという人間に媚びるような行為はもっての他と言わんばかりの態度である。
「うーん、ペコちゃんは人見知りする子なんでしょうか・・・」
楓は苦笑しつつペコの頭を撫でた。
長らく留守にしていた稟とプリムラが帰って来て、さらには異世界へと戻ったはずののび太やドラえもんまでいたことに
驚きつつも喜んでいた彼女は、落ち着いた所で足元にいた愛らしい犬に気付いた。
犬好きでもある彼女は早速スキンシップを図ろうとしたのであるが、結果は今一つであった。
「仕方ない。ペコは、とても辛い過去を持っているの・・・」
プリムラが語り始めた。
「親と死に別れ、心無い人に生き埋めにされそうになって、何とか逃げ出すも苛酷な野良生活、泥まみれのぼろぼろの
身体を引き摺り、のび太や青玉に拾われるまで明日をも知れぬ日々を送っていたの・・・」
まるで見てきたかのように暗いバックストーリーを語る。しかも、結構事実に近かった。
それを聞いた楓は目を潤ませてペコを抱き上げ、頬ずりする。
「そんな酷い目にあったんですね、可哀想に・・・よしよし、怖くないですよ。ここにはあなたをいじめる人なんて
どこにもいませんから」
「わん!?わんわんわん!わんわん!」
それに反論するかのように激しく鳴いた。いじめる人なら今ここにいる。具体的に言うと、ツインテールの耳長娘だ。
多分そう言っているのだろう。
「なはは、形無しだなあ、ん?」
テーブルに座ってラーメンを啜っていたUSDマンが愉快そうに笑った。
「・・・あんたは何故に堂々とウチでいきなりラーメンを食ってるんだ?」
稟がそう聞くと、USDマンはふんと鼻を鳴らした。
「いたらわりいか」

272 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/10/12(木) 17:56:48 ID:Y3RLPbaJ0
堂々と言い返されると、言葉も出ない。
「いや、悪くはないけどさ・・・」
「いいんですよ稟くん。稟くんやのび太くんのお友達なんでしょう?」
「ほら見ろ。可愛いこちゃんもこう言ってくれてるぞ」
楓のご好意に甘えまくるUSDマン。これくらい図太くないと、最強などと自認できないのかもなあ・・・と、のび太は
変な所で感心した。
そんな稟たちの様子を見守りつつ、のび太とドラえもんはそっと家を出た。
こんな日常も、今夜が最後かもしれない―――そう思っていた。
シュウとの最終決戦―――決行は、明日。それが皆で話し合った結果だった。
ならば今夜は、今夜だけは、騒がしくも暖かい、日常を過ごそう。
誰もがそう思い、それを実行することにした。
それぞれの最後の夜。みんなはどう過ごしているのか。
のび太とドラえもんは、魔王の家の前に立った。中からはドンチャン騒ぎの音が聞こえてくる。
「やってるみたいだね・・・」
家に入っていくと、まさに酒池肉林。メンバーは神王と魔王のおっさんコンビを筆頭にアスランとキラ、リルルを筆頭と
したメカトピアの面子、ジャイアン、スネ夫、しずかであった。
ちなみにジャイアンとスネ夫はすでに酔いつぶれている。子供の癖に、飲みすぎだ。
二人に気付いたアスランが声をかけてくる。
「おお、のび太にドラえもんも来たか!ささ、遠慮するな。自分の家だと思ってくつろぐしかないじゃないか!」
「アスランの家じゃないくせに・・・」
当のアスランはシャツとトランクス一丁で、地べたに胡坐をかいて座っていた。
他人の家だというのにリラックスし過ぎだ。
「いいんだよ、のび太ちゃん。このくらい気軽にしてくれた方が我々も堅苦しくなくていいからね」
「おうとも。無礼講で行こうぜ」
「マジで?じゃあ俺もおじさんたちのこと神ちゃんにまー坊呼ばわりでいい?」
「「いいともいいとも!」」
二人とも王様のくせして、いいのかそれで。相変わらずの二人に、呆れ返るのび太だった。

273 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/10/12(木) 17:57:21 ID:Y3RLPbaJ0
それを尻目にアスランは焼酎をぐびぐび飲み干しながら、ごま塩らしきものが振られた白くて三角の食べ物を口に入れた。
「いやー、美味いな、この饅頭!」
「饅頭って・・・これ、おにぎりじゃないの?」
キラが首を捻る。目の前にあるのは、どう見てもおにぎりだ。
「固いことを言うな。饅頭って言ってるんだから、饅頭ってことにしとけ。MUSASHIスタッフに怒られるぞ」
「うーん・・・」
釈然としないキラであった。
「けど、こうして騒いでいていいのかしら?明日には、最後の戦いが始まるっていうのに・・・」
リルルが不安そうに言うと、アスランは胸をそびやかした。
「心配するな、リルルよ。俺たちは次は絶対に負けない・・・何故ならば・・・」
いつになく真剣なアスランを、皆固唾を呑んで見守った。
「何故ならば・・・負けられない理由があるからだ!」
「・・・・・・・・・・・・どういう理由?」
「・・・・・・・・・・・・すまん、言ってみただけだ」
全員ずっこけた。
「しかし、負けられないという気持ちは本物だとも!だからどうか応援よろしく、中華料理屋の息子ケンに病弱な勝治、
そしてエセ外人のロイドさん!」
「誰のことを言ってるんだ、貴様」
「ケンがディアッカ、何故なら炒飯だから。勝治はニコル。何か死にそうだから。エセ外人はイザークだ。これには
特に理由はない。余り物ということで一つ」
「ちっ・・・全く、緊張感のない奴だ。そんなことで明日の戦いに勝てると思ってるのか?」
イザークはそっぽを向いてしまった。
「大丈夫だ。俺と∞ジャスティスは数々の試練を共に歩んできた・・・共に滝に打たれ、共に夕日の河原でタイヤを引いて
走り、共にシャドーボクシングに精を出した・・・」
「どれも意味ないしうさんくさいよ」
律儀にツッコミを入れるキラ。しかしそれを無視してアスランの話は続く。
「そして第一話にして悪の首領であり実の父と決戦!昨日までの俺では勝てなかったが俺は一秒ごとに成長し強くなる
男だから何とか勝てたのであった!ちなみに母さんには父さんが悪の首領なのはナイショだぞ!」
「なに、そのグダグダなストーリーは・・・」
さすがのキラも呆れ返るのであった。

274 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/10/12(木) 17:57:53 ID:Y3RLPbaJ0
「てゆーかもう、この話自体やめようよ。MUSASHIならともかく、カ○トボーグの話なんて誰が分かるのさ」
「・・・そうだな。我ながらやってて虚しくなってきた」
アスランはコップに焼酎を入れなおし、またちびりちびりやり始めた。
「もう・・・相変わらずだよね、アスランは。ねえ、しずかちゃん」
「え?ええ、そうね・・・」
しずかはどことなくぼんやりしているようだった。
「・・・アザミのこと、考えてたの?」
「それもあるわ。あと・・絵本って人」
「絵本さん・・・あの人が、どうかしたの?」
「アザミがどこで死んだのかを聞いてきたわ。場所を教えたら、今からそこに行ってくるって・・・どういうつもり
なのかしら・・・」
「・・・・・・」
確かに気になるところだったが、気にしてもしょうがないことだった。
その後も未だに宴会を続ける一同(主にアスランとおっさんコンビ)に呆れて、のび太とドラえもんは魔王宅を辞した
のだった。


275 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2006/10/12(木) 18:05:45 ID:a2Q8rXEv0
投下完了。前回は>>149より。
今回は個人的な趣味に走りすぎました。
しかし今、アニメ界が激しい動きを見せています。
MUSASHI終了という悲しい出来事もありましたが、さらなるネタアニメとしてカブトボーグ、
そしてスパロボアニメ!
とりあえずシュウとグランゾンが変なおっさんと戦車じゃないだけで満足です。
でも第一話冒頭からのいきなりの久保とイングラムとの戦いはわけ分かりません。
最強技のぶつかり合いがただのかめはめ波の撃ち合いだし・・・。
後書きまで趣味に走りすぎました。

>>152 あの言い訳はまあ、戯言へのリスペクトということで。

>>153 なんていうか、どんだけ危機的状況でも、マジでシリアスになっちゃうとドラ一行じゃない
     かなあ・・・というイメージがあるので。

>>154 大体そのくらいで終わると思います。

>>ふら〜りさん
狐については、語ろうとすると困るキャラNo1です。原作読めば分かりますが、本当にその場のノリで
しか動かないような男なので。

276 :作者の都合により名無しです:2006/10/12(木) 21:03:28 ID:Lu6NspvP0
サマサさんといいスターダストさんといい、趣味に走ってるなあw
長編を書く方は自分の好きなネタを織り交ぜないと中々、続かないんでしょうね。

USDマンはとっくに最強の座から滑り落ちたのに、相変わらずいい感じだなw

277 :作者の都合により名無しです:2006/10/12(木) 23:22:05 ID:IrfiQB9p0
サマサさん風格出てきたなあ。
麻雀を読んでるようだ。

278 :作者の都合により名無しです:2006/10/13(金) 07:40:33 ID:ZGKZF9fu0
さまささん乙。

みんながどこかのんきな分、優しくてまじめなしずかちゃんが逆に際立つな
プリムラも別系統でまじめだけどw

あと2、3ヶ月で終了か。寂しいな



279 :作者の都合により名無しです:2006/10/13(金) 21:11:30 ID:5/KAIGp70
いや、三部作でしょ

神界→超機神と来て最終章はなんだろ?
気が早いけど楽しみにしてます。

280 :ふら〜り:2006/10/14(土) 18:58:18 ID:PDa6NkMq0
>>サナダムシさん
うむ! これでこそサナダムシさん、本領発揮ですな。……と申し上げて良いものやら?
宇宙の支配者ゆえに過酷な幼少期を過ごした、ってとこに虚を突かれつつ納得し、そんな
彼の心が少しずつ暖められていくのに同調して和んでたら……カウンター喰らいましたっ。

>>スターダストさん
爆爵、ゴロゴロ転がる惨殺死体にも超人バトルにも動じませんね。高揚興奮はしていても。
もはや宗教、信仰レベルの信念が心の柱になってるからか。刃牙の「夢を見た! この男
を造る!」を思い出しました。善悪美醜は別として、やはりそういうのを持ってる漢は良い。

>>サマサさん
ひっっっっさしぶりのプリムラ&ペコっっ! ボケと突っ込みならぬ、一方的な突き刺しと
突き刺され、ほんと可愛いです。今はこうでも、きっと戦い終わった後の別れ際にはまた
「宇宙開拓史」級のシーンを展開すると期待。その時はアスランもさぞ……楽しみだなぁ。

281 :永遠の扉:2006/10/14(土) 23:28:41 ID:5wBWGqMD0
第007話 「今はまだ分からないコトばかりだけど」

──8月28日。昼。
やっぱ変わっている。
居並ぶ剣道具の一団からそんな声が漏れると、みなひそひそながらに同意を示した。

彼らの前で展開される打ち合いは、実に濃淡鮮やかだ。
片や紺の剣道着にオーソドックスな黒の防具。
片や白の剣道着に気障ったらしくすらある白篭手と白面。
早坂秋水その人だ。
彼は面金の奥から鋭い叱責を飛ばす。
「動く時も左手はヘソの辺りに固定する事! 左手のブレは足にも響く!」
「は、はいっ!」
対する黒い防具の部員はまだ1年と年若い。
おたおたと必死に左手を直して、容赦なく注ぐ竹刀の雨に応戦する。
打ち合う竹刀がぱちぱち鳴るたび、彼の足取りは徐々に徐々に押されていく。
退き方も実にぎこちなく、一歩後ろへいくごとに体がブレてますます体勢が崩れていく。
それでもまだ、打ち込まれていないだけマシだろう。
観戦する剣道部員は、秋水の剣戟の凄まじさを正に「身を以って」知っている。
「俺、何度も吐いたもんなぁ」
「アバラにヒビが」
「みみず腫れが2週間は残ってた。16箇所ぐらい」
それに比べれば、後退で済む1年生などはまだまだ幸福だろう。
彼らは軽い嫉妬と、部活仲間ならではのちょっとした安心感を打ち合う2人に覚えた。

「ここまで。竹刀の振り方は確実に上達しているから、後は足さばきを見直すコト」
秋水は竹刀をゆるゆると提げ、姿勢良く立礼をして相手を見据えたまま静かに下がった。
1年生はというと、息も絶え絶えで礼もフラフラ、竹刀を支えに踵を返すという有様だ。
「コラコラ。立礼の後に背中を向けるな」
審判を務めていたいかつい剣道部部長が苦笑交じりに呼びかけ、秋水にも声を掛ける。
「ご苦労さん。流石に部員全員への稽古は疲れただろ。水でも飲んで来い」
「ええ」

282 :永遠の扉:2006/10/14(土) 23:30:39 ID:5wBWGqMD0
と面の下から現れた端整な顔は、汗一つかいていない。
(武藤相手にゃかいてたんだが…… アイツ1人の方が部員全員より強いってか? 稽古とは
いえ5〜6人ぐらいは本気出していたが)
頼もしいような小憎らしいような微妙な表情をしているうちに、エースは防具を取り去り体育館
を立ち去っていく。

しばらく部員はわいわいと秋水の変化について語った。
以前の彼の稽古というのはそれはもう凄まじく、相手が戦闘不能になるまで打ちのめすわ
慇懃無礼な態度を取るわ、観戦に来た女子どもに黄色い声を上げさせるわでそれはもうや
り辛い相手だった。
だが、交通事故(と彼らは信じている)に遭って約3ヶ月。
8月ももう終わりに近づいた頃に復帰した秋水は、やけに雰囲気が違っていた。
「あまり笑わなくなったな」
「でも、剣は以前より柔らかいぜ」
「俺らに教授してくれるし」
とまぁ、無愛想ながらに加減を加え、のみならず稽古の中で的確なアドバイスをするように
なっている。
しかもそれたるや、常に地味で基本的なものばかり。
容姿端麗、頭脳明晰で全国個人4位の剣腕の持ち主という華々しい肩書きにそぐわず、無
味乾燥なほどに技術一点張りだ。
もっともそういう質朴な言葉の方が剣に携わる若人には合うらしい。
いわれた部員はすんなり理解し改善に努めていくので、結果、剣道部全体のレベルが底上
げされつつある。
師範を得た思いだ。
と、剣道部部長──部員からは秋水が沖田総司か土方歳三とすればあんたは近藤勇だと
揶揄されるほど縮れ面でずんぐりとした粗野な風貌を持つ──は表現し、部員もそうだと納
得した。
もっとも秋水、沖田総司にしてはややトウが立ちすぎている。
どちらかといえば新撰組副長・土方歳三の方が的確だろう。
無愛想で生一本な性質はもとより、「副」会長という所が似ている。
それをいうと桜花が近藤勇となり、ドラマCD2での恐ろしい声が何度も記憶から呼びかけてきそうだが。

283 :永遠の扉:2006/10/14(土) 23:31:35 ID:5wBWGqMD0

「もしかすると恋人でもできたんじゃないか?」
「でもアイツ、生徒会長以外に興味あるのか?」
「あったとしても桜花ぐらいの美人じゃないと眼鏡に叶わないだろう」
「何にしろ、今はまだ分からないコトばかりだな」

などと無遠慮な会話をしているうちに、みな空腹に気付いて弁当を食べ出した。

この日の朝、戦士長・防人衛は、秋水を始めとする戦士たちへ命を下した。
ちゃぶ台を囲む歴々の顔は、いずれも粛然。
自然、松葉杖片手に立って指示する防人の声にも熱が篭っていたという
千歳と御前と桜花は、昼の間L・X・Eアジトを当たり割符の捜索。
L・X・E時代の桜花はコンピュータ関係を任されており、とあるホムンクルス(蝶野爆爵の玄
孫に当たる)の潜伏するアジトをハッキングで突き止めたコトもある。
だから既にL・X・Eアジトはリストアップ済み。
斗貴子が訪れ、総角たちと交戦した廃墟も、元は桜花が調べた所なのである。
ちなみに千歳の寮母としての務めは、このミーティングの頃には掃除洗濯炊事総て完了済み。
基本的には朝と夜に寮母として頑張るようだ。
本題に戻る。
秋水と斗貴子は夜に捜索。それまでは自由行動。基本的に休息を取るべし。
「キミたちは昨晩戦ったから、ゆっくり休め」
「お言葉ですが戦士長、街に新手のホムンクルスが現れた以上、休む訳にはいきません」
毅然と眉を吊り上げ、珍しく抗弁する斗貴子の肩をぽんぽん叩いて防人は宥めた。
「まぁ待て。落ち着くんだ戦士・斗貴子。桜花の話じゃ、闇雲に探し回っても見つかるような連
中じゃないらしいぞ」
短い沈黙の後、斗貴子は疑惑のこもった視線を桜花に向けた。
「そう恐い顔すんなってツムリン。詳細は千歳おねーサマにまとめてもらってあるし」
いやに偉そうな御前の声に応じて、千歳はメモを斗貴子に見せた。

284 :永遠の扉:2006/10/14(土) 23:36:53 ID:5wBWGqMD0
・敵について

組織名:ザ・ブレーメンタウンミュージシャンズ。
(リーダーを務める総角主税の武装錬金と同名。略称はブレミュ)

流れの共同体で、L・X・Eとは一戦を交えた後に提携。早坂さんとの付き合いもそれ以来。
基本的に神出鬼没。訪れない限り、所在の把握は困難。
調整体の知識をDr.バタフライに流したのも彼等。
構成員は半年前の段階で5名。
ただし実際に早坂さんたちが顔と名前を知っているメンバーは3名。
リーダー、総角主税。小札零。鳩尾無銘(きゅうびむめい)。いずれも創設当初からのメンバー。
鳩尾無銘の風貌 …… 中肉中背の黒装束で、忍犬を常に同伴。
   〃   武装錬金 ── 名称・特性とも不明。忍犬がそうだと思われる。

更に総角主税については、昨年の剣道全国大会3位決定戦にて、秋水君を下した実績あり。

なお人喰いについてはメンバー全員とも、共同体に属する信奉者のうち更正の見込みがな
い者に対してのみ行う。

「こんなトコ」
「妙な話だが、そこらのホムンクルスよりは危険度は低い。鈴木震洋ほか数名の信奉者は
行方をくらまし、この街にいるかどうかすら定かじゃないしな」
防人は割りとこういう断定を下す癖がある。
前述の蝶野爆爵の玄孫についても、「人喰いも20人近く食べた後のせいか収まっている」
と斃すのを後回しにした位だ。
「人喰いについては安心……といったら語弊がありますけど、少なくても一般人には危害は
及びませんから、少なくても津村さんとしては安心でしょ?」
艶やかな黒髪がくすり笑いにつられて揺れた。桜花だ。
斗貴子の持つ「信奉者であれば殺してもいい」という主義を皮肉ったつもりだろう。
「だとしても、先に奴らを血祭りに上げる方が割符の回収も確実に行える筈」
「戦士・斗貴子。キミのいうコトにも一理はある。だが、奴らの所在が掴み辛い以上、少しでも
可能性の高い割符探しを優先する方が確実だ」

285 :永遠の扉:2006/10/14(土) 23:38:06 ID:5wBWGqMD0
防人は過去の任務失敗から、危機への意識が非常に高い。
「街のどこかに眠っている『もう一つの調整体』の暴走を防ぐためにも、ここはまず割符を6つ
総て回収し、正しく起動する必要があるの。残念だけど、ヴィクターの時がそうだったように、
ホムンクルスより未知の存在を斃すのが先決。分かって」
とうとうと語る短髪美人──千歳に、斗貴子は「分かってます」と気落ちした様子で答える。
この2人の前歴と斗貴子の過去は密接すぎる関係を持っているから、彼らが抱く危機感は
そっくりそのまま理解できるのだろう。
(そう。ヴィクターには及ばないまでも、わざわざ「もう1つの」と銘打つ以上、既存の調整体
よりは遥かに強力な相手の筈──… 出来れば救援を要請したいが、今の戦団の状態で
はそれも難しい。根来もあと8日は入院だ。…………せめて俺が戦えれば、な)
防人は胸中のざわめきに無精ヒゲを一撫で。
されど表情には出さず優しく声をかけた。
「戦士・斗貴子。あまり1人で何もかもしょいこむな。昔と違って今はこれだけ動ける者がいる」
防人、桜花、御前。千歳、そして秋水。
「それに奴らの狙いが割符である以上、捜索もけして無駄ではない。漠然と探すより遭遇率
は高いはずだ」
「キミに言われずとも分かっている!」
ぶっきらぼうな物言いに、斗貴子は怒気をはらんだ調子で机を両手で叩き、身を伸ばした。
もっとも静まりかえる一座を見ると、ひどく気まずそうで申し訳なさそうな顔で俯いたが。
「そう気にするな。人間誰でも虫の居所が悪い時はある」
あやすように防人は呼びかけつつ、片手を謝るポーズにして秋水を見た。謝っているのだ。
「……敵との遭遇率が高いならなおのコト、戦闘に向いた私をいまから捜索に向けるべき」
ぽつりと呟く斗貴子に防人は大きく同意を見せた。
千歳も桜花も優秀ではあるが、単純な戦闘力は低いだろう。御前も然り。
「津村さんが心配しているのは、もし割符を見つけた場合、ブレミュの人たちに横取りされる
ってコトでしょう? それなら大丈夫よ。私は御前様に持たせてちゃんと届けるから。ね?」
「そーだぜツムリン!」
笑う桜花の頭上で、ビシィっと腕を突き上げて御前は威容を誇って見せた。

286 :永遠の扉:2006/10/14(土) 23:38:52 ID:5wBWGqMD0
「人喰いの心配だってL・X・Eの残党はほぼ壊滅状態でナッシング! 気楽にいこーぜ気楽
に!」
「戦士・千歳は心配ないな」
「ええ。回収次第すぐこちらへ」
斗貴子はしかし「休息します」と席を立ち、陰のような足取りで部屋を出た。
「…………」
秋水はそんな思いつめた彼女が、昔の自分を見ているようでやるせない。
溝こそあれど根が生真面目な部分は一緒なのだ。
「防人君。いま進行中の救出作戦について話した方が──…」
それはバスターバロンという全身甲冑(フルプレート)とは名ばかりの無敵の男爵さ……じゃ
ない、巨大ロボットの武装錬金を月へと派遣する壮大かつ無謀な計画だ。
発案した大戦士長・坂口照星の腹心たる千歳は、もちろんそれを知っている。
平素無表情な彼女が心痛を抱えた面持ちだ。
根来相手に弁当を食う食わないとか栄養状態うんぬんでもそういう顔をしたコトもあるが、
こっちは更に深刻、母が娘を心配するような感じである。
「分かってる。だが、もししくじれば希望を抱いた分、彼女が辛くなる。勝手かも知れないが、
そんな戦士・斗貴子の顔は見たくない」
防人もやや父親モードが入っている。
無理はない。かつて彼と千歳ともう1人が失敗した任務の唯一の生存者が斗貴子なのだから。
(せめて、私が敵のメンバーに接触すれば、所在を把握してすぐ斃せるんだけど……)
ヘルメスドライブの索敵対象は、千歳の会った人間に限られるから、それもできない。
とここまで考えた千歳は、ある可能性に気付いてハッとした。
「ねぇ防人君。敵がヘルメスドライブを使えるというコトは」
伝播した驚きが防人の顔に昇る。
「まさか、こちらの状況も筒抜けか?」
「いえ。それはないと思います」
桜花は2つの理由をあげて、可能性を否定した。
まず総角の能力の特性上、完全にはヘルメスドライブを再現できないコト。
次に彼の性格上、日常生活を覗き見るような下劣な真似はできないコト。
「きっとアイツ、入手したはいいが盗撮はいかん!って悩んでるだろーしな!」
「だが安心はできない。奴は策を弄する部分もある」
「ええ。確かに」

287 :永遠の扉:2006/10/14(土) 23:41:48 ID:5wBWGqMD0
策士でなければ、おもちゃ好きなホムンクルスを囮に千歳や根来の能力を入手したり、その
戦いの中で戦士でもホムンクルスでもない浮浪者に銃を持たせて乱入させたりしないだろう。
「こちらの状況を知るために、既に何らかの策を仕掛けていると見るべき──…」
間接的にとはいえ、総角と接触した千歳は警戒心を抱いた。
「捜索に行く前に、この部屋の周りを調べておく必要がありそうね」
「もしかすると、部下を潜入させているかも知れん。そっちは俺がそれとなく探しておく」
「ところで」
と桜花は呟いた。
「ひょっとしたら昨晩、職員室で私を襲撃したのもブレミュの一員かも知れません」
「ふむ。他の者を逃がすために囮になったというアイツか」
「はい。恐らく、逃がされた方が、職員室の時間を巻き戻したと思います」
「画像を見たけど……外壁の切り傷はナイフのような小さい刃物でつけられた物。位置や角
度からすると、持ち主の身長は145cm以上155cm未満。傷はあまり深くないから、力は
あまりなさそうね。ホムンクルスの出力には個体差があるけど、性別は恐らく女性。非力ゆえ
に技術や速度に重点を置く性格だと思うわ。切り口がなめらかすぎるから」
「え」
「……」
「画像1枚でどうしてそこまで……」
「何か?」
絶句する桜花と秋水と御前に、千歳は不思議そうな顔をした。
自分がどんなコトをいったか良く分かっていないというか、ごく普通の言葉になぜこういう反応
をされるのか分からないらしい。
ただ1人、防人だけは親指を立てた。
「承太郎ばりにブラボーなプロファイリングだ戦士・千歳!」
「まぁなんだ。その条件に合う奴っていったら小札じゃね?」
「いや、彼女はその時間廃墟にいた。第一、武装錬金はロッドだ。切り傷はつけられない」
秋水の指摘に千歳も頷く。
「バリアーを作るマシンガンシャッフルに対し、こちらは恐らく対象となる物体の時間に作用す
る武装錬金。操っているのは、破壊力よりも搦め手で追い詰める、強いというより畏ろしい相
手ね」
千歳はまるで彼女自身を語っているようだが、きっと気のせいだ。
「ちなみに、私を襲った人の武装錬金は推測できますか?」

288 :永遠の扉:2006/10/14(土) 23:43:14 ID:5wBWGqMD0
桜花はここぞとばかりに問う。
「見てみないコトには…… 話を聞く限りでは銃の類ではなさそうだけど、つぶてを射出する武
器に心当たりがなくて。ごめんなさいね」
「いえ、こちらこそ」
「しっかし」
混乱した表情で御前がボヤく。人間に比べて顔のパーツが極端にデフォルメされている自
動人形の彼女(彼女なのだ。マリアですら女性だから私は一向に構わんッッッ)だから、表情
は大仰でどこかコミカルである。
「今はまだ分からないコトばかりだな」
「だが信じるこの道を進むだけだ! 何故ならそっちの方がカッコいいから!」
防人はガキ大将のような笑みを浮かべた。見る者に安心を与える笑みだから千歳は好きだ
が、戦士長という要職にある以上もう少し慎んで欲しいとも思う。
「私、もう一度職員室を調べてみます」
桜花の申し出に秋水は何かいいたげな顔をした。
「ひょっとしたらセキュリティを切る以外に何か目的があったかも知れませんから。囮を務め
てまで仲間を逃がした理由も含めて……」
「俺がやろうか姉さん。どうせ剣道部にも顔を出すし」
「いいから。秋水クンは稽古に集中して。役割分担は昔からでしょ? 第一、まひろちゃんとも
お話したいでしょうし」
実に悠然とした女神の笑みを浮かべて、桜花は秋水を窘めた。
その時、管理人室の前で小柄な影がじっと佇んでいるとも知らずに──…

「鐶(たまき)の報告によると、千歳さんと桜花と御前の奴がL・X・Eのアジトを探しているよう
だが無駄なコト。なぜなら割符は奴らに渡した1枚を除いて5枚総てこちらにある。ま、せいぜ
い、何もない所を探してもらうぞ。こちらが当面の目的を果たすまで」
中天高く上るころ、銀成神社の中で総角が呟いた。
何を思ったか、浴衣を着て豊かな金髪をポニーテールに変えている。
「俺たちの方がはるかに有利だが、知られてはマズい。知られれば奴らの矛先が向く」
「割符を入手するには不肖たちを倒すほかありませぬゆえ」
ずっと神主不在の神社の中には、似つかわしくないタキシード姿の小札もいた。

289 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/10/14(土) 23:47:03 ID:5wBWGqMD0
アニメのOP、ボロボロの学校で笑ってるまひろたちを見るたび副鼻腔と涙腺にズキっと来る
のです。
だってあんな退廃的な状況に追い込まれてるのに、みんながみんな笑ってるんですよ?
アレみると、連載時に(作者の力量不足もあるとはいえ)不遇を囲い打ち切りすら喰らいつつも
ファイナル・ピリオドで一気に巻き返して、笑顔で終わらせた上にアニメ化すら果たした武装
錬金という作品の、奇蹟のような境涯に思いを馳せてしまうのです。
言葉にすると分かり辛いんですが、感性の中では直接繋がってて、見るたびぶわぁっと。
逆境でも強い支えを持って、笑顔を出せるのは作品キャラ人間問わず羨ましい限り。
精進せねば。

>>268さん
すみません。実は今回冒頭も入れたかったのですが、それをやると長くなってしまうので……
爆爵の濁りと純粋さの混じった心境、いかがでしたか?これからも合間合間で彼を描きますよ。
そしてプロットがあると、以前より迷わず描けるので助かります。

>>269さん
死に様にグっと来てそれから別スレで描いたところ、大好きなキャラと化しました >爆爵
永遠の扉は、自分にしてはストーリーに拘ってますが、爆爵に関しては趣味と実情もろもろ
をブチ込んでます。嫌いな錬金キャラは……いないかも。震洋や猿渡、押倉さんすら好きなので。

>>270さん
いいですねその響き! そりゃもう、日に1度は錬金SS書かないと落ち着かないですし、総集
編だってまだまだ。どうも自分の感性は大衆受けするモノより、どこか渋めのモノに反応する
ようで。ま、楽しければそれで良しです。誰かが楽しめるモノを描ければ。

ふら〜りさん
そういえば彼も学者でしたね。自らを圧倒的な存在にするのではなく、誕生もしくは維持の支
えたらんとする立場というのは素敵です。あの人は結局ジャックの暴走に自殺しましたが、爆
爵はより強固な柱の元に目的を完遂しますよ。

>>276さん
はは。また趣味に走っております。モチベーションを保つためにはどこか遊び要素が必要ですね。

290 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/10/15(日) 00:18:59 ID:iXTPIn370
ありゃあ。006話だし「今は分からないコトばかりだけど」だしわで。

すみません。バレさん。修正したのをまとめサイトのBBSに上げさせて
頂きますので、そちらへ差し替えをお願いします。

291 :作者の都合により名無しです:2006/10/15(日) 11:14:38 ID:Wxw/HfAh0
スターダストさん乙です!
斗貴子さんの周りには心強い仲間がいますが
一番重要な核となるピースが足りないんですよね。
ま、悲しみが深いほど喜びも大きいわけで。

でも、どっちかいうと斗貴子より千歳や桜花の方が
このSSで魅力を感じるかもw

292 :作者の都合により名無しです:2006/10/15(日) 15:13:55 ID:bWF8uOG70
スターダスト氏乙。
斗貴子の焦りと悲しみがにじみ出てますね。
どんどん趣味に走ってください!

293 :作者の都合により名無しです:2006/10/15(日) 18:01:53 ID:3DgLuCPt0
>日に1度は錬金SS書かないと落ち着かないですし

頼もしい!
錬金も大好きだし、このSS自体も好き。頑張って下さい!
ちょっと最近職人さんたちがお休みの方多いけど、
スターダストさんが引っ張ってくれればいいな。
桜花の美人で腹黒なところを特に書いてほしいw

294 :作者の都合により名無しです:2006/10/15(日) 22:30:29 ID:bLsyjvDb0
ひとつの漫画にここまで愛情を捧げられるというのに感動します。
正直、世間的にはそこまでヒットした作品ではないのに…

トキコ、秋水、桜花、小札たちの活躍にこれからも期待します。

295 :作者の都合により名無しです:2006/10/16(月) 20:42:05 ID:BZ+HJbbi0
あげよう
流石に更新速度が落ちたな・・

296 :上の上にいる上:2006/10/17(火) 00:25:49 ID:ALh/aduL0
 “神”という単語を聞けば、おそらく十人中十人が(実在を信じるかはともかくとして)
いわゆる“最高の存在”を連想するだろう。
 ところが「上には上がいる」という言葉が象徴するように、神もまた最高ではない。
 なぜなら、宇宙には神をも超越する存在“界王”がいるからだ。

 界王星。蛇の道終着点に位置する、あの世ともこの世ともつかぬ領域。
 体積は小さいが、重力はなんと地球の十倍。
「ほれ、出たぞ〜い」
 淡い黄土色をした液体が、あちこちにばら撒かれる。
「それっ、ウェーブじゃっ!」
 液体の軌道が右往左往し、心電図さながらの波を描く。
「はいーっ! 超スピード!」
 とてつもない勢いで雑草に落ちていく液体。まもなく噴射が終わる。
 丸出しになっていた陰茎をしまい、声の主が一息つく。
「ふぅ……すっきりした」
 背は低く、体格は太め。丸いサングラスに、触覚がついた奇妙な帽子。さらにはこれま
た奇妙なマークが刻印された中華服。加えて余りにも下らない遊びに興じていた男。正真
正銘、界王その人である。
 彼が行っていたのは小便アート。現在ちょっとしたマイブームとなっている。
「どうじゃった、今のは?」
「ウッホッホ、ウッホッホ」
「そうかそうか〜!」
 ペットである猿、バブルスに評価を求め大喜びする界王。
 偉人が考えていることは、どうも凡人には理解しがたいところがあるようだ。

297 :上の上にいる上:2006/10/17(火) 00:26:21 ID:ALh/aduL0
 ちょうどその時、界王星に珍しく来客があった。
「よぉっ、界王様、バブルス!」
 軽快な挨拶が飛ぶ。
「ご、悟空っ! いったいどこから現れたんじゃ!?」
 来客は孫悟空であった。ナメック星で超サイヤ人に目覚め、悪の根フリーザを打ち倒し
た張本人。
「あぁ、ちょっと瞬間移動でな」
「瞬間移動……? また便利な技を覚えたもんじゃのう。で、何しに来たんじゃ?」
「え、あぁ、ほらフリーザとの戦いじゃ、ずいぶん界王様に世話になったからさ。お礼に
来たんだ」
 と、五百ゼニーで購入した菓子折りを手渡す悟空。
「ほう、わざわざすまんな」
「あ、あと、これも」
 菓子折りの上に、ぽんと乗せられるビデオテープ。タイトルは『爆笑必至!お笑い傑作
選』とある。
「これは?」
「あぁ、初め何を持っていくか迷ってちゃってさ。ヤムチャとかに相談したら、界王様は
ギャグが好きだからこういうのがいいって持たされたんだ。っつっても、オラはどうもよ
く分からねぇけど。まぁ、せっかくだから暇があったら見てくれよ」
「ふむ……。ギャグの天才であるわしにとっては“釈迦に説法”のような土産じゃが、暇
があったら見ておこう」
 こうして悟空は帰っていった。
 さて、“暇があったら”どころか暇だらけの界王。意気揚々と自宅のビデオデッキにテ
ープを入れる。
 悟空にはああいったが、内心は期待に満ち溢れていた。

298 :上の上にいる上:2006/10/17(火) 00:27:17 ID:ALh/aduL0
 一週間後、再び界王星を訪れる悟空。
 界王はいつもと変わらないのんきな生活を送っていた。──ある一ヶ所を除いて。
「あれっ! 界王様、どうしちまったんだ?!」
 悟空はすぐに気づいた。彼の頭上に、金色に光る輪っかが浮かんでいることに。
「えっ?! い、いや……ちょっと、ね……」
 汗をかき、口ごもる界王。まさかビデオで笑い死にしたなどと、口が裂けてもいえるも
のか。

                                   お わ り

299 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/10/17(火) 00:32:09 ID:ALh/aduL0
うんこの方は好評だったようで、ありがとうございます。
今回は二レスでまとめようかとも思いましたが、三レスになりました。
界王は背表紙でもあんなんだったんで、非常にやりやすかったです。

300 :作者の都合により名無しです:2006/10/17(火) 08:24:32 ID:4ygRh0IL0
サナダさんドラゴンボールの短編書かせたら天下一品だなw
カイオウ様ワロスww

301 :作者の都合により名無しです:2006/10/17(火) 21:32:56 ID:xvMWfbBC0
今回は割りとオーソドックスですね。
こういう、短編ですっきりとまとめるのは
長編よりもある意味難しいかもなあ


302 :永遠の扉:2006/10/17(火) 23:04:45 ID:ZKiDYbab0
「が、奴らとコトは構えない。昨晩の戦闘にしたって、アレは最後の1つが懸かっていたからだ。
まぁ結局、侘び代わりとかじゃなく、当面の目的を果たす時間稼ぎのためにくれてやったが」
小札はにぱぁっと笑った。総角の物言いが面白いらしい。
「当面の目的は『もう1つの調整体』が眠っている場所だ。突き止めしだい、最後の割符を奪
還し起動。入手して逃げる」
呟きながら認識票を一撫で。
ヘルメスドライブを発現し、その六角の筺体を頼もしげにぽんぽん叩く。
小札はその挙措にも幼い笑みを浮かべた。
昨日総角が、「入手したはいいが盗撮はいかん!」と悩んでいたのを知っているからだ。
まぁ、結局彼は3秒ルールを突発的に提唱し、相手をちょっと見て戦闘ないしはそれに準ず
る(ミーティングを除く。プライベートの話が出てきたら困るらしい)行為の途中なら監視しても
いいというコトになった。
策士のくせに変な所で律儀な男である。
そも、先々日の千歳たちに対する不意打ちのしくじりも、「別にだな、せっかく笑った人を斃すの
に気が引けた訳じゃなく、単に好奇心で好機を逃した、一種のうかつさ故だ」らしい。

「ともかく。ヘルメスドライブで突き止めた秋水くんたちの所在を不肖どもが拝聴すれば回避
は確実…… ですが、懸念される難点はそこですねっ。あまりに接触がなさ過ぎれば」
マシンガンシャッフルをマイク代わりに小札は喋る。

”おかしい。奴らはなぜ割符を探しに来ない!? こは何事、こはっ何事ぉー! はっもしや
あいつら既に全部探し終わっていて俺たちの持ってる割符が最後なのでは。ぬぬぬ許せん!
よくも謀ったな、てめぇらはシャアか? シャアなんだな! かくなる上は皆殺しじゃー!”

「と戦士の方々は奮起されるコトでしょう。主にセーラー服美少女戦士のおねーさんが。セー
ラー服も美少女も戦士も合ってますのに、現物から離れすぎておりますおねーさんが」
「つまりだ、しばらく適度に戦士と接触し、こちらも割符を探しているフリをしなければならん。
総ては目的を果たすまでの穏便なる時間稼ぎの為に」
総角は神社の扉を開けた。

303 :永遠の扉:2006/10/17(火) 23:05:45 ID:ZKiDYbab0
「というコトで、ヒットアンドアウェーを得意とするお前の出番だ」
境内と社を繋ぐ5段ほどの階段の前に、少女が横向きに寝そべっていた。
「うぉぅぉおおー うぉぅぉおおー たったらららったぁ」
……なにやら口ずさみつつ。
中肉中背でやや細め、肘まである髪の先にはシャギーが入り、雑草のようにツンツン尖っている。
草色のタンクトップは豊かな丘陵にせり上げられ、余すところなく胸元をさらけ出している。
クリーム色のハーフパンツからはすらりと伸びる血色のよい足。
更に、ハーフパンツには茶色のベルトを通し、ベルトからは銀色のチェーンアクセサリーをぶら
下げているので、いかにもラフな雰囲気だ。
「うぉぅぉおおー うぉぅぉおおー たったらららったぁ おまえとー♪」
……なにやら口ずさみつつ。
彼女は総角や小札には目もくれず、舐めていた。
うぐいす色のメッシュが幾筋も入った茶髪を、赤い舌でチロチロと。
セミの声に混じってなんとも粘膜質な水音があたりに響く。
「栴檀(ばいせん)二人」
「むー?」
栴檀と呼ばれた少女は、階段の下で細い髪束を口にくわえたまま総角たちを見てまばたきした。
透き通ったぶどう色の眼球の中で、黒い瞳孔がまるまると開いている。
目つきはアーモンド形でなかなか挑戦的な印象だが、宿る光はやや気だるい。
「おぉ。栴檀さん方を使われますか。栴檀を本来の読み”せんだん”で名乗ると語呂が悪いの
で”ばいせん”にされている栴檀さん方を。どちらかといえば調整体っぽい栴檀さん方を」
わーわー解説する小柄な18歳を背後に、総角は階段を5段抜かしで飛び下りた。
「とりあえず栴檀。いまからお前は撹乱役だ。行き先──錬金の戦士が行く場所だが、そっち
は都度知らせる。ただし、跳ねつきショートヘアーの妙齢の美人には気をつけろ。接触すれば
最後、常に居場所を把握され、戦士の餌食となる。見かけたらすぐ逃げていい」
「うむうむ」
桜色の唇から立ち上る音は返答なのか。はたまた髪を噛んでる音なのか。
どちらにせよやる気がまるで感じられない。
「ふむぅ。これは眠っておりますね」
小札は階段の最上段から分析した。
階段を降りないのは、きっと小柄ゆえに高い所からの景色を手放したくないのだろう。

304 :永遠の扉:2006/10/17(火) 23:11:06 ID:ZKiDYbab0
「なら香美(こうみ)の方でいい。分かったか? やれるな? 撹乱というのは、敵の前に出て
行って、暴れててきとーに調子を乱してから逃げるコトだぞ」
「やだ」
口元から髪が解放されだらりと落ちた。
「だって眠いしー、あたしは武装錬金つかえないしー! おひさまに当てた髪なめてビタミン
補給してる方がいいしー!」
まだ唾液に湿っているそれは、てらてらと光を反射する。
「すごく嫌そうだなお前」
「だってだってだってー!」
両手をバタバタしながら栴檀が訴えるには。
「さっきご主人、学校で流星群ぶっぱなしてガラス破ったから! 空っぽのじょーたいでぶっ
ぱなしたから! ぐったりなの!」
「あのな。貴信(きしん)が鐶(たまき)を逃すために桜花襲ったのはさっきじゃなくて昨夜だぞ」
「しゃぁーっ!」
栴檀は瞳孔を細くし、髪を逆立てて威嚇した。
「いいじゃんさっきで! きょーりゅー滅んだのも地球生まれたのもさっきじゃん! ほんとに
もう、あたしに時間なんてむずかしい話フってイジメるとひっかいちゃうわよ!」
「ともかく、貴信どのは睡眠中」
「そーよ! だから他の人がやればいいじゃん他の人が。ひかり副長とか。ちっこいクセに
やたら強いからぴったしカンカンでしょーが。どこにいるか知んないけどさ」
「おや? 貴信どのからは

『集合場所は銀成学園屋上から変更! 詳細は鳩尾(きゅうび)のアレを参照されたし! 
で、鐶光副長は無事送り届けました!』」

などとメールにて言伝を受けましたが……はてさて」
栴檀はちょっと考えた後、思いっきり首を縦に振りまくった。
「あ、そーいやそだ。うん確かにそうよさっき送った。でもなんであんなトコに? 住むんだった
ら別にここでいいじゃん。あんなおっきな場所で変なカッコする必要ないじゃんっ」
「布石だ。理由はおいおい話す」
「ふーん。あ、鳩尾どこよ鳩尾。アイツ、ぶそーれんきんナシじゃあたしぐらい弱いけど、ちょ
っかい出して逃げるのはお手のモノだと思うけどさ、どうよ!」

305 :永遠の扉:2006/10/17(火) 23:12:31 ID:ZKiDYbab0
「ね。ね」と、人懐っこく八重歯を表しながら階段を四本足でドタドタ上って立つと、
「あやちゃんもそー思わない」
正面から小札の肩に手を当ててゆすりはじめた。
「うああうぅ〜」
小札はされるがまま。ヘンな声をあげながら首をがっくんがっくん揺らす。
「鳩尾無銘なら、これまで通り『奴ら』の捜索だ。もう一つの調整体を入手しだい、奴らと決着
をつけねばならんからな」
総角はいやに粛然とした真剣な眼差しで、彼方を見た。
「え! あいつらと!?」
総角を振り仰いだ栴檀の顔からみるみるうちに血の気が引いた。
「マジ?」
「マジ」
事もなげに頷く欧州美形に、栴檀の尖った髪の毛がタワシのように膨らんだ。
「やたら怖そーなあいつらとやんの……!? やだやだ! あやちゃんもそうでしょ! ねっ」
パニックを起こした彼女は、つかんでいた小札の肩をむちゃくちゃくに揺すりまくる。
「ならば最後の切札たる剣椀を高めるべく秋水くんとも戦っておかれ……うああうぅぅ目が〜」
目をナルト渦にしてぐらつく小札を見る紺碧の瞳は、笑みに細められた。
「長い目で見ればそれも必要なコトだろう。アイツの型にはまった面白みのない剣さばきを受
けるのは想像するだけで愉しくもある」
だが、と彼は続ける。
「小札よ、それは私情だ。今は『もう1つの調整体』の回収を優先すべき時。お前たちが散々
駈けずり回って割符を集め、いよいよ大詰めという時に俺が私情に浸るのは良くない」
「へぇー。もりもりも考えてるんだ。ばかだけどえらいっ」
栴檀はぴょこりと踵を返して、総角に手を差し出した。
「ね! 褒めたから10円ちょうだい。うまい棒買いぐいしてご主人に栄養補給するの!」
怯えたかと思えばもうコレ、非常に移り気な少女である。
総角はこめかみを押さえ、半眼でうめいた。(オーフェン風)
「山田君、例の物を」
「かしこまりましたぁ〜」
小札は目をぐるぐるさせつつ、おぼつかなげにロッドを一振り。
長さ3cm、直径5mmに満たない白い円筒状の物体を出現させると、総角に投げた。

306 :永遠の扉:2006/10/17(火) 23:13:48 ID:ZKiDYbab0
彼は左手で受け取り、階段の2段目に立つ。それでも3段上に立ってる小札より頭が上にあ
るのは、彼女にとってとても悲しい出来事だ。
そして総角、何も持ってない右手を差し出すと、クンクン クンクン。栴檀はそれを嗅いだ。
何も持ってないのに手をさし出されただけで、つい、だまされて臭いを嗅ぎに来るというとこ
ろはまるで『アレ』だ。
「そこに不意打ちでタバコをかがせてみるッ!」
「ギニヤ!」
凄まじい声を上げて栴檀は仰け反り、後ろに大きくコケて派手な音を立てた。
あいにく、後ろの小札は回避を優先した(別に揺すられた意趣返しを果たした訳ではなく、
反射的に)ので、栴檀は階段に背中を打ちつつ滑り落ちる。
自然、タンクトップは下から上へと蛇腹の様に縮んで、お腹をまるまる露出させる。
みぞおちの近くで小麦色の膨らみがちらりと覗いた所をみると、どうやら下着の類はつけて
いないらしい。
「な、なにすんのよ、バカもりもり!! あたしがコレに弱いって知っていながらなぜすんの!?」
栴檀は仰向けのままめっちゃ敵意のこもった目つきをして、抗議する。
「目覚めたか?」
タバコを小札に返しながら、総角はスカっとした笑顔を浮かべた。
「え」
身を起こした栴檀は2、3度目をパチクリして、「あ…」と声を漏らした。
言葉の意味を理解した合図だろう。
するとなぜか彼女は後頭部に右手をやった。
正確には、後ろ髪に指を突っ込み、頭皮に触れているようだ。
「みたい……」
嬉しそうな唖然としたような栴檀は、なぜか左手で頬をつねった。
『感心しないぞ香美!』
声がした。
それは栴檀にひどく近い場所からだが、けして彼女の口からは漏れていない。
「あたたっ! ご主人やめて。ごめんなさいごめんなさい。ちゃんと動くからつねんないで」
『分かればいい。僕が怒るのは筋が通らない時だけだ!』
同時に会話らしきコトをやっているのがその証拠。
「相変わらず、二重人格っぽいな」
「内実は異なりますが、コレはコレで楽しゅう」

307 :永遠の扉:2006/10/17(火) 23:15:12 ID:ZKiDYbab0
総角たちの前で、栴檀は無理矢理ひきあげられるマリオネットのような不自然な立ち方をした。
『状況はだいたい把握した。行くぞ香美!! 明日のために戦うのならば、今がその時だ!!』
下界へ続く石段めがけて走り出す栴檀。
「待て貴信。忘れ物だ」
総角はそんな彼らの背中へ割符を投げつけた。。
通常なれば声に振り向いてからキャッチするのが当然の反応だろう。
だが栴檀は!
栴檀の手からは!
細長い鉄色の光が割符目がけてギィンと伸びすさる!
光は栴檀の手首の返しに連れて割符をくるくる巻き取って、小気味よい金属の擦過音と共に
たわむ。
上空から見ればさながら「ひ」の字。
それは一気に直線と化して、割符ごと栴檀の手元へ巻き取られた。
「出たな。万物の真髄を捕える武装錬金、ハイテンションワイヤー」
「特性を使わずとも炸裂する神業的ご手腕! 不肖は感服の至り」
細長い光は核鉄となり、割符と共に手中に呑まれた。
収まった、のではない。
人型ホムンクルスは人間を丸ごと掌から吸収できる。正確には、掌に開いた穴から。
掌をかざされた捕食対象は、ジェットエンジンに吸い込まれる小鳥のような吸着断裂入り混
じる怪音をあげて、この世から消え去る。
それとほぼ同様の過程を経て、核鉄と割符は栴檀の手中に呑まれた。
にしても、つい先ほど「あたしはぶそーれんきん使えないしー!」と宣言していた彼女がどうして核
鉄を発動しているのか……? 
『む!? 割符は貴方がひとまとめに持っていた方が安全では!?』
会話の間にも栴檀は走っていく。
「いや、一極集中は却ってまずい。俺が斃されでもしたら一気に覆る。だから1人1個だ」
「おや? 5つと6人ですので余るのでは?」
「何をいう小札。5つと5体だからぴったりじゃないか。それに。向こうが欲しがる以上、色々使い
途(みち)もあるだろう。既に鳩尾や鐶には渡してあるしな」
『了解っ! 急ぐぞ香美! 急げ猛き勇者よ時の迷路を走り抜けろ!!』
「うぅ。何であたしがこんなコト…… でもご主人と二人っきりで任務だ。やった」

308 :永遠の扉:2006/10/17(火) 23:16:34 ID:ZKiDYbab0
その間に栴檀は走りながらぼやいている。
「って何コレいつの間に! ああもう。時間とかコレとか、今は分からないコトばかりじゃん」
手にした割符にビビり倒す栴檀は石段を降りていき、小札と総角はふぅとためいきをついた。
「性格はああだが、撹乱を果たすだけの実力はある。小札以上、鐶並みの使い手でなくば、
『あいつら』は斃せないだろう。武装錬金の特性もだが、それ以上に厄介なのは」
「特異体質。不肖ともりもりさん以外の御三方が有せし特異体質は、さぞや仰天を巻き起こ
すでしょう」
「そしてどうだこの適材適所な人材配置。さすがは俺だ」
満足そうに頷く総角の向こうで。

「うぎぃゃあああああー! 核鉄に気を取られたせいで足滑らせたぁぁああああっ!」
『ふはははは! 落ちるぞ落ちるぞどこまでも! どこまでもどこまでもお前とぉ!」

栴檀の絶叫と凄まじい物音。大地は比喩抜きに激震した。
彼らは池田屋事件での北添佶摩も真っ青な転落劇を演じたに違いない。

「フ。何だろうなこの果てない脱力感とすげー悲しみ。戦えなかった新撰組つーか」
夏にしてはうす寒い風が総角を吹き抜け、小札は「おいたわしや」と涙を流した。


銀成学園高校に視点を戻そう。
体育館から少し離れた昇降口には冷水機が設置されているのだが、その近くに。
物思いに耽る秋水がいた。

稽古をつける理由は、彼自身もはっきりと言い表わせない。分からない。
世界というものに少しでも融和するためにできるコトをしているようでもあるし、千差万別の
相手の戦いを観察して眼力を養いたいのかも知れないし、自分の戦い方を見直したいだけ
なのかも知れない。
総角と再会した昨晩以来、3つ目の考えはますます強い。
何しろ総角は複数の武装錬金を扱える上に、剣においても破格の強さを持つ。
かつて、全国大会で秋水を下した実績を持っているのだ。
もし、と秋水は危惧している。

309 :永遠の扉:2006/10/17(火) 23:17:16 ID:ZKiDYbab0
総角が割符を奪いに来た場合、退けるコトは非常に困難だと。
これは秋水のみならず、いま銀成市にいる他の戦士にもいえる。
まず防人はこの夏の任務で重傷を負い、ようやく松葉杖片手で歩けるという態。
桜花の戦闘能力は低い。接近戦に持ち込まれれば即座に倒される。
斗貴子に至っては昨晩の戦いで実質敗北済みだ。
千歳に割符を持たせて瞬間移動させたとしても、総角が同じ能力を有する以上意味はない。
彼女の倒される場所が移転先になるだけだ。
あるいは根来ならば虚をついて勝てそうだが、聖サンジェルマン病院に入院中だから即座の
復帰は望めない。
結局、現状において総角を退けられる可能性を持つものは秋水しかいない。
想像を絶する武装の数々を剣1本で凌ぎ、一段劣る剣腕で勝利するという厳しい条件付だが、
秋水にしかそれはできない。
と分析しつつ、彼自身のモチベーションはいまいち定まらない。
『もう一つの調整体』なる危険な存在が街のどこかに眠っており、それを安全に起動するに
は6つの割符が必要で、街を守るにはそれら全てを敵の手から守りきるべきである。
されど実は秋水、心底から街を守りたいとは思えない。
融和自体は望んでいる。だが、散々世界に心を鎖していた秋水だから、いきなり全てを守ろ
うとするのは難しく、かつ嘘臭く思えてしまう。
あっけなく180度違う考えに転向するのは性格上許せないし、第一、真剣な思いで街を守ろ
うとしていたカズキへの侮辱にも思えるのだ。
その思いは、L・X・Eの残党狩りを請け負った時から密かに抱いている。
分類すれば秋水もカズキと同じく「守る」ために戦う男であるのだが、対象は異なる。
秋水は「個」、カズキは「全」。
桜花だけを守らんと剣を振るってきた秋水を見れば自ずと分かろう。
ただ今回の件においては、守るべき「個」というのが不明瞭で、それが為にモチベーションを
欠いている。

桜花は確かに守りたい。
けれどもそこだけに主眼を置くのは、今までと同じコトを繰り返しているようでしたくない。
思慕は変わらぬが、自らの戦いや行く末を鑑みた場合、姉だけに固執するのは不可なのだ。
とはいえ、どうすればいいかは分からない。
ひとまず屋根のない場所に歩いて、空に輝く太陽を見上げてみる。

310 :永遠の扉:2006/10/17(火) 23:18:51 ID:ZKiDYbab0
コバルトブルーに映えるサンライトイエローの眩しい光は、色を介してかつての戦いを想起させる。
そこでは死に行く姉の手を握るしかできない無力な自分がいて、激しい悔恨に囚われてしまう。
悪夢のように忌まわしい記憶だから、今はまだ、どうすれば払拭できるかは分からない。
ただ、秋水は精神的な成長を欲し、叶えるために問うている。
刺した男の手を握り締め、大事な存在(モノ)を救おうと奮起したあの精神力は果たしてどこ
から出たものか。どうすれば持てるのか。
それも今は分からない。
羅針盤も海図もなしに黄金の大陸を目指す無茶な冒険者。
世界との融和を望んでいるが、目的への確かな道筋は見えていない秋水への比喩だ。
彼は建設的ではあるが、新しい概念を瞬時に理解するようには出来ていない。
本質をすぐさま見抜く直観の鋭さや、自らに包み込む感情の大らかさが未成熟なのだ。
これらは他者との融和に欠かせぬ要素でもあるから、持たざる秋水が他者との交流を苦手
とするのも無理はない。
既に述べたが、彼は世界に対して心を鎖しすぎていた。
けして頭は悪くないのだが、桜花と2人ぼっちの人生では新しい概念とほとんど巡り逢えず、
感情をほぐし直観を磨く機会がなかった。
反面、1つの物事を突き詰めるコトにかけては常人を遥かに凌駕している。
桜花への思慕。剣客としての力量。
いずれも鎖された世界の中で培った強い物である。
特に剣においては、型にはまった1ツ作業を飽くるコトなく修練できる生真面目さと、妥協な
き努力が功を奏した一例だ。
強い物、優れた物には必ず力を発揮させる原則がある。
秋水においては、それに連なる効率的な動作を修練の中、感覚で掴んで思考で咀嚼し、コン
スタントに振るえるよう務めていたのだろう。
世界への融和も、結局はその方法で行うしかない。と秋水は思う。

だが世界にはまだ見いだせない。彼本来の姿勢(スタンス)に合致するような事柄を──…

「こんにちは秋水先輩!」
沈鬱な声を一気に太陽の零距離射程へ引き上げる明るい声が、昇降口に響いた。
見れば冷水機の近くで、ほがらかに手を振る少女の姿。口元には雫が数滴。
彼女──武藤まひろは水を飲んでから秋水に気づいたらしい。

311 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/10/17(火) 23:22:55 ID:ZKiDYbab0
平成ライダーソングの作詞を手がける藤林聖子さんのファンだったりするので、このSSのオ
リキャラの名は、彼女作詞の歌+武具名でやっていたりします。
総角主税はカブトの「Full Force」、小札零は剣の「ROUND ZERO 〜BLADE BRAVE〜」、
総ての序章終盤にちらと出てきた「MELSTEEN」は剣の「ELEMENTS」のアナグラムから。
今回登場の貴信は、アギトの「Believe Yourself」より。訳して、「貴」方を「信」じる。略して貴信。
香美はライダーソング関係なく……カービィが元ネタ。正確には「カービィ!」という曲。
実はこれも藤林聖子さん作詞。アニソンでは他にワンピの「ウィアー」とかハガレンの「I Will」なども。
ちなみに自分がむかし、カービィのAAを作りまくってたのは知る人ぞ知るコトでしょう。

>>291さん
欠落が補完されるのは作劇の基本なのですが、このSSではそこに至るまでの過程しか描け
ないという制約が難しい。ファイナル〜ピリオド間の斗貴子さんって、実はかなり難しいのかも?
反面、千歳や桜花はわりあい自由に動かせるので、魅力が出しやすいのかも知れません。

>>292さん
キャラ的にはこの時期こんな調子だったとは思うんですが、カズキがいないと損な役回りにな
ってしまうというか…… フォローをちょくちょく入れてみるものの、はてさて。で、趣味に走ると
またエクセルやら原価計算やら出るかもw もしくは坂の上の雲ネタ。これ、すごく面白いんです。

>>293さん
いやぁ、さすがに引っ張るのは恐れ多いというか…… 見渡せば重鎮の方々ばかりですし。
それでも1ファンとして、描く側として、武装錬金のSSを好いて頂ければ金貨を得る思い。
桜花については結構ノれるキャラなので、いずれ力を入れて!

>>294さん
確かに良くて中ヒット、全体的な整合性も甘い作品です。けれども大好き。そんな自分の感
性はマイナーですね。蒼天航路では「ラストワルツ」より「軍略は止まず」が好きですし。郭嘉
の最後のセリフがもう。今後ですが、一通りのメンバーが活躍した後、秋水が一気に大活躍します。

312 :作者の都合により名無しです:2006/10/18(水) 08:14:37 ID:rjk4w1wv0
小札が蓮金オリジナルキャラより目立ってていい!

313 :作者の都合により名無しです:2006/10/18(水) 12:22:41 ID:fmnE0hvN0
お疲れ様ですスターダストさん。

秋水がいよいよ切り札として動き始めますか。
勝利条件は厳しそうだけど、ある意味桜花との
深くも歪な愛情関係に終止符も打てるかな?

まひろは相変わらずまっさらなままで近づいてますねw

314 :作者の都合により名無しです:2006/10/18(水) 21:52:33 ID:C0pe7KmX0
>ファイナル〜ピリオド間の斗貴子さんって、実はかなり難しいのかも?

初期のトキコは幼い頃の心の傷を振り切る為に戦っている感じでしたけど
この頃のトキコは最も大切な人を失ってさ迷っているような感じですからね。
でも、トキコさんも秋水たちも面白くかけてますよ。

315 :作者の都合により名無しです:2006/10/18(水) 22:29:33 ID:z7XDxpzk0
てst

316 :戦闘神話:2006/10/18(水) 22:34:42 ID:z7XDxpzk0
part.8

津波が収まると、如何なる奇術か、貴鬼も水銀燈を抱えたアドニスも、ポセイドン同様水の上に立つことができた。
まるで波紋だな、と馬鹿なことを考える余裕は今のアドニスはなく、一挙手一投足はすべて目の前の男、
海皇ポセイドンの対応へと振り分けられていた。

「さて、力ずくと言ってもこのままでは只の弱いもの虐めでしかないね。
 私は地下の墓守の如き愚物とは違う」

パチンと指を鳴らすポセイドン、彼の一挙手一投足をけして見逃すまいとアドニスも貴鬼も、そして水銀燈も臨戦態勢だ。

「ハンディキャップマッチ、といこうか」

鳴らした指の音が三人の耳に入ったとき、アドニスと貴鬼の目の前には、見慣れた黄金色の櫃があった。

「黄金…聖衣だと!」

怒りを滲ませた声色でアドニスは叫ぶ。
水銀燈の鞄があった部屋に置いてきた筈の自分たちの聖衣が忽然とあらわれた。
かつての聖戦の際、タナトスとの戦いにおいてポセイドンは助勢として黄金聖衣を星矢たち五人の元へと送り届けた事がある。
それと同じことをやってのけたのだと、貴鬼は思い至った。

「聖衣が無ければ、などと泣き言を言われても困るからね。
 全力で来なさい。
 ああ、そうそう、もし私に一撃入れることが出来たら、ここはおとなしく引いて差し上げよう。
 安心したまえ、私は素手だ。鱗衣も纏わぬ」

ゲームだよ、ほんの気まぐれの、ね。
そういいながらも、小宇宙と波濤は収まることすらなく、ますます巨大さを増していく。
そして、その一言に貴鬼はキレた。


317 :戦闘神話:2006/10/18(水) 22:41:04 ID:z7XDxpzk0

「アドニィイイイスッ!
 オイラたちは何だ!」

雄叫びに似た勇壮な声音、先ほどまで震えていた少年の声だと言われて一体誰が信じるだろうか。
まさしく、戦士の声だ。
如何なる敵にも怯まず、退かず、ただ勝利のみを渇望する戦士の声だ。
黄金の魂が燃え上がっていた。
水銀燈を開放したアドニスは、覚醒した。

「僕たちは聖闘士だ!」

貴鬼の声に、アドニスは覚醒した。
この聖衣聖櫃を最初に開けた日の誓いを思い出した。
あの茨の魔人の様にはならぬと、母を見捨てた裏切り者の叔父のようにはならぬという誓いを呼び起こした。

「青銅か!?」

貴鬼は叫ぶ。
己の本分と共に。

「否ッ!」

アドニスは叫ぶ。
己の意思と共に。


318 :戦闘神話:2006/10/18(水) 22:45:47 ID:z7XDxpzk0

「白銀か!?」

貴鬼は叫ぶ。
師を越えるべく。
血統を越えるべく。

「否ッ!」

アドニスは叫ぶ。
師を越えるべく。
叔父を越えるべく。

「黄金だ!天地不撓の黄金聖闘士だ!
 海皇如きに屈するものか!」

二人の聖闘士は声を併せて叫び、ふたり同時に聖衣聖櫃を開くべく手をかけた。
取っ手を掴み、握り締め、闘志と共にひくと、閃光とともに聖衣が表れる。
気高き羊の原種・ムフロンを模した牡羊座・アリエスの黄金聖衣。
怪魚の王者たる甲冑魚を模した魚座・ピスケスの黄金聖衣。
黄金の小宇宙に応じ、オブジェ形態を解いた二つの聖衣は、主に向かって流星群のようになだれ込む。
新星の煌きのような、若々しい小宇宙。
小宇宙という魂の讃歌を高らかに歌い上げながら、黄金の聖闘士が姿を現した。

「この地上にアテナがある限り!」

貴鬼は、アドニスは叫ぶ。

「黄金聖闘士に!」

319 :戦闘神話:2006/10/18(水) 22:51:05 ID:z7XDxpzk0

聖闘士の証を纏って。

「敗北の二文字は存在しない!」

誇りと共に、彼らは叫んだ。

「黄金聖闘士は!」

貴鬼は叫ぶ。
闘志を込めて。

「地上最強!」

アドニスは叫ぶ。
闘志と共に。

「良くぞ吼えた。
 この私の小宇宙に震え、怯えながらも良くぞ吼えた…。
 あのペガサスのように、不屈の魂の煌き、見せてみたまえ」

320 :戦闘神話:2006/10/18(水) 22:56:55 ID:z7XDxpzk0

かつて、ゴルゴーンと呼ばれるようになってしまった三姉妹がいた。
神話の昔、アテナの八つ当たりで化け物に身を変えられてしまったという悲劇の美人三姉妹だ。
姉ふたりには不死身であったが、末の妹は死ぬ身であったことが更に悲劇を産む。
三姉妹は人目を避けて隠れ住んでいたが、アテナはそんな彼女たちを許さず、
ペルセウスという英雄志望の若人を差し向け、末の妹を殺させてしまう。
アテナは、死んだ後でも末の妹を許さなかったのか、
切り落としたその首を自分の盾・イージスにはめてしまった。
これに激怒してアテナに戦争を吹っかけたのはアテナの伯父にあたる海皇・ポセイドンである。
自分の愛人の一人がそんな目に遭わされたのだ、怒り心頭で地震は起こす、津波は起こすで大騒ぎとなってしまった。
これがポセイドンとアテナの最初の聖戦の因である。

戦果は言うまでも無い。

ポセイドンは敗れ、メドゥーサの雪辱どころか自分の肉体も失うという惨澹たる結果になったのだ。
アテナイの支配権を巡る戦い、と後世伝えられる神話の真相はこういうことである。
それでもポセイドンはめげず、地上の領地であるアトランティスを要塞化し、
ポセイドンを奉る神官の体を使って尚も戦いを挑むが、
逆にアテナの誇る最大戦力である聖闘士により、アトランティスをも失う破目になり
遂にはその魂を封印されてしまうという結末に終った。
大陸すら吹き飛ばすという聖闘士の恐ろしさよ。
今思えば、狡猾なアテナの術中に嵌ったのだろう。
その後、何度も司祭の血筋の者の肉体を使って聖戦を引き起こすが、その度に封印されてしまう。
つい四年前の聖戦では、海底神殿すら聖闘士によって壊滅してしまうという事態に陥った。
だが、封印に抗う術を身に着けたポセイドンは、聖戦で敗北しても魂の完全封印に抗う事に成功。
封印の壷をカプセルホテル代わりに使用するのは、神多けど言えど、ポセイドンだけだろう。

321 :戦闘神話:2006/10/18(水) 23:01:00 ID:z7XDxpzk0
四年前の聖戦は当のポセイドン自身としては最大の汚点だった。
いきなり額に黄金の矢を打ち込まれて眠りから起こされたわ、
気が付いたらアテナが目の前に居て壷に封印されそうになるわ、
折角あつめた海闘士と海将軍と安住の地であるはずの海底神殿すら失うわ
挙句の果てには自分を謀ったシードラゴンはアテナに寝返るという始末。
散々な結果だった。

その後、ハーデスと一戦構えたアテナに協力してやったのは、あの陰気な引篭もりの兄貴を心底嫌っていたからに過ぎない
ハーデス如きに地上をくれてやるなら小娘に任せたままのほうがまだマシだという判断だ。
デメテルの愛した地上をハーデス如きに穢されるわけには行かなかった
ポセイドンの、意地だ。
自分の意地と女の為だけにポセイドンは今まで戦争を吹っかけてきた。
その結果人間がどうなろうが知ったことではない、人間は放って置けばまた増えるだろうから。
そう思っていた時期もたしかに彼にはあった。
だが、敗北したからといって怨嗟を抱くことは無く、更には人という存在その物へ向ける目すら変わった。
優勝劣敗は兵家の常、戦闘という契約を履行する際には敗北は覚悟の上だ。喩えそれが望まぬ戦闘であったとしても。
望まぬ形ではあった、だが、しかし、神話の昔より至強を誇った海将軍七将のうち六将を討ち取り、
不落を謳った大洋七柱をへし折り、
遥かな太古より傷一つ付くことなく存在し続けたメインブレドウィナをも打ち砕いた者たちの存在は事実だ。
むしろ、ただの人間がそこまで遣って退けた事に対して賛辞を送らずになんとするものか。
ギリシア神話のほかの神々の例に漏れず、ポセイドンは英雄が好きだ。
神と人との調和たる黄金時代が終わり、神と人とが離れた白銀時代も終わり、神が人を見限った青銅時代もおわり、
人と人が手に武器を持って争いあう鉄の時代の現在において、彼らのような英雄が現れた事がポセイドンには嬉しかった。
たとえ敗北に打ちのめされようとも、その只一つの歓喜が彼の脚を支えた。
故に、ジュリアン・ソロと混ざり合った現状ですら好ましく思えるのだ。
この大地から英雄たちが消え果てた星霜の彼方に、こうして神々すら討ち果たす英雄が居るという事実が彼には、
とても、とても嬉しかったのだ。
人の身でありながら、強大な神に挑み、神から勝利をもぎ取る。
素晴らしいと、思った。

322 :戦闘神話:2006/10/18(水) 23:04:04 ID:z7XDxpzk0

黄金色の暴風がポセイドンに襲い掛かる。
アドニスの脚払い、というか足刀とでもいうべき蹴りをバックステップで避ける、
と、狙いすました貴鬼の光速拳の雨がふる。
しかしポセイドン、それの全てを裁く。
あげく、最後の一撃を放った貴鬼の腕を掴んで技のモーションに入っていたアドニスに投げつける。
もんどりうって転がる無様と追撃をアドニスごと巻き込んだ空間転移で避けつつ、
置き土産とばかりにアドニスが無数の薔薇を撃ち出す。
雪のように白い薔薇は、血を呑んでその花弁を真紅に染め上げる。
彼の叔父はこの技に絶大な自信をもっており、敵一人に対し一撃しか放たなかったが、
未熟なアドニスにはそこまでの自負はなく、無数にばら撒いて牽制打としか使えない。
その好血の薔薇の群れは、しかし束ねられていた。

「薔薇は愛でるものだ」

そう、海皇の右掌の中で束ねられていた。
光速で打ち出された白薔薇全ては、花束と化していた。

「贈る宛てはあるのかね?ピスケス」

すべるようにして水面に着地し、二人が体勢を整える。
だが、二人の黄金聖闘士の顔に諦観はなく、むしろ猛り狂う闘志が見て取れた。

「そうだ、そうこなくては面白くない。
 闘争の本懐だよ」

海皇の言葉が水銀燈の耳に届いた瞬間、閃光一閃。
光速突撃である。

323 :戦闘神話:2006/10/18(水) 23:07:14 ID:z7XDxpzk0
黄金聖闘士は皆、光速の行動を可能とする。その光速拳の中でも最も単純な技だ。
しかし、単純であるが故に避けられやすい。
ポセイドンは何の苦もなくかわして見せた。水面に舞う一片の葉のように。
だが文字通り光速で敵に向かって突撃するだけのこの技は、その単純さ故に、聖闘士固有の技へと繋ぎやすいのだ。
なにより、貴鬼もアドニスもポセイドンに遠距離攻撃は効かない事を戦訓として知っていた為、
超近接戦闘を選択せざるを得なかったのだ。

「スターダスト・レボリューションッッ!」

大いなる星屑の群れが海皇に襲い掛かるのと、ポセイドンの手中の薔薇が茨の鞭へと変化するのは同時だった。
先代ピスケスも小宇宙で強化した薔薇を変幻自在に操ったが、アドニスも先代同様自在に薔薇を操ることが出来る。
無機物に比べて有機物は小宇宙の伝導率が高いとはいえ、それでも変幻自在に操ることは難しい。
小宇宙の伝導させる事に特化した聖衣や、その装身具といえども鍛錬が必須なことを鑑みれば自ずと分かるだろう。
こういった操作術の才は、事実上遺伝に寄るものが大きいのだ。

「ほぉ…。考えたな」

茨の鞭は手錠のように変化し、ポセイドンの両手を封じる。
如何なる達人といえども、両手を封じられれば戦闘力は激減する。
そして、彼の教皇シオンが編み出し、聖戦を戦い抜いた必殺の拳撃、光速の流星群は並ではない。
天翔る金羊の蹄は、あらゆる冥闘士を冥府へ逆葬させてきた。
後の世代の聖闘士は、シャカやデスマスクなどの突然変異を覗けばシオンと童虎二人の技に起源を求めることが出来る。
光速拳の打撃、という点をとれば、シオンのスターダスト・レボリューションはまさしくオリジナル・始祖なのだ。
故に貴鬼は怒りに駆られていた。
かつて星矢たちに、アテナに打倒され封じられた者がこうして目の前に立っているという事に。
そして何より、その敗者に震え慄く己に。

324 :戦闘神話:2006/10/18(水) 23:10:26 ID:z7XDxpzk0
シオンの、ムウの弟子の己がこの程度で震え慄いてどうする?
至強の黄金聖闘士、その長たるシオン最後の直弟子ムウの、最初で最後の弟子である自分。それがこの体たらくでどうする?
激情が貴鬼を突き動かしていた。

「しかし、無駄だ」

薄い無精ひげに覆われたポセイドンの美貌が、笑みに歪む。
黄金の小宇宙によって強化された茨の蔦の強度は、少なく見積もっても白銀聖衣級だろう。
だが貴鬼もアドニスも失念していた。
ギリシア神話世界において三貴神のうちの一柱である海皇を。
かつて天の主たるゼウスと争い、その支配権をもぎ取る手前まで行った海神の皇を。
ギガントマキアの終止符というべき冥府の門を築き、巨人をタルタロスの最奥へ封じた貴き神を。
茨の鞭は霧散した。紙ほどの障害にもならず。
金羊の雄雄しき蹄は虚しく宙を蹴った。波濤に崩される砂城の如く。
そして、海神の掌は貴鬼の首を掴んでいた。獣が得物に食らい付くように。

「無駄と言われて…ッ!」

だが、黄金聖闘士にそこで死を甘受する愚か者は居ない。
零距離だ。
喩え死んでも一矢報いる。その覚悟を貴鬼の目に、声に見た海神の皇は、
死ぬな、生きて戦え、そう言うなり貴鬼を拘束から解放した。

「貴様ぁあああああああああ!」

激情迸る叫びはアドニスのものであり、貴鬼のものだ

325 :戦闘神話:2006/10/18(水) 23:13:21 ID:z7XDxpzk0
空間転移でもって離脱した貴鬼と対なすかのような光速突撃。
誇りを穢された。
黄金の誇りを穢された。
親友の誇りを穢された。
感情がただ一つ、嚇怒に塗りつぶされたアドニスに、最早先ほどの瓢げ者の気配は読み取れない。

「その激情、危険だぞ?ピスケス」

しかしアドニスの光速突撃は当たらない。
当然だ、海皇は貴鬼の光速突撃を見切っている。
だがアドニスは近づければ良かったのだ。
海皇のうち懐へと飛び込んだアドニスは、絶対の自信を持つ一撃を放つ。

「リヴァイアサン・スクリームッ!」

怪魚の雄叫びが水面を震わせ、空間を軋ませた。
後事など一切合財考えない、文字通り死力を振り絞った一撃だ。
アドニスの超光速衝撃波は、空間を打ち抜いていた。
何も無い空間を。

「技を過信しすぎだぞ?ピスケス」

水がまるで鞭の如く変化し、アドニスの右足に絡みつき、彼を天高く放り上げていた。
空中でさらに無数の水の弾丸に打ち抜かれ、アドニスは赤い血を撒き散らしながら落下した。
壊れた人形のように落下するアドニスを、貴鬼な敢えて意識下から弾き出して再度突撃を敢行する。
ただの突撃ではない、今度は無数に分身を繰り返しながらの乱打突撃だ。

326 :戦闘神話:2006/10/18(水) 23:16:00 ID:z7XDxpzk0
サイコキネシスで生み出し、または純粋な体術で作った分身を交えての光速突撃に、流石の海皇も感嘆の声を漏らした。
だが、それで手打ちだった。
今の貴鬼にスターダスト・レボリューションを越える技はない。
スターライト・エクスティンクションは貯めの時間が僅かにかかる上に、
この技本来の使い手である師・ムウであっても確実に仕留めるには相手の動きを封じなければ成らなかった。
海皇を留めるには、それこそゼウスの雷かハーデスの命を刈り取る剣でも持ち出さねば成らないだろう。
ならば、最期の手段だ。

「容易く命を掛札に使うなと言っただろう、小僧」

命を弾丸と化す技を見切られたのだろう。
息子を叱り飛ばす親父のような声色と共に、海皇は貴鬼を殴り飛ばし、
水面に叩きつけられる寸前だったアドニスに彼をぶち当てた。

子ども扱いどころではない。
実力が違いすぎた。

「さて、お嬢さん。
 私と一緒に来てはくれないかな?」

この間、五秒。
海皇相手に良くやったといえるだろう。
聖闘士ではない水銀燈には、まさしく閃光が瞬いたようにしか見えなかった。
黄金聖闘士二人がかりで、手も足も出ない。それが神の領域だった。


327 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2006/10/18(水) 23:18:40 ID:z7XDxpzk0
金閣寺エクスプロージョンに吹きました、銀杏丸です。
またしても筆がのり、長くなってしまい申し訳ございませんでした…

>>173さん
まさに大人と子供な実力差!
圧倒的絶望!というのがこのパートのコンセプトです
実際のところ、貴鬼もアドニスも弱くは無いのですが
相手が悪すぎるのです

>>177さん
「ぎんなんまる」でございます

>>187さん
少女人形はローゼンメイデンという漫画に登場するキャラクターです
お勧めの作品ですのでぜひご一読を

>>スターダストさん
恥ずかしながらこの銀杏丸、爆爵が剣心と同年生まれとは知りませんでした…
激動の幕末〜明治維新〜文明開化そして日清日露太平洋戦争戦後、と
彼の眼には愚物の群れが足掻く様にしか映っていなかったのでしょうか?
私家版爆爵は割合ストイックな面が前面に出したかったので
そういった面からの考察、非常に興味深いものでありました
次は是非とも天下の蝶人をお願いしたく思います


328 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2006/10/18(水) 23:19:50 ID:z7XDxpzk0

>>ふら〜りさん
と、言うわけで
気合入れる→聖衣着装→戦闘→圧倒の流れにつなげるためにちょこっとヘタってもらいました
原作星矢のポセイドンと比べて力事態は弱体化しているものの、肉弾戦闘ではそれを補って余りある
というのが現状の海皇なのです
実際、現状じゃ神パワーの八割は封印状態ですんで原作でみせたあの不思議バリアは使えません
第三回は海将軍VSヒルダと愉快な仲間たち+ダンシングキグナスにご期待をば…

>>さいさん
不肖銀杏丸、エロ時代から平野耕太先生の大ファンでありまして
前作黄金時代でもいろんなところに影響駄々漏れであります
「背信者より」のラストでのサガの述懐はアーカードの咆哮だったり
闘争の契約だことの諦めを踏破するだことのはもうまんまです
ちなみに僕の脳中では渋い声色の那智ヴォイスであります
アラン・ドロンな感じの

では、次回part.9でお会いしましょう。
銀杏丸でした

329 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/19(木) 01:22:21 ID:sXpEfE970
《EPISODE3:There will be a golden ladder reaching down》

――イングランド南東部 ドーヴァー上空16500フィート 錬金戦団所有小型旅客機内

「オイ、まだ着かねえのかよ。もうかれこれ十五時間以上は乗ってんぞ」
リクライニングシートを目一杯倒し、前の座席に脚を乗せた火渡が独り言のように毒づく。
「もうすぐだから我慢しなよ。ね? ドーヴァー海峡を渡って、イギリスに入ったみたいだし。
イングランド南部にある戦団の飛行場に着陸するんだって」
千歳が仕様が無くなだめるが、離陸して三時間を過ぎた辺りから三十分に一度は『まだか』と
せっつかれ、彼女も内心辟易していた。
機内には三人以外乗客はおらず、窓側から防人、千歳、火渡と並んで座っている為、
自然と火渡の文句を引き受ける役目は千歳になってしまう。
そんな千歳の気持ちも知らず、火渡は前の座席をガンガンと蹴り飛ばし、しつこく彼女に絡み続ける。
「ったく、やってらんねえぜ。大体、何で飛行機なんだよ。お前のヘルメスドライブでパパッと
瞬間移動すりゃいい話だろが」
「だってヘルメスドライブは知ってる人の所にしか瞬間移動出来ないし……。それに運べる重量は
私を含めて100kgまでだし……」
「ケッ。ホント使えねーな、お前」
「そ、そんなぁ……」
半ベソでションボリとうなだれる千歳。それを見かねて、千歳を挟んで窓側にいる防人が
助け舟を出した。
「いい加減にしろよ、火渡。時間が掛かってるのは千歳が悪い訳じゃないだろう。それに疲れてるのは
皆同じなんだぞ」
「ハイハイハイハイ、俺が悪うございましたよ」
火渡はあさっての方向に顔を向け、小憎たらしく謝る。
「……ありがとう、防人君」
潤んだ眼を手で擦りながら、千歳は防人に微笑んだ。
「い、いや……別に……」
最近、ふとした瞬間に異性としての彼女を意識してしまう。

330 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/19(木) 01:22:55 ID:sXpEfE970
まだまだ仕草から子供っぽさは抜けないが、あと一年程で二十歳になる彼女の表情は、昔の面影を
残しながらも大人の女性の物となっていた。
「防人君……?」
防人と千歳は、つい無言で見つめ合ってしまった。今のこの状況を忘れて。
「はいラブコメ禁止ラブコメ禁止ラブコメ禁止」
聞こえよがしの火渡の呟きに、二人は慌てて視線を外した。
千歳はこの微妙な空気を打ち消す為、二人に向かってまったく脈絡の無い話題を振る。
「そ、そういえばね! 訓練生に円山君って子がいるんだけど、この前やっと錬金の戦士として
認められて核鉄を受け取ったんだって。また仲間が増えるね」
あまり耳慣れない名前に防人は少し戸惑った。訓練生と言っても十人や二十人ではきかない。
「円山? ええっと……。ああ、あの……」
絶妙のタイミングで火渡が横から口を挟む。
「オカマ野郎な」
「ちょっと火渡君! ひどい事言わないで!」
千歳はまたも涙目で、火渡を頭と無く身体と無くポカポカと叩く。
「いてて! ホントの事だろーが!」
「ハハハ……」
二人のやり取りを見て、防人は思わず笑いを漏らす。
千歳は横目で防人の笑顔を見て、安心と同時に不安も覚える。
赤銅島の一件以来、防人は沈んだ顔つきで考え込む事が多くなってしまった。
時折、笑顔は見られるのだが、すぐにまた元の表情に戻ってしまうのだ。
そして常に自らの武装錬金であるシルバースキンを着込み、公式の場では『キャプテン・ブラボー』と
名乗っている。
一度、その真意を尋ねた事もあったが、「もう『防人衛』という名前は捨てる事にしたんだ」と
ニコリともせずに返されただけだった。

“防人君は、防人君なのに……”

やがて飛行機はその高度を更に下げ、着陸に備え始めた。

331 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/19(木) 01:23:39 ID:sXpEfE970
――イングランド南部 ウィルトシャー州ケンネット地方 錬金戦団私有飛行場

三人は飛行機を降りると、そのまま滑走路に立ち尽くしていた。
周りを見渡してみても整備員だけで、迎えの者が来ている様子は無い。
「坂口戦士長の話では、確か英国支部の戦団員が迎えに来てくれるはずなんだけど……」
千歳が不安げにそう言った矢先――
「やあ、皆さん! イングランドにようこそ!」
三人が振り向くと、一人の若者がブンブンと手を振りながら、満面の笑みで近づいてくる。
年の頃は二十歳そこそこだろうか。西洋人は日本人に比べて実際の年齢より老けて見えるというから、
もっと年下なのかもしれない。
身に着けている黒のスーツと黒のタイが似合わなくなる程の、人懐っこそうな笑顔。
おそらくコステロを気取っているのであろう黒縁眼鏡はどう見ても“生徒会長”だ。
そして、本当に戦団員かと怪しくなる幼さを残した快活ぶり。これもお国柄か。

三人の前に立った若者は、一応戦団員らしく気を付けの姿勢で型通りの挨拶をした。
「遅れて申し訳ありません。皆さん、はじめまして。
僕は錬金戦団大英帝国支部のジュリアン・パウエルです。どうぞ、よろしく」
口上は儀礼的だが、その笑顔は先程から変わっていない。
大きな丸い眼には未知の国から来訪した戦士達への興味がありありと浮かんでいる。
「楯山千歳です。よろしくね」
ジュリアンは差し出された千歳の手を取ると、手の甲に軽くキスをした。
「よろしく、千歳サン。すごくキレイな方ですネ。大戦士長がよく『日本女性は美人が多い』と
言ってたのは本当だったんだ。淑女(レディ)の国の我が英国女性も敵わないなぁ」
「や、やだ、もう……。お上手ね」
千歳は顔を真っ赤にして恥ずかしがりつつも、エヘヘと顔を緩ませた。満更でもない、どころか
言葉通りに受け取ってしまっている。
突然、千歳とジュリアンを遮るようにして、火渡が間に立ちはだかった。
そして鋭い眼つきで必要以上にジュリアンに顔を近づける。

332 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/19(木) 01:24:29 ID:sXpEfE970
いわゆる“ガンをくれる”というヤツだ。
「火渡赤馬」
巻き舌で無愛想にそう言うと、ジュリアンの手を力強く握る。
「よ、よろしく……火渡サン……。いててて!」
大袈裟に手を振って痛がるジュリアンに、防人が握手を求めた。
「大丈夫か? 俺はキャプテン・ブラボーだ。よろしく」
「え……?」
ジュリアンはなるべく言葉を選び、恐る恐る切り出す。
「……あ、あの、日本人ですよね? ブラボーサンは……」
防人は質問の意味には気づかず、至って当たり前に答えた。
「もちろん。何か?」
「い、いえ、何でもアリマセン……」
日本からやってきた錬金の戦士は、社交辞令を本気で受け取る純粋な女性戦士と
『トレインスポッティング』のロバート・カーライルみたいなチンピラ、
それにド派手なシルバーのコートと帽子で身を固めたアメコミヒーローマニアか。
“あの”大戦士長が気に入るくらいなのだから、やはり日本の戦士はどこか変わっている。
それが防人達を目の当たりにした、ジュリアンの正直な感想だった。
だが、彼が防人達に抱く興味はいささかも失われてはいない。むしろ、ますます膨れ上がっている。
それは、“あの”大戦士長が気に入るくらいなのだから、やはり優秀な戦士達に違いない、
という自身の上官に対する尊敬心や、生来の楽天的なプラス思考から来ているものなのだろう。
「あっ、いけない」
ジュリアンははたと自分の務めを思い出し、遥か後方に停めてある車を指した。
「長旅で疲れているところ申し訳無いのですが、早速本部の方へご案内します。こちらへどうぞ」
車は黒塗りのロールス。“自国を誇る”というヨーロッパ式の考え方が、戦団の公用車にも表れている。

四人を乗せた車は、広大な草原に引かれた一本の道路を走っていた。遥か遠くには
なだらかな丘陵が見える。
車中でもジュリアンは沈黙を知らなかった。ハンドルを握りながらも、顔は右へ後ろへと忙しい。

333 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/19(木) 01:24:59 ID:sXpEfE970
常々、尊敬する上官の話題に上る日本の戦士が相手という事で、彼は溢れる好奇心を
抑えられないようだ。
それに彼自身、元々話好きなところもあるのだろう。ただ、“饒舌”というよりも“おしゃべり”
といった印象ではあるが。
やがて話は今回の任務への協力を要請した欧州方面大戦士長に及んだ。
「大戦士長が皆さんと会うのをすごく楽しみにしてましてね。今日は朝から『まだ着かないのか』の
一点張りですよ」
ジュリアンの言葉を受けて、助手席の防人はこの任務を聞かされた時から抱いていた疑問を彼にぶつけた。
「今回の協力要請は大戦士長直々の物だと聞いたが、何故彼はそこまで日本の戦団にこだわるんだ?」
至極当然の疑問に、ジュリアンがまるで自分の事のように嬉しげに答える。
「彼は大の親日家なんです。任務でもプライベートでも、何度も日本に行ってますし。
食べ物、音楽、芸術品、建築。あらゆる日本文化を愛しています」
ジュリアンは防人の方へ笑顔を向けて、話を続ける。この若者の特技は“前を見ずに車の運転が出来る”
のようだ。
「もちろん、優秀な日本の錬金の戦士もね。亜細亜方面大戦士長とも仲が良いらしいし、
あなた方の上官である坂口照星戦士長とも面識があるみたいですよ。
よく、『照星の奴は俺が仕込んでやった』って言ってますけど」
大戦士長クラスの戦団幹部にここまで見込まれるのは、戦士冥利に尽きると言うべきか。
ただし火渡の態度は、話の中の照星のくだり辺りを聞いてから、どんどん不機嫌さを増しているように
見える。
「そうそう、日本製のコンピューターゲームも大好きなんですよ。
この前は、『水晶のドラゴン』や『星をみるひと』を作った奴には騎士(ナイト)の称号を授与すべきだ、
なんて言ってましたし。
僕はそういうのが苦手なので、何を言ってるのかサッパリですけど……。」
幼い頃を戦団の養護施設(ホーム)で過ごし、現在は任務に追われている三人にもサッパリだ。
その時、ジュリアンが何事かを思い出したかのように素っ頓狂な声を上げた。
「あ、そうだ! 肝心な事を言い忘れてた。僕も今回の任務に参加させて頂きますので、
よろしくお願いします。皆さんの足を引っ張らないように頑張りますね!」
「そうなんだ! じゃあ、ジュリアン君も錬金の戦士なの?」
千歳の何気無い質問が、ジュリアンの表情に一瞬、影を落とす。

334 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/19(木) 01:41:57 ID:sXpEfE970
「あー……あの、その……。僕は錬金の戦士ではないんです。情報部門のエージェントでして、
ハイ……」
ジュリアンは女性のショートヘア並みに髪の伸びた頭を掻きながら、申し訳無さそうに
笑って答えた。
そこへ、またも防人が疑問をぶつける。
「それにしても、ホムンクルス討伐に直接、一般戦団員が加わるのは珍しいな。
やはりテロリストが絡んでいるからなのか?」
「いやあ、その……。実は現在、英国内にいる錬金の戦士はジョン・ウィンストン欧州方面大戦士長と
マシュー・サムナー戦士長の御二方だけなんです。
残りの戦士達は、他の欧州支部の戦士と連携を取りながらヨーロッパや中近東を飛び回ってまして……」
笑顔を崩さぬよう、こっそりと吐いた溜息に三人は気づかない。
「なので、今回の任務はサムナー戦士長の指揮の下、皆さん方三人と僕というチーム編成になってます。
何と言うか……慢性的な人手不足でして……」
火渡は背もたれから身体を離して運転席のジュリアンに近づくと、たっぷりと悪意を込めて
彼を責め立てる。
「わざわざ日本に応援を頼んで、おまけにエージェントなんぞを人数に加えなきゃやってらんねえ、
ってワケか。情けねえ話だな、オイ」
「やめろよ、火渡」
また始まったか、と防人は火渡をたしなめる。
「ええ、まあ……。その通りです、ハイ……」
図星を突かれ、ジュリアンは泣きそうな顔で肩を落とす。末端戦団員である彼に責任は無いというのに。
「大体よぉ、何で能無しのテメエらの尻拭いをこの俺がしな――痛ってェ!! 何しやがる、千歳!」
火渡の尻を強烈につねくった千歳は、知らぬ存ぜぬで窓の外に広がる広大な草原を眺めている。
彼女は完全にこの戦団英国支部所属の若者の味方のようだ。
初対面の挨拶が如何に重要かを知る事が出来る光景である。

車は尚も長い一本道を延々と走り続ける。

335 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/19(木) 01:42:44 ID:sXpEfE970
――北アイルランド アントリム州ベルファスト カフェ・ヨシュア・トゥリー

北アイルランド最大の都市の中心街にある、優雅なカフェに二人の男がいた。
一人は高級ブランドであるサヴィル・ロウのスーツに身を包んでおり、話す際の身振り一つ取っても、
また時計に眼を遣る動作さえも洗練されているように見える。
もう一人は対照的に、着古した丈長のアルスター・コートにジーンズというラフな格好。
だが、下品さは感じられない。
どちらも目の前に置かれている飲み物には手をつけていなかった。

「“彼ら”の調子はどうかね? パトリック君」
スーツの男に“パトリック”と呼ばれた相手は笑顔で、しかし油断の無い眼つきを崩さず答えた。
「 ウィリアムとノエルの“ギャラクシアン兄弟”に関してはすごぶる快調だ。
元々有能な部下だったが、ホムンクルスになってからは更なる飛躍を遂げてくれたよ。
このまま英国(ブリテン)の連中と一戦やらかしてもいいくらいだ。
だが、あんたが連れてきた“シャムロック”の方は問題が多すぎるな」
パトリックの言葉に、男は脚を組み右手を口元に当てた。思慮深げな様子だが、その実、
大して重要とは思ってないようにも見える。
「ふーむ……。まあ、彼に関しては無理な施術が多すぎたからな。多少、まともな人間に
見えない点は大目に見てくれたまえ」
「多少、どころじゃない。まるっきりイカれて見えるがね」
「フハハッ、そうかそうか。フハハハハハハハ」
男は突然、低い声で上品に笑い始めた。パトリックの返答がコメディアンのジョークにでも
聞こえたのだろうか。
「……」
パトリックは無言で、笑う男を睨みつける。
実のところ、パトリックは初めて会った時からこの男が気に入らない。
ストイックな姿勢で祖国統一に身を捧げている自分から見れば、裕福そうな身なりやキザったらしい態度が
何とも鼻持ちならない。たとえ自分の組織の協力者といえども。
男はパトリックの思惑を知ってか知らずか、いわゆる“鼻持ちならない”態度を崩さずに話を続ける。

336 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/19(木) 01:43:26 ID:sXpEfE970
「フフフ……。だが、心配は御無用だ。頭に小型制御装置を埋め込んであるから、万が一にも
暴走の危険性は無い。
君達の命令には絶対に逆らわないし、それに最優先に君の命を守るようにプログラムしてある」
「そいつは実にありがたいことだ。……それにしても分からんね。アイルランド人でもない
あんたが、何故俺達にここまでしてくれる?」
この男は、今まで見た事も聞いた事も無いホムンクルスという強力な生物兵器を提供してくれた。
のみならず、部下達を人間をこえる存在に改造して見せた。
それでいて見返りはそいつらを使った作戦行動の詳細な映像だけでいい、と言う。
パトリックにしてみれば不思議なのは当然だろう。
しかし、男は簡単な論理で答える。
「これは仕事さ。私の組織は研究熱心でね。ホムンクルスの生物兵器としてのあらゆる可能性を
追求しているのさ。そして、私にとっては――」
男はゆっくりと脚を組み替えた。
「――仕事が全てなのだよ。『男は仕事を一生懸命しろ』とアンディ・ウォーホールも言っている」
「誰だ? それは」
初めて聞く名にパトリックは眉をひそめる。革命家やテロリストにそんな奴いただろうか。
「知らんのかね?」
男は呆れたように肩をすくめ、首を振る。多分に芝居がかった動作だ。
「君達、ヨーロピアン・テロリストもアメリカン・ポップ・アートに興味を持った方がいい。
民主資本主義、大衆文化の持つ大量消費、非人間性、陳腐さへの邁進、空虚、普遍性……。
英国の百姓貴族共には無い素晴らしさだ」
何を言っているのかパトリックにはまるっきり理解出来ないが、これだけは分かった。
“こいつは、この俺を、コケにしている”
「フン……まあいい。あんたが何者で何をしようとしているかなんて、俺達は興味が無いね。
俺達には俺達の使命がある。それに協力してくれる点には感謝しているがな」
「そういう事だ。私は君達にホムンクルス実験体を提供し、その実戦データを得る。
君達はホムンクルスを使い、闘争によって祖国の統一を果たす。
フフ、完璧じゃないか。ギブ・アンド・テイク、これぞ商取引の基本中の基本だ」
男は楽しそうに両手を軽く広げる。

337 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/19(木) 01:43:58 ID:sXpEfE970
「……ああ、そうだな」
パトリックは思う。
“ホムンクルスが物になると分かった時点で、こいつは殺してやる”

男はコーヒーカップを持ち上げ、パトリックの方へ差し出した。カップの中はベイリーズ・
アイリッシュ・クリームを垂らしたコーヒーで満たされている。
「乾杯といこうじゃないか」
パトリックも同じ物の入ったカップを差し出す。

「祖国に」

「仕事に」





第三話でした。
生来遅筆(ボーン・トゥ・スロウ)なもので前回から間が空いてしまいした。
全然、話進んでないし。
しかも主人公は防人の筈なのに影薄すぎ。じゃあ、アンデルセン神父が主人公でいいや、
と思ったけど今回出番無し……。
もう、主人公は皆様がそれぞれ主人公だと思うキャラって事で。

>ふら〜りさん(歓迎ありがとうございます!)
錬金SSを書いていたといっても、とても胸を張って言えないようなマニアックなスレだったり、
自サイト(一時閉鎖中)だったりで、いやはや。
孤児院の子供達は、未来の第13課機関員だと睨んでます。実際、原作の方でもそんな描写が
ありましたし。
SSに関してはとりあえず皆様に楽しんで頂ける事が目標です。

338 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2006/10/19(木) 01:45:00 ID:sXpEfE970
>>252さん
応援、ありがとうございます。
>ネットSS全般でも完投率が低いネタだけに
そうなんですか!? ならば意地でも書ききらなければ。遅いなりに。
神父様はやはりイカレてなければ神父様じゃないという事で、原作以上にイカレた感じを出したいですねえ。
三人が圧倒されるくらいに。

>>260さん
ぜひ読んでみてください!
神父様も主人公アーカードもその他のキャラも魅力的な漫画ですんで。
それとアンデルセンは、私の中ではパピヨンと鷲尾を足して二で割ってヒラコー分をトッピングしたイメージです。なんとな〜く。
火渡との対決は私も書くのが楽しみです。

>>262さん
おもいっきりアンデルセン神父書きます!
おもいっきり出番無かったけど!
でも、出る時はえらい事になるくらいの神父様ワールドにしますんで!

>スターダストさん(ブラボーの誕生日忘れてましたw)
聖学電脳研究部は良かったですねえ。小奈美と奈夢子の爆裂洋ピンオッパイぶりがたまらんかったです。つーか、今も手元に単行本があるのです。
思わず今回のお話の中に小ネタを入れてしまいましたが……。
スターダストさんにもHELLSINGはオススメ。きっと少佐をお気に入るのではないでしょうか。
あと、まっぴー原理主義者の私としてはスターダストさんの書くまっぴーが一番魅力的です。かなりハマリます。
しかし悲しい事に、私は剛太×まひろの超少数派……。
>来るべき小説版
たしかに……。読んだら色んなものを根底から覆されそうですが。でも、絶対買っちゃいますな。

>銀杏丸さん
はじめまして! 銀杏丸さんも平野先生のファンでしたか!
しかも『COYOTE』や『拝Hiテンション』、『ANGEL DUST』の頃からの!? ゴイスーなファンっぷりですね。見習いたいです。
私はま○だらけにある『ANGEL DUST』が掲載されているパピポ10冊約三万円也を狙ってますが。
ちなみに私も那智声アンデルセンは狂ってて好きでした。

339 :作者の都合により名無しです:2006/10/19(木) 13:40:54 ID:fiOtjHGY0
>銀杏丸さん
黄金聖闘士は最強・・確かに初期のころではそうでしたね。
牛さんが笛吹きに手も足も出なかった時からデフレが始まりましたがw
海皇に対して勇ましく戦いましたけど、やはり駄目でしたか。反撃を期待してます。
でも、やはり2回に分けて欲しい分量ですw

>WHEN THE MAN COMES AROUND作者さん
こちらの千歳は結構、感情が動きやすい千歳ですねwこの千歳も大好きです。
錬金の戦士たちとヘルシング世界が徐々にクロスしてきましたね。
これから話がどんどん膨らみそうで期待できます。
でも神父様の存在感に全キャラ食われちゃうんだろうなw

340 :作者の都合により名無しです:2006/10/19(木) 16:58:17 ID:il3113+A0
HAHAHAHAHA水晶のドラゴンなんてコアなネタフツーわからんてw
ブンむくれる火渡、おろおろする千歳、ストイックなブラボー
三者三様実にGJです

341 :作者の都合により名無しです:2006/10/19(木) 18:26:05 ID:5lEDb+RN0
>戦闘神話
長いよ相変わらず長いよ銀杏丸w
でも、今回は2人の奮闘が光ってますね。結局ぜんぜん適わなかったけど。
でも、シャカクラス2人なら結構対抗出来るかも>海王に

>WHEN THE MAN COMES AROUND
ヘルシングを読んでみました。癖がありますが面白い。
原作の濃さそのままに、SSでも爆発してくれるといいな
神父が出るとこのSSも急に毛色が変わるんでしょうね前回みたいにw

342 :作者の都合により名無しです:2006/10/19(木) 20:37:37 ID:S2VsqX5c0
>さいさん
神父の活躍が非常に楽しみだ。火渡あたりとぶつかるのかな?千歳がかわいいな

>ぎんなん丸さん
黄金セイントもカマセになってしまったからなあ。エドなんかじゃとてもとてもw



343 :ふら〜り:2006/10/19(木) 23:14:32 ID:QOXCFC+w0
>>スターダストさん
今のところ総角側の方に愛着というか好意が傾いております。前作では千歳と根来だった
部分、本作では小札と総角。全員、態度に差はあれど真剣に戦いに臨んでいるというのに、
私は「小札が総角絡みで他の女の子に妬いたりしたら可愛いだろなぁ」とか妄想してたり。

>>サナダムシさん
納得でき過ぎるオチでした。確かにそうなるでしょう、おのお方なら。あの悟空ですら、
界王様のギャクレベルに関しては呆れてましたしね。しかしシビアに考えてみれば、あの
星って「銀と金」の人間飼育檻に近い環境なのでは? 界王様、精神力は強固なのかも。

>>銀杏丸さん
今回は敵味方双方、戦闘力のレベルも高いんでしょうがそれ以上に、誇りの高さがひしひし
と伝わってきました。星矢たちとは無縁というか、彼らでは思い至らぬであろう感情ですね。
ともあれ、原作ではど〜しても威厳低めの海皇、本作では強くて高貴でラスボスの風格有!

>>さいさん(水晶の龍といえば、やはり伝説中の伝説、野球拳ですよね)
ふぅ〜む……早速さいさん独自の味が出てますね。未だに原作未読の私からすると、スター
ダストさんたちのSSで得たイメージと随分違います。千歳がこんなに、素直に可愛いと
いうか普通の女の子してるのは新鮮です。戦いの時、男の子たちとどんな風に動くか楽しみ。

344 :狂王:2006/10/20(金) 00:02:18 ID:JZOneiWH0
 行住坐臥、全て戦い。
 地下闘技場主催者、徳川光成はきっぱりと告げた。
 武道家たる者、いついかなる時であっても臨戦態勢。不意を突かれたから、など言い訳
にもならない。ましてやルールがないも同然の地下闘技場戦士ならばなおさらのこと。
「刃牙よ……残念じゃ」
 こうして不意打ちを受けたチャンピオン、範馬刃牙は敗北を宣せられた。

 だが、時として敗北は蚊トンボとて獅子と変える。元々獅子以上の実力を秘めていた刃
牙はというと、鬼と化した。
 トーナメント敗戦後、第一戦。最大トーナメントは王座とは無関係だったため、彼は以
前と同じくチャンピオンとして迎え撃つ。
「待ってたぞ、刃牙ッ!」
「勝てよォ〜!」
「第二回があったらおまえが優勝だッ!」
 客席から声援が飛び交う。
「ほっほっほ……。やはり刃牙が出ると、盛り上がりが段違いじゃな。さてあやつめ、ど
う変わったか……」
 チャンピオンの復帰戦を温かい目で見守る光成。先のトーナメントでは立場上冷たく当
たったが、刃牙に対する期待度は今でも変わらない。
 闘技場中央で、向かい合う刃牙と挑戦者。
 そして、小坊主がいつものフレーズを告げようとした時──。
「武器の使用以外、全てを……」
 それは起こった。

345 :狂王:2006/10/20(金) 00:03:29 ID:JZOneiWH0
「……ぉごっ……!」
 股間から血を噴き出しながら、崩れ落ちる挑戦者。
 刃牙が放った蹴りが、挑戦者の睾丸を粉砕していた。
「え、ぇ……え?」
 余りの速さと展開に、混乱する小坊主。金的蹴りを目視できた者など誰一人としていな
かった。まさに神技。
 勝利した刃牙は、無言のまま闘技場から立ち去っていく。
 墓地のように静まり返った闘技場で、小坊主の声が虚しく響きわたる。
「しょ、勝負ありィッ!」
 
 続いて、半月後に行われた第二戦。
 ここではさらなる惨劇が繰り広げられた。
 闘技場に入場する寸前の挑戦者に、有無をいわさず飛びかかる刃牙。以前、ズールにや
られた不意打ちをそっくり模倣している。
「な、うわっ──!」
 試合前にもかかわらず向かってくる殺気に、怯む挑戦者。
 立て続けにラッシュを浴びせられ、挑戦者は砂を踏むことなくミンチとなった。

346 :狂王:2006/10/20(金) 00:04:46 ID:JZOneiWH0
 さらに一ヵ月後──。
 刃牙と挑戦者、両者とも闘技場に現れない。業を煮やした光成は、小坊主に二人を呼ん
でくるよう命じる。
「ふぅむ、どちらも入場せんとは……どうなっとるんじゃ」
 ふと、光成に不吉なシナリオがよぎる。
「まさか……刃牙のやつ」
 小坊主二人がそれぞれの控え室から戻ってくる。
 光成が危惧したシナリオは現実となっていた。
 刃牙の控え室はもぬけの殻。対する挑戦者の控え室には、なんと瀕死の重傷を負った挑
戦者が転がっていたという。
「な、なんということじゃ……」
 頭を抱え込む光成。
「刃牙はどうしたッ!」
「みっちゃん、早く試合してくれよ〜ッ!」
「いつまで待たせやがる!」
 うるさい観客のヤジなど、もはや彼の耳には入らなかった。

347 :狂王:2006/10/20(金) 00:05:38 ID:JZOneiWH0
 翌日、事を危ぶんだ光成は刃牙を徳川邸に呼び寄せる。
 胡坐をかき、話し合う二人。
「たしかに“行住坐臥全て戦い”といったのはこのわしじゃ。だが刃牙よ……いくらなん
でも昨夜はやりすぎじゃ。あれでは武道ではなく、おぬしの父が唱える暴力と変わらんで
はないか」
 こんな毒にも薬にもならぬ説得に応じるとは思えなかったが、予想に反して刃牙はしお
らしく頭を下げた。
「ごめん……じっちゃんが正しいよ。俺はどうかしてたみたいだ」
「では、考え直してくれるのじゃな?」
「あァ、こうなったらすぐにでも試合をしたい。次はだれとやらせてくれんだい?」
 改心し、やる気をみなぎらせる刃牙に光成も喜んだ。
「うむ、では一週間後に試合を組んでやろう。対戦者は今、この中から吟味しておる」
 格闘士の名前が入っている数枚のカードを、得意げに刃牙に披露する光成。だが、これ
がよくなかった。
 カードに名を記されていた候補者たちは、その日のうちに何者かによって自宅で半殺し
にされてしまった。
 この事件を知り、光成は悟った。もう止められない、と。

348 :狂王:2006/10/20(金) 00:06:26 ID:JZOneiWH0
 街中を独りさまよう刃牙。
 陰気な息づかいで、左右に首を振る。
「はぁ、はぁ……はぁ……はぁ、はぁ……」
 すれちがうひ弱そうな男。むろん、刃牙の敵ではない。だが、兄のようにドーピングを
すれば超人になるやもしれない。
「はぁ、はぁ……」
 店外にあるUFOキャッチャーで騒いでいるカップル。彼らが生んだ子どもが、いずれ
刃牙を凌ぐファイターにならないとも限らない。
「はぁ……はぁ……」
 黄信号にもかかわらず、猛スピードで駆け抜けていくトラック。あれにぶつかれば、い
かに刃牙といえどただでは済まない。
「はぁ、はぁ……はぁ……」
 そびえ立つビル群。もし屋上に自分を狙う有能な狙撃手がいたら、瞬く間に撃ち殺され
てしまうだろう。
 ──ダメだ。
 こんなことをしていたら、遠からず精神が参ってしまう。しかし、やめられない。彼は
格闘士。いつどこでだれと戦おうと、決して敗北を許されぬチャンピオン。
「うおおおおっ! 敵はどいつだッ! 敵はどこにいやがるんだァッ!」
 繁華街のど真ん中で、刃牙の絶叫がこだまする。

                                   お わ り

349 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/10/20(金) 00:17:45 ID:JZOneiWH0
毎度ありがとうございます。

350 :作者の都合により名無しです:2006/10/20(金) 07:28:53 ID:RId8a01G0
お疲れ様です。
最後は光成の金玉を蹴りつぶせば面白かったのにw

351 :作者の都合により名無しです:2006/10/20(金) 09:04:41 ID:3DGeertp0
サナダムシさんの短編は大好きだ。
今回もバキの壊れぶりがいいw

352 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/10/20(金) 19:04:11 ID:9/jal7V80
第九十二話「前夜・2」

「あれ?」
魔王宅から出たところで、ドラえもんが人影に気付いた。
「ムウさんじゃない。何やってるの?」
「ああ・・・ちょっとな」
陽気な彼にしては歯切れが悪い答え方だ。彼はなにやら変テコな道具を弄くっているようだった。
「・・・以前から、薄々と疑問に思っていたことがある。もしかしたらとんでもないことに繋がるんじゃないか・・・
そんな疑問が頭から離れないんだ。最後の戦いを控えて、こんな気分を抱えたままなのはどうもよくないからな。
通信機でタイムパトロール本部の方に問い合わせてたんだが・・・どうも要領を得ないな」
「・・・?どういうこと?今回の戦いに関係あるの?」
ムウは頭を振った。
「さあな。関係はあるといえばあるが・・・君らは知らない方がいいかもしれない。<狐>のことがあるってのに、
こっちの問題にまで巻き込ませるのはよくないしな」
そう言って、再び通信機を弄繰り回す。どうやら彼は彼で、深刻な問題を抱えているようだ。その顔は、いつになく
真剣そのものだった。
邪魔をしても悪いので、その場を離れることにした。

―――そして、亜沙の家。
ここには亜沙や亜麻がいるのは勿論、フー子と何故かバカ王子一行がいるはずだ。
ピンポーン、と鳴らすと、中から「はーい」と、亜沙が顔を見せた。
「あら、のびちゃんにドラちゃん。いらっしゃい!フー子ちゃん、のびちゃんたちが来たよ」
呼びかけに応えるように、フー子が奥からやってくる。その姿に少々違和感を覚えたが、すぐに理由が分かった。
「あれ?服が変わってる?」
「うん・・・」
フー子は疲れたような顔をしていた。
「亜沙お姉ちゃんに、着せ替え人形にされた」
「ボクが子供の頃の服を着せてみてるんだけど、どれもすっごく似合うんだもん。やっぱ可愛いと得だよねー」
対照的に亜沙は、心の底から楽しそうであった。以前も買い物に出た際にフー子に色々着せていた亜沙だが、彼女は
女の子を着せ替え人形代わりにする趣味でもあるのかもしれない。
そんな彼女のお人形さんにされるフー子に同情を禁じえなかった。

353 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/10/20(金) 19:04:43 ID:9/jal7V80
「ところで、亜麻さんは?」
「ああ・・・お母さんだったら、その・・・奥の部屋だよ」
亜沙の顔が曇った。どうかしたのだろうか?
「何だか知らないけど、バカ王子さんたちとやけに仲良くなってる」
「・・・・・・」
確かに嫌だった。嫌だったが、挨拶くらいしておこうと思って、奥の部屋の扉を開けた。
「えーと・・・日番谷冬獅郎!」
「う・・・う・・・うーん、中々難しいな・・・」
亜麻とバカ王子、そしてクラフトたちが輪になって、何やら人名を言い合っていた。
「あの・・・こんばんわ、亜麻さん」
「あら?」
亜麻がのび太とドラえもんに気付き、笑顔を向けた。
「二人ともお久しぶり。また会えて嬉しいな。の〜ちゃんはちょっと背が高くなったかな?タヌちゃんは・・・相変わらず
コロコロしてて可愛い〜」
語尾に(はぁと)が付きそうな口調でドラえもんの頭をナデナデする亜麻。タヌちゃん呼ばわりされたドラえもんは
悲しみに打ち震えそうになったが、何とか堪えた。
「で、今のは何やってたの?」
それにはバカ王子が答えた。
「ああ、<大物かと思ったら実はへぼかったキャラ限定しりとり>をやってたんだ。中々面白いぞ」
「・・・何でしりとりなんか・・・」
「なんかとはなんだ。しりとりは偉大な文化だぞ。XXXホリックでも主人公の四月一日君尋はしりとりでアヤカシ
から身を守ったほどだ」
「あれを参考にするの・・・?」
「全く、馬鹿馬鹿しい」
クラフトが付き合ってられない、とばかりに鼻を鳴らした(その割に律儀にしりとりに付き合っていた分、彼も大概
お人好しである)。

354 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/10/20(金) 19:05:15 ID:9/jal7V80
「アホらしい遊びばっかり考え付きおって。王子ならもっと真面目な話もすればどうだ?政治のこととか、色々ある
だろうが」
「政治なんて興味ないね。だって僕王子だもん」
「王子が政治に興味なかったら国が滅ぶわ!」
「あー、ほらほら、バカくんもクラフトさんもケンカなんてしないで」
気の抜けるような声で亜麻が割って入る。意外といい形の三角形ができていた。
「・・・・・・みんな楽しそうだし、帰ろうか」
「・・・・・・そうだね」
二人はそっと時雨家を後にした。

「お。のび太にドラ助じゃねえか」
道端でばったり、コンビニ袋を抱えた神王と魔王に出くわした。
「二人とも、どうしたの?買い物に行ってたの?」
「うん。お酒とおつまみがなくなっちゃったんでね。ちょっとそこまで」
「王様のくせに買出ししてたの・・・」
「俺ら以外全員酔いつぶれちまってな、とても外出できる状態じゃねえんだよ。しずかは素面だけど、流石に女の子を
こんな時間に一人買い物に行かせるってのもなんだしな」
そう言って神王は、ふうっと息を吐き出した。
「―――で、明日には行くんだろ?シュウとかいう奴をぶっ倒しに」
「・・・はい」
「そうか。しかし、お前らも大変だな。ここまで妙ちきりんな事態に巻き込まれちまうたあ・・・難儀なこった」
物思いに耽るかのように、天を仰いで続けた。
「全くふざけた話だぜ。こんなろくでもねえ物語の最後は―――」
神王はそこで言葉を切って、不敵に笑った。
「―――きっちり正義が勝たなきゃ認めねえってんだよ」
そしてぽんぽん、とのび太の肩を叩いた。
「デウス何たらだかどうか知らねえが、本物の神様のお墨付きだぜ。自信持っていけよ」
「ついでに、魔王のお墨付きもね」
ニコニコと自分の顔を指差す魔王。そんな二人に、のび太はたった一言だけ、けれど心から想いを込めて返した。
「ありがとう―――本当に、ありがとう」

355 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/10/20(金) 19:05:46 ID:9/jal7V80
―――そして。
「もう、行くとこもないかな」
「そうだね。後は明日を待つばかり、か」
のび太とドラえもん、二人で並んで歩く。もう何も起こりそうにない。誰とも出会いそうにない。そんな時だった。
狐面の男が、目の前にいた。
「よお、俺の敵」
それこそ単にちょっとした知り合いにでも声をかけるような気軽さだった。
「昨日の返事―――まだだったからな」
「返事・・・」
「俺とお前らとの、最後の勝負―――それを受けるか、否か、だ。すなわち―――シュウに勝った場合、きっちり
俺に引導を渡すかどうか。その答えを聞いていなかったのでな。さあ―――答えを聞かせてもらおう」
「ぼくは―――」
のび太は答えた。狐面の奥の瞳を、しっかりと見据えて。
「勝って戻ってきたなら、ぼくは、あなたを・・・」
きっぱりと言い切った。
「あなたを、殺す」
「そうか」
狐面の男は、その仮面を脱ぎ捨てた。何故だろう。彼が仮面を外したところは何度も見たのに―――
のび太は初めて、狐面の男の素顔を見た気がした。
「明楽が今―――俺の中で死んだ。今度こそあいつは、完全に死んだ。もうこの狐面を被ることもないだろう」
「・・・・・・」
「お前との最後の勝負の場に立った以上―――もはやあいつも、俺にとって過去のものとなってしまった。そういう
ことだろうな―――そうだ。そういえばまだ、俺はお前たちに名乗っていなかったな」
「名前・・・」
そういえばそうだ。のび太は未だに、彼の名前を知らなかった。
「名前なんぞ記号にすぎんが、まあ、これも物語の上での演出というやつだ。くっくっく―――名乗りをあげるタイミング
として、今以上の時はないだろうしな。折角だから覚えておけ、俺の名前を」
彼は告げた。

356 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/10/20(金) 19:06:17 ID:9/jal7V80
「西東天(さいとうたかし)―――それが俺の名前だ。この名前、脳に刻んで記憶しろ」

―――そして、夜が明けるころ。
のび太たちの姿は、この世界のどこにもなかった。

357 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2006/10/20(金) 19:16:33 ID:ffC7Nr/I0
投下完了。前回は>>274より。
次回から、やっとこラストバトルです。

>>276 暴走しすぎるくらい趣味を出さないと、息抜きにならないので。その時は思いっきりやっちゃってます。

>>277 風格が出てきたかどうかは分かりませんが、SSを書き慣れてきたというのはあります。

>>278 我ながら、本当に長いSSです・・・

>>279 三部作か・・・うーん、一応超機神で終わる予定ですが。それ以降はまだ考えてません。

>>ふら〜りさん
今回の別れシーンは、前回よりは感動分が薄れるかもしれません。
前回は涙の別れだったので、今回は笑顔の別れでいきたいと思います。

358 :作者の都合により名無しです:2006/10/20(金) 19:21:27 ID:3DGeertp0
サマサさん乙!
今回の別れもいい感じでしたよ。
次回からのラストバトル、楽しみにしてます

359 :作者の都合により名無しです:2006/10/20(金) 21:09:11 ID:PfZUwhVu0
サマサさんお疲れです。
いよいよ名前を明かした狐面の男ですが、西東天って元ネタあるんでしょうか?
亜沙にいじくられるフー子が可愛いですね。

360 :作者の都合により名無しです:2006/10/21(土) 07:46:31 ID:SuiobJL/0
そういや、この神王魔王コンビも神界からずっと出ずっぱりなんだよな。
最後の出番はエンディングかな?

361 :作者の都合により名無しです:2006/10/21(土) 17:37:49 ID:u8kMy1GS0
サマサさん、丸々2年越しの大作なんだな
もう(やっと?)ラストバトルというのも感慨深いよ・・

362 :永遠の扉:2006/10/22(日) 14:08:22 ID:WmPfrpmZ0
なぜ、こういう状況に置かれているのか。
正直理解に苦しむ。
けれど苛烈であろうと馬鹿げていようと、処して目的を果たすのが自分という存在に許された
たった一つの在り方だ。
そう。
迷い込んだのは夢なんかじゃなくて現実。
自分を変えたいのなら動き出すしかないから……

「司令…!! もはやこれまで!! 私はゾンビになどなるのは御免です。……お先に!!」
教壇の上で河合沙織がこめかみにつきつけた銃を弾くと、傍らのまひろは手にしたジッポラ
イター(設定上は起爆スイッチ)のフタを開けた。
声に出すなら「むむむ……」といった面持ちをする彼女は、七三分けのカツラやつけヒゲと
あいまってなかなかにコミカルである。
そしてその眼前へジッポライター入りの握りこぶしを荘重に掲げた後、下唇をかみしめてや
や寂しげな目をした。
教室の中ほどで適当な席に座りコトの成り行きを見守っていた学生服姿の秋水は、首を傾
げる。
彼が渡された台本によると、まひろが演ずる人物は1人の少女との対話を思い出しているらしい。
ただどうしても、彼女がカズキを思い出しているように見えたのだ。
と同時に、教室にジャージ姿の女子が4人入室する。
「手こずらせたな能無し共」
眼鏡つながり、ただそれだけの共通項で抜擢された若宮千里が憎々しげな表情で銃を突き
つけると、まひろはつけヒゲごと唇をゆがめた。
「何がおかしい? 人間」
「無能な、こ、この、わ、私より、無、無能な、貴、きッ貴様がだよ」
別にどもっているワケではなく、台本を忠実に読み上げているせいらしい。
秋水が確認中の台本には「ここは臆病さを前面に! 冬の朝を思って声を震わせましょう!」
とある。
確かにその通り、まひろの声はなかなか堂に入っている。秋水は少し感心した。
そして驚く千里たち4人。
何の変哲もない教室をきょろきょろしてるから、秋水にはひどくシュールな姿に見えた。
後で知ったが、元の話では部屋一面に爆弾が仕掛けられているらしい。

363 :永遠の扉:2006/10/22(日) 14:09:04 ID:WmPfrpmZ0
「さ、さよ、さようなら。イ、イ、インテグラ。わ、私も楽しかったよ」
「やッ、やめろォォ!!」
千里は逆台形に開いた口からあらん限りの叫びを搾り出し、引き金に手をかけた。
「嫌だ!! そんな頼み事は聞けないね!!」
上々である。
新型銃器やヘリやらの『頼み事』をずっと断れなかった男の最期のセリフとしては際限なく。
この後、まひろはカッコいい顔でジッポライター(設定上は起爆スイッチ)をチキッと押して。

演劇部の練習が終わった。
銀成学園高校演劇部といえば、

「主人公の女性がとある男と大恋愛の末に結婚。しかし運命の悪戯で生き別れになり、生涯
その男を探し求める」(台本はセリフの隅々までよく吟味してあり、こだわりを感じさせるらしい)

という話を毎年文化祭でやるコトで有名ではあるが、平素は上記のような演目も行っている
のである。

だが秋水はなぜ、こういう状況に置かれているのか。
それは昇降口でまひろに出会ってから2、3とりとめのない会話をした後に原因がある。
「そうだ、秋水先輩も練習見る? こーんなね」
まひろはめいっぱいを両腕を水平に伸ばして、瞳をはつらつと輝かせた。
「すごく長い銃とかリュックサックみたいなおっきなコンテナとかがあるんだよ! 六舛先輩が
作ってくれたんだよ。すごいね。でも背負ってくれる人はまだ決まってないけど……」
「……えーと」
最初、まったく話が見えなかった。演劇部の話題だとすら気づかなかった。
「良かったら来て! あ、見学は自由だから大丈夫!」
秋水はほとほと困った。
熱心な勧誘はいいのだが、
「そもそも場所はどこだ?」
剣道部の練習が終わった後、学生服姿でまひろを探して途方にくれたりもした。
「なんだ秋水知らなかったのかよ。まっぴーなら演劇部に入ってるぜ。今日は部活で登校だ
な。ちなみに俺サマは休憩中。ったくブラ坊も人遣い荒くてやになるぜ。大体、千……」

364 :永遠の扉:2006/10/22(日) 14:09:40 ID:WmPfrpmZ0
「し。ダメよ御前様。それは機密事項。あ、ごめんなさい秋水クン。こっちの話よ。えーと。生
徒会への届けだと……演劇部が練習に使ってる教室は1−A。まひろちゃんのクラスね」
困ったときの姉頼み。
職員室で調査中の桜花を訪ねると、彼女は御前と交互に答えてくれた。
「まったく。副会長なんだから、まひろちゃんの部活ぐらい把握しておかなきゃ」
悪戯っぽく桜花は微笑んで、秋水の鼻をちょいと小突いた。
「と言うけど姉さん、クラブ経由で生徒会へ来る入部届けが一体どれだけあると思うんだ」
「そうね……ざっと258枚だったかしら」
その中から、個人的な接触がない──いってしまえば桜花とカズキ以外だが──生徒の所
属部を把握するのは不可能だろう。
以上のような論法を楯に秋水は憮然と抗議した。
「はいはい。秋水クンでも無理ね。千歳さん位じゃないと出来ないわね」
桜花は肩をすくめて笑い、この後しばらく秋水が頭を悩ます課題を振った。
「ところで……」

「ね、ね、どうだった秋水先輩」
秋水はハっとした面持ちで眼前を見た。
そこには子犬のように濡れ光る瞳で感想を求めるまひろがいた。
劇が終わるやいなや、桜花提供の課題に頭を苛ませていたのが悪かった。
まひろの接近に気づかず、無愛想な顔をさらしていた。
それではまるで、まひろの問いへ「つまらなかった」と顔で答えていたようなものではないか。
もちろん秋水の本音は別だが、人の視線というのを生真面目に考えると、自身の表情があ
らぬ誤解を招いたのではないかとついつい考えてしまう。
その上、可能性を描くだけで取り繕えない性分だから、元々の懊悩がますます増して、まひ
ろの求める感想を切り出しづらくなる。
(どうもこの点、俺は軽快さに欠けている)
まひろはといえば感想を求めて佇み中。3年ぐらいは平気で待ちそうだ。
そんな無邪気で真摯な表情に、どうしてもカズキを見てしまう秋水だ。
(彼ならどうするだろうか)
もしごく普通の友人関係にあったのならば、対等な中でも敬意に基づき、半ば師事する形で
日常との融和の仕方を学べただろう。剣を修練するように。

365 :永遠の扉:2006/10/22(日) 14:10:44 ID:WmPfrpmZ0
されど実情は、剣を交えて死合を行い、振りかざした薄暗い感情へ前向きな抵抗が突き刺
さって膿を抜き去ったという戦い絡みの関係のみだ。
それ以降は秋水が修行に出たり、カズキが月に消えたりで現在に至る。
だから秋水が「カズキならどうするだろうか」と考える時は、戦いに臨む彼を思い返し、さなが
らすりきれた教本に従い素振りを練習するような心持ちで倣おうとしてしまう。
曰く。
世界のもたらす痛みに耐えて、挫折を繰り返さぬようあがきぬく。
曰く。
世界を見渡して、拾える物は必ず拾う。
曰く。
諦めない。

一言でいうなら「今は分からないコトばかりだけど、信じるこの道を進むだけ」なのがカズキだ。
「どんな敵でも味方でも構わない、この手を離すもんか」でも可だ。
現に秋水はそんな彼の姿勢に救われた。だからその事実に半ば後押しされるような形で。
「上手くはいえないが」
すっと軽く息を吸って、秋水は思ったままを口に上らせる。
ただ、他者との接触に不慣れだから、本音を喋るという行為は非力な人間がバーベルを持
ち上げるような重々しさを持っていて、背中を微量の汗に濡らした。
「君の兄と初めて剣を交えた時の事を思い出した」
「え」
よく分かってないという調子のまひろの声は、カズキとそっくりすぎたので。
秋水は思わず頬をかいて、裡に生じた笑いの衝動を散らしたくなった。
こういう風に感情をためつつもどこかで散らしたがる性分が、彼の操る武装錬金・ソードサム
ライXの「エネルギーを吸収して下緒から放出」という特性に反映されているのかも知れない。

──思った通り、剣道は未経験ですね。
──え
──けれど、それを補って余りある「活きた」動きをする。

「ナルホド」
要するに技術関係なしに「活きた」演技をしていたと告げる秋水に、まひろはうんうん頷いた。

366 :永遠の扉:2006/10/22(日) 14:12:23 ID:WmPfrpmZ0
「確かに演劇部に入ったのはつい最近だよね。ちーちん」
「何が確かなのか良くわからないけど、入部は1週間ぐらい前です」
教室最前列で遠巻きにまひろたちを見ていたおかっぱ頭の少女──千里は、やや戦々恐々
の面持ちで秋水に説明した。
「きゃー、本当に秋水先輩来ちゃってるよちーちん。どうしよー!」
その横では、髪と同じ黄色い声を上げるツインテールの少女、沙織。
「なになになに、まっぴーとはどんな関係!?」
「こ、こら、プライベートなコトを聞かないの……」
千里は教室の隅に固まる他3名の演劇部員を横目で見ながら、必死に沙織を制止する。
秋水といえば銀成学園のアイドルだ。容姿端麗、頭脳明記、スポーツ万能。
そんな馬鹿と冗談が総動員したハルコンネンIIみたいな男性が、あろうコトかまひろと親しげ
に会話している。
そも、まひろは入学以来あまりに天然すぎあまりに多くボケ続けたため、一部では
「まひろに進んで関わるのは、悪人か狂人のどちらかだけ」
と評されるほど、アレな存在だ。
秋水と親しげでは嫉妬の炎をメラメラ燃えるのもむべなるかな。
大人しい千里にはそんな雰囲気が怖くて仕方ない。
「うーん……でも、今日はさーちゃんの方が上手だったかな。何だか急に上達しててビックリ
したよ。ね。さーちゃん」
沙織は少し面食らった表情をすると、先ほどまでの勢いが一転、ボソボソと喋りだした。
「……まぁ、一応、日ごろから演技の練習みたいなコトしてるから……その成果が出たのかも……」
弁明しつつ、沙織は秋水をちらりと見た。
それはきっと一種の照れなのだろうと千里は解釈するコトにした。
「ひょっとしたら昨日帰りが遅くなったのも、どこかで練習してたせい?」
「そんなトコロ」
「あ! あたし昨日の夜、寄宿舎へ帰るちょっと前に見たよ! オバケ工場の方から歩いて
くるさーちゃんを」
「えー? 見間違いじゃないかな…… だって暗いし、屋上から見えるわけないよまっぴー」
沙織は困ったように眉間にシワをよせて、可愛らしい苦笑を漏らした。
(だろうな)
秋水も胸中で頷いた。
仮に沙織がオバケ工場に行っていたとしたら、まずここにはいなかっただろう。

367 :永遠の扉:2006/10/22(日) 14:15:17 ID:de+hpYy70
なぜなら昨晩は調整体がひしめきあっていたからだ。行けばまず落命しただろう。
そしてオバケ工場から学校への道は1つ。森林と並走する緩やかな坂道だけだ。
秋水は調整体を掃討した帰途、そこで沙織の姿をまるで見ていないから、まひろの目撃証
言は見間違いというコトになる。時間が夜で、場所は屋上。とくればそちらの公算が大きい。
(しかし……なんだこの引っかかりは?)
沙織の言動のどこかに違和感がある。
友人へ隠し事をしているだけにも思えるが、どこか秋水を意識している気配がある。
剣道でいうなら、打ち込まれまいと後退する相手のような弱腰の警戒感が。
「ホントだよ。私屋上から見たんだって! ちょっとだけだったけど確かに!」
「ハイハイ」
千里はいつもの天然ボケだと軽くあしらいつつ、胸をなでおろした。
まひろの興味が沙織との問答に移ったので、女子部員たちの怨嗟オーラが霧消しつつある。
「ところで」
と秋水は、神妙な面持ちでまひろに呼びかけた。
「なぁに」
「その……この前は姉さんの見舞いに来てくれてありがとう。君が選んでくれた花束、姉さん
はずっと喜んでいる。もう既に姉さんは礼をいってるかも知れないが、俺からも礼を。感謝
する。そして本来ならすぐいうべきだったが諸事情で遅れてしまった。すまない」
ただそれだけの文言を喋るのに、秋水はまたしても汗をかいた。
剣道の稽古で部員全員を相手取っても、汗をかかなかった秋水がだ。
いわゆる緊張の汗。精神のうち、一定の事象に不慣れな柔らかで過敏な部分を外気にさら
すと、人はよくそういう汗をかく。
何を隠そう、桜花提出の課題のうち1つはこのお礼である。

「だって秋水クン、昨日の夜、まひろちゃんにお礼いってないでしょ? ダメよそういうコトは
ちゃんとしないと」

この点においては、秋水が別に薄情というワケではない。
まず、時間が経ちすぎている。次に、桜花を見舞ったのはカズキと斗貴子、ブラボーだけで
まひろやカズキの友人については、医師軍団に阻止された。
だから礼をいうにはやや縁遠い。
更に、秋水が拠り所とする剣道の性質が礼のいい辛さに拍車を掛けてしまう。

368 :永遠の扉:2006/10/22(日) 14:16:32 ID:de+hpYy70
剣道は、いかなる形であれ試合が終わればそこで過去の戦績と化し、遡っての修正や補足
は一切不可なのだ。
そういう性質にどっぷり染まった秋水にしてみれば、過ぎたコトに礼をいうのは的外れで論理
を欠いた行動でしかなく、気が進まなかった。
なかったのだが、よくよく考えると「お見舞いにきた」というその一事自体、世界に心を鎖して
いた早坂姉弟には重要だし、礼をせねば以前と同じ姿勢のままとなる。

「お見舞い……?」
まひろは深く考え込んだ。
「また忘れてる! ほ、ほら、秋水先輩たちが交通事故にあった時の!」
千里も秋水と同種同質の汗をかきつつ、必死にフォローを入れた。
曰く、全てにおいて忘れっぽいだけで、携わった物事についてはマジメな子だと。
「あ! 思い出した! メロンと選りすぐりの花束を持っていった時の! でもお礼をいわれる
とちょっと照れちゃう……かな。ほら、私たち途中でお医者さんに捕まっちゃたし」
はにかむまひろ同様、秋水の内心は落ち着かない。
「で、もし良ければ」
秋水は果たして、それをいっていいかどうか悩んだ。
桜花提出の課題は、礼をいったその先にもある。
が、それはまひろの諸事情を鑑みるとあまりいうべき事柄でもないようだし、第一桜花の意図
が分からない。
それでもカズキならばいうだろう。なのでいった。うっすら汗ばみつつ。
「礼といっては何だが、夕食をおごらせて欲しい。いや、都合があるなら別にいいが」
教室にいたまひろ以外の女子から、間の抜けた「え」という呻きが漏れた。
この完璧無比の貴公子は何をいいだしているのだ。
デートの誘いと解釈されても仕方のない言葉ではないか。
「ええっ!?」
一泊遅れてまひろも仰天し、あたふたと頬を赤らめつつ秋水を見た。

職員室で桜花が秋水にいったのだ。

「ね、まひろちゃんをお食事に誘ったらどう? きっと喜ぶと思うわよ」

369 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/10/22(日) 14:19:47 ID:de+hpYy70
wiki見てたらバタフライがヴィクターやってるのに気づいて大爆笑。
毒島が増血鬼やってるアニメの話です。
原作の雨水君の好青年っぷりはガチ。ある意味カズキより素晴らしい。

>>312さん
彼女、実は結構好評だったりするのでしょうか? セリフや仕草は考えなしの即興でやってるんですが…… 
むぅ。錬金キャラは客観的に見れるのに自分の作ったキャラはそうできず。自分の声が世界
にどう響いてるのかが分からないように、却って魅力が分かり辛いのです。いや、好きですけどね。

>>313さん
今しばらくは戦闘を遠巻きに見据えた日常を送るかもです。ただ、もちろん最後の切札は彼。
主役として活躍できるような、無謀かつ無茶な展開ができないかと思案中です。その過程で
桜花との関係の変化をかければベネ。まひろはまっさらに限りますね。アニメ版の最強ボケも良いですが。

>>314さん
「あの日から今日まで〜」は斗貴子さんも同じだったと思います。けれどもカズキはあくまで周
りの人間ありきだったのに対し、彼女はカズキあっての楽しい日々だった訳で考えるとちょい、
泣けます。さて、秋水ですがどうでしょう。世界に馴染めない青年はこんな感じだと思うのですが……

370 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/10/22(日) 14:20:47 ID:de+hpYy70
>>銀杏丸さん
>戦闘神話
神話には疎いので、文中数々の逸話は楽しく拝読させていただいております。
>あの陰気な引篭もりの兄貴を心底嫌っていたからに過ぎない
寝癖もすごいですからね彼。冗談はさておき、意地と矜持を抱えるキャラは大敵が出現した
場合、えてして力強い味方になるもので、無敵ぶりからも「ひょっとしたら?」と。

すみません。剣心華伝によると剣心は1949年6月20日生まれなので、爆爵よりは1つ上となります。
大久保卿暗殺の後、比古の小屋で弥彦がいってた年齢に騙された…… 明治11年じゃ29歳ですよね。
爆爵の日清・日露戦争への感想は、かなり自分の好みが入るかも。なぜなら坂の上の雲が面白いからです。
みんなが一致団結して強敵を倒すっていう少年漫画の王道を描いてるんです。あの司馬遼太郎が。
パピヨンはこの時期、斗貴子さん以上に鬱屈してると思うんです。それを描きたいのですがいつになるやら。

>さいさん
>WHEN THE MAN COMES AROUND
おぉ、さっそく赤銅島がw そして千歳がストレートなヒロインをやってるのはすごく斬新です。
半ベソでうなだれたり涙目で火渡叩いたりお世辞に頬を緩ませたり、7年前の千歳のポテン
シャル恐るべし。あと水晶の龍はキングスナイトと並ぶスクウェア希代の名作ですよね!

HELLSING拝読しました。もちろんアンデルセン神父や少佐も好きですが、一番感情が動い
たのはペンウッド卿だったり。で、字楽先生がHELLSINGキャラにしか見えなくなりました。
>スターダストさんの書くまっぴーが一番魅力的です。
ありがとうございます。秋水や爆爵と同率1位で好きなキャラなので、1ファンとして嬉しい限り。
剛太とのカップリング…… 実は萌えスレで1度だけ。確か、寄宿舎の門前をまひろが掃除してる奴です。
小説版は何が何でも。坂の上の雲より優先ですよ。

ふら〜りさん
ありがとうございます。彼らは(あまり出過ぎないよう)ノリノリで描いてます。で、小札ですが
仕事中ずっと考えてたのですが、嫉妬するかどうか自分でも分からないんです。まぁ、そういう
コの嫉妬は根来の恋愛並みに魅力的ですし、今度は制約なしでできるんですが、まだ浮かばず。

371 :作者の都合により名無しです:2006/10/22(日) 21:55:16 ID:9JGE5ApV0
スターダストさんハイペース更新お疲れ様です!

まひろは相手が誰であろうと切り込んでいくので
姉以外に孤高?を保ってた秋水すらペースを狂わされっぱなしですね

でも、一応秋水からデートを誘った形になるのかw

372 :作者の都合により名無しです:2006/10/22(日) 23:01:16 ID:78E7I1I10
バキMAD

ttp://omotopi.blog65.fc2.com/blog-entry-412.html

絵と曲が合いすぎているw

373 :作者の都合により名無しです:2006/10/23(月) 07:33:24 ID:PZbEdQvJ0
スターダスト氏乙。
このまま、ちひろと秋水がストロベリーになるのかな?
(原作からだが恥ずかしい表現だ・・)
トキコ視点とまひろ視点で世界が180度変わるなあ。

374 :作者の都合により名無しです:2006/10/23(月) 08:34:09 ID:+0bDgXfQ0
まひろって恋愛タイプじゃない気がするんだけどw
それ言ったらトキコも秋水もそうかw

375 :作者の都合により名無しです:2006/10/23(月) 20:52:58 ID:VqM1QDIl0
いや、まひろは恋愛体質と思う

376 :ふら〜り:2006/10/24(火) 21:52:18 ID:KzmsJGlX0
>>サナダムシさん
実際、突き詰めればそういうトコまでイッてしまいますよねぇ……柳戦の敗北はともかく、
ズールの不意討ち容認は。でも勇次郎の場合は同じようにイッておきながら、誰かさん
みたいに「寝込みでもいつでも来な」で落ち着いてるんでしょう。やはり未熟だ、刃牙。

>>サマサさん
>きっちり正義が勝たなきゃ認めねえってんだよ
おぅ、それぞ宇宙の絶対真理! です。そしてラストバトル前の、最後の日常平和シーン
……の最後に、また随分と大きな爆弾発言が。百戦を乗り越え錬磨された戦士だからこそ、
あんな彼でも言い切れるんでしょう「殺す」の一言。これから臨む戦いの向こうに何が?

>>スターダストさん(マッピーと言えばトランポリンで跳ねるネズミ警官)
秋水って総角ほどの余裕はなく、根来と同じく傍から見ててもどかしい。で、そんな男性に
ペースを合わせられる千歳&まひろ。自然にお似合いな空気ができてる小札。男性は寡黙で
強くて生真面目、女性は何かと女(の子)らしく、柔らか可愛い。そんな三組が好きです。


377 :作者の都合により名無しです:2006/10/25(水) 01:12:53 ID:Aepyi1HJ0
あげ

378 :ある昼休み:2006/10/26(木) 12:41:13 ID:21t77lbg0
「あひゃひゃひゃひゃ、あ〜いい湯だな。」
大柄な、米軍服を着た男が歌うように叫んでいる。
ちなみにここは北海道は札幌市、雪祭りで有名な大通り公園である。
もちろん彼は風呂になどは入っていないし、そもそも温泉などはない。
もうそろそろ冬である。
肌寒いのに半そでの軍服を着たマッチョに絡まれたい奴などごく一部の特殊な方々だけだ。

「何を見てるんだね君たち?見世物じゃねぇんだよ?」
目を合わせないように避けている人々に向かってこの台詞である。
「まったく何を考えているんだかわかんねぇんだよ、ジャップはよ」
胸ポケットから葉巻を取り出し一服する。
「このキャプテン☆ストライダムを何だと思ってやがるんだ?」
大きく葉巻を吸い込んで、むせた。

「ゲホっ、ゲホッ、くそ、タバコまで俺に逆らいやがる」
なぜ俺はこんなところまできているんだろう?
心底ストライダム将軍は思った。
どれもこれもあの勇次郎のせいなのだが、最近は頭の中にさえ「勇次郎のせいだ」という単語が浮かんでこない。
なるべく勇次郎のことは考えないようにしているうちにそれが習慣になってしまった。

379 :ある昼休み:2006/10/26(木) 12:42:11 ID:21t77lbg0


実は空気を読むのがうまい勇次郎である。
下手なことを考えていると即座に当てられ、非常に怖い顔を見せられる。
「ババアゾーンのババアに匹敵するんだよ、あの表情はよぉぉぉ」
ちなみに独り言である。

もう随分独り言を喋っていたので喉がからからだ。
駅前にスターバックスを見かけた。
アメリカでもポピュラーな店だ。
ストライダムの故郷の味というには余りに新しいが、CMをたくさん見ているとなんだか故郷の味に思えてこなくもないのだ。
ストライダムも久しぶりに故郷の味が恋しくなっていた。


カランとドアベルを鳴らしながら中に入る。
落ち着いた店だ。
レジに並び、順番が来た。
「いらっしゃいませ」
カウンターの女性が笑顔で「どちらになさいますか?」と聞いてくる。
ああ、日本人の笑顔はいい、仕事への誠意にあふれている。
そう思ったストライダムは嬉しくなった。



380 :ある昼休み:2006/10/26(木) 12:43:01 ID:21t77lbg0
レジを打つ、美人ではないがかわいらしい女性にコーヒーをブラックで頼むと笑顔で
「ああ、熱くて寒い、ここはいい、ベトナムの戦場に匹敵するよ。いい雰囲気だ。」
と流暢な日本語で礼をいい。
「ステキな笑顔をサンキュー、ハニー」
と軍学校時代の若かりしころの習慣までサービスした。

レジの女性の顔は引きつっていたが、見えてはいないらしい。
要するに脳が捉えなければ見えているとはいえないのだ
(馬鹿の壁にそんな文章はあっただろうか?)

まったりと外を眺めながらコーヒーを飲む。
秋の北海道の風景は美しい。
心底そう思う。
もっとも駅前にはビルしかない。
普段からコーヒーは飲むが、専ら自分を落ち着けたり、目覚ましのために飲む。
静かにコーヒーの香りを楽しむなど久しくしていない。

「ふぅ、いいものだな、こういう時間も」
せわしなく道行く人を見ながら、自分が持っている特権的な気分を楽しむというのも、いたずらをしているようで楽しい。
装いが秋から冬に移ろうとしている町もいい。
ストライダムは雪の降る町の出身なのだ。


381 :ある昼休み:2006/10/26(木) 12:43:53 ID:21t77lbg0
冬が近づいてくると、冬の匂いというのを感じることがある。
それがなんなのかはよくわからない。
ひょっとすると排気ガスなのかもしれないが、それはそれでかまわない。

「冬か」

故郷の冬は長らく見ていない。
今年は帰れるだろうか?
月並みではあったが、青春を過ごした街である。
たまには帰ってみたい。
少し寂しげな笑みを浮かべると、もう一杯コーヒーを注文した。


どれだけ帰っていなかったか…
指折り数えてみる。
長いな。

これというのも…ゆ○○○○のせいだ。
あれ?誰のせいだったか。
思い出せないというか、思い出したくないような…。
まぁいい、今は勇次郎との待ち合わせの最中だ。





街中をきれいな赤髪の女性が歩いていた。
道行く男は皆、彼女を見て振り返っていく。
喉が渇いた女性がスタバに入ってきた。


382 :ある昼休み:2006/10/26(木) 12:44:27 ID:21t77lbg0
彼女は近くの敏腕OLで、ここの常連さんである。

彼女は店に入ってくると、初老の米兵が自分に向かって敬礼しながら走ってくるのを見た。
最早何がなんだかわからない。
何故自分が敬礼されねばならないのか?
仲のいい店の女の子も自分をいつもとは違う眼で見てくる。
軽蔑でも、哀れみでも、好奇の眼でもない。
畏れの混じった視線である。

一体私が何をした?というかこの兵士は何?中年というか壮年。
何でわたしに敬礼しながら走りこんできたの?
新手のセクハラ?そういえば今日もあのハゲいやらしい眼をしながら肩に手をかけてきたわ。
何なのよ一体?

そして、大男はいきなり大声で叫んだ。
「すまない、勇次郎!!!!!悪気はなかったんだぁ!!!!!」

もはや美人OLに事態を把握することなど不可能である。
店内にいる人々も同様である。

てか勇次郎って誰よ?
まさか奈津子さんって本名は勇次郎?
転換済みってこと?


383 :ある昼休み:2006/10/26(木) 13:01:40 ID:21t77lbg0
あの米兵何?
お相手?
などなど皆が行間を埋めるのに最大限の想像力を発揮していた。

OL奈津子には人々の心が聞こえてくるようだった。

日頃の激務でたまったストレスが、この一件で一気に沸点を超えた。
主に上司のセクハラが原因であるのだが…

「ざけんじゃねぇよ、誰が勇次郎よ!ああ?でかいなりして何を言ってんだよ、ぉのカス。何?あなた?新手のセクハラ?わたしは奈津子よ、もぉ、勇次郎なんかじゃないわ」
この迫力に多くの人は彼女の背後に獅子か鬼が吼えているような影を見た。

「ひぃぃ、すまない、勇次郎!」
「誰が勇次郎よ、誰が!」

余談だが、息継ぎの関係上で変な位置で入った「もぉ」の一音で後に以下のような噂:

奈津子、本名は勇次郎は性転換をしにアメリカに渡り、そこで知り合った米兵と駆け落ちした。
だが、彼の両親の反対に合い、頼りない彼に絶望して北海道までやってきたのだ。

が流れ戸籍証明まで取りにいってデマであることを証明する羽目になるのだが、それは置いておこう。

キャプテン☆ストライダムは我に返った。


384 :ある昼休み:2006/10/26(木) 13:02:27 ID:21t77lbg0
赤い長髪の日本人を見たのでつい勇次郎だと思ってしまったのだ。
よく見ると、勇次郎と比べるとはるかに体格も小さいし、髪もしっとりと整っているし、美しい。

「すまなかった、君は勇次郎ではないな」
「当たり前でしょ」
当然である。眼がどうかしているとしか思えない。

よかった。
ストライダム将軍は安堵の笑みを浮かべた。
だが表情というものは周りの状況、シチュエーション、空気、見る側の精神状況でまったく別のもののに見えるものである。
脳が捉えなければ人はものを見ているとは思わないものだ。
奈津子の眼にはストライダムの安堵は、寂しさをこらえる初老の男の表情に映った。

おそらくこの男は戦場で共に戦い、恋に落ちた女兵士を探しているのだろう。
看護兵だった心優しい彼女は戦場の悲惨さに耐え切れず、逃げ出して平和な日本にやってきたのだ。
日本人にしては彫りの深い顔のわたしを見てその女性と勘違いをしたのだろう。

ちなみに勇次郎と呼ばれたことはこの時点で完全に頭から消えている。
脳が(略)

ストライダムが見せたあまりに寂しそうな顔に、奈津子は少し可哀想に思った。
「何があったの?」
「すまない、(仕事柄)言えないんだ」


385 :ある昼休み:2006/10/26(木) 13:03:02 ID:21t77lbg0
あー疲れているな俺は。
おかしくなってきている自分に気づいたショックに、呆然としたが、戦士たるものそこで自失するわけには行かない。
絞り出すように笑顔を見せて、

「語ることなど何もないさ、ぼけた老兵は消え去るのみだよ、お若いレディー」


ストライダムが何とか見せた笑顔はひどく寂しげで、今にも壊れそうに見えた。

BSEじゃあるまいな?
まったく変な肉を喰わせるなよ農林水産省。
焼肉はともかくハンバーガーはシグルイではないのだよ?
庶民にだって陳腐でチープなプライドはあるのだぜ。
など、政府の悪口をあたまの中で並べつつ。「すまなかった」
まずは奈津子に誤り。

「スミマセン、オサワガセシマシタ」
店の人にも謝ってストライダムは店を後にした。
もう冬の空模様である。
ドアを開けると冷たい風が入り込んできた。
枯れ葉が踊っている。

「まって」
後ろから声が聞こえた。

振り返ると先ほど人違いをした女性が自分を呼び止めていた。
「あのさ、よくわからないけど、人は自分の道を生きなきゃいけないと思うんだ。つらくても、平凡でも。」

ストライダムは、ぐっ、と親指を上げ、奈津子も親指を上げた。


386 :ある昼休み:2006/10/26(木) 13:03:33 ID:21t77lbg0
互いにふっと微笑むと、ストライダムは店の前から去っていった。

奈津子はしばらく彼の行った先を見ていたが、寒いので店内に戻った。
まだコーヒーも注文していなかった。
早くしないと昼休みも終わってしまう。
まだ顔を引きつらせている仲の良い(かった)店員にコーヒーを注文して、一息ついた。
人生いろいろあるものだ。

大通り公園に戻ったストライダムはすぐに勇次郎を見つけた。
「なにやってたんだよストライダム?おせぇじゃねぇか」
「スマナイ、ユウジロウ。トイレに行っていたものでね」
「なんだか嬉しそうだな?」
「イヤ、ちょっとねカワイイ女の子がいたのだよ」
「そうか、それはいいが、ストライダム、今日俺がお前をここに呼び出した用件がわからねぇんじゃあるまいな?」
勇次郎のオーラが秋の空を盛大に歪めた。


ストライダム将軍の苦労は続きそうである。
将軍の未来に幸あれ。




387 :ある昼休み:2006/10/26(木) 13:07:43 ID:21t77lbg0
ああ電波にお付き合いいただきありがとうございました。


388 :作者の都合により名無しです:2006/10/26(木) 20:10:34 ID:5u69mhkv0
お疲れ様です!
レギュラーの書き手さんかな?
新人さんだともっと嬉しいけど。

OL奈津子強いですな。ストライダムも手玉に取られてるしw
結構、紳士なのは原作でも一緒か>ストライダム

389 :作者の都合により名無しです:2006/10/26(木) 22:40:26 ID:2olxpX1H0
お疲れです。
電波というよりどこかほのぼの系ですな
ストライダムに幸あれ

390 :作者の都合により名無しです:2006/10/27(金) 10:11:47 ID:UZygcD6U0
うみにんさんぽいかな?
新人さんかな?

とにかくお疲れ様です。
意外と人格者でちょっと間抜けなところは原作どおりですね、ストライダム。
また短編でも書いてくれるとうれしいです。

391 :AnotherAttraction BC :2006/10/27(金) 13:49:36 ID:tDn/dAMU0
91から
――――五日前、某所。

「……と言う訳で、このメンバーがフィブリオのクロノス支部襲撃班だ。
 なお、本作戦には俺の部隊≠燻Q加する事になっている。クリードから市街戦の実戦データをせっつかれているのでな」
整然と無数に並ぶコンソールの機動音に混じり、黒服の怪物を通してクリードの下知が三人に飛んだ。
その正面にある巨大なスクリーンには、ライブの衛星画像が市庁舎を映していた。其処がこの町にある偽装されたクロノス支部で
ある事は、入念な下調べの末に明らかにした物だ。
「…へえぇ、結構いいトコですねぇ」
と、渡された資料を捲りながらまるで緊張の色無く答えたのはキョーコ。
「…ああ」
と、素っ気無く答えたのはリオン。
「しかしエグい事考えるねぇクリードは。わざわざ祭りの最中を選ばなくても良いだろうにさ」
クリードの容赦無さに呆れたのはエキドナだった。
「…浮き足立った今が攻め時と奴が判断した。それに、世論も上手い事動く」
フィブリオ市は世界有数の観光名所であるため、常に利益が生まれる。それに浪費が常のクロノスが喰い付かない訳が無い。
勿論全体から見てさしたる額では無いだろうが、それでもクロノスに対する挑発行為にはうってつけだ。
「…大盤振る舞いだねぇ、たかが支部に」
「実は少し前、黒猫(ブラックキャット)が此処に居る情報が入った。奴からは、『出来たらで良いから連れて来い』
 と言われているが……経験者として言わせて貰えば、まだ足らん位だ。
 話は以上だ、今の内準備に取り掛かっておけ」
「―――待ってくれよ」
まるで抑揚無く彼らに告げ、そのまま去ろうとした黒服の背中に、妙に感情がこもったリオンの声が追いすがった。
「…ファルセットさん、頼みが有るんだけど……」
振り返ると、彼は自分の分の資料に目を落としていた。
「開始の合図、ちょっとオレに預けて欲しいんだ」
彼の目は、とある少女の写真を捉えていた。

392 :AnotherAttraction BC :2006/10/27(金) 13:50:07 ID:tDn/dAMU0
「…本当、何て言ったら良いか正直判んないけど、ご免」
シンディと共にイヴを挟む形で座るリオンは、痛みを分かち合う様に深謝を重ねた。
その回数の多さと深さに、イヴも次第に警戒心を解いていく。
「……もう、いいよ。過ぎた事なんだから」
勿論嘘だ。だが、自分の事でも無い事でひたすら詫びを入れるリオンの今現在の誠実さに、彼へ僅かながら好意を抱き始めていた。
「そう言ってくれると助かる。…でもいつか、仇取ってやるからな」
しっかりと意志のこもった手が肩に置かれると、表に出ずとも安心感は募っていく。

「…ところで、実はあの眼帯とのやり取りを見てたんだけど……アイツ、酷いよな」
リオンはイヴの動揺を手で感じ取る。それをまずは一手≠ニ胸の内で噛み締める。
「要らない、なんてさ…ちょっと無いよな。お前の事なんだと思ってんだよアイツ、最低だ」
スヴェンを悪し様に言われるのは少し嫌な気分だったが、彼女は今とても反論する気になれなかった。
彼女もまた、心のどこかで思っている事なのだ。
その沈黙に呼応する様に、リオンの手がゆっくりと雑踏を指し示す。その先には、男が泣き喚く子供を強引に引っ張っていく所が有った。
彼はそれを苦々しく睨み付ける。
「あいつ等も同じだ、子供の事なんて何も考えないで自分の我侭ばっかり優先して、その結果子供がどうなったって何とも思わない。
 奴等が自分の我侭優先してるから、世界はこんなにムカムカする事が横行してて、その陰で沢山の子供が犠牲になる。
 お前だってそうだ。お前の気持ちなんて考えもせず追っ払って後は知らない、だからな」
イヴの肩に置かれた手に力が入る。まるで自分の意志を彼女に食い込ませる様に。
「…オレは大人なんて嫌いだ。身勝手で、怠惰で、乱暴で、貪欲で、屁理屈ばっかで、結局全然建設的じゃない、
 そんな大人が、オレは絶対に大嫌いだ。そしてそんな大人に、子供がどうにかされるのはもっともっと嫌いだ。
 …だから―――」
言い様イヴの両肩を掴まえ、強引に自分へと振り向かせる。
そして交錯するイヴの戸惑いとリオンの決意の眼差し。彼の双眸は、まるで吸い込まれそうな真剣さで吹けば飛びそうな彼女を
両手と共にしっかと捉えて離さない。そして、

「――――――…オレと、来ないか?」


393 :AnotherAttraction BC :2006/10/27(金) 13:50:53 ID:tDn/dAMU0
言葉は、心身ともに回避を封じられたイヴに真っ向から突き刺さった。
「…オレならきっと、お前を見捨てたりなんかしない。絶対に守り抜いてみせる。
 この世の全部の大人の我侭から、お前を守ってやる。お前を、あいつ等に好きになんかさせない、絶対に」
暖かい、と言うより熱さすら伝わる静かな激情だった。そしてそれは、孤独に苛まれ冷え切った彼女を芯から暖めていく。
自分でも甘い、とは思う。だが、彼女の奥底に訴える献身はこれが始めてであり、恐らくは最後だった。
情緒不安定な寂しさや嬉しさをない交ぜにして、貌が歪む。其処へなおも突き崩さんばかりに舌鋒が突き出された。
「お前だって、大人嫌いだろ? 知ってるんだよ、お前がどう言う形で生まれたのか、何もかも。
 そいつ等がお前を作ってどう言う風に見てたのかもな。判るだろ? そいつ等が基準なんだぜ? 大人って奴は。
 そんな奴等が好きか? 有り得ないだろ? お前は痛みも感じるし、心も有る。それを判ろうともしない奴等を、
 好きになれる訳無いだろ?
 …だけどオレは違う、オレはお前を判ってやれる。オレも――――…お前と同じ子供だからな」
反復の暇すら与えず、半ば衝動の様にイヴへと言葉を打ち込んだ。
響いた。彼女の何もかもを知り尽くした上での優しい言葉は。スヴェンに突き放され、雨に打たれ続けた子猫の様な彼女に、
拒む理由など何処に有ると言うのだろう。そして思うままに、イヴの唇が応じようと僅かに開く。
「―――むぐっ!」
それを閉ざしたのは、背後から彼女の頭を抱き締める様に口を塞いだシンディだった。
そして彼女は強引に、リオンからイヴを引き剥がした。
「ちょ……ちょっと、シンディ…」
この小さな体の何処にこんな力が有るのか、兎に角リオンから少しでも遠ざけようと彼女を無理矢理自分の背後へと廻す。
「…お前も……来るか?」
「いや!」
豹変に驚いたリオンが落ち着かせようと言葉を和らげるが、シンディは彼に貌と声とで完璧に拒絶する。
そして言い様、彼女はイヴの腕を引いて一目散に雑踏に消え失せた。
…後に独り残されたリオンは、二人が消えた方を感情の無い目でしばらく睨んでいたが、一息吐くや携帯を取り出した。
「………始めていいぜ」

394 :AnotherAttraction BC :2006/10/27(金) 13:53:03 ID:tDn/dAMU0
二人は人の波を掻き分け、ひたすらに走る。
「ちょっと、どうしたのシンディ! 何? 何が有ったの!?」
行動以上に驚くほど強い力で引かれながら、イヴは彼女を問い質す。
「駄目!」
彼女の何もかもが必死だった。
「お姉ちゃん、あの子といっしょに行っちゃ駄目!」
子供とは思えない迫力で、彼女はイヴを叱咤した。
断じてそれは、蚊帳の外にされた腹いせなどではない。確かな意志有る行動だった。
「見えたの、今!
 お姉ちゃん、あの子と行ったらあの子の言う通り泣かなくなる! ――――でも、笑わなくもなるから絶対に駄目!!」
「それって、どう言う…」
しかし言葉と走りが、突然の爆音に妨げられる。
「!?」「きゃっ!!」
あわや転倒しそうになるシンディを咄嗟に髪で引き寄せ、彼女が気付く間も無く支えた。
「…え? あれ?」
激しく地面に叩き付けられる筈だった自分の体が無事な事にも支える物にも驚くが、イヴはそれ以上に爆発音とそびえる黒煙の大きさ、
そしてこの街の地理とを合わせた、大体の概算で得た状況に絶句していた。
――――方向は幹線道路。使用された爆薬は軍事用のプラスチック火薬がおよそ三百キロ。
それらから分析され、導き出された結論は唯一つ。

…逃がさないつもりなんだ………みんなを


395 :AnotherAttraction BC :2006/10/27(金) 13:53:34 ID:tDn/dAMU0
――――そして現在。

「嘘でしょ…? まさかアタシら捜すのに街一つ巻き込む気なの…?」
「馬鹿言うな。話通りならそのクリード何とかは、極めて計算高くイカレてるクチだ。そんな無駄するか。
 …ただ、それは飽くまで目的の一つってトコだろうがな」
リンスの愕然の色濃い意見を、容易く否定と捕捉を混ぜて返すが、それでもスヴェンの貌は色を失っていた。
「………有り得ないわ、此処は観光地よ? 人の出入りが激し過ぎてチェックし切れないし、そもそも此処を攻撃したら
 どんなテロリストだって世論を敵に回すわ。それに、クロノスに大義名分を与える事に……!!!」
「悪ィが奥さん、あいつの頭は完璧におかしいんだ。元相棒のオレが言うんだから間違いねえよ
 …此処までイッちまってるとは思わなかったけどな」
元捜査官らしいマリアの言葉を苦々しく覆しつつ、トレインは愛銃の弾数を確かめる。既に彼の目は戦闘状態に入っていた。

―――ここまでの意見を元に推理した結果、この街に襲撃を仕掛けたのは星の使徒であり、勿論それはクリードの命令だと言う事だ。
有ろう事か彼らは、完全に焦土作戦のつもりで街の退路を塞いだのだ。
「でも………何であいつ…」
「……トレイン、悪いがこれ以上議論の時間は無いぜ。
 少しでも多くの人達を非難させないと、洒落じゃ済まん数を巻き込む事になる」
既に人々は、若干の集団ヒステリーを起こしかけていた。
「取り敢えず、手分けして近くの警備員たちに避難を頼め。携帯は回線が混乱して使えんだろうから、発信機モードにしておけ。
 戦闘は人的被害の安全確認が出来てからだ。だが最終的な判断はそれぞれに任す、急げよ」
きびきびと指示だけを置き土産に去ろうとするスヴェンだったが、
「…スヴェン、イヴちゃんは!?」
リンスの呼び掛けが、駆け出そうとした背中を無理に引き止めた。
スヴェン自身気に掛けていた事だが、間の悪い事に離れ離れとなった今に限って事は発生し、しかもシンディまで居ない。
弱り目に祟り目でもまだ足らない様なこの状況で、正直彼自身が答えを誰かに求めたい気分だった。
…一応候補は無くも無いが、今彼が考えているのはなるべくなら出したくない発想だ。然るに、その上で答えを求められれば、
最早それを単なる腹案に止める事など出来はしない。
――――――言葉は、観念の溜息と共に洩れた。

396 :AnotherAttraction BC :2006/10/27(金) 14:08:37 ID:tDn/dAMU0
――――――言葉は、観念の溜息と共に洩れた。

「…シンディは見掛け次第保護する。だが、イヴは放っとけ」

尋ねたリンスも、聞いたマリアも、スイッチを切り替えたトレインも、それには流石に驚きを隠せなかった。
「マジか……スヴェン」
「俺は至って大真面目だ。ひょっとしたらこの危機は、あの子にとっていい機会かも知れん」
肩越しに見せた貌に、心底の迷いは僅かも見られなかった。
「アンタ……どこまで…!!」
「勘違いするな。これはイヴに対しての最後の譲歩みたいなモンだ、だから敢えて放っておかなきゃならん。
 これから先も戦う為に生き残るのか、それとも俺の予言通り死ぬのか、決めるのは結局イヴだ。間違っても俺達じゃない」
何とも身勝手且つ無茶苦茶な話だが、悔しい事に誰一人まるで言い返せなかった。
そうして固まるマリアに、彼は何かを投げ寄越す。応じて受け取って見れば、それは彼が手首に仕込む予備の銃だ。
「え…?」
「もしイヴが無事じゃなかったら、悪いがマリア、そいつで俺を殺してくれ。なに、ロイドの仇なら安いもんだろ?」
まるで些末事の様に、彼は自分の命を平然と投げ捨てた。
「スヴェン!!」
そんな彼にトレインが声を荒げ、胸倉を捻り上げる。
「お前…オレに云った事忘れたのかよ。オレは駄目でお前は良いなんて、そんな理屈有るか!!」
かつて、クリードとの死闘の果てに半死半生となった己を叱咤した男を、トレインはその時の様に吠え立てる。
無謀を禁じた癖に自らも捨て身に興じる事は、流石に許し難かった。しかし、
「俺は、その時俺の判断のケジメを付けるだけだ。お前と一緒にするな。
 ………心配するな、もうあの時≠ンたいな事は無しだ。時間が惜しい、お前も急げ」
言葉少なにトレインの手を振り切ると、彼は混乱の中に飛び込んで消えた。
…しばし呆然としたかったが、彼の言う通り時間は確かに惜しい、と言うより少ない。
「―――オレ達も急ごう!」

397 :AnotherAttraction BC :2006/10/27(金) 14:10:01 ID:tDn/dAMU0
―――――同刻。市街南部、市庁舎前。

今や街の至る所がこうである様に、此処もまた混乱の様相を呈していた。
或る者は狂乱の叫びと共に、或る者は混沌故の怒号を従えて、また或る者は無数の疑問符を散らばせて、全てが麻の如く乱れた。
そしてそれを、屋根の上から睥睨する影ならぬ影達。見えない訳では無いが、その輪郭も細部も何故か明らかにならない。
確かな像とならず、まるで幾つもの不自然に切り取った空間の様だ。
「…寄る辺無き者どもの浅ましきかな、ですな。隊長」
その内の一つが、酷く大きな影に妙に格式ばって呆れた様に云う。
「……それよりも、内部のスキャンは済んでいるのか?」
「は、武装及び防犯設備は概ね自動で生きておりますが、人員そのものは普段より少ないかと。
 しかし予測される損耗率は三%未満、こちらの人的被害は限り無くゼロに近い物と思われます。
 ―――快勝は間違い有りませんな」
自信たっぷりに言った影に、大きな影から何かが勢い良く伸びて掴まえた。
「俺は冥加任せな返事など聞いていない。戦場では誰でもすぐに死ぬ、俺も貴様もだ。
 チームで動く以上、手綱を緩めて死ぬのが貴様だけでは無い事を牢記しろ」
「………す…済みません、隊長」
「其処は『了解』だ。俺は行動以外の謝罪を認めない、貴様の忠は働きで示せ」
「りょ……了…解…」
ようやく伸びた何かが離れると、影は俯き激しくえづく。どうやら喉を押さえられていたらしかった。
「総員、光学ステルス解除」
大きな影の平板極まる号令に合わせ、彼等の姿を不明確にしていた光学迷彩が解除される。
其処に現れたのは、総身を黒エナメルに光らせる薄手のボディアーマーに覆った兵士達だった。
張り付くほどに密着し、それを更に緊縛する様に戦闘用備品のホルスターを全身に巻き付け、頭に当たる部分には覗き窓も無い
さながらバケツを被せた様な兜がしかと鎮座する。それらはまるで、辛うじて人型を模した奇怪な人形だった。
没個性を通り越して却って非人間的な集団の中心で、あの黒服の怪物は轟く様に宣言した。
「―――襲撃…開始!!!」

398 :AnotherAttraction BC :2006/10/27(金) 14:10:31 ID:tDn/dAMU0
―――――市街西部幹線道路、爆破地点。

完全に破壊され、単なる瓦礫に成り果てた道路を背景に、最新型のOICWを抱えた兵士達が街の混乱を見入る。
戦闘服もまた最新技術著しい。微細工学、人体力学、電子工学を人道的にマイナス方向に極めさせ、軽量並びに高防御力、
武装を失っても戦えるようその内にも武器を仕込ませ、しかも電子戦にも仔細無く対応出来る。
かつて、デュラムが部下達に着せた戦闘服と同様でありながら明らかに上位技術の代物だった。
「リオン様から通信が有った。『行動開始、程度は任せる』だそうだ」
指揮官の言葉に、兵士達は思わず下卑た微笑を零す。
戦場に於いてはありとあらゆる悪徳が合法となる。それを上官自ら許しを下したなら、彼等の浅薄な欲望は容易く理性を引き千切る。
ましてや此処は観光地、しかも祭りの真っ最中。武力に訴えたなら獲物はそれこそ選り取り見取りだ。
「…親方の命令とあっちゃ、仕方無ぇよなあ…」
口調に反し、彼らは一様にこれよりの展開に笑いが止まらなかった。

―――――市街東部、大通り。

「キョーコ様、ご指示を」
「…ほえ?」
市民に偽装した彼女の手勢が、屋台の菓子やら何やらをしきりに頬張る彼女に指令を求めた。
「ですから、行動の御指示を」
「へ? …ああ、ええ」
混乱の狂騒に駆られた民衆を横目で見ながら、彼女は状況を理解していないのか気の無い生返事を返すだけだった。
一同その真剣みの無さに少し苛立ったが、それでも一騎当千の道士であり上官である事実に変わりは無い。止む無くそれを飲み込んで
粛々と彼女の指示を待つ。
「――――――帰る」
「…は?」
意図の見えない言葉に、尋ねた兵士は呆然とした。
「だから私、帰ります。せっかく祭りをエンジョイしてたのに、いきなりこんな事になってちょっと萎えっていうか
 引くっていうか。とにかく、興醒めなんですよねぇこういう系って。
 だからもうつまんないから、私先に帰ってますね。あぁ、皆さんは好きにしてていいですよ」
勝手に言い重ね、彼女はすたすたと歩き出す。
「い……いえ、あの!」
呼び掛けにも一切応じる事無く、彼女は人の波に消えていった。

399 :AnotherAttraction BC :2006/10/27(金) 14:12:22 ID:tDn/dAMU0
―――――市街中心部、オープンカフェ。

「……判った判った、じゃあアンタ達は私の指揮下に就きな。間違っても私に近寄るんじゃないよ。
 ま、適当に暴れておけば良いさ、此処の破壊そのものは目的じゃないんだし」
『…は? それはどう言う…』
返信を待たず、エキドナは通信を切った。
流石にこの混乱では、ただ一人オープンカフェで悠々とミルクティーを愉しむ女一人を気に止める輩は居ない。
―――そう、彼女には侍らせるべき部下が居ない。自身の道がそれを補って余りあり、尚且つそれを巻き込むほど強力だからだ。
「…さぁて、誰にしたモンかねぇ」
彼女の視線の先には、天板の歪んだテーブルが有った。

400 :AnotherAttraction BC :2006/10/27(金) 14:36:13 ID:tDn/dAMU0
降りて来てくれ文章の神様(挨拶……風な嘆願)。
もう何? 他の皆さんの読んでるとスゲエと思う反面毎回いっぱいいっぱいの俺ってどうよ? なNBです。
個人的には、小札零みたいなキャラを自在に操れるスターダスト氏が凄ェ羨ましいのですが。

今回から星の使徒総出…とまでは行かなくとも、道士が全員出揃いました。
さてここで誓約をば一つ、

『リオンとエキドナ、余りにも強過ぎるので道変更!』

どうも俺は原作通りにすると、敵の周囲を真空とか大型冷蔵庫か檻に
ブチ込むとか考えてしまうのでつい……ま、それだけですが。
因みに、相撲取りとサルを出さないのもそれです。
クリードコピーとか、重力逆操作で上空に吹っ飛ばすとか考えると………ねえ?
まあ、あんまり幻滅する物にしないつもりでお送りしますので一つどうか。
と、言う訳で今回はここまで、ではまた。

401 :作者の都合により名無しです:2006/10/27(金) 16:39:18 ID:YETUsR3g0
ウホッ!

402 :作者の都合により名無しです:2006/10/27(金) 18:04:10 ID:UZygcD6U0
NBさんお疲れ様です!

いよいよ動き始めましたね、星の使途たちのテロ、革命が。
大掛かりで大胆だけど、意外と綿密で、クリードは恐ろしいですね。
でも個人的に今回のツボは、ガキの分際でホスト並みに口が動くリオンかなあw


403 :作者の都合により名無しです:2006/10/27(金) 21:25:37 ID:F9jwNy3H0
お久しぶりですNB氏。

今回はリオンとイブのやり取りがいいですね
リオン、優しくて真摯な表面上の態度とは裏腹に腹黒いな。
原作ではこの2人ってまとまったっけ?
道使う連中は強すぎて困りますな。セフィリアはもうすぐ?


404 :作者の都合により名無しです:2006/10/28(土) 07:39:54 ID:5kEIMcIJ0
俺はスターダスト氏の文章見るたびに自信無くすがなぁ・・

いよいよバトル、しかも大掛かりな決戦ですか。
バトルと同時にイヴとスヴェンたちの仲直りも見所ですね。

405 :作者の都合により名無しです:2006/10/28(土) 07:55:48 ID:j+1CIZ940
>>404
安心しろ、俺もだ
ネタかぶってるから特にな!

>NBさん
さすがです
でも確かにパワーバランスほど難しいもんはないですよねぇ…

406 :作者の都合により名無しです:2006/10/28(土) 09:14:54 ID:5kEIMcIJ0
てst

407 :戦闘神話:2006/10/28(土) 09:21:17 ID:5kEIMcIJ0
part.9

「…まてよ!」

「海皇ッ!」

半身を起こしてこちらを睨んでくるピスケス、どうやら先ほど撫でてやったときに脚を痛めたようだ。
口の端から血を零しながらも立ち上がるアリエスの声が、ややくぐもっているのは臓器を痛めたからだろう。
そんな状態でも二人ともまだ声が出せるという事は、すこし加減をし過ぎたか。と思うも、

「希望の闘士、その面目躍如といったところか?
 決して諦めないその姿勢は見事だ…」

声音には純粋な歓喜。
海皇は不撓不屈の若き聖闘士に祝福を授けたい気持ちで一杯だった。
打ちのめされても屈しない。諦めない。貴(たか)く尊(たっと)く猛(たけ)き不撓不屈の魂。
それは英雄の資質だ。

「だが、詰みだ。
 薔薇の乙女は我が手に落ちるぞ?」

足掻け、全力で足掻いて見せてくれ。
足掻いてもがいて抗って、この海皇に一矢報いて見せてくれ。
あの五人の後嗣(こうし)というのなら、あの英雄たちの後嗣というのなら、聖闘士星矢の後進であるなら英雄であってくれ。
アテナによって奪われた誇りある敗北を私に授けて見せろ。
海皇の小宇宙の脈動が、彼の歓喜が空間を軋ませ、水銀燈を慄かせた。
黄金聖闘士ふたりの気圧を受けても虚勢を張って見せた銀の乙女が慄いていた。
それがアドニスには許せない。

408 :戦闘神話:2006/10/28(土) 09:23:38 ID:5kEIMcIJ0
どんな状況でも気高くして見せてくれと願うが故に、心をかき乱した。
美しいものは負けてはならぬ、慄いてはならぬ、退いてはならぬ、何故ならば美しいから。
この上なく美しいものは、あの叔父のように裏切ってはならぬ、わが師の様に高潔な魂を掲げ続けなければならぬ。

「ポセイドン!貴様に絶対一撃くれてやるぁあああああ!」

アドニスの想いは絶叫となり、絶叫は拳となり、拳は茨を生み、茨は鞭と化してポセイドンに向かって疾走する。
貴鬼もまた疾駆した。
貴鬼の到達が早いと見て、貴鬼にポセイドンの意識が向いた刹那、貴鬼は空間転移を敢行した。
その間隙を突き、アドニスの茨が槍と化してポセイドンに襲い掛かる。
羽虫を払うようにして茨を消滅させるのと、貴鬼が水銀燈を抱えてポセイドンの間合いから離脱するのは同時だった。

「チェックメイトにゃまだ早いッ!」

貴鬼の叫びと離脱は同時。そして貴鬼からは光速拳が、アドニスからは茨の矢が向かい来る。
黄金のクロスファイア、それでも海皇は怯まず、引くこともなく、倒れない。
むしろ、さらなる歓喜をその相貌に滲ませる。

「それでいい…。
 それこそが聖闘士だ。
 立ちはだかる全てに遍く絶望を与えて回る我が愛しき御敵よ!」

小宇宙の爆発的な燃焼は衝撃波と化して若き黄金聖闘士ふたりを吹き飛ばした。
歓喜!歓喜!歓喜!歓喜!歓喜!
水面は海皇の歓喜に応えて踊り狂い、アドニスを面白いように翻弄した。
先ほどの水の弾丸はアドニスの聖衣の間隙を縫って彼の右太ももを貫通し、その威力でほぼ千切る寸前であったのだ。
故に、彼の最大の持ち味である機動力を大きく削いでいた。

409 :戦闘神話:2006/10/28(土) 09:31:46 ID:5kEIMcIJ0
さらに悪いことに大動脈を傷つけたらしく、止め処なく出血は続いていた。
常人ならあと十秒も放っておけば、確実に死ぬ。
聖闘士であっても戦闘続行は不可能だろう。
故に、アドニスは逡巡しなかった。
小宇宙で鞭状に変化させた薔薇で、傷ごと締め上げ、体に繋げたのだ。
想像を絶する激痛にかっと目を見開き、歯を食い縛って絶叫を堪え、脚を体へと再接続させた。
小宇宙が通った薔薇さえ用いれば、千切れかけた肉体でも平常時同様動かすことは出来る。
ただ、想像を絶する激痛に耐えさえすればいい。
激痛に耐えて視線を前方に向けると、海皇に蹴り飛ばされた親友が一直線に向かってくる所だった。
思わず両手を前に突き出して彼を支えると、右足の絶叫が全身に響き渡った。
余程の威力で蹴り飛ばされたのだろう。アドニスごと吹き飛ばされたのだ。

「こンの馬鹿貴鬼ィ!
 ピンポン玉みたく飛ばされやがって!」

だが、絶叫を体の外に出すほどアドニスは脆くない。やせ我慢と空元気は長い付き合いだ。
それに、受け止めた時に覚ったが、貴鬼もまた身体内部に負傷を負っている。
聖衣でさえ殺せなかった衝撃、と言うよりは恐らく聖衣を浸透する類の打撃で、
肋骨は粉砕され、折れた骨が臓器を傷つけているのだろう。
食いしばった口の端から流れる尋常ならざる出血がそれを物語っていた。

「うるせえアホニス!
 親友受け止めるくらいの根性だせ!」

軽口たたいて空元気。貴鬼もアドニスも根の部分で漢だ。弱音は吐かない。
だからこそ立ち上がる。

410 :戦闘神話:2006/10/28(土) 09:33:56 ID:5kEIMcIJ0

「燃えろ…ッ!」

だからこそ、燃え上がる。

「僕のッ!」

だからこそ、敬愛する師たちのように、

「オイラのッ!」

だからこそ星矢たちのように、

「小ぉ・宇ゥ・宙よぉおおおおッ!!」

眠れる第八の感覚へと到達する事が出来たのだろう。
神々の領域への侵食。
開闢の残滓は、人をその領域へと押し上げる。

「流石だな、ちょっと突いてやっただけで其処まで辿り着いたか。
 その感触を忘れんことだ。これからの戦いには必須になる」

海皇の言葉は流れ、若き金羊と甲冑魚は閃光となった。
二人そろっての光速突撃。だが、その速度は先ほどの比ではなく、明らかに一段階速いものだった。
エイトセンシズの覚醒とは、つまりは精神が肉体を支配することに他ならず、それは神の領域へと足を踏み入れることである。
更にもう二段階上ることが出来るのならば、神々の大いなる意思に触れる事となり、それは最早人ならざる者となる。
史上、その領域へと到達できた者はわずか三人しか居ないが、
其処へと辿り着きかねない人間をポセイドンは五人も知っている。

411 :戦闘神話:2006/10/28(土) 09:37:33 ID:5kEIMcIJ0
掛け値なしの英雄。ドラゴン、キグナス、アンドロメダ、フェニックス。
そしてペガサス星矢の五人。
かのヘラクレスに比肩する大いなる魂の息吹の中に、その奇跡の胎動を知ることが出来たのは、ポセイドン最大の歓喜だった。

そして、二人の鉄拳はポセイドンの肉体に突き刺さった。
あまりの光速の衝撃に、拳撃の衝撃がポセイドンの肉体を貫き、あたかも金の翼を生やしたかのようだ。

「褒美だよ。
 君たちはついにその領域へと手をかけた。
 勝利を甘受するがいい…」

だが、胸に突き刺さる鉄拳など無いかのようなポセイドンの声に、貴鬼もアドニスも慄いた。

「勝利…だと?」

戦慄と疑問に染まる両者の言葉に、ニっと笑う、ポセイドン。

「言っただろう?
 私に一撃中てたら退くと」

海皇の歓喜は益々濃くなり、水面はさらに荒れ狂う。
もはや、大時化どころではない。怒涛の如きだ。

「舐めて…ッ!」

貴鬼の叫びは音にならずに彼の口中で霧散した。
海皇の睥睨で、思わず竦んだのだ。

「舐める?当然の話だ。
 この程度の君ら相手に気張っても虚しいだけだ」

412 :戦闘神話:2006/10/28(土) 09:42:01 ID:5kEIMcIJ0

そこに超然としたポセイドンはなく、神話に謳われる激情の王がいた。
歓喜を一時抑えた、赫怒に染まった王の言葉だった。

「優先度の違いだ。
 英雄が育つのならば私は何度でも引き、何度でも敗北を甘受しよう。
 高貴な蛮勇を振るう英傑が育つのならば、この海皇が総身に全力を漲らせるに値する勇者が産まれるのなら、
 私はその者の為に如何様にも働こう。
 何かを打倒した者は、何かに打倒されなければ成らない。
 かつてギガスを打倒した私たちを打倒するのが人間であるのならば、私にとってはこの上ない歓喜だ。
 無論、私も只では滅びぬ。
 明日を拓く勇者の血潮をこの身に浴びて、滅びに向かってひた走る獣となる事を、私は覚悟している」

狂気の沙汰だ。だが紛れも無く海皇は正気だ。

「アリエス、ピスケス、貴様らは英雄の萌芽だ。
 僅かに阿頼耶識を垣間見たに過ぎん、孵化を始めた雛だ。
 それではまだ私には敵わぬ。私に敗北を与えることなどできん。
 あのペガサス星矢のように食い下がって見せろ、その為に今私は貴様らに勝利を与える。
 辞する事は許さぬ、甘んじて受けろ」

貴鬼もアドニスにも、そして水銀燈にも信じられないが、海皇は激情に身を任せていた。

「阿頼耶識の手綱を手放すな、次に見えるときにその荒馬を乗りこなしていろよ?
 ぬか喜びはもう沢山だ」

そうでなければ捻り潰す。言外にそう言い残して海皇は水面に溶けた。
同時に、貴鬼もアドニスも水面に落ちた。
完敗だった。

413 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2006/10/28(土) 09:46:31 ID:5kEIMcIJ0
銀杏のおいしい季節になりますね、銀杏丸です
茶碗蒸しなんて良いですねぇ

>>339さん
黄金聖闘士は最強。前作はその思いだけで書いてましたんで、半ば僕の意地だったりします
やられてもあきらめない、立ち上がる、それこそが星矢の魅力です

>>341さん
サガ・カミュ・シュラ相手に一歩も引かず、禁断の技まで使わせた偉大なる先達
彼の壮絶な死闘と覚悟は、後進の星矢たちに受け継がれ、そして次世代へとつながっている…
みたいな感じを出したいのですが、いかんせん不肖銀杏丸未熟であります…

>>342さん
戦闘は腕っ節だけじゃない、とだけ
エドの真価はその不屈の闘志と機転にあると思ってますので
「扉」を開いたりできるのは今のとこ、彼だけです

>>ふら〜りさん
実際のギリシア神話でもアレス同様カマセの役割(主に息子がですが)が多いのでせめて拙作では…
と思っているのですが
高貴さと威厳、出ているのでしょうか?自分ではまだまだ足りないなぁと思っております
貴鬼もアドニスも誇りを持つことは大事ですが、とらわれすぎるのも考え物だったりします


414 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2006/10/28(土) 09:51:00 ID:5kEIMcIJ0

>>スターダストさん
銀杏丸解釈が多分に入っておりますので、そういっていただけると嬉し恥ずかしといった気分です
ギリシア神話のアテナはかなりエゲツナイですし、アフロディーテなんてホントにヴィッチですし
ゼウスの荒淫ぶりは目を覆いたくなりますし、星になるまで女の尻追っかけまわした海皇の馬鹿息子もいますw
ヘラクレスの十二の難行なんてホントに痛々しくなります、ヘラもかわいそうな人なんですけど…
そういった神々を星矢世界観で解釈したのが本作であります
今後登場する神様にご期待ください
>味方に
さてはて…今後の展開をご期待をば、としかいえないっすw
>パピヨン
常にアッパーテンションの彼の鬱屈…
僕にはちょっと書きづらいので期待大です
きっと彼は高く高く舞い続けるのでしょう、その無限に等しい寿命を使いながら

>>さいさん
「少佐」ことモンティナ・マックスもエロ時代から比べると
ずいぶんと太ったなぁと感慨にふけることしきりです
平野先生の分身ともいうべき彼は、いったいどこへと行くんでしょうねぇ…

以上、銀杏丸でした
次回part.10でお会いしましょう

415 :作者の都合により名無しです:2006/10/28(土) 12:29:23 ID:i8qYAfiH0
銀杏丸さん乙

この物語って貴鬼もアドニスが星矢サイドの主役なの?


416 :作者の都合により名無しです:2006/10/28(土) 23:29:36 ID:vzwG9dUR0
銀杏丸さんお疲れです。

貴鬼もアドニスも、青銅でありながら究極のセイントに上り詰めた
星矢たちの魂を受け継いでいるようですね。
まだ序盤っぽいですがこの物語はいったいいつまで続くんだろう?

417 :作者の都合により名無しです:2006/10/29(日) 00:32:33 ID:UI1Kmr4y0
インキンがんばれ。
もう少しペース上げてくれると嬉しいがな。
あと鋼の錬金術師チームが最近出ないな。

418 :『絶対、大丈夫』:2006/10/29(日) 11:09:23 ID:HUHfj9W60
「大丈夫、小狼くん!?」
「ああ、なんとか……な……」
辺りがもうすでに暗闇に包まれている、夜。
そこに、茶色い髪を短く切った、緑色の瞳の、少女。茶色い髪に、同じく茶色
い瞳の、少年がいた。
木にもたれかかって苦しそうに顔をゆがめる少年を、少女が心配そうな顔で
見つめる。
少年の服、特に腹のあたりが赤く染まっている……血だ。
少年が、痛みをなんとかこらえながら、立ち上がった。
「さくら……はやく、この場から……逃げ……ろ……」
「ダメだよ、小狼くんを置いて、逃げるなんて……」
「いいから、早く!」
言い争う、二人。
その二人に、声をかける者が、いた。
「おや、こんなところにいたのかい?」
「!?」
声がした方を振り向くと、そこにいたのは黒装束を着た、黒い髪に、黒い目の
少年が、いた。少女たちと年齢はさほど変わらないだろう……しかし、その目に
はその歳特有の明るさなどが微塵も感じられない……それどころか、いかなる
感情も感じる事が、できない。
そして、その口から、口調だけは軽く、しかしやはり感情を感じる事のできない、
声が紡がれる。
「さて、もうそろそろ殺しちゃおうかな……」
「だめですよ、フォルテ。」
突然聞こえる、平坦な、少女の声。
今度の声の主は、2人よりも3,4歳くらい歳は下くらいの少女であった。全身
を緑色の装束で包み、さらに髪の毛と目の色も、緑色である。
「私たちの目的は、この二人を<組織>に取り込むこと。殺すことではありませ
ん。」
しかし、先程の黒装束の少年と同様、その顔や声から、感情を感じ取ること
ができない。

419 :『絶対、大丈夫』:2006/10/29(日) 11:12:06 ID:HUHfj9W60
「別に、殺してから力だけをもらえばいいだろ。昨日の二人だってそうしたんだ
からな。」
「だめです。昨日の二人とは違い、この二人はかなりの力を有しているらしいで
すから、もし殺せば、その力が暴走する恐れも……」
と、平坦な声で続ける二人の会話に少女……木之本桜は、恐怖していた。
こんなにあっさりと、『殺す』などという人間…今までに見たことなどなかった。
本当に殺されるかもしれない……そのことへの、恐怖。
そんな彼女に、黒装束の少年の視線が向けられた。
「………まあ、そういうことだ。殺しはしないよ。……まあ、抵抗するようだった

らそれなりに痛い目にはあってもらうけどね……」
と言いながら、どこからともなく現れた日本刀を握る。そして、それを構えて、さく
らのもとにじりじりと歩み寄る。
さくらは、恐怖のために、動けなかった。
「ふふふ……その脅えた顔が、またいいよな……」
「貴様……」
じりじりと歩いてくる黒装束の少年とさくらの間に、少年……李小狼(りしゃおら
ん)が割って入った。
「へえ、その怪我でまだ戦おうっていうのかい?」
黒装束の少年は、小狼の負っている傷を、じっくりと観察する。無論、戦える
ような状態では、決してない。
「まあ、いいや。軽く片付けて……」
と、少年が言い終わると同時に、
ズガアアァァン!!
という爆発音と共に、
「!?誰だ!」
光の柱が、彼の足元に、着弾し、あたりに爆風と、砂煙を撒き散らした。

420 :『絶対、大丈夫』:2006/10/29(日) 11:14:58 ID:HUHfj9W60
緑色の髪の少女が、その光の柱が発射された方を向いた。
「どうやら、私たちがここにいることが、知られたみたいですね。」
「ちっ、時間切れってことか!」
舌打ちしながら、少年はさくら達のほうを再び向く。
「ふん、その力、いつか俺たちのものだからな!」
と言い残して、少年と少女は、ここから消え去った。まるで、空気に溶け込む
ように。緑と、黒の光を残して。
ようやく危機が去ったのに気がゆるんだのか、小狼は崩れるように、その場に
倒れこんだ。
「小狼くん!?」
さくらは急いで彼の元へすぐ駆け寄った。
「大丈夫?」
「あ、ああ……」
とりあえず小狼はそう答えるが、息は荒く、表情も苦痛に歪んでいる。
────ザッ
という、砂がこすれる音が、突然あたりに響き渡った。
「!?」
それを聞きつけたさくらは、脅えたようにびくっ、と体を跳ね上げて、恐る恐るそ
の音源の方を向く。
そこには、白い服を着た、茶髪の、手にはまるで魔法使いの杖のようなものを
持った、少女がいた。歳は、自分たちとそうは変わらないだろう。その茶色い
髪の毛を、サイドポニーにしている。
その少女は、さくらと小狼に向けて、こう言った。
「私は、時空管理局に所属している、高町なのはです。貴方たちを保護しに
来ました。」

421 :『絶対、大丈夫』:2006/10/29(日) 11:17:04 ID:HUHfj9W60
「時空……管理局?」
さくらが、聞き覚えのない言葉を、そのまま返した。
それに対して、どうやら小狼はその単語について少なからず知っている様子
である。
「時空管理局か……わかった。」
小狼は、そういい終わるとゆっくりと立ち上がる。そして、さくらの方を向いて、
言った。
「あいつについて行こう……少なくとも、俺たちの敵ではない。」



それが、『この世界』で起きた事。
そして─────



422 :『絶対、大丈夫』:2006/10/29(日) 11:18:32 ID:HUHfj9W60
「どうやら、侵入者のようだな。」
金髪の少女が、高級そうなソファから飛び降りた。
夜は暗闇に包まれて、唯一の明かりは月の光のみである。もうそろそろ寝よう
かと思ったときに、気配を感じ取った。
さまざまな因果により、吸血鬼の真祖でありながらも、ごく普通の女子中学生
として、500年以上も生きているのにも関わらず13、14くらいの生徒に囲ま
れ、んでもってこの学園の警備員までさせられてしまっている。最初はよくサボ
っても居たが、いまでは学園に侵入者が出るたびに、習慣のようにこうして、一
応は見に行くようになっていた。
どこからか現れた黒いマントを纏い、そして傍らに立つ、ロボットっぽい……と
いうよりロボットにしか見えない少女に声をかける。
「いくぞ、茶々丸。」
「了解しました、マスター。」
ロボット少女の返事を聞いて、上機嫌そうにその金髪の少女……エヴァンジ
ェリンは笑みを浮かべる。
どうやら、今回の侵入者は大物だ。




それが、『この世界』で起きた事。
そして────




423 :『絶対、大丈夫』:2006/10/29(日) 11:24:35 ID:HUHfj9W60
「あ、はい。解りました。気をつけます。はい、ごくろうさまです。」
とある家の寝室───勉強机や、漫画の収まった棚があることから、おそらく
子供部屋だろう───で、通信機のようなものを耳(があるようにはとても見え
ないが)に当て、青いだるまか、はたして狸か、奇妙な物体が話をしていた。
彼(と言い表すのは適切だろうか)の名はドラえもん。この部屋の持ち主である
野比のび太をなんとかして優等生に仕立て上げ、未来を変えようとしている、
22世紀のネコ型(には見えないが)ロボットである。
彼は、通信機の電源を切ると、ため息をついた。
と同時に、ドタバタと足音が聞こえる。これはいつもどおりのことなので、特にドラ
えもんは気にしない。
「ドラえもん!」
と、自分の名前を呼びながら、一人の少年が部屋に入ってきた。これもいつも
のことなので、特に驚きはしない。
ドラえもんは、「やれやれ」と、いつもと同じ口調で、少年に聞く。
「どうしたんだい、のび太くん?」
どうせいじめられたんだろうとあたりをつける。案の定、当たっていた。
「聞いてよ、またジャイアンが〜!」
のび太は、美少年……というよりも美少女に近い整った顔の少年である。い
まだに変声期も迎えておらず、声も女っぽい。それに性格も優しいが、反面
臆病であり、運動も勉強もいまいち冴えないので、いじめの対象によくなってい

る。(あくまで俺の偏見です。今度、俺バージョンののび太をお絵かき掲示板
で描いてみようかな)

424 :『絶対、大丈夫』:2006/10/29(日) 11:30:34 ID:HUHfj9W60
ドラえもんは、のび太の愚痴を、半ばどうでもいいように聞いていた。
問題は、さきほど通信機で話していた、内容である。
それをいつのび太に話すか、それが目下の悩みであった。


それが、『この世界』で起きた事。
そして────


さまざまな『世界』は、交わり……
会うはずのない人物が、出会って……
それでも、世界は変わらず動く。未来へと。


『絶対、大丈夫』────開幕。


425 :白書:2006/10/29(日) 11:39:17 ID:HUHfj9W60
どうもはじめまして、白書というしがないSS書きであります。
さて、突然ですが、『絶対、大丈夫』。メインはCCさくらとネギま!、な
のは、ドラえもんになる予定です。それ以外にも大量の小ネタなども用意し
ております。

>SS職人様たち
いつもお疲れ様です。
これからも、見る人を楽しませてくれるSSを書いてください。
特に、サマサさんの作品は楽しみです。


では、

426 :作者の都合により名無しです:2006/10/29(日) 15:22:10 ID:UI1Kmr4y0
新作乙。
李小狼とかは知らないけど、ひさしぶりのドラえもんは期待してる
しかし、メジャーなのはドラだけだなw
小ネタはわからんかもw

427 :作者の都合により名無しです:2006/10/29(日) 17:30:17 ID:5KPcNtP4O
>>426
さくらもそこそこメジャーな気するけど

428 :作者の都合により名無しです:2006/10/29(日) 22:48:22 ID:2A5ldG/k0
>>426
テメコラ、さくらタソをしらねぇとはいい度胸してんじゃねぇかコラ
今すぐTV全部と劇場版二作みてこいやコラ

「大丈夫だよ、ぜったい、大丈夫だよ」をしらねぇのかコラ
「レリーズ!」をしらねぇのかコラ


429 :作者の都合により名無しです:2006/10/29(日) 22:55:10 ID:ZRX5W9re0
さくらのSSがバキスレで読めるのかw
そういえば単独板あったよね、さくらって。今もあるのかな?
白書さん頑張って下さい。

そういえば以前になのは書いてた人、消えちゃったなあ

430 :作者の都合により名無しです:2006/10/29(日) 22:58:48 ID:2A5ldG/k0
>>429
あそこは行くんじゃねぇコラ
ロリコンの隔離所だからまともなさくらタソのファンは行くんじゃねぇコラ

431 :永遠の扉:2006/10/29(日) 23:52:05 ID:GZv5AFKq0
第007話「みんなでお食事」

客足が遠のいたとはいえそれなりに忙しいお昼時をすぎると、バイト少女は一息ついた。
銀成市にはある意味でとても有名なハンバーガーショップが存在する。
名をロッテリや。
一時期、銀ピカの全身コートや蝶マスクのタイツ男、中国風の巨漢2人などなど、筆舌に尽く
し難い変態どもの巣窟となっていたため、「変人バーガー」という蔑称の方が市民になじみ深い。
さて、お昼をすぎたとはいえやらねばならんコトはたくさんある。
例えばハンバーガーを入れる袋。
これは大きさに応じて4号袋(たい)、6号袋、10号袋とそれぞれ分かれているが、この内6
号袋はかなりの頻度で使用されるので、消耗が激しい。
うっかりしていると折角ハンバーガーができても入れる袋がないという事態を招き、お客様へ
の円滑な商品引渡しが不可となるので補充はこまめに行わなければならない。
あと、シェイクの容器とかポテトの袋とかも補充しなければならないし、ハンバーガーの包みを
留めるテープの残量も見なければならない。
焦がしたパティ(ハンバーガーの肉のコト)など調理に失敗した材料は、ロス一覧という用紙
にその数と名前を記録をつけなければならないし、ああ、パティやチキンなどの材料だって
補充しなければならない。レンジの掃除やフライヤーの油の入れ替えもある。
などと細々展望していてもお客さんは来るもので、バイト少女はにこやかに応対した。
「こちらでお召し上がりますか? それともテイクアウトで?」
彼女は新撰組三番隊組長斉藤一ばりにくぐってきた修羅場が違う。
営業スマイルはさまざまな諦観や涙や苦悩、屈辱や怒りうずまく戦場の中で洗練され、いま
やフッ切れつつも重厚な完成度を誇っている。
「こちらで」
と返答したのは長身に学生服をまとった見目麗しい短髪の青年だ。
傍らには栗色の髪を肩まで伸ばした愛らしい少女が同伴。
きっと部活帰りにデートという所だろう。
両名ともいやに緊張した雰囲気なのがまた微笑ましい。

まひろはいざ食事を始める段になっても口を波線状にもにゃもにゃさせつつ視線を斜め下に
落とし、実に気恥ずかしげだ。
頬はほんのり赤く、ドリンクを運んだバイト少女はクスクスと笑った。

432 :永遠の扉:2006/10/29(日) 23:52:39 ID:GZv5AFKq0
秋水が自分に好意を寄せていると考えないまひろでもない。
他人の恋愛──主にカズキと斗貴子のだが──に何かと黄色い声を上げるのを見ても分かる
ように、まったく恋愛に鈍感なタイプではないのだ。
ただ、いざ自分が当事者になると何をやっていいか分からない。
この辺り、斗貴子と出会った頃のカズキと同じくだ。
彼は肩が触れ合うだけで赤面したり

.          ノ:;、 '´.:./.:.:.:.:.::.:.::〃.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:::|.:.:.:.:l:::',
=========/ '´.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:::::/.:.:.:.:.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:|.:.:.:.:.';.:.',=======
     ∠-―、_,;∠_.:.:.:.::.:::::/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:|.:.:.:.:.:::,:.:',
    (:(:::::::::人_レ::l  `'‐、/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.il.:.:.:.:.:.:.l.:.:.,    
    ヽ`) ':::::::::::::|: : : : : : V ̄ヽ、.:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:il.:.:.:.:.:.:.',::.:.〉
____ヽ:ヽ、_;::::::|      : : : ヽ,:.〃.:.:.:.:.:.:.:.:.:fj.:.:.:.:.:.:.:ト./___
――――‐ヽ∠二.|            `┬-、_.:.:.:.〃.:__/――――
           l             |: : : : :  ̄:  ̄: /
              l           |.        /
________l          |l      /_______
_________!        八.、_    /________
              ',         l .|    ̄ f

を見上げて真赤な顔を背けたりする初心な少年だった。(※ 図は階段を昇る斗貴子)
まひろも今まではそんな感じだった。それで不都合はなかった。
兄の後ろでキャーキャー騒いだり、制服を貸すのがOKだったりOKじゃなかったり、体操着を
貸さぬかと思えばブルマーを満面の笑みで差し出したり、千里やカズキの友人たちの背後で
ヒロインみたいな浮かび方をして核鉄に封じ込まれていたりさえすれば、それで良かった。
が、いまは幸か不幸か、秋水の誘いを受けている。
彼は完璧すぎる。
アプローチをされれば悪い気はしないが、返答を求められると困る。
いい加減な気持ちで返事をするのは悪いし、第一、理想とするカズキと斗貴子にも悪い。
(どうしよ……)
新商品の玄米フレークシェイク(グァバアロエver)を見ながら考える。
これはバニラシェイクにコーフレークを大さじ2杯まぶし、瑞々しいアロエの果肉の上に甘酸

433 :永遠の扉:2006/10/29(日) 23:53:28 ID:GZv5AFKq0
っぱいグァバのソースとビスタチオ少々を加えた今夏イチオシのデザートで、まひろのお気
に入りである。
アロエを口に含んでぶよぶよを舐めまわすのが楽しいらしい。
そしてその横ではクラムチャウダーがほかほかと湯気を立てている。
これはパックに入ったクラムチャウダーの素を牛乳と合わせて煮込んで作る奴だ。
平素は円筒状の金属容器に入れて冷蔵し、注文に応じてカップへ移し2分50秒ほど加熱。
その際の注意点だが、クラムチャウダーに含まれる貝柱が加熱と共に爆発してしまうので
ラップをちゃんと掛けて被害を最小限に抑えなくてはならない。
それでもカップの側面に汁が垂れるので、ちゃんと布巾で拭く。
そしてシェイクとクラムチャウダーを同時に頼む感性に突っ込んではいけない。
彼女は冬でもアイスを食べる。犬に転生すれば、セミを喰うのではないかという説すらある。
まひろの苦悩、続く。
(う、嬉しくないわけじゃないけど、あまりヘンなコトをいっちゃ失礼! でも秋水先輩って何が
好きなのかな? あ! そうだまずはそれから聞いてお話の糸口を作るのよ! 何を隠そう
私はネゴシエイトの達人……)

  ,j;;;;;j,. ---一、 `  ―--‐、_ l;;;;;;
 {;;;;;;ゝ T辷iフ i    f'辷jァ  !i;;;;;  になれたらいいな……
  ヾ;;;ハ    ノ       .::!lリ;;r゙
   `Z;i   〈.,_..,.      ノ;;;;;;;;>  そんなふうに考えていた時期が
   ,;ぇハ、 、_,.ー-、_',.    ,f゙: Y;;f.   まひろにもありました
   ~''戈ヽ   `二´    r'´:::. `!

ので、ごくごく当たり前の話題をふった。
「秋水先輩の好きな物って何ですか?」
「渋茶」
ぽつりと答えたきり、秋水は沈黙した。
閑散としているのは雰囲気だけでなく、彼の頼んだメニューもだ。
秋水が頼んだ物を羅列しよう。Lサイズのアイスウーロン茶。以上。
まひろは怯んだが、ここで沈黙していては埒が開かない。
アカギもいっていたではないか。動くのが道になると。失敗に囚われて熱をなくすなと。

434 :永遠の扉:2006/10/29(日) 23:54:16 ID:GZv5AFKq0
「秋水先輩、何か食べた方がいいよ。ほら、剣道するんだし。あ、でもひょっとしたら減量中?」
「剣道で減量はしない」
相も変わらず粛然と引き締まった双眸は、乙女心を震わす光を秘めている。
(カッコいいなぁ秋水先輩)
赤い顔で見とれるまひろの前へ、チキン3本と海老カツバーガーとポテトのLが運ばれてきた。
むろん、全てまひろのオーダーである。
(しまった! 頼みすぎた!)
赤い顔が一気に青くなった。おごってもらうのはいいが厚かましすぎて恥ずかしい。
「ゴメン!」
「何が」
秋水は良くわかってないらしい。
「その、メニュー頼みすぎちゃったから! 秋水先輩も良かったらどうぞ」
誓いのように真赤な顔を俯かせ、まひろはもうしどろもどろだ。
秋水は若干きょとんとなった。
「ほほほほほら、だって元々秋水先輩のお金だし! やっぱり食べないと体に悪いよ」
トレーを小さな手で秋水にツツーと寄せて、まひろは懸命に弁明した。
「……確かにそうだな」
ちらりと瞑目して、彼は過去に思いを馳せた。
桜花と共に、飢えて生死をさまよった経験がある。だからまひろの言葉に説得力を感じた。
しかし明眸開きつつ秋水は、意外なコトをいった。
「実を言うと、直接手で掴んだり噛みついたりする食べ方に抵抗がある」
やけに生真面目な秋水に、まひろは少し驚いたが、すぐ優しげな微笑に切り替えた。
「そーなんだ。じゃあちょっと待っててね」
そして海老カツバーガーを手にするとレジの方へ歩いていき、バイト少女と交渉を始めた。

バイト少女はまひろの申し出に嫌な顔1つせず、海老カツバーガーを手に厨房へ引っ込んだ。
そして久しく見せなかった明るい笑顔を浮かべつつ、依頼をこなしはじめた。
おお、店を不法に占拠する変態どもに比ぶれば、今のまひろの意志のなんと素晴らしきコトか!
素晴らしいから手伝うのである。ただし真っ二つだ。なぜなら素晴らしいから。
真っ二つを更に真っ二つ、それを更に真っ二つ……やがてできた。
もう1つの必要物ともどもまひろに渡した。彼女はトテテテと秋水に駆け寄り、それらを差し出した。

435 :永遠の扉:2006/10/29(日) 23:54:50 ID:GZv5AFKq0
「コレなら多分大丈夫!」
左手にあったのは、バーガーラップの中で細かに切られた海老カツバーガー。
そして右手にはフォーク。
秋水はやや面食らったが、意図を察すると軽く一礼して謝意を示した。
要するにフォークで刺して食べて欲しいのだろう。ポテトも同様に。
どうも発想の柔軟性や、交渉への抵抗のなさではまひろの方が上らしい。

その頃。寄宿舎管理人室では、斗貴子が愕然と声を張り上げていた。
「何をいってるんですか戦士長! こ、こんな大事な時によりにもよって、パーティ!?」
割符の探索に数時間前倒しで参加しようと訪ねたらコレだ。
「こんな大事な時期だからこそだ戦士・斗貴子」
防人は1枚の紙を見せた。盗聴を警戒してか、作戦概要が記されている。

・ブレミュの連中が寄宿舎に潜入していないかいぶり出すためだ。
・実をいうと今日、千歳に割符の探索へいってもらうというのはウソだ。朝からずっと寄宿舎
全体を監視してもらっている。怪しい奴が出入りしないかどうか。
・で、夜になりしだい彼女にはこちらへ戻ってもらい、紹介を兼ねてパーティを行う!
寄宿舎にいる者全員を集めて、な。そして見慣れぬ奴や挙措がおかしい者をお前たちに手
分けして探してもらう。
・総角の奴はノイズィハーメルンも使えるからな。生徒に催眠術を掛けてスパイに仕立ててい
るとも限らん。現に、千歳たちの戦いへ浮浪者に催眠術を掛けて乱入させたというし、警戒
する必要がある。

「分かってくれるか?」
半々だ。情報漏えいに対処するのは敵を斃すよりも重要ではあるが、その間に割符を取ら
れてはたまらないという危機感を含ませつつ返答。
「分かりました。で、パーティではアレを出すんですね」
「ああ。野菜ゴロゴロ、肉少々、スパイスごっそり、リンゴとハチミツべっちゃべっちゃぁ!! 
ここまでいえば誰でも分かる、いわずもがなの男の料理! 名づけて! 特性ブラボーカレーを!」
「で、私の役目は」
斗貴子は冷めている。ドラマCD1のテンションで騒ぐ戦士長が世界一のカレーを作ろうと宇
宙一のカレーを作ろうとどうでもいい。任務あるのみだ。

436 :永遠の扉:2006/10/29(日) 23:55:55 ID:Xxc45b750
「買出しと調理だ」
「買ってきました!」
10分も立たず斗貴子は野菜も肉も、果ては各種スパイスやらっきょうなど、カレーに連座す
るものことごとく買い出してきた。リヤカーに満載して。
聞けば舗装されていない裏道を選んで、バルスカで地面を突きまくって爆走してきたという。
「さすがは戦士・斗貴子だ! 運搬ぐらいは千歳に頼んだ方が良かったと後で気づきもしたが、
ブラボーだ!! お次は……戦士長として許可する! 存分にその力、発揮させろ!」
「ぶ、ぶそうれんきんっ! バルキリースカート!」
厨房にて斗貴子は、ぎこちない面持ちで武装錬金を発動した。
六角形の光の中、ロボットアームが組み上げられていく。この後画面へ突っ込んだら飾り布
がぐわーで真赤なぁ誓い(ッテッテッテ)……すまない。読者の皆様。
「わぁぁあーっ!!」
もはや斗貴子(B78)はヤケだ。野菜をむんずとつかみ取ってはまな板に乗せ、処刑鎌で皮
やら何やらをズタズタに斬り裂いていく。
まな板を叩く音(勘ぐれば同族嫌悪が混じっていなくもない)や、しゃりしゃり擦れ合う金属音
の中で瞬く間に素材の用意は完了し、鍋に投げ入れる。そして。
「カレー粉をブチ撒けろッ!」
トドメとばかりに鍋へ黄色い粉を叩き込むと、斗貴子は一気にへたり込んだ。
「わ、私は何をしているんだ……戦いもせず一体何を……」
厨房のひんやりした床の上で足を揃えて落ち込んでいると、優しげな声がかかった。
「あら津村さん。下準備ご苦労様。私はこんな野暮ったい作業は不向きなので助かりました」
「黙れ腹黒」
来たのは桜花だ。制服の上にエプロンを着用している。
「見たところお疲れのようですし、カレーをかき混ぜるくらいなら私がやりますけど」
斗貴子は立ち上がると、憎々しげに鼻を鳴らした。
「キミに任せたら何を混ぜられるか分かったもんじゃない」
「津村さん、私を誤解してるようね。混ぜるなら当番じゃない時にコッソリよ。コッソリ、ね?」
桜花は困ったようにてへてへ笑った。
「そっちの方がなおさら悪い! そもそも何か混ぜようとか考えるな!!」
「冗談よ。だいたい言い出したのは津村さんじゃない。困った人ね」
言葉につまる斗貴子を尻目に、桜花はカレーを混ぜつつ秋水の初デートを案じた。

437 :永遠の扉:2006/10/29(日) 23:57:03 ID:Xxc45b750
灼熱の太陽が西方にかかり、ぎらついた影を街のそこかしこに落としている。
そこへひぐらしの物悲しい声が響き渡り、紅に染まった世界は寂々とした一種異様な雰囲気だ。

「佐藤。浜崎。B班の連中10人全員いないようだが?」
名を呼ばれた2人の男は、頬に冷汗を垂らしトンネルの向こうに佇む影を見た。
表情こそ逆光に照らされ見えないが、声に含まれた詰りは彼の心証が悪いコトを示している。
「い、今から連絡を取る!」
真っ赤なシャツを纏った長身痩躯の男が慌しく携帯電話を取り出した。
紫がかった肌にボロボロの白髪。頬には口と平行にいくつもピアスを打っている。
彼は2、3回コールをしたがいずれも返答はない。逆光の男から侮蔑交じりのため息が漏れる。
痩男は凶悪な眼窩を血走らせ、携帯電話を乱暴に畳んだ。
「連れ戻してくればいいんだろう!」
「この広い街を探し回って、か? 時間がないんだ佐藤。不確実な方法を提言するな」
「何を……! 調子に乗りやがって! てめぇの腹ン中にあるのは失敗作の方じゃねえか!
『もう1つの調整体』のうちDr.バタフライが廃棄した方のな!」
「止せ。返り討ちが関の山だ」
今にも飛び掛らんとする佐藤を、大男が止めた。
ゆうに185cmはある佐藤よりも上背があり、全身茶褐色。体毛は薄く、短く赤い頭髪を申
し訳程度に生やしている他は、眉毛もヒゲもない。
ただ、本来眉毛のある部分には血のように赤いペインティングを施し、頬や顎、胸の辺りにも
同様のモノがある。男の呼びかけからすると、彼が浜崎のようだ。
「まずは憎き錬金の戦士からだ。ザ・ブレーメンタウンミュージシャンズの連中も何かとうるさ
いが、まずは戦士の根城・寄宿舎から」
「襲撃開始は本日午後6時きっかり。あと1時間ほどだ」
「んなコトは言わずとも分かってんだよ、震」
刃ささくれる光の輪がすさまじいうねりをあげて佐藤の五体を掠めた。
逆光の男はいつの間にか小型のチェーンソーを持っている。発射元はそれらしい。
佐藤の紫肌が一段と醜く色あせ、恐怖と屈辱の入り混じった震えが走る。
「下らん名で呼ぶな。いま165分割してやってもいいんだぞ。貴様の代わりなどいくらでも作れる」
「佐藤に代わりお詫びいたします」

438 :永遠の扉:2006/10/29(日) 23:57:57 ID:Xxc45b750
浜崎が佐藤を抑えながら頭を下げると、男の怒気が引いた。
「この俺、逆向凱(さかむかいがい)が直々に探してやる。貴様らは……」
背後でひしめくホムンクルスの群れを顎でしゃくり、抑えておくよう命じると、ツカツカと歩き出した。
「Dr.バタフライを欠いただけでこの体たらく。所詮烏合の衆か……まぁいい。ムーンフェイス
様が戻られるまでの辛抱だ。算段はつけてある。『奴ら』への残存兵力と『もう1つの調整体』
の提供と引き換えに、な。烏合といえど数は数。せいぜい利用されるがいいクズども」

カレーの匂いがうっすら立ち込めてきた寄宿舎近くの道路では。
「ちょ、ちょっとやめて下さい…… 警察呼びますよ」
柄の悪い男3人に囲まれた少女が目を白黒させながら必死に抵抗していた。
絡まれたのは服装のせいだろうか。
この辺りでは斗貴子ぐらいしか着てない制服だ。だから目立つ。
「いいじゃねぇかよ。俺らにちょっと付き合えよ」
「6時になるまでヒマで腹ペコなんだよお嬢さん」
「だから、喰わせろぉ〜!!」
男たちの頬はひび割れ、鋭利な牙の羅列が夕暮れを反射した。
「ひゃ、ひゃあ!」
日常から非日常の転換。可憐な少女はへなへなと腰を抜かして涙を浮かべた。
「ちょっとちょっとちょっとぉ〜!」
その危機的状況へ無遠慮に入った横槍の声。男たちと少女は発生元を探した。
「とあーっ!」
続いて、影が近くの木の枝から飛び出し、男たちと少女の間に着地。
シャギーとメッシュの入った髪と強気そうなアーモンドの瞳を持つ少女だ。
タンクトップからは深い谷間が覗き、汗の玉がそこへ飲まれていく。手には水入りペットボトル。
「ああもう。戦士にちょっかい出せっていわれてもさ、ゴゼンぐらいしか割符さがししてないか
らロクにできなかったじゃん! んで、あのおっきな建物見張ってたら近くでこんな騒ぎ……」
「誰だてめぇは」
「栴檀香美(ばいせんこうみ)。厄介ごとに首つっこむのもどーかと思うけどさぁ〜 弱いもの
イジメに関しちゃ別よ! する奴はぎゃーの刑よ! 歌にもあるじゃん歌にも。見て見ぬフリ
なんてできないのさ、邪悪のゴズマをキャッチしたぜ〜♪って」
男たちも少女も、この乱入者を持て余し気味に見つめた。

439 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/10/29(日) 23:59:45 ID:Xxc45b750
佐藤や浜崎は割りと知られてますが(ドラマCD1のキャラ)、逆向凱を知ってる人は少ないかも。
武装錬金ネタバレスレのウソバレに出てきたキャラです。
ただ、ちょっとアレンジを加えてあるので外見は既存の錬金キャラです。アイツです。
そして少女は誰か……服装から分かるかも。作中、斗貴子と同じ服装なのはただ1人。

所で自分の文章というモノを鑑みるに、どうも映像的なアプローチが弱い気がするのです。
例えばNBさんのような仕草や表情でぐぐぅ〜っと引き込める筆力には垂涎するコトしきりでして……
小札も状況に応じて喋らせているので、破綻が怖い。自在に操れたら面白くできそうですが、はてさて。

あと、ネゴロ連載中は賭博黙示録にビビり倒してました。ええ。
題材被りは書き手にとって死活問題、けどどうしても最後の攻略シーンと千歳の笑顔だけは
描きたくて、それを経ずして投げ出すのは根来らに悪いような気もして、色々あがいてみた次第。
思うに、執筆で悩むのは筋トレや走り込みのような「苦しいけれども鍛えられてる状況」でして。
続けているとある日突発的に光明が見えて、何とかなるコトもしばしば。
それに長編を完結させると想像以上に視野が広がります。本当に。
「最後まで貫き通せたブラボーなモノに、偽りなど何一つない」ともいいますし。
かくいう自分も上手い人を見るとヘコみますが、描くコト自体は楽しいのです。

>>371さん
周りを困惑させるぐらいガーっと動いてくれてこそのまひろ。
あの臆面のなさは話のテンポを良くしてくれるので、大助かりです。
秋水は、デートに興味薄いかも。朴念仁な印象があります。

>>373さん
まひろは元々日常側のヒロインなので登場させると世界がどうしても柔らかくなってしまいま
す。で、難しいのはココなのです。
戦闘パートではまひろを出すのが難しく、日常パートでは秋水を活躍させ辛く……

>>374さん
今回はその辺りについて自分なりの解釈を描かせて頂きました。
ただ秋水は描いてて、ホントに恋愛できるのかコイツ?と思いますw

440 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/10/30(月) 00:03:01 ID:Xxc45b750
>>375さん
難しいところですね。興味は持っていそうなんですが。

>ふら〜りさん(噂であり18歳であり30歳であり)
どうも自分の描く男女の関係の雛形になっているのは、「燃えよ剣」の土方とお雪さんのよう
です。カッコいい男性を、ただの色香ではなく柔らかな諧謔で崩して戸惑わせて、けれどどこ
か深い信頼で繋がっているような。……あぁ。自分の感性って中年っぽい。

>銀杏丸さん
正に「熱く燃やせ奇跡を起こせ」。創痍を物ともせず立ち向かう二人は熱い!
星矢キャラではありますが、どこかリンかけに通じる熱さを感じました。
対するポセイドンの老成した佇まいもまた。敵のままでもカッコいいかも!

神話は楽しみにしております。想像してたよりドロドロしてそうですけど、そこがまたw
パピヨンは根底の部分じゃ鬱屈の人だと思うのです。まぁ、その辺りはおいおい描写して
いきたいトコロですが、登場がずっと先…… 前倒しも検討中。

あ、>>432最後の一行の「コーフレーク」は「コーンフレーク」の間違い……
折りを見つけて修正分をまとめサイトへ。

441 :作者の都合により名無しです:2006/10/30(月) 10:41:32 ID:nIQyGaHc0
バキAAはよく見るけど、スカートのAAはどこで見つけられたんだw

スターダストさん乙です。
他人の恋愛にはきゃあきゃあ言ってるけど自分には奥手なまひろと
普段冷静なくせに色恋沙汰には免疫が足りない秋水は微笑ましいですな。
よりによってデートの場が変人バーガーですがw

栴檀香美とかは知らなかったなあ。



442 :作者の都合により名無しです:2006/10/30(月) 17:23:28 ID:tSeAe1U40
秋水もまひろも異性と一対一のデートは初めてだろうな
集団や兄姉ならともかく。初々しいな。
キャラも増えて賑やかになってきたね。
俺もドラマCDキャラはまったく知らんけどw
オリジナルキャラとして楽しませてもらいます。

443 :作者の都合により名無しです:2006/10/30(月) 22:52:41 ID:8V0AmxJl0
スターダスト氏お疲れ様です。
まひろと秋水のデートもいいけど、
直情径行のトキコと腹黒い桜花のやり取りも楽しいな。

444 :ふら〜り:2006/10/31(火) 08:25:42 ID:bTgaBbR20
>>昼休みさん(おいでませ、でしょうか? 次回作完成の折には、ぜひお見せくだされっ)
詩的だったり電波飛んだり人情入ったり……和んで吹いて感動して。言葉通り、笑いあり
涙ありでした。つーか奈津子さん、勇ましい(?)男気と女らしい優しさとを持ち合わせ、
ちょっとボケたりもして、かつ美人。何気に凄くいい女。ひと時の幸せでしたねキャプテン。

>>NBさん
>彼女もまた、心のどこかで思っている事なのだ。
うぅ……仕方ないこととはいえ、これは結構コタえます。もはや誰の過去も未来も、強敵も
裏切りもどうでもいいから、とにかく二人に仲直りしてほしいというか。でもイヴはともかく、
スヴェンは命懸けで確固たる決意してるしなぁ。焦土作戦、地を固める雨となってくれるか。

>>銀杏丸さん
とてつもなくレベルの高い戦いをしている。が、まだまだ海皇には余力がある、というより
遊んですらおらず、遊べるようになるのを待っている。「星矢」はまず青銅になる為に苦労
してそこからランクアップしていく物語でしたが、本作は黄金がデフォ。やっぱり高い…

>>白書さん(おいでませ。当地でも存分に腕をお振るい下されぃ!)
さくらですかっっ。んで時は既に「小狼くん」状態であると。しかし言われてみれば確かに、
さくらのバトルは派手ながらも穏やかでしたね。殺意ありげなのもゼロではなかったですが。
ともあれ、科学と魔法のヒーロー&ヒロインたちのクロスオーバー、楽しみにしてますぞっ!

>>スターダストさん
AA使用とハンバーガーショップ舞台裏。スターダストさんの得意技(?)、久々炸裂ですな。
緊張しつつも気配りのできるまひろ、本人の気持ちはともかく結果的に家事能力の高さを
披露してる斗貴子、あの総角の部下らしく、人道弁えたる香美。各方面に百花繚乱です。

445 :作者の都合により名無しです:2006/10/31(火) 10:21:53 ID:1v6EUTT/0
ふらーりさんもそろそろ・・

446 :作者の都合により名無しです:2006/10/31(火) 22:35:52 ID:1v6EUTT/0
バレさんは忙しいのかなあ・・

447 :虹のかなた:2006/11/01(水) 15:57:15 ID:tTPDCHhR0
ごきげんよう。皆様。お久しぶりです。
今更ですが   http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/niji/34.htm の続きです。



ジュネが飛び出していく斗貴子を止めなかったのは、アテナに制されたせいであった。
緊迫した二人の空気に割り込んでいった斗貴子を横目で追いながら、その理由を問う。
「アテナ……?なぜ……」
「これをあなたに」
私の問いにスッと笑みを消し、こちらを真っ直ぐに見据えたアテナが右手を差し出した。
「これは……!」
見覚えのある六角形の物体。
表面に何も記されていない――――本物ならばナンバーが刻まれているはずのソレは、数日前にアテナがジュネに託し、斗貴子との接触のきっかけとして使わせたモノ。偽の、核鉄。
何故今になってこんな物を……。
困惑気味にアテナを見返した私は、その瞬間息をのんだ。
瞬く間に膨れあがる――――神の小宇宙。
目前の少女が、“城戸沙織”から“女神アテナ”へと変わる。
「女神アテナの名の下に……カメレオン星座の聖闘士、ジュネに命じます」
アテナの声は決して大きなものではない。
なのに圧倒的な威圧感を持つその声に、知らず知らず冷や汗が頬を伝う。
なおも膨らみ続けるアテナの小宇宙が雨を弾き、側に立つジュネの髪や衣服の湿り気までもを蒸発させる。
その強大な小宇宙にやっと我に返った私は、慌てて自分の唯一神へ跪き頭を垂れた。
「私はこれから紅薔薇さまと共に瞳子様の元へと向かいます。あなたに与える命令は三つ。一つは、これから現れるホムンクルスをこの学園内で殲滅すること。二つ目は、あなたはあくまでも斗貴子さんのサポートに徹すること。三つ目は」
そこで言葉を句切り、アテナは偽の核鉄を私に握らせた。
「三つ目は、先程の二つが終わったのなら……コレを持ってお聖堂へお行きなさい。わかりましたね?」
「はい」
「それと……」
アテナが指先が私の頬に触れ、緩やかに導かれるままに顔を上げる。
「あなたがこの試練を無事に乗り越えることを信じています。……死んではなりませんよ、ジュネ」
「……はい」
アテナの言葉の真意はわからない。
だが、その声音からアテナの真剣さを、視線からわずかな憂いを感じ、この命令の意味を問うことは憚られた。

448 :虹のかなた:2006/11/01(水) 15:58:08 ID:tTPDCHhR0
「……来ましたね」
僅かに眉間を寄せたアテナが唐突に呟く。
この言葉の意味はわかるので、私はしっかりと頷き返した。
先程から自分の感覚に引っかかるものが、こちらへと近付いてきている。
「はい。…………四人……四体と呼ぶべきでしょうか。恐らくホムンクルスだと思いますが異常な小宇宙が近づいています」
明らかに人間が持つモノとは違う小宇宙を纏った何かは、もうすぐそこまで来ている。

「嘘つき!!」

ヒステリックな声に視線を戻す。
例の少女が斗貴子と紅薔薇さまに背を向けて走り出す。
投げ捨てられた傘を蹴飛ばし、斗貴子が走り去る少女を追いかける。が……。
足を止められた斗貴子と紅薔薇さまの前には、走り去ったはずのあの少女がいた。
しかも四人。違うのは髪の長さだけで後は全く同じ容姿だ。
「アテナ、あれは……」
「恐らくは……人に在らざる者……。“オリジナル”の萌奈美さんは行ってしまわれたようですね」
私の問いに少しずれた答えを返し、アテナは潜んでいたお聖堂の影から足を踏み出した。
紅薔薇さまと斗貴子、ホムンクルス達との距離は数メートル。
その短い距離を一歩進む毎に、小宇宙を高まらせていくアテナの後を慌てて追いかける。
「紅薔薇さま」
「沙織ちゃん?!ジュネさんも……!どうしてここに……」
振り向いた紅薔薇さまが驚いた声を上げた。だが。
「……そうか……沙織ちゃん……」
アテナを見つめ、一人納得したような言葉を漏らす。
ホムンクルス達から目を逸らさない斗貴子とは対照的に、紅薔薇さまは完全にアテナと向かい合う。
人食いの化け物を目前にし、それらに背中を見せるという行為は自分には理解できるかねるが、紅薔薇さまは真っ直ぐにアテナを見つめている。
一体何を考えているのだろうか。
「沙織ちゃん、瞳子の居場所を知っているよね?」
紅薔薇さまの口調はとてもはっきりしていた。
私にもわかる。
紅薔薇さまのこの言葉は……“質問”ではなく確信を持った“確認”だ。

449 :虹のかなた:2006/11/01(水) 15:58:46 ID:tTPDCHhR0
「ええ。……共に来てくださいますか?」
「もちろん」
紅薔薇さまの言葉に訝しむことなく返答するアテナと、危険を伴うだろう行動に即答した紅薔薇さまの間に、目には見えない、だけど確かに感じられる小宇宙の風のようなモノが吹いた。
「では参りましょうか。ジュネ、斗貴子さん。後はお願いします。頼みましたよ」
アテナが紅薔薇さまに触れる。
一瞬、小宇宙が弾けたかと思ったらもうその場にアテナと紅薔薇さまの姿はなくなっていた。
「……どこに行ったんだ?」
相変わらずホムンクルス達から視線を外さない斗貴子が低い声を発した。
「瞳子の救出に向かわれた。私達のやるべき事はこいつらを倒すことだ」
完結に事実を伝えると、斗貴子はチラリとこちらに視線を向ける。
「……大丈夫なのか?」
「あちらは心配ないだろう。シャイナさんも行っているし、恐らく魔鈴さんも……」
魔鈴さんの今回の任務は紅薔薇様の警護だ。
魔鈴さんならアテナの小宇宙の後を追うことなど容易いだろう。
アテナも紅薔薇さまと共にいるのであれば無茶はしないだろうし。
それに…………アテナの護衛として彼もいる。
心配はいらない。
私は、与えられた命令を果たすことだけを考えればいい。
「ここで始末をつけるぞ」
「言われなくてもそのつもりだ」
低い声で告げた宣言に予想通りの答えが返ってくる。
少しだけ笑ってしまった口元をすぐに引き締め、私は四人……いや、四体のホムンクルスを睨み付けた。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

咆吼。そして、斗貴子が跳ぶ。
四本の死神鎌が細雨の中で閃く。
その切っ先が四体のホムンクルスを捉え――――一直線に向かう。
だが。
「なっ……!」
斗貴子はかなりのスピードで突っ込んでいったはずだ。
だが、地面と水平に振るわれた四本の刃が、一本ずつ四体のホムンクルスに取り押さえられている。

450 :虹のかなた:2006/11/01(水) 15:59:20 ID:tTPDCHhR0
「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ――――――――」
邪気のない、四つの同じ笑顔。
「お父様から聞いたの」
「斗貴子さんが、いい物を持っているって」
同じ声が同じ呼吸で同じ言葉を紡ぐ。
四人の少女は同じ瞳で斗貴子を見つめる。
「ね、斗貴子さん」
「核鉄持っているのでしょう?」
「核鉄」
「ちょうだい――――――――」
クスクスクスクスと耳障りな笑い声が響く。
一体から伸びた大きな食物がこよられ、鋭い錐となり斗貴子へ突きつけられる。
(どうする……?助けにはいるか?)
シュル、と鞭を手にし、少し迷う。
そのまま右手を挙げ鞭を振るおうとした私は、中途半端な体勢で動きを止めた。
真っ直ぐに敵を見据える斗貴子の瞳は、状況を何一つ諦めていない。
(もうちょい様子を見るか……)
私がその気になれば手助けなど一瞬で出来る。
だがそれは、本当にそれが必要な時だけしかしてはいけない。
でなければ……斗貴子の戦士としてのプライドを傷つけるばかりか、「強くなりたい」という彼女の願いまで砕くことになってしまう。
「強くなるために必要なモノは……信念と、基本。そして…………実戦だ」
だから、実戦を経て一段上に昇ろうとしている斗貴子を邪魔してはいけない。
私に出来ることは彼女を見守り、必要なときに必要なだけ手助けをすることだけだ。
(彼女を信じろ!)
瞬の時にはできなかった、信じたいと思う人を信じること。
あの頃より少し強くなった私なら――――――――出来る。
(斗貴子はきっと……もっと、強くなれる……!こんなところで負けはしない!)
「核鉄ちょうだい!!」
葉の錐が斗貴子の額に突き立てられ、思わず自分の拳に力を込めたその時。
「……武装練金、解除!!」
予想外の言葉が発せられた。

451 :虹のかなた:2006/11/01(水) 16:00:07 ID:tTPDCHhR0
斗貴子の声と共に処刑鎌はその姿を元の核鉄へと変え――――――――斗貴子の掌に収まる。
突然に掴んでいた物を失い、ホムンクルス達がバランスを崩す。
上半身を捻り錐をかわした斗貴子が、再び叫ぶ。
「武装練金!」
その言葉が終わる頃には、再度武器と化した核鉄がホムンクルスの一体を貫いていた。
しかも心臓を貫くと同時に額の章印を突き刺している。
「無音、無動作の武装練金の発動は戦士の必須条件。そして」
一体の額に突き刺した刃をそのまま横にスライドさせ、すぐそばのもう一体の首を刎ねる。
首だけとなったホムンクルスが上げる悲鳴を踏みつぶすように、四本の鎌が転がる首の脳天に突き立てられた。
「……バルキリースカートの特性は高速な精密機動……。得意な戦闘は対多人数、だ」
「……なるほどねぇ」
思わず納得してしまうのは、誤解とはいえ一度戦闘を交わしたからだろうか。
それとも――――“対多人数”が自分の鞭の特徴と一致するからか。
「……後、二体」
斗貴子の鋭い瞳に捉えられた残りのホムンクルスが息をのむ。
(この分だと私の出番はなさそうだな)
明らかにホムンクルスを上回る斗貴子の戦闘力に、安堵のため息をつこうとした時。
「――――っ!」
振り向いた拍子に揺れた三つ編みに、何かがかする。
(飛び道具……。この前のアイツか?)
あのお茶会の日の戦いで逃がしてしまった、もう一体のホムンクルス。
確かアイツは遠くから何かを跳ばす力を持っていたはずだ。
間髪入れずに襲ってくる弾丸をかわしながらぐるりと周囲を見渡す。
(敵の居場所は……わかる……!)
異常な小宇宙が、私の感覚に引っかかっている。
「……上!」
飛んできた弾丸を拳で叩き落とし、私はお聖堂の屋根まで一気に跳躍した。
「なっ……!どうして……?!」
お聖堂の屋根に立つ十字架を背にした彼女――――“上原萌奈美”がその顔を驚愕に固まらせる。
「傷一つついていないなんて……!あなた一体何者なの?!それにどうしてここがわかるの?!」
「あんなスピードの弾丸を避けるくらい、聖闘士にとっては朝飯前さ。私は」
驚愕から立ち直り、美しい顔を台無しにするような憎悪の表情となった彼女を真っ直ぐに睨み付ける。

452 :虹のかなた:2006/11/01(水) 16:08:12 ID:tTPDCHhR0
「私はアテナの聖闘士……カメレオン座のジュネ。地上の正義と平和を守る戦士だ!」
ヒュン、と雨を切り、鞭が私の両手に収まる。
「オマエには色々聞きたいことがあるんだ。捕獲させてもらう」
なぜ、このホムンクルス達は皆同じ顔をしているのか。
今、この学園内に何体のホムンクルスが侵入しているのか。
目的は。
組織に属しているのであればその規模は。首謀者は。
そして…………瞳子の安否は。
「セイント……?自分のことを“聖人”だなんて……随分とおこがましいこと」
「そっちの“セイント”じゃないんだけどね」
チラリと眼下に視線をやると、斗貴子が二体のホムンクルスを相手に雄叫びをあげている。
(錬金術とやらがない状態でどこまでやれるかわからないけど……)
戦闘能力は私の方が圧倒的に上だ。
だが私には錬金術の力はない。
それはつまりホムンクルスに致命傷を与えることが出来ないということだ。
目的は捕獲だが……このハンデはかなりこちらに不利となるだろう。
(だけど、それでも)
――――――――――――斗貴子の戦いの邪魔はさせない。
水分を含んだ金色の三つ編みがゆらりと持ち上がる。
ゆっくりと、だが確実に、私は私の中の小宇宙を燃やし始める。



453 :ミドリ ◆5k4Bd86fvo :2006/11/01(水) 16:09:54 ID:tTPDCHhR0
今回はここまでです。
ご無沙汰して申し訳ありません。
展開はできているのに文章に行き詰まってしまっていたのと、私生活・仕事の忙しさが原因です。
生まれて初めて円形脱毛症になりました……。
職人様方のSSもしばらく読めずにいたので、これから読ませて頂きますね。

それではごきげんよう。


454 :作者の都合により名無しです:2006/11/01(水) 18:27:39 ID:G1tola9V0
やったー!ミドリさん復活された!!!!!!!!
これでテンプレ作るのにもリキ入るってもんだ。
私生活と仕事が忙しいのは充実している証拠だとは思いますが、
ストレスが溜まっちゃうほどになると考えものですね・・。お体ご自愛を。

>虹のかなた
ご復活にふさわしい急展開かつスピーディなバトルですね。
その中でもやはり高潔なアテナと凛々しいトキコ。次回が待ち遠しいです!
お体に触らぬ程度に、1、2ヶ月に1度位でいいのでお待ちしてます。
ミドリさんファンとして、もうテンプレからは外したくないんですよ。

455 :テンプレ1:2006/11/01(水) 19:03:38 ID:G1tola9V0
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart44【創作】

元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1158949830/
まとめサイト
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm

456 :テンプレ2:2006/11/01(水) 19:04:22 ID:G1tola9V0
ほぼ連載開始順 ( )内は作者名 リンク先は第一話がほとんど

オムニバスSSの広場 (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/bare/16.htm
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
上・ドラえもん のび太の超機神大戦 下・ネオ・ヴェネツィアの日々(サマサ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tyo-kisin/00/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/samasa/05.htm
聖少女風流記 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
やさぐれ獅子 (サナダムシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/yasagure/1/01.htm
鬼と人とのワルツ (名無しさん)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (ハシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/487/03-01.htm
シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい (一真氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/silver/01.htm
戦闘神話 (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/sento/1/01.htm



457 :テンプレ2:2006/11/01(水) 19:04:56 ID:G1tola9V0
バーディと導きの神 (17〜氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/birdy/01.htm
MUGENバトルロイヤル (コテ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/mugen/01.htm
フルメタル・ウルフズ! (名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm
永遠の扉 (スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/eien/001/1.htm
ダイの大冒険アナザー (オタク氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/otaku/00.htm
WHEN THE MAN COMES AROUND (さい氏)
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1158949830/218-225
『絶対、大丈夫』  (白書氏)
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1158949830/418-424
虹のかなた (ミドリさん)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/niji/01.htm
超格闘士大戦 (ブラックキング氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tyo-kakuto/01.htm

458 :テンプレ屋:2006/11/01(水) 19:06:21 ID:G1tola9V0
しぇき氏・41氏・全力全快氏が約3ヶ月連絡がないのでテンプレより外れました。
ご復活かご連絡おまちしてます。
私も大好きなかまいたちさんが連載終了でテンプレから外れます。
ぜひ、新作を引っさげてご復帰してください。お待ちしてます。

サナダムシさんは、やさぐれ獅子は一時休止と言うことですが、
短編を精力的に書いてくれているのでとりあえず残しました。
サナダさんの名前がテンプレに無いと寂しいので・・。

あと、>>129でブラックキング氏のレスがありましたので特別に
テンプレに超格闘士大戦を載せました。ご復活の願いを込めて。
でも、次スレテンプレまでにご連絡が無い場合はまた外します。

今回、ちょっとテンプレの変動が多かったのでもしかしたら間違いがあるかも。
なんにせよ、ミドリさんの復帰は嬉しい!!


459 :テンプレ屋:2006/11/01(水) 19:13:38 ID:G1tola9V0
ごめんなさい、早速ミス。

Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (ハシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm

名前を変えた時に長編の移行も直したと思ったけど、直ってなかった・・

460 :作者の都合により名無しです:2006/11/01(水) 23:08:15 ID:Q27OhNN50
ミドリ様、復活お待ちしてました!
今回はバトルシーンなので展開が激しいですが、
それでも高貴な雰囲気が漂ってきますね。
でも、いつものほんわかした日常も懐かしい。
仕事とプライベートの合間にまたお願いします!

461 :作者の都合により名無しです:2006/11/02(木) 08:41:13 ID:J9Gspcdm0
ミドリさんお久しぶりです。
今回は斗貴子が華麗に戦いましたけど
次回はジュネが魅せてくれそうですね。
原作に確かジュネの戦うシーンは無かったと思うので
(アニメは知りませんけど)楽しみです。

また、期待してます!
それと仕事疲れに気をつけてくださいね。

462 :作者の都合により名無しです:2006/11/02(木) 10:25:48 ID:S0oLqcY/0
ミドリさんキターーーーーーーーーー!!!!!!!!
嬉しいです。ジュネのエロいクロスが目に浮かぶようだw


463 :作者の都合により名無しです:2006/11/02(木) 14:08:11 ID:o3+DGETh0
>テンプレさん
いつもお疲れ様です。ブラキンさん帰ってくるといいですね…

>ミドリさん
ずっと待ってました。復活を心から喜んでいます。
ジュネとトキコとの奇妙な友情がいい感じですね。

464 :作者の都合により名無しです:2006/11/02(木) 21:46:58 ID:K+O6yhdL0
ミドリさんも復帰したし、俺もそろそろ復帰しようかな

465 :ワン・ハンドレッド・ミリオン:2006/11/03(金) 00:17:56 ID:iPqf6rwh0
 ドラゴンボールの伝説は真実だった。
 天は暗黒に染まり、巨大な龍が七つの球から生み出された。
「さぁ、願いをいえ。どんな願いでもひとつだけ叶えてやろう」
 じわじわと心に染み込むような、渋い声が発せられる。
 緊張がピークに達し、私は粘っこい唾液を体内にごくりと押し込んだ。
 ドラゴンボール探しを本格的に始めた頃から、何を願うかは決めていた。
 答えはずばりマネー、お金だ。私が生まれる数百年も前に確立された資本主義という世
の中では、金がなければ何もできない。逆にいえば、金さえあれば何でもできるというこ
とだ。
 多かれ少なかれ、物には値段がついている。地位や名誉、愛でさえ思いのままだ。
 私は結論として、一億ゼニーもあれば残り数十年の人生を不自由なく暮らしていけるだ
ろうと踏んでいた。
 ならば今すぐ頼んでしまえばいいのだが、このとき私の中である考えが浮かぶ。
 だれでも子供の頃に一度くらいは「どんな願いでも叶えてやろう」という問いに対して、
空想をふくらませる。オーソドックスな回答としては私のように金、あるいは美女、不老
不死などが挙げられよう。特定の人物に恨みを晴らしたり、世界平和を願う者もあるかも
しれない。
 だが、おそらく究極の回答はこれのはず──。
「あ、あの……叶えられる願いを増やすことは可能なのか?」

466 :ワン・ハンドレッド・ミリオン:2006/11/03(金) 00:18:46 ID:iPqf6rwh0
 期待はしてなかった。断られたら、すぐにでも一億ゼニーを頼もうと考えていた。むや
みにチャンスを増やすなど、ルール違反もいいところだ。
 ところが、この思惑はいい方に裏切られる。
「可能だ。ただし、同系統の願いを叶えることはできないがな」
「……えっ!? ほっ、ほ、ほ、本当にっ!?」
 目を輝かせる私とは対照的に、淡々とした態度の神龍。この願いが許されることの重大
さなど、まるでおかまいなしといった風に。
「で、いくつにするのだ?」
 さて、いくつに増やそう。金や筋力と同じく、多くて越したことはないはずだ。
 ならば──ついさっきまで一番叶えたかった願いを使ってやろう。
「一億……」
「ん?」
「叶えられる願いを一億に増やしてくれっ! ……あ、俺以外が頼むことはできないよう
にな!」
 瞬間的に浮かんだ卑しい考えをあわてて付け加えたが、どうやら無事ひとつの願いとし
て受理されたようだ。
「よし、増やしたぞ。あと一億個、願いをいえ」
 突如開けたバラ色の人生に対し、私は満面の笑みで応えた。

467 :ワン・ハンドレッド・ミリオン:2006/11/03(金) 00:19:24 ID:iPqf6rwh0
 私はさっそくありったけの欲望を開放した。
 まずは金、ついで美女。豪邸を建て、ずっと欲しかった高級スカイカーもたやすく手に
入った。さらに健康にしてもらい、どうせ健康になるならばと不老不死も頂いてしまった。
ペットも飼ったし、長年コンプレックスだった悪筆も直してもらった。
「ふははははっ! 最高の気分だぜっ!」
 美女を助手席にスカイカーを乗り回す。葉巻を吸い、十指全てに似合わない指輪をつけ
た。どうしようもない俗物根性だが、今の私に立ち向かえる人間などいない。紛れもなく、
私は全世界でナンバーワンの人間となった。
 ところが、百個ほど願いを叶えたところでだんだんと様子がおかしいことに気づく。
 まず、空がずっと暗いままだ。
 また、どこに行こうと神龍はしつこくつきまとう。やたらに大きい彼の声は、とても無
視できるものではない。
「あと九千九百九十九万九千八百九十六個、願いが残っているぞ」
「ちっ、うるせぇなぁ。少し黙ってろよ!」
「……よし、少し黙ったぞ。あと九千九百九十九万九千八百九十五個、願いを叶えてやろ
う」
 こんな調子である。
 私もこの頃になりようやく、自分の過ちに気づいた。

468 :ワン・ハンドレッド・ミリオン:2006/11/03(金) 00:20:18 ID:iPqf6rwh0
 催促は現在も続いている。眠ることすら許されない。ちなみに「眠らせてくれ」はとっ
くの昔に使ってしまった。その時は一分ほど寝かせてもらえ、すぐに大声で起こされた。
 他にも、もう願いはいらないと頼むと、
「ダメだ。願いの増減は初めの願いと同系統だから叶えられない」
 と冷たく断られてしまった。
 また、通常は神龍は叶える願いがないと消えてしまうそうだが、私によって増やされた
一億個の願いは“願いの結果”であるため、全てを叶えない限りいなくなることはないそ
うだ。
 ちなみに、ごく初期に叶えられたオーソドックスな欲望たちはとうに私の手から離れて
いる。財産は尽き、美女にはふられ、豪邸もだれかの手に渡った。何も考えず「○○が欲
しい」とだけいったので、吸着力がまるでなかったためだ。むろん、健康も今の私にはな
く、不老不死だけはしっかりと機能してくれているから始末が悪い。
 最近では、新しい願いを叶えることさえ難しくなってきた。
「さっき食った刺し身が古くてよ、下痢を治してくれねぇか」
「ダメだ。それは以前叶えてやった健康と同系統だから叶えられない」
「じゃあ、せめてオムツを出してくれ」
「ダメだ。以前叶えてやった新品ブリーフと同系統だから叶えられない」
「オムツとブリーフは別物だろうがぁぁっ!」
 今年で、私は若い肉体のまま百歳を迎える。空は当時と変わらず暗く、近くにはこれま
た変わらず神龍が佇んでいる。
「さぁ、願いをいえ。どんな願いでも九千九百九十九万四千二百五十三個だけ叶えてやろ
う」

                                   お わ り

469 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/11/03(金) 00:21:48 ID:iPqf6rwh0
ドラゴンボール短編です。
もう新スレですが、よろしければ読んで下さい。

ミドリさん復活おめでとうございます。
また、『やさぐれ獅子』をテンプレに残しておいて頂きありがとうございます。

470 :作者の都合により名無しです:2006/11/03(金) 10:23:32 ID:J/AEJKGQ0
すごいなサナダムシさん。よくこんなアイデア思いつく。
「願いを増やす」ってのは誰でも思いつくけど、そこからネタにまで広げるとは。
お見事です。

471 :作者の都合により名無しです:2006/11/03(金) 15:53:09 ID:XHbFEtAw0
お疲れさんですサナダムシさん。
最近、短編専属になっちゃいましたね。
やさぐれ獅子の続きかまた長編が読みたいなー

でも、短編もさすがにうまいですね。
人間の欲深さとか、間抜けさとかw
よくこんなアイデア沸くなー

472 :作者の都合により名無しです:2006/11/03(金) 17:03:31 ID:oJOHP4uQ0
>サナダ氏
感動した
あいかわらず
短編なのに構成力や発想がすごいよな

473 :作者の都合により名無しです:2006/11/03(金) 23:39:18 ID:KmH9lcVj0
やさぐれのテンプレを気にしてるって事は、次スレで復活ありかな?
あいかわらず短編でも良い仕事してんなあ。

474 :作者の都合により名無しです:2006/11/04(土) 00:50:40 ID:J72fiRay0
長いのあと1本かそこそこの長さの2本くらいで次スレか。
バレさんお仕事忙しいのかな・・

475 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/11/04(土) 17:15:44 ID:KaATT8h50
第九十三話「ラグナロク・前編」

そこは宇宙。数多の星々が煌く漆黒の世界。
だが、それは贋物の輝きだ。自然に生まれたものではなく、人為的に造られたもの。
それを造り出した男が、その人工宇宙の中心で佇んでいた。
彼は待っている。己の敵が、ここまでやってくるのを。
―――宇宙に乱れが生まれた。乱れの中からやってくる。彼の敵が。彼を打ち滅ぼさんとする者たちが。
「・・・待っていましたよ、皆さん」
ならば自分はそれに応えよう。その全身全霊を持ってして、全てに終止符を打とう。

「・・・で、どうしよう、ドラえもん」
いざ決戦の地へ、と意気込んでやってきたものの、以前経験したグランゾン・Fの戦闘力を思い出すと、とてもじゃ
ないが勝てるものではないと思ってしまうのび太であった。
そして、ドラえもんの回答は―――
「あいつは、合体することであれほどの力を手に入れたんだ。なら・・・対抗策は一つしかないよ」
ダイザンダーの腹部に取り付けられた巨大四次元ポケット。そこから取り出したる物。
「合体に対抗するには・・・合体しかない!<ウルトラミキサー・改良型>!」
ダイザンダーが掲げたそれからチューブがその場の全ての機体に伸びていく。ミキサーの中でそれらは掻き混ぜられ、
合わされ、新たな形を取っていく。
この間、ほんのコンマ数秒。そしてグランゾン・Fにも劣らぬ超存在が顕現した。
「融合機神―――<バキスレイオス>!」

476 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/11/04(土) 17:16:17 ID:KaATT8h50
バキスレイオス―――
ダイザンダーを始めとして、全ての機体が融合した姿。融合した機体の全ての特性、武装を備えた上で、オリジナルを
遥かに凌駕した性能を有する機神。
パイロットも融合し、一人の人間になっているが、人格は全て独立して存在している。
それはもはや機械の領域を超えた存在。グランゾン・Fをデウス・エクス・マキナと評するならば―――
バキスレイオスもまた、デウス・エクス・マキナだ。
グランゾン・Fとバキスレイオス。二対の超存在がしばし睨み合う。
「・・・こうして顔を突き合わせているだけでは、話も進みませんね」
グランゾン・Fの右手が黒い光に包まれた。その光は形を取り、巨大な剣に変形していく。
「―――<グランワームソード>!」
その感触を確かめるかのように、一振り、二振り。そして、構える。
「では、行きましょうか―――」
それに呼応するように、バキスレイオスが虚空に手を伸ばす。
「憎悪の空より来たりて―――」
それは、言霊。それは、祈り。
「正しき怒りを胸に―――」
それが呼ぶのは、魔を断つもの。
「我等は魔を断つ剣を取る!」
無から現れた穢れなき刃を、バキスレイオスは掴み取った。
「―――汝、無垢なる刃―――<デモンベイン>!」
同時にバキスレイオスが疾風の速さで駆け抜けた。グランゾン・Fとの距離は一瞬で零となり、同時に互いの斬撃が
交錯する。
一閃。互いに受け止めあう。
二閃。デモンベインがグランゾン・Fの胸部を僅かに斬り裂く。
三閃。グランワームソードがバキスレイオスの顔面に一筋の傷を付けた。

477 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/11/04(土) 17:16:48 ID:KaATT8h50
しかし、その程度の傷はどちらにとってもダメージとは言えない。瞬きすらできぬほどの間に自己修復が完了する。
やがて高速の剣戟が光速の剣戟に変わり、それすら凌駕し神速へと至った。
数千数万の斬撃の応酬の果て、押し勝ったのはバキスレイオス。グランワームソードを弾き飛ばし、グランゾン・Fに
力の限り斬りかかる!
グランゾン・Fの右腕が断ち切られた。次いで左腕。更にデモンベインを振り翳したところで、凄まじい衝撃が襲った。
バキスレイオスの装甲が、大きく抉り取られている。
「ふっ・・・惜しかったですねえ、今のは」
一瞬にして再生を終えた両腕を誇示するように掲げて、シュウが嘲笑する。
「では、反撃といきましょうか」
グランゾン・Fが掌に重力場を発生させた。そしてそれを撃ち出すのではなく、掌に宿したまま殴りかかる。
重力波を纏った掌底による一撃で、バキスレイオスの装甲がひしゃげた。
<グ・・・グラビティ張り手って奴か!?>
マサキが彼独特の妙なネーミングセンスを発揮するが、それにツッコミを入れる余裕などない。連撃に次ぐ連撃に
翻弄されつつも、距離を取って態勢を立て直す。それと同時にバキスレイオスの全身から砲門が展開した。
そして、その砲撃に敵を撃ち貫く強固なイメージを与える。搭載されたラムダ・ドライバによってそれは物理的な力に
変換された。そして、閃光!
「―――フルバースト!」
幾条もの閃光がグランゾン・Fを貫く。装甲が焼け、溶け、爛れる。それから回復する一瞬の隙を見逃さない。
加速。加速。さらに加速。
「バキスレイオスの機動性なら―――こんなことだってできるんだ!」
バキスレイオスが最大速度に達した瞬間、その姿が三機に増えた。本当に分身したわけではない。あまりの速度に、残像が
発生したのだ。そして一気に襲い掛かる!
「―――<ジェットストリーム・アタック>!」
ありえるはずのない単体での連携。本来ならば三機で行う攻撃を、たった一機で行うことすらバキスレイオスには可能だ。
だがこれでも、グランゾン・Fに与えたダメージはそこまで大きくはない。じきに修復を終えてしまうことだろう。
さらに追い討ちをかけようとしたところで、動きが止まった。その理由はグランゾン・Fから放たれる、凄まじい鬼気。

478 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/11/04(土) 17:17:18 ID:KaATT8h50
「確かにあなたたちは強い・・・しかし、それでも私に勝てる確立など、万に一つもありません」
グランゾン・Fの両掌から溢れる、膨大なエネルギー。
「あなたたちの存在を、この宇宙から抹消してあげます」
それをバキスレイオスに向けて、一気に撃ち出す!
「<縮退砲>―――発射!」
「!?くっ・・・!」
回避は、間に合わない。咄嗟にデモンベインを掲げ、防御結界<旧神の印>を発動させる。同時に、縮退砲が直撃する。
世界すら破壊せんばかりのその威力―――<旧神の印>でも防ぎきれず、バキスレイオスは大きく弾き飛ばされた。
ボディから黒煙が吹き上がり、内部動力系が異常をきたす。
だが、バキスレイオスとて並の機体ではない。これほどの損傷でも、ほとんど一瞬で回復可能だ。
一瞬。それはすなわち―――
この戦闘においては、あまりにも度し難い、間抜けなほどに大きな隙だった。
その一瞬で再びグランワームソードを手にしたグランゾン・Fが肉薄する。そして、コクピット目掛けてその切っ先を
突き出し―――そこで、バキスレイオスの拳に打ち払われた。
「なに!?」
「これ、物凄く疲れるからあんまりやりたくないけど―――そうも言ってらんないか」
そう言って、さらに連続で殴りつける。たまらずグランゾン・Fは飛び退き、バキスレイオスの様子を伺った。
既に損傷は全快している。そして機体を包む、神々しいまでの光。
「ちっ・・・<ポゼッション>を使いましたか。しかし、それもその場しのぎにしかなりませんよ」
「だよね・・・」
強力だが、パイロットの体力を容赦なく奪ってしまうポゼッションは長期戦にはまるで向かない。短時間で効果が切れる
上に、切れた後はまるで余力が残らない。敵を倒しきれなければ、そこで終わりだ。
「だけど・・・このまま行くよ!」
「むっ!?」
バキスレイオスが右手にデモンベインを持ち、さらに左手にもう一振りの剣を出現させた。
「デモンベイン、ディスカッター・・・」

479 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/11/04(土) 17:17:50 ID:KaATT8h50
同時に、その姿が掻き消える。あまりの速度に、視認ができなくなったのだ。
そしてグランゾン・Fに放たれる、超神速の剣技。
「―――<二刀流・乱舞の太刀>!」
「くっ・・・!」
態勢を大きく崩したところに、更に攻撃を仕掛ける。
「まだ終わりじゃない・・・!」
距離を取り、両腕を大きく開く。両掌に宿る、莫大なエネルギー。掌を合わせ、それを突き出す姿勢で、突撃する!
「―――<ヘル・アンド・ヘヴン>!」
エネルギーの余波で周りの星々を打ち砕きながら、グランゾン・Fに全力でぶつかっていった。エネルギーの奔流が
グランゾン・Fを包み、破壊していく。
だが、荒れ狂うエネルギーが不意に止んだ。バキスレイオスはといえば、両手を突き出した姿勢のまま硬直している。
ポゼッションの副作用―――あまりにも激しいエネルギーの消費のせいだった。そして、パイロットの体力も、底を
尽きている。
今のバキスレイオスは、まさに鋼鉄の棺桶と化してしまっていた。
「ククク・・・残念でしたね」
ゆっくりと態勢を整え、バキスレイオスを遠巻きにする。もはや、勝利は揺ぎ無いものとなった。
パイロットの体力も、機体のエネルギーも尽きた今、それが当然の帰結―――だが。
「・・・そうでも・・・ないよ・・・」
僅かに残った力で、腹部の巨大四次元ポケットの中身をまさぐり、何かを取り出した。デフォルメされたカエルだか何か
の絵がプリントされたシップ薬のような物体だ。そしてそれを自らのボディに貼り付ける。
「―――<ケロンパス>!」
瞬時に機体のエネルギーが全快した。続けて、パイロットの体力も完全回復する。
ケロンパス。一瞬にして全ての疲れを取り去る道具であり、機械に使えばそのエネルギーも回復する。そして、もう一つ
の効果がある。
「一度使ったケロンパスを他の奴に張ると―――そいつに全部の疲労を渡せる!」

480 :作者の都合により名無しです:2006/11/04(土) 17:26:39 ID:G3hHT7+S0
規制かな?
頑張れサマサさん

481 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/11/04(土) 17:31:41 ID:LdgwQCjH0
言って、ケロンパスを投げつけた。重力や空気抵抗があればそんなシップなど飛ぶはずもないが、それらがない宇宙では
問題がない。投擲されたケロンパスはグランゾン・Fに向かって、勢いよく飛んでいった。
「ちっ!こんなものを喰らうと本気で思っているのですか!?」
避けるまでもなく、ケロンパスは粉々に吹き飛ばされた。しかし、それは計算の内だ。ほんの少し隙ができれば、それで
よかった。
グランゾン・Fと逆方向に推進し、大きく距離を取った。そして、デモンベインを構える。
「デモンベイン―――姿を変えろ!」
それに応じるかのように、デモンベインが―――魔を断つ剣が、その姿を大きく変化させる。そしてバキスレイオスの手に
現れたのは、二丁拳銃。
一つは紅色の銃。即ち、全てを焼き尽くす業火。
「炎の魔銃―――<クトゥグア>!」
もう一つは銀色の銃。即ち、全てを凍て付かせる絶対零度。
「冷気の魔銃―――<イタクァ>!」
同時に、トリガーを引き絞る。クトゥグアからは灼熱の弾丸が、イタクァからは冷気の弾丸が放たれた。
対極の二つの力が、グランゾン・Fに容赦なく襲い掛かる。
「この程度の攻撃など・・・!」
シュウはそれを完全に見切り、あっさりとかわす―――だが、イタクァの弾丸は軌道を変化させ、再びグランゾン・Fに
向かう。
「これは・・・追尾弾か!」
思わぬ攻撃に、動きが乱れる。そこに、再び放たれたクトゥグアの弾丸が次々と炸裂した。
直線的で見切られやすいが、その威力はグランゾン・Fの装甲を易々と破壊するほどだった。
「ちいっ・・・やってくれますね」
流石に息を荒くし、シュウが呟く。そして、縮退砲の構えに入った。
「今度は完全に直撃させる―――そうなれば、如何にバキスレイオスといえど、破壊することは造作もありません」
「それは、どうかな?クトゥグア、イタクァ―――<神獣形態>!」

482 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/11/04(土) 17:32:13 ID:LdgwQCjH0
二丁の拳銃が姿を変えた。
獄炎を纏う巨大な獣―――クトゥグア。
氷雪を纏う巨大な竜―――イタクァ。
二対の神獣が、グランゾン・Fに向かって突進する!
「<縮退砲>―――発射!」
そして二体を迎え撃つ、破滅の一撃。
絶大な力がぶつかり合い、そして―――
宇宙が、歪んだ。
「え・・・?」
比喩表現でもなんでもない。文字通り、宇宙が歪んでいるのだ。
「どうやら今の衝撃で、次元震を引き起こしてしまったようですね・・・」
「じ、次元震!?」
「時空間が歪んで、別の世界への扉―――次元断層に飲み込まれるということですよ。つまり、異世界に飛ばされる
ということです!」
「な、何だって!?ちょっと、どうにかならないの!?」
「どうにもなりませんよ。ククク・・・まあいいでしょう。どこで戦うにしろ、結局同じこと―――」
その言葉を、最後まで聞くことはできなかった。バキスレイオスとグランゾン・Fは次元断層に飲み込まれ、別次元へと
消えていった。

483 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2006/11/04(土) 17:39:29 ID:ksalxbdz0
投下完了。前回は>>356から。
ちょいと間が空きましたが、その分だけ投下量もやや多いのでカンベンしてくだされ。
スパロボネタとかデモベネタとか多くて一般読者には分からないものも多いだろーなー・・・
と不安になってみたり(今回のサブタイからしてスパロボネタだし)。

>>358 なんとか期待に添えるように頑張ってみます・・・

>>359 戯言原作における彼の本名です。

>>360-361 本当に長い二年間とちょっとです。

>>ふら〜りさん
正義は勝つ。やはりこれです。

>>白書さん
僕のアホなSSを楽しみにしてくださるとは恐縮です。
新人のうちは大変でしょうが、頑張ってください。

>>480 規制の支援ありがとうございます。

484 :作者の都合により名無しです:2006/11/04(土) 17:46:38 ID:G3hHT7+S0
新スレ立てました!

http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1162629937/l50

サマサさんへの感想は新スレで書きます。

485 :作者の都合により名無しです:2006/11/06(月) 10:39:12 ID:vBCWzBYs0
バレさんの保管の為に保守あげ

486 :作者の都合により名無しです:2006/11/06(月) 23:23:00 ID:/O8fXgbq0
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1140972269/565-

487 :作者の都合により名無しです:2006/11/08(水) 00:38:41 ID:i6qGd9eq0
保守

488 :作者の都合により名無しです:2006/11/08(水) 17:50:19 ID:qkMDDcfe0
バレさんのために、取りあえず保守アゲしとこ

489 :バレ ◆sssssssDAo :2006/11/08(水) 20:14:33 ID:GdEfGqxm0
永らく空けてしまい、申し訳ありません。
引越し後のネット環境復帰に予想外に時間がかかってしまい(私の我儘が原因なのですが)、
昨日午後からやっと現役復帰です。
今からすぐ外出しなければなりませんので、更新作業は今夜か明日夜からになります。

>>485
>>487
>>488
保守ありがとうございます。スレの保管作業自体は今夜中に行ないますので、明日以降の保守は
大丈夫です。


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